(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023077724
(43)【公開日】2023-06-06
(54)【発明の名称】高分子材料の分析方法
(51)【国際特許分類】
G01N 30/06 20060101AFI20230530BHJP
G01N 30/08 20060101ALI20230530BHJP
G01N 30/88 20060101ALI20230530BHJP
G01N 30/12 20060101ALI20230530BHJP
B01J 20/281 20060101ALI20230530BHJP
G01N 30/54 20060101ALI20230530BHJP
【FI】
G01N30/06 G
G01N30/08 G
G01N30/88 P
G01N30/12 S
B01J20/281 Z
G01N30/54 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021191122
(22)【出願日】2021-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】392013224
【氏名又は名称】フロンティア・ラボ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】弁理士法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】熊田 和子
(72)【発明者】
【氏名】鄭 甲志
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 忠一
(57)【要約】
【課題】ダブルショット法により、高分子材料に含有される成分の情報を確実に得ることができる高分子材料の分析方法を提供する。
【解決手段】試料の発生ガス分析法の結果から第1の分析対象成分が発生する温度領域を選択する。選択的導入手段及び吸引手段5を作動させ、試料を加熱して含有される成分を熱脱着させ、第1の分析対象成分が発生する温度領域で生成した第1の気相成分混合物を第1のカラム31に導入し、第1の分析対象成分を第1のカラム31に捕捉する。吸引手段5を停止して第1の分析対象成分を気化させ、第2のカラム32に導入して分離し、検出手段41で検出する。分割導入手段35を開き、選択的導入手段を停止し、吸引手段5を作動させて、試料を熱分解し、第2の分析対象成分を第1のカラム31に捕捉し、吸引手段5を停止して第2の分析対象成分を気化させ、第2のカラム32に導入して分離し、検出手段41で検出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を加熱して気相成分混合物を生成させる加熱手段と、該加熱手段で生成した該気相成分混合物が導入される第1のカラムと、該加熱手段と第1のカラムとを接続する注入口と、接続手段を介して該第1のカラムに接続される分離カラムである第2のカラムと、該第1のカラムと該第2のカラムと該接続手段とを収容する恒温槽と、該第2のカラムで分離された個々の気相成分を検出する検出手段と、該接続手段に接続される吸引手段と、該注入口に備えられ、該加熱手段で生成した該気相成分混合物の一部を該第1の分離カラムに導入する一方、残部を外部に排出する分割導入手段と、該加熱手段で生成した該気相成分混合物の一部を選択的に該第1の分離カラムに導入する一方、残部を外部に排出する選択的導入手段とを備える気相成分分析装置を用いる高分子材料の分析方法であって、
該試料の発生ガス分析法の結果から第1の分析対象成分が発生する温度領域を選択する工程と、
該選択的導入手段及び該吸引手段を作動させた状態で、該加熱手段内で該試料を加熱して、該試料に遊離状態で含有される成分を該試料から熱脱着させて、第1の気相成分混合物を生成させ、該第1の分析対象成分が発生する温度領域で生成する該第1の気相成分混合物を該注入口を介して選択的に該第1のカラムに導入し、該第1の気相成分混合物に含有される第1の分析対象成分を該第1のカラムに捕捉する工程と、
該第1の分析対象成分を該第1のカラムに捕捉した後、該選択的導入手段及び該吸引手段を停止し、該第1のカラムを該第1の分析対象成分が気化可能な温度に加熱して該第1の分析対象成分を気化させる工程と、
気化した該第1の分析対象成分を該第2のカラムに導入して、個々の気相成分に分離し、分離された個々の気相成分を該検出手段で検出する工程と、
該分割導入手段を開き、該選択的導入手段を停止し、該吸引手段を作動させた状態で、該加熱手段内で、遊離状態で含有される成分が熱脱着された後の該試料を加熱して該試料を熱分解し、第2の気相成分混合物を生成させる工程と、
該分割導入手段により、生成した第2の気相成分混合物の一部を該第1のカラムに導入する一方、該第2の気相成分混合物の残部を外部に放出し、該第1のカラムに導入された該第2の気相成分混合物に含有される第2の分析対象成分を該第1のカラムに捕捉する工程と、
該第2の分析対象成分を該第1のカラムに捕捉した後、該吸引手段を停止し、該第1のカラムを該第2の分析対象成分が気化可能な温度に加熱して該第2の分析対象成分を気化させる工程と、
気化した該第2の分析対象成分を該第2のカラムに導入して、個々の気相成分に分離し、分離された個々の気相成分を該検出手段で検出する工程とを備えることを特徴とする高分子材料の分析方法。
【請求項2】
請求項1記載の高分子材料の分析方法において、前記発生ガス分析法は、前記気相成分分析装置の前記第1のカラム及び前記第2のカラムに代えて、内表面を不活性化した金属チューブを用いて行うことを特徴とする高分子材料の分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子材料の分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、気相成分を分析する方法として、ガスクロマトグラフィーが知られている。前記ガスクロマトグラフィーに用いる気相成分分析装置(ガスクロマトグラフ)として、例えば、試料を加熱して気相成分混合物を生成する加熱手段と、該加熱手段に接続されて該加熱手段で生成した該気相成分混合物を個々の成分に分離する分離カラムと、該分離カラムを収容する恒温槽(オーブン)と、該分離カラムに接続されて該分離カラムで分離された個々の成分を検出する検出器とを備えるものが知られている。
【0003】
前記加熱手段では、試料を熱分解するか揮散させ、あるいは試料を加熱して該試料に含まれる成分を熱脱着させることにより前記気相成分混合物を生成させる。前記検出器には、質量分析検出器(MS)等が用いられる。
【0004】
前記気相成分分析装置を用いて、高分子材料の組成を分析するときには、例えば、まず、該高分子材料を300℃程度の温度に加熱して、該高分子材料に遊離状態で含有される成分を熱脱着させて第1の気相成分混合物を生成させ、該第1の気相成分混合物を前記分離カラムに導入して個々の気相成分に分離し、分離された個々の気相成分を前記質量分析検出器(MS)等の検出器で検出する。次いで、遊離状態で含有される成分が熱脱着された後の該高分子材料を600℃程度の温度で瞬間的に熱分解して、第2の気相成分混合物を生成させ、該第2の気相成分混合物を前記分離カラムに導入して個々の気相成分に分離し、分離された個々の気相成分を前記質量分析検出器(MS)等の検出器で検出する。
【0005】
前記方法は、前記熱脱着に続いて前記熱分解を行うことから、ダブルショット法と呼ばれることがある。
【0006】
ところで、通常の高分子材料は、性能向上のために酸化防止剤、紫外線吸収剤等の添加剤を全体の0.1質量%以下の量で含有している。例えば、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂は、前記添加剤として、イルガホス168(Irgafos168、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト)と呼ばれるリン系加工安定剤を含有している。
【0007】
前記添加剤を含有する高分子材料は品質管理のために、該高分子材料の組成を分析する必要がある。前記高分子材料の組成の分析を前記ダブルショット法により行うときには、該高分子材料の熱脱着により生成した第1の気相成分混合物の分析により前記添加剤等の遊離状態で含有される成分の情報を得ることができ、該高分子材料の熱分解により生成した第2の気相成分混合物の分析により該高分子材料自体の情報を得ることができると考えられる。
【0008】
また、前記気相成分分析装置では、前記加熱手段と前記分離カラムとを接続する注入口に、前記気相成分混合物の一部、例えば1~10%を該分離カラムに導入する一方、残部である90~99%を外部に排出する分割導入手段(スプリットベント)を備えるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このとき、前記分離カラムに導入する成分の、前記気相成分混合物の全量に対する比を、スプリット比といい、前記気相成分分析装置では通常は該スプリット比が所定の固定値とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前記高分子材料の組成の分析を前記ダブルショット法により行う場合、該高分子材料自体の熱分解により生成した第2の気相成分混合物の分析のためには、前記スプリット比が小さい方が好ましい。しかし、前記スプリット比を小さくすると、前記分離カラムに導入される前記気相成分混合物の量が少なくなるので、前記高分子材料の熱脱着により生成した第1の気相成分混合物が該高分子材料に遊離状態で含有される成分由来であり、該遊離状態で含有される成分の該高分子材料全体に対する含有量が0.1質量%以下と少ないときには、十分な検出強度を得ることができず、前記高分子材料の熱脱着により生成した第1の気相成分混合物の分析ができなくなるという問題がある。
【0011】
従って、前記高分子材料の熱脱着により生成した第1の気相成分混合物が該高分子材料に遊離状態で含有される成分由来であり、該遊離状態で含有される成分の該高分子材料全体に対する含有量が0.1質量%以下と少ないときに、該熱脱着により生成した第1の気相成分混合物の分析のためには、前記スプリット比が大きい方が好ましい。しかし、前記スプリット比を大きくすると、前記高分子材料の熱分解により生成した第2の気相成分混合物が、溶剤、未反応のメチル化剤、シリル化剤等の非分析対象成分を大量に含む場合には、該非分析対象成分により前記分離カラムが劣化したり、前記検出器が動作不良となり、該高分子材料の熱分解により生成した第2の気相成分混合物の分析ができなくなるという問題がある。
【0012】
前記問題を解決するために、前記高分子材料の熱脱着により生成した第1の気相成分混合物の分析を行うときと、該高分子材料自体の熱分解により生成した第2の気相成分混合物の分析を行うときとで、前記気相成分分析装置の前記スプリット比を変更することが考えられる。
【0013】
しかしながら、前記気相成分分析装置では通常は前記スプリット比が所定の固定値とされており、変更することが難しいという不都合がある。
【0014】
本発明は、かかる不都合を解消して、前記気相成分分析装置を用いてダブルショット法により高分子材料の組成の分析を行うときに、該気相成分分析装置の前記スプリット比を変更することなく、該高分子材料に遊離状態で含有される添加剤等の成分と、該高分子材料自体の成分との両方の情報を確実に得ることができる高分子材料の分析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本出願人は、非分析対象成分による分離カラムや検出器の劣化を防止することができ、しかも優れた検出感度を得ることができる気相成分分析装置について、既に特許出願している(特願2020-215423参照)。前記特許出願記載の気相成分分析装置は、試料を加熱して気相成分混合物を生成させる加熱手段と、該加熱手段で生成した該気相成分混合物が導入される第1のカラムと、該加熱手段と第1のカラムとを接続する注入口と、接続手段を介して該第1のカラムに接続される分離カラムである第2のカラムと、該第1のカラムと該第2のカラムと該接続手段とを収容する恒温槽と、該第2のカラムで分離された個々の気相成分を検出する検出手段とを備える気相成分分析装置において、該接続手段に接続される吸引手段と、該注入口に備えられ、該加熱手段で生成した該気相成分混合物の一部を該第1の分離カラムに導入する一方、残部を外部に排出する分割導入手段としてのスプリットベントとを備えている。
【0016】
前記特許出願記載の気相成分分析装置によれば、まず、前記吸引手段を作動させ、前記加熱手段に前記試料を投入又は注入して、該試料を加熱して、前記気相成分混合物を生成させる。このとき、前記試料を投入又は注入した時からさらに前記吸引手段を所定時間作動させる。前記吸引手段が作動することにより、前記スプリットベントが実質的に作動せず、生成した前記気相成分混合物が吸引され、該気相成分混合物の全量が前記注入口を介して前記第1のカラムに導入される。
【0017】
前記気相成分混合物は高沸点で低揮発性の分析対象成分と溶媒等の低沸点で高揮発性の非分析対象成分とを含んでいるが、前記第1のカラムは非分析対象成分の沸点より高く分析対象成分の沸点より低い温度とされているので、該非分析対象成分は該第1のカラムに捕捉されることなくさらに前記吸引手段方向に吸引されるが、該分析対象成分は選択的に該第1のカラムに捕捉される。
【0018】
ここで、前記第1のカラムは前記接続手段を介して前記第2のカラムに接続されており、前記吸引手段も該接続手段に接続されている。しかし、該第2のカラムは流路抵抗として作用するので、前記非分析対象成分は前記第2のカラムに導入されることなく、前記吸引手段に吸引され、該吸引手段を介して外部に放出される。
【0019】
前記非分析対象成分が外部に放出されたならば、次に、前記所定時間後に前記吸引手段を停止させ、前記恒温槽の温度を前記分析対象成分が気化可能な温度に上昇させる。このようにすると、前記第1のカラムに捕捉されていた前記分析対象成分が気化する。また、前記吸引手段を停止させると前記分割導入手段により流量が制御されたキャリアガスにより、前記分析対象成分が前記接続手段の方向に移動する。
【0020】
このとき、前記吸引手段は停止されており、該接続手段の該吸引手段に接続する方向は閉鎖された状態となっているので、気化した前記分析対象成分は前記キャリアガスにより前記第2のカラムに導入される。前記第2のカラムは分離カラムであるので、該第2のカラムに導入された前記分析対象成分は個々の気相成分に分離され、該第2のカラムを通過した個々の気相成分を前記検出手段で検出することができる。
【0021】
本発明者らは、ダブルショット法により前記試料としての高分子材料の分析を行うときに、前記特許出願記載の気相成分分析装置を改良し、さらに該特許出願記載の気相成分分析方法を発生ガス分析法と組み合わせることにより、該気相成分分析装置の前記スプリット比を変更することなく、該高分子材料自体の成分と、添加剤等の該高分子材料に遊離状態で含有される成分との両方の情報を確実に得ることができることに想到し、本発明に到達した。
【0022】
そこで、前記目的を達成するために、本発明の高分子材料の分析方法は、試料を加熱して気相成分混合物を生成させる加熱手段と、該加熱手段で生成した該気相成分混合物が導入される第1のカラムと、該加熱手段と第1のカラムとを接続する注入口と、接続手段を介して該第1のカラムに接続される分離カラムである第2のカラムと、該第1のカラムと該第2のカラムと該接続手段とを収容する恒温槽と、該第2のカラムで分離された個々の気相成分を検出する検出手段と、該接続手段に接続される吸引手段と、該注入口に備えられ、該加熱手段で生成した該気相成分混合物の一部を該第1の分離カラムに導入する一方、残部を外部に排出する分割導入手段と、該加熱手段で生成した該気相成分混合物の一部を選択的に該第1の分離カラムに導入する一方、残部を外部に排出する選択的導入手段とを備える気相成分分析装置を用いる高分子材料の分析方法であって、該試料の発生ガス分析法の結果から第1の分析対象成分が発生する温度領域を選択する工程と、該選択的導入手段及び該吸引手段を作動させた状態で、該加熱手段内で該試料を加熱して、該試料に遊離状態で含有される成分を該試料から熱脱着させて、第1の気相成分混合物を生成させ、該第1の分析対象成分が発生する温度領域で生成する該第1の気相成分混合物を該注入口を介して選択的に該第1のカラムに導入し、該第1の気相成分混合物に含有される該第1の分析対象成分を該第1のカラムに捕捉する工程と、該第1の分析対象成分を該第1のカラムに捕捉した後、該選択的導入手段及び該吸引手段を停止し、該第1のカラムを該第1の分析対象成分が気化可能な温度に加熱して該第1の分析対象成分を気化させる工程と、気化した該第1の分析対象成分を該第2のカラムに導入して、個々の気相成分に分離し、分離された個々の気相成分を該検出手段で検出する工程と、該分割導入手段を開き、該選択的導入手段を停止し、該吸引手段を作動させた状態で、該加熱手段内で、遊離状態で含有される成分が熱脱着された後の該試料を加熱して該試料を熱分解し、第2の気相成分混合物を生成させる工程と、該分割導入手段により、生成した第2の気相成分混合物の一部を該第1のカラムに導入する一方、該第2の気相成分混合物の残部を外部に放出し、該第1のカラムに導入された該第2の気相成分混合物に含有される第2の分析対象成分を該第1のカラムに捕捉する工程と、該第2の分析対象成分を該第1のカラムに捕捉した後、該吸引手段を停止し、該第1のカラムを該第2の分析対象成分が気化可能な温度に加熱して該第2の分析対象成分を気化させる工程と、気化した該第2の分析対象成分を該第2のカラムに導入して、個々の気相成分に分離し、分離された個々の気相成分を該検出手段で検出する工程とを備えることを特徴とする。
【0023】
本発明の高分子材料の分析方法では、まず、前記試料としての高分子材料に対し、発生ガス分析法による分析を行い、その結果から第1の分析対象成分が発生する温度領域を選択する。
【0024】
本発明の高分子材料の分析方法では、次に、前記気相成分分析装置を用い、まず、前記試料を加熱して、該試料に遊離状態で含有される成分を熱脱着させて第1の気相成分混合物を生成させ、該第1の気相成分混合物を前記分離カラムに導入して個々の気相成分に分離し、分離された個々の気相成分を検出器で検出する。次いで、前記気相成分分析装置を用い、遊離状態で含有される成分が熱脱着された後の前記試料を瞬間的に熱分解して、第2の気相成分混合物を生成させ、該第2の気相成分混合物を前記分離カラムに導入して個々の気相成分に分離し、分離された個々の気相成分を検出器で検出する。
【0025】
ここで、本発明の高分子材料の分析方法に用いる前記気相成分分析装置は、特願2020-215423記載の分割導入手段としてのスプリットベントを備える気相成分分析装置に、さらに、前記加熱手段で生成した気相成分混合物の一部を選択的に前記第1の分離カラムに導入する一方、残部を外部に排出する選択的導入手段を加えた構成を備えている。
【0026】
そこで、本発明の高分子材料の分析方法では、前記気相成分分析装置において、まず、前記選択的導入手段及び前記吸引手段を作動させた状態で、前記加熱手段内で前記試料を加熱して、該試料に遊離状態で含有される成分を該試料から熱脱着させる。このようにすると、前記試料に遊離状態で含有される成分からなる前記第1の気相成分混合物が生成する。
【0027】
このとき、本発明の高分子材料の分析方法では、前記選択的導入手段により、第1の分析対象成分が発生する温度領域で生成した前記第1の気相成分混合物を前記注入口を介して選択的に前記第1のカラムに導入する一方、該温度領域外で生成した前記第1の気相成分混合物を外部に放出する。この結果、前記温度領域で生成した前記第1の気相成分混合物に含有される前記第1の分析対象成分が前記第1のカラムに捕捉される。
【0028】
次に、前記第1の分析対象成分が前記第1のカラムに捕捉されたならば、前記選択的導入手段及び前記吸引手段を停止し、該第1のカラムを該第1の分析対象成分が気化可能な温度に加熱して該第1の分析対象成分を気化させ、気化した該第1の分析対象成分を前記第2のカラムに導入する。前記第2のカラムは分離カラムであるので、該第2のカラムに導入された前記第1の分析対象成分は、該第2のカラムで個々の気相成分に分離され、分離された個々の気相成分が前記検出手段で検出される。
【0029】
前記第1の分析対象成分を構成する個々の気相成分は、例えば、前記高分子材料に全体の0.1質量%以下の量で含有される添加剤等に由来する成分であり、非常に希薄である。しかし、本発明の高分子材料の分析方法によれば、上述のように、熱脱着により生成した前記第1の気相成分混合物のうち、第1の分析対象成分が発生するものとして選択された温度領域で生成した該第1の気相成分混合物のみが選択的に前記第1のカラムに導入され、捕捉される。この結果、前記第1のカラムに捕捉された前記第1の気相成分混合物中における前記第1の分析対象成分の濃度が高くなり、前記検出手段により検出される際に、十分な検出強度を得ることができ、該第1の分析対象成分の情報を確実に得ることができる。
【0030】
本発明の高分子材料の分析方法では、次に、前記分割導入手段を開き、前記選択的導入手段を停止し、前記吸引手段を作動させた状態として、前記加熱手段内で、遊離状態で含有される成分が熱脱着された後の前記試料を加熱して該試料を熱分解する。このようにすると、前記試料を構成する前記高分子材料自体の熱分解により、前記第2の気相成分混合物が生成する。
【0031】
このとき、本発明の高分子材料の分析方法では、前記分割導入手段が開かれているので、生成した前記第2の気相成分混合物は、該分割導入手段により、その一部が前記第1のカラムに導入される一方、残部が外部に排出される。そして、前記第1のカラムに導入された前記第2の気相成分混合物は、該第2の気相成分混合物に含有される第2の分析対象成分が該第1のカラムに捕捉される一方、非分析対象成分は前記吸引手段により吸引されて外部に排出される。
【0032】
次に、前記第2の分析対象成分が前記第1のカラムに捕捉されたならば、前記吸引手段を停止し、該第1のカラムを該第2の分析対象成分が気化可能な温度に加熱して該第2の分析対象成分を気化させ、気化した該第2の分析対象成分を前記第2のカラムに導入する。前記第2のカラムは分離カラムであるので、該第2のカラムに導入された前記第2の分析対象成分は、該第2のカラムで個々の気相成分に分離され、分離された個々の気相成分が前記検出手段で検出される。
【0033】
前記高分子材料自体の熱分解により生成する前記第2の気相成分混合物は、溶剤等の非分析対象成分を大量に含む場合がある。しかし、本発明の高分子材料の分析方法によれば、上述のように、前記高分子材料自体の熱分解により生成した前記第2の気相成分混合物は、前記分割導入手段により、その一部のみが前記第1のカラムに導入され、さらに、該第1のカラムに導入された第2の気相成分混合物は、含有される第2の分析対象成分のみが該第1のカラムに捕捉される一方、非分析対象成分は前記吸引手段により吸引されて外部に排出される。この結果、前記第2の分析対象成分のみが前記第2のカラムに導入されて個々の気相成分に分離されることとなり、前記検出手段により確実に検出することができ、該第2の分析対象成分の情報を得ることができる。
【0034】
従って、本発明の高分子材料の分析方法によれば、特願2020-215423記載の気相成分分析装置に前記選択的導入手段を加えた気相成分分析装置を用いてダブルショット法により高分子材料の分析を行うときに、発生ガス分析法を組合せることにより、該気相成分分析装置の前記スプリット比を変更することなく、該高分子材料に遊離状態で含有される添加剤等の成分と、該高分子材料自体の成分との両方の情報を確実に得ることができる。
【0035】
本発明の高分子材料の分析方法において、前記発生ガス分析法は公知の装置を用いて行うことができるが、例えば、特願2020-215423記載の気相成分分析装置に前記選択的導入手段を加えた気相成分分析装置において、前記第1のカラム及び前記第2のカラムに代えて、内表面を不活性化した金属チューブを用いて行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明の高分子材料の分析方法に用いる気相成分分析装置の一構成例を示す説明的断面図。
【
図2】本発明の高分子材料の分析方法において、発生ガス分析法に用いる気相成分分析装置の一構成例を示す説明的断面図。
【
図3】本発明の高分子材料の分析方法による高分子材料の発生ガス分析法の一分析例を示す図であり、下段は発生ガス分析法により得られたサーモグラム、上段は該サーモグラムのゾーンAに含まれる成分のマススペクトル。
【
図4】本発明の高分子材料の分析方法による高分子材料の一分析例を示す図であり、上段は熱脱着により生成した気相成分混合物のうち、
図3のゾーンAに含まれる成分のトータルイオンクロマトグラム、下段は
図3のゾーンAに含まれる成分中のm/z647の成分の抽出イオンクロマトグラム。
【
図5】本発明の高分子材料の分析方法による高分子材料の一分析例を示す図であり、
図4の熱脱着後に熱分解により生成した気相成分混合物のパイログラム。
【発明を実施するための形態】
【0037】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
【0038】
本実施形態の高分子材料の分析方法は、
図1に示す気相成分分析装置1及び
図2に示す気相成分分析装置11を用いて実施することができる。
【0039】
図1に示す気相成分分析装置1は、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC/MS)に用いるガスクロマトグラフであり、加熱装置2と、加熱装置2に接続された恒温槽3と、恒温槽3に接続された検出装置4とを備えている。
【0040】
加熱装置2は、化学的に不活性な中空円筒状の石英管からなる加熱炉21と、加熱炉21の周囲に設けられたヒータ22と、加熱炉21の先端が挿入されるGC注入口23とを備える。ヒータ22は図示しない温度制御装置により所定の条件で加熱炉21の加熱を行うようになっている。加熱炉21は、GC注入口23の上部に加熱されたパイプ等で接続されるか又は、該パイプ等を用いることなくそれ自体がGC注入口23の上部に着脱自在に装着されている。また、加熱炉21は、前記石英管に代えて、ステンレス管の内面に石英薄膜を形成して不活性とした管からなるものであってもよい。
【0041】
また、GC注入口23は図示しないヒータを備え、該ヒータはヒータ22と同様に図示しない温度制御装置により所定の条件でGC注入口23の加熱を行うようになっている。GC注入口23は、上部に加熱炉21が接続又は装着されない場合は、上端に図示しないセプタムが装着される。
【0042】
加熱装置2は、加熱炉21の上方に接続された試料導入部24を備え、試料導入部24には加熱炉21にキャリアガスを導入するキャリアガス導入手段としてのキャリアガス導管25が接続されている。キャリアガス導管25の他端部は、キャリアガス流量制御装置26を介してキャリアガス源27に接続されている。また、キャリアガス導管25は、GC注入口23の上部に加熱炉21が接続又は装着されない場合には、GC注入口23に接続されている。
【0043】
この結果、キャリアガス源27から供給されるキャリアガスがキャリアガス流量制御装置26により所定の流量に調整されて加熱炉21又はGC注入口23に導入される。
【0044】
恒温槽3には、第1のカラムとしてのプレカラム31と、分離カラムである第2のカラムとしての主分離カラム32と、プレカラム31と主分離カラム32とを接続する接続手段としての三方向管(T字管)33とが収容されている。プレカラム31は、一端がGC注入口23に挿入されて加熱炉21の先端に対向する一方、他端が三方向管33を介して主分離カラム32に接続されている。主分離カラム32は、一端が三方向管33を介してプレカラム31に接続される一方、他端が検出装置4内に収容されている四重極質量分析検出器等の検出手段41に接続されている。
【0045】
三方向管33は、プレカラム31と主分離カラム32とを直線的に接続する一方、プレカラム31と主分離カラム32との接続方向に直交する方向で排気導管34に接続されており、排気導管34は恒温槽3の外部に設けられた真空ポンプ等の吸引ポンプ5に接続されている。
【0046】
プレカラム31としては、例えば、内径0.25mm、長さ1m、内面にジフェニルポリシロキサンと、ジメチルポリシロキサンとの5:95(モル比)の共重合体からなる厚さ0.25μmの固定層を備えるステンレス製キャピラリーカラム又は、内径0.1~0.5mm程度、長さ0.5~19mで内面に各種ポリマーを塗布したキャピラリーカラム、もしくは、ポリマーを塗布せずに内面を化学的に不活性化したキャピラリーチューブを用いることができる。また、主分離カラム32としては、例えば、内径0.25mm、長さ30m、内面にジフェニルポリシロキサンと、ジメチルポリシロキサンとの5:95(モル比)の共重合体からなる厚さ0.25μmの固定層を備えるステンレス製キャピラリーカラムを用いることができる。
【0047】
尚、プレカラム31は、GC注入口23と三方向管33とに対して着脱自在であり、分析対象に応じてプレカラム31を選択することができる。
【0048】
検出手段41としては、前記4重極質量分析検出器等の質量分析検出器(MS)の他、水素炎イオン化検出装置(FID)、電子捕捉検出器(ECD)等を用いることができる。
【0049】
また、気相成分分析装置1は、GC注入口23に、前記気相成分混合物の一部をプレカラム31に導入する一方、残部を外部に排出する分割導入手段としてのスプリットベント35を備えている。スプリットベント35は、図示しない開閉弁により開閉自在とされており、開放された状態では、熱分解炉21から導入され、又はGC注入口23で生成した前記気相成分混合物の一部をプレカラム31に導入する一方、残部を外部に排出する。スプリットベント35では、プレカラム31に導入する成分の、前記気相成分混合物の全量に対する比であるスプリット比が所定の値、例えば、1/100とされている。
【0050】
また、気相成分分析装置1は、GC注入口23を介して、前記気相成分混合物の一部を選択的にプレカラム31に導入する一方、残部を外部に排出する選択的導入手段としてのパージガス導管36を備えている。パージガス導管36は開閉弁37を介してパージガス流量制御装置38に接続されており、パージガス流量制御装置38はパージガス源39に接続されている。
【0051】
前記選択的導入手段は、加熱手段21で生成する前記気相成分混合物を外部に排出するときには、開閉弁37を開き、パージガス源39から供給されるパージガスをパージガス流量制御装置38により所定の流量に調整して、パージガス導管36からGC注入口23に供給する。そして、GC注入口23に供給された前記パージガスが、前記気相成分混合物をスプリットベント35を介して外部に排出する。一方、前記選択的導入手段は、加熱手段21で生成する前記気相成分混合物をプレカラム31に導入するときには、開閉弁37を閉じ、GC注入口23に対する前記パージガスの供給を停止する。この結果、前記選択的導入手段によれば、前記気相成分混合物の一部を選択的にプレカラム31に導入する一方、残部を外部に排出することができる。
【0052】
尚、本実施形態において、前記選択的導入手段は、GC注入口23に供給された前記パージガスが、前記気相成分混合物をスプリットベント35を介して外部に排出するようにしているが、別途、前記パージガス及び前記気相成分混合物を外部に排出する排出導管を備えていてもよい。
【0053】
また、
図2に示す気相成分分析装置11は、発生ガス分析-質量分析(EGR/MSに用いる気相成分分析装置であり、
図2に示す気相成分分析装置1のプレカラム31及び主分離カラム32に代えて、EGAカラム40を備える以外は、気相成分分析装置1と全く同一の構成を備えている。EGAカラム40としては、例えば、内径0.15mm、長さ2.5mの内面を化学的に不活性化した不活性化金属キャピラリーチューブを用いることができる。
【0054】
次に、
図1に示す気相成分分析装置1及び
図2に示す気相成分分析装置11を用いる本実施形態の高分子材料の分析方法について説明する。
【0055】
本実施形態の高分子材料の分析方法は、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の添加剤を全体の0.1質量%以下の量で含有している高分子材料の組成を、発生ガス分析法とダブルショット法との組合せにより分析する際に用いられる。
【0056】
そこで、次に、本実施形態の高分子材料の分析方法について、高分子材料としてのエチレン酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)の組成の分析を行う場合を例として説明する。前記EVAは、添加剤として、イルガホス168(Irgafos168、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト)と呼ばれるリン系加工安定剤を含有している。
【0057】
本実施形態の高分子材料の分析方法では、まず、
図2に示す気相成分分析装置11において、スプリットベント35を開いてスプリット比を1/50に設定し、前記選択的導入手段を停止した状態で、キャリアガス源27から流量制御装置26を介してヘリウム、窒素等のキャリアガスを、例えば1ml/分の流量で加熱炉21に供給しながら、ヒータ22により加熱炉21を所定の温度、例えば100℃に加熱する。次に、試料カップ6に収容された0.1~0.2mgのEVAを試料として加熱炉21に投入する。そして、例えば、加熱炉21の温度を100℃から20℃/分の速度で700℃まで昇温し、前記高分子材料から発生するガス量の変化を観測することにより、例えば、
図3下段に示すサーモグラムを得ることができる。
【0058】
本実施形態の高分子材料の分析方法では、次に、
図3下段に示すサーモグラムのプロファイルのマススペクトルを各種データベース等のライブラリと比較することにより、第1の分析対象成分が発生する温度領域を設定する。例えば、
図3下段に示すサーモグラムのプロファイルであるゾーンAのマススペクトルを
図3上段に示す。
【0059】
図3上段のマススペクトルから、ゾーンAに、前記第1の分析対象の添加剤であるm/z647である酸化型イルガホス168が含まれていると判断することができる。そこで、ゾーンAに対応する300~360℃の温度領域を、第1の分析対象成分が発生する温度領域として選択する。
【0060】
本実施形態の高分子材料の分析方法では、次に、
図1に示す気相成分分析装置1において、スプリットベント35を閉じ、キャリアガス源27から流量制御装置26を介してヘリウム、窒素等のキャリアガスを、例えば2ml/分の流量で加熱炉21に供給しながら、ヒータ22により加熱炉21を所定の温度、例えば100℃に加熱する。次に、スプリットベント35を開き、前記選択的導入手段及び吸引ポンプ5を作動させた状態で、試料カップ6に収容された、例えば0.2mgのEVAを試料として加熱炉21に投入する。尚、前記選択的導入手段は、作動させた状態では、必要に応じて開閉弁37を開閉自在とされている。
【0061】
そして、例えば、加熱炉21の温度を100℃から20℃/分の速度で380℃まで昇温し、380℃に1分間保持することにより、前記高分子材料としてのEVAに遊離状態で含有される前記添加剤としてのイルガホス168等を含む成分を、該高分子材料から熱脱着させ、第1の気相成分混合物を生成させる。
【0062】
このとき、本実施形態では、
図3下段のサーモグラムにおけるゾーンAに対応する300~360℃の温度領域以外では、開閉弁37を開き、パージガス源39から供給されるパージガスをパージガス流量制御装置38により所定の流量に調整して、パージガス導管36からGC注入口23に供給する。そして、GC注入口23に供給された前記パージガスが、前記ゾーンAに対応する300~360℃℃の温度領域以外で生成した前記第1の気相成分混合物をスプリットベント35を介して外部に排出する。
【0063】
一方、前記ゾーンAに対応する300~360℃の温度領域では、開閉弁37を閉じ、GC注入口23に対する前記パージガスの供給を停止し、スプリットベント35を閉じる。この結果、前記ゾーンAに対応する300~360℃の温度領域で生成した前記第1の気相成分混合物が吸引ポンプ5に吸引されて選択的にプレカラム31に導入される。
【0064】
尚、前記高分子材料は、前記第1の気相成分混合物の生成後、試料カップ6に収容されたまま、加熱炉21の加熱の影響を受けない領域に退避させておく。
【0065】
このとき、プレカラム31は例えば40℃の温度とされており、前記第1の気相成分混合物に含有される成分のうち、沸点が40℃超の成分が第1の分析対象成分として、プレカラム31にトラップ(捕捉)される。一方、前記第1の気相成分混合物に含有される成分のうち、沸点が40℃以下の成分は非分析対象成分として、吸引ポンプ5により吸引されて外部に排出される。
【0066】
次に、前記ゾーンAに対応する300~360℃の温度領域で生成した前記第1の分析対象成分がプレカラム31にトラップされたならば、吸引ポンプ5を停止し、前記キャリアガスを、例えば200ml/分の流量で加熱炉21に供給しながら、プレカラム31を該第1の分析対象成分が気化可能な温度に加熱して該第1の分析対象成分を気化させる。プレカラム31を該第1の分析対象成分が気化可能な温度に加熱する操作は、具体的には、恒温槽3の温度を昇温させることにより行う。例えば、恒温槽3の温度を40℃に2分間保持し、40℃から20℃/分の速度で320℃まで昇温し、320℃に14分間保持することにより、前記第1の分析対象成分を気化させ、気化した該第1の分析対象成分を、三方向管33を介して主分離カラム32に導入する。主分離カラム32は分離カラムであるので、主分離カラム32に導入された前記第1の分析対象成分は、主分離カラム32で個々の気相成分に分離され、分離された個々の気相成分が検出手段41で検出されることにより、
図4上段に示すトータルイオンクロマトグラム(TIC)を得ることができる。
【0067】
図4上段に示すトータルイオンクロマトグラム(TIC)は、前記高分子材料としてのEVAに遊離状態で含有される前記前記添加剤としてのイルガホス168等を含む成分のトータルイオンクロマトグラム(TIC)である。また、各種データベース等のライブラリによるm/z647である酸化型イルガホス168の抽出イオンクロマトグラム(EIC)を
図4下段に示す。
【0068】
図4から、EVAの熱脱着により得られた成分の内、保持時間約24分のピークを酸化型イルガホス168として同定することができる。
【0069】
本実施形態の高分子材料の分析方法では、前記第1の分析対象成分の分析が終了したならば、スプリットベント35を開いた状態で、キャリアガス源27から流量制御装置26を介してヘリウム、窒素等のキャリアガスを、例えば200ml/分の流量で加熱炉21に供給しながら、ヒータ22により加熱炉21を所定の温度、例えば600℃に加熱する。次に、吸引ポンプ5を作動させた状態で、試料カップ6に収容されたまま退避させていた前記高分子材料を試料として加熱炉21に投入し、該高分子材料自体を瞬間的に熱分解させることにより、第2の気相成分混合物を生成させる。
【0070】
このとき、本実施形態の高分子材料の分析方法では、スプリットベント35が開かれているので、生成した前記第2の気相成分混合物は、スプリットベント35により、所定のスプリット比に従ってその一部がプレカラム31に導入される一方、残部が外部に排出される。
【0071】
またこのとき、プレカラム31は例えば40℃の温度とされており、前記第2の気相成分混合物に含有される成分のうち、沸点が40℃超の成分が第2の分析対象成分として、プレカラム31にトラップされる。一方、前記第2の気相成分混合物に含有される成分のうち、沸点が40℃以下の成分は非分析対象成分として、吸引ポンプ5により吸引されて外部に排出される。前記第2の気相成分混合物は、溶剤等を大量に含む場合、該溶剤等は沸点が40℃以下であるものが多いので、その大部分が前記非分析対象成分として、外部に排出される。
【0072】
次に、前記第2の分析対象成分がプレカラム31にトラップされたならば、吸引ポンプ5を停止し、プレカラム31を該第2の分析対象成分が気化可能な温度に加熱して該第2の分析対象成分を気化させる。プレカラム31を該第2の分析対象成分が気化可能な温度に加熱する操作は、具体的には、恒温槽3の温度を昇温させることにより行う。例えば、恒温槽3の温度を40℃に2分間保持し、40℃から20℃/分の速度で320℃まで昇温し、320℃に14分間保持することにより、前記第2の分析対象成分を気化させ、気化した該第2の分析対象成分を、三方向管33を介して主分離カラム32に導入する。主分離カラム32は分離カラムであるので、主分離カラム32に導入された前記第2の分析対象成分は、主分離カラム32で個々の気相成分に分離され、分離された個々の気相成分が検出手段41で検出されることにより、
図5に示す前記高分子材料自体を構成する成分のパイログラムを得ることができる。
【0073】
この結果、本実施形態の高分子材料の分析方法によれば、
図1に示す気相成分分析装置1を用いてダブルショット法により高分子材料の分析を行うときに、発生ガス分析法を組合せることにより、気相成分分析装置1の前記スプリット比を変更することなく、該高分子材料に遊離状態で含有される添加剤等の成分と、該高分子材料自体の成分との両方の情報を確実に得ることができる。
【符号の説明】
【0074】
1、11…気相成分分析装置、 2…加熱手段、 3…恒温槽、 4…検出手段、 5…吸引手段 31…第1のカラム、 32…第2のカラム、 33…接続手段、 35…分割導入手段 36…選択的導入手段、 40…内表面を不活性化した金属チューブ。