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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023077878
(43)【公開日】2023-06-06
(54)【発明の名称】フッ素ポリマー分散用添加剤
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/04 20060101AFI20230530BHJP
   C08F 20/10 20060101ALI20230530BHJP
   C08F 8/00 20060101ALI20230530BHJP
   C08F 20/12 20060101ALI20230530BHJP
   C08L 33/04 20060101ALI20230530BHJP
   C08L 27/12 20060101ALI20230530BHJP
【FI】
C08F290/04
C08F20/10
C08F8/00
C08F20/12
C08L33/04
C08L27/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021191369
(22)【出願日】2021-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】000162076
【氏名又は名称】共栄社化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002251
【氏名又は名称】弁理士法人眞久特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鷲見 元
(72)【発明者】
【氏名】齊ノ内 祐介
(72)【発明者】
【氏名】高木 雅弘
【テーマコード(参考)】
4J002
4J100
4J127
【Fターム(参考)】
4J002BD121
4J002BD151
4J002BG022
4J002BG082
4J002GD00
4J002GH00
4J100AL03P
4J100CA01
4J100CA03
4J100CA31
4J100DA01
4J100FA02
4J100FA03
4J100FA19
4J100HA62
4J100HC51
4J100HC70
4J100HE05
4J100JA15
4J127AA04
4J127BB021
4J127BB101
4J127BB221
4J127BC021
4J127BC151
4J127BD061
4J127BE111
4J127BE11X
4J127BE511
4J127BE51Y
4J127BF661
4J127BF66X
4J127BG271
4J127BG27Z
4J127CB131
4J127CB152
4J127CC062
4J127EA05
4J127FA07
(57)【要約】
【課題】フッ素ポリマーを含む非水系組成物やコーティング剤に添加されてフッ素ポリマーを非水系液状媒体に十分に分散させた状態を長期間維持させ、この非水系組成物やコーティング剤の硬化塗膜を燃焼・分解しても有害なパーフルオロアルキル含有残留物を生成させず、その分散性・沈降防止性によって塗膜表面でのフッ素ポリマーの分散性及び配向性によって撥水・撥油・防汚性を発現させるフッ素ポリマー分散用添加剤を提供する。
【解決手段】フッ素ポリマー分散用添加剤は、CH2=C(-R1)-CO-O-R2-RFで表されるフッ素含有(メタ)アクリレートモノマー(a)の5~40部と、(メタ)アクリレートモノマー(b)の20~45部と、溶解性パラメータ値を9.0~10.3とし重量平均分子量を3000~100000とする非重合性繰返構造末端(メタ)アクリロイル基含有マクロモノマー(c)15~75部とが共重合し溶解性パラメータ値を8.5~12.0とし重量平均分子量を10000~1000000とする共重合体を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素含有(メタ)アクリレートモノマー(a)と、(メタ)アクリレートモノマー(b)と、繰返構造末端(メタ)アクリロイル基含有マクロモノマー(c)との合計100重量部に対して、下記化学式(1)
CH=C(-R)-CO-O-R-R・・・(1)
(式(1)中、-Rは水素原子又はメチル基、-R-は-(CH-で示されnを1~12とする基、-Rは炭素数2~6で直鎖状、分岐鎖状、及び/又は脂環状のパーフルオロアルキル基)で表される前記フッ素含有(メタ)アクリレートモノマー(a)の5重量部以上40重量部未満と、前記(メタ)アクリレートモノマー(b)の20重量部以上45重量部未満と、Fedors法で求めた溶解性パラメータ値を9.0~10.3とし重量平均分子量を3000~100000とする前記繰返構造末端(メタ)アクリロイル基含有マクロモノマー(c)の15重量部以上75重量部以下とが、夫々の(メタ)アクリロイル基で共重合しているもので、Fedors法で求めた溶解性パラメータ値を8.5~12.0とし重量平均分子量を10000~1000000とする共重合体を、含むことを特徴とするフッ素ポリマー分散用添加剤。
【請求項2】
前記共重合体が、前記夫々の(メタ)アクリロイル基で共重合してなる主鎖部と、その途中から延びる前記繰返構造を有した側鎖部とを有するグラフトポリマーであることを特徴とする請求項1に記載のフッ素ポリマー分散用添加剤。
【請求項3】
前記フッ素含有(メタ)アクリレートモノマー(a)が、パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート及びパーフルオロヘキシルエチル(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも何れかであり、
前記(メタ)アクリレートモノマー(b)が、炭素数1~12のアルキル基を含有するアルキル(メタ)アクリレート、及びアミノ基含有(メタ)アクリルモノマーから選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載のフッ素ポリマー分散用添加剤。
【請求項4】
前記繰返構造末端(メタ)アクリロイル基含有マクロモノマー(c)が、ポリアルキル(メタ)アクリレートマクロモノマー、ポリアルケニル(メタ)アクリレートマクロモノマー、ポリエステルマクロモノマー、及びポリスチレンマクロモノマーから選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載のフッ素ポリマー分散用添加剤。
【請求項5】
前記共重合体が、前記フッ素含有(メタ)アクリレートモノマー(a)、前記(メタ)アクリレートモノマー(b)、及び前記繰返構造末端(メタ)アクリロイル基含有マクロモノマー(c)と、それらの合計100重量部に対して最大でも10重量部を超えないで、(メタ)アクリレートモノマー、(メタ)アクリルアミドモノマー、芳香族ビニルモノマー、直鎖状、又は環状の炭素数1~12のアルキルを有するアルキルビニルエーテルモノマー、ビニルエステルモノマー、アミノ基含有(メタ)アクリル系モノマー、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系モノマー、及びノニオン性アクリル系モノマーから選ばれる希釈モノマーとで共重合した共重合体であることを特徴とする請求項1に記載のフッ素ポリマー分散用添加剤。
【請求項6】
フッ素ポリマーと非水系液状媒体とを含有するフッ素ポリマー分散組成物中で、前記フッ素ポリマーを非水系液状媒体に沈降させないように分散させるためのものであることを特徴とする請求項1に記載のフッ素ポリマー分散用添加剤。
【請求項7】
フッ素ポリマーと非水系液状媒体とを含有したフッ素ポリマー分散組成物と、コーティング成分とを含むコーティング剤中で、前記フッ素ポリマーを非水系液状媒体及び/又は前記コーティング成分に沈降させないように分散させるためのものであることを特徴とする請求項1に記載のフッ素ポリマー分散用添加剤。
【請求項8】
請求項1~7の何れかに記載のフッ素ポリマー分散用添加剤と、それにより非水系液状媒体の中で分散されたフッ素ポリマーとを含んでいることを特徴とするフッ素ポリマー分散組成物。
【請求項9】
前記フッ素ポリマーがフッ素樹脂粉体又はフッ素樹脂オイルであることを特徴とする請求項8に記載のフッ素ポリマー分散組成物。
【請求項10】
請求項8~9の何れかに記載のフッ素ポリマー分散組成物と、コーティング成分とを含むことを特徴とするコーティング剤。
【請求項11】
前記フッ素ポリマー分散用添加剤によって、前記フッ素ポリマーが沈降しないように分散されていることを特徴とする請求項10に記載のコーティング剤。
【請求項12】
請求項10~11の何れかに記載のコーティング剤が塗装されて硬化して形成されていることを特徴とする塗装膜。
【請求項13】
前記フッ素ポリマー分散用添加剤によって、前記フッ素ポリマーが分散され塗装膜表面へ配向されていることにより、撥水性、撥油性、及び防汚性の少なくとも何れかを有することを特徴とする請求項12に記載の塗装膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素ポリマーを含む非水系組成物やコーティング剤に添加されて配合されフッ素ポリマーを非水系液状媒体中で均一に分散安定化させることによる高い沈降防止性と、フッ素ポリマーを均一に分散した非水系組成物やコーティング剤の硬化後の塗膜表面へフッ素ポリマーを効率的に配向させ優れた撥水性・撥油性・防汚性を発現させるフッ素ポリマー分散用添加剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フッ素ポリマーであるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフッ素ポリマー粉末やフッ素系オイルなどのフッ素ポリマーオイル(PFPE)は、フッ素ポリマーの持つ表面エネルギーが低く撥水性、撥油性であることと、比重が大きいことから、有機溶剤のような非水系液状媒体中で分散が非常に困難であった。
【0003】
そこで従来、フッ素ポリマーの分散剤として、パーフルオロオクチル基等の炭素数が8以上の長鎖パーフルオロアルキル基を有する化合物が使用されていた。
【0004】
しかし、近年、炭素数が8以上の長鎖パーフルオロアルキル基を有する化合物は、燃焼等により酸化されて分解され、例えばパーフルオロオクチル基からパーフルオロオクチル酸(PFOA)やパーフルオロオクチルスルフォン酸(PFOS)等の長鎖パーフルオロアルキル含有残留物を生成する可能性があることが明らかになった。
【0005】
これらPFOAやPFOSは、長鎖パーフルオロアルキル基の反応性が乏しいため、自然環境下で分解し難く、また生体内で代謝され難いことから、環境への残留性や、生体への蓄積性及び有毒性が懸念されており、各国で使用が規制されている。そのため、炭素数が8以上の長鎖パーフルオロアルキル基を有する化合物に代えて、フッ素ポリマーの分散剤に用いることができ、分解してもPFOA、PFOS等を生成しない化合物が、用いられるようになってきた。
【0006】
その中で、炭素数が8以上のパーフルオロアルキル基を有する化合物に代わる分散剤として、例えば、特許文献1に、炭素数8以下のパーフルオロアルキル基を有するフッ素系脂肪族ポリマーエステルを含むフッ素系ポリマー微粒子分散組成物が開示され、特許文献2に、炭素数が6以下のパーフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリロイル基含有フッ素化合物とポリオキシアルキレン鎖含有エチレン性不飽和単量体との共重合体からなるフッ素ポリマー粒子用分散剤が開示され、特許文献3に、分岐鎖状のパーフルオロアルケニル基を有する含フッ素オリゴマーを含むPTFE分散剤が開示されている。これらの分散剤を用いた場合に、フッ素ポリマーは、分散性を有していても、分散安定性が不十分である。特許文献4に、炭素数6以下のパーフルオロアルキル基を有し、マクロモノマーを含むフッ素系ポリマー用分散剤が開示されている。これらの分散剤を用いた場合に、フッ素ポリマーは分散安定性を有していても、沈降防止性が不十分であり、フッ素ポリマーを硬化塗膜表面へ効果的に配向させ、撥水撥油性を得るには不十分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003-213062号公報
【特許文献2】特開2010-090338号公報
【特許文献3】特開2011-074129号公報
【特許文献4】特開2015-110697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、フッ素ポリマーを含む非水系組成物やコーティング剤に添加されてフッ素ポリマーを非水系液状媒体に十分に分散させる分散性に優れ、分散状態を長期間維持させる沈降防止性に優れ、パーフルオロオクチル基等のような炭素数が8以上のパーフルオロアルキル基を有さず、この非水系組成物やコーティング剤の硬化によって形成される塗膜を燃焼等で酸化・分解しても有害なパーフルオロアルキル含有残留物を生成させず、その分散性・沈降防止性によって塗膜表面でのフッ素ポリマーの均一な分散性及び高い配向性によって撥水・撥油・防汚性を発現させるフッ素ポリマー分散用添加剤、それを含むフッ素ポリマー分散組成物及びコーティング剤、並びにそれの塗装膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するためになされたフッ素ポリマー分散用添加剤は、フッ素含有(メタ)アクリレートモノマー(a)と、(メタ)アクリレートモノマー(b)と、繰返構造末端(メタ)アクリロイル基含有マクロモノマー(c)との合計100重量部に対して、下記化学式(1)
CH=C(-R)-CO-O-R-R・・・(1)
(式(1)中、-Rは水素原子又はメチル基、-R-は-(CH-で示されnを1~12とする基、-Rは炭素数2~6で直鎖状、分岐鎖状、及び/又は脂環状のパーフルオロアルキル基)で表される前記フッ素含有(メタ)アクリレートモノマー(a)の5重量部以上40重量部未満と、前記(メタ)アクリレートモノマー(b)の20重量部以上45重量部未満と、Fedors法で求めた溶解性パラメータ値を9.0~10.3とし重量平均分子量を3000~100000とする前記繰返構造末端(メタ)アクリロイル基含有マクロモノマー(c)の15重量部以上75重量部以下とが、夫々の(メタ)アクリロイル基で共重合しているもので、Fedors法で求めた溶解性パラメータ値を8.5~12.0とし重量平均分子量を10000~1000000とする共重合体を、含むというものである。
【0010】
このフッ素ポリマー分散用添加剤は、前記共重合体が、前記夫々の(メタ)アクリロイル基で共重合してなる主鎖部と、その途中から延びる前記繰返構造を有した側鎖部とを有するグラフトポリマーであるというものであってもよい。
【0011】
このフッ素ポリマー分散用添加剤は、例えば、前記フッ素含有(メタ)アクリレートモノマー(a)が、パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート及びパーフルオロヘキシルエチル(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも何れかであり、前記(メタ)アクリレートモノマー(b)が、炭素数1~12のアルキル基を含有するアルキル(メタ)アクリレート、及びアミノ基含有(メタ)アクリルモノマーから選ばれる少なくとも一種であると、好ましい。
【0012】
このフッ素ポリマー分散用添加剤は、例えば、前記繰返構造末端(メタ)アクリロイル基含有マクロモノマー(c)が、ポリアルキル(メタ)アクリレートマクロモノマー、ポリアルケニル(メタ)アクリレートマクロモノマー、ポリエステルマクロモノマー、及びポリスチレンマクロモノマーから選ばれる少なくとも一種であると、好ましい。
【0013】
このフッ素ポリマー分散用添加剤は、前記共重合体が、前記フッ素含有(メタ)アクリレートモノマー(a)、前記(メタ)アクリレートモノマー(b)、及び前記繰返構造末端(メタ)アクリロイル基含有マクロモノマー(c)と、それらの合計100重量部に対して最大でも10重量部を超えないで、(メタ)アクリレートモノマー、(メタ)アクリルアミドモノマー、芳香族ビニルモノマー、直鎖状、又は環状の炭素数1~12のアルキルを有するアルキルビニルエーテルモノマー、ビニルエステルモノマー、アミノ基含有(メタ)アクリル系モノマー、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系モノマー、及びノニオン性アクリル系モノマーから選ばれる希釈モノマーとで共重合した共重合体であってもよい。
【0014】
このフッ素ポリマー分散用添加剤は、フッ素ポリマーと非水系液状媒体とを含有するフッ素ポリマー分散組成物中で、前記フッ素ポリマーを非水系液状媒体に沈降させないように分散させるためのものである。
【0015】
また、このフッ素ポリマー分散用添加剤は、フッ素ポリマーと非水系液状媒体とを含有したフッ素ポリマー分散組成物と、コーティング成分とを含むコーティング剤中で、前記フッ素ポリマーを非水系液状媒体及び/又は前記コーティング成分に沈降させないように分散させるためのものである。
【0016】
前記の目的を達成するためになされたフッ素ポリマー分散組成物は、このフッ素ポリマー分散用添加剤と、それにより非水系液状媒体の中で分散されたフッ素ポリマーとを含んでいる。
【0017】
このフッ素ポリマー分散組成物は、例えば前記フッ素ポリマーがフッ素樹脂粉体又はフッ素樹脂オイルであるというものである。
【0018】
前記の目的を達成するためになされたコーティング剤は、フッ素ポリマー分散組成物と、コーティング成分とを含んでいるものである。
【0019】
このコーティング剤は、フッ素ポリマー分散用添加剤によって、前記フッ素ポリマーが沈降しないように分散されているというものである。
【0020】
前記の目的を達成するためになされた塗装膜は、このコーティング剤が塗装されて硬化して形成されているというものである。
【0021】
この塗装膜は、フッ素ポリマー分散用添加剤によって、前記フッ素ポリマーが分散され塗装膜表面へ配向されていることにより、撥水性、撥油性、及び防汚性の少なくとも何れかを有しているというものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明のフッ素ポリマー分散用添加剤は、炭素数2~6のパーフルオロアルキル基しか有しないグラフトポリマーのような共重合体によって、非水系組成物やコーティング剤に含まれるフッ素ポリマーを非水系液状媒体分散させることができる。このような共重合体が、燃焼等で酸化されてもPFOAやPFOS等のような有害で残留性の高い長鎖パーフルオロアルキル含有残留物を生成しないことから、このフッ素ポリマー分散用添加剤は、環境に対し負荷をかけず、人体や動植物に対しても安全である。
【0023】
フッ素ポリマー分散用添加剤は、非水系組成物中でフッ素ポリマー粉末又はフッ素系オイルと共に非水系液状媒体に含有させれば、フッ素ポリマー粉末又はフッ素系オイルを非水系液状媒体中に速やかに均一に分散させつつ、沈降させることなく、長期間分散状態を維持させることができる。
【0024】
フッ素ポリマー分散組成物とコーティング成分とを含むコーティング剤は、フッ素ポリマー分散組成物が優れたフッ素ポリマー分散性と分散安定性とを有するので、用時に、頻繁に撹拌したり振盪したりする必要がない。
【0025】
フッ素ポリマー分散組成物とコーティング成分とを含むコーティング剤を塗装したとき、フッ素ポリマー分散組成物とりわけフッ素ポリマー分散用添加剤のために、フッ素ポリマーやコーティング成分を凝集させないので、塗装むらや色分かれを生じない。
【0026】
さらに、そのコーティング剤が基材に塗装されて硬化して形成されている塗装膜は、均質であり、綺麗で平滑な仕上がりとなっており、基材の外観を美麗にする。
【0027】
さらに、そのコーティング剤が基材に塗装されて硬化して形成されている塗装膜は、撥水・撥油・防汚性を発現する。中でも撥水性及び撥油性の両方に優れていると防汚性にも優れコーティング性能が向上する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を実施するための好ましい形態について、詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。
【0029】
本発明のフッ素ポリマー分散用添加剤の一例は、フッ素含有(メタ)アクリレートモノマー(a)、(メタ)アクリレートモノマー(b)、及びマクロモノマー繰返構造の末端に(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマー(c)がそれぞれの(メタ)アクリロイル基で共重合した主鎖ポリマー部と、マクロモノマー(c)に由来するマクロモノマー繰返構造が主鎖ポリマー部から伸びた側鎖部とを有するフッ素含有(メタ)アクリル系グラフトポリマーを、フッ素ポリマーの分散のための有効成分として含むというものである。
【0030】
このようなフッ素含有(メタ)アクリル系グラフトポリマーは、各モノマー(a)(b)(c)の合計100質量部に対し、主鎖ポリマー部を成すフッ素含有(メタ)アクリレートモノマー(a)の5重量部以上40重量部未満と、(メタ)アクリレートモノマー(b)の20重量部以上45重量部未満と、末端に(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマー(c)の15重量部以上75重量部以下と共に、共重合したものであることが好ましい。
【0031】
末端に(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマー(c)が15重量部未満である場合、フッ素ポリマーの分散性及び分散安定性が悪くなる。
【0032】
一方、末端に(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマー(c)が75重量部を超える場合、グラフトポリマーの反応性が悪くなり、その生成が困難となる。
【0033】
フッ素含有(メタ)アクリル系グラフトポリマーは、ランダム共重合されていてもよく、ブロック共重合されていてもよい。
【0034】
フッ素含有(メタ)アクリル系グラフトポリマーは、フッ素含有(メタ)アクリレートモノマー(a)に由来する繰返単位と、(メタ)アクリレートモノマー(b)に由来する繰返単位と、末端に(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマー(c)に由来する繰返単位を有している。フッ素含有(メタ)アクリレートモノマー(a)及び(メタ)アクリレートモノマー(b)の各(メタ)アクリロイル基と、末端に(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマー(c)とが、共重合して形成している。
【0035】
フッ素含有(メタ)アクリル系グラフトポリマーの重量平均分子量は、10000~1000000であることが好ましい。その重量平均分子量が10000未満の場合、フッ素ポリマーの分散安定性が低下してしまう恐れがある。一方、その重量平均分子量が1000000を超える場合、フッ素ポリマー分散組成物及びそれを含むコーティング剤は、その粘度が高くなりすぎるために、取り扱いが困難になる。重量平均分子量が、20000~200000であると一層好ましく、40000~150000であるとなお一層好ましい。
【0036】
溶解性パラメータ値は、分散剤中の有効成分である重合体の極性を表す方法として用いられる。溶解性パラメータ値は分子構造から推算でき、いろいろな方法が提案されている。その中で、Fedors法による理論溶解性パラメータ値は、重合体の密度パラメータ値が不要なため比較的簡単に求められることからよく用いられている。
【0037】
Fedorsの理論溶解性パラメータ値は、以下の数式(1)から求めることができる。
【数1】
(数式(1)中Δei、Δviは、それぞれの原子又は原子団の蒸発エネルギー及びモル体積を表す。)
【0038】
フッ素含有(メタ)アクリル系グラフトポリマーは、Fedors法による溶解性パラメータ値が8.5~12.0であることが好ましく、9.0~11.5であることが、なお一層好ましい。
【0039】
フッ素含有(メタ)アクリル系グラフトポリマーの溶解性パラメータ値が8.5未満の場合、重合反応時に、反応溶媒へのフッ素含有(メタ)アクリル系グラフトポリマーの溶解性が悪くなるため、フッ素含有(メタ)アクリル系グラフトポリマーが析出し生成が困難となる場合や、生成できたとしても溶解性が悪すぎるためにフッ素含有(メタ)アクリル系グラフトポリマーが凝集し塗装膜の外観を損ねるおそれがある。
【0040】
一方、溶解性パラメータ値が12.0を超える場合、そのフッ素含有(メタ)アクリル系グラフトポリマーは、非水溶性溶媒との相溶性が悪く、フッ素ポリマーの十分な分散安定性を得ることができない。
【0041】
フッ素含有(メタ)アクリル系グラフトポリマーを成す原料モノマーであるフッ素含有(メタ)アクリレートモノマー(a)が5重量部未満である場合、フッ素含有(メタ)アクリル系グラフトポリマーのフッ素ポリマー界面への配向力が小さいため、フッ素ポリマー分散用添加剤に十分な分散効果を与えられない。
【0042】
一方、フッ素含有(メタ)アクリレートモノマー(a)が40重量部以上である場合、不活性溶媒への溶解性が悪くなるため、フッ素含有(メタ)アクリル系グラフトポリマーの生成が困難になる。
【0043】
フッ素含有(メタ)アクリレートモノマー(a)は、下記化学式(1)
CH=C(-R)-CO-O-R-R・・・(1)
(式(1)中、-Rは水素原子又はメチル基、-R-は-(CH-で示されnを1~12とする基、-Rは炭素数2~6で直鎖状、分岐鎖状、及び/又は脂環状のパーフルオロアルキル基)で表されるフッ素含有アクリレート又はフッ素含有メタクリレートである。
【0044】
-Rは、炭素数2~6のものが好ましい。その中でもフッ素含有(メタ)アクリレートモノマー(a)は、パーフルオロヘキシルエチル(メタ)アクリレートであると特に好ましい。パーフルオロヘキシル基は、直鎖状であるパーフルオロn-ヘキシル基であっても、分岐鎖状、又は脂環状であってもよい。
【0045】
-Rの炭素数が1のパーフルオロアルキル基であるパーフルオロメチル基を有するフッ素含有(メタ)アクリレートを用いたグラフトポリマーを含むフッ素ポリマー分散用添加剤は、フッ素ポリマーとの親和性が弱くなり、フッ素ポリマーを完全に分散させることができない。
【0046】
一方、-Rの炭素数が7以上のパーフルオロアルキル基を有するフッ素含有(メタ)アクリレートを用いたグラフトポリマーを含むフッ素ポリマー分散用添加剤は、フッ素ポリマーに添加されたとき、フッ素ポリマーとの親和性が高いため、分散効果が高い。しかし、このフッ素ポリマー分散用添加剤は、溶剤やコーティング剤への相溶性が悪いため、経時で凝集を起こし、分散安定性が悪い。さらに、-Rの炭素数が7以上のパーフルオロアルキル基を有するフッ素含有(メタ)アクリレートは、その凝集力が強いため、本発明のフッ素含有(メタ)アクリレートモノマー(a)を生成できる溶解性パラメータ値を有していても、重合反応時に不活性溶媒に溶解せず、生成が困難となる。
【0047】
さらに、-Rの炭素数が8以上のパーフルオロアルキル基を有するフッ素含有(メタ)アクリレートを用いたグラフトポリマーを含むフッ素ポリマー分散用添加剤からは、環境への残留性や、生体への蓄積性及び有毒性が懸念されるPFOAやPFOS等の長鎖パーフルオロアルキル含有残留物が生成される可能性がある。
【0048】
フッ素含有(メタ)アクリレートモノマー(a)としては、例えば、パーフルオロエチルメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロプロピルメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロブチルメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロペンチルメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロiso-プロピルメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロiso-ブチルメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロtert-ブチルメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロsec-ブチルメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロiso-ペンチルメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロiso-ヘキシルメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロシクロペンチルメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロエチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロプロピルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロペンチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロiso-プロピルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロiso-ブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロtert-ブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロsec-ブチル(メタ)エチルアクリレート、パーフルオロiso-ペンチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロiso-ヘキシルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロシクロペンチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロエチルプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロプロピルプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロブチルプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロペンチルプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロiso-プロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロiso-ブチルプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロtert-ブチルプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロsec-ブチルプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロiso-ペンチルプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロiso-ヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロシクロペンチルプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロエチルブチル(メタ)アクリレート、パーフルオロプロピルブチル(メタ)アクリレート、パーフルオロブチルブチル(メタ)アクリレート、パーフルオロペンチルブチル(メタ)アクリレート、パーフルオロヘキシルブチル(メタ)アクリレート、パーフルオロiso-プロピルブチル(メタ)アクリレート、パーフルオロiso-ブチルブチル(メタ)アクリレート、パーフルオロtert-ブチルブチル(メタ)アクリレート、パーフルオロsec-ブチルブチル(メタ)アクリレート、パーフルオロiso-ペンチルブチル(メタ)アクリレート、パーフルオロiso-ヘキシルブチル(メタ)アクリレート、パーフルオロシクロペンチルブチル(メタ)アクリレート、パーフルオロシクロヘキシルブチル(メタ)アクリレート、パーフルオロエチルペンチル(メタ)アクリレート、パーフルオロプロピルペンチル(メタ)アクリレート、パーフルオロブチルペンチル(メタ)アクリレート、パーフルオロペンチルペンチル(メタ)アクリレート、パーフルオロヘキシルペンチル(メタ)アクリレート、パーフルオロiso-プロピルペンチル(メタ)アクリレート、パーフルオロiso-ブチルペンチル(メタ)アクリレート、パーフルオロtert-ブチルペンチル(メタ)アクリレート、パーフルオロsec-ブチルペンチル(メタ)アクリレート、パーフルオロiso-ペンチルペンチル(メタ)アクリレート、パーフルオロiso-ヘキシルペンチル(メタ)アクリレート、パーフルオロシクロペンチルペンチル(メタ)アクリレート、パーフルオロシクロヘキシルペンチル(メタ)アクリレート、パーフルオロエチルヘキシル(メタ)アクリレート、パーフルオロプロピルヘキシル(メタ)アクリレート、パーフルオロブチルヘキシル(メタ)アクリレート、パーフルオロペンチルヘキシル(メタ)アクリレート、パーフルオロヘキシルヘキシル(メタ)アクリレート、パーフルオロiso-プロピルヘキシル(メタ)アクリレート、パーフルオロiso-ブチルヘキシル(メタ)アクリレート、パーフルオロtert-ブチルヘキシル(メタ)アクリレート、パーフルオロsec-ブチルヘキシル(メタ)アクリレート、パーフルオロiso-ペンチルヘキシル(メタ)アクリレート、パーフルオロiso-ヘキシルヘキシル(メタ)アクリレート、パーフルオロシクロペンチルヘキシル(メタ)アクリレート、パーフルオロシクロヘキシルヘキシル(メタ)アクリレート、パーフルオロエチルヘプチル(メタ)アクリレート、パーフルオロプロピルヘプチル(メタ)アクリレート、パーフルオロブチルヘプチル(メタ)アクリレート、パーフルオロペンチルヘプチル(メタ)アクリレート、パーフルオロヘキシルヘプチル(メタ)アクリレート、パーフルオロiso-プロピルヘプチル(メタ)アクリレート、パーフルオロiso-ブチルヘプチル(メタ)アクリレート、パーフルオロtert-ブチルヘプチル(メタ)アクリレート、パーフルオロsec-ブチルヘプチル(メタ)アクリレート、パーフルオロiso-ペンチルヘプチル(メタ)アクリレート、パーフルオロiso-ヘキシルヘプチル(メタ)アクリレート、パーフルオロシクロペンチルヘプチル(メタ)アクリレート、パーフルオロシクロヘキシルヘプチル(メタ)アクリレート、パーフルオロエチルオクチル(メタ)アクリレート、パーフルオロプロピルオクチル(メタ)アクリレート、パーフルオロブチルオクチル(メタ)アクリレート、パーフルオロペンチルオクチル(メタ)アクリレート、パーフルオロヘキシルオクチル(メタ)アクリレート、パーフルオロiso-プロピルオクチル(メタ)アクリレート、パーフルオロiso-ブチルオクチル(メタ)アクリレート、パーフルオロtert-ブチルオクチル(メタ)アクリレート、パーフルオロsec-ブチルオクチル(メタ)アクリレート、パーフルオロiso-ペンチルオクチル(メタ)アクリレート、パーフルオロiso-ヘキシルオクチル(メタ)アクリレート、パーフルオロシクロペンチルオクチル(メタ)アクリレート、パーフルオロシクロヘキシルオクチル(メタ)アクリレート、パーフルオロエチルノニル(メタ)アクリレート、パーフルオロプロピルノニル(メタ)アクリレート、パーフルオロブチルノニル(メタ)アクリレート、パーフルオロペンチルノニル(メタ)アクリレート、パーフルオロヘキシルノニル(メタ)アクリレート、パーフルオロiso-プロピルノニル(メタ)アクリレート、パーフルオロiso-ブチルノニル(メタ)アクリレート、パーフルオロtert-ブチルノニル(メタ)アクリレート、パーフルオロsec-ブチルノニル(メタ)アクリレート、パーフルオロiso-ペンチルノニル(メタ)アクリレート、パーフルオロiso-ヘキシルノニル(メタ)アクリレート、パーフルオロシクロペンチルノニル(メタ)アクリレート、パーフルオロシクロヘキシルノニル(メタ)アクリレート、パーフルオロエチルデシル(メタ)アクリレート、パーフルオロプロピルデシル(メタ)アクリレート、パーフルオロブチルデシル(メタ)アクリレート、パーフルオロペンチルデシル(メタ)アクリレート、パーフルオロヘキシルデシル(メタ)アクリレート、パーフルオロiso-プロピルデシル(メタ)アクリレート、パーフルオロiso-ブチルデシル(メタ)アクリレート、パーフルオロtert-ブチルデシル(メタ)アクリレート、パーフルオロsec-ブチルデシル(メタ)アクリレート、パーフルオロiso-ペンチルデシル(メタ)アクリレート、パーフルオロiso-ヘキシルデシル(メタ)アクリレート、パーフルオロシクロペンチルデシル(メタ)アクリレート、パーフルオロシクロヘキシルデシル(メタ)アクリレート、パーフルオロエチルウンデシル(メタ)アクリレート、パーフルオロプロピルウンデシル(メタ)アクリレート、パーフルオロブチルウンデシル(メタ)アクリレート、パーフルオロペンチルウンデシル(メタ)アクリレート、パーフルオロヘキシルウンデシル(メタ)アクリレート、パーフルオロiso-プロピルウンデシル(メタ)アクリレート、パーフルオロiso-ブチルウンデシル(メタ)アクリレート、パーフルオロtert-ブチルウンデシル(メタ)アクリレート、パーフルオロsec-ブチルウンデシル(メタ)アクリレート、パーフルオロiso-ペンチルウンデシル(メタ)アクリレート、パーフルオロiso-ヘキシルウンデシル(メタ)アクリレート、パーフルオロシクロペンチルウンデシル(メタ)アクリレート、パーフルオロシクロヘキシルウンデシル(メタ)アクリレート、パーフルオロエチルドデシル(メタ)アクリレート、パーフルオロプロピルドデシル(メタ)アクリレート、パーフルオロブチルドデシル(メタ)アクリレート、パーフルオロペンチルドデシル(メタ)アクリレート、パーフルオロヘキシルドデシル(メタ)アクリレート、パーフルオロiso-プロピルドデシル(メタ)アクリレート、パーフルオロiso-ブチルドデシル(メタ)アクリレート、パーフルオロtert-ブチルドデシル(メタ)アクリレート、パーフルオロsec-ブチルドデシル(メタ)アクリレート、パーフルオロiso-ペンチルドデシル(メタ)アクリレート、パーフルオロiso-ヘキシルドデシル(メタ)アクリレート、パーフルオロシクロペンチルドデシル(メタ)アクリレート、パーフルオロシクロヘキシルドデシル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0049】
フッ素含有(メタ)アクリレートモノマー(a)は、これらを単独で用いてもよく、複数組み合わせて用いてもよい。
【0050】
(メタ)アクリレートモノマー(b)が20重量部未満である場合、ラジカル重合によるポリマーの伸長が悪くなり、フッ素含有(メタ)アクリル系グラフトポリマーの分子量分布に偏りが生じ、目的とする性能を得ることができなくなってしまう。
【0051】
一方、(メタ)アクリレートモノマー(b)が45重量部以上である場合、フッ素含有(メタ)アクリレートモノマー(a)及び末端に(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマー(c)の配合量が少なくなる為に、フッ素ポリマーの分散性及び分散安定性が不十分になってしまう。
【0052】
(メタ)アクリレートモノマー(b)は、例えば、炭素数1~12で直鎖状、分岐鎖状、及び/又は環状のアルキル基を有する(メタ)アクリレートであり、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-,iso-プロピル(メタ)アクリレート、n-,iso-,sec-,又はtert-ブチル(メタ)アクリレート、n-アミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、iso-プロピル(メタ)アクリレート、iso-アミル(メタ)アクリレート、iso-ヘキシル(メタ)アクリレート、iso-ヘプチル(メタ)アクリレート、iso-オクチル(メタ)アクリレート、iso-ノニル(メタ)アクリレート、iso-デシル(メタ)アクリレート、iso-ウンデシル(メタ)アクリレート、iso-ドデシル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、tert-アミル(メタ)アクリレート、sec-アミル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートが挙げられ。また、アミノ基含有(メタ)アクリル系モノマーが挙げられ、例えば、アミノメチル(メタ)アクリレート、アミノエチル(メタ)アクリレート等、アミノアルキル(メタ)アクリレート等の1級アミノ基含有(メタ)アクリレート、t-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の2級アミノ基含有(メタ)アクリレート、エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノ(メタ)アクリレート等、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート等の3級アミノ基含有(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルフォリン等が挙げられる。
【0053】
(メタ)アクリレートモノマー(b)は、これらを単独で用いてもよく、複数組み合わせて用いてもよい。中でも炭素数1~4のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルフォリンであることが好ましい。その中でも、メチル(メタ)アクリレートであることが、なお一層好ましい。
【0054】
末端に(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマー(c)は、ポリアルキル(メタ) アクリレートマクロモノマー、ポリアルケニル(メタ) アクリレートマクロモノマー、ポリエステルマクロモノマー、ポリスチレンマクロモノマーを有する。より具体的には、マクロモノマーAA-6(末端基:メタクリロイル基、セグメント:メチルメタクリレート、数平均分子量:6000;東亞合成化学工業(株)製の商品名)、マクロモノマーAW-6S(末端基:メタクリロイル基、セグメント:イソブチルメタクリレート、数平均分子量:6000; 東亞合成化学工業(株)製の商品名)、マクロモノマーAB-6(末端基:メタクリロイル基、セグメント:ブチルアクリレート、数平均分子量:6000;東亞合成化学工業(株)製の商品名)、マクロモノマーAS-6(末端基:メタクリロイル基、セグメント:スチレン換算の数平均分子量:6000;東亞合成化学工業(株)製の商品名)が挙げられる。
【0055】
また、分散性および分散安定性を阻害しない限りは、他のモノマー(e)と共に共重合した共重合物を含んでいてもよい。他のモノマー(e)として、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-,iso-プロピル(メタ)アクリレート、n-,iso-,sec-,又はtert-ブチル(メタ)アクリレート、スチレン、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフリフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチルアクリルアミド、イソプロピルアクリルアミド、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0056】
末端に(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマー(c)は、その重量平均分子量が3000~100000であることが好ましく、特に6000~50000が好ましい。分子量が3000より低い場合には、塗膜の物性が低下するおそれがある。100000より高い場合には、フッ素含有(メタ)アクリル系グラフトポリマーの粘度が高くなり過ぎ、取り扱いが難しくなることがある。
【0057】
末端に(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマー(c)の溶解性パラメータ値は、前記数式(1)に従いFedors法で求めると、9.0~10.3である。
【0058】
末端に(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマー(c)の側鎖ポリマー部は、繰返構造がマクロモノマー繰返構造モノマー(d)由来の繰返単位のみから成っていることが好ましい。またその繰返構造がマクロモノマー繰返構造モノマー(d)由来の繰返単位のみから成っていると、マクロモノマー繰返構造モノマー(d)は、他の(メタ)アクリレートモノマーより構造が小さく(即ちアルキル部が短く)、立体障害が小さい為、分子量を大きくしやすい。末端に(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマー(c)の側鎖ポリマー部が長くなることで、より粒子間の立体反発性を高めることができることから、一層好ましい。
【0059】
末端に(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマー(c)は、その繰返構造の末端に、スペーサー構造を介して又は直接に、アクリロイル基のような不飽和基が結合していることが好ましい。
【0060】
末端に(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマー(c)は、より具体的には、メチルメタクリレートモノマーの重合体の末端へ、直接に、若しくは連鎖移動剤例えばβ-メルカプトエタノール由来のスペーサ構造と、エステル結合及び/又はウレタン結合のスペーサ構造とを介して、(メタ)アクリロイル基が結合した化合物であってもよい。また、市販のマクロモノマー、例えばメチルメタクリレートホモポリマー(分子量(Mw)=6000、溶解性パラメータ値=10.0)の末端基がメタクリロイル基となっているマクロモノマーであるマクロモノマーAA-6(東亞合成株式会社製;商品名)、ブチルアクリレートホモポリマー(分子量(Mw)=6000、溶解性パラメータ値=9.9)の末端基がメタクリロイル基となっているマクロモノマーであるマクロモノマーAB-6(東亞合成株式会社製;商品名)であってもよい。これらマクロモノマーは、単独で用いてもよく、複数組み合わせて用いてもよい。
【0061】
末端に(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマー(c)は、フッ素ポリマーの分散を阻害しない限りは、他のモノマー(e)と共に共重合したグラフトポリマーでもよい。
【0062】
他のモノマー(e)は、フッ素含有(メタ)アクリレートモノマー(a)、(メタ)アクリレートモノマー(b)及び末端に(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマー(c)の合計100重量部に対して、0~10重量部未満であることが好ましく、0~5重量部未満であると一層好ましい。
【0063】
他のモノマー(e)として、例えばスチレン、ビニルトルエンのような芳香族ビニルモノマー、ノルマルブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテルのような直鎖状、又は環状の炭素数1~12のアルキルビニルエーテルモノマー、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ラウリン酸ビニルのようなビニルエステルモノマー、アミノメチル(メタ)アクリレートのような、(メタ)アクリルアミドモノマー、アクロイルモルフォリン、ノニオン性アクリル系モノマーのような、メトキシポリエチレングリコールアクリレートが挙げられる。
【0064】
末端に(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマー(c)の合成としては、マクロモノマー法が好ましい。マクロモノマー法は、フッ素含有(メタ)アクリレートモノマー(a)及びアルキル(メタ)アクリレートモノマー(b)と、末端に(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマー(c)とをそれぞれの不飽和基で共重合させることにより、側鎖形成用のポリマー存在下で、主鎖を形成させるというものである。
【0065】
その一例として以下の方法が挙げられる。まず、メチルメタクリレートモノマーと、β-メルカプトエタノールとを、ラジカル重合開始剤存在下、不活性溶媒中に滴下し、加熱して重合させる。それにより得たメチルメタクリレートモノマーの主鎖末端の水酸基に、イソシアネート基と(メタ)アクリロイル基をもつイソシアネート基含有モノマーであるカレンズMOI(2-イソシアナトエチルメタクリレート:昭和電工株式会社製;商品名、カレンズMOIは登録商標)又はカレンズAOI(2-イソシアナトエチルアクリレート:昭和電工株式会社製;商品名、カレンズAOIは登録商標)を触媒TN-12(ジブチル錫ラウレート:堺化学工業株式会社製;商品名)の下で反応させて、側鎖ポリマー部を形成するための側鎖形成用ポリマーであるメチルメタクリレートモノマーのマクロモノマーを合成する。そして、合成したメチルメタクリレートモノマーのマクロモノマーと、フッ素含有(メタ)アクリレートモノマー(a)と、(メタ)アクリレートモノマー(b)とを、ラジカル重合開始剤存在下、不活性溶媒中に滴下し、加熱して重合させると、末端に(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマー(c)が調製される。
【0066】
また、マクロモノマー法で使用するマクロモノマーは、前記以外の公知の方法で合成されてもよい。
【0067】
末端に(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマー(c)の合成法としてマクロモノマー法について説明したが、その他に、例えば、ベンゾイルパーオキサイドやα,α’-アゾビスイソブチロニトリル等の開始剤により主鎖ポリマー部から水素、ハロゲンを引き抜き、ポリマーラジカルを作り、これに他のモノマーをグラフト重合させる等の連鎖移動法であってもよい。
【0068】
また、予め、末端に(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマー(c)を成す主鎖ポリマー部を形成するための主鎖ポリマーと、側鎖ポリマー部を形成するための側鎖形成用ポリマーとを別々に合成しておき、後で両ポリマーを結合させる方法であってもよい。具体的には、イソシアネート基のように活性水素と反応性のある基を有した主鎖ポリマー部を形成するための主鎖ポリマーと、片末端に水酸基等の活性水素基を有した側鎖ポリマー部を形成するための側鎖形成用ポリマーとを反応させて、両ポリマーを結合させる方法が挙げられる。前記以外の公知の方法で、側鎖形成用ポリマーと主鎖ポリマーとを結合させてもよい。
【0069】
主鎖ポリマー、側鎖形成用ポリマー、マクロモノマー、グラフトポリマーを重合・共重合によって調製する際、ラジカル重合開始剤を用いることが好ましい。ラジカル重合開始剤は、一般にラジカル重合に用いられる開始剤であれば、特に限定されないが、例えば、過酸化物、アゾ化合物等が用いられる。より具体的には、V-60(AIBN)(和光純薬工業株式会社の商品名)、V-65(和光純薬工業株式会社の商品名)、V-601(和光純薬工業株式会社の商品名)、パーブチルD・パーブチルO(日油株式会社の商品名、パーブチルは登録商標)、及びパーオクタO(日油株式会社の商品名、パーオクタは登録商標)が挙げられる。
【0070】
このフッ素ポリマー分散用添加剤は、フッ素ポリマーを非水系液状媒体に分散させるためのものである。
【0071】
フッ素ポリマー分散用添加剤は、このグラフトポリマーのみからなっていてもよく、必要に応じて、不活性溶媒や、それ以外の添加剤成分を含有していてもよい。フッ素ポリマー分散用添加剤は、グラフトポリマーを不活性溶媒で溶解又は懸濁させたものであってもよい。
【0072】
フッ素ポリマー分散用添加剤中の不活性溶媒は、グラフトポリマーを溶解又は懸濁させて希釈できるものであれば特に限定されないが、具体的にはキシレン、トルエン、シクロヘキサン等の炭化水素溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン等のケトン溶剤;メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、カルビトール、ブチルカルビトール、ジエチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル溶剤;酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸n-アミル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシブチルアセテート等のエステル溶剤;n-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、シクロヘキサノール、2-エチルヘキサノール、3-メチル-3-メトキシブタノール等のアルコール溶剤が挙げられる。これらの溶剤を、単独で使用してもよく、複数種混合して使用してもよい。
【0073】
本発明のフッ素ポリマー分散組成物は、フッ素ポリマー分散用添加剤と、それにより非水系液状媒体の中で分散されたフッ素ポリマーとを含むものである。
【0074】
フッ素ポリマー分散組成物を調製する際、フッ素ポリマー分散用添加剤の用量は、フッ素ポリマー100重量部に対して、0.01~40重量部であることが好ましい。その用量が0.01重量部未満であるとフッ素ポリマーを十分に分散できず、40重量部を超えると、フッ素ポリマーの性能、例えば滑り性などに悪影響を与えてしまう。その用量が0.1~20重量部であることが一層好ましく、0.2~10重量部であることがより一層好ましい。
【0075】
フッ素ポリマー分散組成物中、フッ素ポリマーが0.1~60重量%となるように、非水系液状媒体で希釈される。
【0076】
フッ素ポリマーは、フッ素ポリマー粉末等の固体で有ることが好ましい。フッ素ポリマー粉末の平均粒径は、0.01μm~100μmであることが好ましく、0.01μm~10μmであることが、なお一層好ましい。フッ素ポリマーは、フッ素ポリマーオイル等の液体であってもよい。フッ素ポリマーオイルは、分散されて、平均粒径が0.01~100μmの懸濁分散液となる。
【0077】
フッ素ポリマーは、フッ素含有モノマーの単独重合又は共重合物である。フッ素モノマーの具体例としては、例えば、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロメチルビニルエーテル、パーフルオロエチルビニルエーテル、パーフルオロプロピルビニルエーテル、パーフルオロブチルビニルエーテル、パーフルオロイソブチルビニルエーテル、パーフルオロペンチルビニルエーテル、パーフルオロヘキシルビニルエーテル、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンオキサイド、パーフルオロアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。特にテトラフルオロエチレンが好ましい。
【0078】
フッ素ポリマーオイル等の液体フッ素ポリマーは具体例として、例えばパーフルオロポリエーテル(PFPE)を主成分とするものが挙げられる。なおPFPEは、一般式:RfO(CFO)(CO)(CO)Rf(Rf:パーフルオロ低級アルキル基、p、q、r:整数)で表される化合物である。
【0079】
非水系液状媒体は、例えば、キシレン、トルエン、シクロヘキサン等の炭化水素溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン等のケトン溶剤;メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、カルビトール、ブチルカルビトール、ジエチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル溶剤;酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸n-アミル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシブチルアセテート等のエステル溶剤;n-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、シクロヘキサノール、2-エチルヘキサノール、3-メチル-3-メトキシブタノール等のアルコール溶剤が挙げられる。これらの溶剤を、単独で使用してもよく、複数種混合して使用してもよい。
【0080】
フッ素ポリマー分散組成物の調製は、フッ素ポリマー、非水系液状媒体及びフッ素ポリマー分散用添加剤を混合した後に、ペイントシェーカー、ビーズミル、ボールミル、各種ミキサー、又は各種高圧湿式分散機等の分散装置を用いて、フッ素ポリマーを分散させることにより行うことができる。フッ素ポリマー分散組成物は、非水系液状媒体のみでは撥水撥油性に優れ表面エネルギーの低いフッ素ポリマーを分散できないが、フッ素ポリマー分散用添加剤の添加により、フッ素ポリマーを非水系液状媒体中に分散させる分散性とその分散状態を安定して継続させる分散安定性とが、付与されている。そのため、フッ素ポリマーは、分散装置で容易く分散され、一旦分散した後に凝集したり沈降したりしない。
【0081】
本発明のコーティング剤は、本発明のフッ素ポリマー分散組成物と一般的なコーティング剤の調製に用いられるコーティング剤成分とを含むものである。
【0082】
コーティング剤は、コーティング剤成分を予め混合しておき、さらにフッ素ポリマー分散組成物を添加し、混合して調製される。それらを同時に、又は任意の順で混合してもよい。
【0083】
コーティング剤成分には、特に限定されないが、例えば顔料や染料のような着色剤、樹脂、希釈溶剤、触媒、機能付与性添加剤等が挙げられる。
【0084】
樹脂は、アクリルポリオール樹脂、アクリルメラミン樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、例えば、加熱硬化型、イソシアネート硬化型、紫外線硬化型、電子線硬化型、酸化硬化型、光カチオン硬化型、過酸化物硬化型、酸/エポキシ硬化型のように、触媒存在下、又は触媒非存在下で、硬化するものである。
【0085】
希釈溶剤は、一般的に用いられる有機溶剤であれば、特に限定されないが、例えば、キシレン、トルエン、シクロヘキサン等の炭化水素溶剤;シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン等のケトン溶剤;メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、カルビトール、ブチルカルビトール、ジエチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル溶剤;酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸n-アミル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシブチルアセテート等のエステル溶剤;n-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、シクロヘキサノール、2-エチルヘキサノール、3-メチル-3-メトキシブタノール等のアルコール溶剤;が挙げられる。これらの溶剤は、単独で使用されてもよく、混合して使用されてもよく、さらに水を混合して使用されてもよい。
【0086】
コーティング剤は、上記成分の他に、任意成分である各種機能付与性添加剤、例えば増感剤、帯電防止剤、レベリング剤、湿潤剤、消泡剤、分散剤、粘度調整剤等が、必要に応じ適量添加されたものであってもよい。
【0087】
本発明の塗装膜は、このコーティング剤を基材上に塗装した被膜が、硬化されたものである。
【0088】
基材は、特に限定されないが、プラスチック、ゴム、紙、木材、ガラス、金属、石材、セメント材、モルタル材、セラミックス等の素材で形成されたもので、家電製品や自動車の部品、外装材、日用品、建材等が挙げられる。
【0089】
コーティング剤を塗装するには、例えば、スピンコート、スプレーコート、ディップコート、バーコート、ドクターブレード、ロールコート、フローコートなどの公知の方法により行うことが好ましい。
【0090】
このようなフッ素ポリマー分散用添加剤により、フッ素ポリマーが優れた分散性及び分散安定性を有するメカニズムは、必ずしも明らかでないが、以下の通りであると推察される。
【0091】
一般のポリマー型分散剤は、その分散剤に含まれる分子内に、樹脂粒子への吸着部(親和部)と樹脂への相溶部を併せ持っており、立体障害により粒子間の反発力を高めることで分散効果を発揮する。本発明のフッ素ポリマー分散用添加剤中のフッ素含有(メタ)アクリル系グラフトポリマーも、同様のメカニズムで分散効果を発揮すると考える。フッ素ポリマーと同じフッ素部分を有する主鎖ポリマー部の中のフッ素含有(メタ)アクリレートモノマー(a)が吸着部(親和部)として作用する。吸着部(親和部)がポリマーであることから、フッ素ポリマーに絡まり、強力且つ持続的に吸着することが可能であり、時間が経ってもフッ素ポリマーに吸着していることから、分散安定性に優れる。
【0092】
また、側鎖ポリマー部の中のメタクリレートモノマーが樹脂相溶部として作用し、硬いポリマー骨格を有していることから、より立体障害が大きくなり、粒子同士の凝集を抑える。
【0093】
主鎖ポリマー部に、硬い骨格を有する(メタ)アクリレートモノマー(b)を用いることにより、フッ素ポリマー分散剤構造を剛直にすることで、より立体障害が大きくなり、粒子同士の凝集を抑える。
【0094】
側鎖ポリマー部にフッ素ポリマーへの吸着部(親和部)がある場合、一分子内に側鎖ポリマー部はいくつもあるため、それぞれの側鎖ポリマー部に粒子が吸着してしまい、粒子同士の距離が短くなり、凝集を引き起こす。そのため、フッ素ポリマーへの吸着部(親和部)であるフッ素置換アルキル基含有(メタ)アクリレートモノマー(a)由来の繰返構造は、一分子内に1つの鎖しかない主鎖ポリマー部にある必要がある。
【0095】
フッ素ポリマー分散剤中で顔料吸着基として作用するフッ素含有(メタ)アクリレートモノマー(a)が主鎖ポリマー部にある場合において、その距離が密である場合にフッ素部が溶剤または樹脂との相溶性が悪くなり、フッ素ポリマーの吸着、分散性へ悪影響を与える。そのため、フッ素ポリマー分散剤の相溶性、分散性を向上させるために、主鎖ポリマー部にあるフッ素含有(メタ)アクリレートモノマー(a)が、(メタ)アクリレートモノマー(b)によって一定距離を保つ必要がある。
【0096】
樹脂組成物へ使用される場合、フッ素ポリマー分散剤中で樹脂親和部として作用する末端に(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマー(c)の含有量が多いと、フッ素ポリマー分散剤が樹脂中で均一に溶解し、樹脂硬化後に表面へ配向せず、フッ素ポリマーの撥水撥油性発現に悪影響を与える。そのため、樹脂、溶剤に対し適切な溶解性を得るために、末端に(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマー(c)はフッ素ポリマー分散剤に対して適切な比率で含有される必要がある。
【実施例0097】
本発明を適用するフッ素ポリマー分散用添加剤、その分散剤を含むフッ素ポリマー分散組成物、その組成物を含むコーティング剤、コーティング剤で形成された塗装膜を試作した実施例と、本発明を適用外の分散剤、組成物、コーティング剤、塗装膜を試作した比較例とを示す。
【0098】
まず、本発明のフッ素ポリマー分散用添加剤に含まれるフッ素含有(メタ)アクリル系グラフトポリマーの側鎖ポリマー部を形成するための末端に(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマー(c)を製造した例を製造例1及び2に示し、本発明の適用外の分散剤に用いるフッ素含有(メタ)アクリル系グラフトポリマーの側鎖ポリマー部を形成するための末端に(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマー(c)を製造した例を比較製造例1、2に示す。
【0099】
(製造例1)
撹拌装置、還流冷却管、滴下ロート、温度計及び窒素ガス吹き込み口を備えた1000mLの反応容器に、下記表1に示すように側鎖ポリマー部を成す側鎖形成用ポリマーの繰返構造を形成するために、マクロモノマー繰返構造モノマー(d)であるメチルメタクリレートの400重量部と、連鎖移動剤でもある末端水酸基導入剤のβ-メルカプトエタノールの1.56重量部と、不活性溶媒である酢酸n-ブチルの100重量部との仕込み原料混合液(A-1)を入れ、窒素ガス雰囲気下で85℃に昇温した。反応容器内の溶液温度を85℃に維持し、下記表1に示すように重合開始剤であるパーオクタOの1重量部と不活性溶媒である酢酸n-ブチルの300重量部との滴下溶液(B-1)を滴下ロートにより3時間で等速滴下した。滴下終了後、反応容器内の溶液を100℃まで昇温させ、2時間反応させて、末端にヒドロキシエチルメルカプト基を有する共重合物を合成した。その後、反応容器内の溶液を80℃まで冷却し、窒素ガスの吹き込みを空気吹き込みに切り替え、下記表1に示すようにイソシアネート基含有モノマーであるカレンズMOIの3.72重量部と触媒であるTN-12の0.05重量部との追加原料(C-1)を投入し、80℃で3時間反応させ、その残分が40%となるように酢酸n-ブチルで希釈し、製造例1の末端に(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマー(c)を得た。
【0100】
異なる分子量の分子を分離できるゲル浸透クロマトグラフィー(カラムは東ソー株式会社製で製品名TSKGEL SUPERMULTIPORE HZ-M、溶出溶媒はテトラヒドロフラン(THF))で、この側鎖形成用ポリマーを分子量ごとに溶出し、分子量分布を求めた。予め分子量既知のポリスチレン標準物質から校正曲線を得ておき、この製造例1の側鎖形成用ポリマーの分子量分布と比較して、製造例1の側鎖形成用ポリマーの重量平均分子量を求めた。その結果、この製造例1の末端に(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマー(c)の重量平均分子量は、ポリスチレン換算で30000であった。
【0101】
(製造例2)
製造例1と同様な反応容器に、仕込み原料混合液、滴下溶液、追加原料混合液を下記表1の通りに変更したこと以外は、製造例1と同様の方法で、製造例2の末端に(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマー(c)を得た。製造例1の末端に(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマー(c)と同様に、ゲル浸透クロマトグラフィーで各製造例の側鎖形成用ポリマーの分子量分布を求めた。その分子量分布から求めたポリスチレン換算での重量平均分子量は、下記表1に示す。
【0102】
(製造比較例1)
製造例1と同様な反応容器に、仕込み原料混合液、滴下溶液、追加原料混合液を下記表1の通りに変更したこと以外は、製造例1と同様の方法で、製造比較例1の側鎖形成用ポリマーを得た。製造例1の側鎖形成用ポリマーと同様に、ゲル浸透クロマトグラフィーで各製造例の側鎖形成用ポリマーの分子量分布を求めた。その分子量分布から求めたポリスチレン換算での重量平均分子量は、下記表1に示す。
【0103】
(製造比較例2)
製造例1と同様な反応容器に、仕込み原料混合液、滴下溶液、追加原料混合液を下記表1の通りに変更したこと以外は、製造例1と同様の方法で、製造比較例1の側鎖形成用ポリマーを得た。製造例1の側鎖形成用ポリマーと同様に、ゲル浸透クロマトグラフィーで各製造例の側鎖形成用ポリマーの分子量分布を求めた。その分子量分布から求めたポリスチレン換算での重量平均分子量は、下記表1に示す。
【0104】
【表1】
【0105】
合成例1~7は、マクロモノマーとして市販品又は製造例1,2で得られた末端に(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマー(c)を用い、本発明のフッ素ポリマー分散用添加剤に含まれるフッ素含有(メタ)アクリル系グラフトポリマーを調製した例を示し、比較合成例1~7は、マクロモノマーとして市販品又は比較製造例1,2で得られた末端に(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマー(c)を用い、本発明の適用外のフッ素ポリマー分散用添加剤に含まれるフッ素含有(メタ)アクリル系グラフトポリマーを調製した例を示す。
【0106】
(合成例1)
撹拌装置、還流冷却管、滴下ロート、温度計及び窒素ガス吹き込み口を備えた1000mLの反応容器に、酢酸n-ブチル60重量部を入れ、窒素ガス雰囲気下で100℃に昇温した。反応容器内の溶液温度を100℃に維持し、下記表2に示すようにフッ素含有(メタ)アクリレートモノマー(a)であるパーフルオロヘキシルエチルアクリレートの20重量部と、(メタ)アクリレートモノマー(b)であるメチルメタクリレートの35重量部と、末端に(メタ)アクリロイル基を有するマクロモノマー(c)としてマクロモノマーAA-6の45重量部と、重合開始剤としてパーブチルOの1重量部と、不活性溶媒として酢酸n-ブチルの60重量部との混合滴下溶液(D-1)を滴下ロートにより2時間で等速滴下した。滴下終了後、反応容器内の溶液を100℃に維持したまま、2時間反応させてフッ素含有(メタ)アクリル系グラフトポリマーを得た。
【0107】
異なる分子量の分子を分離できるゲル浸透クロマトグラフィー(カラムは東ソー株式会社製で製品名TSKGEL SUPERMULTIPORE HZ-M、溶出溶媒はTHF)で、このフッ素ポリマー分散用添加剤のフッ素含有(メタ)アクリル系グラフトポリマーを分子量ごとに溶出し、分子量分布を求めた。予め分子量既知のポリスチレン標準物質から校正曲線を得ておき、このフッ素含有(メタ)アクリル系グラフトポリマーの分子量分布と比較して、フッ素含有(メタ)アクリル系グラフトポリマーの重量平均分子量を求めた。その結果、このフッ素ポリマー分散用添加剤のフッ素含有(メタ)アクリル系グラフトポリマーの重量平均分子量は、ポリスチレン換算で60000、Fedors法で求めた溶解性パラメータ値は9.5であった。
【0108】
(合成例2~7及び比較合成例1~7)
合成例2~7、比較合成例1~7については下記表2、3の通りに変更したこと以外は、合成例1と同様の方法で、フッ素含有(メタ)アクリル系グラフトポリマーを得た。合成例1と同様にゲル浸透クロマトグラフィーで求めたこれらのフッ素含有(メタ)アクリル系グラフトポリマーの重量平均分子量、Fedors法で求めた溶解性パラメータ値について、纏めて下記表2,3に示す。
【0109】
【表2】
【0110】
【表3】
【0111】
(実施例1の調製)
テトラフルオロエチレン樹脂粉末のKTL-8N(株式会社喜多村製の商品名)の40重量部と、酢酸n-ブチルの58重量部とフッ素ポリマー分散用添加剤としてフッ素含有(メタ)アクリル系グラフトポリマーの合成例1~7及びフッ素含有(メタ)アクリル系グラフトポリマーの合成比較例1~7の2重量部をラボディスパーにて1500rpm×10分間撹拌を行い、フッ素ポリマー分散用添加剤を使用した試験樹脂組成物を得た。
【0112】
(実施例2~6及び比較例1~7)
実施例1中の製造例1のフッ素含有(メタ)アクリル系グラフトポリマーを、下記表4に示すように製造例2~7及び比較製造例1~7のフッ素含有(メタ)アクリル系グラフトポリマーに代えて、調製したフッ素ポリマー分散用添加剤を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法で、実施例2~7及び比較例1~7の試験樹脂組成物を得た。
【0113】
(ブランクの調製)
なお、実施例1でのフッ素含有(メタ)アクリル系グラフトポリマーを用いていないこと以外は、実施例1と同様の方法でブランク試料を得た。
【0114】
実施例1~7と、比較例1~7と、ブランクとの試験樹脂組成物について、以下の分散性評価試験を行った。
【0115】
(初期目視の評価)
実施例1~7及び比較例1~7の試験樹脂組成物を調製した後、60φのガラス瓶に高さ50mmで入れ、水平な場所で25℃、1hr静置した後に、目視にて分散状態を確認した。
【0116】
初期目視評価は、沈殿物がない場合を○、沈殿物がある場合を×とする2段階で評価した。その結果を表4に示す。
【0117】
沈降防止率は、静置後に水平な場所で25℃、1hr静置した後に、試験樹脂組成物1が入ったガラス瓶を横から目視で確認し、液全体の高さ50mmとガラス瓶底部から試験樹脂組成物1の白濁部までの高さを測定することで、以下の数式(2)から求めることができる。試験結果を表4に示す。
沈降防止率=
(液全体の高さ(mm)/ガラス瓶底部から白濁部までの高さ(mm))×100
・・・・(2)
【0118】
静置後の試験樹脂組成物1が入ったガラス瓶を1分間手撹拌した。手撹拌によって液状にならない、固体部分のハードケーキング有無を目視で確認した。
【0119】
ハードケーキングの確認評価は、試験樹脂組成物1中へ分散していない固体部分がガラス瓶底部分に確認される場合を〇、確認されない場合を×とする2段階で評価した。
【0120】
【表4】
【0121】
表4から明らかな通り、本発明を適用する合成例のフッ素含有(メタ)アクリル系グラフトポリマーを含むフッ素ポリマー分散用添加剤を用いて調製された実施例の試験樹脂組成物1は、本発明を適用外の比較例やブランクの試験樹脂組成物1よりも、初期目視評価は沈殿物が無いことが確認された。また、経時において沈降物が無く、ハードケーキングも確認されなかった。従って、実施例で得られた本発明のフッ素ポリマー分散用添加剤は、フッ素ポリマーの分散剤として分散性及び分散安定性に優れることが確認された。
【0122】
<評価塗板作製>
予め調製した準備樹脂組成物に、フッ素含有(メタ)アクリル系グラフトポリマーの合成例1~7及びフッ素含有(メタ)アクリル系グラフトポリマーの合成比較例1~7で得られたフッ素ポリマー分散用添加剤を配合して、コーティング剤として試験樹脂組成物を得た。この試験樹脂組成物を基材に塗布して得られた硬化被膜の特性評価を行った。
【0123】
(試験樹脂組成物2の調製)
ウレタンアクリレートのUA-306I(共栄社化学株式会社の商品名)の30重量部と、テトラフルオロエチレン樹脂粉末のKTL-8N(株式会社喜多村製の商品名)の10重量部と、酢酸n-ブチルの59重量部とフッ素ポリマー分散用添加剤としてフッ素含有(メタ)アクリル系グラフトポリマーの合成例1~7及びフッ素含有(メタ)アクリル系グラフトポリマーの合成比較例1~7の1重量部とをラボディスパーにて500rpm×5分間撹拌を行い、フッ素ポリマー分散用添加剤を使用したテトラフルオロエチレン樹脂粉末分散液を得た。
【0124】
(ブランク1の調製)
ブランク1の調製は、実施作製例1でのフッ素含有(メタ)アクリル系グラフトポリマーを用いていないこと以外は、試験樹脂組成物2と同様の調整方法で、ブランク1試料を得た。
【0125】
(ブランク2の調整)
ブランク2の調整は、実施作製例1でのテトラフルオロエチレン樹脂粉末を用いていないこと以外は、試験樹脂組成物2と同様の調整方法でブランク2試料を得た。
【0126】
(実施調製例1)
試験樹脂組成物2のテトラフルオロエチレン樹脂粉末分散液に、光重合開始剤であるイルガキュア184(ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン;チバスペシャルティ株式会社製)を3重量部添加し、ペイントシェーカーにて溶解し、コーティング剤を調製した。
【0127】
(評価塗板作製)
得られた試験樹脂組成物2を直ちに、アルミ製の基材上に50μmアプリケーターにて塗装し、直ちに80℃で5分間溶剤を乾燥させた後、UV照射機にて600mJ/cmの照射量で硬化させ、塗装膜を得た。
【0128】
(硬化被膜の水接触角測定)
硬化した直後の硬化被膜面に2μLの水滴を滴下し、接触角測定計(協和界面科学株式会社製)を用いて水接触角を測定した。その結果を下記表5に記載した。
【0129】
硬化した直後の硬化被膜面に1μLのオレイン酸を滴下し、接触角測定計(協和界面科学株式会社製)を用いて油接触角を測定した。その結果を下記表5に記載した。
【0130】
【表5】
【0131】
表5から明らかな通り、本発明を適用する合成例のフッ素含有(メタ)アクリル系グラフトポリマーを含むフッ素ポリマー分散用添加剤を用いて調製された実施例にコーティング剤を塗装して得られた塗装膜は、本発明を適用外の比較例やブランク塗装膜と比較して優れた撥水撥油性を示していた。
【産業上の利用可能性】
【0132】
本発明のフッ素ポリマー分散用添加剤は、摺動性や非粘着性、潤滑性、防汚性、耐薬品性、絶縁抵抗性等の目的でプラスチック、塗料、グリースに添加して用いられるテトラフルオロエチレン樹脂等のフッ素ポリマーを均一に分散させることに優れた効果を発揮する分散剤として用いられる。このフッ素ポリマー分散用添加剤と、分散されたフッ素ポリマーとを含むフッ素ポリマー分散組成物は、家電製品や自動車の部品、外装材、日用品、建材等の基材への塗装に使用されるコーティング剤に添加されて用いられる。このコーティング剤が塗装されて硬化した塗装膜は、基材を綺麗で平滑に塗装して被覆し、防汚性を付与するのに用いられる。