(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023077636
(43)【公開日】2023-06-06
(54)【発明の名称】タイヤ摩耗性能値の算出方法、システム、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
B60C 19/00 20060101AFI20230530BHJP
G01M 17/02 20060101ALI20230530BHJP
B60C 11/24 20060101ALI20230530BHJP
【FI】
B60C19/00 B
G01M17/02
B60C11/24 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021190982
(22)【出願日】2021-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中本 智
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131LA21
(57)【要約】
【課題】タイヤに作用する荷重変動を考慮してタイヤ摩耗性能値を算出可能なタイヤ摩耗性能値の算出方法、システム、及びプログラムを提供する。
【解決手段】車両の前後方向、左右方向及び上下方向の3方向の加速度を有する計測データを複数個取得し、3方向の区間の組み合わせで構成される複数の走行モードを設定し、複数個の計測データを複数の走行モードのうちのいずれかの走行モードに分類し、各々の走行モードにおいて分類された計測データの数と全ての計測データ数とに基づいて走行モードの頻度を算出し、各走行モードについて前後方向の加速度、左右方向の加速度及び静止時の荷重から第1摩擦エネルギーを取得し、各走行モードについて上下方向の加速度に基づき第1摩擦エネルギーを補正して第2摩擦エネルギーに第1摩擦エネルギーを変換し、各々の走行モードの第2摩擦エネルギーおよび頻度に基づいてタイヤ摩耗性能値を算出する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1又は複数のプロセッサが実行する方法であって、
車両走行中に3軸加速度センサで計測された車両の前後方向、左右方向及び上下方向の3方向の加速度を有する計測データを複数個取得し、
加速度の3方向それぞれの方向に対して細分化した複数の区間を設定し、3方向の区間の組み合わせで構成される複数の走行モードを設定し、
取得した複数個の計測データをそれぞれ、複数の走行モードのうちのいずれかの走行モードに分類し、
各々の走行モードについて、分類された計測データの数と全ての計測データ数とに基づいて各々の走行モードの頻度を算出し、
計測データが分類された走行モードについて、前後方向の加速度、左右方向の加速度及び静止時の荷重から第1摩擦エネルギーを取得し、
前記第1摩擦エネルギーが取得された走行モードについて、上下方向の加速度に基づき第1摩擦エネルギーを補正して上下方向の荷重変動を加味した第2摩擦エネルギーに第1摩擦エネルギーを変換し、
各々の走行モードの前記第2摩擦エネルギーおよび前記頻度に基づいてタイヤ摩耗性能値を算出する、タイヤ摩耗性能値の算出方法。
【請求項2】
前記上下方向の加速度から第1摩擦エネルギーを補正して上下方向の荷重変動を加味した第2摩擦エネルギーに変換する処理は、次の式(1)を用いて算出する、請求項1に記載の方法。
第2摩擦エネルギー=第1摩擦エネルギー×(1G+上下加速度)/1G …(1)
ただし、Gは重力加速度を表す。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法を実行する1又は複数のプロセッサを備えるシステム。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の方法を1又は複数のプロセッサに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タイヤ摩耗性能値の算出方法、システム、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの摩耗性能値を評価するために、車両の前後左右の加速度に基づき摩擦エネルギーを算出し、摩擦エネルギーからタイヤの摩耗性能値を算出する手法が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-123941号公報
【特許文献2】特開2011-149879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両走行中に、タイヤに作用する荷重が変動し、荷重変動は摩擦エネルギーに影響を与えるため、タイヤに作用する荷重変動を考慮することが望まれる。
【0005】
本開示は、タイヤに作用する荷重変動を考慮してタイヤ摩耗性能値を算出可能なタイヤ摩耗性能値の算出方法、システム、及びプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のタイヤ摩耗性能値の算出方法は、1又は複数のプロセッサが実行する方法であって、車両走行中に3軸加速度センサで計測された車両の前後方向、左右方向及び上下方向の3方向の加速度を有する計測データを複数個取得し、加速度の3方向それぞれの方向に対して細分化した複数の区間を設定し、3方向の区間の組み合わせで構成される複数の走行モードを設定し、取得した複数個の計測データをそれぞれ、複数の走行モードのうちのいずれかの走行モードに分類し、各々の走行モードについて、分類された計測データの数と全ての計測データ数とに基づいて各々の走行モードの頻度を算出し、計測データが分類された走行モードについて、前後方向の加速度、左右方向の加速度及び静止時の荷重から第1摩擦エネルギーを取得し、前記第1摩擦エネルギーが取得された走行モードについて、上下方向の加速度に基づき第1摩擦エネルギーを補正して上下方向の荷重変動を加味した第2摩擦エネルギーに第1摩擦エネルギーを変換し、各々の走行モードの前記第2摩擦エネルギーおよび前記頻度に基づいてタイヤ摩耗性能値を算出する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】タイヤ摩耗評価値の算出方法を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0009】
[システム]
本実施形態のシステム1は、摩擦エネルギーを算出し、算出した摩擦エネルギーに基づいてタイヤの摩耗性能値を算出する。
【0010】
図1に示すように、システム1は、計測データ取得部10と、加速度頻度分布データ生成部11と、第1摩擦エネルギー取得部15と、変換部16と、タイヤ摩耗性能値算出部17と、を有する。加速度頻度分布データ生成部11は、走行モード設定部12と、データ分類部13と、頻度算出部14と、を有する。これら各部(10~17)は、プロセッサ1a、メモリ1b、各種インターフェイス等を備えたコンピュータにおいて予め記憶されている
図2に示す処理ルーチンをプロセッサ1aが実行することによりソフトウェア及びハードウェアが協働して実現される。本実施形態では、1つの装置におけるプロセッサ1aが各部を実現しているが、これに限定されない。例えば、ネットワークを用いて分散させ、複数のプロセッサが各部の処理を実行するように構成してもよい。すなわち、1又は複数のプロセッサが処理を実行する。メモリ1bは、計測データ、加速度頻度分布データ、走行モード毎の第1摩擦エネルギー、走行モード毎の第2摩擦エネルギー、タイヤ摩耗性能値などを記憶する。
【0011】
計測データ取得部10は、複数個の計測データを取得する。計測データは、車両2に設けられた3軸の加速度センサ20が走行中に計測した加速度を含む。計測データは、車両2の3方向の加速度、つまり、車両2の前後方向の加速度Ax、左右方向の加速度Ay、上下方向の加速度Azを含む。加速度の単位は[m/s2]である。また、計測データは、距離に換算可能なデータを含む又は距離に換算可能なデータと関連付けられている。本実施形態において、計測データは、一定のサンプリング時間(計測の間隔であり、例えば0.1秒(10Hz))で計測されている。速度とサンプリング時間は距離に換算可能である。それゆえ、計測データは、距離に換算可能なデータとしての速度を有する。また、計測データは、距離に換算可能なデータとしてのサンプリング時間(サンプリング周波数)に関連付けられている(例えば、速度が16m/sでサンプリング時間が0.1秒(10Hz)であれば、計測データ1つあたりの距離は16÷10=1.6m、と算出できるからである)。速度は、位置情報に基づき算出、車輪回転速度に基づき取得、対地速度計21を用いて取得することができる。
【0012】
計測データ取得部10は、計測データを取得できれば、どのような手段で加速度センサ20から計測データを取得してもよい。例えば、車両に搭載されたコンピュータの記憶媒体に計測データが記憶され、車両走行の完了後に、その記録媒体がシステム1の読み取り装置に取り付けられて、読み取り装置から計測データを取得するようにしてもよい。また、計測データ取得部10は、車両の加速度センサ20を含むコンピュータから無線通信で計測データを受領してもよい。
【0013】
本実施形態において、複数個の計測データは、車両2が、所定の走行コースを走行する間に、加速度センサ20の加速度の計測により生成されることが挙げられる。例えば、走行コースのスタート地点にて停止状態から加速し、カーブ手前で減速してカーブを曲がり、その後に加速し、その後、加速や減速、旋回を繰り返した後に、走行コースのゴール地点で停止するまでに、加速度センサ20が加速度を計測することが一例として挙げられる。
【0014】
なお、本実施形態では、計測データは、一定時間間隔で計測された速度を有するが、これに限定されない。例えば、計測データは、位置情報を距離に換算可能なデータとしての位置情報を含む、又は、位置情報を距離に換算可能なデータとしての位置情報に関連付けられていてもよい。位置情報は、GPSに基づく衛生位置情報を取得するGPS受信器のほか種々の位置情報取得機器において一定時間間隔で取得可能である。また、計測データは、一定時間ごとに計測するのではなく、車両2が一定距離を走行する度に計測するようにしてもよい。この場合、計測データ自体が距離に関連付けられていることになる。計測データは、メモリ1bに記憶される。
【0015】
加速度頻度分布データ生成部11は、加速度頻度分布データを生成する。加速度分布データは、複数の走行モードと、各々の走行モードの頻度とを有する。
図3に模式的に示すように、加速度の3方向それぞれの方向に対して細分化(分割)した複数の区間を設定する。
図3では1つのボックスの辺が1つの区間に相当する。1つの走行モードは、
図3に示すように1つのボックスで表すことができる。1つのボックス(走行モード)は、3方向の区間(辺)の組み合わせで構成される。本実施形態では、3方向をそれぞれ0.05m/s
2毎に分割しており、それゆえに、1つの走行モード(ボックス)の加速度の範囲(辺の幅)は0.05m/s
2である。区間の幅が0.05m/s
2であるので、各々の走行モードの代表値は、+0.10[m/s
2],+0.05[m/s
2],0[m/s
2],-0.05[m/s
2],-0.10[m/s
2]というように変化する。
図3に例示するように、或る走行モードM1は、代表値の前後加速度Ax、代表値の左右加速度Ay、代表値の上下加速度Az、及び頻度(頻度値:0.1)を有する。同様に、或る走行モードM2は、代表値の前後加速度Ax、代表値の左右加速度Ay、代表値の上下加速度Az、及び頻度(頻度値:0.01)を有する。頻度値は、その走行モードが、全ての計測データにおいて出現する頻度を表す。
図3の例では、頻度値を小数で表現しており、全ての走行モードの頻度値を積算すれば、1.0になるようにしている。
図3に示すように、計測される加速度は、正の値(+)だけでなく、負の値(-)も含まれる。例えば、走行モードM1の前後加速度Axは0[m/s
2]であり、左右加速度Ayは正の値であり、上下加速度Azは正の値である。走行モードM2の前後加速度Axは負の値であり、左右加速度Ayは負の値であり、上下加速度Azは正の値である。このように、各々の走行モードにおける3方向の加速度の値は異なる。なお、前後加速度Axは、車両2の前方が正の値であり、車両2の後方が負の値である。左右加速度Ayは、車両2の右方が正の値であり、車両2の左方が負の値である。上下加速度Azは、車両2の下方が正の値であり、車両2の上方が負の値である。
【0016】
図3に示す加速度頻度分布データは、前後方向の区間が11個、左右方向の区間が11個、上下方向の区間が6個であり、走行モードが11×11×6=726個の例を挙げているが、区間の数は分解能であり、任意に設定可能である。例えば、走行モードの数を(41×41×41)にしてもよい。
【0017】
走行モード設定部12は、
図3に示すように、加速度の3方向それぞれの方向に対して細分化した複数の区間を設定し、3方向の区間の組み合わせで構成される複数の走行モードを設定する。本実施形態では、複数の区間の大きさは一定であるが、一定でなくてもよい。
【0018】
データ分類部13は、計測データ取得部10が取得した複数個の計測データをそれぞれ、走行モード設定部12が設定した複数の走行モードのうちのいずれかの走行モードに分類する。計測データは、各方向の加速度が合致する走行モードに分類される。例えば、前後加速度Axが0.12m/s2の場合、代表値が0.10m/s2であり且つ加速度範囲が0.075~0.125m/s2である走行モードに分類される。これにより、計測データは、必ずいずれかの走行モードに分類される。走行モードは、1つも計測データが分類されない場合があり、また、分類される計測データの数も異なる。
【0019】
頻度算出部14は、各々の走行モードについて、分類された計測データの数と全ての計測データの数とに基づいて各々の走行モードの頻度を算出する。頻度(頻度値)は、分類された計測データの数を、全ての計測データの数で除算することで算出可能である。走行モードの数がN個ある場合には、頻度の計算はN回実行される。これにより、加速度頻度分布データが生成される。
本実施形態では、一定時間の間隔で計測しているため、計測データは時間単位で表され、単純に計測データの数で算出した頻度は、時間単位の頻度となる。摩擦エネルギーは、タイヤと路面との接触回数に対応する距離単位に基づき算出されることが好ましい。そこで、本実施形態では、データを時間単位から距離単位に変換する処理を実行している。具体的には、各々の走行モードの速度と時間に基づいてその走行モードにおける走行距離を算出し、各々の走行モードにおける走行距離が全体の走行距離に占める頻度を算出している。
もちろん、計測データを一定距離走行する度に計測している場合には、データが既に距離単位のデータであるので、計測データの数に基づき頻度を算出してもよい。
【0020】
第1摩擦エネルギー取得部15は、計測データが分類された走行モードについて、前後方向の加速度、左右方向の加速度及び静止時の荷重から第1摩擦エネルギーを取得する。摩擦エネルギーは、タイヤと路面の間に作用するせん断力にすべり量を乗ずることで算出できる。第1摩擦エネルギーは、静止時の荷重と荷重が同一であるとして、前後方向の加速度および左右方向の加速度が発現する状態において生じる摩擦エネルギーである。第1摩擦エネルギーは、静止時の荷重を用いて算出されているので、上下方向の加速度による荷重変動が考慮されていない。第1摩擦エネルギーは、FEM(有限要素法)等のコンピュータシミュレーションや、実験による実測値に基づいて取得可能であり、公知であるので詳細な説明を省略する。
例えば、各々の走行モードにおける前後方向の加速度、左右方向の加速度および静止時の荷重を、既存の摩擦エネルギーシミュレーションシステムに入力すれば、第1摩擦エネルギーが出力される、としてもよい。摩擦エネルギーシミュレーションシステムは、例えば、タイヤモデルを路面に指定荷重(入力された静止時の荷重)をかけて接触させ、指定された条件(前後方向の加速度および左右方向の加速度)になるようにタイヤモデルを転動させ、タイヤのトレッド表面の任意の節点に生じる前後方向のせん断力、前後方向のすべり変位、左右方向のせん断力、及び左右方向のすべり変位をシミュレーションで算出する。前後方向及び左右方向のせん断力とすべり変位量から摩擦エネルギーを算出できる。
例えば、各々の走行モードにおける前後方向の加速度、左右方向の加速度および静止時の荷重を、タイヤ試験機に入力し、得られる計測結果に基づいて算出された第1摩擦エネルギーが出力される、としてもよい。タイヤ試験機は、例えば、タイヤを路面に指定荷重(入力された静止時の荷重)をかけて接触させ、指定された条件(前後方向の加速度および左右方向の加速度)になるように転動させる。その際に、路面の圧力センサやモータに基づいて、タイヤのトレッド表面の任意点に生じる前後方向のせん断力、前後方向のすべり変位、左右方向のせん断力、及び左右方向のすべり変位を計測する。前後方向及び左右方向のせん断力とすべり変位量から各方向の摩擦エネルギーを算出できる。
【0021】
変換部16は、第1摩擦エネルギーが取得した走行モードについて、上下方向の加速度から第1摩擦エネルギーを補正して上下方向の荷重変動を加味した第2摩擦エネルギーに第1摩擦エネルギーを変換する。せん断力は荷重に比例する関係にあるためである。具体的に、第1摩擦エネルギーを第2摩擦エネルギーに変換する処理は、次の式(1)を用いて算出する。この変換処理は、走行モード毎に実行されるので、変換処理の実行回数は、走行モードの数である。
第2摩擦エネルギー=第1摩擦エネルギー×{(1G+上下加速度)/1G} …(1)
ただし、Gは重力加速度(1G=9.80665m/s2)を表す。
{(1G+上下加速度)/1G}は、補正係数ともいえ、第2摩擦エネルギー=第1摩擦エネルギー×補正係数 と表現可能である。
これにより、摩擦エネルギーのレベルで、上下方向の加速度による荷重変動を考慮していない第1摩擦エネルギーを、上下方向の加速度による荷重変動を考慮した第2摩擦エネルギーに変換可能となる。
【0022】
タイヤ摩耗性能値算出部17は、各々の走行モードの第2摩擦エネルギーおよび頻度に基づいてタイヤ摩耗性能値を算出する。一例として、各走行モードの頻度に応じた重み付けを第2摩擦エネルギーにかけて積算することが挙げられる(例えば、特開2015-123941号公報参照)。摩擦エネルギーからタイヤ摩耗性能値を算出することは、公知であるので、説明を省略する。タイヤ摩耗性能値は、タイヤ全体での摩耗量としてタイヤ同士を比較可能にする値であってもよいし、第2摩擦エネルギーとさらに別のデータを用いて1つのタイヤの一部位(例えばトレッドのブロック)毎の摩耗量を比較可能にする値であってもよい。
【0023】
[タイヤ摩耗性能値の算出方法]
タイヤ摩耗性能値の算出方法を、
図2を用いて説明する。
【0024】
まず、ステップST1において、加速度センサ20は、車両走行中に、車両の前後方向、左右方向及び上下方向の3方向の加速度を複数回計測する。本実施形態では、0.1秒に1回計測している(10Hz)。
ステップST2において、計測データ取得部10は、車両の前後方向、左右方向及び上下方向の3方向の加速度を有する計測データを複数個取得する。
ステップST3において、走行モード設定部12は、加速度の3方向それぞれの方向に対して細分化した複数の区間を設定し、3方向の区間の組み合わせで構成される複数の走行モードを設定する。
ステップST4において、データ分類部13は、取得した複数個の計測データをそれぞれ、複数の走行モードのうちのいずれかの走行モードに分類する。
ステップST5において、頻度算出部14は、各々の走行モードについて、分類された計測データの数と全ての計測データ数とに基づいて各々の走行モードの頻度を算出する。
ステップST6において、第1摩擦エネルギー取得部15は、計測データが分類された走行モードについて、前後方向の加速度、左右方向の加速度及び静止時の荷重から第1摩擦エネルギーを取得する。
ステップST7において、変換部16は、第1摩擦エネルギーが取得された走行モードについて、上下方向の加速度に基づき第1摩擦エネルギーを補正して上下方向の荷重変動を加味した第2摩擦エネルギーに変換する。
ステップST8において、タイヤ摩耗性能値算出部17は、各々の走行モードの第2摩擦エネルギーおよび頻度に基づいてタイヤ摩耗性能値を算出する。
【0025】
以上、本実施形態のように、タイヤ摩耗性能値の算出方法は、1又は複数のプロセッサが実行する方法であって、車両走行中に3軸加速度センサで計測された車両の前後方向、左右方向及び上下方向の3方向の加速度を有する計測データを複数個取得し、加速度の3方向それぞれの方向に対して細分化した複数の区間を設定し、3方向の区間の組み合わせで構成される複数の走行モードを設定し、取得した複数個の計測データをそれぞれ、複数の走行モードのうちのいずれかの走行モードに分類し、各々の走行モードについて、分類された計測データの数と全ての計測データ数とに基づいて各々の走行モードの頻度を算出し、計測データが分類された走行モードについて、前後方向の加速度、左右方向の加速度及び静止時の荷重から第1摩擦エネルギーを取得し、第1摩擦エネルギーが取得された走行モードについて、上下方向の加速度に基づき第1摩擦エネルギーを補正して上下方向の荷重変動を加味した第2摩擦エネルギーに第1摩擦エネルギーを変換し、各々の走行モードの第2摩擦エネルギーおよび頻度に基づいてタイヤ摩耗性能値を算出する、としてもよい。
このように、前後方向の加速度、左右方向の加速度及び静止時の荷重から得られる第1摩擦エネルギーを利用して、第1摩擦エネルギーを、上下方向の加速度によってタイヤ荷重変動を加味した第2摩擦エネルギーに変換するので、既存の前後左右の加速度から第1摩擦エネルギーを得る構成を利用しつつ、タイヤ荷重変動を加味でき、タイヤ摩耗評価値の精度を向上できる。
【0026】
特に限定されないが、本実施形態のように、上下方向の加速度から第1摩擦エネルギーを補正して上下方向の荷重変動を加味した第2摩擦エネルギーに変換する処理は、次の式(1)を用いて算出する、としてもよい。
第2摩擦エネルギー=第1摩擦エネルギー×(1G+上下加速度)/1G …(1)
ただし、Gは重力加速度を表す。
このようにすれば、簡素な補正式で補正を実現可能となる。
【0027】
本実施形態に係るプログラムは、上記方法を1又は複数のコンピュータに実行させるプログラムである。
これらプログラムを実行することによっても、上記方法の奏する作用効果を得ることが可能となる。
【0028】
以上、本開示の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0029】
上記の各実施形態で採用している構造を他の任意の実施形態に採用することは可能である。各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【0030】
例えば、特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現できる。特許請求の範囲、明細書、および図面中のフローに関して、便宜上「まず」、「次に」等を用いて説明したとしても、この順で実行することが必須であることを意味するものではない。
【0031】
図1に示す各部は、所定プログラムを1又は複数のプロセッサで実行することで実現しているが、各部を専用メモリや専用回路で構成してもよい。上記実施形態のシステム1は、一つのコンピュータのプロセッサ1aにおいて各部が実装されているが、各部を分散させて、複数のコンピュータやクラウドで実装してもよい。すなわち、上記方法を1又は複数のプロセッサで実行してもよい。
【0032】
システム1は、プロセッサ1aを含む。例えば、プロセッサ1aは、中央処理ユニット(CPU)、マイクロプロセッサ、またはコンピュータ実行可能命令の実行が可能なその他の処理ユニットとすることができる。また、システム1は、システム1のデータを格納するためのメモリ1bを含む。一例では、メモリ1bは、コンピュータ記憶媒体を含み、RAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリまたはその他のメモリ技術、CD-ROM、DVDまたはその他の光ディスクストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージまたはその他の磁気記憶デバイス、あるいは所望のデータを格納するために用いることができ、そしてシステム1がアクセスすることができる任意の他の媒体を含む。
【符号の説明】
【0033】
1…システム、10…計測データ取得部、11…加速度頻度分布データ生成部、12…走行モード設定部、13…データ分類部、14…頻度算出部、15…第1摩擦エネルギー取得部、16…変換部、17…タイヤ摩耗性能値算出部。