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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023077833
(43)【公開日】2023-06-06
(54)【発明の名称】伸縮継手の固定構造
(51)【国際特許分類】
   E02D 29/16 20060101AFI20230530BHJP
   E04B 1/68 20060101ALI20230530BHJP
   E02D 29/045 20060101ALI20230530BHJP
【FI】
E02D29/16
E04B1/68 100Z
E02D29/045 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021191302
(22)【出願日】2021-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】000196624
【氏名又は名称】西武ポリマ化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100104329
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 卓治
(74)【代理人】
【識別番号】100177149
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 浩義
(72)【発明者】
【氏名】福田 興士
(72)【発明者】
【氏名】鹿山 幸太郎
(72)【発明者】
【氏名】原 裕介
(72)【発明者】
【氏名】野呂 翔平
(72)【発明者】
【氏名】荒木 崇裕
【テーマコード(参考)】
2D147
2E001
【Fターム(参考)】
2D147AA02
2D147JD01
2D147NA02
2E001DH31
2E001FA51
2E001FA71
2E001GA24
2E001HD11
2E001HE01
2E001PA01
(57)【要約】
【課題】アンカーボルトを打設できない範囲に対しても簡単に伸縮継手を固定できる伸縮継手の固定構造を提供する。
【解決手段】伸縮継手の固定構造20は、コンクリート構造物21間の目地部22に跨る伸縮継手23の碇着部23cに当てられてコンクリート構造物21で挟む押え部材と、碇着部23cの外側に打設したアンカーボルトで中間部が固定され基端部をコンクリート構造物21に当て、先端部で押え部材を押圧し碇着部23cを固定する固定部材と、を備え、アンカーボルトの非打設範囲に隣接して固定部材で固定される補助押え部材と、非打設範囲の連結押え部材27Aと、補助固定ボルトが設けられる補助押え部材の補助固定部材と、補助固定部材間に架け渡されて固定される補助支持部材33と、補助支持部材33の非打設範囲内に、連結押え部材27Aを押圧し碇着部23cを押圧固定する補助押圧部材34と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート構造物間の目地部に跨って配置される可撓性の伸縮継手の両端部の碇着部に当てられて前記コンクリート構造物で挟むように押える押え部材と、
前記コンクリート構造物の前記碇着部の外側に打設したアンカーボルトで中間部が固定され基端部を前記コンクリート構造物に当てるとともに、先端部で前記押え部材を押圧し前記碇着部を固定する固定部材と、を備え、
前記アンカーボルトを打設できない非打設範囲に隣接する外側に配置され前記固定部材で固定される補助押え部材と、
前記補助押え部材間の前記非打設範囲に配置される連結押え部材と、
前記補助押え部材に取り付けられ補助固定ボルトが設けられる補助固定部材と、
前記補助固定部材間に架け渡され前記補助固定ボルトで固定される補助支持部材と、
前記補助支持部材の前記非打設範囲内に位置して前記連結押え部材を押圧し前記碇着部を押圧して固定する補助押圧部材と、を備える、
ことを特徴とする伸縮継手の固定構造。
【請求項2】
前記補助支持部材には、前記補助押圧部材の押圧により生じる反力を支持する補強部材が一端縁に沿って設けられる、
ことを特徴とする請求項1に記載の伸縮継手の固定構造。
【請求項3】
前記補助押圧部材は、前記連結押え部材に当てられる当て部材を備え、
前記当て部材を介して前記連結押え部材を押圧し前記碇着部を固定する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の伸縮継手の固定構造。
【請求項4】
前記補助押え部材は、前記補助固定ボルトが前記碇着部に沿って摺動可能に設けられる、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の伸縮継手の固定構造。
【請求項5】
前記補助押え部材は、前記アンカーボルトの間隔を狭めて配置される前記固定部材で固定される、
ことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の伸縮継手の固定構造。
【請求項6】
前記アンカーボルトは、長く深く打設して設けられる、
ことを特徴とする請求項5に記載の伸縮継手の固定構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮継手の固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートで構築されるコンクリート構造物である洞道や水路あるいは共同溝等の地中に構築される暗渠などの目地部には、内外を止水するとともにその両側のコンクリート構造物の不等沈下や地震時変位並びに温度変化等に起因する伸縮等を許容する必要があり、コンクリート構造物の内側にゴムや合成樹脂などの可撓性の伸縮継手を設けている。
【0003】
伸縮継手をコンクリート構造物の目地部に取り付ける固定構造としては、アンカーボルトに伸縮継手の両端縁の碇着部および押え板を貫通させてナットで締め付けて直接固定すること(例えば、特許文献1参照)や碇着部に当てた押え板を、アンカーボルトに中間部を締め付けた押え金具の先端部を当てて押圧し、アンカーボルトを貫通させずに取り付けることが行われている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
コンクリート構造物の内部には、ケーブルや電線、配管などの設備が設けられることが多く、アンカーボルトが電線や配管などの設備と干渉する場合には、アンカーボルトの打設が困難となり、伸縮継手を固定できなくなる問題がある。特に、伸縮継手の交換の場合には、設備設置前とは異なり、設備の移設が困難となる場合があり、対応できる固定構造の開発が望まれている。
【0005】
そこで、アンカーボルトに直接伸縮継手を締め付ける場合の固定構造が特許文献1に開示されており、打設できないアンカーボルトの間の部分に、アンカーボルトのボルト孔のない当接部材を碇着部に当て、当接部材に碇着部の反対側から支持部材を当てて支持し、両端のアンカーボルトで当接部材と支持部材をアンカーボルトの間の部分に固定し、打設できないアンカーボルトの位置には、当接部材を押圧する押圧手段としてのボルトを支持部材に螺合させて締め付けて固定するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-133346号公報
【特許文献2】特開2012-225037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
引用文献1に開示された伸縮継手を直接アンカーボルトに貫通させて固定する構造では、アンカーボルトを打設できない部分であっても、当接部材と支持部材には、アンカーボルト間隔に合わせて固定用の貫通孔を形成しなければならず、打設後のボルト位置の計測などが必要となり、この伸縮継手の固定構造を、アンカーボルトに貫通させずに取り付けることでアンカーボルトの位置の計測などを必要としない構造(いわゆるボルトレス構造)にそのまま適用すると作業が煩雑となるなどの問題がある。
【0008】
本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、アンカーボルトを打設できない範囲に対しても簡単に伸縮継手を固定することができる伸縮継手の固定構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明にかかる伸縮継手の固定構造は、
コンクリート構造物間の目地部に跨って配置される可撓性の伸縮継手の両端部の碇着部に当てられて前記コンクリート構造物で挟むように押える押え部材と、
前記コンクリート構造物の前記碇着部の外側に打設したアンカーボルトで中間部が固定され基端部を前記コンクリート構造物に当てるとともに、先端部で前記押え部材を押圧し前記碇着部を固定する固定部材と、を備え、
前記アンカーボルトを打設できない非打設範囲に隣接する外側に配置され前記固定部材で固定される補助押え部材と、
前記補助押え部材間の前記非打設範囲に配置される連結押え部材と、
前記補助押え部材に取り付けられ補助固定ボルトが設けられる補助固定部材と、
前記補助固定部材間に架け渡され前記補助固定ボルトで固定される補助支持部材と、
前記補助支持部材の前記非打設範囲内に位置して前記連結押え部材を押圧し前記碇着部を押圧して固定する補助押圧部材と、を備える、
ことを特徴とする。
【0010】
前記補助支持部材には、前記補助押圧部材の押圧により生じる反力を支持する補強部材が一端縁に沿って設けられる、ことが好ましい。
【0011】
前記補助押圧部材は、前記連結押え部材に当てられる当て部材を備え、前記当て部材を介して前記連結押え部材を押圧し前記碇着部を固定する、ことが好ましい。
【0012】
前記補助押え部材は、前記補助固定ボルトが前記碇着部に沿って摺動可能に設けられる、ことが好ましい。
【0013】
前記補助押え部材は、前記アンカーボルトの間隔を狭めて配置される前記固定部材で固定される、ことが好ましい。
【0014】
前記アンカーボルトは、長く深く打設して設けられる、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の伸縮継手の固定構造によれば、アンカーボルトを打設できない範囲に対しても簡単に伸縮継手を固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の伸縮継手の固定構造の一実施の形態の押え部材を固定部材で固定する部分斜視図である。
図2】本発明の一実施の形態の押え部材を固定部材で固定する横断面図である。
図3】本発明の一実施の形態にかかり、(a)は正面図、(b)は(a)中のA-A線に沿う断面図である。
図4】本発明の他の一実施の形態の非打設範囲の横断面図である。
図5】本発明の一実施の形態の補強固定部材にかかり、(a)は正面図、(b)は(a)中のb-b線に沿う断面図、(c)は(a)中のc-c線に沿う断面図、(d)は(a)中のd-d線に沿う断面図である。
図6】本発明の一実施の形態にかかる補助押え部材の概略斜視図である。
図7】本発明の他の一実施の形態にかかり、(a)は補助固定ボルトの摺動部分の一部を省略して示す斜視図、(b)は補助固定ボルトの摺動部分の横断面図である。
図8】本発明の他の一実施の形態にかかる補助押圧部材の一部を省略して示す概略斜視図である。
図9】本発明の一実施の形態にかかり、(a)は第1の工程の説明図、(b)は第2の工程の説明図である。
図10】本発明の一実施の形態にかかり、(a)は第3の工程の説明図、(b)は第4の工程の説明図、(c)は第5の工程の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の伸縮継手の固定構造の一実施の形態について、図面に基づき詳細に説明する。
伸縮継手の固定構造(以下、単に固定構造とする。)20は、例えば図1,2に示すように、コンクリート構造物21,21の目地部22にゴムや合成樹脂などの可撓性の伸縮継手23を跨ぐように固定する構造である。固定構造20では、アンカーボルト24の打設がケーブルや配管などとの干渉のためできない場合であっても他の部分と同様の締め付け力を確保できるようにしたものであるが、まず、アンカーボルト24を打設できる部分(非打設範囲Lの外側部分)について説明する。
固定構造20によって伸縮継手23を固定設置することで、止水するとともに、目地部22の両側のコンクリート構造物21,21の不等沈下や地震時変位並びに温度変化等に起因する伸縮等を許容する。
【0018】
この固定構造20に用いられる可撓性の伸縮継手23は、例えば図2に示すように、長尺帯状の幅方向中間部に横断面形状が円弧部23aで連続させた、例えば略W字状に蛇行する伸縮部23bを備える。伸縮継手23は、幅方向両端部に固定のための平板状の碇着部23cが設けられてゴムや合成樹脂などの弾性部材で構成され、必要に応じて補強層が一層ないし複数層埋設される。
【0019】
伸縮継手23は、コンクリート構造物21の目地部22を跨ぐように伸縮継手23の碇着部23cが配置され、コンクリート構造物21の目地部22に形成された対向する溝状の段差による収納部25内に伸縮部23bが収納される。なお、収納部25を省略して、平坦な目地部22間に伸縮継手23を設置しても良い(図3(b)、図4参照)。
【0020】
伸縮継手23は、コンクリート構造物21の目地部22上に必要に応じて止水材、あるいはポリエステルなどの補強布のいずれかが敷かれて設置される。また、必要に応じて止水材をおよび補強布の両方を介して伸縮継手23が設置される。また、伸縮継手23の両側の碇着部23cまでの上部全体を覆うように必要に応じて保護カバー26が設けられ、保護カバー26にも伸縮に対応できる折り畳み部26aを設けられる。
【0021】
固定構造20では、伸縮継手23の碇着部23cに押え部材27が当てられる。押え部材27は、例えば、上方が開口した略コ字状のリップ溝型形状の横断面とされる。なお、押え部材27の溝内に補強部材などを介在させて固定することで補強することもできる。
【0022】
固定構造20では、押え部材27をアンカーボルト24で直接コンクリート構造物21に固定することなく、伸縮継手23の外側に打設するアンカーボルト24を介して固定部材28を締め付け、この固定部材28を介して押え部材27を押圧して固定する。
【0023】
固定部材28は、アンカーボルト24にて挿通固定される中間板状部28aを備えてアンカーボルト24用の取り付け穴28bが形成され、この中間板状部28aの両側を内側に曲げ起こすように曲げ加工して両側板部28cが形成してある。固定部材28は、両側板部28cのそれぞれの先端部に押え部材27を押える押えアーム部28dが突き出すように形成される。固定部材28は、両側板部28cのそれぞれの基端部に中間板状部28aと空間を隔てて同一面をなしコンクリート構造物21に当接されるように内側に突き出した弾性当接部28fを一体に形成して構成される。固定部材28では、押えアーム部28dの突き出し長さが押え部材27の溝幅と略同一の長さとされ、押えアーム部28dの先端部は押え部材27の外側に僅かに突き出す状態としてある。
なお、押えアーム部28dの先端部により伸縮継手23が大きく変位した場合の干渉や損傷を防止するため先端上部を円弧状にして後退させ、あるいは押えアーム部28dの先端面を押え部材27より後退させることが一層効果的である。また、押えアーム部28dは、先端上部を円弧状にして後退させることと先端面の後退とを組み合わせても良い。
【0024】
固定部材28には、押えアーム部28dの下面に押え部材27の溝内に突き出して係止される係止突出部28eが形成してあり、係止突出部28eが押え部材27の溝幅と略同一の大きさとされ、係止突出部28eの前後で係止できるようにしてある。
なお、係止突出部28eの突出量は伸縮継手23の変位により押え部材27が移動しないようにできれば良い。
【0025】
また、固定部材28は、中間板状部28aの下面から両側板部28cの押えアーム部28dの下面までの距離(側板部の高さに相当)をアンカーボルト24に締め付けたときに、押え部材27を介して伸縮継手23の碇着部23cをコンクリート構造物21に圧着するのに必要な面圧を発生できるように設定してある。
【0026】
さらに、固定構造20では、可撓性の伸縮継手23の両端部の碇着部23cに、押え部材27を載置して固定部材28で締め付ける場合のずれを防止するため、碇着部23cに一対の突縁部23dが形成され、一対の突縁部23dの間隔を押え部材27の幅と略同一ないし狭くすることで、伸縮継手23の可撓性により押え部材27を挟圧し得るようにしてある。固定構造20では、一対の突縁部23dのうち一方が碇着部23cの外側に形成され上方に突き出す突縁部23dとされ、もう一方が伸縮部23bの外面と兼用してある。
これにより、一対の突縁部23dで押え部材27を挟んだり、さらに弾性力で挟むようにすることで、伸縮継手23に加わる力や変位に対する安定性を向上することができ、一層水圧などに強い構造とすることができる。
【0027】
固定構造20では、予め、伸縮継手23、押え部材27および固定部材28を工場で製作する。固定構造20の施工は、アンカーボルト24の打設がケーブルや配管などの内部の施設と干渉が生じない範囲では、伸縮継手23の碇着部23cの外側となるコンクリート構造物21、21にアンカーボルト24を打設する。アンカーボルト24としては、例えば接着剤系アンカーが用いられ、ステンレス製のボルトが使用される。
【0028】
この後、コンクリート構造物21の目地部22に跨るように必要に応じて止水材やポリエステルなどの補強布のいずれか、あるいは止水材と補強布の両方を敷き、その上に伸縮継手23を配置し、その外側を必要に応じて保護カバー26で覆って伸縮継手23を設置する。
【0029】
伸縮継手23の碇着部23c上に押え部材27を配置し、押え部材27の両端部などの位置でアンカーボルト24を利用して固定部材28を締め付けて押え部材27を介して伸縮継手23を仮固定する。
【0030】
この後、固定部材28の中間板状部28aの取り付け穴28bにアンカーボルト24を挿通してナット24aで仮止めして回転できる状態、あるいは移動できる状態とし、アンカーボルト24を中心に回転し、あるいは移動して固定部材28の先端部の係止突出部28eを押え部材27の溝内に位置させて押えアーム部28dを押え部材27上に位置させるとともに、基端部の弾性当接部28fをコンクリート構造物21に当接させる。
【0031】
この後、ナット24aをアンカーボルト24に締め付けることで固定部材28を締め付けて押え部材27を介して伸縮継手23の碇着部23cをコンクリート構造物21に押圧固定する。アンカーボルト24への固定部材28の仮固定、固定部材28の回転または移動、固定部材28の締め付け作業を繰り返すことで伸縮継手23のアンカーボルト24を介しての固定が完了する。
【0032】
次に、アンカーボルト24を打設できない非打設範囲Lの部分における固定構造20について、図3図6を参照して説明する。
固定構造20は、アンカーボルト24の打設がケーブルや配管などの内部の施設と干渉が生じる範囲、例えば、図3(a)に示すアンカーボルト24の非打設範囲Lでは、固定構造20として、非打設範囲Lに隣接する外側に固定部材28で固定される補助押え部材30が配置される。非打設範囲Lの外側の2つの補助押え部材30の間(非打設範囲L)には、連結押え部材27Aが配置される。
補助押え部材30には、補助固定ボルト31が設けられる補助固定部材32が取り付けられる。補助固定部材32間には、補助支持部材33が架け渡され補助固定ボルト31で固定される。補助支持部材33には、非打設範囲L内に位置して連結押え部材27Aを押圧し碇着部23cを押圧して固定する補助押圧部材34を備える。これらにより、固定構造20が構成される。
【0033】
アンカーボルト24の非打設範囲Lには、アンカーボルト24の打設部分(非打設範囲Lの外側部分)と同様に、同一断面形状で、長さを非打設範囲Lに合わせた押え部材が連結押え部材27Aとして配置され、両側の補助押え部材30と、例えば、隙間なく接するように伸縮継手23の碇着部23c上に設置される(図3(a),(b)参照)。
【0034】
非打設範囲Lの外側の各補助押え部材30には、補助固定部材32,32Aが設けられる。中間部の2つの補助固定部材32は、例えば図5および図6に示すように、補助押え部材30の上面の溝部を跨ぐ固定板部32aが2箇所に設けられ、各固定板部32aを貫通して溝部の内側から補助固定ボルト31が上方に突き出して設けられる。さらに、補助押え部材30には、溝部の内側側面に略全長にわたり2枚の内側補強板32bが設けられて溶接などで一体に固定されている。また、補助押え部材30の非打設範囲L側の端部には、補助固定部材32Aが設けられ、補助押え部材30の上面の溝部を跨ぐ固定板部32aの半分が補助押え部材30から突き出すように配置され、突き出した固定板部32aの先端部から補助固定ボルト31が上方に突き出して設けられ、溶接などで一体に固定されている。補助固定部材32Aには、固定板部32aの碇着部23c側の側面に外側補強板32cが略L字状とされ、固定板部32aおよび補助押え部材30の側面を覆って溶接などで固定されている。この外側補強板32cは、連結押え部材27Aの側面にも当たることになる(例えば図9,10参照)。
これにより、補助押え部材30には、それぞれ3本の補助固定ボルト31が上方に突き出している。3本の補助固定ボルト31は、予め定めた間隔で配置してある。3本の補助固定ボルト31の設置位置に合わせて、後述する補助支持部材33の貫通穴33bの位置を決定する。
【0035】
なお、補助固定部材32は、図7(a),(b)に示すように、補助押え部材30の溝に沿って移動させることができるようにし、補助固定ボルト31の設置位置を、後述する補助支持部材33の貫通穴33bの位置に合わせて適宜変更することもできる。この場合には、補助押え部材30の溝下面に当て板32dを設けて補助固定ボルト31を下から貫通させ、当て板32dと固定板部32aを摺動させた後に締め付ける。あるいは、後述する補助支持部材33の貫通穴33bの位置を定めて形成しておき、補助固定ボルト31を貫通させるように摺動させた後、当て板32d、固定板部32a、補助支持部材33全体を締め付ける。これにより、補助支持部材33の製作精度の管理が容易となり、現場での施工の自由度が向上する。
【0036】
補助支持部材33は、非打設範囲Lの両側(外側)の補助押え部材30上の補助固定部材32,32Aに架け渡される。補助支持部材33は、板状の支持部33aに補助固定ボルト31用の貫通穴33bが形成されている。補助支持部材33に形成する貫通穴33bは、補助固定ボルト31の位置に合わせた間隔で両端部に3個ずつ形成される。補助支持部材33の支持部33aには、複数のねじ穴33cが形成されて、後述する補助押圧部材34を構成する押圧ねじ34aがねじ込まれる。押圧ねじ34aは、連結押え部材27Aと対向するよう配置される。
【0037】
補助支持部材33には、たわみを防止する補強部材33dが支持部33aの一端縁である外側縁に沿って上方に突き出すように溶接などで一体に設けられる。補強部材33dは、例えば、図3(b)に示すように、上方に突き出す板状とされる場合や例えば、図4に示すように、下方に突き出す板状とされる場合のいずれであっても良い。なお、補強部材33dを下方に突き出すように設けることで、上方での締め付けなどの作業性が確保し易くなる。また、補助支持部材33には、非打設範囲Lに配置された連結押え部材27Aを押圧して伸縮継手23の碇着部23cを押さえる補助押圧部材34が設けられる。
【0038】
補助押圧部材34は、補助支持部材33の支持部33aに複数のねじ穴33cが形成されて押圧ねじ34aがねじ込まれる。押圧ねじ34aは、支持部33aからの突き出し長さを変えて連結押え部材27Aの溝底面に当てることで連結押え部材27Aに押圧力を付与する。これにより、伸縮継手23の碇着部23cが押さえられる。この補助押圧部材34の押圧ねじ34aによる押圧力の付与に伴い支持部33aに反力が加わることになるが、補助支持部材33は、補強部材33dが支持部33aの一端縁である外側縁にL字状の断面形状となるように取り付けてあり、必要な剛性を確保することができる。補助押圧部材34では、押圧ねじ34aを、アンカーボルト24の打設できない本数に合わせて同数設ける場合に限らず、アンカーボルト24の間隔より狭い間隔で本数を増大しても良く、あるいは、押圧力を確保できれば、減少するようにしてもよい。
【0039】
補助押圧部材34は、押圧ねじ34aで連結押え部材27Aの溝底面を直接押さえるのに代え、図8に示すように、連結押え部材27Aに当てられる当て部材35を備え、押圧ねじ34aの先端部を当て部材35に当て、当て部材35を介して連結押え部材27Aを押圧し、碇着部23cを押圧して固定する。
当て部材35は、例えば、アンカーボルト24による固定に用いる固定部材28の押えアーム部28dの先端部のみと略同一形状とされ、2枚の側板部35aの上端部35b同士を連結し下方が開口した断面コ字状とされる。側板部35aには、連結押え部材27Aの溝間に嵌まる係止突出部35cが下方に突き出して形成してある。係止突出部35cにより当て部材35が所定の位置となるように位置決めされるとともに、締め付け時の回転を防止する。補助押圧部材34は、当て部材35を介して連結押え部材27Aを固定することで、アンカーボルト24により押え部材27を固定するアンカーボルト24の打設範囲と同一の構造で非打設範囲Lの連結押え部材27Aを固定することができる。
なお、当て部材35は、図示省略したが、連結押え部材27Aの溝を跨ぐ厚板で構成することもでき、連結押え部材27Aの溝上面から押圧力を加えることができればその形状は、特に限定するものでない。また、当て部材35を介して締め付ける場合には、図示省略したが、連結押え部材27Aの溝上面の両側を2本の押圧ねじ34aで押えるようにして押圧固定することもできる。
【0040】
このように構成した伸縮継手の固定構造20では、例えば図1,2に示すように、アンカーボルト24を打設できる範囲の伸縮継手の固定を行う。この範囲では、伸縮継手23の碇着部23cの外側となるコンクリート構造物21にアンカーボルト24を打設する。
【0041】
この後、コンクリート構造物21の目地部22に跨るように必要に応じて止水材、あるいはポリエステルなどの補強布のいずれかが敷かれて配置される。また、必要に応じて止水材をおよび補強布の両方を介して伸縮継手23を配置する。伸縮継手23の外側は、必要に応じて保護カバーで覆って設置する。
【0042】
伸縮継手23の碇着部23c上に押え部材27を配置し、押え部材27の両端部などの位置でアンカーボルト24を利用して固定部材28を締め付け、押え部材27を介して伸縮継手23を仮固定する。
また、非打設範囲Lの外側部分には、それぞれ1本ずつの補助押え部材30を非打設範囲Lの間隔を開けて配置する。これに加えて非打設範囲Lには、連結押え部材27Aを配置しておく。
なお、補助押え部材30に補助固定部材32を摺動可能とした場合には、予め補助固定部材32を必要個数、例えば2個ずつ4個をスライドできるように装着しておき、補助固定部材32Aは、溶接して固定する構造とする(図5図7等参照)。
【0043】
この後、固定部材28の中間板状部28aの取り付け穴28bにアンカーボルト24を挿通してナット24aで仮止めして回転できる状態、あるいは移動できる状態とする。そして、アンカーボルト24を中心に固定部材28を回転し、あるいは移動して固定部材28の先端部の係止突出部28eを押え部材27の溝内に位置させてアーム部28dを押え部材27上に位置させ、基端部の弾性当接部28fをコンクリート構造物21に当接させる(図9(b)等参照)。
【0044】
この後、ナット24aをアンカーボルト24に締め付けることで固定部材28を締め付けて押え部材27を介して伸縮継手23の碇着部23cをコンクリート構造物21に押圧固定する。アンカーボルト24への固定部材28の仮固定、固定部材28の回転または移動、固定部材28の締め付け作業を繰り返すことで伸縮継手23のアンカーボルト24を介しての固定が完了する。
さらに、補助押え部材30に補助固定部材32を摺動可能とした場合には、補助支持部材33に形成した貫通穴33bの配置に合わせて補助押え部材30の補助固定ボルト31が位置するように配置し固定しておく。
このアンカーボルト24による固定部材28の締め付けでは、補助押え部材30を設置する範囲のアンカーボルト24の間隔を狭めて本数を増加し、あるいはアンカーボルト24を長さの長いものとし深く打設して締め付け力の増大や荷重の分散を図るようにすることもできる(図10(b)等参照)。
【0045】
非打設範囲Lの外側の押え部材27上に配置した補助押え部材30の間に補助支持部材33を架け渡し、補助固定部材32,32Aの補助固定ボルト31に貫通穴33bを挿通させ、ナット31aで締め付けて補助支持部材33を固定する。これにより、補助支持部材33が非打設範囲Lの連結押え部材27Aと対向し平行に配置される。
【0046】
次に、補助支持部材33のねじ穴33cに補助押圧部材34の押圧ねじ34aをねじ込んでいき、連結押え部材27Aの溝底面を押圧し、碇着部23cを固定する(図3(b)、図10(c)等参照)。
あるいは、押圧ねじ34aにより、図8に示すように、当て部材35を介して連結押え部材27Aを押圧固定するようにしてもよい。
こうすることで、アンカーボルト24を設置できない非打設範囲Lに対しても伸縮継手23を固定構造20によって固定することができる。
また、アンカーボルト24の非打設範囲Lに対してもアンカーボルト24の位置を予め計測する必要がなく、補助押え部材30に補助固定部材32,32Aを所定の間隔で固定しておくことで、補助支持部材33の貫通穴33bに補助固定ボルト31を挿通することができ、簡単に伸縮継手23を固定することができる。
また、補助支持部材33の貫通穴33bの位置に合わせて補助押え部材30の補助固定部材32を移動し、補助固定ボルト31を貫通させるようにすることで、同様に、簡単に伸縮継手23を固定することができる。
固定構造20では、補助押圧部材34の押圧ねじ34aによる締め付けによって補助支持部材33に反力が加わることになるが、補強部材33dによってたわみを抑えることで必要な締め付け力を確保することができる。特に、補助支持部材33から下方に突き出すように一端縁に設けた補強部材33dにより押圧ねじ34aによる締め付け作業の作業性を確保することができる。また、締め付けに伴う反力を抑えることで、複数の押圧ねじ34aの締め付けトルクを管理し、均等な締め付け力とすることが可能となり、補助支持部材33のたわみなどの影響を回避することができる。
【0047】
以上、実施の形態とともに、具体的に説明したように伸縮継手の固定構造20は、コンクリート構造物21,21間の目地部22に跨って配置される可撓性の伸縮継手23の両端部の碇着部23c,23cに当てられてコンクリート構造物21で挟むように押える押え部材27と、コンクリート構造物21の碇着部23cの外側に打設したアンカーボルト24で中間部が固定され基端部がコンクリート構造物21に当てられるとともに、先端部で押え部材27を押圧し碇着部23cを固定する固定部材28と、を備え、アンカーボルト24を打設できない非打設範囲Lに隣接する外側に配置され固定部材28で固定される補助押え部材30と、補助押え部材30間の非打設範囲Lに配置される連結押え部材27Aと、補助押え部材30に取り付けられ補助固定ボルト31が設けられる補助固定部材32と、補助固定部材32間に架け渡され補助固定ボルト31で固定される補助支持部材33と、補助支持部材33の非打設範囲L内に位置して連結押え部材27Aを押圧し碇着部23cを押圧して固定する補助押圧部材34と、を備えて構成されている。
【0048】
かかる構成によれば、アンカーボルト24を設置できない非打設範囲Lに対しても伸縮継手23を固定構造20の補助押え部材30に取り付けられ補助固定ボルト31が設けられる補助固定部材32,32Aと、補助固定部材32,32A間に架け渡され補助固定ボルト31が貫通されて固定される補助支持部材33と、補助支持部材33の非打設範囲L内に位置して連結押え部材27Aを押圧し碇着部23cを固定する補助押圧部材34と、によって、簡単に伸縮継手23を固定することができる。また、アンカーボルト24の非打設範囲Lに対してもアンカーボルト24の位置を予め計測する必要がなく、非打設範囲Lに隣接して補助押え部材30を設置することで簡単に補助支持部材33を架け渡すことができ、いわゆるボルトレスの固定構造と同様にして、伸縮継手23を簡単に固定することができる。
【0049】
補助支持部材33には、補助押圧部材34の押圧により生じる反力を支持する補強部材33dが一端縁に沿って設けられる。
かかる構成によれば、補助支持部材33を一端縁から上方または下方に突き出す補強部材33dで補強することでたわみを抑えることができ、補助押圧部材34によって非打設範囲Lの伸縮継手23を反力の影響を抑えて確実に押圧固定することができる。
【0050】
補助押圧部材34は、連結押え部材27Aに当てられる当て部材35を備え、当て部材35を介して連結押え部材27Aを押圧し碇着部23cを固定する。
かかる構成によれば、当て部材35を介して連結押え部材27Aを押えることで、アンカーボルト24の打設範囲と同様の構造で伸縮継手23の碇着部23cを固定することができる。
【0051】
補助押え部材30は、補助固定ボルト31が碇着部23cに沿って摺動可能に設けられる。
かかる構成によれば、補助固定ボルト31で固定する補助支持部材33に形成する貫通穴33bの位置を現場などでの実測の必要がなく、工場などで予め製作することができる。また、たとえ製作誤差などが生じても補助固定ボルト31を摺動させて位置調整でき、施工の自由度を増大できる。
【0052】
補助押え部材30は、アンカーボルト24の間隔を狭めて配置される固定部材28で固定される。
かかる構成によれば、補助押え部材30をアンカーボルト24の間隔を狭めて固定することで、押圧力や反力の確保がより確実にでき、非打設範囲Lの伸縮継手23を確実に押圧固定することができる。
【0053】
アンカーボルト24は、長く深く打設して設けられる。
かかる構成によれば、補助押え部材30が固定される固定部材28を一層確実に固定することができ、非打設範囲Lの伸縮継手23を確実に押圧固定することができる。
【0054】
なお、上記実施の形態では、可撓性の伸縮継手23として中間部に伸縮部23bとして5つや3つの円弧部23aで連続する略W字状の横断面形状のものを例に説明したが、これに限らず、伸縮継手23を他の形状の可撓性の伸縮継手23を用いることもできる。
また、伸縮継手23や固定構造20の構成部材30~35は、上記実施の形態で説明したものに限らず、同一の機能を備えたものであれば、形状などを変更したものであっても同様に使用することができる。
また、固定構造20における工程は、必ずしも上記の順序に限るものではなく、工程を変更しても良く、最終的に碇着部23cを固定できるものであればよい。
【符号の説明】
【0055】
20 伸縮継手の固定構造(固定構造)
21 コンクリート構造物
22 目地部
23 伸縮継手
23a 円弧部
23b 伸縮部
23c 碇着部
23d 突縁部
24 アンカーボルト
24a ナット
25 収納部
26 保護カバー
26a 折り畳み部
27 押え部材
27A 連結押え部材
28 固定部材
28a 中間板状部
28b 取り付け穴
28c 両側板部
28d 押えアーム部
28e 係止突出部
28f 弾性当接部
30 補助押え部材
31 補助固定ボルト
31a ナット
32 補助固定部材
32A 補助固定部材
32a 固定板部
32b 内側補強板
32c 外側補強板
32d 当て板
33 補助支持部材
33a 支持部
33b 貫通穴
33c ねじ穴
33d 補強部材
34 補助押圧部材
34a 押圧ねじ
35 当て部材
35a 側板部
35b 上端部
35c 係止突出部
L 非打設範囲
図1
図2
図3
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図5
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図8
図9
図10