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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023078030
(43)【公開日】2023-06-06
(54)【発明の名称】乗員保護装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/18 20060101AFI20230530BHJP
   B60R 21/207 20060101ALI20230530BHJP
   B60R 22/26 20060101ALI20230530BHJP
【FI】
B60R21/18
B60R21/207
B60R22/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021191606
(22)【出願日】2021-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】折▲高▼ 早苗
(72)【発明者】
【氏名】深浦 和実
【テーマコード(参考)】
3D018
3D054
【Fターム(参考)】
3D018CA03
3D054AA02
3D054AA03
3D054AA07
3D054AA21
3D054AA25
3D054FF16
(57)【要約】
【課題】非装着時における折り完了体のラップベルトに対する位置ずれを抑制して、シートベルトの装着時に、折り完了体の乗員に対する位置を、適切に維持可能な乗員保護装置。
【解決手段】シート1に着座した乗員を保護するための乗員保護装置。シートベルト7と、シートベルトにおいて装着時に乗員の腰部を拘束するラップベルト10の領域に配置されるエアバッグ25と、ラップベルトの領域において折り畳まれて配置されるエアバッグの外周側を覆うカバー体45と、を有する。エアバッグが、可撓性を有したシート体から構成される袋状として、折り畳まれた折り完了体の状態で、周囲を覆うカバー体とともに、ラップベルトに対してずれ移動可能に、ラップベルトに保持される。折り完了体の周囲を覆うカバー体が、一端側を、シートベルトにおいてシート側に設けられるバックル27に連結されるタング部12側に連結されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートに着座した乗員を保護するための乗員保護装置であって、
シートベルトと、該シートベルトにおいて装着時に前記乗員の腰部を拘束するラップベルトの領域に配置されるエアバッグと、前記ラップベルトの領域において折り畳まれて配置されるエアバッグの外周側を覆うカバー体と、を有する構成とされて、
前記エアバッグが、可撓性を有したシート体から構成される袋状として、折り畳まれた折り完了体の状態で、周囲を覆う前記カバー体とともに、前記ラップベルトに対してずれ移動可能に、前記ラップベルトに保持されて、前記シート側に配設されるインフレーターと接続されて、内部に膨張用ガスを流入させて前記ラップベルトから前上方に向かって突出するように膨張する構成とされ、
前記折り完了体の周囲を覆う前記カバー体が、一端側を、前記シートベルトにおいて前記シート側に設けられるバックルに連結されるタング部側に連結されていることを特徴とする乗員保護装置。
【請求項2】
前記カバー体が、一端側に、前記タング部に連結させるためのループ部を有した連結ストラップを、備え、
前記タング部が、前記ループ部を巻き付けることにより、前記カバー体を連結可能に、構成されていることを特徴とする請求項1に記載の乗員保護装置。
【請求項3】
前記シートベルトが、非装着の状態において、前記タング部を、前記シートにおける背もたれ部の上端側に配置させるように、構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の乗員保護装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートに着座した乗員を保護するための乗員保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗員保護装置としては、シートベルトにおいて、装着時に乗員の腰部を拘束するラップベルトの領域に、エアバッグを折り畳んで形成される折り完了体を配置させ、シートベルトの装着時において、シートに着座した乗員の腰部の周囲にセットして、作動時に、内部に膨張用ガスを流入させて膨張するエアバッグによってシートに着座している乗員を保護する構成のものがあった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-51744公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この従来の乗員保護装置では、シートベルトは、非装着の状態では、ラップベルト(ベルト本体)を、上下方向に略沿わせるようにして、配置されることから、非装着状態において、ラップベルトに保持されている折り完了体が、ラップベルトに対して、大きくずれ移動してしまう虞れがあった。そして、ラップベルトに対して折り完了体の位置が大きくずれてしまうと、シートベルトの装着時に、折り完了体の乗員に対する位置もずれてしまい、適切な位置に配置させ難い場合があった。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、非装着時における折り完了体のラップベルトに対する位置ずれを抑制して、シートベルトの装着時に、折り完了体の乗員に対する位置を、適切に維持可能な乗員保護装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る乗員保護装置は、シートに着座した乗員を保護するための乗員保護装置であって、
シートベルトと、シートベルトにおいて装着時に乗員の腰部を拘束するラップベルトの領域に配置されるエアバッグと、ラップベルトの領域において折り畳まれて配置されるエアバッグの外周側を覆うカバー体と、を有する構成とされて、
エアバッグが、可撓性を有したシート体から構成される袋状として、折り畳まれた折り完了体の状態で、周囲を覆うカバー体とともに、ラップベルトに対してずれ移動可能に、ラップベルトに保持されて、シート側に配設されるインフレーターと接続されて、内部に膨張用ガスを流入させてラップベルトから前上方に向かって突出するように膨張する構成とされ、
折り完了体の周囲を覆うカバー体が、一端側を、シートベルトにおいてシート側に設けられるバックルに連結されるタング部側に連結されていることを特徴とする。
【0007】
本発明の乗員保護装置では、エアバッグを折り畳んで形成される折り完了体が、周囲をカバー体に覆われた状態で、ラップベルトに対してずれ移動可能に、ラップベルトに保持される構成であるものの、カバー体は、一端側を、シートベルトのタング部側に連結される構成である。そのため、折り完了体(カバー体)のタング部からの離隔距離を略一定に保つことができて、シートベルトの装着時に、単に、タング部をバックルに連結させれば、折り完了体を、乗員に対して適切な位置に配置させることができる。
【0008】
したがって、本発明の乗員保護装置では、非装着時における折り完了体のラップベルトに対する位置ずれを抑制して、シートベルトの装着時に、折り完了体の乗員に対する位置を、適切に維持することができる。
【0009】
具体的には、カバー体の一端側に、タング部に連結させるためのループ部を有した連結ストラップを、配設させ、この連結ストラップのループ部を、タング部に巻き付けることにより、カバー体をタング部に連結させる構成とすれば、簡便な構成として、カバー体の一端側を、タング部に連結させることが可能となって、好ましい。
【0010】
さらに、上記構成の乗員保護装置において、シートベルトが、非装着の状態において、タング部をシートにおける背もたれ部の上端側に配置させるような構成であっても、非装着状態において、折り完了体(カバー体)が、タング部から離隔するように落下することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態である乗員保護装置を搭載させたシートの斜視図である。
図2図1のシートの右側面図であり、シートベルトが装着された状態を示す。
図3図1のシートの左側面図であり、シートベルトが装着された状態を示す。
図4図1のシートの正面図であり、シートベルトが装着された状態を示す。
図5】実施形態の乗員保護装置において使用されるエアバッグを単体で膨張させた状態を示す概略斜視図である。
図6図5のエアバッグの概略縦断面図である。
図7】実施形態の乗員保護装置において、折り完了体を覆っているカバー体と、ラップベルトと、タングプレートと、を示す概略斜視図である。
図8】実施形態の乗員保護装置において、カバー体の連結ストラップの部位付近を示す概略縦断面図である。
図9】実施形態の乗員保護装置において、カバー体における本体部の部位を示す概略縦断面図である。
図10】実施形態の乗員保護装置において、エアバッグが膨張を完了させた状態のシートの正面図である。
図11】実施形態の乗員保護装置において、エアバッグが膨張を完了させた状態のシートの左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。実施形態の乗員保護装置Sは、図1~4に示すように、車両のシート1に搭載されるもので、シートベルト7と、エアバッグ25と、エアバッグ25に膨張用ガスを供給するインフレーター20と、エアバッグ25を折り畳んで構成される折り完了体55の周囲を覆うカバー体45と、を備える構成とされている。シート1は、背もたれ部2と座部3とを備えている。
【0013】
シートベルト7は、実施形態の場合、シート1に搭載されるもので、シート1に着座した乗員MPを保護するためのベルト本体8と、ベルト本体8に取り付けられるタング部としてのタングプレート12と、タングプレート12を連結させるためのバックル17と、を備える構成とされている。ベルト本体8は、背もたれ部2内に配置される図示しないリトラクタの巻取軸に一端を係止され、他端側を、シート1における座部3の後端3b左方に配置されるアンカ部材18(図1,3参照)に係止されている。詳細には、ベルト本体8は、背もたれ部2の上端左縁側に形成される挿通孔(図符号省略)から外部に露出されるように配置されるもので、実施形態の場合、乗員MPの非着座状態においては、ラップベルト10を、背もたれ部2の前面に露出させるようにして、構成されている。さらに詳細には、実施形態の場合、乗員MPの非着座状態においては、ベルト本体8は、図1に示すように、タングプレート12を背もたれ部2の左縁2aの上端側に形成される挿通孔(図符号省略)近傍に位置させ、ラップベルト10を、タングプレート12から下方に延ばして、背もたれ部2の左縁2a側において、上下方向に略沿わせるようにして、配置されることとなる。すなわち、タングプレート12は、非装着の状態においては、背もたれ部2の上端2b側に、配置されることとなる(図1参照)。ベルト本体8は、ラップベルト10と、背もたれ部2内に収納されるショルダーベルト9と、を有し、乗員着座時においてタングプレート12をバックル17に連結させた状態で、アンカ部材18とバックル17との間において左右方向に略沿って配置されるラップベルト10によって乗員MPの下半身MD(腰部)を拘束し、背もたれ部2の上端左縁側から延びつつバックル17にかけて斜めに配置されるショルダーベルト9によって乗員MPの上半身MU(肩部から胸部にかけて)を拘束する構成とされている(図2~4参照)。シートベルト7において、背もたれ部2内に配置されている図示しないリトラクタは、プリテンショナー機構を有している。
【0014】
また、実施形態の乗員保護装置Sでは、タングプレート12は、先端12a側に、バックル17に挿入されて連結される連結本体部13を配設させるともに、バックル17との連結時に外部に露出される元部12b側の領域に、ベルト本体8を挿通可能なベルト本体用スリット14と、カバー体45から延びる後述する連結ストラップ49を挿入させて周囲に巻き付ける巻付穴部15と、を、備える構成とされている(図7,8参照)。巻付穴部15は、連結ストラップ49を挿入可能なストラップ用スリット15aを有するとともに、ストラップ用スリット15aの元部側の領域を、連結ストラップ49の後述するループ部49aを巻き付けて連結可能な連結軸部15bとしている。ストラップ用スリット15aは、ベルト本体用スリット14と略平行に形成されており、連結軸部15bは、ストラップ用スリット15aの元部側で略棒状に形成されている。
【0015】
インフレーター20は、シート1側に配設されるもので、詳細には、実施形態の場合、シート1における座面3aよりも下方となる位置に、配設されている。具体的には、インフレーター20は、図3に示すように、シート1の背面側における座部3より下方となる位置において軸方向を左右方向に略沿わせて配置される略円柱状のインフレーター本体21(詳細な図示は省略)と、インフレーター本体21から延びてエアバッグ25に膨張用ガスを供給するパイプ部22と、を備えている。パイプ部22は、インフレーター本体21から延びて、先端を、クランプ23を利用して、エアバッグ25における後述する導管部35と接続させる構成とされている(図1,3参照)。実施形態の場合、インフレーター本体21は、エアバッグ25の膨張に伴うシートベルト7のベルト本体8の引き出しを規制するために、作動開始を、シートベルト7のプリテンショナー機構よりも遅らせるように、設定されている。
【0016】
エアバッグ25は、図5,6に示すように、乗員MPを保護可能に膨張するバッグ本体26と、インフレーター20と接続されてバッグ本体26に膨張用ガスを流入させる導管部35と、バッグ本体26をラップベルト10に保持させるための取付部40と、を備えている。
【0017】
バッグ本体26は、膨張完了時の外形形状を、軸方向を左右方向に略沿わせた略三角柱状として構成されるもので、左右の側方から見た状態での膨張完了形状を、前側に斜辺を有するような略直角三角形状とし、前後方向側から見た状態での膨張完了形状を、上下に幅広とした略長方形状とするように、構成されている(図10,11参照)。バッグ本体26は、図5,6に示すように、膨張完了時に乗員MP側(後側)に配置される後壁部28と、後壁部28と前後方向側で対向して配置される前壁部27と、膨張完了時の下端側に配置される下壁部29と、膨張完了時に左右方向側で対向して配置される左壁部30,右壁部31と、を有している。このバッグ本体26は、膨張完了時に、後壁部28によって乗員MPの上半身MUを受け止める構成であり、また、この後壁部28による上半身MUの受止時に、下壁部29を、乗員MPの大腿部MTと当接させて、大腿部MTに支持させることにより、乗員MPを受け止める構成とされている(図11参照)。このバッグ本体26は、下壁部29における後端29aの下面側に、導管部35を配設させ、この導管部35を介して、インフレーター20からの膨張用ガスを内部に流入させる構成である。すなわち、下壁部29における後端29a側の領域には、導管部35と連通される連通孔33が、円形に開口して、実施形態の場合、左右方向側で2個並設されている。そして、バッグ本体26は、この連通孔33の周縁の部位で、導管部35と連結されている。
【0018】
導管部35は、バッグ本体26の下面側から、実施形態の場合、左方に延びるように配設されて、インフレーター20のパイプ部22と接続されるもので、バッグ本体26側となる元部側を閉塞させ、先端37a側を、パイプ部22と接続可能に開口させて構成されている。具体的には、導管部35は、図5に示すように、バッグ本体26の下面側に位置する幅広の元部側部位36と、膨張完了時のバッグ本体26から左方に延びるように配設される先端側部位37と、を有する構成とされている。先端側部位37は、元部側部位36より狭幅に形成されている。この導管部35は、エアバッグ25の膨張完了時に、ラップベルト10に略沿うように左右方向に略沿って配置される構成であり、先端側部位37における先端37a側を、上述したごとく、クランプ23を用いて、インフレーター20のパイプ部22に、接続される構成である。詳細には、導管部35における先端側部位37は、実施形態の場合、先端37a側の領域において、ベルト本体8(ラップベルト10)の他端側を係止させているアンカ部材18よりも後方に延びるように配置されており(図3参照)、長さ寸法を、バッグ本体26を折り畳んで形成される折り完了体55(具体的には、導管部35自体における元部側部位36も含み、折り完了体55と元部側部位36との周囲を包んでいるカバー体45)の位置を、シートベルト7を装着する(シート1に着座する)乗員MPの体格に限らず、腰部の周囲における適切な位置に配置可能な寸法(大柄な乗員にも対応可能に、余裕をもたせた長めの寸法)に、設定されている。
【0019】
バッグ本体26をラップベルト10に取り付ける取付部40は、図5,6に示すように、導管部35における元部側部位36の下面側に配置されるもので、ラップベルト10に沿うように左右方向に略沿って配設される略筒状として、ラップベルト10を挿通可能に構成されている。この取付部40にラップベルト10を挿通させることにより、エアバッグ25は、ラップベルト10に対してずれ移動可能に、ラップベルト10に保持される構成である。
【0020】
実施形態では、エアバッグ25は、バッグ本体26の領域を、長尺状に折り畳まれるようにして、このバッグ本体26を折り畳んで形成される折り完了体55の状態で、ラップベルト10に対してずれ移動可能に、ラップベルト10に保持される構成である。具体的には、エアバッグ25は、詳細な図示を省略するが、前壁部27を後壁部28及び下壁部29に重ねるようにして、略平らに展開した状態のバッグ本体26を、前後方向の幅寸法を縮めるように折り畳んで、左右方向に略沿った長尺状の折り完了体55を形成するように折り畳まれる。そして、エアバッグ25は、バッグ本体26を折り畳んで形成される折り完了体55と導管部35における元部側部位36とを、シートベルト7の装着時におけるラップベルト10の上面側に重ねられて、周囲を、取付部40も含めてカバー体45に覆われるようにして、ラップベルト10の領域に配置されている(図7,9参照)。折り完了体55は、図1に示すような非装着状態においては、背もたれ部2の前面に露出しているラップベルト10の背面側(背もたれ部2側)に、配置されている。また、実施形態の場合、導管部35における先端側部位37は、シートベルト7の装着状態において、折り完了体55(カバー体45)の左方において、ラップベルト10の上面側に露出して配置されている(図4参照)。
【0021】
カバー体45は、図7,8に示すように、折り完了体55の周囲を覆う本体部46と、カバー体45をタングプレート12に連結されるための連結ストラップ49と、を備えている。
【0022】
本体部46は、可撓性を有したシート体から形成されるもので、実施形態の場合、織布から、形成されている。本体部46は、折り完了体55と導管部35における元部側部位36との周囲を、取付部40とラップベルト10とを含めて覆うもので、ラップベルト10と、導管部35における先端側部位37と、を挿通可能に、両端側を開口させた略筒状とされている。この本体部46は、シートベルト7の装着時において折り完了体55の上側を覆う領域の所定箇所に、図示しない破断予定部を配設させる構成とされ、エアバッグ25の展開膨張時に、破断予定部を、左右の略全域にわたって破断させることにより、バッグ本体26を突出可能に、構成されている。また、本体部46は、折り完了体55及び導管部35の元部側部位36とともに、ラップベルト10に対してずれ移動可能に、構成されている。具体的には、本体部46において、シートベルト7装着時の右端46b側に形成される開口47Rは、図7,8に示すように、ラップベルト10を挿通可能とされるとともに、周縁(具体的には後述するごとく上縁47a側)で結合させている連結ストラップ49を突出可能な構成とされている。また、本体部46において、シートベルト7装着時の左端46a側に形成される開口47Lは、詳細な図示は省略するが、ラップベルト10と導管部35の先端側部位37とのみを挿通可能で(図7参照)、折り完了体55と導管部35における元部側部位36を挿通不能な大きさに、設定されている。
【0023】
連結ストラップ49は、本体部46の一端側(タングプレート12側であって、シートベルト7装着時における右端46b側)を、タングプレート12側に連結させるためのものであり、可撓性を有した帯状体から構成されている。実施形態の場合、連結ストラップ49は、ベルト本体8よりも狭幅とされるとともに、本体部46の右端46b側の開口47Rにおいて、シートベルト7装着時における上縁47a側の領域に両端を結合(縫着)されるループ状とされている。すなわち、連結ストラップ49は、全体をループ部49aとしており、このループ部49aを、タングプレート12の巻付穴部15に形成されるストラップ用スリット15aに挿通させて、連結軸部15bの周囲に巻き付けられることにより、タングプレート12に連結される構成である(図7,8参照)。この連結ストラップ49(ループ部49a)は、長さ寸法を、シートベルト7の装着時において、折り完了体55(本体部46)を、シート1の左右方向の略中央(すなわち、シート1に着座している乗員MPの左右方向の略中央)となる位置に配置可能な寸法に、設定されている(図4参照)。
【0024】
実施形態の乗員保護装置Sでは、車両に搭載されたシート1にシートベルト7を装着しつつ乗員MPが着座した状態で、インフレーター20が作動すれば、インフレーター20から吐出される膨張用ガスが、導管部35を経て、バッグ本体26内に流入することとなり、エアバッグ25におけるバッグ本体26が、カバー体45の本体部46を破断させるようにして、ラップベルト10から前上方に突出しつつ、図10,11に示すように、膨張を完了させることとなる。
【0025】
そして、実施形態の乗員保護装置Sでは、エアバッグ25を折り畳んで形成される折り完了体55が、周囲をカバー体45に覆われた状態で、ラップベルト10に対してずれ移動可能に、ラップベルト10に保持される構成であるものの、カバー体45は、一端(右端46b)側を、シートベルト7のタングプレート12(タング部)側に連結される構成である。そのため、折り完了体55(カバー体45)のタングプレート12からの離隔距離を略一定に保つことができて、シートベルト7の装着時に、単に、タングプレート12をバックル17に連結させれば、折り完了体55を、乗員MPに対して適切な位置に配置させることができる。
【0026】
したがって、実施形態の乗員保護装置Sでは、非装着時における折り完了体55のラップベルト10に対する位置ずれを抑制して、シートベルト7の装着時に、折り完了体55の乗員MPに対する位置を、適切に維持することができる。
【0027】
具体的には、実施形態の乗員保護装置Sでは、カバー体45の右端46b側に、タングプレート12に連結させるためのループ部49aを有した連結ストラップ49を、配設させ、この連結ストラップ49のループ部49aを、タングプレート12に巻き付けることにより、カバー体45をタングプレート12に連結させていることから、簡便な構成として、カバー体45の右端46b側を、タングプレート12に連結させることができる。なお、実施形態では、連結ストラップ49は、両端をカバー体45側に結合させて、全体をループ状としているが、ループ部の形状は、勿論、実施形態に限定されるものではなく、連結ストラップとして、先端側のみに、タングプレートの連結軸部に巻き付け可能なループ部を設けた構成のものを使用してもよい。
【0028】
また、実施形態の乗員保護装置Sでは、シートベルト7が、非装着の状態において、タングプレート12をシート1における背もたれ部2の上端2b側に配置させるように構成されている。すなわち、シートベルト7において、ラップベルト10が、タングプレート12から下方に延びるように、背もたれ部2の左縁2a側において、上下方向に略沿って、配置される構成であるが(図1参照)、非装着状態においても、折り完了体55(カバー体45)が、連結ストラップ49により、タングプレート12から離隔するように落下する(ラップベルト10に対してずり落ちる)ことを、的確に防止でき、折り完了体55(カバー体45)のタングプレート12からの距離を略一定に維持させることができる。
【0029】
なお、実施形態の乗員保護装置Sでは、シートベルト7とインフレーター20とが、シート1に搭載される構成とされている。そのため、シート1を前後で大きくスライドさせたり回転させたりして、車両に対して移動させた状態で使用する場合にも、シート1に着座した乗員MPを、エアバッグ25によって的確に保護することができる。もちろん、本発明の乗員保護装置は、このような構成のシートに限定されるものではなく、リトラクタを車体側に設けたシートベルトにより乗員を拘束するタイプのシートに搭載することもできる。また、インフレーターも、車両のボディ側に取り付ける構成としてもよい。
【符号の説明】
【0030】
1…シート、2…背もたれ部、2b…上端、7…シートベルト、10…ラップベルト、12…タングプレート(タング部)、15…巻付穴部、17…バックル、20…インフレーター、25…エアバッグ、26…バッグ本体、40…取付部、45…カバー体、46…本体部、49…連結ストラップ、49a…ループ部、55…折り完了体、MP…乗員、S…乗員保護装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11