(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023077794
(43)【公開日】2023-06-06
(54)【発明の名称】ブロー成形容器
(51)【国際特許分類】
B65D 1/02 20060101AFI20230530BHJP
【FI】
B65D1/02 232
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021191238
(22)【出願日】2021-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】000225278
【氏名又は名称】内外化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130580
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 靖
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 啓介
【テーマコード(参考)】
3E033
【Fターム(参考)】
3E033AA02
3E033BA15
3E033BA16
3E033BA18
3E033CA02
3E033DA09
3E033DB01
3E033DD05
3E033FA02
3E033FA03
(57)【要約】
【課題】底部に対し垂直となる方向での圧縮荷重に対し、胴部と底部の間の座屈強度を向上させることで、座屈変形の低減が可能なブロー成形容器を提供する。
【解決手段】本発明のブロー成形容器1は、口部11と、口部11の下方に連なる円筒状の胴部13と、胴部13の下方に連なり、容器外方に凸状に湾曲した強度補強部14と、強度補強部14に連なる底部15とを有し、胴部13の下端部に於ける外側壁面13aは、底部15に対し垂直方向に立設しており、強度補強部14の外側湾曲面14aは胴部13の外側壁面13aに正接し、胴部13と底部15の間の座屈強度を補強することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空状の有底筒体を有するブロー成形容器であって、
口部と、
前記口部の下方に連なる円筒状の胴部と、
前記胴部の下方に連なり、容器外方に凸状に湾曲した強度補強部と、
前記強度補強部に連なる底部とを有し、
前記胴部の外側壁面は、前記胴部の少なくとも下端部に於いて、前記底部に対し垂直方向に立設しており、
前記強度補強部の外側湾曲面は前記胴部の前記外側壁面に正接し、前記胴部と前記底部の間の座屈強度を補強するブロー成形容器。
【請求項2】
前記底部は、その外周縁に平坦状の接地面を有し、
前記強度補強部の外側湾曲面は、前記接地面に正接している請求項1に記載のブロー成形容器。
【請求項3】
前記強度補強部は、前記底部に対し垂直となる方向に於ける前記ブロー成形容器の縦断面に於いて、曲率半径が相互に異なる複数の湾曲部が連設して形成されたものであり、
前記外側壁面と正接する外側湾曲面を備えた湾曲部の曲率半径が、前記接地面と正接する外側湾曲面を備えた湾曲部の曲率半径よりも大きい請求項2に記載のブロー成形容器。
【請求項4】
前記強度補強部は、前記底部に対し垂直となる方向に於ける前記ブロー成形容器の縦断面に於いて、任意の曲率半径を有する1つの湾曲部からなる請求項2に記載のブロー成形容器。
【請求項5】
前記外側壁面の直径に対する前記接地面の外側輪郭線の直径の比が、50%以上、90%以下である請求項1~4の何れか1項に記載のブロー成形容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空状の有底筒体を有するブロー成形容器に関し、より詳細には、底部に対し垂直方向に於ける圧縮荷重に対する座屈強度に優れたブロー成形容器に関する。
【背景技術】
【0002】
ブロー成形容器は、例えば押出成形された円筒状のパリソンをブロー成形する押出ブロー成形により作製することができる(例えば、特許文献1参照。)。ここで、ブロー成形容器の底部の周縁部は、ブロー成形容器の縦断面(底部に対し垂直となる方向に於けるブロー成形容器の縦断面)に於いて、曲率半径が大きい円弧状である程、パリソンをブロー成形した際の金型の内部形状に対し密着性が向上する。その結果、その様なブロー成形容器に於いては成形性を向上させることができる。しかし、ブロー成形容器を水平面に載置したとき、底部の接地面積が小さくなる結果、ブロー成形容器の自立性が低下する。
【0003】
そのため、ブロー成形容器の底部の周縁部を、縦断面に於いて曲率半径が小さい円弧状にすることで、自立性の低下を抑制することが考えられる。しかし、その様なブロー成形容器に於いては、底部に対し垂直となる方向に加えた圧縮荷重に対する座屈強度が、胴部と底部との間で低下するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は前記問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、底部に対し垂直となる方向での圧縮荷重に対し、胴部と底部の間の座屈強度を向上させることで、座屈変形の低減が可能なブロー成形容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るブロー成形容器は、前記の課題を解決するために、中空状の有底筒体を有するブロー成形容器であって、口部と、前記口部の下方に連なる円筒状の胴部と、前記胴部の下方に連なり、容器外方に凸状に湾曲した強度補強部と、前記強度補強部に連なる底部とを有し、前記胴部の外側壁面は、前記胴部の少なくとも下端部に於いて、前記底部に対し垂直方向に立設しており、前記強度補強部の外側湾曲面は前記胴部の前記外側壁面に正接し、前記胴部と前記底部の間の座屈強度を補強することを特徴とする。
【0007】
前記の構成に於いては、胴部から底部にかけて、容器外方に凸状に湾曲した状態で連設する強度補強部を備える。胴部の外側壁面は、少なくともその下端部に於いて底部に対し垂直方向に立設しており、強度補強部の外側湾曲面は、この外側壁面に正接して連なっている。これにより、前記の構成のブロー成形容器では、胴部と底部の間での座屈強度を向上させることができ、底部に対し垂直となる方向に於いて圧縮荷重が加えられても、胴部と底部の間で座屈(形状)変形が生じるのを防止又は低減することができる。
【0008】
前記の構成に於いて、前記底部は、その外周縁に平坦状の接地面を有し、前記強度補強部の外側湾曲面は、前記接地面に正接していることが好ましい。底部の外周縁に平坦状の接地面を有する場合に、強度補強部の外側湾曲面を当該接地面にも正接させることで、底部に対し垂直となる方向に於ける圧縮荷重に対する胴部と底部の間の座屈強度を一層向上させることができる。
【0009】
前記の構成に於いて、前記強度補強部は、前記底部に対し垂直となる方向に於ける前記ブロー成形容器の縦断面に於いて、曲率半径が相互に異なる複数の湾曲部が連設して形成されたものであり、前記外側壁面と正接する外側湾曲面を備えた湾曲部の曲率半径が、前記接地面と正接する外側湾曲面を備えた湾曲部の曲率半径よりも大きいものであってもよい。
【0010】
また前記の構成に於いて、前記強度補強部は、前記底部に対し垂直となる方向に於ける前記ブロー成形容器の縦断面に於いて、任意の曲率半径を有する1つの湾曲部からなるものであってもよい。
【0011】
前記の構成に於いては、前記外側壁面の直径に対する前記接地面の外側輪郭線の直径の比が、50%以上、90%以下であることが好ましい。前記直径の比を50%以上にすることにより、ブロー成形容器を水平面に載置したときの接地面の接地面積が過度に小さくなるのを防止し、ブロー成形容器の自立性を良好に維持することができる。その一方、前記直径の比を90%以下にすることにより、良好な座屈強度を付与し得る強度補強部の形成が可能になる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、底部に対し垂直となる方向に於ける圧縮荷重に対し、胴部と底部との間での座屈強度を向上させたブロー成形容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施の形態1に係るブロー成形容器を表す正面図である。
【
図2】実施の形態1に係るブロー成形容器の要部を表す拡大断面図である。
【
図3】実施の形態1に係るブロー成形容器の底面図である。
【
図4】本発明の実施の形態2に係るブロー成形容器を表す正面図である。
【
図5】実施の形態2に係るブロー成形容器の要部を表す拡大断面図である。
【
図6】実施例1に係るブロー成形容器の座屈強度に関するミーゼス応力分布を表す説明図である。
【
図7】比較例1に係るブロー成形容器の座屈強度に関するミーゼス応力分布を表す説明図である。
【
図8】実施例2に係るブロー成形容器の座屈強度に関するミーゼス応力分布を表す説明図である。
【
図9】実施例3に係るブロー成形容器の座屈強度に関するミーゼス応力分布を表す説明図である。
【
図10】比較例2に係るブロー成形容器の座屈強度に関するミーゼス応力分布を表す説明図である。
【
図11】実施例4に係るブロー成形容器の座屈強度に関するミーゼス応力分布を表す説明図である。
【
図12】実施例5に係るブロー成形容器の座屈強度に関するミーゼス応力分布を表す説明図である。
【
図13】実施例6に係るブロー成形容器の座屈強度に関するミーゼス応力分布を表す説明図である。
【
図14】比較例3に係るブロー成形容器の座屈強度に関するミーゼス応力分布を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施の形態1)
本実施の形態1に係るブロー成形容器について、
図1~
図3を参照しながら以下に説明する。但し、説明に不要な部分は省略し、また説明を容易にするために拡大又は縮小等して図示した部分がある。
図1は、本実施の形態に係るブロー成形容器を表す正面図である。
図2は、ブロー成形容器の要部を表す拡大断面図である。
図3は、ブロー成形容器の底面図である。
【0015】
本実施の形態に係るブロー成形容器1は、
図1に示すように、液体の注ぎ口としての口部11と、口部11の下方に連なる肩部12と、肩部12の下方に連なる円筒状の胴部13と、強度補強部14と、底部15とを有する円筒状の容器である。ブロー成形容器1は、その内部に種々の内容物を収容することが可能な収容空間を有している。尚、
図1に示す軸線Oはブロー成形容器1の中心軸線を表す。
【0016】
口部11は、上端に於いて開口しており、平面視に於いて略円形の開口形状を有する。また、口部11の下端は肩部12に連なっている。口部11の外周面には、例えば、蓋体との螺合を可能にする雄ネジ等が設けられていてもよい。これにより、蓋体により口部11の閉塞を可能にする。尚、口部11の形状はこれに限定されず、本発明は公知の構造を採用することができる。
【0017】
肩部12は、口部11の下端から胴部13の上端に連なっている。また肩部12は、口部11の下端から胴部13の上端に向かうに従い、軸線Oに対し垂直となる断面(横断面)に於ける直径が拡径する形状を有している。
【0018】
胴部13は円筒状を有しており、肩部12の下端から強度補強部14の上端に連なっている。また胴部13の横断面に於ける外径及び内径は、肩部12の下端から強度補強部14の上端までの間、略同一径となる様に形成されている。胴部13の外側壁面13bは、底部15に対し略垂直方向に立設する様に形成されている。
【0019】
尚、本発明は、胴部13の外側壁面13bが、少なくとも下端部13aに於いて、底部15に対し垂直方向に立設するものであればよく、特に限定されない。従って、例えば、胴部13の横断面に於ける外径が、下端部13aを除き、肩部12の下端から強度補強部14の上端に向かうに従い、縮径又は拡径する形状であってもよい。あるいは、下端部13aを除き、肩部12の下端及び強度補強部14の上端から胴部13の中央部に向かうに従い、縮径又は拡径する形状であってもよい。
【0020】
強度補強部14は、胴部13と底部15の間の座屈強度を補強する機能を有している。ここで、本明細書に於いて「座屈(変形)」とは、ブロー成形容器1に対し、その軸芯方向(底部15に対し垂直な方向)に圧縮荷重を加えたとき、ブロー成形容器1が座屈変形(塑性変形)により陥没や圧潰等を生じることを意味する。また「座屈強度」とは、ブロー成形容器1に対し軸芯方向に圧縮荷重が加えられたときに、ブロー成形容器1が座屈(変形)を生じる限界の圧縮荷重を意味し、軸圧縮強度と言い換えることもできる。
【0021】
強度補強部14は、より詳細には、
図2に示すように、胴部13の下端部13aから底部15の接地部15aに連なっており、任意の曲率半径R1を有する1つの湾曲部からなる。さらに、強度補強部14の外側湾曲面14aは、胴部13の外側壁面13bと、底部15の接地面15c(詳細については後述する。)とにそれぞれ正接している。胴部13の外側壁面13b及び底部15の接地面15cにそれぞれ正接する強度補強部14を設けることにより、座屈強度の向上が図れる。尚、本明細書に於いて「正接」とは、胴部13の外側壁面13bと、強度補強部14の外側湾曲面14aとに於いては、底部15に対し垂直となる方向に於けるブロー成形容器1の縦断面に於いて、それぞれの接線がこれらの第1接続部17に於いて一致する状態を意味する。また、強度補強部14の外側湾曲面14aと底部15の接地面15cとに於いては、当該断面視に於いて、それぞれの接線がこれらの第2接続部18に於いて一致する状態を意味する。
【0022】
強度補強部14の曲率半径R1は適宜設定することができるが、曲率半径R1の値を大きくすることで、ブロー成形によりブロー成形容器1を製造する際、パリソンをブローしたときに金型内部の形状に対する密着性を向上させることができる。その結果、ブロー成形容器1の成形性の向上が図れる。曲率半径R1は、以下の数式を満たす様に設定することが好ましい。また、本実施の形態に於いて強度補強部14の高さhは曲率半径R1と一致する。
R1(mm)=(D1(mm)-D2(mm))/2
(式中、D1は胴部13の下端部13a(外側壁面13b)の外径を表し、D2は接地面15cの外側輪郭線の直径を表す。)
【0023】
底部15は、底面視に於ける外形が略円形状となっている。底部15は、
図2及び
図3に示すように、水平面に接地する接地部15aと、接地部15aの内側に設けられた非接地部15bとを有する。
【0024】
接地部15aは、底部15の外周縁に沿って延在する。また接地部15aは、ブロー成形容器1を水平面に立設させた状態で載置する際、水平面に接地する環状の接地面15cを有する。接地面15cの形成領域はブロー成形容器1が自立するのを損なわない範囲で適宜設定することができる。
【0025】
非接地部15bは、底部15を容器の内方側(ブロー成形容器1の内部側)に向けて陥没成形された平坦面15dと、接地面15cから平坦面15dに連なる傾斜面15eとを有する。平坦面15dは、
図3に示すように、底面視に於いて略円形状となっている。また、平坦面15dは接地面15cよりも高さ位置が上方にあり、ブロー成形容器1を水平面に載置させた際、当該水平面に接触しない様に構成されている。また、傾斜面15eは、底面視に於いて環状となっている。傾斜面15eの縦断面に於ける傾斜角は特に限定されず、平坦面15dの接地面15cに対する高さ位置や、平坦面15dの面積等に応じて、適宜設定することができる。
【0026】
接地面15cと平坦面15dとの間の高さ位置の差(又は平坦面15dの水平面に対する高さ)dは特に限定されないが、例えば、2mm以上、4mm以下の範囲に設定することができる。この場合、前記dを4mm以下にすることにより、例えば、ブロー成形に於いてブロー成形容器1を金型から離型させる際、当該ブロー成形容器1にキズ等が発生するのを低減又は防止することができる。また、前記dを2mm以上にすることにより、底部15が膨出変形しても、ブロー成形容器1の自立性を良好に保持することができる。
【0027】
尚、本実施の形態に於いて、接地部15aは接地面15cの外側輪郭線(接地面15cと強度補強部14の外側湾曲面14aとの境界線)が略円形状のものであれば特に限定されない。例えば、接地面15cに於いて、底部15のパーティングラインPLの延長線上に位置する2箇所に、水平面と接地しない凹部が設けられていてもよい。また、非接地部15bが底面視に於いて矩形状のものであってもよい。この場合、接地面15cの内側輪郭線は非接地部15bの形状に対応して矩形状となる。さらに、底部15の全面が接地面であってもよい。
【0028】
また、胴部13の外側壁面13bの直径D1に対する接地面15cの外側輪郭線D2の直径の比は50%以上、90%以下であることが好ましく、60%以上、90%以下であることがより好ましく、70%以上、80%以下であることが特に好ましい。前記直径の比を50%以上にすることにより、ブロー成形容器1を水平面に載置したときの接地面15cの接地面積が過度に小さくなるのを防止し、ブロー成形容器1の自立性を良好に維持することができる。その一方、前記直径の比を90%以下にすることにより、胴部13と底部15との間での強度補強部14の形成を可能にする。
【0029】
さらに、ブロー成形容器1の全体高さHは特に限定されず、適宜設定することができる。また口部11、肩部12、胴部13、強度補強部14及び底部15の各部の厚さも特に限定されず、適宜必要に応じて設定することができる。尚、各部の厚さは同一であってもよく異なっていてもよい。
【0030】
ブロー成形容器1の材料としては特に限定されず、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の公知の樹脂材料を用いることができる。
【0031】
本実施の形態に係るブロー成形容器1は、例えば、押出ブロー成形法、射出ブロー成形法、延伸ブロー成形法等の公知のブロー成形法により製造することができる。
【0032】
(実施の形態2)
実施の形態2に係るブロー成形容器について、
図4及び
図5を参照しながら以下に説明する。
図4は、本実施の形態に係るブロー成形容器を表す正面図である。
図5は、本実施の形態に係るブロー成形容器の要部を表す拡大断面図である。尚、実施の形態2に係るブロー成形容器に於いて、実施の形態1に係るブロー成形容器1と同一の構成であるものについては、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0033】
本実施の形態に係るブロー成形容器2は、
図4及び
図5に示すように、実施の形態1に係るブロー成形容器1と比較して、強度補強部24が、相互に曲率半径の異なる第1湾曲部24a及び第2湾曲部24bの連設により構成される点が異なる。この様な構造であっても、底部15に対し垂直方向の圧縮荷重に対する胴部13と底部15との間の座屈強度を向上させることができる。
【0034】
強度補強部24の第1湾曲部24aは、
図5に示すように、胴部13の下端部13aから第2湾曲部24bに連なっており、曲率半径R2を有する。さらに、第1外側湾曲面24cは、胴部13の外側壁面13bに正接する。また強度補強部24の第2湾曲部24bは、第1湾曲部24aから底部15に連なっており、曲率半径R3を有する。さらに、第2外側湾曲面24dは、底部15の接地面15cに正接する。ここで第1湾曲部24aの曲率半径R2と第2湾曲部24bの曲率半径R3は、R2がR3よりも大きい値となるように設定されていれば、本発明は特に限定されない。
【0035】
接地面15cと平坦面15dとの間の高さ位置の差(又は平坦面15dの水平面に対する高さ)d、及び胴部13の外側壁面13bの直径D1に対する接地面15cの外側輪郭線の直径D2の比は、実施の形態1の場合と同様である。従って、その詳細な説明は省略する。
【0036】
(その他の事項)
以上に述べた各実施の形態に於いては、強度補強部の外側湾曲面が胴部の外側壁面に正接すると共に、底部の接地面にも正接する場合を例にして説明した。しかし、本発明はこの態様に限定されるものではない。例えば、強度補強部の外側湾曲面が胴部の外側壁面にのみ正接する態様であってもよい。この様な態様であっても本発明は、底部に対し垂直となる方向での圧縮荷重に対し、胴部と底部との間の座屈強度を向上させることができる。
【0037】
また、各実施の形態に於いては、強度補強部としてそれぞれ、1つの湾曲部からなるもの、又は曲率半径が相互に異なる2つの湾曲部からなるものを例にして説明した。しかし本発明の強度補強部は、胴部の下方から底部に連なり、かつ、容器外方に凸状に湾曲した形状のものであればよく、各実施の形態の態様に限定されるものではない。例えば、強度補強部は、湾曲部を3つ以上有するものであってもよい。
【実施例0038】
以下に、この発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但し、この実施例に記載されている材料や配合量等は、特に限定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0039】
(実施例1)
本実施例では、構成材料として高密度ポリエチレン(HDPE)を用い、押出ブロー成形法により
図6(a)に示す様なブロー成形容器を作製した。即ち、HDPEからなる溶融状態のチューブ状のパリソンを金型内に供給し、パリソンを金型で両側から挟んでピンチオフすると共に融着し、パリソンの内部に圧縮気体を吹き込んで膨張させ、容器の形状に成形した。ブロー成形の際のパリソンの表面温度は170℃、圧力は0.6MPa、ブロー成形の時間は10秒間とした。その後、冷却し、金型を開いてブロー成形容器を取り出した。得られたブロー成形容器は、
図6に示すように、1つの湾曲部からなる強度補強部を備え、かつ、湾曲部の外側湾曲面は胴部の外側壁面及び底部の接地面の両方に正接したものであった。ブロー成形容器の形状寸法を以下に示す。
ブロー成形容器の全体高さH:225mm
ブロー成形容器の厚さ:1mm
胴部の(外側壁面)の外径D1:φ100mm
接地面の外側輪郭線の直径D2:φ50mm
湾曲部の曲率半径R1:25mm
強度補強部の高さh:25mm
【0040】
(比較例1)
本比較例に於いては、湾曲部の外側湾曲面を底部の接地面にのみ正接させ、かつ、形状寸法を以下の通りに変更した。それら以外は、実施例1と同様にして、本比較例に係るブロー成形容器を作製した(
図7参照)。
ブロー成形容器の高さH:225mm
ブロー成形容器の厚さ:1mm
胴部の(外側壁面)の外径D1:φ100mm
接地面の外側輪郭線の直径D2:φ51.35mm
湾曲部の曲率半径R1:25mm
強度補強部の高さh:20mm
【0041】
(実施例2)
本実施例に於いては、形状寸法を以下の通りに変更した。それ以外は、実施例1と同様にして、本実施例に係るブロー成形容器を作製した(
図8参照)。
ブロー成形容器の高さH:225mm
ブロー成形容器の厚さ:1mm
胴部の(外側壁面)の外径D1:φ100mm
接地面の外側輪郭線の直径D2:φ90mm
湾曲部の曲率半径R1:5mm
強度補強部の高さh:5mm
【0042】
(実施例3)
本実施例に於いては、湾曲部の外側湾曲面を胴部の外側壁面にのみ正接させ、かつ、形状寸法を以下の通りに変更した。それら以外は、実施例1と同様にして、本実施例に係るブロー成形容器を作製した(
図9参照)。
ブロー成形容器の高さH:225mm
ブロー成形容器の厚さ:1mm
胴部の(外側壁面)の外径D1:φ100mm
接地面の外側輪郭線の直径D2:φ52.61mm
湾曲部の曲率半径R1:64.6mm
強度補強部の高さh:50mm
【0043】
(比較例2)
本比較例に於いては、湾曲部の外側湾曲面を胴部の外側壁面及び底部の接地面の何れにも正接させず、かつ、形状寸法を以下の通りに変更した。それら以外は、実施例1と同様にして、本比較例に係るブロー成形容器を作製した(
図10参照)。
ブロー成形容器の高さH:225mm
ブロー成形容器の厚さ:1mm
胴部の(外側壁面)の外径D1:φ100mm
接地面の外側輪郭線の直径D2:φ54.97mm
湾曲部の曲率半径R1:64.6mm
強度補強部の高さh:25mm
【0044】
(実施例4)
本実施例に於いては、湾曲部の外側湾曲面を胴部の外側壁面にのみ正接させ、かつ、形状寸法を以下の通りに変更した。それら以外は、実施例1と同様にして、本実施例に係るブロー成形容器を作製した(
図11参照)。
ブロー成形容器の高さH:225mm
ブロー成形容器の厚さ:1mm
胴部の(外側壁面)の外径D1:φ100mm
接地面の外側輪郭線の直径D2:φ90.28mm
湾曲部の曲率半径R1:259.75mm
強度補強部の高さh:50mm
【0045】
(実施例5)
本実施例に於いては、強度補強部として第1湾曲部及び第2湾曲部が連設して形成されたブロー成形容器を作製した。すなわち、第1湾曲部の第1外側湾曲面が胴部から第2湾曲部に連なり、かつ、第2湾曲部の第2外側湾曲面が第1湾曲部から底部の接地面に連なる様に強度補強部を形成した。また、第1外側湾曲面を胴部の外側壁面に正接させ、第2外側湾曲面を底部の接地面に正接させる構造とした。それら以外は、実施例1と同様にして、本実施例に係るブロー成形容器を作製した(
図12参照)。本実施例に係るブロー成形容器の形状寸法を以下に示す。
ブロー成形容器の高さH:225mm
ブロー成形容器の厚さ:1mm
胴部の(外側壁面)の外径D1:φ100mm
接地面の外側輪郭線の直径D2:φ48.96mm
第1湾曲部の曲率半径R2:64.6mm
第2湾曲部の曲率半径R3:5mm
強度補強部の高さh:50mm
【0046】
(実施例6)
本実施例に於いては、形状寸法を以下の通りに変更した。それ以外は、実施例5と同様にして、本実施例に係るブロー成形容器を作製した(
図13参照)。
ブロー成形容器の高さH:225mm
ブロー成形容器の厚さ:1mm
胴部の(外側壁面)の外径D1:φ100mm
接地面の外側輪郭線の直径D2:φ81.99mm
第1湾曲部の曲率半径R2:259.75mm
第2湾曲部の曲率半径R3:5mm
強度補強部の高さh:50mm
【0047】
(比較例3)
本比較例に於いては、第2湾曲部の第2外側湾曲面のみを底部の接地面に正接させ、かつ、形状寸法を以下の通りに変更した。それら以外は、実施例5と同様にして、本比較例に係るブロー成形容器を作製した(
図14参照)。
ブロー成形容器の高さH:225mm
ブロー成形容器の厚さ:1mm
胴部の(外側壁面)の外径D1:φ100mm
接地面の外側輪郭線の直径D2:φ88.43mm
第1湾曲部の曲率半径R2:259.75mm
第2湾曲部の曲率半径R3:5mm
強度補強部の高さh:35mm
【0048】
(座屈強度試験)
各実施例及び比較例に係るブロー成形容器に対応した3D-CADモデル(ダッソー・システムズ(株)製、ソフトウェア名:SolidWorksにてモデル作成)に対し、強度解析シミュレーションSimulationXpress解析ウィザードを用いて、それぞれ座屈強度解析を行い、座屈変形の程度を確認した。
【0049】
すなわち、各ブロー成形容器の3D-CADモデルに対し、各ブロー成形容器の底部側から、当該底部に対し垂直方向に100Nの圧縮荷重を加える設定で強度解析シミュレーションを実施した。また、圧縮荷重を加えられることにより、各ブロー成形容器の口部及び肩部が座屈変形しない様に固定する設定を行った。また、各ブロー成形容器の樹脂材料及びその物性値は以下の通りとした。
樹脂材料の種類:高密度ポリエチレン(HDPE)
弾性係数:1.07×10
9N/m
2
ポアソン比:0.4101
せん断弾性係数:3.772×10
8N/m
2
質量密度:952kg/m
3
引張強さ:2.21×10
7N/m
2
熱伝導率:0.461W/(m・K)
比熱:1796J/(kg・K)
シミュレーション結果は、各ブロー成形容器に生じた応力をミーゼス応力分布として表した。結果を
図6~
図14にそれぞれ示す。
【0050】
シミュレーションの結果、実施例1~6に係るブロー成形容器では、強度補強部の外側湾曲面を胴部の外側壁面、又は胴部の外側壁面と底部の接地面の両方に正接させることで、胴部と底部との間の座屈強度を向上させることが確認された(
図6、
図8、
図9及び
図11~
図13)。特に、比較例1~3に係るブロー成形容器では、圧縮荷重に起因する座屈(形状)変形が底部の他、胴部側にまで広がっているのに対し、実施例1、3及び6に係るブロー成形容器では、圧縮荷重に起因する座屈変形が底部側で留まっており、座屈強度が向上していることが確認された。