(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023077718
(43)【公開日】2023-06-06
(54)【発明の名称】エポキシ樹脂系組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 59/68 20060101AFI20230530BHJP
【FI】
C08G59/68
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021191114
(22)【出願日】2021-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】000242002
【氏名又は名称】北興化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大賀 将範
(72)【発明者】
【氏名】大橋 賢治
【テーマコード(参考)】
4J036
【Fターム(参考)】
4J036AA01
4J036AA02
4J036AB01
4J036AB02
4J036AB07
4J036AB10
4J036AC01
4J036AC02
4J036AD08
4J036AD10
4J036AD20
4J036AE05
4J036AF06
4J036AG07
4J036AH06
4J036AH07
4J036AJ09
4J036AJ10
4J036DC02
4J036DC03
4J036DC04
4J036DC06
4J036DC09
4J036DC10
4J036DC38
4J036GA04
4J036JA01
4J036JA06
4J036JA11
4J036JA13
4J036JA15
(57)【要約】
【課題】各種の塗料、土木建築用部材、接着剤、繊維強化複合材料、またディスプレイ、レンズなどの光学部品などの分野において、速硬化性を有するエポキシ樹脂系組成物および外観が良好なエポキシ樹脂系硬化物を提供すること。
【手段】エポキシ樹脂、アミン系硬化剤、硬化促進剤からなるエポキシ樹脂系組成物であって、硬化促進剤として、下記の一般式(1)で表されるホスホニウム化合物を含むことを特徴とするエポキシ樹脂系組成物。
【化1】
(式中、R
1~R
4およびXは、前記と同じ意味を示す。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂、アミン系硬化剤、硬化促進剤からなるエポキシ樹脂系組成物であって、硬化促進剤として、下記の一般式(1)
【化1】
(式中、R
1~R
4は、同一または異なって、炭素数1~16の置換もしくは非置換の炭化水素基を示す。Xは、ハロゲン原子を示す。)で表されるホスホニウム化合物を含むことを特徴とするエポキシ樹脂系組成物。
【請求項2】
前記一般式(1)において、R1~R4が、同一または異なって、メチル基、フェニル基、メトキシメチル基、ベンジル基、および、カルボキシエチル基から選ばれる置換基である請求項1に記載のエポキシ樹脂系組成物。
【請求項3】
前記一般式(1)が、メチルトリフェニルホスホニウムブロミド、メトキシメチルトリフェニルホスホニウムクロリド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロリド、および、カルボキシエチルトリフェニルホスホニウムブロミドからなる群から選ばれる1種のホスホニウム化合物であることを特徴とする請求項1、2に記載のエポキシ樹脂系組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載のエポキシ樹脂系組成物を硬化して得られるエポキシ樹脂系硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
エポキシ樹脂、アミン系硬化剤、硬化促進剤からなるエポキシ樹脂系組成物であって、速硬化性を有するエポキシ樹脂系組成物および外観が良好なエポキシ樹脂系硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エポキシ樹脂等に代表される熱硬化性樹脂系組成物は、優れた機械的、化学的および電気的性質を有する成形体等が得られるため、半導体素子の絶縁封止材料、プリント基板材料、塗料、航空機や自動車の複合材料等に広く使用されている。
【0003】
例えば塗料は、塗工前にエポキシ樹脂とエポキシ樹脂用硬化剤を混合して得られるエポキシ樹脂系組成物を用い、室温で硬化させ、塗膜を得る使い方が一般的である。
【0004】
そのエポキシ樹脂系組成物において、アミンをエポキシ樹脂用硬化剤とするエポキシ樹脂系組成物が、取り扱いが容易であるため好適に用いられている。しかし、前記のエポキシ樹脂系組成物は、室温における硬化に長時間を要することが知られている。
【0005】
一方、熱硬化性樹脂系組成物に成分として含まれる硬化促進剤は、添加することによって、熱硬化性樹脂系組成物の硬化を促進させるほかに、その成形体である硬化物の接着性、耐熱性、外観など諸特性にも影響を与えるため、適する硬化促進剤の選択は極めて重要である。
【0006】
前記のエポキシ樹脂系組成物において、硬化時間を短くするために、硬化促進剤としてサリチル酸(特許文献1参照)、p-トルエンスルホン酸、三フッ化ホウ素などが用いられているが(特許文献2参照)、酸がアミンと反応し、硬化物外観が不良となることが知られていた(非特許文献1参照)。
【0007】
そのような状況下にあって、速硬化性を有する前記のエポキシ樹脂系組成物および外観が良好なエポキシ樹脂系硬化物を与えるエポキシ樹脂用の硬化促進剤が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2017/175740号公報
【特許文献2】特開2007-126627号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】高分子論文集 Vol.47,No.2(1990),p.159-164(Feb.,1990)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記の従来技術に伴う問題点を解決しようとするものである。すなわち、アミンをエポキシ樹脂用硬化剤とするエポキシ樹脂系組成物において、速硬化性を有するエポキシ樹脂系組成物および外観が良好なエポキシ樹脂系硬化物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような状況に鑑み、本発明者らは鋭意検討した。その結果、ある特定のホスホニウム化合物を硬化促進剤として配合した場合に、速硬化性を有するエポキシ樹脂系組成物および外観が良好なエポキシ樹脂系硬化物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は以下の内容をその要旨とするものである。
〔1〕エポキシ樹脂、アミン系硬化剤、硬化促進剤からなるエポキシ樹脂系組成物であって、硬化促進剤として、下記の一般式(1)
【化1】
(式中、R
1~R
4は、同一または異なって、炭素数1~16の置換もしくは非置換の炭化水素基を示す。Xは、ハロゲン原子を示す。)で表されるホスホニウム化合物を含むことを特徴とするエポキシ樹脂系組成物。
〔2〕前記一般式(1)において、R
1~R
4が、同一または異なって、メチル基、フェニル基、メトキシメチル基、ベンジル基、および、カルボキシエチル基から選ばれる置換基である〔1〕に記載のエポキシ樹脂系組成物。
〔3〕前記一般式(1)が、メチルトリフェニルホスホニウムブロミド、メトキシメチルトリフェニルホスホニウムクロリド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロリド、および、カルボキシエチルトリフェニルホスホニウムブロミドからなる群から選ばれる1種のホスホニウム化合物であることを特徴とする〔1〕、〔2〕に記載のエポキシ樹脂系組成物。
〔4〕〔1〕~〔3〕のいずれかに記載のエポキシ樹脂系組成物を硬化して得られるエポキシ樹脂系硬化物。
【発明の効果】
【0013】
本発明のホスホニウム化合物は、アミンをエポキシ樹脂用硬化剤とするエポキシ樹脂系組成物において、従来の硬化促進剤を用いた場合に比べ、速硬化性を有するエポキシ樹脂系組成物および外観が良好なエポキシ樹脂系硬化物を与えるため有用である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明において、置換もしくは非置換の炭化水素基とは、炭素数が1~16の炭化水素基であって、置換基を有してもよい脂肪族炭化水素基、及び置換基を有してもよい芳香族炭化水素基を含む。なお、炭化水素基が置換基を有する場合、炭化水素基の炭素数には、置換基に含まれる炭素数は含まれないものとする。
【0015】
本発明において、置換基を有してもよい脂肪族炭化水素基は、直鎖状又は分岐鎖状の飽和脂肪族炭化水素基であっても、直鎖状又は分岐鎖状の不飽和脂肪族炭化水素基であってもよい。脂肪族炭化水素基として具体的には、アルキル基としてメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、1,1-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、1-エチルプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基、1,1-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、2-エチル-2-メチルブチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基、2-ペンチル基、3-ペンチル基、tert-ペンチル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、1-エチルペンチル基、2-エチルペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、2-ヘキシル基、3-ヘキシル基、1-メチルヘキシル基、2-メチルヘキシル基、1-エチルヘキシル基、2-エチルヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基等の飽和脂肪族炭化水素基や、アルケニル基として、アリル基、ビニル基等、アルキニル基として、エチニル基、プロパルギル基等の不飽和脂肪族炭化水素基が挙げられる。
【0016】
本発明において、置換基を有してもよい脂肪族炭化水素基は、脂環式炭化水素基であってもよい。また、脂環式炭化水素基は脂環式飽和炭化水素基であっても、脂環式不飽和炭化水素基であってもよい。脂環式炭化水素基として具体的には、シクロアルキル基として、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等の脂環式飽和炭化水素基や、シクロアルケニル基として、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の脂環式不飽和炭化水素基を挙げることができる。
【0017】
本発明において、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基は単環又は多環の芳香族炭化水素基であってもよい。芳香族炭化水素基として具体的には、アリール基としてフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等を挙げることができる。
【0018】
本発明において、脂肪族炭化水素基に置換してもよい置換基としては、炭素数1~4のアルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、水酸基、カルボキシ基、アシル基、アミノ基、ハロゲン原子等が挙げられる。置換基を有する脂肪族炭化水素基としては、具体的にアルコキシ置換アルキル基として、メトキシメチル基、エトキシメチル基等や、アリール置換アルキル基としてベンジル基等を挙げることができる。
【0019】
本発明において、芳香族炭化水素基に置換してもよい置換基としては、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、水酸基、カルボキシ基、アシル基、アミノ基、ハロゲン原子等が挙げられる。置換基を有する芳香族炭化水素基としては、具体的にアルキル基置換アリール基としてトリル基、ジメチルフェニル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、n-ブチルフェニル基、t-ブチルフェニル基等や、アルコキシ基置換アリール基として、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、n-ブトキシフェニル基、t-ブトキシフェニル基等が挙げられる。
【0020】
脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基が置換基を有する場合、置換基の位置及び置換基の数は特に制限されない。また2以上の置換基を有する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。
【0021】
本発明は、エポキシ樹脂と、アミン系硬化剤と、エポキシ樹脂用硬化促進剤とを少なくとも含む、エポキシ樹脂系組成物である。以下、これを「本発明のエポキシ樹脂系組成物」ということがある。
【0022】
本発明のエポキシ樹脂系組成物の成分であるエポキシ樹脂、アミン系硬化剤、およびエポキシ樹脂用硬化促進剤について次に説明する。
【0023】
<エポキシ樹脂用硬化促進剤>
本発明のエポキシ樹脂系組成物でエポキシ樹脂用硬化促進剤として使用するホスホニウム化合物は、下記の一般式(1)
【化2】
(式中、R
1~R
4は、同一または異なって、炭素数1~16の置換もしくは非置換の炭化水素基を示す。Xは、ハロゲン原子を示す。)で表されるホスホニウム化合物が挙げられる。
【0024】
一般式(1)のホスホニウム化合物におけるR1~R4は、同一または異なって、炭素数1~16の置換もしくは非置換の炭化水素基を示す。
【0025】
一般式(1)のホスホニウム化合物において、R1~R4で示される置換基としては、炭素数1~16の置換もしくは非置換の炭化水素基であり、硬化性の観点から炭素数1~12が好ましく、炭素数1~6がより好ましい。炭化水素基として前記の置換基が挙げられ、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、メトキシメチル基、ベンジル基、ヒドロキシメチル基、カルボキシエチル基、カルボキシペンチル基、カルボキシデシル基が好ましく、特にメチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、フェニル基、メトキシメチル基、ベンジル基、ヒドロキシメチル基、カルボキシエチル基、カルボキシペンチル基、カルボキシデシル基が好ましい。
【0026】
一般式(1)のホスホニウム化合物におけるXは、ハロゲン原子を示す。具体的にはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましい。
【0027】
上記のホスホニウム化合物は本明細書の記載に基づき、公知の方法により容易に製造できる。
例えば、有機溶媒中で3級ホスフィン1モルに対し有機ハロゲン化合物を1モル仕込み反応させることにより、4級ホスホニウム化合物を得る方法等が挙げられる。この場合、3級ホスフィンと有機ハロゲン化合物をそれぞれ単独もしくは2種類以上を使用して上記化合物を得てもよい。2種類以上を混合する場合は、2種類以上の3級ホスフィンおよび有機ハロゲン化合物を先に混合した後に、4級ホスホニウム化合物を得てもよいし、2種類以上の4級ホスホニウム化合物を混合してもよい。
【0028】
得られた反応物から純度の高い結晶を析出させ、未反応の原料を除去すること等を目的に、得られた反応物を水、アルコール系有機溶媒(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等)、ケトン系有機溶媒(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン等)、エーテル系有機溶媒(テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、2-メチルテトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、ジオキサン等)、無極性溶媒(ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン等)およびこれらの混合溶媒で洗浄、再結晶精製してもよい。
【0029】
なお、上記3級ホスフィン、有機ハロゲン化合物、および溶媒はいずれも市販されているものを使用してもよい。
【0030】
これらの方法により得られるホスホニウム化合物は、通常は、ホスホニウムカチオンとハロゲンアニオンとの1:1(モル比)塩が主成分であり、一般式(1)で示される。
【化3】
(式中、R
1~R
4は、同一または異なって、炭素数1~16の置換もしくは非置換の炭化水素基を示す。Xは、ハロゲン原子を示す。)
【0031】
本発明のホスホニウム化合物を含むエポキシ樹脂用硬化促進剤を成分として含有するエポキシ樹脂系組成物は、室温における速硬化性を有し、本発明のホスホニウム化合物を含むエポキシ樹脂用硬化促進剤を成分として含有するエポキシ樹脂系硬化物は、外観が良好となる。
【0032】
本発明のエポキシ樹脂用硬化促進剤は、上記ホスホニウム化合物の他に、効果に影響しない限り、エポキシ樹脂用硬化促進剤に通常使用される溶剤、充填剤、添加剤等をさらに含んでもよい。
【0033】
なお、本発明のエポキシ樹脂用硬化促進剤は、上記ホスホニウム化合物の他に、適宜エポキシ樹脂の硬化促進剤を併用して使用してもよい。
【0034】
一般式(1)で表されるホスホニウム化合物の代表的な例を表1にまとめて例示するが、これらに限定されるものではない。
【0035】
なお、表中の次の記載は、下記の通りの官能基を示す。Me:メチル基、Et:エチル基、Pr:プロピル基、Bu:ブチル基、Ph:フェニル基、MeOCH2:メトキシメチル基、Bn:ベンジル基、HOCH2:ヒドロキシメチル基、HOOC(CH2)2:カルボキシエチル基、HOOC(CH2)5:カルボキシペンチル基、HOOC(CH2)10:カルボキシデシル基
【0036】
【0037】
【0038】
<エポキシ樹脂>
エポキシ樹脂としては、特に限定されず、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する汎用的なエポキシ樹脂を用いることが可能であり、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、カテコール、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のフェノール類および/またはナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド基を有する化合物とを酸性触媒の存在下で縮合または共縮合させて得られるノボラック樹脂をエポキシ化したフェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、アルキル置換または非置換のビフェノール、スチルベン系フェノール類等をエポキシ化したビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂;フェノール類および/またはナフトール類とジメトキシパラキシレンやビス(メトキシメチル)ビフェニルから合成されるフェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、ビフェニルアラルキル樹脂等をエポキシ化したフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂;ブタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のアルコール類のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;フタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロフタル酸等のカルボン酸類のグリシジルエステル型エポキシ樹脂;アニリン、イソシアヌル酸、メタキシリレンジアミン、1,3-ビス(アミノメチル) シクロヘキサン、ジアミノジフェニルメタン等の窒素原子に結合した活性水素をグリシジル基で置換したグリシジルアミン型エポキシ樹脂;分子内のオレフィン結合をエポキシ化して得られるビニルシクロヘキセンジエポキシド、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2-(3,4-エポキシ)シクロヘキシル-5,5-スピロ(3,4-エポキシ)シクロヘキサン-m-ジオキサン等の脂環型エポキシ樹脂;パラキシリレンおよび/またはメタキシリレン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテル;テルペン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテル;フェノール類および/またはナフトール類とジシクロペンタジエンから合成される、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型ナフトール樹脂のグリシジルエーテル;シクロペンタジエン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテル;多環芳香環変性フェノール樹脂のグリシジルエーテル;ナフタレン環含有フェノール樹脂のグリシジルエーテル;ハロゲン化フェノールノボラック型エポキシ樹脂;ハイドロキノン型エポキシ樹脂;トリメチロールプロパン型エポキシ樹脂;オレフィン結合を過酢酸等の過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂;ジフェニルメタン型エポキシ樹脂;硫黄原子含有エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0039】
これらのエポキシ樹脂は、単独で、また2種類以上を混合してもよく、有姿のまま使用してもよく、適宜溶剤や添加材等を添加してもよく、市販品を使用してもよい。
【0040】
<アミン系硬化剤>
アミン系硬化剤としては、特に限定されず、1分子中に2個以上のアミノ基を有する汎用的なポリアミンを用いることが可能であり、例えば、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミン、m-キシレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、2-メチルペンタメチレンジアミン等の脂肪族ポリアミン、イソフォロンジアミン、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ノルボルネンジアミン、1,2-ジアミノシクロヘキサン等の脂環式ポリアミン、N-アミノエチルピペラジン、1,4-ビス(2-アミノ-2-メチルプロピル)ピペラジン等のピペラジン型のポリアミン、ジエチルトルエンジアミン、ジメチルチオトルエンジアミン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジエチルジフェニルメタン、ビス(メチルチオ)トルエンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、m-フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン、トリメチレンビス(4-アミノベンゾエート)、ポリテトラメチレンオキシド-ジ-p-アミノベンゾエート、ポリオキシテトラメチレンビス(p-アミノベンゾエート)等が挙げられる。
【0041】
また、これらのポリアミン類とエポキシ樹脂との変性反応物、ポリアミン類とモノグリシジル化合物との変性反応物、ポリアミン類とエピクロルヒドリンとの変性反応物、ポリアミン類と炭素数2 ~ 4 のアルキレンオキシドとの変性反応物、ポリアミン類と少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物との反応により得られたアミドオリゴマー、ポリアミン類、少なくとも1つのアシル基を有する多官能性化合物、および一価のカルボン酸および/またはその誘導体との反応により得られたアミドオリゴマーもエポキシ樹脂硬化剤として使用できる。
【0042】
これらのアミン系硬化剤は、単独で、また2種類以上を混合してもよく、有姿のまま使用してもよく、適宜溶剤や添加材等を添加し、硬化剤組成物として使用することもでき、市販品を使用してもよい。
【0043】
<エポキシ樹脂系組成物>
本発明のエポキシ樹脂系組成物は、エポキシ樹脂、アミン系硬化剤、エポキシ樹脂用硬化促進剤からなる。また、効果に影響しない限り、エポキシ樹脂系組成物に通常使用される溶剤、充填剤、添加剤等をさらに含んでもよい。
本発明のエポキシ樹脂系組成物は、ワニスの状態とするために、公知の各種溶剤を含有することができる。溶剤としては、例えば、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、2-プロポキシエタノール、2-ブトキシエタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール、1-プロポキシ-2-プロパノールなどのグリコールエーテル類、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、ベンジルアルコールなどのアルコール類、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドンなどの非プロトン性極性溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶解、トルエン、キシレン、酢酸エチルなどの非水溶性系溶媒などが挙げられる。
【0044】
本発明のエポキシ樹脂系組成物は、耐衝撃性などの諸性能を向上させるために、公知の各種無機充填剤を含有することができる。無機充填剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、マイカ、タルク、アルミニウムフレーク、ガラスフレーク等が挙げられる。これらを添加する場合には、硬化反応物の全重量を基準として0.01重量%~10.0重量% の範囲が好ましい。
【0045】
その他、エポキシ樹脂系組成物に、消泡剤、湿潤剤、酸化防止剤、防錆添加剤、顔料等を添加してもよく、エポキシ樹脂以外の樹脂を含むこともできる。
【0046】
本発明のエポキシ樹脂系組成物中のアミン系硬化剤の含有量は、エポキシ樹脂中のエポキシ当量と、アミン系硬化剤の当量との当量比を考慮して決定される。具体的には、エポキシ樹脂中のエポキシ基の数に対するアミン系硬化剤中の活性アミン水素数の比が0.5~5.0であることが好ましく、硬化物性をより厳密に考慮すれば、かかる比を0.8~3.0とすることが更に好ましい。
【0047】
本発明のエポキシ樹脂系組成物中のホスホニウム化合物の含有量は、0.5重量部より少ないと、組成物の硬化力を十分に発揮できない場合があり、10重量部より多いと、組成物の貯蔵安定性や硬化物の外観が悪くなる場合があるため、エポキシ樹脂100重量部に対して0.5~10重量部であることが好ましく、硬化性をより厳密に考慮すれば、かかる含有量を0.7~5重量部とすることが更に好ましい。
【0048】
熱硬化性樹脂系組成物の調製方法は特に制限されず、前記各成分を均一に混合することにより調製できる。好ましい調製方法として、エポキシ樹脂、アミン系硬化剤、エポキシ樹脂用硬化促進剤を温度20~150℃程度で均一に攪拌混合する方法を挙げることができ、場合によっては上記ワニスの製造に用いられる溶媒として例示された溶媒を用いてもよい。
【0049】
また、エポキシ樹脂、アミン系硬化剤、および硬化促進剤の各成分は、各混合工程において一度に混合してもよく、または複数回に分けて少しずつ混合してもよい。また、上記溶剤や添加剤、無機充填剤等を混合する場合も、同様に、任意の時期に一度または複数回に分けて混合することができる。
【0050】
なお、各成分混合の際は、均一に攪拌・混合することを容易とするため、ロール、ニーダー、ビーズミル、ミキサー等の混練機等を用いてもよい。
【0051】
<エポキシ樹脂系硬化物>
本発明においてエポキシ樹脂系硬化物とは、エポキシ樹脂系組成物を、エポキシ樹脂系組成物に応じた特定の条件下で加熱することによってエポキシ樹脂の流動性がなくなり、硬化した固形物のことをいう。以下、本発明のエポキシ樹脂系組成物を硬化した固形物を「本発明のエポキシ樹脂系硬化物」ということがある。
【0052】
本発明のエポキシ樹脂系硬化物は、上記した本発明のエポキシ樹脂系組成物を、通常のエポキシ樹脂系組成物の硬化の条件下で加熱することで得ることができる。通常硬化温度20~150℃程度で硬化時間10分~10日加熱により得ることができ、適宜条件を変更することも可能である。
【実施例0053】
以下に本発明の熱硬化性樹脂系組成物を実施例および試験例により詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0054】
<実施例1>
サンプル瓶にメトキシメチルトリフェニルホスホニウムクロリド(化合物番号13)(以下、「TPP-MOC」という)2重量部、メタノール2重量部を入れ、室温下溶解した。これにアミン系硬化剤の1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン(東京化成工業製)20重量部を加え、室温下混合の後、さらに液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂のjER828EL(エポキシ当量186、三菱ケミカル社製)100重量部を加え、室温下攪拌・混合し、エポキシ樹脂系組成物を得た。
【0055】
<実施例2>
TPP-MOC2重量部に代えて、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロリド(化合物番号14)(以下、「TPP-ZC」という)2重量部使用した以外は、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂系組成物を得た。
【0056】
<実施例3>
TPP-MOC2重量部に代えて、メチルトリフェニルホスホニウムブロミド(化合物番号27)(以下、「TPP-MB」という)2重量部使用した以外は、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂系組成物を得た。
【0057】
<実施例4>
TPP-MOC2重量部に代えて、カルボキシエチルトリフェニルホスホニウムブロミド(化合物番号34)(以下、「TPP-PAB」という)2重量部使用した以外は、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂系組成物を得た。
【0058】
<比較例1>
TPP-MOC2重量部に代えて、トリフェニルホスフィン(以下、「TPP」という)2重量部使用した以外は、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂系組成物を得た。
【0059】
<比較例2>
TPP-MOC2重量部に代えて、サリチル酸2重量部使用した以外は、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂系組成物を得た。
【0060】
<比較例3>
TPP-MOC2重量部に代えて、p-トルエンスルホン酸一水和物(以下、「TsOH」という)2重量部使用した以外は、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂系組成物を得た。
【0061】
<比較例4>
硬化促進剤を添加せずに、実施例1と同様にしてエポキシ樹脂系組成物を得た。
【0062】
[硬化性評価]
得られたエポキシ樹脂系組成物を、JIS A-1439-5-19に準拠したタックフリー法による硬化性評価を行った。
【0063】
タックフリー法は、試料を23±2℃に保管し、一定時間毎に指先で試料表面に軽く触れ、試料が指先に付着しなくなるまでに要した時間を計測し、その硬化性の優劣を評価するものである。
【0064】
以下に試験及び評価方法を記す。
得られたエポキシ樹脂系組成物を、24℃に設定したインキュベーターに入れ、30分ごとにタックフリー法により評価し、タックフリーになるまでの時間を計測した。タックフリーになるまでの時間が早いほど硬化性は良好であり、3時間以下であれば硬化性は良好と言えるが、好ましくは2時間以内であり、より好ましくは1時間以内である。
【0065】
[外観評価]
上記で硬化させた試料を目視で観察し、下記の基準によって評価した。
○:硬化物全体が滑らかで、発泡なども認められない
×:硬化物に凹凸があり、発泡が認められる
結果を、表2、3に示した。
【0066】
【0067】
【0068】
表2、3に示すように、本発明にかかるエポキシ樹脂系組成物は、タックフリーになるまでの時間が早く、エポキシ樹脂系硬化物の外観が良好となる。
すなわち、本発明のホスホニウム化合物を含むエポキシ樹脂系組成物は、従来の硬化促進剤を用いた場合に比べ、速硬化性を有し、外観が良好なエポキシ樹脂系硬化物を与えるため有用である。
本発明のエポキシ樹脂系組成物および硬化物は、速硬化性と外観に優れているため、例えば、各種の塗料、土木建築用部材、接着剤、繊維強化複合材料、またディスプレイ、レンズなどの光学部品などの分野においても極めて有用である。