(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023078138
(43)【公開日】2023-06-06
(54)【発明の名称】出力装置、制御方法、プログラム及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
G01C 21/28 20060101AFI20230530BHJP
G01C 21/34 20060101ALI20230530BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20230530BHJP
G09B 29/10 20060101ALI20230530BHJP
G09B 29/00 20060101ALI20230530BHJP
B60W 60/00 20200101ALI20230530BHJP
B60W 50/00 20060101ALI20230530BHJP
【FI】
G01C21/28
G01C21/34
G08G1/16 C
G09B29/10 A
G09B29/00 A
B60W60/00
B60W50/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025209
(22)【出願日】2023-02-21
(62)【分割の表示】P 2021082518の分割
【原出願日】2018-03-05
(31)【優先権主張番号】P 2017062441
(32)【優先日】2017-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107331
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 聡延
(72)【発明者】
【氏名】加藤 正浩
(57)【要約】 (修正有)
【課題】道路ペイントに関する情報に基づき車両を好適に制御することが可能な出力装置を提供する。
【解決手段】車載機1は、自車位置推定部17と、自動運転制御部18とを有する。自車位置推定部17は、ライダによる道路ペイントの検出結果と地
図DB10との照合を行うことで、自車位置を推定する。自動運転制御部18は、道路ペイント毎の照合の精度を示す検出精度情報Idetを含む路面ペイント情報を地
図DB10から取得する。そして、自動運転制御部18は、検出精度情報Idetに基づき、所定値以上の精度で照合が可能となるように車両を制御するための情報を車両の電子制御装置又は情報出力部16へ出力する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出装置による道路ペイントの検出結果と地図情報との照合を行う照合部と、
道路ペイント毎の前記照合の精度を示す精度情報を取得する第1取得部と、
前記精度情報に基づき、所定値以上の精度で前記照合が可能となるように移動体を制御するための制御情報を出力する出力部と、
を備える出力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両の周辺の地物をレーダやカメラを用いて検出し、その検出結果に基づいて自車位置を高精度に推定することで自動運転を行う技術が知られている。特許文献1には、外界センサの出力に基づき走行中の道路の白線のかすれ具合を判定し、現在の車線よりも高精度に白線を検出することが可能な車線が存在する場合には、当該車線へ車線変更するように車両を制御する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
走行中に白線の状態を外界センサにより計測して監視する態様では、周辺に他車両が存在する場合などに他車線の白線の状態を正確に判定できない場合がある。また、外界センサの計測範囲外にある白線の状態についても把握することができない。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、道路ペイントに関する情報に基づき車両を好適に制御することが可能な出力装置を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、出力装置であって、検出装置による道路ペイントの検出結果と地図情報との照合を行う照合部と、道路ペイント毎の前記照合の精度を示す精度情報を取得する第1取得部と、前記精度情報に基づき、所定値以上の精度で前記照合が可能となるように移動体を制御するための制御情報を出力する出力部と、を備える。
【0007】
請求項12に記載の発明は、出力装置が実行する制御方法であって、検出装置による道路ペイントの検出結果と地図情報との照合を行う照合工程と、道路ペイント毎の前記照合の精度を示す精度情報を取得する第1取得工程と、前記精度情報に基づき、所定値以上の精度で前記照合が可能となるように移動体を制御するための制御情報を出力する出力工程と、を有する。
【0008】
請求項13に記載の発明は、コンピュータが実行するプログラムであって、検出装置による道路ペイントの検出結果と地図情報との照合を行う照合部と、道路ペイント毎の前記照合の精度を示す精度情報を取得する第1取得部と、前記精度情報に基づき、所定値以上の精度で前記照合が可能となるように移動体を制御するための制御情報を出力する出力部として前記コンピュータを機能させる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】車載機の機能的構成を示すブロック図である。
【
図3】地
図DBに含まれる道路ペイント情報のデータ構造の一例である。
【
図4】状態変数ベクトルを2次元直交座標で表した図である。
【
図5】予測ステップと計測更新ステップとの概略的な関係を示す図である。
【
図6】道路ペイント情報に基づく第1車両制御を示すフローチャートである。
【
図7】低検出精度となる道路ペイントが右側に存在する2車線の道路上を走行する車両の俯瞰図である。
【
図8】片側一車線の道路において低検出精度となる道路ペイントが設けられている場合の車両の俯瞰図を示す。
【
図9】低検出精度となる道路ペイントの他の例を示す。
【
図11】道路ペイント情報に基づく第2車両制御を示すフローチャートである。
【
図12】低検出精度となる道路ペイントが左側に存在する2車線の道路上を走行する車両の俯瞰図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の好適な実施形態によれば、出力装置は、検出装置による道路ペイントの検出結果と地図情報との照合を行う照合部と、道路ペイント毎の前記照合の精度を示す精度情報を取得する第1取得部と、前記精度情報に基づき、所定値以上の精度で前記照合が可能となるように移動体を制御するための制御情報を出力する出力部と、を備える。この態様では、出力装置は、検出装置による道路ペイントの検出結果と地図情報との照合を行う場合の道路ペイント毎の精度情報を取得することで、所定値以上の精度で上述の照合が可能となるように移動体を好適に制御することができる。
【0011】
上記出力装置の一態様では、前記出力部は、前記移動体の経路に設けられた道路ペイントから前記照合が前記所定値未満の精度となる低精度道路ペイントを特定し、当該低精度道路ペイントから前記移動体を遠ざけるように前記移動体を制御するための前記制御情報を出力する。この態様により、出力装置は、照合の精度が所定値未満の精度となる道路ペイントを検出しないように車両を好適に移動させることができる。
【0012】
上記出力装置の他の一態様では、前記出力部は、前記精度情報に基づき目的地までの経路を探索し、探索した経路の情報を前記制御情報として出力する。この態様により、出力装置は、道路ペイントの検出結果と地図情報との照合の精度を予め勘案して走行すべき経路を決定することができる。
【0013】
上記出力装置の他の一態様では、前記出力部は、前記所定値以上の精度で前記照合が可能な経路を、推奨する経路として表示部に表示させるための前記制御情報を出力する。この態様により、出力装置は、道路ペイントの検出結果と地図情報との照合を所定値以上の精度で実行可能な経路を、推奨経路としてユーザに好適に提示することができる。
【0014】
上記出力装置の他の一態様では、前記出力部は、前記移動体の経路に設けられた道路ペイントから前記照合が前記所定値以上の精度となる道路ペイントを特定し、当該道路ペイントに前記移動体を近づけるように前記移動体を制御するための前記制御情報を出力する。この態様により、出力装置は、より精度の高い照合を可能とするために、照合の精度が所定値未以上の精度となる道路ペイントに近づけるように車両を好適に移動させることができる。
【0015】
上記出力装置の他の一態様では、前記移動体の進行方向に対する第1方向及び第2方向のそれぞれの位置推定誤差を所定の閾値と比較し、前記位置推定誤差が前記閾値よりも大きい方向を検出する検出部と、前記検出部により検出された方向の位置推定の基準として、前記道路ペイントが使用される場合の適性度を示す適性度情報を、前記道路ペイントごとに取得する第2取得部と、を備え、前記出力部は、前記精度情報及び前記適性度情報に基づいて前記高精度道路ペイントを特定する。この態様により、出力装置は、位置推定誤差が閾値よりも大きいと判定された方向の位置推定の基準としての適性度が高い道路ペイントに近づけるように車両を好適に移動させることができる。
【0016】
上記出力装置の他の一態様では、出力装置は、前記照合の結果に基づき、前記移動体の位置推定を行う位置推定部をさらに備える。この態様により、出力装置は、照合の精度情報を利用し、位置推定精度を所定の水準に保つように車両を制御することができる。
【0017】
上記出力装置の他の一態様では、前記出力部は、前記位置推定部による前記位置推定の精度に基づき、前記照合が前記所定値未満の精度となる道路ペイントから前記移動体を遠ざける制御の要否を判定する。この態様により、出力装置は、照合の精度が所定値未満の精度となる道路ペイントを回避するように車両を移動させることの要否を的確に判定することができる。
【0018】
上記出力装置の他の一態様では、前記位置推定部は、前記照合が前記所定値未満の精度となる道路ペイントが前記検出装置による検出範囲に含まれる場合、前記照合の結果による前記位置推定への反映の重み付けを小さくする。この態様により、出力装置は、照合の精度が所定値未満の精度となる道路ペイントを対象とした照合結果に基づき位置推定精度が低下するのを好適に低減することができる。
【0019】
上記出力装置の他の一態様では、前記精度情報において前記照合の精度が前記所定値未満となる道路ペイントは、複合的な線により表わされた区画線である。複合的な線により表わされた区画線は、検出装置による検出結果と地図情報との間で誤差が生じやすい。よって、好適には、精度情報では、複合的な線により表わされた区画線は、照合の精度が所定値未満となる道路ペイントとして記録される。
【0020】
上記出力装置の他の一態様では、前記精度情報において前記照合の精度が前記所定値未満となる道路ペイントは、かすれが生じている道路ペイントである。かすれが生じている道路ペイントは、検出装置による検出精度が低下するため、検出装置による検出結果と地図情報との間で誤差が生じやすい。よって、好適には、精度情報では、かすれが生じている道路ペイントは、照合の精度が所定値未満となる道路ペイントとして記録される。
【0021】
本発明の他の好適な実施形態によれば、出力装置が実行する制御方法であって、検出装置による道路ペイントの検出結果と地図情報との照合を行う照合工程と、道路ペイント毎の前記照合の精度を示す精度情報を取得する第1取得工程と、前記精度情報に基づき、所定値以上の精度で前記照合が可能となるように移動体を制御するための制御情報を出力する出力工程と、を有する。出力装置は、この制御方法を実行することで、所定値以上の精度で上述の照合が可能となるように移動体を好適に制御することができる。
【0022】
本発明の他の好適な実施形態によれば、コンピュータが実行するプログラムであって、検出装置による道路ペイントの検出結果と地図情報との照合を行う照合部と、道路ペイント毎の前記照合の精度を示す精度情報を取得する第1取得部と、前記精度情報に基づき、所定値以上の精度で前記照合が可能となるように移動体を制御するための制御情報を出力する出力部としてコンピュータを機能させる。出力装置は、このプログラムを実行することで、所定値以上の精度で上述の照合が可能となるように移動体を好適に制御することができる。好適には、上記プログラムは、記憶媒体に記憶される。
【実施例0023】
以下、図面を参照して本発明の好適な各実施例について説明する。
[概略構成]
【0024】
図1は、本実施例に係る運転支援システムの概略構成図である。
図1に示す運転支援システムは、車両に搭載され、車両の運転支援に関する制御を行う車載機1と、ライダ(Lidar:Light Detection and Ranging、または、Laser Illuminated Detection And Ranging)2と、ジャイロセンサ3と、車速センサ4と、GPS受信機5とを有する。
【0025】
車載機1は、ライダ2、ジャイロセンサ3、車速センサ4、及びGPS受信機5と電気的に接続し、これらの出力に基づき、車載機1が搭載される車両の位置(「自車位置」とも呼ぶ。)の推定を行う。そして、車載機1は、自車位置の推定結果に基づき、設定された目的地への経路に沿って走行するように、車両の自動運転制御などを行う。車載機1は、道路データ及び道路に設けられた目印となる地物に関する情報を記憶した地図データベース(DB:DataBase)10を記憶する。上述の目印となる地物は、例えば、道路脇に周期的に並んでいるキロポストや標識などの立体物の他、区画線や道路標示などの道路ペイントも含まれる。そして、車載機1は、ライダ2等の出力を地
図DB10に登録された情報と照合させて自車位置の推定を行う。
【0026】
ライダ2は、水平方向および垂直方向の所定の角度範囲に対してパルスレーザを出射することで、外界に存在する物体までの距離を離散的に測定し、当該物体の位置を示す3次元の点群情報を生成する。この場合、ライダ2は、照射方向を変えながらレーザ光を照射する照射部と、照射したレーザ光の反射光(散乱光)を受光する受光部と、受光部が出力する受光信号に基づくスキャンデータ(点群データ)を出力する出力部とを有する。スキャンデータは、受光部が受光したレーザ光に対応する照射方向と、上述の受光信号に基づき特定される当該レーザ光の応答遅延時間とに基づき生成される。一般的に、対象物までの距離が近いほどライダの距離測定値の精度は高く、距離が遠いほど精度は低い。なお、道路ペイントは、他の路面の領域と反射率が異なるため、反射光の光量に応じた受光信号のレベルに基づき道路ペイントの点群データを識別することが可能である。本実施例では、ライダ2は、少なくとも走行中の道路の路面をスキャンするように設置されているものとする。ライダ2、ジャイロセンサ3、車速センサ4、GPS受信機5は、それぞれ、出力データを車載機1へ供給する。なお、車載機1は、本発明における「出力装置」の一例であり、ライダ2は、本発明における「検出装置」の一例である。
【0027】
図2は、車載機2の機能的構成を示すブロック図である。車載機2は、主に、インターフェース11と、記憶部12と、入力部14と、制御部15と、情報出力部16と、を有する。これらの各要素は、バスラインを介して相互に接続されている。
【0028】
インターフェース11は、ライダ2、ジャイロセンサ3、車速センサ4、及びGPS受信機5などのセンサから出力データを取得し、制御部15へ供給する。また、インターフェース11は、制御部15が生成した車両の走行制御に関する信号を車両の電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit)へ供給する。制御部15からインターフェース11を介して車両の電子制御装置へ送信される信号は、本発明における「制御情報」の一例である。
【0029】
記憶部12は、制御部15が実行するプログラムや、制御部15が所定の処理を実行するのに必要な情報を記憶する。本実施例では、記憶部12は、道路ペイント情報を含む地
図DB10を記憶する。
【0030】
図3は、道路ペイント情報のデータ構造の一例を示す。道路ペイント情報は、例えば、道路ペイントが設けられた道路の道路データと関連付けられた情報である。
図3の例では、道路ペイント情報は、個々の道路ペイントを識別するための識別情報と、道路ペイントの位置を示す位置情報と、道路ペイントをライダ2などの外界センサにより検出する際の検出精度に関する情報(「検出精度情報Idet」とも呼ぶ。)と、道路ペイントの、車両の進行方向および進行方向に垂直な方向(「側面方向」とも呼ぶ。)のそれぞれの自車位置推定の基準としての適性度を示す情報(「適性方向情報Sdi」とも呼ぶ。)を含む。
【0031】
ここで、検出精度情報Idetが示す道路ペイントの検出精度は、ライダ2の出力に基づき特定する道路ペイントの位置と、地
図DB10に基づき特定する道路ペイントの位置との照合の精度を示す。検出精度情報Idetが示す検出精度が悪い道路ペイントの例は、道路ペイントがかすれて検出しにくい状態の道路ペイントに加え、複合的な線により表わされた例外的な形状を有している道路ペイントも含まれる。後者の道路ペイントは、後述するように、ライダ2の出力に基づき特定する道路ペイントの位置と地
図DB10に基づき特定する道路ペイントの位置とにずれが生じやすい道路ペイントである。検出精度情報Idetは、検出精度が低い道路ペイントか否かを示すフラグ情報であってもよく、検出精度の程度を段階的に示す数値情報であってもよい。前者の場合、検出精度情報Idetは、検出精度が低い道路ペイントの道路ペイント情報のみに含まれていてもよい。また、検出精度情報Idetは、検出精度を直接的に示す情報に限らず、検出精度を間接的に示す情報であってもよい。後者の場合、検出精度情報は、複合的な形状を有する道路ペイントであるか否かを示す道路ペイントの種別の情報であってもよい。
【0032】
また、適性方向情報Sdiは、車載機2が、ライダ2により検出された道路ペイントの位置を地
図DB10に登録された当該道路ペイントの位置情報と照合させて自車位置の推定を行う場合において、車両の進行方向および側面方向のそれぞれの自車位置推定の基準として使用する際の当該道路ペイントの適性度を示す情報であって、道路ペイントの延伸方向等の路面上の形状に基づいて予め設定された情報である。具体的には、例えば、一時停止線は、車両の側面方向に延伸しているため、車両の進行方向の自車位置推定の基準としては最適であるが、車両の側面方向の自車位置推定の基準としては不適である。また、実線の区画線は、車両の進行方向に連続的に延伸しているため、車両の側面方向の自車位置推定の基準としては最適であるが、車両の進行方向の自車位置推定の基準としては不適である。また、破線の区画線は、車両の進行方向に非連続的に延伸しているため、実線の区画線よりも劣るものの、車両の側面方向の自車位置推定の基準として好適であり、破線の端部を車両の進行方向の自車位置推定の基準として利用できるため、車両の進行方向の自車位置推定の基準としても好適である。これらの例のように、適性方向情報Sdiとして、道路ペイントごとに、車両の進行方向および側面方向のそれぞれの自車位置推定の基準としての適性度を示す情報が記憶される。適性方向情報Sdiは、適性度が低い道路ペイントか否かを示すフラグ情報であってもよく、適性度を段階的に示す数値情報であってもよい。前者の場合、適性方向情報Sdiは、適性度が低い道路ペイントの道路ペイント情報のみに含まれていてもよい。また、適性方向情報Sdiは、適性度を直接的に示す情報に限らず、適性度を間接的に示す情報であってもよい。後者の場合、適性方向情報Sdiは、道路ペイントの種別を示す情報であってもよい。
【0033】
なお、地
図DB10は、定期的に更新されてもよい。この場合、例えば、制御部15は、図示しない通信部を介し、地図情報を管理するサーバ装置から、自車位置が属するエリアに関する部分地図情報を受信し、地
図DB10に反映させる。
【0034】
再び
図2を参照して車載機2の構成について説明する。入力部14は、ユーザが操作するためのボタン、タッチパネル、リモートコントローラ、音声入力装置等であり、経路探索のための目的地を指定する入力、自動運転のオン及びオフを指定する入力などを受け付ける。情報出力部16は、例えば、制御部15の制御に基づき出力を行うディスプレイやスピーカ等である。情報出力部16は、本発明における「表示部」の一例である。
【0035】
制御部15は、プログラムを実行するCPUなどを含み、車載機1の全体を制御する。本実施例では、制御部15は、自車位置推定部17と、自動運転制御部18とを有する。制御部15は、本発明における「照合部」、「第1取得部」、「第2取得部」、「位置推定部」、「出力部」、「検出部」及びプログラムを実行する「コンピュータ」の一例である。
【0036】
自車位置推定部17は、道路ペイントなどの地物に対するライダ2による距離及び角度の計測値と、地
図DB10から抽出した地物の位置情報とに基づき、ジャイロセンサ3、車速センサ4、及び/又はGPS受信機5の出力データから推定した自車位置を補正する。本実施例では、一例として、自車位置推定部17は、ベイズ推定に基づく状態推定手法に基づき、ジャイロセンサ3、車速センサ4等の出力データから自車位置を推定する予測ステップと、直前の予測ステップで算出した自車位置の推定値を補正する計測更新ステップとを交互に実行する。
【0037】
自動運転制御部18は、地
図DB10を参照し、設定された経路と、自車位置推定部17が推定した自車位置とに基づき、自動運転制御に必要な信号を車両に送信する。自動運転制御部18は、設定された経路に基づき、目標軌道を設定し、自車位置推定部17が推定した自車位置が目標軌道から所定幅以内のずれ幅となるように、車両に対してガイド信号を送信して車両の位置を制御する。
【0038】
ここで、自車位置推定部17による自車位置の推定処理について補足説明する。自車位置推定部17は、予測ステップと計測更新ステップを逐次的に繰返して自車位置推定を行う。これらのステップで用いる状態推定フィルタは、ベイズ推定を行うように開発された様々のフィルタが利用可能であり、例えば、拡張カルマンフィルタ、アンセンテッドカルマンフィルタ、パーティクルフィルタなどが該当する。このように、ベイズ推定に基づく位置推定は、種々の方法が提案されている。以下では、一例として拡張カルマンフィルタを用いた自車位置推定について簡略的に説明する。
【0039】
図4は、状態変数ベクトルxを2次元直交座標で表した図である。
図4に示すように、xyの2次元直交座標上で定義された平面での自車位置は、座標「(x、y)」、自車の方位「θ」により表される。ここでは、方位θは、車の進行方向とx軸とのなす角として定義されている。座標(x、y)は、例えば緯度及び経度の組合せに相当する絶対位置を示す。
【0040】
図5は、予測ステップと計測更新ステップとの概略的な関係を示す図である。
図5に示すように、予測ステップと計測更新ステップとを繰り返すことで、状態変数ベクトルXの推定値の算出及び更新を逐次的に実行する。ここでは、計算対象となる基準時刻(即ち現在時刻)「t」の状態変数ベクトルを、「X
-
t」または「X
^
t」と表記している。(「状態変数ベクトルX
t=(x
t、y
t、θ
t)
T」と表記する。)なお、予測ステップで推定された暫定的な推定値には当該推定値を表す文字の上に「
-」を付し、計測更新ステップで更新された,より精度の高い推定値には当該値を表す文字の上に「
^」を付す。
【0041】
予測ステップでは、自車位置推定部17は、直前の計測更新ステップで算出された時刻t-1の状態変数ベクトルX^
t-1に対し、車両の移動速度「v」と角速度「ω」(これらをまとめて「制御値ut=(vt、ωt)T」と表記する。)を作用させることで、時刻tの自車位置の推定値(「事前推定値」とも呼ぶ。)X-
tを算出する。また、これと同時に、自車位置推定部17は、事前推定値X-
tの誤差分布に相当する共分散行列「Σ-
t」を、直前の計測更新ステップで算出された時刻t-1での共分散行列「Σ^
t-1」から算出する。
【0042】
また、計測更新ステップでは、自車位置推定部17は、地
図DB10に登録された地物の位置ベクトルとライダ2のスキャンデータとの対応付けを行う。そして、自車位置推定部17は、この対応付けができた場合に、対応付けができた地物のライダ2による計測値「Z
t」と、事前推定値X
-
t及び地
図DB10に登録された地物の位置ベクトルを用いてライダ2による計測処理をモデル化して求めた地物の計測推定値「Z
^
t」とをそれぞれ取得する。計測値Z
tは、時刻tにライダ2が計測した地物の距離及びスキャン角度を表す2次元ベクトルである。そして、自車位置推定部17は、以下の式(1)に示すように、計測値Z
tと計測推定値Z
^
tとの差分にカルマンゲイン「K
t」を乗算し、これを事前推定値X
-
tに加えることで、更新された状態変数ベクトル(「事後推定値」とも呼ぶ。)X
^
tを算出する。
X
^
t=X
-
t+K
t(Z
t-Z
^
t) 式(1)
【0043】
また、計測更新ステップでは、自車位置推定部17は、予測ステップと同様、事後推定値X^
tの誤差分布に相当する共分散行列Σ^
tを事前共分散行列Σ-
tから求める。カルマンゲインKt等のパラメータについては、例えば拡張カルマンフィルタを用いた公知の自己位置技術と同様に算出することが可能である。
【0044】
ここで、検出精度情報Idetが示す検出精度が低い道路ペイントを基準として式(1)から事後推定値X
^
tを算出する場合、ライダ2の出力2に基づく計測値Z
tと地
図DB10に登録された地物の位置ベクトルを用いて求めた計測推定値Z
^
tとの差が大きくなる。即ち、この場合、式(1)においてカルマンゲインK
tを乗じる差分「Z
t-Z
^
t」が大きくなる。この場合、式(1)により求められる事後推定値X
^
tの推定精度が低くなる。
【0045】
以上を勘案し、自動運転制御部18は、検出精度情報Idetが示す検出精度が低い道路ペイントを基準として位置推定を行うのを回避するように車両を制御する。これにより、自動運転制御部18は、位置推定精度が低下するのを好適に抑制する。具体的な制御方法については、以下の[道路ペイント情報に基づく第1車両制御]、および[道路ペイント情報に基づく第2車両制御]のセクションで詳しく説明する。
【0046】
[道路ペイント情報に基づく第1車両制御]
道路ペイント情報に基づく第1車両制御は、車両が低検出精度となる道路ペイントが設けられる車線を走行する場合に、当該車線とは異なる車線に車線変更するように目標軌道を修正するものである。
【0047】
(1-1)
処理フロー
図6は、自動運転制御部18が実行する道路ペイント情報に基づく第1車両制御を示すフローチャートである。
図6のフローチャートでは、自動運転制御部18は、道路ペイント情報の検出精度情報Idetに基づき検出精度が低いと判断される道路ペイントが目標軌道の近傍に存在する場合に、予め設定されていた車両の目標軌道を修正する。なお、
図6のフローチャートの実行時には、自動運転制御部18は、設定された目的地への経路に沿った車両の目標軌道を設定しているものとする。
【0048】
まず、自動運転制御部18は、現在の位置推定精度が所定値よりも悪いか否か判定する(ステップS100)。例えば、自動運転制御部18は、拡張カルマンフィルタに基づく位置推定の算出過程で得られる誤差の共分散行列に基づき特定される誤差楕円の長径が所定長より長い場合に、現在の位置推定精度が所定値よりも悪いと判定する。そして、自動運転制御部18は、現在の位置推定精度が所定値よりも悪い場合(ステップS100;Yes)、ステップS101へ処理を進める。一方、自動運転制御部18は、現在の位置推定精度が所定値よりも悪くない場合(ステップS100;No)、フローチャートの処理を終了する。
【0049】
自動運転制御部18は、現在の位置推定精度が所定値よりも悪い場合、目的地までの経路を構成する道路の道路データに関連付けられた道路ペイント情報を地
図DB10から取得する(ステップS101)。この場合、自動運転制御部18は、例えば、現在位置から所定距離以内に存在する経路上の道路に対応する道路ペイント情報を地図データ10から取得する。
【0050】
そして、自動運転制御部18は、検出精度情報Idetが示す検出精度が所定の閾値よりも低い検出精度(単に「低検出精度」とも呼ぶ。)となる道路ペイントが目標軌道の近傍(例えば目標軌道と同一車線)に存在するか否か判定する(ステップS102)。上述の閾値は、例えば、自車位置推定部17による位置推定の精度低下の有無を勘案して実験等に基づき予め定められ、記憶部12等に予め記憶される。
【0051】
そして、自動運転制御部18は、検出精度情報Idetが示す検出精度が低検出精度となる道路ペイントが目標軌道の近傍に存在すると判断した場合(ステップS102;Yes)、自車位置推定に反映する際の地
図DB10との照合結果に対する重み付けを下げる(ステップS103)。例えば、自動運転制御部18は、低検出精度となる道路ペイントがライダ2の計測範囲内となる可能性がある走行区間では、式(1)の「K
t(Z
t-Z
^
t)」に対して1未満の所定の係数を乗じる。このように、ステップS103では、自動運転制御部18は、低検出精度となる道路ペイントが仮にライダ2の計測範囲内となる場合であっても、位置推定精度の低下を好適に低減することができる。
【0052】
次に、自動運転制御部18は、低検出精度となる道路ペイントを回避するように車両の目標軌道を修正する(ステップS104)。具体的には、自動運転制御部18は、低検出精度となる道路ペイントが設けられる車線とは異なる車線に車線変更するように目標軌道を修正する。他の例では、自動運転制御部18は、走行中の一車線道路の片側に低検出精度となる区画線が設けられている場合には、当該区画線と反対側の区画線に走行位置を偏らせるように車線内における目標軌道を修正する。このように、自動運転制御部18は、低検出精度となる道路ペイントから車両を遠ざけるように制御することで、低検出精度となる道路ペイントを基準として位置推定を行うのを好適に防ぐことができる。
【0053】
(1-2)
具体例
図7は、低検出精度となる複合的な道路ペイントが右側に存在する2車線の道路50上を走行する車両の俯瞰図である。
図7の例では、道路50とその反対方向の道路51とを区画する単一区画線61及び複合区画線62が存在する。ここで、単一区画線61は、白線のみから構成される区画線であり、複合区画線62は、オレンジ線と白線とを含む複合的な区画線である。ここで、複合区画線62では、オレンジ線の両側にオレンジ線を強調するための櫛歯形状の白線が設けられている。また、破線「Lt」は、自動運転制御部18が設定する車両の目標軌道を示す。
【0054】
ここで、複合区画線62では、櫛歯形状の白線がオレンジ線の両側に設けられていることから、複合区画線62をライダ2により検出する場合には、オレンジ線の点群データに加えて、両側の櫛歯形状の白線の点群データも得られる。また、一般に、位置推定処理においてライダ2による地物の計測位置(
図5における計測値z)を決定する場合、自車位置推定部17は、対象の地物の点群データが示す車両を基準とした2次元座標の重心座標を算出する。この場合、複合区画線62を用いた位置推定では、道路の幅方向においてばらつきが多い点群データがライダ2から得られることになり、道路の幅方向においてばらつきが多い点群データから計測位置(
図5における計測値z)を決定することになる。この場合、ライダ2により計測した複合区画線62の位置座標を示す計測値zは、相対的に精度が低くなる。従って、
図7の例では、複合区画線62に対応する道路ペイント情報の検出精度情報Idetが示す検出精度は、単一区画線61及び他の区画線63、64に対応する道路ペイント情報の検出精度情報Idetが示す検出精度よりも低い低検出精度に設定されている。
【0055】
この場合、自動運転制御部18は、車両が走行中の道路50に関連付けられた道路ペイント情報を地
図DB10から参照し、複合区画線62に対応する道路ペイント情報の検出精度情報Idetが示す検出精度が所定の閾値よりも低い低検出精度であると判定する。従って、この場合、自動運転制御部18は、複合区画線62を基準として位置推定を行うのを避けるため、複合区画線62と近接しない道路50の左車線へ車線変更するように目標軌道(破線Lt参照)を設定する。そして、破線Ltが示す目標軌道に従い車両を走行させた場合、複合区画線62の横を通過する際に区画線63、64が最も近い区画線となる。よって、この場合、自車位置推定部17は、区画線63又は/及び区画線64を基準として位置推定を行い、車両の側面方向での位置精度を高水準に保つことができる。
【0056】
図8は、片側一車線の道路において低検出精度となる道路ペイントが設けられている場合の車両の俯瞰図を示す。
図8の例では、一車線の道路53とその反対方向の道路54との間には、単一区画線66及び複合区画線67が設けられている。単一区画線66は、白線のみから構成され、複合区画線67は、白線及びオレンジ線から構成される。
【0057】
図8では、複合区画線67をライダ2により検出する場合、白線の点群データに加えて、オレンジ線の点群データも得られる。この場合、複合区画線67の点群データとして道路の幅方向においてばらつきが多い点群データがライダ2から得られることになり、複合区画線67に対する計測値zは、相対的に精度が低くなる。従って、
図8の例では、複合区画線67に対応する道路ペイント情報の検出精度情報Idetが示す検出精度は、低検出精度に設定されている。
【0058】
この場合、自動運転制御部18は、車両が走行中の道路53に関連付けられた道路ペイント情報を地
図DB10から参照し、複合区画線67に対応する道路ペイント情報の検出精度情報Idetが示す検出精度が所定の閾値よりも低い低検出精度であると判定する。従って、この場合、自動運転制御部18は、複合区画線67を基準として位置推定を行うのを避けるため、道路53内において複合区画線67よりも区画線68に偏った位置を走行するように目標軌道(破線Lt参照)を設定する。そして、破線Ltが示す目標軌道に従い車両を走行させた場合、複合区画線67の横を通過する際に区画線68が最も近い区画線となる。よって、この場合、自車位置推定部17は、区画線68を基準として位置推定を行い、車両の側面方向での位置精度を高水準に保つことができる。
【0059】
図9(A)は、検出精度情報Idetの検出精度が低検出精度となる道路ペイントの他の例を示す。
図9(A)では、道路55及びその反対車線の道路56との間に複合区画線69が設けられている。複合区画線69は、道路55に沿って徐々に幅が広がっている。このような複合区画線69についても、道路ペイント情報の検出精度情報Idetが示す検出精度は低検出精度に設定される。
【0060】
図9(B)は、道路標示70~73が設けられた2車線の道路57を示す。
図9(B)の例では、道路57の左車線に設けられた道路標示70、71についてはかすれが生じておらず、道路57の右車線に設けられた道路標示72、73についてはかすれが生じている。そして、道路標示72、73の道路ペイント情報には、低い検出精度であることを示す検出精度情報Idetが登録されている。従って、
図9(B)の例では、自動運転制御部18は、車両が道路57を通過する場合、道路標示70~73の道路ペイント情報の検出精度情報Idetに基づき、道路標示72、73が設けられた車線を避けるべきと判断する。そして、自動運転制御部18は、検出精度情報Idetが示す検出精度が所定の閾値以上となる道路標示70、71が設けられた左車線を走行するように目標軌道を設定する。
【0061】
(1-3)経路探索への応用
自動運転制御部18は、目的地への経路探索において、道路ペイント情報の検出精度情報Idetを参照し、低検出精度となる道路ペイントを避けるように経路探索を行ってもよい。
【0062】
この場合、自動運転制御部18は、例えば、ダイクストラ法に基づき、所要時間や距離などに応じて道路ごとに算出するリンクコストの合計が最小となる経路を探索する。このとき、自動運転制御部18は、所要時間や距離に加えて、検出精度情報Idetが示す検出精度に基づくコストをリンクコストに加算する。この場合、検出精度情報Idetに基づき加算するコストは、例えば、検出精度情報Idetが示す検出精度が低いほど高く設定される。このようにすることで、自動運転制御部18は、検出精度情報Idetが示す検出精度が高い道路から構成される経路を好適に探索することができる。また、自動運転制御部18は、低検出精度となる道路ペイントを含む道路に対応するリンクコストに対し、所要時間や距離などに対するコストよりも大幅に大きいコストを加算することで、低検出精度となる道路ペイントを有する道路を実質的に回避した経路を探索することも可能である。
【0063】
図10は、情報出力部16が表示する経路選択画面を概略的に示した図である。
図10の例では、自動運転制御部18は、ユーザ入力に基づき指定された目的地等に基づき、検出精度情報Idetを勘案しない通常の経路探索に基づく推奨経路(「検出精度未考慮経路」とも呼ぶ。)83と、検出精度情報Idetを考慮した経路探索に基づく推奨経路(「検出精度考慮経路」とも呼ぶ。)84とをそれぞれ探索し、経路探索画面上に表示している。また、
図10では、自動運転制御部18は、検出精度未考慮経路83上において、低検出精度となる道路ペイントを含む道路区間である低検出精度区間を破線により明示している。なお、
図10において、マーク81は目的地を示し、マーク82は現在位置を示す。
【0064】
図10の例では、検出精度未考慮経路83には、低検出精度となる道路ペイントを含む道路区間である低検出精度区間が含まれており、当該区間において位置推定精度が低くなる可能性がある。一方、検出精度考慮経路84には、低検出精度区間が存在しないため、検出精度考慮経路84を走行する経路として選択した場合には、道路ペイントを基準とした位置推定を好適に実行することが可能である。このように、自動運転制御部18は、経路探索において道路ペイント情報を用いることで、低検出精度となる道路ペイントを含む道路区間を回避した経路を、走行する経路としてユーザに好適に選択させることができる。
【0065】
[道路ペイント情報に基づく第2車両制御]
道路ペイント情報に基づく第2車両制御は、進行方向または側面方向の位置推定誤差が所定の閾値よりも大きい場合に、道路ペイント情報に含まれる検出精度情報Idetおよび適性方向情報Sdiに基づいて、当該誤差が大きい方向の自車位置推定の基準として適した道路ペイントを所定の基準で検索し、当該自車位置推定の基準として適した道路ペイントに接近するように目標軌道を修正するものである。
【0066】
(2-1)
処理フロー
図11は、自動運転制御部18が実行する道路ペイント情報に基づく第2車両制御を示すフローチャートである。
図11のフローチャートでは、自動運転制御部18は、道路ペイント情報の検出精度情報Idet、および適性方向情報Sdiに基づいて自車位置推定の誤差が大きい方向の自車位置推定の基準として適した道路ペイントを検索し、当該適した道路ペイントが目標軌道の近傍に存在する場合に、予め設定されていた車両の目標軌道を修正する。なお、
図11のフローチャートの実行時には、自動運転制御部18は、設定された目的地への経路に沿った車両の目標軌道を設定しているものとする。
【0067】
まず、自動運転制御部18は、車両の進行方向及び側面方向における位置推定の誤差を特定する(ステップS201)。例えば、自動運転制御部18は、拡張カルマンフィルタに基づく位置推定の算出過程で得られる誤差の共分散行列に対して自車の方位θを用いた回転行列による変換を行うことで、車両の進行方向及び側面方向における位置推定の誤差をそれぞれ特定する。
【0068】
次に、自動運転制御部18は、自車位置推定部17の進行方向における位置推定精度と、側面方向における位置推定精度をそれぞれ監視する。そして、自動運転制御部18は、位置推定精度が低い方向(「低位置精度方向Dtag」とも呼ぶ。)が存在するか否かを判定する(ステップS202)。例えば、自動運転制御部18は、ステップS201で特定した進行方向及び側面方向のそれぞれにおける位置推定誤差を所定の閾値と比較し、位置推定誤差が所定の閾値よりも大きい方向を低位置精度方向Dtagとして検出する。そして、低位置精度方向Dtagが検出されたか否かを判定する。ここで、車両の進行方向及び側面方向は、本発明における「第1方向」及び「第2方向」の一例である。
【0069】
ステップS202において、自動運転制御部18は、低位置精度方向Dtagが存在しないと判断した場合(ステップS202;No)、車両の目標軌道を修正する必要がないと判断し、フローチャートの処理を終了する。一方、自動運転制御部18は、低位置精度方向Dtagが存在すると判断した場合(ステップS202;Yes)、目的地までの経路を構成する道路の道路データに関連付けられた道路ペイント情報を地
図DB10から取得する(ステップS203)。この場合、自動運転制御部18は、例えば、現在位置から所定距離以内に存在する経路上の道路に対応する道路ペイント情報を地
図DB10から取得する。
【0070】
そして、自動運転制御部18は、低位置精度方向Dtagの自車位置推定の基準として適した道路ペイントが目標軌道の近傍に存在する否かを判定する(ステップS204)。この場合、自動運転制御部18は、目標軌道の近傍の道路ペイントのうちから、道路ペイント情報に含まれる検出精度情報Idet、および適性方向情報Sdiに基づいて、所定の基準よりも低検出精度と判定される道路ペイント、および低位置精度方向Dtagの自車位置推定の基準として所定の基準よりも不適と判定される道路ペイントを除外して低位置精度方向Dtagの自車位置推定の基準として適した道路ペイントを検索し、検索の結果、低位置精度方向Dtagの自車位置推定の基準として適した道路ペイントが目標軌道の近傍に存在するかを判定する。
【0071】
そして、自動運転制御部18は、低位置精度方向Dtagの自車位置推定の基準として適した道路ペイントが目標軌道の近傍に存在すると判断した場合(ステップS204;Yes)、当該道路ペイントに接近するように車両の目標軌道を修正する(ステップS205)。具体的には、自動運転制御部18は、基準として適した道路ペイントが設けられる車線に車線変更するように目標軌道を修正する。自車位置推定の基準として適した道路ペイントが複数存在する場合には、自動運転制御部18は、より適性度の高い道路ペイントが設けられる車線に車線変更するように目標軌道を修正してもよいし、元の目標軌道に近い方の道路ペイントが設けられる車線に車線変更するように目標軌道を修正してもよい。他の例では、自動運転制御部18は、走行中の一車線道路の片側に基準として適した区画線が設けられている場合には、当該区画線側に走行位置を偏らせるように車線内における目標軌道を修正する。一方、ステップS204において、自動運転制御部18は、低位置精度方向Dtagが存在しないと判断した場合(ステップS204;No)、車両の目標軌道を修正する必要がないと判断し、フローチャートの処理を終了する。
【0072】
このように、自動運転制御部18は、低位置精度方向Dtagの自車位置推定の基準として適した道路ペイントが目標軌道の近傍に存在する場合に、当該道路ペイントに車両が接近するように制御することで、当該道路ペイントを基準として位置推定を好適に行うことができる。
【0073】
なお、道路ペイント情報に基づく第2車両制御においても道路ペイント情報に基づく第1車両制御と同様に、自動運転制御部18は、検出精度情報Idetが示す検出精度が低検出精度となる道路ペイントが目標軌道の近傍に存在すると判断した場合に、自車位置推定に反映する際の地
図DB10との照合結果に対する重み付けを下げることで、低検出精度となる道路ペイントが仮にライダ2の計測範囲内となる場合であっても、位置推定精度の低下を好適に低減するようにしてもよい。
【0074】
(2-2)
具体例
図12は、低検出精度となる道路ペイントが左側に存在する2車線の道路90上を走行する車両の俯瞰図である。
図12の例では、道路90とその反対方向の道路91とを区画する区画線である実線93、道路90内を区画する区画線である破線92、道路90の左端の区画線である実線94が存在する。ここで、実線94にはかすれが生じているものとする。また、破線「Lt」は、自動運転制御部18が設定する車両の目標軌道を示す。
【0075】
実線94にはかすれが生じているため、実線94に対応する道路ペイント情報の検出精度情報Idetが示す検出精度は、破線92及び実線93に対応する道路ペイント情報の検出精度情報Idetが示す検出精度よりも低い低検出精度に設定されている。また、実線93及び実線94は、車両の進行方向に連続的に延伸しているため、実線93及び実線94に対応する道路ペイント情報の適性方向情報Sdiには、車両の側面方向の自車位置推定の基準としての適性度が最適であり、車両の進行方向の自車位置推定の基準としての適性度が不適であることを示す情報が設定されている。また、破線92は、車両の進行方向に非連続的に延伸しているため、破線92に対応する道路ペイント情報の適性方向情報Sdiには、車両の側面方向の自車位置推定の基準としての適性度が好適であり、車両の進行方向の自車位置推定の基準としての適性度も好適であることを示す情報が設定されている。
【0076】
ここで、自動運転制御部18は、車両の側面方向の自車位置推定の誤差が所定の閾値よりも大きいと判定したとする。すなわち、車両の側面方向が低位置精度方向Dtagであると判定したとする。この場合、自動運転制御部18は、地
図DB10から破線92、実線93及び実線94に対応する道路ペイント情報を参照する。自動運転制御部18は、まず、実線94に対応する検出精度情報Idetが低検出精度を示すことから、実線94を位置推定の基準の候補から除外する。続いて、残った候補である破線92、実線93のそれぞれに対応する適性方向情報Sdiのうち、低位置精度方向Dtagである車両の側面方向の自車位置推定に対する適性度を比較し、実線93の適性度の方が高いことから、実線93を位置推定の基準として決定し、実線93に接近するように目標軌道を修正することになる。そして、破線Ltが示す目標軌道に従い車両を走行させた場合、自車位置推定部17は、実線93を基準として位置推定を行うことで、車両の側面方向の位置精度を高水準に保つことができる。また、その後、車両の進行方向も低位置精度方向Dtagであると判定された場合は、この車線の中で、破線92に接近するように目標軌道を少し修正することで、車両の進行方向の位置精度も高水準に保つことができる。
【0077】
あるいは、上記に代えて、自動運転制御部18は、破線92、実線93及び実線94のそれぞれに対応する検出精度情報Idetが示す検出精度、及び適性方向情報Sdiが示す適性度をそれぞれ所定の基準でスコア化し、検出精度のスコアと適性度のスコアとに基づいて総合的に判定することで、低位置精度方向Dtagの自車位置推定の基準に適する道路ペイントを決定するようにしてもよい。
【0078】
なお、上記の例では、車両の側面方向の自車位置推定の誤差が所定の閾値よりも大きい場合について説明したが、車両の進行方向の自車位置推定の誤差が所定の閾値よりも大きい場合については、適性方向情報Sdiのうちの車両の進行方向の自車位置推定に対する適性度が高い道路ペイントを位置推定の基準として決定すればよい。また、車両の進行方向の自車位置推定の誤差と側面方向の自車位置推定の誤差の両方が所定の閾値よりも大きい場合については、適性方向情報Sdiのうちの車両の進行方向の自車位置推定に対する適性度及びが側面方向の自車位置推定に対する適性度の両者が、所定の基準以上の適性度である道路ペイントを位置推定の基準として決定すればよい。
【0079】
以上説明したように、本実施例における車載機1は、自車位置推定部17と、自動運転制御部18とを有する。自車位置推定部17は、ライダ2による道路ペイントの検出結果と地
図DB10との照合を行うことで、自車位置を推定する。自動運転制御部18は、道路ペイント毎の照合の精度を示す検出精度情報Idetを含む路面ペイント情報を地
図DB10から取得する。そして、自動運転制御部18は、少なくとも検出精度情報Idetに基づき、所定値以上の精度で照合が可能となるように車両を制御する情報を車両の電子制御装置又は情報出力部16へ出力する。この態様により、車載機1は、自車位置推定の精度を好適に向上させることができる。
【0080】
[変形例]
以下、実施例に好適な変形例について説明する。以下の変形例は、組み合わせて実施例に適用してもよい。
【0081】
(変形例1)
車載機1は、地
図DB10を記憶部12に記憶する構成に代えて、図示しないサーバ装置が地
図DB10を有してもよい。この場合、車載機1は、図示しない通信部でサーバ装置と通信することにより、必要な路面ペイント情報等を取得する。
【0082】
(変形例2)
図1に示す運転支援システムの構成は一例であり、本発明が適用可能な運転支援システムの構成は
図1に示す構成に限定されない。例えば、運転支援システムは、車載機1を有する代わりに、車両の電子制御装置が車載機1の自車位置推定部17及び自動運転制御部18等の処理を実行してもよい。この場合、地
図DB10は、例えば車両内の記憶部に記憶され、車両の電子制御装置は、地
図DB10の更新情報を図示しないサーバ装置から受信してもよい。