(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023077500
(43)【公開日】2023-06-06
(54)【発明の名称】エアバッグ装置及びエアバッグの折り畳み方法
(51)【国際特許分類】
B60R 21/205 20110101AFI20230530BHJP
B60R 21/237 20060101ALI20230530BHJP
【FI】
B60R21/205
B60R21/237
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021190782
(22)【出願日】2021-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(72)【発明者】
【氏名】杉山 昌司
【テーマコード(参考)】
3D054
【Fターム(参考)】
3D054AA03
3D054AA07
3D054AA14
3D054BB12
3D054BB17
3D054CC15
3D054CC29
3D054DD09
3D054FF16
3D054FF17
(57)【要約】
【課題】エアバッグの良好な展開性能を得ることができるエアバッグ装置及びエアバッグの折り畳み方法を提供する。
【解決手段】エアバッグ装置1は、袋状に形成され、折り畳まれた状態から内部に導入されるガスにより膨張展開するエアバッグ2を備える。エアバッグ装置1は、立壁19を有し、エアバッグ2の内部に位置して、折り畳まれた状態のエアバッグ2をケース体31との間で挟持するリテーナ12を備える。エアバッグ装置1は、折り畳まれた状態のエアバッグ2を立壁19に一部が沿った状態で被覆する被覆部材21を備える。エアバッグ装置1は、被覆部材21によりエアバッグ2を被覆した状態でのエアバッグ2の所定部位のリテーナ12の立壁19と被覆部材21との間への入り込みを抑制する抑制部の機能を有する固定部25を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
袋状に形成され、折り畳まれた状態から内部に導入されるガスにより膨張展開するエアバッグと、
立壁を有し、前記エアバッグの内部に位置して、折り畳まれた状態の前記エアバッグを収納部材との間で挟持する保持部材と、
折り畳まれた状態の前記エアバッグを前記立壁に一部が沿った状態で被覆する被覆部材と、
この被覆部材により前記エアバッグを被覆した状態での前記エアバッグの所定部位の前記保持部材の前記立壁と前記被覆部材との間への入り込みを抑制する抑制部と、
を備えることを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項2】
エアバッグの所定部位は、折り畳まれた前記エアバッグの先端部である
ことを特徴とする請求項1記載のエアバッグ装置。
【請求項3】
抑制部は、被覆部材とエアバッグとを固定する固定部の少なくとも一部である
ことを特徴とする請求項1または2記載のエアバッグ装置。
【請求項4】
抑制部は、保持部材の立壁の頂部近傍に位置する
ことを特徴とする請求項1ないし3いずれか一記載のエアバッグ装置。
【請求項5】
袋状に形成され、折り畳まれた状態から内部に導入されるガスにより膨張展開するエアバッグと、立壁を有し、前記エアバッグの内部に位置して、折り畳まれた状態の前記エアバッグを収納部材との間で挟持する保持部材と、前記エアバッグに固定される固定部を有し、前記エアバッグに重ねられて配置され、折り畳まれた状態の前記エアバッグを被覆する被覆部材と、を備えるエアバッグの折り畳み方法であって、
前記固定部を含む前記被覆部材の一部を前記立壁に沿わせて立ち上がらせた規制部を形成した状態で前記エアバッグを折り畳み、
折り畳んだ前記エアバッグに対し前記固定部を押し当てるように前記被覆部材を引っ張りつつこの被覆部材により前記エアバッグを被覆する
ことを特徴とするエアバッグの折り畳み方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折り畳まれた状態のエアバッグを被覆部材により被覆するエアバッグ装置及びエアバッグの折り畳み方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車に備えられるエアバッグ装置において、収納状態で袋状のエアバッグの折り畳み形状を保持するために、別体の布などの被覆部材によって被覆するものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-10430号公報 (第9-10頁、
図12-13)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
被覆部材によって折り畳み状態のエアバッグの形状を保持する場合、僅かな型崩れでエアバッグの所定部位が想定しない状態となって円滑な展開を阻害することなどを回避する必要がある。そのため、エアバッグの折り畳み方法に制限が加わり、折り畳みの作業性が低下したり、設計自由度が損なわれたりしないようにすることが望まれる。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、エアバッグの良好な展開性能を得ることができるエアバッグ装置及びエアバッグの折り畳み方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載のエアバッグ装置は、袋状に形成され、折り畳まれた状態から内部に導入されるガスにより膨張展開するエアバッグと、立壁を有し、前記エアバッグの内部に位置して、折り畳まれた状態の前記エアバッグを収納部材との間で挟持する保持部材と、折り畳まれた状態の前記エアバッグを前記立壁に一部が沿った状態で被覆する被覆部材と、この被覆部材により前記エアバッグを被覆した状態での前記エアバッグの所定部位の前記保持部材の前記立壁と前記被覆部材との間への入り込みを抑制する抑制部と、を備えるものである。
【0007】
請求項2記載のエアバッグ装置は、請求項1記載のエアバッグ装置において、エアバッグの所定部位は、折り畳まれた前記エアバッグの先端部であるものである。
【0008】
請求項3記載のエアバッグ装置は、請求項1または2記載のエアバッグ装置において、抑制部は、被覆部材とエアバッグとを固定する固定部の少なくとも一部であるものである。
【0009】
請求項4記載のエアバッグ装置は、請求項1ないし3いずれか一記載のエアバッグ装置において、抑制部は、保持部材の立壁の頂部近傍に位置するものである。
【0010】
請求項5記載のエアバッグの折り畳み方法は、袋状に形成され、折り畳まれた状態から内部に導入されるガスにより膨張展開するエアバッグと、立壁を有し、前記エアバッグの内部に位置して、折り畳まれた状態の前記エアバッグを収納部材との間で挟持する保持部材と、前記エアバッグに固定される固定部を有し、前記エアバッグに重ねられて配置され、折り畳まれた状態の前記エアバッグを被覆する被覆部材と、を備えるエアバッグの折り畳み方法であって、前記固定部を含む前記被覆部材の一部を前記立壁に沿わせて立ち上がらせた規制部を形成した状態で前記エアバッグを折り畳み、折り畳んだ前記エアバッグに対し前記固定部を押し当てるように前記被覆部材を引っ張りつつこの被覆部材により前記エアバッグを被覆するものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載のエアバッグ装置によれば、エアバッグの折り畳み形状を被覆部材によって保持し、エアバッグの所定部位の保持部材の立壁側あるいは被覆部材との干渉に起因するエアバッグの展開挙動のばらつきを抑制でき、エアバッグの良好な展開性能を得ることができる。
【0012】
請求項2記載のエアバッグ装置によれば、請求項1記載のエアバッグ装置の効果に加えて、エアバッグの展開挙動に影響を与え得るエアバッグの先端部の位置を、抑制部によって規制でき、所望の展開性能を容易に得ることができる。
【0013】
請求項3記載のエアバッグ装置によれば、請求項1または2記載のエアバッグ装置の効果に加えて、被覆部材とエアバッグとの固定部を利用して、別途の部材を用いることなく、エアバッグの折り畳まれた所定部位が保持部材の立壁と被覆部材との間へ入り込むことを、より確実に抑制できる。
【0014】
請求項4記載のエアバッグ装置によれば、請求項1ないし3いずれか一記載のエアバッグ装置の効果に加えて、被覆部材によりエアバッグを被覆した状態でエアバッグの折り畳まれた所定部位が保持部材の立壁と被覆部材との間へ入り込むことを、簡素な構成でより確実に抑制できる。
【0015】
請求項5記載のエアバッグの折り畳み方法によれば、被覆部材とエアバッグとの固定部を利用して、折り畳んでいる際にエアバッグの一部が保持部材の立壁と被覆部材との間へ入り込まないように規制部で規制し、その状態から被覆部材を引っ張って固定部をエアバッグの所定部位に押し付けてエアバッグの所定部位の保持部材の立壁と被覆部材との間への入り込みを抑制しつつ被覆部材によりエアバッグの折り畳み形状を保持しながら簡易な作業で容易に保持でき、エアバッグの所定部位の保持部材の立壁側あるいは被覆部材との干渉に起因するエアバッグの展開挙動のばらつきを抑制でき、エアバッグの良好な展開性能を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施の形態のエアバッグ装置を示す断面図である。
【
図2】同上エアバッグ装置のエアバッグを示す断面図である。
【
図4】同上エアバッグ装置の折り畳まれた状態のエアバッグを示す斜視図である。
【
図5】同上エアバッグ装置の折り畳まれた状態のエアバッグが収納部材に収納された状態を示す斜視図である。
【
図6】(a)は同上エアバッグの折り畳み方法の一工程を模式的に示す平面図、(b)は(a)の断面図である。
【
図7】(a)は同上エアバッグの折り畳み方法の
図6に続く工程を模式的に示す平面図、(b)は(a)の断面図である。
【
図8】(a)は同上エアバッグの折り畳み方法の
図7に続く工程を模式的に示す平面図、(b)は(a)の断面図である。
【
図9】(a)は同上エアバッグの折り畳み方法の
図8に続く工程を模式的に示す平面図、(b)は(a)の断面図である。
【
図10】(a)は同上エアバッグの折り畳み方法の
図9に続く工程を模式的に示す平面図、(b)は(a)の断面図である。
【
図11】(a)は同上エアバッグの折り畳み方法の
図10に続く工程を模式的に示す平面図、(b)は(a)の断面図である。
【
図12】(a)は同上エアバッグの折り畳み方法の
図11に続く工程を模式的に示す平面図、(b)は(a)の断面図である。
【
図13】(a)は同上エアバッグの折り畳み方法の
図12に続く工程を模式的に示す平面図、(b)は(a)の断面図である。
【
図14】(a)は同上エアバッグの折り畳み方法の
図13に続く工程を模式的に示す平面図、(b)は(a)の断面図である。
【
図15】同上エアバッグの折り畳み方法の
図14に続く工程を模式的に示す平面図である。
【
図16】(a)は同上エアバッグの折り畳み方法の
図15に続く工程を模式的に示す平面図、(b)は(a)の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0018】
図1ないし
図5において、1はエアバッグ装置を示す。本実施の形態において、エアバッグ装置1は、車両としての自動車の助手席に着座する被保護物である乗員の保護用、すなわち助手席乗員用のエアバッグ装置1を例に挙げて説明する。なお、以下、前後方向、両側方向、及び上下方向は、それぞれエアバッグ装置1を被設置部に取り付けた自動車の座席に着座する乗員から視点を基準として説明する。
【0019】
エアバッグ装置1は、エアバッグモジュールとも呼び得るもので、袋状のエアバッグ2を備える。
図2及び
図3に示すように、エアバッグ2は、複数または単数の基布により袋状に形成されている。本実施の形態では、正面視で円形状の基布3,4の周縁部を縫製などの接合部5により接合して形成されている。例えば、基布3は、乗員側に位置して拘束面を構成する乗員側基布であり、基布4は、乗員に対して背後側に位置する反乗員側基布である。基布4には、ガスが導入される導入口6が形成されている。導入口6は、例えば円形状に形成され、基布4の中央部に配置されている。導入口6の周囲には、通孔が形成されている。通孔は、例えば4つ、互いに周方向に等角度または略等角度の位置に形成されている。また、本実施の形態では、導入口6の周縁部において、エアバッグ2の内側にて複数の補強パッチ8が基布4に接合されて、導入口6の周縁部が補強されている。補強パッチ8にも通孔が形成されている。その他、エアバッグ2内には、ガスの流れを整流する整流体やエアバッグ2の展開形状を制御するテザーなどの制御体が配置されていてもよい。また、本実施の形態では、基布4には、乗員拘束時にエアバッグ2の内部のガスの余剰分を排出し内圧を適切に設定するためのベントホール9が形成されている。
【0020】
図1に示すように、エアバッグ2の導入口6には、エアバッグ2にガスを供給するインフレータ11が保持部材であるリテーナ12を介して取り付けられている。インフレータ11は、例えば円盤状をなす本体部13を備え、この本体部13の外側に被取付部であるフランジ部14が突設され、このフランジ部14に通孔が形成されている。本体部13には、ガス噴射口が形成されている。また、本体部13の内部に点火器及び薬剤が収納されている。本体部13には、制御装置が電気的に接続されている。そして、インフレータ11は、制御装置からの電気信号により、点火器が薬剤を燃焼させ、ガス噴射口から膨張用のガスを急速に供給するようになっている。なお、インフレータ11は、種々の形状があり、本体部13が長尺の円柱状などに形成されていてもよい。
【0021】
リテーナ12は、金属などにより枠状に形成されている。リテーナ12は、エアバッグ2の内部に挿入される。リテーナ12は、底面部16を有する。底面部16は、エアバッグ2の基布4側に重ねられる。底面部16は、例えば四角形状に形成されている。底面部16には、インフレータ11の本体部13が挿入される開口部17が形成されている。開口部17は、導入口6と連通し、導入口6と位置合わせされて配置される。また、底面部16には、開口部17の周囲に取付ボルト(スタッドボルト)18が突設されている。取付ボルト18は、エアバッグ2の基布4の通孔及びインフレータ11のフランジ部14の通孔に挿通される。さらに、底面部16の外縁部には、立壁19が立ち上がって形成されている。立壁19は、底面部16の外縁部全体に連なって形成されている。立壁19は、例えば一定または略一定の高さに設定されている。リテーナ12の形状及び大きさにより、折り畳まれた状態のエアバッグ2の外形及びその大きさを略規定される。
【0022】
また、エアバッグ2には、このエアバッグ2を被覆して、このエアバッグ2を折り畳んだ状態を保持する被覆部材21が取り付けられている。被覆部材21は、パッキングシート、パッキングクロス、ラッピング布、折り崩れ防止体などとも呼ばれるもので、例えば合成紙、紙、布、不織布、あるいは樹脂シートなどにより形成されている。また、被覆部材21は、エアバッグ2の展開挙動を制御する機能を有する。被覆部材21は、エアバッグ2の基布4に重ねられている。
図3に示すように、本実施の形態において、被覆部材21は、第一被覆部22と、第一被覆部22に対して交差(直交)する方向に延びる第二被覆部23と、により、略T字、あるいは略十字状に形成されている。図示される例では、第一被覆部22は、車幅方向に延びる四角形状に形成され、第二被覆部23は、上下方向に延びる四角形状に形成されている。
【0023】
そして、被覆部材21は、第一被覆部22と第二被覆部23とが交差する位置に、挿入開口部24が形成され、挿入開口部24の周縁部において、エアバッグ2の外部にて基布4に対し、固定部25により一体的に固定されて、挿入開口部24がエアバッグ2の導入口6と連通して位置合わせされている。
【0024】
挿入開口部24は、導入口6と略等しい形状、例えば円形状に形成されている。挿入開口部24は、インフレータ11の本体部13が挿入される。挿入開口部24の周囲にて被覆部材21に、リテーナ12の取付ボルト18が挿通される通孔27が形成されている。
【0025】
図1ないし
図4に示す固定部25は、縫製などにより形成された接合部である。固定部25は、挿入開口部24(導入口6)を囲み、リテーナ12の底面部16の外形に沿って形成されている。本実施の形態において、固定部25は、四角形枠状に形成されている。また、固定部25は、挿入開口部24(導入口6)から見て、一側が他側よりも延長されて形成されている。図示される例では、固定部25は、上方に所定距離延長されて形成されている。固定部25が延長される長さは、リテーナ12の立壁19の高さに応じて設定されている。
図3に示す例では、固定部25は、例えば下方の寸法L1に対して上方の寸法L2が9mm長く形成されている。
【0026】
また、被覆部材21には、脆弱なスリットである破断予定線28が車幅方向に横断して形成されている。破断予定線28は、第二被覆部23に形成されている。さらに、被覆部材21には、エアバッグ2を被覆した被覆部材21をリテーナ12(
図1に示す)に固定するための穴部29が形成されている。穴部29は、例えば第二被覆部23の先端部に二つ形成されている。穴部29は、
図1に示すリテーナ12の取付ボルト18が挿入されて取付ボルト18に引っ掛けられる。
【0027】
図1及び
図5に示すように、被覆部材21により保持された折り畳み状態のエアバッグ2は、収納部材であるケース体31に取り付けられる。ケース体31は、底部32と、底部32の外縁部から立ち上がる側壁部33と、を一体的に有する略箱状に形成され、正面側が突出口となっており、内側がエアバッグ2を収納するエアバッグ収納部となっている。底部32には、インフレータ11の本体部13が挿入される取付開口部34が形成されているとともに、取付開口部34の周囲に、リテーナ12の取付ボルト18が挿通される通孔が形成されている。通孔に挿通された取付ボルト18に対し、ナットなどの締結部材が締結される。
【0028】
側壁部33には、ケース体31をカバー体に係止するための係止部36が形成されている。本実施の形態において、係止部36は、フック状に形成されている。カバー体は、通常時、ケース体31の突出口を覆う。カバー体は、例えば合成樹脂などにより形成されている。カバー体は、被設置部の意匠面と一体あるいは別体をなして形成される。助手席用のエアバッグ装置1の場合、カバー体は、インストルメントパネル部などと一体あるいは別体をなして形成されている。カバー体には、他の部分より薄肉で容易に破断するテアラインが所定形状に形成されている。
【0029】
次に、エアバッグ2の折り畳み方法について説明する。
【0030】
まず、
図6(a)及び
図6(b)に示すように、リテーナ12を内部に配置したエアバッグ2を、基布3,4を重ねるように被覆部材21とともに平らに均す。このとき、基布3側を正面側としている。
【0031】
次いで、エアバッグ2を
図7ないし
図10に示すように所定の第一方向、本実施の形態では左右方向に折り畳む。
【0032】
つまり、
図7(a)及び
図7(b)に示すように、エアバッグ2の一側例えば左側を被覆部材21の他側例えば右側へと折り返し、
図8(a)及び
図8(b)に示すように、折り返したエアバッグ2の一側の先端部を、サーベルなどの所定幅の平板長手状の治具41を用いて例えばロール状に巻き込むように折り返し、
図9(a)及び
図9(b)に示すように、リテーナ12及び被覆部材21の第二被覆部23の幅の半分程度の幅に基端部まで折り畳んだ第一折畳部(第一ロール折り部)43を形成する。
【0033】
同様の工程をエアバッグ2の他側にも繰り返し、
図10(a)及び
図10(b)に示すように、リテーナ12及び被覆部材21の第二被覆部23の幅の半分程度の幅に折り畳んだ第二折畳部(第二ロール折り部)44を第一折畳部43に隣接して形成する。
【0034】
さらに、エアバッグ2を
図11ないし
図16に示すように所定の第一方向と交差または直交する第二方向、本実施の形態では上下方向に折り畳む。
【0035】
このとき、
図11(a)及び
図11(b)に示すように、被覆部材21の一部である第一折畳部43及び第二折畳部44から正面視で突出している部分、本実施の形態では第二被覆部23の上側の部分を、リテーナ12の立壁19の頂部近傍、図示される例では頂部以上の高さまで山状またはタック状に立ち上がらせた規制部である引き上げ部45を形成し、引き上げ部45をリテーナ12の立壁19に近接させて沿わせる。この状態で、被覆部材21とエアバッグ2とを固定する固定部25のリテーナ12の上側に位置する部分が、リテーナ12の下側に位置する部分よりも上側に、リテーナ12の立壁19の寸法に応じた所定寸法分長いため、立壁19の頂部に近接する引き上げ部45の先端部に固定部25が位置する。
【0036】
そして、エアバッグ2の第一折畳部43及び第二折畳部44の一端例えば上側を他端例えば下側へと折り返し、
図12(a)及び
図12(b)に示すように、折り返した第一折畳部43及び第二折畳部44の先端部を、サーベルなどの所定幅の平板長手状の治具46を用いて例えばロール状に巻き込むように折り返し、
図13(a)及び
図13(b)に示すように、リテーナ12の上下幅に基端部まで折り畳んだ重ね部である第一折返部(第一重ね部)47を形成する。この状態で、第一折返部47は、リテーナ12の正面に位置する。また、第一折返部47の先端部は、引き上げ部45の先端部に位置する固定部25に近接して位置し、引き上げ部45に対して外側、つまりリテーナ12の立壁19に対して引き上げ部45を介して離れた位置となる。すなわち、第一折返部47の先端部は、引き上げ部45によって被覆部材21(第二被覆部23)とリテーナ12の立壁19との間に入り込まないようにブロックされる。
【0037】
この後、
図14(a)及び
図14(b)に示すように、下側の第一折畳部43及び第二折畳部44の先端部を、サーベルなどの所定幅の平板長手状の治具48を用いて例えばロール状に巻き込むように折り返し、
図15、
図16(a)及び
図16(b)に示すように、第一折返部47上に重ねられる重ね部である第二折返部(第二重ね部)49を形成する。すなわち、第二折返部49の先端部は、引き上げ部45の先端部に位置する固定部25に近接して位置し、引き上げ部45に対して外側、つまりリテーナ12の立壁19に対して引き上げ部45を介して離れた位置となる。すなわち、第二折返部49の先端部は、引き上げ部45によって被覆部材21(第二被覆部23)とリテーナ12の立壁19との間に入り込まないようにブロックされる。
【0038】
そして、被覆部材21によって、折り畳んだエアバッグ2を被覆する。
【0039】
まず、被覆部材21の第一被覆部22の両側をそれぞれ折り返して第二折返部49に重ねた後、被覆部材21の第二被覆部23を引っ張り、引き上げ部45を解消しつつ、第一被覆部22ごとエアバッグ2を覆うように折り返す。このとき、第一折返部47及び第二折返部49の先端部が引き上げ部45の先端に位置する固定部25に近接していることで、被覆部材21の第二被覆部23を折り返す際に、固定部25が第一折返部47及び第二折返部49の先端部に押し付けられてこれらを押し上げることにより、これらの位置をリテーナ12の立壁19に対して上方の位置に規制し、つまりリテーナ12の立壁19と被覆部材21(第二被覆部23)との間に入り込まない位置に規制し、第一折返部47及び第二折返部49の折り畳み形状を保持した状態で被覆部材21の第二被覆部23が第一折返部47及び第二折返部49を覆う。すなわち、引き上げ部45に位置した固定部25の少なくとも一部が、エアバッグ2の折り畳まれた所定部位のリテーナ12の立壁19と被覆部材21との間への入り込みを抑制する抑制部の機能を有する。そして、
図16(a)及び
図16(b)に示す穴部29を
図1などに示すリテーナ12の取付ボルト18に引っ掛けることで、エアバッグ2の折り畳み形状が保持された状態で被覆部材21により被覆される。この状態で、
図4に示すように、被覆部材21はリテーナ12の立壁19に一部が沿うとともに、破断予定線28がエアバッグ2の正面側に位置する。
【0040】
折り畳まれたエアバッグ2は、突出するリテーナ12の取付ボルト18を
図1及び
図5に示すケース体31の底部32の通孔に挿通するとともに、インフレータ11の本体部13をケース体31の取付開口部34、被覆部材21の挿入開口部24、及び、リテーナ12の開口部17に亘り挿入し、さらにリテーナ12の取付ボルト18をインフレータ11の通孔に挿入して、締結部材により締結することで、
図1に示すように、リテーナ12及び被覆部材21とともにケース体31のエアバッグ収納部に収納される。この状態で、リテーナ12とケース体31の底部32との間に、エアバッグ2の導入口6の周縁部及び被覆部材21の挿入開口部24の周縁部が挟み込まれた状態で保持される。この後、ケース体31を係止部36によりカバー体に係止して、エアバッグ装置1を車体側の被設置部に設置する。
【0041】
なお、第一折畳部43、第二折畳部44、第一折返部47、及び、第二折返部49は、それぞれロール折り状としたが、これに限らず、所望の展開挙動などに応じて、任意の折り畳み形状としてよい。
【0042】
そして、エアバッグ装置1は、自動車の衝突などにより生じる衝撃をセンサにより検出すると、センサからの検出信号に基づき制御装置が制御信号を出力してインフレータ11を作動させる。インフレータ11から噴射されたガスが、折り畳み状態でエアバッグ収納部に収納されたエアバッグ2に対し導入口6から流入することで、エアバッグ2が膨張展開してカバー体のテアラインを破断して突出口から突出し、乗員側へと展開する。
【0043】
このように、一実施の形態によれば、被覆部材21によりエアバッグ2を被覆した状態でエアバッグ2の折り畳まれた所定部位がリテーナ12の立壁19と被覆部材21との間へ入り込むことを抑制する抑制部の機能を有する固定部25を形成したことで、エアバッグ2の折り畳み形状を被覆部材21によって保持し、エアバッグ2の所定部位のリテーナ12の立壁19側あるいは被覆部材21との干渉に起因するエアバッグ2の展開挙動のばらつきを抑制でき、エアバッグ2の良好な展開性能を得ることができる。
【0044】
また、エアバッグ2の所定部位が折り畳まれたエアバッグ2の先端部であるため、エアバッグ2の展開挙動に影響を与え得るエアバッグ2の先端部の位置を、固定部25によって規制でき、所望の展開性能を容易に得ることができる。
【0045】
被覆部材21とエアバッグ2とを固定する固定部25の少なくとも一部を抑制部として用いることで、被覆部材21とエアバッグ2との固定部25を利用して、別途の部材を用いることなく、エアバッグ2の折り畳まれた所定部位がリテーナ12の立壁19と被覆部材21との間へ入り込むことを、簡素な構成でより確実に抑制できる。さらに、固定部25は、縫製などにより形成されるため、その形状や位置を容易に設定でき、エアバッグ2の必要な展開性能に応じた調整が容易に可能になる。
【0046】
しかも、エアバッグ2を折り畳む際には、固定部25を含む引き上げ部45をリテーナ12の立壁19に沿わせて被覆部材21(第二被覆部23)の一部により予め形成しておいてから、第一折返部47及び第二折返部49を形成するようにエアバッグ2を折り畳むことで、被覆部材21とエアバッグ2との固定部25を利用して、折り畳んでいる際にエアバッグ2の一部である第一折返部47及び第二折返部49の先端部がリテーナ12の立壁19と被覆部材21との間へ入り込まないように引き上げ部45で規制し、その状態から被覆部材21を引っ張って固定部25を第一折返部47及び第二折返部49に押し付けて第一折返部47及び第二折返部49のリテーナ12の立壁19と被覆部材21との間への入り込みを抑制しつつ被覆部材21によりエアバッグ2の折り畳み形状を保持しながら簡易な作業で容易に保持できる。そのため、エアバッグ2の折り畳まれた所定部位がリテーナ12の立壁19と被覆部材21との間へ入り込まないように被覆部材21により慎重に被覆作業をしたり、被覆後にエアバッグ2の型崩れや位置ずれを直したりする必要がなく、エアバッグ2の折り畳みの作業性が良好である。
【0047】
さらに、エアバッグ2の所定部位の位置を固定部25によって規制するため、折り畳まれたエアバッグ2を被覆部材21によって強い張力で被覆しても、エアバッグ2が型崩れしにくいので、エアバッグ2を所定のサイズに収まるようにコンパクトに規制でき、エアバッグ装置1の小型化にも寄与する。
【0048】
固定部25がリテーナ12の立壁19の頂部近傍に位置するため、被覆部材21によりエアバッグ2を被覆した状態でエアバッグ2の折り畳まれた所定部位がリテーナ12の立壁19と被覆部材21との間へ入り込むことを、より確実に抑制できる。
【0049】
なお、上記の一実施の形態において、固定部25により規制するエアバッグ2の所定部位は、エアバッグ2(第一折返部47及び第二折返部49)の先端部に限らず、エアバッグ2の所望の展開性能に応じた任意の部位としてよい。
【0050】
また、固定部25は、縫製などにより形成されたものとしたが、これに限らず、接着、溶着などにより形成してもよいし、OPW(One Piece Woven)などの特殊な折りによってエアバッグ2と被覆部材21とを一体的に製造し、その連結部分を固定部25としてもよい。
【0051】
さらに、固定部25による被覆部材21のエアバッグ2への固定は、エアバッグ2の所定部位、例えば第一折返部47及び第二折返部49の先端部の位置を規制できれば、部分的であってもよい。
【0052】
また、固定部25に代えて、例えばリテーナ12の立壁19の高さ程度の幅を有するバンドなどの固定部材を用い、エアバッグ2を被覆部材21ごと外側から巻き付けることで、エアバッグ2の所定部位がリテーナ12の立壁19と被覆部材21との間へ入り込むことを抑制する抑制部を構成してもよい。
【0053】
エアバッグ装置1は、助手席用に限らず、被設置部としてハンドル(ステアリングホイール)に設置される運転席用であってもよいし、その他の被設置部に設置されるものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、例えば自動車の助手席用、あるいは運転席用などのエアバッグ装置に適用できる。
【符号の説明】
【0055】
1 エアバッグ装置
2 エアバッグ
12 保持部材であるリテーナ
19 立壁
21 被覆部材
25 抑制部の機能を有する固定部
31 収納部材であるケース体
45 規制部である引き上げ部