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特開2023-78042タイヤ用有機繊維補強布の接着剤処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023078042
(43)【公開日】2023-06-06
(54)【発明の名称】タイヤ用有機繊維補強布の接着剤処理方法
(51)【国際特許分類】
   D06B 1/02 20060101AFI20230530BHJP
   B05D 1/02 20060101ALI20230530BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20230530BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20230530BHJP
   D06M 15/41 20060101ALI20230530BHJP
   D06M 15/693 20060101ALI20230530BHJP
【FI】
D06B1/02
B05D1/02 Z
B05D7/24 301P
B05D7/00 A
B05D7/00 G
D06M15/41
D06M15/693
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021202923
(22)【出願日】2021-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】521545846
【氏名又は名称】平野 新一
(72)【発明者】
【氏名】平野 新一
【テーマコード(参考)】
3B154
4D075
4L033
【Fターム(参考)】
3B154AA08
3B154AB03
3B154AB14
3B154BB35
3B154BB45
3B154BC08
3B154BD18
3B154BF06
3B154BF12
3B154DA24
4D075AA01
4D075AA51
4D075AA76
4D075AA81
4D075AE24
4D075BB07Y
4D075BB07Z
4D075BB16X
4D075BB21Z
4D075BB60X
4D075BB91Y
4D075BB91Z
4D075CA03
4D075CA13
4D075CA15
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA04
4D075DB20
4D075DB31
4D075DB53
4D075DC13
4D075EA06
4D075EA35
4D075EB12
4D075EB14
4D075EB56
4D075EC01
4D075EC07
4L033AA08
4L033AB01
4L033AB03
4L033AC11
4L033CA34
4L033CA68
4L033CA69
(57)【要約】
【課題】従来技術における問題点を鋭意検討し解決する為になされたもので、有機繊維コードに対し、ゴムとの接着性およびコード物性を付与するのに必要な最少量の接着剤を均一塗布し、消費熱エネルギー量を低減することのできる簾織り有機繊維コードの接着剤処理方法および有機繊維補強布製品を提供することにある。
【解決手段】本発明は、簾織り有機繊維補強布の接着剤処理方法であって、原反ロールから繰り出されたコードに対して、対向して対を成すローターダンプニング式塗布装置によって接着剤を噴霧塗布する工程を有する、ことを特徴とする簾織り有機繊維補強布の接着剤処理方法である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
簾織り有機繊維補強布の接着剤処理方法であって、原反ロールから繰り出されたコードに対して、対向して対を成すローターダンプニング式塗布装置によって接着剤を噴霧塗布する工程を有する
ことを特徴とする簾織り有機繊維補強布の接着剤処理方法。
【請求項2】
接着剤は、水系溶媒で濃度17%以上35%以内に調整され、概ね30から200ミクロンの液滴を噴霧塗布する
ことを特徴とする請求項1記載の簾織り有機繊維補強布の接着剤処理方法。
【請求項3】
コード1本当たり張力が生コード強力の7パーセント以上20パーセント以内で引張保持したコードに、接着剤液滴を塗布後直ちに乾燥炉で加熱乾燥することを特徴とする請求項1又は2記載の簾織り有機繊維補強布の接着剤処理方法。
【請求項4】
水系溶媒で濃度17%以上35%以内に調整された接着剤を、コード1本当たり張力が生コード強力の7パーセント以上20パーセント以内で引張保持したコードに、対向して対を成すローターダンプニング式装置で噴霧塗布後直ちに乾燥炉で加熱乾燥処理する
ことを特徴とした請求項1から3記載の方法で製造した簾織り有機繊維補強布製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簾織り有機繊維コードの接着剤処理方法に関し、詳しくは、ゴム補強用に用いられる有機繊維コードに対し、ゴムとの接着性および適切なコード物性を付与する為の接着剤を塗布する接着剤処理方法、および接着剤を塗布したゴム用有機繊維補強布製品に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴム補強に用いられるナイロンやポリエステル等の有機繊維補強布に使用する原反(未処理反)は、ゴム製品適用時の耐久性を考慮した技術思想から、高強度で太径の有機繊維コードを比較的高密度で引き揃えて経糸とし、低強度で細径の有機繊維コードを比較的低密度で緯糸とした簾織り織物を使用する。
【0003】
通常、これらコードは、ゴムとの接着性およびコード物性を付与する為に、レゾルシン・ホルマリン・ラテックス(RFL)液等の接着剤を溜めた液浴中に浸漬し接着剤を塗布した後、乾燥、熱処理を施すことにより改質されて、有機繊維コード補強布としての接着性と所望のコード物性を付与する。
【0004】
従来、ディップ工程は、図7に示すようなディッピング装置に設けられたRFL液を貯留する浸漬ロールにコードを通して、ディッピングすることによって液をコードに塗布させている。ディッピングによりRFL液を含浸した生コードは、絞りロールで圧搾し、コード表面に付着した泡は吸引し、適正な付着液量に調整後、長さ方向に張力をかけた状態で乾燥炉を経て熱処理炉に搬送され、所定の延伸条件、温度下で炉内を循環する熱風により一定時間の熱処理が行われ、接着性の付与とコード特性が調整され処理コードを得ている。(例えば特許文献1)。
【0005】
また、下記特許文献2には、従来の浸漬方式に代えて、噴霧方式でコード表面に、薄く、均一な接着層を形成させる接着剤液の塗布方法として、接着剤液の微粒子が霧状をなして浮遊し含まれる密閉容器中を通過させてコード表面に接着剤の微粒子を付着させることが記載されている。しかしながら、該方式は、積極的に塗布する作用が無く必要な塗布液量を得るのに長時間を要し実用的でない。また、接着剤の微粒子は、超音波振動により発生させたものを利用しており本発明の方式とは全く異なる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10-140123号公報
【特許文献2】特開2009-138279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のディップ工程では、一旦コードに接着剤液を過剰に吸液させる目的で比較的低いディップイン張力下で浸漬し、絞りロールの圧搾とバキュームの吸引で、乾燥炉内持込み液量を調整している。
【0008】
これによって、理論的にはコード表面を単分子膜で覆うだけで良い接着剤塗布液量が膨大な量塗布され、接着剤の過剰消費やコード内部のフィラメントの湿潤を伴い、加熱乾燥熱エネルギーを多量に消費するなどする。その為、コード価格は上昇し、持続的地球環境維持に反してしまうと言う課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決した本発明は以下のとおりである。
【0010】
本発明は、前記の従来技術における問題点を鋭意検討し解決する為になされたもので、有機繊維コードに対し、ゴムとの接着性およびコード物性を付与するのに必要な最少量の接着剤を均一塗布し、加熱乾燥熱エネルギー量を低減することのできる簾織り有機繊維コードの接着剤処理方法および有機繊維補強布製品を提供することにある。
【0011】
本発明は、ゴム用有機繊維補強布の接着剤処理方法であって、原反ロールから繰り出されたコードに対して、接着剤を対向して対を成すローターダンプニング式塗布装置によって噴霧塗布する工程を有する、ことを特徴とするゴム用簾織り有機繊維補強布の接着剤処理方法である。
【0012】
本発明においては、接着剤は、水系溶媒で濃度17%以上35%以内に調整され、概ね30から200ミクロンの液滴を噴霧塗布することを特徴とする請求項1記載のタイヤ用有機繊維補強布の接着剤処理方法である。
【0013】
また、コード1本当たり張力が生コード強力の7パーセント以上20パーセント以内で引張保持したコードに、接着剤液滴を塗布後直ちに乾燥炉で加熱乾燥することを特徴とする請求項1又は2記載の簾織り有機繊維補強布の接着剤処理方法である。
【0014】
さらに、水系溶媒で濃度17%以上35%以内に調整された接着剤を、コード1本当たり生コード強力の7パーセント以上20パーセント以内で引張保持したコードに、対向して対を成すローターダンプニング式装置で噴霧塗布後直ちに乾燥炉で加熱乾燥処理することを特徴とした請求項1から3記載の方法で製造した簾織り有機繊維補強布製品である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ローターダンプニング式塗布装置によって、浸漬ロール、圧搾ロール、バキューム等の装置を必要とすることなく織物組織を好適に保持した状態で接着剤を非接触で塗布できる。更に、コードに対して必要最少量の接着剤を均一に塗布することで、コード内部のフィラメントを過剰に湿潤することなくゴムとの接着性およびコード物性を付与しつつ、加熱乾燥熱エネルギーをも減らすことができ持続的地球環境維持に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る有機繊維補強布の製造方法例を示す工程概略図である。
図2】本発明に係る接着剤噴霧塗布装置を説明するための平面図である。
図3】本発明に係る接着剤噴霧塗布装置を説明するためのD-D線縦断面図である。
図4】本発明に係る有機繊維原反に給液塗布する設備構成を示す図である。
図5】本発明に係る簾織り有機繊維原反の組織態様を示す図である。
図6】本発明に係る被着面積と液滴の大きさ及び液膜付着状態例を説明する為の図である。
図7】本発明に係る従来事例の有機繊維補強布製造方法例を示す工程概略図である。
図8】本発明に係る従来事例の接着剤浸漬塗布態様を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明を実施するための形態を、添付の図面を用いて説明する。
【0018】
図1は、本発明に係る有機繊維補強布の製造方法例を示す工程概略図である。処理装置は、簾織り有機繊維原反1に対して、略直行する角度で対向して対を成すローターダンプニング式噴霧装置2A、2Bによって、原反に接着剤を噴霧塗布するものである。
【0019】
該処理装置の前工程である原反の繰り出しロール3、後工程である接着剤液塗布後の乾燥炉4A、4B、4C、巻き取りロール8などは、図7に示す従来工程と全く同一であり、その説明は省略する。
【0020】
図2に示す様に、ローターダンプニング式噴霧装置2は、原反幅に応じてローターダンプニングユニット14を適宜の個数並べて配置する。そして、原反1を表裏から挟み込むように接着剤液滴12を噴霧塗布する。
【0021】
図3にローターダンプニング式噴霧装置2A、2BのD-D線位置の縦断面図を示す。ローターダンプニング式噴霧装置2A、2B、は、回転自在な円盤状のローター10を有しており、その円盤状ローター10がプーリー等を介して駆動源に接続され、高速で回転駆動するとともに、該円盤状ローター10中心部に上部から接着剤液11を供給するように構成されている。これにより、適宜の回転数、例えば5000rpm程度の高速で回転する円盤状ローター10中心部に上部から供給された接着剤は、遠心力によって円盤状ローター外周縁から噴出し、細かいスプレー粒子液滴12からなる噴霧液滴流が形成され、噴霧液滴流の円盤状ローター前部開口をシャッター13で規制することで、所定の噴霧塗布幅で一様に噴霧塗布できる。又、残余の噴霧液は、未処理コードに触れることなく回収再利用できる為無駄がなく、又、常にフレッシュな液での塗布ができる。
【0022】
ローターダンプニング式塗布装置2では、概ね、30~200ミクロン程度の液滴で噴霧することができ、塗布液量も精度よく制御できる。なお、ローターダンプニング式噴霧装置2の具体的製品としては、WEKOローターダンプニング装置(ニッカ株式会社製)がある。
【0023】
図4は、本発明に係る有機繊維原反に給液塗布する設備構成を示す図である。噴霧塗布装置は、接着剤液を給液するタンクユニット15、給液ポンプ16、フィルター17、ローターバー18とで構成されている。尚、対抗して対を成す片方の装置は、同一構成であること、図が煩雑になりわかりづらくなる等の理由で図示していない。
【0024】
搬送された原反は、テンションスタンドT1、T2間の速度比によって、コード1本当たり張力を生コード強力の7パーセントから20パーセントの張力で、コードを硬く収束した状態に保持し、ローターダンプニング式塗布装置間を通過させる。コード1本当たり張力が生コード強力の7パーセント以下だとコード本体の収束性が弱く、コードの吸液が進み乾燥後の接着力が低くなる。又、20パーセント以上では収束性は高くなるものの、高温度ゾーンでのコード切れ発生懸念があり実用的でない。
【0025】
接着剤11は、水系溶媒で濃度17%以上35%以内に調整され、概ね30から200ミクロンの液滴をローターダンプニング式装置2から噴霧塗布する。噴霧塗布する接着剤液11は、濃度17%以下だと乾燥後の接着力が低く、35パーセントを超える高濃度だとローターダンプニング式装置での噴霧動作に支障を生じ実用的でない。
【0026】
図6の被着面積と液滴の大きさ及び液膜付着状態例に示す様に200ミクロンを超える大きな液滴粒子径23の噴霧では、コード表面付着後液滴同士が重なると液の自重がたちまち重くなり、直ちにコード表面を滑り落ち、原反下方の液滴を更に巻き込んで雪崩式に流れ下る為コード表面に止めることが困難になる。
【0027】
200ミクロン以下の小さな液滴噴霧であれば複数個液滴が重なっても自重が軽いためコード表面を流れ下らないで保持される。仮に流れ下ったとしても、小さく軽い塊のため簾織り組織の緯糸21で受け止められ重い滴に成長することを防いでくれる。更に、好適なことに、その滴は経糸20緯糸21交絡点を強化する働きを持って止まり、乾燥固化後織物組織を補強してくれる。
【0028】
液滴粒子径が30ミクロンより小さいと必要とする塗布液被膜厚さ形成に時間が掛かり実用的でない。
【0029】
又、接着力を更に安定させる目的でローターダンプニング式噴霧装置2をコード長手方向上下に多層段設置することもできる。
【0030】
又、原反コードの吸着水分率を減じる目的でローターダンプニング式噴霧装置2進入前段部に乾燥空気を原反表面に吹吹き当てる装置を設けることもできる。
【0031】
以上のように、本実施形態に係るゴム用有機繊維補強布の接着剤処理方法では、特徴的に、垂直上向きに搬送するコードテンション制御と略直行する角度で対向して対を成すローターダンプニング式装置2による接着剤給液量制御で、乾燥炉4A持ち込み液量を一定に制御でき、直ちに乾燥炉4Aで加熱乾燥できる。この方式により、コード表層フィラメントはもとよりフィラメント層2から3層までのゴムとの接着に係わる領域は接着剤層形成が可能となり、従来品同等の接着力が得られる。
【0032】
一方、フィラメント層4層より深部のフィラメントはほとんど湿潤しない為、乾燥時間が短く済み、乾燥熱エネルギー消費を少なくする効果をもたらし、持続的地球環境維持に貢献できる。更には、乾燥後に深部のフィラメントを不用意に拘束しないことから、熱処理後コード強力保持率が高い、柔軟なスティフネスコードを得ることができる。
【0033】
このローターダンプニング式塗布装置2は、対を成して対向する位置に設けることにより、原反表裏を均一に塗布できる。更には、互いの液滴が中央原反の経糸間隙間を通過しようとしても液滴同士の衝突が起き、液滴は真下に落下し緯糸21に補足されるため問題にならない。
【0034】
このローターダンプニング式塗布方式では、図8に示すような液浴中ロール30、圧搾ロール31、バキューム吸引32などの装置を使用する必要がない。その為、接着剤塗布後の濡れた状態で外部からの物理的刺激を受けない好適な状態を保持し乾燥炉4Aに搬入できる為織物組織を良好に保持したまま加工できる。
【0035】
また、非接触で液を塗布する装置には、高圧空気を噴射媒体とするノズル式噴霧方式があるが、これらは液滴粒子径分布範囲が広くコード付着が安定しない。噴射媒体である高圧空気によってノズル口に接着剤固着物ができるなどして長時間の稼働に耐えられないなどの問題がある。ローターダンプニング式塗布装置では、高圧空気や液圧を噴射媒体に利用しないため噴気孔周りに大きな気流の乱れが発生しない為、容易に長時間の連続操業をさせることができる。
【0036】
本発明に係るローターダンプニング式塗布装置2によって塗布するのに適する塗布液は、特にその塗布液の粘度が、塗布時(概ね15~25℃の常温)において50mPa・S未満、特には30mPa・S以下のものが好適であることから、水系溶媒とすることが望ましい。本発明の接着剤は水溶媒であり、搬送速度に合わせて給液制御するので安定した塗布量を適正に保つことができる。
【0037】
本発明の乾燥およびコード改質に用いる装置等は、従来の乾燥およびコード改質に用いる装置と何ら変わる所が無く使用でき、加工条件も記載条件に限定されるものではない。
【0038】
本発明におけるコードとしては、ナイロン6、ナイロン66、アラミドなどのポリアミド、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル、レーヨン、リオセル、ポリケトン、ビニロン等があり、タイヤを始めとする各種ゴム製品に使用できるものは全て適用可能である。
【実施例0039】
以下、実施例に基づき本発明を具体的に説明する。尚、本発明の趣旨を越えない限り、本実施例に限定されるものではない。
【0040】
原反1は、ナイロン66繊維1400dtex/2 38T/10cm(S)x38T/10cm(Z)で撚糸した太径の有機繊維コードを高密度で引き揃えて経糸とし、芯糸にナイロン未延伸糸、鞘糸に綿糸を使用した複合糸300dtex/1を打込み密度3本/5センチメートルにて簾織り(平織り)組織とする図5に示す様態の原反を使用した。
【0041】
接着に用いる接着剤は、下記RFL処方(濃度20%)を使用し、WEKOローターダンプニング装置で接着剤をコード表面に塗布した後、熱処理機にて乾燥、熱処理し、処理コードを巻き取った。尚、濃度15パーセント、18パーセントの液は、20パーセント液調整後水を添加、25パーセント液は水を減じて濃度を調整し作成した。
【0042】
比較例は、従来の処理機を使用し、下記同一RFL処方にて従来の浸漬法により接着剤液をコードに塗布した以外実施例と同一の熱処理条件で処理し、処理コードを巻き取った。尚、比較例では、接着剤塗布時コード張力とは、ディップイン張力と同意である。
【0043】
[RFL処方]
A液 水:120g
レゾルシン:7.7g
37%ホルマリン:10.4g
10%苛性ソーダ:7.1g
B液 水:74.7g
ビニルピリジンラテックス:112.5g
SBRラテックス:38.7g
アンモニア水:7.1g
A液を24℃で、16時間熟成後、B液に混合し使用。
【0044】
本実施例における接着剤処理は、図1に示す工程に従い行なった。まず、巻き出し装置から送り出された原反1は接着剤処理され、乾燥炉4Aに送られ、乾燥炉4B、乾燥炉4Cを経て、冷却され、巻き取り装置に巻き取られる。乾燥炉4A、乾燥炉4B、乾燥炉4Cの各炉において、コードに与える温度、露出時間、張力についてはそれぞれ120℃×120秒×0.8g/d、230℃×40秒×0.8g/d、230℃×40秒×0.5g/dとした。
【0045】
・乾燥熱エネルギー消費量(比) 原反1000m処理当たりの接着剤液消費量(重量法)を計測し、接着剤消費量から蒸発エネルギー(常温の液を100℃にして蒸発させるエネルギー(KJ))量を計算した。その値を比較例(従来浸漬法)対比で比較した。値が小さい程加熱乾燥熱エネルギー消費が少ないことを示す。結果を表1に示す。
【0046】
・処理コードの接着力 ディップ処理を施したコードを下記に示す未加硫配合ゴム組成物に埋め込み、160℃×20分にて加硫した。得られた加硫物からコードを掘り起こし、300mm/分の速度にて引っ張って加硫物からコードを剥離し、コード1本あたりの剥離抗力を求めて、これを接着力(kg/本)とした。結果を表1に示す。
【0047】
・未加硫配合ゴム組成 天然ゴム 70重量部、スチレンブタジエン共重合体ゴム 30重量部、カーボンブラック 40重量部、ステアリン酸 2重量部、石油系軟化剤 10重量部、パインタール 4重量部、亜鉛華 5重量部、N-フェニル-β-ナフチルアミン 1.5重量部、2-ベンゾチアゾリルスルフィド 0.75重量部、ジフェニルグアニジン 0.75重量部、硫黄 3.5重量部の配合組成ゴムを使用した。
【0048】
・接着剤付着率 「JIS L1017に記載のディップピックアップ、a)溶解法、ナイロンの場合に準拠」した。結果を表1に示す。
【0049】
・コードスティフネス ガーレー柔軟度試験機(東洋精機製)にて測定し、比較例を100とした時の比で比較した。コードスティフネスは、値が小さい程軟らかい。結果を表1に示す。
【0050】
・破断強力 生コード、接着剤処理コードともに全てJIS L1017に従い、島津製作所製オートグラフにて測定し、比較例を100とした時の比で比較した。値が大きい程破断強力が高い。結果を表1に示す。
【0051】
・ディップ反組織外観 組織外観は、緯糸の歪み・ずれ動き、経糸の開き・密度、異物付着、膜張り等のディップ反外観を総合的に見て、つぎの5段階で評価した。結果を表1に示す。
5:非常に良い、4:良い、3:普通、2:悪い、1:非常に悪い
【0052】
【表1】
【符号の説明】
【0053】
1…原反、2A、2B…ローターダンプニング式噴霧装置、3…繰り出しロール、
4A、4B、4C…乾燥炉、7…柔軟化装置、8…巻き取りロール、
10…ローター、11…接着剤液、12…スプレー粒子液滴、
13…シャッター、15…タンクユニット、16…給液ポンプ、
17…フィルター、18…ローターバー、20…経糸、21…緯糸、
23…液滴粒子径、30…液浴中ロール、31…圧搾ロール、
32…バキューム吸引、40…浸漬ディップ槽
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8