(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023077655
(43)【公開日】2023-06-06
(54)【発明の名称】下地部材セット、仕切支持部材及び冷暖房システム
(51)【国際特許分類】
F24F 13/02 20060101AFI20230530BHJP
F24F 5/00 20060101ALI20230530BHJP
E04B 1/76 20060101ALI20230530BHJP
E04F 15/00 20060101ALI20230530BHJP
【FI】
F24F13/02 C
F24F5/00 K
E04B1/76 200A
E04F15/00 101D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021191002
(22)【出願日】2021-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】321008734
【氏名又は名称】株式会社ユカリラ
(71)【出願人】
【識別番号】000204985
【氏名又は名称】大建工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】角田 正
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 友紀
(72)【発明者】
【氏名】津村 文治
【テーマコード(参考)】
2E001
2E220
3L080
【Fターム(参考)】
2E001DD11
2E001FA11
2E001GA66
2E001GA72
2E001NA03
2E220AA04
2E220AA09
2E220AA37
2E220AA39
2E220AC03
2E220BA23
2E220CA04
2E220CA05
2E220CA44
2E220DA19
2E220DB15
2E220EA03
2E220FA13
2E220GA32Y
2E220GB02Y
3L080AC01
3L080AC02
3L080AD01
(57)【要約】
【課題】施工時の負担の増大を抑制しながら輻射用の熱媒体を分配可能な下地部材セット、仕切支持部材及び冷暖房システムを提供する。
【解決手段】下地部材セットは、冷暖房対象空間Rの裏側から接触又は近接させて配置される第1の角形鋼管10と、第1の角形鋼管10の反対面13に接触して第1の角形鋼管10に対して交差して配置された第2の角形鋼管30とを備える。第1及び第2の角形鋼管10、30が交差により接触する位置に両者の内部を連絡する連絡孔28が形成され、第1の角形鋼管10及び/又は第2の角形鋼管30に気体の熱媒体の流入口が形成されており、第1の角形鋼管10の対向面11に気体の熱媒体の流出口15が所定の間隔をあけて複数形成されており、流出口15は隣接面12に及んでいる。仕切支持部材50は、角形鋼管10に取り付けられて仕切板を支持する。冷暖房システムは、下地部材セットと、温度調節機とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷暖房対象空間の輪郭を形成する区画材に対して、前記冷暖房対象空間の裏側から、接触又は近接させて配置される第1の角形鋼管であって、前記区画材が存在することになる側の面である対向面と、前記対向面に隣接する一対の隣接面と、前記対向面の反対側の面である反対面と、を有する第1の角形鋼管と、
前記反対面に接触した第2の角形鋼管であって、前記第1の角形鋼管に対して交差して配置された第2の角形鋼管と、を備え、
前記第1の角形鋼管と前記第2の角形鋼管とが前記交差により接触する位置に、前記第1の角形鋼管の内部と前記第2の角形鋼管の内部とを連絡する連絡孔が、前記第1の角形鋼管及び前記第2の角形鋼管のそれぞれに形成され、
前記第1の角形鋼管及び前記第2の角形鋼管の少なくとも一方に、気体の熱媒体の流入口が形成されており、
前記第1の角形鋼管は、前記対向面に、前記第1の角形鋼管が延びる方向に対して交差する方向に延びる、前記気体の熱媒体の流出口が、前記第1の角形鋼管が延びる方向に所定の間隔をあけて複数形成されており、
前記流出口は、前記隣接面に及んでいる、
下地部材セット。
【請求項2】
前記流出口に装着された噴流ユニットを備え、
前記噴流ユニットは、前記流出口よりも小さい面積の開口が形成された細長い平板と、前記平板の長手方向に延びる一対の辺のそれぞれから同一方向に立ち上がった一対の側板と、を有し、
前記噴流ユニットは、前記開口が前記流出口に包含される位置で前記流出口に装着されたときに、前記平板及び一対の前記側板が、前記流出口が延びる方向に、前記第1の角形鋼管から突き出るように構成されている、
請求項1に記載の下地部材セット。
【請求項3】
前記噴流ユニットは、一対の前記側板の間で前記側板に沿って延びる襞を有する、
請求項2に記載の下地部材セット。
【請求項4】
前記噴流ユニットは、一対の前記側板の間の距離が前記第1の角形鋼管から遠ざかるに連れて短くなるように構成されていると共に、一対の前記側板の間で前記平板から立ち上がるように設けられた襞を有し、
前記襞は、前記第1の角形鋼管から遠ざかる方向に前記平板から突き出ている、
請求項2に記載の下地部材セット。
【請求項5】
前記冷暖房対象空間の裏側の、前記第1の角形鋼管及び前記第2の角形鋼管が設置された空間である裏側空間から、前記流入口が面する流入空間及び前記流出口が面する流出空間の少なくとも一方を仕切る仕切板と、
前記第1の角形鋼管に取り付けられ、前記仕切板を支持する仕切支持部材と、を備え、
前記仕切支持部材は、前記流出口よりも前記反対面側で前記反対面及び一対の前記隣接面の一部を巻く凹片と、前記凹片に接続されて一対の前記隣接面から遠ざかる方向に延びる流出支持片と、前記凹片及び前記流出支持片に接続されて前記反対面から遠ざかる方向に延びる流入支持片と、を有する、
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の下地部材セット。
【請求項6】
角形鋼管に取り付けられる部材であって、
前記角形鋼管に取り付けられたときに、前記角形鋼管の第1の面及び前記第1の面に隣接する一対の第2の面を巻く凹片と、前記凹片に接続されて一対の前記第2の面から遠ざかる方向に延びる流出支持片と、前記凹片及び前記流出支持片に接続されて前記第1の面から遠ざかる方向に延びる流入支持片と、を備える、
仕切支持部材。
【請求項7】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の下地部材セットと、
前記流入口から流入させる前記気体の熱媒体の温度を調節する温度調節機と、を備える、
冷暖房システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は下地部材セット、仕切支持部材及び冷暖房システムに関し、特に輻射による冷暖房に適した下地部材セット、仕切支持部材及び冷暖房システムに関する。
【背景技術】
【0002】
大引鋼を複数本平行に配列し、この上に根太鋼を大引鋼に対して交差するように複数本平行に配列して、この根太鋼の上に床材を敷設することで床面を形成する鋼製床がある。このような鋼製床を用いて、鋼製床上の空間の冷暖房を行うものとして、以下のものがある。それは、大引鋼及び根太鋼の内部に空気の流路を形成し、この内部の空気流路に温度調節済みの空気を流し、温度調節済みの空気の冷熱又は温熱を床材に伝達して、床材からの輻射熱で冷暖房を行うものである(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された鋼製床は、根太鋼の断面がハット形状となっている。つまり、根太鋼の側面を構成する4つの面のうちの1つが開口面となっている。そのため、根太鋼の内部に空気の流路を形成するために、アルミテープや鉄板で塞ぐ必要があり、これが施工の負担を増加させていた。
【0005】
本開示は上述の課題に鑑み、施工時の負担の増大を抑制しながら輻射用の熱媒体を分配可能な下地部材セット、仕切支持部材及び冷暖房システムを提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様に係る下地部材セットは、冷暖房対象空間の輪郭を形成する区画材に対して、前記冷暖房対象空間の裏側から、接触又は近接させて配置される第1の角形鋼管であって、前記区画材が存在することになる側の面である対向面と、前記対向面に隣接する一対の隣接面と、前記対向面の反対側の面である反対面と、を有する第1の角形鋼管と、前記反対面に接触した第2の角形鋼管であって、前記第1の角形鋼管に対して交差して配置された第2の角形鋼管と、を備え、前記第1の角形鋼管と前記第2の角形鋼管とが前記交差により接触する位置に、前記第1の角形鋼管の内部と前記第2の角形鋼管の内部とを連絡する連絡孔が、前記第1の角形鋼管及び前記第2の角形鋼管のそれぞれに形成され、前記第1の角形鋼管及び前記第2の角形鋼管の少なくとも一方に、気体の熱媒体の流入口が形成されており、前記第1の角形鋼管は、前記対向面に、前記第1の角形鋼管が延びる方向に対して交差する方向に延びる、前記気体の熱媒体の流出口が、前記第1の角形鋼管が延びる方向に所定の間隔をあけて複数形成されており、前記流出口は、前記隣接面に及んでいる。
【0007】
このように構成すると、第1の角形鋼管及び第2の角形鋼管を用いているので、気体の熱媒体の流路となる暗渠を形成するために事後的に開口側面を塞ぐ加工をしなくて済み、気体の熱媒体を分配する構成を簡便に構築することができる。
【0008】
また、本開示の第2の態様に係る下地部材セットは、上記本開示の第1の態様に係る下地部材セットにおいて、前記流出口に装着された噴流ユニットを備え、前記噴流ユニットは、前記流出口よりも小さい面積の開口が形成された細長い平板と、前記平板の長手方向に延びる一対の辺のそれぞれから同一方向に立ち上がった一対の側板と、を有し、前記噴流ユニットは、前記開口が前記流出口に包含される位置で前記流出口に装着されたときに、前記平板及び一対の前記側板が、前記流出口が延びる方向に、前記第1の角形鋼管から突き出るように構成されている。
【0009】
このように構成すると、流出口から流出した気体の熱媒体が、平板及び一対の側板に案内されて流出するので、流出した気体の熱媒体に指向性を持たせてより遠くまで到達させることができる。
【0010】
また、本開示の第3の態様に係る下地部材セットは、上記本開示の第2の態様に係る下地部材セットにおいて、前記噴流ユニットは、一対の前記側板の間で前記側板に沿って延びる襞を有する。
【0011】
このように構成すると、平板及び一対の側板に案内されて流出する気体の熱媒体が襞によって整流されることとなり、流出した気体の熱媒体の幅を持続させることができる。
【0012】
また、本開示の第4の態様に係る下地部材セットは、上記本開示の第2の態様に係る下地部材セットにおいて、前記噴流ユニットは、一対の前記側板の間の距離が前記第1の角形鋼管から遠ざかるに連れて短くなるように構成されていると共に、一対の前記側板の間で前記平板から立ち上がるように設けられた襞を有し、前記襞は、前記第1の角形鋼管から遠ざかる方向に前記平板から突き出ている。
【0013】
このように構成すると、平板及び一対の側板に案内されて流出する気体の熱媒体の流速が大きくなり、流出した気体の熱媒体の到達距離を延ばすことができる。
【0014】
また、本開示の第5の態様に係る下地部材セットは、上記本開示の第1の態様乃至第4の態様のいずれか1つの態様に係る下地部材セットにおいて、前記冷暖房対象空間の裏側の、前記第1の角形鋼管及び前記第2の角形鋼管が設置された空間である裏側空間から、前記流入口が面する流入空間及び前記流出口が面する流出空間の少なくとも一方を仕切る仕切板と、前記第1の角形鋼管に取り付けられ、前記仕切板を支持する仕切支持部材と、を備え、前記仕切支持部材は、前記流出口よりも前記反対面側で前記反対面及び一対の前記隣接面の一部を巻く凹片と、前記凹片に接続されて一対の前記隣接面から遠ざかる方向に延びる流出支持片と、前記凹片及び前記流出支持片に接続されて前記反対面から遠ざかる方向に延びる流入支持片と、を有する。
【0015】
このように構成すると、裏側空間を仕切板で適切に仕切ることにより床下チャンバとして機能する流入空間を形成することができると共に気体の熱媒体から区画材への熱伝達を促進させる流出空間を形成することができる。また、仕切支持部材を備えるので、簡便な構成で流入空間及び/又は流出空間を形成するための仕切板を支持することができる。
【0016】
また、本開示の第6の態様に係る仕切支持部材は、角形鋼管に取り付けられる部材であって、前記角形鋼管に取り付けられたときに、前記角形鋼管の第1の面及び前記第1の面に隣接する一対の第2の面を巻く凹片と、前記凹片に接続されて一対の前記第2の面から遠ざかる方向に延びる流出支持片と、前記凹片及び前記流出支持片に接続されて前記第1の面から遠ざかる方向に延びる流入支持片と、を備える。
【0017】
このように構成すると、凹片を角形鋼管に固定することにより、流出支持片及び流入支持片の少なくとも一方で部材を支持することができる。
【0018】
また、本開示の第7の態様に係る冷暖房システムは、上記本開示の第1の態様乃至第5の態様のいずれか1つの態様に係る下地部材セットと、前記流入口から流入させる前記気体の熱媒体の温度を調節する温度調節機と、を備える。
【0019】
このように構成すると、流入口から流入させた気体の熱媒体を、温度を調節した状態で流出口から流出させることができ、気体の熱媒体が保有する熱を区画材に効率よく伝達させて冷暖房対象空間の冷暖房を行うことができる。
【発明の効果】
【0020】
本開示によれば、第1の角形鋼管及び第2の角形鋼管を用いているので、気体の熱媒体の流路となる暗渠を形成するために事後的に開口側面を塞ぐ加工をしなくて済み、気体の熱媒体を分配する構成を簡便に構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】一実施の形態に係る下地部材セットを含む冷暖房システムの概略構成を示す斜視図である。
【
図2】一実施の形態に係る下地部材セットの部分縦断面図である。
【
図3】(A)は一実施の形態に係る下地部材セットの部分斜視図、(B)は下地部材セットの部分分解斜視図である。
【
図4】一実施の形態に係る下地部材セットの下方から見た部分斜視図である。
【
図5】一実施の形態に係る下地部材セットが含む仕切支持部材の斜視図である。
【
図6】(A)は噴流ユニットの斜視図、(B)はその噴流ユニットを根太鋼に装着した状態の斜視図である。
【
図7】(A)は変形例に係る噴流ユニットの斜視図、(B)はその噴流ユニットを根太鋼に装着した状態の斜視図である。
【
図8】(A)は別の変形例に係る噴流ユニットの斜視図、(B)はその噴流ユニットを根太鋼に装着した状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。なお、各図において互いに同一又は相当する部材には同一あるいは類似の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0023】
各図を参照して、一実施の形態に係る下地部材セット1及び冷暖房システム100を説明する。
図1は、下地部材セット1を含む冷暖房システム100の概略構成を示す斜視図である。冷暖房システム100は、主として冷房又は暖房(以下「冷暖房」という)の対象となる空間R(以下「冷暖房空間R」という)の冷暖房を行うシステムである。より詳細には、冷暖房システム100は、冷暖房空間Rの輪郭を形成する区画材を、温度調節済空気(気体の熱媒体)で冷やし又は温めて、冷却又は加熱した区画材からの輻射熱により、冷暖房空間Rの冷暖房を行うシステムである。冷暖房システム100は、下地部材セット1と、温調機器91とを備えている。下地部材セット1は、本実施の形態では、床材を支持する下地部材のセットになっている。冷暖房システム100が設置された冷暖房空間Rは、本来、床材、壁材、天井材等の区画材が設置されているが、
図1では、下地部材セット1の構成を示すために、これらの区画材の図示を省略している。
図2の、下地部材セット1の部分縦断面図には、区画材としての床材Fが示されている。以下、まず、下地部材セット1の構成を説明する。下地部材セット1は、根太鋼10と、大引鋼30と、仕切支持部材50と、流出仕切板63と、流入仕切板65とを備えている。
【0024】
根太鋼10は、冷暖房空間Rの床面となる床材F(
図2参照)を支持する部材であり、角形鋼管(例えばJISG3466)が用いられている。したがって、根太鋼10は、長手方向の両端面が開口し、この両端面の間は鋼材に囲まれており、暗渠として機能するようになっている。根太鋼10は、本実施の形態では、長手方向に直交する断面が正方形の角形鋼管が用いられている。根太鋼10のサイズは、冷暖房空間Rの床面に求められる耐荷重等を考慮して決定すればよく、例えば、断面正方形の辺の長さが、40×40、50×50、75×75のものを用いてもよく、これ以外のサイズのものを用いてもよい。なお、根太鋼10は、冷暖房空間Rの用途に応じて、長手方向に直交する断面が長方形の角形鋼管が用いられていてもよい。根太鋼10は、定尺の角形鋼管を、冷暖房空間Rの大きさに応じて、適宜切断し又は繋ぎ合わせて用いている。根太鋼10は、
図2に示すように、冷暖房空間Rの裏側から床材Fに接して配置されるものであり、第1の角形鋼管に相当する。根太鋼10を構成する4つの側面について、説明の便宜上、床材Fに接する面を対向面11といい、対向面11に隣接する2つの面を隣接面12といい、対向面11の反対側の面を反対面13ということとする。なお、反対面13は、対向面11の反対側で一対の隣接面12に隣接している。
【0025】
根太鋼10は、対向面11に、流出口15が形成されている。流出口15は、温度が調節された気体の熱媒体である温調空気SAを流出させる開口である。流出口15は、根太鋼10の長手方向に対して交差する方向(以下「交差方向」という。)に、対向面11を横断して形成されている。本実施の形態では、流出口15は、根太鋼10の長手方向に直交する方向に延びている。流出口15は、対向面11を横断して形成されているため、交差方向の両端において隣接面12に及んでいる。換言すれば、隣接面12に、流出口15が表れている。流出口15は、角形鋼管に対して該当箇所に切り込みを入れ、切り込みで囲まれた内部を取り除くことで形成されている。このように流出口15が形成されていることで、床材Fの裏面に対向面11の全体が接するように根太鋼10が配置されたときに、流出口15から流出した温調空気SAが床材Fの裏面に沿って床材Fの裏面に接触しながら拡散するようになる。
【0026】
隣接面12に表れる流出口15の大きさは、対向面11の全体に床材Fが接触しているときに、床材Fと隣接面12とに囲まれた流出口15から流出する温調空気SAが噴流となる大きさに形成されていることが好ましい。換言すれば、隣接面12に表れる流出口15の大きさは、流出した温調空気SAが床材Fとの間に形成される境膜(流体が相対運動をしている場合に相境界に存在する、層流状態が保たれている極薄い領域)を破壊する流速で流れる開口面積に形成するのが好ましい。一般に、床材Fと温調空気SAの流れとの間に空気が滞留する境膜が存在すると表面熱伝達抵抗が大きくなって温調空気SAが保有する冷熱又は温熱が効率よく床材Fに伝達されなくなるが、境膜を破壊することによって熱伝達率を向上させることができる。隣接面12に表れる流出口15の大きさは、例えば、幅(根太鋼10の長手方向の距離)を約20mm~40mm、高さ(対向面11に直交する方向の距離)を約3mm~6mmとすることができる。なお、流出口15は、上述の機能に鑑み、対向面11には形成せずに隣接面12のみに形成することも可能であるが、対向面11を横断して隣接面12に及ぶように形成することで、加工が容易になるという利点がある。
【0027】
流出口15は、1つの根太鋼10当たり、複数が形成されている。複数の流出口15は、根太鋼10の長手方向に所定の間隔をあけて配列されている。隣接する流出口15の間隔は、床材Fの裏面に満遍なく温調空気SAを接触させることができる間隔とすることが好ましい。床材Fの裏面に満遍なく温調空気SAを接触させることにより、床材Fをムラなく冷却又は加熱することが可能になる。隣接する流出口15の間隔(芯-芯)は、例えば、約100mm~200mmとすることができる。このように構成された根太鋼10は、本実施の形態では、複数本が、所定の間隔で、平行に配列されている。根太鋼10の本数は、冷暖房空間Rの大きさに応じて決定すればよい。隣接する根太鋼10の間隔は、床材Fに温調空気SAを満遍なく接触させる観点からは、流出口15から流出した温調空気SAの到達距離を採用するとよい。他方、所定の目的の規格(例えば体育館用鋼製床下地構成材:JISA6519)が存在する場合は、その規格を充足する寸法が採用される。規格を充足する観点から隣接する根太鋼10の間隔を決定した場合も、床材Fに温調空気SAを満遍なく接触させることができるようにすることが好ましい。
【0028】
大引鋼30は、根太鋼10を支持する部材であり、角形鋼管が用いられている。したがって、大引鋼30も、長手方向の両端面が開口し、この両端面の間は鋼材に囲まれており、暗渠として機能するようになっている。大引鋼30は、典型的には根太鋼10と同じ角形鋼管(例えばJISG3466)が用いられるが、異なるサイズの角形鋼管が用いられていてもよい。大引鋼30には、根太鋼10に形成されている流出口15に相当する開口は形成されていない。大引鋼30は、根太鋼10に対して交差して配置されており、第2の角形鋼管に相当する。本実施の形態では、大引鋼30は、根太鋼10に対して直交して配置されている。また、大引鋼30は、本実施の形態では、複数本が、所定の間隔で、平行に配列されている。大引鋼30の本数は、冷暖房空間Rの大きさに応じて決定すればよい。隣接する大引鋼30の間隔は、複数本の根太鋼10及び床材F並びに床材Fにかかる荷重を支持できる間隔であり、所定の目的の規格(例えば体育館用鋼製床下地構成材:JISA6519)がある場合は、その規格を充足する寸法が採用される。大引鋼30は、支持脚21に支持されていることで、建物のスラブよりも上方に配置されている。これにより、冷暖房空間Rの裏側の空間(以下「裏側空間B」という。)は、大引鋼30よりも下方にも広がり、比較的大きく確保されることとなる。
【0029】
図3(A)に示すように、支持脚21は、支持プレート22と、固定ボルト23と、支持ボルト24と、ベースプレート25とを含んでいる。支持プレート22は、大引鋼30が載置される部材であり、典型的には金属製の細長い板状部材が用いられている。支持プレート22は、大引鋼30の長手方向に直交する方向に延びるように配置され、大引鋼30の幅よりも両側に突き出ている。支持プレート22は、大引鋼30の幅よりも外側の両側に、ボルトを挿通可能な穴が形成されている。固定ボルト23は、大引鋼30を支持プレート22に固定する部材である。固定ボルト23は、大引鋼30の4つの側面のうち、支持プレート22が接する側面以外の3つの側面を囲むように曲げられており、両端が支持プレート22の2つの穴に挿通されている。固定ボルト23は、少なくとも支持プレート22の2つの穴に挿通された部分にねじが形成されており、ナットを螺合して支持プレート22に固定することができるようになっている。支持ボルト24は、支持プレート22とベースプレート25とを接続する部材である。支持ボルト24は、典型的には全ねじを適切な長さに切断したものが用いられており、一端が支持プレート22の図心に接続され、他端がベースプレート25の図心に接続されている。ベースプレート25は、支持脚21をスラブに固定する部材である。ベースプレート25は、典型的には金属製の矩形の板状部材が用いられている。ベースプレート25は、アンカーを挿通するための穴が形成されており、アンカーを用いてスラブに固定することができるようになっている。
【0030】
図3(A)の下地部材セット1の部分斜視図及び
図3(B)の下地部材セット1の部分分解斜視図に示すように、根太鋼10と大引鋼30とが互いに交差して接触する部分に、連絡孔28が形成されている。連絡孔28は、根太鋼10に形成された根太連絡孔18(
図3(B)参照)と、大引鋼30に形成された大引連絡孔38(
図3(B)参照)と、が合わさって形成されている。連絡孔28は、根太鋼10の内部空間と、大引鋼30の内部空間とを連絡する孔である。根太連絡孔18及び大引連絡孔38は、典型的には同じ大きさに形成されているが、一方が他方を包含する大きさに形成されていてもよい。連絡孔28は、典型的には、複数形成される根太鋼10と大引鋼30との交差部分のすべての箇所に形成されている(したがって根太鋼10の本数×大引鋼30の本数の数が形成される)が、当該交差部分の一部に形成されていてもよい。連絡孔28が形成される部分(あるいは連絡孔28が形成されない部分)は、例えば、並んだ当該交差部分の1つおき又は2つおきとしてもよい。連絡孔28は、複数本の根太鋼10及び大引鋼30につき、それぞれ1本あたり少なくとも1つが形成されている。したがって、複数本の根太鋼10及び大引鋼30の全体の内部空間がつながっている。
【0031】
図4に示す下地部材セット1の下方からの部分斜視図を見ると、本実施の形態では、根太鋼10の反対面13に流入口16が形成されている。流入口16は、それぞれの根太鋼10及び大引鋼30のつながっている内部空間に、温調空気SAを流入させる開口である。流入口16の数及び配置は、根太鋼10に複数形成された流出口15のそれぞれから流出する温調空気SAの流速の差が極力小さくなるようにする観点、及び各流入口16への温調空気SAの分配を極力簡略化する観点から決定するとよい。本実施の形態では、根太鋼10の長手方向に間隔をあけて配列された複数の大引鋼30のうちの中央の2本の大引鋼30の間において、各根太鋼10に2つずつ流入口16が形成されている。なお、ここに示す流入口16の数及び配置は一例であって、冷暖房空間Rの広さによっては、根太鋼10の長手方向の中央に代えて、又は中央と共に、両端に形成するのが好ましい場合もあり得る。あるいは、各根太鋼10及び大引鋼30の内部空間がつながっていることから、根太鋼10に代えて、又は根太鋼10と共に、大引鋼30に流入口16が形成されていてもよい。本実施の形態では、流入口16が形成されている部分を含む裏側空間Bを、流出仕切板63及び流入仕切板65で仕切って、流入口16に流入させる温調空気SAを流す床下チャンバを形成している。流出仕切板63及び流入仕切板65は、仕切支持部材50に支持されている。
【0032】
図5に仕切支持部材50の構成を示す。仕切支持部材50は、流出仕切板63及び流入仕切板65を支持するための部材であり、典型的には根太鋼10に取り付けられる。仕切支持部材50は、本実施の形態では樹脂成形品(典型的には合成樹脂成形品)であるが、金属鋼板を加工して成形するなど、樹脂以外の材料で形成されていてもよい。仕切支持部材50は、典型的には一体に成形されているが、便宜上、凹片51、流出支持片53、流入支持片55に分けて説明する。凹片51は、根太鋼10に接する部分である。凹片51は、軽溝形鋼のような外観を呈している。凹片51は、このような形状により、根太鋼10の反対面13(
図2参照)及び一部の両隣接面12(
図2参照)を巻くようにして根太鋼10に取り付けられる。凹片51は、軽溝形鋼のような形状のうちの中央部分が反対面13に接し、この中央部分の両端辺から直角に延びる側部分が隣接面12に接するようになっている。この側部分は、隣接面12に表れる流出口15の高さには到達せず、典型的には隣接面12の高さの1/3~1/2程度の高さに形成されている。また、この側部分には、根太鋼10への固定用のタッピングビスを通過させる取付孔52が複数形成されている。
【0033】
流出支持片53は、凹片51の側部分に接続されている板状の部分である。流出支持片53は、凹片51の一対の側部分のそれぞれに接続されている。各流出支持片53が接続されている凹片51の側部分は、凹片51の中央部分が接続された辺に対向する辺である。流出支持片53は、凹片51の中央部分が存在する面を含む仮想平面に対して平行になるように配置されている。流出支持片53は、凹片51の軽溝形鋼のような形状から外側に延びている。したがって、流出支持片53は、仕切支持部材50が根太鋼10に取り付けられたときに、隣接面12から遠ざかる方向に延びるようになっている。流出支持片53は、流出仕切板63を支持する部分であるため、流出仕切板63を適切に支持することができる大きさに形成されている。
【0034】
流入支持片55は、凹片51の中央部分及び流出支持片53に対して角度を持って延びる板状の部材である。流入支持片55は、本実施の形態では、凹片51の中央部分及び流出支持片53に対して直角に延びている。流入支持片55は、凹片51と流出支持片53との接続辺が延びる方向における一方の端部で、凹片51及び流出支持片53に接続されている。流入支持片55は、凹片51及び流出支持片53に接続された端部(
図5に示す例では上端辺)が、凹片51及び流出支持片53の面に対して面一となるように切り欠かれている。流入支持片55は、仕切支持部材50が根太鋼10に取り付けられたときに、反対面13から遠ざかる方向に延びるようになっている。流入支持片55は、流入仕切板65を支持する部分であるため、流入仕切板65を適切に支持することができる大きさに形成されている。
【0035】
下地部材セット1を建物に設置する際は、まず、建物のスラブ上に支持脚21をアンカーで固定する。支持脚21の割付は、敷設される大引鋼30に対応して行われる。このとき、下地部材セット1は、複数の大引鋼30が所定の間隔で平行に敷設され、大引鋼30の上に複数の根太鋼10が所定の間隔で平行に敷設されて構成されることを考慮する。複数の大引鋼30が敷設される際の所定の間隔は、所定の目的の規格(例えば体育館用鋼製床下地構成材:JISA6519)を満たす観点からは、規格を充足する寸法が採用される。また、床材Fに温調空気SAを満遍なく接触させる観点からは、必要な流量の温調空気SAを根太鋼10に供給することができる間隔が採用される。両観点からの条件を共に充足させることが好ましい。支持脚21は、上記の観点を考慮して決定された大引鋼30の間隔に対応する位置でスラブ上に固定される。
【0036】
支持脚21がスラブ上に固定されたら、大引鋼30を冷暖房空間Rの床面積に応じて長さを整えてから長手方向が水平になるようにして支持プレート22に載置する。このとき、大引連絡孔38が上方(後に敷設する根太鋼10側)を向くように(大引鋼30の上面に現れるように)大引鋼30が支持プレート22に載置される。また、大引鋼30は、ある大引連絡孔38を通り大引鋼30に直交する仮想水平線上に他の大引鋼30の大引連絡孔38が乗るように、支持プレート22に載置される。大引鋼30が支持プレート22に載置されたら、固定ボルト23を取り付けて、大引鋼30を支持脚21に固定する。その後、各大引鋼30の両端面の開口に末端キャップ29を取り付ける。なお、各大引鋼30への末端キャップ29の取り付けは、大引鋼30を支持プレート22に載置する前、又は固定ボルト23の取り付け前に行うこととしてもよい。末端キャップ29を取り付けると、各大引鋼30は、各大引連絡孔38だけが開口となる。
【0037】
次に、根太鋼10を、大引鋼30の上に載置する。このとき、反対面13が下方(大引鋼30側)を向くようにしながら、根太連絡孔18が大引連絡孔38に合うようにして、各根太鋼10を大引鋼30上に敷設する。本実施の形態では、各根太鋼10が、各大引鋼30に対して直交するように、各根太鋼10を配置している。また、根太連絡孔18と大引連絡孔38とが合うことで、連絡孔28が形成され、根太鋼10の内部と大引鋼30の内部とが連絡することとなる。さらに、本実施の形態では、各根太鋼10の反対面13に形成された流入口16を結ぶ仮想直線が大引鋼30に対して平行に並ぶように、複数の根太鋼10を配列している。根太鋼10を敷設したら、根太鋼10と大引鋼30との隣接する面をL字形状等の固定金具19(
図3参照)で固定する。その後、各根太鋼10の両端面の開口に末端キャップ29(
図1参照)を取り付ける。なお、各根太鋼10への末端キャップ29の取り付けは、大引鋼30へ根太鋼10を載置する前、又は固定金具19の取り付け前に行うこととしてもよい。
【0038】
根太鋼10の配置が完了したら、仕切支持部材50を根太鋼10に取り付ける。仕切支持部材50は、2個1組で、流入口16を挟むようにして取り付ける。2個1組の仕切支持部材50は、典型的には、流入支持片55同士が向かい合うようにして取り付けられる。また、隣接する根太鋼10に取り付けられた仕切支持部材50は、流入支持片55同士が揃うように(同一仮想鉛直平面上に位置するように)して取り付けられる。このような位置で仕切支持部材50を根太鋼10に嵌め込んだら、タッピングビスを取付孔52に通して根太鋼10に打ち込む。これにより、仕切支持部材50が根太鋼10に固定される。仕切支持部材50が根太鋼10に取り付けられたら、流入支持片55に、流入仕切板65を取り付ける。また、流出支持片53に流入仕切板65を載置する。このとき、流入仕切板65の上端と流出仕切板63の下面との間に隙間が生じる場合は、スポンジ状のゴム材やコーキング材などで当該隙間を塞ぐようにするとよい。
【0039】
流入仕切板65は、
図1及び
図4に示すように、立てた状態(面の法線が水平になる状態)で裏側空間Bに配置され、裏側空間Bを水平方向に区切る板状の部材である。流入仕切板65は、本実施の形態では、大引鋼30に対して平行に延びている。流入仕切板65は、大引鋼30に平行に配列された各流入口16に沿うようにして、典型的には、大引鋼30の長手方向の端から端までの距離に相当する長さを有している。流入仕切板65は、複数枚を接続することでかかる長さに形成されていてもよい。また、流入仕切板65は、支持脚21が固定されているスラブから、根太鋼10の反対面13までの高さを有している。流入仕切板65は、根太鋼10の長手方向に間隔をあけて配置された2枚が、温調空気SAの流路の両側壁を形成するようになっている。流入仕切板65の2枚の間の温調空気SAの流路には、流入口16が含まれるようになっている。換言すれば、大引鋼30の長手方向に沿って配列された各流入口16の鉛直下方の空間を全体として囲むことができるように、2枚の流入仕切板65が設けられている。流入仕切板65は、流入支持片55に、ビス及び/又は接着剤で固定されている。
【0040】
流出仕切板63は、面が水平に広がる状態(面の法線が鉛直になる状態)で裏側空間Bに配置され、裏側空間Bを鉛直方向に区切る板状の部材である。流出仕切板63は、隣り合う根太鋼10の間に配置されている。流出仕切板63は、隣り合う根太鋼10の間にちょうど収まる幅を有している。流出仕切板63の長さ(根太鋼10の長手方向に平行な方向の長さ)は、向かい合う流入仕切板65の上部を覆う長さに形成されている。流出仕切板63は、向かい合う流入仕切板65の上部全体を覆うことができるように、複数存在する隣り合う根太鋼の間隔のそれぞれに配置されている。流出仕切板63は、流出支持片53に載置すると、根太鋼10に形成された流出口15の下端よりも下に位置することとなる。流出仕切板63と、一対の流入仕切板65と、スラブと、に囲まれた裏側空間Bは、大引鋼30及び根太鋼10の内部に入る前の温調空気SAが存在する空間となり、これを「流入空間BP」ということとする(
図2参照)。流入空間BPは、流入口16が面している(表れている)が、流出口15は面していない(表れていない)。流出仕切板63よりも上方の裏側空間Bは、流出口15から流出した温調空気SAが存在する空間となり、これを「流出空間BS」ということとする。流出空間BSは、流出口15が面している(表れている)が、流入口16は面していない(表れていない)。流出空間BSは、流入空間BPの外側の裏側空間B(流出仕切板63が配置されていないが流出口15が面する裏側空間B)と連なっている。
【0041】
引き続き、冷暖房システム100の、下地部材セット1以外の構成を説明する。温調機器91(
図1参照)は、冷暖房空間Rの輻射冷暖房を行うことができる温度に調節した温調空気SAを生成する機器である。温調機器91は、典型的にはパッケージ型空調機が用いられるが、エアハンドリングユニット等が用いられることとしてもよい。温調機器91は、典型的には、吹き出された温調空気SAを流入空間BPに供給することができる位置に設置されている。なお、温調機器91は、冷暖房空間Rが形成される部分の外側や、冷暖房空間Rに隣接した部屋あるいは冷暖房空間Rから離れた部屋に設置されていて、ダクトを用いて温調空気SAを流入空間BPに導く構成としてもよい。
【0042】
下地部材セット1及び温調機器91を設置して、冷暖房システム100が構築されたら、根太鋼10の上に床材Fを敷き詰める(
図2参照)。これにより、冷暖房空間Rの床面が形成されて床が区画され、床材Fの裏面(裏側空間B側)は根太鋼10に形成された流出口15が接することとなる。なお、床材Fには、根太鋼10の流出口15から裏側空間Bに流出た温調空気SAを冷暖房空間Rに流入させる連通口(不図示)が形成されている。連通口を介して温調空気SAを冷暖房空間R内に導入することにより、対流による冷暖房効果を享受することが可能になる。連通口は、冷暖房空間Rの大きさにもよるが、冷暖房空間Rの隅部に2~4箇所形成されているとよい。連通口は、冷暖房空間Rの床面において、物の落下を防ぐための格子(不図示)が設けられていてもい。さらに、冷暖房空間Rの壁面又は天井面には、冷暖房空間Rに流入した温調空気SA分の空気を冷暖房空間R外に導出する導出口(不図示)が形成されているとよい。導出口(不図示)には、冷暖房空間R内の空気を温調機器91に導く還気ダクト(不図示)が接続されていてもよい。
【0043】
次に、冷暖房システム100の作用(運転状況)を説明する。なお、下地部材セット1の作用は、冷暖房システム100の作用の一環として説明する。温調機器91では、冷暖房空間Rを輻射冷暖房するのに適した温度(設定温度に依存するが、例えば、冷房時18~23℃、暖房時30~35℃)に調節された温調空気SAが生成される。輻射冷暖房は、一般に、対流のみによる冷暖房(温度調節された空気を冷暖房空間内に供給して行う冷暖房)に比べて、温度調節された空気の温度と外気温との差が小さくなるように設計されるため、温調空気SAを生成するためのエネルギーが少なくて済む。温調機器91で生成された温調空気SAは、直接又はダクト(不図示)を介して流入空間BPに供給される。
【0044】
流入空間BPに供給される温調空気SAが増加するに連れて、流入空間BP内に温調空気SAが充満していく。やがて、温調空気SAは、流入空間BPに存在する流入口16を通って、各根太鋼10の内部空間に流入する。根太鋼10の内部に流入した温調空気SAは、根太鋼10の内部空間全体に拡散すると共に、根太鋼10と連絡孔28で連絡している大引鋼30の内部空間全体にも拡散していく。流入口16から根太鋼10の内部に入った温調空気SAは、根太鋼10の内部空間全体及び大引鋼30の内部空間全体に拡散していく過程で、いくらかは、各根太鋼10に複数形成されている流出口15から流出空間BSに流出する。各根太鋼10及び各大引鋼30の相互に連絡した内部空間全体は、各所に温調空気SAが行き渡ると、場所による圧力差が小さくなる。このとき、大引鋼30は、均圧管の役割を果たしていると見ることができる。各根太鋼10及び各大引鋼30の内部空間における各所の圧力差が小さくなると、各根太鋼10に複数形成されている流出口15のそれぞれから流出する温調空気SAの流速の差が小さくなる。このため、各流出口15から流出した温調空気SAの到達距離の差が小さくなり、各所に概ね等しく温調空気SAを供給することができる。
【0045】
各流出口15から流出した温調空気SAは、床材Fの裏面に沿って拡散しながら隣の根太鋼10に向かって流れる。温調空気SAが床材Fの裏面に沿って流れるとき、温調空気SAは床材Fに接触しながら流れて床材Fに冷熱(冷房時)又は温熱(暖房時)を伝達する。このことにより、床材Fは冷やされ又は温められる。ここで、隣接面12に表れる流出口15の大きさが、流出口15から流出する温調空気SAが噴流となる大きさに形成されていると、温調空気SAが流れる際に床材Fとの間に生じる境膜を破壊することができる。境膜は、流体が相対運動をしている場合に相境界に存在する、層流状態が保たれている極薄い領域である。一般に、床材Fと温調空気SAの流れとの間に空気が滞留する境膜が存在すると表面熱伝達抵抗が大きくなって温調空気SAが保有する冷熱又は温熱が効率よく床材Fに伝達されなくなるが、境膜を破壊することによって熱伝達率を向上させることができる。なお、床材Fは、接触している根太鋼10からも冷熱又は温熱を受熱して冷やされ又は温められる。根太鋼10及び大引鋼30は鋼板で形成されているので、熱伝導率が比較的高く、効率よく床材Fに冷熱又は温熱を伝達することができる。そして、冷やされ又は温められた床材Fから冷暖房空間Rに冷熱又は温熱が輻射され、冷暖房空間Rの冷房又は暖房が行われる。
【0046】
床材Fに冷熱又は温熱を伝達した温調空気SAは、冷房時は温度が上昇して暖房時は温度が低下している。床材Fと熱交換して裏側空間B(又は流出空間BS)に存在する温調空気SAは、連通口(不図示)を介して冷暖房空間R内に流入し、冷暖房空間R内を対流する。冷暖房空間R内に流入した温調空気SAは、床材Fの温度と同等あるいは冷房時は床材Fよりも低温で暖房時は床材Fよりも高温であるので、冷暖房空間Rの冷暖房に寄与することとなる。冷暖房空間Rに流入した温調空気SAは、その後、例えば還気ダクト(不図示)を介して温調機器91に還され、温度が調節された後に再び流入空間BPに供給される。あるいは、冷暖房空間R内の温調空気SAは外気に放出され、外気に放出された分の空気が新たに温調機器91で温度調節された後に流入空間BPに供給される。流入空間BPに温調空気SAが供給された以降は、上述の作用を繰り返す。
【0047】
以上で説明したように、本実施の形態に係る下地部材セット1によれば、根太鋼10及び大引鋼30として角形鋼管を用いている。このため、内部に温調空気SAの流路を形成するために事後的に開口側面を塞ぐ加工をしなくて済み、温調空気SAを分配する構成を簡便に構築することができる。また、仕切支持部材50を備えているので、流入仕切板65及び流出仕切板63の支持を簡便に行うことができて、流入空間BPを簡便に形成することができる。また、本実施の形態に係る冷暖房システム100によれば、温調空気SA及び根太鋼10から冷熱又は温熱を床材Fに伝達させ、床材Fの温度を変化させて、温度が変化した床材Fからの冷熱又は温熱の輻射によって、冷暖房空間Rの冷暖房を行うことができる。
【0048】
以上の説明では、根太鋼10から流出する温調空気SAが、流出口15から直に流出することとしたが、流出口15に以下のような噴流ユニットを装着してもよい。
図6(A)は噴流ユニット80Aの斜視図である。
図6(B)は噴流ユニット80Aを根太鋼10に装着した状態の斜視図である。噴流ユニット80Aは、平板81と、側板83と、変換板84とを有しており、これらの部材は典型的には樹脂成形によって一体に形成されている。平板81は、長方形の板状に形成されている。平板81は、長辺が、根太鋼10の幅(根太鋼10の長手方向に直交する方向の長さ)よりも長く形成されている。平板81の長辺は、根太鋼10の幅の概ね1.5~2.5倍としてもよく、本実施の形態では約2倍になっている。平板81の短辺は、流出口15の幅(根太鋼10の長手方向における流出口15の長さ)と同等の長さに形成されており、好ましくは噴流ユニット80Aがちょうど流出口15の窪みに嵌まる大きさに形成されているとよい。平板81には、開口82が形成されている。開口82は、本実施の形態では、同じ形状及び大きさのものが平板81の短辺方向に2つ並んで形成されている。換言すれば、開口82は、2つの矩形の孔の間に平板81のつなぎが存在している。開口82は、複数形成されている孔の全体が、対向面11における流出口15に包含される大きさに形成されている。開口82は、平板81の長辺方向及び短辺方向それぞれの中央の位置に(すなわち平板81の図心の位置に)形成されている。
【0049】
側板83は、細長い長方形の板状に形成されている。側板83は、平板81の一対の長辺のそれぞれに接続されている。側板83は、長辺が平板81の長辺と同じ長さであり、短辺が流出口15の深さ(隣接面12における対向面11から反対面13側に向かう距離)に相当する長さになっている。一対の側板83は、平板81に対して同じ側に、平板81の面に対して直角に延びている。変換板84は、長方形の板状に形成されている。変換板84は、開口82の2つの孔の間の平板81のつなぎ部分に接続されている。変換板84は、平板81に対して側板83が延びる方向とは反対の方向に、平板81の面に対して直角に延びている。変換板84は、平板81に接続された辺が、概ね根太鋼10の幅と同じで流出口15から根太鋼10の内部に入れることができる長さに形成されている。変換板84は、平板81の面に直角に延びる辺が、隣接面12の高さ(対向面11と反対面13との距離)の約1/4~1/2の長さに形成されており、典型的には隣接面12の高さの約1/3の長さに形成されている。
【0050】
このように構成された噴流ユニット80Aは、変換板84を流出口15から根太鋼10の内部に入れるようにし、平板81が隣接面12の流出口15の底に当接するようにして、根太鋼10に装着される。このとき、両側板83は対向面11から上方に突出せず、平板81及び一対の側板83は一部が両隣接面12から外側に突き出ている。噴流ユニット80Aが根太鋼10に装着されていると、根太鋼10の内部空間を流れる温調空気SAの一部が変換板84に捕捉されて開口82に案内され、流出口15から流出することとなる。そして、流出口15から流出した温調空気SAは、平板81及び一対の側板83に案内されて流れることとなり、噴流ユニット80Aを装着していない場合に比べて拡散が抑制され、指向性が高まる。これにより、流出口15から流出した温調空気SAをより遠くまで到達させることができ、温調空気SAから床材Fへ熱伝達させる領域を大きくすることができて、床材Fの温度むらの発生を抑制することができる。なお、噴流ユニット80Aは、典型的には樹脂成形品であるとしたが、薄板鋼板で形成されていてもよい。噴流ユニット80Aが薄板鋼板で形成される場合、典型的には1枚の矩形の薄板鋼板を平板81と側板83との境界で折り曲げて一体に形成し、これに変換板84を接合することとしてもよい。
【0051】
図7(A)は変形例に係る噴流ユニット80Bの斜視図、
図7(B)は噴流ユニット80Bを根太鋼10に装着した状態の斜視図である。噴流ユニット80Bの、噴流ユニット80A(
図6(A)参照)との異なる点は、整流襞85が設けられていることである。整流襞85は、細長い長方形の板状に形成されており、噴流ユニット80Bを根太鋼10に装着したときに隣接面12よりも外側に突き出る部分の平板81に設けられている。整流襞85は、典型的には側板83と同じ高さに形成されている。整流襞85は、一対の側板83の間の温調空気SAの流路を複数に区画するように、1つ又は複数が側板83に平行に配置されている。これ以外の噴流ユニット80Bの構成は、材質を含めて、噴流ユニット80A(
図6(A)参照)と同様である。このように構成された噴流ユニット80Bは、整流襞85が設けられているので、流出口15から流出した温調空気SAが整流され、指向性がより高まることとなる。
【0052】
図8(A)は別の変形例に係る噴流ユニット80Cの斜視図、
図8(B)は噴流ユニット80Cを根太鋼10に装着した状態の斜視図である。噴流ユニット80Cの、噴流ユニット80A(
図6(A)参照)との異なる点として、以下のものが挙げられる。まず、噴流ユニット80A(
図6(A)参照)で設けられていた変換板84が設けられていない。噴流ユニット80Cの開口82は、1つの矩形の孔となっている。つまり、噴流ユニット80Cには、噴流ユニット80A(
図6(A)参照)に存在していた2つの矩形の孔の間の平板81のつなぎが存在しない。また、噴流ユニット80Cを根太鋼10に装着したときに隣接面12よりも外側に突き出る部分において、一対の側板83の間隔が、隣接面12から遠ざかるに連れて短くなるような先細りになっている。噴流ユニット80Cは、一対の側板83の間隔が短くなるのに合わせて、平板81の幅も短くなっている。また、噴流ユニット80Cを根太鋼10に装着したときに隣接面12よりも外側に突き出る部分の平板81に、合流襞87が設けられている。合流襞87は、一対の側板83の間の温調空気SAの流路を二等分するように、両側板83の間の幅の中間の位置に設けられている。合流襞87は、開口82の位置を起点に、開口82から離れる方向に延び、平板81の末端(先端)から数mm~数十mm突き出ている。上記以外の噴流ユニット80Cの構成は、材質を含めて、噴流ユニット80A(
図6(A)参照)と同様である。このように構成された噴流ユニット80Cは、流出する温調空気SAの流速が大きくなり、流出した温調空気SAの到達距離をさらに延ばすことができる。
【0053】
以上の説明では、流入口16が根太鋼10の反対面13に形成されているとしたが、根太鋼10の隣接面12に形成されていてもよい。なお、流入口16は、根太鋼10に形成されていると共に、又は根太鋼10に形成されることに代えて、大引鋼30に形成されていてもよいことは、前述の通りである。流入口16をこのように形成した場合であっても、根太鋼10及び大引鋼30の内部空間に温調空気SAが充満し、静圧によって、温調空気SAを流出口15から適切に噴出させることができる。
【0054】
以上の説明では、根太鋼10の対向面11が床材Fの裏面に接触していることとしたが、流出口15から流出した温調空気SAが床材Fの裏面に沿って拡散できる範囲で、床材Fから離れて(床材Fに近接して)配置されていてもよい。
【0055】
以上の説明では、下地部材セット1が床材Fを支持するものであるとしたが、下地部材セット1は、床材Fの支持に適用すると共に、又は床材Fの支持に適用することに代えて、天井材及び/又は壁材の支持に適用してもよい。下地部材セット1が天井材等を支持するものであるとした場合、
図1に示す第1の角形鋼管(根太鋼10)及び第2の角形鋼管(大引鋼30)の天地は逆になり、第2の角形鋼管及び/又は第1の角形鋼管を吊りボルト等で天井の躯体から支持すればよい。下地部材セット1が壁材を支持するものであるとした場合、
図1に示す第1の角形鋼管(根太鋼10)及び第2の角形鋼管(大引鋼30)を立たせて配置すればよい。
【符号の説明】
【0056】
1 下地部材セット
10 根太鋼(第1の角形鋼管)
11 対向面
12 隣接面
13 反対面
15 流出口
16 流入口
18 連絡孔
30 大引鋼(第2の角形鋼管)
38 連絡孔
50 仕切支持部材
51 凹片
53 流出支持片
55 流入支持片
63 流出仕切板
65 流入仕切板
80A、80B、80C 噴流ユニット
91 温調機器
100 冷暖房システム
B 裏側空間
BP 流入空間
BS 流出空間
F 床板(区画材)
R 冷暖房空間(冷暖房対象空間)
SA 温調空気(気体の熱媒体)