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特開2023-77633制御システムおよび水処理システムの制御系切り替え方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023077633
(43)【公開日】2023-06-06
(54)【発明の名称】制御システムおよび水処理システムの制御系切り替え方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 9/03 20060101AFI20230530BHJP
   C02F 1/00 20230101ALI20230530BHJP
【FI】
G05B9/03
C02F1/00 D
C02F1/00 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021190979
(22)【出願日】2021-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】芦村 雄太
(72)【発明者】
【氏名】樋口 淳
(72)【発明者】
【氏名】杉原 大
(72)【発明者】
【氏名】澁谷 亮太
(72)【発明者】
【氏名】清水 瞭
【テーマコード(参考)】
5H209
【Fターム(参考)】
5H209AA01
5H209BB03
5H209CC01
5H209SS01
(57)【要約】
【課題】冗長構成を持つ制御系の切り替え時に生じる圧力変動を低減させる。
【解決手段】流路を流れる液体の圧力を調節する調節弁110と、制御系から出力される制御信号を調節弁110へ出力する切り替え部130と、流路に流れる液体の水圧を測定する圧力計121-1,121-2と、当該系が制御系である場合、当該系の圧力計121-1,121-2が測定した測定値に基づいて制御信号を生成して切り替え部130へ出力する制御信号生成部122-1,122-2とを有し、制御信号生成部122-1,122-2は、当該系が待機系である場合、制御系である系から出力されてきた制御信号を切り替え部130へ出力し、当該系が待機系から制御系へ切り替えられると、切り替え前に出力していた制御信号の値を初期値として、当該系が有する圧力計121-1,121-2が測定した測定値に基づいて、制御信号を生成して切り替え部130へ出力する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水処理システムの流路を流れる液体の圧力を調節する調節弁と、
制御系と待機系とのいずれか一方で互いに排他的に動作する2つの系と、
前記制御系である系から出力される、前記調節弁の開度を制御する制御信号を前記調節弁へ出力する切り替え部とを有し、
前記2つの系それぞれは、
前記調節弁の上流に位置し、前記流路に流れる前記液体の水圧を測定する圧力計と、
当該系が前記制御系である場合、当該系が有する前記圧力計が測定した測定値に基づいて、前記制御信号を生成し、該生成した制御信号を前記切り替え部へ出力する制御信号生成部と、
前記制御系である前記制御信号生成部が生成した前記制御信号を前記待機系である前記制御信号生成部へ出力する系間出力部とを有し、
前記制御信号生成部は、当該系が前記待機系である場合、前記制御系である前記系が有する前記系間出力部から出力されてきた前記制御信号を前記切り替え部へ出力し、当該系が前記待機系から前記制御系へ切り替えられると、該切り替え前に出力していた前記制御信号の値を初期値として、当該系が有する前記圧力計が測定した測定値に基づいて、前記制御信号を生成し、該生成した制御信号を前記切り替え部へ出力する制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載の制御システムにおいて、
一方の前記制御系である前記系が有する前記系間出力部が出力してきた前記制御信号を前記待機系である前記系が有する前記制御信号生成部が受けるタイミングを遅延させる遅延部を有する制御システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の制御システムにおいて、
前記系は、当該系の障害の発生を検知し、該検知した障害の発生を前記切り替え部へ通知する障害検知部を有し、
前記切り替え部は、前記障害検知部からの通知に基づいて、前記制御系となる前記系を切り替え、該切り替えた旨を前記制御信号生成部へ通知する制御システム。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の制御システムにおいて、
外部からの操作に基づいて、情報を入力する入力部を有し、
前記切り替え部は、前記入力部が入力した情報に基づいて、前記制御系となる前記系を切り替え、該切り替えた旨を前記制御信号生成部へ通知する制御システム。
【請求項5】
制御系と待機系とのいずれか一方で互いに排他的に動作する2つの系を有する水処理システムの制御系切り替え方法であって、
前記2つの系それぞれが有する圧力計が、前記水処理システムの流路を流れる液体の圧力を調節する調節弁の上流の前記液体の水圧を測定する処理と、
前記制御系が、前記測定した測定値に基づいて、前記調節弁の開度を制御する制御信号を生成する処理と、
前記制御系が、前記生成した前記制御信号を前記待機系へ出力する処理と、
前記制御系が、前記生成した前記制御信号を前記調節弁へ出力する処理と、
前記待機系が、前記制御系へ切り替えられると、該切り替え前の制御系から出力されてきていた前記制御信号の値を初期値として、当該系が有する前記圧力計が測定した測定値に基づいて、前記制御信号を生成し、該生成した制御信号を前記調節弁へ出力する処理とを行う水処理システムの制御系切り替え方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御システムおよび水処理システムの制御系切り替え方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水処理を行う装置が具備された水処理システムにおいて、処理された水が循環されて用いられる技術が考えられている(例えば、特許文献1参照。)。このような水処理システムにおいては、循環される水の圧力を、圧力調節弁を用いて制御する。圧力を測定するセンサである圧力計と、測定された圧力の値に基づいて圧力調節弁の開度を制御する調節計とを用いて、循環される水の圧力が制御されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-030087号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した技術においては、圧力計と調節計との組み合わせが1組しかないため、これらの計器に故障が生じた場合や、メンテナンスを行う場合に、水処理システムの運用を停止しなければならず、使用先に影響が出てしまう。そこで、近年では、上記の組み合わせから構成される系を2つ具備させ、制御系と待機系として運転させ、制御系を切り替えて運転させる技術が用いられている。しかしながら、2つの系の切り替えを行う際、圧力調節弁への出力信号にバタつきが生じ、急激な圧力変動が生じてしまうおそれがあるという問題点がある。
【0005】
本発明の目的は、水処理システムの冗長構成を持つ制御系の切り替え時に生じる圧力変動を低減させることができる制御システムおよび水処理システムの制御系切り替え方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の制御システムは、
水処理システムの流路を流れる液体の圧力を調節する調節弁と、
制御系と待機系とのいずれか一方で互いに排他的に動作する2つの系と、
前記制御系である系から出力される、前記調節弁の開度を制御する制御信号を前記調節弁へ出力する切り替え部とを有し、
前記2つの系それぞれは、
前記調節弁の上流に位置し、前記流路に流れる前記液体の水圧を測定する圧力計と、
当該系が前記制御系である場合、当該系が有する前記圧力計が測定した測定値に基づいて、前記制御信号を生成し、該生成した制御信号を前記切り替え部へ出力する制御信号生成部と、
前記制御系である前記制御信号生成部が生成した前記制御信号を前記待機系である前記制御信号生成部へ出力する系間出力部とを有し、
前記制御信号生成部は、当該系が前記待機系である場合、前記制御系である前記系が有する前記系間出力部から出力されてきた前記制御信号を前記切り替え部へ出力し、当該系が前記待機系から前記制御系へ切り替えられると、該切り替え前に出力していた前記制御信号の値を初期値として、当該系が有する前記圧力計が測定した測定値に基づいて、前記制御信号を生成し、該生成した制御信号を前記切り替え部へ出力する。
【0007】
また、本発明の水処理システムの制御系切り替え方法は、
制御系と待機系とのいずれか一方で互いに排他的に動作する2つの系を有する水処理システムの制御系切り替え方法であって、
前記2つの系それぞれが有する圧力計が、前記水処理システムの流路を流れる液体の圧力を調節する調節弁の上流の前記液体の水圧を測定する処理と、
前記制御系が、前記測定した測定値に基づいて、前記調節弁の開度を制御する制御信号を生成する処理と、
前記制御系が、前記生成した前記制御信号を前記待機系へ出力する処理と、
前記制御系が、前記生成した前記制御信号を前記調節弁へ出力する処理と、
前記待機系が、前記制御系へ切り替えられると、該切り替え前の制御系から出力されてきていた前記制御信号の値を初期値として、当該系が有する前記圧力計が測定した測定値に基づいて、前記制御信号を生成し、該生成した制御信号を前記調節弁へ出力する処理とを行う。
【発明の効果】
【0008】
本発明においては、水処理システムの冗長構成を持つ制御系の切り替え時に生じる圧力変動を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の制御システムの第1の実施の形態が適用された水処理システムの一例を示す図である。
図2】第1の実施の形態における制御システムの具体的な構成の一例を示す図である。
図3図2に示した制御システムにおける制御系切り替え方法の一例を説明するためのシーケンス図である。
図4】第2の実施の形態における制御システムの具体的な構成の一例を示す図である。
図5図4に示した制御システムにおける制御系切り替え方法の一例を説明するためのシーケンス図である。
図6】第3の実施の形態における制御システムの具体的な構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
【0011】
図1は、本発明の制御システムの第1の実施の形態が適用された水処理システムの一例を示す図である。本形態における制御システム100は図1に示すように、水槽200に貯留されている液体を、ポンプ300を用いてユースポイント400へ供給する水処理システムに具備されている。ユースポイント400は、水槽200から供給された超純水を用いて、例えば、半導体装置等を洗浄するポイントである。水槽200には、ユースポイント400で使用される液体が貯留されている。ポンプ300は、水槽200に貯留されている液体を汲み上げてユースポイント400へ供給する。ユースポイント400へ供給された液体は制御システム100を介して水槽200へ戻される。つまり、水槽200から水槽200へ液体を戻す流路は、ユースポイント400および制御システム100を介した循環流路となっている。なお、図1には図示されていないが、水槽200とユースポイント400との間に1つまたは複数の水処理装置が具備されていても良い。制御システム100は、流路を流れる液体の圧力を制御する。
【0012】
図2は、第1の実施の形態における制御システム100の具体的な構成の一例を示す図である。第1の実施の形態における制御システム100は図2に示すように、調節弁110と、系120-1,120-2と、切り替え部130とを有する。なお、図2には、図1に示した制御システム100が具備する構成要素のうち、本形態に関わる主要な構成要素のみを示した。
【0013】
調節弁110は、図1に示した水処理システムの流路を流れる液体の圧力を調節する。具体的には、調節弁110は、外部からの制御に基づいて開度を調節するバルブである。
【0014】
2つの系120-1,120-2それぞれは、運用(制御)を行う制御系と、待機する待機系との互いに排他的な運転状態で動作する系統である。系120-1,120-2は、一方が制御系として運転しているとき、他方は待機系として運転する。
【0015】
系120-1は、圧力計121-1と、制御信号生成部122-1と、系間出力部123-1と、障害検知部125-1とを有する。系120-2は、圧力計121-2と、制御信号生成部122-2と、系間出力部123-2と、障害検知部125-2とを有する。
【0016】
圧力計121-1,121-2それぞれは、調節弁110の上流に位置し、流路に流れる液体の水圧を測定する。
【0017】
制御信号生成部122-1,122-2それぞれは、圧力計121-1,121-2それぞれが測定した測定値PV(Process Value)に基づいて、制御出力値MV(Manipulated Variable)を示す制御信号を生成する。この制御信号は、調節弁110を制御するための信号である。つまり、調節弁110は、制御信号生成部122-1,122-2それぞれが生成する制御信号を用いて、自身のバルブの開度の調節を行う。具体的には、制御信号生成部122-1,122-2それぞれは、圧力計121-1,121-2それぞれが測定したPVの値が所定の値になるように調節弁110の開度を制御するためのMVの値を示す制御信号を生成する。なお、制御系である系が有する制御信号生成部のみが、自系の圧力計が測定した測定値PVに基づいて、制御出力値MVを示す制御信号を生成するものでも良い。
【0018】
制御信号生成部122-1,122-2それぞれは、自系(自身の系)が制御系として運転している場合、自身が生成した制御信号を切り替え部130へ出力する。つまり、制御信号生成部122-1は、系120-1が制御系として運転している場合、自身が生成した制御信号を切り替え部130へ出力する。また、制御信号生成部122-2は、系120-2が制御系として運転している場合、自身が生成した制御信号を切り替え部130へ出力する。
【0019】
制御信号生成部122-1,122-2それぞれは、自系が待機系として運転している場合、他系が有する系間出力部123-2,123-1それぞれから出力されてきた制御信号を切り替え部130へ出力する。つまり、制御信号生成部122-1は、系120-1が待機系として運転している場合、系120-2が有する系間出力部123-2から出力されてきた制御信号を切り替え部130へ出力する。また、制御信号生成部122-2は、系120-2が待機系として運転している場合、系120-1が有する系間出力部123-1から出力されてきた制御信号を切り替え部130へ出力する。制御信号生成部122-1,122-2それぞれは、自系が現在制御系であるのか待機系であるのかを、切り替え部130からの通知によって認識する。
【0020】
制御信号生成部122-1,122-2それぞれは、自系が待機系から制御系へ切り替えられると、切り替え前に切り替え部130へ出力していた制御信号の値を初期値として、自系が有する圧力計121-1,121-2が測定した測定値に基づいて、制御信号を生成し、生成した制御信号を切り替え部130へ出力する。つまり、制御信号生成部122-1は、系120-1が待機系から制御系へ切り替えられると、切り替え前に切り替え部130へ出力していた制御信号の値を初期値として、圧力計121-1が測定した測定値に基づいて、制御信号を生成し、生成した制御信号を切り替え部130へ出力する。また、制御信号生成部122-2は、系120-2が待機系から制御系へ切り替えられると、切り替え前に切り替え部130へ出力していた制御信号の値を初期値として、圧力計121-2が測定した測定値に基づいて、制御信号を生成し、生成した制御信号を切り替え部130へ出力する。
【0021】
系間出力部123-1,123-2それぞれは、制御信号生成部122-1,122-2それぞれが生成した制御信号を他系(自身の系ではない他方の系)へ出力する。具体的には、系間出力部123-1は、制御信号生成部122-1が生成した制御信号を系120-2へ出力する。また、系間出力部123-2は、制御信号生成部122-2が生成した制御信号を系120-1へ出力する。なお、制御系である系が有する系間出力部のみが、自系の制御信号生成部が生成した制御信号を他系(待機系)へ出力するものでも良い。
【0022】
障害検知部125-1,125-2それぞれは、系120-1,120-2それぞれの障害の発生を検知する。障害検知部125-1,125-2それぞれは、検知した障害の発生を切り替え部130へ通知する。ここで、障害検知部125-1,125-2が検知する障害は、例えば、系120-1,120-2へ供給される電源の切断や、圧力計121-1,121-2から出力される信号の出力停止、圧力計121-1,121-2から出力された値が所定の範囲を外れたこと、制御信号生成部122-1,122-2が生成する信号の値が所定の範囲を外れたこと等である。これらの障害は、系120-1,120-2が正常に動作しないおそれがあると判定できるものであって、システムを設計する上で任意に設定されているものである。また、障害の検知方法は、特に規定しない。例えば、障害検知部125-1,125-2それぞれは、各構成要素からの出力信号の信号レベルが所定の閾値を超えたり、所定の範囲を外れたりした場合に、障害が発生したと判定しても良い。
【0023】
切り替え部130は、障害検知部125-1,125-2それぞれからの通知に基づいて、制御系となる系を切り替える。切り替え部130は、制御系を切り替えた際、切り替えた旨を制御信号生成部122-1,122-2へ通知する。切り替え部130は、制御系である系から出力される、調節弁110の開度を制御する制御信号を調節弁110へ出力する。例えば、現在の制御系が系120-1であり、待機系が系120-2である場合、切り替え部130は系120-1の制御信号生成部122-1から出力される制御信号を調節弁110へ出力する。その後、障害検知部125-1から障害を検知した旨の通知があると、切り替え部130は調節弁110へ出力する制御信号を系120-1の制御信号生成部122-1から出力される制御信号から系120-2の制御信号生成部122-2から出力される制御信号へ切り替える。そのとき、切り替え部130は、系120-1の制御信号生成部122-1に対して、制御系から待機系へ切り替えた旨を通知する。また、切り替え部130は、系120-2の制御信号生成部122-2に対して、待機系から制御系へ切り替えた旨を通知する。
【0024】
切り替え部130は、制御系と待機系とを切り替えた際だけではなく、系120-1,120-2へ系120-1,120-2それぞれが制御系であるか待機系であるかを連続的に(例えば、2値の数値を用いて当該数値が「0」を保持してる値であれば制御系であることを示し、「1」を保持している値であれば待機系であることを示すようなレベル信号を用いて)または周期的に(例えば、パルス信号を用いて)通知しても良い。切り替え部130が制御系と待機系とを切り替えた際にだけ系120-1,120-2へ通知を行う場合、系120-1,120-2それぞれにおいて、所定のメモリ等の記憶手段に制御系であるか待機系であるかを示す数値を保持しておいても良い。また、系120-1,120-2から切り替え部130へ所定のリクエスト信号が出力され、そのリクエスト信号へのレスポンスとして切り替え部130が系120-1,120-2それぞれへ制御系であるか待機系であるかを通知しても良い。
【0025】
以下に、図2に示した制御システム100における制御系切り替え方法について説明する。図3は、図2に示した制御システム100における制御系切り替え方法の一例を説明するためのシーケンス図である。現在、系120-1が制御系として動作し、系120-2が待機系として動作している場合を例に挙げる。
【0026】
まず、圧力計121-1が測定した測定値に基づいて制御信号生成部122-1が生成した制御信号を、系間出力部123-1が系120-2へ出力する(ステップS1)。同様に、圧力計121-2が測定した測定値に基づいて制御信号生成部122-2が生成した制御信号を、系間出力部123-2が系120-1へ出力する(ステップS2)。
【0027】
現在、系120-1が制御系であるため、系120-1の制御信号生成部122-1は、生成した制御信号を切り替え部130へ出力する(ステップS3)。一方、系120-2は待機系であるため、系120-2の制御信号生成部122-2は、系120-1の系間出力部123-1から出力されてきた制御信号を切り替え部130へ出力する(ステップS4)。
【0028】
その後、障害検知部125-1が系120-1において障害を検知すると(ステップS5)、障害検知部125-1は障害を検知した旨を切り替え部130へ通知する(ステップS6)。すると、切り替え部130は、制御系を切り替える(ステップS7)。具体的には、切り替え部130は、現在制御系で動作している系120-1を待機系に切り替え、現在待機系で動作している系120-2を制御系に切り替える。また、切り替え部130は、調節弁110へ出力する制御信号を系120-1の制御信号生成部122-1から出力される制御信号から系120-2の制御信号生成部122-2から出力される制御信号へ切り替える。切り替え部130は、制御系と待機系との切り替えを系120-1,120-2それぞれへ通知する(ステップS8)。このとき、切り替え部130は、制御系と待機系とを切り替えたことのみを系120-1,120-2それぞれへ通知しても良い。また、切り替え部130は、系120-1へ制御系から待機系へ切り替えたことを通知し、系120-2へ待機系から制御系へ切り替えたことを通知しても良い。
【0029】
すると、系120-2の制御信号生成部122-2は、自身の系120―2が制御系に切り替わったことを認識し、制御信号生成部122-2が生成した制御信号を切り替え部130へ出力する(ステップS9)。このとき、制御信号生成部122-2は、切り替え前に切り替え部130へ出力していた制御信号の値を初期値として、圧力計121-2が測定した測定値に基づいて、制御信号を生成し、生成した制御信号を切り替え部130へ出力する。一方、系120-1の制御信号生成部122-1は、自身の系120―1が待機系に切り替わったことを認識し、系120-2の系間出力部123-2から出力されてきた制御信号を切り替え部130へ出力する(ステップS10)。
【0030】
このように、水処理システムを流れる液体の圧力を調節する調節弁を制御する系を複数設け、制御系である系で生成される制御信号を、当該系と待機系である系とから出力させ、制御系として動作している系から出力されてきた制御信号を切り替え部が調節弁へ出力する。このような冗長構成をとることにより、制御系の動作に障害が生じた場合であっても、PID(Proportional Integral Differential)制御を継続させ、システム全体の運用を止めることを防止することができる。また、待機系から制御系へ切り替えられた系から出力される制御信号を、切り替え前に出力されていた値を初期値として演算して出力していくことで、制御系を切り替える際に、制御信号の急激な変化を抑制することができる。このように本形態においては、水処理システムの冗長構成を持つ制御系の切り替え時に生じる圧力変動を低減させることができる。
(第2の実施の形態)
【0031】
図4は、第2の実施の形態における制御システムの具体的な構成の一例を示す図である。第2の実施の形態における制御システム101は図4に示すように、調節弁110と、系120-3,120-4と、切り替え部131と、入力部140とを有する。なお、図4には、制御システム101が具備する構成要素のうち、本形態に関わる主要な構成要素のみを示した。調節弁110は、第1の実施の形態におけるものと同じものである。
【0032】
2つの系120-3,120-4それぞれは、運用(制御)を行う制御系と、待機する待機系との互いに排他的な運転状態で動作する系統である。系120-3,120-4は、一方が制御系として運転しているとき、他方は待機系として運転する。
【0033】
系120-3は、圧力計121-1と、制御信号生成部122-1と、系間出力部123-1とを有する。系120-4は、圧力計121-2と、制御信号生成部122-2と、系間出力部123-2とを有する。圧力計121-1,121-2、制御信号生成部122-1,122-2および系間出力部123-1,123-2それぞれは、第1の実施の形態におけるものとそれぞれ同じものである。
【0034】
入力部140は、外部からの操作に基づいて情報を入力する。入力部140が入力する情報は、系120-3と系120-4とのどちらが制御系であるかを示す情報またはどちらが待機系であるかを示す情報である。または、入力部140が入力する情報は、制御系を切り替えることを示す情報である。入力部140は、外部からの操作に基づいて情報を入力できるものであれば良い。例えば、入力部140は、キーボードやマウス、タッチパネル、スイッチ等である。
【0035】
切り替え部131は、入力部140が入力した情報に基づいて、制御系となる系を切り替える。切り替え部131は、制御系を切り替えた際、切り替えた旨を制御信号生成部122-1,122-2へ通知する。切り替え部131は、制御系である系から出力される、調節弁110の開度を制御する制御信号を調節弁110へ出力する。例えば、現在の制御系が系120-3であり、待機系が系120-4である場合、切り替え部131は系120-3の制御信号生成部122-1から出力される制御信号を調節弁110へ出力する。その後、入力部140に制御系の切り替えを行うための情報の入力があると、切り替え部131は調節弁110へ出力する制御信号を系120-3の制御信号生成部122-1から出力される制御信号から系120-4の制御信号生成部122-2から出力される制御信号へ切り替える。そのとき、切り替え部131は、系120-3の制御信号生成部122-1に対して、制御系から待機系へ切り替えた旨を通知する。また、切り替え部131は、系120-4の制御信号生成部122-2に対して、待機系から制御系へ切り替えた旨を通知する。
【0036】
切り替え部131は、制御系と待機系とを切り替えた際だけではなく、系120-3,120-4へ系120-3,120-4それぞれが制御系であるか待機系であるかを連続的に(例えば、レベル信号を用いて)または周期的に(例えば、パルス信号を用いて)通知しても良い。切り替え部131が制御系と待機系とを切り替えた際にだけ系120-3,120-4へ通知を行う場合、系120-3,120-4それぞれにおいて、所定のレジスタ等の記憶部に制御系であるか待機系であるかを示す数値を保持しておいても良い。また、系120-3,120-4から切り替え部131へ所定のリクエスト信号が出力され、そのリクエスト信号へのレスポンスとして切り替え部131が系120-3,120-4それぞれへ制御系であるか待機系であるかを通知しても良い。
【0037】
以下に、図4に示した制御システム101における制御系切り替え方法について説明する。図5は、図4に示した制御システム101における制御系切り替え方法の一例を説明するためのシーケンス図である。現在、系120-3が制御系として動作し、系120-4が待機系として動作している場合を例に挙げる。
【0038】
まず、圧力計121-1が測定した測定値に基づいて制御信号生成部122-1が生成した制御信号を、系間出力部123-1が系120-4へ出力する(ステップS21)。同様に、圧力計121-2が測定した測定値に基づいて制御信号生成部122-2が生成した制御信号を、系間出力部123-2が系120-3へ出力する(ステップS22)。
【0039】
現在、系120-3が制御系であるため、系120-3の制御信号生成部122-1は、生成した制御信号を切り替え部131へ出力する(ステップS23)。一方、系120-4は待機系であるため、系120-4の制御信号生成部122-2は、系120-3の系間出力部123-1から出力されてきた制御信号を切り替え部131へ出力する(ステップS24)。
【0040】
その後、入力部140が外部から制御系の切り替えを行うための操作を受け付けると(ステップS25)、入力部140は受け付けた操作に基づいて入力した情報を切り替え部131へ出力する(ステップS26)。すると、切り替え部131は、制御系を切り替える(ステップS27)。具体的には、切り替え部131は、現在制御系で動作している系120-3を待機系に切り替え、現在待機系で動作している系120-4を制御系に切り替える。また、切り替え部131は、調節弁110へ出力する制御信号を系120-3の制御信号生成部122-1から出力される制御信号から系120-4の制御信号生成部122-2から出力される制御信号へ切り替える。切り替え部131は、制御系と待機系との切り替えを系120-3,120-4それぞれへ通知する(ステップS28)。このとき、切り替え部131は、制御系と待機系とを切り替えたことのみを系120-3,120-4それぞれへ通知しても良い。また、切り替え部131は、系120-3へ制御系から待機系へ切り替えたことを通知し、系120-4へ待機系から制御系へ切り替えたことを通知しても良い。
【0041】
すると、系120-4の制御信号生成部122-2は、自身の系120―4が制御系に切り替わったことを認識し、制御信号生成部122-2が生成した制御信号を切り替え部131へ出力する(ステップS29)。このとき、制御信号生成部122-2は、切り替え前に切り替え部131へ出力していた制御信号の値を初期値として、圧力計121-2が測定した測定値に基づいて、制御信号を生成し、生成した制御信号を切り替え部131へ出力する。一方、系120-3の制御信号生成部122-1は、自身の系120―3が待機系に切り替わったことを認識し、系120-4の系間出力部123-2から出力されてきた制御信号を切り替え部131へ出力する(ステップS30)。
【0042】
このように、水処理システムを流れる液体の圧力を調節する調節弁を制御する系を複数設け、制御系である系で生成される制御信号を、当該系と待機系である系とから出力させ、制御系として動作している系から出力されてきた制御信号を切り替え部が調節弁へ出力する。このような冗長構成をとることにより、系のメンテナンス等を行うために現在運用している系の動作を止める必要が生じた場合であっても、PID制御を継続させ、システム全体の運用を止めることを防止することができる。また、待機系から制御系へ切り替えられた系から出力される制御信号を、切り替え前に出力されていた値を初期値として演算して出力していくことで、制御系を切り替える際に、制御信号の急激な変化を抑制することができる。このように本形態においては、水処理システムの冗長構成を持つ制御系の切り替え時に生じる圧力変動を低減させることができる。
(第3の実施の形態)
【0043】
図6は、第2の実施の形態における制御システムの具体的な構成の一例を示す図である。第2の実施の形態における制御システム102は図6に示すように、調節弁110と、系120-1,120-2と、切り替え部130と、遅延部150とを有する。なお、図6には、制御システム102が具備する構成要素のうち、本形態に関わる主要な構成要素のみを示した。調節弁110,系120-1,120-2および切り替え部130それぞれは、第1の実施の形態におけるそれぞれのものと同じものである。
【0044】
遅延部150は、一方の系が有する系間出力部が出力してきた制御信号を他方の系が受けるタイミングを遅延させる。具体的には、遅延部150は、系120-1の系間出力部123-1から出力されてきた制御信号を所定の時間遅延させて系120-2の制御信号生成部122-2へ出力する。また、遅延部150は、系120-2の系間出力部123-2から出力されてきた制御信号を所定の時間遅延させて系120-1の制御信号生成部122-1へ出力する。この遅延時間の長さは、特に規定しない。また、時間を遅延させる手段は、一般的な遅延素子を用いても良く、特に規定しない。
【0045】
このように、水処理システムを流れる液体の圧力を調節する調節弁を制御する系を複数設け、制御系である系で生成される制御信号を、当該系と待機系である系とから出力させ、制御系として動作している系から出力されてきた制御信号を切り替え部が調節弁へ出力する。このような冗長構成をとることにより、制御系の動作に障害が生じた場合であっても、PID制御を継続させ、システム全体の運用を止めることを防止することができる。また、待機系から制御系へ切り替えられた系から出力される制御信号を、切り替え前に出力されていた値を初期値として演算して出力していくことで、制御系を切り替える際に、制御信号の急激な変化を抑制することができる。さらに、一方の系から他方の系へ出力される制御信号を遅延させる。これにより、制御信号の切り替えのタイミングを、切り替え部130のおける制御系の切り替えのタイミングよりも後にすることができる。このように本形態においては、水処理システムの冗長構成を持つ制御系の切り替え時に生じる圧力変動を低減させることができる。
【0046】
なお、本発明は、図1に示した形態以外に、例えば、ポンプ300が水槽200から汲み上げた液体を制御システム100へ供給し、制御システム100にて制御された液体がユースポイント400へ供給される形態にも適用できる。この場合、制御システム100にて制御された液体は、水槽200へ戻される。また、上述した形態においては、圧力に基づいた制御を行う場合を例に挙げて説明したが、流量や水位、温度(水温)に基づいた制御を行うものでも良い。また、本発明は、調節弁以外の制御機器(例えば、インバータ等)を調節するシステムにも適用可能である。
【0047】
以上、各構成要素に各機能(処理)それぞれを分担させて説明したが、この割り当ては上述したものに限定しない。また、構成要素の構成についても、上述した形態はあくまでも例であって、これに限定しない。また、各実施の形態を組み合わせたものであっても良い。
【符号の説明】
【0048】
100~102 制御システム
110 調節弁
120-1~120-4 系
121-1,121-2 圧力計
122-1,122-2 制御信号生成部
123-1,123-2 系間出力部
125-1,125-2 障害検知部
130,131 切り替え部
140 入力部
150 遅延部
200 水槽
300 ポンプ
400 ユースポイント
図1
図2
図3
図4
図5
図6