(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023077677
(43)【公開日】2023-06-06
(54)【発明の名称】バリカン刃およびバリカン式刈刃装置
(51)【国際特許分類】
A01D 34/13 20060101AFI20230530BHJP
A01G 3/04 20060101ALI20230530BHJP
A01G 3/08 20060101ALI20230530BHJP
【FI】
A01D34/13 C
A01G3/04 501B
A01G3/08 502B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021191037
(22)【出願日】2021-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】599154696
【氏名又は名称】株式会社源平刃物工場
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100133916
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 興
(72)【発明者】
【氏名】松尾 勝弥
【テーマコード(参考)】
2B382
【Fターム(参考)】
2B382GA02
2B382GA06
2B382GA07
2B382GC03
2B382GC04
2B382GC05
2B382GC14
2B382HA02
2B382HA12
2B382HC03
2B382HC14
2B382HD03
(57)【要約】
【課題】被切断物を確実に切断しつつ刃体間に被切断物が噛み込むのを防止できるバリカン刃およびバリカン式刈刃装置を提供する。
【解決手段】刃体に、その突出方向の先端と基端との間の基準位置よりも基端側に位置し且つ先端側ほど幅寸法が減少する第1部位と、基準位置よりも先端側に位置する第2部位とを設け、刃体における少なくとも幅方向の一方側の縁の第1部位と第2部位との境界位置に、幅方向に対する角度が不連続に変化する変角部を設け、第1部位の幅方向の両縁の角度差を第1角度差、第2部位の幅方向の両縁の角度差を第2角度差としたとき、変角部を、当該変角部を跨いで第2角度差が第1角度差よりも小さくなるように形成する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動力を受けて往復動されることにより被切断物を切断するバリカン刃であって、
基材と、当該基材の周囲に突設された複数の刃体とを備え、
前記刃体は、その突出方向の先端と基端との間の基準位置よりも前記基端側に位置し且つ前記先端側ほど幅寸法が減少する第1部位と、前記基準位置よりも前記先端側に位置する第2部位とを有し、
前記刃体における少なくとも幅方向の一方側の縁は、前記第1部位と前記第2部位との境界位置に、幅方向に対する角度が不連続に変化する変角部を有し、
前記第1部位の幅方向の両縁の角度差を第1角度差、前記第2部位の幅方向の両縁の角度差を第2角度差としたとき、前記変角部は、当該変角部を跨いで前記第2角度差が前記第1角度差よりも小さくなるように形成されている、ことを特徴とするバリカン刃。
【請求項2】
請求項1に記載のバリカン刃において、
前記第2部位は、前記第1部位よりも小さい減少率で前記先端側に向かって幅寸法が減少するように形成されている、ことを特徴とするバリカン刃。
【請求項3】
請求項1または2に記載のバリカン刃において、
前記第1部位の幅方向の両縁および前記第2部位の幅方向の両縁は、それぞれ直線状に延びており、
前記第1角度差は、15度以上且つ20度以下に設定されており、
前記第2角度差は、10度以上且つ前記第1角度差未満に設定されている、ことを特徴とするバリカン刃。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のバリカン刃において、
前記基材に対する前記刃体の突出方向について、前記刃体の先端から前記変角部までの距離は、当該刃体の全長の1/4以上且つ1/2以下の寸法に設定されている、ことを特徴とするバリカン刃。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のバリカン刃からなる第1バリカン刃と、
前記第1バリカン刃と同一形状の第2バリカン刃と、
前記第1バリカン刃と前記第2バリカン刃とを表裏逆にしつつ厚み方向に重ねた状態で保持する保持部と、
前記第1バリカン刃の前記刃体と前記第2バリカン刃の前記刃体とが互いに離接を繰り返すように、前記第1および第2バリカン刃の少なくとも一方を駆動する駆動部と、を備えることを特徴とするバリカン式刈刃装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動力を受けて往復動されることにより被切断物を切断するバリカン刃およびこれを備えたバリカン式刈刃装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、刃体を複数備えたバリカン刃を2枚重ね合わせて往復駆動することにより、草木等の被切断物を切断するバリカン式刈刃装置が知られている。例えば、特許文献1には、平板状の基材と、その周囲に突設された複数の刃体とを備えたバリカン式刈刃装置であって、バリカン刃の刃体の起き上がり角度を引き側よりも押し側の方が大きくなるように設定したバリカン式刈刃装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に開示されたバリカン刃によれば、押し側から刃体に入力される応力を緩和してバリカン刃を折れにくくしつつ、引き側の切れ味を高めて被切断物を確実に切断できると考えられる。しかし、特許文献1に開示されたバリカン刃においても、被切断物を確実に切断しつつ刃体間に被切断物が噛み込むのを防止する点でさらなる改善の余地がある。
【0005】
本発明は、前記のような事情に鑑みてなされたものであり、被切断物を確実に切断しつつ刃体間に被切断物が噛み込むのを防止できるバリカン刃およびバリカン式刈刃装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するためのものとして、本発明は、駆動力を受けて往復動されることにより被切断物を切断するバリカン刃であって、基材と、当該基材の周囲に突設された複数の刃体とを備え、前記刃体は、その突出方向の先端と基端との間の基準位置よりも前記基端側に位置し且つ前記先端側ほど幅寸法が減少する第1部位と、前記基準位置よりも前記先端側に位置する第2部位とを有し、前記刃体における少なくとも幅方向の一方側の縁は、前記第1部位と前記第2部位との境界位置に、幅方向に対する角度が不連続に変化する変角部を有し、前記第1部位の幅方向の両縁の角度差を第1角度差、前記第2部位の幅方向の両縁の角度差を第2角度差としたとき、前記変角部は、当該変角部を跨いで前記第2角度差が前記第1角度差よりも小さくなるように形成されている、ことを特徴とするものである(請求項1)。
【0007】
本発明のバリカン刃によれば、刃体における少なくとも幅方向の一方側の縁に幅方向に対する角度が不連続に変化する変角部が設けられ、変角部から基端側に位置する第1部位が刃体の先端側ほど幅寸法が減少する形状とされ、且つ、変角部を跨いで変角部から先端側に位置する第2部位の幅方向両縁の角度差(第2角度差)が第1部位の幅方向両縁の角度差(第1角度差)よりも小さくなるように形成されていることで、当該バリカン刃を2枚重ね合わせた状態で使用したときに、対向する刃体の基端側の部分どうし(第1部位どうし)を先端側ほど離間させることができるとともに、先端側の部分どうし(第2部位どうし)の角度差を基端側の部分どうし(第1部位どうし)の角度差よりも小さくできる。従って、刃体の基端側(基材側)の第1部位において被切断物を先端側に逃がしつつその一部を切断し、その後に、刃体の先端側において残りを切断することができ、被切断物が刃体間に噛み込むのを防止しながらこれを確実に切断することができる。
【0008】
前記構成において、好ましくは、前記第2部位は、前記第1部位よりも小さい減少率で前記先端側に向かって幅寸法が減少するように形成されている(請求項2)。
【0009】
この構成によれば、第2部位においても被切断物を刃体の先端側に逃がすことができ、被切断物の刃体間の噛み込みを確実に防止できる。
【0010】
前記第1部位、第2部位の具体的構成としては、前記第1部位の幅方向の両縁および前記第2部位の幅方向の両縁は、それぞれ直線状に延びており、前記第1角度差は、15度以上且つ20度以下に設定されており、前記第2角度差は、10度以上且つ前記第1角度差未満に設定されている、ものが挙げられる(請求項3)。
【0011】
前記構成において、前記基材に対する前記刃体の突出方向について、前記刃体の先端から前記変角部までの距離は、当該刃体の全長の1/4以上且つ1/2以下の寸法に設定されているのが好ましい(請求項4)。
【0012】
この構成によれば、被切断物の刃体間の噛み込みをより確実に防止しつつ被切断物をより確実に切断できる。
【0013】
また、本発明は、前記第1バリカン刃と同一形状の第2バリカン刃と、前記第1バリカン刃と前記第2バリカン刃とを表裏逆にしつつ厚み方向に重ねた状態で保持する保持部と、前記第1バリカン刃の前記刃体と前記第2バリカン刃の前記刃体とが互いに離接を繰り返すように、前記第1および第2バリカン刃の少なくとも一方を駆動する駆動部と、を備えることを特徴とするバリカン式刈刃装置を提供する(請求項5)。
【0014】
このバリカン式刈刃装置によれば、前記のように、刃体の基端側(基材側)の第1部位において被切断物を先端側に逃がしつつその一部を切断し、刃体の先端側において残りを切断することができ、被切断物が刃体間に噛み込むのを防止しながらこれを確実に切断することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明によれば、被切断物が刃体間に噛み込むのを防止しながらこれを確実にできるバリカン刃およびバリカン式刈刃装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態にかかるバリカン式刈刃装置の構成を示す平面図である。
【
図3】バリカン式刈刃装置の一部分解斜視図である。
【
図8】本発明の実施形態の作用を説明するための図であって、(a)は被切断物が第1部位間に存在する状態の平面図、(b)は被切断物が第2部位間に存在する状態の平面図である。
【
図10】他の変形例に係る刃体の概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(全体構成)
図1~
図3は、本発明の実施形態にかかるバリカン式刈刃装置1の全体構成を示した図である。バリカン式刈刃装置1は、刃物部品としての一対のバリカン刃2、2と、ガイド板4と、バリカン刃2、2およびガイド板4の一部を収容するケース5とを備える。また、バリカン式刈刃装置1は、ケース5の内側に収容されてバリカン刃2、2に駆動力を付与してこれらを駆動する駆動機構6を有する。駆動機構6は、レシプロエンジン等の駆動源(不図示)から入力される回転運動を往復運動に変換するクランク機構を含み、駆動源からの動力を受けてバリカン刃2、2を駆動する。前記のガイド板4は請求項の「保持部」に相当し、前記の駆動機構6は請求項の「駆動部」に相当する。
【0018】
ガイド板4は、一方向に長尺な板状体からなる。ガイド板4には、その長手方向の複数の位置に貫通孔48が形成されている。ガイド板4は、ケース5から所定の方向に延びる姿勢でケース5に固定されている。具体的に、ガイド板4には、その長手方向の一方端の表面に雄ネジ部材41が立設されている。ガイド板4は、この雄ネジ部材41およびこれに螺着されるナット42を介してケース5に固定されている。以下では、適宜、バリカン式刈刃装置1におけるガイド板4の長手方向を前後方向といい、ケース5側つまりガイド板4の基端側を後側、逆側を前側として説明する。
【0019】
2枚のバリカン刃2、2は、互いに同じ形状および構造を有する。
図4は、バリカン刃2単体を示した平面図である。バリカン刃2は、一方向に長尺な平板状の基材10と、基材10の周囲に突設された複数の刃体20とを有する。バリカン刃2の基材10の前後方向の複数の位置には、基材10の表裏を貫通して前後方向に長い長孔状のガイド孔12が形成されている。なお、2枚のバリカン刃2、2のうちの一方が請求項の「第1バリカン刃」に相当し、他方が請求項の「第2バリカン刃」に相当する。
【0020】
バリカン刃2は、基材10がガイド板4に沿って前後方向に延びる姿勢でガイド板4に保持されている。2枚のバリカン刃2、2は、各基材10の厚み方向に互いに重ね合わせられ、且つ、一方のバリカン刃2の表面にガイド板4が重ね合わされた状態で、ガイド板4に保持されている。以下では、適宜、これらバリカン刃2、2およびガイド板4の重ね合わせ方向を上下方向といい、ガイド板4側を上側、バリカン刃2、2側を下側として説明する。また、バリカン刃2単体の説明においても、この重ね合わせ方向つまり基材10の厚み方向であって基材10の表面と直交する方向を上下方向として説明を行う。
【0021】
具体的に、各バリカン刃2のガイド孔12とガイド板4の貫通孔48とには共通のボルト91が挿通されており、ボルト91がガイド板4の上面においてナット92により締結されることで、各バリカン刃2はガイド板4に保持されている。なお、ボルト91の頭部と下側のバリカン刃3との間にはワッシャー93が装着されている。
【0022】
ガイド板4の貫通孔48の穴径は、ボルト91の軸部91aの外径とほぼ同じに設定されている。また、ガイド孔12の幅方向(前後方向および上下方向と直交する方向)の寸法も、ボルト91の軸部91aの外径とほぼ同じに設定されている。一方、ガイド孔12の前後方向の長さはボルト91の軸部91aよりも長くなっている。これより、各バリカン刃2は、その幅方向(前後方向および上下方向と直交する方向)の移動が規制される一方、前後方向への移動が許容された状態でガイド板4に保持される。
【0023】
バリカン刃2に設けられた複数の刃体20は、同じ形状および同じ構造を有する。複数の刃体20は、それぞれ、基材10の周囲に、詳細には基材10の幅方向(前後方向および上下方向と直交する)の両側部に、当該両側部から基材10の幅方向の外側に突出するように、且つ、一定のピッチで前後方向に並ぶように設けられている。なお、基材10の一方の側部に設けられた刃体20の数およびピッチと、他方の側部に設けられた刃体20の数およびピッチとは同一である。
【0024】
図5は、
図4のV-V線断面図である。刃体20の厚み方向(上下方向)の両側の面はそれぞれ平面となっている。刃体20の周縁部にはすくい面26が形成されており、刃体20の断面は略台形状を呈している。刃体20の厚み方向(上下方向)の一方側の面であって幅寸法(前後方向の寸法)が長く周縁が刃先を構成する摺動面20Bは、相手方のバリカン刃2の刃体20と摺動するようになっており、2枚のバリカン刃2、2は、各刃体20の摺動面20Bが相手方のバリカン刃2の刃体20の摺動面20Bと向き合うように、表裏逆向きの姿勢でガイド板4に保持されている。
【0025】
各バリカン刃2の後端部はそれぞれ駆動機構6に連結されており、各バリカン刃2は駆動機構6によって前後方向に往復駆動される。具体的に、駆動機構6は、前後方向に往復動して上側のバリカン刃2を前後方向に往復駆動する駆動体6aと、前後方向に往復動して下側のバリカン刃3を前後方向に往復駆動する駆動体6bとを有する。2つの駆動体6a、6bは、互いに逆位相で、つまり一方の駆動体6a、6bが最も前方に位置するときに他方の駆動体6a、6bが最も後方に位置するように往復動する。これより、2枚のバリカン刃2も互いに逆位相で前後方向に沿って往復動し、一方のバリカン刃2の刃体20と他方のバリカン刃2の刃体20とは互いに離接を繰り返す。
【0026】
以上のように構成されたバリカン式刈刃装置1は、例えば草刈機や剪枝機等の主要部を構成する装置として用いられる。すなわち、前記のケース5には、駆動機構6を駆動する駆動源がクラッチ装置等を介して連結されるとともに、作業者により把持される手動操作用の操作ハンドルが設けられている(いずれも図示省略)。そして、作業者が前記駆動源を始動させると、2枚のバリカン刃2、2が高速で前後方向に往復駆動され、上側のバリカン刃2の刃体20と下側のバリカン刃2の刃体20との間に入り込んだ草木等の被切断物に各刃体20、20が高速で当たることで、被切断物が切断される。
【0027】
(刃体の詳細構成)
次に、刃体20の詳細な構成について説明する。
図6は、刃体20を拡大して示した平面図である。
図7は、
図1の一部を拡大して示した平面図である。以下の刃体20の説明では、適宜、前後方向であって刃体20の幅方向を単に幅方向という。また、基材10の幅方向(前後方向および上下方向と直交する方向)であって基材10の幅方向の側部10aに対する刃体20の突出方向を刃体突出方向といい、基材10の幅方向の外側つまり刃体20の先端側を単に先端側、逆側を単に基端側という。
【0028】
刃体20は、その主たる部分を構成して草木等の被切断物に主として当接する主刃体110と、主刃体110と基材10とをつなぐようにこれらの間に延びる連結部120とで構成されている。連結部120の前縁120Fおよび後縁120Rは円弧状を呈しており、刃体20は、基材10の幅方向の側部10aから緩やかに基材10の幅方向外側に延びている。連結部120の前縁120Fは、後方に凸となるような円弧状を有し、連結部120の後縁120Rは、前方に凸となるような円弧状を有しており、連結部120は、その幅寸法(幅方向の寸法)が先端側ほど短くなる略台形状を呈している。
【0029】
主刃体110の後縁25Rには、刃体20の先端20Aと基端(つまり、基材の側部10a)との間の基準位置に、幅方向に対する角度が不連続に変化する変角部130が設けられている。また、主刃体110は、変角部130から基端側に位置し且つ幅寸法dが先端側ほど短くなる(減少する)形状を有する第1部位21と、変角部130から先端側に位置して変角部130から刃体20の先端20Aまでの領域を構成する第2部位22とを有する。主刃体110の前縁25Fと後縁25Rの角度差は、前記の変角部130つまり第1部位21と第2部位22との境界位置を跨いで先端側の方が小さくなっている。すなわち、主刃体110は、第2部位22の幅方向の両縁(前縁22Fと後縁22R)の角度差(第2角度差)が、変角部130を跨いで第1部位21の幅方向の両縁(前縁21Fと後縁21R)の角度差(第1角度差)よりも小さくなるように構成されている。
【0030】
本実施形態では、変角部130から連結部120までの領域全体が、幅寸法dが先端側ほど短くなる形状を有しており、この領域全体が前記の第1部位21を構成している。また、第2部位22は、第1部位21と同様に幅寸法dが先端側ほど短くなる形状を有し、且つ、その減少率(刃体20の先端20Aに向かう方向の幅寸法dの減少率)が第1部位の減少率よりも小さくなるように構成されている。詳細には、変角部130から刃体20の先端までの領域の全ての点における前記減少率が、第1部位21の全ての点における前記減少率よりも小さくなっている。
【0031】
具体的に、主刃体110の前縁25Fはその全体が平面視で(上下方向に沿ってみたときに)直線状を有しており、第1部位21の前縁21Fと第2部位22の前縁22Fとは、同じ直線に沿って延びている。主刃体110の前縁25Fは、先端側ほど後側に位置するように延びている。
【0032】
第1部位21の後縁21R(主刃体110の後縁25Rのうち変角部130から連結部120までの部分)は、平面視で直線状を有し、所定の直線L1に沿って延びている。また、第2部位22の後縁22R(主刃体110の後縁25Rのうち変角部130から刃体20の先端までの部分)も、平面視で直線状を有し、所定の直線L2に沿って延びている。前記の直線L1と直線L2とはいずれも、先端側ほど前側に位置するように延びる直線である。ただし、第1部位21の後縁21Rが沿う直線L1の幅方向に対する角度θ1つまり第1部位21の後縁21Rの幅方向に対する角度θ1と、第2部位22の後縁22Rが沿う直線L2の幅方向に対する角度θ2つまり第2部位22の後縁22Rの幅方向に対する角度θ2とは一致しておらず、これらの角度θ1、θ2は直線L1、L2が交差する変角部130において不連続となっている。
【0033】
そして、第2部位22の幅方向に対する角度θ2は、第1部位21の幅方向に対する角度θ1よりも大きくされている。これより、第2部位22の前記減少率は、第1部位21の前記減少率よりも小さくなっている。また、これより、第2部位22の幅方向の両縁(前縁22Fと後縁22R)の角度差θ20は、第1部位21の幅方向の両縁(前縁21Fと後縁21R)の角度差θ10よりも小さくなっている。
【0034】
本実施形態では、変角部130は、刃体突出方向について、刃体20の先端20Aから変角部130までの距離h2が、刃体20の全長h1(刃体20の先端20Aから基材10の幅方向の側部10aまでの距離)の約0.35倍となる位置に設けられている。
【0035】
前記のように構成された刃体20を備える2枚のバリカン刃2が表裏逆向きの姿勢で重ね合わせられていることで、バリカン式刈刃装置1では、
図7に示すように、前後方向について、互いに対向する2つのバリカン刃2、2の第1部位21どうしの離間距離は先端側ほど長くなる。詳細には、2つのバリカン刃2、2の主刃体110どうしが平面視で重なっていない状態において、一方のバリカン刃2の刃体20の第1部位21と、これと前後方向について対向する他方のバリカン刃2の刃体20の第1部位21との前後方向の離間距離は先端側ほど長くなる。また、第2部位22の幅方向の両縁(22F、22R)の角度差θ20と一致する角度差であって互いに対向する2つの刃体20の第2部位22どうしの角度差θ20(一方の刃体20の第2部位22の後縁22Rと、他方の刃体20の第2部位22の前縁22Fとの角度差)は、第1部位21の幅方向の両縁(21F、21R)の角度差θ10と一致する角度差であって対向する2つの刃体20の第1部位21どうしの角度差θ10(一方のバリカン刃2の刃体20の第1部位21の後縁21Rと、これに対向する他方のバリカン刃2の刃体20の第1部位21の前縁21Fとの角度差)よりも小さくなる。
【0036】
前記実施形態では、第1部位21の幅方向の両縁の角度差および互いに対向する2つの刃体20の第1部位21どうしの角度差θ10は、15度以上且つ20度以下の所定の角度差(第1角度差)とされている。また、第2部位22の幅方向の両縁の角度差および互いに対向する2つの刃体20の第2部位22どうしの角度差θ20は、前記の所定の角度差θ10未満で且つ10度以上の所定の角度(第2角度差)とされている。例えば、第1部位21の幅方向の両縁の角度差θ10は20度とされ、第2部位22の幅方向の両縁の角度差θ20は12度とされる。
【0037】
(作用等)
以上のように、前記実施形態では、刃体20の基端側に設けられた第1部位21が、刃体20の先端側ほど幅寸法dが短くなる形状を有している。そして、これに伴い、2枚のバリカン刃2が表裏逆向きの姿勢で重ね合わせられた状態において、前後方向に対向する2つのバリカン刃2、2の第1部位21どうしの離間距離(前後方向について)が、刃体20の先端側ほど長くなる。また、前記実施形態では、刃体20の後縁25Rに変角部130が設けられて、刃体20の先端側の第2部位22の両縁(22F、22R)の角度差θ20が、刃体20の基端側の第1部位21の両縁(21F、21R)角度差θ10よりも小さくされている。そして、これに伴い、2枚のバリカン刃2が表裏逆向きの姿勢で重ね合わせられた状態において、前後方向に対向する2つのバリカン刃2、2の第2部位22どうしの角度差θ20が、基端側の第1部位21どうしの角度差θ10よりも小さくなる。
【0038】
これより、前記実施形態によれば、被切断物が刃体20に噛み込むのを防止しつつ、被切断物を適切に切断することが可能になる。
【0039】
図8を用いて具体的に説明する。
図8は、対向する2つの刃体20どうしの間に被切断物Xが挟み込まれた状態を模式的に示した図である。
図8の(a)は、第1部位21に被切断物Xが挟み込まれた状態を、
図8の(b)は第2部位22に被切断物が挟み込まれた状態を模式的に示している。なお、これらの
図8(a)、(b)では、刃体20どうしの角度差を誇張して示している。
【0040】
前記のように、互いに対向する第1部位21どうしの離間距離は刃体20の先端側ほど長くなっている。そのため、
図8(a)に示すように、第1部位21どうしから被切断物Xに付与される力F10、F20の分力F11、F21は刃体20の先端向きとなる。これより、被切断物Xには刃体20の先端向きの力が付与されることになる。従って、前記実施形態によれば、第1部位21において、被切断物を刃体20の先端側に逃がしつつ切断することができ、被切断物が刃体20間に噛み込むのを防止できる。
【0041】
一方、第2部位22では、対向する第2部位22どうしの角度差θ20が第1部位21どうしの角度差θ10よりも小さくなっていることで、
図8(b)に示すように、
図8(a)に比べて第2部位22から被切断物Xに付与される力F30、F40の刃体突出方向の分力F31、F41は小さくなり、前後方向つまり第2部位22どうしが近接する方向の分力F32、F43は大きくなる。これより、被切断物Xにはこれを切断する方向について比較的大きい力が付与されることになる。従って、前記実施形態によれば、第2部位22において被切断物Xを確実に切断することができる。
【0042】
また、前記実施形態では、第1部位21と同様に、第2部位22が、その幅寸法dが先端側ほど小さくなる形状を有している。そのため、第2部位22においても、被切断物に対して刃体20の先端向きの力を付与することができ、被切断物が刃体20どうしの間に噛み込むのをより確実に防止できる。
【0043】
ここで、刃体突出方向について、刃体20の先端20Aから変角部130までの距離を刃体20の全長の1/4以上且つ1/2以下の寸法にすれば、被切断物の刃体20間の噛み込みをより確実に防止しつつ被切断物をより確実に切断できることが分かっている。そのため、前記実施形態では、刃体20の先端20Aから変角部130までの距離h2が、刃体20の全長h1の約0.35倍とされていることで、被切断物の刃体20間の噛み込みをより確実に防止しつつこれをより確実に切断できる。
【0044】
(変形例)
前記実施形態では、バリカン刃2の基材10が長尺な板状を呈する場合を説明したが、本発明の構成は、半円状等の他の形状を有する基材を備えたバリカン刃にも適用可能である。
【0045】
また、前記実施形態では、刃体20の先端20Aから変角部130までの距離h2が、刃体20の全長h1の約0.35倍である場合を説明したが、前記の距離h2と刃体20の全長h1との関係はこれに限られない。ただし、前記のように、刃体突出方向について、刃体20の先端20Aから変角部130までの距離を刃体20の全長の1/4以上且つ1/2以下にすれば、被切断物の刃体20間の噛み込みをより確実に防止しつつ被切断物をより確実に切断できる。
【0046】
また、第1部位21の幅方向の両縁の角度差θ10および第2部位22の幅方向の両縁の角度差θ20の具体的な値は前記に限られない。
【0047】
また、前記実施形態では、刃体20の後縁25Rに変角部130を設けた場合を説明したが、変角部130は刃体20の前縁25Fに設けられてもよい。つまり、刃体として、
図6等に示した刃体20を前後方向に反転させたものが用いられてもよい。
【0048】
また、変角部130は、刃体20の前縁25Fと後縁25Rの両方に設けられてもよい。
【0049】
また、第1部位21は、変角部130から基端側に位置して幅寸法dが先端側ほど短くなる形状を有していればよく、その具体的な形状は前記に限られない。同様に、第2部位22は、変角部130から先端側に位置し、且つ、第2部位22の幅方向の両縁の角度差が変角部130を跨いで第1部位21の幅方向の両縁の角度差よりも小さくなる形状を有していればよく、その具体的な形状は前記に限られない。
【0050】
例えば、
図9に示す刃体320のように、第1部位321と第2部位322は、前記実施形態と同様に、その各前縁321F、322Fが先端側ほど後方に傾斜する直線に沿って延びる一方、前記実施形態と異なり、その各後縁321R、322Rがともに先端側ほど後方に傾斜する直線に沿って延びるように構成されてもよい。
【0051】
また、
図10に示す刃体420のように、第1部位421と第2部位422は、その各前縁421F、422Fおよび各後縁421R、422Rがそれぞれ円弧に沿って延びるように構成されてもよい。具体的に、
図10に示す刃体420では、第1部位421と第2部位422の前縁421F、422Fが、前方に凸となる同一の円弧に沿って延びている。また、第1部位421の後縁421Rは、刃体突出方向について変角部430よりも基端側の点を中心として後方に凸となる円弧に沿って延びており、第2部位422の後縁422Rは刃体突出方向について変角部430よりも先端側の点を中心として後方に凸となる円弧に沿って延びている。
【符号の説明】
【0052】
1 バリカン式刈刃装置
2 バリカン刃
4 ガイド板(保持部)
6 駆動機構(駆動部)
10 基材
20 刃体
21 第1部位
22 第2部位
130 変角部
θ10 第1部位の角度差(第1角度差)
θ20 第2部位の角度差(第2角度差)