IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三機工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-屋内位置検知システム 図1
  • 特開-屋内位置検知システム 図2
  • 特開-屋内位置検知システム 図3
  • 特開-屋内位置検知システム 図4
  • 特開-屋内位置検知システム 図5
  • 特開-屋内位置検知システム 図6
  • 特開-屋内位置検知システム 図7
  • 特開-屋内位置検知システム 図8
  • 特開-屋内位置検知システム 図9
  • 特開-屋内位置検知システム 図10
  • 特開-屋内位置検知システム 図11
  • 特開-屋内位置検知システム 図12
  • 特開-屋内位置検知システム 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023077702
(43)【公開日】2023-06-06
(54)【発明の名称】屋内位置検知システム
(51)【国際特許分類】
   G01S 5/02 20100101AFI20230530BHJP
   G01S 1/68 20060101ALI20230530BHJP
   H04W 64/00 20090101ALI20230530BHJP
【FI】
G01S5/02 Z
G01S1/68
H04W64/00 160
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021191089
(22)【出願日】2021-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】000001834
【氏名又は名称】三機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯田 浩一
【テーマコード(参考)】
5J062
5K067
【Fターム(参考)】
5J062CC18
5J062HH00
5K067AA34
5K067DD17
5K067DD20
5K067EE02
5K067EE06
5K067EE10
5K067EE16
5K067JJ53
(57)【要約】
【課題】広範な屋内エリアに配置された資機材の位置の誤検知を防ぐことが可能な位置検知システムを提供する。
【解決手段】位置検知システムは、対象現場に置かれた対象資機材が複数のエリアのうちの何れのエリアに配置されているかを検知する。位置検知システムは、対象資機材に設置される子機と、複数のエリアのそれぞれに設置される複数の中継機と、対象現場に設置される親機と、を有する。子機、複数の中継機、及び親機は、マルチホップ通信により子機から親機まで伝送情報を送信する。ここで、子機の送信出力は中継機の送信出力よりも小さい。親機は、受信した伝送情報を管理サーバに送信する。管理サーバは、伝送情報に基づいて、対象資機材が複数のエリアのうちの何れのエリアに配置されているかの検知結果を出力する。例えば、中継機の送信出力は15mW~20mWであり、子機の送信出力は1mW以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象現場に置かれた対象資機材が前記対象現場に含まれる複数のエリアのうちの何れのエリアに配置されているかを検知する位置検知システムにおいて、
前記位置検知システムは、
前記対象資機材に設置される子機と、
前記複数のエリアのそれぞれに設置される複数の中継機と、
前記対象現場に設置される親機と、を有し、
前記子機、前記複数の中継機、及び前記親機は、マルチホップ通信により前記子機から前記親機まで伝送情報を無線送信するように構成され、
前記子機は、自ノードの固有アドレスを含む前記伝送情報を出力するように構成され、
前記中継機は、前記伝送情報を受信する機能と、受信した前記伝送情報に自ノードの固有アドレスを更に付加して出力する機能と、を有し、
前記親機は、前記伝送情報を受信する機能と、受信した前記伝送情報に自ノードの固有アドレスを更に付加して管理サーバに送信する機能と、を有し、
前記管理サーバは、前記伝送情報に基づいて、前記対象資機材が前記複数のエリアのうちの何れのエリアに配置されているかの検知結果を出力するように構成され、
前記子機の送信出力は前記中継機の送信出力よりも小さい
ことを特徴とする位置検知システム。
【請求項2】
前記中継機及び前記子機は、内蔵バッテリによって動作し、
前記中継機の送信出力は10mW~20mWであり、
前記子機の出力は1mW以下である
ことを特徴とする請求項1に記載の位置検知システム。
【請求項3】
前記子機及び前記中継機の伝送周波数は、サブギガヘルツ周波数帯の範囲内である
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の位置検知システム。
【請求項4】
前記管理サーバは、前記複数の中継機又は前記親機のうち、前記子機から出力された前記伝送情報を最初に中継した第一ノードを前記伝送情報に基づいて特定し、前記第一ノードが設置されているエリアを、前記対象資機材が置かれているエリアとして特定する
ように構成される請求項1から請求項3の何れか1項に記載の位置検知システム。
【請求項5】
前記管理サーバは、前記検知結果を表示装置に出力するように構成され、
前記表示装置は、前記対象資機材の配置の一覧を表示する
ように構成されることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1項に記載の位置検知システム。
【請求項6】
前記管理サーバは、前記検知結果を表示装置に出力するように構成され、
前記表示装置は、前記対象資機材毎の移動履歴を表示する
ように構成されることを特徴とする請求項1から請求項5の何れか1項に記載の位置検知システム。
【請求項7】
前記中継機は筐体外部に露出した外部アンテナを有し、
前記子機は筐体内部に配置された内部アンテナを有する
ことを特徴とする請求項1から請求項6の何れか1項に記載の位置検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、屋内位置検知システムに係り、特に広範な屋内に配置された資機材の位置を検知するための屋内位置検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一定の空間内で特定の物体を探索する場合に物体の位置を検出する技術としては、様々な手法が提案されている。例えば、GPS(Global Positioning System)やRFID(Radio Frequency Identification)タグシステムによる自営網を利用する方法、などがある。このうちGPSは衛星からの電波が届く屋外の位置検出利用にほぼ限定される。鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造の多層階の建物については、たとえ建設途上であっても、電波が建物を構成する鉄及びコンクリートを通過しにくい性質のため、屋内、特に周囲を鉄とコンクリートに覆われている空間へは、外部からの電波は届きにくい。
【0003】
特許文献1には、屋内における位置検出システムに関する技術が開示されている。この技術では、RFID(Radio Frequency Identification)タグシステム、PHS(Personal Handy-phone System)、GPS(Global Positioning System)等の無線のうち、特にRFID(Radio Frequency Identification)タグシステムを用いて、位置検出すべき対象物とともに移動する第1の発信機からの第1の信号と、あらかじめ位置確認がなされた複数の第2の発信機の位置からの第2の信号とが受信機で受信される。そして、システムは、受信機で受信したそれぞれの発信機の電界強度を比較し、第1の発信機の電界強度と近い値を有する第2の発信機の位置が対象物に近い位置であるとし、対象物の位置を検出する。これにより、RFID(Radio Frequency Identification)タグを用いた従来のシステムよりも伝送路を介して接続する必要のある多数の受信機を減らすことができるとしている。ただし発信機が多数必要となり、減らしたといっても見通せるエリアに2つ以上の複数の受信機が必要であり、多数のエリアが出来上がっていく建設現場では多数の受信機が必要となる技術である。
【0004】
特許文献2には、複数の装置間を電波で中継してバケツリレーのようにデータを伝送する無線マルチホップネットワークについて、末端の無線局からゲートウェイ無線局まで信号を伝送する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-98749号公報
【特許文献2】特許第4508053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
商業施設や工場等の建設現場では、建設用資材や建設用機械等の資機材が、屋内フロアの内装間仕切り未完成のエリアであったり完成エリアであったりの各場所を仮置き場として保管されていることがある。毎日忙しく適宜多量に資材が現場に搬入されて各仮置き場へ仮置きされるが、日時と場所とを系統立てて他人に認識し記憶してもらうことが難しい。広範で多層階の屋内フロアを有する建設現場では、これらの資機材の位置を現場の担当者が目視で確認する必要があり、結局探し回ることとなり多大な工数を要してしまうことがある。
【0007】
そこで、特許文献1の技術を建設現場における資機材の位置検知に利用することを考える。この場合、広範で且つ多層階にある屋内フロアの各エリアに固定設置された複数の発信機の電波をそれぞれ受信するために、受信機の設置数を各エリアごと増やすことが必要となる。この対策として、位置検知システムに用いられる無線ネットワークに、例えば特許文献2に記載されている無線マルチホップネットワークを適用し、受信機からの伝送ケーブルを省略することが考えられる。この場合、資機材に設置された末端の無線局(子機)からゲートウェイ無線局(親機)までマルチホップ通信によって信号を無線伝送することできる。
【0008】
しかしながら、無線マルチホップネットワークを資機材の位置検知システムに適用した場合、資機材に設置された末端の無線局(子機)の出力信号が、無線マルチホップネットワークに含まれる複数の中継機によって受信されてしてしまうことが考えられる。この場合、資機材の位置検知を正確に行うことができないおそれがある。
【0009】
本開示は、上述のような課題に鑑みてなされたもので、広範な屋内エリアに配置された資機材の位置の誤検知を防ぐことが可能な位置検知システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、第1の開示は、対象現場に置かれた対象資機材が対象現場に含まれる複数のエリアのうちの何れのエリアに配置されているかを検知する位置検知システムに適用される。位置検知システムは、対象資機材に設置される子機と、複数のエリアのそれぞれに設置される複数の中継機と、対象現場に設置される親機と、を有する。子機、複数の中継機、及び親機は、マルチホップ通信により子機から親機まで伝送情報を無線送信するように構成される。子機は、自ノードの固有アドレスを含む伝送情報を出力するように構成される。中継機は、伝送情報を受信する機能と、受信した伝送情報に自ノードの固有アドレスを更に付加して出力する機能と、を有する。親機は、伝送情報を受信する機能と、受信した伝送情報に自ノードの固有アドレスを更に付加して管理サーバに送信する機能と、を有する。管理サーバは、伝送情報に基づいて、対象資機材が複数のエリアのうちの何れのエリアに配置されているかの検知結果を出力するように構成される。そして、子機の送信出力は中継機の送信出力よりも小さい。
【0011】
第2の開示は、第1の開示において更に以下の特徴を備える。
中継機及び子機は、内蔵バッテリによって動作し、中継機の送信出力は10mW~20mWであり、子機の出力は1mW以下である。
【0012】
第3の開示は、第1又は第2の開示において更に以下の特徴を備える。
子機及び中継機の伝送周波数は、サブギガヘルツ周波数帯の範囲内である。
【0013】
第4の開示は、第1から第3の何れか1つの開示において更に以下の特徴を備える。
管理サーバは、複数の中継機又は親機のうち、子機から出力された伝送情報を最初に中継した第一ノードを伝送情報に基づいて特定し、第一ノードが設置されているエリアを、対象資機材が置かれているエリアとして特定するように構成される。
【0014】
第5の開示は、第1から第4の何れか1つの開示において更に以下の特徴を備える。
管理サーバは、検知結果を表示装置に出力するように構成される。表示装置は、対象資機材の配置の一覧を表示するように構成される。
【0015】
第6の開示は、第1から第5の何れか1つの開示において更に以下の特徴を備える。
管理サーバは、検知結果を表示装置に出力するように構成される。表示装置は、対象資機材毎の移動履歴を表示するように構成される。
【0016】
第7の開示は、第1から第6の何れか1つの開示において更に以下の特徴を備える。
中継機は筐体外部に露出した外部アンテナを有し、子機は筐体内部に配置された内部アンテナを有する。
【発明の効果】
【0017】
本開示の位置検知システムによれば、対象資機材に設置された子機からの出力が、直近の中継機又は親機のみに伝送し易くなる。これにより、広範な屋内エリアに配置された対象資機材の位置の誤検知を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施の形態に係る位置検知システムの概要を示す図である。
図2】実施の形態に係る位置検知システムにおける無線メッシュネットワークのトポロジーを示す模式図である。
図3】位置検知システム100の構成を示すブロック図である。
図4】位置検知システム100の適用例を示す図である。
図5】子機12の機能を説明するための機能ブロック図である。
図6】中継機10の機能を説明するための機能ブロック図である。
図7】親機14の機能を説明するための機能ブロック図である。
図8】管理サーバ20の機能を説明するための機能ブロック図である。
図9】記憶装置に記憶された伝送情報の一例を示す図である。
図10】中継機/親機管理情報の一例を示す図である。
図11】子機管理情報の一例を示す図である。
図12】表示装置32に表示される資機材位置表示画面の一例を示す図である。
図13】表示装置32に表示される資機材位置表示画面の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本開示の実施の形態について説明する。ただし、以下に示す実施の形態において各要素の個数、数量、量、範囲等の数に言及した場合、特に明示した場合や原理的に明らかにその数に特定される場合を除いて、その言及した数に、この開示が限定されるものではない。また、以下に示す実施の形態において説明する構造等は、特に明示した場合や明らかに原理的にそれに特定される場合を除いて、この開示に必ずしも必須のものではない。
【0020】
実施の形態.
1.位置検知システムの概要
図1は、実施の形態に係る位置検知システムの概要を示す図である。位置検知システム100は、建設現場の屋内フロアに置かれている資機材の位置を検知するためのシステムである。資機材は、例えば、鋼材等の建築資材、高所作業車等の建設用機械、などが例示される。図1に示す位置検知システム100は、広範な屋内フロアFを有する建設現場に設置されている。広範な屋内フロアFとは、多層階であるケースも多く、また建設途上で毎日間仕切りなどが変わっていくような見通しが悪く、コンクリートや鉄骨構造材など電波を遮蔽するものがあるような空間である。位置検知システム100は、複数の中継機10と、子機12と、親機14と、管理サーバ20と、を備えている。
【0021】
複数の中継機10は、伝送周波数としてサブギガヘルツ(920MHz)周波数帯を利用した無線メッシュネットワークを構成するノードである。無線メッシュネットワークは、アクセスポイントを必要としないアドホックネットワークの一形態であり、無線メッシュネットワークを構成する各ノードがマルチホップ通信を行う。なお、無線メッシュネットワークを利用したマルチホップ通信については、例えば特許文献2に示すように様々な公知文献が存在するため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0022】
複数の中継機10は、屋内フロアFにおいて互いに間隔を開けて受け持ちエリアごとに固定設置される。図1に示す例では、矩形の屋内フロアFを4つの矩形のエリアFa,Fb,Fc,Fdに区画したときの各エリアFa,Fb,Fc,Fdに対応して、それぞれ中継機10a,10b,10c,10dが設置されている。屋内フロアFは、例えば約50m四方の矩形フロアであり、各エリアFa,Fb,Fc,Fdは、例えば約25m四方の矩形フロアである。中継機10は多数の設置が必要であり、主なデータ送信元の子機12からの受信も、データ送信先の親機14への送信も無線で行うため、内部電源バッテリを備え動作することで伝送ケーブルおよび電源ケーブルを省略することができる。これにより設置工事や移設作業のコストを大きく削減できる。
【0023】
子機12は、中継機10と同様に、伝送周波数としてサブギガヘルツ(920MHz)周波数帯を利用した無線メッシュネットワークを構成するノードである。子機12は、内部に電源としてのバッテリを備え、自ら電波を出力することから、アクティブタグとも呼ばれる。
【0024】
子機12は、屋内フロアFに置かれている資機材に設置される。対象となる資機材は屋内フロアF内を移動する可能性のあるものである。機材としては建設用機械(高所作業車など)で当然動かすのであるが、資材についても仮置き場の変更や資材の搬入の工程により集めたり分散したりするので移動がつきものである。図1では、4つの子機12が図示されている。図1において資機材の図示は省略している。位置検知システム100において位置検知の対象となる子機12の数は、1台以上であればその数に限定はない。
【0025】
親機14は、中継機10としてのデータ受信機能に加えて、無線メッシュネットワークとインターネット等の外部通信ネットワーク16とを接続する通信装置としての機能を備えたゲートウェイ装置である。親機14は、LPWA(Low Power Wide Area-network)である無線メッシュネットワークの信号を変換し、有線LANやWiFiあるいはインターネット網を介して管理サーバ20に接続される。管理サーバ20はオンプレミスとして構築し、その後LANで管理者端末30へ接続されてもよいし、管理サーバ20をクラウド中に構築し、その後インターネット網を介して管理者端末30へ接続されてもよい。
【0026】
図2は、実施の形態に係る位置検知システムにおける無線メッシュネットワークのトポロジーを示す模式図である。子機12は、自ノードの固有アドレスを含む伝送情報を定期的(例えば、1回/分)に出力する。子機12から出力された伝送情報は直近の中継機10によって受信される。伝送情報を受信した中継機10は、受信した伝送情報の信号強度であるRSSI値を発信元のノードの固有アドレスに関連付けて収集し、自ノードの固有アドレスを付加して出力する。このように、位置検知システム100では、1又は複数の中継機10がマルチホップ通信によって順に中継することによって、子機12から出力された伝送情報が親機14まで伝送される。親機14は、受信した伝送情報を、外部通信ネットワーク16を介して管理サーバ20に送信する。
【0027】
管理サーバ20は、親機14から受信した伝送情報を記憶する記憶部としての機能と、記憶した情報に基づいて子機12の位置を管理する位置管理機能と、利用者の端末との通信を行う通信機能と、を備えている。伝送情報には、子機12から親機14まで伝送される間に中継したノードの固有アドレス及びRSSI値が含まれている。管理サーバ20は、子機12から最初に中継された第一ノードの配置エリアを子機12の位置とする位置検知を行うとともに、管理者の管理者端末30に検知結果を送信する。管理者端末30は、表示装置32を備えたパーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレット、などが例示される。検知結果は管理者端末30の表示装置32に表示される。これにより、管理者は子機12が設置された対象資機材の位置を把握することができる。
【0028】
ここで、子機12から出力された信号が直近の中継機10だけでなく他の中継機10によっても受信された場合、誤検知を招くおそれがある。そこで、本実施の形態の位置検知システム100では、子機12から出力された信号が複数の中継機10に受信され難くするための工夫がなされている。具体的には、位置検知システム100の中継機10は、他の中継機10まで電波が届くための出力値が必要なのに対して、子機12は、直近の中継機10まで届くための最低限の出力値でよい。例えば、図1の約50m四方の屋内フロアFでは、中継機間距離が最大50~75m程度となるのに対して、子機12から直近の中継機10との距離は最大で20~30m程度となる。
【0029】
そこで、位置検知システム100の子機12は、伝送情報の出力値が中継機10の出力値よりも小さい値に抑えられている。ここでの子機12の出力値は、屋内フロアF内における中継機10の設置間隔を考慮して、直近の中継機10のみに電波が届く程度の出力値に設定される。例えば、中継機10の送信出力が10mW~20mWに設定されているのに対して、子機12の送信出力は1mW以下に設定される。更に好ましくは、中継機10の送信出力が20mWに設定され、子機12の送信出力は1mWに設定される。
【0030】
以上が本実施の形態の位置検知システム100の概要である。位置検知システム100によれば、子機12の出力を複数の中継機10によって受信することによる誤検知を防ぐことができる。これにより、広範な屋内フロアにおける資機材の位置検知精度が高まる。以下、位置検知システム100の構成と機能の詳細について説明する。
【0031】
2.位置検知システム100の構成および機能
図3は、位置検知システム100の構成を示すブロック図である。位置検知システム100は、複数の中継機10と、子機12と、親機14と、管理サーバ20と、管理者端末30と、を備える。子機12と複数の中継機10と親機14とは、無線メッシュネットワークの各ノードを構成し、マルチホップ通信を実現する。親機14と管理サーバ20とは、構内LANやインターネット等の外部通信ネットワーク16を介して接続されている。管理サーバ20と管理者端末30とは、無線又は有線による通信回線で接続されている。
【0032】
図4は、位置検知システム100の適用例を示す図である。この図では、地下1階(BF)から地上6階(6F)までの7つのフロアのそれぞれを、A工区、B工区、C工区、及びD工区の4つのエリアに区画した対象現場に、位置検知システム100を適用した場合を例示している。複数の中継機10は、各フロアの各工区に対応して設置されている。親機14は、6FのD工区に設置されている。子機12は、対象現場内に置かれている複数の資機材のそれぞれに設置されている。図4において、管理サーバ20及び管理者端末30の図示は省略する。
【0033】
図5は、子機12の機能を説明するための機能ブロック図である。子機12は、無線メッシュネットワークの末端のノードを構成する。子機12は、屋内フロアにおいて位置検知の対象となる対象資機材に設置される。
【0034】
子機12は、無線部121と、子機制御部122と、電源部123と、を備える。無線部121は、サブギガヘルツ(920MHz)周波数帯を利用した無線通信を行うための機能ブロックであり、筐体内部に配置された内部アンテナ125と、送信部126と、を含んでいる。そして子機制御部122は、自ノードの固有アドレスを含む伝送情報を生成し、定期的(例えば、1回/分)に送信部126から出力する。送信出力は、信号到達範囲が最大で20mから30m程度に抑えられるように、実験から導いた1mWに設定されている。また、信号到達範囲を抑制する目的で内部アンテナ125が使用されている。電源部123は、携帯性を考慮して乾電池等の内蔵バッテリが用いられる。サブギガヘルツ(920MHz)周波数帯を利用した無線通信を行うことで、昔から用いられていた特定小電力無線局の429MHz帯と比べてデータ通信量が大きく、一方、WiFi等で使われている2.4GHz帯と比べるとデータ通信量は小さいが遮蔽物の影響を受けにくいため電波到達性が高い。このように、サブギガヘルツ(920MHz)周波数帯は、建築現場などでセンサ情報を伝送するための無線マルチホップネットワーク構築に適している。
【0035】
図6は、中継機10の機能を説明するための機能ブロック図である。複数の中継機10は、無線メッシュネットワークの各ノードを構成する。複数の中継機10は、屋内フロアにおいてそれぞれ規定位置に固定設置される。ここでの規定位置は、例えば、位置検知の対象となる屋内フロアにおいて互いに通信可能な間隔(例えば50m~80m)を開けた位置として予め定められた位置である。
【0036】
中継機10は、無線部101と、中継機制御部102と、電源部103と、を備える。無線部101は、子機12と同様に、サブギガヘルツ(920MHz)周波数帯を利用した無線通信を行うための機能ブロックである。無線部101は、筐体外部に露出した外部アンテナ105と、送信部106と、受信部107と、を含んでいる。受信部107は、子機12又は他の中継機10から送信された伝送情報を受信する。中継機制御部102は、受信した伝送情報に更に自ノードに関連した情報を付加した伝送情報を生成する。具体的には、中継機制御部102は、受信した伝送情報の信号強度(RSSI値)を収集し、発信元のノードの固有アドレスに関連付けて伝送情報に付加する。また、中継機制御部102は、自ノードの固有アドレスを伝送情報に付加する。中継機制御部102は、生成した伝送情報を送信部106から出力する。80m~100m程度の信号到達範囲を確保するために、中継機10の送信出力は10mW~20mW、更に好ましくは20mWに設定されている。外部アンテナ105は、送信する伝送情報の信号強度を高めるためのものである。電源部103は、乾電池等の内蔵バッテリでもよいし、外部電源でもよい。ただし頻繁に設置環境が変更される建設現場では、移設が容易な内蔵バッテリが望ましい。
【0037】
図7は、親機14の機能を説明するための機能ブロック図である。親機14は、屋内フロアにおいて規定位置に固定設置される。ここでの規定位置は、例えば、位置検知の対象となる屋内フロアにおいて少なくとも1つの中継機10と通信可能な位置として予め定められた位置である。
【0038】
親機14は、無線部141と、親機制御部142と、外部通信部143と、電源部144と、を備える。無線部141は、中継機10と同様に、サブギガヘルツ(920MHz)周波数帯を利用した無線通信を行うための機能ブロックである。無線部141が備える外部アンテナ145、送信部146、及び受信部147の機能は、中継機10が備える外部アンテナ105、送信部106、及び受信部107と同様である。親機制御部142は、受信した伝送情報に更に自ノードに関連した情報を付加した伝送情報を生成する。具体的には、親機制御部142は、受信した伝送情報の信号強度(RSSI値)を収集し、発信元のノードの固有アドレスに関連付けて伝送情報に付加する。また、親機制御部142は、自ノードの固有アドレスを伝送情報に付加する。
【0039】
親機制御部142は、生成した伝送情報を外部通信部143から有線LANやWiFiあるいはインターネット網などの外部通信ネットワーク16を介して管理サーバ20へ出力する。電源部144は、乾電池等の内蔵バッテリでもよいし、外部電源でもよい。
【0040】
図8は、管理サーバ20の機能を説明するための機能ブロック図である。管理サーバ20は、例えばクラウド上のサーバとして構成される。或いは、管理サーバ20は、管理者端末30と一体に構成されていてもよい。管理サーバ20は、制御装置201と、記憶装置202と、を備える。記憶装置202は、親機14から受信した伝送情報を記憶する。図9は、記憶装置に記憶された伝送情報の一例を示す図である。この図に示すように、伝送情報は、子機12から親機14に至るまでに中継したノードの固有アドレスと各ノード間の伝送時のRSSI値が記憶されている。制御装置201は、記憶された伝送情報を用いて子機12が設置された資機材の位置を検知する。例えば、制御装置201は、伝送情報に基づいて、子機12の伝送情報を最初に中継したノード(第一ノード)の固有アドレスを特定する。記憶装置202には、複数の中継機10及び親機14の設置場所を示す中継機/親機管理情報がそれぞれのノードの固有アドレスに対応付けられて記憶されている。図10は、中継機/親機管理情報の一例を示す図である。この図に示す中継機/親機管理情報には、固有アドレスにノードの種類と設置場所の階床及び工区が対応付けられて記憶されている。制御装置201は、第一ノードの固有アドレスに対応する設置場所を中継機/親機管理情報から読み出し、その階床及び工区を子機12の位置の検知結果として特定する。
【0041】
また、記憶装置202には、資機材に設置された子機12の情報を示す子機管理情報がそれぞれの固有アドレスに対応付けられて記憶されている。図11は、子機管理情報の一例を示す図である。この図に示す例では、子機管理情報には、固有アドレスにノードの種類と資機材の詳細情報が対応付けられて記憶されている。制御装置201は、対象の子機12の固有アドレスに対応する資機材の詳細情報を子機管理情報から読み出す。そして、制御装置201は、資機材とその位置を示す資機材位置表示画面を生成し、管理者端末30に送信する。管理者端末30は表示装置32に受信した資機材位置表示画面を表示する。これにより、管理者は現場内の資機材の位置をいつでもどこからでも確認することが可能となる。
【0042】
図12は、表示装置32に表示される資機材位置表示画面の一例を示す図である。この図では、子機12が設置された資機材のそれぞれが置かれている階床及び工区が一覧表示されている。このような表示によれば、各資機材の配置を一括で把握することができる。
【0043】
図13は、表示装置32に表示される資機材位置表示画面の他の例を示す図である。この図では、子機12が設置された資機材毎の移動履歴の時間変化が表示されている。このような表示によれば、対象資機材毎の移動履歴を把握することができる。
【符号の説明】
【0044】
10 中継機
12 子機
14 親機
16 外部通信ネットワーク
20 管理サーバ
30 管理者端末
32 表示装置
100 位置検知システム
101 無線部
102 中継機制御部
103 電源部
105 外部アンテナ
106 送信部
107 受信部
121 無線部
122 子機制御部
123 電源部
125 内部アンテナ
126 送信部
141 無線部
142 親機制御部
143 外部通信部
144 電源部
145 外部アンテナ
146 送信部
147 受信部
201 制御装置
202 記憶装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13