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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023078035
(43)【公開日】2023-06-06
(54)【発明の名称】駐車設備の異常検出システム
(51)【国際特許分類】
   E04H 6/18 20060101AFI20230530BHJP
   E04H 6/42 20060101ALI20230530BHJP
   G08B 21/02 20060101ALI20230530BHJP
【FI】
E04H6/18 601F
E04H6/18 601G
E04H6/18 601Z
E04H6/18 606H
E04H6/42 Z
G08B21/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021191613
(22)【出願日】2021-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】000227043
【氏名又は名称】日精株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100208672
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 愼一
(74)【代理人】
【識別番号】100082692
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵合 正博
(72)【発明者】
【氏名】秋葉 竜也
【テーマコード(参考)】
5C086
【Fターム(参考)】
5C086AA22
5C086CA09
5C086CB26
5C086DA08
5C086EA15
(57)【要約】
【課題】収音動作と音響解析により、乗降室又は駐車スペース内において車内に閉じ込められた人等を検出して、駐車設備の異常を検出する。
【解決手段】駐車設備の異常検出システムは、駐車設備1の内部の音を収音する収音機器33と、収音機器33が収音した音を音信号として受信する収音情報受信部41と、音信号を解析する収音情報解析部43と、を有し、収音情報解析部43は、予め収音した音信号を定常音として、定常音と車両15の入出庫作業ごとに収音した新音信号とを比較し、新音信号が定常音と異なるか否かを解析する解析結果判定部51を有する。
【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駐車設備における異常を検出する駐車設備の異常検出システムであって、
駐車設備の内部の音を収音する収音機器と、
前記収音機器が収音した前記音を音信号として受信する収音情報受信部と、
前記音信号を解析する収音情報解析部と、を有し、
前記収音情報解析部は、予め収音した音信号を定常音として、前記定常音と車両の入出庫作業ごとに収音した新音信号とが比較され、前記新音信号が前記定常音と異なるか否かを解析する解析結果判定部を有する、
駐車設備の異常検出システム。
【請求項2】
前記収音情報解析部は、
前記収音情報受信部で受信された音信号をディジタルデータに変換する収音情報変換部と、
前記収音情報変換部からの変換データを解析処理して異常判定要素となる解析結果を生成する変換情報処理部と、
前記変換情報処理部からの解析結果を基に駐車設備の内部で異常が発生しているか否かを判定する前記解析結果判定部と、
前記変換情報処理部及び前記解析結果判定部において処理されて得られた定常音情報を格納する定常音記憶部と、
前記解析結果判定部の判定処理において処理されて得られた非定常音情報を格納する非定常音記憶部と、
を有する、請求項1に記載の駐車設備の異常検出システム。
【請求項3】
前記収音機器には、マイクロホンが使用され、又は、マイクロホン素子を備えた電子機器が使用される、
請求項1又は2に記載の駐車設備の異常検出システム。
【請求項4】
前記変換情報処理部は、解析処理に際して、収音機器から得られた収音情報をアレイ信号処理し、定常音又は非定常音の音源位置を特定することを可能にする、
請求項1から3のいずれか1項に記載の駐車設備の異常検出システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元的な収音方法と音響解析により、駐車設備における乗降室又は駐車スペース内の異常を確実に検出する駐車設備の異常検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
駐車設備には、駐車スペース内に閉じ込められた人・動物を検出して異常を検出する機能を備えたものがある。このような異常検出機能を持った機械式駐車装置の従来例としては、例えば特許文献1に記載されたものがある。
【0003】
特許文献1には、機械式駐車設備に設けられ、車両内の動体を検知する車両内動体検知を行う動体検知装置であって、前記車両内動体検知において、第1送信波を生成する第1信号発生器と、前記車両内動体検知において、前記第1送信波を電波として送信する第1アンテナと、前記車両内動体検知において、前記第1送信波と、前記第1アンテナで受信される、前記動体を含む複数の反射物での前記第1送信波の反射波とに基づいて、前記車両内に前記動体が存在するか否かを判定する第1判定部と、前記車両内動体検知において、第2送信波を生成する第2信号発生器と、前記車両内動体検知において、前記第2送信波を電波として送信する第2アンテナと、前記車両内動体検知において、前記第2送信波と、前記第2アンテナで受信される、前記動体を含む複数の反射物での前記第2送信波の反射波とに基づいて、前記車両内に前記動体が存在するか否かを判定する第2判定部とを備え、前記車両は、当該車両のフロントガラス側から当該車両を見て、当該車両の前列の左側に位置する第1座席と、当該前列の右側に位置する第2座席とを有し、前記第1アンテナは、前記フロントガラスの前記第1座席側から、前記第2座席の後方に向けて、前記第1送信波を送信し、前記第2アンテナは、前記フロントガラスの前記第2座席側から、前記第1座席の後方に向けて、前記第2送信波を送信する、動体検知装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-139400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の駐車設備に備えられた動体検知装置は、信号発生器で生成される電波などの送信波をアンテナから送信し、対象物からの反射波を受信して動体を判別するものであるが、このような動体検知装置は、複数台設置されても死角をなくすことは難しく、また死角をなくすためにむやみに多くの動体検知装置を設置することは現実的でなくコストも嵩む。
【0006】
加えて、上記動体検知装置における電波などの送受信によって物体を認識する機器では、それらの機器が物体を捉えていなければ異常を検出することができず、車両の内部又は車両の陰に隠れた人や動物、駐車スペース内の柱に隠れた位置にある異常を検出することができない。
【0007】
本発明は、上述のような不具合を解消するもので、収音動作と音響解析により、乗降室又は駐車スペース内において車内に閉じ込められた人等を検出して、駐車設備の異常を検出すること、及び、駐車設備における機械式駐車装置の異常を検知する駐車設備の異常検出システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1態様に係る駐車設備の異常検出システムは、駐車設備における異常を検出する駐車設備の異常検出システムであって、駐車設備の内部の音を収音する収音機器と、前記収音機器が収音した前記音を音信号として受信する収音情報受信部と、前記音信号を解析する収音情報解析部と、を有し、前記収音情報解析部は、予め収音した音信号を定常音として、前記定常音と車両の入出庫作業ごとに収音した新音信号とが比較され、前記新音信号が前記定常音と異なるか否かを解析する解析結果判定部を有する。
【0009】
第2態様に係る駐車設備の異常検出システムは、前記収音情報解析部が、前記収音情報受信部で受信された音信号をディジタルデータに変換する収音情報変換部と、前記収音情報変換部からの変換データを解析処理して異常判定要素となる解析結果を生成する変換情報処理部と、前記変換情報処理部からの解析結果を基に駐車設備の内部で異常が発生しているか否かを判定する解析結果判定部と、前記変換情報処理部及び前記解析結果判定部において処理されて得られた定常音情報を格納する定常音記憶部と、前記解析結果判定部の判定処理において処理されて得られた非定常音情報を格納する非定常音記憶部と、を有する。
【0010】
第3態様に係る駐車設備の異常検出システムは、前記収音機器には、マイクロホンが使用され、又は、マイクロホン素子を備えた電子機器が使用される。
【0011】
第4態様に係る駐車設備の異常検出システムは、前記変換情報処理部は、解析処理に際して、収音機器から得られた収音情報をアレイ信号処理し、定常音又は非定常音の音源位置を特定することを可能にする。
【発明の効果】
【0012】
第1態様に係る駐車設備の異常検出システムによれば、カメラ又は電波で異常を検知するものに比べて、駐車設備の乗降室又は駐車スペースの内部に人又は動物が閉じ込められたこと、及び、機械式駐車装置の異常の発生したことを音の信号を解析することで異常を検出して、人又は動物の安全が確保される。
【0013】
第2態様に係る駐車設備の異常検出システムによれば、カメラ又は電波で異常を検知するものに比べて、駐車設備の機器の異常、又は駐車設備の乗降室又は駐車スペース内に人、動物が閉じ込められたことを、受信した音の信号を解析することで異常を検出して駐車設備の動作を制御させることで、人又は動物の安全が確保される。
【0014】
第3態様に係る駐車設備の異常検出システムによれば、カメラ又は電波で異常を検知するものに比べて、システム構成の自由度が向上される。また、カメラやレーザーセンサーと違い、画像による判別ができない異常を、音信号として解析して異常を検出することができる。具体的には、カメラの画角外、すなわち、カメラの死角において発生した異常、車両の内部に閉じ込められた人や動物を検出することができ、またエンジンの掛かったままの車両を検出すること等もできる。
【0015】
第4態様に係る駐車設備の異常検出システムによれば、カメラ又は電波で異常を検知するものに比べて、定常音又は非定常音の音源位置の特定を可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る駐車設備の乗降室を示す平面図である。
図2図1におけるA-A断面図である。
図3図1におけるB-B断面図である。
図4】本実施形態に係る駐車設備の全体構成を示す側面断面図である。
図5】本実施形態に係る駐車設備の異常検出システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本実施形態に係る駐車設備の一例について図面を用いて説明する。図1から図4は本発明の一実施形態に係る駐車設備1の内部構造を示す図である。図5は本実施形態に係る駐車設備に備えられる異常検出システムの構成を示すブロック図である。図1は本発明の一実施形態に係る駐車設備の乗降室を示す平面図である。図2は、図1におけるA-A断面図である。図3は、図1におけるB-B断面図である。図4は、本実施形態に係る駐車設備の全体構成を示す側面断面図である。図1から図4において、各図中に示す矢印Dは駐車設備の奥行方向を示し、矢印Wは駐車設備の幅方向を示す。また、矢印Hは駐車設備の高さ方向を示す。
【0018】
<駐車設備の全体構成>
図1から図4において、符号1は本実施形態の一例である駐車設備を示す。駐車設備1は、立体の構造体である設備躯体3に、車両15の出入口階に設けられた乗降室5と、出入口階の下方に形成された格納空間である駐車スペース7と、を有し、乗降室5の下方には、乗降室5と駐車スペース7との間で車両15が載置されたトレー37又は空トレー37を昇降移動させるエレベータ9と、駐車スペース7に設置され、複数の格納区画を有する格納装置13を含んで構成される機械式駐車装置11と、設備躯体3又は機械式駐車装置11、又は両方に取り付けられた後述する収音機器33を含む異常検出システムと、を有する。機械式駐車装置11には、車両15を載置するトレー37が移動可能に複数配置されている。
【0019】
[乗降室]
図1から図3に示す乗降室5は、駐車設備1の地上部分に設けられ、車両15が出入りする出入口17と、当該出入口17を開閉する出入口扉19と、乗降室5の奥行方向Hの突き当たりに設置された入庫案内鏡25と、乗降室5の幅方向一側の壁に設けられた避難口21と、避難口21を開閉する避難口扉23と、を含んで構成される。乗降室5の出入口17における幅方向Wの側の壁には操作盤35が設けられ、操作盤35で車両15の入出庫を行うための各種操作が行われる。また、乗降室5の内部には、車両15の入出庫に際して生じた緊急事態に対処するための緊急停止ボタン27と、乗降室5の内部の異常事態を映像として取得するカメラ31と、乗降室5内部の異常事態を音により検出するための後述する収音機器33と、が乗降室5の内部の各所に設置されている。さらに、乗降室5の内部には、乗降室5の内部において人又は動物の移動状態を検知する人検知器29が設置されている。
【0020】
操作盤35は車両15の入出庫に際して操作され、この操作により出入口扉19が開動作して車両15を乗降室5に進入させ、また車両15を乗降室5から退出させる。そして、上記車両15の進入、退出が終了した後は操作盤35の操作により、或いは自動で出入口扉19が閉動作する。緊急停止ボタン27が操作されると、出入口扉19の動作、或いはエレベータ9及び機械式駐車装置11を含む駐車設備1全体の動作が停止される。
【0021】
カメラ31には別体型のカメラ又はビデオカメラ、デジタルカメラ等が用いられるが、赤外線カメラを一部併用してもよく、また、スマートフォンを用いてもよい。緊急停止ボタン27、カメラ31、及び収音機器33は、乗降室5を形成する設備躯体3の側壁若しくは天井に取り付けられている。人検知器29は乗降室5の床上に設置されている。
【0022】
[駐車スペース]
図4に示すように、駐車スペース7には、機械式駐車装置11が設置されている。機械式駐車装置11は、駐車スペース7を形成する設備躯体3の床に立設された複数の支柱と、当該支柱間に架設された複数の梁材により構成されたフレーム構造体から成り、フレーム構造体は、複数の車両15が格納できるよう複数の格納区画が設けられている。また、機械式駐車装置11には、エレベーター9の昇降作動により搬入されてきた車両15を、目的とする格納区画へ搬送する格納装置13が装備されている。本実施の形態では、格納装置13として、例えば水平循環式の装置などが使用される。
【0023】
駐車スペース7内においても、乗降室5と同様、駐車スペース7の内部の異常を音により検出するための後述する収音機器33が駐車スペース7の内部の各所に設置されている。収音機器33は駐車スペース7を形成する設備躯体3の側壁若しくは天井の各所に取り付けられている。また、収音機器33は機械式駐車装置11の各所、例えば支柱、或いは梁材にも取り付けられていても良い。
【0024】
[機械式駐車装置の動作]
本実施形態に係る機械式駐車装置13の動作として、駐車設備1における入出庫作業における各種動作を説明する。
【0025】
(入庫時の動作)
車両15の入庫時において、利用者が駐車設備1の出入口17において操作盤35により入庫操作を行うと、乗降室5の内部における入庫の準備、すなわち、空トレー37が乗降室5にある状態であれば出入口扉19が開動作する。利用者は、車両15を出入口17から乗降室5に進入させ、エレベーター9に載置されたトレー37上で停止させる。利用者は車両15から降り、出入口17から乗降室5の外へ退出して、再び操作盤35により出入口扉19の閉操作を行うと乗降室5の出入口扉19が閉動作する。これより後は駐車設備1が自動運転動作を行い、車両15は、エレベーター9によりトレー37に載置された状態で降下搬送され、駐車スペース7において機械式駐車装置11の格納装置13に受け渡しされる。格納装置13は、機械式駐車装置11の内部で車両15を目的とする格納区画へ搬送され、停止する。
【0026】
(出庫時の動作)
車両15の出庫時において、利用者が駐車設備1の出入口17において操作盤35により出庫操作をすると、駐車設備1が自動運転動作を行い、車両15は、格納装置13により機械式駐車装置11の格納区画から搬出され、エレベーター9に受け渡され、エレベーター9によりトレー37に載置された状態で上昇搬送され、乗降室5に到達すると、乗降室5の出入口扉19が開動作する。利用者は出入口17から乗降室5へ入り、車両15を運転して駐車設備1の外へ車両15を退出させ、その後、再び操作盤35により出入口扉19の閉操作を行うと乗降室5の出入口扉19が閉動作する。以上が駐車設備1における入出庫動作である。
【0027】
<要部の構成>
次に、本実施形態に係る駐車設備1に装備された異常検出システムについて説明する。
本実施形態に係る駐車設備1に装備された異常検出システムは、駐車設備1における異常を検出する駐車設備の異常検出システムであって、駐車設備1の内部の音を収音する収音機器33と、収音機器33が収音した音を音信号として受信する収音情報受信部41と、音信号を解析する収音情報解析部43と、を有し、収音情報解析部43は、予め収音した音信号を定常音として、定常音と車両の入出庫作業ごとに収音した新音信号とが比較され、新音信号が定常音と異なるか否かを解析する解析結果判定部51を有する。
【0028】
図5は、本実施形態に係る駐車設備の異常検出システムの構成を示すブロック図である。駐車設備の異常検出システムは、乗降室5又は駐車スペース7の内部の音を収音する収音機器33と、収音機器33からの音信号を受信する収音情報受信部41と、収音情報受信部41からの音信号(情報)を解析して駐車設備の動作を制御する制御信号を出力する収音情報解析部43と、を含んで構成される。
【0029】
収音情報解析部43からの制御信号は駐車装置制御部45へ送信され、駐車装置制御部45は、その制御信号に基づいて駐車設備1における機械式駐車装置11の動作を制御する。異常検出システムは、駐車設備1の図示しない制御盤に設置され、CPU、ROM、RAM、ストレージを含み、これらに接続される入力部、表示部、通信インターフェイス、を含んで構成されるハードウェアとしてのコンピュータと、コンピュータの内部に異常検出システムを動作させる制御プログラムとしてのソフトウェアが内蔵されている。
【0030】
また、駐車設備1を管理する部署、例えば、管理人室又は警備会社に置かれたコンピュータに異常検出システムから異常信号が発報され、管理人又は警備員に異常を知らせるように構成されている。
【0031】
[収音機器]
収音機器33は、一例としてはマイクロホンにより構成される。マイクロホンは単体構造、またはアレイ構造のものであってもよく、またモノラル方式のもの、ステレオ方式のものいずれであってもよい。また、収音機器33としては、マイクロホン素子を複数備えた電子機器、例えば、ビデオカメラ、デジタルカメラ、スマートフォン、収音機能付のPC等で、音響データを取集できる機器であってもよいし、これらを組み合わせて使用してもよい。収音箇所は、マイクロホンを複数台(2台以上)設置する場合は、マイクロホンは、駐車設備1の壁、ドア、柱、梁、床面、または角の2ヵ所以上に設置されてもよい。マイクロホン素子を複数備えた電子機器(1台以上)を設置する場合は、当該電子機器は、駐車設備1の壁、ドア、柱、梁、床面、または角の1ヵ所以上に設置されてもよい。収音機器33の設置位置は、壁面、柱、梁に取り付けることが基本であるが、壁面等への埋め込み、または壁面等を透過して収音できるように配置することも可能である。例えば、乗降室5であれば、収音機器33を壁や入庫案内鏡25の裏側等に配置することも可能である。
【0032】
図5において、収音機器33は複数個(1,2,3、・・・n)が表示されているが、収音機器33の一つ一つは個々のマイクロホン素子に対応するものであり、モノラル方式のマイクロホンであれば収音機器33の一つは1台のマイクロホンに相当し、2チャンネルステレオ方式のマイクロホンであれば収音機器33の二つが1台のマイクロホンに相当して、それぞれの収音機器33が右側収音又は左側収音を担当する。収音機能付の電子機器の場合についても同様である。
【0033】
[収音情報受信部]
収音情報受信部41は、マイクロホン、ビデオ機器等の収音機器33からの音信号を受信する。マイクロホン、ビデオカメラ等の収音機器が、1台で複数のマイクロホン素子を搭載している場合は、1個のマイクロホン素子33ごとに音信号を受信する。収音情報解析部43は、収音情報受信部41からの音信号を解析して、駐車装置に異常が生じているかどうかを判定する。
【0034】
[収音情報解析部]
収音情報解析部43は、収音情報受信部41からの音信号を受信する収音情報変換部47と、収音情報変換部47からの変換データを受領する変換情報処理部49と、変換情報処理部49からの処理データを受信する解析結果判定部51と、変換情報処理部49で処理された処理データを格納する定常音記憶部53と、解析結果判定部51で判定処理された判定データを格納する非定常音記憶部55とを有している。
【0035】
(定常音記憶部及び非定常音記憶部の構成)
図5に示すように、定常音記憶部53は、信号線aにより変換情報処理部49に接続される一方、信号線bにより解析結果判定部51に接続されている。非定常音記憶部55は信号線cにより解析結果判定部51に接続されている。信号線a、b、cについて、信号線aは変換情報処理部49から定常音記憶部53へデータを送信する一方向信号線である。これに対して、信号線bは解析結果判定部51と定常音記憶部53との間で相互にデータの送受信を行わせる双方向信号線である。また、信号線cもまた解析結果判定部51と非定常音記憶部55との間で相互にデータの送受信を行わせる双方向信号線である。各信号線の機能が異なる理由は、信号線aの場合は、変換情報処理部49から定常音記憶部53へ定常音としての解析データを書き込み処理するだけで良く、変換情報処理部49は定常音記憶部53から定常音としての格納データを読み出して処理する必要は無いからである。これに対して、信号線b、cは、解析結果判定部51が定常音記憶部53及び非定常音記憶部55へ必要な格納データの送信指示を行い、また、定常音記憶部53及び非定常音記憶部55との間で格納データの書き込み、及び読み出し処理を行う必要があることによる。
【0036】
(収音情報変換部及び変換情報処理部)
収音情報変換部47は、収音情報受信部41からの音信号をA/D変換してディジタルデータ形式の信号を周波数スペクトルに変換し、変換データを作成する。変換情報処理部49は、収音情報変換部47からの収音情報としての変換データをアレイ信号処理し、さらに解析処理して音の種類、強弱、高低等を抽出して異常判定要素となる解析結果を生成する。変換データの解析処理は、収音機器33の間隔・配置等に適したもので実行され、音種、音圧レベル、音の発生位置、発生時間等の解析結果を得る。アレイ信号処理とは、収音機器33ごとに音信号を処理することで、定常音又は非定常音の音源位置を特定することができる。音源位置を特定しておくことで、非定常音が発生した箇所からの音によって、機械の異常か、又は、別の箇所、要因で非定常音が発生したときの音によって、乗降室5内の通路に人又は動物がいる場合、又は、車両15の内部に人又は動物がいる場合等を区別することができる。定常音の音源位置等を特定した結果の解析結果は、定常音記憶部53に格納され記憶される。ここで、変換データは収音情報の一例である。
【0037】
(解析結果判定部)
解析結果判定部51は、変換情報処理部49からの解析結果を基に、駐車設備1の内部で異常が発生しているか否かを判定して駐車設備1の各機器又は装置の動作を制御する制御信号を生成する。解析結果判定部51が判定処理をするために、収音情報解析部43では、変換情報処理部49の解析結果を基に予め定常状態の収音情報を取得し、定常音の情報として信号線aを通して定常音記憶部53へ格納し、記憶しておく。解析結果判定部51では、基本的に、定常音として収音した情報に閾値を持たせたものから逸脱するものを非定常音と判定する。ただし、AI技術を取り入れ、常に音圧情報を収集、解析し、閾値を自己補完し続けるシステムを取り入れてもよい。
【0038】
(定常音記憶部の機能)
定常音記憶部53は、駐車設備1の内部で通常に発生する音、すなわち、定常音の情報を格納する。定常音は、解析結果判定部51が音の解析データを判定処理した結果、各動作部が通常に発する音であると判定した音であり、定常音に特有の音圧レベル、音の発生位置、発生時間等で定義される。また、解析結果判定部51は、駐車設備1における実働状態下において、実際に送信されてきた新音信号としての収音情報と定常音の情報とを比較して収音中の新音信号としての収音情報が定常音か非定常音かを判定する。
【0039】
(非定常音記憶部の機能)
非定常音記憶部55は、駐車設備1の内部で通常には発生せず、異常が発生した場合等に発生する音、すなわち、非定常音の情報を格納して記憶する。非定常音は、解析結果判定部51が新音信号としての音の解析データを判定処理した結果、各動作部が通常には発生しない音である、或いは通常の駐車設備1の環境では生じることのない音、すなわち、一例として、人又は動物の声であると判定した音であり、それらの音に特有の音圧レベル、音の発生位置、発生時間等で定義される。非定常音は、見方を変えれば、解析結果判定部51が新音信号としての音の解析データを判定処理した結果、定常音記憶部53の定常音としての格納データから逸脱する音の情報を検出した場合に判定結果として出力される音でもある。
【0040】
他方において、駐車設備1の内部で車両15の入出庫動作を制御するために設けられた駐車装置制御部45は、機械式駐車装置11における車両15の入出庫動作全般を制御するとともに、異常検出システムからの指示に基づいて、機械式駐車装置11の動作を継続させ、或いは、停止させる制御を行う。入出庫動作処理部57は、解析結果判定部51からの動作中の音の情報が定常音記憶部53に記憶された定常音の情報から逸脱する旨の通知を受け取った場合は、駐車設備の動作を停止する等の、非定常音であるとの判定結果に対応して機械式駐車装置11の動作処理を制御する。
【0041】
<要部の作用>
次に、本実施形態に係る異常検出システムの作用として、駐車設備1における異常検出動作を説明する。
【0042】
[異常検出動作]
異常検出システムは、車両15が駐車スペース7に設置された機械式駐車装置11に格納された後は、駐車設備1内の各種装置が正常であれば、駐車設備1の内部では、通常の機械音、或いは通常の環境音のみが支配する。しかしながら、何かの原因で装置が故障したり、何らかの手違い、事故等により、人又は動物が駐車設備1内に取り残される場合があり得る。異常検出システムはこのような状況に対応するために異常検出動作をする。
【0043】
(異常検出システムの学習処理動作)
本実施形態においては、異常検出システムに当該システムが実働するよりも前に、定常音及び非定常音を分類して記憶させる学習動作を行う。この学習動作において、定常音を記憶させるには、駐車設備1を通常の状態で、且つ何もトラブルが起こらないように管理した状況下で入出庫の動作をさせ、この通常の状態で入庫動作または出庫動作が行われているときの音を駐車設備1の各所に設置されている収音機器33により収音し、収音情報受信部41により受信し、収音情報変換部47において音信号をA/D変換してディジタルデータ形式の周波数スペクトルに変換する。
【0044】
(変換情報処理部)
変換情報処理部49は、収音情報変換部47からの収音情報をアレイ信号処理し、さらに解析処理して音の種類、強弱、高低等を抽出して判定要素を生成する。アレイ信号処理することで、定常音の音源位置を特定し、定常音記憶部53に格納して記憶しておく。
【0045】
(解析結果判定部)
解析結果判定部51は、予め収音した音信号を定常音として、定常音と車両の入出庫作業ごとに収音した新音信号とが比較され、新音信号が定常音と異なるか否かを解析する。具体的には、車両15の入出庫作業ごとに収音した新音信号が、収音情報変換部47で変換されて変換情報処理部49に送信され、さらに変換情報処理部49から解析結果判定部51に送信され、定常音記憶部53に記憶された定常音に対して新音信号が対比されることで、解析結果判定部51による解析の結果を基に駐車装置内で異常が発生しているか否かを判定する。この学習処理動作では、予め記憶された定常音と新音信号とが同様であればそのまま定常音記憶部53に記憶され、異常は発生していない定常音と判定し、その新音信号を収音情報として定常音記憶部53へ格納する。
【0046】
さらに、車両15が格納されている間においても、通常の状態で格納されているときの音を駐車設備1の各所に設置されている収音機器33により収音し、収音情報受信部41により受信する。その後の処理動作は、上述の入庫動作または出庫動作をしているときの音を駐車設備1の各所に設置されている収音機器33により収音したときと同じである。学習処理動作にあっては、車両15が格納されている間において、駐車設備1内の各種装置は正常であり、通常の機械音、或いは通常の環境音のみの雰囲気(つまり、静かな状態)が駐車設備1を支配している。したがって、異常は発生しておらず、解析結果判定部51は定常音と判定し、その収音情報を定常音記憶部53へ格納する。
【0047】
(定常音と非定常音との分類)
定常音と非定常音の分類は、上述の説明で定義したとおりであるが、別の表現例としては次のようにして説明することもできる。定常音は、機械の正常の動作音、電子機器の通常の発生音、空調設備の作動音等を含む環境音等と判定できる音であり、非定常音は、人又は動物の声、又は、人又は動物が発する行動音、例えば、歩行の際に発生する音、出入口扉又は壁等を叩く音、車両15のドア開閉時の音等、機械、電子機器、空調設備等が発する定常音とは異なる特徴を持つ音である。
【0048】
また、収音する場所の違いによる定常音と非定常音の分類は、一例としては次のようにして行うこともできる。
(a)乗降室5の定常音としては、車両15の入出庫時の一連の動作に関連して出入口扉19の閉鎖直後から、車両15がエレベータ9により乗降室5から離れるまでの、機械動作音、乗降室5内のアナウンス、空調設備の作動音等を含む環境音等である。また、車両15の出庫時の一連の動作に関連して、車両15がエレベータ9により乗降室5に到着し、出入口扉19の開直前までの、機械動作音、乗降室5内のアナウンス、空調設備の作動音等を含む環境音等である。
(b)駐車スペース7の定常音としては、入出庫時のエレベータ9の動作音、格納装置13の動作音、空調設備の作動音等を含む環境音等である。
【0049】
(異常検出システムの異常検出処理動作)
異常検出処理動作では、駐車設備1の日々の稼動状態で入庫動作または出庫動作をしているときの音を駐車設備1の各所に設置されている収音機器33により新音信号として収音し、収音情報受信部41により受信し、収音情報変換部47において音信号をA/D変換してディジタルデータ形式の周波数スペクトルに変換する。次に、変換情報処理部49は、収音情報変換部47からの収音情報をアレイ信号処理し、さらに解析処理して音の種類、強弱、高低等を抽出して判定要素を生成する。アレイ信号処理することで、定常音の音源位置を特定する。次に、解析結果判定部51は、変換情報処理部49からの解析結果を基に、解析結果判定部51が、定常音記憶部53から格納データとしての定常音を読み出して、新音信号と定常音とを比較して、駐車設備1の内部で異常が発生しているか否かを判定する。
【0050】
日々の駐車設備1の稼動状態の処理動作では、駐車設備1でトラブルが発生していないときと、トラブルが発生しているときとでは解析結果判定部51の判定結果が異なる。駐車設備1でトラブルが発生していないときの収音情報は、定常音記憶部53から読み出された格納データとしての定常音の範囲から逸脱しないため、定常音と判別され、異常は発生していないと判定される。他方、駐車設備1でトラブルが発生しているときは、収音情報は、定常音記憶部53から読み出された格納データとしての定常音の範囲から一定の閾値を超えて逸脱するため、非定常音と判別され、異常が発生していると判定される。このときの収音情報である非定常音は解析結果判定部51から非定常音記憶部55へ送信されて格納され、記憶される。
【0051】
なお、日々の駐車設備1の稼動状態での異常検出処理動作を一定の期間継続することで、非定常音記憶部55に格納される非定常音が蓄積される。すると、解析結果判定部51は、その判定処理動作において、定常音記憶部53から定常音のデータを読み出して判定する処理と、非定常音記憶部55から非定常音のデータを読み出して判定する処理との両方の処理をすることが可能となり、このような判定処理動作を継続して実行することにより、解析結果判定部51における判定結果の精度が向上される。
【0052】
さらに、異常検出システムは、車両15が駐車スペース7に格納されている間、すなわち、入出庫作業が行われていない間においても、日々の稼動状態で格納されているときの音を駐車設備1の各所に設置されている収音機器33により継続的に収音し、収音情報受信部41により受信する。その後の処理動作は、上述の入庫動作または出庫動作をしているときの音を駐車設備1の各所に設置されている収音機器33により収音したときと同じである。
【0053】
日々の駐車設備1の稼動状態の処理動作にあっても、車両15が格納されている間において、駐車設備1でトラブルが発生していないときと、トラブルが発生しているときとでは解析結果判定部51の判定結果が異なる。駐車設備1でトラブルが発生していないときは、新音信号としての収音情報は、定常音記憶部53から読み出された定常音としての格納データから逸脱しないため定常音と判別され、異常は発生していないと判定される。他方、駐車設備1でトラブルが発生しているときは、新音信号としての収音情報は、定常音記憶部53から読み出された定常音としての格納データから一定の閾値を超えて逸脱するため、非定常音と判別され、異常が発生していると判定される。このときの収音情報である非定常音は解析結果判定部51から非定常音記憶部55へ送信されて格納され、記憶される。
【0054】
(異常検出に対する対応)
(A)異常を検出したときの対応については例えば次のようなものがある。
1.駐車設備1が作動していれば停止させる。例えば、人又は動物が車両15の内部に取り残された状態で当該車両15を載置したエレベータ9が動き出している場合も想定され、この場合は危険を回避するためエレベータ9を含め機械式駐車装置11を停止させる。
2.エレベータ9を含む機械式駐車装置11の停止処理と同時に、管理室、警備会社等に異常信号を発報する。
3.駐車設備1が作動していなくても、非定常音を検出した段階で上記2.に記載した処理がなされる。
4.乗降室5又は駐車スペース7の内部には、図示しないスピーカが設置され、「救助しますのでそのままお待ち下さい」等という音声が繰り返し流される。
5.停電の場合は、乗降室5及び駐車スペース7の内部に図示しない非常灯が設置され、非常電源によって非常灯を点灯させる。
6.乗降室5にて、人が車両15から降りていて出入口扉19が閉鎖状態のときは、自発的に避難口21から避難してもらう場合もある。
【0055】
具体的には、例えば人又は動物が車両15の内部に残っている状態で駐車設備1が作動した場合、人であれば「助けて」、「助けて下さい」、「オーイ」等の言葉を発してもらい、これを非定常音として非定常音記憶部に格納し記憶させておき、解析結果判定部51によって判定し、機械式駐車装置1を停止させる。動物であれば鳴き声や吠える声等が定常音に無い音として認識されて非定常音として検出する。そして、この時点で駐車設備1の作動を停止させる。
【0056】
また、機械の異常音を検知した場合は、駐車設備1の作動を停止させる。これと併せて人又は動物の非定常音を検出する場合もあり、上記(A)1.~5.も併せて行う。
【0057】
(B)収音機器33の取り付け場所、及び収音状況に応じた、異常検知時の対応については例えば次のようなものがある。
7.乗降室5のみに収音機器33を取り付けた場合において、エレベータ9・格納装置13の動作時に、乗降室5の内部で非定常音を検出した場合は、駐車スペース7の内部の機械動作を停止する。
8.駐車スペース7のみに収音機器33を設置した場合において、乗降室5内における利用者の入出庫時に、駐車スペース7内で非定常音を検出した場合は、駐車スペース7内の機械動作を停止する。
9.エレベータ9や格納装置13の動作時に、駐車スペース7の内部で非定常音を検出した場合は、乗降室5及び駐車スペース7の内部における機械動作を停止する。
10.乗降室5及び駐車スペース7の双方に収音機器33を設置した場合において、乗降室5の内部における利用者の入出庫時に、駐車スペース7内で非定常音を検出した場合は、駐車スペース7の内部の機械動作を停止する。
11.エレベータ9や格納装置13の動作時に、乗降室5又は駐車スペース7の内部、又はその両方で非定常音を検出した場合は、乗降室5及び駐車スペース7の内部の機械動作を停止する。
【0058】
(C)その他の対応
異常検知時のその他の対応としては、例えば次のようなものがある。
12.利用者に、緊急時は大声で「助けて」又は「助けてください」又は「オーイ」と言って下さいとお願いしておく。その声の波形の特徴を異常検出システムに学習させておき、同一波形を検出した場合に駐車設備1の作動を停止させる。この場合、誤検出を考慮し、利用者には「複数回言う」ことを指示しておいてもよい。異常検出システムは、危険を回避するため1回でも同一波形を検出した場合には駐車設備1の作動を停止するシステムとするのが好ましい。
【0059】
このように、本実施形態に係る駐車設備の異常検出システムは、駐車設備における異常を検出する駐車設備の異常検出システムであって、駐車設備1の内部の音を収音する収音機器33と、収音機器33が収音した音を音信号として受信する収音情報受信部41と、音信号を解析する収音情報解析部43と、を有し、収音情報解析部43は、予め収音した音信号を定常音として、定常音と車両の入出庫作業ごとに収音した新音信号とが比較され、新音信号が定常音と異なるか否かを解析する解析結果判定部51を有する。
【0060】
これにより、カメラ又は電波で異常検知するものに比べて、駐車設備の乗降室又は駐車スペースの内部に人、又は動物が閉じ込められたこと、又は、機械式駐車装置の異常が発生したこと、を音の信号を解析することで異常を検出することができる。また、異常を検出した信号に基づいて、駐車設備の動作を制御することで、人又は動物の安全が確保される。
【0061】
また、収音情報解析部43は、収音情報受信部41で受信された音信号をディジタルデータに変換する収音情報変換部47と、収音情報変換部47からの変換データを解析処理して異常判定要素となる解析結果を生成する変換情報処理部49と、変換情報処理部49からの解析結果を基に駐車設備の内部で異常が発生しているか否かを判定する解析結果判定部51と、変換情報処理部49及び解析結果判定部51において処理されて得られた定常音情報を格納する定常音記憶部53と、解析結果判定部51の判定処理において処理されて得られた非定常音情報を格納する非定常音記憶部55と、を有する。
【0062】
これにより、カメラ又は電波で異常を検知するものに比べて、駐車設備の乗降室又は駐車スペースの内部に人又は動物が閉じ込められたこと、又は、機械式駐車装置の異常が発生したこと、を受信した音の信号を解析し、異常を検出して、駐車設備の動作を制御させることで人又は動物の安全が確保される。
【0063】
また、収音機器33には、マイクロホンが使用され、又は、マイクロホン素子を備えた電子機器が使用される。
【0064】
これにより、カメラ又は電波で異常を検知するものに比べて、音の信号を得るための収音機器に、マイクロホン、またはマイクロホン素子を備えた他の電子機器が使用可能であることにより、システム構成の自由度が向上される。また、カメラやレーザーセンサーと違い、画像による判別ができない異常を、音信号として解析して異常を検出することができる。具体的には、カメラの画角外、すなわち、カメラの死角において発生した異常、車両の内部に閉じ込められた人又は動物を検出し、またエンジンの掛かったままの車両を検出する等ができる。
【0065】
また、変換情報処理部49は、解析処理に際して、収音機器33から得られた収音情報をアレイ信号処理し、定常音又は非定常音の音源位置を特定することを可能にする。
【0066】
これにより、定常音又は非定常音の音源位置の特定を可能にすることができる。
【0067】
以上、一実施形態を挙げて本発明の実施の形態を説明したが、本実施形態は一例であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更をして実施でき、また、本発明の権利範囲がこれら実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【0068】
例えば、本実施形態では、格納装置13を水平循環式の装置と説明したが、これに限らず、パズル平面循環式、多層循環式、平面往復式、円形循環式、エレベータ式、垂直循環式等、他の型式の駐車装置が用いられてもよく、本実施形態に限定されない。
【0069】
また、本実施形態では、駐車設備1は、乗降室5の下方に駐車スペース7が配置される上部乗込式として説明したが、これに限らず、乗降室5の上方に駐車スペース7が配置される下部乗込式の駐車設備、駐車スペース7の内部のいずれかの部位に乗降室5が配置される直接乗込式の駐車設備、或いは、中間乗込式の駐車設備等、駐車設備の車両の乗込方式はいずれの形式でもよく、本実施形態に限定されない。
【0070】
また、異常検出システムの制御プログラムは、駐車設備1の制御盤に設置されるコンピュータに内蔵されると説明したが、これに限らず、異常検出システムを動作させる制御プログラムを制御盤に構成されている機械式駐車装置11を制御するコンピュータの中に組み込まれていてもよい。
【符号の説明】
【0071】
1 駐車設備
3 設備躯体
5 乗降室
7 駐車スペース
9 エレベータ
11 機械式駐車装置
13 格納装置
15 車両
17 出入口
19 出入口扉
21 避難口
23 避難口扉
25 入庫案内鏡
27 緊急停止ボタン
29 人検知器
31 カメラ
33 収音機器
35 操作盤
37 トレー
41 収音情報受信部
43 収音情報解析部
45 駐車装置制御部
47 収音情報変換部
49 変換情報処理部
51 解析結果判定部
53 定常音記憶部
55 非定常音記憶部
57 入出庫動作処理部

図1
図2
図3
図4
図5