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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023077572
(43)【公開日】2023-06-06
(54)【発明の名称】熱硬化性樹脂組成物及び硬化膜
(51)【国際特許分類】
   C08L 33/04 20060101AFI20230530BHJP
   C07C 69/72 20060101ALN20230530BHJP
   C07C 69/54 20060101ALN20230530BHJP
【FI】
C08L33/04
C07C69/72
C07C69/54 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021190883
(22)【出願日】2021-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】000162076
【氏名又は名称】共栄社化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001531
【氏名又は名称】弁理士法人タス・マイスター
(72)【発明者】
【氏名】吉田 成寿
(72)【発明者】
【氏名】森脇 佑也
(72)【発明者】
【氏名】中川 浩気
(72)【発明者】
【氏名】浅田 耕資
(72)【発明者】
【氏名】松田 知也
(72)【発明者】
【氏名】呑海 克
(72)【発明者】
【氏名】竹中 直巳
【テーマコード(参考)】
4H006
4J002
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB48
4H006BR10
4J002BG021
4J002BG071
4J002CD023
4J002CD143
4J002CF031
4J002DE059
4J002DE069
4J002EE047
4J002EH048
4J002EH078
4J002EH087
4J002EH098
4J002EH107
4J002EN139
4J002EZ036
4J002FD146
4J002FD147
4J002FD149
4J002FD156
4J002FD157
4J002FD159
4J002GH00
4J002GJ00
4J002GL00
4J002GM00
4J002GN00
(57)【要約】
【課題】ハイソリッド化が容易であるような熱硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】エステル交換反応及びその他の熱的に進行する化学反応の少なくとも2種類の反応を生じる熱硬化性樹脂組成物であって、ポリオール化合物(A)及びエステル交換触媒(B)を必須とし、エステル交換反応以外の反応を生じさせる組成物(X)を含有するものであり、組成物(X)は、アルキルエステル基を有するものである熱硬化性樹脂組成物。
【選択図】 なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エステル交換反応及びその他の熱的に進行する化学反応の少なくとも2種類の反応を生じる熱硬化性樹脂組成物であって、
ポリオール化合物(A)及びエステル交換触媒(B)を必須とし、
エステル交換反応以外の反応を生じさせる組成物(X)を含有するものであり、組成物(X)は、アルキルエステル基を有するものであることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
組成物(X)は、活性水素含有化合物(C)、(メタ)アクリル酸エステル化合物(D)及びマイケル反応触媒(E)を必須とする熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
活性水素含有化合物(C)は、マロン酸アルキルエステル及び/又はアセト酢酸エステルである請求項2記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
活性水素含有化合物(C)は、分子量が3,000以下である請求項2又は3記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
組成物(X)は、エポキシ基含有化合物(F)、カルボン酸部分エステル化合物(G)、及び、酸-エポキシ反応触媒(H)を必須とする請求項1記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
固形分重量が50重量%以上である請求項1~5のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物を、熱によって硬化したものであることを特徴とする硬化膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性樹脂組成物及び硬化膜に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明者らは、エステル交換反応を硬化反応とする熱硬化性樹脂組成物についての検討を行っている(特許文献1、2)。最近の検討によって、エステル交換反応を硬化反応とすることで、一般的に知られているメラミン樹脂やポリイソシアネート化合物を使用した硬化と同等の硬化性能を確保することができることが明らかになりつつある。
【0003】
一方、マロン酸エステルやアセチル酢酸エステル等の活性水素を有する化合物、及び、α、β不飽和カルボニル化合物のマイケル付加反応を硬化反応とする熱硬化性樹脂組成物についての検討もなされている(特許文献3,4等)。さらに、酸-エポキシ反応を硬化反応とする熱硬化性樹脂組成物も知られている。
【0004】
これらの熱硬化性樹脂組成物の性能を改善する試みとして、熱硬化性樹脂組成物を高固形分とすることも要請されている。高固形分の熱硬化性樹脂組成物は、塗膜形成に際して、効率よく厚膜化することができる塗料として使用することができる。さらに、溶媒の使用量を低減することで、環境への負荷が小さいものとすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6398026号公報
【特許文献2】国際公開2019/069783
【特許文献3】特表2018-519436号公報
【特許文献4】特開2002-285041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記に鑑み、ハイソリッド化が容易であるような熱硬化性樹脂組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、エステル交換反応及びその他の熱的に進行する化学反応の少なくとも2種類の反応を生じる熱硬化性樹脂組成物であって、
ポリオール化合物(A)及びエステル交換触媒(B)を必須とし、
エステル交換反応以外の反応を生じさせる組成物(X)を含有するものであり、組成物(X)は、アルキルエステル基を有するものであることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物である。
【0008】
上記組成物(X)は、活性水素含有化合物(C)、(メタ)アクリル酸エステル化合物(D)及びマイケル反応触媒(E)を必須とするものとすることができる。
上記活性水素含有化合物(C)は、マロン酸アルキルエステル及び/又はアセト酢酸エステルであることが好ましい。
活性水素含有化合物(C)は、分子量が3,000以下であることが好ましい。
【0009】
上記組成物(X)は、エポキシ基含有化合物(F)、カルボン酸部分エステル化合物(G)、及び、酸-エポキシ反応触媒(H)を必須とするものとすることができる。
上記熱硬化性樹脂組成物は、固形分重量が50重量%以上であることが好ましい。
【0010】
本発明は、上述した熱硬化性樹脂組成物を、熱によって硬化したものであることを特徴とする硬化膜でもある。
【発明の効果】
【0011】
本発明の熱硬化性組成物は、低温硬化可能でかつ、ハイソリッド化を図ることができるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例1の剛体振り子型物性試験データ。
図2】比較例1の剛体振り子型物性試験データ。
図3】比較例2の剛体振り子型物性試験データ。
図4】比較例3の剛体振り子型物性試験データ。
図5】実施例2の剛体振り子型物性試験データ。
図6】比較例4の剛体振り子型物性試験データ。
図7】比較例5の剛体振り子型物性試験データ。
図8】比較例6の剛体振り子型物性試験データ。
図9】実施例3の剛体振り子型物性試験データ。
図10】実施例4の剛体振り子型物性試験データ。
図11】実施例5の剛体振り子型物性試験データ。
図12】実施例6の剛体振り子型物性試験データ。
図13】実施例7の剛体振り子型物性試験データ。
図14】実施例8の剛体振り子型物性試験データ。
図15】実施例9の剛体振り子型物性試験データ。
図16】実施例10の剛体振り子型物性試験データ。
図17】比較例7の剛体振り子型物性試験データ。
図18】比較例8の剛体振り子型物性試験データ。
図19】比較例9の剛体振り子型物性試験データ。
図20】比較例10の剛体振り子型物性試験データ。
図21】比較例11の剛体振り子型物性試験データ。
図22】比較例12の剛体振り子型物性試験データ。
図23】実施例11の剛体振り子型物性試験データ。
図24】実施例12の剛体振り子型物性試験データ。
図25】実施例13の剛体振り子型物性試験データ。
図26】比較例13の剛体振り子型物性試験データ。
図27】比較例14の剛体振り子型物性試験データ。
図28】比較例15の剛体振り子型物性試験データ。
図29】比較例16の剛体振り子型物性試験データ。
図30】硬化開始温度の読み取り方法を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の熱硬化性組成物は、エステル交換反応及びその他の熱的に進行する化学反応との2つの反応を併用した熱硬化性樹脂組成物である。
エステル交換反応によって硬化させる熱硬化性樹脂組成物について、本発明者らは検討を行っている。これに加えて、更に、もう一つ別の反応を生じるような熱硬化性樹脂組成物を得ることが、本発明の目的である。
【0014】
このように2つの反応を生じさせることで、熱硬化性樹脂組成物のハイソリッド化を図ることができる、という点が特に好ましい点である。
ハイソリッド化を図るためには、熱硬化性樹脂組成物としては、比較的低分子量の成分を多く配合した状態のものを使用し、これによって、熱硬化後には充分に高分子化することが必要となる。また硬化後の樹脂が充分な性能を有するものとするためには、充分な高分子化と高い架橋密度を得ることが好ましい。よって、このような目的を達成できるような樹脂組成の設計が必要となる。
本発明においては、2種類以上の反応を生じさせるものであることから、比較的低分子量の原料を使用しても、硬化後の樹脂としては充分な高分子量化を図ることが容易となる。
【0015】
更に、エステル交換反応以外の反応を生じさせる組成物(X)は、アルキルエステル基を有するものである。これによって、組成物(X)中のアルキルエステル基がポリオール化合物(A)と反応を生じる。これによって、2つの反応両方が進行した後では、全体として結合した樹脂組成物となる。すなわち、エステル交換反応によって架橋した部分と、その他の反応で架橋した部分とが別個のものとして存在するのではなく、これらが全体で一つの架橋樹脂となる。これによって、良好な性能を有する塗膜が得られる点で好ましいものである。
【0016】
本発明において、エステル交換以外の「その他の熱的に進行する化学反応」としては特に限定されるものではないが、具体的には、マイケル付加反応、酸-エポキシ反応、ウレタン化反応、ディールズアルダー反応、脱水縮合反応(エーテル、エステル、アミド、メラミン、シリコーン等)、チオール-エン反応、重合反応等を挙げることができる。これらの反応は、同一の系中で併用させることが容易であること、更に、アルキルエステル基が存在していても、反応に影響を与えないこと、架橋樹脂と相溶性の悪い副生成物が生じない反応であること、安価な材料によって組成物を得ることができること、等の観点から特に好ましいものである。これらのうち、マイケル付加反応、酸-エポキシ反応、が特に好ましい。
以下、これらについて詳述する。
【0017】
(その他の熱的に進行する化学反応がマイケル付加反応である場合)
マイケル付加反応とは、アニオン化しやすい活性水素基を有する化合物の不飽和結合への付加反応である。
このような反応を生じる組成物(X)としては、活性水素含有化合物(C)、(メタ)アクリル酸エステル化合物(D)及びマイケル反応触媒(E)を必須とするものを挙げることができる。アルキルエステル基は、活性水素含有化合物(C)及び(メタ)アクリル酸エステル化合物(D)のいずれか一方に有するものであればよく、これらの両方が有するものであってもよい。なかでも、活性水素含有化合物(C)がアルキルエステル基を有するものであることが好ましい。
【0018】
活性水素含有化合物(C)
活性水素含有化合物(C)としては特に限定されず、マロン酸ジアルキルエステル、アセト酢酸アルキルエステル、シアノ酢酸アルキルエステル、メタントリカルボン酸トリアルキルエステル等を挙げることができる。マロン酸ジアルキルエステル、アセト酢酸アルキルエステルを使用する場合、エステル基を形成するアルキル基としては特に限定されず、炭素数1~50を有するものを使用することができる。
【0019】
上記アルキルエステル基におけるアルキル基(すなわち、以下で詳述する一般式(4)におけるR)は、炭素数が50以下のアルキル基であるが、より好ましくは炭素数1~20の範囲内であり、更に好ましくは、1~10の範囲内であり、更に好ましくは、1~6の範囲内である。最も好ましくは、1~4の範囲内である。このような範囲内とすることで、硬化反応を好適に進行させることができる点で好ましいものである。
【0020】
活性メチレン基を有する化合物エステルに由来する構造を有する化合物は、多く知られているが、上記構造を有する化合物は、マロン酸エステルまたはアセト酢酸エステルとビニル基の付加反応が進行し易く、合成が容易であり、出発原料を選ぶことでエステル基の数を調整できるため、硬化性能や硬化後の樹脂の性能を容易に調整できるという点で特に好ましい。具体的には、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジn-ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等を最も好適に使用することができる。
更に、これらの化合物を他の化合物と反応させて、得られた化合物であってもよい。このような反応としては、例えば、カルボン酸基の反応による化合物や、活性水素のうち一部のみを反応させた化合物等を挙げることができる。
これらの化合物の2種以上を併用するものであってもよい。
【0021】
活性水素含有化合物(C)は、分子量が3,000以下であることが好ましい。これによって、低分子量化合物を使用することとなるため、組成物の粘度を低粘度とすることができ、ハイソリッド化を効率よく実現することができる。上記分子量は、1,000以下であることがより好ましく、500以下であることが更に好ましい。
【0022】
さらに、比較的低分子量の化合物であることから、粘度が低いため、組成物の粘性が高くなることがない。このため、ハイソリッド化を達成することができる。
【0023】
((メタ)アクリル酸エステル化合物(D))
(メタ)アクリル酸エステル化合物は、上述した活性水素含有化合物(C)との間でマイケル付加反応を生じるような(メタ)アクリル酸エステル化合物である。
このような(メタ)アクリル酸エステル化合物(D)としては、下記一般式で表される(メタ)アクリル酸エステル基を1つのみ有するものであっても、2以上有するものであってもよい。
【0024】
このような(メタ)アクリル酸エステル化合物(D)として使用できる化合物として以下のものを例示することができる。
【0025】
官能基数1の(メタ)アクリレートの例は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、iso-ブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0026】
官能基数2の(メタ)アクリレートの例は、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ジメチロールートリシクロデカンジ(メタ)アクリレート(DCP-A)、ビスフェノールAのEO付加物ジアクリレート(共栄社化学社製;ライトアクリレートBP-4EA、BP-10EA)ビスフェノールAのPO付加物ジアクリレート(共栄社化学社製;BP-4PA、BP-10PA等)を含む。なかでも、ビスフェノールAのPO付加物ジアクリレート(共栄社化学社製;BP-4PA)、ジメチロールートリシクロデカンジ(メタ)アクリレート(DCP-A)等を好ましく用いることができる。
【0027】
官能基数3の(メタ)アクリレートの例は、トリメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、トリス(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート等を含む。なかでも、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート等を好ましく用いることができる。
【0028】
官能基数4の(メタ)アクリレートの例は、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエチレンオキサイド変性テトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールプロピレンオキサイド変性テトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等を含む。なかでも、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等を好ましく用いることができる。
【0029】
官能基数4以上の(メタ)アクリレートの例は、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエチレンオキサイド変性テトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンペンタ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのカプロラクトン変性物のヘキサ(メタ)アクリレートなど多官能性(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0030】
上記(メタ)アクリル酸エステル化合物(B)は、アルキルエステル基を有するものであってもよい。アルキルエステル基におけるアルキル基は、炭素数が50以下のアルキル基であるが、より好ましくは炭素数1~20の範囲内であり、更に好ましくは、1~10の範囲内であり、更に好ましくは、1~6の範囲内である。最も好ましくは、1~4の範囲内である。このような範囲内とすることで、硬化反応を好適に進行させることができる点で好ましいものである。
【0031】
(マイケル反応触媒(E))
一般にマイケル付加反応においては、活性水素部位からカルボアニオンを生成させるために塩基性化合物を触媒として使用する。
使用する化合物としては特に限定されず、マイケル反応触媒として公知の任意の化合物を使用することができる。
具体的には、例えば、アルカリ金属の水酸化物およびアルコキサイド、第4級アンモニウムヒドロキサイド、3級アミン、グアニジン、アミジン及び3級ホスフィン等を挙げることができる。
【0032】
((C)~(E)の配合割合)
組成物(X)中の上述した(C)~(E)の各成分の含有量は以下のようなものとすることが好ましい。上記活性水素含有化合物(C)は、(C)~(E)の合計質量に対して、10~90質量%であることが好ましい。上記下限は、20重量%であることがより好ましく、30重量%であることが更に好ましい。上記上限は、80重量%であることがより好ましく、75重量%であることが更に好ましい。
【0033】
上記(メタ)アクリル酸エステル化合物(D)は、(C)~(E)の合計質量に対して、10~60質量%であることが好ましい。上記下限は、15重量%であることがより好ましく、20重量%であることが更に好ましい。上記上限は、50重量%であることがより好ましく、45重量%であることが更に好ましい。
【0034】
上記マイケル反応触媒(E)は、(C)~(E)の合計質量に対して、0.05~5質量%であることが好ましい。上記下限は、0.1重量%であることがより好ましく、0.15重量%であることが更に好ましい。上記上限は、4重量%であることがより好ましく、3重量%であることが更に好ましい。
【0035】
(その他の熱的に進行する化学反応が酸-エポキシ付加反応である場合)
酸-エポキシ付加反応は、-COOH基とエポキシ基の開環反応によって進行する反応である。このような反応も本発明において使用することができる。この場合、組成物(X)は、エポキシ基含有化合物(F)、カルボン酸部分エステル化合物(G)、及び、酸-エポキシ反応触媒(H)を必須とするものであることが好ましい。
【0036】
(エポキシ基含有化合物(F))
本発明で使用することができるエポキシ化合物としては、公知の任意のものを挙げることができ、例えば、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタアクリレート、3´,4´-エポキシシクロヘキシルメチル、3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート等を挙げることができる。
【0037】
エポキシ基含有化合物(F)は、分子量が3,000以下であることが好ましい。これによって、低分子量化合物を使用することとなるため、組成物の粘度を低粘度とすることができ、ハイソリッド化を効率よく実現することができる。上記分子量は、2,000以下であることがより好ましく、1,000以下であることが更に好ましい。
【0038】
(カルボン酸部分エステル化合物(G))
カルボン酸部分エステル化合物(G)は、2以上のカルボキシル基を有するポリカルボン酸化合物のうち、一部のみをエステル化した化合物である。このような化合物は、カルボキシル基とアルキルエステル基の両方の官能基を同一分子中に有するものであることから、酸-エポキシ反応と、エステル交換反応の両方に寄与することができる点で、本発明の目的に適した化合物である。
【0039】
このような化合物は、ポリカルボン酸の酸無水物に対して、アルコールを反応させる方法、ポリカルボン酸化合物を公知の方法で部分エステル化する方法、等の公知の反応で製造することができる。
【0040】
上述した反応における原料であるポリカルボン酸の酸無水物としては特に限定されず、例えば、環状構造を持つコハク酸無水物、マレイン酸無水物、フタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、安息香酸無水物、イタコン酸無水物等の各種二塩基酸の無水物を使用することができる酸無水物とアルコールによる部分エステル化反応は周知の一般的な反応であり、その反応条件などは一般的な条件によって行うことができる。
当該アルコールとしては特に限定されず、炭素数50以下のアルコールを挙げることができる。
より具体的には、メタノール、エタノール、ベンジルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、t-ブチルアルコール等の、公知のアルコールを使用することができる。
【0041】
(酸-エポキシ反応触媒(H))
酸-エポキシ触媒(H)は、特に限定されず公知のものを使用することができる。具体的には、例えば、第4級オニウム塩、第3級ホスフィン誘導体、第3級アミン誘導体等が挙げられる。
上記4級オニウム塩としては、テトラブチルアンモニウムブロマイド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラブチルホスホニウムブロマイド、テトラフェニルホスホニムブロマイドなどが挙げられる。
上記3級ホスフィンとしては、トリフェニルホスフィン、トリベンジルホスフィン、トリトリルホスフィンなどのトリアリールホスフィン;トリシクロヘキシルホスフィンなどのトリシクロアルキルホスフィン;トリエチルホスフィン、トリプロピルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリオクチルホスフィンなどトリアルキルホスフィンなどが挙げられる。
上記3級アミンとしては、トリエチルアミン、トリブチルアミンなどのトリアルキルアミン;ジメチルベンジルアミン、ジエチルベンジルアミンなどのジアルキルアリールアミン;トリエタノールアミンなどが挙げられる。
上記酸-エポキシ反応触媒(H)に加えて、ハイドロキノン、フェノチアジン等の重合禁止剤を存在させ、反応系を安定化させるものであってもよい。
【0042】
組成物(X)中の上述した(F)~(H)の各成分の含有量は以下のようなものとすることが好ましい。
上記エポキシ基含有化合物(F)は、(F)~(H)の合計質量に対して、10~90質量%であることが好ましい。上記下限は、20重量%であることがより好ましく、30重量%であることが更に好ましい。上記上限は、80重量%であることがより好ましく、70重量%であることが更に好ましい。
【0043】
上記カルボン酸部分エステル化合物(G)は、(F)~(H)の合計質量に対して、10~90質量%であることが好ましい。上記下限は、20重量%であることがより好ましく、30重量%であることが更に好ましい。上記上限は、80重量%であることがより好ましく、70重量%であることが更に好ましい。
【0044】
上記酸-エポキシ反応触媒(E)は、(C)~(E)の合計質量に対して、0.1~10質量%であることが好ましい。上記下限は、0.5重量%であることがより好ましく、1重量%であることが更に好ましい。上記上限は、8重量%であることがより好ましく、7重量%であることが更に好ましい。
【0045】
上述した組成物(X)は、上述したように、エステル交換反応以外の熱的に進行する化学反応を生じる組成物であり、同時に、アルキルエステル基を有するものである。すなわち、組成物(X)中の成分間で、熱的に進行する化学反応を生じ、かつ、アルキルエステル基は、このような反応に関与しないものである。
【0046】
このような組成物(X)中のアルキルエステル基は、本発明の熱硬化性樹脂組成物においては、水酸基とのエステル交換反応によって、エステル鎖を形成するものである。したがって、ポリオール化合物(A)中の水酸基に対し、アルキルエステル基が0.5~2モル当量という割合で組成物(X)中に含まれることが好ましい。
【0047】
本発明の組成物(X)は、その他の熱的に進行する化学反応がマイケル付加反応であるような組成物と、その他の熱的に進行する化学反応が酸-エポキシ付加反応であるような組成物を併用するものであっても差し支えない。すなわち、上述した(C)~(H)のすべての成分を含有するものであってもよい。
【0048】
(ポリオール化合物(A))
上記ポリオール化合物(A)は、水酸基を有する樹脂である。この水酸基が、エステル基との間にエステル交換反応を生じ、硬化反応を生じるものである。
このポリオール化合物(A)は、1分子中に2以上の水酸基を有し、エステル基との間でエステル交換反応を生じるものであれば特に限定されず、低分子量のポリオール化合物であっても、重合体等の樹脂成分であってもよく、目的に応じて適宜使い分けることができる。
【0049】
上記ポリオール化合物(A)が樹脂である場合は、アクリルポリオール樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、ウレタンポリオール樹脂、カーボネートポリオール樹脂等、熱硬化性樹脂の分野において使用される一般的な各種ポリオール樹脂を使用することができる。
なかでも、アクリルポリオール及び/又はポリエステルポリオールを使用することが特に好ましい。
ここで使用されるアクリルポリオール及び/又はポリエステルポリオールは、塗料分野において汎用される樹脂を使用することができる。
以下、これらについて詳述する。
【0050】
(A-1)アクリルポリオール
アクリルポリオールは、例えば、水酸基ビニル単量体及び当該水酸基ビニル単量体と共重合可能な他の重合性不飽和モノマー(a2)を、公知の方法により共重合することによって製造することができる。より具体的には、有機溶媒中での溶液重合法、水中での乳化重合法、水中でのミニエマルション重合法、水溶液重合法、等の重合方法を挙げることができる。
【0051】
水酸基含有ビニル単量体は、1分子中に水酸基及び重合性不飽和結合をそれぞれ1個以上有する化合物である。
このような水酸基含有ビニル単量体として上述したものを使用することができる。
【0052】
水酸基含有ビニル単量体と共重合可能な他の重合性不飽和モノマーとしては、例えば、下記モノマー(i)~(xix)等、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0053】
(i)アルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート:
例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、tert-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、等
【0054】
(ii)イソボルニル基を有する重合性不飽和モノマー:
イソボルニル(メタ)アクリレート等
(iii)アダマンチル基を有する重合性不飽和モノマー:
アダマンチル(メタ)アクリレート等
【0055】
(iv)トリシクロデセニル基を有する重合性不飽和モノマー:
トリシクロデセニル(メタ)アクリレート等
(v)芳香環含有重合性不飽和モノマー:
ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン等
(vi)アルコキシシリル基を有する重合性不飽和モノマー:
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等
【0056】
(vii)フッ素化アルキル基を有する重合性不飽和モノマー:
パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;フルオロオレフィン等
(viii)マレイミド基等の光重合性官能基を有する重合性不飽和モノマー
(ix)ビニル化合物:
N-ビニルピロリドン、エチレン、ブタジエン、クロロプレン、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル等
【0057】
(x)カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー:
(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β-カルボキシエチルアクリレート等
(xi)含窒素重合性不飽和モノマー:
(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレートとアミン化合物との付加物等
【0058】
(xii)重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー:
アリル(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等
(xiii)エポキシ基含有重合性不飽和モノマー:
グリシジル(メタ)アクリレート、β-メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等
【0059】
(xiv)分子末端がアルコキシ基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート
(xv)スルホン酸基を有する重合性不飽和モノマー:
2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-スルホエチル(メタ)アクリレート、アリルスルホン酸、4-スチレンスルホン酸等;これらスルホン酸のナトリウム塩及びアンモニウム塩等
【0060】
(xvi)リン酸基を有する重合性不飽和モノマー:
アシッドホスホオキシエチル(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシプロピル(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシポリ(オキシエチレン)グリコール(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシポリ(オキシプロピレン)グリコール(メタ)アクリレート等
【0061】
(xvii)紫外線吸収性官能基を有する重合性不飽和モノマー:
2-ヒドロキシ-4-(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-(3-アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2'-ジヒドロキシ-4-(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2'-ジヒドロキシ-4-(3-アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2-(2'-ヒドロキシ-5'-メタクリロイルオキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール等
【0062】
(xviii)紫外線安定性重合性不飽和モノマー:
4-(メタ)アクリロイルオキシ-1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン、4-(メタ)アクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-シアノ-4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1-(メタ)アクリロイル-4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1-(メタ)アクリロイル-4-シアノ-4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-クロトノイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-クロトノイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1-クロトノイル-4-クロトノイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン等
【0063】
(xix)カルボニル基を有する重合性不飽和モノマー:
アクロレイン、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、アセトアセトキシエチルメタクリレート、ホルミルスチロール、炭素数約4~約7のビニルアルキルケトン(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン)等
【0064】
上記アクリルポリオールは、エステル交換反応に寄与するようなアルキルエステル基を有するものであってもよい。
このようなエステル交換反応に寄与するようなアルキルエステル基としては、
下記一般式(4)で表される化合物
【化1】
:1~10
(式中、R、R,Rは、同一又は異なって、水素、アルキル基、カルボキシル基、アルキルエステル基又は下記R-[COOR]nで表される構造。
は、主鎖の原子数が50以下であり、主鎖中にエステル基、エーテル基、アミド基、ウレタンからなる群より選択される1又は2以上の官能基を有していてもよく、側鎖を有していてもよい脂肪族、脂環族又は芳香族アルキレン基。
は、炭素数50以下のアルキル基。)
等を挙げることができる。
【0065】
熱硬化性樹脂組成物において汎用されている(メタ)アクリル酸エステルは、一般にエステル交換反応を生じにくい。上述した一般式で表される化合物は、エステル交換反応を生じやすいため、特に好適に使用することができる。
【0066】
上記一般式(1)で表される化合物としては特に限定されず、国際公開2921/172397において開示されたもの等を使用することができる。また、これらのなかでも、メトキシカルボニルメチル(メタ)アクリレートを使用することが特に好ましい。
【0067】
本明細書において、「重合性不飽和基」は、ラジカル重合、またはイオン重合しうる不飽和基を意味する。上記重合性不飽和基としては、例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基等が挙げられる。
【0068】
上記アクリルポリオールを製造する際の水酸基含有単量体の割合は、モノマー成分の合計量を基準として、0.5~50重量%が好ましい。このような範囲内とすることで、適度な架橋反応を生じさせることができ、優れた塗膜物性を得ることができる。
上記下限は、1.0重量%であることがより好ましく、5重量%であることが更に好ましい。上記上限は、50重量%であることがより好ましく、40重量%であることが更に好ましい。
【0069】
アクリルポリオールの水酸基価は、形成される塗膜の耐水性等の観点から、1~250mgKOH/gであることが好ましい。上記下限は、2mgKOH/gであることがより好ましく、5mgKOH/gであることが更に好ましい。上記上限は、230mgKOH/gであることがより好ましく、220mgKOH/gであることが更に好ましい。
【0070】
このようなアクリルポリオールとしては、市販のものを使用することもできる。市販のものとしては特に限定されず、例えば、DIC株式会社品のアクリディックA-801-P、A-817、A-837,A-848-RN、A-814,57-773、A-829、55-129、49-394-IM、A-875-55、A-870、A-871、A-859-B、52-668-BA、WZU―591、WXU-880、BL-616、CL-1000、CL-408等を挙げることができる。
【0071】
(C-2)ポリエステルポリオール
ポリエステルポリオールは、通常、酸成分とアルコール成分とのエステル化反応又はエステル交換反応によって製造することができる。
上記酸成分としては、ポリエステル樹脂の製造に際して、酸成分として通常使用される化合物が挙げられる。上記酸成分としては、例えば、脂肪族多塩基酸、脂環族多塩基酸、芳香族多塩基酸等、並びにそれらの無水物及びエステル化物を挙げることができる。
【0072】
上記脂肪族多塩基酸並びにそれらの無水物及びエステル化物としては、一般に、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する脂肪族化合物、上記脂肪族化合物の酸無水物及び上記脂肪族化合物のエステル化物、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、オクタデカン二酸、クエン酸、ブタンテトラカルボン酸等の脂肪族多価カルボン酸;上記脂肪族多価カルボン酸の無水物;上記脂肪族多価カルボン酸の炭素数約1~約4の低級アルキルのエステル化物等、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
上記脂肪族多塩基酸としては、得られる塗膜の平滑性の観点から、アジピン酸及び/又はアジピン酸無水物であることが好ましい。
【0073】
上記脂環族多塩基酸、並びにそれらの無水物及びエステル化物は、一般に、1分子中に1個以上の脂環式構造と2個以上のカルボキシル基とを有する化合物、上記化合物の酸無水物及び上記化合物のエステル化物が挙げられる。脂環式構造は、主として4~6員環構造である。上記脂環族多塩基酸、並びにそれらの無水物及びエステル化物としては、例えば、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸、3-メチル-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、4-メチル-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸、1,3,5-シクロヘキサントリカルボン酸等の脂環族多価カルボン酸;上記脂環族多価カルボン酸の無水物;上記脂環族多価カルボン酸の炭素数約1~約4の低級アルキルのエステル化物等、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0074】
上記脂環族多塩基酸、並びにそれらの無水物及びエステル化物としては、得られる塗膜の平滑性の観点から、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸無水物、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物が好ましく、そして1,2-シクロヘキサンジカルボン酸及び/又は1,2-シクロヘキサンジカルボン酸無水物がより好ましい。
【0075】
上記芳香族多塩基酸、並びにそれらの無水物及びエステル化物は、一般に、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する芳香族化合物、上記芳香族化合物の酸無水物及び上記芳香族化合物のエステル化物であり、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4'-ビフェニルジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族多価カルボン酸;上記芳香族多価カルボン酸の無水物;上記芳香族多価カルボン酸の炭素数約1~約4の低級アルキルのエステル化物等、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
上記芳香族多塩基酸、並びにそれらの無水物及びエステル化物としては、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸、及び無水トリメリット酸が好ましい。
【0076】
また、上記酸成分として、上記脂肪族多塩基酸、脂環族多塩基酸及び芳香族多塩基酸以外の酸成分、例えば、ヤシ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、麻実油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸、魚油脂肪酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、桐油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸等の脂肪酸;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、安息香酸、p-tert-ブチル安息香酸、シクロヘキサン酸、10-フェニルオクタデカン酸等のモノカルボン酸;乳酸、3-ヒドロキシブタン酸、3-ヒドロキシ-4-エトキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸等、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0077】
上記アルコール成分としては、1分子中に2個以上の水酸基を有する多価アルコール、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,2-ブタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチルトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、3-メチル-4,3-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,4-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、ジメチロールプロピオン酸等の2価アルコール;上記2価アルコールにε-カプロラクトン等のラクトン化合物を付加したポリラクトンジオール;ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート等のエステルジオール化合物;ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリエーテルジオール化合物;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン、トリグリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸、ソルビトール、マンニット等の3価以上のアルコール;上記3価以上のアルコールにε-カプロラクトン等のラクトン化合物を付加させたポリラクトンポリオール化合物;グリセリンの脂肪酸エステル化物等が挙げられる。
【0078】
また、上記アルコール成分として、上記多価アルコール以外のアルコール成分、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ステアリルアルコール、2-フェノキシエタノール等のモノアルコール;プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、「カージュラE10」(商品名、HEXIONSpecialtyChemicals社製、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステル)等のモノエポキシ化合物と酸とを反応させて得られたアルコール化合物等が挙げられる。
【0079】
ポリエステルポリオールは、特に限定されず、通常の方法に従って製造されうる。例えば、上記酸成分とアルコール成分とを、窒素気流中、約150~約250℃で、約5~約10時間加熱し、上記酸成分とアルコール成分とのエステル化反応又はエステル交換反応を実施することにより、ポリエステルポリオールを製造することができる。
【0080】
本発明のポリオールは、上述したポリアクリルポリオール及びポリエステルポリオールの両方を併用して使用するものであってもよい。
【0081】
(C-3)低分子量ポリオール
上記ポリオールとしては、上述したような樹脂に限られるものではなく、低分子量ポリオール(具体的には分子量2,000以下)を使用することもできる。
低分子量ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,2-ブタンジオール、1,1,1-トリメチロールプロパン、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチルトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、3-メチル-4,3-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,4-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、ジメチロールプロピオン酸等の2価アルコール;上記2価アルコールにε-カプロラクトン等のラクトン化合物を付加したポリラクトンジオール;ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート等のエステルジオール化合物;ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリエーテルジオール化合物;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン、トリグリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸、ソルビトール、マンニット等の3価以上のアルコール等を挙げることができる。
【0082】
(エステル交換触媒(E))
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、エステル反応を硬化反応の一部とするものであるから、エステル交換触媒(E)を配合することが必要である。このようなエステル交換触媒(E)としては、公知の任意のものを使用することができるが、上述したマイケル反応触媒(D)と併用して使用するものであることから、これらを組み合わせることによって、触媒の活性が低下しないような組み合わせを選択して使用する必要がある。
【0083】
一般に、マイケル反応触媒(D)は、塩基性化合物であることが多いため、エステル交換触媒(E)として酸性化合物を使用すると、これらを併用することで、触媒活性が低下する可能性がある点で好ましくない。
【0084】
上述した観点から、上記エステル交換触媒(E)は金属化合物であることが好ましい。
当該金属化合物触媒は、金属種の選定や、その他の化合物との併用等によって、エステル交換反応性を得ることができる。更に、樹脂組成との組み合わせによって、適宜、必要な性能を得ることができる点で好ましい。
【0085】
上記金属化合物触媒は、亜鉛、スズ、チタン、アルミニウム、ジルコニウム及び鉄からなる群より選択される少なくとも1の金属元素を含む化合物(E-1)であることが好ましい。このような化合物は、好適なエステル交換反応性を有する点で好ましい。これらの中でも、亜鉛、ジルコニウムが特に優れたエステル交換反応性を有する点で好ましいものである。
【0086】
上述した化合物のなかでも、ジルコニウム化合物は、極めて優れたエステル交換能を有しており、これを使用することで、上述した熱硬化性樹脂組成物を容易に得ることができる点で特に好ましいものである。
なお、ジルコニウム化合物をエステル交換触媒として使用した場合、以下に詳述する化合物(E-2)を併用しない場合でも、非常に高いエステル交換能が得られる点でも好ましい。
【0087】
上記金属化合物触媒としては、例えば、酢酸亜鉛、アクリル酸亜鉛、亜鉛アセチルアセトネート、トリフルオロメタンスルホン酸亜鉛、酸化亜鉛、アルミニウムイソプロピレート、塩化鉄、ジチオカルバミン酸亜鉛、テトライソプロピルチタネート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクテート、モノブチル錫酸、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセチルアセトネート、ジルコニアなどのような種々の金属化合物等を挙げることができる。
更に、亜鉛クラスター触媒(例えば、東京化成工業株式会社製のZnTAC24(商品名)等を使用することもできる。
更に、上述した化合物のうち、2種以上を併用して使用するものであってもよい。
【0088】
上記金属化合物触媒としては、金属塩化合物が特に好ましく、アニオン成分として、金属アセチルアセトネートを使用すると、同種金属化合物よりも優れたエステル交換能が得られる傾向がある点で好ましい。例えば、亜鉛アセチルアセトネートやジルコニウムアセチルアセトネートは、特に好適に使用することができる。特に、ジルコニウムアセチルアセトネートは、極めて良好な触媒性能を発揮するものである。
【0089】
また、酸化亜鉛を用いる場合には、アセチルアセトンに分散させたものを用いるようにすることが好適である。酸化亜鉛をアセチルアセトンに分散させることで、亜鉛アセチルアセトネートが生成すると考えられる。
上記酸化亜鉛とアセチルアセトンとは、1:0.5~1:10(重量比)の割合で含有することが好ましい。このような割合で配合することで、特に好適な結果を得ることができる。
上記下限は、1:0.8であることがより好ましく、1:1であることがさらに好ましい。上記上限は、1:5であることがより好ましく、1:3であることがさらに好ましい。
【0090】
上記金属化合物を触媒として使用する場合、更に、有機リン化合物、尿素、アルキル化尿素、チオ尿素、アルキル化チオ尿素、スルホキシド化合物、第4級アンモニウム化合物、第4級ホスホニウム化合物、及び、ピリジン,キノリン,イソキノリン,フェナントロリン、及びイミダゾール化合物それらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1の化合物(E-2)を併用すると、触媒性能が向上する点でより好ましい。
これらの化合物を併用することで活性化された金属化合物を使用すると、上述した硬化開始温度及びゲル分率を得ることができる点で特に好ましいものである。
【0091】
このような効果が得られる作用は明らかではないが、金属化合物に化合物(B-2)が配位することで、触媒活性を向上させているものと推測される。
したがって、化合物(B-2)としては、金属化合物に配位することができるような化合物を選択することが好ましい。
【0092】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、ポリオール化合物(A)、エステル交換触媒(B)、エステル交換反応以外の反応を生じさせる組成物(X)の合計量に対して、ポリオール化合物(A)を10~90質量%の割合で含有することが好ましい。
上記下限は、20重量%であることがより好ましく、30重量%であることが更に好ましい。
上記上限は、80重量%であることがより好ましく、75重量%であることが更に好ましい。
【0093】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、ポリオール化合物(A)、エステル交換触媒(B)、エステル交換反応以外の反応を生じさせる組成物(X)の合計量に対して、エステル交換触媒(B)を0.1~10質量%の割合で含有することが好ましい。
上記下限は、0.5重量%であることがより好ましく、1重量%であることが更に好ましい。
上記上限は、8重量%であることがより好ましく、7重量%であることが更に好ましい。
【0094】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、ポリオール化合物(A)、エステル交換触媒(B)、エステル交換反応以外の反応を生じさせる組成物(X)の合計量に対して、組成物(X)を10~90質量%の割合で含有することが好ましい。
上記下限は、15重量%であることがより好ましく、20重量%であることが更に好ましい。
上記上限は、80重量%であることがより好ましく、70重量%であることが更に好ましい。
【0095】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、更に、溶媒を含有するものであってもよい。なお、ここでいう溶媒とは、上述した(A)~(E)の必須成分に該当しないような揮発性成分であり、化学分野において一般的に使用されるような溶媒を意味する。
上記溶媒を使用した場合、揮発性成分の使用量を48重量%以下のハイソリッドタイプの組成物とすることができる。また、溶媒を含有しない組成物とすることもできる。上記揮発性成分の使用量は、46重量%以下であることがより好ましく、45重量%以下であることがもっとも好ましい。
【0096】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、溶媒使用量が50重量%以下で、かつ、25℃での粘度が500mPa・s以下であることが好ましい。これによって、溶媒使用量が少ないにもかかわらず、良好な塗装が可能な適正な粘度を得ることができる。上記粘度は、400mPa・S以下であることがより好ましく、最も好ましくは、200mPa・s以下である。
【0097】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、上述した活性水素含有化合物(C)を含有するものである場合、当該活性水素含有化合物(C)を反応溶媒として使用し、ポリオール化合物(A)の合成を行うものであってもよい。すなわち、ポリオール化合物(A)は、溶液状態で使用することが好ましいため、通常は溶液重合で重合した樹脂を使用する。この場合の反応溶媒として活性水素含有化合物(C)を使用すると、使用時に揮散させる汎用溶媒を使用する必要がなく、組成物のハイソリッド化において好ましいものとなる。
【0098】
このようなポリオール化合物(A)の合成を行う場合、ポリオール化合物(A)は、アクリルポリオールであることが特に好ましい。アクリルポリオールの合成において、活性水素含有化合物(C)は、アクリルポリオール中に取り込まれることはないためである。
【0099】
活性水素含有化合物(C)を溶媒として使用するポリオール化合物(A)の合成は、特に限定されず、一般的な合成方法・合成条件に従って行うことができる。
【0100】
本発明の熱硬化性組成物は、上述した樹脂成分に加えて、更に、塗料や接着剤の分野において一般的に使用されるその他の架橋剤を併用して使用するものであってもよい。使用できる架橋剤としては特に限定されず、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、シラン化合物等を挙げることができる。また、ビニルエーテル、アニオン重合性単量体、カチオン重合性単量体、ラジカル重合性単量体等を併用するものであってもよい。これらの併用した架橋剤の反応を促進させるための硬化剤を併用するものであってもよい。
【0101】
また、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、上述した各成分に該当しないようなアルキルエステル基を有する化合物を併用するものであってもよい。上述したように、本発明においてはエステル交換反応が硬化反応を占めるものである。よって、このようなエステル交換反応に関与するような化合物であって、上述した(A)~(H)の各成分に該当しないような化合物を併用することもできる。このような化合物としては特に限定されず、国際公開2020/204089、国際公開2021/172307等に記載された化合物や樹脂のうち、上述した(A)~(H)の各成分に該当しないものを挙げることができる。
【0102】
なお、上述したその他架橋剤は必須ではなく、本発明の熱硬化性樹脂組成物はこれを含有しないものであっても、良好な硬化性を得ることができる点で好ましいものである。
【0103】
上記架橋剤がポリイソシアネート化合物及び/又はメラミン樹脂である場合、樹脂成分(A)と架橋剤との合計量に対する配合量(すなわち、(架橋剤量)/(架橋剤量+樹脂成分量)が0.01~50重量%であることが好ましい。このような配合量の範囲であることで、エステル交換反応による硬化反応と他の硬化剤による硬化反応とを同時に生じさせるという点で好ましい。
上記下限は、0.01重量%であることがより好ましく、1重量%であることが更に好ましい。上記上限は、30重量%であることがより好ましく、20重量%であることが更に好ましい。
【0104】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性塗料、熱硬化性接着剤等の分野において好適に使用することができる。更に、常乾型の硬化性樹脂組成物として使用することもできる。
【0105】
本発明の熱硬化性樹脂組成物において、光硬化型の成分を併用して光反応と熱反応の2つの硬化系を併用するものとすることもできる。このような組成物とする場合には、光重合開始剤を併用するものであってもよい。なお、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、このような光反応併用系ではない場合、光重合開始剤を含有しないことが好ましい。
【0106】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、本明細書の実施例に記載した方法で測定した硬化開始温度が120℃以下であることが好ましい。このように低温での硬化を開始させることができるため、硬化時のエネルギー使用量を低減することができる点で好ましい。また、常乾型の熱硬化性樹脂組成物として使用することもできる。上記硬化開始温度は、110℃以下であることがより好ましく、100℃以下であることが更に好ましい。
【0107】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、120℃30分の条件で硬化したときのゲル分率が80%以上であることが好ましい。このような硬化性能を有するものとすることで、充分な低温硬化を得ることができ、硬化後の樹脂物性も良好なものとすることができる点で好ましい。
【0108】
熱硬化性塗料として使用する場合は、上述した各成分以外に、塗料分野において一般的に使用される添加剤を併用するものであってもよい。例えば、レベリング剤、消泡剤、着色顔料、体質顔料、光輝性顔料等、顔料分散剤、レオロジーコントロール剤、UV吸収剤、並びにそれらの任意の組み合わせを併用してもよい。
【0109】
顔料を使用する場合、樹脂成分の合計固形分100重量%を基準として、好ましくは合計で1~500重量%の範囲で含むことが好ましい。上記下限はより好ましくは3重量%であり、更に好ましくは5重量部である。上記上限はより好ましくは400重量%であり、更に好ましくは300重量%である。
【0110】
上記着色顔料としては、例えば、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、モリブデンレッド、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリン系顔料、スレン系顔料、ペリレン系顔料、ジオキサジン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料等、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0111】
上記体質顔料としては、例えば、クレー、カオリン、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、アルミナホワイト等が挙げられ、硫酸バリウム及び/又はタルクが好ましく、そして硫酸バリウムがより好ましい。
【0112】
上記光輝性顔料としては、例えば、アルミニウム(蒸着アルミニウムを含む)、銅、亜鉛、真ちゅう、ニッケル、酸化アルミニウム、雲母、酸化チタン又は酸化鉄で被覆された酸化アルミニウム、酸化チタン又は酸化鉄で被覆された雲母、ガラスフレーク、ホログラム顔料等、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。上記アルミニウム顔料には、ノンリーフィング型アルミニウム及びリーフィング型アルミニウムが含まれる。
【0113】
上記着色顔料は、顔料分散樹脂により分散された状態で、熱硬化性樹脂組成物に配合されることが好ましい。着色顔料の量は、顔料の種類等によって変化しうるが、一般には、顔料分散樹脂中に含まれる樹脂成分の固形分100重量部に対して、好ましくは約0.1~約300重量部、そしてより好ましくは約1~約150重量部の範囲内である。
【0114】
上記熱硬化性塗料は、所望により、有機溶剤、増粘剤、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、可塑剤、表面調整剤、沈降防止剤、分散剤、色分かれ防止剤、レオロジーコントロール剤、レベリング剤、基材湿潤剤、スリップ剤等の塗料用添加剤をさらに含有するものであってもよい。
【0115】
上記増粘剤としては、例えば、ケイ酸塩、金属ケイ酸塩、モンモリロナイト、コロイド状アルミナ等の無機系増粘剤;(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体、ポリアクリル酸ソーダ等のポリアクリル酸系増粘剤;1分子中に親水性部分と疎水性部分を有し、水性媒体中において、上記疎水性部分が塗料中の顔料やエマルション粒子の表面に吸着する、上記疎水性部分同士が会合する等により増粘作用を示す会合型増粘剤;カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等の繊維素誘導体系増粘剤;カゼイン、カゼイン酸ソーダ、カゼイン酸アンモニウム等のタンパク質系増粘剤;アルギン酸ソーダ等のアルギン酸系増粘剤;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルベンジルエーテル共重合体等のポリビニル系増粘剤;プルロニック(登録商標)ポリエーテル、ポリエーテルジアルキルエステル、ポリエーテルジアルキルエーテル、ポリエーテルエポキシ変性物等のポリエーテル系増粘剤;ビニルメチルエーテル-無水マレイン酸共重合体の部分エステル等の無水マレイン酸共重合体系増粘剤;ポリアマイドアミン塩等のポリアマイド系増粘剤等、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0116】
上記ポリアクリル酸系増粘剤は市販されており、例えば、ロームアンドハース社製の「ACRYSOLASE-60」、「ACRYSOLTT-615」、「ACRYSOLRM-5」(以上、商品名)、サンノプコ社製の「SNシックナー613」、「SNシックナー618」、「SNシックナー630」、「SNシックナー634」、「SNシックナー636」(以上、商品名)等が挙げられる。
【0117】
また、上記会合型増粘剤は市販されており、例えば、ADEKA社製の「UH-420」、「UH-450」、「UH-462」、「UH-472」、「UH-540」、「UH-752」、「UH-756VF」、「UH-814N」(以上、商品名)、ロームアンドハース社製の「ACRYSOLRM-8W」、「ACRYSOLRM-825」、「ACRYSOLRM-2020NPR」、「ACRYSOLRM-12W」、「ACRYSOLSCT-275」(以上、商品名)、サンノプコ社製の「SNシックナー612」、「SNシックナー621N」、「SNシックナー625N」、「SNシックナー627N」、「SNシックナー660T」(以上、商品名)等が挙げられる。
【0118】
上記顔料分散樹脂としては、アクリル系顔料分散樹脂を使用することが好ましい。より具体的には、例えば、重合性不飽和モノマーを、親水性有機溶剤の存在下で、重合開始剤により重合することにより得られたアクリル樹脂を挙げることができる。
【0119】
上記重合性不飽和モノマーとしては、上述した樹脂の合成において例示した化合物を挙げることができ、適宜組み合わせて用いられうる。
上記顔料分散樹脂は、水に溶解するか、又は分散できる樹脂であることが好ましく、具体的には、好ましくは10~100mgKOH/g、そしてより好ましくは20~70mgKOH/gの水酸基価と、好ましくは10~80mgKOH/g、そしてより好ましくは20~60mgKOH/gの酸価とを有する。
【0120】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、上記樹脂及び顔料分散樹脂の固形分質量の合計を基準として、顔料分散樹脂を、固形分で、好ましくは5~70質量%、そしてより好ましくは7~61質量%含むことが好ましい。上記範囲は、熱硬化性樹脂組成物の貯蔵安定性と、本発明の着色塗料組成物を用いて形成される着色塗膜の仕上がり性、耐水性、中研ぎ性等との観点から好ましい。
【0121】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、水性組成物とすることもできる。水性とする方法は特に限定されず、上述した成分を使用して一般的な方法によって水性化することができる。水性化した場合でも、本発明のエステル交換触媒を使用することで好適にエステル交換反応を進行させることができる。
【0122】
上記熱硬化性樹脂組成物を適用することができる被塗物としては、特に制限されず、例えば、乗用車、トラック、オートバイ、バス等の自動車車体の外板部;自動車部品;携帯電話、オーディオ機器、等の家庭電気製品、建築材料、家具、接着剤、フィルムやガラスのコーティング剤等、様々な例を挙げることができる。また、高温短時間硬化によって塗膜を形成するプレコートメタル、金属缶への塗装を挙げることもできる。更に、電着塗料、接着剤、パーティクルボード等への使用も挙げることができる。
【0123】
上記熱硬化性樹脂組成物は、電着塗料組成物として使用することもできる。電着塗料としては、カチオン電着塗料とアニオン電着塗料とを挙げることができるが、これらのいずれとすることもできる。
【0124】
上記被塗物は、上記金属材料及びそれから成形された車体等の金属表面に、リン酸塩処理、クロメート処理、複合酸化物処理等の表面処理が施されたものであってもよく、また、塗膜を有する被塗物であってもよい。
上記塗膜を有する被塗物としては、基材に所望により表面処理を施し、その上に下塗り塗膜が形成されたもの等を挙げることができる。特に、電着塗料によって下塗り塗膜が形成された車体が好ましく、カチオン電着塗料によって下塗り塗膜が形成された車体がより好ましい。
【0125】
上記被塗物は、上記プラスチック材料、それから成形された自動車部品等のプラスチック表面に、所望により、表面処理、プライマー塗装等がなされたものであってもよい。また、上記プラスチック材料と上記金属材料とが組み合わさったものであってもよい。
【0126】
上記熱硬化性樹脂組成物の塗装方法としては、特に制限されず、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、回転霧化塗装、カーテンコート塗装等が挙げられ、エアスプレー塗装、回転霧化塗装等が好ましい。塗装に際して、所望により、静電印加してもよい。上記塗装方法により、上記水性塗料組成物からウェット塗膜を形成することができる。
【0127】
上記ウェット塗膜は、加熱することにより硬化させることができる。当該硬化は、公知の加熱手段、例えば、熱風炉、電気炉、赤外線誘導加熱炉等の乾燥炉により実施することができる。上記ウェット塗膜は、好ましくは約80~約180℃、より好ましくは約100~約170℃、そしてさらに好ましくは約120~約160℃の範囲の温度で、好ましくは約10~約60分間、そしてより好ましくは約15~約40分間加熱することにより硬化させることができる。また、80~140℃での低温硬化にも対応することができる点で好ましいものである。
【0128】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、ウェットオンウェットでの複層塗膜形成方法に使用することもできる。この場合、本発明の熱硬化性樹脂組成物からなる塗料を塗装した後、硬化を行わない状態でその上に別の塗料組成物を塗装し、これらの2層の塗膜を同時に焼き付けることによって複層塗膜を形成する方法等を挙げることができる。また、このような塗装方法においては、3層以上の複層塗膜として、そのうち少なくとも1の層を本発明の熱硬化性樹脂組成物によって形成するものであってもよい。
【0129】
このような複層塗膜の形成に本発明の熱硬化性樹脂組成物を使用する場合、組み合わせて使用する塗料は、水系であってもよいし、溶媒系であってもよい。更に、その硬化系は、上述したようなエステル交換反応による硬化系であってもよいし、メラミン硬化、イソシアネート硬化等のその他の硬化系であってもよい。
【0130】
なお、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、塗料分野において使用する場合は平滑性や耐水性・耐酸性等の性能を有する充分な硬化性能が必要とされる。一方、接着剤や粘着剤等の分野において使用する場合は、塗料において要求されるほどの高い硬化性能は必要とされない。本発明の熱硬化性樹脂組成物は、塗料として使用できるレベルのものとすることが可能であるが、このような水準に到達しない組成物であっても、接着剤や粘着剤等の分野においては使用できる場合がある。
【0131】
本発明の熱硬化型樹脂組成物を三次元架橋することによって硬化膜が得られる。このような硬化膜は、塗料・接着剤として使用することができるような充分な性能を有したものである。
上記硬化膜は、上述した複層塗膜の形成方法によって形成された硬化膜も包含するものである。
【実施例0132】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお文中、部は重量部を表す。
【0133】
合成例1 エステル化合物A
トリメチロールプロパントリアクリレート40部、マロン酸ジメチル55部、炭酸カリウム56部、18-クラウン6-エーテル1.5部、テトラヒドロフラン95部を混合し、50℃で3時間撹拌した。反応終了後、シクロヘキサンと水を投入し、水洗した。有機層は飽和塩化アンモニウム水溶液で中和後、2度水洗し、得られた有機層を減圧下濃縮することで、エステル化合物Aを得た。
【0134】
合成例2 モノマーA
クロロ酢酸メチル90部、炭酸カリウム130部、ジメチルホルムアミド250部を混合し、混合液に対し、メタクリル酸78部を30~40℃で滴下した。滴下終了後、トリエチルアミン8部を投入し、50℃で4時間撹拌した。反応終了後、水500部で水洗した。有機層にトルエン300部を投入し、水300部で4度水洗した。得られた有機層を減圧下蒸留し、モノマーAを得た。
【0135】
合成例3 ポリマー溶液A
n-ブチルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルNB)28部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート35部、スチレン7部をモノマー混合液とし、開始剤として1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(日本油脂(株) パーオクタO)3.5部をアセト酢酸メチルに溶解し、開始剤溶液とした。撹拌可能なフラスコにアセト酢酸メチルを30部入れ、窒素封入しながら、モノマー溶液および開始剤溶液を滴下した。この時の重合温度を100℃とした。滴下には2時間で行い、更に100℃で熟成を4時間行い、ポリマー溶液Aを得た。重量平均分子量は17,000、分散度は2.8であった。
【0136】
合成例4 ポリマー溶液B
n-ブチルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルNB)28部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート35部、スチレン7部をモノマー混合液とし、開始剤として1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(日本油脂(株) パーオクタO)3.5部をマロン酸ジメチルに溶解し、開始剤溶液とした。撹拌可能なフラスコにマロン酸ジメチルを30部入れ、窒素封入しながら、モノマー溶液および開始剤溶液を滴下した。この時の重合温度を100℃とした。滴下には2時間で行い、更に100℃で熟成を4時間行い、ポリマー溶液Bを得た。重量平均分子量は24,000、分散度は3.3であった。
【0137】
合成例5 ポリマー溶液C
n-ブチルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルNB)20部、モノマーA15部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート10部、4-ヒドロキシブチルアクリレート25部、スチレン30部をモノマー混合液とし、開始剤として1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(日本油脂(株) パーオクタO)5部をアセト酢酸メチルに溶解し、開始剤溶液とした。撹拌可能なフラスコにアセト酢酸メチルを43部入れ、窒素封入しながら、モノマー溶液および開始剤溶液を滴下した。この時の重合温度を100℃とした。滴下には2時間で行い、更に100℃で熟成を4時間行い、ポリマー溶液Cを得た。重量平均分子量は14,000、分散度は4.1であった。
【0138】
合成例6 ポリマー溶液D
n-ブチルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルNB)20部、モノマーA15部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート10部、4-ヒドロキシブチルアクリレート25部、スチレン30部をモノマー混合液とし、開始剤として1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(日本油脂(株) パーオクタO)5部をマロン酸ジメチルに溶解し、開始剤溶液とした。撹拌可能なフラスコにマロン酸ジメチルを43部入れ、窒素封入しながら、モノマー溶液および開始剤溶液を滴下した。この時の重合温度を100℃とした。滴下には2時間で行い、更に100℃で熟成を4時間行い、ポリマー溶液Dを得た。重量平均分子量は21,000、分散度は3.8であった。
【0139】
合成例7 ポリマー溶液E
n-ブチルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルNB)28部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート35部、スチレン7部をモノマー混合液とし、開始剤として1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(日本油脂(株) パーオクタO)3.5部を酢酸ブチルに溶解し、開始剤溶液とした。撹拌可能なフラスコに酢酸ブチルを30部入れ、窒素封入しながら、モノマー溶液および開始剤溶液を滴下した。この時の重合温度を100℃とした。滴下には2時間で行い、更に100℃で熟成を4時間行い、ポリマー溶液Eを得た。重量平均分子量は16,000、分散度は2.3であった。
【0140】
合成例8 ポリマー溶液F
n-ブチルメタクリレート(共栄社化学(株)品:ライトエステルNB)40部、4-ヒドロキシブチルアクリレート50部、スチレン10部をモノマー混合液とし、開始剤として1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(日本油脂(株) パーオクタO)5部を酢酸ブチルに溶解し、開始剤溶液とした。撹拌可能なフラスコに酢酸ブチルを100部入れ、窒素封入しながら、モノマー溶液および開始剤溶液を滴下した。この時の重合温度を100℃とした。滴下には2時間で行い、更に100℃で熟成を4時間行い、ポリマー溶液Fを得た。重量平均分子量は11,000、分散度は2.2であった。
【0141】
なお、上記表中の塗膜評価方法は、以下の様な方法で行った。
塗膜状態
焼付け後の塗膜を指触及び目視にて表面状態を観察した。
◎ : 光沢があり、表面状態が滑らかなもの
○ : 僅かにユズ肌が見られるもの
△ : ユズ肌、ワキが見られ、光沢が無いもの
× : 光沢が無く、表面の凹凸、ユズ肌、ワキが酷いもの
― : 十分な硬化が認められないもの
【0142】
キシレンラビング
焼き付け後の塗板に、キシレンを染み込ませた薬方ガーゼで10回擦った。キシレンを乾燥後、表面状態を目視で観察した。
◎:全く変化が無かったもの
〇:僅かにキズが付いたもの
△:僅かに溶解したもの
×:表面が白化、溶解したもの
【0143】
ゲル分率
実施例で得られた塗膜について、ソックスレー抽出法によりアセトン還流中で30分間溶解を行い、塗膜の残存重量%をゲル分率として測定した。
ゲル分率は0~40%を実用に耐えられないものとして×とした。
ゲル分率は40~60%を一定の硬化が認められるものとして△とした。
ゲル分率は60~80%を実用に耐えるものとして○とした。
ゲル分率は80~100%を性能が優れているものとして◎とした。
【0144】
剛体振り子型物性試験
エーアンドディ社製剛体振り子型物性試験器(型番 RPT-3000W)を用いて、昇温速度3℃/分で180℃まで昇温しその時の周期及び対数減衰率の変化を求めた。特に塗膜の硬化状態を確認するために用いた。
振り子:FRB-100
膜厚(WET):100μm
【0145】
上記硬化開始温度は、3℃/minの昇温条件で剛体振り子試験を実施した際の周期の減少開始温度を指し、図26のようにして硬化開始点を測定することにより求めた値である。
【0146】
なお、本実施例中、重量平均分子量および分散度は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定した、ポリスチレン換算分子量の値である。カラムはGPC KF-804L(昭和電工(株)製)、溶剤はテトラヒドロフランを使用した。
【0147】
【表1】
【0148】
【表2】
【0149】
【表3】
【0150】
表1~3の結果から、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、ハイソリッド化を図りつつ、良好な硬化性能を有するものであることが明らかである。さらに、マイケル付加反応を利用した表1,表2の熱硬化性樹脂組成物においては、硬化開始温度が低い熱硬化性樹脂組成物とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0151】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、ハイソリッドとすることができ、かつ、種々の硬化条件に適応させることができ、汎用性が高い熱硬化性樹脂組成物である。

図1
図2
図3
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