(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023077972
(43)【公開日】2023-06-06
(54)【発明の名称】サーマルプリントヘッドおよびサーマルプリンタ
(51)【国際特許分類】
B41J 2/335 20060101AFI20230530BHJP
B41J 2/34 20060101ALI20230530BHJP
【FI】
B41J2/335 101A
B41J2/34
B41J2/335 101C
B41J2/335 101E
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021191500
(22)【出願日】2021-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(72)【発明者】
【氏名】仲谷 吾郎
(72)【発明者】
【氏名】中西 雅寿
【テーマコード(参考)】
2C065
【Fターム(参考)】
2C065GA01
2C065GB01
2C065HA05
2C065JA02
2C065JA10
2C065JA13
2C065JC02
2C065JC06
2C065JE03
2C065JE04
2C065JE05
2C065JE07
2C065JE08
2C065JE09
2C065JE12
2C065JE19
(57)【要約】
【課題】省電力化を図ったサーマルプリントヘッドを提供する。
【解決手段】サーマルプリントヘッドA1は、ヘッド基板1と、抵抗体層4と、配線層3とを備える。抵抗体層4は、ヘッド基板1に支持される。抵抗体層4は、主走査方向xに配列された複数の発熱部41を有する。配線層3は、ヘッド基板1に支持される。配線層3は、複数の発熱部41への通電経路を構成する。抵抗体層4は、不純物がドープされたドープドシリコン、または、炭化ケイ素から選択される材料を含む。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
主走査方向に配列された複数の発熱部を有し、前記基板に支持された抵抗体層と、
前記複数の発熱部への通電経路を構成し、前記基板に支持された配線層と、
を備え、
前記抵抗体層は、不純物がドープされたドープドシリコン、または、炭化ケイ素から選択される材料を含む、
サーマルプリントヘッド。
【請求項2】
前記抵抗体層は、炭化ケイ素を含む、
請求項1に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項3】
前記抵抗体層は、ドープドシリコンを含む、
請求項1に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項4】
前記不純物は、ホウ素、リンあるいはヒ素のいずれかから選択される、
請求項3に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項5】
前記配線層は、前記複数の発熱部を露出させつつ、少なくとも一部が前記抵抗体層上に形成されている、
請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項6】
前記配線層は、前記基板の厚さ方向に積層された第1導体層および第2導体層を含み、
前記第1導体層は、前記厚さ方向において、前記基板と前記第2導体層との間に位置する、
前記第2導体層は、副走査方向における単位長さ当たりの抵抗値が前記複数の発熱部の各々よりも小さく、
前記第1導体層は、副走査方向における単位長さ当たりの抵抗値が前記複数の発熱部の各々と前記第2導体層との間をとる、
請求項5に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項7】
前記第2導体層の構成材料は、銅あるいはアルミニウムを含む、
請求項6に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項8】
前記配線層は、複数の第1帯状部と複数の第2帯状部とを含み、
前記複数の発熱部の各々は、前記基板の厚さ方向に見て、前記複数の第1帯状部の各々と前記複数の第2帯状部の各々との間に配置される、
請求項5ないし請求項7のいずれか一項に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項9】
前記複数の第1帯状部の各々は、前記複数の発熱部の各々に、副走査方向の一方から繋がり、
前記複数の第2帯状部の各々は、前記複数の発熱部の各々に、副走査方向の他方から繋がり、
前記複数の発熱部の各々を挟んで配置される前記複数の第1帯状部の各々と前記複数の第2帯状部の各々とは、副走査方向に見て、重なる、
請求項8に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項10】
前記抵抗体層は、主走査方向に配列された複数の分離部を含み、
前記複数の発熱部の各々は、前記複数の分離部の各々に形成されている、
請求項9に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項11】
前記抵抗体層および前記配線層を覆う保護層をさらに備える、
請求項1ないし請求項10のいずれか一項に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項12】
前記基板は、単結晶半導体を含む材料により構成された基材を含む、
請求項1ないし請求項11のいずれか一項に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項13】
前記基板は、前記基材と前記抵抗体層との間に挟まれた絶縁層をさらに含む、
請求項12に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項14】
前記基材は、前記抵抗体層に対向する主面と、前記主面から突き出し、かつ、主走査方向に延びる凸部とを有し、
前記複数の発熱部の各々は、前記凸部の上に形成されている、
請求項12または請求項13のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項15】
前記単結晶半導体は、シリコンである、
請求項12ないし請求項14のいずれか一項に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項16】
請求項1ないし請求項15のいずれか一項に記載のサーマルプリントヘッドと、
前記サーマルプリントヘッドに正対するプラテンと、
を備えるサーマルプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、サーマルプリントヘッドおよびサーマルプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
サーマルプリントヘッドを備えた感熱式あるいは熱転写式のサーマルプリンタが一般に普及している。特許文献1には、従来のサーマルプリントヘッドの一例が開示されている。同文献に記載されたサーマルプリントヘッドは、基板、配線層および抵抗体層を備える。配線層および抵抗体層は、基板上に形成される。抵抗体層は、複数の発熱部を有する。複数の発熱部は、各々に選択的に通電されることにより、印刷媒体を局所的に加熱するものである。特許文献1に記載のサーマルプリントヘッドにおいて、抵抗体層は、TaN(窒化タンタル)からなる。配線層は、各発熱部への通電経路を構成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、サーマルプリンタにおいて、省電力化が求められている。特に、携帯型であるモバイル用のプリンタにおいては、バッテリー駆動となるので、プリンタの消費電力の低減が必要不可欠となる。そのためには、サーマルプリンタの各構成部品の省電力化が必要となる。
【0005】
本開示は、上記事情に鑑みて考え出されたものであり、その目的は、省電力化を図ったサーマルプリントヘッドおよびサーマルプリンタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の側面によって提供されるサーマルプリントヘッドは、基板と、主走査方向に配列された複数の発熱部を有し、前記基板に支持された抵抗体層と、前記複数の発熱部への通電経路を構成し、前記基板に支持された配線層と、を備え、前記抵抗体層は、不純物がドープされたドープドシリコン、または、炭化ケイ素から選択される材料を含む。
【0007】
本開示の第2の側面によって提供されるサーマルプリンタは、第1の側面によって提供されるサーマルプリントヘッドと、前記サーマルプリントヘッドに正対するプラテンと、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示のサーマルプリントヘッドおよびサーマルプリンタによれば、省電力化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1実施形態にかかるサーマルプリントヘッドを示す平面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す平面図の一部を拡大した要部平面図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態にかかるサーマルプリントヘッドを備えるサーマルプリンタの部分拡大断面図であって、
図1のIII-III線に沿う断面図である。
【
図4】
図4は、
図3に示す断面の一部を拡大した要部断面図であって、
図2のIV-IV線に沿う断面図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態にかかるサーマルプリントヘッドの製造方法の一例(第1製造方法)を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、
図6に示す第1製造方法の一工程を示す要部断面図である。
【
図8】
図8は、
図6に示す第1製造方法の一工程を示す要部断面図である。
【
図9】
図9は、
図6に示す第1製造方法の一工程を示す要部拡大断面図である。
【
図20】
図20は、第1実施形態にかかるサーマルプリントヘッドの他の製造方法の一例(第2製造方法)を示すフローチャートである。
【
図21】
図21は、第1実施形態にかかるサーマルプリントヘッドの他の製造方法の一例(第3製造方法)を示すフローチャートである。
【
図22】
図22は、第1実施形態にかかるサーマルプリントヘッドの他の製造方法の一例(第4製造方法)を示すフローチャートである。
【
図23】
図23は、変形例にかかる第1実施形態のサーマルプリントヘッドの製造方法の一工程を示す要部平面図である。
【
図24】
図24は、第1実施形態の変形例にかかるサーマルプリントヘッドを示す要部平面図である。
【
図25】
図25は、第1実施形態の変形例にかかるサーマルプリントヘッドを示す要部拡大断面図である。
【
図26】
図26は、第1実施形態の他の変形例にかかるサーマルプリントヘッドを示す要部拡大断面図である。
【
図27】
図27は、第2実施形態にかかるサーマルプリントヘッドを示す要部拡大断面図である。
【
図28】
図28は、第2実施形態にかかるサーマルプリントヘッドの製造方法の一例を示すフローチャートである。
【
図29】
図29は、第2実施形態の変形例にかかるサーマルプリントヘッドを示す要部拡大断面図である。
【
図30】
図30は、第2実施形態の変形例にかかるサーマルプリントヘッドの製造方法の一例を示すフローチャートである。
【
図35】
図35は、変形例にかかるサーマルプリントヘッドを示す要部拡大平面図である。
【
図36】
図36は、変形例にかかるサーマルプリントヘッドを示す要部拡大平面図である。
【
図37】
図37は、変形例にかかるサーマルプリントヘッドを示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示のサーマルプリントヘッドおよびサーマルプリンタの好ましい実施の形態について、図面を参照して、以下に説明する。以下では、同一あるいは類似の構成要素に、同じ符号を付して、重複する説明を省略する。本開示における「第1」、「第2」、「第3」等の用語は、単にラベルとして用いたものであり、必ずしもそれらの対象物に順列を付することを意図していない。
【0011】
本開示において、「ある物Aがある物Bに形成されている」および「ある物Aがある物B(の)上に形成されている」とは、特段の断りのない限り、「ある物Aがある物Bに直接形成されていること」、および、「ある物Aとある物Bとの間に他の物を介在させつつ、ある物Aがある物Bに形成されていること」を含む。同様に、「ある物Aがある物Bに配置されている」および「ある物Aがある物B(の)上に配置されている」とは、特段の断りのない限り、「ある物Aがある物Bに直接配置されていること」、および、「ある物Aとある物Bとの間に他の物を介在させつつ、ある物Aがある物Bに配置されていること」を含む。同様に、「ある物Aがある物B(の)上に位置している」とは、特段の断りのない限り、「ある物Aがある物Bに接して、ある物Aがある物B(の)上に位置していること」、および、「ある物Aとある物Bとの間に他の物が介在しつつ、ある物Aがある物B(の)上に位置していること」を含む。また、「ある方向に見てある物Aがある物Bに重なる」とは、特段の断りのない限り、「ある物Aがある物Bのすべてに重なること」、および、「ある物Aがある物Bの一部に重なること」を含む。また、「ある物A(の構成材料)がある材料Cを含む」とは、「ある物A(の構成材料)がある材料Cからなる場合」、および、「ある物A(の構成材料)の主成分がある材料Cである場合」を含む。
【0012】
〔第1実施形態〕
図1~
図5は、第1実施形態にかかるサーマルプリントヘッドA1を示す。サーマルプリントヘッドA1は、ヘッド基板1、保護層2、配線層3、抵抗体層4、接続基板5、複数のワイヤ61、複数のドライバIC7、保護樹脂78および放熱部材8を備える。
【0013】
説明の便宜上、ヘッド基板1の厚さ方向を「厚さ方向z」という。以下の説明では、厚さ方向zの一方を上方といい、他方を下方ということがある。なお、「上」、「下」、「上方」、「下方」、「上面」および「下面」などの記載は、厚さ方向zにおける各部品、部位等の相対的位置関係を示すものであり、必ずしも重力方向との関係を規定する用語ではない。さらに、サーマルプリントヘッドA1における主走査方向を「主走査方向x」といい、サーマルプリントヘッドA1における副走査方向を「副走査方向y」という。
【0014】
サーマルプリントヘッドA1は、印刷媒体(図示略)に印字を施するサーマルプリンタPr(
図3参照)に組み込まれるものである。サーマルプリンタPrは、サーマルプリントヘッドA1およびプラテンローラ91を備える。プラテンローラ91は、サーマルプリントヘッドA1に正対する。印刷媒体は、サーマルプリントヘッドA1とプラテンローラ91との間に挟まれ、このプラテンローラ91によって、副走査方向yに搬送される。このような印刷媒体としては、たとえばバーコードシールおよびレシートを作成するための感熱紙が挙げられる。プラテンローラ91に替えて、平坦なゴムからなるプラテンを使用してもよい。このプラテンは、大きな曲率半径を有する円柱状のゴムにおける、断面視して弓形状の一部を含む。本開示において、「プラテン」という用語は、プラテンローラ91と平坦なプラテンとの双方を含む。
【0015】
ヘッド基板1は、配線層3および抵抗体層4を支持する。ヘッド基板1は、主走査方向xを長手方向とする細長矩形状である。ヘッド基板1は、基材10および絶縁層19を含む。
【0016】
基材10は、単結晶半導体を含んでおり、当該単結晶半導体は、たとえばシリコン(Si)である。基材10は、
図4および
図5に示すように、第1主面11および第1裏面12を有する。第1主面11および第1裏面12は、厚さ方向zに離間し、かつ、厚さ方向zにおいて互いに反対側を向く。配線層3および抵抗体層4は、厚さ方向zにおいて、第1主面11の側に設けられる。第1主面11が、特許請求の範囲に記載の「主面」に相当し、第1裏面12が、特許請求の範囲に記載の「裏面」に相当する。
【0017】
基材10は、凸部13を有する。凸部13は、
図4および
図5に示すように、第1主面11から厚さ方向zに突出しており、主走査方向xに長く延びる。図示された例においては、凸部13は、基材10のうちの副走査方向y下流寄りに配置されている。凸部13は、基材10の一部であることから、単結晶半導体であるシリコン(Si)を含む。
図5に示すように、凸部13は、頂部130、一対の第1傾斜部131A,131Bおよび一対の第2傾斜部132A,132Bを有する。
【0018】
頂部130は、凸部13のうち、第1主面11からの厚さ方向zに沿う距離が最も大きい部位である。頂部130は、たとえば第1主面11と略平行な面である。頂部130は、厚さ方向z視において、主走査方向xに長く延びる細長矩形状である。
【0019】
一対の第1傾斜部131A,131Bは、
図5に示すように、頂部130の副走査方向y両側に繋がっている。第1傾斜部131Aは、副走査方向yの上流側から頂部130に繋がる。第1傾斜部131Bは、副走査方向yの下流側から頂部130に繋がる。
図5に示すように、一対の第1傾斜部131A,131Bはそれぞれ、第1主面11に対して、角度α1だけ傾斜している(第1傾斜角度α1を以て傾斜している)。一対の第1傾斜部131A,131Bはそれぞれ、厚さ方向z視において主走査方向xに長く延びる細長矩形状の平面である。なお、凸部13は、一対の第1傾斜部131A,131Bに繋がり、頂部130の主走査方向x両端に隣接する傾斜部(図示略)を有していてもよい。
【0020】
一対の第2傾斜部132A,132Bは、
図5に示すように、一対の第1傾斜部131A,131Bに対して、副走査方向yにおいて頂部130と反対側から繋がる。第2傾斜部132Aは、副走査方向yにおいて、第1傾斜部131Aと第1主面11とに挟まれている。第2傾斜部132Aは、副走査方向yの上流側から第1傾斜部131Aに繋がり、副走査方向yの下流側から第1主面11に繋がる。第2傾斜部132Bは、副走査方向yにおいて、第1傾斜部131Bと第1主面11とに挟まれている。第2傾斜部132Bは、副走査方向yの下流側から第1傾斜部131Bに繋がり、副走査方向yの上流側から第1主面11に繋がる。
図5に示すように、一対の第2傾斜部132A,132Bはそれぞれ、第1主面11に対して、角度α2だけ傾斜している(第2傾斜角度α2を以て傾斜している)。角度α2は、角度α1よりも大きい。一対の第2傾斜部132A,132Bはそれぞれ、厚さ方向z視において主走査方向xに長く延びる細長矩形状の平面である。一対の第2傾斜部132A,132Bはそれぞれ、第1主面11に繋がっている。なお、凸部13は、一対の第2傾斜部132A,132Bに繋がり、頂部130の主走査方向x両端の主走査方向x外方に位置する傾斜部(図示略)を有していてもよい。
【0021】
基材10において、第1主面11は(100)面である。後述の製造方法によって形成された凸部13において、第1主面11に対する各第1傾斜部131A,131Bの傾斜角度α1(
図5参照)は、たとえば30.1度であり、第1主面11に対する各第2傾斜部132A,132Bの傾斜角度α2(
図5参照)は、たとえば54.7度である。
【0022】
ヘッド基板1の大きさは、特に限定されないが、一例を挙げると、次の通りである。厚さ(厚さ方向zの寸法)は、725μmである。この厚さは、第1裏面12から頂部130までの厚さ方向zに沿う寸法である。凸部13の厚さ方向z寸法は、150μm以上300μm以下であり、一例では、175μmである。主走査方向x寸法は、50mm以上150mm以下である。副走査方向y寸法は、2.0mm以上5.0mm以下である。
【0023】
絶縁層19は、
図4および
図5に示すように、第1主面11および凸部13を覆う。絶縁層19は、基材10の第1主面11側を、より確実に絶縁するために設けられる。絶縁層19は、たとえばTEOS(オルトケイ酸テトラエチル)を原料ガスとして成膜される酸化ケイ素(TEOS-SiO
2)を含む。絶縁層19は、TEOS-SiO
2の代わりに、たとえば他の方法によって成膜された酸化ケイ素(SiO
2)あるいは窒化ケイ素(SiN)を含んでもよい。絶縁層19の厚さは特に限定されないが、その一例を挙げるとたとえば5μm以上15μm以下(好ましくは5μm以上10μm以下)である。
【0024】
抵抗体層4は、ヘッド基板1に支持されており、
図4および
図5に示すように、絶縁層19を介して基材10に支持されている。抵抗体層4は、副走査方向yにおける単位長さ当たりの抵抗値が配線層3よりも大きい(高抵抗である)。抵抗体層4は、たとえば不純物(ドーパント)がドープされたシリコン(詳細にはポリシリコン)を含む。以下では、不純物がドープされたシリコンを「ドープドシリコン」という。当該不純物(ドーパント)は、たとえばホウ素、リンあるいはヒ素のいずれかである。不純物の添加(ドープ)によって、抵抗体層4の抵抗値が調整される。抵抗体層4の厚さは、特に限定されないが、その一例を挙げると、0.02μm以上0.1μm以下(好ましくは0.08μm程度)である。抵抗体層4は、複数の発熱部41を有する。理解の便宜上、
図2において、複数の発熱部41に、ドット状の模様を描画する。
【0025】
複数の発熱部41は、各々に選択的に通電されることにより、印刷媒体を局所的に加熱する。各発熱部41は、抵抗体層4のうち配線層3から露出した領域である。複数の発熱部41は、主走査方向xに沿って配列されており、主走査方向xにおいて互いに離間する。各発熱部41の形状は特に限定されず、例えば厚さ方向z視において副走査方向yを長手方向とする矩形状である。各発熱部41は、凸部13上に配置されている。
図5に示す例では、各発熱部41は、第1傾斜部131Bから頂部130に跨って形成されている。各発熱部41の副走査方向y上流側の端縁は、頂部130上に位置し、各発熱部41の副走査方向y下流側の端縁は、第1傾斜部131B上に位置する。各発熱部41は、凸部13上に配置されていれば、
図5に示す例に限定されない。
【0026】
サーマルプリントヘッドA1では、抵抗体層4は、
図2、
図4および
図5に示すように、複数の分離部40を含む。複数の分離部40は、互いに離間する。
図2に示すように、複数の分離部40は、厚さ方向z視において、副走査方向yを長手方向とする矩形状である。複数の分離部40は、主走査方向xに沿って配列され、互いに略平行に配置される。各分離部40の副走査方向yの両端にはそれぞれ、配線層3が接続されている。各分離部40のうち、配線層3に接続された両端に挟まれた中間部分が、各発熱部41となる。複数の発熱部41は、各発熱部41にそれぞれ1つずつ形成される。
【0027】
配線層3は、複数の発熱部41に通電するための通電経路を構成する。配線層3は、ヘッド基板1に支持されている。配線層3は、
図2、
図4および
図5に示すように、各分離部40の副走査方向yの両端にそれぞれ接続される。
図4および
図5に示すように、配線層3と各分離部40(抵抗体層4)との接続部分において、配線層3は、各分離部40(抵抗体層4)の上に積層される。
【0028】
配線層3は、
図1および
図2に示すように、共通電極31、複数の個別電極32および複数の中継電極33を有する。
【0029】
複数の中継電極33の各々は、
図2に示すように、2つの帯状部331および連結部332を含む。2つの帯状部331は、副走査方向yに延びる帯状である。2つの帯状部331は、互いに略平行に配置された状態で、主走査方向xに離間する。2つの帯状部331はそれぞれ、隣接する発熱部41にそれぞれ接続している。
図2に示す例では、2つの帯状部331はそれぞれ、副走査方向yの下流側から各発熱部41に繋がっている。各帯状部331の先端(副走査方向yにおいて連結部332に繋がる側と反対側の端部)は、厚さ方向z視において、各分離部40に重なり、
図4および
図5に示すように、各分離部40上に積層されている。2つの帯状部331の主走査方向xの各寸法は、略同じである。連結部332は、2つの帯状部331よりも副走査方向y下流側に位置する。連結部332は、2つの帯状部331のそれぞれに繋がる。連結部332は、主走査方向xに延びる帯状である。複数の中継電極33は、主走査方向xに等ピッチで配列されている。複数の中継電極33のそれぞれは、開口を副走査方向y上流側に向けたU字形状をなし、角部が直角に屈曲する。複数の中継電極33はそれぞれ、複数の発熱部41の副走査方向y下流側に位置する。
【0030】
共通電極31は、
図2に示すように、複数の直行部311、複数の分岐部312、複数の帯状部313および連結部314を含む。複数の直行部311はそれぞれ、副走査方向yに延びる帯状である。複数の直行部311は、副走査方向yに等ピッチで配列される。複数の直行部311の各先端側(副走査方向y下流側)には、分岐部312および2つの帯状部313が設けられている。当該2つの帯状部313は、隣接する発熱部41にそれぞれ接続している。
図2に示す例では、当該2つの帯状部313はそれぞれ、副走査方向yの上流側から発熱部41に繋がっている。各帯状部313の先端(副走査方向yにおいて分岐部312に繋がる側と反対側の端部)は、厚さ方向z視において、各分離部40に重なり、
図4および
図5に示すように、各分離部40上に積層されている。各帯状部313の主走査方向xの寸法は、各帯状部331の主走査方向xの寸法と略同じである。また、各帯状部313は、副走査方向yに見て、各帯状部331に重なる。複数の分岐部312はそれぞれ、各直行部311の先端に接続される。複数の分岐部312はそれぞれ、副走査方向yにおいて2つの帯状部313に繋がる各端部と反対側の端部に、各直行部311が接続されている。2つの帯状部313はそれぞれ、副走査方向yの上流側から発熱部41に繋がっている。連結部314は、複数の直行部311の基端側(副走査方向y上流側)に位置して、主走査方向xに沿って延びている。連結部314には、複数の直行部311がそれぞれ繋がっている。連結部314は、ワイヤ61および接続基板5の配線を介して、コネクタ59に接続されており、駆動電圧が印加される。
【0031】
複数の個別電極32はそれぞれ、共通電極31に対して逆極性となる。複数の個別電極32は、
図2に示すように、主走査方向xに離間して配列されている。複数の個別電極32はそれぞれ、
図2に示すように、帯状部321およびパッド部322を含む。各個別電極32において、帯状部321は、副走査方向yに延びる帯状であり、発熱部41の副走査方向y上流側に位置する。
図2に示す例では、帯状部321は、先端側(副走査方向y下流側)で発熱部41に接続されている。各帯状部321の先端(副走査方向yにおいてパッド部322に繋がる側と反対側の端部)は、厚さ方向z視において、各分離部40に重なり、
図4および
図5に示すように、各分離部40上に積層されている。帯状部321の主走査方向xの寸法は、各帯状部331の主走査方向xの寸法と略同じである。また、帯状部321の副走査方向y下流側の端部は、副走査方向yに見て帯状部331に重なる。各個別電極32において、パッド部322は、帯状部321の副走査方向y上流側の端部に設けられている。パッド部322は、ワイヤ61を介して、複数のドライバIC7のいずれかの出力パッド72(後述)のいずれかに接続している。
【0032】
サーマルプリントヘッドA1では、
図2に示すように、共通電極31の各直行部311が、2つの個別電極32の帯状部321に挟まれて配置されている。各中継電極33の2つの帯状部331の一方が接続される発熱部41は、共通電極31に接続しており、当該中継電極33の2つの帯状部331の他方が接続される発熱部41は、複数の個別電極32のいずれかに接続している。したがって、各個別電極32が通電することで、これに接続する発熱部41と、当該発熱部41に中継電極33を介して接続する発熱部41とに電流が流れて、これらの発熱部41が発熱する。つまり、2つの発熱部41が同時に発熱し、同時に発熱する2つの発熱部41で1dotとなる。サーマルプリントヘッドA1では、各発熱部41が通電したとき、各発熱部41には、副走査方向yに沿って電流が流れる。サーマルプリントヘッドA1においては、複数の帯状部331が、特許請求の範囲に記載の「複数の第1帯状部」に相当し、複数の帯状部313および複数の帯状部321が、特許請求の範囲に記載の「複数の第2帯状部」に相当する。
【0033】
配線層3(共通電極31、複数の個別電極32および複数の中継電極33)は、導電性材料を含む単層および複数層によって構成される。サーマルプリントヘッドA1では、
図4および
図5に示すように、配線層3(共通電極31、複数の個別電極32および複数の中継電極33)は、
図4および
図5に示すように、厚さ方向zに積層された第1導体層301および第2導体層302を含んで構成される。
【0034】
第1導体層301は、
図4および
図5に示すように、ヘッド基板1と第2導体層302との間に位置する。第1導体層301は、副走査方向yにおける単位長さ当たりの抵抗値が、抵抗体層4よりも小さく(低抵抗であり)、かつ、第2導体層302よりも大きい(高抵抗である)。たとえば、第1導体層301の電気伝導率は、たとえば10
-6~10
-7Ωmである。第1導体層301の構成材料は、たとえばチタンを含むが、チタンの代わりに、タンタル、ガリウム、スズ、白金、白金イリジウム、タリウム、バナジウムあるいはクロムのいずれかを含んでもよい。第1導体層301は、採用される構成材料により形成方法が適宜選定されるが、たとえばスパッタリング法やCVD(Chemical Vapor Deposition)法、めっきなどによって形成される。たとえば、第1導体層301の構成材料がチタンの場合、第1導体層301はスパッタリング法により形成される。第1導体層301の厚さは特に限定されないが、その一例を挙げると0.1μm以上0.2μm以下である。
【0035】
第2導体層302は、
図4および
図5に示すように、第1導体層301上に形成されている。第2導体層302は、第1導体層301を部分的に覆っている。よって、第1導体層301は、第2導体層302から露出する部分がある。本実施形態では、抵抗体層4の一部を覆う配線層3は、第2導体層302から露出する第1導体層301の一部である。第2導体層302は、副走査方向yにおける単位長さ当たりの抵抗値が、抵抗体層4および第1導体層301よりも小さい(低抵抗である)。たとえば、第2導体層302の電気抵抗率は、10
-7Ωm以下である。好ましくは、第2導体層302は、第1導体層301よりも熱伝導度が高い。第2導体層302は、たとえば銅を含む。この構成と異なり、第2導体層302は、銅の代わりに、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、金、銀、ニッケルあるいはタングステンのいずれかを含んでもよい。第2導体層302は、採用される構成材料により形成方法が適宜選定されるが、たとえばスパッタリング法やCVD法、めっきなどによって形成される。たとえば、第2導体層302の構成材料が銅を含む場合、第2導体層302はスパッタリング法により形成される。なお、第2導体層302の構成材料が金、銀、ニッケルである場合、一般的にはめっきにより形成されるが、この場合、第2導体層302は、シード層(たとえば銅)などを含んでいてもよい。第2導体層302は、第1導体層301よりも厚い。第2導体層302の厚さは、使用する材料、配線層3に流れる電流の値などに依存する。第2導体層302の厚さの一例を挙げると0.5μm以上5μm以下である。
【0036】
サーマルプリントヘッドA1では、
図2および
図5から理解されるように、各帯状部313(共通電極31)、各帯状部321(各個別電極32)、および、各帯状部331(各中継電極33)のそれぞれのうちの各発熱部41に繋がる部分は、第2導体層302から露出する第1導体層301によって構成されている。つまり、各帯状部313(共通電極31)、各帯状部321(各個別電極32)、および、各帯状部331(各中継電極33)のそれぞれは、第1導体層301のみで構成された部分と、第1導体層301と第2導体層302とが積層された部分とを含む。この構成とは異なり、各発熱部41に繋がる当該部分は、第1導体層301上に第2導体層302が積層された構成であってもよい。つまり、各帯状部313(共通電極31)、各帯状部321(各個別電極32)、および、各帯状部331(各中継電極33)のそれぞれは、形成範囲のすべてにおいて、第1導体層301と第2導体層302とが積層されている。
【0037】
保護層2は、配線層3および抵抗体層4を保護する。保護層2は、
図4および
図5に示すように、配線層3および抵抗体層4を覆う。サーマルプリンタPrの使用時において、保護層2には、プラテンローラ91により印刷媒体が押し当てられる。保護層2は、絶縁性材料により構成される。保護層2の構成材料は、たとえば窒化ケイ素を含むが、窒化ケイ素の代わりに、酸化ケイ素、炭化ケイ素(SiC)、あるいは、窒化アルミニウム(AlN)などのいずれかを含んでもよい。保護層2は、先述の絶縁性材料を含む単層または複数層によって構成される。たとえば、保護層2は、窒化ケイ素により構成される下層と、炭化ケイ素により構成される上層とを含む構成でもよい。保護層2の厚さは特に限定されないが、その一例を挙げると1.0μm以上10μm以下である。
【0038】
保護層2は、
図5に示すように、複数のパッド用開口29を有する。各パッド用開口29は、保護層2を厚さ方向zに貫通する。複数のパッド用開口29はそれぞれ、各個別電極32のパッド部322を露出させている。図示された例と異なり、複数のパッド用開口29に導電性材料を充填させてもよい。この場合、この導電性材料上にめっき層を形成してもよい。このめっき層の構成は特に限定されないが、一例を挙げると、導電性材料の表面からニッケル、パラジウム、金の順に積層されている。
【0039】
接続基板5は、
図1~
図3に示すように、ヘッド基板1に対して副走査方向y上流側に配置されている。接続基板5は、たとえばプリント基板であり、各ドライバIC7やコネクタ59(後述)が搭載される。接続基板5の形状などは特に限定されないが、本実施形態においては、主走査方向xを長手方向とする矩形状である。接続基板5は、
図3に示すように、第2主面51および第2裏面52を有する。第2主面51は、基材10の第1主面11と同じ側を向く面であり、第2裏面52は、基材10の第1裏面12と同じ側を向く面である。本実施形態においては、第2主面51は、第1主面11よりも厚さ方向z図中下方に位置する。
【0040】
接続基板5には、
図2に示すように、複数の制御電極55が形成されている。各制御電極55は、第2主面51に配置され、かつ、ドライバIC7よりも副走査方向y上流側に配置されている。各制御電極55は、副走査方向yに沿って延びる。各制御電極55は、それぞれワイヤ61を介して、ドライバIC7の入力パッド71(後述)のいずれかに接続され、接続基板5の配線を介してコネクタ59に接続している。
【0041】
複数のドライバIC7はそれぞれ、複数の発熱部41を選択駆動するために、発熱させる発熱部41に個別に電流を流すためのものである。ドライバIC7の数は、発熱部41の個数に応じて、適宜変更される。各ドライバIC7の通電制御は、コネクタ59、接続基板5の配線および制御電極55を介して、サーマルプリントヘッドA1外から入力される指令信号に従う。各ドライバIC7は、接続基板5の第2主面51に搭載され、複数のワイヤ61を介して、複数の個別電極32および複数の制御電極55に接続されている。
【0042】
各ドライバIC7の上面には、
図2に示すように、複数の入力パッド71および複数の出力パッド72が配置されている。複数の入力パッド71は、各ドライバIC7を制御するための各種信号などが入力される端子である。複数の入力パッド71は、各ドライバIC7の上面のうち、副走査方向y上流側の端部寄りに配置されている。各入力パッド71は、各ワイヤ61を介して、各制御電極55に接続されている。複数の出力パッド72は、発熱部41を駆動する電流を流す端子である。複数の出力パッド72は、各ドライバIC7の上面のうち、副走査方向y下流側の端部寄りに配置されている。各出力パッド72は、各ワイヤ61を介して、各個別電極32のパッド部322に接続されている。
【0043】
保護樹脂78は、複数のドライバIC7および複数のワイヤ61を覆う。保護樹脂78は、たとえば絶縁性樹脂からなりたとえば黒色である。保護樹脂78は、
図1および
図3に示すように、ヘッド基板1と接続基板5とに跨るように形成されている。
【0044】
コネクタ59は、サーマルプリントヘッドA1をサーマルプリンタPrに接続するために用いられる。コネクタ59は、接続基板5に取り付けられており、接続基板5の配線パターン(図示略)および制御電極55を介して、ドライバIC7の入力パッド71に接続されている。
【0045】
放熱部材8は、ヘッド基板1および接続基板5を支持しており、複数の発熱部41によって生じた熱の一部を、ヘッド基板1を介して外部へと放熱するためのものである。放熱部材8は、たとえばアルミニウム等の金属を含むブロック状の部材である。放熱部材8は、
図3に示すように、第1支持面81および第2支持面82を有する。第1支持面81および第2支持面82は、各々が厚さ方向z上側を向いている。第1支持面81は、第2支持面82よりも副走査方向y下流側に位置する。
図3に示すように、第1支持面81には、基材10の第1裏面12が接合され、第2支持面82には、接続基板5の第2裏面52が接合されている。
【0046】
次に、サーマルプリントヘッドA1の製造方法の一例(第1製造方法)について、
図6~
図19を参照して、説明する。
図6は、サーマルプリントヘッドA1の第1製造方法を示すフローチャートである。
図7、
図8、
図10、
図12および
図14~
図18は、サーマルプリントヘッドA1の第1製造方法の一工程を示す要部断面図であって、
図4に対応する。
図9および
図19は、サーマルプリントヘッドA1の第1製造方法の一工程を示す要部拡大断面図であって、
図5の断面に対応する。
図11および
図13は、サーマルプリントヘッドA1の第1製造方法の一工程を示す要部平面図であって、
図2に対応する。
【0047】
図6に示すように、サーマルプリントヘッドA1の第1製造方法は、基材準備工程S11、基材加工工程S12、絶縁層形成工程S13、抵抗体層形成工程S141、配線層形成工程S15、保護層形成工程S16、個片化工程S171および組立工程S172を含む。
【0048】
〔基材準備工程S11〕
まず、
図7に示すように、基材10Kを用意する。基材10Kは、構成材料に単結晶半導体を含み、たとえば、シリコンウェハの一部分である。1枚のシリコンウェハは複数の基材10Kを含む。以下の図では、シリコンウェハの一部分であって1個のサーマルプリントヘッドA1に対応する1個の基材10K(ヘッド基板1)を対象にして図示する。基材10Kの厚さ(言い換えればシリコンウェハの厚さ)は特に限定されないが、本実施形態においては、たとえば725μm程度である。
図7に示すように、基材10Kは、互いに反対側を向く主面11Kおよび裏面12Kを有する。主面11Kは、(100)面である。
【0049】
〔基材加工工程S12〕
次いで、
図8および
図9に示すように、基材10Kを加工し、基材10Kに凸部13を形成する。基材加工工程S12では、二回のエッチングを行う。
【0050】
一回目のエッチングでは、主面11Kを所定のマスク層で覆った後、たとえばKOH(水酸化カリウム)を用いた異方性エッチングを行う。この異方性エッチングで用いる薬剤は、KOHではなくTMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)を用いてもよいが、KOHを用いた方が、処理速度(エッチング速度)が速い。その後、マスク層を除去する。これにより、
図8に示すように、基材10Kには凸部13Kが形成される。凸部13Kは、主面11Kから突出しており、主走査方向xに長く延びる。凸部13Kは、頂部130Kおよび一対の傾斜部132Kを有する。頂部130Kは、主面11Kと平行な面であり、主面11Kと同じ(100)面である。頂部130Kは、上記マスク層で覆われていた部分である。一対の傾斜部132Kは、頂部130Kの副走査方向y両側に位置しており、頂部130Kと主面11Kとの間に介在している。一対の傾斜部132Kはそれぞれ、頂部130Kおよび主面11Kに対して傾斜した平面である。一対の傾斜部132Kのそれぞれと、主面11Kおよび頂部130Kとがなす角度は、54.7度である。
【0051】
二回目のエッチングでは、たとえばTMAHを用いた異方性エッチングを行う。この異方性エッチングで用いる薬剤は、TMAHではなくKOHを用いてもよいが、TMAHを用いた方が、エッチングによって形成される面(たとえば後述の一対の第1傾斜部131A,131B)が平滑な面になる。この異方性エッチングにより、
図9に示すように、基材10Kが、第1主面11、第1裏面12および凸部13を有する基材10となる。凸部13は、頂部130、一対の第1傾斜部131A,131Bおよび一対の第2傾斜部132A,132Bを有する。頂部130は、頂部130Kであった部分であり、一対の第2傾斜部132A,132Bは、一対の傾斜部132Kであった部分である。一対の第1傾斜部131A,131Bは、頂部130Kと一対の傾斜部132Kとの境界がTMAHによりエッチングされた部分である。第1主面11に対する各第1傾斜部131A,131Bの角度α1(
図9参照)は、30.1度であり、第1主面11に対する各第2傾斜部132A,132Bの角度α2(
図9参照)は、54.7度である。
【0052】
〔絶縁層形成工程S13〕
次いで、
図10示すように、絶縁層19を形成する。絶縁層形成工程S13では、たとえばCVDを用いて、TEOSを原料ガスとして形成される酸化ケイ素(TEOS-SiO
2)を基材10に堆積させる。絶縁層19の形成方法は、これに限定されない。形成された絶縁層19は、たとえば、第1主面11の全面および凸部13を覆う。これにより、基材10および絶縁層19を含むヘッド基板1が形成される。
【0053】
〔抵抗体層形成工程S141〕
次いで、
図11~
図14に示すように、抵抗体層4を形成する。
図6に示すように、抵抗体層形成工程S141では、P-CVD処理S1411、アニール処理S1412および部分除去処理S1413を行う。
【0054】
P-CVD処理S1411では、たとえばプラズマCVDにより、
図11および
図12に示すように、抵抗体膜4Kを形成する。P-CVD処理S1411で形成される抵抗体膜4Kは、不純物(たとえばホウ素、リンあるいはヒ素のいずれか)がドープされたシリコン(ドープドシリコン)の薄膜である。
図11および
図12に示す例では、抵抗体膜4Kは、絶縁層19上の略全面に形成される。なお、抵抗体膜4Kの形成範囲は、
図11に示す例に限定されない。
【0055】
アニール処理S1412では、抵抗体膜4Kを熱処理する。アニール処理S1412によって、抵抗体膜4Kが再結晶化し、抵抗体膜4Kの不純物拡散および膜質改善などが行われる。
【0056】
部分除去処理S1413では、
図13および
図14に示すように、アニール処理S1412後の抵抗体膜4Kを部分的に除去し、抵抗体膜4Kのパターニングを行う。たとえば、部分除去処理S1413では、抵抗体膜4Kに対してリソグラフィパターニングを施した後、抵抗体膜4Kの一部を除去する。当該除去の方法は、特に限定されないが、たとえばドライエッチングまたはウェットエッチングである。ドライエッチングで用いる薬剤は、抵抗体膜4Kの材料に応じて適宜変更すればよいが、たとえばフッ素系ガスが用いられる。また、ウェットエッチングで用いる薬剤は、抵抗体膜4Kの材料に応じて適宜変更すればよいが、たとえばフッ酸と硝酸との混合溶液が用いられる。これにより、パターニングされた抵抗体層4が形成される。形成された抵抗体層4は、上述したように複数の分離部40に分割されている。
【0057】
〔配線層形成工程S15〕
次いで、
図15~
図19に示すように、配線層3を形成する。
図6に示すように、配線層形成工程S15は、第1成膜処理S151、第2成膜処理S152および部分除去処理S153を有する。
【0058】
第1成膜処理S151では、
図15に示すように、抵抗体膜4K上に第1導体膜301Kを形成する。第1導体膜301Kは、たとえばスパッタリング法によって成膜される。第1導体膜301Kの構成材料は、たとえばチタンを含む。たとえば、第1導体膜301Kは、Tiにより構成される薄膜である。形成される第1導体膜301Kは、抵抗体層4の略全面を覆う。
【0059】
第2成膜処理S152では、
図16に示すように、第1導体膜301K上に第2導体膜302Kを形成する。第2導体膜302Kは、たとえばめっきあるいはスパッタリング法などによって成膜される。第2導体膜302Kの構成材料は、たとえば銅を含む。このとき、第2導体膜302Kは、第1導体膜301Kの略全面を覆う。
【0060】
部分除去処理S153では、
図17~
図19に示すように、第1導体膜301Kおよび第2導体膜302Kをそれぞれ、部分的に除去する。部分除去処理S153では、まず、第2導体膜302Kに対してリソグラフィパターニングを施した後、第2導体膜302Kの一部を除去する。これにより、
図17に示すように、第2導体膜302Kがパターニングされ、第2導体層302が形成される。次いで、第1導体膜301Kに対してリソグラフィパターニングを施した後、第1導体膜301Kの一部を除去する。これにより、
図18および
図19に示すように、第1導体膜301Kがパターニングされ、第1導体層301が形成される。第1導体膜301Kおよび第2導体膜302Kの部分除去の方法は、特に限定されないが、たとえばドライエッチングである。ドライエッチングで用いる薬剤は、第1導体膜301Kおよび第2導体膜302Kの各材料に応じて選択すればよいが、たとえばフッ素系ガスあるいは塩素系ガスが用いられる。なお、第1導体膜301Kおよび第2導体膜302Kの部分除去は、ドライエッチングではなく、ウェットエッチングであってもよい。ウェットエッチングで用いる薬剤は、たとえば硫酸(H
2SO
4)および過酸化水素(H
2O
2)の混合溶液である。
【0061】
上記配線層形成工程S15(第1成膜処理S151、第2成膜処理S152および部分除去処理S153)により、第1導体層301および第2導体層302を含む配線層3が形成され、当該配線層3は、共通電極31、複数の個別電極32および複数の中継電極33を有する。また、各分離部40に配線層3が接続され、各分離部40(抵抗体層4)に発熱部41が形成される。
【0062】
〔保護層形成工程S16〕
次いで、配線層3および抵抗体層4を覆う保護層2を形成する。保護層形成工程S16では、たとえばCVD法を用いて、絶縁層19、配線層3および抵抗体層4上に、窒化ケイ素を堆積させる。なお、堆積させる材料は、たとえば窒化ケイ素の代わりに、酸化ケイ素、炭化ケイ素、あるいは、窒化アルミニウムなどのいずれかでもよい。その後、保護層2をエッチング等によって部分的に除去することにより、パッド用開口29を形成する。なお、保護層2が複数層により構成される場合には、堆積させた窒化ケイ素を下層とし、当該下層上に、たとえばスパッタリング法により炭化ケイ素の薄膜を堆積させる。また、保護層2を形成する際、保護層2の形成範囲を調整することで、保護層2を部分的に除去することなく、パッド用開口29を形成してもよい。
【0063】
〔個片化工程S171〕
次いで、基材10を適宜ヘッド基板1ごとに分割する。なお、基材準備工程S11において、1つのヘッド基板1に対応する基材10が準備されていた場合には、個片化工程S171を行わなくてもよい。個片化工程S171は、基材10の素材に応じて、たとえばレーザダイシングあるいはブレードダイシングなどが選択される。本実施形態では、ブレードダイシングにより個片化工程S171が行われる。
【0064】
〔組立工程S172〕
その後、ヘッド基板1および接続基板5の放熱部材8への取付け、ドライバIC7の実装、複数のワイヤ61のボンディング、および、保護樹脂78の形成などを行う。
【0065】
以上のように、
図6に示す工程を経ることで、
図1~
図5に示すサーマルプリントヘッドA1が製造される。上記したサーマルプリントヘッドA1の第1製造方法は、一例であって、これに限定されない。なお、サーマルプリントヘッドA1の他の製造方法については、後述する。
【0066】
サーマルプリントヘッドA1、および、サーマルプリントヘッドA1備えるサーマルプリンタPrの作用および効果は、次の通りである。
【0067】
サーマルプリントヘッドA1では、抵抗体層4は、不純物がドープされたシリコン(ドープドシリコン)を含む。ドープドシリコンはTaNよりも高抵抗であるので、抵抗体層4は、TaNで構成された例と比べて高抵抗となる。ある物に電流を流した時の発熱量は、ある物の抵抗値に比例するので、抵抗体層4の抵抗値が高い程、発熱部41の発熱量を増大させることができる。したがって、サーマルプリントヘッドA1は、抵抗体層4の高抵抗化に伴い、駆動電流を低減できる。つまり、サーマルプリントヘッドA1は、駆動電流を低減できるため、省電力化を図ることが可能となる。
【0068】
サーマルプリントヘッドA1では、抵抗体層4は、上記抵抗体層形成工程S141で示す各処理(P-CVD処理S1411、アニール処理S1412および部分除去処理S1413)によって形成される。このような形成処理では、抵抗体層4の厚さ(抵抗体膜4Kの膜厚)の均一化を図ることができる。抵抗体層4の厚さにばらつきがあれば、各発熱部41の発熱量にばらつきが生じる。その結果、印字品質の低下を招く。一方、サーマルプリントヘッドA1では、抵抗体層4の厚さの均一化を図ることができるので、抵抗体層4の厚さのばらつきが抑制される。つまり、サーマルプリントヘッドA1は、印字品質の低下を抑制できる。
【0069】
サーマルプリントヘッドA1では、その製造方法(第1製造方法)において、配線層3を形成する前に、抵抗体層4を形成する。サーマルプリントヘッドA1の第1製造方法では、抵抗体層形成工程S14のアニール処理S1412において、熱処理を行う。仮に、配線層3が先に形成されていた場合、アニール処理S1412における温度条件によっては、配線層3の損傷および配線層3の熱酸化などで、配線層3が適切に形成されない虞がある。そこで、サーマルプリントヘッドA1の第1製造方法では、抵抗体層4を配線層3よりも先に形成することで、配線層3の損傷および配線層3の熱酸化などが抑制されるので、配線層3を適切に形成することができる。
【0070】
サーマルプリンタPrは、その構成部品として、サーマルプリントヘッドA1を備える。サーマルプリントヘッドA1は、上述の通り、省電力化を図ることで可能である。したがって、サーマルプリンタPrは、省電力を図ることができる。
【0071】
次に、サーマルプリントヘッドA1の他の製造方法について、
図20~
図22を参照して、説明する。
【0072】
図20は、サーマルプリントヘッドA1の第2製造方法を示すフローチャートである。
図20に示すように、サーマルプリントヘッドA1の第2製造方法は、
図6に示す第1製造方法と比較して、抵抗体層形成工程S141の代わりに、抵抗体層形成工程S142を含む。
【0073】
抵抗体層形成工程S142は、
図20に示すように、スパッタ処理S1421、不純物添加処理S1422、アニール処理S1423および部分除去処理S1424を含む。
【0074】
スパッタ処理S1421では、たとえばスパッタリング法により、抵抗体膜4Kを形成する。第2製造方法において、形成される抵抗体膜4Kは、不純物がドープされていないシリコン(ノンドープドシリコン)を含む。スパッタ処理S1421における抵抗体膜4Kの形成範囲は、
図11に示す範囲と同じである。
【0075】
不純物添加処理S1422では、たとえばスパッタリング法により、不純物(たとえばホウ素、リンあるいはヒ素のいずれか)を抵抗体膜4Kに添加(注入)する。不純物添加処理S1422によって、抵抗体膜4K(ノンドープドシリコン)に、不純物がドープされる。
【0076】
アニール処理S1423は、アニール処理S1412と同様に行われる。つまり、アニール処理S1423では、抵抗体膜4Kを熱処理し、抵抗体膜4Kを再結晶化させる。
【0077】
部分除去処理S1424は、部分除去処理S1413と同様に、抵抗体膜4Kの部分除去を行い、抵抗体膜4Kのパターニングを行う。これにより、抵抗体層4が形成される。
【0078】
図21は、サーマルプリントヘッドA1の第3製造方法を示すフローチャートである。当該サーマルプリントヘッドA1の第3製造方法は、
図6に示す第1製造方法と比較して、抵抗体層形成工程S141の代わりに、抵抗体層形成工程S143を含む。
【0079】
抵抗体層形成工程S143は、
図21に示すように、LP-CVD処理S1431、不純物添加処理S1432、アニール処理S1433および部分除去処理S1434を含む。
【0080】
LP-CVD処理S1431では、たとえばLP-CVD(減圧CVD)法により、抵抗体膜4Kを形成する。第3製造方法において、形成される抵抗体膜4Kは、不純物がドープされていないシリコン(ノンドープドシリコン)を含む。LP-CVD処理S1431における抵抗体膜4Kの形成範囲は、
図11に示す範囲と同じである。
【0081】
不純物添加処理S1432は、不純物添加処理S1422と同様に行われる。つまり、不純物添加処理S1432では、たとえばスパッタリング法により、不純物(たとえばホウ素、リンあるいはヒ素のいずれか)を抵抗体膜4Kに添加する。不純物添加処理S1422によって、抵抗体膜4K(ノンドープドシリコン)に、不純物がドープされる。
【0082】
アニール処理S1433は、アニール処理S1412と同様に行われる。つまり、アニール処理S1433では、抵抗体膜4Kを熱処理し、抵抗体膜4Kを再結晶化させる。
【0083】
部分除去処理S1434は、部分除去処理S1413と同様に、抵抗体膜4Kの部分除去を行い、抵抗体膜4Kのパターニングを行う。これにより、抵抗体層4が形成される。
【0084】
図22は、サーマルプリントヘッドA1の第4製造方法を示すフローチャートである。当該サーマルプリントヘッドA1の第4製造方法は、
図6に示す第1製造方法と比較して、抵抗体層形成工程S141の代わりに、抵抗体層形成工程S144を含む。
【0085】
抵抗体層形成工程S144は、
図22に示すように、LP-CVD処理S1441、アニール処理S1442および部分除去処理S1443を含む。
【0086】
LP-CVD処理S1441では、上記第3製造方法におけるLP-CVD処理S1431と同様に、たとえばLP-CVD(減圧CVD)法により、抵抗体膜4Kを形成する。ただし、第4製造方法において、形成される抵抗体膜4Kは、上記第1製造方法におけるP-CVD処理S1411と同様に、不純物(たとえばホウ素、リンあるいはヒ素のいずれか)がドープされたシリコン(ドープドシリコン)を含む。LP-CVD処理S1441における抵抗体膜4Kの形成範囲は、たとえば
図11に示す範囲と同じである。
【0087】
アニール処理S1442は、アニール処理S1412と同様に行われる。つまり、アニール処理S1442では、抵抗体膜4Kを熱処理し、抵抗体膜4Kを再結晶化させる。
【0088】
部分除去処理S1443は、部分除去処理S1413と同様に、抵抗体膜4Kの部分除去を行い、抵抗体膜4Kのパターニングを行う。これにより、抵抗体層4が形成される。
【0089】
上記第2製造方法ないし上記第4製造方法においても、上記第1製造方法と同様に、サーマルプリントヘッドA1を製造できる。また、上記第2製造方法ないし上記第4製造方法における各抵抗体層形成工程S142,S143,S144においても、上記第1製造方法における抵抗体層形成工程S141と同様に、抵抗体層4の厚さ(抵抗体膜4Kの膜厚)の均一化を図ることができる。
【0090】
上記サーマルプリントヘッドA1の第1製造方法ないし第4製造方法において、抵抗体膜4Kは、
図11に示す範囲、つまり、ヘッド基板1の略全面に形成される例を示したが、抵抗体膜4Kの形成範囲は、これに限定されない。たとえば、
図23に示すように、抵抗体膜4Kは、ヘッド基板1の一部を覆うように形成されてもよい。理解の便宜上、
図23においては、後に形成される複数の分離部40を想像線(二点鎖線)で示す。このようにヘッド基板1の一部に抵抗体膜4Kを形成する場合、抵抗体膜4Kは、厚さ方向z視において、後に形成される複数の分離部40のすべて(抵抗体層4)を内包するように形成されていればよい。
【0091】
次に、第1実施形態の変形例にかかる各サーマルプリントヘッドA2,A3について、説明する。
【0092】
図24および
図25は、第1実施形態の第1変形例にかかるサーマルプリントヘッドA2を示している。サーマルプリントヘッドA2は、サーマルプリントヘッドA1と比較して、抵抗体層4の形成範囲が異なる。
【0093】
図24および
図25に示すように、サーマルプリントヘッドA2では、配線層3は、各発熱部41を露出させつつ、抵抗体層4の上に形成されている。したがって、抵抗体層4(各発熱部41を除く)は、厚さ方向zに見て、配線層3に重なる。このような抵抗体層4は、たとえば、抵抗体層形成工程S141における部分除去処理S1413において、後に形成される配線層3の形成範囲を考慮して、抵抗体膜4Kの部分除去(パターニング)を行うことで、形成される。
【0094】
図26は、第1実施形態の第2変形例にかかるサーマルプリントヘッドA3を示している。サーマルプリントヘッドA3は、サーマルプリントヘッドA1と比較して、配線層3が単層で構成されている点で異なる。
【0095】
図26に示すように、サーマルプリントヘッドA3では、配線層3は、単層で構成され、構成材料に銅を含む。なお、配線層3は、銅ではなく、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、金、銀、ニッケルあるいはタングステンのいずれかを含んでもよい。このような配線層3は、たとえば、配線層形成工程S15における第1成膜処理S151を行わないことで、形成されうる。
【0096】
上記した各サーマルプリントヘッドA2,A3においても、サーマルプリントヘッドA1と同様に、抵抗体層4は、ドープドシリコンを含むので、サーマルプリントヘッドA1と同様の効果を奏する。
【0097】
〔第2実施形態〕
図27は、第2実施形態にかかるサーマルプリントヘッドB1を示す。
図27は、サーマルプリントヘッドB1を示す要部拡大断面図であって、
図5の断面に対応する。サーマルプリントヘッドB1は、サーマルプリントヘッドA1と比較して、抵抗体層4の構成材料が異なる。その他の構成は、特段の断りがない限り、サーマルプリントヘッドA1と同様である。たとえば、サーマルプリントヘッドB1は、サーマルプリントヘッドA1と同様に、サーマルプリンタPrに組み込まれる。
【0098】
サーマルプリントヘッドB1では、抵抗体層4は、ドープドシリコンではなく、炭化ケイ素(SiC)を含む。
【0099】
次に、サーマルプリントヘッドB1の製造方法の一例について、
図28を参照して、説明する。
図28は、サーマルプリントヘッドB1の製造方法を示すフローチャートである。
【0100】
図28に示すように、サーマルプリントヘッドB1の製造方法は、基材準備工程S21、基材加工工程S22、絶縁層形成工程S23、抵抗体層形成工程S24、配線層形成工程S25、保護層形成工程S26、個片化工程S271および組立工程S272を含む。これらのうち、基材準備工程S21、基材加工工程S22、絶縁層形成工程S23、配線層形成工程S25、保護層形成工程S26、個片化工程S271および組立工程S272はそれぞれ、基材準備工程S11、基材加工工程S12、絶縁層形成工程S13、配線層形成工程S15、保護層形成工程S16、個片化工程S171および組立工程S172と同様に行われる。つまり、サーマルプリントヘッドB1の第1製造方法は、サーマルプリントヘッドA1の第1製造方法と比較して、抵抗体層形成工程S14の代わりに、抵抗体層形成工程S24を含む。
【0101】
抵抗体層形成工程S24は、
図28に示すように、抵抗体層形成工程S24は、成膜処理S241および部分除去処理S242を含む。
【0102】
成膜処理S241では、たとえばスパッタリング法によって、絶縁層19上に抵抗体膜4Kを形成する。成膜処理S241で形成される抵抗体膜4Kは、たとえば炭化ケイ素を含む薄膜である。成膜処理S241における抵抗体膜4Kの形成範囲は、
図11に示す例と同じである。つまり、抵抗体膜4Kは、絶縁層19の略全面を覆うように形成される。
【0103】
部分除去処理S242では、成膜処理S241で形成した抵抗体膜4Kを部分的に除去し、抵抗体膜4Kのパターニングを行う。たとえば、部分除去処理S242では、抵抗体膜4Kに対してリソグラフィパターニングを施した後、抵抗体膜4Kの一部を除去する。抵抗体膜4Kの部分除去の方法は、特に限定されないが、たとえばドライエッチングである。ドライエッチングで用いる薬剤は、抵抗体膜4Kの材料に応じて適宜変更すればよいが、たとえばフッ素系ガスあるいは塩素系ガスが用いられる。これにより、
図13および
図14と同様にパターニングされた抵抗体層4が形成される。形成された抵抗体層4は、複数の分離部40に分割されている。
【0104】
サーマルプリントヘッドB1、および、サーマルプリントヘッドB1を備えるサーマルプリンタPrの作用および効果は、次の通りである。
【0105】
サーマルプリントヘッドB1では、抵抗体層4は、炭化ケイ素(SiC)を含む。炭化ケイ素はドープドシリコンと同様にTaNよりも高抵抗であるので、抵抗体層4は、TaNで構成された例と比べて高抵抗となる。したがって、サーマルプリントヘッドB1は、サーマルプリントヘッドA1と同様に、抵抗体層4の高抵抗化に伴い、駆動電流を低減できる。つまり、サーマルプリントヘッドB1は、駆動電流を低減できるため、省電力化を図ることが可能となる。
【0106】
サーマルプリンタPrは、その構成部品として、サーマルプリントヘッドB1を備える。サーマルプリントヘッドB1は、上述の通り、省電力化を図ることで可能である。したがって、サーマルプリンタPrは、省電力を図ることができる。
【0107】
次に、第2実施形態の変形例にかかるサーマルプリントヘッドB2について、説明する。
図29は、サーマルプリントヘッドB2を示す要部拡大断面図であって、
図5の断面に対応する。
【0108】
図29に示すように、サーマルプリントヘッドB2は、サーマルプリントヘッドA2と同様に、配線層3が、各発熱部41を露出させつつ、抵抗体層4の上に形成されている。したがって、サーマルプリントヘッドB2の抵抗体層4(各発熱部41を除く)は、サーマルプリントヘッドA2の抵抗体層4と同様に、厚さ方向zに見て、配線層3に重なる。
【0109】
サーマルプリントヘッドB2は、上記サーマルプリントヘッドB1の製造方法における部分除去処理S242(抵抗体層形成工程S24の一処理)において、後に形成される配線層3の形成範囲を考慮して、抵抗体膜4Kの部分除去(パターニング)を行うことで、形成できる。なお、サーマルプリントヘッドB2は、たとえば、
図30に示す製造方法によって、製造することも可能である。このようなサーマルプリントヘッドB2の製造方法の他の例について、
図30~
図34を参照して、以下に説明する。
【0110】
図30は、サーマルプリントヘッドB2の製造方法を示すフローチャートである。
図30に示すように、サーマルプリントヘッドB2の製造方法は、基材準備工程S31、基材加工工程S32、絶縁層形成工程S33、抵抗体膜形成工程S34、配線膜形成工程S35、除去工程S36、保護層形成工程S37、個片化工程S381および組立工程S382を含む。これらのうち、基材準備工程S31、基材加工工程S32、絶縁層形成工程S33、保護層形成工程S37、個片化工程S381および組立工程S382はそれぞれ、基材準備工程S21、基材加工工程S22、絶縁層形成工程S23、保護層形成工程S26、個片化工程S271および組立工程S272と同様に行われる。つまり、サーマルプリントヘッドB2の製造方法は、サーマルプリントヘッドB1の製造方法と比較して、抵抗体層4および配線層3を形成する処理が異なる。
【0111】
抵抗体膜形成工程S34では、上記成膜処理S241(抵抗体層形成工程S24の一処理)と同様の処理を行い、
図31に示すように、絶縁層19上に抵抗体膜4Kを形成する。抵抗体膜形成工程S34は、つまり、抵抗体膜形成工程S34では、スパッタリング法により、抵抗体膜4Kを形成する。形成される抵抗体膜4Kは、炭化ケイ素を含む薄膜である。抵抗体膜形成工程S34における抵抗体膜4Kの形成範囲は、
図11に示す例と同じである。つまり、抵抗体膜4Kは、絶縁層19の略全面を覆うように形成される。
【0112】
配線膜形成工程S35は、
図32および
図33に示すように、抵抗体膜4Kを覆う配線膜3Kを形成する。配線膜形成工程S35は、第1成膜処理S351と第2成膜処理S352とを有する。
【0113】
第1成膜処理S351では、
図32に示すように、抵抗体膜4K上に第1導体膜301Kを形成する。第1導体膜301Kは、たとえばスパッタリング法によって成膜される。第1導体膜301Kは、たとえばチタンを含む薄膜である。このとき、第1導体膜301Kは、抵抗体膜4Kの略全面を覆っている。
【0114】
第2成膜処理S352では、
図33に示すように、第1導体膜301K上に第2導体膜302Kを形成する。第2導体膜302Kは、たとえばめっきあるいはスパッタリング法などによって成膜される。第2導体膜302Kは、たとえば銅を含む薄膜である。このとき、第2導体膜302Kは、第1導体膜301Kの略全面を覆っている。これにより、
図33に示すように、第1導体膜301Kおよび第2導体膜302Kを含む配線膜3Kが形成される。
【0115】
除去工程S36は、
図34に示すように、第2導体膜302K、第1導体膜301Kおよび抵抗体膜4Kを、それぞれ部分的に適宜除去する。
図30に示すように、除去工程S36は、第1部分除去処理S361、第2部分除去処理S362、および第3部分除去処理S363を含む。
【0116】
第1部分除去処理S361では、第2導体膜302Kの部分的な除去を行う。これにより、第2導体膜302Kのパターニングが行われ、第2導体層302が形成される。第2部分除去処理S362では、第1導体膜301Kの部分的な除去を行う。これにより、第1導体膜301Kのパターニングが行われ、第1導体層301が形成される。第3部分除去処理S363では、抵抗体膜4Kの部分的な除去を行う。これにより、抵抗体膜4Kのパターニングが行われ、抵抗体層4が形成される。形成された第1導体層301および第2導体層302は、
図34に示すように、上記配線層3を構成する。配線層3は、共通電極31、複数の個別電極32および複数の中継電極33を有する。形成された抵抗体層4は、複数の発熱部41を有し、発熱部41毎に分割されている。
【0117】
第1部分除去処理S361および第2部分除去処理S362において、第2導体膜302Kおよび第1導体膜301Kの部分除去の方法は、特に限定されないが、たとえばドライエッチングにより行われる。ドライエッチングで用いる薬剤は、第1導体膜301Kおよび第2導体膜302Kの各材料に応じて選択すればよいが、たとえばフッ素系ガスあるいは塩素系ガスが用いられる。たとえば、アルミニウムは、フッ素系ガスを用いたドライエッチングが可能である。
【0118】
第3部分除去処理S363において、抵抗体膜4Kの部分除去の方法は、特に限定されないが、たとえばドライエッチングである。ドライエッチングで用いる薬剤は、抵抗体膜4Kの材料に応じて適宜変更すればよいが、たとえばフッ素系ガスが用いられる。配線膜3K(第1導体膜301Kおよび第2導体膜302K)の構成材料がアルミニウムを含む場合、フッ素系ガスを用いたドライエッチングによって、配線膜3Kおよび抵抗体膜4Kを除去することが可能である。つまり、エッチング手法およびエッチング剤を変えることなく、配線膜3Kおよび抵抗体膜4Kのエッチングが可能となる。
【0119】
サーマルプリントヘッドB2においても、サーマルプリントヘッドB1と同様に、抵抗体層4は、炭化ケイ素(SiC)を含むので、サーマルプリントヘッドB1と同様の効果を奏する。
【0120】
各サーマルプリントヘッドB1,B2において、配線層3は、第1導体層301と第2導体層302とが積層されたものではく、サーマルプリントヘッドA3と同様に、単層であってもよい。
【0121】
上記第1実施形態および上記第2実施形態にかかる各サーマルプリントヘッドA1,A2,A3,B1,B2において、凸部13は、一対の第1傾斜部131A,131Bのそれぞれを有さず、頂部130および一対の第2傾斜部132A,132Bを有する構成であってもよい。この場合、頂部130と一対の第2傾斜部132A,132Bとがそれぞれ直接接する。また、各サーマルプリントヘッドA1,A2,A3,B1,B2において、基材10は、凸部13を有していなくてもよい。
【0122】
上記第1実施形態および上記第2実施形態にかかる各サーマルプリントヘッドA1,A2,A3,B1,B2において、配線層3の構成は、図示された例に限定されない。
図35および
図36はそれぞれ、変形例にかかるサーマルプリントヘッドを示す要部拡大平面図であって、配線層3の構成が異なる例を示す。
【0123】
図35は、変形例にかかるサーマルプリントヘッドの一例を示しており、
図35に示す要部拡大平面図は、
図2に対応する。
図35に示す変形例では、配線層3は、サーマルプリントヘッドA1の配線層3と同様に、共通電極31および複数の個別電極32を有するが、サーマルプリントヘッドA1の配線層3と異なり、複数の中継電極33をいずれも有していない。
【0124】
図35に示す例において、共通電極31は、複数の帯状部313、連結部314および迂回部315を含む。連結部314は、ヘッド基板1の副走査方向yの下流側の端縁寄りに配置されている。連結部314は、主走査方向xに延びる帯状である、複数の帯状部313はそれぞれ、連結部314から各発熱部41に向けて副走査方向yに延びる。複数の帯状部313は、主走査方向xに等ピッチで配列されている。迂回部315は、連結部314の主走査方向xの一端から副走査方向yに延びる。
【0125】
図35に示す例において、各発熱部41は、副走査方向yにおいて共通電極31の各帯状部313と各個別電極32の帯状部321とに挟まれている。各帯状部321は、副走査方向yの上流側から、各発熱部41に繋がり、各帯状部313は、副走査方向yの下流側から各発熱部41に繋がる。
図35に示すサーマルプリントヘッドにおいては、複数の帯状部313、特許請求の範囲に記載の「複数の第1帯状部」に相当し、複数の帯状部321が、特許請求の範囲に記載の「複数の第2帯状部」に相当する。
【0126】
図36は、変形例にかかるサーマルプリントヘッドの他の例を示している。
図36に示す例では、配線層3は、上記
図35に示す変形例と同様に、共通電極31および複数の個別電極32を有するが、複数の中継電極33のいずれも有していない。
【0127】
図36に示す例において、各帯状部313と各帯状部321とは、一部ずつが主走査方向xに沿って交互に配置されている。抵抗体層4は、複数の分離部40に分割されておらず、これらの各帯状部313および各帯状部321に重なるように、主走査方向xに延びる帯状に形成されている。このような構成では、
図36に示すように、厚さ方向z視において、主走査方向xにおいて各帯状部313と各帯状部321とに挟まれた領域が各発熱部41となる。
【0128】
また、
図36に示す例では、厚さ方向z視において、配線層3と抵抗体層4が重なる部分においては、抵抗体層4が配線層3の厚さ方向z下方に配置されている。この構成と異なり、各サーマルプリントヘッドB1,B2においては、抵抗体層4が配線層3の厚さ方向z上方に配置されていてもよい。
【0129】
図35および
図36に示す各サーマルプリントヘッドにおいても、各サーマルプリントヘッドA1,A2,A3,B1,B2と同様の効果を奏する。よって、本開示のサーマルプリントヘッドは、
図35および
図36に示す各変形例から理解されるように、配線層3の構成は、サーマルプリントヘッドの仕様に応じて適宜変更可能である。
【0130】
上記第1実施形態および上記第2実施形態にかかる各サーマルプリントヘッドA1,A2,A3,B1,B2において、基材10は、単結晶半導体で構成されたものに限定されず、たとえばセラミックスにより構成されてもよい。
図37は、変形例にかかるサーマルプリントヘッドを示す要部断面図であって、基材10がセラミックスにより構成された例を示す。なお、
図37に示す例では、サーマルプリントヘッドA1において、基材10をセラミックスにより構成した例を示す。
図37に示す例では、厚さ方向z視において、配線層3と抵抗体層4が重なる部分において、抵抗体層4が配線層3の厚さ方向z下方に配置されている。この例とは異なり、各サーマルプリントヘッドB1,B2においては、抵抗体層4が配線層3の厚さ方向z上方に配置されていてもよい。
【0131】
図37に示す例において、ヘッド基板1は、基材10およびグレーズ層15を含む。基材10は、先述の通り、セラミックスにより構成される。当該セラミックスとしては、たとえば窒化アルミニウムまたはアルミナ(Al
2O
3)などの熱伝導率が比較的高いものが採用されうる。グレーズ層15は、基材10の第1主面11に形成されている。グレーズ層15は、たとえば非晶質ガラスなどのガラス材料からなる。
図37に示すように、グレーズ層15は、部分グレーズ151およびガラス層152を含んでいる。
図37示す例と異なり、グレーズ層15は、ガラス層152を含まず、部分グレーズ151のみで構成されてもよい。あるいは、ヘッド基板1がグレーズ層15を含んでいなくてもよい。
【0132】
部分グレーズ151は、主走査方向xに長く延びている。部分グレーズ151は、主走査方向x視において、厚さ方向zに膨出している。部分グレーズ151は、
図37に示すように、主走査方向xに直交する平面による断面(y-z断面)が、円弧状である。部分グレーズ151は、抵抗体層4のうち発熱する部分(後述の発熱部41)を印刷媒体に押し当てる易くするために、設けられる。また、部分グレーズ151は、発熱部41からの熱を蓄積する蓄熱層として、設けられている。部分グレーズ151は、厚さ方向zの寸法(最大寸法)が、ガラス層152よりも大きい。ガラス層152は、部分グレーズ151に隣接して形成されており、上面が平坦な形状である。ガラス層152は、部分グレーズ151の一部に重なっている。
【0133】
図37に示すサーマルプリントヘッドにおいても、各サーマルプリントヘッドA1,A2,A3,B1,B2と同様の効果を奏する。よって、本開示のサーマルプリントヘッドは、
図37に示す変形例から理解されるように、ヘッド基板1の構成は、サーマルプリントヘッドの仕様に応じて適宜変更可能である。
【0134】
本開示にかかるサーマルプリントヘッドおよびサーマルプリンタは、上記した実施形態に限定されるものではない。本開示のサーマルプリントヘッドおよびサーマルプリンタの各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。たとえば、本開示のサーマルプリントヘッドおよびサーマルプリンタは、以下の付記に関する実施形態を含む。
〔付記1〕
基板と、
主走査方向に配列された複数の発熱部を有し、前記基板に支持された抵抗体層と、
前記複数の発熱部への通電経路を構成し、前記基板に支持された配線層と、
を備え、
前記抵抗体層は、不純物がドープされたドープドシリコン、または、炭化ケイ素から選択される材料を含む、サーマルプリントヘッド。
〔付記2〕
前記抵抗体層は、炭化ケイ素を含む、付記1に記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記3〕
前記抵抗体層は、ドープドシリコンを含む、付記1に記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記4〕
前記不純物は、ホウ素、リンあるいはヒ素のいずれかから選択される、付記3に記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記5〕
前記配線層は、前記複数の発熱部を露出させつつ、少なくとも一部が前記抵抗体層上に形成されている、付記1ないし付記4のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記6〕
前記配線層は、前記基板の厚さ方向に積層された第1導体層および第2導体層を含み、
前記第1導体層は、前記厚さ方向において、前記基板と前記第2導体層との間に位置する、
前記第2導体層は、副走査方向における単位長さ当たりの抵抗値が前記複数の発熱部の各々よりも小さく、
前記第1導体層は、副走査方向における単位長さ当たりの抵抗値が前記複数の発熱部の各々と前記第2導体層との間をとる、付記5に記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記7〕
前記第2導体層の構成材料は、銅あるいはアルミニウムを含む、付記6に記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記8〕
前記配線層は、複数の第1帯状部と複数の第2帯状部とを含み、
前記複数の発熱部の各々は、前記基板の厚さ方向に見て、前記複数の第1帯状部の各々と前記複数の第2帯状部の各々との間に配置される、付記5ないし付記7のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記9〕
前記複数の第1帯状部の各々は、前記複数の発熱部の各々に、副走査方向の一方から繋がり、
前記複数の第2帯状部の各々は、前記複数の発熱部の各々に、副走査方向の他方から繋がり、
前記複数の発熱部の各々を挟んで配置される前記複数の第1帯状部の各々と前記複数の第2帯状部の各々とは、副走査方向に見て、重なる、付記8に記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記10〕
前記抵抗体層は、主走査方向に配列された複数の分離部を含み、
前記複数の発熱部の各々は、前記複数の分離部の各々に形成されている、付記9に記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記11〕
前記抵抗体層および前記配線層を覆う保護層をさらに備える、付記1ないし付記10のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記12〕
前記基板は、単結晶半導体を含む材料により構成された基材を含む、付記1ないし付記11のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記13〕
前記基板は、前記基材と前記抵抗体層との間に挟まれた絶縁層をさらに含む、付記12に記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記14〕
前記基材は、前記抵抗体層に対向する主面と、前記主面から突き出し、かつ、主走査方向に延びる凸部とを有し、
前記複数の発熱部の各々は、前記凸部の上に形成されている、付記12または付記13のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記15〕
前記単結晶半導体は、シリコンである、付記12ないし付記14のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記16〕
付記1ないし付記15のいずれかに記載のサーマルプリントヘッドと、
前記サーマルプリントヘッドに正対するプラテンと、を備えるサーマルプリンタ。
【符号の説明】
【0135】
A1,A2,A3,B1,B2:サーマルプリントヘッド
Pr :サーマルプリンタ
1 :ヘッド基板
10,10K:基材
11 :第1主面
11K :主面
12 :第1裏面
12K :裏面
13,13K:凸部
130,130K:頂部
131A,131B:第1傾斜部
132A,132B:第2傾斜部
132K :傾斜部
15 :グレーズ層
151 :部分グレーズ
152 :ガラス層
19 :絶縁層
2 :保護層
29 :パッド用開口
3 :配線層
3K :配線膜
301 :第1導体層
301K :第1導体膜
302 :第2導体層
302K :第2導体膜
31 :共通電極
311 :直行部
312 :分岐部
313 :帯状部
314 :連結部
315 :迂回部
32 :個別電極
321 :帯状部
322 :パッド部
33 :中継電極
331 :帯状部
332 :連結部
4 :抵抗体層
4K :抵抗体膜
40 :分離部
41 :発熱部
5 :接続基板
51 :第2主面
52 :第2裏面
55 :制御電極
59 :コネクタ
61 :ワイヤ
7 :ドライバIC
71 :入力パッド
72 :出力パッド
78 :保護樹脂
8 :放熱部材
81 :第1支持面
82 :第2支持面
91 :プラテンローラ