(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023077841
(43)【公開日】2023-06-06
(54)【発明の名称】ソケット、配管構造及び配管部材
(51)【国際特許分類】
E04D 13/08 20060101AFI20230530BHJP
【FI】
E04D13/08 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021191321
(22)【出願日】2021-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100161883
【弁理士】
【氏名又は名称】北出 英敏
(72)【発明者】
【氏名】橋本 昌幸
(57)【要約】
【課題】本管の径を変更しなくても枝管から本管に雨水を安定的に合流させることができる、ソケット、配管構造及び配管部材を提供する。
【解決手段】ソケット6は、第1落とし口31bからサイフォン現象により雨水を排水するための本管4の合流部43に流路的に接続される第1開口611と、第2落とし口32bからの雨水を合流部43から本管4に流入させる枝管5に流路的に接続される第2開口612とを有する筒状の外側部材61と、外側部材61の内部にあって第1開口611と第2開口612とを繋ぐ内側流路640を有する内側部材64とを備える。内側流路640のサイズは、第1開口611から第2開口612に向かって大きくなる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1落とし口からサイフォン現象により雨水を排水するための本管の合流部に流路的に接続される第1開口と、第2落とし口からの雨水を前記合流部から前記本管に流入させる枝管に流路的に接続される第2開口とを有する筒状の外側部材と、
前記外側部材の内部にあって、前記第1開口と前記第2開口とを繋ぐ内側流路を有する内側部材と、
を備え、
前記内側流路のサイズは、前記第1開口から前記第2開口に向かって大きくなる、
ソケット。
【請求項2】
前記内側部材は、前記内側部材と前記外側部材との間に前記第1開口と前記第2開口とを繋ぐ外側流路が形成されるように、前記外側部材の内部にあり、
前記外側流路のサイズは、前記第1開口から前記第2開口に向かって小さくなる、
請求項1に記載のソケット。
【請求項3】
前記内側部材は、中空の錐台状であり、
前記内側流路は、前記内側部材の内部空間で規定され、
前記外側流路は、前記内側部材と前記外側部材との間の隙間で規定される、
請求項2に記載のソケット。
【請求項4】
前記外側流路は、前記内側部材の中心軸を水平方向に沿わせた場合に前記内側部材の下側に位置する下側流路を含む、
請求項2又は3に記載のソケット。
【請求項5】
前記外側流路は、前記内側部材の中心軸を水平方向に沿わせた場合に前記内側部材の上側に位置する上側流路を含む、
請求項4に記載のソケット。
【請求項6】
前記内側部材は、前記外側流路の前記第2開口側の開口において、サイフォン現象により前記合流部から前記第1開口を経て前記外側部材に流入する雨水に、前記外側流路の前記第2開口側の開口を通過しないように圧力損失を生じさせるように、構成される、
請求項2~5のいずれか一つに記載のソケット。
【請求項7】
前記内側部材は、前記外側流路の前記第2開口側の開口において、サイフォン現象により前記合流部から前記第1開口を経て前記外側部材に流入する雨水に渦を生じさせることで圧力損失を生じさせるように、構成される、
請求項6に記載のソケット。
【請求項8】
前記内側部材は、前記内側流路の前記第1開口側の開口において、サイフォン現象により前記合流部から前記第1開口を経て前記外側部材に流入する雨水に、前記内側流路の前記第1開口側の開口を通過しないように圧力損失を生じさせるように、構成される、
請求項1~7のいずれか一つに記載のソケット。
【請求項9】
前記内側部材は、前記内側流路の前記第1開口側の開口において、サイフォン現象により前記合流部から前記第1開口を経て前記外側部材に流入する雨水に渦を生じさせることで圧力損失を生じさせるように、構成される、
請求項8に記載のソケット。
【請求項10】
前記外側部材と前記内側部材との間に前記外側部材に対して前記内側部材を固定する複数のリブを、更に備える、
請求項1~9のいずれか一つに記載のソケット。
【請求項11】
前記複数のリブは、前記内側部材の中心軸に交差する方向に並ぶ一対のリブを含む、
請求項10に記載のソケット。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一つに記載のソケットと、
前記第1落とし口に配置されるサイフォン現象発生用のドレンと、
前記本管と、
前記枝管と、
を備える、
配管構造。
【請求項13】
第1落とし口からサイフォン現象により雨水を排水するための本管と、第2落とし口からの雨水を前記本管の合流部から前記本管に流入させる枝管とを備える配管構造の一部を構成する配管部材であって、
前記枝管の下流側を向いた第1開口及び前記枝管の上流側を向いた第2開口を有する筒状の外側部材と、
前記外側部材の内部にあって、前記第1開口と前記第2開口とを繋ぐ内側流路を有する内側部材とを備え、
前記内側流路のサイズは、前記第1開口から前記第2開口に向かって大きくなる、
配管部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ソケット、配管構造及び配管部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、雨水排水配管構造を開示する。特許文献1に開示された雨水排水配管構造は、上層階に配置されたサイフォン式排水部材と、サイフォン式排水部材から流入する雨水を上層階から階下に向かって流下する本管と、本管の高さ方向における途中に位置される合流部に接続され、合流部に外部から排水を流入させる枝管と、を備える。本管は、上方側に配置される第1縦配管と、第1縦配管の下方側に配置され第1縦配管よりも大きな流路面積を有する養生管と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、サイフォン現象を適用して雨水を排水する際に、合流部において、枝管から本管に安定して排水を合流させることが可能な雨水排水配管構造を提供する、と記載されている。
【0005】
特許文献1に開示された雨水排水配管構造では、本管が第1縦配管の下方側に配置され第1縦配管よりも大きな流路面積を有する養生管を備えているため、本管が下流側で太くなる。特許文献1に開示された雨水排水配管構造の施工には、径の異なる配管及び関連部材の準備が要求され、施工の手間が掛かる。本管の下流側には上流側よりも径の大きい配管を用いる必要があるから、本管の下流側に上流側と径が同じ配管を用いる場合よりもコストがかかり、本管が下流側で太くなることは一般的には美観が悪いと判断されやすい。
【0006】
本開示は、本管の径を変更しなくても枝管から本管に雨水を安定的に合流させることができる、ソケット、配管構造及び配管部材を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様にかかるソケットは、第1落とし口からサイフォン現象により雨水を排水するための本管の合流部に流路的に接続される第1開口と、第2落とし口からの雨水を合流部から本管に流入させる枝管に流路的に接続される第2開口とを有する筒状の外側部材と、外側部材の内部にあって、第1開口と第2開口とを繋ぐ内側流路を有する内側部材と、を備える。内側流路のサイズは、第1開口から第2開口に向かって大きくなる。
【0008】
本開示の一態様にかかる配管構造は、上記のソケットと、第1落とし口に配置されるサイフォン現象発生用のドレンと、本管と、枝管と、を備える。
【0009】
本開示の一態様にかかる配管部材は、第1落とし口からサイフォン現象により雨水を排水するための本管と、第2落とし口からの雨水を本管の合流部から本管に流入させる枝管とを備える配管構造の一部を構成する配管部材であって、枝管の下流側を向いた第1開口及び枝管の上流側を向いた第2開口を有する筒状の外側部材と、外側部材の内部にあって、第1開口と第2開口とを繋ぐ内側流路を有する内側部材とを備える。内側流路のサイズは、第1開口から第2開口に向かって大きくなる。
【発明の効果】
【0010】
本開示の態様は、本管の径を変更しなくても枝管から本管に雨水を安定的に合流させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】一実施の形態にかかる配管構造の構成例の概略図
【
図7】
図1の配管構造のソケットの作用の第1例の説明図
【
図8】
図1の配管構造のソケットの作用の第2例の説明図
【
図9】
図1の配管構造のソケットの作用の第3例の説明図
【
図10】
図1の配管構造のソケットの作用の第4例の説明図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、発明者(ら)は、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0013】
上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。以下の実施の形態において説明する各図は、模式的な図であり、各図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。また、各要素の寸法比率は図面に図示された比率に限られるものではない。
【0014】
[1.実施の形態]
[1.1 構成]
図1は、一実施の形態にかかる配管構造1の構成例の概略図である。配管構造1は、例えば、複数の屋根を有する建物用の雨樋システムを構成する。雨樋システムは、建物の複数の屋根からの雨水を受けて、地面20のます部21に流す。ます部21に集められた雨水は、ます部21から埋設管22を通って雨水管に流れ出る。建物は、例えば、店舗、オフィス、工場、ビル、学校、福祉施設又は病院等の非住宅施設、及び戸建住宅、集合住宅、又は戸建住宅若しくは集合住宅の各住戸等の住宅施設の建物である。非住宅施設には、劇場、映画館、公会堂、遊技場、複合施設、百貨店、ホテル、旅館、幼稚園、図書館、博物館、美術館、地下街、駅及び空港等も含む。建物の複数の屋根、庇(小屋根)及び大屋根を含み得る。
【0015】
図1の配管構造1は、第1軒樋31と、第2軒樋32と、本管4と、枝管5と、ソケット6と、接続管7とを備える。
【0016】
第1軒樋31は、例えば、建物の大屋根からの雨水を受ける。第1軒樋31は、建物の大屋根の下に設置される。第1軒樋31は、長尺の桶状である。
図1の第1軒樋31は、底壁31aを有し、底壁31aに第1落とし口31bがある。
図1では、第1軒樋31の第1落とし口31bにサイフォン現象発生用のドレン9が配置される。ドレン9は、第1落とし口31bでの渦の発生及び空気の巻き込みを低減する。ドレン9は、ドレン9がない場合に比べれば、サイフォン現象を発生させやすい構造を有する。ドレン9は、サイフォン現象の発生に寄与するが、サイフォン現象の発生には、ドレン9だけではなく、本管4の構造も関係し得ることは周知の事実である。
【0017】
第2軒樋32は、例えば、建物の庇からの雨水を受ける。第2軒樋32は、建物の庇の下に設置される。第2軒樋32は、長尺の桶状である。
図1の第2軒樋32は、底壁32aを有し、底壁32aに第2落とし口32bがある。
図1では、第2軒樋32の第2落とし口32bには、第1落とし口31bとは異なり、サイフォン現象発生用のドレン9が配置されていない。ただし、第2落とし口32bには、一般的にサイフォン現象の発生に寄与しないと考えられる構造のドレン等が配置されてよい。
【0018】
本管4は、第1落とし口31bからサイフォン現象により雨水を排水するために設置される。本管4は、第1落とし口31bからの雨水を垂直に流す。本管4は、上流側の端部4aと下流側の端部4bとを有する。上流側の端部4aは、本管4において第1落とし口31bに接続される端部(
図1での上端部)である。下流側の端部4bは、本管4において、ます部21に挿入される端部(
図1での下端部)である。
図1では、本管4とます部21との隙間からます部21内に雨水が流入しないように排水管カバー40が配置される。
【0019】
図1の本管4は、第1竪樋41と、第2竪樋42と、合流部43とを備える。
【0020】
第1竪樋41は、本管4の上流側の部分である。第1竪樋41は、直管状である。第1竪樋41の管軸に直交する断面は円形状である。第1竪樋41の材料は、硬質ポリ塩化ビニルである。第1竪樋41の寸法、例えば、外形と厚さは、JIS K 6741「硬質ポリ塩化ビニル管」の硬質ポリ塩化ビニル管(一般)の規格に沿って設定されてよい。第1竪樋41は、建物の壁面に、第1竪樋41の管軸の方向が上下方向(鉛直方向)に一致するように固定される。第1竪樋41の上端部が、本管4の上流側の端部4aである。
【0021】
第2竪樋42は、本管4の下流側の部分である。第2竪樋42は、直管状である。第2竪樋42の管軸に直交する断面は円形状である。第2竪樋42の材料は、硬質ポリ塩化ビニルである。第2竪樋42の寸法、例えば、外形と厚さは、JIS K 6741「硬質ポリ塩化ビニル管」の硬質ポリ塩化ビニル管(一般)の規格に沿って設定されてよい。第2竪樋42は、建物の壁面に、第2竪樋42の管軸の方向が上下方向(鉛直方向)に一致するように固定される。第2竪樋42の下端部が、本管4の下流側の端部4bである。
【0022】
合流部43は、本管4の途中部分に枝管5を接続するための部材、いわゆるT字管(チーズ管)である。
図1の本管4では、合流部43は、第1竪樋41と第2竪樋42との間にある。合流部43は、第1竪樋41の下端部に接続される第1受け口43aと、第2竪樋42の上端部に接続される第2受け口43bと、分岐口43cとを備える。
図1の合流部43は、T字状である。合流部43の材料は、硬質ポリ塩化ビニルである。合流部43の寸法は、塩化ビニル管・継手協会規格の「屋外排水設備用硬質塩化ビニル継手(VU継手)」に沿って設定されてよい。合流部43は、サイフォン現象により第1落とし口31bから本管4を通じて雨水を排水することが可能なように、第1落とし口31bから所定の距離を離して配置される。所定の距離は、本管4の管径等を考慮して適宜設定される。
【0023】
図1の本管4において、第1竪樋41の径(内径及び外径)と第2竪樋42の径(内径及び外径)とは等しい。つまり、同じ呼び径に対応する管材が、第1竪樋41及び第2竪樋42に利用可能である。
【0024】
枝管5は、第2落とし口32bからの雨水を合流部43から本管4に流入させるために設置される。枝管5は、第2落とし口32bからの雨水を本管4に経由して、ます部21に流す。枝管5は、上流側の端部5aと下流側の端部5bとを有する。上流側の端部5aは、枝管5において第2落とし口32bに接続される端部(
図1での上端部)である。下流側の端部5bは、枝管5において、合流部43に接続される端部(
図1での左端部)である。
【0025】
図1の枝管5は、縦管51と、横管52と、エルボ53とを備える。
【0026】
縦管51は、枝管5の上流側の部分である。縦管51は、直管状である。縦管51の管軸に直交する断面は円形状である。縦管51の材料は、硬質ポリ塩化ビニルである。縦管51の寸法、例えば、外形と厚さは、JIS K 6741「硬質ポリ塩化ビニル管」の硬質ポリ塩化ビニル管(一般)の規格に沿って設定されてよい。縦管51は、縦管51の管軸の方向が上下方向(鉛直方向)に一致するように配置される。枝管5の上流側の端部5aは、縦管51の上端部である。
【0027】
横管52は、枝管5の下流側の部分である。横管52は、直管状である。横管52の管軸に直交する断面は円形状である。横管52の材料は、硬質ポリ塩化ビニルである。横管52の寸法、例えば、外形と厚さは、JIS K 6741「硬質ポリ塩化ビニル管」の硬質ポリ塩化ビニル管(一般)の規格に沿って設定されてよい。横管52は、横管52の管軸の方向が水平方向に一致するように配置される。横管52の第1端部(
図1の右端部)はエルボ53を介して縦管51に接続され、横管52の第2端部(
図1の左端部)はソケット6を介して本管4に接続される。枝管5の下流側の端部5bは、横管52の第2端部である。
【0028】
エルボ53は、縦管51と横管52とを接続するための部材である。エルボ53は、縦管51の下端部に接続される第1受け口53aと、横管52の第1端部に接続される第2受け口53bとを備える。
図1のエルボは、L字状である。エルボ53の材料は、硬質ポリ塩化ビニルである。エルボ53の寸法は、JIS K 6739「排水用硬質ポリ塩化ビニル管継手」の規格に沿って設定されてよい。例えば、
図1のエルボ53は、JIS K 6739で規定される90°曲がりエルボ(所謂、DL)である。
【0029】
本実施の形態において、枝管5は、第2落とし口2bからの雨水にサイフォン現象が生じないように構成されている。一例として、枝管5では、縦管51の長さ及び横管52の長さが、サイフォン現象の発生には適さない長さに設定されている。
【0030】
ソケット6は、本管4と枝管5との接続に用いられる。
図1の配管構造1では、ソケット6は、接続管7を介して、本管4の合流部43の分岐口43cに接続される。特に、本実施の形態において、ソケット6は、本管4から枝管5への雨水の進入の可能性を低減する一方で、枝管5から本管4へは雨水の進入を可能にするように構成される。
【0031】
本管4において、サイフォン現象を利用して雨水を排水する場合、本管4を流れる雨水の水圧は、サイフォン現象が発生していない場合よりも大きくなる。このような水圧によって、本管4の合流部43より下方(第2竪樋42)での圧力が高くなる。これによって、本管4の合流部43から枝管5に向かって雨水が流れる現象、逆流が生じる可能性がある。逆流が生じると、枝管5から本管4に雨水を安定的に合流させることができにくくなる。このような逆流の対策として、従来から、第2竪樋42の径を第1竪樋41の径よりも大きくすることが知られている(特許文献1参照)。しかしながら、この場合には、第1竪樋41と第2竪樋42とで異なる径の配管及び配管同士を接続する部材(インクリーザ等)を準備する必要が生じる。これは、配管構造1の施工に必要な部材の種類及び数の増加を引き起こし得る。配管構造1の施工の手間の増加及び施工現場でのトラブルの増加も懸念される。さらに、本管4の径が途中で変わると美観が悪いと判断されやすい。
【0032】
配管構造1では、ソケット6を備えることによって、本管4の径を変更しなくても枝管5から本管4に雨水を安定的に合流させることができる。
【0033】
以下、ソケット6について、
図2~
図6を参照して更に詳細に説明する。
【0034】
図2は、配管構造1のソケット6の構成例の斜視図であり、
図3は、ソケット6の
図2とは別方向からの斜視図である。
【0035】
図2及び
図3に示すように、ソケット6は、外側部材61と、第1受け口62と、第2受け口63と、内側部材64と、複数のリブ65と、を備える。本実施の形態において、外側部材61と、第1受け口62と、第2受け口63と、内側部材64と、複数のリブ65とは、連続一体に形成される。ソケット6の材料は、硬質ポリ塩化ビニルである。
【0036】
外側部材61は、筒状である。特に、本実施の形態において、外側部材61は、円筒状である。外側部材61の中心軸A1に直交する面内での外側部材61の外周形状及び内周形状は円形状である。外側部材61の中心軸A1の方向に直交する面内での外周形状及び内周形状は、第1開口611から第2開口612に向かって変化しない。外側部材61は、第1開口611と、第2開口612とを有する。第1開口611及び第2開口612は、外側部材61の中心軸A1の方向の両端部にある。
【0037】
第1開口611は、第1落とし口31bからサイフォン現象により雨水を排水するための本管4の合流部43に流路的に接続される。ここで、「第1開口611が本管4の合流部43に流路的に接続される」とは、本管4の合流部43と第1開口611との間で流体の流出入が生じるように、第1開口611が本管4の合流部43に接続されることをいう。
図1では、第1開口611は、接続管7を介して間接的に、合流部43の分岐口43cに接続されている。
【0038】
第2開口612は、第2落とし口32bからの雨水を合流部43から本管4に流入させる枝管5に流路的に接続される。ここで、「第2開口612が枝管5に流路的に接続される」とは、枝管5と第2開口612との間で流体の流出入が生じるように、第2開口612が枝管5に接続されることをいう。
図1では、第2開口612は、直接的に、枝管5に接続されている。
【0039】
第1受け口62は、ソケット6を本管4の合流部43に接続するために設けられる。第1受け口62は、外側部材61の第1開口611側の端部に設けられる。
図4は、ソケット6の第1開口611側の平面図である。
図4に示すように、第1受け口62は、外側部材61の第1開口611を囲う円筒状である。
図4では、第1受け口62の外径と外側部材61の外径とは等しい。
【0040】
第2受け口63は、ソケット6を枝管5の下流側の端部5bに接続するために設けられる。第2受け口63は、外側部材61の第2開口612側の端部に設けられる。
図5は、ソケット6の第2開口612側の平面図である。
図5に示すように、第2受け口63は、外側部材61の第2開口612を囲う円筒状である。
図5では、第2受け口63の外径と外側部材61の外径とは等しい。
【0041】
図6は、
図4のA-A線の断面図である。
図6は、ソケット6の第1受け口62及び第2受け口63の寸法として、D、d及びlを示す。lは、第1受け口62及び第2受け口63の長さである。Dは、第1受け口62及び第2受け口63の外径[mm]である。dは、第1受け口62及び第2受け口63の内径[mm]である。第1受け口62及び第2受け口63の寸法D1、d及びlは、例えば、JIS K 6739「排水用硬質ポリ塩化ビニル管継手」の規格に沿って設定されてよい。
【0042】
図6に示すように、内側部材64は、外側部材61の内部にあって、第1開口611と第2開口612とを繋ぐ内側流路640を有する。内側流路640のサイズは、第1開口611から第2開口612に向かって大きくなる。内側部材64は、内側部材64と外側部材61との間に第1開口611と第2開口612とを繋ぐ外側流路660が形成されるように、外側部材61の内部にある。外側流路660のサイズは、第1開口611から第2開口612に向かって小さくなる。
【0043】
以下、内側部材64及び関連する構成について更に詳細に説明する。
【0044】
図2及び
図3に示すように、内側部材64は、外側部材61の内部にある。特に、内側部材64の中心軸A2は、外側部材61の中心軸A1と一致している。内側部材64は、外側部材61には接触していない。内側部材64は、内側部材64と外側部材61との間にある複数のリブ65により外側部材61に対して固定されている。
【0045】
複数のリブ65は、内側部材64の中心軸A2に交差する方向に並ぶ一対のリブ65を含む。本実施の形態において、一対のリブ65は、内側部材64の中心軸A2に直交する方向に並ぶ。一対のリブ65は、内側部材64の中心軸A2の方向において、内側部材64の全長にわたる。
【0046】
本実施の形態において、内側部材64は、中空の錐台状である。錐台は、錐体から、この錐体と頂点を共有し相似に縮小した錐体を取り除いて得られる形状である。本実施の形態において、内側部材64は、中空の円錐台状である。内側部材64の中心軸A2に直交する面内での内側部材64の外周形状及び内周形状は円形状である。内側部材64の中心軸A2の方向に直交する面内での外周形状及び内周形状は、第1開口611から第2開口612に向かって大きくなる。
【0047】
内側流路640は、内側部材64の内部空間で規定される。内側流路640は、外側部材61の第1開口611側の開口641と、外側部材61の第2開口612側の開口642とを有する。本実施の形態において、内側部材64は、中空の円錐台状である。そのため、内側流路640は、円錐台状の空間である。
図4及び
図5から理解されるように、内側部材64の中心軸A2に直交する面内での、内側流路640の形状は円形状である。内側部材64の中心軸A2の方向に直交する面内での、内側流路640のサイズは、第1開口611から第2開口612に向かって大きくなる。本実施の形態において、内側流路640の第1開口611側の開口641からの距離に対する内側流路640のサイズの増分は一定である。
【0048】
外側流路660は、内側部材64と外側部材61との間の隙間で規定される。より詳細には、外側流路660は、内側部材64の外周面と外側部材61の内周面との間の隙間で規定される。内側部材64の中心軸A2の方向に直交する面内での外周形状は、第1開口611から第2開口612に向かって大きくなる。外側部材61の中心軸A1の方向に直交する面内での内周形状は、第1開口611から第2開口612に向かって変化しない。よって、内側部材64の中心軸A2の方向に直交する面内での、外側流路660のサイズは、第1開口611から第2開口612に向かって小さくなる。
【0049】
図4及び
図5に示すように、本実施の形態において、内側部材64は、内側部材64と外側部材61との間にある一対のリブ65により外側部材61に対して固定されている。外側流路660は、一対のリブ65により分割される。本実施の形態において、外側流路660は、下側流路661と上側流路662とを含む。
【0050】
下側流路661は、内側部材64の中心軸A2を水平方向に沿わせた場合に内側部材64の下側に位置する。
図4及び
図5から理解されるように、内側部材64の中心軸A2に直交する面内での、下側流路661の形状は円弧状である。内側部材64の中心軸A2の方向に直交する面内での、下側流路661のサイズは、第1開口611から第2開口612に向かって小さくなる。
図6に示すように、下側流路661は、外側部材61の第1開口611側の開口661aと、外側部材61の第2開口612側の開口661bとを有する。本実施の形態において、下側流路661の第1開口611側の開口661bからの距離に対する下側流路661のサイズの増分は一定である。
【0051】
上側流路662は、内側部材64の中心軸A2を水平方向に沿わせた場合に内側部材64の上側に位置する。
図4及び
図5から理解されるように、内側部材64の中心軸A2に直交する面内での、上側流路662の形状は円弧状である。内側部材64の中心軸A2の方向に直交する面内での、上側流路662のサイズは、第1開口611から第2開口612に向かって小さくなる。
図6に示すように、上側流路662は、外側部材61の第1開口611側の開口662aと、外側部材61の第2開口612側の開口662bとを有する。本実施の形態において、上側流路662の第1開口611側の開口662bからの距離に対する上側流路662のサイズの増分は一定である。
【0052】
内側部材64は、内側流路640の第1開口611側の開口641において、サイフォン現象により合流部43から第1開口611から外側部材61に流入する雨水に、内側流路640の第1開口611側の開口641を通過しないように圧力損失を生じさせるように構成される。特に、内側部材64は、内側流路640の第1開口611側の開口641において、サイフォン現象により合流部43から第1開口611から外側部材61に流入する雨水に渦を生じさせることで圧力損失を生じさせるように構成される。これによって、サイフォン現象により合流部43から第1開口611から外側部材61に流入する雨水がソケット6の内側流路640を通過して枝管5側に進入する可能性又はソケット6の内側流路640を通過して枝管5側に進入する量が低減される。つまり、本管4から枝管5への雨水の逆流の可能性を低減でき、本管4の径を変更しなくても枝管5から本管4に雨水を安定的に合流させることができる。
【0053】
内側部材64は、外側流路660の第2開口612側の開口661b,662bにおいて、サイフォン現象により合流部43から第1開口611から外側部材61に流入する雨水に、外側流路660の第2開口612側の開口661b,662bを通過しないように圧力損失を生じさせるように構成される。特に、内側部材64は、外側流路660の第2開口612側の開口661b,662bにおいて、サイフォン現象により合流部43から第1開口611から外側部材61に流入する雨水に渦を生じさせることで圧力損失を生じさせるように構成される。これによって、サイフォン現象により合流部43から第1開口611から外側部材61に流入する雨水がソケット6の内側流路640を通過して枝管5側に進入する可能性又はソケット6の内側流路640を通過して枝管5側に進入する量が低減される。つまり、本管4から枝管5への雨水の逆流の可能性を低減でき、本管4の径を変更しなくても枝管5から本管4に雨水を安定的に合流させることができる。
【0054】
図6は、内側部材64の寸法として、d1、d2及びtを示す。d1は、内側流路640の開口641の直径[mm]である。d2は、内側流路640の開口642の直径[mm]である。tは、内側部材64の厚み[mm]である。内側部材64の厚み[mm]は、内側部材64の中心軸A2に直交する面内での、内側部材64の内周面と外周面との間の距離でもある。
図6において、d3は、外側部材61の内径[mm]である。gは、内側部材64の外側部材61の第2開口612側の端部と外側部材61との間の距離[mm]である。一例として、本管4の径、枝管5の径、配管構造1の設置環境、及び配管構造1の材料の性質等を考慮して、d1,d2,及びtを適宜設定することで、内側流路640の第1開口611側の開口641及び外側流路660の第2開口612側の開口661b,662bにおいて渦を生じさせるように、内側部材64を構成することが可能である。
【0055】
次に、ソケット6の作用について、
図7~
図10を参照して説明する。
【0056】
図7は、ソケット6の作用の第1例の説明図である。第1例では、サイフォン現象により第1落とし口31bからの雨水が本管4内を流れており、本管4内を流れる雨水から分岐した雨水W1が合流部43の分岐口43cに接続された接続管7から枝管5の横管52に向かって進もうとしている。
【0057】
ソケット6は、外側部材61の第1開口611から外側部材61内に進行する雨水W1に対して、内側流路640及び外側流路660(下側流路661及び上側流路662)により流路を制限する。
【0058】
サイフォン現象により第1落とし口31bからの雨水が本管4内を流れる場合、本管4内が雨水W1で満たされている。サイフォン現象により合流部43から第1開口611を経て外側部材61に流入する雨水W1の一部は、内側流路640の開口641に向かい、残りは外側流路640の下側流路661の開口661a及び上側流路662の開口662aに向かう。
【0059】
内側流路640に向かう雨水に関しては、ソケット6の流路の断面が、外側部材61の第1開口611から、内側流路640の開口641まで減少する。流路の断面の急激な変化が渦を引き起こすことは、一般的に原理として知られている。流体における圧損要因は渦と乱流に大別される。ソケット6では、内側流路640の開口641近傍にて流路の断面が減少することで、雨水W1に渦E1が発生し、これによって生じる圧力損失の影響で、雨水W1が内側流路640の開口641を通過する可能性又は雨水W1が内側流路640の開口641を通過する量が低減される。その結果、本管4から枝管5への雨水の逆流の可能性が低減される。特に、雨水W1は、サイフォン現象の影響で、本管4内を比較的速い速度で流れるため、雨水W1の圧力は高く、内側流路640により短時間で急激な流路の断面の変化が生じることになるから、雨水W1の流れを阻害するような渦E1が発生しやすい。
【0060】
外側流路660に向かう雨水に関しては、ソケット6の流路の断面が、外側部材61の第1開口611から、外側流路660の下側流路661及び上側流路662の開口661b,662bまで減少する。ソケット6では、外側流路660の下側流路661及び上側流路662の開口661b,662b近傍にて流路の断面が減少することで、雨水W1に渦E2,E3が発生し、これによって生じる圧力損失の影響で、雨水W1が内側流路640の開口641を通過する可能性又は雨水W1が内側流路640の開口641を通過する量が低減される。その結果、本管4から枝管5への雨水の逆流の可能性が低減される。
【0061】
図8は、ソケット6の作用の第2例の説明図である。第2例では、第2落とし口32bからの雨水W2が枝管5内を流れて、枝管5の横管52から接続管7に向かって進もうとしている。
図8に示す第2例では、雨水W2の量は、雨水W2の水位が内側流路640に到達しない程度に少ない。雨水W2はソケット6の下側流路661を流れるため、ソケット6の流路の断面は下側流路661の開口661bからほとんど変化しない。そのため、雨水W2に、その流れを阻害するような渦は発生しない。雨水W2はソケット6の下側流路661を通過して、枝管5から接続管7を通じて本管4の合流部43に到達できる。ソケット6は、枝管5を流れる雨水を合流部43から本管4に流入させることが可能である。
【0062】
図9は、ソケット6の作用の第3例の説明図である。第3例では、第2落とし口32bからの雨水W3が枝管5内を流れて、枝管5の横管52から接続管7に向かって進もうとしている。
図9に示す第3例では、雨水W3の量が、
図8の雨水W2の量よりも多い。雨水W3の水位は、内側流路640に到達するが上側流路662に到達しない程度である。雨水W3はソケット6の下側流路661及び内側流路640を流れる。内側流路640のサイズは、外側部材61の第1開口611側よりも第2開口612側で大きい。雨水W3の水位では、ソケット6の流路の断面はほとんど変化しない。そのため、雨水W3に、その流れを阻害するような渦は発生しない。雨水W3はソケット6の下側流路661及び内側流路640を通過して、枝管5から接続管7を通じて本管4の合流部43に到達できる。ソケット6は、枝管5を流れる雨水W3を合流部43から本管4に流入させることが可能である。
【0063】
図10は、ソケット6の作用の第4例の説明図である。第4例では、第2落とし口32bからの雨水W4が枝管5内を流れて、枝管5の横管52から接続管7に向かって進もうとしている。
図10に示す第4例では、雨水W4の量が、
図9の雨水W3の量よりも多い。雨水W4の水位は、上側流路662に到達する程度である。雨水W4はソケット6の下側流路661、内側流路640及び上側流路662を流れる。雨水W4の水位では、ソケット6の流路の断面はほとんど変化しない。そのため、雨水W4に、その流れを阻害するような渦は発生しない。雨水W4はソケット6の下側流路661、内側流路640及び上側流路662を通過して、枝管5から接続管7を通じて本管4の合流部43に到達できる。ソケット6は、枝管5を流れる雨水W4を合流部43から本管4に流入させることが可能である。
【0064】
図8~
図10の第2例~第4例に関して、枝管5では、サイフォン現象が発生しないため、雨水W2,W3,W4の圧力は低く、ソケット6により短時間で急激な流路の断面の変化が生じないようになっている。そのため、雨水W2,W3,W4の流れを阻害するような渦が発生しないようになっている。
【0065】
このように、ソケット6は、内側部材64を備えることによって、枝管5を流れる雨水を合流部43から本管4に流入させながらも、サイフォン現象により本管4を流れる雨水が合流部43から枝管5に流入する可能性を低減する。
【0066】
接続管7は、本管4とソケット6との接続に用いられる。
図1の接続管7は、本管4の合流部43の分岐口43cとソケット6の第1受け口62との間に配置される。接続管7は、直管状である。接続管7の管軸に直交する断面は円形状である。接続管7の材料は、硬質ポリ塩化ビニルである。接続管7の寸法、例えば、外形と厚さは、JIS K 6741「硬質ポリ塩化ビニル管」の硬質ポリ塩化ビニル管(一般)の規格に沿って設定されてよい。接続管7は、接続管7の管軸の方向が水平方向に一致するように配置される。
【0067】
[1.2 効果等]
以上述べたソケット6は、第1落とし口31bからサイフォン現象により雨水を排水するための本管4の合流部43に流路的に接続される第1開口611と、第2落とし口32bからの雨水を合流部43から本管4に流入させる枝管5に流路的に接続される第2開口612とを有する筒状の外側部材61と、外側部材61の内部にあって、第1開口611と第2開口612とを繋ぐ内側流路640を有する内側部材64と、を備える。内側流路640のサイズは、第1開口611から第2開口612に向かって大きくなる。この構成は、本管4の径を変更しなくても枝管5から本管4に雨水を安定的に合流させることができる。
【0068】
ソケット6において、内側部材64は、内側部材64と外側部材61との間に第1開口611と第2開口612とを繋ぐ外側流路660が形成されるように、外側部材61の内部にある。外側流路660のサイズは、第1開口611から第2開口612に向かって小さくなる。この構成は、本管4の径を変更しなくても枝管5から本管4に雨水を更に安定的に合流させることができる。
【0069】
ソケット6において、内側部材64は、中空の錐台状である。内側流路640は、内側部材64の内部空間で規定される。外側流路660は、内側部材64と外側部材61との間の隙間で規定される。この構成は、本管4の径を変更しなくても枝管5から本管4に雨水を更に安定的に合流させることができる。
【0070】
ソケット6において、外側流路660は、内側部材64の中心軸A2を水平方向に沿わせた場合に内側部材64の下側に位置する下側流路661を含む。この構成は、枝管5を流れる雨水の量が少なくても枝管5から本管4に雨水を安定的に合流させることができる。
【0071】
ソケット6において、外側流路660は、内側部材64の中心軸A2を水平方向に沿わせた場合に内側部材64の上側に位置する上側流路662を含む。この構成は、枝管5を流れる雨水の量が多くなっても枝管5から雨水が溢れる可能性を低減できる。
【0072】
ソケット6において、内側部材64は、外側流路660の第2開口612側の開口661b,662bにおいて、サイフォン現象により合流部43から第1開口611から外側部材61に流入する雨水に、外側流路660の第2開口612側の開口661b,662bを通過しないように圧力損失を生じさせるように、構成される。この構成は、本管4から枝管5への雨水の逆流の可能性を低減でき、本管4の径を変更しなくても枝管5から本管4に雨水を安定的に合流させることができる。
【0073】
ソケット6において、内側部材64は、外側流路660の第2開口612側の開口661b,662bにおいて、サイフォン現象により合流部43から第1開口611から外側部材61に流入する雨水に渦を生じさせることで圧力損失を生じさせるように、構成される。この構成は、本管4から枝管5への雨水の逆流の可能性を低減でき、本管4の径を変更しなくても枝管5から本管4に雨水を安定的に合流させることができる。
【0074】
ソケット6において、内側部材64は、内側流路640の第1開口611側の開口641において、サイフォン現象により合流部43から第1開口611から外側部材61に流入する雨水に、内側流路640の第1開口611側の開口641を通過しないように圧力損失を生じさせるように、構成される。この構成は、本管4から枝管5への雨水の逆流の可能性を低減でき、本管4の径を変更しなくても枝管5から本管4に雨水を安定的に合流させることができる。
【0075】
ソケット6において、内側部材64は、内側流路640の第1開口611側の開口641において、サイフォン現象により合流部43から第1開口611から外側部材61に流入する雨水に渦を生じさせることで圧力損失を生じさせるように、構成される。この構成は、本管4から枝管5への雨水の逆流の可能性を低減でき、本管4の径を変更しなくても枝管5から本管4に雨水を安定的に合流させることができる。
【0076】
ソケット6において、外側部材61と内側部材64との間に外側部材61に対して内側部材64を固定する複数のリブ65を、更に備える。この構成は、外側部材61内を雨水が通過する際に内側部材64が破損する可能性を低減できる。
【0077】
ソケット6において、複数のリブ65は、内側部材64の中心軸A2に交差する方向に並ぶ一対のリブ65を含む。この構成は、外側部材61内を雨水が通過する際に内側部材64が破損する可能性を低減できる。
【0078】
以上述べた配管構造1は、上記のソケット6と、第1落とし口31bに配置されるサイフォン現象発生用のドレン9と、本管4と、枝管5とを備える。この構成は、本管4の径を変更しなくても枝管5から本管4に雨水を安定的に合流させることができる。
【0079】
[2.変形例]
本開示の実施の形態は、上記実施の形態に限定されない。上記実施の形態は、本開示の課題を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。以下に、上記実施の形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0080】
一変形例において、内側部材64の形状及び大きさは、上記の実施の形態と異なっていてよい。例えば、上記実施の形態とは異なり、内側部材64は、中空の角錐台状であってよい。内側部材64の中心軸A2に直交する面内での、内側部材64又は内側流路640の形状は、円形状ではなく、多角形状であってよい。上記の実施の形態では、内側部材64の中心軸A2を含む平面での内側部材64の断面において、内側部材64の外面及び内面は直線状であるが、変形例においては、曲線状又は折線状であってよい。
【0081】
一変形例において、外側流路660は、下側流路661又は上側流路662に限定されない。外側流路660は、内側部材64と外側部材61との間において第1開口611と第2開口612とを繋ぐように構成されていればよい。外側流路660は、必ずしも下側流路661と上側流路662との両方を備える必要はない。外側流路660は、下側流路661のみで構成されてよい。外側流路660は必須ではない。例えば、内側部材64は、内側部材64と外側部材61との間に第1開口611と第2開口612とを繋ぐ外側流路660が形成されないように、外側部材61の内部にあってもよい。一例として、内側部材64は、外側部材61の内周面から突出するように設けられてよい。
【0082】
一変形例において、複数のリブ65は、
図4及び
図5のような一対の複数のリブ65に限定されない。複数のリブ65の数、形状、及び配置は、外側部材61と内側部材64との間にあって外側部材61に対して内側部材64を固定することができれば、特に限定されない。ソケット6は、複数のリブ65の代わりに単一のリブ65を備えてもよい。
【0083】
一変形例において、内側部材64は、複数の内側流路640を備えてよい。一変形例において、ソケット6は、複数の内側部材64を備えてよい。ソケット6は、1以上の内側流路640を有する1以上の内側部材64を備えてよい。ソケット6は、内側部材64によって、枝管5を流れる雨水を合流部43から本管4に流入させながらも、サイフォン現象により本管4を流れる雨水が合流部43から枝管5に流入する可能性を低減するように構成されてよい。
【0084】
一変形例において、外側部材61と、第1受け口62と、第2受け口63と、内側部材64と、複数のリブ65とは、連続一体に形成されていなくてもよい。特に、外側部材61と内側部材64とは別体であってよい。外側部材61と内側部材64とは組み立て等により機械的に結合されてよい。外側部材61の材料と内側部材64の材料とは異なっていてもよい。
【0085】
一変形例において、本管4の材料、枝管5の材料、ソケット6の材料及び接続管7の材料の少なくとも一つは、必ずしも硬質ポリ塩化ビニルでなくてもよい。本管4の材料、枝管5の材料、ソケット6の材料及び接続管7の材料は、配管構造1に求められる要件にしたがって決定されてよく、例えば、ポリエチレン等の合成樹脂であってもよい。
【0086】
一変形例において、ソケット6のd,D及びlは、必ずしもJIS K 6741で規定に沿って設定されなくてもよい。
【0087】
一変形例において、配管構造1は、必ずしも第1軒樋31を備えていなくてもよい。例えば、建物10がバルコニーのような落とし口を備える構造を有する場合には、本管4が建物10の落とし口に接続されてよい。
【0088】
一変形例において、配管構造1は、必ずしも第2軒樋32を備えていなくてもよい。例えば、建物10がバルコニーのような落とし口を備える構造を有する場合には、枝管5が建物10の落とし口に接続されてよい。配管構造1は、複数の第2落とし口2bに対応してよい。配管構造1では、複数の枝管が本管の1以上の合流部に接続されてよい。この場合、複数の枝管の少なくとも一つと本管との間に、ソケット6が配置されてよい。
【0089】
一変形例において、本管4は、上記の実施の形態の例と異なる構成を有してよい。本管4は、第1竪樋41、第2竪樋42及び合流部43に加えて、その他の呼び樋等の配管部材を有し得る。本管4において、第1竪樋41の数、第2竪樋42の数及び合流部43の数も特に限定されない。
【0090】
一変形例において、枝管5は、上記の実施の形態の例と異なる構成を有してよい。枝管5は、縦管51、横管52及びエルボ53に加えて、その他の配管部材を有し得る。枝管5において、縦管51の数、横管52の数及びエルボ53の数も特に限定されない。
【0091】
一変形例において、接続管7は、上記の実施の形態の例と異なる構成を有してよい。接続管7は、場合によっては、省略され得る。
【0092】
一変形例において、配管構造1は、ソケット6に加えて、又は、ソケット6に代えて、ソケット6と同様の機能を有する配管部材を備えることができる。このような配管部材は、第1落とし口31bからサイフォン現象により雨水を排水するための本管4と、第2落とし口32bからの雨水を本管4の合流部43から本管4に流入させる枝管5とを備える配管構造1の一部を構成する。配管部材は、枝管5の下流側を向いた第1開口及び枝管5の上流側を向いた第2開口を有する筒状の外側部材と、外側部材の内部にあって、第1開口と第2開口とを繋ぐ内側流路を有する内側部材とを備える。内側流路のサイズは、第1開口から第2開口に向かって大きくなる。配管部材の外側部材及び内側部材の構成は、ソケット6の外側部材61及び内側部材64と同様の構成であってよい。例えば、配管部材は、合流部43のようなチーズ管であってよい。この場合、配管部材の外側部材は、チーズ管の一部、特に、チーズ管において縦管から分岐する横管にあたる部分である。例えば、配管部材は、接続管7又は横管52であってよい。この場合、配管部材の外側部材は、接続管7又は横管52の一部であってよい。このような配管部材を用いることによっても、本管4の径を変更しなくても枝管5から本管4に雨水を安定的に合流させることができる。
【0093】
[3.態様]
上記実施の形態及び変形例から明らかなように、本開示は、下記の態様を含む。以下では、実施の形態との対応関係を明示するためだけに、符号を括弧付きで付している。なお、文章の見やすさを考慮して2回目以降の括弧付きの符号の記載を省略する場合がある。
【0094】
第1の態様は、ソケット(6)であって、第1落とし口(31b)からサイフォン現象により雨水を排水するための本管(4)の合流部(43)に流路的に接続される第1開口(611)と、第2落とし口(32b)からの雨水を前記合流部(43)から前記本管(4)に流入させる枝管(5)に流路的に接続される第2開口(612)とを有する筒状の外側部材(61)と、前記外側部材(61)の内部にあって、前記第1開口(611)と前記第2開口(612)とを繋ぐ内側流路(640)を有する内側部材(64)と、を備える。前記内側流路(640)のサイズは、前記第1開口(611)から前記第2開口(612)に向かって大きくなる。この態様は、本管(4)の径を変更しなくても枝管(5)から本管(4)に雨水を安定的に合流させることができる。
【0095】
第2の態様は、第1の態様に基づくソケット(6)である。第2の態様において、前記内側部材(64)は、前記内側部材(64)と前記外側部材(61)との間に前記第1開口(611)と前記第2開口(612)とを繋ぐ外側流路(660)が形成されるように、前記外側部材(61)の内部にある。前記外側流路(660)のサイズは、前記第1開口(611)から前記第2開口(612)に向かって小さくなる。この態様は、本管(4)の径を変更しなくても枝管(5)から本管(4)に雨水を更に安定的に合流させることができる。
【0096】
第3の態様は、第2の態様に基づくソケット(6)である。第3の態様において、前記内側部材(64)は、中空の錐台状である。前記内側流路(640)は、前記内側部材(64)の内部空間で規定される。前記外側流路(660)は、前記内側部材(64)と前記外側部材(61)との間の隙間で規定される。この態様は、本管(4)の径を変更しなくても枝管(5)から本管(4)に雨水を更に安定的に合流させることができる。
【0097】
第4の態様は、第2又は第3の態様に基づくソケット(6)である。第4の態様において、前記外側流路(660)は、前記内側部材(64)の中心軸(A2)を水平方向に沿わせた場合に前記内側部材(64)の下側に位置する下側流路(661)を含む。この態様は、枝管(5)を流れる雨水の量が少なくても枝管(5)から本管(4)に雨水を安定的に合流させることができる。
【0098】
第5の態様は、第4の態様に基づくソケット(6)である。第5の態様において、前記外側流路(660)は、前記内側部材(64)の中心軸(A2)を水平方向に沿わせた場合に前記内側部材(64)の上側に位置する上側流路(662)を含む。この態様は、枝管(5)を流れる雨水の量が多くなっても枝管(5)から雨水が溢れる可能性を低減できる。
【0099】
第6の態様は、第2~第5の態様のいずれか一つに基づくソケット(6)である。第6の態様において、前記内側部材(64)は、前記外側流路(660)の前記第2開口(612)側の開口(661b,662b)において、サイフォン現象により前記合流部(43)から前記第1開口(611)を経て前記外側部材(61)に流入する雨水に、前記外側流路(660)の前記第2開口(612)側の開口(661b,662b)を通過しないように圧力損失を生じさせるように、構成される。この態様は、本管(4)から枝管(5)への雨水の逆流の可能性を低減でき、本管(4)の径を変更しなくても枝管(5)から本管(4)に雨水を安定的に合流させることができる。
【0100】
第7の態様は、第6の態様に基づくソケット(6)である。第7の態様において、前記内側部材(64)は、前記外側流路(660)の前記第2開口(612)側の開口(661b,662b)において、サイフォン現象により前記合流部(43)から前記第1開口(611)を経て前記外側部材(61)に流入する雨水に渦を生じさせることで圧力損失を生じさせるように、構成される。この態様は、本管(4)から枝管(5)への雨水の逆流の可能性を低減でき、本管(4)の径を変更しなくても枝管(5)から本管(4)に雨水を安定的に合流させることができる。
【0101】
第8の態様は、第1~第7の態様のいずれか一つに基づくソケット(6)である。第8の態様において、前記内側部材(64)は、前記内側流路(640)の前記第1開口(611)側の開口(641)において、サイフォン現象により前記合流部(43)から前記第1開口(611)を経て前記外側部材(61)に流入する雨水に、前記内側流路(640)の前記第1開口(611)側の開口(641)を通過しないように圧力損失を生じさせるように、構成される。この態様は、本管(4)から枝管(5)への雨水の逆流の可能性を低減でき、本管(4)の径を変更しなくても枝管(5)から本管(4)に雨水を安定的に合流させることができる。
【0102】
第9の態様は、第8の態様に基づくソケット(6)である。第9の態様において、前記内側部材(64)は、前記内側流路(640)の前記第1開口(611)側の開口(641)において、サイフォン現象により前記合流部(43)から前記第1開口(611)を経て前記外側部材(61)に流入する雨水に渦を生じさせることで圧力損失を生じさせるように、構成される。この態様は、本管(4)から枝管(5)への雨水の逆流の可能性を低減でき、本管(4)の径を変更しなくても枝管(5)から本管(4)に雨水を安定的に合流させることができる。
【0103】
第10の態様は、第1~第9の態様のいずれか一つに基づくソケット(6)である。第10の態様において、前記外側部材(61)と前記内側部材(64)との間に前記外側部材(61)に対して前記内側部材(64)を固定する複数のリブ(65)を、更に備える。この態様は、外側部材(61)内を雨水が通過する際に内側部材(64)が破損する可能性を低減できる。
【0104】
第11の態様は、第10の態様に基づくソケット(6)である。第11の態様において、前記複数のリブ(65)は、前記内側部材(64)の中心軸(A2)に交差する方向に並ぶ一対のリブ(65)を含む。この態様は、外側部材(61)内を雨水が通過する際に内側部材(64)が破損する可能性を低減できる。
【0105】
第12の態様は、配管構造(1)であって、第1~第11の態様のいずれか一つに基づくソケット(6)と、前記第1落とし口(31b)に配置されるサイフォン現象発生用のドレン(9)と、前記本管(4)と、前記枝管(5)とを備える。この態様は、本管(4)の径を変更しなくても枝管(5)から本管(4)に雨水を安定的に合流させることができる。
【0106】
第13の態様は、配管部材(6)であって、第1落とし口(31b)からサイフォン現象により雨水を排水するための本管(4)と、第2落とし口(32b)からの雨水を前記本管(4)の合流部(43)から前記本管(4)に流入させる枝管(5)とを備える配管構造(1)の一部を構成する。前記配管部材(6)は、前記枝管(5)の下流側を向いた第1開口(611)及び前記枝管(5)の上流側を向いた第2開口(612)を有する筒状の外側部材(61)と、前記外側部材(61)の内部にあって、前記第1開口(611)と前記第2開口(612)とを繋ぐ内側流路(640)を有する内側部材(64)とを備える。前記内側流路(640)のサイズは、前記第1開口(611)から前記第2開口(612)に向かって大きくなる。この態様は、本管(4)の径を変更しなくても枝管(5)から本管(4)に雨水を安定的に合流させることができる。
【0107】
上記の第2~第11の態様は、第13の態様に組み合わせられてもよい。上記の第2~第11の態様は任意の要素である。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本開示は、ソケット、配管構造及び配管部材に適用可能である。具体的には、本管に枝管を接続するためのソケット、本管と枝管とを備える配管構造、及び、本管と枝管とを備える配管構造に利用される配管部材に、本開示は適用可能である。
【符号の説明】
【0109】
1 配管構造
31b 第1落とし口
32b 第2落とし口
4 本管
43 合流部
5 枝管
6 ソケット
61 外側部材
611 第1開口
612 第2開口
64 内側部材
640 内側流路
641 開口
65 リブ
660 外側流路
661 下側流路
661b 開口
662 上側流路
662b 開口
A2 中心軸