(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023078054
(43)【公開日】2023-06-06
(54)【発明の名称】道路勾配情報を含む大型トラック走行モードの構築方法
(51)【国際特許分類】
G01M 17/007 20060101AFI20230530BHJP
【FI】
G01M17/007 B
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022053535
(22)【出願日】2022-03-29
(31)【優先権主張番号】202111416893.4
(32)【優先日】2021-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】522108459
【氏名又は名称】中汽研汽車検験中心(天津)有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】519320446
【氏名又は名称】中国汽車技術研究中心有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】李 菁元
(72)【発明者】
【氏名】劉 ▲ユ▼
(72)【発明者】
【氏名】安 暁▲プァン▼
(72)【発明者】
【氏名】于 ▲ハン▼正男
(72)【発明者】
【氏名】梁 永凱
(72)【発明者】
【氏名】馬 ▲クン▼其
(72)【発明者】
【氏名】張 詩敏
(72)【発明者】
【氏名】張 南
(72)【発明者】
【氏名】王 雨
(72)【発明者】
【氏名】李 宇寧
(72)【発明者】
【氏名】徐 月
(72)【発明者】
【氏名】張 欣
(57)【要約】
【課題】道路勾配情報を含む大型トラック走行モードの構築方法を提供すること。
【解決手段】S1、試験調査計画を作成するステップと、S2、走行データを収集するステップと、S3、走行データを分析・処理するステップと、S4、走行モードを構築するステップと、を含む。設計が合理的であり、道路勾配情報を車両の速度と加速度情報に変換することによって、速度-時間曲線により特徴付けられた道路勾配情報を含む大型トラック走行モードを構築し、より大型トラックの実際道路走行状態に適合させるようにする。このような大型トラック走行モードは精度が高く、ハブ試験台と実際の道路上で実現しやすく、従来の技術の不足を解消し、大型トラックの性能を向上・改善するために基礎を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
S1、試験調査計画を作成するステップと、
S2、走行データを収集するステップと、
S3、走行データを分析・処理するステップと、
S4、走行モードを構築するステップと、を含み、
ステップS3に記載の走行データを分析・処理することは、
C1、データスクリーニング基準に従って重複、無効及び間違っているデータをスクリーニングして除去するステップと、
C2、フィルター処理により元データにおける変異点を除去し、曲線を滑らかにし、データ収集のノイズ干渉を減少させるステップと、
C3、道路勾配の計算方法を用いて道路勾配情報を計算するステップと、
C4、道路設計仕様要件に基づいて、道路勾配、速度と加速度の間の内部関係を分析し、車両のパワーが変換前後に変化しない原則に従ってステップC3で得られた道路勾配情報を速度と加速度情報に変換し、道路勾配の車両走行に与える影響を暗黙的に特徴付けるステップと、を含み、
ステップC3に記載の道路勾配の計算方法は、
C31、GPSデータにより道路勾配を計算するステップと、
C32、CANパス情報及び車両動力学モデルにより道路勾配を計算するステップと、
C33、並列誤差補償方法、直列誤差補正方法のうちの1つ又は2つの補正方法により、ステップC32の道路勾配計算値を用いてステップC31の道路勾配計算値を補正するステップと、を含む
ことを特徴とする道路勾配情報を含む大型トラック走行モードの構築方法。
【請求項2】
ステップS1に記載の試験調査計画を作成することは、
A1、大型トラックの車両パラメータ、走行道路状況と各道路状況での走行距離比率、年間走行距離、車両荷重状況、運転者情報及び車両平均燃費などを調査するステップと、
A2、調査結果に示された大型トラック使用者の使用状況と車両状況、走行道路状況に基づいて、試験都市と路線を選択し、試験車両、運転者、試験収集時間、回数及びサンプル量を決定するステップと、を含む
請求項1に記載の道路勾配情報を含む大型トラック走行モードの構築方法。
【請求項3】
ステップS2に記載の走行データを収集することは、
B1、試験都市を決定し、自動運転方法を用いて、所有者が実際の作業に応じて1年間自動運転を行い、走行試験の静的データと動的データを収集するステップを含む
請求項1に記載の道路勾配情報を含む大型トラック走行モードの構築方法。
【請求項4】
ステップB1に記載の静的データは、車両全体情報、駆動情報、総牽引質量及びエンジン情報を含み、前記動的データは、車速変数、時間変数、位置変数、標高変数、勾配変数、エンジン回転速度変数、エンジン負荷百分率変数、温度変数及び燃費変数を含む
請求項3に記載の道路勾配情報を含む大型トラック走行モードの構築方法。
【請求項5】
ステップC1に記載のデータスクリーニング基準は、
C11、同じ時刻の複数回のデータに対して、最初のデータを保持するステップと、
C12、連続欠損値が300s未満のセグメントを保持して補間を実行し、連続欠損値が300sを超えるセグメントを破棄するステップと、
C13、持続時間が2s未満のセグメントを破棄するステップと、
C14、連続アイドルセグメントが600sを超えるセグメントを破棄するステップと、を含む
請求項1に記載の道路勾配情報を含む大型トラック走行モードの構築方法。
【請求項6】
ステップS4に記載の走行モードを構築することは、
D1、短距離の運動学的セグメントとアイドルセグメントを決定するステップと、
D2、線形相関分析と回帰法により短距離特徴セグメントの特徴パラメータを決定するステップと、
D3、主成分とクラスター分析により、都市部、郊外道路及び高速道路の3つの区間を含むモード区間を分割し、区間の重み及びモードサイクルの総時間に基づいて各区間の時間を決定するステップと、
D4、各区間の時間及び対応する区間の運動学的セグメントとアイドルセグメントの平均時間と時間分布に基づいて、各区間の選択する必要がある運動学的セグメントの数及び候補セグメントの時間を決定するステップと、
D5、カイ二乗検定を用いて最適なセグメント組み合わせを道路勾配情報を含む大型トラック走行モード曲線として決定するステップと、を含む
請求項1に記載の道路勾配情報を含む大型トラック走行モードの構築方法。
【請求項7】
ステップD2に記載の特徴パラメータは、運行時間、加速時間、減速時間、定速時間、アイドル時間、運行距離、最大速度、平均速度、運行速度、速度標準偏差、最大加速度、加速セグメントの平均加速度、最小加速度、減速セグメントの平均加速度、加速度標準偏差のうちのいくつか又はすべてを含むセグメント特徴値と、運動セグメント速度と加速度の同時分布、運動セグメントライブラリーの持続時間分布、運動セグメントライブラリーの平均速度分布、運動セグメントライブラリーの最大速度分布、運動セグメントライブラリーの運行距離分布、アイドルセグメントライブラリーの持続時間分布のうちのいくつか又はすべてを含むセグメント統計分布特徴値と、を含む
請求項6に記載の道路勾配情報を含む大型トラック走行モードの構築方法。
【請求項8】
ステップD3の3つのモード区間の重みは、サンプルライブラリー全体に占めている各区間サンプルの総運行時間の比率により決定し、モード総時間は標準モードにより決定する
請求項6に記載の道路勾配情報を含む大型トラック走行モードの構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大型トラック走行モード分野に属し、特に道路勾配情報を含む大型トラック走行モードの構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車走行モードは、特定の交通環境における車両走行特徴を説明するための様々なパラメータシーケンスであり、車両の種類が異なると、その走行モードも異なっている。自動車走行モードは、自動車業界での重要な共通の基礎技術であり、自動車道路走行の運動学的特徴を反映することができる。自動車走行モードは、車両の排出量、エネルギー消費量、走行距離試験仕様及び制限基準の基礎であるだけでなく、車両の新興技術性能指標を校正、最適化及び評価する主な基準である。
【0003】
現在の自動車走行モードの大部分は、自動車走行特徴を表す速度-時間曲線であり、道路勾配情報を反映することができない。車両のエネルギー消費量と排出量の両方は、道路勾配の増加とともに増加するため、速度特徴のみを含む走行モードは、一方では、車両全体のエネルギー消費量と排出量を客観的に測定することができず、一方では、新エネルギー自動車のエネルギーを最適に配分することも困難である。大型トラックは、輸送距離が長く、運行の道路状況が複雑で変化しやすく、道路勾配の変化は大型トラックのエネルギー消費量と排出量に大きな影響を与えている。しかし、現段階では、中国の大型トラックの燃費認証モード、中国大型商用車両過渡サイクルモード(China Transient Vehicle Cycle、C-WTVC)及び最新の国家規格『中国自動車走行モードパート2:大型商用車両』は、いずれも速度特徴に基づいた走行モード抽出方法を利用し、車両性能に与える勾配の影響を考慮していないため、既存の走行モードは大型トラック設計と開発のニーズを満たすことができない。道路勾配情報を含む自動車走行モードの構築は、大型トラックの実際の運行状況とより一致しており、大型トラックの総合的な性能を改善・向上する重要なポイントである。
【0004】
自動車走行モードにおける道路勾配情報の表現について、現在、用いられている主な技術ルートは、速度、加速度及び道路勾配で状態空間を定義し、速度-時間曲線と勾配-時間曲線で構成された自動車走行モードを構築することである。このような自動車走行モードの勾配-時間曲線は、自動車走行プロセスにおける道路勾配の変化状況を正確に反映することができ、さらに車両の各性能をより正確に評価することができる。しかし、正確な勾配-時間曲線は通常、頻繁且つ急激に変化するため、ハブ試験や実車道路試験プロセスにおける勾配のロードがより難しくなり、さらにこのようなモードの適用範囲を制限し、標準的な走行モードを形成することが困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらを鑑み、従来の技術に存在する1つ又は複数の技術問題を解決し、少なくとも1つの有益な選択又は創造的条件を提供するために、本発明は、道路勾配情報を含む大型トラック走行モードの構築方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の技術的解決手段は、以下のとおり実現されている。
【0007】
道路勾配情報を含む大型トラック走行モードの構築方法は、
S1、試験調査計画を作成するステップと、
S2、走行データを収集するステップと、
S3、走行データを分析・処理するステップと、
S4、走行モードを構築するステップと、を含む。
【0008】
ステップS3に記載の走行データを分析・処理することは、
C1、データスクリーニング基準に従って重複、無効及び間違っているデータをスクリーニングして除去するステップと、
C2、フィルター処理により元データにおける変異点を除去し、曲線を滑らかにし、データ収集のノイズ干渉を減少させるステップと、
C3、道路勾配の計算方法を用いて道路勾配情報を計算するステップと、
C4、道路設計仕様要件に基づいて、道路勾配、速度と加速度の間の内部関係を分析し、車両のパワーが変換前後に変化しない原則に従ってステップC3で得られた道路勾配情報を速度と加速度情報に変換し、道路勾配の車両走行に与える影響を暗黙的に特徴付けるステップと、を含む。
【0009】
ステップC3に記載の道路勾配の計算方法は、
C31、GPSデータにより道路勾配を計算するステップと、
C32、CANパス情報及び車両動力学モデルにより道路勾配を計算するステップと、
C33、並列誤差補償方法、直列誤差補正方法のうちの1つ又は2つの補正方法により、ステップC32の道路勾配計算値を用いてステップC31の道路勾配計算値を補正するステップと、を含む。
【0010】
さらに、ステップS1に記載の試験調査計画を作成することは、
A1、大型トラックの車両パラメータ、走行道路状況と各道路状況での走行距離比率、年間走行距離、車両荷重状況、運転者情報及び車両平均燃費などを調査するステップと、
A2、調査結果に示された大型トラック使用者の使用状況と車両状況、走行道路状況に基づいて、試験都市と路線を選択し、試験車両、運転者、試験収集時間、回数及びサンプル量を決定するステップと、を含む。
【0011】
さらに、ステップS2に記載の走行データを収集することは、
B1、試験都市を決定し、自動運転方法を用いて、所有者が実際の作業に応じて1年間自動運転を行い、走行試験の静的データと動的データを収集するステップを含む。
【0012】
さらに、ステップB1に記載の静的データは、車両全体情報、駆動情報、総牽引質量、エンジン情報を含み、前記動的データは、車速変数、時間変数、位置変数、標高変数、勾配変数、エンジン回転速度変数、エンジン負荷百分率変数、温度変数及び燃費変数を含む。
【0013】
さらに、ステップC1に記載のデータスクリーニング基準は、
C11、同じ時刻の複数回のデータに対して、最初のデータを保持するステップと、
C12、連続欠損値が300s未満のセグメントを保持して補間を実行し、連続欠損値が300sを超えるセグメントを破棄するステップと、
C13、持続時間が2s未満のセグメントを破棄するステップと、
C14、連続アイドルセグメントが600sを超えるセグメントを破棄するステップと、を含む。
【0014】
さらに、ステップS4に記載の走行モードを構築することは、
D1、短距離の運動学的セグメントとアイドルセグメントを決定するステップと、
D2、線形相関分析と回帰法により短距離特徴セグメントの特徴パラメータを決定するステップと、
D3、主成分とクラスター分析により、都市部、郊外道路及び高速道路の3つの区間を含むモード区間を分割し、区間の重み及びモードサイクルの総時間に基づいて各区間の時間を決定するステップと、
D4、各区間の時間及び対応する区間の運動学的セグメントとアイドルセグメントの平均時間と時間分布に基づいて、各区間の選択する必要がある運動学的セグメントの数及び候補セグメントの時間を決定するステップと、
D5、カイ二乗検定を用いて最適なセグメント組み合わせを道路勾配情報を含む大型トラック走行モード曲線として決定するステップと、を含む。
【0015】
さらに、ステップD2に記載の特徴パラメータは、運行時間、加速時間、減速時間、定速時間、アイドル時間、運行距離、最大速度、平均速度、運行速度、速度標準偏差、最大加速度、加速セグメントの平均加速度、最小加速度、減速セグメントの平均加速度、加速度標準偏差のうちのいくつか又はすべてを含むセグメント特徴値と、運動セグメント速度と加速度の同時分布、運動セグメントライブラリーの持続時間分布、運動セグメントライブラリーの平均速度分布、運動セグメントライブラリーの最大速度分布、運動セグメントライブラリーの運行距離分布、アイドルセグメントライブラリーの持続時間分布のうちのいくつか又はすべてを含むセグメント統計分布特徴値と、を含む。
【0016】
さらに、ステップD3の3つのモード区間の重みは、サンプルライブラリー全体に占めている各区間サンプルの総運行時間の比率により決定し、モード総時間は標準モードにより決定する。
【発明の効果】
【0017】
従来の技術と比べて、本発明に記載の道路勾配情報を含む大型トラック走行モードの構築方法は以下の優位性がある。
【0018】
本発明に記載の道路勾配情報を含む大型トラック走行モードの構築方法は、設計が合理的であり、道路勾配情報を車両の速度と加速度情報に変換することによって、速度-時間曲線により特徴付けられた道路勾配情報を含む大型トラック走行モードを構築し、より大型トラックの実際道路走行状態に適合させるようにする。このような大型トラック走行モードは精度が高く、ハブ試験台と実際の道路上で実現しやすく、従来の技術の不足を解消し、大型トラックの性能を向上・改善するために基礎を提供する。
【0019】
本発明の一部を構成する図面は本発明をさらに理解するためのものであり、本発明の例示的な実施例及びその説明は本発明を解釈するためのものであり、本発明を過度に限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施例に記載の道路勾配情報を含む大型トラック走行モードの構築方法のフローチャートである。
【
図2】本発明の実施例に記載の道路勾配情報を含む大型トラック走行モードのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
説明すべきことは、衝突しない限り、本発明の実施例及び実施例における特徴は互いに組み合わせることができる。
【0022】
本発明の説明において、理解すべきことは、「中央」、「縦方向」、「横方向」、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」、「垂直」、「水平」、「頂」、「底」、「内」、「外」などの用語が指示する方向又は位置関係は、図面に示す方向又は位置関係であり、本発明を説明しやすくするか又は説明を簡略化するためのものに過ぎず、言及された装置や素子が特定の方向を有し、特定の方向で構成・操作しなければならないと指示又は暗示するものではない。従って、本発明を制限するものと理解すべきではない。また、「第1」、「第2」などの用語は、目的を説明するためのものに過ぎず、相対重要性を指示又は暗示するか又は指示される技術的特徴の数を暗黙的に示すものと理解すべきではない。それにより、「第1」、「第2」などが限定されている特徴は、1つ又はより多くの当該特徴を明記するか又は暗黙的に含むことができる。本発明の説明において、別途説明がない限り、「複数」の意味は2つ以上である。
【0023】
本発明の説明において、説明すべきことは、別途明確な規定や限定がない限り、「取付」、「連結」、「接続」という用語は、広く理解されるべきである。例えば、固定接続であってもよく、着脱可能な接続であってもよく、若しくは一体接続であってもよい。機械的接続であってもよく、電気的接続であってもよい。直接連結であってもよく、中間媒介による間接的な連結であってもよく、2つの部品内部の連通であってもよい。当業者にとって、具体的な状況に応じて、本発明における上記用語の具体的な意味を理解することができる。
【0024】
以下、図面を参照しながら、実施例と組み合わせて本発明を詳しく説明する。
名詞の解釈:
線形相関分析:即ち、単純線形相関分析である。単純線形相関分析とは、線形相関関係を示す2つの変数の間の相関関係の分析と研究を指す。
線形回帰:線形回帰は、数理統計における回帰分析を用いて2つ以上の変数間の相互依存の定量的関係を決定する統計分析方法であり、広く適用されている。その表現形式はy=ω´χ+eであり、eは平均値が0の正規分布に従う誤差である。
【0025】
回帰分析において、1つの独立変数と1つの従属変数のみが含まれ、且つ両者の関係は直線で近似的に示すことができる場合、このような回帰分析は単純線形回帰分析と呼ばれる。回帰分析には2つ以上の独立変数が含まれ、且つ従属変数と独立変数との間は線形関係である場合、多重線形回帰分析と呼ばれる。
【0026】
主成分分析:主成分分析(Principal Component Analysis、PCA)は、統計方法である。直交変換によって相関する可能性のある変数を線形無相関の変数に変換し、変換後の変数は主成分と呼ばれる。
【0027】
クラスター分析:クラスター分析とは、物理オブジェクト又は抽象オブジェクトの集合を、類似するオブジェクトで構成された複数のクラスに分類する分析プロセスを指し、重要な人間の行動である。
【0028】
クラスター分析は、類似性に基づいてデータを収集して分類することを目的とする。クラスターは、数学、コンピュータサイエンス、統計学、生物学及び経済学を含む多くの分野に由来する。様々な適用分野において、データを記述し、異なるデータソース間の類似性を測定し、さらにデータソースを異なるクラスターに分類する多くのクラスター技術が開発されている。
【0029】
カイ二乗検定:カイ二乗検定は、非常に広く使用されている仮説検定方法である。カテゴリデータの統計推論への適用は、2つの比率又は2つの構成比を比較するためのカイ二乗検定、複数の比率又は複数の構成比を比較するためのカイ二乗検定及びカテゴリデータの相関分析などが含まれる。
【0030】
図1に示すように、道路勾配情報を含む大型トラック走行モードの構築方法は、
S1、試験調査計画を作成するステップと、
S2、走行データを収集するステップと、
S3、走行データを分析・処理するステップと、
S4、走行モードを構築するステップと、を含む。
【0031】
本実施例において、本発明に記載の道路勾配情報を含む大型トラック走行モードの構築方法は、設計が合理的であり、道路勾配情報を車両の速度と加速度情報に変換することによって、速度-時間曲線により特徴付けられた道路勾配情報を含む大型トラック走行モードを構築し、より大型トラックの実際道路走行状態に適合させるようにする。このような大型トラック走行モードは精度が高く、ハブ試験台と実際の道路上で実現しやすく、従来の技術の不足を解消し、大型トラックの性能を向上・改善するために基礎を提供する。
【0032】
ステップS1に記載の試験調査計画を作成することは、
A1、大型トラックの車両パラメータ、走行道路状況と各道路状況での走行距離比率、年間走行距離、車両荷重状況、運転者情報及び車両平均燃費などを調査するステップと、
A2、調査結果に示された大型トラック使用者の使用状況と車両状況、走行道路状況に基づいて、試験都市と路線を選択し、試験車両、運転者、試験収集時間、回数及びサンプル量を決定するステップと、を含む。
【0033】
本実施例において、I試験調査計画を作成する。
ステップ1:情報の収集やアンケートにより大型トラックの車両パラメータ、走行道路状況と各道路状況での走行距離比率、年間走行距離、車両荷重状況、運転者情報及び車両平均燃費などを調査する。
【0034】
ステップ2:調査結果に示された大型トラック使用者の使用状況と車両状況、走行道路状況に基づいて、試験車両と運転者を決定し、平野、丘陵、山脈などの地形を含む、都市部、郊外道路及び高速道路の3つの道路レベルをカバーする試験都市と路線を選択し、試験収集時間、回数及びサンプル量を決定する。
【0035】
ステップS2に記載の走行データを収集するは、
B1、試験都市を決定し、自動運転方法を用いて、所有者が実際の作業に応じて1年間自動運転を行い、走行試験の静的データと動的データを収集するステップを含む。この方法は、時間や道路に関する規定がなく、ランダム性が高く、実際の走行モードをより反映できる。走行試験のために収集されるデータは静的データと動的データを含む。
【0036】
ステップB1に記載の静的データは、車両全体情報、駆動情報、総牽引質量、エンジン情報を含み、前記動的データは、車速変数、時間変数、位置変数、標高変数、勾配変数、エンジン回転速度変数、エンジン負荷百分率変数、温度変数及び燃費変数を含む。
【0037】
本実施例において、II走行データを収集する。
ステップ3:決定された試験都市では、自動運転方法を用いて、所有者が実際の作業に応じて1年間自動運転を行い、この方法は、時間や道路に関する規定がなく、ランダム性が高く、実際の走行モードをより反映できる。走行試験で収集されるデータは静的データと動的データを含み、動的データは主に、車速、時間、位置情報、標高、勾配、エンジン回転速度、エンジン負荷百分率、温度、燃費などであり、静的データは主に、車両型式、駆動方式、総牽引質量、エンジン型式などである。
【0038】
ステップS3に記載の走行データを分析・処理することは、
C1、データスクリーニング基準に従って重複、無効及び間違っているデータをスクリーニングして除去し、極端なモード点を回避するステップと、
C2、フィルター処理により元データにおける変異点を除去し、曲線を滑らかにし、データ収集のノイズ干渉を減少させるステップと、具体的に実施する場合、C2のフィルター方法はデジタルフィルター方法のうちの1つ又は複数であってもよい。
C3、道路勾配の計算方法を用いて道路勾配情報を計算し、道路勾配情報計算の精度及び正確性を向上させるステップと、
C4、道路勾配、速度と加速度の間の内部関係を分析し、道路勾配変換原則に従って、ステップC3で得られた道路勾配情報を速度と加速度情報に変換し、道路勾配の車両走行に与える影響を暗黙的に特徴付けるステップと、を含む。具体的に実施する場合、C4の道路勾配変換の原則は、車両のパワー需要が変換前後に変化しないことである。
【0039】
ステップC1に記載のデータスクリーニング基準は、
C11、同じ時刻の複数回のデータに対して、最初のデータを保持するステップと、
C12、連続欠損値が300s未満のセグメントを保持して補間を実行し、連続欠損値が300sを超えるセグメントを破棄するステップと、具体的に実施する場合、試験者は欠損値の少ないセグメントを保持して補間を実行し、連続欠損値が300sを超えるセグメントを破棄することができる。
C13、持続時間が2s未満のセグメントを破棄するステップと、
C14、連続アイドルセグメントが600sを超えるセグメントを破棄するステップと、を含む。
【0040】
ステップC3に記載の道路勾配の計算方法は、
C31、GPSデータにより道路勾配を計算するステップと、
C32、CANパス情報及び車両動力学モデルにより道路勾配を計算するステップと、
C33、ステップC32の道路勾配計算値を用いてステップC31の道路勾配計算値を補正するステップと、を含む。補正方法は、並列誤差補償方法、直列誤差補正方法のうちの1つ又は2つであってもよい。
【0041】
本実施例において、III走行データを分析・処理する。
ステップ4:データスクリーニングにより重複、無効及び間違っているデータを除去し、極端なモード点を回避する。データスクリーニング基準は、a)同じ時刻の複数回のデータに対して、最初のデータを保持することと、b)欠損値の少ないセグメントを保持して補間を実施し、連続欠損値が300sを超えるセグメントを破棄することと、c)持続時間が2s未満のセグメントを破棄することと、d)連続アイドルセグメントが600sを超えるセグメントを破棄することと、を含む。
【0042】
ステップ5:デジタルフィルター処理により元データにおける変異点を除去し、曲線をより滑らかにし、さらにデータ収集プロセスに存在するノイズ干渉を減少させる。
【0043】
ステップ6:GPSデータとCANパス情報融合に基づいた方法を用いて道路勾配情報を計算し、道路勾配情報計算の精度及び正確性を向上させる。a)GPSデータに基づいて道路勾配を計算することと、b)CANパス情報及び車両動力学モデルに基づいて道路勾配を計算することと、c)並列誤差補償方法、直列誤差補正方法のうちの1つ又は2つの補正方法により、CANパス情報及び車両動力学モデルに基づいた道路勾配を用いてGPSに基づいた道路勾配を補正することと、を含む。
【0044】
ステップ7:道路設計仕様要件に基づいて、道路勾配、速度と加速度の間の内部関係を分析し、車両のパワーが変換前後に変化しない原則に従って前記ステップ6で得られた道路勾配情報を速度と加速度情報に変換し、道路勾配の車両走行に与える影響を暗黙的に特徴付ける。
【0045】
ステップS4に記載の走行モードを構築することは、
D1、短距離の運動学的セグメントとアイドルセグメントを決定するステップと、
D2、線形相関分析と回帰法により短距離特徴セグメントの特徴パラメータを決定するステップと、
D3、主成分とクラスター分析により、都市部、郊外道路及び高速道路の3つの区間を含むモード区間を分割し、区間の重み及びモードサイクルの総時間に基づいて各区間の時間を決定するステップと、
D4、各区間の時間及び対応する区間の運動学的セグメントとアイドルセグメントの平均時間と時間分布に基づいて、各区間の選択する必要がある運動学的セグメントの数及び候補セグメントの時間を決定するステップと、
D5、カイ二乗検定を用いて最適なセグメント組み合わせを道路勾配情報を含む大型トラック走行モード曲線として決定するステップと、を含む。
【0046】
ステップD2に記載の特徴パラメータは、セグメント特徴値とセグメント統計分布特徴値を含む。
【0047】
前記セグメント特徴値は、運行時間、加速時間、減速時間、定速時間、アイドル時間、運行距離、最大速度、平均速度、運行速度、速度標準偏差、最大加速度、加速セグメントの平均加速度、最小加速度、減速セグメントの平均加速度、加速度標準偏差のうちのいくつか又はすべてを含む。
【0048】
前記セグメント統計分布特徴値は、運動セグメント速度と加速度の同時分布、運動セグメントライブラリーの持続時間分布、運動セグメントライブラリーの平均速度分布、運動セグメントライブラリーの最大速度分布、運動セグメントライブラリーの運行距離分布、アイドルセグメントライブラリーの持続時間分布のうちのいくつか又はすべてを含む。
【0049】
ステップD3の3つのモード区間の重みは、サンプルライブラリー全体に占めている各区間サンプルの総運行時間の比率により決定し、モード総時間は国内外の同じタイプの標準モードを参照して決定する。
【0050】
本実施例において、IV走行モードを構築する。
【0051】
ステップ8:短距離の運動学的セグメントとアイドルセグメントを決定する。ただし、運動学的セグメントは、あるアイドル開始から次のアイドル開始までの運動として定義されている。
【0052】
ステップ9:線形相関分析と回帰法により特徴セグメントの特徴パラメータを決定する。特徴パラメータは、セグメント特徴値とセグメント統計分布特徴値を含む。セグメント特徴値は、運行時間、加速時間、減速時間、定速時間、アイドル時間、運行距離、最大速度、平均速度、運行速度、速度標準偏差、最大加速度、加速セグメントの平均加速度、最小加速度、減速セグメントの平均加速度、加速度標準偏差のうちのいくつか又はすべてを含む。セグメント及びセグメントライブラリー統計分布特徴値は、運動セグメント速度-加速度の同時分布、運動セグメントライブラリーの持続時間分布、運動セグメントライブラリーの平均速度分布、運動セグメントライブラリーの最大速度分布、運動セグメントライブラリーの運行距離分布、アイドルセグメントライブラリーの持続時間分布のうちのいくつか又はすべてを含む。
【0053】
ステップ10:主成分とクラスター分析により、都市部、郊外道路及び高速道路の3つの区間を含むモード区間を分割する。区間の重み及びモードサイクルの総時間に基づいて各区間の時間を決定する。モード区間の重みは、サンプルライブラリー全体に占めているこの区間サンプルの総運行時間の比率により決定し、モード総時間は国内外の同じタイプの標準モードを参照して決定する。
【0054】
ステップ11:各区間の時間及び対応する区間の運動学的セグメントとアイドルセグメントの平均時間と時間分布に基づいて、各区間の選択する必要がある運動学的セグメントの数及び候補セグメントの時間を決定する。
【0055】
ステップ12:カイ二乗検定を用いて最適なセグメント組み合わせを道路勾配情報を含む大型トラック走行モード曲線として決定する。
【0056】
実施例1
本発明は、道路勾配情報を含む大型トラック走行モードの構築方法を提供する。
図1に示すように、該方法は具体的には、以下のステップを含む。
【0057】
I試験調査計画を作成する。
【0058】
ステップ1:情報の収集とアンケートとの組み合わせにより大型トラックの車両パラメータ、走行道路状況と各道路状況での走行距離比率、年間走行距離、車両荷重状況、運転者情報及び車両平均燃費などを調査する。
【0059】
ステップ2:調査結果に示された大型トラック使用者の使用状況と車両状況、走行道路状況に基づいて、試験車両と運転者を決定し、平野、丘陵、山脈などの地形を含む、都市部、郊外道路及び高速道路の3つの道路レベルをカバーする試験都市と路線を選択し、試験収集時間、回数及びサンプル量を決定する。
【0060】
II走行データを収集する。
【0061】
ステップ3:武漢、重慶及び昆明の3つの都市では、自動運転方法を用いて、所有者が実際の作業に応じて1年間自動運転を行う。走行試験で収集された動的データは主に、車速、時間、位置情報、標高、勾配、エンジン回転速度、エンジン負荷百分率、温度、燃費などであり、サンプリング周波数が4Hzである車載データ収集端末を用いて、CANパスにより車両及びエンジンECUの各パラメータを収集し、Trimble GPS/SINS組み合わせナビゲーションチップにより車速、時間、位置情報、標高、勾配などのパラメータを収集し、収集された静的データは主に、車両型式、駆動方式、総牽引質量、エンジン型式などであり、手動入力により収集する。
【0062】
III走行データを分析・処理する。
【0063】
ステップ4:データスクリーニングにより重複、無効及び間違っているデータを除去し、極端なモード点を回避する。データスクリーニング基準は、a)同じ時刻の複数回のデータに対して、最初のデータを保持することと、b)欠損値の少ないセグメントを保持して補間を実施し、連続欠損値が300sを超えるセグメントを破棄することと、c)持続時間が2s未満のセグメントを破棄することと、d)連続アイドルセグメントが600sを超えるセグメントを破棄することと、を含む。
【0064】
ステップ5:複数のデジタルフィルターアルゴリズムを組み合わせたフィルター方法により元データにおける変異点を処理して除去し、曲線をより滑らかにし、さらにデータ収集プロセスに存在するノイズ干渉を減少させる。
【0065】
ステップ6:GPSデータとCANパス情報融合に基づいた方法を用いて道路勾配情報を計算することは、a)GPSデータに基づいて道路勾配を計算することと、b)CANパス情報及び車両動力学モデルに基づいて道路勾配を計算することと、c)CANパス情報及び車両動力学モデルに基づいた道路勾配を用いてGPSに基づいた道路勾配を補正することと、を含む。補正は、並列誤差補償方法と直列誤差補正方法との組み合わせにより実施する。
【0066】
ステップ7:道路設計仕様要件に基づいて、道路勾配、速度と加速度の間の内部関係を分析し、車両のパワーが変換前後に変化しない原則に従って道路勾配と速度、加速度の対応する関係のMAP図を取得し、前記ステップ6で得られた道路勾配情報を速度と加速度情報に変換し、道路勾配の車両走行に与える影響を暗黙的に特徴付ける。
【0067】
IV走行モードを構築する:
【0068】
ステップ8:短距離の運動学的セグメントとアイドルセグメントを決定する。ただし、運動学的セグメントは、あるアイドル開始から次のアイドル開始までの運動として定義されている。
【0069】
ステップ9:線形相関分析と回帰法により特徴セグメントの特徴パラメータを決定する。運動学的セグメントの燃費を従属変数として、線形相関分析を先に実行するための初期独立変数を選択し、次にステップワイズ回帰法により独立変数の数を減少させ、最後に回帰方程式に残っている独立変数は運動学的セグメントの特徴パラメータとして選択される。特徴パラメータは、セグメント特徴値とセグメント統計分布特徴値を含む。セグメント特徴値は、運行時間、加速時間、減速時間、定速時間、アイドル時間、運行距離、最大速度、平均速度、運行速度、速度標準偏差、最大加速度、加速セグメントの平均加速度、最小加速度、減速セグメントの平均加速度、加速度標準偏差を含む。セグメント及びセグメントライブラリー統計分布特徴値は、運動セグメント速度-加速度の同時分布、運動セグメントライブラリーの持続時間分布、運動セグメントライブラリーの平均速度分布、運動セグメントライブラリーの最大速度分布、運動セグメントライブラリーの運行距離分布、アイドルセグメントライブラリーの持続時間分布を含む。
【0070】
ステップ10:主成分とクラスター分析により、都市部、郊外道路及び高速道路の3つの区間を含むモード区間を分割する。サンプルライブラリー全体に占めている各区間サンプルの総運行時間の比率によって、都市部区間の重みを18.5%、郊外道路区間の重みを55.5%、高速道路区間の重みを26%と決定する。国内外の同じタイプの標準モードを参照して、モード総時間を1800s、都市部区間の時間を333s、郊外道路区間の時間を999s、高速区間の時間を468sと決定する。
【0071】
ステップ11:各区間の時間及び対応する区間の運動学的セグメントとアイドルセグメントの平均時間と時間分布に基づいて、各区間の選択する必要がある運動学的セグメントの数及び候補セグメントの時間を決定する。
【0072】
ステップ12:カイ二乗検定を用いて最適なセグメント組み合わせを道路勾配情報を含む大型トラック走行モード曲線として決定する。モード曲線は
図2に示されている。
【0073】
上記の記述は、本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明を制限するものではない。本発明の精神及び原則から逸脱しない限り、行われた如何なる修正、同等置換、改善などは、いずれも本発明の保護範囲内に含まれる。