(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023077666
(43)【公開日】2023-06-06
(54)【発明の名称】線集中度解析画像生成方法及び線集中度解析画像生成装置
(51)【国際特許分類】
G06T 7/60 20170101AFI20230530BHJP
【FI】
G06T7/60 150Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021191018
(22)【出願日】2021-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】515086908
【氏名又は名称】株式会社トヨタプロダクションエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100114306
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 史郎
(74)【代理人】
【識別番号】100148655
【弁理士】
【氏名又は名称】諏訪 淳一
(72)【発明者】
【氏名】石田 雄貴
【テーマコード(参考)】
5L096
【Fターム(参考)】
5L096AA06
5L096BA06
5L096BA13
5L096DA02
5L096FA67
5L096FA70
5L096GA03
5L096GA55
(57)【要約】
【課題】線集中度フィルタを用いて撮像画像から線状のパターンの一点への集中の度合いである集中度を評価する場合、演算負荷を軽減して線集中度解析画像の生成時間を短くすること。
【解決手段】撮像画像の各画素に対して微分フィルタを施して得られた最大勾配ベクトルと注目画素を通る着目ベクトルに直交し該着目ベクトル側の向きを有する直交ベクトルとの一致度が前記着目ベクトルごと、及び、前記注目画素を基準に前記着目ベクトルの両側に設定された探索領域ごとに算出された複数の一致度算出マップを生成する一致度算出マップ生成ステップと、各一致度算出マップに対して前記探索領域に対応する移動平均フィルタを前記着目ベクトルの方向に施して前記探索領域内の各画素の一致度の平均値を前記注目画素ごとに算出した複数の移動平均マップを生成する移動平均マップ生成ステップとを含み、移動平均マップを用いて、線集中度解析画像を生成する。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像画像の各画素に対して微分フィルタを施して得られた最大勾配ベクトルと注目画素を通る着目ベクトルに直交し該着目ベクトル側の向きを有する直交ベクトルとの一致度が前記着目ベクトルごと、及び、前記注目画素を基準に前記着目ベクトルの両側に設定された探索領域ごとに算出された複数の一致度算出マップを生成する一致度算出マップ生成ステップと、
各一致度算出マップに対して前記探索領域に対応する移動平均フィルタを前記着目ベクトルの方向に施して前記探索領域内の各画素の一致度の平均値を前記注目画素ごとに算出した複数の移動平均マップを生成する移動平均マップ生成ステップと、
前記着目ベクトル及び前記探索領域ごとの前記移動平均マップを参照して前記注目画素を中心に各探索領域の一致度の平均値を平均した各着目ベクトルの平均一致度のうち、最も一致度の高い値を前記注目画素の解析結果値とし、該解析結果値を前記撮像画像の各画素に対応づけた線集中度解析画像を生成する線集中度解析画像生成ステップと
を含むことを特徴とする線集中度解析画像生成方法。
【請求項2】
前記一致度算出マップ生成ステップは、一方の探索領域に対応する着目ベクトルごとの一致度算出マップを生成し、生成された各一致度算出マップの符号を反転したマップを他方の探索領域に対する着目ベクトルごとの一致度算出マップとして生成することを特徴とする請求項1に記載の線集中度解析画像生成方法。
【請求項3】
前記移動平均マップ生成ステップは、前記一致度算出マップの着目ベクトルの方向が前記移動平均フィルタの基準移動方向となるように前記一致度算出マップを回転し、回転した一致度算出マップ上において前記基準移動方向に前記移動平均フィルタを施し、その後、前記一致度算出マップを逆回転して元の位置に戻すことを特徴とする請求項1又は2に記載の線集中度解析画像生成方法。
【請求項4】
前記移動平均マップは、前記撮像画像に対する前記注目画素の位置に対応付けられていることを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載の線集中度解析画像生成方法。
【請求項5】
前記直交ベクトルは、前記着目ベクトルから離れる向きであることを特徴とする請求項1~4のいずれか一つに記載の線集中度解析画像生成方法。
【請求項6】
処理対象の画像を撮像画像として取得する画像取得部と、
前記撮像画像の各画素に対して微分フィルタを施して得られた最大勾配ベクトルと注目画素を通る着目ベクトルに直交し該着目ベクトル側の向きを有する直交ベクトルとの一致度が前記着目ベクトルごと、及び、前記注目画素を基準に前記着目ベクトルの両側に設定された探索領域ごとに算出された複数の一致度算出マップを生成し、各一致度算出マップに対して前記探索領域に対応する移動平均フィルタを前記着目ベクトルの方向に施して前記探索領域内の各画素の一致度の平均値を前記注目画素ごとに算出した複数の移動平均マップを予め生成し、前記着目ベクトル及び前記探索領域ごとの前記移動平均マップを参照して前記注目画素を中心に各探索領域の一致度の平均値を平均した各着目ベクトルの平均一致度のうち、最も一致度の高い値を前記注目画素の解析結果値とし、該解析結果値を前記撮像画像の各画素に対応づけた線集中度解析画像を生成する線集中度解析画像生成部と、
前記線集中度解析画像を表示出力する処理を行う表示処理部と
を備えたことを特徴とする線集中度解析画像生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線集中度フィルタを用いて撮像画像から線状のパターンの一点への集中の度合いである集中度を評価する場合、演算負荷を軽減して線集中度解析画像の生成時間を短くすることができる線集中度解析画像生成方法及び線集中度解析画像生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、撮像した画像から線状パターンの一点への集中の度合いである集中度を評価する線集中度フィルタを用いるものがある。特に、医用画像の読影では、線やベクトルの集中度の評価が重要な意味をもつ場合が多い。線集中度フィルタを用いて、胃X線二重造影像における胃壁の襞パターン、悪性腫瘤周辺の血管の引き込み、スピキュラなどを検出することができる。
【0003】
特許文献1には、画像上の複数の測定点に対して輝度勾配ベクトルを計測し、輝度勾配ベクトルの集中度を計算し、線集中度が極大になったとき線情報がある旨の判定を行うものが開示されている。
【0004】
特許文献2には、樹脂成形体の透過画像の明暗濃度より、濃度勾配ベクトルを求め、集中度フィルタを用いて樹脂成形体に包含される空洞と周辺部の明暗濃度差を強調することにより、空洞を判別するものが開示されている。
【0005】
特許文献3には、導体ウェハ等の被検体の画像において、所定の閾値以上の輝度を持つ領域を欠陥領域として抽出し、抽出した欠陥領域の輝度勾配ベクトルを算出し、輝度勾配ベクトルの成分量より欠陥を異物欠陥、ムラ欠陥などに分類するものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005-284697号公報
【特許文献2】特開2003-266479号公報
【特許文献3】特開2005-294521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、撮像した画像から線状パターンの一点への集中の度合いである集中度を評価する線集中度フィルタを用いて、撮像した画像に対する線集中度解析画像を生成する場合、演算負荷が大きく、線集中度解析画像を得るまでに多大な時間がかかるという課題があった。
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、線集中度フィルタを用いて撮像画像から線状のパターンの一点への集中の度合いである集中度を評価する場合、演算負荷を軽減して線集中度解析画像の生成時間を短くすることができる線集中度解析画像生成方法及び線集中度解析画像生成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明は、撮像画像の各画素に対して微分フィルタを施して得られた最大勾配ベクトルと注目画素を通る着目ベクトルに直交し該着目ベクトル側の向きを有する直交ベクトルとの一致度が前記着目ベクトルごと、及び、前記注目画素を基準に前記着目ベクトルの両側に設定された探索領域ごとに算出された複数の一致度算出マップを生成する一致度算出マップ生成ステップと、各一致度算出マップに対して前記探索領域に対応する移動平均フィルタを前記着目ベクトルの方向に施して前記探索領域内の各画素の一致度の平均値を前記注目画素ごとに算出した複数の移動平均マップを生成する移動平均マップ生成ステップと、前記着目ベクトル及び前記探索領域ごとの前記移動平均マップを参照して前記注目画素を中心に各探索領域の一致度の平均値を平均した各着目ベクトルの平均一致度のうち、最も一致度の高い値を前記注目画素の解析結果値とし、該解析結果値を前記撮像画像の各画素に対応づけた線集中度解析画像を生成する線集中度解析画像生成ステップとを含むことを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、上記の発明において、前記一致度算出マップ生成ステップは、一方の探索領域に対応する着目ベクトルごとの一致度算出マップを生成し、生成された各一致度算出マップの符号を反転したマップを他方の探索領域に対する着目ベクトルごとの一致度算出マップとして生成することを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、上記の発明において、前記移動平均マップ生成ステップは、前記一致度算出マップの着目ベクトルの方向が前記移動平均フィルタの基準移動方向となるように前記一致度算出マップを回転し、回転した一致度算出マップ上において前記基準移動方向に前記移動平均フィルタを施し、その後、前記一致度算出マップを逆回転して元の位置に戻すことを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、上記の発明において、前記移動平均マップは、前記撮像画像に対する前記注目画素の位置に対応付けられていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、上記の発明において、前記直交ベクトルは、前記着目ベクトルから離れる向きであることを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、処理対象の画像を撮像画像として取得する画像取得部と、前記撮像画像の各画素に対して微分フィルタを施して得られた最大勾配ベクトルと注目画素を通る着目ベクトルに直交し該着目ベクトル側の向きを有する直交ベクトルとの一致度が前記着目ベクトルごと、及び、前記注目画素を基準に前記着目ベクトルの両側に設定された探索領域ごとに算出された複数の一致度算出マップを生成し、各一致度算出マップに対して前記探索領域に対応する移動平均フィルタを前記着目ベクトルの方向に施して前記探索領域内の各画素の一致度の平均値を前記注目画素ごとに算出した複数の移動平均マップを予め生成し、前記着目ベクトル及び前記探索領域ごとの前記移動平均マップを参照して前記注目画素を中心に各探索領域の一致度の平均値を平均した各着目ベクトルの平均一致度のうち、最も一致度の高い値を前記注目画素の解析結果値とし、該解析結果値を前記撮像画像の各画素に対応づけた線集中度解析画像を生成する線集中度解析画像生成部と、前記線集中度解析画像を表示出力する処理を行う表示処理部とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、線集中度フィルタを用いて撮像画像から線状のパターンの一点への集中の度合いである集中度を評価する場合、演算負荷を軽減して線集中度解析画像の生成時間を短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本実施の形態に係る線集中度解析画像生成装置の構成を示す模式図である。
【
図2】
図2は、線集中度解析画像生成装置の制御部による全体処理手順を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、撮像画像に対する線集中度解析画像の生成の概要を説明する説明図である。
【
図4】
図4は、線集中度解析画像を生成する際の着目ベクトルの回転を説明する説明図である。
【
図5】
図5は、移動平均マップの生成の具体例を説明する説明図である。
【
図6】
図6は、移動平均フィルタを用いた移動平均処理の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、線集中度解析画像の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、線集中度解析画像生成部による線集中度解析画像の生成処理手順を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、着目ベクトルごとの移動平均マップの生成処理手順を示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、変形例1による移動平均マップの生成の具体例を説明する説明図である。
【
図11】
図11は、変形例2による移動平均マップの生成の具体例を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本実施の形態に係る線集中度解析画像生成方法及び線集中度解析画像生成装置について説明する。
【0018】
<概要構成>
図1は、本実施の形態に係る線集中度解析画像生成装置1の構成を示す模式図である。
図1に示すように、線集中度解析画像生成装置1は、撮像部6が撮像した成型部品100の表面Sの画像を処理対象の撮像画像として取得し、撮像画像に線集中度フィルタを施して線集中度解析画像を生成し、表面Sのトラシマやヒケなどの不具合部分の有無を検査する。線集中度解析画像生成装置1は、入力部2、表示部3、記憶部4、制御部5及び撮像部6を有する。なお、成型部品100は、例えば樹脂射出成型された部品である。
【0019】
入力部2は、マウスやキーボードなどの入力インタフェースである。表示部3は、各種情報を表示する液晶ディスプレイなどの表示インタフェースである。記憶部4は、ハードディスク装置や不揮発性メモリなどの記憶デバイスである。撮像部6は、カメラなどの撮像デバイスである。
【0020】
制御部5は、線集中度解析画像生成装置1の全体を制御する制御部であり、画像取得処理部10、パラメータ設定部11、線集中度解析画像生成部12及び表示処理部13を有する。制御部5は、これらの機能部に対応するプログラムを不揮発性メモリや磁気ディスク装置などの記憶装置に記憶しておき、これらのプログラムをメモリにロードして、CPUで実行することで、対応するプロセスを実行させることになる。
【0021】
画像取得処理部10は、撮像部6を操作して成型部品100の表面Sの表面画像を撮像画像として取得する。なお、撮像部6及び画像取得処理部10は、画像取得部として機能する。
【0022】
パラメータ設定部11は、成型部品100の表面Sに発生するトラシマやヒケなどの不具合部分の大きさ及び凹凸の特性に応じて探索領域を含む線集中度フィルタのパラメータを設定する。トラシマとヒケの大きさ及び凹凸特性は、異なる。したがって、トラシマを強調表示する場合には、トラシマの大きさ及び凹凸特性に応じた探索領域を設定したトラシマ検出モードを選択し、ヒケを強調表示する場合には、ヒケの大きさ及び凹凸特性に応じた探索領域を設定したヒケ検出モードを選択するようにしてもよい。
【0023】
線集中度解析画像生成部12は、撮像画像の各画素である注目画素を基準に設定した探索領域内の各画素に対して微分フィルタを施して得られた最大勾配ベクトルと、注目画素を通る着目ベクトルに直交し該着目ベクトル側の向きを有する直交ベクトルとの一致度を、注目画素を中心に着目ベクトルの回転ごとに求め、最も一致度の高い値を注目画素の解析結果値とし、該解析結果値を表面画像の各画素に対して求める線集中度フィルタを施した線集中度解析画像を生成する。
【0024】
表示処理部13は、生成された線集中度解析画像を表示部3に表示する。なお、表示処理部13は、任意の操作によって撮像画像上に線集中度解析画像を重畳表示するようにしてもよい。
【0025】
<線集中度解析画像生成装置の全体処理>
図2は、線集中度解析画像生成装置1の制御部5による全体処理手順を示すフローチャートである。
図2に示すように、まず、制御部5は、撮像部6により成型部品100の表面Sの表面画像を撮像画像として取得する(ステップS110)。
【0026】
その後、パラメータ設定部11は、線集中度フィルタに設定パラメータを設定する(ステップS120)。そして、線集中度解析画像生成部12は、線集中度フィルタを用いて線集中度解析画像を生成する線集中度解析画像の生成処理を行う(ステップS130)。そして、表示処理部13は、生成した線集中度解析画像を表示部3に表示出力し(ステップS140)、本処理を終了する。
【0027】
<線集中度フィルタを用いた線集中度解析画像生成の概要>
図3は、撮像画像D1に対する線集中度解析画像の生成の概要を説明する説明図である。また、
図4は、線集中度解析画像を生成する際の着目ベクトルの回転を説明する説明図である。
【0028】
まず、撮像画像D1に線集中度フィルタを施す場合、撮像画像D1上の1つの注目画素21を特定する。また、この注目画素21を通る着目ベクトルA22を特定する。さらに、着目ベクトルA22に平行で着目ベクトルA22の両側に右側探索領域ER及び左側探索領域ELを設定する。右側探索領域ERは、着目ベクトルA22から離れる右エリア幅WRと着目ベクトルA22の方向に延びる着目長さLとによって決定される矩形領域である。また、左側探索領域ELは、右側探索領域ERとは反対側に設定され、着目ベクトルA22から離れる左エリア幅WLと着目ベクトルA22の方向に延びる着目長さLとによって決定される矩形領域である。したがって、探索領域Eは、右側探索領域ERと左側探索領域ELとによって決定される矩形領域となる。なお、右エリア幅WR,左エリア幅WLは、探索領域Eの幅を拡縮する最大エリア幅Wmax以下の変数であり、0~Wmaxの値である。
【0029】
そして、線集中度フィルタは、右側探索領域E
Rの各画素に対して明度の偏微分をとる。具体的には、ソーベルフィルタを施す。この偏微分値の向きである勾配ベクトル20を求め、最も大きい偏微分値をもつ最大勾配ベクトルの角度φを求める。そして、着目ベクトルA22に直交し、着目ベクトルA22側に向きを有する直交ベクトル23の角度と、最大勾配ベクトルの角度φとの角度差θを求める。そして、右側探索領域E
Rの各画素に対するcosθを算出する。同様に左側探索領域E
Lの各画素に対するcosθを算出する。なお、左側探索領域E
Lにおける直交ベクトル23の方向は、着目ベクトルA22側に向いている。cosθの値は、直交ベクトル23と最大勾配ベクトルとの一致度を示す値であり、1~-1の値をとる。
図3に示したcosθの値は、1に近い値であり、最大勾配ベクトルが着目ベクトルA22側に向いて集中していることを示している。最大勾配ベクトルは、明度が暗い方から明るい方に向くベクトルである。
【0030】
その後、探索領域R内の右側探索領域ER及び左側探索領域ELごとに全ての画素のcosθの平均値cosθaveを算出する。ここで、右側探索領域ERの右エリア幅WRと左側探索領域ELの左エリア幅WLは、上記のように最大エリア幅Wmax以下の変数であり、例えば最大エリア幅Wmaxまでの距離が8段階である場合、右側探索領域ER及び左側探索領域ELはそれぞれ8つの領域に変化する。この場合、右側探索領域ERの平均値cosθaveは、8つの領域の平均値cosθaveのうちの最大値が選択される。同様に、左側探索領域ELの平均値cosθaveは、8つの領域の平均値cosθaveのうちの最大値が選択される。そして、選択された右側探索領域ERの平均値cosθaveと、選択された左側探索領域ELの平均値cosθaveとの平均値を、今回特定した着目ベクトルA22に対する平均一致度cosθave2として求める。
【0031】
その後、
図4に示すように、注目画素21を通る着目ベクトルA22を、注目画素21を中心に、例えば16段階で半回転させ、各回転角度での着目ベクトルA22に対する平均一致度cosθave2を算出する。回転は、180度であるので、1段階での回転角度θrは、11.25度となる。そして、各回転角度での着目ベクトルA22(A22-1~A22-16)に対する平均一致度cosθave2のうち、最大値であるcosθavemaxを注目画素21に対する解析結果値として算出する。この解析結果値が大きい場合、注目画素21の画素値の明度は大きい値になる。なお、上記のソーベルフィルタによる偏微分は明度に対して処理したが、輝度であってもよい。また、ソーベルフィルタに限らず微分フィルタによって勾配ベクトル20の方向が得られれば良い。
【0032】
そして、撮像画像D1上の全ての画素を注目画素21として特定し、上記の解析結果値を算出する。これにより、撮像画像D1は、解析結果値を画素とする線集中度解析画像となる。
【0033】
なお、上記の撮像画像D1は、取得したカラー画像をグレースケールの濃淡画像にしたものである。撮像部6は、直接、撮像画像D1を濃淡画像として取得してもよい。
【0034】
<移動平均マップの生成>
ここで、本実施の形態では、線集中度フィルタによる各注目画素の着目ベクトルA22ごとに探索領域Eの各画素に対する一致度を示すcosθの算出及び平均値cosθaveの算出を行わない。本実施の形態では、1つの着目ベクトルA22に対する探索領域Eの各画素の一致度を示すcosθの値を予め注目画素に対応付けた一致度算出マップとして生成し、この一致度算出マップに移動平均フィルタを施して各着目ベクトルA22に対する各注目画素に対する平均値cosθaveの値を示す移動平均マップを予め生成しておき、線集中度フィルタを用いた線集中度解析画像生成時に参照するようにしている。これにより、重複したcosθの算出及び平均値cosθaveの算出を行う必要がないため、演算負荷が軽減され、線集中度解析画像の生成時間を短くすることができる。なお、一致度算出マップ及び移動平均マップは、回転する着目ベクトルA22毎に生成されるが、さらに右側探索領域ER及び左側探索領域ELごとであって、異なる右エリア幅WR及び左エリア幅WLごとに生成される。なお、移動平均マップは、右側探索領域ER及び左側探索領域ELごとに設けず、1つの探索領域Eとしてまとめることができるが、この演算は、重複処理でないため、1つの探索領域Eとしてまとめなくてもよい。
【0035】
<移動平均マップの生成の具体例>
図5は、移動平均マップの生成の具体例を説明する説明図である。なお、ここでは1つの右エリア幅W
R及び左エリア幅W
Lで決定される探索領域Eに対する移動平均マップの生成について説明する。
図5に示すように、まず、撮像画像D1に対して微分フィルタを施した微分画像D2を生成する。この微分画像D2の各画素には、最大勾配ベクトルの値が示されている。なお、微分画像D2は、X成分とY成分の2つの画像であり、最大勾配ベクトルは、X成分、Y成分の合成ベクトルになる。その後、微分画像D2を用いて、右側探索領域E
R及び左側探索領域E
Lごと、かつ、着目ベクトルA22(A22―1~A22-16)ごとに、各画素の一致度であるcosθの値を示す右一致度算出マップD3―1~D3-16及び左一致度算出マップD4―1~D4―16を生成する。右一致度算出マップD3―1~D3―16は、各着目ベクトルA22-1~A22-15の右側探索領域E
Rに対する一致度を示すものである。また、左一致度算出マップD4―1~D4―16は、各着目ベクトルA22-1~A22-16の左側探索領域E
Lに対する一致度を示すものである。
【0036】
その後、各右一致度算出マップD3―1~D3―16及び各左一致度算出マップD4―1~D4―16に対して、それぞれ右側探索領域ER及び左側探索領域ELに対応した領域の移動平均フィルタを各着目ベクトルA22-1~A22-16方向に施した移動平均マップD5-1~D5―16,D6-1~D6―16を生成する。移動平均フィルタを施した画素値は、各注目画素に対する平均値cosθaveである。
【0037】
さらに、各移動平均マップD5-1~D5―16,D6-1~D6―16上の画素が、撮像画像D1上の注目画素の位置に対応付けられたものとすべく、画素位置のシフトを行った移動平均マップD7(D7-1~D7-16),D8(D8-1~D8-16)を生成する。これは、注目画素と、この注目画素に対する平均値cosθaveを示す画素との位置がずれているため、注目画素と平均値cosθaveを示す画素との位置を一致させることによって注目画素に対する平均値cosθaveの参照が容易になるからである。
【0038】
なお、例えば最大エリア幅Wmaxまでの距離が8段階である場合、右側探索領域ER及び左側探索領域ELはそれぞれ8つの探索領域に対する移動平均マップを上記と同様に作成する。したがって、移動平均マップは、最大エリア幅Wmaxまでの距離が8段階である場合、最大エリア幅Wmaxの左右の段階数=16(8×2)に、着目ベクトルA22の回転数=16を乗算した値=256の個数が生成される。
【0039】
<移動平均処理の一例>
図6は、移動平均フィルタを用いた移動平均処理の一例を示す図である。
図6に示すように、右一致度算出マップD3-8に対して移動平均を行う場合、右一致度算出マップD3-8に対して右側探索領域E
Rと同じ領域の移動平均フィルタOPを着目ベクトルA22-8の方向に施す。
図6に示した移動平均フィルタOPは、着目長さLが3画素、右エリア幅W
Rを2画素とした3×2のフィルタであり、全ての画素に対して同じ重み係数「1/6」としている。これにより、移動平均マップD5-8が生成される。
【0040】
<線集中度解析画像の一例>
図7は、線集中度解析画像の一例を示す図である。
図7において、左右両端の明度が高く中央の明度が低い撮像画像D11に対して勾配ベクトルの向きを明部方向(明度が高い方向)にし、直交ベクトル23の向きを着目ベクトルA22の方向に設定すると、左右両端に明度が高い稜線L10,L11が現れた線集中度解析画像となる。撮像画像D11に対して勾配ベクトルの向きを暗部方向(明度が低い方向)にし、直交ベクトル23の向きを着目ベクトルA22から離れる方向に設定すると、中央に明度が低い稜線L12が現れた線集中度解析画像となる。
【0041】
一方、左右両端の明度が低く中央の明度が高い撮像画像D12に対して勾配ベクトルの向きを明部方向(明度が高い方向)にし、直交ベクトル23の向きを着目ベクトルA22の方向に設定すると、中央に明度が高い稜線L13が現れた線集中度解析画像となる。撮像画像D12に対して勾配ベクトルの向きを暗部方向(明度が低い方向)にし、直交ベクトル23の向きを着目ベクトルA22から離れる方向に設定すると、左右両端に明度が低い稜線L14,L15が現れた線集中度解析画像となる。
【0042】
<線集中度解析画像の生成処理手順>
図8は、線集中度解析画像生成部12による線集中度解析画像の生成処理手順を示すフローチャートである。
図8に示すように、まず、線集中度解析画像生成部12は、線集中度フィルタのパラメータを取得する(ステップS210)。パラメータは、探索領域E、注目画素の領域の設定、着目ベクトルA22の回転角度θr、直交ベクトル23の方向、勾配ベクトルの方向などである。その後、撮像画像D1に対して微分フィルタを施した微分画像D2を生成する(ステップS220)。そして、着目ベクトルごとの移動平均マップの生成処理を行う(ステップS230)。この着目ベクトルごとの移動平均マップの生成処理については後述する。
【0043】
その後、撮像画像D1上の注目画素21を特定し(ステップS240)、この注目画素21を通る着目ベクトルA22を特定する(ステップS250)。その後、特定した着目ベクトルA22の移動平均マップD7,D8を参照して、探索領域E(ER,EL)内の2つの一致度である平均値cosθaveを、特定した着目ベクトルA22の平均一致度cosθave2として算出する(ステップS260)。具体的には、右側探索領域ER及び左側探索領域ELの各平均値cosθaveは、右エリア幅WR及び左エリア幅WLが段階的に異なる複数の右側探索領域ER及び複数の左側探索領域ELごとの移動平均マップD7,D8を用い、複数の右側探索領域ER及び複数の左側探索領域ELごとの平均値cosθaveをもとに、複数の右側探索領域ERの各平均値cosθaveの最大値を右側探索領域ERの1つの平均値cosθaveとして決定し、複数の左側探索領域ERの各平均値cosθaveの最大値を左側探索領域ELの1つの平均値cosθaveとして決定し、この2つの平均値cosθaveを平均した値を、特定した着目ベクトルA22の平均一致度cosθave2として算出する。これにより、1つの注目画素21に対する1つの着目ベクトルA22の平均一致度cosθave2が求まる。
【0044】
その後、着目ベクトルA22の回転が終了したか否かを判定する(ステップS270)。着目ベクトルA22の回転が終了していないならば(ステップS270:No)、着目ベクトルA22を次の回転角に設定し(ステップS280)、ステップS260に移行して、同じ注目画素21に対する次の回転角をもつ着目ベクトルA22の平均一致度cosθave2を求める。
【0045】
一方、着目ベクトルA22の回転が終了したならば(ステップS270:Yes)、各着目ベクトルA22の平均一致度cosθave2のうちの最大値cosθavemaxを、注目画素21の解析結果値に決定する(ステップS290)。
【0046】
その後、全ての注目画素21に対する処理が終了したか否かを判定する(ステップS300)。全ての注目画素21に対する処理が終了していないならば(ステップS300:No)、次の注目画素21を設定し(ステップS310)、ステップS240に移行して、設定した次の注目画素21に対する解析結果値を決定する処理を繰り返す。
【0047】
一方、全ての注目画素21に対する処理が終了しているならば(ステップS300:Yes)、各注目画素21の解析結果値からなる線集中解析画像を生成し(ステップS320)、本処理を終了してステップS130に戻る。
【0048】
<着目ベクトルごとの移動平均マップの生成処理手順>
図9は、着目ベクトルごとの移動平均マップの生成処理手順を示すフローチャートである。
図9に示すように、線集中度解析画像生成部12は、まず、着目ベクトルA22を決定する(ステップS410)。さらに、探索領域E(E
R,E
L)を決定する(ステップS420)。この探索領域E(E
R,E
L)の決定には、段階的に異なる右エリア幅W
R及び左エリア幅W
Lが含まれる。
【0049】
その後、微分画像D2をもとに、決定された探索領域E(ER,EL)内の各画素の最大勾配ベクトルの角度φと直交ベクトル23との角度差θをもとに一致度cosθを算出した一致度算出マップを生成する(ステップS430)。その後、一致度算出マップに対して探索領域E(ER,EL)に対応した移動平均フィルタを着目ベクトルA22方向に施して、平均値cosθaveが算出された移動平均マップを生成する(ステップS440)。さらに、移動平均マップと注目画素との対応付けが行われた移動平均マップD7,D8を生成する(ステップS450)。
【0050】
その後、他の探索領域E(ER,EL)があるか否かを判定する(ステップS460)。他の探索領域E(ER,EL)があるならば(ステップS460:Yes)、他の探索領域E(ER,EL)の設定を行って(ステップS470)、ステップS430に移行する。一方、他の探索領域E(ER,EL)がないならば(ステップS460:No)、さらに、全ての着目ベクトルA22の処理が終了したか否かを判定する(ステップS470)。全ての着目ベクトルA22の処理が終了していないならば(ステップS480:No)、次の着目ベクトルA22の設定を行った後(ステップS490)、ステップS420に移行する。一方、全ての着目ベクトルA22の処理が終了したならば(ステップS480:Yes)、本処理を終了してステップS230に戻る。
【0051】
本実施の形態では、1つの着目ベクトルA22に共通な探索領域Eの各画素の一致度を示すcosθの値を予め注目画素に対応付けた一致度算出マップとして生成し、この一致度算出マップに移動平均フィルタを施して各着目ベクトルA22に共通な各注目画素に対する平均値cosθaveの値を示す移動平均マップを予め生成しておき、線集中度フィルタを用いた線集中度解析画像生成時に参照するようにしているので、重複したcosθの算出及び平均値cosθaveの算出を行う必要がないため、演算負荷が軽減され、線集中度解析画像の生成時間を短くすることができる。
【0052】
<変形例1>
図10は、変形例1による移動平均マップの生成の具体例を説明する説明図である。上記の実施の形態では、各探索領域E
R,E
Lごと、及び、着目ベクトルA22ごとに、微分画像D2から右一致度算出マップD3-1~D3-16及び左一致度算出マップD4-1~D4-16を生成していたが、変形例1では、一方の探索領域に対応する着目ベクトルごとの一致度算出マップを生成し、生成された各一致度算出マップの符号を反転したマップを他方の探索領域に対する着目ベクトルごとの一致度算出マップとして生成している。
【0053】
具体的には、
図10に示すように、微分画像D2から右一致度算出マップD3-1~D3-16を生成し、その後、右一致度算出マップD3-1~D3-16の符号を反転したものを、左一致度算出マップD4-1~D4-16として生成している。これは、探索領域E
R,E
Lが着目ベクトルA22に対して対称であることを前提としているが、たとえ、探索領域E
R,E
Lの領域が異なっていても、平均値cosθaveが平均されていることから大きな違いにはならないものと考えるからである。なお、段階的に異なる右エリア幅W
R及び左エリア幅W
Lをもつ探索領域E
R,E
Lについても同様である。これにより、一方の一致度算出マップの生成を容易に行うことができる。
【0054】
<変形例2>
図11は、変形例2による移動平均マップの生成の具体例を説明する説明図である。本変形例2では、一致度算出マップの着目ベクトルA22の方向が移動平均フィルタの基準移動方向となるように一致度算出マップを回転し、回転した一致度算出マップ上において基準移動方向に移動平均フィルタを施し、その後、一致度算出マップを逆回転して元の位置に戻すようにしている。
【0055】
具体的には、
図11に示すように、右一致度算出マップD3-4を、着目ベクトルA22-4と、移動平均フィルタOPの基準移動方向Aとがなす角度θa、回転し、着目ベクトルA22-4と、移動平均フィルタOPの基準移動方向Aとを一致するようにしている。その後、この回転された右一致度算出マップD3-4´に対して基準移動方向Aに移動平均フィルタOPを施す。その後、移動平均フィルタOPが施された移動平均マップD5-4を角度θa分、逆回転して元の位置に戻す。これにより、移動平均フィルタの処理がすべての一致度算出マップに対して同一方向になるため、移動平均フィルタの処理が容易になる。
【0056】
なお、上記の実施の形態及び変形例で図示した各構成は機能概略的なものであり、必ずしも物理的に図示の構成をされていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の線集中度解析画像生成方法及び線集中度解析画像生成装置は、線集中度フィルタを用いて撮像画像から線状のパターンの一点への集中の度合いである集中度を評価する場合、演算負荷を軽減して線集中度解析画像の生成時間を短くしたい場合に有用である。
【符号の説明】
【0058】
1 線集中度解析画像生成装置
2 入力部
3 表示部
4 記憶部
5 制御部
6 撮像部
10 画像取得処理部
11 パラメータ設定部
12 線集中度解析画像生成部
13 表示処理部
20 勾配ベクトル
21 注目画素
23 直交ベクトル
100 成型部品
A22,A22―1~A22-15 着目ベクトル
cosθave 平均値
cosθave2 平均一致度
cosθavemax 最大値
D1、D11,D12 撮像画像
D2 微分画像
D3―1~D3-16,D3-4´ 右一致度算出マップ
D4―1~D4-16 左一致度算出マップ
D5-1~D5-16,D6-1~D6-16,D7,D7-1~D7-16,D8,D8-1~D8-16 移動平均マップ
E 探索領域
EL 左側探索領域
ER 右側探索領域
L10~L15 稜線
OP 移動平均フィルタ
S 表面
WL 左エリア幅
Wmax 最大エリア幅
WR 右エリア幅
θ 角度差
θa,φ 角度
θr 回転角度