(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023077840
(43)【公開日】2023-06-06
(54)【発明の名称】双ドラム式連続鋳造装置、および、薄肉鋳片の製造方法
(51)【国際特許分類】
B22D 11/06 20060101AFI20230530BHJP
【FI】
B22D11/06 330B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021191316
(22)【出願日】2021-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】新井 貴士
(72)【発明者】
【氏名】藤井 忠幸
(72)【発明者】
【氏名】金川 浩太
(72)【発明者】
【氏名】宮嵜 雅文
(72)【発明者】
【氏名】吉田 直嗣
【テーマコード(参考)】
4E004
【Fターム(参考)】
4E004DA13
4E004MC22
4E004NC01
4E004QA08
4E004RA08
4E004SC04
4E004SC05
4E004SC07
(57)【要約】
【課題】薄肉鋳片が冷却ドラムに巻き付くことを抑制でき、安定して鋳造を実施することが可能な双ドラム式連続鋳造装置を提供する。
【解決手段】回転する一対の冷却ドラム11,11と一対のサイド堰15によって形成された溶融金属プール部16に溶融金属3を供給し、冷却ドラム11の周面に凝固シェル5,5を形成・成長させ、冷却ドラム11の周面にそれぞれ形成された凝固シェル5,5同士をドラムキス点で接合して圧下し、薄肉鋳片1を製造する双ドラム式連続鋳造装置10であって、冷却ドラム11の端部のドラムキス点の下方部分には、周面が薄肉鋳片1側に向けられ、かつ、前記周面が冷却ドラム11の周面から突出したディスク部材20が冷却ドラム11の回転軸に平行な方向から見て二つの冷却ドラム11,11の中心点を結ぶ線と冷却ドラム11の中心点とディスク部材20の中心点を結ぶ線で挟まれる角度が45°以下となる位置に配設されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転する一対の冷却ドラムと一対のサイド堰によって形成された溶融金属プール部に溶融金属を供給し、前記冷却ドラムの周面に凝固シェルを形成・成長させ、前記冷却ドラムの周面にそれぞれ形成された凝固シェル同士をドラムキス点で接合して圧下し、薄肉鋳片を製造する双ドラム式連続鋳造装置であって、
前記冷却ドラムの端部の前記ドラムキス点の下方部分には、周面が前記薄肉鋳片側に向けられ、かつ、前記周面が前記冷却ドラムの周面から突出したディスク部材が前記冷却ドラムの回転軸に平行な方向から見て二つの前記冷却ドラムの中心点を結ぶ線と前記冷却ドラムの中心点と前記ディスク部材の中心点を結ぶ線で挟まれる角度が45°以下となる位置に配設されていることを特徴とする双ドラム式連続鋳造装置。
【請求項2】
前記ディスク部材は、前記冷却ドラムの回転軸と平行な軸線を中心に回転可能な構成とされていることを特徴とする請求項1に記載の双ドラム式連続鋳造装置。
【請求項3】
回転する一対の冷却ドラムと一対のサイド堰によって形成された溶融金属プール部に溶融金属を供給し、前記冷却ドラムの周面に凝固シェルを形成・成長させ、前記冷却ドラムの周面にそれぞれ形成された凝固シェル同士をドラムキス点で接合して圧下し、薄肉鋳片を製造する薄肉鋳片の製造方法であって、
前記冷却ドラムの端部の前記ドラムキス点の下方部分に、周面が前記薄肉鋳片側に向けられ、かつ、前記周面が前記冷却ドラムの周面から突出したディスク部材を前記冷却ドラムの回転軸に平行な方向から見て二つの前記冷却ドラムの中心点を結ぶ線と前記冷却ドラムの中心点と前記ディスク部材の中心点を結ぶ線で挟まれる角度が45°以下となる位置に配設し、
前記冷却ドラムに巻き込まれる前記薄肉鋳片を、前記ディスク部材によって前記冷却ドラムから離間させることを特徴とする薄肉鋳片の製造方法。
【請求項4】
前記ディスク部材を、前記冷却ドラムの回転方向と同方向に回転させることを特徴とする請求項3に記載の薄肉鋳片の製造方法。
【請求項5】
前記ディスク部材の周速度V1と前記冷却ドラムの周速度V0との比V1/V0を0.3以上2.0以下の範囲内とすることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の薄肉鋳片の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転する一対の冷却ドラムと一対のサイド堰によって形成された溶融金属プール部に溶融金属を供給し、前記冷却ドラムの周面に凝固シェルを形成・成長させ、前記冷却ドラムの周面にそれぞれ形成された凝固シェル同士をドラムキス点で接合して圧下し、薄肉鋳片を製造する双ドラム式連続鋳造装置、および、薄肉鋳片の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属の薄肉鋳片を製造する方法として、例えば、特許文献1、2に示すように、内部に水冷構造を有する冷却ドラムを備え、回転する一対の冷却ドラム間に形成された溶融金属溜まり部に溶融金属を供給し、前記冷却ドラムの周面に凝固シェルを形成・成長させ、一対の冷却ドラムの周面にそれぞれ形成された凝固シェル同士をドラムキス点で接合し、圧下して所定の厚さの薄肉鋳片を製造する双ドラム式連続鋳造装置を用いた製造方法が提供されている。このような双ドラム式連続鋳造装置を用いた製造方法は、各種金属において適用されている。
【0003】
上述の双ドラム式鋳造装置においては、冷却ドラムの両端面にサイド堰を押し付けて溶融金属プール部を構成している。サイド堰のうち冷却ドラムの端面に当接される部分は、高温に耐えるため、そして自身が磨耗して冷却ドラムの端面とのシールを保たせるために、耐熱性に優れ、かつ、冷却ドラムよりも軟質の材料で構成されており、鋼の薄肉鋳片を製造する場合には、通常、窒化ホウ素系の耐火物が用いられている。
【0004】
ここで、冷却ドラムの端面とサイド堰の当接面との間に大きな隙間が生じると、溶融金属がこの隙間に差し込んでしまい、これが凝固してバリとなり、冷却ドラムから薄肉鋳片が引き剥がされずに巻き付いて鋳造中断となってしまうおそれがあった。また、薄肉鋳片の品質が損なわれるおそれがあった。
【0005】
そこで、冷却ドラムとサイド堰の間のシール性を確保する技術として、例えば特許文献3には、サイド堰を付勢する弾性部材とサイド堰の移動を制限する拘束部材とを備えたものが提案されている。
特許文献4には、サイド堰の耐火物の片摩耗を検知して、サイド堰の傾きを抑制する技術が提案されている。
特許文献5には、冷却ドラムの軸方向の移動量を測定し、これを修正することにより、冷却ドラムの端部での湯漏れを抑制する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平01-166863号公報
【特許文献2】特開平05-228586号公報
【特許文献3】特開平01-083337号公報
【特許文献4】特開平05-269553号公報
【特許文献5】特開2002-219558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、冷却ドラムの端面とサイド堰の当接面の接触状態を常温で調整した場合であっても、サイド堰は鋳造時には高温となるため、サイド堰が熱膨張によって変形し、冷却ドラムの端面とサイド堰の当接面の間に隙間が生じてしまうおそれがあった。
また、サイド堰は回転する冷却ドラムに接触させられているので、冷却ドラムの端面とサイド堰の当接面との間の摩擦力によって、サイド堰の位置ズレが生じ、やはり隙間が大きくなるおそれがあった。
よって、冷却ドラムとサイド堰との間に溶融金属が差し込むことを完全に防止することは現実的に非常に困難であった。
【0008】
ここで、冷却ドラムとサイド堰との間に溶融金属が差し込んでバリが形成された場合には、このバリが冷却ドラムのエッジの端面側に引っ掛かり、薄肉鋳片の端部が冷却ドラムに巻き付くことがあった。バリが極めて軽微であれば、薄肉鋳片が冷却ドラムから排出されて直ぐに薄肉鋳片の自重により冷却ドラムから引き剥がされ、安定鋳造に影響を及ぼさないが、バリの程度が大きくなると冷却ドラムから薄肉鋳片が引き剥がされずに巻き付いて鋳造中断となってしまうおそれがあった。
特に、厚みが1.5mm以下の場合には、薄肉鋳片の自重が軽く冷却ドラムの周速も速いので、この傾向が顕著になり、安定鋳造障害の大きな要因となる。
【0009】
本発明は、前述した状況に鑑みてなされたものであって、薄肉鋳片が冷却ドラムに巻き付くことを抑制でき、安定して鋳造を実施することが可能な双ドラム式連続鋳造装置、および、薄肉鋳片の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の課題を解決するために、本発明に係る双ドラム式連続鋳造装置は、回転する一対の冷却ドラムと一対のサイド堰によって形成された溶融金属プール部に溶融金属を供給し、前記冷却ドラムの周面に凝固シェルを形成・成長させ、前記冷却ドラムの周面にそれぞれ形成された凝固シェル同士をドラムキス点で接合して圧下し、薄肉鋳片を製造する双ドラム式連続鋳造装置であって、前記冷却ドラムの端部の前記ドラムキス点の下方部分には、周面が前記薄肉鋳片側に向けられ、かつ、前記周面が前記冷却ドラムの周面から突出したディスク部材が前記冷却ドラムの回転軸に平行な方向から見て二つの前記冷却ドラムの中心点を結ぶ線と前記冷却ドラムの中心点と前記ディスク部材の中心点を結ぶ線で挟まれる角度が45°以下となる位置に配設されていることを特徴としている。
【0011】
上述の構成の双ドラム式連続鋳造装置によれば、前記冷却ドラムの端部の前記ドラムキス点の下方部分には、周面が前記薄肉鋳片側に向けられ、かつ、前記周面が前記冷却ドラムの周面から突出したディスク部材が前記冷却ドラムの回転軸に平行な方向から見て二つの前記冷却ドラムの中心点を結ぶ線と前記冷却ドラムの中心点と前記ディスク部材の中心点を結ぶ線で挟まれる角度が45°以下となる位置に配設されているので、薄肉鋳片が冷却ドラムに巻き付いてきた際に、ディスク部材の周面と薄肉鋳片が接触することによって、薄肉鋳片が冷却ドラムから離間され、薄肉鋳片の冷却ドラムへの巻き付きを抑制することができる。
また、ディスク部材の周面が薄肉鋳片と接触する構成とされていることから、薄肉鋳片が傷つくことを抑制できる。
【0012】
ここで、本発明の双ドラム式連続鋳造装置においては、前記ディスク部材は、前記冷却ドラムの回転軸と平行な軸線を中心に回転可能な構成とされていることが好ましい。
この場合、ディスク部材が前記冷却ドラムの回転軸と平行な軸線を中心に回転可能な構成とされているので、薄肉鋳片がディスク部材の周面に接触した際に、薄肉鋳片が傷つくことをさらに抑制できる。
【0013】
本発明に係る薄肉鋳片の製造方法は、回転する一対の冷却ドラムと一対のサイド堰によって形成された溶融金属プール部に溶融金属を供給し、前記冷却ドラムの周面に凝固シェルを形成・成長させ、前記冷却ドラムの周面にそれぞれ形成された凝固シェル同士をドラムキス点で接合して圧下し、薄肉鋳片を製造する薄肉鋳片の製造方法であって、前記冷却ドラムの端部の前記ドラムキス点の下方部分に、周面が前記薄肉鋳片側に向けられ、かつ、前記周面が前記冷却ドラムの周面から突出したディスク部材を前記冷却ドラムの回転軸に平行な方向から見て二つの前記冷却ドラムの中心点を結ぶ線と前記冷却ドラムの中心点と前記ディスク部材の中心点を結ぶ線で挟まれる角度が45°以下となる位置に配設し、前記冷却ドラムに巻き込まれる前記薄肉鋳片を、前記ディスク部材によって前記冷却ドラムから離間させることを特徴としている。
【0014】
上述の構成の薄肉鋳片の製造方法によれば、前記冷却ドラムの端部の前記ドラムキス点の下方部分に、周面が前記薄肉鋳片側に向けられ、かつ、前記周面が前記冷却ドラムの周面から突出したディスク部材を前記冷却ドラムの回転軸に平行な方向から見て二つの前記冷却ドラムの中心点を結ぶ線と前記冷却ドラムの中心点と前記ディスク部材の中心点を結ぶ線で挟まれる角度が45°以下となる位置に配設し、前記冷却ドラムの端部において前記冷却ドラムに巻き込まれる前記薄肉鋳片を、前記ディスク部材によって前記冷却ドラムから離間させる構成とされているので、薄肉鋳片の冷却ドラムへの巻き付きを抑制することができる。
また、ディスク部材の周面が薄肉鋳片と接触する構成とされていることから、薄肉鋳片が傷つくことを抑制できる。
【0015】
ここで、本発明の薄肉鋳片の製造方法においては、前記ディスク部材を、前記冷却ドラムの回転方向と同方向に回転させることが好ましい。
この場合、前記ディスク部材を、前記冷却ドラムの回転方向と同方向に回転させることにより、薄肉鋳片がディスク部材の周面に接触した際に、薄肉鋳片が傷つくことをさらに抑制できる。
【0016】
また、本発明の薄肉鋳片の製造方法においては、前記ディスク部材の周速度V1と前記冷却ドラムの周速度V0との比V1/V0を0.3以上2.0以下の範囲内とするとすることが好ましい。
この場合、前記ディスク部材の周速度V1と前記冷却ドラムの周速度V0との比V1/V0を0.3以上2.0以下の範囲内とするとしているので、薄肉鋳片がディスク部材の周面に接触した際に、薄肉鋳片が傷つくことをさらに抑制できる。
【発明の効果】
【0017】
上述のように、本発明によれば、薄肉鋳片が冷却ドラムに巻き付くことを抑制でき、安定して鋳造を実施することが可能な双ドラム式連続鋳造装置、および、薄肉鋳片の製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態である双ドラム式連続鋳造装置の説明図である。
【
図2】
図1に示す双ドラム式連続鋳造装置の溶鋼プール部の拡大説明図である。
【
図3】
図1に示す双ドラム式連続鋳造装置のディスク部材の拡大説明図である。
【
図4】本発明の実施形態である薄肉鋳片の製造方法における薄肉鋳片の冷却ドラムの巻き付きを抑制する状況を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の実施形態である双ドラム式連続鋳造装置、および、薄肉鋳片の製造方法について、添付した図面を参照して説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
ここで、本実施形態では、溶融金属として溶鋼を用いており、鋼材からなる薄肉鋳片1を製造するものとされている。また、本実施形態では、製造される薄肉鋳片1の幅が200mm以上1800mm以下の範囲内、厚さが0.8mm以上5mm以下の範囲内とされている。
【0020】
本実施形態である双ドラム式連続鋳造装置10は、
図1に示すように、一対の冷却ドラム11、11と、薄肉鋳片1を支持するピンチロール12、12、および、13、13と、一対の冷却ドラム11、11の幅方向端部に配設されたサイド堰15と、これら一対の冷却ドラム11、11とサイド堰15とによって画成された溶鋼プール部16に供給される溶鋼3を保持するタンディッシュ18と、このタンディッシュ18から溶鋼プール部16へと溶鋼3を供給する浸漬ノズル19と、を備えている。
【0021】
この双ドラム式連続鋳造装置10においては、溶鋼3が回転する冷却ドラム11,11に接触して冷却されることにより、冷却ドラム11,11の周面の上で凝固シェル5、5が成長し、一対の冷却ドラム11,11にそれぞれ形成された凝固シェル5、5同士がドラムキス点で圧着されることによって、所定厚みの薄肉鋳片1が鋳造される。
【0022】
ここで、
図2に示すように、冷却ドラム11の端面にサイド堰15が配設されることによって、溶鋼プール部16が画成されている。
溶鋼プール部16の湯面は、
図2に示すように、一対の冷却ドラム11,11の周面と一対のサイド堰15,15によって四方を囲まれた矩形状をなしており、この矩形状をなす湯面の中央部に浸漬ノズル19が配設されている。
【0023】
このサイド堰15は、上述のように、冷却ドラム11の端面と摺接して冷却ドラム11の端部からの溶鋼3の漏れを防止するシール作用を有する。
サイド堰15は、溶鋼3を安定して保持するとともに、冷却ドラム11の周面での凝固シェル5の形成に悪影響を与えないことが重要である。このため、サイド堰15を構成する材質としては、溶鋼3との反応性が乏しい耐熱材料を用いることになり、例えば、黒鉛、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化珪素、アルミナ、シリカ等、あるいはこれらを複合した材料が用いられる。本実施形態では、窒化ホウ素からなるサイド堰15を用いている。
【0024】
そして、本実施形態の双ドラム式連続鋳造装置10においては、
図1および
図2に示すように、冷却ドラム11の端部のドラムキス点の下方部分には、周面が薄肉鋳片1に向けられ、かつ、前記周面が冷却ドラム11の周面から突出したディスク部材20が冷却ドラム11の回転軸に平行な方向から見て二つの冷却ドラム11,11の中心点を結ぶ線と冷却ドラム11の中心点とディスク部材20の中心点を結ぶ線で挟まれる角度(以下、αと記す)が45°以下となる位置に配設されている。
角度αが45°を超えると、冷却ドラム11下のループ形状が大きく変化して、ループ検出位置が変化し、ピンチロール12,12以降の搬送速度制御に大きな外乱を与えてしまうため、好ましくない。なお、角度αは0°を含まない。角度αの下限は、サイド堰15と干渉しないように決めればよい。角度αの好ましい範囲は30°以下である。
【0025】
本実施形態では、ディスク部材20は、冷却ドラム11の回転軸と平行な軸線を中心に回転可能な構成とされている。
なお、本実施形態では、ディスク部材20には回転駆動装置(図示なし)が配設されており、ディスク部材20を回転駆動させることが可能な構成とされている。
ここで、
図3に示すように、冷却ドラム11の周面からのディスク部材20の周面の最大突出量Pが1mm以上5mm以下の範囲内とすることが好ましい。
【0026】
次に、上述した双ドラム式連続鋳造装置10を用いた薄肉鋳片1の製造方法について説明する。
【0027】
図1に示すように、一対の冷却ドラム11,11とサイド堰15によって形成された溶鋼プール部16に、タンディッシュ18から浸漬ノズル19を介して溶鋼3を供給するとともに、一対の冷却ドラム11,11を回転方向Rに向けて、すなわち、一対の冷却ドラム11,11同士が近接する領域が薄肉鋳片1の引抜方向(
図1においては下方向)に向かうように、それぞれの冷却ドラム11,11を回転させる。
【0028】
すると、溶鋼3が回転する冷却ドラム11,11に接触して冷却されることにより、冷却ドラム11,11の周面の上で凝固シェル5,5が成長し、一対の冷却ドラム11,11にそれぞれ形成された凝固シェル5、5同士がドラムキス点で圧着されることによって、所定厚みの薄肉鋳片1が鋳造される。
【0029】
ここで、本実施形態では、
図3に示すように、上述のディスク部材20を、回転駆動装置(図示なし)によって、冷却ドラム11の回転方向Rと同方向に回転させる。
また、ディスク部材20の周速度V1と冷却ドラム11の周速度V0との比V1/V0を0.3以上2.0以下の範囲内とする。
【0030】
本実施形態である双ドラム式連続鋳造装置10においては、通常時は、
図4(a)に示すように、冷却ドラム11,11のドラムキス点から鉛直方向下方に向けて薄肉鋳片1が製出される。
ここで、冷却ドラム11の端面とサイド堰15との隙間に溶鋼3が差し込んでバリが生じ、このバリが冷却ドラム11に巻き込まれることによって、薄肉鋳片1の幅端部が冷却ドラム11に巻き付くことがある。
【0031】
本実施形態では、冷却ドラム11の端部のドラムキス点の下方部分に、周面が薄肉鋳片1に向けられ、かつ、前記周面が冷却ドラム11の周面から突出したディスク部材20が、上述の角度αが45°以下となる位置に配設されていることから、
図4(b)に示すように、巻き付いた薄肉鋳片1がディスク部材20の周面に接触することで、冷却ドラム11から離間される。これにより、薄肉鋳片1が、
図4(a)に示すように、鉛直方向下方に向けて製出されることになる。
【0032】
以上のような構成とされた本実施形態である双ドラム式連続鋳造装置10、および、薄肉鋳片1の製造方法によれば、上述のように、冷却ドラム11の端部のドラムキス点の下方部分に、周面が薄肉鋳片1に向けられ、かつ、前記周面が前記冷却ドラムの周面から突出したディスク部材20が、上述の角度αが45°以下となる位置に配設されているので、薄肉鋳片1が冷却ドラム11に巻き付いてきた際に、ディスク部材20の周面と薄肉鋳片1が接触することによって、薄肉鋳片1が冷却ドラム11から離間され、薄肉鋳片1の冷却ドラム11への巻き付きを抑制することができる。
また、ディスク部材20の周面が薄肉鋳片1と接触する構成とされていることから、薄肉鋳片1の幅端部が傷つくことを抑制でき、薄肉鋳片1の破断を抑制することができる。
よって、薄肉鋳片1の連続鋳造を安定して実施することが可能となる。
【0033】
本実施形態において、ディスク部材20が冷却ドラム11の回転軸と平行な軸線を中心に回転可能な構成とされている場合には、薄肉鋳片1がディスク部材20の周面に接触した際に、薄肉鋳片1が傷つくことをさらに抑制できる。
また、本実施形態において、ディスク部材20を、冷却ドラム11の回転方向と同方向に回転させる構成とした場合には、薄肉鋳片1がディスク部材20の周面に接触した際に、薄肉鋳片1が傷つくことをさらに抑制できる。
【0034】
さらに、本実施形態において、ディスク部材20の周速度V1と冷却ドラム11の周速度V0との比V1/V0を0.3以上2.0以下の範囲内とした場合には、薄肉鋳片がディスク部材の周面に接触した際に、薄肉鋳片が傷つくことをさらに抑制できる。
なお、ディスク部材20の周速度V1と冷却ドラム11の周速度V0との比V1/V0は0.6以上1.7以下の範囲内とすることがより好ましい。
【0035】
以上、本発明の実施形態である本実施形態である双ドラム式連続鋳造装置10、および、薄肉鋳片1の製造方法について具体的に説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
本実施形態では、
図1に示す双ドラム式連続鋳造装置を例に挙げて説明したが、これに限定されることはない。
また、本実施形態では、ディスク部材を回転駆動装置によって回転させるものとして説明したが、ディスク部材を固定したものであってもよいし、ディスク部材が薄肉鋳片と接触した際にその摩擦力によって受動的に回転するものであってもよい。
【実施例0036】
以下に、本発明の効果を確認すべく、実施した実験結果について説明する。
図1から
図4に示す双ドラム式連続鋳造装置を用いて、以下の鋳造条件によって、薄肉鋳片の製造を実施した。なお、表1に示す条件でディスク部材を回転させた。鋳造結果について表1に示す。
鋼種:低炭素鋼(炭素濃度:0.04質量%)
ドラムサイズ:幅400mm、直径600mm
ドラム周速度:130mpm
ドラム反力:2tonf
鋳片サイズ:目標厚み1.0mm×幅400mm×長さ170m目標
溶鋼量:500kg
ディスク部材のサイズ:直径200mm×厚み20mm
冷却ドラム周面からのディスク部材の突出量:3mm
角度α:30°
【0037】
【0038】
ディスク部材を配設しなかった比較例においては、10キャスト中3キャストで薄肉鋳片の冷却ドラムへの巻き付きが生じ、鋳造を中止した。
これに対して、ディスク部材を配設した本発明例1-11においては、薄肉鋳片の冷却ドラムへの巻き付きを抑制することができた。
特に、ディスク部材の回転方向を冷却ドラムの回転方向と同方向とし、ディスク部材の周速度V1と冷却ドラムの周速度V0との比V1/V0を0.3以上2.0以下の範囲内とした本発明例1-7においては、鋳片の端部割れの発生が1キャスト以下となり、V1/V0を0.6以上1.7以下の範囲内とした本発明例1-5においては、薄肉鋳片の端部に割れが発生せず、全キャストにおいて全量鋳造することができた。
【0039】
以上の実験結果から、本発明によれば、薄肉鋳片が冷却ドラムに巻き付くことを抑制でき、安定して鋳造を実施することが可能な双ドラム式連続鋳造装置、および、薄肉鋳片の製造方法を提供可能であることが確認された。