(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023078090
(43)【公開日】2023-06-06
(54)【発明の名称】フックブロック
(51)【国際特許分類】
B66C 13/00 20060101AFI20230530BHJP
B66C 1/34 20060101ALI20230530BHJP
B66C 23/00 20060101ALI20230530BHJP
B66C 23/88 20060101ALI20230530BHJP
B66C 13/16 20060101ALI20230530BHJP
B66C 13/46 20060101ALI20230530BHJP
B66C 15/00 20060101ALI20230530BHJP
【FI】
B66C13/00 D
B66C1/34
B66C23/00 Z
B66C23/88 D
B66C13/16 B
B66C13/46 A
B66C15/00 E
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022184768
(22)【出願日】2022-11-18
(31)【優先権主張番号】10 2021 130 876.3
(32)【優先日】2021-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】507186322
【氏名又は名称】マニトワック・クレーン・グループ・フランス・ソシエテ・パール・アクシオン・サンプリフィエ
【氏名又は名称原語表記】Manitowoc Crane Group France SAS
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】ゴットヴァルト,シュテファン
【テーマコード(参考)】
3F004
3F204
3F205
【Fターム(参考)】
3F004AG04
3F204AA04
3F204BA02
3F204CA05
3F204DB03
3F204DC06
3F205AA05
3F205CA03
3F205CB02
3F205DA04
3F205HA06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】クレーンの状態変数を検出するための改良された測定センサシステムを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、クレーンフックブロック(1)であって、フレーム(2)と、フレーム(2)に回転可能に接続された少なくとも1つのプーリ(3)と、フレーム(2)に接続された荷掛けフック(4)と、クレーンフックブロック(1)上に配置され、クレーンフックブロック(1)の少なくとも1つの周囲パラメータ及び/又は少なくとも1つの状態パラメータを検出するように設計された少なくとも1つのセンサ(5-10)と、少なくとも1つのセンサ(5-10)に接続され、少なくとも1つのセンサ(5-10)から受信したデータを送信するように設計されたインターフェース(12)と、を備える、クレーンフックブロックに関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレーンフックブロック(1)であって、
フレーム(2)と、
前記フレーム(2)に回転可能に接続された少なくとも1つのプーリ(3)と、
前記フレーム(2)に接続された荷掛けフック(4)と、
前記クレーンフックブロック(1)上に配置され、前記クレーンフックブロック(1)の少なくとも1つの周囲パラメータ及び/又は少なくとも1つの状態パラメータを検出するように設計された少なくとも1つのセンサ(5-10)と、
前記少なくとも1つのセンサ(5-10)に接続され、前記少なくとも1つのセンサ(5-10)から受信したデータを送信するように設計されたインターフェース(12)と、
を備える、クレーンフックブロック。
【請求項2】
前記周囲パラメータとして、
前記クレーンフックブロック(1)の周囲の少なくとも1つの領域のカメラ画像、
前記クレーンフックブロック(1)と、物体(11)、特に障害物及び/又はクレーン部品との間の距離、
のパラメータのうち少なくとも1つを検出する、請求項1に記載のクレーンフックブロック。
【請求項3】
前記状態パラメータとして、
前記クレーンフックブロック(1)の少なくとも一部のカメラ画像、
前記荷掛けフック(4)に取り付けられた荷物の重さ、
前記クレーンフックブロック(1)の空間位置、
前記クレーンフックブロック(1)の空間的な向き、
前記少なくとも1つのプーリ(3)の回転速度、
のパラメータのうち少なくとも1つを検出する、請求項1及び2のいずれか1つに記載のクレーンフックブロック。
【請求項4】
前記クレーンフックブロック(1)もしくはその一部、又は、前記クレーンフックブロック(1)の近傍にある物体(11)によって反射及び/又は放射される電磁スペクトルの可視光及び/又は赤外線部分の光を検出するための光学カメラ(5)、
前記クレーンフックブロック(1)と前記クレーンフックブロック(1)の近傍にある物体(11)との間の距離を検出するためのRADARセンサ(6)、
前記クレーンフックブロック(1)と前記クレーンフックブロック(1)の近傍にある物体(11)との間の距離を検出するためのLIDARセンサ、
前記クレーンフックブロック(1)の空間位置及び/又は空間的な向きを検出するための空間位置センサ又はGPSセンサ(7)、
前記クレーンフックブロック(1)又はその一部の空間的な向きを検出するための傾斜センサ(8)、
前記クレーンフックブロック(1)又はその一部に対する機械的荷重を検出するための圧力センサ及び/又は力センサ(9)、
前記少なくとも1つのプーリ(3)の回転速度を検出するための回転速度センサ(10)、
前記クレーンフックブロック(1)又はその一部の加速度を検出するための加速度センサ、
のうち少なくとも1つを備える、請求項1~3のいずれか1つに記載のクレーンフックブロック。
【請求項5】
カメラ画像を撮像するカメラ(5)の検出領域を照明する照明装置(13)を更に備える、請求項1~4のいずれか1つに記載のクレーンフックブロック。
【請求項6】
前記センサ(5~10)に電力を供給するための発電機(14)を更に備え、前記発電機(14)は、前記少なくとも1つのプーリ(3)によって駆動される、請求項1~5のいずれか1つに記載のクレーンフックブロック。
【請求項7】
前記センサ(5~10)に電力を供給するためのエネルギ貯蔵装置(15)、特に外部電源及び/又は発電機(14)によって再充電可能な二次電池を更に備える、請求項1~6のいずれか1つに記載のクレーンフックブロック。
【請求項8】
前記少なくとも1つのプーリ(3)を有する上側部分(2A)と、前記上側部分(2A)に着脱可能に接続され、荷掛けフック(4)を有する下側部分(2B)とを備え、前記センサ(5~10)が前記下側部分(2B)に配置されている、請求項1~7のいずれか1つに記載のクレーンフックブロック。
【請求項9】
クレーン、特に移動式クレーン(15)のためのクレーンコントローラであって、
請求項1~8のいずれか1つに記載のクレーンフックブロック(1)のインターフェース(12)に接続可能なインターフェース(16)を備え、
前記クレーンコントローラ(17)は、前記少なくとも1つのセンサ(5~10)によって検出されるパラメータに基づいて前記クレーン(15)の少なくとも1つの状態変数を決定する、クレーンコントローラ。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか1つに記載のクレーンフックブロック(1)、及び/又は請求項9に記載のクレーンコントローラ(17)を備える、クレーン、特に移動式クレーン(15)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーン、特に移動式クレーンのフックブロックであって、フックブロックの近傍及び/又は状態に関するパラメータを検出するための測定センサシステムと、測定センサシステムによって検出された測定変数を処理するクレーンコントローラと、前記フックブロック及び/又は前記クレーンコントローラとを有するクレーンと、を備えるフックブロックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の移動式クレーンは、異なる測定データを取得し、それらを中央データ処理装置及び/又はクレーンコントローラに送信する複数センサを備え、受信した測定データに基づいてクレーンの状態変数を決定し、それに応じて操作員に知らせ、例えば、個々のクレーン機能をブロックすることによって、適宜クレーンの許容できない状態を抑えている。既知のシステムにおいて、個々の状態変数は、複数の測定値を用いて計算される。例えば、移動式クレーンにおいては、ブームのラフィング(luffing)シリンダに設置した圧力センサや、メインブームとラフィングブームとに設置した複数の傾斜センサによって、フックに取り付けられた荷物を定期的に確認する。吊り上げ高も同様に、吊り上げケーブルの巻き上げ又は巻き戻し長さ、伸縮長さ、ブームのラフィング角度を用いて計算するのが一般的である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、複数の測定値から間接的に状態変数を計算する場合、各センサの故障の可能性や測定精度がシステム全体の故障の可能性を高めるだけでなく、測定誤差が蓄積して、状態変数が不正確に決定されるという欠点がある。
【0004】
本発明は、クレーンの状態変数を検出するための改良された測定センサシステムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、独立請求項1及び同等の請求項9,10の主題によって達成される。従属請求項は、本発明の好適な実施形態を定義する。
【0006】
本発明に係るクレーンフックブロックは、フレームと、フレームに接続された少なくとも1つのプーリと、フレームに接続された荷掛けフックとを備え、更に、クレーンフックブロック上に配置され、クレーンフックブロックの少なくとも1つの周囲パラメータ及び/又は少なくとも1つの状態パラメータを検出するように設計された少なくとも1つのセンサと、少なくとも1つのセンサに接続され、少なくとも1つのセンサから受信したデータを送信するように設計されたインターフェースとを備える。
【0007】
すなわち、従来設計のクレーンフックブロックにセンサシステムを付加することで、クレーンフックブロックの位置又は領域で直接的に測定し、これに基づいてクレーンの状態変数を直接決定できるため、上記の欠点をもたらす複数の測定値から間接的に精巧に導き出す必要がない。
【0008】
また、センサによって取得された測定データをクレーンコントローラに送信できるようにするため、クレーンフックブロックは、データ送信インターフェースを備える。クレーンフックブロックのインターフェースとクレーンコントローラの対応するインターフェースとをデータケーブルで接続することも原理的には可能であるが、ここでは対応するインターフェース間を無線で接続することが好ましい。
【0009】
一方、本発明によって、フックブロックの直近又はその近傍の周囲パラメータを検出することができる。クレーンフックブロックの1以上の選択された小領域又は近傍全体は、例えば、カメラ画像及び/又はビデオ画像の取得によって監視することができる。生成された画像又は画像データは、例えばクレーン車室内に配置された画面上に、クレーンフックブロックの近傍に関する情報を直接提供することができる。これらのデータにより、例えば、クレーンフックブロックが、取り付けられた荷物の真上に位置しているか否か、吊り上げケーブル、クレーンフックブロック、又は荷物の周辺に考慮すべき障害物があるか否かを確認することが可能である。なお、この際、生成された画像又は画像データは、描写された物体を自動的に識別し、得られたデータを操作員又はクレーンコントローラに供給するために、既知の方法で自動化されたコンピュータ支援画像処理にかけることができることに留意すべきである。例えば、フックブロックの動作範囲に障害物や人がいる可能性がある場合、自動的に警告を発し、安全のためにクレーン機能を制限したり、ブロックしたりすることが可能である。
【0010】
クレーンフックブロックと人又は物体及び/又は障害物との間の距離は、クレーンフックブロックに設けられた適切な光学センサ又は他の適切なセンサによって検出されてもよい。これにより、フックと装着する荷物との距離だけでなく、クレーンフックブロックとブームの先端部のプーリヘッドとの距離も検出することができる。後者の場合、クレーンフックブロックとプーリヘッドとの衝突が、実際に起こるよりかなり前に特定され、例えばプーリヘッドからの距離の減少に応じて昇降動作の減速を大きくするなど、適切な措置を講じることができるという利点がある。これにより、従来の電気機械式吊り上げリミットスイッチのように、衝突を抑えるために吊り上げ動作を急停止させるという不都合を回避することができる。
【0011】
しかしながら、フックブロックで直接的に測定された値は、クレーンフックブロック自体にも関連する。例えば、クレーンフックブロックの1以上の小領域又はその全体は、画像及び/又はビデオ画像の取得によって監視されることができる。このようにして得られた画像データ及び/又はビデオデータは、既に述べたように、クレーンを操作する作業員の注意を引くことができ、また、例えば、クレーンフックブロックの特定の状態を自動的に識別するために、コンピュータ支援画像処理を行うことができる。そのため、例えば、付属のプーリのうち何個が吊り上げケーブルで占められているか、或いはクレーンフックのクレビスロックが正しい位置にあるか否かなどを検出することが可能である。
【0012】
従来の解決策では、荷物の重量は他のセンサ変数から間接的に計算されるか、或いは、例えば吊り上げケーブルドラム上に配置された遠隔センサによって不十分な精度のレベルでしか測定されなかったので、本発明は、クレーンフックブロック上で荷掛けフックに取り付けられた荷物の重量を直接的に測定することについて非常に大きな利点を提供する。
【0013】
また、GPSセンサなどの適切な空間位置センサによって、クレーンフックブロックの(絶対)空間位置を検出することも可能である。クレーン本体や、障害物などの物体、取り付けられる荷物、及び/又は荷物の設置位置に、1以上の基準センサが設置されている場合、これらのセンサとクレーン部品、前述した物体、及び/又は前述した位置との相対位置も確認することが可能である。
【0014】
クレーンフックブロックの空間的な向きについても、同様の考慮が必要である。クレーンフックブロックの傾斜位置が適切なセンサを使用して特定されるとすぐに、これは、例えば、クレーンフックブロックが、吊り上げるべき荷物の上に正確に位置しておらず、吊り上げたときに荷物が不規則に振動する原因となる、望ましくない「斜め引き」を推測するために使用できる。荷物の揺れは、原理的に、空間的な向き、すなわち傾斜位置及び/又はクレーンフックブロックの加速度を介して検出することができる。
【0015】
また、クレーンフックブロックに設けられた少なくとも1以上又は全てのプーリの回転速度又は回転経路を検出することも可能である。これにより、どのプーリが何本の吊り上げケーブルで占められているか、何本の吊り上げケーブルを巻き取っているかを検出することができる。吊り上げケーブルドラムから巻き上げられた又は巻き戻された吊り上げケーブルの長さに関する測定値を追加することによって、少なくとも1つのプーリの回転速度及び/又は回転経路からケーブルのせん断、すなわち吊り上げケーブルで占められたプーリ又は吊り上げケーブルを巻き取ったプーリの数を確認することが可能である。付加的又は代替的に、クレーンフックブロックの吊り上げ高の変化を検出し、その後に巻き取られた又は巻き戻された吊り上げケーブルの長さを検出することによっても、ケーブルのせん断を確認することができる。
【0016】
本発明に係るクレーンフックブロックは、前述した測定変数又は他の測定変数を検出するための以下の任意の数のセンサを備えてもよい;
クレーンフックブロックもしくはその一部、又は、クレーンフックブロックの近傍にある物体によって反射及び/又は放射される電磁スペクトルの可視光及び/又は赤外線部分の光を検出するための光学カメラ;
クレーンフックブロックとクレーンフックブロックの近傍にある物体との間の距離を検出するためのRADARセンサ;
クレーンフックブロックとクレーンフックブロックの近傍にある物体との間の距離を検出するためのLIDARセンサ;
クレーンフックブロックの空間位置及び/又は空間的な向きを検出するための空間位置センサ又はGPSセンサ;
クレーンフックブロック又はその一部の空間的な向きを検出するための傾斜センサ;
クレーンフックブロック又はその一部に対する機械的荷重を検出するための圧力センサ及び/又は力センサ;
前記少なくとも1つのプーリの回転速度を検出するための回転速度センサ;
クレーンフックブロック又はその一部の加速度を検出するための加速度センサ。
【0017】
前述のセンサから得られる測定データは、例えば前述の周囲パラメータやクレーンフックブロックの状態パラメータのいずれかを確認するために、個別に且つ任意の好都合な組み合わせで取り込まれてもよい。また、これらの周囲パラメータや状態パラメータを、異なる測定変数や測定変数の組み合わせに基づいて冗長的に検出することも可能である。
【0018】
また、クレーンフックブロックは、カメラやビデオカメラの検出領域の少なくとも一部を照明する照明装置を備え、例えば、夜間や、薄明かり、日照不足でも使用可能なカメラ画像を得ることができるようにすることも可能である。
【0019】
クレーンフックブロックに設置されたセンサ、インターフェース、任意の制御装置にケーブルを介して電力を供給することも原理的に可能であるが、例えば、エネルギ貯蔵装置や発電機による自律的な電力供給が好ましい。
【0020】
クレーンフックブロックは、例えば、センサに電力を供給するための発電機を備えてもよい。この文脈において、クレーンフックブロックに風力発電機、太陽光発電機、又は、内燃機関もしくは少なくとも1つのプーリによって機械的に駆動される発電機を備えることが原理的に考えられ、これらの発電機のうちの2以上が使用されてもよい。
【0021】
このような発電機の代わりとして、又はこのような発電機に加えて、クレーンフックブロックは、センサ、インターフェース、及びクレーンフックブロックに設けられる他の電気消費者に電力を供給するために、例えば、外部電源及び/又は発電機によって充電可能なエネルギ貯蔵装置を備えてもよい。
【0022】
また、クレーンフックブロックは、少なくとも1つのプーリを有する上側部分と、荷掛けフックを有する下側部分とを備え、上側部分と下側部分とは互いに着脱可能に、例えばボルトで接続されることが考えられる。このような複数の部品、特に2つの部品で設計されたクレーンフックブロックは、吊り上げケーブルを巻き取ったまま、下側部分をクレーンフックブロックの他の部分から、更にはクレーンから容易に分離できるという利点を有している。特に、センサシステムのメンテナンス及び修理作業を簡素化するために、センサ及び関連するインターフェースのほとんど又は全てをクレーンフックブロックの下側部分に割り当てることが好都合である。これにより、このような測定センサシステムをクレーン毎に用意することなく、フックブロックの下側部分が1つしかない複数のクレーンに本発明を適用することができる。例えば、本発明に係る測定センサシステムが使用されるべき作業にクレーンが使用される場合、フックブロックの下側部分のみをこの目的のために装備すればよく、フックブロックの上側部分の巻取り部は残すことができる。
【0023】
この文脈においては、センサに必要な周辺機器、すなわち、発電機及び/又はエネルギ貯蔵装置、制御装置、又はデータインターフェースを、可能な限りフックブロックの下側部分に統合することも好都合である。
【0024】
本発明の別の態様は、クレーン、特に移動式クレーンのためのクレーンコントローラであって、前述したクレーンフックブロックのインターフェースに接続可能なインターフェースを備え、クレーンコントローラは、少なくとも1つのセンサによって検出される少なくとも1つのパラメータに基づいてクレーンの少なくとも1つの状態変数を決定する、クレーンコントローラに関する。クレーンコントローラの機能は、クレーンの1以上の状態変数を確認することに限定されるものではなく、取り込んだ測定データ及び/又は検出したクレーンの状態変数に基づいて、荷物の昇降、クレーンの上部構造の旋回、クレーンのブームのラフィング又は伸縮等の1以上のクレーン機能を制御又は調節してもよい。例えば、クレーンフックブロックとブームのプーリヘッドとの距離が所定の閾値以下になった場合、吊り上げ速度が低下されたり、吊り上げ動作の継続がブロックされたりしてもよい。許容できない斜め引きが確認された場合、再び吊り上げ動作がブロックされてもよい。最も単純なケースでは、得られた測定データ(例えば、カメラ画像)及び/又はクレーンの特定の状態変数(例えば、ケーブルのせん断)は、クレーンを操作する作業員の注意を引く。また、重要な測定値(例えば、クレーンフックブロックの近傍に障害物がある場合)や重要な状態変数(例えば、過負荷)を作業員に通知してもよい。
【0025】
クレーンコントローラは、例えば、GPSセンサによって検出されたフックブロックの位置を用いて、クレーンのブームの伸縮長を推測してもよい。クレーンフックブロックとクレーン車の水平相対位置は、クレーンフックブロック及びクレーン車のGPSセンサから知ることができる。クレーンの足回りとクレーンのブームとの両方は、傾斜センサを標準装備し、クレーン車の傾斜とクレーンのブームのラフィング角度を推測するための測定データを提供する。クレーンのフックがブームヘッドから垂直に吊られていると仮定すると、角度を計算するだけでブームの長さを推測することができる。
【0026】
また、本発明は、前述したいずれか1つの実施形態に係るクレーンフックブロック、及び/又は前述したクレーンコントローラを備える、クレーン、特に移動式クレーンに関する。
【0027】
以下、本発明の個々の好適な特徴について説明する。本発明は、前述した特徴に加え、以下に説明する特徴を、個々に、及び任意の好都合な組み合わせで備える。
【0028】
荷掛けフックに取り付けられた荷物の重量は、いわゆる「荷重測定ボルト」、例えば荷掛けフックに設けられたフックブロックのクロスバーによって測定することができる。このため、例えば、クロスバーにかかる応力を測定する1以上のセンサを用意し、荷重を直接的に推測することができる。
【0029】
クレーンに対するロードフックの空間位置は、フックブロックの空間位置センサ又はGPSセンサとクレーンの対応する基準センサとによって確認することができる。
【0030】
主要な/補助的な吊り上げ機構の検出されたケーブル長/位置、及び、フックブロックの位置の相対的変化から、ケーブルのせん断を自動的に確認することができる。
【0031】
また、フックブロックのセンサシステムによって、非接触で吊り上げリミットスイッチの機能が提供され、建物や樹木などの障害物との衝突を識別する。
【0032】
フックブロックに取り付けられたカメラによって、荷物、周辺、及び人物のクレーンの操作員による視認性が向上される。記録された画像は、各アクティブコントロール位置の画面上でクレーンの操作員に利用可能になる。例えば、クレーンの操作員は、障害物によって隠れた領域又は視認できない領域でも荷物を観察することができる。暗所で視認するために照明装置が設けられてもよい。
【0033】
フックブロックの傾斜センサは、クレーン作業では許されない荷物の斜め引きを識別する。また、このセンサは、駆動機構、特に旋回機構の起動/停止時に、慣性による荷物の旋回運動を補償及び/又は打ち消すために使用されてもよい。
【0034】
電源は、フックブロック内の二次電池によって提供されてもよい。二次電池は、クレーン運転中は直流発電機で充電することが可能であり、走行中はクレーン車のソケットで充電することが可能である。ソケットは、例えば、クレーンの前部クレビスに固定されるフックブロックの近くの操作者車内の前部領域に設けられてもよいが、DC発電機は、フックブロックのプーリによって駆動されてもよい。
【0035】
センサが取得した測定データは、フックブロックに内蔵された無線通信機を有するコントローラによって検出され、クレーンコントローラに転送されて処理される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
以下、本発明の好適な実施形態について、添付の図面を参照しながら、より詳細に説明する。本発明は、ここに記載された特徴のいずれかを、個別に、及び任意の好都合な組み合わせで構成することができる。
【0037】
【
図1】本発明に係る1部品式のクレーンフックブロックを示す図である。
【
図2】本発明に係る2部品式のクレーンフックブロックを示す図である。
【
図3】本発明に係るクレーンフックブロックと、それに対応するクレーンコントローラとを備える移動式クレーンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1は、1部品式のクレーンフックブロック1を示し、合計6個のプーリ3と1個の荷掛けフック4の両方がクレーンフックブロック1の共通のフレーム2に接続されている。この範囲において、本発明に係るクレーンフックブロックは、従来のクレーンフックブロックと異なるところはない。
【0039】
クレーンフックブロックの特定の周囲パラメータ及び状態パラメータを直接測定可能にするため、クレーンフックブロックは、複数のセンサ5~10を備えている。荷掛けフック4に取り付けられた荷物の重量を測定するために、フッククロスバーが、ひずみゲージの形態の荷重センサ9を備えている。操作員がクレーンフック4に取り付けられた荷物をよりよく見ることができるように、フレーム2は、スポットライトの形態の統合照明装置13を有するカメラ5を備えている。プーリ3の回転速度は、対応する回転速度センサ10によって検出される。クレーンフックブロック1は、クレーンブームのプーリヘッド11(
図3参照)との衝突の可能性を排除するために、その上部領域に、距離を検出するためのRADARセンサ6を備えている。また、この目的のために、LIDARセンサが使用されてもよい。クレーンフックブロック1の空間位置を検出するために、GPSセンサ7の形態の空間位置センサが設けられている。また、クレーンフックブロック1に設置された傾斜センサ8は、クレーンフックブロック1の空間的な向きを検出し、クレーンフックブロック1の傾斜位置を特定することができる。
【0040】
全てのセンサ5~10は、センサ5~10によって確認された測定データを受信し、無線接続を介してクレーンコントローラ17(
図3参照)の対応するインターフェース16に送信するインターフェース12に接続されている。
【0041】
センサ5~10を有する測定センサシステムの全体には、発電機14によって充電された二次電池15から電力が供給される。発電機14は、シャフトを介してプーリ3に接続され、クレーンフックブロック1が昇降する際に電力を発生させる。
【0042】
図2は、本発明に係るクレーンフックブロックの他の、2部品式の実施形態を示し、フレーム2がプーリ3を有する上側部分2Aとダブルフック4を有する下側部分2Bとを備える点でのみ、
図1に示す実施形態と実質的に異なっている。下側部分2Bは、詳細に示されていない4つのボルト接続を用いて上側部分2Aに着脱可能に接続されている。また、
図2は、センサ5~10、インターフェース12、エネルギ貯蔵装置15を備える測定センサシステムの全体が、クレーンフックブロック1の下側部分2Bに配置されていることを示している。個々のプーリ3の回転速度及び角度位置は、光学カメラ5と、カメラ5によって生成された画像内のプーリ3上の光学マークを識別し、そこからプーリ3の回転速度と角度位置を推測するコンピュータ支援画像評価装置とによって検出される。この特徴は、少なくとも1つのプーリ3上のセンサのリングと、フックブロックの下側部分2Bの対応するホールセンサとによって代替的に実現することができる。
【0043】
図3は、本発明に係るフックブロック1を備える移動式クレーン15と、対応するクレーンコントローラ17を、センサ5~10によって検出されたパラメータに基づいてクレーン15の状態変数を確認するために既に前述した特徴を有するインターフェース16とともに示している。
【手続補正書】
【提出日】2022-12-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレーンフックブロック(1)であって、
フレーム(2)と、
前記フレーム(2)に回転可能に接続された少なくとも1つのプーリ(3)と、
前記フレーム(2)に接続された荷掛けフック(4)と、
前記クレーンフックブロック(1)上に配置され、前記クレーンフックブロック(1)の少なくとも1つの周囲パラメータ及び/又は少なくとも1つの状態パラメータを検出するように設計された少なくとも1つのセンサ(5-10)と、
前記少なくとも1つのセンサ(5-10)に接続され、前記少なくとも1つのセンサ(5-10)から受信したデータを送信するように設計されたインターフェース(12)と、
を備える、クレーンフックブロック。
【請求項2】
前記周囲パラメータとして、
前記クレーンフックブロック(1)の周囲の少なくとも1つの領域のカメラ画像、
前記クレーンフックブロック(1)と、物体(11)、特に障害物及び/又はクレーン部品との間の距離、
のパラメータのうち少なくとも1つを検出する、請求項1に記載のクレーンフックブロック。
【請求項3】
前記状態パラメータとして、
前記クレーンフックブロック(1)の少なくとも一部のカメラ画像、
前記荷掛けフック(4)に取り付けられた荷物の重さ、
前記クレーンフックブロック(1)の空間位置、
前記クレーンフックブロック(1)の空間的な向き、
前記少なくとも1つのプーリ(3)の回転速度、
のパラメータのうち少なくとも1つを検出する、請求項1に記載のクレーンフックブロック。
【請求項4】
前記クレーンフックブロック(1)もしくはその一部、又は、前記クレーンフックブロック(1)の近傍にある物体(11)によって反射及び/又は放射される電磁スペクトルの可視光及び/又は赤外線部分の光を検出するための光学カメラ(5)、
前記クレーンフックブロック(1)と前記クレーンフックブロック(1)の近傍にある物体(11)との間の距離を検出するためのRADARセンサ(6)、
前記クレーンフックブロック(1)と前記クレーンフックブロック(1)の近傍にある物体(11)との間の距離を検出するためのLIDARセンサ、
前記クレーンフックブロック(1)の空間位置及び/又は空間的な向きを検出するための空間位置センサ又はGPSセンサ(7)、
前記クレーンフックブロック(1)又はその一部の空間的な向きを検出するための傾斜センサ(8)、
前記クレーンフックブロック(1)又はその一部に対する機械的荷重を検出するための圧力センサ及び/又は力センサ(9)、
前記少なくとも1つのプーリ(3)の回転速度を検出するための回転速度センサ(10)、
前記クレーンフックブロック(1)又はその一部の加速度を検出するための加速度センサ、
のうち少なくとも1つを備える、請求項1~3のいずれか1つに記載のクレーンフックブロック。
【請求項5】
カメラ画像を撮像するカメラ(5)の検出領域を照明する照明装置(13)を更に備える、請求項1~3のいずれか1つに記載のクレーンフックブロック。
【請求項6】
前記センサ(5~10)に電力を供給するための発電機(14)を更に備え、前記発電機(14)は、前記少なくとも1つのプーリ(3)によって駆動される、請求項1~3のいずれか1つに記載のクレーンフックブロック。
【請求項7】
前記センサ(5~10)に電力を供給するためのエネルギ貯蔵装置(15)、特に外部電源及び/又は発電機(14)によって再充電可能な二次電池を更に備える、請求項1~3のいずれか1つに記載のクレーンフックブロック。
【請求項8】
前記少なくとも1つのプーリ(3)を有する上側部分(2A)と、前記上側部分(2A)に着脱可能に接続され、荷掛けフック(4)を有する下側部分(2B)とを備え、前記センサ(5~10)が前記下側部分(2B)に配置されている、請求項1~3のいずれか1つに記載のクレーンフックブロック。
【請求項9】
クレーン、特に移動式クレーン(15)のためのクレーンコントローラであって、
請求項1~3のいずれか1つに記載のクレーンフックブロック(1)のインターフェース(12)に接続可能なインターフェース(16)を備え、
前記クレーンコントローラ(17)は、前記少なくとも1つのセンサ(5~10)によって検出されるパラメータに基づいて前記クレーン(15)の少なくとも1つの状態変数を決定する、クレーンコントローラ。
【請求項10】
請求項1~3のいずれか1つに記載のクレーンフックブロック(1)、及び/又は請求項9に記載のクレーンコントローラ(17)を備える、クレーン、特に移動式クレーン(15)。
【外国語明細書】