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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023077595
(43)【公開日】2023-06-06
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
   F21S 41/36 20180101AFI20230530BHJP
   F21S 41/43 20180101ALI20230530BHJP
   F21S 41/143 20180101ALI20230530BHJP
   F21S 41/151 20180101ALI20230530BHJP
   F21S 41/663 20180101ALI20230530BHJP
   F21S 41/33 20180101ALI20230530BHJP
   F21W 102/135 20180101ALN20230530BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20230530BHJP
【FI】
F21S41/36
F21S41/43
F21S41/143
F21S41/151
F21S41/663
F21S41/33
F21W102:135
F21Y115:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021190928
(22)【出願日】2021-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100099999
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 隆
(72)【発明者】
【氏名】末次 麻希子
(57)【要約】
【課題】複数の発光素子からの出射光を投影レンズを介して灯具前方へ向けて照射するように構成された車両用灯具において、ロービーム用配光パターンの明るさおよびその均一性を維持した上でOHS照射用配光パターンを形成可能とする。
【解決手段】複数の発光素子30が左右方向に並んだ状態でかつ発光面30aを投影レンズ50へ向けた状態で配置され、かつ、複数の発光素子30と投影レンズ50との間に、ロービーム用配光パターンのカットオフラインを形成するために複数の発光素子30からの出射光の一部を遮光するシェード60が配置された構成とする。その上で、シェード60よりも下方側に、複数の発光素子30のうち少なくとも1つの発光素子30からシェード60よりも灯具後方側へ出射した直射光を投影レンズ50へ向けて反射させる反射部材70が配置された構成とする。そして、その反射光によりOHS照射用配光パターンが形成されるようにする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発光素子と投影レンズとを備え、上記複数の発光素子からの出射光を上記投影レンズを介して灯具前方へ向けて照射することによりロービーム用配光パターンを形成するように構成された車両用灯具において、
上記複数の発光素子は、左右方向に並んだ状態でかつ発光面を上記投影レンズへ向けた状態で配置されており、
上記複数の発光素子と上記投影レンズとの間に、上記ロービーム用配光パターンのカットオフラインを形成するために上記複数の発光素子からの出射光の一部を遮光するシェードが配置されており、
上記シェードよりも下方側に、上記複数の発光素子のうち少なくとも1つの発光素子から上記シェードよりも灯具後方側へ出射した直射光を上記投影レンズへ向けて反射させる反射部材が配置されている、ことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
上記反射部材は、上記複数の発光素子からの直射光を左右方向に拡散反射させるように構成されている、ことを特徴とする請求項1記載の車両用灯具。
【請求項3】
上記反射部材は、上記シェードと一体的に形成されている、ことを特徴とする請求項1または2記載の車両用灯具。
【請求項4】
上記複数の発光素子からの出射光を上記投影レンズへ向けて反射させるリフレクタを備えており、
上記リフレクタは、上記シェードと一体的に形成されている、ことを特徴とする請求項1~3いずれか記載の車両用灯具。
【請求項5】
上記シェードよりも下方側に、ハイビーム照射時に追加点灯する複数の第2発光素子と、上記複数の第2発光素子からの出射光を上記投影レンズへ向けて反射させる第2リフレクタとが配置されており、
上記反射部材は、上記第2リフレクタと一体的に形成されている、ことを特徴とする請求項1~4いずれか記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、投影レンズを備えた車両用灯具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両用灯具の構成として、複数の発光素子からの出射光を投影レンズを介して灯具前方へ向けて照射することによりロービーム用配光パターンを形成するように構成されたものが知られている。
【0003】
「特許文献1」には、このような車両用灯具として、灯具前方路面の上方に設置された頭上標識(OHS)を照射するためのOHS照射用配光パターンを、ロービーム用配光パターンのカットオフラインよりも上方側の空間に形成するように構成されたものが記載されている。
【0004】
この「特許文献1」に記載された車両用灯具においては、投影レンズの後面に段差部を形成することにより、OHS照射用配光パターンを形成する構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2020/044605号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記「特許文献1」に記載された車両用灯具においては、本来はロービーム用配光パターンを形成すべき照射光の一部がOHS照射用配光パターンを形成するために用いられているので、その分だけロービーム用配光パターンの明るさが減少してしまい、かつ、ロービーム用配光パターンに配光ムラが発生しやすくなってしまう。
【0007】
本願発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、複数の発光素子からの出射光を投影レンズを介して灯具前方へ向けて照射するように構成された車両用灯具において、ロービーム用配光パターンの明るさおよびその均一性を維持した上でOHS照射用配光パターンを形成することができる車両用灯具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明は、所定の反射部材を備えた構成とすることにより、上記目的達成を図るようにしたものである。
【0009】
すなわち、本願発明に係る車両用灯具は、
複数の発光素子と投影レンズとを備え、上記複数の発光素子からの出射光を上記投影レンズを介して灯具前方へ向けて照射することによりロービーム用配光パターンを形成するように構成された車両用灯具において、
上記複数の発光素子は、左右方向に並んだ状態でかつ発光面を上記投影レンズへ向けた状態で配置されており、
上記複数の発光素子と上記投影レンズとの間に、上記ロービーム用配光パターンのカットオフラインを形成するために上記複数の発光素子からの出射光の一部を遮光するシェードが配置されており、
上記シェードよりも下方側に、上記複数の発光素子のうち少なくとも1つの発光素子から上記シェードよりも灯具後方側へ出射した直射光を上記投影レンズへ向けて反射させる反射部材が配置されている、ことを特徴とするものである。
【0010】
上記「複数の発光素子」は、左右方向に並んだ状態でかつ発光面を投影レンズへ向けた状態で配置されていれば、その具体的な配置や配置個数は特に限定されるものではない。
【0011】
上記「シェード」は、複数の発光素子からの出射光の一部を遮光することによりロービーム用配光パターンのカットオフラインを形成し得るように構成されたものであれば、その具体的な配置や形状等は特に限定されるものではない。
【0012】
上記「反射部材」は、シェードよりも下方側において、複数の発光素子のうち少なくとも1つの発光素子からシェードよりも灯具後方側へ出射した直射光を投影レンズへ向けて反射させるように構成されたものであれば、その具体的な配置や形状等は特に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0013】
本願発明に係る車両用灯具は、複数の発光素子からの出射光を投影レンズを介して灯具前方へ向けて照射することによりロービーム用配光パターンを形成する構成となっており、その際、複数の発光素子は左右方向に並んだ状態でかつ発光面を投影レンズへ向けた状態で配置されており、また、複数の発光素子と投影レンズとの間には、ロービーム用配光パターンのカットオフラインを形成するために複数の発光素子からの出射光の一部を遮光するシェードが配置されているが、このシェードよりも下方側には、複数の発光素子のうち少なくとも1つの発光素子からシェードよりも灯具後方側へ出射した直射光を投影レンズへ向けて反射させる反射部材が配置されているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0014】
すなわち、複数の発光素子のうち少なくとも1つの発光素子からシェードよりも灯具後方側へ出射した直射光は、その下方側に配置された反射部材で反射した後、投影レンズに入射し、この投影レンズからロービーム用配光パターンのカットオフラインよりも上方側の空間へ向けて出射する光となるので、この出射光によってOHS照射用配光パターンを形成することができる。
【0015】
その際、このOHS照射用配光パターンは、ロービーム用配光パターンを形成するための灯具構成には全く影響を与えてしまうことなく形成することができるので、ロービーム用配光パターンの明るさおよびその均一性を維持した上でOHS照射用配光パターンを形成することができる。
【0016】
このように本願発明によれば、複数の発光素子からの出射光を投影レンズを介して灯具前方へ向けて照射するように構成された車両用灯具において、ロービーム用配光パターンの明るさおよびその均一性を維持した上でOHS照射用配光パターンを形成することができる。
【0017】
また、発光素子からシェードよりも灯具後方側へ出射する直射光は、他の灯具構成部材で意図しない反射をすることによって迷光となりグレア発生の原因となってしまうおそれもあるが、本願発明の構成を採用することによりこのような迷光の発生を効果的に抑制することができる。
【0018】
上記構成において、さらに、反射部材が複数の発光素子からの直射光を左右方向に拡散反射させるように構成されたものとすれば、OHS照射用配光パターンを略均一な明るさで形成することができる。
【0019】
上記構成において、さらに、反射部材がシェードと一体的に形成された構成とすれば、配光制御の精度を高めることができ、これによりロービーム用配光パターンのカットオフラインとOHS照射用配光パターンとの位置関係精度を高めることができる。また、このような構成を採用することにより車両用灯具の部品点数の削減を図ることができる。
【0020】
上記構成において、さらに、複数の発光素子からの出射光を投影レンズへ向けて反射させるリフレクタを備えた構成とすれば、ロービーム用配光パターンの明るさを増大させることができ、かつ、その配光分布の自由度を高めることができる。その上で、リフレクタがシェードと一体的に形成された構成とすれば、配光制御の精度をさらに高めることができ、かつ、車両用灯具の部品点数の削減を図ることができる。
【0021】
上記構成において、さらに、シェードよりも下方側に、ハイビーム照射時に追加点灯する複数の第2発光素子と、これら複数の第2発光素子からの出射光を投影レンズへ向けて反射させる第2リフレクタとが配置された構成とした上で、反射部材が第2リフレクタと一体的に形成された構成とすれば、ロービーム用配光パターンとハイビーム用配光パターンとを選択的に形成し得る灯具構成とした場合においても、配光制御の精度を高めた上で車両用灯具の部品点数の削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本願発明の一実施形態に係る車両用灯具を示す側断面図
図2図1のII方向矢視図
図3図2のIII-III線断面図
図4】(a)は上記車両用灯具からの照射光によって形成されるロービーム用配光パターンを示す図、(b)は比較例を示す(a)と同様の図
図5】上記実施形態の第1変形例を示す、図2と同様の図
図6】上記実施形態の第2変形例を示す、図2と同様の図
図7】上記第2変形例を示す、図3と同様の図
図8】(a)は上記第2変形例に係る車両用灯具からの照射光によって形成されるロービーム用配光パターンを示す図、(b)はハイビーム用配光パターンを示す図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を用いて、本願発明の実施の形態について説明する。
【0024】
図1は、本願発明の一実施形態に係る車両用灯具10を示す側断面図である。また、図2は、図1のII方向矢視図である。
【0025】
これらの図において、Xで示す方向が「灯具前方」であり、Yで示す方向が「灯具前方」と直交する「左方向」(灯具正面視では「右方向」)であり、Zで示す方向が「上方向」である。これら以外の図においても同様である。
【0026】
車両用灯具10は、車両の前端部に設けられるヘッドランプであって、ランプボディ12と透光カバー14とで形成される灯室内に、灯具ユニット20が収容された構成となっている。
【0027】
図3は、図2のIII-III線断面図である。
【0028】
図3にも示すように、灯具ユニット20は、いわゆるプロジェクタ型の灯具ユニットであって、複数の発光素子30とリフレクタ32と投影レンズ50とを備えている。そして、この灯具ユニット20は、複数の発光素子30からの直射光および複数の発光素子30から出射してリフレクタ32で反射した光を、投影レンズ50を介して灯具前方へ向けて照射することによりロービーム用配光パターンを形成するようになっている。
【0029】
図3に示すように、投影レンズ50は、前面が凸曲面状に形成された平凸非球面レンズで構成されており、灯具前後方向に延びる光軸Axを有している。この投影レンズ50は、その後側焦点Fを含む焦点面である後側焦点面上に形成される光源像を、反転像として灯具前方(すなわち車両前方)の仮想鉛直スクリーン上に投影するようになっている。
【0030】
投影レンズ50は、その外周部においてレンズホルダ52に支持されており、このレンズホルダ52はヒートシンク54に支持されている。
【0031】
図2に示すように、複数の発光素子30は、光軸Axよりも上方側において左右方向に並んだ状態で配置されている。
【0032】
複数の発光素子30は、いずれも矩形状(具体的には正方形)の発光面30aを有する11個の白色発光ダイオードで構成されており、互いに僅かな間隔をおいて配置されている。その際、光軸Axの真上に配置された発光素子30およびその右側(灯具正面視では左側)に配置された5個の発光素子30は、左側に配置された残り5個の発光素子30に対して下方側に変位した状態で配置されている。
【0033】
複数の発光素子30は基板56に搭載されており、この基板56はヒートシンク54に支持されている。
【0034】
図3に示すように、基板56は、光軸Axと直交する鉛直面に対して後傾した状態で配置されている。その際、基板56の鉛直面に対する後傾角度は10~20°(例えば15°程度)の値に設定されている。これにより複数の発光素子30は、その発光面30aを灯具正面方向に対して10~20°(例えば15°程度)上向きの方向へ向けた状態(すなわち投影レンズ50へ向けた状態)で配置されている。
【0035】
リフレクタ32は、基板56よりも灯具前方側に配置されており、その左右両端部においてヒートシンク54に支持されている。
【0036】
図2に示すように、リフレクタ32は、複数の発光素子30を囲むように形成された反射面32aを有しており、この反射面32aにおいて複数の発光素子30からの出射光を投影レンズ50へ向けて反射させるように構成されている。その際、この反射面32aは、横長の凹曲面状の反射面形状を有しており、その上端縁は灯具正面視において略横長楕円形の外形形状を有している。
【0037】
リフレクタ32の反射面32aには、複数の発光素子30をその外周縁近傍において囲む開口部32bが形成されている。この開口部32bは、複数の発光素子30の配列に沿って左右段違いで略横長矩形状に延びるように形成されている。
【0038】
複数の発光素子30と投影レンズ50との間には、複数の発光素子30からの直射光およびリフレクタ32で反射した複数の発光素子30からの出射光の一部を遮光してロービーム用配光パターンのカットオフラインを形成するためのシェード60が配置されている。
【0039】
シェード60は、リフレクタ32の下部領域と一体的に形成されており、その上面がリフレクタ32の反射面32aの一部を構成している。
【0040】
シェード60の前端縁60aは、投影レンズ50の後側焦点Fの位置において光軸Axと直交する鉛直面に沿って、左右段違いで左右方向に延びるように形成されている。具体的には、この前端縁60aは、光軸Axよりも左側の部分(灯具正面視では右側の部分)が光軸Axに対してやや上方側の位置において水平方向に延びており、光軸Axよりも右側の部分が光軸Axに対して僅かに下方側の位置において水平方向に延びるとともにその左端部が斜め左上方向に延びた状態で光軸Axよりも左側の部分と接続されている。
【0041】
図3に示すように、リフレクタ32の開口部32bは、複数の発光素子30の発光面30aに対して灯具前方側に僅かに離れた位置に形成されている。リフレクタ32の後端面32cは、複数の発光素子30の発光面30aから灯具前方側に僅かに離れた位置において基板56と平行に延びているが、その下部領域32c1は基板56と平行な面よりも灯具前方側へ向けて斜め下向きに延びている。
【0042】
シェード60よりも下方側には、複数の発光素子30からシェード60よりも灯具後方側へ出射した直射光(すなわちリフレクタ32の後端面32cの下部領域32c1よりも灯具後方側へ出射した直射光)を投影レンズ50へ向けて反射させる反射部材70が配置されている。この反射部材70は、灯具前方側へ向けて斜め下向きに延びるように形成された反射面70aを有する板状部材で構成されている。そして、この反射部材70は、その後端部から下方側へ折れ曲がるように形成された平板状のブラケット部70bにおいてヒートシンク54に支持されている。
【0043】
図2に示すように、反射部材70は、灯具正面視において複数の発光素子30のうち光軸Ax寄りに位置する一部の発光素子30(具体的には7個程度の発光素子30)に対応する左右幅で形成されている。
【0044】
反射部材70の反射面70aは、左右方向に並んだ複数の小反射面70sで構成されている。各小反射面70sは、灯具前方側へ向けて斜め下向きに延びる凹シリンドリカル面で構成されており、これにより複数の発光素子30からの直射光を左右方向に多少拡散する光として反射させるようになっている。
【0045】
図3に示すように、反射面70aの下向き角度は、複数の小反射面70sからの反射光が光軸Axから下方に離れた位置において投影レンズ50の後側焦点面を通過するような値に設定されている。
【0046】
なお、図3においては、発光素子30からの直射光およびそのリフレクタ32からの反射光の光路を太い実線で示しており、反射部材70からの反射光の光路を細い実線で示している。
【0047】
図4(a)は、車両用灯具10の灯具ユニット20から灯具前方へ向けて照射される光により、車両前方25mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成されるロービーム用配光パターンPLを透視的に示す図である。
【0048】
図4(a)に示すように、ロービーム用配光パターンPLは、左配光のロービーム用配光パターンであって、その上端縁に左右段違いのカットオフラインCL1、CL2を有している。このカットオフラインCL1、CL2は、灯具正面方向の消点であるH-Vを鉛直方向に通るV-V線を境にして左右段違いで水平方向に延びており、V-V線よりも右側の対向車線側部分が下段カットオフラインCL1として形成されるとともに、V-V線よりも左側の自車線側部分が、この下段カットオフラインCL1から傾斜部を介して段上がりになった上段カットオフラインCL2として形成されている。
【0049】
ロービーム用配光パターンPLにおいて、下段カットオフラインCL1とV-V線との交点であるエルボ点Eは、H-Vの0.5~0.6°程度下方に位置している。
【0050】
ロービーム用配光パターンPLは、車両前方路面の上方に設置された頭上標識OHSを照射するためのOHS照射用配光パターンPAが付加された配光パターンとして形成されている。このOHS照射用配光パターンPAは、カットオフラインCL1、CL2から上方に離れた位置において左右方向に拡がる横長の配光パターンとして形成されている。
【0051】
上述したように、ロービーム用配光パターンPLは複数の発光素子30からの直射光およびそのリフレクタ32からの反射光によって形成され、その際、左右段違いのカットオフラインCL1、CL2はシェード60の前端縁60aの反転投影像として形成されるようになっている。
【0052】
また、OHS照射用配光パターンPAは、複数の発光素子30からシェード60よりも灯具後方側へ出射した直射光が、その下方側に配置された反射部材70で反射した後、投影レンズ50を介して灯具前方へ向けて出射することにより形成されるようになっている。
【0053】
その際、複数の発光素子30からの直射光は、反射部材70の反射面70aを構成する複数の小反射面70sで反射する際、左右方向に多少拡散する光となるので、OHS照射用配光パターンPAは略均一な明るさで形成される。
【0054】
一方、図4(b)は、本実施形態の比較例を示す図であって、仮に、灯具ユニット20として反射部材70を備えておらず、代わりに投影レンズ50の後面に段差部が形成された構成とした場合に形成されるOHS照射用配光パターンPA´をロービーム用配光パターンPL´と共に示す図である。
【0055】
図4(b)に示すように、ロービーム用配光パターンPL´もロービーム用配光パターンPLと略同様の配光パターンとして形成されるが、その略中央領域には水平方向に延びるスジ状の暗部D´が形成されたものとなっている。
【0056】
このようなスジ状の暗部D´が形成されるのは、OHS照射用配光パターンPA´を形成するために投影レンズ50の後面に段差部を形成すると、これによりロービーム用配光パターンを形成すべき照射光の一部が失われてしまうことによるものである。
【0057】
次に本実施形態の作用効果について説明する。
【0058】
本実施形態に係る車両用灯具10の灯具ユニット20は、複数の発光素子30からの出射光を投影レンズ50を介して灯具前方へ向けて照射することによりロービーム用配光パターンPLを形成する構成となっており、その際、複数の発光素子30は左右方向に並んだ状態でかつ発光面30aを投影レンズ50へ向けた状態で配置されており、また、複数の発光素子30と投影レンズ50との間には、ロービーム用配光パターンPLのカットオフラインCL1、CL2を形成するために複数の発光素子30からの出射光の一部を遮光するシェード60が配置されているが、このシェード60よりも下方側には、複数の発光素子30のうち少なくとも1つの発光素子30からシェード60よりも灯具後方側へ出射した直射光を投影レンズ50へ向けて反射させる反射部材70が配置されているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0059】
すなわち、複数の発光素子30のうち少なくとも1つの発光素子30からシェード60よりも灯具後方側へ出射した直射光は、反射部材70で反射した後、投影レンズ50に入射し、この投影レンズ50からロービーム用配光パターンPLのカットオフラインCL1、CL2よりも上方側の空間へ向けて出射する光となるので、この出射光によってOHS照射用配光パターンPAを形成することができる。
【0060】
その際、このOHS照射用配光パターンPAは、ロービーム用配光パターンPLを形成するための灯具構成には全く影響を与えてしまうことなく形成することができるので、ロービーム用配光パターンPLの明るさおよびその均一性を維持した上でOHS照射用配光パターンPAを形成することができる。
【0061】
このように本実施形態によれば、複数の発光素子30からの出射光を投影レンズ50を介して灯具前方へ向けて照射するように構成された車両用灯具10において、ロービーム用配光パターンPLの明るさおよびその均一性を維持した上でOHS照射用配光パターンPAを形成することができる。
【0062】
その際、各発光素子30からシェード60よりも灯具後方側へ出射する直射光は、他の灯具構成部材(例えばヒートシンク54等)で意図しない反射をすることによって迷光となりグレア発生の原因となってしまうおそれもあるが、本実施形態の構成を採用することによりこのような迷光の発生を効果的に抑制することができる。
【0063】
しかも本実施形態においては、反射部材70の反射面70aが、左右方向に並んだ複数の小反射面70sで構成されており、これにより複数の発光素子30からの直射光を左右方向に多少拡散する光として反射させるようになっているので、OHS照射用配光パターンPAを略均一な明るさで形成することができる。
【0064】
また本実施形態においては、複数の発光素子30からの出射光を投影レンズ50へ向けて反射させるリフレクタ32を備えているので、ロービーム用配光パターンPLの明るさを増大させることができ、かつ、その配光分布の自由度を高めることができる。
【0065】
さらに本実施形態においては、リフレクタ32がシェード60と一体的に形成されているので、配光制御の精度を高めることができ、かつ、車両用灯具10の部品点数の削減を図ることができる。
【0066】
なお、本実施形態の反射部材70を、複数の発光素子30を電源に接続するためのコネクタ(図示せず)を隠すように形成されたものとすることも可能であり、また、基板56上の配線パターン(図示せず)等を太陽光から保護するための部材として用いるようにすることも可能である。
【0067】
上記実施形態においては、投影レンズ50が平凸非球面レンズで構成されているものとして説明したが、両凸レンズや凸メニスカスレンズ等で構成されたものとすることも可能であり、また、円形以外の外形形状を有する構成とすることも可能である。
【0068】
上記実施形態においては、灯具ユニット20として11個の発光素子30を備えているものとして説明したが、これ以外の個数の発光素子30を備えた構成とすることも可能である。
【0069】
上記実施形態においては、複数の発光素子30が左右段違いで配置されているものとして説明したが、これらが横一列で配置された構成とすることも可能である。
【0070】
上記実施形態においては、複数の発光素子30の各々の発光面30aが正方形の外形形状を有しているものとして説明したが、これ以外の外形形状(例えば縦長矩形状や横長矩形状の外形形状等)を有する構成とすることも可能である。
【0071】
上記実施形態においては、複数の発光素子30からの出射光を有効利用するためにリフレクタ32が配置されているものとして説明したが、リフレクタ32が配置されていない構成とすることも可能である。
【0072】
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
【0073】
まず、上記実施形態の第1変形例について説明する。
【0074】
図5は、本変形例に係る車両用灯具の灯具ユニット120を示す、図2と同様の図である。
【0075】
図5に示すように、灯具ユニット120の基本的な構成は上記実施形態の灯具ユニット20と同様であるが、反射部材170がシェード60と一体的に形成されている点で上記実施形態の場合と異なっている。
【0076】
すなわち本変形例においても、反射部材170はシェード60よりも下方側に配置されており、複数の発光素子30からシェード60よりも灯具後方側へ出射した直射光を投影レンズ50へ向けて反射させるように構成されているが、その左右両側部に形成されたブラケット部170cにおいてシェード60の下面に連結された構成となっている。
【0077】
本変形例の反射部材170も、その反射面170aは左右方向に並んだ複数の小反射面170sで構成されており、その具体的な反射面形状は上記実施形態の場合と同様である。
【0078】
なお、本変形例の反射部材170には、上記実施形態の反射部材70のようなブラケット部70bは形成されていない。
【0079】
本変形例の構成を採用した場合においても、上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0080】
しかも本変形例においては、反射部材170がシェード60と一体的に形成されているので、配光制御の精度を高めることができ、これによりロービーム用配光パターンPLのカットオフラインCL1、CL2とOHS照射用配光パターンPAとの位置関係精度を高めることができる。また、このような構成を採用することにより灯具ユニット120の部品点数の削減を図ることができる。
【0081】
次に、上記実施形態の第2変形例について説明する。
【0082】
図6、7は、本変形例に係る車両用灯具の灯具ユニット220を示す、図2、3と同様の図である。
【0083】
図6に示すように、灯具ユニット220の基本的な構成は上記実施形態の灯具ユニット20と同様であるが、シェード260よりも下方側に、ハイビーム照射時に追加点灯する複数の第2発光素子240と、これら複数の第2発光素子240からの出射光を投影レンズ50へ向けて反射させる第2リフレクタ242とが追加配置されており、かつ、反射部材270が第2リフレクタ242と一体的に形成されている点で上記実施形態の場合と異なっている。これに伴い、シェード260および基板256の構成も上記実施形態の場合と一部異なっている。
【0084】
複数の第2発光素子240は、いずれも矩形状(具体的には第1発光素子30の発光面30aと同一サイズの正方形)の発光面240aを有する9個の白色発光ダイオードで構成されており、互いに僅かな間隔をおいて横一列で配置されている。
【0085】
複数の第2発光素子240は複数の発光素子30と共通の基板256に搭載されている。この基板256は、上記実施形態の基板56と同じ後傾角度で配置された状態でヒートシンク54に支持されている。
【0086】
第2リフレクタ242は、複数の第2発光素子240を囲むように形成された反射面242aを有しており、この反射面242aにおいて複数の第2発光素子240からの出射光を投影レンズ50へ向けて反射させるように構成されている。
【0087】
第2リフレクタ242の反射面242aには、複数の第2発光素子240をその外周縁近傍において囲む横長の開口部242bが形成されている。この開口部242bは、複数の第2発光素子240の配列に沿って横長矩形状に延びるように形成されている。
【0088】
シェード260は、第1および第2リフレクタ32、242と一体的に形成されている。すなわち、シェード260は、第1および第2リフレクタ32、242の接続部分が楔形の鉛直断面形状で灯具前方へ向けて前端縁260aまで延びるように形成されており、その上面が第1リフレクタ32の反射面32aの一部を構成するとともにその下面が第2リフレクタ242の反射面242aの一部を構成している。
【0089】
反射部材270は、第2リフレクタ242における開口部242bの上方近傍領域に、左右方向に細長く延びる貫通孔242cが形成されることによって構成されている。すなわち、この反射部材270の反射面270aは、貫通孔242cの下面を灯具前方側へ向けて斜め下向きに延びるように形成することによって構成されている。
【0090】
反射部材270の反射面270aは、左右方向に並んだ複数の小反射面270sで構成されている。各小反射面270sは、灯具前方側へ向けて斜め下向きに延びる凹シリンドリカル面で構成されており、これにより複数の発光素子30からの直射光を左右方向に多少拡散する光として反射させるようになっている。
【0091】
図7に示すように、反射面270aの下向き角度は、複数の小反射面270sからの反射光が、光軸Axから下方に離れた位置において投影レンズ50の後側焦点面を通過するような値に設定されている。
【0092】
なお、図7においては、発光素子30からの直射光およびそのリフレクタ32からの反射光の光路を太い実線で示しており、反射部材270からの反射光の光路を細い実線で示しており、第2発光素子240からの直射光およびその第2リフレクタ242からの反射光の光路を破線で示している。
【0093】
図8(a)は、灯具ユニット220から灯具前方へ向けて照射される光により、上記仮想鉛直スクリーン上に形成されるロービーム用配光パターンPL-2を示す図であり、図8(b)は、灯具ユニット220から灯具前方へ向けて照射される光により上記仮想鉛直スクリーン上に形成されるハイビーム用配光パターンPH-2を透視的に示す図である。
【0094】
図8(a)に示すように、ロービーム用配光パターンPL-2は、上記実施形態において形成されるロービーム用配光パターンPLと同様、OHS照射用配光パターンPA-2が付加された配光パターンとして形成されている。
【0095】
ロービーム用配光パターンPL-2自体は、ロービーム用配光パターンPLと同様の配光パターンである。また、OHS照射用配光パターンPA-2についても、上記実施形態において形成されるOHS照射用配光パターンPAと略同様の配光パターンとして形成されている。
【0096】
図8(b)に示すように、ハイビーム用配光パターンPH-2は、ロービーム用配光パターンPL-2に対して付加配光パターンPB-2が付加された合成配光パターンとして形成されている。
【0097】
付加配光パターンPB-2は、複数の第2発光素子240からの直射光および複数の第2発光素子240から出射して第2リフレクタ242で反射した光によって形成されている。
【0098】
これによりハイビーム用配光パターンPH-2は、ロービーム用配光パターンPL-2と付加配光パターンPB-2とが一体化した連続的な配光パターンとして形成されている。その際、OHS照射用配光パターンPA-2は付加配光パターンPB-2に含まれるようにして形成されている。
【0099】
本変形例の構成を採用した場合においても、上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0100】
その際、本変形例の灯具ユニット220は、ロービーム用配光パターンPL-2とハイビーム用配光パターンPH-2とを選択的に形成し得る構成となっているが、このような灯具構成とした場合においても、配光制御の精度を高めた上で灯具ユニット220の部品点数の削減を図ることができる。
【0101】
本変形例の灯具ユニット220においては、複数の第2発光素子240が一斉に点灯する構成となっているが、複数の第2発光素子240が個別に点灯し得る構成とすることも可能である。その際、複数の第2発光素子240の各々を自車の走行状況に応じて点消灯させるようにすれば、対向車のドライバー等にグレアを与えてしまわない範囲内でできるだけ前方走行路を幅広く照射することが可能となる。
【0102】
なお、上記実施形態およびその変形例において諸元として示した数値は一例にすぎず、これらを適宜異なる値に設定してもよいことはもちろんである。
【0103】
また、本願発明は、上記実施形態およびその変形例に記載された構成に限定されるものではなく、これ以外の種々の変更を加えた構成が採用可能である。
【符号の説明】
【0104】
10 車両用灯具
12 ランプボディ
14 透光カバー
20、120、220 灯具ユニット
30 発光素子
30a、240a 発光面
32a、242a 反射面
32 リフレクタ
32b、242b 開口部
32c 後端面
32c1 下部領域
50 投影レンズ
52 レンズホルダ
54 ヒートシンク
56、256 基板
60、260 シェード
60a、260a 前端縁
70、170、270 反射部材
70a、170a、270a 反射面
70b、170c ブラケット部
70s、170s、270s 小反射面
240 第2発光素子
242 第2リフレクタ
242c 貫通孔
Ax 光軸
CL1 下段カットオフライン
CL2 上段カットオフライン
E エルボ点
F 後側焦点
PA、PA-2 OHS照射用配光パターン
PB-2 付加配光パターン
PH-2 ハイビーム用配光パターン
PL、PL-2 ロービーム用配光パターン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8