(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023077612
(43)【公開日】2023-06-06
(54)【発明の名称】ファン付きウェア及びファン付きウェア用のウェア本体
(51)【国際特許分類】
A41D 13/005 20060101AFI20230530BHJP
【FI】
A41D13/005 103
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021190950
(22)【出願日】2021-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】592171005
【氏名又は名称】株式会社セフト研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】市ヶ谷 弘司
(72)【発明者】
【氏名】住吉 右次
(72)【発明者】
【氏名】石塚 隆博
【テーマコード(参考)】
3B011
【Fターム(参考)】
3B011AA01
3B011AB01
3B011AC02
(57)【要約】
【課題】脇下部分だけでなく首後部、及び服内部をも効果的に冷却することができるファン付きウェア及びファン付きウェア用のウェア本体を提供する。
【解決手段】通気性のない又はファン50による空気の導入によって膨らませられることができる程度の通気性を有する服地によって、少なくとも着用者の胴体部を覆う形状に形成され、ファン50を取り付けるための取付部13と、ファン50によって導入された空気の流れを変更する空気流路変更部材16と、ファン50によって導入された空気を排出する空気排出部20と、を備えるファン付きウェア100のウェア本体10であって、空気流路変更部材16は、服地の内表面に設けられている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通気性のない又はファンによる空気の導入によって膨らませられることができる程度の通気性を有する服地によって、少なくとも着用者の胴体部を覆う形状に形成された、ファン付きウェアのウェア本体であって、
前記ファンを取り付けるための取付部と、
前記ファンによって導入された空気の流れ方向を変更する空気流路変更部材と、
前記ファンによって導入された空気を排出する空気排出部と、
を備え、
前記空気流路変更部材は、前記服地の内表面に設けられ、当該ウェア本体の袖ぐり部に向かう空気の流れ方向を変更することを特徴とするファン付きウェアのウェア本体。
【請求項2】
前記空気流路変更部材は、
前記取付部の方向に開口したポケット部と、
前記ポケット部に入り込んだ空気を排出させる空気流出口と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載のファン付きウェアのウェア本体。
【請求項3】
前記空気流出口は、前記ポケット部の端部に設けられていることを特徴とする請求項2に記載のファン付きウェアのウェア本体。
【請求項4】
前記ポケット部の開口度合いを調整可能な調整手段を備えることを特徴とする請求項2又は3に記載のファン付きウェアのウェア本体。
【請求項5】
前記調整手段は、前記服地に設けられた被係止部に係止する係止部を備えることを特徴とする請求項4に記載のファン付きウェアのウェア本体。
【請求項6】
前記服地と着用者の身体又は下着との間に、前記ファンによって当該ウェア本体内に取り込まれた外部の空気を前記空気排出部へと導くための空間を確保するスペーサを備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のファン付きウェアのウェア本体。
【請求項7】
当該ウェア本体は、ベスト状であることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のファン付きウェアのウェア本体。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載のファン付きウェアのウェア本体と、
前記ウェア本体の内部に空気を導入するファンと、
前記ファンに電力を供給する電源手段と、を備えることを特徴とするファン付きウェア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファン付きウェア及びファン付きウェア用のウェア本体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ウェア本体にファンを取り付け、ファンによってウェア本体内に取り込まれた外部の空気を身体又は下着の表面と略平行に流通させることにより、身体から出た汗を蒸発させて、身体を冷却するファン付きウェアが実用化されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このようなファン付きウェアを着用した状態でファンを作動させると、大量の空気がファンからウェア本体内に取り込まれ、取り込まれた空気の圧力により、ウェア本体と着用者の身体との間に空気が流通する空間が自動的に形成される。取り込まれた空気は、形成された空間内を、着用者の身体又はウェア本体の下に着用した下着の表面に沿って流通し、例えば、襟部や袖部の開口部に形成された空気排出部から外部に排出される。
そして、取り込まれた空気が、ウェア本体と着用者の身体又は下着との間の空間内を流通する間に、身体から出た汗を蒸発させ、蒸発する際の気化熱により身体が冷却される。
【0004】
しかし、このようなファン付きウェアは、ファンの取り付け位置等によっては脇下方向への空気流通量が多くなり、他の箇所への空気流通量が減少する場合がある。特に、ファン付きウェアが袖の無いベストタイプであった場合には、脇下からウェア本体の外部に空気が排出されるので、襟部や袖部の開口部に形成された空気排出部から外部に排出される空気の量が減り、効果的に身体が冷却されなくなるということがあった。
【0005】
さらに、ファン付きウェアの上からリュックサックを背負ったり、高所作業における安全性確保を目的とした、フルハーネス型等の安全帯をファン付きウェアの上から着用したりすると、ウェアが着用者の身体に押しつけられてしまい、ファン内部における空気流通路の形成にも支障が生じることから、十分にファン付きウェアとしての機能を発揮できない。
【0006】
そこで、上からリュックサックや安全帯等を着用した場合であっても、空気が流通する空間が形成されるように、ウェア本体と身体の間に例えば3次元立体構造を有するスペーサ等の空間確保手段を設けたファン付きウェアが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2005/063065号
【特許文献2】特開2021-070885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、スペーサを内部に有するファン付きウェアでは、スペーサ自体が抵抗となって、スペーサが配されていない脇下部分への空気流通路が多くなり、他の箇所への空気流通量が減少することがあった。
【0009】
本発明の目的は、上記課題を解決するために、脇下部分だけでなく首後部、及び服内部を効果的に冷却することができるファン付きウェア及びファン付きウェア用のウェア本体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
通気性のない又はファンによる空気の導入によって膨らませられることができる程度の通気性を有する服地によって、少なくとも着用者の胴体部を覆う形状に形成された、ファン付きウェアのウェア本体であって、
前記ファンを取り付けるための取付部と、
前記ファンによって導入された空気の流れ方向を変更する空気流路変更部材と、
前記ファンによって導入された空気を排出する空気排出部と、
を備え、
前記空気流路変更部材は、前記服地の内表面に設けられ、当該ウェア本体の袖ぐり部に向かう空気の流れ方向を変更することを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のファン付きウェアのウェア本体であって、
前記空気流路変更部材は、
前記取付部の方向に開口したポケット部と、
前記ポケット部に入り込んだ空気を排出させる空気流出口と、
を備えることを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のファン付きウェアのウェア本体であって、
前記空気流出口は、前記ポケット部の端部に設けられていることを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載のファン付きウェアのウェア本体であって、
前記ポケット部の開口度合いを調整可能な調整手段を備えることを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のファン付きウェアのウェア本体であって、
前記調整手段は、前記服地に設けられた被係止部に係止する係止部を備えることを特徴とする。
【0015】
請求項6に記載の発明は、請求項1から5のいずれか一項に記載のファン付きウェアのウェア本体であって、
前記服地と着用者の身体又は下着との間に、前記ファンによって当該ウェア本体内に取り込まれた外部の空気を前記空気排出部へと導くための空間を確保するスペーサを備えることを特徴とする。
【0016】
請求項7に記載の発明は、請求項1から6のいずれか一項に記載のファン付きウェアのウェア本体であって、
当該ウェア本体は、ベスト状であることを特徴とする。
【0017】
請求項8に記載の発明は、ファン付きウェアであって、
請求項1から7のいずれか一項に記載のファン付きウェアのウェア本体と、
前記ウェア本体の内部に空気を導入するファンと、
前記ファンに電力を供給する電源手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、脇下部分だけでなく首後部、及び服内部を効果的に冷却することができるファン付きウェア及びファン付きウェア用のウェア本体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1A】本実施形態のファン付きウェアの開閉手段を閉じた状態における正面図である。
【
図1B】本実施形態のファン付きウェアの開閉手段を閉じた状態における背面図である。
【
図2】本実施形態のファン付きウェアの開閉手段を開いた状態における正面図であって、ウェア本体の内表面を示す。
【
図3】本実施形態のファン付きウェアの空気流路変更部材を示す拡大正面図である。
【
図4】本実施形態のファン付きウェアの空気排出部調整機構を示す拡大正面図である。
【
図5】本実施形態のファン付きウェアの空間確保手段で使用されるスペーサの構造を示す拡大斜視図である。
【
図6】空気流路変更部材の変形例を示す拡大正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明に係るファン付きウェア及びファン付きウェア用のウェア本体の実施形態について、袖部を有さないベストタイプであって、服内部に例えば3次元立体構造を有するスペーサ等の空間確保手段を設けたファン付きウェアに適用した例で詳細に説明する。ただし、本発明の技術的範囲は、図示例に限定されるものではない。ベストタイプ以外でも、例えば、袖部を有するブルゾンタイプ、半袖タイプ、つなぎタイプ等の種々の形態に適用できる。
なお、以下においては、着用者がファン付きウェア100を着用した状態を基準として、着用者の前側を前、着用者の後側を後、着用者の上側を上、着用者の下側を下、着用者の右手側を右、着用者の左手側を左と定めて説明する。
【0021】
[全体構成]
本実施形態に係るファン付きウェア100は、
図1A及び
図1Bに示すように、例えば袖を有さないベストタイプであって、着用者の身体のうち、少なくとも上半身を覆うウェア本体10と、ウェア本体10と身体又は下着との間の空間に空気を流通させるためのファン50等を備えて構成されている。
【0022】
〔ウェア本体〕
ウェア本体10は、通気性の小さな又は通気性の無いシート状部材で、着用者の上半身を覆うような形状に形成されている。
具体的には、このウェア本体10は、着用者の胴を覆う胴体部1と、着用者の腕を通す一対の袖ぐり部14と、ウェア本体10の内表面に設けられ、ファン50によってウェア本体10内に取り込まれた外部の空気の流れ方向を変更する空気流路変更部材16と、を有している。
【0023】
(胴体部)
胴体部1の下端の裾部11には、例えばゴム等の伸縮性のある弾性体が取り付けられている。これにより、ウェア本体10は、裾部11にて絞り込まれて着用者の身体又は下着に密着するようになる。
【0024】
また、ファン付きウェア100は前開きタイプであり、胴体部1の前身頃は、線ファスナーによって開閉されるようになっている。なお、
図1Aにおいて、当該線ファスナーは、比翼12によって隠された態様を図示している。
【0025】
(取付部)
また、
図1Bに示すように、胴体部1の後ろ身頃には、ファン50を取り付けるための取付部13、13が左右に対を成して設けられている。
【0026】
取付部13は、ファン50の外形に沿う形状の取付孔(図示略)を有しており、取付部13に取り付けられたファン50は、当該取付孔から外部の空気をウェア本体10の内側に取り込むようになっている。
【0027】
なお、ウェア本体10に設ける取付部13の個数は、2個に限られず、これより少数又は多数の取付部13を設けて、これに対応した数のファン50を取り付けてもよい。
【0028】
(袖ぐり部)
一対の袖ぐり部14は、ベストタイプであるウェア本体10において、少なくとも一部が着用者の腕から離間し、開口部が形成される。そして、着用者の脇下と袖ぐり部14の隙間を空気流通路、袖ぐり部14の開口部を空気排出部20として、ウェア本体10と着用者の身体又は下着との間の空間を流通した空気を、外部へ排出する構造となっている。
【0029】
着用者の脇下は蒸れやすく、また、太い静脈が通っていて血管が皮膚表面に近いため、このように、脇下が空気流通路となるように袖ぐり部14から空気を排出することで、効果的に体温を下げることができる。
【0030】
なお、例えば袖ぐり部14にゴム等の伸縮性を有する環状部材を配することで、袖ぐり部14から空気を排出しづらくした上で、袖ぐり部14の下部に空気排出部20を別に設ける構造としても構わない。
【0031】
〔ファン〕
ファン50は、空気を外部から取り込むことによりウェア本体10と身体又は下着との間に空気流通路を形成し、当該空気流通路内に空気の流れを強制的に生じさせる構成である。
図1Bにおいては、2つのファン50、50は、ウェア本体10の後ろ身頃に、左右に対を成して取り付けられる。
【0032】
なお、ファン50としては、プロペラを有するファン装置を用いており、ファン50に電力を供給するための電源手段30は、
図2に示すように、例えばウェア本体10の内ポケット40に収納される。
電源手段30は、例えばバッテリーを内蔵した電源装置であり、電源手段30と2つのファン50、50とは電源ケーブルにより電気的に接続される。
なお、
図2において、ファン50、50の取付位置は、
図1Bで示す取付位置に比べてより上方で脇下近傍に位置するように設けられている。このようにファン50、50の取付位置は適宜変更可能である。
【0033】
図2は、ウェア本体10の線ファスナーを開いた、内表面を示す正面図である。
図2に示すように、ウェア本体10は内表面側に空気流路変更部材16と、空気排出部調整機構17と、空間確保手段18と、を備える。
【0034】
(空気流路変更部材)
図3に空気流路変更部材16の拡大図を示す。
空気流路変更部材16は、袖ぐり部14へと向かう空気の流れ方向を変更する部材であって、ウェア本体10の服地の内表面に固着(例えば縫合)された部材である。
空気流路変更部材16は、例えば、取付部13の方向に開口したポケット部161を備え、ポケット部161の両端部に、それぞれ空気流出口162、162を備える。
【0035】
なお、本発明において、空気流路変更部材16の、袖ぐり部14に向かう空気の流れを「変更」するという作用は、単に空気の流れを変更することに限られず、袖ぐり部14に向かう空気の流れを阻止することや袖ぐり部14に向かう空気の量を減少させること等を含む広い概念である。
また、本例では、袖ぐり部14の一部及び服地の内表面に縫合される場合を例示するが、空気流路変更部材16は、ファンから袖ぐり部14に向かう空気の流れを変更するための構成であれば、その取り付け位置及び形状については種々変更できる。
【0036】
{ポケット部}
ポケット部161は、その開口端の長さL1が、当該ポケット部161を縫い付けたウェア本体10の布地の長さL2よりも長くなるようになっている。
このようにすることで、空気流路変更部材16を縫い付けたウェア本体10の布地に対して、ポケット部161の開口端が撓んで開口状態となるため、ファン50によってウェア本体10内に取り込んだ外部の空気が、ポケット部161内に入り込むようになる。
なお、開口端の長さL1が、当該ポケット部161を縫い付けたウェア本体10の布地の長さL2よりも短くなるようにしても良い。
【0037】
{空気流出口}
空気流出口162は、ポケット部161内に入り込んだ空気を排出させるための構成であって、例えばメッシュや空気孔等からなる。
ポケット部161における空気流出口162の形成位置は任意であるが、例えば、ポケット部161の端部に空気流出口162を設けた場合、ポケット部161内に流入した空気が、空気流出口162から空気流路変更部材16の周辺を迂回して流れることとなり、脇下部分も充分に冷却することができるようになる。
【0038】
(空気排出部調整機構)
空気排出部調整機構17は、ウェア本体10の襟後部に設けられ、当該襟後部と着用者の首後部との間に形成される空気排出部20の開口度合いを調整するためのものであり、例えば首紐171と、被係着部172と、を備える。
【0039】
〔首紐、被係着部〕
首紐171は、
図2及び
図4に示すように、帯状部材1711と、係着部1712とを備える。帯状部材1711は、第1端部が服地の内表面に固着(例えば縫合)され、第2端部に係着部1712が設けられている。
被係着部172は、係着部1712と係着してこれを服地に取り付けるためのものであり、具体的には、ウェア本体10の襟部の中央からやや左側であって、その下部に複数(
図4においては2つ)並べられている。
【0040】
帯状部材1711の第1端部から係着部1712が設けられた第2端部までの長さは、第1端部からいずれの被係着部172までの襟部に沿った距離よりも短くなっている。このようにすることで、係着部1712を被係着部172に係着させる際、首後部から離れるように襟後部を撓ませる必要があるため、襟後部と着用者の首後部との間に空気排出部20が形成される。
【0041】
また、被係着部172は複数設けられているため、いずれかの被係着部172に係着部1712を係止させるかを変更することで、空気排出部20の開口度合いを調整することができる。
【0042】
なお、
図4においては、係着部1712としてボタンを、被係着部172としてボタンホールが設けられた布部材を服地に固着している場合を図示しているが、これに限られず、スナップボタンや面ファスナー等の適宜公知の構成を用いることができる。
【0043】
(空間確保手段)
空間確保手段18は、着用者の身体又は下着と、ウェア本体10の内表面との間の空間を確保するために、取付部13よりも上側に形成された、内部に空気が流通する空間を形成するための手段であり、例えばメッシュ状部材181と、開閉手段182と、スペーサ183とを備える。
【0044】
〔メッシュ状部材〕
メッシュ状部材181は、服地の内面側に取り付けられた網状の部材であり、服地の内面側の上記の位置に配置された上で固着(例えば縫合)される。
メッシュ状部材181の具体的な構成としては、メッシュの各開口部がスペーサ183の通過できない大きさであるとともに、スペーサ183を介してのウェア本体10内における空気の流通を妨げない程度の開口部を有するものであれば任意である。
【0045】
〔開閉手段〕
開閉手段182は、メッシュ状部材181の上端部と服地との間に形成された開口部を開閉自在とするための手段であり、例えば、
図2に示すように、メッシュ状部材181の端部近傍に延在するようにして面ファスナーの一方を備えると共に、服地のこれと対向する部分に面ファスナーの他方を取り付けることで、メッシュ状部材181の端部近傍を、服地に対して着脱自在とすることにより構成されている。
【0046】
〔スペーサ〕
スペーサ183は、内部に空気が流通する空間が形成された部材であり、メッシュ状部材181と服地との間の空間内に収納されて備えられている。
スペーサ183の構造としては、服地と、着用者の身体又は下着と、の間に、ファン50によってウェア本体10内に取り込まれた外部の空気を、各空気排出部20へと導くための空間を確保することができるものであれば任意であるが、例えば、特許第4067034号において開示されている、
図5に示すようなスペーサ構造Sを備えるものが用いることができる。
【0047】
具体的には、
図5に示すスペーサ構造Sは、枠状部S11と、一端が枠状部S11に連なり枠状部S11から起立するように形成された4本の柱部S12と、4本の柱部S12の他端を連結する連結部S13と、を有する凸部S1と、隣り合う凸部S1の枠状部S11同士を連結する可撓連結部S2と、を備え、可撓連結部S2を、枠状部S11よりも厚みが薄い帯状に形成することで、可撓連結部S2において曲がりやすくなり、一定の柔軟性を有するように構成されている。
このようなスペーサ構造Sを用いると、可撓連結部S2によって接続される凸部S1の個数を変更することで、任意の大きさ及び形状のスペーサ183を形成することができる。
【0048】
スペーサ構造Sを形成する材料としては、所定の荷重を加えた際に大きく変形しない程度の強度を有するものであれば任意である。着心地の観点からは、上記した所定の強度を有しつつ固すぎないものを用いることが好ましく、例えば、ポリエチレン(PE)や、荷重条件、荷重方向及びウェア本体10を着用した上に着用する対象物の重量によっては、さらに柔軟性のあるエラストマ(TPE)を用いることが好ましいが、特に限定されない。さらに、必要に応じて又は取り付ける場所によっては、複数段重ねて配置するようにしてもよい。
【0049】
スペーサ183は、上記のようなスペーサ構造Sを用いて、メッシュ状部材181の略全体に亘る大きさを有するように形成されている。また、スペーサ183は、メッシュ状部材181の開閉手段182を介してメッシュ状部材181から取り外し可能となっている。
【0050】
なお、本実施形態においては、メッシュ状部材181を介してスペーサ183を服地に取り付けるようにしたが、スペーサ183を服地に直接縫合したり、面ファスナー等の手段で服地に対して着脱自在としたりしてもよい。この場合、メッシュ状部材181は設けなくともよい。
【0051】
[発明の効果]
以上に示すように、本実施形態に係るファン付きウェア100のウェア本体10は、袖ぐり部14へと向かう一部の空気の流れ方向を変更する空気流路変更部材16を、服地の内表面に備える。
したがって、脇下部分の空気排出部20だけでなく、襟後部の空気排出部20からも空気が排出されることとなり、脇下部分だけでなく首後部、及び服内部を効果的に冷却することができる。
【0052】
また、
図2に示すように、空気流路変更部材16は、取付部13と、袖ぐり部14とを繋ぐ線分上に設けられるように構成すると、ファン50によってウェア本体10内に取り込まれた外部の空気の大半が、空気流路変更部材16に向かって流れることとなり、脇下部分のみが重点的に冷却されるのをより効果的に抑制することができるようになる。
【0053】
特に、
図2で示すように、脇下近傍に位置するようにファン50を設けた場合、より脇下方向へ流れる空気量が多くなるので、空気流路変更部材16による袖ぐり部14へと向かう空気の流れ方向を変更する効果をより発揮することができる。
【0054】
また、空気流路変更部材16は、取付部13の方向に開口したポケット部161と、ポケット部161に入り込んだ空気を袖ぐり部14の方向とは異なる方向に排出させる空気流出口162と、を備える。
したがって、空気の流れ方向をより効果的に制御することができるようになる、
【0055】
また、空気流出口162は、ポケット部161の端部に設けられている。
したがって、空気流出口162から排出された空気が、空気流路変更部材16を迂回するように流通することとなるため、脇下部分も充分に冷却することができるようになる。
【0056】
[変形例]
空気流路変更部材16がポケット部161を備える場合は、
図6に示すように、ポケット部161の開口度合いを調整可能な調整手段163を設けてもよい。
【0057】
調整手段163としては、具体的には例えば、
図6に示すような係止部であるボタンを設け、ウェア本体10に係止部を係止可能な被係止部19として、ボタンホールを設けることができるが、これに限られない。例えば、雌雄の面ファスナーや、線ファスナーなど適宜公知の構成を用いることができる。
【0058】
調整手段163によってポケット部161の開口度合いを小さくした場合、ファン50によってウェア本体10内に取り込まれた外部の空気の大半は、ポケット部161に入り込まずに、袖ぐり部14から排出されることとなり、脇下部分が重点的に冷却されるようになる。
【0059】
このように、調整手段163を設けることで、ポケット部161の開口度合いを大きいままとして首後部と脇下部分をバランスよく冷却するか、開口度合いを小さくすることで脇下部分を重点的に冷却するか、を着用者が任意に選択することができるようになる。
【0060】
また、空気流路変更部材16の具体的な構成としては、ファン50によってウェア本体10内に取り込んだ外部の空気のうち、袖ぐり部14へと向かう一部の空気の流れ方向を変更することができるものであれば任意であり、ポケット部161を備えるものに限られない。
例えば、ポケット部161を備えない、ウェア本体10の着用時に着用者の身体又は下着に略当接する、所定の厚みを有するスポンジ等の部材を、ウェア本体10を構成するシート状部材で覆ったものを、空気流路変更部材16としてもよい。
【0061】
また、空気流路変更部材16が、取付部13と袖ぐり部14とを繋ぐ線分上に設けられている構成を例示したが、ウェア本体10やファン50の構造によってはこれに限られない。
【0062】
また、空気流出口162は、空気流路変更部材16の一端部のみに設けるものとしても構わなく、空気流出口162を設ける箇所も、空気流路変更部材16の端部に限られない。
【0063】
また、胴体部1の襟後部にフード部を設けてもよい。
当該フード部は、ファン50によってウェア本体10内に送り込まれて流通した空気を排出する空気排出部20として機能する。
【0064】
その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0065】
1 胴体部
10 ウェア本体
13 取付部
14 袖ぐり部
16 空気流路変更部材
161 ポケット部
162 空気流出口
163 調整手段
183 スペーサ
19 被係止部
20 空気排出部
30 電源手段
50 ファン
100 ファン付きウェア