(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023007749
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】遠心式回転装置
(51)【国際特許分類】
F04D 29/44 20060101AFI20230112BHJP
F02B 39/00 20060101ALI20230112BHJP
F04D 29/58 20060101ALI20230112BHJP
【FI】
F04D29/44 S
F02B39/00 C
F04D29/58 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021110793
(22)【出願日】2021-07-02
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】時枝 克典
【テーマコード(参考)】
3G005
3H130
【Fターム(参考)】
3G005EA04
3G005EA16
3G005FA05
3G005GB17
3G005GB24
3G005GB88
3H130AA13
3H130AB27
3H130AB47
3H130AC14
3H130AC17
3H130BA38B
3H130BA66B
3H130CA08
3H130DA02Z
3H130DB01Z
3H130DB08Z
3H130DB13Z
3H130DD06Z
3H130DD09Z
3H130EA06B
3H130EA07B
(57)【要約】
【課題】熱膨張による効率の低下を抑制すること。
【解決手段】遠心式回転装置Cは、インペラ9と、環状の流路11を含むハウジング1と、流路11に配置される複数のベーンペアBPと、を備える。複数のベーンペアBPの各々が、流路11の第1の表面S1に固定されかつ第1の表面S1から第2の表面S2に向かって突出する第1のベーンB1と、第2の表面S2に固定されかつ第2の表面S2から第1の表面S1に向かって突出する第2のベーンB2と、を含む。各ベーンペアBPの第1のベーンB1および第2のベーンB2が、組み合わされて1つの固定式の静翼を規定する。第1のベーンB1および第2のベーンB2の合計の高さが、第1の表面S1と第2の表面S2との間の距離よりも大きい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インペラと、
前記インペラを収容するハウジングであって、前記インペラに対して径方向外側に位置しかつ前記インペラの中心軸線方向に互いに対向する第1の表面および第2の表面と、前記第1の表面および前記第2の表面の間に形成される環状の流路と、を含む、ハウジングと、
前記インペラの円周方向に沿って前記流路に配置される複数のベーンペアであって、
前記複数のベーンペアの各々が、前記第1の表面から前記第2の表面に向かって突出する第1のベーンと、前記第2の表面から前記第1の表面に向かって突出する第2のベーンと、を含み、
各ベーンペアの前記第1のベーンおよび前記第2のベーンが、組み合わされて1つの固定式の静翼を規定し、
前記第1のベーンおよび前記第2のベーンの合計の高さが、前記第1の表面と前記第2の表面との間の距離よりも大きい、
複数のベーンペアと、
を備える、遠心式回転装置。
【請求項2】
前記第1のベーンおよび前記第2のベーンは、前記円周方向において少なくとも部分的に互いに接触する、請求項1に記載の遠心式回転装置。
【請求項3】
前記第1のベーンおよび前記第2のベーンは、前記第1のベーンの外表面および前記第2のベーンの外表面が互いに連続するように組み合わされる、請求項1または2に記載の遠心式回転装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、遠心式回転装置に関する。
【背景技術】
【0002】
遠心式回転装置には、流体の流路にベーンを備える場合がある。例えば、特許文献1,2は、固定式のベーンと、可動式のベーンと、を備えるディフューザを開示する。このような構成では、例えば、互いに対向する表面の一方に固定式のベーンが取り付けられ、他方に可動式のベーンが取り付けられる。
【0003】
また、特許文献3は、ベーンドディフューザを開示する。このベーンドディフューザでは、ベーンのリーディングエッジ径、翼厚または取付角のうちの少なくとも1つが、複数のベーンの間で不均一である。このような構成によって、共振が低減される。同様に、特許文献4のディフューザでは、互いに隣接して配置される2つの案内翼の間の角度が、他のペアの間の角度と異なる。このような構成によって、共振が低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-111368号公報
【特許文献2】国際公開第2012/077231号
【特許文献3】特開2019-167871号公報
【特許文献4】特表2017-519154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、遠心式回転装置が高温の状況下で使用される場合、熱膨張によって流路が拡がり得る。このような場合、ベーンと流路の表面との間の隙間が拡がり得る。この場合、遠心式回転装置の効率が低下するおそれがある。
【0006】
本開示は、熱膨張による効率の低下を抑制することができる遠心式回転装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係る遠心式回転装置は、インペラと、インペラを収容するハウジングであって、インペラに対して径方向外側に位置しかつインペラの中心軸線方向に互いに対向する第1の表面および第2の表面と、第1の表面および第2の表面の間に形成される環状の流路と、を含む、ハウジングと、インペラの円周方向に沿って流路に配置される複数のベーンペアであって、複数のベーンペアの各々が、第1の表面に固定されかつ第1の表面から第2の表面に向かって突出する第1のベーンと、第2の表面に固定されかつ第2の表面から第1の表面に向かって突出する第2のベーンと、を含み、各ベーンペアの第1のベーンおよび第2のベーンが、組み合わされて1つの固定式の静翼を規定し、第1のベーンおよび第2のベーンの合計の高さが、第1の表面と第2の表面との間の距離よりも大きい、複数のベーンペアと、を備える。
【0008】
第1のベーンおよび第2のベーンは、円周方向において少なくとも部分的に互いに接触してもよい。
【0009】
第1のベーンおよび第2のベーンは、第1のベーンの外表面および第2のベーンの外表面が互いに連続するように、組み合わされてもよい。
【0010】
ベーンペアの形状、姿勢または円周方向における位置のうちの少なくとも1つが、複数のベーンペアの間で不均一である、複数のベーンペアと、を備える。
【0011】
第1のベーンおよび第2のベーンの合計の高さが、複数のベーンペアの間で不均一であってもよい。
【0012】
ベーンペアのリーディングエッジ径が、複数のベーンペアの間で不均一であってもよい。
【0013】
第1のベーンおよび第2のベーンの合計の厚が、複数のベーンペアの間で不均一であってもよい。
【0014】
ベーンペアの入口羽根角が、複数のベーンペアの間で不均一であってもよい。
【0015】
隣り合うベーンペアの間の角度が、複数のベーンペアの間で不均一であってもよい。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、熱膨張による効率の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、実施形態に係る遠心式回転装置を備える過給機の概略的な断面図である。
【
図3】
図3は、
図2中のIII-III線に沿った概略的な断面図である。
【
図4】
図4は、他の実施形態に係るベーンペアを示す概略的な断面図である。
【
図5】
図5は、さらに他の実施形態に係るベーンペアを示す概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す具体的な寸法、材料および数値等は、理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本開示を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本開示に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0019】
図1は、実施形態に係る遠心式回転装置Cを備える過給機TCの概略的な断面図である。本実施形態では、遠心式回転装置が、過給機TCのコンプレッサCに適用される。例えば、過給機TCは、エンジンに適用される。過給機TCは、ハウジング1と、シャフト7と、タービンインペラ8と、コンプレッサインペラ9と、を備える。
【0020】
後述するように、タービンインペラ8およびコンプレッサインペラ9は、シャフト7と一体的に回転する。したがって、シャフト7の中心軸線方向、径方向および円周方向は、タービンインペラ8およびコンプレッサインペラ9にも共通である。本開示では、これらシャフト7、タービンインペラ8およびコンプレッサインペラ9の中心軸線方向、径方向および円周方向は、他に指示が無い限り、それぞれ単に「中心軸線方向」、「径方向」および「円周方向」と称され得る。
【0021】
ハウジング1は、ベアリングハウジング2と、タービンハウジング3と、コンプレッサハウジング4と、を含む。中心軸線方向において、ベアリングハウジング2の一方の端部は、Gカップリング等の締結機構21aによってタービンハウジング3に連結される。中心軸線方向において、ベアリングハウジング2の他方の端部は、締結ボルト等の締結機構21bによってコンプレッサハウジング4に連結される。
【0022】
ベアリングハウジング2は、軸受孔22を含む。軸受孔22は、ベアリングハウジング2内を中心軸線方向に延在する。軸受孔22は、軸受50,60を収容する。軸受50,60は、シャフト7を回転可能に支持する。
【0023】
中心軸線方向において、シャフト7の第1の端部には、タービンインペラ8が設けられる。タービンインペラ8は、タービンハウジング3に回転可能に収容される。中心軸線方向において、第1の端部とは反対側のシャフト7の第2の端部には、コンプレッサインペラ9が設けられる。コンプレッサインペラ9は、コンプレッサハウジング4に回転可能に収容される。
【0024】
コンプレッサハウジング4は、中心軸線方向においてベアリングハウジング2と反対側の端部に、吸気口10を含む。吸気口10は、不図示のエアクリーナに接続される。ベアリングハウジング2およびコンプレッサハウジング4は、それらの間にディフューザ流路11を規定する。ディフューザ流路11は、環状形状を有する。ディフューザ流路11は、コンプレッサインペラ9に対して径方向外側に位置する。ディフューザ流路11は、コンプレッサインペラ9を介して吸気口10に連通する。
【0025】
コンプレッサハウジング4は、コンプレッサスクロール流路12を含む。コンプレッサスクロール流路12は、環状形状を有する。コンプレッサスクロール流路12は、ディフューザ流路11に対して径方向外側に位置する。コンプレッサスクロール流路12は、ディフューザ流路11と連通する。また、コンプレッサスクロール流路12は、不図示のエンジンの吸気口と連通する。
【0026】
コンプレッサCでは、コンプレッサインペラ9が回転すると、吸気口10からコンプレッサハウジング4内に空気が吸気される。吸気は、コンプレッサインペラ9の翼の間の空間を通る間に、遠心力によって増速される。増速された空気は、ディフューザ流路11およびコンプレッサスクロール流路12で加圧される。加圧された空気は、不図示の吐出口から流出し、エンジンの吸気口に導かれる。
【0027】
タービンハウジング3は、中心軸線方向においてベアリングハウジング2と反対側の端部に、吐出口13を含む。吐出口13は、不図示の排気ガス浄化装置に接続される。タービンハウジング3は、流路14と、タービンスクロール流路15とを含む。タービンスクロール流路15および流路14の各々は、環状形状を有する。タービンスクロール流路15は、流路14の径方向外側に位置する。流路14は、タービンインペラ8の径方向外側に位置する。流路14には、ノズル16が配置される。
【0028】
タービンスクロール流路15は、不図示のガス流入口と連通する。ガス流入口は、不図示のエンジンの排気マニホールドから排出される排気ガスを受け入れる。また、タービンスクロール流路15は、流路14と連通する。流路14は、タービンインペラ8を介して吐出口13に連通する。
【0029】
タービンTでは、排気ガスがガス流入口からタービンスクロール流路15に導かれ、さらに、流路14およびタービンインペラ8を介して吐出口13に導かれる。排気ガスは、タービンインペラ8の翼の間の空間を通る間に、タービンインペラ8を回転させる。
【0030】
タービンインペラ8の回転力は、シャフト7を介してコンプレッサインペラ9に伝達される。コンプレッサインペラ9が回転すると、上記のとおりに空気が加圧される。こうして、加圧された空気がエンジンの吸気口に導かれる。
【0031】
続いて、コンプレッサCについて詳細に説明する。
【0032】
図2は、
図1中のA部の概略的な拡大断面図である。コンプレッサCは、上記のコンプレッサインペラ9と、ベアリングハウジング2およびコンプレッサハウジング4を含むハウジング1と、を備える。また、コンプレッサCは、複数のベーンペアBPを備える。なお、
図2では、1つのベーンペアBPのみが示される。
【0033】
ハウジング1は、上記のディフューザ流路11を含む。ディフューザ流路11は、コンプレッサインペラ9の径方向外側に位置する。ディフューザ流路11は、環状形状を有する。ディフューザ流路11は、ベアリングハウジング2の第1の表面S1と、コンプレッサハウジング4の第2の表面S2と、によって規定される。第1の表面S1および第2の表面S2は、中心軸線方向において互いに対向する。例えば、第1の表面S1および第2の表面S2の各々は、中心軸線方向に垂直に拡がる。例えば、第1の表面S1および第2の表面S2は、互いに平行である。
【0034】
複数のベーンペアBPは、円周方向に沿ってディフューザ流路11に配置される。複数のベーンペアBPは、円周方向に互いに離間する。各ベーンペアBPは、第1のベーンB1と、第2のベーンB2と、を含む。
【0035】
第1のベーンB1は、第1の表面S1に設けられる。例えば、第1のベーンB1は、第1の表面S1に固定される。第1のベーンB1は、第1の表面S1から第2の表面S2に向かって中心軸線方向に突出する。第1のベーンB1の先端は、第2の表面S2から離間していてもよい。他の実施形態では、第1のベーンB1の先端は、過給機TCの非動作状態において、第2の表面S2と接触してもよい。
【0036】
第2のベーンB2は、第2の表面S2に設けられる。例えば、第2のベーンB2は、第2の表面S2に固定される。第2のベーンB2は、第2の表面S2から第1の表面S1に向かって中心軸線方向に突出する。第2のベーンB2の先端は、第1の表面S1から離間していてもよい。他の実施形態では、第2のベーンB2の先端は、過給機TCの非動作状態において、第1の表面S1と接触してもよい。
【0037】
第1のベーンB1および第2のベーンB2の合計高さは、中心軸線方向における第1の表面S1と第2の表面S2との間の距離よりも大きい。第1のベーンB1および第2のベーンB2の「高さ」とは、第1のベーンB1および第2のベーンB2の「中心軸線方向における長さ」を意味する。別の表現では、第1のベーンB1と第2のベーンB2とは、中心軸線方向において少なくとも部分的にオーバーラップしている。
【0038】
図3は、
図2中のIII-III線に沿った概略的な断面図である。なお、
図3では、より良い理解のために、第1の表面S1および3つのベーンペアBPのみが示される。しかしながら、コンプレッサCは、3つより多いベーンペアBPを備えることができる。
【0039】
各ベーンペアBPの第1のベーンB1および第2のベーンB2は、組み合わされて1つの固定式の静翼を規定する。例えば、第1のベーンB1は圧力面Psを含み、第2のベーンB2は負圧面Ssを含む。他の実施形態では、第1のベーンB1が負圧面Ssを含んでもよく、第2のベーンB2が圧力面Psを含んでもよい。
【0040】
第1のベーンB1および第2のベーンB2は、円周方向において、少なくとも部分的に接触する。具体的には、第1のベーンB1は第1の接触面B11を含み、第2のベーンB2は第2の接触面B21を含む。第1の接触面B11と第2の接触面B21とは、互いに相補的な輪郭を有する。第1の接触面B11と第2の接触面B21とは、互いに接触する。第1の接触面B11と第2の接触面B21との間の「接触」は、全面的でなくてもよく、通常の接触部品において一般的であるように、部分的であってもよい。別の表現では、第1の接触面B11と第2の接触面B21との間には、通常の接触部品において一般的であるように、隙間(非接触部)が部分的に形成されてもよい。
【0041】
本実施形態では、第1の接触面B11および第2の接触面B21は、リーディングエッジLEおよびリアエッジREを通る。他の実施形態では、リーディングエッジLEは、第1のベーンB1または第2のベーンB2の一方のみによって形成されてもよい。また、他の実施形態では、リアエッジREは、第1のベーンB1および第2のベーンB2の一方のみによって形成されてもよい。
【0042】
中心軸線方向において第1のベーンB1および第2のベーンB2がオーバーラップする位置における、中心軸線方向に垂直な断面において、第1のベーンB1の外表面および第2のベーンB2の外表面は、互いに滑らかに連続するように形成される。別の表現では、上記の断面において、第1のベーンB1の外表面および第2のベーンB2の外表面の間の境界は、段差を有さない。
【0043】
本実施形態では、ベーンペアBPのリーディングエッジ径、入口羽根角、および、隣り合うベーンペアBPの間の角度が、複数のベーンペアBPの間で不均一である。
【0044】
リーディングエッジ径は、中心軸線から各ベーンペアBPのリーディングエッジLEまでの距離(半径)である。例えば、
図3では、右側のベーンペアBPのリーディングエッジ径R3は、真中のベーンペアBPのリーディングエッジ径R2よりも大きく、リーディングエッジ径R2は、左側のベーンペアBPのリーディングエッジ径R1よりも大きい。
【0045】
入口羽根角は、各ベーンペアBPのリーディングエッジLEにおいて圧力面Psと円周方向の接線とによって規定される角度である。例えば、
図3では、右側のベーンペアBPの入口羽根角β3は、真中のベーンペアBPの入口羽根角β2よりも大きく、入口羽根角β2は、左側のベーンペアBPの入口羽根角β1よりも大きい。
【0046】
隣り合うベーンペアBPの間の角度は、隣り合うベーンペアBPの間で、中心軸線とリーディングエッジLEとを結ぶ線分によって規定される角度である。例えば、
図3では、右側のベーンペアBPと真中のベーンペアBPとの間の角度α2は、真中のベーンペアBPと左側のベーンペアBPとの間の角度α1よりも大きい。
【0047】
リーディングエッジ径、入口羽根角および隣り合うベーンペアBPの間の角度は、例えば、コンピュータシミュレーションによって、特定の周波数範囲の圧力変動がコンプレッサCにおいて発生しないように、決定されることができる。
【0048】
リーディングエッジ径、入口羽根角および隣り合うベーンペアBPの間の角度は、
図3に示されないベーンペアBPを含めて、複数のベーンペアBPの全ての間で互いに異なっていてもよい。対照的に、リーディングエッジ径、入口羽根角および隣り合うベーンペアBPの間の角度は、複数のベーンペアBPの一部の間のみで互いに異なっていてもよい。
【0049】
なお、
図3では、リーディングエッジ径、入口羽根角および隣り合うベーンペアBPの間の角度の全てが、複数のベーンペアBPの間で互いに異なる。しかしながら、他の実施形態では、リーディングエッジ径、入口羽根角または隣り合うベーンペアBPの間の角度のうちの一つまたは二つのみが、複数のベーンペアBPの間で互いに異なってもよい。
【0050】
なお、本実施形態ではベーンペアBPの内周側に位置する、リーディングエッジ径、入口羽根角を不均一としている、これは内周側で対向する動翼に近い構造を不均一とすることで、共振をより抑制できるためである。ただし、ベーンペアBPの外周側の構造つまり、出口羽根角や、トレーリングエッジ径を不均一にしても、共振を抑制することはできる。
【0051】
以上のようなコンプレッサCは、コンプレッサインペラ9と、コンプレッサインペラ9を収容するハウジング1と、複数のベーンペアBPと、を備える。ハウジング1は、コンプレッサインペラ9に対して径方向外側に位置しかつ中心軸線方向に互いに対向する第1の表面S1および第2の表面S2と、第1の表面S1および第2の表面S2の間に形成される環状のディフューザ流路11と、を含む。複数のベーンペアBPは、円周方向に沿ってディフューザ流路11に配置され、複数のベーンペアBPの各々が、第1の表面S1に固定されかつ第1の表面S1から第2の表面S2に向かって突出する第1のベーンB1と、第2の表面S2に固定されかつ第2の表面S2から第1の表面S1に向かって突出する第2のベーンB2と、を含む。各ベーンペアBPの第1のベーンB1および第2のベーンB2が、組み合わされて1つの固定式の静翼を規定する。
【0052】
このようなコンプレッサCでは、第1のベーンB1および第2のベーンB2の合計の高さが、第1の表面S1と第2の表面S2との間の距離よりも大きい。すなわち、第1の表面から突出する第1のベーンB1および第2の表面から第2のベーンB2が、中心軸線方向においてオーバーラップする。このため、中心軸線方向において、ディフューザ流路11の表面と、第1のベーンB1および第2のベーンB2により規定される静翼との間に、隙間は形成されない。また、第1のベーンB1および第2のベーンB2が中心軸線方向においてオーバーラップするので、第1の表面S1と第2の表面S2との間の距離が熱膨張によって拡がっても、中心軸線方向に隙間が形成されることを防止することができる。よって、熱膨張によるコンプレッサCの効率の低下を抑制することができる。
【0053】
また、コンプレッサCでは、第1のベーンB1および第2のベーンB2は、円周方向において少なくとも部分的に互いに接触する。したがって、第1のベーンB1と第2のベーンB2との間の隙間を流れる流体を低減することができる。よって、コンプレッサCの効率の低下を抑制することができる。
【0054】
また、コンプレッサCでは、第1のベーンB1および第2のベーンB2は、第1のベーンB1の外表面および第2のベーンB2の外表面が互いに連続するように組み合わされる。したがって、第1のベーンB1と第2のベーンB2との間の隙間を流れる流体を低減することができる。よって、コンプレッサCの効率の低下を抑制することができる。
【0055】
また、コンプレッサCでは、ベーンペアBPの形状、姿勢または円周方向における位置のうちの少なくとも1つが、複数のベーンペアBPの間で不均一である。具体的には、コンプレッサCでは、ベーンペアBPのリーディングエッジ径、入口羽根角、および、隣り合うベーンペアBPの間の角度が、複数のベーンペアBPの間で不均一である。このような構成によれば、特定の周波数範囲の圧力変動を避けることができ、共振を低減することができる。また、コンプレッサCでは、互いに対向する表面S1,S2から突出する2つのベーンB1,B2によって、1つの静翼が規定される。したがって、ベーンペアBPの形状をよりフレキシブルに変更することができる。また、コンプレッサCでは、第1のベーンB1および第2のベーンB2の双方が固定式である。したがって、これらを動かすための機構は不要である。よって、装置をシンプルにすることができる。
【0056】
続いて、他の実施形態について説明する。
【0057】
図4は、他の実施形態に係るベーンペアBPを示す概略的な断面図であり、
図2中のIV-IV線に沿った断面図に相当する。なお、
図4では、より良い理解のために、第1の表面S1、第2の表面S2および3つのベーンペアBPのみが示される。しかしながら、コンプレッサC1は、3つより多いベーンペアBPを備えることができる。また、
図4では、より良い理解のために、第1の表面S1および第2の表面S2は平面として示される。
【0058】
図4の実施形態では、第1のベーンB1および第2のベーンB2の合計の高さが、複数のベーンペアBPの間で不均一である。例えば、
図4において上側のベーンペアBPの第1のベーンB1の高さH1は、真中のベーンペアBPの第1のベーンB1の高さH2よりも大きく、高さH2は、下側のベーンペアBPの第1のベーンB1の高さH3よりも大きい。第2のベーンB2の高さは、3つのベーンペアBPの間で等しい。したがって、上側のベーンペアBPの第1のベーンB1および第2のベーンB2の合計の高さは、真中のベーンペアBPの第1のベーンB1および第2のベーンB2の合計の高さよりも大きい。また、真中のベーンペアBPの第1のベーンB1および第2のベーンB2の合計の高さは、下側のベーンペアBPの第1のベーンB1および第2のベーンB2の合計の高さよりも大きい。
【0059】
第1のベーンB1および第2のベーンB2の合計の高さは、
図4に示されないベーンペアBPを含めて、複数のベーンペアBPの全ての間で互いに異なっていてもよい。対照的に、第1のベーンB1および第2のベーンB2の合計の高さは、複数のベーンペアBPの一部の間のみで互いに異なっていてもよい。
【0060】
図4では、第1のベーンB1の高さHのみが、複数のベーンペアBPの間で不均一である。しかしながら、他の実施形態では、第2のベーンB2の高さも同様に、複数のベーンペアBPの間で不均一であってもよく、または、第2のベーンB2の高さのみが、複数のベーンペアBPの間で不均一であってもよい。例えば、上側のベーンペアBPの第1のベーンB1の高さH1が真中のベーンペアBPの第1のベーンB1の高さH2よりも大きい場合、上側のベーンペアBPの第2のベーンB2の高さは、真中のベーンペアBPの第2のベーンB2の高さよりも小さくてもよく、または、大きくてもよい。
【0061】
このような複数のベーンペアBPを備えるコンプレッサC1は、上記のコンプレッサCと同様な効果を奏する。
【0062】
図5は、さらに他の実施形態に係るベーンペアBPを示す概略的な断面図であり、
図2中のIV-IV線に沿った断面図に相当する。
図5でも、より良い理解のために、第1の表面S1、第2の表面S2および3つのベーンペアBPのみが示される。しかしながら、コンプレッサC2は、3つより多いベーンペアBPを備えることができる。また、
図5では、より良い理解のために、第1の表面S1および第2の表面S2は平面として示される。
【0063】
図5の実施形態では、第1のベーンB1および第2のベーンB2の合計の厚さが、複数のベーンペアBPの間で不均一である。第1のベーンB1および第2のベーンB2の「厚さ」とは、第1のベーンB1および第2のベーンB2の「円周方向における長さ」を意味する。例えば、
図5において上側のベーンペアBPの第1のベーンB1の厚さW1は、真中のベーンペアBPの第1のベーンB1の厚さW2よりも小さく、厚さW2は、下側のベーンペアBPの第1のベーンB1の厚さW3よりも小さい。第2のベーンB2の厚さは、3つのベーンペアBPの間で等しい。したがって、上側のベーンペアBPの第1のベーンB1および第2のベーンB2の合計の厚さは、真中のベーンペアBPの第1のベーンB1および第2のベーンB2の合計の厚さよりも小さい。また、真中のベーンペアBPの第1のベーンB1および第2のベーンB2の合計の厚さは、下側のベーンペアBPの第1のベーンB1および第2のベーンB2の合計の厚さよりも小さい。
【0064】
第1のベーンB1および第2のベーンB2の合計の厚さは、
図5に示されないベーンペアBPを含めて、複数のベーンペアBPの全ての間で互いに異なっていてもよい。対照的に、第1のベーンB1および第2のベーンB2の合計の厚さは、複数のベーンペアBPの一部の間のみで互いに異なっていてもよい。
【0065】
図5では、第1のベーンB1の厚さWのみが、複数のベーンペアBPの間で不均一である。しかしながら、他の実施形態では、第2のベーンB2の厚さも同様に、複数のベーンペアBPの間で不均一であってもよく、または、第2のベーンB2の厚さのみが、複数のベーンペアBPの間で不均一であってもよい。例えば、上側のベーンペアBPの第1のベーンB1の厚さW1が真中のベーンペアBPの第1のベーンB1の厚さW2よりも小さい場合、上側のベーンペアBPの第2のベーンB2の厚さは、真中のベーンペアBPの第2のベーンB2の厚さよりも小さくてもよく、または、大きくてもよい。
【0066】
このような複数のベーンペアBPを備えるコンプレッサC2は、上記のコンプレッサCと同様な効果を奏する。
【0067】
以上、添付図面を参照しながら実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0068】
例えば、上記の実施形態では、本開示に係る遠心式回転装置は、過給機TCのコンプレッサCに適用される。しかしながら、他の実施形態では、本開示に係る遠心式回転装置は、過給機TCのタービンTに適用されてもよい。
【0069】
例えば、
図1を参照して、タービンTのノズル16は、第1のベーンB3と、第2のベーンB4と、を備えてもよい。第1のベーンB3は、タービンハウジング3に取り付けられるプレートP1に固定され、第2のベーンB4は、タービンハウジング3に取り付けられるプレートP2に固定される。第1のベーンB3は、プレートP1からプレートP2に向かって中心軸線方向に突出し、第2のベーンB4は、プレートP2からプレートP1に向かって中心軸線方向に突出する。第1のベーンB3および第2のベーンB4は、組み合わされて1つの固定式の静翼を規定する。このようなタービンTは、タービンインペラ8と、タービンインペラ8を収容するタービンハウジング3と、各々が第1のベーンB3と第2のベーンB4とを含む複数のベーンペアBPと、を備える。タービンハウジング3は、タービンインペラ8に対して径方向外側に位置しかつ中心軸線方向において互いに対向するプレートP1の第1の表面およびプレートP2の第2の表面と、プレートP1の第1の表面およびプレートP2の第2の表面の間に形成される環状の流路14と、を含む。複数のベーンペアBPは、円周方向に沿って流路14に配置される。
【0070】
このようなタービンTにおいても、第1のベーンB3および第2のベーンB4の合計の高さが、プレートP1の第1の表面とプレートP2の第2の表面との間の距離よりも大きくてもよい。
【0071】
また、本開示に係る遠心式回転装置は、過給機TC以外の他の装置に適用されてもよい。
【0072】
また、上記の実施形態では、ベーンペアBPの形状、姿勢または円周方向における位置の少なくとも1つが、複数のベーンペアBPの間で不均一である。しかしながら、他の実施形態では、ベーンペアBPの形状、姿勢および円周方向における位置は、複数のベーンペアBPの間で均一であってもよい。
【符号の説明】
【0073】
1 ハウジング
2 ベアリングハウジング
3 タービンハウジング
4 コンプレッサハウジング
8 タービンインペラ
9 コンプレッサインペラ
11 ディフューザ流路
14 流路
B1 第1のベーン
B2 第2のベーン
B3 第1のベーン
B4 第2のベーン
BP ベーンペア
C コンプレッサ(遠心式回転装置)
C1 コンプレッサ(遠心式回転装置)
C2 コンプレッサ(遠心式回転装置)
R1 リーディングエッジ径
R2 リーディングエッジ径
R3 リーディングエッジ径
S1 第1の表面
S2 第2の表面
T タービン(遠心式回転装置)
α1 隣り合うベーンペアの間の角度
α2 隣り合うベーンペアの間の角度
β1 入口羽根角
β2 入口羽根角
β3 入口羽根角