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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023077797
(43)【公開日】2023-06-06
(54)【発明の名称】ヒンジキャップ
(51)【国際特許分類】
   B65D 41/04 20060101AFI20230530BHJP
   B65D 41/32 20060101ALI20230530BHJP
【FI】
B65D41/04 200
B65D41/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021191247
(22)【出願日】2021-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】000228442
【氏名又は名称】日本クロージャー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000419
【氏名又は名称】弁理士法人太田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金田 禎二郎
(72)【発明者】
【氏名】高野 洋一
(72)【発明者】
【氏名】杉山 尚
(72)【発明者】
【氏名】江崎 雅治
(72)【発明者】
【氏名】大森 慎二
【テーマコード(参考)】
3E084
【Fターム(参考)】
3E084AA02
3E084AA12
3E084AA24
3E084AB01
3E084AB03
3E084AB05
3E084AB09
3E084BA01
3E084CA01
3E084CC03
3E084DA01
3E084DC03
3E084EB01
3E084EB02
3E084EC03
3E084FA03
3E084FC01
3E084GA06
3E084GB06
3E084HA03
3E084HB01
3E084HC03
3E084HD02
3E084KB01
3E084LA01
3E084LB02
3E084LD01
(57)【要約】
【課題】リモネン成分など空気に対する酸化作用を有する易酸化性の内容物を容器に充填した場合でも、上蓋の天面板が凹変形を起こしてしまうことが抑制可能な構造を備えたヒンジキャップを提供する。
【解決手段】本発明のヒンジキャップは、易酸化性内容物が貯留される容器の口部にキャップ本体が装着されるとともにヒンジ連結部を介してキャップ本体と接続された上蓋が開閉可能なヒンジキャップであって、上蓋の閉蓋時に注出筒の少なくとも一部を弾性変形させる少なくとも1つの局所突出部が、天面板の凹変形時に対向する注出筒の頂部又は天面板の内面に設けられてなることを特徴とする。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
易酸化性内容物が貯留される容器の口部にキャップ本体が装着されるとともに、ヒンジ連結部を介して前記キャップ本体と接続された上蓋が開閉可能なヒンジキャップであって、
前記キャップ本体は、
頂板部と、
前記容器に装着される装着部と、
前記頂板部から立設されて前記易酸化性内容物を注出可能な注出筒と、を含み、
前記上蓋は、
天面板と、
前記天面板の中央部で下方に向けて垂下して前記注出筒の内面を閉塞可能な第1インナーリングと、を含み、
(i)閉蓋時に前記注出筒の頂部と対向する前記天面板の内面であって且つ前記第1インナーリングよりも外側において、又は、(ii)前記閉蓋時に前記天面板の内面と対向する前記注出筒の前記頂部において、前記天面板の凹変形時に対向する前記注出筒の頂部又は前記天面板の内面に当接して前記注出筒を弾性変形させる、少なくとも1箇所の局所突出部が設けられてなる、
ことを特徴とするヒンジキャップ。
【請求項2】
前記注出筒の頂部は、前記閉蓋時は前記天面板の内面に対して軸方向に関して所定の間隔を置いている、
請求項1に記載のヒンジキャップ。
【請求項3】
前記注出筒は、前記頂板部からの高さが周方向において実質的に等しい円筒状となっている、
請求項1又は2に記載のヒンジキャップ。
【請求項4】
前記局所突出部は、前記上蓋が前記キャップ本体と嵌合したときに、前記注出筒の頂部と近接する、
請求項1~3のいずれか一項に記載のヒンジキャップ。
【請求項5】
前記上蓋の天面板と前記キャップ本体の頂板部で囲まれる局部空間が前記易酸化性内容物の酸化作用によって減圧状態となるときに、前記天面板の凹変形に追従して前記局所突出部が前記注出筒の頂部を径方向外側へ押倒しすることで、前記局部空間に空気が入り込んで前記減圧状態が解除されると共に前記天面板の前記凹変形が解消される、
請求項1~4のいずれか一項に記載のヒンジキャップ。
【請求項6】
前記凹変形が解消されて前記局部空間が前記減圧状態でないとき、前記弾性変形が解除されて前記局所突出部が元の位置に戻ると共に前記注出筒が元の位置に復帰し、前記第1インナーリングの外周面と前記注出筒の内周面によってシールポイントが形成されて密封性が維持される、
請求項5に記載のヒンジキャップ。
【請求項7】
前記天面板の内面のうちヒンジ連結部側には座屈防止リブが設けられ、前記天面板の周縁から垂下する環状壁のうち前記ヒンジ連結部と反対側に鍔部が設けられ、
前記局所突出部は、前記天面板の内面のうち前記座屈防止リブよりも前記鍔部に近い領域に形成されてなる、
請求項1~6のいずれか一項に記載のヒンジキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器口部に対して装着されるキャップ本体と、該キャップ本体にヒンジ連結部を介して開閉自在に設けられた上蓋とからなるヒンジキャップに関する。
【背景技術】
【0002】
キャップ本体と上蓋で構成されるヒンジキャップは、例えば各種飲料或いは調味料などの内容物が充填された容器のキャップとして、種々の用途に使用されている。
近年では容器に充填される各種飲料の注ぎ性や液切れ性を向上させる工夫もなされている。例えば特許文献1には、容器内容液の注ぎ出し用案内となる注出筒の上端に、外方に突出した注ぎ口が形成されている注出筒付キャップが開示されている。
【0003】
また、例えば特許文献2には、上蓋の内面上の閉塞体の基端周囲の一部で且つ閉状態においてカール部と対向する位置に、閉状態においてカール部を受け入れてその形状を成形する加工溝を円弧状に形成することが開示されている。これにより、上蓋を閉状態にしてノズル先端のカール部を加工溝内に挿入させることにより、この加工溝がカール部を成形することによって金型通りの理想的な湾曲形状化を達成して液切れ性を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3895704号公報
【特許文献2】特許第5904439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上記した特許文献を含む技術では、いまだ市場のニーズを満たしているとは言えず、少なくとも以下に述べる課題が存在する。
すなわち、上述のとおり容器には種々の内容物が充填されるが、例えば柑橘系の調味料などリモネン成分を多く含む内容物が容器に充填される場合には、容器内の空気と酸化して減圧状態が進行してしまうことを出願人は突き止めた。
【0006】
より具体的には、キャップ本体にはスコアなどの弱化部を介してプルリングが設けられているものの、未使用状態においても内容物の収容空間からこの弱化部を通って上蓋とキャップ本体の注出筒の内壁とで形成された局部空間に上記したリモネン成分が滲入し得る。この局部空間に滲入したリモネン成分は、当該局部空間内に存する空気と酸化反応することで減圧状態を作り出す。
【0007】
このように上蓋と注出筒の内壁とで構成された局部空間が減圧状態となると、上蓋の天面板が撓んで内側に凹んで変形(以下、「凹変形」とも称する)してしまい、ヒンジ連結部を介した上蓋による閉蓋時に注出筒の先端とインナーリングの先端とが干渉してインナーリングによるシール機能が損なわれてしまう。
【0008】
かような課題は注ぎ口が比較的大きなヒンジキャップでより顕著に出現し、上記のごときインナーリングの噛み込み(すなわち上蓋のリクローズ時にインナーリング先端の一部が注出筒の内側でなく外側に飛び出してしまう現象)が発生すると、上蓋を閉蓋しても横倒しなどした際に内容物が漏洩してしまう可能性がある。
なお上記したインナーリングの噛み込み現象はリモネン成分を含む内容物に限られず、リモネン成分以外にも酸化作用のある内容物であれば同様に上述の課題は発生し得る。
【0009】
従って、本発明の目的の1つは、例えばリモネン成分など空気に対する酸化作用を有する易酸化性の内容物を容器に充填した場合でも、上蓋の天面板が凹変形を起こすことで内容物が漏洩してしまうことが抑制可能な構造を備えたヒンジキャップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の一形態におけるヒンジキャップは、(1)易酸化性内容物が貯留される容器の口部にキャップ本体が装着されるとともに、ヒンジ連結部を介して前記キャップ本体と接続された上蓋が開閉可能なヒンジキャップであって、前記キャップ本体は、頂板部と、前記容器に装着される装着部と、前記頂板部から立設されて前記易酸化性内容物を注出可能な注出筒と、を含み、前記上蓋は、天面板と、前記天面板の中央部で前記下方に向けて垂下して前記注出筒の内面を閉塞可能な第1インナーリングと、を含み、(i)閉蓋時に前記注出筒の頂部と対向する前記天面板の内面であって且つ前記第1インナーリングよりも外側において、又は、(ii)前記閉蓋時に前記天面板の内面と対向する前記注出筒の前記頂部において、前記天面板の凹変形時に対向する前記注出筒の頂部又は前記天面板の内面に当接して前記注出筒を弾性変形させる、少なくとも1箇所の局所突出部が設けられてなる、ことを特徴とする。
【0011】
なお上記した(1)に記載のヒンジキャップにおいては、(2)前記注出筒の頂部は、前記閉蓋時は前記天面板の内面に対して軸方向に関して所定の間隔を置いていることが好ましい。
【0012】
また、上記した(1)又は(2)に記載のヒンジキャップにおいては、(3)前記注出筒は、前記頂板部からの高さが周方向において実質的に等しい円筒状となっていることが好ましい。
【0013】
また、上記した(1)~(3)のいずれかに記載のヒンジキャップにおいては、(4)前記局所突出部は、前記上蓋が前記キャップ本体と嵌合したときに、前記注出筒の頂部と近接することが好ましい。
【0014】
また、上記した(1)~(4)のいずれかに記載のヒンジキャップにおいては、(5)前記上蓋の天面板と前記キャップ本体の頂板部で囲まれる局部空間が前記易酸化性内容物の酸化作用によって減圧状態となるときに、前記天面板の凹変形に追従して前記局所突出部が前記注出筒の頂部を径方向外側へ押倒しすることで、前記局部空間に空気が入り込んで前記減圧状態が解除されると共に前記天面板の前記凹変形が解消されることが好ましい。
【0015】
また、上記した(5)に記載のヒンジキャップにおいては、(6)前記凹変形が解消されて前記局部空間が前記減圧状態でないとき、前記弾性変形が解除されて前記局所突出部が元の位置に戻ると共に前記注出筒が元の位置に復帰し、前記第1インナーリングの外周面と前記注出筒の内周面によってシールポイントが形成されて密封性が維持されることが好ましい。
【0016】
また、上記した(1)~(6)のいずれかに記載のヒンジキャップにおいては、(7)前記天面板の内面のうちヒンジ連結部側には座屈防止リブが設けられ、前記天面板の周縁から垂下する環状壁のうち前記ヒンジ連結部と反対側に鍔部が設けられ、前記局所突出部は、前記天面板の内面のうち前記座屈防止リブよりも前記鍔部に近い領域に形成されてなることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明のヒンジキャップによれば、たとえ易酸化性内容物が弱化部を通過して上蓋と注出筒の内面で構成される局部空間に滲入して空気と酸化して減圧傾向となったとしても、ある一定以上の減圧状態となったときに局所突出部によって外気の通り道を一時的に形成することができる。これにより、上蓋における天面板の凹変形を抑制することで、リクローズの際に内容物が漏洩してしまうことを防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施形態に係るヒンジキャップの側面断面図である。
図2】第1実施形態での上蓋の開蓋時におけるヒンジキャップの上面図である。
図3図1におけるα部の拡大図であり、本実施形態におけるヒンジキャップの局所突出部に関する詳細構造を示す模式図である。
図4】第1実施形態での易酸化性内容物の酸化による局部空間の状態遷移を示す模式図である。
図5】第2実施形態に係るヒンジキャップの側面断面図である。
図6】第2実施形態での上蓋の開蓋時におけるヒンジキャップの上面図である。
図7図5におけるα部の拡大図であり、本実施形態におけるヒンジキャップの局所突出部に関する詳細構造を示す模式図である。
図8】第2実施形態での易酸化性内容物の酸化による局部空間の状態遷移を示す模式図である。
図9】第3実施形態に係るヒンジキャップの側面断面図である。
図10】第3実施形態での上蓋の開蓋時におけるヒンジキャップの上面図である。
図11図9におけるα部の拡大図であり、本実施形態におけるヒンジキャップの局所突出部に関する詳細構造を示す模式図である。
図12】第3実施形態での易酸化性内容物の酸化による局部空間の状態遷移を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための実施形態を例示する。なお、説明の便宜上、以下の説明中において適宜X方向、Y方向、およびZ方向をそれぞれ規定したが、本発明の権利範囲を減縮するものでないことは言うまでもない。
また、以下で説明するヒンジキャップの構造以外については、例えば上記した特許文献1や特開2018-177297号公報などに開示された公知のヒンジキャップの構造を適宜補完してもよい。
【0020】
≪第1実施形態≫
まず図1図4を適宜参照しながら第1実施形態に係るヒンジキャップ100について説明する。
本実施形態のヒンジキャップ100は、易酸化性内容物が貯留される容器の口部(不図示)にキャップ本体10が装着されるとともに、ヒンジ連結部30を介してキャップ本体10と接続された上蓋20が開閉可能な構造を有する。
【0021】
なお、本明細書における「易酸化性内容物」とは、例えば上述のリモネン成分に例示されるように空気に対する酸化作用を有する内容物を言う。好適には例えばレモン果汁100%の調味料やオレンジなど柑橘系果物の果汁を多く含む液状の内容物が例示できるが、空気に対する酸化作用を有する液状の内容物であれば特に制限はなく酸化作用を備えた公知の種々の液体が例示できる。
【0022】
また、本明細書における「容器」は、上述の易酸化性内容物を貯留し保存可能な瓶や樹脂製ボトルなど公知の種々の容器が例示できる。かような容器は、上記した特許文献にも例示されるように内容物を注出するための公知の口部が形成されている。
【0023】
図1に示すように、ヒンジキャップ100は、キャップ本体10、上蓋20、およびヒンジ連結部30を含んで構成されている。
なおヒンジ連結部30としては、キャップ本体10に対して上蓋20をヒンジ接続できる限りにおいて特に制限はなく、公知の種々のヒンジ連結構造を適用することができる。
【0024】
<キャップ本体10>
キャップ本体10は、同図から理解されるとおり、頂板部11と、装着部12と、頂板部11から立設されて易酸化性内容物を注出可能な注出筒13と、を少なくとも含んで構成されている。
【0025】
頂板部11は、上記した容器にキャップ本体10が装着された際に容器口部の開口をカバーする機能を有している。また、図1図2をあわせて参照すると理解されるとおり、本実施形態の頂板部11は、注出筒13の内側でスコアなど公知の弱化部WPが設けられている。この弱化部WP内側の初期封止部11pは公知のプルリング16と接続されており、内容物の初期注出時には使用者がプルリング16を引き上げることで初期封止部11pが弱化部WPを境に離脱することで容器口部が開封される。
また図1に示すように、頂板部11のうち容器の口部と対向する底面側には、容器口部の内周面と密着可能な第2インナーリング15が設けられている。
【0026】
装着部12は、容器口部における外周の少なくとも一部を囲むように、上記した容器に装着される。より具体的に本実施形態の装着部12は、上記した頂板部11のうち注出筒13よりも外側の外周部11aの周縁から下方へ延在するように形成されて、上側スカート壁12aと下側スカート壁12bとを含んで構成されている。このうち上側スカート壁12aは、容器の口部の外周面に倣うように形成された内周面を有し、後述する第2インナーリング15と協働して容器の口部に嵌合される機能を有している。
【0027】
また図1に示すように、上側スカート壁12aの外周面上端には、ヒンジ連結部30を介して閉蓋する上蓋20の環状壁23内周面に形成されたアンダーカット(凸部)と係合する係合部12cが設けられている。これにより、閉蓋時に上蓋20の第1インナーリング22によってキャップ本体10の注出筒13が閉塞されると共に、環状壁23の内周面に形成されたアンダーカットとキャップ本体10の係合部12cとが係合することによって上蓋20がキャップ本体10に安定して閉蓋される。
【0028】
また、装着部12のうち下側スカート壁12bの上端には上記したヒンジ連結部30が配置されている。従って上蓋20は、図1及び2などに示すように、下側スカート壁12bの上端付近を支点として旋回して注出筒13の注出口を閉塞または開放することが可能となっている。
【0029】
注出筒13は、前記した頂板部11から立設されて容器に貯留された易酸化性内容物を注出する機能を有して構成されている。本実施形態の注出筒13は、例えば頂板部11から上方に向けてやや末広がるように立設されている。また、注出筒13の頂部14は、注出筒13の内周面から連続した頂面と、この頂面の先端が外方及び下方に向けて湾曲したカール部を有している。
【0030】
また、図1から理解されるように、本実施形態の注出筒13は、頂板部11からの高さ(図中のZ方向における長さ)が周方向において実質的に等しい円筒状となっている。そして本実施形態の注出筒13の頂部14は、上蓋20による閉蓋時であって後述する減圧状態となっていない通常状態において天面板21の内面21aに対して軸方向に関して所定の間隔を置いていてもよい。あるいは、図示されるように、注出筒13の頂部14は、上蓋20による閉蓋時であって後述する減圧状態となっていない通常状態において天面板21の内面21aに対して間隙をほとんど有さず近接または接触していてもよい。
【0031】
このように、通常状態(すなわち上記減圧状態によって上蓋20の天面板21が大きな凹変形を起こした状態でない状態)では、注出筒13の頂部14が後述する局所突出部PPによって意図せず変形しない限りにおいて、注出筒13の頂部14と天面板21の内面21aとに所定の間隙を有する形態でもよいし、これらが近接又は接触する形態であってもよい。
【0032】
<上蓋20>
上蓋20は、図1及び図2から理解されるとおり、天面板21と、第1インナーリング22と、環状壁23と、を少なくとも含んで構成されている。
このうち第1インナーリング22は、上蓋20の内面21aから立設されて、上記した閉蓋時に天面板21の中央部で下方に向けて垂下して注出筒13の内面と密着することで注出口を閉塞する機能を有している。
【0033】
環状壁23は、閉蓋時にキャップ本体10の注出筒13の周囲を囲うように上蓋20に設けられる。また、環状壁23は、上記した天面板21の周縁から垂下して閉蓋時に上述したキャップ本体10の上側スカート壁12aの外周面と係合するアンダーカットを有して構成されている。また同図に示すように、上蓋20における天面板21の内面21aのうちヒンジ連結部30側には、天面板21などの座屈を防止する座屈防止リブ24がさらに設けられていてもよい。また、本実施形態における環状壁23のうちヒンジ連結部30と反対側には、ヒンジ連結部30を支点に上蓋20を開封する際に使用者が指で引っ掛けることが可能な鍔部25が設けられていてもよい。
【0034】
<局所突出部PP>
図1~3などに示すように、本実施形態のヒンジキャップ100においては、(i)上蓋20による閉蓋時に注出筒13の頂部14と対向する天面板21の内面21aであって且つ第1インナーリング22よりも外側において、少なくとも1つの局所突出部PPが設けられている。
図1などから理解されるとおり、本実施形態の局所突出部PPは、上蓋20がキャップ本体10と嵌合した通常状態のときに、注出筒13の頂部14と近接するように天面板21の内面21aに設けられていてもよい。
【0035】
なお通常状態においては、注出筒13の頂部14と天面板21の内面21aとが必ずしも近接した状態となることは要しない。すなわち、注出筒13の頂部14がこの局所突出部PPによって意図せず変形しない限りにおいて、注出筒13の頂部14と局所突出部PPと所定の間隙を有する形態であってもよいし、図3に示すようにこれらが接触する形態であってもよい。
【0036】
また、図2では天面板21の内面21aのうち中央を基準としてヒンジ連結部30とは反対側に1つの局所突出部PPが設けられているが、本実施形態はこの形態には限られず、周方向に所定の間隙を有して2つ以上で構成された複数の局所突出部PPが設けられていてもよい。また、局所突出部PPの内面21aからの高さについては、後述するエアーパスAPが形成可能な限りにおいて特に制限はなく、例えばヒンジキャップの材質に応じて0.1~数mm程度の高さを適宜設定することができる。
【0037】
また図2に示すように、本実施形態の局所突出部PPは、天面板21の内面21aのうち座屈防止リブ24よりも鍔部25に近い領域に形成されていてもよい。これにより座屈防止リブ24の影響が軽減される形で、後述する天面板21の凹変形時に局所突出部PPが注出筒13の頂部14と接触することが可能となる。
【0038】
次に図4を参照しつつ、上記した易酸化性内容物の酸化による局部空間の状態遷移について説明する。
すなわち、容器に貯留される内容物が空気に対する酸化作用を有するリモネンなどの酸化成分を含む易酸化性内容物の場合には、未だ弱化部WPを介して初期封止部11pが離脱しておらずとも容器内部のリモネン成分などが弱化部WPを通過して局部空間PS(図1図3参照)に入り込む。すると、この局部空間PSに滲入した酸化成分は、局部空間中に存する空気と酸化することで当該空間中の酸素を消費する。
【0039】
このように局部空間PS中の酸素が消費されて減圧状態となると、図4に示すように、上蓋20の天面板21が局部空間PS側に引き寄せられることで凹状(内側へ窪むよう)に変形をし始める。このとき従来のごとき構造のヒンジキャップでは上蓋のインナーリングと注出筒の内面とで形成された密閉状態が維持されて上蓋の天面板における凹変形を抑制できないため、上蓋に大きな凹変形が残るため上述したリクローズの際にインナーリングの噛み込みが発生し、その結果として保管中などに容器を傾倒した際に内容物が漏洩してしまう。
【0040】
これに対し本実施形態のヒンジキャップ100では、上記した局所突出部PPが上蓋20における天面板21の内面21aに設けられている。そのため、図4に示すように上記した凹変形が発生した際に、天面板21に設けられた局所突出部PPが、この天面板21の凹変形に追従して注出筒13の頂部14を押圧する。そして局所突出部PPが注出筒13の頂部14を押圧すると、同図に示すように、注出筒13の頂部14が径方向外側へ押し倒されて局所突出部PPの周方向両側にエアーパスAPが形成される。これにより注出筒13の外側である周囲空間SSから局部空間PSへ空気が流入可能となり、局部空間PSが上記した減圧状態から通常の圧力状態へと復元することが可能となる。
【0041】
このように本実施形態のヒンジキャップ100においては、上蓋20の天面板21とキャップ本体10の頂板部11で囲まれる局部空間PSが易酸化性内容物の酸化作用によって減圧状態となるときに、天面板21の凹変形に追従して局所突出部PPが注出筒13の頂部14を径方向外側へ押倒しすることで、局部空間PSに空気が入り込んで減圧状態が解除されると共に天面板21の上記した凹変形が解消されることになる。
【0042】
その後は、上記した凹変形が解消されて局部空間PSが減圧状態でない通常状態となるとき、前記した弾性変形が解除されて局所突出部PPが元の位置に戻ると共に注出筒13が元の位置に復帰する。これにより、前記した第1インナーリング22の外周面と注出筒13の内周面によってシールポイントが形成されて元の密封状態が維持されることになる。
【0043】
以上説明した第1実施形態のヒンジキャップ100によれば、易酸化性内容物が弱化部WPを通過して局部空間PSに滲入することで空気と酸化して減圧傾向となったとしても、天面板21の凹変形に追従して局所突出部PPによってエアーパスAPが一時的に形成され、これにより周囲空間SSから局部空間PSに空気が継ぎ足されることで天面板21の凹変形が進行するのを抑制可能となっている。このように本実施形態では、局部空間PSの空気が酸化することで減圧傾向となる度に、局所突出部PPによってエアーパスAPが一時的に形成されて上記した減圧傾向が解消されることが繰り返される。
【0044】
≪第2実施形態≫
次に図5図8を適宜参照しながら第2実施形態に係るヒンジキャップ110について説明する。
上記した第1実施形態における局所突出部PPは、天面板21の内面21aであって且つ第1インナーリング22よりも外側から環状壁23まで径方向に渡って設けられていた。これに対して第2実施形態における局所突出部PPは、天面板21の内面21aであって且つ第1インナーリング22よりも外側ではあるものの、第1インナーリング22よりも外側から環状壁23までの径方向における一部に設けられている点に主とした特徴がある。
従って本第2実施形態においては、上記第1実施形態で既述した構成と同じ構成については同じ参照番号を付してその説明は適宜省略する。
【0045】
すなわち本実施形態の局所突出部PPは、図5及び図6から理解されるとおり、周方向における長さの方が径方向における長さよりも長くなるように、上記内面21aのうち第1インナーリング22外側の径方向における一部に設けられている。これにより本実施形態の局所突出部PPにおいても、前記した天面板21の凹変形時に対向する注出筒13の頂部14に当接して注出筒13の先端部位を弾性変形させることが可能となっている。
なお、本実施形態の局所突出部PPについても、上記した局部空間PSが減圧傾向となった際にエアーパスAPが形成可能な限りにおいて、上蓋20の内面21a上において1つ設けられていてもよいし周方向に沿って断続的に複数設けられていてもよい。
【0046】
また、図7に示すように、天面板21の内面21aに設けられる局所突出部PPは、必ずしも注出筒13の頂部14における頂点(Z方向に関して頂板部11からの高さが最も高い部位)に対向して設けられる必要はなく、図示されるとおり頂部14の頂点から径方向内側にシフトした位置と対向するように天面板21の内面21aに設けられていてもよい。
【0047】
以上説明した第2実施形態のヒンジキャップ110によっても、図8に示すように、上蓋20に上記した凹変形が発生した際にも、天面板21に設けられた局所突出部PPが、この天面板21の凹変形に追従して注出筒13の頂部14を押圧する。このとき局所突出部PPは頂部14の頂点よりも径方向内側の部位を押圧するため、より確実に注出筒13の頂部14が径方向外側へ押し倒されて局所突出部PPの周方向両側にエアーパスAPを形成することができる。これにより本実施形態においても、上記したエアーパスAPを介して注出筒13の外側である周囲空間SSから局部空間PSへ空気が流入可能となり、局部空間PSが上記した減圧状態から通常の圧力状態へと復元することが可能となる。
【0048】
その後は、第1実施形態と同様に、上記した凹変形が解消されて局部空間PSが減圧状態でない通常状態となるとき、前記した弾性変形が解除されて局所突出部PPが元の位置に戻ると共に注出筒13が元の位置に復帰する。これにより本実施形態においても、前記した第1インナーリング22の外周面と注出筒13の内周面によってシールポイントが形成されて元の密封状態が維持されることになる。
【0049】
≪第3実施形態≫
次に図9図12を適宜参照しながら第3実施形態に係るヒンジキャップ120について説明する。
上記した第1実施形態のヒンジキャップ100や第2実施形態のヒンジキャップ110における局所突出部PPは、それぞれ天面板21の内面21aに設けられていた。これに対して第3実施形態における局所突出部PPは、(ii)前記した上蓋20の閉蓋時に天面板21の内面21aと対向する注出筒13の頂部14において設けられる点に主とした特徴がある。
【0050】
すなわち図9及び図10から理解されるとおり、本実施形態の局所突出部PPは、注出筒13の頂部14に設けられて、前記した天面板21の凹変形時に対向する天面板21の内面21aに当接して注出筒13の先端部位を弾性変形させる。
なお、本実施形態の局所突出部PPについても、上記した局部空間PSが減圧傾向となった際にエアーパスAPが形成可能な限りにおいて、注出筒13の頂部14において1つ設けられていてもよいし頂部14上で周方向に沿って断続的に複数設けられていてもよい。
【0051】
第1実施形態から第3実施形態までにおいて説明したとおり、本発明の局所突出部PPは、上記した天面板21の凹変形時に注出筒13の先端部位を弾性変形可能な限りにおいて、閉蓋時に注出筒13の頂部14と対向する天面板21の内面21a側に設けられてもよいし、閉蓋時に天面板21の内面21aと対向する注出筒13の頂部14側に設けられていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、易酸化性内容物を充填した場合でも内容物の漏洩を抑制可能なヒンジキャップに好適である。
【符号の説明】
【0053】
100、110、120 ヒンジキャップ
10 キャップ本体
11 頂板部
12 装着部
13 注出筒
14 頂部
15 第2インナーリング
16 プルリング
20 上蓋
21 天面板
22 第1インナーリング
23 環状壁
24 座屈防止リブ
25 鍔部
30 ヒンジ連結部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12