(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023077962
(43)【公開日】2023-06-06
(54)【発明の名称】伸長量計測装置
(51)【国際特許分類】
E04G 21/12 20060101AFI20230530BHJP
G01B 5/00 20060101ALI20230530BHJP
【FI】
E04G21/12 104B
G01B5/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021191488
(22)【出願日】2021-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】592182573
【氏名又は名称】オックスジャッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 寛
(72)【発明者】
【氏名】塩塚 正吾
(72)【発明者】
【氏名】山崎 啓治
(72)【発明者】
【氏名】山形 昭博
(72)【発明者】
【氏名】東 秀洋
【テーマコード(参考)】
2F062
【Fターム(参考)】
2F062AA02
2F062BB03
2F062EE01
2F062EE62
2F062FF13
2F062GG37
2F062GG57
2F062MM06
(57)【要約】
【課題】PC鋼棒の先端位置の変位量を、緊張装置を取り外さずに検知可能にする伸長量計測装置を提供する。
【解決手段】伸長量計測装置1は、PC鋼棒7の突出部分7aに装着される定着用ナット21と、PC鋼棒7の先端部7bが挿入され取付けられるテンションロッド11と、テンションロッド11に力を付与する油圧ジャッキ13と、を有しPC鋼棒7に緊張力を付与するPC緊張装置3に設けられ、PC鋼棒7の伸長量を計測する。伸長量計測装置1は、テンションロッド11に対してスライド可能に挿通されるとともに付勢力を受けて一端がPC鋼棒7の右端面7cに突当てられており、テンションロッド11の外に露出した露出部分を含む測定用ロッドと、測定用ロッドの露出部分の変位量を取得する変位量取得部と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PC鋼棒が設置される構造物上の支圧板から突出する前記PC鋼棒の突出部分に装着される定着用ナットと、前記定着用ナットから更に突出した前記PC鋼棒の先端部が挿入され取付けられるPC取付部が一端に設けられたテンションロッドと、前記支圧板に反力を取って前記PC鋼棒の突出方向への力を前記テンションロッドに付与するジャッキと、を有し前記PC鋼棒に緊張力を付与するPC緊張装置に設けられ、前記PC鋼棒の伸長量を計測する伸長量計測装置であって、
前記テンションロッドに対して前記突出方向と平行にスライド可能に挿通されるとともに前記PC鋼棒の先端面に向けた付勢力を受け、当該付勢力により一端が前記PC鋼棒の先端面に突当てられており、前記テンションロッドの外に露出した露出部分を含む測定用ロッドを備える伸長量計測装置。
【請求項2】
前記測定用ロッドの前記露出部分の変位量を取得する変位量取得部を更に備える請求項1に記載の伸長量計測装置。
【請求項3】
前記変位量取得部は、
前記ジャッキの外周面に取付けられたエンコーダ本体と、前記エンコーダ本体から前記突出方向に延び出す測定用ワイヤと、を含むワイヤエンコーダと、
前記測定用ロッドの前記露出部分から前記突出方向に交差する方向に張り出し前記測定用ワイヤが接続されるワイヤ接続部と、を有する、請求項2に記載の伸長量計測装置。
【請求項4】
前記PC取付部は、前記テンションロッドの前記一端の端面に形成され前記PC鋼棒の前記先端部が挿入され保持されるPC挿入孔を有しており、
前記測定用ロッドは、前記PC挿入孔から前記テンションロッドの外部まで前記突出方向に貫通するロッド挿通孔に挿通されスライド可能であり、前記PC挿入孔内で前記一端を前記PC鋼棒の先端面に突当てている、請求項2又は3に記載の伸長量計測装置。
【請求項5】
PC鋼棒が設置される構造物上の支圧板から突出する前記PC鋼棒の突出部分に装着される定着用ナットと、前記定着用ナットから更に突出した前記PC鋼棒の先端部が挿入され取付けられるPC取付部が一端に設けられたテンションロッドと、前記支圧板に反力を取って前記PC鋼棒の突出方向への力を前記テンションロッドに付与するジャッキと、を有し前記PC鋼棒に緊張力を付与するPC緊張装置に設けられ、前記PC鋼棒の伸長量を計測する伸長量計測装置であって、
前記テンションロッドのうち前記ジャッキの外に露出した露出部分の変位量を取得する変位量取得部を備える伸長量計測装置。
【請求項6】
前記変位量取得部は、
前記ジャッキの外周面に取付けられたエンコーダ本体と、前記エンコーダ本体から前記突出方向に延び出す測定用ワイヤと、を含むワイヤエンコーダと、
前記テンションロッドの前記露出部分から前記突出方向に交差する方向に張り出し前記測定用ワイヤが接続されるワイヤ接続部と、を有する、請求項5に記載の伸長量計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PC鋼棒の伸長量を計測する伸長量計測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野の技術として、下記特許文献1に記載のPC緊張材用ジャッキが知られている。この種のPC鋼棒の緊張処理では、PC鋼棒に付与した圧力とPC鋼棒の伸長量とが管理される。特許文献1のジャッキはPC鋼棒を定着する定着用ナットを回転させるソケットレンチを有し、このソケットレンチの回転数が検知されることで定着用ナットの締め込み代がPC鋼棒の伸長量として間接的に取得される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、PC鋼棒の伸長量を更に高精度に求めるためには、上記のソケットレンチ等のような誤差を含みうる間接的な要素を可能な限り排除し、PC鋼棒の先端位置の変位量が可能な限り直接的に取得されることが好ましい。例えば、PC鋼棒の緊張後に緊張装置を取り外し、PC鋼棒の先端位置の変位量をノギス等で直接的に計測するといったことが考えられる。しかしながら、この方法では、PC鋼棒の伸長量が規格値に収まるまでPC鋼棒の緊張と緊張装置の取り外しとを繰返し行うことになり、作業負担が大きくなる。このような課題に鑑み、本発明は、PC鋼棒の先端位置の変位量を、緊張装置を取り外さずに検知可能にする伸長量計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の伸長量計測装置は、PC鋼棒が設置される構造物上の支圧板から突出するPC鋼棒の突出部分に装着される定着用ナットと、定着用ナットから更に突出したPC鋼棒の先端部が挿入され取付けられるPC取付部が一端に設けられたテンションロッドと、支圧板に反力を取ってPC鋼棒の突出方向への力をテンションロッドに付与するジャッキと、を有しPC鋼棒に緊張力を付与するPC緊張装置に設けられ、PC鋼棒の伸長量を計測する伸長量計測装置であって、テンションロッドに対して突出方向と平行にスライド可能に挿通されるとともにPC鋼棒の先端面に向けた付勢力を受け、当該付勢力により一端がPC鋼棒の先端面に突当てられており、テンションロッドの外に露出した露出部分を含む測定用ロッドを備える。
【0006】
本発明の伸長量計測装置は、測定用ロッドの露出部分の変位量を取得する変位量取得部を更に備えてもよい。
【0007】
変位量取得部は、ジャッキの外周面に取付けられたエンコーダ本体と、エンコーダ本体から突出方向に延び出す測定用ワイヤと、を含むワイヤエンコーダと、測定用ロッドの露出部分から突出方向に交差する方向に張り出し測定用ワイヤが接続されるワイヤ接続部と、を有する、こととしてもよい。
【0008】
PC取付部は、テンションロッドの一端の端面に形成されPC鋼棒の先端部が挿入され保持されるPC挿入孔を有しており、測定用ロッドは、PC挿入孔からテンションロッドの外部まで突出方向に貫通するロッド挿通孔に挿通されスライド可能であり、PC挿入孔内で一端をPC鋼棒の先端面に突当てている、こととしてもよい。
【0009】
本発明の伸長量計測装置は、PC鋼棒が設置される構造物上の支圧板から突出するPC鋼棒の突出部分に装着される定着用ナットと、定着用ナットから更に突出したPC鋼棒の先端部が挿入され取付けられるPC取付部が一端に設けられたテンションロッドと、支圧板に反力を取ってPC鋼棒の突出方向への力をテンションロッドに付与するジャッキと、を有しPC鋼棒に緊張力を付与するPC緊張装置に設けられ、PC鋼棒の伸長量を計測する伸長量計測装置であって、テンションロッドのうちジャッキの外に露出した露出部分の変位量を取得する変位量取得部を備える。
【0010】
変位量取得部は、ジャッキの外周面に取付けられたエンコーダ本体と、エンコーダ本体から突出方向に延び出す測定用ワイヤと、を含むワイヤエンコーダと、テンションロッドの露出部分から突出方向に交差する方向に張り出し測定用ワイヤが接続されるワイヤ接続部と、を有する、こととしてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、PC鋼棒の先端位置の変位量を、緊張装置を取り外さずに検知可能にする伸長量計測装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態の伸長量計測装置が適用されるPC緊張装置の外観を示す側面図である。
【
図2】(a)~(c)は、第1実施形態のPC緊張装置を用いてPC鋼棒に緊張力を付与する緊張処理の各段階を示す断面図である。
【
図3】測定用ロッドの左端部近傍を拡大して示す断面図である。
【
図4】(a)~(c)は、第2実施形態のPC緊張装置を用いてPC鋼棒に緊張力を付与する緊張処理の各段階を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1実施形態)
以下、図面を参照しながら本発明に係る伸長量計測装置の実施形態について詳細に説明する。
図1は、本実施形態の伸長量計測装置1が適用されるPC緊張装置3の外観を示す側面図である。PC緊張装置3は、コンクリート構造物5に対してプレストレスを付与するべくPC鋼棒7に対して緊張力を付与するための装置である。コンクリート構造物5には、内部を貫通するようにシース9が埋込まれており、当該シース9内にPC鋼棒7が挿通されている。PC鋼棒7の一端はコンクリート構造物5の一端側から外部に突出するように配置され、この突出した部分にPC緊張装置3が取付けられる。PC鋼棒7の他端は、図示を省略するが、コンクリート構造物5の他端側において当該コンクリート構造物5の他端側に既に定着されているものとする。
【0014】
PC緊張装置3は、PC鋼棒7に取付けられるテンションロッド11と、テンションロッド11に圧力を付与してPC鋼棒7への引張力を付与する油圧ジャッキ13と、を備えている。油圧ジャッキ13は左右方向に伸縮するラム部13bを有している。油圧ジャッキ13の外周面には作動オイルを導入/導出するための油圧ポート13aが設けられている。また、油圧ジャッキ13の外周面には、ワイヤエンコーダ15のエンコーダ本体15aが取付けられており、更にナット回転装置17が設けられている。ナット回転装置17は、所定の機構を介してPC鋼棒7の定着用ナット21(
図2参照)に係合しており、定着用ナット21を回転させる。ナット回転装置17には、定着用ナット21の回転操作を行うための手動ハンドル17aが設けられている。
【0015】
図2(a)~(c)は、PC鋼棒7に緊張力を付与する緊張処理の各段階を示す断面図である。
図2(a)~(c)はPC緊張装置3の内部構造等の特徴を誇張して示し、各部位の形状や大きさを正確に表わすものではない。以下の説明で「右/左」、「右向き/左向き」等の語を用いる場合には、
図2における右左に対応させるものとする。なお、
図2においてはナット回転装置17の図示が省略されている。
図2(a)はPC鋼棒7に緊張力を付与する前の段階を示し、
図2(b)はPC鋼棒7に油圧ジャッキ13の圧力が作用している緊張途中の段階を示し、
図2(c)は定着用ナットが移動され油圧ジャッキ13の圧力が解除されてPC鋼棒7が定着された段階を示す。以下では、
図2(a)の段階を「緊張前段階」、
図2(b)の段階を「緊張段階」、
図2(a)の段階を「定着段階」と呼ぶ。
【0016】
図2(a)に示されるように、コンクリート構造物5の表面には金属製の支圧板19が設置されている。シース9内に挿通されたPC鋼棒7は、支圧板19の中央の孔を通過してコンクリート構造物5から右向きに突出している。PC鋼棒7のうち支圧板19から右向きに突出した部分を「突出部分7a」と呼ぶ。この突出部分7aには雄ネジが形成されており、当該雄ネジに螺合されるように定着用ナット21が装着されている。定着用ナット21の左端面が支圧板19に接触している。突出部分7aのうちの右部分は、定着用ナット21の右端から更に右向きに突出している。このようにPC鋼棒7のうち定着用ナット21の右端から更に右向きに突出した部分を「先端部7b」と呼ぶ。
【0017】
テンションロッド11は、円柱状をなし左右方向に延びている。テンションロッド11の左端面には、右向きに穿孔された有底のPC挿入孔23(PC取付部)が形成されており、PC挿入孔23に対してPC鋼棒7の先端部7bが挿入され取付けられる。PC挿入孔23内には雌ネジが形成されており、当該雌ネジに対してPC鋼棒7の先端部7bの雄ネジがねじ込まれることで、PC鋼棒7とテンションロッド11とが同軸で強固に結合されている。テンションロッド11は油圧ジャッキ13の中央に挿通されている。テンションロッド11の右端部は油圧ジャッキ13から右側に突出している。油圧ジャッキ13から突出したテンションロッド11の右端部に、テンションナット27が取付けられている。テンションナット27の左端面が油圧ジャッキ13のラム部13bに接触している。
【0018】
テンションロッド11の中央には、前述のPC挿入孔23と同軸で当該PC挿入孔23からテンションロッド11の外部まで左右方向に貫通するロッド挿通孔11aが形成されている。そして、ロッド挿通孔11aには測定用ロッド29が挿通されている。測定用ロッド29は、ロッド挿通孔11aに案内されて軸方向(左右方向)に当該ロッド挿通孔11a内をスライド可能である。測定用ロッド29の左端部は、PC挿入孔23内に入り込んでPC鋼棒7の右端面7c(先端面)に接触している。また測定用ロッド29の右端部は、テンションロッド11の右端から更に右側に突出して外部に露出している。また、測定用ロッド29は、テンションロッド11に対して左向きに付勢されているので、測定用ロッド29の左端はPC鋼棒7の右端面7cに押し当てられている。
【0019】
上記のように測定用ロッド29を付勢するための具体的な付勢機構は
図3に示される。
図3は、測定用ロッド29の左端部近傍を拡大して示す断面図である。測定用ロッド29の左端には、ロッド挿通孔11aよりも大径の球形部29aが形成されている。この球形部29a近傍において、測定用ロッド29の軸部の周囲を巻くようにコイルバネ31が設置されており、当該コイルバネ31が球形部29aとPC挿入孔23の右端面とに挟み込まれ圧縮されている。このコイルバネ31の反発力によって、前述の通り、測定用ロッド29はテンションロッド11に対して左向きに付勢され、測定用ロッド29の左端はPC鋼棒7の右端面7cに押し当てられている。なお、
図2においては、図の煩雑化を避けるために、上記のような付勢機構の詳細な図示が省略されている。
【0020】
油圧ジャッキ13はテンションロッド11の左端部及び定着用ナット21の周囲を囲繞している。具体的には、油圧ジャッキ13の中央で左右方向に延びる中央孔内に、テンションロッド11が保持されており、更にテンションロッド11の左側の位置でPC鋼棒7に取付けられた定着用ナット21もこの中央孔内に収められている。また、油圧ジャッキ13の左端は支圧板19に当接している。なお、油圧ジャッキ13は、ラム部13bを左右方向に駆動するジャッキ本体とジャッキ本体を支持し支圧板19に当接されるラムチェアとで構成されてもよい。
【0021】
以上のような構成のPC緊張装置3において、油圧ジャッキ13が駆動されると、
図2(b)に示されるようにラム部13bが右向きに伸び出すことで、油圧ジャッキ13は支圧板19に反力を取ってテンションナット27を右に押す。そうすると、テンションナット27及びテンションロッド11が油圧ジャッキ13内で右向きに移動し、テンションロッド11に引っ張られるようにしてPC鋼棒7が伸長する(緊張段階)。そして、コンクリート構造物5の内部で伸長したPC鋼棒7が支圧板19から右に伸び出し、定着用ナット21が支圧板19から浮いて右向きに移動する。この状態からナット回転装置17により定着用ナット21が回転されると、
図2(c)に示されるように、定着用ナット21が左向きに移動して支圧板19に当接される。その後、油圧ジャッキ13の油圧が解除されて、PC鋼棒7の右端部が定着される(定着段階)。
【0022】
このPC鋼棒7の緊張処理においては、緊張によりPC鋼棒7に付与された圧力と、緊張により伸長したPC鋼棒7の伸長量と、を管理することが必要である。ここで管理すべきPC鋼棒7の伸長量は、PC鋼棒7のうち緊張前段階(
図2(a))でコンクリート構造物5の内部に挿通されていた部分の伸長量であり、突出部分7aの伸長量は含まない。突出部分7aは、緊張段階(
図2(b))において油圧ジャッキ13の圧力を受けて定着用ナット21及びPC挿入孔23と一緒に僅かに伸長するが、定着段階(
図2(c))にあっては油圧ジャッキ13の圧力が解除されて緊張前段階(
図2(a))の長さに戻る。従って、緊張前段階(
図2(a))を基準とした定着段階(
図2(c))のPC鋼棒7の右端面7cの変位量が、上記の管理すべきPC鋼棒7の伸長量に相当する。
【0023】
PC緊張装置3は、PC鋼棒7の伸長量としてPC鋼棒7の右端面7cの変位量を計測するために、伸長量計測装置1を備えている。伸長量計測装置1は、前述の測定用ロッド29と、測定用ロッド29のうち右端側でテンションロッド11の外に露出した露出部分29cの変位量を取得する変位量取得部33と、を備えている。変位量取得部33は、ワイヤエンコーダ15と、当該ワイヤエンコーダ15と測定用ロッド29との間に介在するワイヤ接続金具35(ワイヤ接続部)と、を有している。ワイヤ接続金具35は、測定用ロッド29の露出部分29cに対して取付けられており露出部分29cからPC鋼棒7の径方向の外側に向けて張出している。
【0024】
ワイヤエンコーダ15は、前述の通り油圧ジャッキ13の外周面に取付けられたエンコーダ本体15aと、エンコーダ本体15aから右向きに延び出す測定用ワイヤ15bと含んでいる。ワイヤエンコーダ15は、エンコーダ本体15aからの測定用ワイヤ15bの引き出し量を検知することで、測定用ワイヤ15bの先端の変位量を検知するものである。このようなワイヤエンコーダ15は公知のものであるので、更なる詳細な説明を省略する。測定用ワイヤ15bの右端部がワイヤ接続金具35の外周側の端部に接続されており、測定用ワイヤ15bはPC鋼棒7の伸長方向に対して平行に延びている。
【0025】
以上のような構造の伸長量計測装置1によれば、PC緊張装置3によりPC鋼棒7に緊張力が付与されPC鋼棒7が伸長すると、コンクリート構造物5及び支圧板19を基準としてPC鋼棒7の右端面7cが右向きに移動する。そうすると、右端面7cに押し当てられた測定用ロッド29及びワイヤ接続金具35も追従して同量で右に変位する。そして、ワイヤ接続金具35の右への変位量と同量で測定用ワイヤ15bがエンコーダ本体15aから引き出され、ワイヤエンコーダ15の計測値として取得される。
【0026】
従って、伸長量計測装置1によれば、PC鋼棒7の緊張前段階と定着段階とのワイヤエンコーダ15による計測値の差を取ることにより、PC鋼棒7の右端面7cの変位量を取得することができ、ひいては、上記の管理すべきPC鋼棒7の伸長量を取得することができる。具体的な手法としては、緊張前段階においてワイヤエンコーダ15の計測値が予めゼロにセットされ、定着段階におけるワイヤエンコーダ15の計測値が上記の管理すべきPC鋼棒7の伸長量とされ、例えばPC鋼棒7の緊張管理のデータベースに記録される。
【0027】
このような伸長量計測装置1による作用効果について説明する。PC鋼棒7の緊張処理においては、PC鋼棒7の伸長量を規格値に収める必要があり、例えば規格値は設計値±0.5mmといったものであるので、伸長量の計測には高い精度が求められる。PC鋼棒7の伸長量を高精度に計測するためには、誤差を含みうる間接的な要素を可能な限り排除し、PC鋼棒7の右端面7cの変位量を直接的に取得することが好ましい。例えば、従来であれば、PC鋼棒の緊張後に伸長量計測装置を取り外し、PC鋼棒の右端面の位置の変位量をノギス等で直接的に計測する、といった作業を、伸長量が規格値に収まるまで繰返し行うことになる。
【0028】
これに対し、伸長量計測装置1によれば、テンションロッド11に測定用ロッド29が挿通され、測定用ロッド29の一端がPC鋼棒7の右端面7cに突当てられる。測定用ロッド29の他端部はテンションロッド11の外に露出しており、この他端部の変位量が変位量取得部33により取得される。従って、定着段階において、PC鋼棒7からPC緊張装置3を取り外すことなく、PC鋼棒7の右端面7cの変位量(すなわち、管理すべきPC鋼棒7の伸長量)を直接的に計測することができる。
【0029】
更に、伸長量計測装置1によれば、緊張段階においても、PC鋼棒7からPC緊張装置3を取り外すことなく、PC鋼棒7の右端面7cの変位量を計測することができる。そして、この計測値に所定の補正演算を施せば、定着段階に移行した場合における右端面7cの変位量(すなわち、管理すべきPC鋼棒7の伸長量)を算出することができる。従って、この算出値が規格値に達した時点で、緊張段階から定着段階に移行すればよい。すなわち、緊張段階においては、伸長量の確認のために油圧ジャッキ13の圧力を解除したりPC緊張装置3を取り外したりする必要はなく、上記の算出値が規格値に達するまで油圧ジャッキ13を駆動し、定着段階に移行すればよい。
【0030】
上記の補正演算について説明する。緊張段階においてはPC鋼棒7の突出部分7aも油圧ジャッキ13の圧力によって僅かに伸長しているので、緊張段階で得られる計測値には、管理すべきPC鋼棒7の伸長量に加えて突出部分7aの伸長量分も含まれていることになる。その後、定着段階に移行すれば油圧ジャッキ13の圧力が解除されることで、突出部分7aの伸長量はゼロに戻る。従って、緊張段階で得られた計測値から、突出部分7aの伸長量分を除去する補正演算を行うことで、定着段階に移行した場合おける右端面7cの変位量(すなわち、管理すべきPC鋼棒7の伸長量)が求められる。このような補正演算を可能にするためには、突出部分7aの伸長特性を実験等により事前に取得しておけばよい。
【0031】
従って、伸長量計測装置1によれば、緊張段階においても管理すべきPC鋼棒7の伸長量を検知することができるので、油圧ジャッキ13の圧力を頻繁に解除することなく、伸長量が規格値に達したか否かを確認することができる。また、測定用ロッド29はテンションロッド11に対してスライド可能に挿通されているので、テンションロッド11が油圧ジャッキ13の圧力によって伸縮したとしても、この伸縮の影響が測定用ロッド29には及ばない。従って、上記の補正演算にはテンションロッド11の伸縮に関する要素は含まれず、補正演算をシンプルにすることができる。
【0032】
(第2実施形態)
続いて、
図4を参照しながら本発明の第2実施形態に係るPC緊張装置53について説明する。PC緊張装置53では、第1実施形態のPC緊張装置3における測定用ロッド29(
図2)が省略されており、ワイヤ接続金具35(
図2)に代えて、ワイヤ接続金具65がテンションロッド11の右端部に取付けられている。これ以外のPC緊張装置53の構成については、PC緊張装置3と同様であるので、図面では互いに同一又は同等の構成要素に同一の符号を付すこととして重複する説明を省略する。
【0033】
また、
図4(a)はPC鋼棒7に緊張力を付与する前の「緊張前段階」を示し、
図2(b)はPC鋼棒7に油圧ジャッキ13の圧力が作用している緊張途中の「緊張段階」を示し、
図2(c)は定着用ナットが移動され油圧ジャッキ13の圧力が解除された「定着段階」を示す。各段階におけるPC緊張装置53の動作は第1実施形態のPC緊張装置3と同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0034】
PC緊張装置53が備える伸長量計測装置51は、テンションロッド11のうち油圧ジャッキ13から右側に突出して外に露出した露出部分11cの変位量を取得する変位量取得部63を備えている。変位量取得部63は、ワイヤエンコーダ15と、ワイヤ接続金具65と、を有している。ワイヤ接続金具65は、テンションロッド11の右端部に取付けられており、PC鋼棒7の径方向の外側に向けて張出している。このワイヤ接続金具65の外周側の端部に対してワイヤエンコーダ15の測定用ワイヤ15bの右端部が接続されており、測定用ワイヤ15bはPC鋼棒7の伸長方向に対して平行に延びている。
【0035】
このような構造のPC緊張装置53及び伸長量計測装置51においても、定着段階(
図4(c))において、PC鋼棒7からPC緊張装置3を取り外すことなく、PC鋼棒7の右端面7cの変位量(すなわち、管理すべきPC鋼棒7の伸長量)を計測することができる。更に、伸長量計測装置51によれば、緊張段階においても、PC鋼棒7からPC緊張装置53を取り外すことなく、PC鋼棒7の右端面7cの変位量を計測することができる。そして、この計測値に所定の補正演算を施せば、定着段階に移行した場合における右端面7cの変位量(すなわち、管理すべきPC鋼棒7の伸長量)を算出することができる。従って、この算出値が規格値に達した時点で、緊張段階から定着段階に移行すればよい。すなわち、緊張段階においては、伸長量の確認のために油圧ジャッキ13の圧力を解除したりPC緊張装置53を取り外したりする必要はなく、上記の算出値が規格値に達するまで油圧ジャッキ13を駆動し、定着段階に移行すればよい。
【0036】
上記の補正演算について説明する。伸長量計測装置51では、ワイヤ接続金具65がテンションロッド11の右端部に取付けられており、緊張段階においてはPC鋼棒7の突出部分7aとテンションロッド11も僅かに伸長している。従って、緊張段階で得られる計測値には、管理すべきPC鋼棒7の伸長量に加えて、突出部分7aの伸長量分とテンションロッド11の伸長量分と、が含まれていることになる。その後、定着段階に移行すれば油圧ジャッキ13の圧力が解除されることで、突出部分7aの伸長量及びテンションロッド11の伸長量はゼロに戻る。従って、緊張段階で得られた計測値から、突出部分7aの伸長量分とテンションロッド11の伸長量分とを除去する補正演算を行うことで、定着段階に移行した場合おける右端面7cの変位量(すなわち、管理すべきPC鋼棒7の伸長量)が求められる。このような補正演算を可能にするためには、突出部分7aの伸長特性及びテンションロッド11の伸長特性を実験等により事前に取得しておけばよい。
【0037】
従って、伸長量計測装置51によれば、第1実施形態の伸長量計測装置1と同様に、緊張段階においても管理すべきPC鋼棒7の伸長量を検知することができるので、油圧ジャッキ13の圧力を頻繁に解除することなく、伸長量が規格値に達したか否かを確認することができる。なお、第1実施形態の伸長量計測装置1と比較すれば、本実施形態の伸長量計測装置51では、上記の補正演算にテンションロッド11の伸縮に関する要素が含まれており、補正演算はやや複雑化している。換言すれば、第1実施形態の伸長量計測装置1は、補正演算をよりシンプルにすることが出来る点において本実施形態の伸長量計測装置51よりも好ましい。
【0038】
本発明は、上述した実施形態を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した様々な形態で実施することができる。また、上述した実施形態に記載されている技術的事項を利用して、実施例の変形例を構成することも可能である。各実施形態等の構成を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0039】
例えば、第1実施形態における変位量取得部33としては、ワイヤエンコーダ15を利用する構成に限られず、他の種々の機器を組み合わせて測定用ロッド29の露出部分29cの変位量を取得する変位量取得部33が構成されてもよい。また、伸長量計測装置1が変位量取得部33を備えることも必須ではない。例えば、支圧板19又は油圧ジャッキ13の外周面を基準とした露出部分29cの変位量を、作業者がノギス等を用いて別途手作業で計測するようにしてもよい。また、第2実施形態においても、変位量取得部63としては、ワイヤエンコーダ15を利用する構成に限られず、他の種々の機器を組み合わせてテンションロッド11の露出部分11cの変位量を取得する変位量取得部63が構成されてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1,51…伸長量計測装置、3,53…PC緊張装置、5…コンクリート構造物、7…PC鋼棒、7a…突出部分、7b…先端部、7c…右端面(先端面)、11…テンションロッド、11a…ロッド挿通孔、11c…露出部分、13…油圧ジャッキ、15…ワイヤエンコーダ、15a…エンコーダ本体、15b…測定用ワイヤ、19…支圧板、21…定着用ナット、23…PC挿入孔(PC取付部)、29…測定用ロッド、29c…露出部分、33,63…変位量取得部、35,65…ワイヤ接続金具(ワイヤ接続部)。