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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023077590
(43)【公開日】2023-06-06
(54)【発明の名称】管理装置および管理方法
(51)【国際特許分類】
   B60L 58/40 20190101AFI20230530BHJP
【FI】
B60L58/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021190921
(22)【出願日】2021-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山脇 翔太
(72)【発明者】
【氏名】尾畑 功治
【テーマコード(参考)】
5H125
【Fターム(参考)】
5H125AA12
5H125AB01
5H125AC07
5H125AC12
5H125BC05
5H125BD02
5H125CA18
5H125EE27
5H125EE33
(57)【要約】
【課題】作業車両に搭載された燃料電池が出力すべき電力を適切に決定する。
【解決手段】電力量算出部は、作業現場における作業車両の走行ルートと、燃料電池による発電電力とに基づいて、走行ルートを走行するためのバッテリの必要電力量を算出する。指示部は、バッテリの残量が必要電力量を下回る場合に、燃料電池の発電電力によってバッテリの残量が必要電力量以上に充電されるまでの待機を作業車両に指示する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池とバッテリとを備える作業車両の管理装置であって、
作業現場における前記作業車両の走行ルートと、前記燃料電池による発電電力とに基づいて、前記走行ルートを走行するための前記バッテリの必要電力量を算出する電力量算出部と、
前記バッテリの残量が前記必要電力量を下回る場合に、前記燃料電池の発電電力によって前記バッテリの残量が前記必要電力量以上に充電されるまでの待機を前記作業車両に指示する指示部と、
を備える管理装置。
【請求項2】
前記指示部は、前記バッテリの残量が前記必要電力量以上である場合に、前記走行ルートの走行を前記作業車両に指示する
請求項1に記載の管理装置。
【請求項3】
前記電力量算出部は、前記走行ルートの走行に要する負荷と前記燃料電池による発電電力とに基づいて、前記走行ルートを走行するための前記バッテリの必要電力量を算出する
請求項1または請求項2に記載の管理装置。
【請求項4】
作業現場における前記作業車両の走行ルートを生成するルート生成部
を備える請求項1から請求項3の何れか1項に記載の管理装置。
【請求項5】
前記ルート生成部は、前記走行ルートを含む複数の走行ルートを生成し、
前記電力量算出部は、前記複数の走行ルートそれぞれの必要電力量を算出し、
前記指示部は、
前記バッテリの残量が所定の基準下限値以上である場合に、前記複数の走行ルートの何れか1つの走行を前記作業車両に指示し、
前記バッテリの残量が前記基準下限値を下回り、かつ前記バッテリの残量が前記複数の走行ルートに係る必要電力量のうち最も小さいもの以上である場合に、前記最も小さい必要電力量に係る走行ルートの走行を前記作業車両に指示する
請求項4に記載の管理装置。
【請求項6】
前記ルート生成部は、前記走行ルートを含む複数の走行ルートを生成し、
前記電力量算出部は、前記複数の走行ルートそれぞれの必要電力量を算出し、
前記指示部は、
前記バッテリの残量が所定の基準上限値以下である場合に、前記複数の走行ルートの何れか1つの走行を前記作業車両に指示し、
前記バッテリの残量が前記基準上限値を上回る場合に、前記複数の走行ルートのうち前記必要電力量が最も大きい走行ルートの走行を前記作業車両に指示する
請求項4または請求項5に記載の管理装置。
【請求項7】
前記指示部は、
前記作業車両が搭載する水素ガスの残量が所定の補給閾値を下回る場合に、前記水素ガスの補給を前記作業車両に指示し、
前記水素ガスの残量が前記補給閾値以上であり、かつ前記バッテリの残量が前記必要電力量以上である場合に、前記走行ルートの走行を前記作業車両に指示する
請求項1から請求項6の何れか1項に記載の管理装置。
【請求項8】
燃料電池とバッテリとを備える作業車両の管理方法であって、
作業現場における前記作業車両の走行ルートと、前記燃料電池による発電電力とに基づいて、前記走行ルートを走行するための前記バッテリの必要電力量を算出するステップと、
前記バッテリの残量が前記必要電力量を下回る場合に、前記燃料電池の発電電力によって前記バッテリの残量が前記必要電力量以上に充電されるまでの待機を前記作業車両に指示するステップと、
を備える管理方法。
【請求項9】
前記バッテリの残量が前記必要電力量以上である場合に、前記走行ルートの走行を前記作業車両に指示するステップ
を備える請求項8に記載の管理方法。
【請求項10】
前記必要電力量を算出するステップで、前記走行ルートの走行に要する負荷と前記燃料電池による発電電力とに基づいて、前記走行ルートを走行するための前記バッテリの必要電力量を算出する
請求項8または請求項9に記載の管理方法。
【請求項11】
作業現場における前記作業車両の走行ルートを生成するステップ
を備える請求項8から請求項10の何れか1項に記載の管理方法。
【請求項12】
前記走行ルートを生成するステップで、前記走行ルートを含む複数の走行ルートを生成し、
前記必要電力量を算出するステップで、前記複数の走行ルートそれぞれの必要電力量を算出し、
前記走行を指示するステップで、前記バッテリの残量が所定の基準下限値以上である場合に、前記複数の走行ルートの何れか1つの走行を前記作業車両に指示し、
前記走行を指示するステップで、前記バッテリの残量が前記基準下限値を下回り、かつ前記バッテリの残量が前記複数の走行ルートに係る必要電力量のうち最も小さいもの以上である場合に、前記最も小さい必要電力量に係る走行ルートの走行を前記作業車両に指示する
請求項11に記載の管理方法。
【請求項13】
前記走行ルートを生成するステップで、前記走行ルートを含む複数の走行ルートを生成し、
前記必要電力量を算出するステップで、前記複数の走行ルートそれぞれの必要電力量を算出し、
前記走行を指示するステップで、前記バッテリの残量が所定の基準上限値以下である場合に、前記複数の走行ルートの何れか1つの走行を前記作業車両に指示し、
前記走行を指示するステップで、前記バッテリの残量が前記基準上限値を上回る場合に、前記複数の走行ルートのうち前記必要電力量が最も大きい走行ルートの走行を前記作業車両に指示する
請求項11または請求項12に記載の管理方法。
【請求項14】
前記作業車両が搭載する水素ガスの残量が所定の補給閾値を下回る場合に、前記水素ガスの補給を前記作業車両に指示するステップ
を備え、
前記走行を指示するステップで、前記水素ガスの残量が前記補給閾値以上であり、かつ前記バッテリの残量が前記必要電力量以上である場合に、前記走行ルートの走行を前記作業車両に指示する
請求項11から請求項13の何れか1項に記載の管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、管理装置および管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水素ガスを燃料として用いる燃料電池を搭載する作業車両が検討されている。燃料電池で駆動する作業車両は通常、燃料電池の搭載量を抑え、また降坂における回生電力を吸収させるために、バッテリを備える。そのため、作業車両の制御装置は、燃料電池とバッテリのエネルギーを適切に分配するエネルギーマネジメントを行う必要がある。
【0003】
特許文献1には、利用者の要求に応じて利用者を乗車させて所定エリアを走行する自動走行車両のフリートを管理するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2019/124539号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電源システムの稼働方法として、レンジエクステンダ方式が知られている。レンジエクステンダ方式は、燃料電池から常に一定の電力を出力させ、作業車両の駆動に必要な電力と燃料電池が出力する電力との差分を、バッテリの充電または放電で賄う方式である。つまり、作業車両は、例えば登坂時に、燃料電池の発電電力に加えてバッテリからのアシスト電力を用いて走行する。そのため、管理装置は、作業車両に走行ルートを割り当てるときに、水素ガスの残量のみならずバッテリの残量も管理する必要がある。
本開示の目的は、燃料電池とバッテリとを備える作業車両による作業現場における走行を管理することができる管理装置および管理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、管理装置は、燃料電池とバッテリとを備える作業車両の管理装置であって、作業現場における前記作業車両の走行ルートと、前記燃料電池による発電電力とに基づいて、前記走行ルートを走行するための前記バッテリの必要電力量を算出する電力量算出部と、前記バッテリの残量が前記必要電力量を下回る場合に、前記燃料電池の発電電力によって前記バッテリの残量が前記必要電力量以上に充電されるまでの待機を前記作業車両に指示する指示部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
上記態様によれば、作業車両管理装置は、燃料電池とバッテリとを備える作業車両による作業現場における走行を管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第一の実施形態に係る管理装置を備える運搬システムの構成を示す図である。
図2】第一の実施形態に係る運搬車両を模式的に示す斜視図である。
図3】第一の実施形態に係る運搬車両が備える動力系および駆動系の構成を示す概略ブロック図である。
図4】第一の実施形態に係る運搬車両が備える制御系の構成を示す概略ブロック図である。
図5】第一の実施形態に係る管理装置の構成を示す概略ブロック図である。
図6】第一の実施形態に係る管理装置および運搬車両による制御データの設定処理を示すフローチャートである。
図7】少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〈第一の実施形態〉
《運搬システム1の構成》
以下、図面を参照しながら実施形態について詳しく説明する。
図1は、第一の実施形態に係る管理装置50を備える運搬システム1の構成を示す図である。運搬システム1は、複数の運搬車両10を用いて採掘された砕石等を運搬するために用いられる。運搬車両10は、水素ガスを燃料とする燃料電池によって駆動する。管理装置50は、運搬車両10を走行させるための制御データを送信し、運搬車両10の運行を制御する。運搬車両10は作業車両の一例である。作業現場の一例として、鉱山を例に挙げて説明する。
【0010】
鉱山には、採掘場P1と排土場P2と待機場P3とが設けられる。運搬車両10は、採掘場P1にて積込機械30によって砕石を積み込まれ、砕石を排土場P2まで運搬し、排土場P2にて砕石を排出する。積込機械30は、例えば油圧ショベルやホイルローダであってよい。運搬車両10は、排土場P2にて砕石を排出すると、再度採掘場P1へ移動し、採石を積載する。待機場P3は、バッテリ144の残量が少ない運搬車両10が待機するためのスペースである。また待機場P3には、水素ガスを補給するための水素ステーションSが設けられる。水素ステーションSでは、運搬車両10が備える水素タンク141より高圧で水素ガスが保管されており、その差圧によって水素タンク141への水素ガスの充填を行う。なお、他の実施形態においては、水素ステーションSと待機場P3とは別個に設けられていてもよい。鉱山には、運搬車両10が走行するコースCが設けられる。コースCは、図1に示すように対面通行道路であってもよいし、一方通行道路であってもよい。
【0011】
《運搬車両10の構成》
図2は、第一の実施形態に係る運搬車両10を模式的に示す斜視図である。運搬車両10は、ダンプボディ11と、車体12と、走行装置13とを備える。
【0012】
ダンプボディ11は、積荷が積載される部材である。ダンプボディ11の少なくとも一部は、車体12よりも上方に配置される。ダンプボディ11は、ダンプ動作及び下げ動作する。ダンプ動作及び下げ動作により、ダンプボディ11は、ダンプ姿勢及び積載姿勢に調整される。ダンプ姿勢とは、ダンプボディ11が上昇している姿勢をいう。積載姿勢とは、ダンプボディ11が下降している姿勢をいう。
【0013】
ダンプ動作とは、ダンプボディ11を車体12から離隔させてダンプ方向に傾斜させる動作をいう。ダンプ方向は、車体12の後方である。実施形態において、ダンプ動作は、ダンプボディ11の前端部を上昇させて、ダンプボディ11を後方に傾斜させることを含む。ダンプ動作により、ダンプボディ11の積載面は、後方に向かって下方に傾斜する。
【0014】
下げ動作とは、ダンプボディ11を車体12に接近させる動作をいう。実施形態において、下げ動作は、ダンプボディ11の前端部を下降させることを含む。
【0015】
排土作業を実施する場合、ダンプボディ11は、積載姿勢からダンプ姿勢に変化するように、ダンプ動作する。ダンプボディ11に積荷が積載されている場合、積荷は、ダンプ動作により、ダンプボディ11の後端部から後方に排出される。積込作業が実施される場合、ダンプボディ11は、積載姿勢に調整される。
【0016】
車体12は、車体フレームを含む。車体12は、ダンプボディ11を支持する。車体12は、走行装置13に支持される。
【0017】
走行装置13は、車体12を支持する。走行装置13は、運搬車両10を走行させる。走行装置13は、運搬車両10を前進又は後進させる。走行装置13の少なくとも一部は、車体12よりも下方に配置される。走行装置13は、一対の前輪と一対の後輪とを備える。例えば、前輪は操舵輪であり、後輪は駆動輪である。なお、操舵輪と駆動輪の組み合わせはこれに限られず、走行装置13は、四輪駆動、四輪操舵であってもよい。
【0018】
図3は、第一の実施形態に係る運搬車両10が備える動力系14および駆動系15の構成を示す概略ブロック図である。動力系14は、水素タンク141、水素供給装置142、燃料電池143、バッテリ144、DCDCコンバータ145、リターダグリッド146を備える。
水素供給装置142は、水素タンク141に充填された水素ガスを燃料電池143に供給する。燃料電池143は、水素供給装置142から供給される水素と外気に含まれる酸素とを電気化学反応させて電力を発生する。バッテリ144は、燃料電池143において発生した電力を蓄える。DCDCコンバータ145は、制御系16(図4参照)からの指示に従って接続される燃料電池143またはバッテリ144から電力を出力させる。リターダグリッド146は、バッテリ144への充電ができない場合に、駆動系15からの回生電力を熱エネルギーに変換する。
【0019】
動力系14が出力した電力は、母線Bを介して駆動系15へ出力される。駆動系15は、インバータ151と、ポンプ駆動モータ152と、油圧ポンプ153と、ホイストシリンダ154と、インバータ155と、走行駆動モータ156とを有する。インバータ151は、母線Bからの直流電流を三相交流電流に変換してポンプ駆動モータ152に供給する。ポンプ駆動モータ152は、油圧ポンプ153を駆動する。油圧ポンプ153から吐出された作動油は、図示しない制御弁を介してホイストシリンダ154に供給される。作動油がホイストシリンダ154に供給されることにより、ホイストシリンダ154が作動する。ホイストシリンダ154は、ダンプボディ11をダンプ動作又は下げ動作させる。インバータ155は、母線Bからの直流電流を三相交流電流に変換して走行駆動モータ156に供給する。走行駆動モータ156が発生した回転力は、走行装置13の駆動輪に伝達される。
【0020】
運搬車両10は、動力系14および駆動系15を制御する制御系16を備える。図4は、第一の実施形態に係る運搬車両10が備える制御系16の構成を示す概略ブロック図である。制御系16は、計測装置161、通信装置162、制御装置163、操作装置164、モニタ165を備える。
【0021】
計測装置161は、運搬車両10の稼働状態および走行状態に関するデータを収集する。計測装置161は、GNSS(Global Navigation Satellite System)により運搬車両10の位置及び方位を計測する測位装置、運搬車両10の速度を計測する速度計およびバッテリ144の充電率を計測する電池残量計、水素ガスの残量を計測する燃料残量計を少なくとも含む。
【0022】
通信装置162は、移動体通信網などを介して管理装置50との通信を行う。通信装置162は、計測装置161によって計測された各種計測値を格納した計測データを管理装置50に送信する。通信装置162は、管理装置50からオペレータに対する指示データを受信する。
【0023】
制御装置163は、操作装置164の操作量に従って運搬車両10を駆動させる。
操作装置164は、運転室に設けられ、オペレータによる操作を受け付ける。操作装置164は、アクセルペダル、ブレーキペダル、ステアリングホイール、ダンプレバーなどを備える。
モニタ165は、運転室に設けられ、走行ルートなどをオペレータに表示する。
【0024】
制御装置163は、データ取得部171、車体制御部172、燃料電池制御部173、必要電力算出部174、バッテリ制御部175、表示制御部176を備える。
【0025】
データ取得部171は、通信装置162から指示データを取得し、計測装置161から計測データを取得する。
車体制御部172は、操作装置164の操作量により、運搬車両10を制御するための制御信号を生成する。例えば車体制御部172は、走行装置13のステアリング、アクセル、ブレーキ、ダンプボディ動作などを制御する制御信号を生成する。
【0026】
燃料電池制御部173は、燃料電池143が予め設定された一定の電力を出力するように、水素供給装置142による水素の供給量を制御する。
必要電力算出部174は、車体制御部172が生成する制御信号に基づいて動力系14において必要とされる必要電力を算出する。
バッテリ制御部175は、燃料電池143の発電電力と必要電力との差分を算出する。バッテリ制御部175は、発電電力が必要電力より大きい場合に、差分に係る電力をバッテリ144に充電させ、発電電力が必要電力より小さい場合に、差分に係る電力をバッテリ144から放電させるように、バッテリ144に接続されたDCDCコンバータ145を制御する。
表示制御部176は、指示データに含まれる情報をモニタ165に表示させる。
【0027】
《管理装置50の構成》
図5は、第一の実施形態に係る管理装置50の構成を示す概略ブロック図である。
管理装置50は、計測値取得部51、鉱山状態特定部52、ルート生成部53、地形データ記憶部54、走行負荷演算部55、電力量算出部56、ルート選択部57、指示部58を備える。
【0028】
計測値取得部51は、複数の運搬車両10から位置、方位および速度を受信する。
鉱山状態特定部52は、計測値取得部51が取得した計測値に基づいて採掘場P1および排土場P2の混雑状態を特定する。例えば、鉱山状態特定部52は、採掘場P1および排土場P2で待機している運搬車両10の数などを特定する。
【0029】
ルート生成部53は、採掘場P1において積込作業が完了した運搬車両10について、採掘場P1から排土場P2を経由して次の採掘場P1へ移動する複数の走行ルートを生成する。走行ルートの始点の採掘場P1と終点の採掘場P1は同じであってもよいし、異なっていてもよい。なお、管理装置50は、例えば積込機械30から運搬車両10への積込完了を示す信号を受信することで、積込作業の完了を認識することができる。また管理装置50は、例えば採掘場P1に位置する運搬車両10のダンプボディ11の積載重量が所定値を超え、かつ走行速度が所定値以上になったことで、積込作業の完了を認識することができる。
【0030】
地形データ記憶部54は、鉱山の地形データを記憶する。具体的には、地形データは、コースCの位置ごとの勾配などを記憶する。
走行負荷演算部55は、ルート生成部53が生成した複数の走行ルートと地形データ記憶部54が記憶する地形データとに基づいて、複数の走行ルートそれぞれの走行に要する走行負荷の時系列を算出する。走行負荷演算部55は、採掘場P1における待機時間、排土場P2におけるダンプボディ11操作による負荷、および降坂時の回生電力に鑑みて走行負荷の時系列を算出する。走行負荷は、力行時に負の値となり、回生時に正の値となる。
【0031】
電力量算出部56は、走行ルートを走行するためのバッテリ144の必要電力量を算出する。具体的には、電力量算出部56は、以下の手順で必要電力量を算出する。まず、電力量算出部56は走行負荷演算部55が算出した走行負荷の時系列に、燃料電池143の発電電力を加算することで、走行負荷と発電電力の収支の時系列を求める。電力量算出部56は、収支の時系列を積分することで電力量の時系列を求める。電力量算出部56は、電力量の時系列における電力量の初期値と最小値との差を、走行ルートを走行するためのバッテリ144の必要電力量とする。バッテリ144の残量が必要電力量を下回る場合、走行ルートの走行中に、バッテリ144の残量がゼロとなる。また電力量算出部56は、電力量の時系列における電力量の初期値と最大値との差を、回生電力を吸収するためのバッテリ144の余裕電力量とする。バッテリ144の残量が余裕電力量を上回る場合、走行ルートの走行中にバッテリ144の充電率が最大となり、バッテリ144で回生電力を吸収できなくなる。なお、バッテリ144で回生電力を吸収できない場合には、リターダグリッド146で回生電力を吸収できるため、運搬車両10の制動に問題は生じない。
【0032】
ルート選択部57は、計測値取得部51が取得した計測値と、鉱山状態特定部52が特定した鉱山の状態と、電力量算出部56が算出した必要電力量および余裕電力量とに基づいて、ルート生成部53が生成した複数の走行ルートの中から運搬車両10に走行させる走行ルートを選択する。なお、ルート選択部57は、走行ルートを決定するルート決定部の一例である。
【0033】
指示部58は、運搬車両10のオペレータに対する指示を運搬車両10に送信する。具体的には、指示部58は、運搬車両10の水素ガスの残量が補給閾値を下回る場合、水素ガスの補給を指示する補給指示を運搬車両10に出力する。補給閾値は、例えば運搬車両10が走行ルートを2回走行可能な程度の量に設定される。また、指示部58は、運搬車両10のバッテリ144の残量が、全ての走行ルートの必要電力量を下回る場合、待機場P3での待機指示を運搬車両10に出力する。運搬車両10が待機している間も、燃料電池143は発電を続けるため、待機中にバッテリ144の残量は増加する。指示部58は、水素ガスの残量が補給閾値以上であり、かつバッテリ144の残量が少なくとも1つの走行ルートの必要電力量以上である場合、ルート選択部57が選択した走行ルートの走行指示を運搬車両10に出力する。
【0034】
《管理装置50の動作》
管理装置50の計測値取得部51は、運搬車両10から随時計測情報を受信し、鉱山状態特定部52は、採掘場P1および排土場P2の状態を更新する。
【0035】
図6は、第一の実施形態に係る管理装置50および運搬車両10による制御データの設定処理を示すフローチャートである。管理装置50は、運搬車両10の積込作業が完了したことを検出すると、管理装置50および運搬車両10は、図6に示す制御データの設定処理を実行する。
【0036】
指示部58は、計測値取得部51が運搬車両10から受信した水素ガスの残量の計測値が、補給閾値以上であるか否かを判定する(ステップS1)。水素ガスの残量の計測値が補給閾値を下回る場合(ステップS1:NO)、指示部58は、運搬車両10に水素ガスの補給指示を出力する(ステップS2)。補給指示には、水素ステーションSまでの経路を示す情報が含まれてよい。
【0037】
他方、水素ガスの残量の計測値が補給閾値以上である場合(ステップS1:YES)、ルート生成部53は、運搬車両10が存在する採掘場P1から、任意の排土場P2を経由して任意の採掘場P1へ移動する複数の走行ルートを生成する(ステップS3)。なお、走行ルートのパターン数は、少なくとも排土場P2の数と採掘場P1の数の積以上である。次に、走行負荷演算部55は、複数の走行ルートと地形データ記憶部54が記憶する地形データとに基づいて、複数の走行ルートそれぞれについて走行負荷の時系列を算出する(ステップS4)。電力量算出部56は、ステップS4で算出した走行負荷の時系列に基づいて、走行ルートそれぞれについて、必要電力量と余裕電力量とを算出する(ステップS5)。
【0038】
指示部58は、計測値取得部51が運搬車両10から受信したバッテリ144の残量の計測値が、所定の基準上限値以上であるか否かを判定する(ステップS6)。基準上限値は、予め定められたバッテリ144の残量の基準範囲の上限値であってよい。基準範囲は、例えば任意の走行ルートで走行したときに、リターダグリッド146による回生電力の消費や、力行時のバッテリ144の枯渇が生じる可能性が少なくなるように、定められた範囲である。なお、他の実施形態においては、基準上限値をステップS5で算出した複数の走行ルートの余裕電力量の最大値をバッテリ144の最大容量から減算した値や、余裕電力量の平均値+2σの値をバッテリ144の最大容量から減算した値などから求めてもよい。
【0039】
バッテリ144の残量の計測値が基準上限値以上である場合(ステップS6:YES)、ルート選択部57は、ステップS3で生成した複数の走行ルートのうち、最も消費電力量が大きいものを選択する(ステップS7)。指示部58は、ステップS7で選択した走行ルートでの走行指示を、運搬車両10に出力する(ステップS8)。走行指示には、走行ルートを示す情報が含まれる。
【0040】
バッテリ144の残量の計測値が基準上限値を下回る場合(ステップS6:NO)、指示部58は、バッテリ144の残量の計測値が、所定の基準下限値以下であるか否かを判定する(ステップS9)。基準下限値は、予め定められたバッテリ144の残量の基準範囲の下限値であってよい。なお、他の実施形態においては、基準下限値をステップS5で算出した複数の走行ルートの必要電力量の最小値の絶対値や、平均値-2σの値の絶対値などから求めてもよい。
【0041】
バッテリ144の残量の計測値が基準下限値を上回る場合(ステップS9:NO)、ルート選択部57は、鉱山状態特定部52が特定した状態に基づいて、複数の走行ルートの中から1つの走行ルートを選択する(ステップS10)。例えば、ルート生成部53は、待機している運搬車両10が相対的に少ない採掘場P1および排土場P2を通る走行ルートを、運搬車両10に割り当てることができる。指示部58は、ステップS10で選択した走行ルートでの走行指示を、運搬車両10に出力する(ステップS8)。
【0042】
バッテリ144の残量の計測値が基準下限値以下である場合(ステップS9:YES)、ルート選択部57は、バッテリ144の残量の計測値が、ステップS5で算出した必要電力量のうち最も小さいもの以上であるか否かを判定する(ステップS11)。バッテリ144の残量の計測値が最小の必要電力量以上である場合(ステップS11:YES)、ルート選択部57は、複数の走行ルートのうち、必要電力量が最も小さいものを選択する(ステップS12)。指示部58は、ステップS12で選択した走行ルートでの走行指示を、運搬車両10に出力する(ステップS8)。
【0043】
バッテリ144の残量の計測値が最小の必要電力量を下回る場合(ステップS11:NO)、指示部58は、燃料電池143の発電電力によってバッテリ144の残量が必要電力量以上に充電されるまでの待機指示を運搬車両10に出力する(ステップS13)。待機指示には、待機場P3までの経路を示す情報が含まれてよい。その後、バッテリ144の残量の計測値が必要電力量以上となったときに、ステップS1に処理を戻し、再度当該運搬車両10に指示を出力する。
【0044】
《作用・効果》
このように、第一の実施形態に係る運搬システム1は、バッテリ144の残量が走行ルートの走行に要する必要電力量を下回る場合に、燃料電池143の発電電力によってバッテリ144の残量が必要電力量以上に充電されるまでの待機を運搬車両10に指示する。これにより、待機中の燃料電池143の発電電力によってバッテリ144の充電がなされ、走行ルートを走行可能な程度にバッテリ144の残量を回復させることができる。つまり、第一の実施形態に係る運搬システム1は、走行ルートの走行中にバッテリ144が枯渇することを防ぐことができる。これにより、運搬システム1は、運搬車両10の走行性能の低下を防止し、鉱山の生産性を向上することができる。また運搬システム1は、運搬車両10のバッテリ144残量を適正に保つことで、バッテリ144の寿命を向上させることができる。
【0045】
また、第一の実施形態に係る運搬システム1は、バッテリ144の残量が基準下限値以上、基準上限値以下である場合に、鉱山状態に基づいて走行ルートを選択する。これにより、任意の走行ルートを選択してもバッテリ144が枯渇する可能性が低く、またリターダグリッド146によって回生電力を消費する可能性が低い運搬車両10に、鉱山状態によって選択された走行ルートを走行させることで、運搬車両10の効率の低下が生じることを防ぎつつ、鉱山の効率を向上させることができる。なお、他の実施形態においては、運搬システム1は、基準上限値によらず、バッテリ144の残量が基準下限値以上である場合に、鉱山状態に基づいて走行ルートを選択してもよい。また他の実施形態においては、運搬システム1は、基準下限値によらず、バッテリ144の残量が基準上限値以下である場合に、鉱山状態に基づいて走行ルートを選択してもよい。また、他の実施形態に係る運搬システム1は、鉱山状態によらず、他の方法で走行ルートを選択してもよい。
【0046】
また、第一の実施形態に係る運搬システム1は、バッテリ144の残量が基準上限値以上である場合に、最も消費電力量が大きい走行ルートを選択する。これにより、運搬システム1は、バッテリ144の残量が過大な運搬車両10に負荷の高い走行ルートを走行させ、バッテリ144の電力を消費させることができる。なお、他の実施形態においては、運搬システム1は、必ずしも最も消費電力量が大きい走行ルートでない走行ルートを選択しなくてもよい。例えば、最も消費電力量が大きい走行ルートを含む、消費電力量が大きい複数の走行ルートの中から、鉱山状態に基づいて走行ルートを選択するものであってもよい。
【0047】
また、第一の実施形態に係る運搬システム1は、運搬車両10が搭載する水素ガスの残量が補給閾値を下回る場合に、水素ガスの補給を作業車両に指示する。これにより、運搬システム1は、走行ルートの走行中に水素ガスが枯渇することを防ぐことができる。
【0048】
〈他の実施形態〉
以上、図面を参照して一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、様々な設計変更等をすることが可能である。すなわち、他の実施形態においては、上述の処理の順序が適宜変更されてもよい。また、一部の処理が並列に実行されてもよい。
【0049】
上述した実施形態に係る管理装置50および制御装置163は、それぞれ単独のコンピュータによって構成されるものであってもよいし、管理装置50または制御装置163の構成を複数のコンピュータに分けて配置し、複数のコンピュータが互いに協働することで管理装置50または制御装置163として機能するものであってもよい。このとき、制御装置163を構成する一部のコンピュータが運搬車両10の内部に搭載され、他のコンピュータが運搬車両10の外部に設けられてもよい。
【0050】
上述した実施形態に係る運搬車両10は、オペレータによって操作される有人車両であるが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る運搬車両10は、自動走行する無人車両であってもよい。この場合、運搬車両10の制御系16は操作装置164およびモニタ165を備えなくてもよい。また車体制御部172は、走行ルートと計測装置161の計測値によるPID制御などによって、制御信号を生成すればよい。
【0051】
また、上述した実施形態では、作業車両として運搬車両10を例に説明したが、これに限られない。例えば、他の実施形態においては、管理装置50は、油圧ショベル、ホイルローダ、ダンプトラックなどの他の作業車両を管理してもよい。
【0052】
上述した実施形態に係る管理装置50は、複数の走行ルートを生成し、その中から1つを選択するが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る管理装置50は、1つの走行ルートのみを生成し、バッテリ144の残量に基づいて当該走行ルートを走行させるか、待機させるかを決定してもよい。
【0053】
上述の実施形態に係る管理装置50は、ルート生成部53が生成した複数の走行ルートの中から運搬車両10に走行させる走行ルートを選択するが、これに限らない。例えば、他の実施形態においては、管理装置50は、計測値取得部51が取得した計測値と、鉱山状態特定部52が特定した鉱山の状態と、電力量算出部56が算出した必要電力量および余裕電力量とに基づいて走行ルートを探索し、決定してもよい。
【0054】
〈コンピュータ構成〉
図7は、少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
コンピュータ90は、プロセッサ91、メインメモリ92、ストレージ93、インタフェース94を備える。
上述の管理装置50および制御装置163は、それぞれコンピュータ90に実装される。そして、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式でストレージ93に記憶されている。プロセッサ91は、プログラムをストレージ93から読み出してメインメモリ92に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、プロセッサ91は、プログラムに従って、上述した各記憶部に対応する記憶領域をメインメモリ92に確保する。プロセッサ91の例としては、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphic Processing Unit)、マイクロプロセッサなどが挙げられる。
【0055】
プログラムは、コンピュータ90に発揮させる機能の一部を実現するためのものであってもよい。例えば、プログラムは、ストレージ93に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせ、または他の装置に実装された他のプログラムとの組み合わせによって機能を発揮させるものであってもよい。なお、他の実施形態においては、コンピュータ90は、上記構成に加えて、または上記構成に代えてPLD(Programmable Logic Device)などのカスタムLSI(Large Scale Integrated Circuit)を備えてもよい。PLDの例としては、PAL(Programmable Array Logic)、GAL(Generic Array Logic)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)が挙げられる。この場合、プロセッサ91によって実現される機能の一部または全部が当該集積回路によって実現されてよい。このような集積回路も、プロセッサの一例に含まれる。
【0056】
ストレージ93の例としては、磁気ディスク、光磁気ディスク、光ディスク、半導体メモリ等が挙げられる。ストレージ93は、コンピュータ90のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インタフェース94または通信回線を介してコンピュータ90に接続される外部メディアであってもよい。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ90に配信される場合、配信を受けたコンピュータ90が当該プログラムをメインメモリ92に展開し、上記処理を実行してもよい。少なくとも1つの実施形態において、ストレージ93は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0057】
また、当該プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、当該プログラムは、前述した機能をストレージ93に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせで実現するもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【符号の説明】
【0058】
1…運搬システム 10…運搬車両 11…ダンプボディ 12…車体 13…走行装置 14…動力系 141…水素タンク 142…水素供給装置 143…燃料電池 144…バッテリ 145…DCDCコンバータ 146…リターダグリッド 15…駆動系 151…インバータ 152…ポンプ駆動モータ 153…油圧ポンプ 154…ホイストシリンダ 155…インバータ 156…走行駆動モータ 16…制御系 161…計測装置 162…通信装置 163…制御装置 164…操作装置 165…モニタ 171…データ取得部 172…車体制御部 173…燃料電池制御部 174…必要電力算出部 175…バッテリ制御部 176…表示制御部 30…積込機械 50…管理装置 51…計測値取得部 52…鉱山状態特定部 53…ルート生成部 54…地形データ記憶部 55…走行負荷演算部 56…電力量算出部 57…ルート選択部 58…指示部 90…コンピュータ 91…プロセッサ 92…メインメモリ 93…ストレージ 94…インタフェース B…母線 C…コース P1…採掘場 P2…排土場 P3…待機場 S…水素ステーション
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7