(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023078108
(43)【公開日】2023-06-06
(54)【発明の名称】建築物及び表示装置
(51)【国際特許分類】
E04H 1/02 20060101AFI20230530BHJP
E04H 3/02 20060101ALI20230530BHJP
【FI】
E04H1/02
E04H3/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022188220
(22)【出願日】2022-11-25
(31)【優先権主張番号】P 2021191366
(32)【優先日】2021-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】521399777
【氏名又は名称】セレンディクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100154748
【弁理士】
【氏名又は名称】菅沼 和弘
(72)【発明者】
【氏名】飯田 國大
【テーマコード(参考)】
2E025
【Fターム(参考)】
2E025AA03
2E025AA13
2E025AA22
(57)【要約】
【課題】メディアの利用以外を主目的として滞在又は居住する建築物の中を一定以上の明るさかつ安全な状態で維持したまま、人が、リアリティに富む映像等の情報を、健全に利用できるマルチメディアを提供すること。
【解決手段】メディアの利用以外を主目的として滞在又は居住する建築物の一例である家は、任意の断面図において曲線で示される「球体」の壁1Tを有している。この壁1Tの内側面の略全体には、自発光するフレキシブル表示デバイスDが貼られている。これにより、家自体がマルチメディアとして機能する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メディアの利用以外を主目的として滞在又は居住する建築物において、
任意の断面図において曲線で示される壁であって、
自発光するフレキシブル表示デバイスが内側面の略全体に貼られた壁
を有する建築物。
【請求項2】
メディアの利用以外を主目的として滞在又は居住する建築物のうち、
断面図において中心線が曲線で示される壁の内側面の略全体に貼られた、
自発光するフレキシブル表示デバイス
を有する表示装置。
【請求項3】
前記建築物は、
当該建築物のデジタルデータに基づいて、3Dプリンタのヘッダから出力されるコンクリート、モルタル又はセラミックの材料を、第1方向に積層させていくことで、建築物の少なくとも一部を生産する、建築物の生産方法であって、
前記3Dプリンタが前記材料を配置させる対象の層を対象層として、前記3Dプリンタが、当該対象層の下層に対して、前記第1方向と略90度の第2方向に一定距離ずらして、当該対象層に前記材料を配置する配置ステップを繰り返すことで、
前記第1方向に対して角度を出して、前記建築物の少なくとも一部を生産する、
建築物の生産方法により生産されたものである、
請求項1の建築物又は請求項2の表示装置。
【請求項4】
前記フレキシブル表示デバイスを、壁として機能させる、
請求項1の建築物又は請求項2の表示装置。
【請求項5】
前記フレキシブル表示デバイスは、
メディアの機能を発揮する第1領域と、
メディア以外の機能を発揮する第2領域と、
を有する請求項1の建築物又は請求項2の表示装置。
【請求項6】
前記第2領域は、タッチパネルを有し、前記建築物の設備を住人が操作するための操作子を表示させて、当該設備のインタフェースとなる機能を発揮する領域を含む、
請求項5に記載の建築物又は表示装置。
【請求項7】
前記第2領域は、壁の画像を表示させて、壁として機能させる領域を含む、
請求項5に記載の建築物又は表示装置。
【請求項8】
前記第2領域は、一定以上の照度で発光することにより、照明として機能させる領域を含む、
請求項5に記載の建築物又は表示装置。
【請求項9】
前記第1領域及び前記第2領域の夫々は、前記フレキシブル表示デバイスにおける配置位置が可変とされている、
請求項5に記載の建築物又は表示装置。
【請求項10】
前記フレキシブル表示デバイスは、
前記建築物に滞在又は居住している人が他の対象とコミュニケーションを取る機能を有する画像を表示させる、
請求項1の建築物又は請求項2の表示装置。
【請求項11】
前記建築物は複数個存在し、
第1の前記建築物において表示された画像を、第2の前記建築物において表示させる、
請求項1の建築物又は請求項2の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、家の中で利用されるマルチメディアとして、液晶や有機ELを用いた平面ディスプレイや、平面スクリーンに投射するプロジェクタが広く知られている(例えば特許文献1参照)。
ここで、マルチメディアとは、映像や音声を含め各種各様な情報が、記録、伝達(伝達されたものの受取り)、保管等の用途で取り扱われる際に用いられる媒体(物や装置等)のことをいう。
近年、持ち運び自在なスマートフォンに代表される携帯端末も、外出先のみならず、家の中で利用されるマルチメディアとして代表的なものになっている。
さらに、ヘッドマウントディスプレイ等を用いた、バーチャル・リアリティ(以下、適宜「VR」と略記する)でのマルチメディアも登場してきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、家の中で利用されるマルチメディアとしては、家の中を一定以上の明るさかつ安全な状態で維持したまま、住人が、リアリティに富む映像等の情報を健全に利用できるものが要求されているが、特許文献1を含め従来のマルチメディアでは、このような要求に充分に応えることができない状況である。
なお、家のみならず、メディアの利用以外を主目的として滞在又は居住する建築物において同様な状況である。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、メディアの利用以外を主目的として滞在又は居住する建築物の中を一定以上の明るさかつ安全な状態で維持したまま、人が、リアリティに富む映像等の情報を、健全に利用できるマルチメディアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一態様の建築物は、
メディアの利用以外を主目的として滞在又は居住する建築物において、
断面図において中心線が曲線で示される壁であって、
自発光するフレキシブル表示デバイスが内側面の略全体に貼られた壁
を有する建築物である。
【0007】
また、上記目的を達成するため、本発明の一態様の表示装置は、
メディアの利用以外を主目的として滞在又は居住する建築物のうち、
断面図において中心線が曲線で示される壁の内側面の略全体に貼られた、
自発光するフレキシブル表示デバイス
を有する表示装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、メディアの利用以外を主目的として滞在又は居住する建築物の中を一定以上の明るさかつ安全な状態で維持したまま、人が、リアリティに富む映像等の情報を、健全に利用できるマルチメディアを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の建築物の一実施形態である家の斜視図である。
【
図2】本発明の建築物の一実施形態である家の正面側側面図である。
【
図3】本発明の建築物の一実施形態である家の背面側側面図である。
【
図4】本発明の建築物の一実施形態である家の右側側面図である。
【
図5】本発明の建築物の一実施形態である家の左側側面図である。
【
図6】本発明の建築物の一実施形態である家の上面図である。
【
図7】本発明の建築物の一実施形態である家の下面図である。
【
図9】
図1乃至
図8の家の内部の様子を示す図あって、フレキシブル表示デバイスが家の内部の壁として機能している場合の一例を示す図である。
【
図10】
図1乃至
図8の家の内部の様子を示す図であって、「球体」の壁の内側面の略全体に貼られたフレキシブル表示デバイスの全面に、VR空間の映像を表示させた場合の一例を示す図である。
【
図11】
図1乃至
図8の家の内部の様子を示す図であって、「球体」の壁の内側面の略全体に貼られたフレキシブル表示デバイスの全面に、実世界の空間映像を表示させた場合の一例を示す図である。
【
図12】
図1乃至
図8の家の内部の様子を示す図であって、「球体」の壁の内側面の略全体に貼られたフレキシブル表示デバイスが、メディア機能領域と非メディア機能領域とに区分されている場合の一例を示す図である。
【
図13】
図1乃至
図8の家の内部の様子を示す図であって、「球体」の壁の内側面の略全体に貼られたフレキシブル表示デバイスを用いて、VR執事による生活サポートのサービスを提供する一例を示す図である。
【
図14】
図1乃至
図8の家の内部の様子を示す図であって、「球体」の壁の内側面の略全体に貼られたフレキシブル表示デバイスを用いて、VRペットによる癒しのサービスを提供する一例を示す図である。
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。
図1は、本発明の建築物の一実施形態である家の斜視図である。
図2は、本発明の建築物の一実施形態である家の正面側側面図である。
図3は、本発明の建築物の一実施形態である家の背面側側面図である。
図4は、本発明の建築物の一実施形態である家の右側側面図である。
図5は、本発明の建築物の一実施形態である家の左側側面図である。
図6は、本発明の建築物の一実施形態である家の上面図である。
図7は、本発明の建築物の一実施形態である家の下面図である。
【0011】
図1乃至
図7及びそれ以降の図において、家1が設置される地面を含む平面をxy平面として、家1の正面(ドアが存在する面)の法線と略並行な方向をy方向と呼び、当該y方向と垂直な方向をx方向と呼び、地面(xy平面)と垂直な方向をz方向と呼ぶ。
【0012】
図1乃至
図7の家1において、グレーのハッチ部分は、ドアと窓を示し、それ以外の部分は、壁の外側面を示している。
【0013】
本実施形態では、家1は、積層造形を行う3Dプリンタにより造られる。
具体的には、3Dプリンタは、コンクリート、モルタル又はセラミックの材料をヘッダから吐出させる。3Dプリンタは、予め用意された家1の3次元モデルに基づいて、xy平面に平行な所定面に対して材料を配置させることで1つの層を形成すると、さらに、ヘッダを略z方向(略垂直方向)に移動させて、当該層に積み重ねるように次の層を形成する。このようにして、3Dプリンタは、略z方向(略垂直方向)に複数の層を積み重ねることで、家1の壁を成形する。
このように、本実施形態では、予め用意された家1の3次元モデルに基づいて、積層造形を行う3Dプリンタのヘッダから出力されるコンクリート、モルタル又はセラミックの材料を、略z方向(略垂直方向)に積層させていくことで、家1の壁を成形する手法(以下、「3Dプリント積層造形工法」と呼ぶ)が採用されている。
【0014】
ところで、3Dプリント積層造形工法を採用して、曲線が存在しない直方体状の壁から構成される家を造ることも可能である。
しかしながら、このような家の壁の内側面は平面となる。このような平面な壁の内側面に映像を映した場合、それがどんなに大画面であったとしても、人は、壁があると認識してしまうことになり、リアリティに富む映像等を視聴することは困難である。
これに対して、「球体」の壁の内側面に映像を映すと、人は、目の錯覚で壁でなく無限に広がっていると認識できるので、リアリティに富む映像等を視聴することが可能になる。
そこで、本実施形態では、
図1乃至
図7に示すように、3Dプリント積層造形工法により「球体」の壁から構成される家1が造られているのである。
【0015】
具体的には、
図1乃至
図7に示す家1は、
図8に示す3Dプリント積層造形工法により生産されたものであって、「球体」の壁が形成されている。
図8は、
図1乃至
図7の家の断面図のうち壁の拡大図である。
図8(A)は、「球体」の壁の内側面にディスプレイが配置される前の状態を示している。
図8(B)は、「球体」の壁の内側面にディスプレイが配置された後の状態を示している。
【0016】
ここで、
図8(A)に示すように、「球体」の壁1Tとは、z方向(垂直方向)に対して角度を出している壁1Tのことをいう。z方向(垂直方向)に対して角度を出しているとは、壁面1Tを構成する複数の層LYR-1乃至LYR-N(Nは4以上の整数値)の夫々が、略z方向(垂直方向)に隣接する他の層に対して一定の傾きを有してることである。傾きとは、層LYR-K(Kは1乃至Nのうち任意の整数値)の上面の中心点P-Kと、それに隣接する他の層LYR-K+1の上面の中心点P-K+1とを結ぶ線分Lが、略z方向(略垂直方向)に対して一定の角度θを有していることをいう。
或いはまた、「球体」の壁1Tとは、
図8に示すように断面図における中心線C1が曲線となっているものをいう。
【0017】
ここで、「球体」の壁1Tの面のうち、図中右側(Yの正方向側)の面が、内側面であるものとする。
仮に
図8(A)の状態の「球体」の壁1Tからなる家(
図8(B)のフレキシブル表示デバイスDが貼られていない家)を、「球体状家」と呼ぶものとして、プロジェクタを球体状家の内部に配置するものとする。そして、「球体」の壁1Tの内側面をスクリーンとして機能させて、プロジェクタから壁1Tに映像を投射するものとする。この場合、人は、適切な位置(自身の影がスクリーンに映り込まない適切な位置)に存在すれば、リアリティに富む映像等を視聴することは可能になる。
しかしながら、「適切な位置」と記載したように、自身の影がスクリーンに映り込む位置に移動すると、人は、リアリティに富む映像等を視聴することが困難になる。プラネタリウムや映画館のような場所、即ちメディアの利用(映像等の視聴)を主目的とする場所では、人は移動しないことが前提となっている。これに対して、球体状家は、メディアの利用(映像等の視聴)を主目的とせず、居住することを主目的としており、人が移動することが前提とされている。このような、メディアの利用以外を主目的とする球体状家では、プロジェクタをマルチメディアとして用いることは不適である。
さらにいえば、プロジェクタは、外部の光に弱く外部の光を完全に遮断する必要がある。しかしながら、球体状家は、プラネタリウムや映画館と異なり、一定以上の明るさが求められる。したがって、このような点からも、球体状家において、プロジェクタをマルチメディアとして用いることは不適である。
【0018】
そこで、
図8(B)に示されるように、本実施形態の家1においては、自発光するフレキシブル表示デバイスDが、「球体」の壁1Tの内側面の略全体に貼られている。即ち、球体状家に対して、プロジェクタではなく、自発光するフレキシブル表示デバイスDが採用された家が、本実施形態の家1である。
ここで、フレキシブル表示デバイスDにおける「フレキシブル」とは、パネルが曲げられる構造を有していることを意味している。また、「自発光する」とは、プロジェクタのように各画素の光をスクリーン等に射出して映像を投影することに対して、各画素(各素子)の夫々を発光させることで映像を表示することを意味している。従って、曲げられる構造の、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDビジョン等は、自発光するフレキシブル表示デバイスDの一例である。
また、「略全体」とは、必ずしも100%である必要はなく、課題を達成できる程度の一定以上の割合であれば足りる意である。即ち、フレキシブル表示デバイスD又は壁1Tの構造上貼れない場所や、人が家1で住むために貼るべきでない場所が壁1Tに存在することは許容されている。
【0019】
なお、自発光するフレキシブル表示デバイスDを適切に貼るべく、
図8(B)に示すように、「球体」の壁1Tの内側面は、面取りした滑らかな面Cになっていると好適である。
【0020】
以上まとめると、本実施形態の家1とは、「球体」の壁1Tを有する家であって、当該壁1Tの内側面には、自発光するフレキシブル表示デバイスDが略全体に貼られた家である。
これにより、本実施形態の家1は、人が居住する機能と、マルチメディアの機能とを併せ持つことになる。換言すると、本実施形態の家1自体がマルチメディアであると把握することができる。
してみると、本実施形態の家1とは、「球体」の壁1Tの内側面の略全体に貼られた、自発光するフレキシブル表示デバイスDを有する表示装置(マルチメディア)であると把握することもできる。
【0021】
以下、このような本実施形態の家1と、従来の各種マルチメディアとを、家の中で利用されるマルチメディアという観点で比較してみる。
【0022】
先ず、スマートフォンに代表される携帯端末は、小型で持ち運びしやすい半面、画面が小さく平面的であるため、リアリティに富む映像等の情報を利用可能なマルチメディアとは言い難い。
さらに、携帯端末は、長時間見続ける事で視力の低下をユーザに引き起こしたり、長時間前かがみの姿勢を取ることによる健康面への悪影響をユーザに与えてしまう。また、携帯端末は各個別の情報端末であることから、家族を構成する複数のユーザは、同じ家の中に居ながらバラバラのマルチメディア(自身の携帯端末)を用いて映像等を視聴することになり、家族での会話の減少が生じ、その結果、家族の絆が希薄化する。即ち、家の住人の健康面及び家族の絆という点で、携帯端末を家の中で用いるユーザ(住人)は、不健全であるといえる。
これに対して、本実施形態の家1は、「球体」の壁1Tの内側面の略全体に貼られたフレキシブル表示デバイスDが映像等を表示するので、リアリティに富む映像等の情報の利用が可能になる。
また、本実施形態の家1の住人は、一定以上の明るさの中で映像等を裸眼で視聴できるため、視力の低下や姿勢の悪さといった問題は生じずに健康的に視聴できるし、自由に移動したり家族とコミュニケーションを取れるため家族との絆も深まる。即ち、家の住人の健康面及び家族の絆という点で、本実施形態の家1の住人は、健全であるといえる。
【0023】
次に、プロジェクタについては、上述したように、球体状家では人は移動することが前提となっているところ、自身の影がスクリーンに映り込む位置に移動すると、リアリティに富む映像等を視聴することが困難になる。また、プロジェクタは、外部の光に弱く外部の光を完全に遮断する必要がある。
これに対して、本実施形態の家1においては、「球体」の壁1Tの内側面の略全体に貼られたフレキシブル表示デバイスDが自発光して映像等を表示することができるので、家1の中で人が自由に移動しても、リアリティに富む映像等を視聴することができるし、家1の中を一定以上の明るさで維持することも可能になる。
【0024】
また、家の中で人の頭にヘットマウントディスプレー等をつけてVRによるリアリティに富む体験をすることはできるが、いわゆるVR酔いや、ヘッドマウントディスプレイの長時間装着による疲労等、健康面に問題がある。また、実世界の様子が全く視界に入らないため、ヘッドマウントディスプレイを装着した状態の移動は非常に危険であるし、携帯端末同様、家族での会話の減少が生じて、その結果として、家族の絆が希薄化することになる。即ち、ヘッドマウントディスプレイを装着した状態の住人は、家の中を移動すると危険であるし、健康面及び家族の絆という点で不健全であるといえる。
これに対して、本実施形態の家1の住人は、上述したように、家1の中を一定以上の明るさかつ安全な状態で維持したまま、リアリティに富む映像等の情報を健全に利用することができる。
【0025】
ところで、本実施形態の家1は、上述したように、人が居住する機能と、マルチメディアの機能とを併せ持っている。
このため、「球体」の壁1Tの内側面の略全体に貼られたフレキシブル表示デバイスDは、通常の表示デバイスと同様にマルチメディアの機能を発揮する他、人が居住するために必要となる機能を発揮する必要がある。
そこで、
図9に示すように、「球体」の壁1Tの内側面の略全体に貼られたフレキシブル表示デバイスDは、マルチメディアの機能を発揮していない場合には、(通常の家の)壁として機能するように構成されている。
図9は、
図1乃至
図8の家の内部の様子を示す図あって、フレキシブル表示デバイスが家の内部の壁として機能している場合の一例を示す図である。
家1の内部の壁となる機能は、次の2つの手法により実現可能である。
第1の手法は、フレキシブル表示デバイスDの表示面(パネル)自体が、非発光の状態(電源OFFで画像を表示していない状態)において、通常の黒色ではなく、壁を模した白色等になるように構成するという手法である。
第2の手法は、
図9に示すように、壁画像KGをフレキシブル表示デバイスDの全体に表示させるという手法である。ここで、壁画像KGは、壁を模した画像であり、実際の壁紙を撮像した画像であってもよいし、白一色等の創り出した画像であってもよい。
ここで、フレキシブル表示デバイスDのうち、天井部位の領域については、壁画像KGが表示されてもよいが、空の画像等が表示されてもよいし、後述するように照明として機能するようにしてもよい。
【0026】
一方、「球体」の壁1Tの内側面の略全体に貼られたフレキシブル表示デバイスDは、マルチメディアの機能を発揮している場合には、各種各様な映像を全体表示させることができる。
【0027】
図10は、
図1乃至
図8の家の内部の様子を示す図であって、「球体」の壁の内側面の略全体に貼られたフレキシブル表示デバイスの全面に、VR空間の映像を表示させた場合の一例を示す図である。
図10に示すように、本実施形態の家1は、リアルタイムで画像データを合成して構成されるVR空間の映像を、表示画像VGとして、フレキシブル表示デバイスDの全面(「球体」の壁1Tの内側面の略全体)に表示させることができる。
これにより、本実施形態の家1の住人は、ヘッドマウントディスプレイを装着することなく裸眼で、メタバース(仮想空間サービス)を体験したり、VR(仮想現実)のゲームを体験することができる。
【0028】
図11は、
図1乃至
図8の家の内部の様子を示す図であって、「球体」の壁の内側面の略全体に貼られたフレキシブル表示デバイスの全面に、実世界の空間映像を表示させた場合の一例を示す図である。
図11に示すように、本実施形態の家1は、360度カメラで実空間の所定場所が撮影された撮像画像から自動で空間映像(壁面に上映できる動画データ)に変換したものを、表示画像RGとして、フレキシブル表示デバイスDの全面(「球体」の壁1Tの内側面の略全体)に表示させることができる。
本実施形態の家1の住人は、このような空間映像を環境映像として、部屋からみえる風景が実空間の所定場所となっている様子を楽しむことが可能になる。
さらに、本実施形態の家1は、実世界の複数場所(例えば世界中の自然の景色)の夫々についての1種類以上の空間映像や、CG(コンピュータグラフィックス)による1種類以上の空間映像を、環境映像として任意に切替えて、フレキシブル表示デバイスDの全面(「球体」の壁1Tの内側面の略全体)に表示させることができる。
即ち、本実施形態の家1は、部屋からみえる風景を自在にコントロールすることができる。これにより、住人にとっては、本実施形態の家1が一瞬にして非日常空間に様変わりすることになり、空間リラクゼーションが実現可能となる。
【0029】
さらに、「球体」の壁1Tの内側面の略全体に貼られたフレキシブル表示デバイスDは、マルチメディアの機能と、人が居住するために必要な機能とを同時に発揮させることができる。
具体的には、「球体」の壁1Tの内側面の略全体に貼られたフレキシブル表示デバイスDは、メディアの機能を発揮する第1領域(以下、「メディア機能領域」と呼ぶ)と、メディア以外の機能(非メディアの機能)を発揮する第2領域(以下、「非メディア機能領域」と呼ぶ)とを有することができる。
【0030】
ここで、メディアの機能とは、情報を記録、伝達(伝達されたものの受取り)、保管等をする機能であり、次の非メディアの機能を含まない(少なくともその例示の機能を含まない)ものである。具体的には例えば、映画、音楽、テレビ番組、配信コンテンツ、アニメ、ゲーム、漫画、キャラクター等のコンテンツを構成する画像を表示する領域、即ち、モニタ画面として機能する領域が、メディア機能領域の一例である。ここで、画像とは、上述の映像(動画)のみならず、静止画も含む広義な概念である。
なお、環境映像(
図11参照)については、積極的にコンテンツとして取り扱う場合には、メディア機能領域に表示されるが、後述の壁画像KGや額縁内画像として取り扱う場合には非メディア機能領域に表示される。
【0031】
非メディアの機能とは、人が居住するために必要な機能である。
例えば、照明や家電等家1内の設備として動作する機能(以下、「設備動作機能」と呼ぶ)は、非メディア機能の一例である。
例えば、照明や家電等家1内の設備を住人が操作するためのインタフェースとなる機能(以下、「インタフェース機能」と呼ぶ)は、非メディア機能の一例である。
例えば、壁画像KGを表示させて壁の一部とする機能(以下、「壁機能」と呼ぶ)は、非メディア機能の一例である。
例えば、観賞用の絵等の画像を額縁内に表示させる機能(以下、「額縁機能」と呼ぶ)は、非メディア機能の一例である。なお、以下、額縁内に表示される画像(動画像含む)及び額縁自体の画像を含めて、「額縁画像」と呼ぶ。即ち、額縁画像を表示させる機能が、額縁機能である。
【0032】
図12は、
図1乃至
図8の家の内部の様子を示す図であって、「球体」の壁の内側面の略全体に貼られたフレキシブル表示デバイスが、メディア機能領域と非メディア機能領域とに区分されている場合の一例を示す図である。
【0033】
本実施形態の家1において、「球体」の壁1Tの内側面の略全体に貼られたフレキシブル表示デバイスDのうち、ドアDRの付近の領域LG1は、インタフェース機能を発揮させる非メディア機能領域の一例である。具体的には例えば、領域LG1を含む一定領域はタッチパネルで構成されており、照明等のON/OFFを切替えるスイッチの画像が領域LG1に表示される。
住人は、ドアDRを開けて家1に入ったとき、例えば照明を点灯させる目的で、領域LG1内のスイッチを押下することができる。本実施形態の家1は、領域LG1内のスイッチの押下を検出すると、照明を点灯させる。
【0034】
ここで、照明は、図示せぬ照明器具(ハードウェア)であってもよいが、本実施形態の家1においては、「球体」の壁1Tの内側面の略全体に貼られたフレキシブル表示デバイスDのうち天井領域Tが、照明として機能するようになされている。
即ち、本実施形態の家1は、領域LG1内のスイッチの押下を検出すると、天井領域Tを一定以上の輝度(照度)で発光させることで、照明として機能させることができる。即ち、天井領域Tは、照明として動作するため、設備動作機能を発揮させる非メディア機能領域の一例である。
【0035】
ここで、非メディア機能領域は、固定されていてもよいが、可変できるようにされている。
例えば、一般的に、住人は、寝るときに照明を消灯させるが、照明のスイッチが表示される非メディア機能領域が領域LG1で固定されていると、ドアDRまで移動せねばならず使い勝手が悪い。
そこで、本実施形態の家1では、照明のスイッチが表示される非メディア機能領域は、タッチパネルが配置されている領域であれば任意の位置に移動可能とされていえる。これにより、住人は、寝るときに、照明のスイッチが表示される非メディア機能領域を、例えばベッドBEの付近の領域LG2に移動させ、照明を消灯させる目的で、領域LG2内のスイッチを押下することができる。
本実施形態の家1は、領域LG2内のスイッチの押下を検出すると、照明を消灯させる。即ち、本実施形態の家1は、領域LG2内のスイッチの押下を検出すると、天井領域Tの発光を停止させる(又は輝度(照度)を一定以下に落とす)。或いはまた、天井領域Tの電源のON/OFFが他の領域に対して独立してできるならば、天井領域Tの電源をOFF状態にしてもよい。
【0036】
一方、本実施形態の家1において、「球体」の壁1Tの内側面の略全体に貼られたフレキシブル表示デバイスDのうち任意の場所に、メディア機能領域を可変で設けることができる。可変とは、非メディア機能領域と同様に、メディア機能領域自在に移動可能という意味である。
図12の例では、住人がベッドBEで寝ながら映画やスポーツ配信等のコンテンツを視聴可能な領域SGがメディア機能領域の一例として描画されている。
なお、図示はしないが、住人が寝るときには、領域SGを、非メディア機能領域に変更して、壁画像KGや額縁画像を表示させるようにしてもよい。
【0037】
なお、本実施形態の家1において、「球体」の壁1Tの内側面の略全体に貼られたフレキシブル表示デバイスDのうち、上述した領域LG1,LG2,T,SG以外については、壁画像KGが表示される非メディア機能領域として機能している。
【0038】
ここで、メディア機能領域におけるメディアの機能とは、上述したように、情報を記録、伝達(伝達されたものの受取り)、保管等をする機能である。
この情報の伝達(伝達されたものの受取り)という点で、例えば、自然人と情報を授受する(コミュケーションを図る)機能、例えばテレビ電話やWeb会議等の機能を、メディア機能領域において発揮させるようにしてもよい。
【0039】
例えば、メディアが有する情報の伝達(伝達されたものの受取り)という点で、AIやアバタと情報を授受する機能、例えば
図13や
図14に示すような機能を発揮させるようにしてもよい。
【0040】
図13は、
図1乃至
図8の家の内部の様子を示す図であって、「球体」の壁の内側面の略全体に貼られたフレキシブル表示デバイスを用いて、VR執事による生活サポートのサービスを提供する一例を示す図である。
図13に示すように、フレキシブル表示デバイスDのうち位置が可変な領域Hを、実寸大の映像表現によるVR(仮想現実)執事を表示させるメディア機能領域として設けてもよい。位置が可変とは、当該領域HがVR執事としてフレキシブル表示デバイスDの全体(本実施形態の家1の壁1Tの内側面全体)を自在に移動できるという意味である。
これにより、実寸大の映像表現によるVR(仮想現実)執事が快適な生活をサポートする、といったサービスを住人に提供することが可能となる。
【0041】
図14は、
図1乃至
図8の家の内部の様子を示す図であって、「球体」の壁の内側面の略全体に貼られたフレキシブル表示デバイスを用いて、VRペットによる癒しのサービスを提供する一例を示す図である。
図14に示すように、フレキシブル表示デバイスDのうち位置が可変な領域Pを、実寸大の映像表現によるVR(仮想現実)ペットを表示させるメディア機能領域として設けてもよい。位置が可変とは、当該領域PがVRペットとしてフレキシブル表示デバイスDの全体(本実施形態の家1の壁1Tの内側面全体)を自在に移動できるという意味である。
このVRペットは、住人が幼少時代には生まれたばかりの状態として出会い、住人の成長と共に切磋琢磨して一緒に成長していくことができる。また、VRペットと連動した質感と温かみが有る家具(例えばベットBE)を家1内に配置して、当該家具の後方にVRペットを表示させることで、住人がその家具に寝るとVRペットに抱きかかえられているような感覚となり、より一体感のある安らぎの空間を実感することができる。即ち、VRペットが、住人に対してぬくもりと安らぎを与えてくれる。
このように、実寸大の映像表現によるVRペットが癒しを与える、といったサービスを住人に提供することが可能となる。
【0042】
以上説明したように、本実施形態の家1においては、「球体」の壁1Tの内側面の略全体に、自発光するフレキシブル表示デバイスDが貼られている。
これにより、本実施形態の家1は、人が居住する機能と、マルチメディアの機能とを併せ持つことができる。換言すると、本実施形態の家1自体がマルチメディアになる。
その結果、住人は、家1の中に入った瞬間、直感的に強く「未来」を感じることが可能になる。
【0043】
ここで、本実施形態の家1が「未来の家」というためには、上述の家1自体がマルチメディアであるという点は必須であるが、さらに、住人を健康にするという点、及び、帰巣本能を住人に感じさせるという点も併せ持つと好適である。
住人を健康にするという点では、例えば、バイタルサイン等の住人の各種健康状態を検出可能な各種センサと、「球体」の壁1Tの内側面の略全体に貼られたフレキシブル表示デバイスDとを連動させて、予防医療等の各種健康のサービスを住人に提供してもよい。
本実施形態の家1に例えば睡眠センサや体重センサ等のセンサが設置されている場合、これらのセンサの検出結果に基づくアドバイス、例えば風邪を引きそうな兆候等のアドバイスをするコンテンツをフレキシブル表示デバイスDに表示させる、といったサービスを提供することができる。さらに、例えば
図13のVR執事サービスの枠組の中で、VR執事に健康サポーターを兼用させて、これらのアドバイスをさせてもよい。
ここで、各種センサは、上述の例のように本実施形態の家1自体に予め設置されてもよいが、特にこれに限定されず、外部のセンサ(例えば住人が携帯するウェアラブルデバイス等)であってもよい。
【0044】
また、帰巣本能を住人に感じさせるという点では、本実施形態の家1を住人にとってジャストフィットするようにすると好適である。
即ち、住人にとって様々な自分好みのサービスをデータ共有することで最適化して、住民の好みに応じた映像等のコンテンツを、「球体」の壁1Tの内側面の略全体に貼られたフレキシブル表示デバイスDに表示させる、といったサービスを提供することで、住人に対してジャストフィットさせることができる。
【0045】
具体的には例えば、
図15に示すような宿泊サービスを提供することで、自宅以外の場所でも、ユーザに帰巣本能を感じさせて真のリラックス効果を与えることも可能になる。
図15は、
図1乃至
図8の家を利用した宿泊サービスの一例を示す図である。
一般的にユーザは、ホテルがどんなに豪華でどんなに居心地がよくても、帰巣本能という点で、自宅にいるときと比較して真にリラックスを得られないと言われている。
そこで、
図15に示すように、「球体」の壁1Tの内側面の略全体に、自発光するフレキシブル表示デバイスDが貼られている家1として、東京のユーザの自宅1Gと同様に、大阪のホテル1Hを存在させる(そのような宿泊サービスを提供する)。これにより、ユーザは、大阪のホテル1Hにおいても、自宅1Gで愛用しているコンテンツGGをそのまま視聴することができる。その結果、ユーザは、大阪のホテル1Hにおいても、あたかも自宅1Gにいるような気分で、即ち帰巣本能を感じて、真にリラックスして滞在することができるようになる。
【0046】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0047】
例えば、上述の実施形態の家1は、3Dプリンタによって各層毎に材料が配置されることが繰り返されるといった、
図8に示す3Dプリント積層造形工法により生産された。この場合の、3Dプリンタの材料を配置させる層の方向は、上述の実施形態では略垂直方向(z方向)とされたが、特にこれに限定されず、任意の第1方向でよい。この場合、壁を「球体」の形状にするために第1方向の角度を出すためには、第1方向と略90度の第2方向に各層が一定距離ずれていれば足りる。
【0048】
例えば、本発明が適用される家は、3Dプリンタにより生産される家1とされたが特にこれに限定されず、「球体」の壁を有する家であって、当該壁の内側面には、自発光するフレキシブル表示デバイスが略全体に貼られた家でれば足りる。
ここで、「球体」の壁とは、家の底面を含まない意であり、断面図(家の任意の一部を通る垂直面)において壁の中心線が曲線となるものをいう。
【0049】
また、本発明が適用される建築物は、上述の実施形態の家1(
図15の自宅1G)に限定されず、
図15に示すホテル1Hの例があるように、メディアの利用以外を主目的として滞在又は居住する建築物であれば足りる。
ここで、メディアの利用を主目的とする建築物としては、例えば映画館やプラネタリウムが存在する。即ち、映画館やプラネタリウム等ではなく、人が居住する家や、人が宿泊(滞在)するホテルや旅館等の宿泊施設が、本発明が適用される建築物である。
【0050】
以上を換言すると、本発明が適用される建築物は、次のような構成を有していれば足り、各種各様な実施の形態を取ることができる。
即ち、本発明が適用される建築物は、
メディアの利用以外を主目的として滞在又は居住する建築物(例えば
図1乃至
図7の家1)において、
断面図において中心線(例えば
図8の中心線C1)が曲線で示される壁(例えば
図8の「球体」の壁1T)であって、
自発光するフレキシブル表示デバイス(例えば
図8のフレキシブル表示デバイスD)が内側面の略全体に貼られた壁(
図8(B)参照)
を有する建築物であれば足りる。
【0051】
また見方を変えると、本発明が適用される建築物は、本発明が適用される表示装置と把握することもできる。この場合、本発明が適用される表示装置は、次のような構成を有していれば足り、各種各様な実施の形態を取ることができる。
即ち、本発明が適用される表示装置は、
メディアの利用以外を主目的として滞在又は居住する建築物(例えば
図1乃至
図7の家1)のうち、
断面図において中心線(例えば
図8の中心線C2)が曲線で示される壁(例えば
図8の「球体」の壁1T)の内側面の略全体に貼られた(
図8(B)参照)、
自発光するフレキシブル表示デバイス(例えば
図8のフレキシブル表示デバイスD)
を有する表示装置であれば足りる。
【0052】
このような本発明が適用される建築物又は表示装置は、建築物の中を一定以上の明るさかつ安全な状態で維持したまま、自然人が、リアリティに富む映像等の情報を、健全に利用できるマルチメディアとして提供可能になる。
【0053】
ここで、前記建築物は、
当該建築物のデジタルデータに基づいて、3Dプリンタのヘッダから出力されるコンクリート、モルタル又はセラミックの材料を、第1方向(例えばz方向(垂直方向))に積層させていくことで、建築物の少なくとも一部を生産する、建築物の生産方法(例えば
図8の3Dプリント積層造形工法)であって、
前記3Dプリンタが前記材料を配置させる対象の層を対象層として、前記3Dプリンタが、当該対象層の下層に対して、前記第1方向と略90度の第2方向に一定距離ずらして、当該対象層に前記材料を配置する配置ステップを繰り返すことで、
前記第1方向に対して角度を出して、前記建築物の少なくとも一部を生産する、
建築物の生産方法により生産されたものである、
ようにすることができる。
【0054】
このようにして、3Dプリンタを用いて「球体」の壁を有する建築物(家1等)の生産が可能になる。
その結果、従来の建築物の生産や、3Dプリンタを用いた直方体形状の建築物の生産と比較して、自然災害等に耐える強度を維持したうえで、時間(施工期間)及びコストを大幅に削減することができる。
【0055】
また、前記フレキシブル表示デバイスを、壁として機能させる(例えばフレキシブル表示デバイスDを電源OFF時に白色となるように構成したり、
図9に示すように白一色等の壁画像KGをフレキシブル表示デバイスDに表示させる)ことができる。
これにより、フレキシブル表示デバイスが、単なる大きなモニタ画面ではなく、壁として機能するようになる。即ち、フレキシブル表示デバイスを、マルチメディアの機能として利用していないときは、人の滞在又は居住場所として必要な壁として活用することができる。
【0056】
また、前記フレキシブル表示デバイスは、
メディアの機能を発揮する第1領域(例えば上述の「メディア機能領域」)と、
メディア以外の機能を発揮する第2領域(例えば上述の「非メディア機能領域」)と、
を有するようにすることができる(
図12参照)。
【0057】
これにより、フレキシブル表示デバイスに、マルチメディアの機能(例えば映画等のコンテンツを視聴するモニタ等の機能)を発揮させるのと同時に、人が滞在又は居住するために必要な機能(例えば照明として動作する機能や、照明等の設備のスイッチとなるインタフェースとしての機能)を発揮させることができる。
【0058】
前記第2領域は、タッチパネルを有し、前記建築物の設備を住人が操作するための操作子(例えば
図12に示すように、照明のスイッチ)を表示させて、当該設備のインタフェースとなる機能(例えば上述のインタフェース機能)を発揮する領域(例えば
図12の領域LG1,LG2)を含む、
ようにすることができる。
【0059】
これにより、照明等の設備のハードウェアスイッチを壁1Tの内側面に配置する必要が無くなり、フレキシブル表示デバイスDを壁1Tの内側面の全体に無理なく貼ることが可能になる。また、後述するように、インタフェース機能を発揮する領域の配置場所は可変できるので、建築物に滞在又は居住している人にとって便宜である。
【0060】
前記第2領域は、壁の画像(例えば
図12の壁画像KG)を表示させて、壁として機能させる領域を含む、
ようにすることができる。
【0061】
これにより、メディアやインタフェース等の機能を発揮させる領域以外は、壁として機能させることができるので、フレキシブル表示デバイスDを壁1Tの内側面の全体に無理なく貼ることが可能になる。また、従来の家において、映画等を表示させる表示装置(テレビジョン受像機等)や、照明等の設備のハードウェアスイッチ等以外は壁であることに慣れている人にとっても、違和感なく、本発明が適用される建築物又は表示装置が受け入れられる。
【0062】
前記第2領域は、一定以上の照度で発光することにより、照明として機能させる領域(例えば
図12の天井領域T)を含む、
ようにすることができる。
【0063】
これにより、ハードウェア設備としての照明装置を天井に配置する必要が無くなり、フレキシブル表示デバイスDを壁1Tの内側面の全体(
図12の天井領域Tも含めて全体)に無理なく貼ることが可能になる。
【0064】
前記第1領域及び前記第2領域の夫々は、前記フレキシブル表示デバイスにおける配置位置が可変とされている(例えば
図12の例では、照明のスイッチとしてのインタフェース機能を発揮する第2領域(非メディア機能領域)は、ドアDR付近の領域LG1からベッド付近の領域LG2に移動されている)、
ことができる。
【0065】
これにより、建築物に滞在又は居住している人は、照明のスイッチ等の各種インタフェース(インタフェース機能を発揮する第2領域(非メディア機能領域))を好きな場所に持ってきたり、映画等を視聴するモニタ画面(第1領域(メディア機能領域))を好きな場所に移動させることができる。
【0066】
前記フレキシブル表示デバイスは、
前記建築物に滞在又は居住している人が他の対象(
図13の例ではVR執事であり
図14の例ではVRペット)とコミュニケーションを取る機能を有する画像(例えば
図13の例ではVR執事の領域Hであり
図14の例ではVRペットの領域Pである)を表示させる、
ことができる。
【0067】
従来、表示装置(テレビジョン受像機)に表示させる対象は、映画やテレビ番組等のコンテンツであった。このような映像等のコンテンツは飽きると言われている。これに対して、本発明が適用される建築物又は表示装置を利用する人、即ち、建築物に滞在又は居住している人は、映像等のコンテンツを視聴できるのは勿論のこと、他の対象とコミュニケーションを図ることができるので、豊かな滞在又は居住をすることが可能になる。
ここで、コミュニケーション相手(他の対象)としては、自然人は勿論のこと、AIやアバタ等も対象になる。建築物の壁の内側面(フレキシブル表示デバイス)にコミュニケーション相手が表示されることで、日本国の漫画のドラえもん(登録商標)で登場する「どこでもドア(登録商標)」が開いた状態で、その開いた先の空間(実空間であってもよいしVR空間であってもよい)にコミュケーション相手がいるような体感を与えることが可能になる。このような体感を与えることで、飽きさせないコミュニケーションを実現させることができる。
また、コミュニケーション相手として、コンシェルジュ(
図13のVR執事でもよいし、実世界の自然人であってもよい)を採用することで、建築物に滞在又は居住している人は、コンシュルジュから各種各様なアドバイスを受けることができるので、豊かな滞在又は居住をすることが可能になる。
【0068】
前記建築物は複数個存在し、
第1の前記建築物(例えば
図15の自宅1G)において表示された画像(例えば
図15のコンテンツGG)を、第2の前記建築物(例えば
図15のホテル1H)において表示させる、
ことができる。
【0069】
このように、例えば、第1の建築物(例えば
図15の自宅1G)の住人は、第2の建築物(例えば
図15のホテル1H)においても、第1の建築物と同環境で滞在することができる。これにより、住人の帰巣本能を満足させることが可能になる。
【符号の説明】
【0070】
1・・・家、1G・・・自宅、1H・・・ホテル、1T・・・壁、D・・・フレキシブル表示デバイス、LYR-K-1,LYR―K,LYR-K+1・・・層、LG1,LG2,T,SG,H,P・・・フレキシブル表示デバイス内の領域