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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023007788
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】砥石
(51)【国際特許分類】
   B24D 5/06 20060101AFI20230112BHJP
   B24D 5/00 20060101ALI20230112BHJP
   B24D 5/14 20060101ALI20230112BHJP
【FI】
B24D5/06
B24D5/00 P
B24D5/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021110858
(22)【出願日】2021-07-02
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】507002217
【氏名又は名称】エヌシーダイヤモンド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂下 英司
(72)【発明者】
【氏名】小岩 政浩
【テーマコード(参考)】
3C063
【Fターム(参考)】
3C063AA02
3C063AB03
3C063BA03
3C063BA24
3C063BA32
3C063BB02
3C063FF30
(57)【要約】
【課題】加工効率を向上すること。
【解決手段】砥粒3が固定される加工部4が回転の周方向に沿って配置される砥石1であって、加工部4は、周方向に沿って複数の区分4A~4Hを構成し、複数の区分4A~4Hは、砥粒3の大きさやパターンが異なる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
砥粒が固定される加工部が回転の周方向に沿って配置される砥石であって、
前記加工部は、周方向に沿って複数の区分を構成し、複数の前記区分は、前記砥粒の大きさやパターンが異なる、砥石。
【請求項2】
前記加工部は、回転の軸を中心とした円周の周端面に形成される、請求項1に記載の砥石。
【請求項3】
前記加工部は、前記周端面に連続して前記回転の軸の延在方向に向く側面にも形成される、請求項2に記載の砥石。
【請求項4】
前記加工部は、凸部および凹部を有する、請求項1から3のいずれか1項に記載の砥石。
【請求項5】
砥粒が固定される加工部が回転の周方向に沿って配置される砥石であって、
前記加工部は、凸部および凹部を有する、砥石。
【請求項6】
前記凸部と前記凹部は、回転の軸を中心とした円周の周端面に形成され、前記回転の軸の延在方向に沿って交互に配置される、請求項4または5に記載の砥石。
【請求項7】
前記凸部と前記凹部は、回転の軸を中心とした円周の周端面に形成され、前記周方向に沿って交互に配置される、請求項4から6のいずれか1項に記載の砥石。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、砥石に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1に、ビビリ発生を抑えて高い加工精度を得ることを目的とした研磨砥石について開示されている。この研磨砥石は、砥粒層を有する多数のセグメントチップを有している。多数のセグメントチップは、一円周上における周方向の寸法が異なる複数種類が用いられ、周方向に隙間無く配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-254321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
砥石は、加工に伴って砥粒の摩耗が進行すると加工効率が低下し、やがて交換が必要になる。しかし、砥石を交換することが難しい環境下では、砥石の加工効率を向上することが望まれる。
【0005】
本開示は上述した課題を解決するものであり、加工効率を向上することのできる砥石を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するために、本開示の一態様に係る砥石は、砥粒が固定される加工部が回転の周方向に沿って配置される砥石であって、前記加工部は、周方向に沿って複数の区分を構成し、複数の前記区分は、前記砥粒の大きさやパターンが異なる。
【0007】
上述の目的を達成するために、本開示の一態様に係る砥石は、砥粒が固定される加工部が回転の周方向に沿って配置される砥石であって、前記加工部は、凸部および凹部を有する。
【発明の効果】
【0008】
本開示は、加工効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態に係る砥石の概略図である。
図2図2は、実施形態に係る砥石の周端面の展開図である。
図3図3は、実施形態に係る砥石の側面図である。
図4図4は、実施形態に係る砥石の周端面を視た平面図である。
図5図5は、実施形態に係る砥石の側面図である。
図6図6は、実施形態に係る砥石の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0011】
図1は、実施形態に係る砥石の概略図である。
【0012】
実施形態の砥石1は、加工装置100に用いられる。加工装置100は、適宜移動させた砥石1によって加工対象Gを研削加工する。加工装置100は、本体101に設けられた回転軸101Aに砥石1が取り付けられる。加工装置100は、回転軸101Aを正逆回転することで矢印Aにて示すように軸心Sの廻りに砥石1を回転移動させる。加工装置100は、回転軸101Aの回転数を変更可能であり、砥石1を回転移動の速度を適宜変えられる。加工装置100は、回転軸101A(軸心S)の延在方向に沿って本体101を移動することで矢印Bにて示すように砥石1をスライド移動させる。加工装置100は、回転軸101A(軸心S)に直交する軸101Bを中心にして傾けるように本体101を傾斜させることで矢印Cにて示すように砥石1を加工対象Gに対して傾斜移動させる。砥石1は、回転軸101A(軸心S)を中心とする円盤形状に形成された台金1Aにより構成されている。砥石1は、加工装置100によって回転移動され、台金1Aにおいて回転軸101A(軸心S)を中心とした周端面1Aaが加工対象Gに接触することで加工対象Gを研削する。砥石1は、台金1Aが回転軸101A(軸心S)の延在方向に所定の厚さを有しており、当該厚さの範囲で周端面1Aaが加工対象Gに接触することができる。また、砥石1は、加工装置100によって回転移動されつつスライド移動され、周端面1Aaおよび周端面1Aaに連続する台金1Aの側面1Abが加工対象Gに接触することで加工対象Gを研削する。また、砥石1は、加工装置100によって回転移動されつつ傾斜移動(およびスライド移動)され、周端面1Aaおよび側面1Abが加工対象Gに接触することで加工対象Gを研削する。
【0013】
図2は、実施形態に係る砥石の周端面の展開図である。
【0014】
砥石1は、図2に示すように、台金1Aの周端面1Aaに加工部4が配置される。加工部4は、周端面1Aaに砥粒3が固定されて設けられる。砥粒3は、例えば、ダイヤモンドが用いられ、周端面1Aaに溶着により固定される。加工部4は、周方向に沿って複数(実施形態では8個)の区分4A~4Hが構成される。区分4A~4Hは、セグメントとも言い、砥粒3の大きさやパターンが異なる。砥粒3の大きさとは、砥粒3の粒子の大きさをあらわす粒度や、平均粒径を含む。また、パターンとは、砥粒3の間隔T(粗密:密度)や、砥粒3の配置や、砥粒3の有無や、砥粒3の混在や、周方向長さLを示す。例えば、区分4Aと区分4Bとは、砥粒3の間隔Tや配置であるパターンが同じであるが、砥粒3の大きさ(粒度や平均粒径)が異なる。区分4Aと区分4Cとは、砥粒3の大きさが同じであるが、パターンのうちの間隔Tが異なる。区分4Aと区分4Dとは、砥粒3の大きさおよび間隔Tが同じであるが、パターンのうちの配置が異なる。区分4Aと区分4Eとは、砥粒3の間隔Tが同じであるが、区分4Eはパターンのうちの大きさの異なる砥粒3が混在している。大きさの異なる砥粒3が混在している場合は、大きさの異なる砥粒3がランダムに混在していること、および大きさの異なる砥粒3が整列して混在していることを含む。区分4Aと区分4Fとは、パターンのうちの砥粒3の有無で異なる。区分4A~4Hの少なくとも2つの関係は、パターンのうちの周方向長さLが異なっていてもよい。区分4Gと区分4Hのように、砥粒3の大きさやパターンが同じものが存在してもよく、周方向で隣接していてもよい。各区分4A~4Hの境目は、砥粒3の大きさやパターンの異なりにより生じるものであってもよく、溝が形成されていてもよい。各区分4A~4Hの周方向の順番は特に限定されるものではない。
【0015】
このように、実施形態の砥石1は、砥粒3が固定される加工部4が回転の周方向に沿って配置される砥石1であって、加工部4は、周方向に沿って複数の区分4A~4Hを構成し、複数の区分4A~4Hは、砥粒3の大きさやパターンが異なる。
【0016】
ここで、例えば、一般の砥石は、2種類のふるい目を使って砥粒のサイズを選別し、台金の周方向に沿って砥粒を溶着したものがある。そのため、一般の砥石は、砥粒サイズが一定の寸法範囲のなかで大小サイズがランダムに分布する。この一般の砥石は、研削の初期は大きなサイズの砥粒の刃により効率良く加工できるが、時間経過とともに砥粒の摩耗が進行して加工効率が低下する。一般の砥石は、理想的には、摩耗した大きな砥粒が台金に溶着された溶金との境界で破断または脱落し、これにより表れた小さなサイズの砥粒の刃先により加工効率が向上する砥粒循環によって、全ての砥粒を有効利用して寿命に至ることを期待している。しかし、一般の砥石は、装置側の砥石への押付力の制限などにより摩耗した大きな砥粒が残存し砥粒循環が効果的に行われないおそれがある。
【0017】
この一般の砥石に対し、実施形態の砥石1によれば、加工部4の複数の区分4A~4Hが砥粒3の大きさやパターンが異なるため、疑似的な砥粒循環を生じさせることができ、加工効率を向上できる。例えば、放射能環境下のような加工環境において、研削加工を行う場合、頻繁に砥石1を交換することが難しいため、1つの砥石1で加工量をできるだけ確保する必要がある。実施形態の砥石1によれば、加工効率の向上によって、1つの砥石1で加工量をきるだけ確保できる。さらに、実施形態の砥石1によれば、加工部4の複数の区分4A~4Hが砥粒3の大きさやパターンが異なるため、加工時に振動が発生することで、例えば、燃料デブリのような硬度が一定でない加工対象Gの場合に振動によって加工効率を向上できる。例えば、砥石1の固有振動数と等しい振動を与えるように共振に近い回転数とすることで、加工効率を向上できる。また、実施形態の砥石1によれば、回転を正逆反転させることによって、砥粒を有効利用することができ、1つの砥石1で加工量をきるだけ確保できる。
【0018】
また、実施形態の砥石1では、加工部4は、回転の軸(軸心S)を中心とした周端面1Aaに形成される。
【0019】
この実施形態の砥石1によれば、周端面1Aaは、加工対象Gに回転移動しながら接触する部分であり、当該周端面1Aaに加工部4を形成することで、加工効率の向上に寄与できる。
【0020】
図3は、実施形態に係る砥石の側面図である。
【0021】
実施形態の砥石1では、図3に示すように、台金1Aにおいて周端面1Aaに連続して回転の軸(軸心S)の延在方向に向く側面1Abにも加工部5が設けられている。加工部5は、周端面1Aaの加工部4と同様に、周方向に沿って複数(実施形態では8個)の区分5A~5Hを構成し、複数の区分5A~5Hは、砥粒3の大きさやパターンが異なる。各区分5A~5Hの境目は、砥粒3の大きさやパターンの異なりにより生じるものであってもよく、溝が形成されていてもよい。
【0022】
この実施形態の砥石1によれば、周端面1Aaの加工部4によって加工が進むと、加工により形成された加工対象Gの凹部の側壁に側面1Abが接触する。従って、実施形態の砥石1によれば、この側面1Abに加工部5が形成されることで、加工部5によって加工を行うことができ、加工効率の向上に寄与できる。また、実施形態の砥石1によれば、回転移動しながらスライド移動したり、回転移動しながら傾斜移動したりすることで周端面1Aaおよび側面1Abが加工対象Gに接触するため、側面1Abに加工部5が形成されることで、加工部5によって加工を行うことができ、加工効率の向上に寄与できる。加工部5は、砥粒3の大きさやパターンが異なる複数の区分5A~5Hを構成するため、加工部4と同様に加工効率を向上できる。
【0023】
図4は、実施形態に係る砥石の周端面を視た平面図である。
【0024】
実施形態の砥石1では、図4に示すように、砥粒3が固定される加工部6が回転の周方向に沿って配置される。加工部6は、台金1Aの周端面1Aaに設けられ、複数の凸部6Aおよび凹部6Bを有する。凸部6Aと凹部6Bは、台金1Aの周端面1Aaにおいて径方向に向けた凹凸として設けられ、回転の軸(軸心S)の延在方向に沿って交互に配置される。凸部6Aと凹部6Bは、終端の無い環状に形成されていてもよく、螺旋状に形成されていてもよい。凸部6Aと凹部6Bは、その凹凸形状の表面に砥粒3が固定される。この砥粒3は、例えば、砥粒サイズが一定の寸法範囲とされてもよく、砥粒サイズが一定の寸法範囲のなかで大小サイズがランダムに分布されてもよい。
【0025】
この実施形態の砥石1によれば、回転移動しながらスライド移動することで、スライド移動の方向に応じて各凸部6Aの表面やエッジが加工対象Gに対して異なる状態で接触するため、砥粒3による研削状態に変化をもたらすことができ、疑似的な砥粒循環を生じさせ、加工効率を向上できる。
【0026】
なお、加工部6の凸部6Aと凹部6Bは、台金1Aの形状によらず砥粒3の砥粒サイズによって構成してもよい。また、加工部6の凸部6Aの凹部6Bに加えて、加工部4や加工部5を適用してもよい。
【0027】
図5および図6は、実施形態に係る砥石の側面図である。
【0028】
実施形態の砥石1では、図5および図6に示すように、砥粒3が固定される加工部7が回転の周方向に沿って配置される。加工部7は、台金1Aの周端面1Aaに設けられ、複数の凸部7Aおよび凹部7Bを有する。凸部7Aと凹部7Bは、台金1Aの周端面1Aaにおいて径方向に向けた凹凸として設けられ、周方向に沿って交互に配置される。図5に示す凸部7Aおよび凹部7Bは、凸部7Aが頂部7Aaに向けて径方向に突出する傾斜面で形成され、凹部7Bが頂部7Aaの間で前記傾斜面が径方向に凹む形状で形成される。また、図6に示す凸部7Aおよび凹部7Bは、凸部7Aが径方向に突出する突起として形成され、凹部7Bが突起の間で凹む形状で形成される。凸部7Aおよび凹部7Bは、図5および図6で示す側面視の形状が回転の軸(軸心S)の延在方向に連続して形成される。凸部7Aと凹部7Bは、その凹凸形状の表面に砥粒3が固定される。この砥粒3は、例えば、砥粒サイズが一定の寸法範囲とされてもよく、砥粒サイズが一定の寸法範囲のなかで大小サイズがランダムに分布されてもよい。
【0029】
この実施形態の砥石1によれば、回転移動することで、回転移動の方向に応じて凸部7Aおよび凹部7Bの表面やエッジが加工対象Gに対して異なる状態で接触するため、砥粒3による研削状態に変化をもたらすことができ、疑似的な砥粒循環を生じさせ、加工効率を向上できる。
【0030】
なお、加工部7の凸部7Aと凹部7Bは、台金1Aの形状によらず砥粒3の砥粒サイズによって構成してもよい。また、加工部7の凸部7Aの凹部7Bに加えて、加工部4や加工部5を適用してもよい。また、加工部7の凸部7Aの凹部7Bに加えて、加工部6の凸部6Aの凹部6Bを適用してもよい。
【符号の説明】
【0031】
1 砥石
1A 台金
1Aa 周端面
1Ab 側面
3 砥粒
4 加工部
4A,4B,4C,4D,4E,4F,4G,4H 区分
5 加工部
5A,5B,5C,5D,5E,5F,5G,5H 区分
6 加工部
6A 凸部
6B 凹部
7 加工部
7A 凸部
7B 凹部
S 軸心(回転の軸)
図1
図2
図3
図4
図5
図6