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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023078149
(43)【公開日】2023-06-06
(54)【発明の名称】キメラクロロトキシン受容体
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/17 20150101AFI20230530BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230530BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230530BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20230530BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20230530BHJP
   C07K 19/00 20060101ALN20230530BHJP
   C12N 15/63 20060101ALN20230530BHJP
【FI】
A61K35/17 ZNA
A61P35/00
C12N5/10
C12N5/0783
C12N15/62 Z
C07K19/00
C12N15/63 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023027231
(22)【出願日】2023-02-24
(62)【分割の表示】P 2019530645の分割
【原出願日】2017-12-09
(31)【優先権主張番号】62/432,404
(32)【優先日】2016-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】516105903
【氏名又は名称】ザ ユーエイビー リサーチ ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ローレンス・エス・ジュニア・ラム
(72)【発明者】
【氏名】アントニオ・ディ・スタージ
(72)【発明者】
【氏名】ヤンシー・ジー・ギレスピー
(72)【発明者】
【氏名】ラリサ・ペレボエバ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】CTX-CARを発現するように操作された免疫エフェクター細胞を、処置を必要とする患者に提供することによる癌の処置方法を提供する。
【解決手段】対象における癌を処置する方法であって、前記方法はキメラ抗原受容体(CAR)を含む免疫エフェクター細胞を前記対象に投与することを含み、前記CARは、クロロトキシン、クロロトキシンの機能的変異体、クロロトキシン様ペプチド、クロロトキシン様ペプチドの機能的変異体またはそれらの組み合わせを含む細胞外ドメイン、膜貫通ドメインおよび少なくとも1つの細胞内シグナル伝達ドメインを含む、方法である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における癌を処置する方法であって、前記方法はキメラ抗原受容体(CAR)を含む免疫エフェクター細胞を前記対象に投与することを含み、前記CARは、クロロトキシン、クロロトキシンの機能的変異体、クロロトキシン様ペプチド、クロロトキシン様ペプチドの機能的変異体またはそれらの組み合わせを含む細胞外ドメイン、膜貫通ドメインおよび少なくとも1つの細胞内シグナル伝達ドメインを含む、方法。
【請求項2】
前記シグナル伝達ドメインが、CD3ゼータ、MB1鎖、B29、FcRIII、FcRI、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記膜貫通ドメインが、T細胞受容体アルファ鎖、T細胞受容体ベータ鎖、T細胞受容体ゼータ鎖、CD28、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154、KIRDS2、OX40、CD2、CD27、LFA-1、ICOS、4-1BB、GITR、CD40、BAFFR、HVEM、SLAMF7、NKp80、CD160、CD19、IL2Rβ、IL2Rγ、IL7Rα、ITGA1、VLA1、CD49a、ITGA4、IA4、CD49D、ITGA6、VLA-6、CD49f、ITGAD、CDlld、ITGAE、CD103、ITGAL、CDl la、LFA-1、ITGAM、CDllb、ITGAX、CDl lc、ITGB1、CD29、ITGB2、CD18、LFA-1、ITGB7、TNFR2、DNAM1、SLAMF4、CD84、CD96、CEACAM1、CRTAM、Ly9、CD160、PSGL1、CD100、SLAMF6、SLAM、BLAME、SELPLG、LTBR、PAG/Cbp、NKp44、NKp30、NKp46、NKG2D、およびNKG2Cからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記CARが、共刺激ドメインをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記共刺激ドメインが、CD27、CD28、4-1BB、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83と特異的に結合するリガンド、CDS、ICAM-1、GITR、BAFFR、HVEM、SLAMF7、NKp80、CD160、CD19、CD4、CD8α、CD8β、IL2Rβ、IL2Rγ、IL7Rα、ITGA4、VLA1、CD49a、ITGA4、IA4、CD49D、ITGA6、VLA-6、CD49f、ITGAD、CDlld、ITGAE、CD103、ITGAL、CDlla、LFA-1、ITGAM、CDl lb、ITGAX、CDl lc、ITGB1、CD29、ITGB2、CD18、LFA-1、ITGB7、TNFR2、TRANCE/RANKL、DNAM1、SLAMF4、CD84、CD96、CEACAM1、CRTAM、Ly9、CD160、PSGL1、CD100、CD69、SLAMF6、SLAM、BLAME、SELPLG、LTBR、LAT、GADS、SLP-76、PAG/Cbp、NKp44、NKp30、NKp46、およびNKG2Dからなる群から選択されるポリペプチドの機能的シグナル伝達ドメインを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記CARが、細胞外スペーサーをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記細胞外スペーサーが、ヒトIgDまたはヒトIgG1のヒンジ領域の全部または一部、および任意選択でヒトIgG1由来の免疫グロブリン重鎖定常領域の全部または一部を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記CARが、共刺激ドメインをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記CARが、柔軟性リンカーおよび細胞外スペーサーをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記柔軟性リンカーが、1~10コピー存在する、配列番号1または配列番号2の配列を有する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記細胞外スペーサーが、ヒトIgDまたはヒトIgG1のヒンジ領域の全部または一部、および任意選択でヒトIgG1由来の免疫グロブリン重鎖定常領域の全部または一部を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記CARが、共刺激ドメインをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記免疫エフェクター細胞が、T細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記免疫エフェクター細胞が、ナチュラルキラー細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記免疫エフェクター細胞が、γδT細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記免疫エフェクター細胞が、生存因子をコードする遺伝子をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記生存因子が、O-メチルグアニン-DNAメチルトランスフェラーゼ、多剤耐性タンパク質1、5’ヌクレオチダーゼII、ジヒドロ葉酸還元酵素およびチミジル酸シンターゼからなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記免疫エフェクター細胞が、ストレス誘発抗原受容体を天然に発現する、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記ストレス誘発抗原受容体が、NKG2D受容体である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記免疫エフェクター細胞が、追加の治療的処置と組み合わせて投与される、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記追加の治療的処置が、トリメトトレキセート、テモゾロミド、ラルチトレキセド、S-(4-ニトロベンジル)-6-チオイノシン、6-ベンジグアニジン(6-benzyguanidine)、ニトロソウレア、フォテムスチン、シタラビン、カンプトテシン、およびこれらのいずれかの治療用誘導体からなる群から選択される薬剤による処置である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記追加の治療的処置が、テモゾロミド、ドキソルビシン、メルファラン、ニトロソウレアおよびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される薬剤による処置である、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記免疫エフェクター細胞が、ストレス誘発抗原受容体をコードする遺伝子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記ストレス誘発抗原受容体が、NKG2D受容体である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記免疫エフェクター細胞が、生存因子をコードする遺伝子およびストレス誘発抗原受容体をコードする遺伝子をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記生存因子が、O-メチルグアニン-DNAメチルトランスフェラーゼ、多剤耐性タンパク質1、5’ヌクレオチダーゼII、ジヒドロ葉酸還元酵素およびチミジル酸シンターゼからなる群から選択され、前記ストレス誘発抗原受容体が、NKG2D受容体である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記免疫エフェクター細胞が、追加の治療的処置と組み合わせて投与される、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記追加の治療的処置が、トリメトトレキセート、テモゾロミド、ラルチトレキセド、S-(4-ニトロベンジル)-6-チオイノシン、6-ベンジグアニジン(6-benzyguanidine)、ニトロソウレア、フォテムスチン、シタラビン、カンプトテシン、およびこれらのいずれかの治療用誘導体からなる群から選択される薬剤による処置である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記追加の治療的処置が、テモゾロミド、ドキソルビシン、メルファラン、ニトロソウレアおよびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される薬剤による処置である、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記CARを含む前記免疫エフェクター細胞が、追加の免疫系細胞を含む組成物の成分である、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
前記CARを含む前記免疫エフェクター細胞が、前記組成物中の全細胞集団の60%以上で存在する、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記CARを含む前記免疫エフェクター細胞が、γδT細胞であり、前記追加の免疫系細胞が、ナチュラルキラー細胞、αβT細胞、またはナチュラルキラー細胞およびαβT細胞の組み合わせである、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記γδT細胞が、前記組成物中の全細胞集団の60%以上で存在する、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記αβT細胞が、全細胞集団の5%以下で存在し、前記ナチュラルキラー細胞が、前記組成物中の全細胞集団の25%以下で存在する、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記癌が、神経外胚葉起源のものである、請求項1に記載の方法。
【請求項36】
前記癌が、悪性神経膠腫、黒色腫、神経芽細胞腫、髄芽腫または小細胞肺癌である、請求項1に記載の方法。
【請求項37】
少なくとも1つのベクターを含むγδT細胞であって、前記少なくとも1つのベクターは、キメラ抗原受容体(CAR)および生存因子の発現を導き、前記CARは、クロロトキシン、クロロトキシンの機能的変異体、クロロトキシン様ペプチド、クロロトキシン様ペプチドの機能的変異体、またはそれらの組み合わせを含む細胞外ドメイン、膜貫通ドメインおよび少なくとも1つの細胞内シグナル伝達ドメインを含む、γδT細胞。
【請求項38】
前記シグナル伝達ドメインが、CD3ゼータ、MB1鎖、B29、FcRIII、FcRI、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項37に記載のγδT細胞。
【請求項39】
前記膜貫通ドメインが、T細胞受容体アルファ鎖、T細胞受容体ベータ鎖、T細胞受容体ゼータ鎖、CD28、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154、KIRDS2、OX40、CD2、CD27、LFA-1、ICOS、4-1BB、GITR、CD40、BAFFR、HVEM、SLAMF7、NKp80、CD160、CD19、IL2Rβ、IL2Rγ、IL7Rα、ITGA1、VLA1、CD49a、ITGA4、IA4、CD49D、ITGA6、VLA-6、CD49f、ITGAD、CDlld、ITGAE、CD103、ITGAL、CDl la、LFA-1、ITGAM、CDllb、ITGAX、CDl lc、ITGB1、CD29、ITGB2、CD18、LFA-1、ITGB7、TNFR2、DNAM1、SLAMF4、CD84、CD96、CEACAM1、CRTAM、Ly9、CD160、PSGL1、CD100、SLAMF6、SLAM、BLAME、SELPLG、LTBR、PAG/Cbp、NKp44、NKp30、NKp46、NKG2D、およびNKG2Cからなる群から選択される、請求項37に記載のγδT細胞。
【請求項40】
前記CARが、共刺激ドメインをさらに含む、請求項37に記載のγδT細胞。
【請求項41】
前記共刺激ドメインが、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83と特異的に結合するリガンド、CDS、ICAM-1、GITR、BAFFR、HVEM(LIGHTR)、SLAMF7、NKp80(KLRF1)、CD160、CD19、CD4、CD8α、CD8β、IL2Rβ、IL2Rγ、IL7Rα、ITGA4、VLA1、CD49a、ITGA4、IA4、CD49D、ITGA6、VLA-6、CD49f、ITGAD、CDlld、ITGAE、CD103、ITGAL、CDlla、LFA-1、ITGAM、CDl lb、ITGAX、CDl lc、ITGB1、CD29、ITGB2、CD18、LFA-1、ITGB7、TNFR2、TRANCE/RANKL、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244、2B4)、CD84、CD96(Tactile)、CEACAM1、CRTAM、Ly9(CD229)、CD160(BY55)、PSGL1、CD100(SEMA4D)、CD69、SLAMF6(NTB-A、Lyl08)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR、LAT、GADS、SLP-76、PAG/Cbp、NKp44、NKp30、NKp46、およびNKG2Dからなる群から選択されるポリペプチドの機能的シグナル伝達ドメインを含む、請求項40に記載のγδT細胞。
【請求項42】
前記CARが、細胞外スペーサーをさらに含む、請求項37に記載のγδT細胞。
【請求項43】
前記細胞外スペーサーが、ヒトIgDまたはヒトIgG1のヒンジ領域の全部または一部、および任意選択でヒトIgG1由来の免疫グロブリン重鎖定常領域の全部または一部を含む、請求項42に記載のγδT細胞。
【請求項44】
前記CARが、共刺激ドメインをさらに含む、請求項42に記載のγδT細胞。
【請求項45】
前記CARが、柔軟性リンカーおよび細胞外スペーサーをさらに含む、請求項37に記載のγδT細胞。
【請求項46】
前記柔軟性リンカーが、1~10コピー存在する、配列番号1または配列番号2の配列を有する、請求項45に記載のγδT細胞。
【請求項47】
前記細胞外スペーサーが、ヒトIgDまたはヒトIgG1のヒンジ領域の全部または一部、および任意選択でヒトIgG1由来の免疫グロブリン重鎖定常領域の全部または一部を含む、請求項45に記載のγδT細胞。
【請求項48】
前記CARが、共刺激ドメインをさらに含む、請求項45に記載のγδT細胞。
【請求項49】
前記生存因子が、O-メチルグアニン-DNAメチルトランスフェラーゼ、多剤耐性タンパク質1、5’ヌクレオチダーゼII、ジヒドロ葉酸還元酵素およびチミジル酸シンターゼからなる群から選択される、請求項37に記載のγδT細胞。
【請求項50】
前記γδT細胞が、ストレス誘発抗原受容体を天然に発現する、請求項37に記載のγδT細胞。
【請求項51】
前記ストレス誘発抗原受容体が、NKG2D受容体である、請求項50に記載のγδT細胞。
【請求項52】
前記生存因子が、追加の治療的処置により作成される処置環境において前記γδT細胞が生存することを可能にする、請求項37に記載のγδT細胞。
【請求項53】
前記追加の治療的処置が、トリメトトレキセート、テモゾロミド、ラルチトレキセド、S-(4-ニトロベンジル)-6-チオイノシン、6-ベンジグアニジン(6-benzyguanidine)、ニトロソウレア、フォテムスチン、シタラビン、カンプトテシン、およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される薬剤による処置である、請求項52に記載のγδT細胞。
【請求項54】
前記追加の治療的処置が、テモゾロミド、ドキソルビシン、メルファラン、ニトロソウレアおよびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される薬剤による処置である、請求項52に記載のγδT細胞。
【請求項55】
前記少なくとも1つのベクターが、ストレス誘発抗原受容体をコードする遺伝子の発現をさらに導く、請求項37に記載のγδT細胞。
【請求項56】
前記ストレス誘発抗原受容体が、NKG2D受容体である、請求項56に記載のγδT細胞。
【請求項57】
単一のベクターが、前記CARおよび前記生存因子の発現を導く、請求項37に記載のγδT細胞。
【請求項58】
単一のベクターが、前記CAR、前記生存因子および前記ストレス誘発抗原受容体の発現を導く、請求項55に記載のγδT細胞。
【請求項59】
前記生存因子が、O-メチルグアニン-DNAメチルトランスフェラーゼ、多剤耐性タンパク質1、5’ヌクレオチダーゼII、ジヒドロ葉酸還元酵素およびチミジル酸シンターゼからなる群から選択され、前記ストレス誘発性抗原受容体が、NKG2D受容体である、請求項58に記載のγδT細胞。
【請求項60】
前記γδT細胞が、単離されている、請求項37に記載のγδT細胞。
【請求項61】
請求項37~60のいずれか一項に記載のγδT細胞、および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項62】
追加の免疫系細胞をさらに含む、請求項61に記載の医薬組成物。
【請求項63】
前記γδT細胞が、前記組成物の全細胞集団の60%以上で存在する、請求項62に記載の医薬組成物。
【請求項64】
前記追加の免疫系細胞が、ナチュラルキラー細胞、αβT細胞、またはナチュラルキラー細胞およびαβT細胞の組み合わせである、請求項62に記載の医薬組成物。
【請求項65】
前記γδT細胞が、前記組成物の全細胞集団の60%以上で存在する、請求項64に記載の医薬組成物。
【請求項66】
前記αβT細胞が、前記組成物の全細胞集団の5%以下で存在し、前記ナチュラルキラー細胞が、前記組成物の全細胞集団の25%以下で存在する、請求項64に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発明者:Lawrence S.Lamb,Jr.、Antonio Di Stasi、Larisa Pereboeva、G.Yancey Gillespie
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年12月9日に出願され、現在係属中の米国仮特許出願第62/432,404号の優先権を主張し、その利益を主張する。
【0003】
抗原特異的T細胞を用いた免疫療法は、前臨床モデルならびに第1相および第2相臨床試験における悪性腫瘍の処置に有望であることが示されている。腫瘍特異的T細胞を生成するための1つの魅力的な戦略は、抗原認識部分を含む細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、および少なくとも1つの細胞内シグナル伝達ドメイン(例えば、しばしば共刺激分子エンドドメインに結合しているT細胞受容体CD3-ゼータ鎖に由来する細胞内シグナル伝達ドメイン)を含むキメラ抗原受容体(CAR)による遺伝子改変によるものである。
【0004】
クロロトキシン(CTX)は、昆虫および他の無脊椎動物に対するそれらの選択的麻痺活性により名付けられた昆虫毒素のペプチドファミリーに属する。クロロトキシンの一次構造は、8個のシステインを含む36個のアミノ酸を含み、短鎖ジスルフィド含有ペプチドとして分類される。CTXは腫瘍結合活性を有することが、研究により示されている。CTXは、神経膠腫細胞、ならびに黒色腫、神経芽細胞腫、髄芽腫および小肺癌を含む神経外胚葉起源の他の腫瘍細胞に結合することが、研究により示されている。しかしながら、それらの同じ研究は、CTXが脳、皮膚、腎臓および肺からの正常組織またはパーキンソン病およびアルツハイマー病等の神経疾患に由来する他の非腫瘍形成性組織に結合することができないことを示した。CTXは、血管新生阻害特性を示すことも研究によって示されている。CTXの正確な標的は確認されていないが、CTXは、神経膠腫細胞(CLC-3)等の特定の癌細胞に見られる特定の種類の塩化物チャネルに作用し得ると考えられる。他のCTX標的は、マトリックスメタロプロテイナーゼ-2(MMP-2)およびアネキシンA2を含み得る。CTXが脳に進入する正確なメカニズムは未だ確認されていないが、CTXは細胞透過性を有し、また循環系を介して脳に進入し得る可能性があることも、研究によって示されている。
【0005】
抗原認識部分としてCTXおよびCTX様ペプチド(およびこれらの機能的変異体)を含む新規CARを設計するためには、CTXの様々な種類の腫瘍細胞への優先的結合を利用することが望ましい。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、キメラ抗原受容体(CAR)の細胞外抗原認識部分としてCTXもしくはその任意の機能的変異体またはCTX様ペプチドもしくはその任意の機能的変異体の融合タンパク質を含むCARを提供する。CTX、CTX様ペプチドまたはこれらの機能的変異体を含むCARは、本明細書ではまとめて「CTX-CAR」と呼ばれる。そのようなCTX-CARは、細胞外ドメイン、膜貫通ドメインおよび少なくとも1つの細胞内シグナル伝達ドメインにおいて、追加の部分またはドメインをさらに含んでもよい。そのようなCTX-CARは、これに限定されないが、免疫エフェクター細胞等の宿主細胞において発現され得る。ある特定の実施形態において、免疫エフェクター細胞は、T細胞、NK細胞またはγδ-T細胞である。本発明はまた、本明細書に記載のCTX-CARを発現するように操作された免疫エフェクター細胞を、処置を必要とする患者に提供することによる処置方法(例えば癌を処置するための方法等)を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施例1に記載の好ましいCTX-CARの設計(上部パネル)および対応するnoCTX-CAR(下部パネル)を示す組換えコンストラクトマップを示す図である。
図2】膜に挿入された図1のCTX-CARおよび対応するnoCTX-CARを示す図である。
図3】本発明による追加のCTX-CARの設計を示す組み換えコンストラクトマップを示す図である。
図4】実施例1に記載のCTX-CARまたは対応するnoCTX-CAR(それぞれ図1に示す通り)のいずれかを含む組換えレトロウイルスを得るための、293T細胞のトランスフェクション効率を示す線グラフである。陰影を付けたグラフは、CTX-CARおよびnoCTX-CARでトランスフェクトされた293T細胞を示し、陰影のないグラフは、トランスフェクトされていない293T細胞を示す。293T細胞を72時間後に収集し、抗CH2CH3抗体(CAR発現に特異的)で染色した。
図5】実施例1のCTX-CARまたは対応するnoCTX-CAR(それぞれ図1に示す通り)で形質導入されたジャーカットおよびガンマデルタT細胞の形質導入効率を示す棒グラフである。ジャーカットおよびγδT細胞増殖を、CTX-CARおよびnoCTX-CARウイルスで形質導入した。細胞を72時間後に収集し、CHCH抗体で染色した。
図6】は、本明細書に開示されている様々なポリペプチドおよびアミノ酸配列を示す。
図7】本開示のCTX-CARを発現するジャーカット細胞が、ヒト初代細胞株(ヒト星状細胞;HA;およびαβT細胞;T LC)と比較して、ヒト神経膠腫細胞株(U87;U251;およびLN229)に選択的に結合することを示す図である。黒いバーはCTX-CARによる形質導入を示し、白いバーはnoCTX-CARによる形質導入を示す。
図8A】CTX欠乏CARを発現するエフェクター細胞(noCTX-CAR)、偽形質導入エフェクター細胞(モック)およびジャーカット細胞(ジャーカット)と比較した、本開示のCTX-CARを発現するエフェクター細胞(CTX-CAR)の神経膠腫細胞株U251GLに対する増強された細胞毒性を示す図である。データは、混合培養中の死細胞数と相関する特異的ルシフェラーゼ減少の%として提示されている。
図8B】CTX欠乏CARを発現するエフェクター細胞(noCTX-CAR)、偽形質導入エフェクター細胞(モック)およびジャーカット細胞(ジャーカット)と比較した、本開示のCTX-CARを発現するエフェクター細胞(CTX-CAR)の神経膠腫細胞株U87GLに対する増強された細胞毒性を示す図である。データは、混合培養中の死細胞数と相関する特異的ルシフェラーゼ減少の%として提示されている。
【発明を実施するための形態】
【0008】
定義
明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈がそうでないことを明示しない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「支持体」への言及は、複数の支持体を含む。本明細書およびそれに続く特許請求の範囲において、反対の意図が明らかでない限り、以下の意味を有するように定義されるいくつかの用語が参照される。
【0009】
「キメラ抗原受容体(CAR)」という用語は、本明細書において使用される場合、例えば、人工T細胞受容体、T体、単鎖免疫受容体、キメラT細胞受容体、またはキメラ免疫受容体を指し、人工的な特異性を特定の免疫エフェクター細胞(例えば、抗原認識ドメイン)にグラフトする操作された受容体を包含する。CARは、T細胞上にモノクローナル抗体の特異性を付与するために使用され得、それによって、例えば養子細胞療法における使用のために、多数の特異的T細胞を生成することを可能にする。特定の実施形態において、CARは、例えば腫瘍関連抗原に対する細胞の特異性を導く。いくつかの実施形態において、CARは、長さが異なり得る細胞内活性化ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞外ドメインを含み、また腫瘍関連抗原認識部分であり得る抗原認識ドメインを含む。特定の態様において、CARは、膜貫通ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメイン/エンドドメイン(特定の実施形態においてはCD3-ゼータ(CD3ζ)を含む)に融合した、CTXポリペプチド、CTX様ポリペプチドまたはこれらの機能的変異体を含む細胞外ドメインを含む。他のCAR設計の特異性は、受容体のリガンド(例えばペプチド)に由来し得る。ある特定の場合において、抗原認識ドメインの間隔は、活性化誘導細胞死を減少させるために改変され得る。ある特定の場合において、CARの細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζに加えて、これらに限定されないが、FcR、CD27、CD28、CD137、DAP10、および/またはOX40等のさらなる共刺激シグナル伝達のためのドメインを含む。いくつかの場合において、分子は、共刺激分子、画像化のため(例えばポジトロンエミッショントモグラフィーのため)のレポーター遺伝子、CARを発現する宿主細胞が、追加の治療的処置により作成される処置環境において生存するのを可能にする遺伝子産物、プロドラッグ、ホーミング受容体、ケモカイン、ケモカイン受容体、サイトカイン、およびサイトカイン受容体の添加によりCARを発現する宿主細胞を条件付きで除去する遺伝子産物であってもよい。
【0010】
「免疫エフェクター細胞」は、その用語が本明細書で使用される場合、免疫応答、例えば免疫エフェクター応答の促進に関与する細胞を指す。免疫エフェクター細胞の例には、T細胞、アルファ/ベータT細胞(αβT細胞)およびガンマ/デルタT細胞(γδT細胞)、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、リンホカイン活性化キラー(LAK)細胞、記憶T細胞、調節性T細胞、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、肥満細胞、および骨髄由来食細胞が含まれる。これらの細胞に分化する幹細胞もまた使用され得る。「免疫エフェクター機能」または「免疫エフェクター応答」は、本明細書において使用される場合、標的細胞の免疫攻撃を増強または促進する、例えば免疫エフェクター細胞の機能または応答を指す。例えば、免疫エフェクター機能または応答は、これらに限定されないが、標的細胞の殺傷または成長もしくは増殖の阻害を促進するT細胞またはNK細胞等の免疫エフェクター細胞の特性を指す。T細胞の場合、一次刺激および共刺激は、免疫エフェクター機能または応答の非包括的な例である。ナイーブ、幹細胞様、記憶、または記憶型のT細胞の免疫エフェクター機能または応答には、これに限定されないが、抗原依存性増殖が含まれる。
【0011】
本明細書において使用される場合、「クロロトキシン」および「CTX」という用語は同義的に使用され、アミノ酸配列MCMPCFTTDHQMARKCDDCCG GKGRGKCYG PQCLCRを有する36個のアミノ酸を含むサソリ毒ペプチドを指す(配列番号1)(UniProt登録番号P45639)。
【0012】
本明細書において使用される場合、「クロロトキシン様ペプチド」または「CTX様ペプチド」という用語は、本明細書では同義的に使用され、CTXと類似した一次構造を有する他のペプチドを指し、限定されないが以下のペプチドを含む。
【0013】
Bs8(UniProt #P15229;RCKPCFTTDP QMSKKCADCC GGKGKGKCYG PQCLC);配列番号6;
昆虫毒素-I4(UniProt #P60269;MCMPCFTTDH NMAKKCRDCC GGNGKCFGPQ CLCNR);配列番号7;
Lqh8/6(UniProt #P55966;RCSPCFTTDQ QMTKKCYDCC GGKGKGKCYG PQCICAPY);配列番号8;
昆虫毒素-I3(UniProt #P60268;MCMPCFTTDH QTARRCRDCC GGRGRKCFGQ CLCGYD);配列番号9;
昆虫毒素-15A(UniProt #P15222;MCMPCFTTDP NMAKKCRDCC GGNGKCFGPQ CLCNR);配列番号10;
MeuCITx(UniProt #P86401;TEAMCMPCFT TDHNMAKKCR DCCGGNGKCF GYQCLCNRG);配列番号11、特にアミノ酸4~38(シグナルペプチドのアミノ酸残基1~3の除去により得られる);
GaTx1(UniProt #P85066;CGPCFTTDHQ MEQKCAECCG GIGKCYGPQC LCNR);配列番号12;
昆虫毒素-I5(UniProt #P60270;MCMPCFTTDP NMANKCRDCC GGGKKCFGPQ CLCNR);配列番号13;
昆虫毒素-I1(UniProt #P15220;MCMPCFTTRP DMAQQCRACC KGRGKCFGPQ CLCGYD);配列番号14;
Bm12-b(UniProt #Q9BJW4;MKFLYGIVFI ALFLTVMFAT QTDGCGPCFT TDANMARKCR ECCGGNGKCF GPQCLCNRE);配列番号15、特にアミノ酸25~59(シグナルペプチドのアミノ酸残基1~24の除去により得られる);
BmK CT(UniProt #Q9UAD0;MKFLYGIVFI ALFLTVMFAT QTDGCGPCFT TDANMARKCR ECCGGIGKCF GPQCLCNRI);配列番号16、特にアミノ酸25~59(シグナルペプチドアミノ酸残基1~24の除去により得られる);
AaCtx(UniProt #P86436;MCIPCFTTNP NMAAKCNACC GSRRGSCRGP QCIC);配列番号17;
MeuCITx-1(UniProt #P86402;MCMPCFTTRP DMAQQCRDCC GGNGKCFGYQ CLCNR);配列番号18;
Bs14(UniProt #P59887;CGPCFTKDPE TEKKCATCCG GIGRCFGPQC LCNRGY);配列番号19;
AmmP2(UniProt #P01498;CGPCFTTDPY TESKCATCCG GRGKCVGPQC LCNRI);配列番号20;ならびに
BtlTx3(UniProt #P81761;MKFLYGVILI ALFLTVMTAT LSEARCGPCF TTDPQTQAKC SECCGRKGGVCKGPQCICGI QY)配列番号21、特にアミノ酸25~61(シグナルペプチドアミノ酸残基1~24の除去により得られる)およびアミノ酸25~62(シグナルペプチドアミノ酸残基1~24およびプロ-ペプチドアミノ酸残基62の除去により得られる)。
【0014】
「投与」という用語は、本発明の化合物、細胞集団(本開示のCTX-CARを発現する宿主細胞等)を含む生物学的材料、またはそれらの組み合わせを、ヒトまたは動物対象に導入することを意味する。化合物の1つの好ましい投与経路は、静脈内投与である。化合物の他の好ましい投与経路は、腹腔内または胸膜内、あるいは脳へのカテーテルによるものであってもよい。しかしながら、経口、局所、皮下、腹腔内、動脈内、吸入、膣内、直腸内、鼻内、脳脊髄液への導入、または体区画への点滴注入等の任意の投与経路が使用され得る。充実性腫瘍等の標的組織部位への直接注射もまた企図される。
【0015】
「治療有効量」という用語は、本明細書において使用される場合、処置される疾患、状態、または障害の症状のうちの1つ以上をある程度緩和する、投与される化合物または治療活性組成物の量を指す。無秩序な細胞分裂に関連する癌または病状に関して、治療有効量は、(1)腫瘍の大きさを縮小する、(2)異常な細胞分裂、例えば癌細胞分裂を阻害する(すなわちある程度遅くする、好ましくは停止する)、(3)癌細胞の転移を防止もしくは軽減する、および/または(4)例えば癌および血管新生を含む制御されていないもしくは異常な細胞分裂に関連するもしくは部分的に起因する病状に関連する症状をある程度軽減する(もしくは好ましくは排除する)効果を有するその量を指す。
【0016】
疾患(または状態もしくは障害)を「処置する」または「処置」という用語は、本明細書において使用される場合、疾患にかかりやすいが疾患の症状をまだ経験していないまたは示していないヒト対象または動物対象において疾患が発生するのを防止すること(予防的処置)、疾患を抑制すること(発症を遅らせるもしくは阻止すること)、疾患の症状もしくは副作用を軽減すること(緩和的処置を含む)、および/または疾患の後退を引き起こすことを指す。癌に関しては、これらの用語はまた、癌に罹患している個体の平均余命が延長され得ること、または疾患の症状のうちの1つ以上が軽減されることを意味する。癌に関しては、「処置する」はまた、対象における癌を減少させること、抗腫瘍反応を増強または延長させることを含む。
【0017】
本明細書において使用される場合、「組み合わせ」、「組み合わせ療法」および/または「組み合わせ処置レジメン」の任意の投与形態は、別々もしくは組み合わせ処方のいずれかで同時に、または数分間、数時間もしくは数日間で区切られた異なる時間で逐次的に投与され得るが、何らかの方法で所望の治療応答を提供するように共に作用する、少なくとも2つの治療活性薬物または組成物を指す。
【0018】
「増強する」という用語は、本明細書において使用される場合、対象または腫瘍細胞が本明細書において開示された処置に応答する能力を改善することを可能にすることを指す。例えば、増強された応答は、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または98%以上の応答性の増加を含み得る。本明細書において使用される場合、「増強する」はまた、本開示のCTX-CARおよび化学療法を含む併用療法、薬物耐性免疫担当細胞、および免疫チェックポイント阻害剤等の処置に応答する対象の数を増強することを指す。例えば、増強された応答とは、処置に応答した対象の全パーセントを指し得、パーセントは、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または98%以上である。
【0019】
「対象」および「患者」という用語は、本明細書において使用される場合、ヒト、哺乳動物(例えばネコ、イヌ、ウマ等)、生細胞、および他の生物を含む。生物は、例えば単一の真核細胞のように単純なものでも、哺乳動物のように複雑なものでもよい。典型的な患者は、哺乳動物、特に霊長類、特にヒトである。獣医学的用途には、多種多様な対象、例えば畜牛、ヒツジ、ヤギ、乳牛、ブタ等の家畜、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、シチメンチョウ等の家禽類、飼いならされた動物、特にイヌやネコ等のペットが適している。診断または研究用途には、げっ歯類(例えばマウス、ラット、ハムスター)、ウサギ、霊長類、および近交系ブタ等のブタを含む、多種多様な哺乳動物が適切な対象となる。好ましくは、系は、試料および対象を含む。「生きている宿主」という用語は、生きており死んでいない上記の宿主または生物を指す。「生きている宿主」という用語は、生きている宿主から切除された部分(例えば肝臓または他の器官)だけではなく、宿主全体または生物全体を指す。
【0020】
「ガンマデルタT細胞」、「γδT細胞」または「γδT」という用語は、本明細書において同義的に使用される場合、それらの表面上に異なるT細胞受容体(TCR)を発現するT細胞の小さなサブセットを指す。大部分のT細胞は、α-およびβ-TCR鎖と呼ばれる2つの糖タンパク質鎖で構成されるTCRを有する。対照的に、γδT細胞では、TCRは1本のγ鎖および1本のδ鎖で構成される。このグループのT細胞は、通常、αβT細胞よりはるかに一般的ではないが、上皮内リンパ球(IEL)として知られるリンパ球の集団内で、腸粘膜においてそれらの最も高い存在量で見出される。γδT細胞を活性化する抗原性分子はまだほとんど知られていない。しかしながら、γδT細胞は、それらが抗原処理およびペプチドエピトープのMHC提示を必要としないようであるという点で独特であるが、いくつかはMHCクラスIB分子を認識する。さらに、γδT細胞は、脂質抗原の認識において顕著な役割を果たし、またMIC-AおよびMIC-B等のストレス関連抗原に応答すると考えられている。
【0021】
「抗体」という用語は、本明細書において使用される場合、免疫グロブリンまたはその一部を指し、源、起源の種、製造方法、および特性にかかわらず、抗原結合部位を含む任意のポリペプチドを包含する。抗体は、重鎖および/もしくは軽鎖またはそれらの断片で構成され得る。本発明の抗体またはその抗原結合断片、変異体、または誘導体には、これらに限定されないが、ポリクローナル、モノクローナル、多重特異性、ヒト、ヒト化、霊長類またはキメラ抗体、単鎖抗体、エピトープ結合性断片、例えばFab、Fab’およびF(ab’)、Fd、Fvs、一本鎖Fvs(scFv)、一本鎖抗体、ジスルフィド結合Fvs(sdFv)、VLまたはVHドメインのいずれかを含む断片、Fab発現ライブラリーにより産生された断片、および抗イディオタイプ(抗Id)抗体が含まれる。ScFv分子は当技術分野において既知であり、例えば米国特許第5,892,019号に記載されている。本発明の抗体分子は、任意の種類(例えばIgG、IgE、IgM、IgD、IgA、およびIgY)、クラス(例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2)またはサブクラスの免疫グロブリン分子であってもよい。
【0022】
「生物学的治療薬」または「バイオ医薬品」という用語は、本明細書において使用される場合、生物学的源中で製造されるかまたはそれから抽出される任意の医薬品を指す。バイオ医薬品は、化学合成医薬品とは異なる。バイオ医薬品の例には、ワクチン、血液または血液成分、アレルゲン、体細胞、遺伝子治療薬、組織、抗体治療薬および融合タンパク質を含む組換え治療用タンパク質、ならびに生細胞が含まれる。生物製剤は、糖、タンパク質もしくは核酸もしくはこれらの物質の複雑な組み合わせで構成され得るか、または細胞および組織等の生体であり得る。生物製剤は、ヒト、動物、微生物といったさまざまな天然源から分離され、またバイオテクノロジー法やその他の技術によって製造されてもよい。生物学的治療薬の具体例には、これらに限定されないが、免疫刺激剤、T細胞成長因子、インターロイキン、抗体、融合タンパク質および癌ワクチン等のワクチンが含まれる。
【0023】
「癌」という用語は、本明細書において使用される場合、異常細胞が制御されることなく分裂する疾患に対する一般的用語として、その通常の意味が与えられるものである。特に、本発明の実施形態に関連して、癌は、これに限定されないが、神経膠腫等の血管新生関連癌を指す。癌細胞は近くの組織に侵入し、血流およびリンパ系を通って体の他の部分に拡散し得る。癌にはさまざまな種類がある。癌腫は、皮膚、または内臓を被覆もしくはカバーする組織において生じる癌である。神経膠腫は、ニューロンを所定位置に維持し、良好に機能するのを助ける神経膠と呼ばれる脳の支持(「膠」)組織から発生する腫瘍である。肉腫は、骨、軟骨、脂肪、筋肉、血管、または他の結合組織もしくは支持組織において生じる癌である。白血病は、骨髄等の造血組織において生じ、異常な血球を大量に産生させて血流に進入する癌である。リンパ腫は、免疫系の細胞において生じる癌である。
【0024】
正常細胞が特定の制御および調整された単位として振る舞う能力を失うと、腫瘍が形成される。一般に、充実性腫瘍は、通常嚢胞または液体領域を含まない異常な組織塊である(一部の脳腫瘍では、嚢胞および中心壊死領域が液体で満たされている)。単一の腫瘍は、その内部に様々な細胞集団を有することさえあり、異常な異なる過程を有する。充実性腫瘍は、良性(癌性ではない)または悪性(癌性)であり得る。それらを形成する細胞の種類に対して、様々な種類の充実性腫瘍が名付けられている。充実性腫瘍の例は、肉腫、神経膠腫、癌腫、およびリンパ腫である。白血病(血液癌)は通常、充実性腫瘍を形成しない。
【0025】
代表的な癌には、これらに限定されないが、急性リンパ芽球性白血病、成人;急性リンパ芽球性白血病、小児;急性骨髄性白血病、成人;副腎皮質癌;副腎皮質癌、小児;エイズ関連リンパ腫;エイズ関連悪性腫瘍;肛門癌;星状細胞腫、小児小脳;星状細胞腫、小児脳;胆管癌、肝外;膀胱癌;膀胱癌、小児;骨癌、骨肉腫/悪性線維性組織球腫;膠芽腫、小児;膠芽腫、成人;脳幹神経膠腫、小児;脳腫瘍、成人;脳腫瘍、脳幹神経膠腫、小児;脳腫瘍、小脳星状細胞腫、小児;脳腫瘍、脳星細胞腫/悪性神経膠腫、小児;脳腫瘍、上衣腫、小児;脳腫瘍、髄芽腫、小児;脳腫瘍、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、小児;脳腫瘍、視覚経路および視床下部神経膠腫、小児;脳腫瘍、小児(その他);乳癌;乳癌および妊娠;乳癌、小児;乳癌、男性;気管支腺腫/カルチノイド、小児:カルチノイド腫瘍、小児;カルチノイド腫瘍、消化管;癌腫、副腎皮質;癌腫、膵島細胞;原発不明の癌腫;中枢神経系リンパ腫、原発;小脳星状細胞腫、小児;脳星状細胞腫/悪性神経膠腫、小児;子宮頸癌;小児癌;慢性リンパ性白血病;慢性骨髄性白血病;慢性骨髄増殖性疾患;腱鞘の明細胞肉腫;結腸癌;結腸直腸癌、小児;皮膚T細胞リンパ腫;子宮内膜癌;上衣腫、小児;上皮癌、卵巣;食道癌;食道癌、小児;ユーイングファミリーの腫瘍;頭蓋外胚細胞腫瘍、小児;性腺外胚細胞腫瘍;肝外胆管癌;眼癌、眼内黒色腫;眼癌、網膜芽細胞腫;胆嚢癌;胃癌;胃癌、小児;消化管カルチノイド腫瘍;胚細胞腫瘍、頭蓋外、小児;胚細胞腫瘍、性腺外;胚細胞腫、卵巣;妊娠性絨毛腫瘍;神経膠腫。小児脳幹;神経膠腫。小児視覚経路および視床下部;有毛細胞白血病;頭頸部癌;肝細胞(肝臓)癌、成人(原発);肝細胞(肝臓)癌、小児(原発);ホジキンリンパ腫、成人;ホジキンリンパ腫、小児;妊娠中のホジキンリンパ腫;下咽頭癌;視床下部および視覚経路神経膠腫、小児;眼内黒色腫;膵島細胞癌(内分泌膵臓);カポジ肉腫;腎臓癌;喉頭癌;喉頭癌、小児;白血病、急性リンパ芽球性、成人;白血病、急性リンパ芽球性、小児;白血病、急性骨髄性、成人;白血病、急性骨髄性、小児;白血病、慢性リンパ球性;白血病、慢性骨髄性;白血病、有毛細胞;口唇癌および口腔癌;肝臓癌、成人(原発);肝臓癌、小児(原発);肺癌、非小細胞;肺癌、小細胞;リンパ芽球性白血病、成人急性;リンパ芽球性白血病、小児急性;リンパ性白血病、慢性;リンパ腫、エイズ関連;リンパ腫、中枢神経系(原発);リンパ腫、皮膚T細胞;リンパ腫、ホジキン、成人;リンパ腫、ホジキン;小児;リンパ腫、ホジキン、妊娠中;リンパ腫、非ホジキン、成人;リンパ腫、非ホジキン、小児;リンパ腫、非ホジキン、妊娠中;リンパ腫、原発性中枢神経系;マクログロブリン血症、ワルデンシュトローム;男性の乳癌;悪性中皮腫、成人;悪性中皮腫、小児;悪性胸腺腫;髄芽腫、小児;黒色腫;黒色腫、眼内;メルケル細胞癌;中皮腫、悪性;原発不明の転移性扁平上皮頸部癌;多発性内分泌腫瘍症候群、小児;多発性骨髄腫/形質細胞腫瘍;菌状息肉腫;骨髄異形成症候群;骨髄性白血病、慢性;骨髄性白血病、小児急性;骨髄腫、多発性;骨髄増殖性疾患、慢性;鼻腔癌および副鼻腔癌;上咽頭癌;上咽頭癌、小児;神経芽細胞腫;神経線維腫;非ホジキンリンパ腫、成人;非ホジキンリンパ腫、小児;妊娠中の非ホジキンリンパ腫;非小細胞肺癌;口腔癌、小児;口腔および唇癌;中咽頭癌;骨肉腫/骨の悪性線維性組織球腫;卵巣癌、小児;卵巣上皮癌;卵巣胚細胞腫瘍;卵巣低悪性度腫瘍;膵臓癌;膵臓癌、小児;膵臓癌、膵島細胞;副鼻腔癌および鼻腔癌;副甲状腺癌;陰茎癌;褐色細胞腫;松果体およびテント上原始神経外胚葉性腫瘍、小児;下垂体腫瘍;形質細胞腫瘍/多発性骨髄腫;胸膜肺芽腫;妊娠および乳癌;妊娠およびホジキンリンパ腫;妊娠および非ホジキンリンパ腫;原発性中枢神経系リンパ腫;原発性肝臓癌、成人;原発性肝臓癌、小児;前立腺癌;直腸癌;腎細胞(腎臓)癌;腎細胞癌、小児;腎盂および尿管、移行上皮癌;網膜芽細胞腫;横紋筋肉腫、小児;唾液腺癌;唾液腺癌、小児;肉腫、ユーイングファミリーの腫瘍;肉腫、カポジ肉腫(骨肉腫)/骨の悪性線維性組織球腫;肉腫、横紋筋肉腫、小児;肉腫、軟組織、成人;肉腫、軟組織、小児;セザリー症候群;皮膚癌;皮膚癌、小児;皮膚癌(黒色腫);皮膚癌種、メルケル細胞;小細胞肺癌;小腸癌;軟組織肉腫、成人;軟組織肉腫、小児;原発不明の扁平上皮頸部癌、原発性;胃癌;胃癌、小児;テント上原始神経外胚葉性腫瘍、小児;T細胞リンパ腫、皮膚;精巣癌;胸腺腫、小児;胸腺腫、悪性;甲状腺癌;甲状腺癌、小児;腎盂および尿管の移行上皮癌;絨毛性腫瘍、妊娠中;未知の原発部位、小児癌;異常な小児癌;尿管および腎盂、移行上皮癌;尿道癌;子宮肉腫;膣癌;視覚経路および視床下部神経膠腫、小児。外陰癌;ワルデンシュトロームマクログロブリン血症;とりわけウィルムス腫瘍が挙げられる。
【0026】
腫瘍は、悪性または良性として分類され得る。両方の場合において、細胞の異常な凝集および増殖が見られる。悪性腫瘍の場合、これらの細胞はより攻撃的に行動し、侵襲性が増加するという性質を獲得する。最終的には、腫瘍細胞は、それらが発生した微視的環境から脱却し、体の別の領域に拡散し(通常それらの増殖を助長しない極めて異なる環境で)、またこの新たな場所においてそれらの急速な増殖および分裂を継続する能力を獲得し得る。これは転移と呼ばれる。悪性細胞が転移すると、治癒を達成することはより困難となる。良性腫瘍は、浸潤する傾向がより少なく、転移する可能性がより低い。
【0027】
「融合タンパク質」という用語は、本明細書において使用される場合、例えば抗原認識ドメイン、例えばCTX、および少なくとも1つの異種部分、すなわち天然ではそれと自然に結合していない部分を含むキメラ分子を指す。アミノ酸配列は通常、融合ポリペプチド内で一緒にされる別々のタンパク質中に存在してもよく、またはそれらは通常同じタンパク質中に存在し得るが融合ポリペプチド内で新しい配置に配置される。融合タンパク質は、例えば化学合成によって、またはペプチド領域が所望の関係でコードされているポリヌクレオチドを作成および翻訳することによって作成され得る。
【0028】
用語「癌を減少させる」、「癌の阻害」、「癌を阻害する」および同様の用語は、本明細書において同義的に使用され、腫瘍塊のサイズまたは体積の減少、対象における転移腫瘍の減少、癌細胞の増殖状態(癌細胞が増加している程度)の低下等の1つ以上を指す。
【0029】
「発現された」または「発現」という用語は、本明細書において使用される場合、DNA配列の2つの核酸鎖のうちの一方の領域に少なくとも部分的に相補的なRNA分子を与えるDNA配列からの転写を指す。「発現された」または「発現」という用語はまた、本明細書において使用される場合、タンパク質、ポリペプチド、またはそれらの一部もしくは断片を得るための前記RNA分子からの翻訳を指す。
【0030】
「プロモーター」という用語は、本明細書において使用される場合、RNAポリメラーゼから転写開始部位を決定するDNA配列を指す。「プロモーター近位エレメント」は、転写開始部位の約200塩基対以内の調節配列であり得る。
【0031】
「組み換え細胞」という用語は、天然では細胞内に通常存在しない、および/または天然では互いに共有結合していない核酸セグメントの新しい組み合わせを有する細胞を指す。当業者に利用可能な広範囲の核酸操作技術を用いて、核酸セグメントの新しい組み合わせを生物に導入することができる。組換え細胞は、単一の真核細胞、または単一の原核細胞、または哺乳動物細胞であってもよい。組換え細胞は、ゲノム外のベクターを保有していてもよい。ゲノム外核酸ベクターは、細胞のゲノムに挿入されない。組換え細胞はさらに、ゲノム内であるベクターまたはその一部を保有してもよい。「遺伝子内」という用語は、組換え細胞のゲノム内に組み込まれた核酸コンストラクトを定義している。
【0032】
「組換え核酸」および「組換えDNA」という用語は、本明細書において使用される場合、真核生物細胞もしくは原核生物細胞に天然には見られない、および/または真核生物細胞もしくは原核生物において天然に互いに共有結合されない少なくとも2つの核酸配列の組み合わせを指す。組換え核酸配列は、これらに限定されないが、宿主細胞内で発現される1つ以上の核酸、核酸ベクター、遺伝子発現調節エレメント、複製起点、発現されたときに抗生物質耐性を付与する適切な遺伝子配列、タンパク質をコードする配列等を含む。「組換えポリペプチド」という用語は、その位置、濃度、純度または構造のいずれかにおいて天然に存在するポリペプチドとは異なるように、組換えDNA技術(組換え核酸の使用等)によって産生されるポリペプチドを含むことを意図する。一般に、そのような組換えポリペプチドは、通常天然で観察されるものとは異なる量で細胞中に存在する。
【0033】
「作用可能に」または「作用可能に連結された」という用語は、本明細書において使用される場合、所望の機能を実行するためのコードおよび制御配列の構成を指す。したがって、コード配列に作用可能に連結された制御配列は、コード配列の発現をもたらし得る。DNAポリメラーゼがプロモーター配列に結合し、コードされたタンパク質に翻訳され得るmRNAにコード配列を転写する場合、コード配列は、細胞内の転写調節領域に作用可能に連結されているかまたはその制御下にある。制御配列は、それらがその発現を導くように機能する限り、コード配列と連続している必要はない。したがって、例えば、介在する未翻訳の転写された配列がプロモーター配列とコード配列との間に存在し得、またプロモーター配列は依然としてコード配列に「作用可能に連結されている」と見なすことができる。
【0034】
「異種」および「外因性」という用語は、コード配列および制御配列等の核酸配列に関する場合、通常は組換えコンストラクトの領域もしくは特定の染色体遺伝子座と関連しない、および/または通常は特定の細胞に関連しない配列を示す。したがって、核酸コンストラクトの「異種」領域は、天然では他の分子と関連して見られない、別の核酸分子内またはそれに結合した核酸の識別可能なセグメントである。例えば、コンストラクトの異種領域は、天然ではコード配列と関連して見られない配列が隣接するコード配列を含み得る。異種コード配列の別の例は、コード配列自体が天然では見出されないコンストラクト(例えば、天然遺伝子とは異なるコドンを有する合成配列)である。同様に、通常宿主細胞には存在しないコンストラクトで形質転換された宿主細胞は、本発明の目的において異種と見なされる。
【0035】
好ましくは、プロモーターは、配列の付加もしくは欠失によって改変されるか、または天然および合成の配列ならびに合成および天然の配列の組み合わせであってもよい配列を含む代替の配列で置換される。多くの真核生物プロモーターは、2種類の認識配列:TATAボックスおよび上流プロモーターエレメントを含む。転写開始部位の上流に位置する前者は、正しい部位で転写を開始するようにRNAポリメラーゼを導くことに関与しているが、後者は、転写速度を決定するようであり、TATAボックスの上流にある。エンハンサーエレメントもまた、連結プロモーターからの転写を刺激することができるが、多くは特定の細胞型において独占的に機能する。ウイルス由来の多くのエンハンサー/プロモーターエレメント、例えばSV40、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、およびCMVプロモーターは、広範囲の細胞型において活性であり、「構成的」または「遍在的」と称される。クローニング部位に挿入される核酸配列は、目的のポリペプチドをコードする任意のオープンリーディングフレームを有し得るが、ただし、コード配列が目的のポリペプチドをコードする場合、それは、適切なmRNA分子の産生を阻止し、および/または異常にスプライスされた、もしくは異常なmRNA分子を産生する可能性のある潜在的なスプライス部位を欠くべきである。
【0036】
終結領域は比較的互換性があるようであるため、主として使用される終結領域は便利なものの1つである。終結領域は、意図される目的の核酸配列に固有のものであってもよく、または別の源に由来するものであってもよい。
【0037】
「ベクター」という用語は、本明細書において使用される場合、一本鎖、二本鎖、環状、または超螺旋DNAまたはRNAを含むポリヌクレオチドを指す。典型的なベクターは、機能的遺伝子発現を可能にするために適切な距離で作用可能に連結された以下のエレメントを含み得る:複製起点、プロモーター、エンハンサー、5’mRNAリーダー配列、リボソーム結合部位、核酸カセット、終結およびポリアデニル化部位、ならびに選択可能マーカーシーケンス。特定の用途では、これらのエレメントのうちの1つ以上を省略することができる。ベクターはまた、発現させる核酸配列を挿入するための制限部位を含むことができる核酸カセットも含み得る。機能的ベクターにおいて、核酸カセットは、翻訳開始および終結部位を含む発現される核酸配列を含む。
【0038】
ベクターは、特定のコード配列(例えば、本開示のCTX-CARのコード配列)が適切な制御配列を有するベクター内に位置するように構築され、制御配列に対するコード配列の配置および配向は、コード配列が制御配列の「制御下」で作用可能に連結および/または転写されるようなものである。目的の特定のタンパク質をコードする配列の改変が、この目標を達成するために望ましくなり得る。例えば、いくつかの場合において、適切な配向で制御配列に作用可能に連結され得るように、またはリーディングフレームを維持するように配列を改変することが必要となり得る。制御配列および/または他の調節配列は、ベクターへの挿入の前にコード配列に連結されてもよい。代替として、コード配列は、すでに制御配列と、制御配列の調節制御により、およびその制御下にあるリーディングフレーム内にある適切な制限部位とを含む発現ベクターに直接クローニングされてもよい。
【0039】
「形質転換」、「形質導入」および「トランスフェクション」という用語はすべて、レシピエント細胞へのポリヌクレオチドの導入を示す。
【0040】
本発明は、細胞外抗原認識部分としてCTXもしくはその任意の機能的変異体、またはCTX様ペプチドもしくはその任意の機能的変異体を含むCARを提供する。CTX、CTX様ペプチドまたはこれらの機能的変異体を含むCARは、本明細書ではまとめて「CTX-CAR」と呼ばれる。ある特定の実施形態において、CTX-CARは、単一のCTX、CTX様ペプチドまたはこれらの機能的変異体を含む。ある特定の実施形態において、CTX-CARは、2つ以上のCTXポリペプチド、CTX様ペプチド、またはこれらの機能的変異体、例えば1~5(例えば1~2または2~3または2~4)個のCTXポリペプチド、CTX様ペプチドまたはこれらの機能的変異体を含む。上記の機能的変異体を含む複数のCTXポリペプチドおよびCTX様ペプチドが存在する場合、それらは細胞外ドメインにおいて連続的または非連続的に配置されてもよく、非連続的に配置された場合、本明細書に記載のペプチドリンカーによって任意選択で分離されていてもよい。そのようなCTX-CARは、細胞外ドメイン、膜貫通ドメインおよび少なくとも1つの細胞内シグナル伝達ドメイン内にさらなる部分またはドメインをさらに含んでもよい。本発明によるCTX-CARは、一般に以下の構造を有する:i)CTXもしくはその任意の機能的変異体またはCTX様ペプチドもしくはその任意の機能的変異体を含む抗原認識ドメイン/部分を含む細胞外ドメイン(本明細書では「エクトドメイン」とも呼ばれる)、ii)膜貫通ドメイン、およびiii)細胞内シグナル伝達ドメイン(本明細書では「エンドドメイン」とも呼ばれる)。ある特定の実施形態において、1~30個のアミノ酸のペプチドリンカーがCTX-CAR内に存在し、CARの様々なドメインを分離していてもよい。例えば、ペプチドリンカーは、抗原認識ドメイン/部分と、細胞外ドメイン内に存在し得る他のドメインとの間、抗原認識ドメイン/細胞外ドメインと膜貫通ドメインとの間、または膜貫通ドメインと細胞内シグナル伝達ドメインとの間に存在してもよい。ペプチドリンカーは、全ドメイン間に存在してもよく、またはドメイン/部分の一部の間にのみ存在してもよい。さらに、細胞内シグナル伝達ドメインが2つ以上のエレメントを含む場合、リンカーペプチドは、エンドドメイン内の個々のエレメントのいくつかまたはすべての間に存在してもよい。
【0041】
本発明のCTX-CARの細胞内シグナル伝達ドメインは、CTX-CARが配置されている宿主細胞の正常なエフェクター機能の少なくとも1つの活性化を担う。用語「エフェクター機能」は、分化細胞の特殊な機能を指す。宿主細胞が免疫エフェクター細胞である場合、本発明のCTX-CARの細胞内シグナル伝達ドメインは、正常な免疫エフェクター機能の少なくとも1つの活性化を担う。T細胞の免疫エフェクター機能は、例えば、サイトカインの分泌を含むがこれに限定されない細胞溶解活性またはヘルパー活性であり得る。ナイーブ、幹細胞様、記憶、または記憶型のT細胞における免疫エフェクター機能には、抗原依存性増殖が含まれるが、これに限定されない。したがって、「細胞内シグナル伝達ドメイン」という用語は、エフェクター機能シグナルを伝達し、細胞に特殊な機能(例えば、エフェクター機能および/または免疫エフェクター機能)を実行するように導くCTX-CARの部分を指す。通常、細胞内シグナル伝達ドメイン全体が使用されるが、多くの場合、細胞内シグナル伝達ドメイン全体を使用する必要はないであろう。細胞内シグナル伝達ドメインの切断部分が使用され得る限りにおいて、そのような切断部分が依然としてエフェクター機能/免疫エフェクター機能シグナルを伝達する限り、そのような切断部分は無傷のシグナル伝達ドメインの代わりに使用され得る。したがって、細胞内シグナル伝達ドメインという用語は、エフェクター機能/免疫エフェクター機能シグナルを伝達するのに十分な細胞内シグナル伝達ドメインの任意の切断部分を含むことを意味する。細胞内シグナル伝達ドメインの例には、これらに限定されないが、T細胞受容体のゼータ鎖由来のシグナル伝達ドメイン(CD3ゼータ;CD247)またはその任意の同族体(例えば、エータ、デルタ、ガンマ、もしくはイプシロン)、MB1鎖、B29、FcRIII、FcRI、ならびにシグナル伝達および/または共刺激分子の組み合わせ、例えばCD3ゼータ鎖およびCD28、CD27、4-1BB、DAP-10、OX40およびそれらの組合せ、ならびに他の同様の分子および断片、ならびに上記の突然変異、例えば免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ(ITAM)の改変が含まれる。ある特定の実施形態において、シグナル伝達ドメインはCD3ゼータ配列を含み、これは配列RVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPP R(配列番号26)により表され得る。FcγRIIIおよびFcRI等の活性化タンパク質のファミリーの他のメンバーの細胞内シグナル伝達部分が使用されてもよい。当業者は、対応するシグナル伝達ドメインを決定することができるであろう。さらに、シグナル伝達ドメイン配列のいずれも、1~5つのアミノ酸修飾を含んでもよく、これは本明細書において議論されるように選択され得る。
【0042】
好ましくは、CTX-CARの細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激シグナル伝達ドメインをコードする配列を含む。例えば、細胞内シグナル伝達ドメインは、一次シグナル伝達ドメインをコードする配列および共刺激シグナル伝達ドメインをコードする配列を含み得る。ある特定の実施形態において、共刺激ドメインは、41BB、OX40および/またはCD28由来の機能的シグナル伝達ドメインである。OX40由来の共刺激ドメインは、配列ALYLLRRDQRLPPDAHKPPGGGSFRTPIQEEQADAHSTLAKI(配列番号24)を有し得る。CD28由来の共刺激ドメインは、配列RSKRSRLLHSDYMNMTPRRPGPTRKHYQPYAPPRDFAAYRS(配列番号25)を有し得る。41BBからの共刺激ドメインは、配列KRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCEL(配列番号27)を有し得る。好ましくは、コードされた共刺激シグナル伝達ドメインは、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83と特異的に結合するリガンド、CDS、ICAM-1、GITR、BAFFR、HVEM(LIGHTR)、SLAMF7、NKp80(KLRF1)、CD160、CD19、CD4、CD8α、CD8β、IL2Rβ、IL2Rγ、IL7Rα、ITGA4、VLA1、CD49a、ITGA4、IA4、CD49D、ITGA6、VLA-6、CD49f、ITGAD、CDIId、ITGAE、CD103、ITGAL、CDIIa、LFA-1、ITGAM、CDIIb、ITGAX、CDIIc、ITGB1、CD29、ITGB2、CD18、LFA-1、ITGB7、TNFR2、TRANCE/RANKL、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244、2B4)、CD84、CD96(触覚)、CEACAM1、CRTAM、Ly9(CD229)、CD160(BY55)、PSGL1、CD100(SEMA4D)、CD69、SLAMF6(NTB-A、Lyl08)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR、LAT、GADS、SLP-76、PAG/Cbp、NKp44、NKp30、NKp46、またはNKG2Dの1つ以上から選択されるタンパク質の機能的シグナル伝達ドメインを含む。当業者は、これらのポリペプチドから対応する膜貫通領域を決定することができるであろう。さらに、任意の共刺激ドメイン配列はいずれも、1~5つのアミノ酸修飾を含んでもよく、これは本明細書で議論されるように選択され得る。ある特定の実施形態において、シグナル伝達ドメインは、CD3ゼータ-CD28-OX40、CD3ゼータ-41BB、またはCD28-41BBおよびCD3ゼータ-CD28-41BBを含む。
【0043】
好ましくは、抗原認識ドメインを含む細胞外ドメインは、細胞外スペーサーおよび/または膜貫通ドメインを介して細胞内シグナル伝達ドメインに連結されている。細胞外スペーサーは、好ましくは膜貫通タンパク質の細胞外領域の全部または一部を含む。好ましくは、細胞外スペーサー配列は、ヒト免疫グロブリン、すなわち、IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMのヒンジ領域および/または免疫グロブリン重鎖定常領域(CH1、リンカー領域、CH2および/またはCH3ドメインを含み得る)の一部、またはそれらの任意の組み合わせの1つ以上を含む。ある特定の実施形態において、細胞外スペーサーは、ヒトIgDのヒンジ領域の全部または一部を含む。ある特定の実施形態において、細胞外スペーサーは、ヒトIgG1のヒンジ領域の全部または一部を含む。ある特定の実施形態において、細胞外スペーサーは、ヒトIgDのヒンジ領域の全部または一部およびヒトIgG1のヒンジ領域の全部または一部を含む。ある特定の実施形態において、細胞外スペーサーは、ヒトIgDのヒンジ領域の全部または一部、ならびにヒトIgG1の重鎖定常領域のCH2およびCH3ドメインの全部または一部を含む。ある特定の実施形態において、細胞外スペーサーは、ヒトIgDのヒンジ領域の全部または一部、ヒトIgG1のヒンジ領域の全部または一部、ならびにヒトIgG1の重鎖定常領域のCH2およびCH3ドメインの全部または一部を含む。ある特定の実施形態において、細胞外スペーサーは、ヒトIgG1のヒンジ領域の全部または一部、ならびにヒトIgG1の重鎖定常領域のCH2およびCH3ドメインの全部または一部を含む。ある特定の実施形態において、細胞外スペーサーは、ヒトIgDのヒンジ領域の全部、ヒトIgG1のヒンジ領域の全部または一部を含み、重鎖定常領域は、ヒトIgG1のCH2およびCH3ドメインの全部または一部を含む。好ましくは、ヒンジ領域アミノ酸配列は、免疫グロブリン、例えばIgDまたはIgG1由来のヒンジ領域アミノ酸配列を含み、アミノ酸配列は、1~5つのアミノ酸修飾を含み、これは本明細書において議論されるように選択され得る。好ましくは、重鎖定常領域のCH2およびCH3ドメインは、免疫グロブリン、例えばIgG1由来のCH2およびCH3ドメイン免疫グロブリン重鎖定常領域アミノ酸配列を含み、アミノ酸配列は、1~5つのアミノ酸修飾を含み、これは本明細書において議論されるように選択され得る。前述のいずれにおいても、細胞外スペーサーは、配列番号2(Ser-Gly-Gly-Gly)または配列番号3(Ser-Gly-Gly-Gly-Gly)の配列を有するリンカー等のリンカーをさらに含んでもよく、これは、細胞外スペーサーをCTXまたはCTX様ペプチド(または上記のいずれかの機能的変異体)を含む細胞外ドメインに連結する、1~10コピーを有して存在してもよい。
【0044】
ある特定の実施形態において、抗原認識ドメインは、柔軟性リンカーを介して膜貫通ドメインに連結されている。柔軟性リンカーは、細胞外スペーサーに加えて、または本明細書に記載の細胞外空間の代わりに存在してもよい。ある特定の実施形態において、細胞外ドメイン/抗原認識ドメインは、柔軟性リンカーを介して細胞外スペーサーに連結されている。好ましくは、柔軟性リンカーは、例えば、グリシンおよびセリンを含む。好ましくは、柔軟性リンカーは、配列番号2(Ser-Gly-Gly-Gly)または配列番号3(Ser-Gly-Gly-Gly-Gly)の配列を有するポリペプチドを含み、nは、1~10までの整数である。好ましくは、各柔軟性リンカーは、約1~25アミノ酸、好ましくは約1~15アミノ酸、好ましくは約1~10アミノ酸、好ましくは約4~24アミノ酸、好ましくは約5~20アミノ酸、好ましくは約5~20アミノ酸、約5~15アミノ酸、好ましくは約5~12アミノ酸を含むポリペプチドである。好ましくは、リンカーは、(Ser-Gly-Gly-Gly)であり、nは3である。
【0045】
好ましくは、本発明のCTX-CARは、当技術分野において既知の任意の分子の膜貫通ドメインに対応する、またはそれに由来する、またはそれから得られる膜貫通ドメインを含む。例えば、膜貫通ドメインは、CD8分子またはCD28分子のものに対応し得る。CD8は、T細胞受容体(TCR)に対する共受容体として働く膜貫通糖タンパク質であり、主に細胞傷害性T細胞の表面に発現する。最も一般的な形態のCD8は、CD8αおよびCD8β鎖で構成される二量体として存在する。CD28は、T細胞上に発現し、T細胞活性化に必要な共刺激シグナルを提供する。CD8ポリペプチド由来の膜貫通ドメインは、配列IYIWAPLAGTCGVLLLSLVITLYC(配列番号23)、特に配列番号23のアミノ酸1~21、1~23または1~24を有し得る。CD28は、CD80(B7.1)およびCD86(B7.2)の受容体である。CD28ポリペプチド由来の膜貫通ドメインは、配列FWVLVVVGGVLACYSLLVTVAFIIFWV(配列番号22)を有し得る。好ましくは、CD8およびCD28は、ヒトのものである。本発明のCTX-CARの好ましい膜貫通ドメインには、これらに限定されないが、CD28、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154、KIRDS2、OX40、CD2、CD27、LFA-1(CDlla、CD18)、ICOS(CD278)、4-1BB(CD137)、GITR、CD40、BAFFR、HVEM(LIGHTR)、SLAMF7、NKp80(KLRF1)、CD160、CD19、IL2Rβ、IL2R γ、IL7Rα、ITGA1、VLA1、CD49a、ITGA4、IA4、CD49D、ITGA6、VLA-6、CD49f、ITGAD、CDlld、ITGAE、CD103、ITGAL、CDl la、LFA-1、ITGAM、CDllb、ITGAX、CDl lc、ITGB1、CD29、ITGB2、CD18、LFA-1、ITGB7、TNFR2、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244、2B4)、CD84、CD96(Tactile)、CEACAM1、CRTAM、Ly9(CD229)、CD160(BY55)、PSGL1、CD100(SEMA4D)、SLAMF6(NTB-A、Lyl08)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR、PAG/Cbp、NKp44、NKp30、NKp46、NKG2D、および/またはNKG2Cから選択されるポリペプチド由来の膜貫通ドメインの全部または一部が含まれる。当業者は、これらのポリペプチドから対応する膜貫通領域を決定することができるであろう。
【0046】
CTX-CARは、上述の膜貫通ドメインのいずれか1つおよび上述の細胞内T細胞シグナル伝達ドメインのいずれか1つ以上(例えば、1つ、2つ、3つ、または4つ)を任意の組み合わせで含み得る。例えば、CTX-CARは、CD28膜貫通ドメインならびにCD28およびCD3ζの細胞内T細胞シグナル伝達ドメインを含んでもよい。さらに、膜貫通ドメイン配列のいずれも、1~5つのアミノ酸修飾を含んでもよく、これは本明細書において議論されるように選択され得る。
【0047】
本発明の好ましいCTX-CARは、CTXまたはCTX様ペプチドまたはこれらの機能的変異体を含む抗原認識ドメイン、抗原認識ドメインを細胞外スペーサーに連結する任意のリンカー;免疫グロブリン分子由来のヒンジ領域の全部もしくは一部、および/または免疫グロブリン重鎖定常領域の全部もしくは一部を含む細胞外スペーサー;免疫エフェクター細胞の膜貫通領域に由来する膜貫通領域;ならびに本明細書に記載されるような少なくとも1つのシグナル伝達ドメインおよび任意の共刺激シグナル伝達ドメインを含む細胞内シグナル伝達領域を含む。CTXを含む抗原認識ドメイン、(Ser-Gly-Gly-Gly)を含むリンカー(配列番号2);IgDヒンジおよびIgG1のCH2CH3ドメインに由来するヒンジ領域を含む細胞外スペーサー;CD-28の膜貫通領域に由来する膜貫通領域;ならびにCD28/Ox40およびCD3ζを含む細胞内シグナル伝達領域を含む本発明の好ましいCTX-CARのコンストラクトは、図1(上部パネル)に示される。図1(下部パネル)はまた、ランダムペプチド配列(MRLNLIK)(配列番号5)、(Ser-Gly-Gly-Gly)(配列番号2)を含むリンカー;IgDヒンジおよびIgG1のCHCHドメインに由来するヒンジ領域を含む細胞外スペーサー;CD-28の膜貫通領域に由来する膜貫通領域;ならびにCD28/Ox40およびCD3ζを含む細胞内シグナル伝達領域を含むCTXまたはCTX様ペプチドまたはその機能的変異体を欠くCTXコンストラクトを示す。図2は、膜に挿入された図1のCTX-CARおよびnoCTX-CARを示す。
【0048】
本発明の他の好ましいCTX-CARを図3に示す。図3の上部のコンストラクトのCTX-CARは、CTXを含む抗原認識ドメイン、(Ser-Gly-Gly-Gly)(配列番号2)を含むリンカー;IgDヒンジおよびIgG1のCH2CH3ドメインに由来するヒンジ領域を含む細胞外スペーサー;CD-28の膜貫通領域に由来する膜貫通領域;ならびにCD3ζのみを含む細胞内シグナル伝達ドメインを含む典型的な第一世代CTX-CARを示す。図3の下部のコンストラクトは、CTXを含む抗原認識ドメイン、(Ser-Gly-Gly-Gly)(配列番号2)を含むリンカー;IgDヒンジおよびIgG1のCHCHドメインに由来するヒンジ領域を含む細胞外スペーサー;CD-28の膜貫通領域に由来する膜貫通領域を含み、機能的細胞内シグナル伝達ドメインを欠くCTX-CARを示す。
【0049】
本明細書に記載のCTX-CARの機能的部分は、本発明の範囲に含まれる。CTX-CARに関して使用される場合の「機能的部分」という用語は、本発明のCARの任意の部分または断片を指し、その部分または断片は、それがその一部であるCTX-CAR(親CTX-CAR)の生物学的活性を保持する。機能的部分は、例えば、標的細胞を認識する、または疾患を検出、処置、もしくは予防する能力を保持するCTX-CARのそれらの部分を、親CTX-CARと同様の程度、同程度、またはより高い程度まで包含する。親CTX-CARをコードする核酸配列に関して、CTX-CARの機能的部分をコードする核酸配列は、例えば、親CARの約10%、25%、30%、50%、68%、80%、90%、95%、またはそれ以上を含むタンパク質をコードし得る。CTX-CARの機能的部分は、その部分のアミノ末端もしくはカルボキシ末端、または両方の末端に追加のアミノ酸を含み得、追加のアミノ酸は、親CTX-CARのアミノ酸配列には見られない。望ましくは、追加のアミノ酸は、例えば、標的細胞を認識し、癌を検出し、癌を処置または予防する等の機能的部分の生物学的機能を妨害しない。より望ましくは、追加のアミノ酸は、親CTX-CARの生物学的活性と比較してCTX-CARの生物学的活性を増強する。
【0050】
本発明はまた、本発明のCTX-CARの機能的変異体も提供する。「機能的変異体」という用語は、本明細書において使用される場合、本開示のCTX-CARとの実質的もしくは有意な配列同一性または類似性を有するCTX-CAR、ポリペプチド、またはタンパク質を指し、この機能的変異体は、それがその変異体であるCTX-CAR(親CTX-CAR)の生物学的活性を保持する。機能的変異体は、例えば、親CTX-CARと同様の程度、同程度、またはより高い程度まで標的細胞を認識する能力を保持する親CTX-CARのそれらの変異体を包含する。本開示の親CARをコードする核酸配列に関して、CTX-CARの機能的変異体をコードする核酸配列は、例えば、親CTX-CARをコードする核酸配列と約10%同一、約25%同一、約30%同一、約50%同一、約65%同一、約80%同一、約90%同一、約95%同一、または約99%同一であってもよい。
【0051】
機能的変異体は、例えば、少なくとも1つのアミノ酸修飾(例えば、これらに限定されないが、欠失、挿入および置換)を有するCTX-CARのアミノ酸配列を含むことができ、当業者に知られているように、所望のCTX-CAR機能的変異体を生成するように選択され得る。アミノ酸修飾を選択するための指針は、本明細書に提供される。
【0052】
一実施形態において、本開示のCTX-CARは、細胞外抗原認識部分としてCTXを利用する。一実施形態において、本開示のCTX-CARは、細胞外抗原認識部分としてCTX様ペプチドを利用する。別の実施形態において、本開示のCTX-CARは、細胞外抗原認識部分としてCTXの機能的変異体を利用する。別の実施形態において、本開示のCTX-CARは、細胞外抗原認識部分としてCTXの機能的変異体を利用し、CTXのそのような機能的変異体は、CTX(配列番号1)と比較して1つ以上のアミノ酸修飾(例えば、これらに限定されないが、欠失、挿入および置換)を含む。別の実施形態において、本開示のCTX-CARは、細胞外抗原認識部分としてCTXの機能的変異体を利用し、CTXのそのような機能的変異体は、配列番号1との70%、80%、90%、95%またはそれ以上の相同性を有する配列を含む。別の実施形態において、本開示のCTX-CARは、細胞外抗原認識部分としてCTX様ペプチドの機能的変異体を利用する。別の実施形態において、本開示のCTX-CARは、細胞外抗原認識部分としてCTX様ペプチドの機能的変異体を利用し、CTX様ペプチドのそのような機能的変異体は、配列番号6~21のCTX様ペプチドと比較して、1つ以上のアミノ酸修飾(例えば、これらに限定されないが、欠失、挿入および置換)を含む。別の実施形態において、本開示のCTX-CARは、細胞外抗原認識部分としてCTX様ペプチドの機能的変異体を利用し、CTX様ペプチドのそのような機能的変異体は、配列番号6~21の配列との70%、80%、90%、95%またはそれ以上の相同性を有する。
【0053】
ある特定の実施形態において、CTXまたはCTX様ペプチドの機能的変異体は、親ポリペプチド(CTXまたはCTX様ペプチド)に存在するシステイン残基(通常6個)のすべてを保持している。ある特定の実施形態において、機能的変異体は、親ポリペプチド(CTXまたはCTX様ペプチド)に対して1~6つのアミノ酸修飾(例えば、置換、修飾または欠失)を有する。ある特定の実施形態において、機能的変異体は1~2、3~4または5~6つの修飾を有する。ある特定の実施形態において、アミノ酸修飾は、親ポリペプチド(CTXまたはCTX様ペプチド)に存在するシステイン残基(通常6個)を含まない。
【0054】
アミノ酸修飾(例えば、これらに限定されないが、欠失、挿入および置換)は、当業者に知られているように、所望のCTXおよび/またはCTX様ペプチド機能的変異体を生成するように選択され得る。例えば、保存的置換または類似の特性を有するアミノ酸の置換は許容されると推測される。さらに、関連ポリペプチドに見られる特定の欠失、挿入および置換は、十分に許容されると推測される。
【0055】
配列番号1および6~21のアミノ酸配列に対する保存的修飾(および対応するコード化ヌクレオチドに対する修飾)は、天然に存在するCTXまたはCTX様ペプチドと類似の機能的および化学的特性を有するCTXまたはCTX様ペプチドの機能的変異体を産生する。「保存的アミノ酸置換」または「保存的変異」という語句は、共通の性質を有する別のアミノ酸による1つのアミノ酸の置換を指す。保存的変異の例には、同じアミノ酸サブグループ内のアミノ酸のアミノ酸置換、例えば、正電荷が維持され得るようなアルギニンに対するリシンおよびその逆;負電荷が維持され得るようなアスパラギン酸に対するグルタミン酸およびその逆;遊離-OHが維持されるようなトレオニンに対するセリン;ならびに遊離の-NHが維持され得るようなアスパラギンに対するグルタミンが含まれる。「保存的アミノ酸置換」は、その位置におけるアミノ酸残基の極性または電荷にほとんどまたは全く影響がないように、天然アミノ酸残基を非天然残基で置換することを含み得る。さらに、ポリペプチド中のいかなる天然残基もアラニンで置換されていてもよい。
【0056】
保存的アミノ酸置換はまた、生物系における合成ではなく化学的ペプチド合成によって典型的に組み込まれる天然に存在しないアミノ酸残基も包含する。これらには、ペプチド模倣体、および他の逆または反転形態のアミノ酸部分が含まれる。当業者であれば、本明細書に記載の核酸およびポリペプチド分子が化学的に合成することも、また組み換え手段によって産生することもできることを理解するであろう。
【0057】
天然に存在する残基は、共通する側鎖特性に基づいて、以下のクラスに分類することができる。1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;3)酸性:Asp、Glu;4)塩基性:His、Lys、Arg;5)鎖配向に影響を与える残基:Gly、Pro;および6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0058】
特に非保存的アミノ酸が類似の活性を有する関連ポリペプチド中に存在する場合、そのような非保存的アミノ酸置換もまた企図される。例えば、非保存的置換は、アミノ酸クラスの1つのメンバーを他のクラスのメンバーと交換することを含み得る。そのような置換残基は、関連するCTXポリペプチドオルソログと相同であるCTXもしくはCTX様ペプチド機能的変異体の領域に、または分子の非相同領域に導入することができる。
【0059】
そのような変更を加える際に、アミノ酸のヒドロパシー指数が考慮され得る。各アミノ酸には、それらの疎水性および電荷特性に基づいてヒドロパシー指数が割り当てられており、これらは以下の通りである。イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/シスチン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(-0.4);トレオニン(-0.7);セリン(-0.8);トリプトファン(-0.9);チロシン(-1.3);プロリン(-1.6);ヒスチジン(-3.2);グルタメート(-3.5);グルタミン(-3.5);アスパラギン酸(-3.5);アスパラギン(-3.5);リシン(-3.9);およびアルギニン(-4.5)。タンパク質に相互作用的生物学的機能を付与する際のヒドロパシーアミノ酸指数の重要性は、当技術分野において理解されている(Kyte et al.,J.Mol.Biol.,157:105-131,1982)。特定のアミノ酸は、同様のヒドロパシー指数またはスコアを有する他のアミノ酸と置換され得、それでもなお同様の生物学的活性を保持し得ることが知られている。ヒドロパシー指数に基づいて変更を加える際には、ヒドロパシー指数が±2以内であるアミノ酸の置換を使用することができ、代替の実施形態において、ヒドロパシー指数は±1であり、さらに別の代替の実施形態において、ヒドロパシー指数は±0.5以内である。
【0060】
同様のアミノ酸の置換が親水性に基づいて効果的になされ得ることもまた、当技術分野において理解されている。その隣接アミノ酸の親水性によって支配されるポリペプチドの最大の局所平均親水性は、タンパク質の生物学的特性と相関する。以下の親水性値がアミノ酸残基に割り当てられている。アルギニン(+3.0);リシン(+3.0);アスパラギン酸(+3.0±0.1);グルタメート(+3.0±0.1);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);トレオニン(-0.4);プロリン(-0.5±0.1);アラニン(-0.5);ヒスチジン(-0.5);システイン(-1.0);メチオニン(-1.3);バリン(-1.5);ロイシン(-1.8);イソロイシン(-1.8);チロシン(-2.3);フェニルアラニン(-2.5);トリプトファン(-3.4)。同様の親水性値に基づいて変更を加える際には、親水性値が±2以内であるアミノ酸の置換を用いることができ、他の実施形態において、親水性値は±1であり、さらに別の代替の実施形態において、親水性値は±0.5以内である。
【0061】
所望のアミノ酸置換(保存的か非保存的かにかかわらず)は、そのような置換が望まれる時点で当業者によって決定され得る。例えば、アミノ酸置換は、CTXもしくはCTX様ポリペプチドの重要な残基を同定するため、または本開示のCTX-CARの活性(例えば、エフェクター機能および/もしくは免疫エフェクター機能)を増加もしくは減少させるためにCTXもしくはCTX様ポリペプチドと特定の結合標的との親和性を増加もしくは減少させるために使用され得る。
【0062】
一実施形態において、CTXの機能的変異体は、配列番号1のアミノ酸配列に対して50%、70%、80%、90%、95%またはそれ以上の同一性を共有するものである。一実施形態において、CTXの機能的変異体は、配列番号1のアミノ酸配列に対して80%、90%、95%またはそれ以上の同一性を共有するものである。一実施形態において、CTXの機能的変異体は、配列番号1のアミノ酸配列に対して95%以上の同一性を共有するものである。
【0063】
一実施形態において、CTX様ポリペプチドの機能的変異体は、配列番号6~21の1つのアミノ酸配列に対して50%、70%、80%、90%、95%またはそれ以上の同一性を共有するものである。一実施形態において、CTX様ポリペプチドの機能的変異体は、配列番号6~21の1つのアミノ酸配列に対して80%、90%、95%またはそれ以上の同一性を共有するものである。一実施形態において、CTX様ポリペプチドの機能的変異体は、配列番号6~21のうちの1つのアミノ酸配列に対して95%以上の同一性を共有するものである。
【0064】
一実施形態において、CTXの機能的変異体は、位置1、3、10、13、14、17、25および36(配列番号1に対する位置)に対応する位置に1つ以上の置換を含むものである。そのような実施形態の一態様において、示された位置におけるそのようなCTX機能的変異体の好ましい置換は、1位のMetに対するArg;3位のMetに対するLysまたはSer;10位のHisに対するProまたはGln;13位のAlaに対するSerまたはThr;14位のArgに対するLys;17位のAspのAlaまたはTyr;25位のArgに対するLys;および36位のArgに対するAlaを含む。そのような実施形態のある特定の態様において、CTXの機能的変異体は、示された位置からの6以下の置換、示された位置からの4以下の置換、または示された位置からの2以下の置換を含む。
【0065】
一実施形態において、CTXの機能的変異体は、23および24位(配列番号1に対する位置)のアミノ酸の欠失を有する、または有さない、9~11、14~15、17~18、25および29位に対応する位置に1つ以上の置換を含むものである。そのような実施形態の一態様において、示された位置でのそのようなCTX機能的変異体に対する好ましい置換は、9位のAspに対するArg;10位のHisに対するProまたはGln;11位のGlnに対するAsnまたはAsp;14位のArgに対するLys、Gln、またはAsn;15位のLysに対するArgまたはGln;17位のAspに対するAsn、Ala、ArgまたはTyr;18位のAspに対するGluまたはAla;25位のArgに対するTyr、Lys、Ile、Gly、またはAsn;29位のTyrに対するPhe;および36位のArgに対するAsnまたはAlaを含む。そのような実施形態の別の態様において、示された位置におけるそのようなCTX機能的変異体に対する好ましい置換は、9位のAspに対するArg;10位のHisに対するPro;11位のGlnに対するAsn;14位のArgに対するLysまたはGln;15位のLysに対するGln;17位のAspに対するArg;18位のAspに対するAla;25位のArgに対するAsn;29位のTyrに対するPhe;および36位のArgに対するAsnを含む。そのような実施形態のある態様において、CTXの機能的変異体は、示された位置からの6以下の置換、示された位置からの4以下の置換、または示された位置からの2以下の置換を含む。
【0066】
一実施形態において、CTXの機能的変異体は、23および24位(配列番号1に対する位置)のアミノ酸の欠失を有する、または有さない、1、3、9~15、17~18、21、25~26、29~31および36位に対応する位置に置換を含むものである。そのような実施形態の一態様において、示された位置でのそのようなCTX機能的変異体に対する好ましい置換は、1位のMetに対するArg;3位のMetに対するLys、SerまたはGly;9位のAspに対するArg;10位のHisに対するProまたはGln;11位のGlnに対するAsnまたはAsp;12位のMetに対するTyr;13位のAlaに対するSer、ThrまたはGlu;14位のArgに対するLys、Gln、またはAsn;15位のLysに対するArgまたはGln;17位のAspに対するAsn、Ala、ArgまたはTyr;18位のAspに対するGluまたはAla;21位のGlyに対するArgまたはLys;25位のArgに対するTyr、Lys、Ile、GlyまたはAsn;27位のGlyに対するLys;29位のTyrに対するPhe;30位のGlyに対するPhe;31位のAspに対するGlyまたはTyr;36位のArgに対するAsnまたはAlaを含む。そのような態様のある特定の態様において、CTXの機能的変異体は、示された位置からの12以下の置換、示された位置からの10以下の置換、示された位置からの8以下の置換、示された位置からの6以下の置換、示された位置からの6以下の置換、示された位置からの4以下の置換、または示された位置からの2以下の置換を含む。
【0067】
別の実施形態において、CTXの機能的変異体は、配列番号1のアミノ酸2~36の配列を有するポリペプチドである。そのような実施形態の一態様において、CTX変異体は、アミノ酸1、3、10、13、14、17、25および36について説明されたアミノ酸置換、上記アミノ酸9~11、14~15、17~18、25および29について説明されたアミノ酸置換、または上記アミノ酸1、3、9~15、17~18、21、25~26、29~31および36について説明されたアミノ酸置換を有していてもよい。
【0068】
別の実施形態において、CTXの機能的変異体は、配列番号1のアミノ酸1~35の配列を有するポリペプチドである。そのような実施形態の一態様において、CTX変異体は、アミノ酸1、3、10、13、14、17、25および36について説明されたアミノ酸置換、上記アミノ酸9~11、14~15、15、17~18、25および29について説明されたアミノ酸置換、または上記アミノ酸1、3、9~15、17~18、21、25~26、29~31および36について説明されたアミノ酸置換を有していてもよい。
【0069】
別の実施形態において、CTXの機能的変異体は、配列番号1のアミノ酸2~35の配列を有するポリペプチドである。そのような実施形態の一態様において、CTX変異体は、アミノ酸1、3、10、13、14、17、25および36について説明されたアミノ酸置換、上記アミノ酸9~11、14~15、17~18、25および29について説明されたアミノ酸置換、または上記アミノ酸1、3、9~15、17~18、21、25~26、29~31および36について説明されたアミノ酸置換を有していてもよい。
【0070】
本発明によるCTX-CARは、当技術分野において知られている任意の手段によって製造することができるが、好ましくは組換えDNA技術を使用して製造される。CTX-CARのいくつかの領域をコードする核酸配列は、分子クローニングの標準的な技術(ゲノムライブラリースクリーニング、PCR、プライマー支援ライゲーション、部位特異的突然変異誘発等)によって調製され、また完全なコード配列にアセンブルされ得る。得られたコード領域は、好ましくは発現ベクターに挿入され、また免疫エフェクター細胞、好ましくはTリンパ球細胞株、最も好ましくは自己由来のTリンパ球細胞株、CTX-CARの発現のためのサードパーティ由来T細胞株/クローン、形質転換体液性または異種免疫学的エフェクター細胞株等の適切な発現宿主細胞株を変換するために使用される。ナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージ、好中球、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、リンホカイン活性化キラー(LAK)細胞、記憶T細胞、調節性T細胞、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、ガンマデルタT細胞(γδT細胞)およびこれらの細胞に分化する幹細胞もまた使用され得る。好ましくは、γδ-T細胞が宿主細胞株として使用される。本明細書において使用される場合、「核酸コンストラクト」または「核酸配列」とは、発現宿主細胞株、例えばこれに限定されないがT細胞に形質転換または導入することができ、生成物(例えばキメラ受容体)を産生するように発現され得るDNA分子等の核酸分子を意味することが意図される。したがって、本発明はさらに、本発明のCTX-CARをコードする単離または精製核酸配列を提供する。「核酸配列」は、一本鎖または二本鎖であってもよく、また非天然または改変ヌクレオチドを含み得る、DNAまたはRNAのポリマー、すなわちポリヌクレオチドを包含することが意図される。「核酸」および「ポリヌクレオチド」という用語は、本明細書において使用される場合、リボヌクレオチド(RNA)またはデオキシリボヌクレオチド(DNA)のいずれかの任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態を指す。これらの用語は分子の一次構造を指し、したがって二本鎖および一本鎖のDNA、ならびに二本鎖および一本鎖のRNAを含む。この用語は、同等物として、ヌクレオチド類似体および修飾ポリヌクレオチド、例えば、これらに限定されないがメチル化および/または封鎖ポリヌクレオチドから作製されたRNAまたはDNAのいずれかの類似体を含む。本発明において使用される核酸コンストラクトにおいて、プロモーターは本発明のCTX-CARをコードする核酸配列に作用可能に連結されており、すなわちそれらは、キメラ受容体をコードするDNAからのメッセンジャーRNAの転写を促進するように配置されている。プロモーターは、ゲノム起源のものでも、または合成的に生成されたものでもよい。T細胞において使用するための種々のプロモーターは、当技術分野において周知である。プロモーターは、構成的または誘導性であってもよく、誘導は、例えば、特定の細胞型または特定の成熟レベルに関連する。代替として、いくつかの周知のウイルスプロモーターもまた好適である。目的のプロモーターには、β-アクチンプロモーター、SV40初期および後期プロモーター、免疫グロブリンプロモーター、ヒトサイトメガロウイルスプロモーター、レトロウイルスプロモーター、およびFriend脾臓フォーカス形成ウイルスプロモーターが含まれる。プロモーターは、エンハンサーと会合していても、またはしていなくてもよく、エンハンサーは、特定のプロモーターと天然に会合していても、または異なるプロモーターと会合していてもよい。
【0071】
本発明のCTX-CARを調製するための様々な操作は、インビトロで実施することができ、好ましくは、CTX-CARキメラコンストラクトは、標準的な形質転換またはトランスフェクション方法を用いて、適切な宿主細胞におけるクローニングおよび発現のためにベクターに導入される。したがって、各操作の後、DNA配列の連結から得られるコンストラクトがクローニングされ、ベクターが単離され、また配列が所望のキメラ受容体をコードすることを確実にするために配列がスクリーニングされる。配列は、制限分析、配列決定等によってスクリーニングすることができる。したがって、本発明は、本発明のCTX-CARまたはその機能的等価物をコードするベクターを含む。
【0072】
本発明のコンストラクトを発現するための適切な宿主細胞には、活性化されたときに標的細胞を死滅させることができる任意の免疫エフェクター細胞、好ましくはTリンパ球細胞株、最も好ましくは自己Tリンパ球細胞株、サードパーティ由来T細胞株/クローン、形質転換体液性または異種免疫学的エフェクター細胞株が含まれる。ナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージ、好中球、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、リンホカイン活性化キラー(LAK)細胞、記憶T細胞、調節性T細胞、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、ガンマデルタT細胞(γδ細胞)およびこれらの細胞に分化する幹細胞もまた使用され得る。好ましくはγδ-T細胞が宿主細胞株として使用される。
【0073】
当業者に周知であるように、対象からこれらの細胞を単離し増殖させるために様々な方法が容易に利用可能である。例えば、細胞表面マーカー発現の使用、または市販のキットの使用。キメラコンストラクトは、裸のDNAとして、または適切なベクター中で対象自身のT細胞に導入され得ることが企図される。裸のDNAを用いたエレクトロポレーションによってT細胞を安定的にトランスフェクトする方法は、当技術分野において知られている。裸のDNAは一般に、発現のために適切な向きでプラスミド発現ベクターに含まれる本発明のキメラ受容体をコードするDNAを指す。有利には、裸のDNAの使用は、本発明のキメラ受容体を発現するT細胞を産生するのに必要な時間を短縮する。
【0074】
したがって、本発明は、本発明のCTX-CARをコードするベクター、およびその機能的変異体を含む(すなわち形質転換または形質導入された)宿主細胞を含む。好ましくは、宿主細胞は、免疫エフェクター細胞、好ましくはT細胞、Tリンパ球細胞株、最も好ましくは自己Tリンパ球細胞株、CTX-CARの発現のためのサードパーティ由来T細胞株/クローン、形質転換体液性または異種免疫性エフェクター細胞株である。ナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージ、好中球、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、リンホカイン活性化キラー(LAK)細胞、記憶T細胞、調節性T細胞、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、ガンマデルタT細胞(γδ-T細胞)およびこれらの細胞に分化する幹細胞もまた使用され得る。好ましくは、γδ-T細胞が宿主細胞株として使用される。T細胞トランスフェクトまたは形質導入されたT細胞が、所望の調節および所望のレベルで表面膜タンパク質としてキメラ受容体を発現することができることが確立されると、所望のシグナル誘導を提供するためにキメラ受容体が宿主細胞中で機能するかどうかが決定され得る。続いて、対象における抗腫瘍応答を活性化するために、形質導入されたT細胞が対象に再導入または投与される。
【0075】
一実施形態において、本発明は、本開示のCTX-CARをコードする(すなわちその発現を導く)少なくとも1つのベクターを含む(すなわち形質転換または形質導入した)宿主細胞およびその機能的変異体、ならびに本明細書において開示されるような生存因子を含む。本開示の任意のCTX-CARが使用され得る。さらに、少なくとも1つのベクターは、ストレス誘発抗原受容体(例えば、これに限定されないが、NKG2D)をコードしてもよい(すなわちその発現を導く)。本明細書において議論されるように、生存因子は、さらなる治療的処置により作成される処置環境において宿主細胞が生存することを可能にする。ある特定の実施形態において、単一のベクターがCTX-CARおよび生存因子をコードする。ある特定の実施形態において、単一のベクターがCTX-CAR、生存因子およびストレス誘発抗原受容体をコードする。ある特定の実施形態において、2つ以上のベクターがCTX-CAR、生存因子およびストレス誘発抗原受容体をコードする(例えば、CTX-CARおよび生存因子をコードするベクターならびにストレス誘発抗原受容体をコードするベクター)。
【0076】
ある特定の実施形態において、キメラ抗原受容体(CAR)および生存因子(および任意選択でストレス誘発抗原受容体)の発現を導く少なくとも1つのベクターを含む宿主細胞が単離または精製される。ある特定の実施形態において、キメラ抗原受容体(CAR)および生存因子(および任意選択でストレス誘発抗原受容体)の発現を導く少なくとも1つのベクターを含む宿主細胞は、γδT細胞として単離または精製される。好ましくは、本開示のCTX-CARを発現する宿主細胞は、免疫エフェクター細胞、好ましくはT細胞またはNK細胞、さらに好ましくはγδ-T細胞である。そのような宿主細胞は、任意選択で、宿主細胞、例えば免疫エフェクター細胞が、追加の治療的処置(例えば、化学療法剤)により作成される処置環境において生存することを可能にする生存因子(例えば1種以上の化学療法剤に対する耐性を付与するポリペプチド)を発現するように操作されてもよい。そのような細胞は、本明細書において薬物耐性(DR)細胞と呼ばれ、治療におけるその使用は、本明細書において「薬物耐性免疫療法」(DRI)と呼ばれる。DR細胞およびDRIは、WO2011/053750に記載されており、その教示は参照により本明細書に組み入れられる。生存因子は、治療レジメンに対する耐性を提供する、ならびに/または生存因子および本開示のCTX-CARを含む細胞が治療環境(化学療法治療環境等)において生存することを可能にする、当技術分野において知られている任意の因子であってもよい。ある特定の実施形態において、さらなる治療的処置は、ヌクレオシド類似体化学療法薬、アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗生物質、トポイソメラーゼ阻害剤、有糸分裂阻害剤、分化剤、またはホルモン療法剤による処置であり、生存因子は、さらなる治療的処置に対する耐性を提供する。ある特定の実施形態において、生存因子は、MGMT、多剤耐性タンパク質1(MDR1)、または5’ヌクレオチダーゼII(NT5C2)である。他の生存因子には、例えば、ジヒドロ葉酸レダクターゼの薬物耐性変異体(L22Y-DHFR)およびチミジル酸シンターゼが含まれる。好ましくは、生存因子は、MGMTである。しかしながら、治療環境の性質(すなわち、本開示の細胞組成物と組み合わせて他のどの治療レジメンが患者に施されているか)に応じて、他の生存因子が使用されてもよい。
【0077】
本明細書において使用される場合、「追加の治療的処置により作成される処置環境において生存する」という語句は、「追加の治療的処置の存在下で生存する」という語句と同義的に使用され得、各語句は、宿主細胞が追加の治療的処置において使用される薬剤との直接接触下で生存する、またはさらなる治療的処置/薬剤の使用から生じる本発明の細胞組成物の環境における細胞毒性の存在下で生存しながら、まだその機能を実行する能力を指す。一実施形態において、追加の治療的処置は、追加の治療薬剤による処置である。DRIと共に使用するための追加の治療薬剤には、これらに限定されないが、アルキル化剤(例えば、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン);代謝拮抗薬(例えば、メトトレキサート(MTX)、5-フルオロウラシルまたはそれらの誘導体);DNA脱メチル化剤(代謝拮抗物質としても知られている;例えば、アザシチジン);置換ヌクレオチド;置換ヌクレオシド;抗腫瘍抗生物質(例えば、マイトマイシン、アドリアマイシン);植物由来の抗腫瘍薬剤(例えば、ビンクリスチン、ビンデシン、TAXOL(登録商標)、パクリタキセル、アブラキサン)シスプラチン;カルボプラチン;エトポシド等が含まれる。そのような薬剤にはさらに、これらに限定されないが、抗癌剤トリメトトレキセート(TMTX);テモゾロミド(TMZ);ラルチトレキセド;S-(4-ニトロベンジル)-6-チオイノシン(NBMPR);6-ベンジグアニジン(6-benzyguanidine)(6-BG);ニトロソウレア(例えば、BCNUとしても知られるビス-クロロエチルニトロソウレア、およびカルムスチン、CCNUとしても知られるロムスチン、+/-プロカルバジンおよびビンクリスチン(PCVレジメン)およびフォテムスチン);ドキソルビシン;シタラビン;カンプトテシン;およびそれらのいずれかの治療的誘導体が含まれる。
【0078】
本発明のCTX-CARを発現するDR免疫エフェクター細胞、例えばこれらに限定されないがT細胞、NK細胞、好ましくはγδ-T細胞は、本明細書に記載のCTX-CARおよび生存因子、ならびに任意選択で他のエレメント(例えば、自殺遺伝子および/またはストレス誘発抗原の受容体)をコードする、およびそれらを発現することができる核酸コンストラクトを組み込むことにより産生され得る。ある特定の実施形態において、単一の核酸コンストラクトは、CTX-CARおよび生存因子、ならびにさらなる任意選択のエレメント(例えば、自殺遺伝子および/またはストレス誘発抗原に対する受容体)をコードする。ある特定の実施形態において、別々の核酸コンストラクトが、それぞれのCTX-CARおよび生存因子、ならびに任意選択の他のエレメント(例えば、自殺遺伝子および/またはストレス誘発抗原の受容体)をコードする。ある特定の実施形態において、単一の核酸コンストラクトが、CTX-CARおよび生存因子をコードし、1つ以上の核酸コンストラクトが、さらなる任意選択のエレメント(例えば、自殺遺伝子および/またはストレス誘発抗原の受容体)をコードする。
【0079】
好ましくは、本開示のCTX-CARを発現する宿主細胞(例えば免疫エフェクター細胞、例えば、これらに限定されないが、T細胞、NK細胞、好ましくはγδ-T細胞、およびDR免疫エフェクター細胞を含む)は、ストレス誘発抗原の受容体をさらに含む。ある特定の実施形態において、本開示のCTX-CARを発現する宿主細胞は、ストレス誘発抗原受容体をコードする遺伝子をさらに含む。ある特定の実施形態において、本開示のCTX-CARを発現する宿主細胞は、自然にストレス誘発抗原受容体を発現する。ある特定の実施形態において、DR免疫エフェクター細胞は、ストレス誘発抗原の受容体をさらに含む。ある特定の実施形態において、本開示のCTX-CARを発現するDR免疫エフェクター細胞は、自然にストレス誘発抗原受容体を発現する。上記のある特定の実施形態において、ストレス誘発抗原受容体は、NKGD2である。ある特定の実施形態において、NKGD2受容体を含むがこれに限定されないストレス誘発抗原受容体は、DR免疫エフェクター細胞を含む宿主細胞上で増加したレベルまで誘発される。
【0080】
好ましくは、本開示のCTX-CARを発現する宿主細胞(例えば免疫エフェクター細胞、例えば、これらに限定されないが、T細胞、NK細胞、好ましくはγδ-T細胞、およびDR免疫エフェクター細胞を含む)は、対象に投与される組成物の成分である。
【0081】
一実施形態において、そのような組成物は、本開示のCTX-CARを発現する宿主細胞(例えば免疫エフェクター細胞、例えば、これらに限定されないが、T細胞、NK細胞、好ましくはγδ-T細胞、およびDR免疫エフェクター細胞を含む)ならびにさらなる免疫系細胞を含む。例えば、組成物は、本開示のCTX-CARを発現するγδT細胞およびNK細胞を含み得るか、または本開示のCTX-CARを発現するγδT細胞およびαβT細胞およびNK細胞を含み得る。好ましくは、組成物は、本開示のCTX-CARを発現するγδT細胞およびさらなる免疫系細胞を含み、γδT細胞は、全細胞集団の60%以上で存在する。ある特定の実施形態において、組成物は、本開示のCTX-CARを発現するγδT細胞およびNK細胞を含み、γδT細胞は、全細胞集団の60%以上で存在する。ある特定の実施形態において、組成物は、本開示のCTX-CARを発現するγδT細胞およびNK細胞を含み、γδT細胞は、全細胞集団の60%以上で存在し、NK細胞は、25%以下で存在する。ある特定の実施形態において、組成物は、本開示のCTX-CARを発現するγδT細胞およびαβT細胞を含み、γδT細胞は、全細胞集団の60%以上で存在する。ある特定の実施形態において、組成物は、本開示のCTX-CARを発現するγδT細胞およびαβT細胞を含み、γδT細胞は、全細胞集団の60%以上で存在し、αβT細胞は、5%以下で存在する。ある特定の実施形態において、組成物は、本開示のCTX-CARを発現するγδT細胞ならびにαβT細胞およびNK細胞を含み、γδT細胞は、全細胞集団の60%以上で存在する。ある特定の実施形態において、組成物は、本開示のCTX-CARを発現するγδT細胞、ならびにαβT細胞およびNK細胞を含み、γδT細胞は、全細胞集団の60%以上で存在し、αβT細胞は、全細胞集団の5%以下で存在し、NK細胞は、全細胞集団の25%以下で存在する。
【0082】
好ましくは、本開示のCTX-CARを発現する宿主細胞(例えば免疫エフェクター細胞、例えば、これらに限定されないが、T細胞、NK細胞、好ましくはγδ-T細胞、およびDR免疫エフェクター細胞を含む)は、60%、70%、80%、90%、95%以上の単一種類の免疫系細胞を含む。上記の一態様において、組成物は、60%、70%、80%、90%、95%以上のγδT細胞を含み、γδT細胞は、本開示のCTX-CARを発現する。上記の一態様において、組成物は、60%以上のγδT細胞を含み、γδT細胞は、本開示のCTX-CARを発現し、5%以下のαβT細胞およびまたは25%以下のNK細胞を含む。一実施形態において、存在する様々な細胞型の割合は、フローサイトメトリーによって決定される。
【0083】
生存因子(MGMT遺伝子等)の使用は、腫瘍に最大のストレスがかかる可能性がある時点で追加の治療的処置により作成される処置環境において生存するための、本開示の本開示のCTX-CARを発現する宿主細胞(例えば、DR免疫エフェクター細胞を含む免疫エフェクター細胞)を含む組成物を可能にする。ある特定の実施形態における腫瘍に対するストレス効果は、宿主細胞(例えばγδT細胞)上のNKG2D受容体等の受容体によって認識されるストレス抗原の発現を増加させる。化学療法によるストレス抗原の誘導と調節性T細胞の減少という二重の効果は、いずれかの個別のレジメンよりも腫瘍縮小を有意に改善する。遺伝子改変は、本開示の組成物を化学療法レジメン、例えばTMZのリンパ枯渇作用から保護し、また悪性腫瘍細胞が化学療法によって最大限のストレスを受ける時点で本開示の細胞組成物が低下していないT細胞毒性機能と組み合わせてTAAを介して腫瘍に特異的にアクセスすることを可能にする。本発明によるCTX-CARと組み合わせたDRIの使用は、本明細書において「DRI CTX-CAR」療法と呼ばれ、いずれかの化学療法(例えばTMZ)処置のみまたは例えばγδT細胞注入のみと比較した場合、生存を有意に延長して腫瘍量を減少させ、また全身的または神経学的に重大な悪影響を及ぼすことなくそれを達成すると考えられる。
【0084】
投与を容易にするために、本開示のCTX-CARを発現する宿主細胞(例えば免疫エフェクター細胞、例えば、これらに限定されないが、T細胞、NK細胞、好ましくはγδ-T細胞)は、医薬組成物を含む組成物にすることができ、または、さらに薬学的に許容され得る適切な担体もしくは希釈剤と共に、インビボ投与に適したインプラントにすることができる。そのような組成物またはインプラントを作製する手段は当技術分野において説明されている。適切な場合には、本開示のCTX-CARを発現する宿主細胞は、それらのそれぞれの投与経路における通常の方法で、カプセル、溶液、注射剤、吸入剤、またはエアロゾル等の半固体または液体形態の調製物に調合することができる。それが標的組織もしくは器官に達するまで組成物の放出および吸収を防止もしくは最小化するため、または組成物の時限放出を確実にするために、当技術分野において知られている手段が利用され得る。しかしながら、望ましくは、本開示のCTX-CARを発現する宿主細胞を無効にしない薬学的に許容される形態が用いられる。したがって、望ましくは、本開示のCTX-CARを発現する宿主細胞は、平衡塩溶液、好ましくはハンクス平衡塩溶液、または生理食塩水を含有する医薬組成物にすることができる。したがって、本発明は、本開示のCTX-CARを発現する宿主細胞および本発明のベクターで形質転換または形質導入された宿主細胞を含む医薬組成物を含む。好適には、宿主細胞は、免疫エフェクター細胞、例えば、これらに限定されないが、T細胞、NK細胞、好ましくはγδ-T細胞等である。
【0085】
本発明の医薬組成物は、単独で、または癌を治療するのに有用な他の確立された薬剤と組み合わせて使用することができる。単独で、または他の薬剤と組み合わせて送達されるかどうかにかかわらず、本発明の医薬組成物は、特定の効果を達成するために、哺乳動物、特にヒトの体の様々な経路および様々な部位を通して送達され得る。当業者は、2つ以上の経路が投与に使用され得るが、特定の経路が別の経路よりも即時的および有効な反応を提供し得ることを認識するであろう。例えば、皮内送達は、黒色腫の処置のために吸入よりも有利に使用され得る。局所送達または全身送達は、体腔への製剤の塗布もしくは点滴注入、エアロゾルの吸入もしくは注入、または筋肉内、静脈内、門脈内、肝内、腹腔内、皮下もしくは皮内投与を含む非経口的導入によって達成され得る。
【0086】
本発明の組成物は、各投薬単位、例えば注射剤が、単独で、または他の活性剤と適切に組み合わせて、所定量の組成物を含有する単位剤形で提供され得る。単位剤形という用語は、本明細書において使用される場合、各単位が所定量の本発明の組成物を単独で、または他の活性薬剤と組み合わせて含む、ヒトおよび動物対象の単位投薬量として適した物理的に別々の単位を指し、適宜薬学的に許容される希釈剤、担体、またはビヒクルと組み合わせて所望の効果を生じるのに十分な量で計算される。本発明の新規単位剤形の仕様は、特定の対象における医薬組成物に関連した特定の薬力学に依存する。
【0087】
好ましくは、現在単独で、または組成物の一部としてのいずれかで存在する治療有効量または十分な数の本開示のCTX-CARを発現する宿主細胞が、長期間の特異的応答が確立されるように対象に導入される。一実施形態において、応答は、癌の阻害を含む。一実施形態において、応答は、さもなければ本開示のCTX-CARによるそのような処置が行われなくなるであろうよりも大幅な程度までの、腫瘍のサイズの低減、または腫瘍成長もしくは再成長の排除、または転移の減少である。望ましくは、対象に導入される本開示のCTX-CARを発現する宿主細胞の量は、本開示のCTX-CARを発現する宿主細胞が存在しない、他の点では同じ条件と比較した場合、腫瘍サイズの10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、または100%の減少を引き起こす。
【0088】
したがって、投与される本開示のCTX-CARを発現する宿主細胞の量は、投与経路を考慮すべきであり、所望の治療応答を達成するために十分な数の本開示のCTX-CARを発現する宿主細胞が導入されるようになるべきである。さらに、本開示のCTX-CARを発現する各宿主細胞または本明細書に記載の組成物に含まれる他の細胞の量(例えば、接触させる各細胞当たりの量またはある特定の体重当たりの量)は、用途によって異なり得る。一般に、本開示のCTX-CARを発現する宿主細胞の濃度は、望ましくは、処置されている対象において、少なくとも約1xl10~約1x1010個の宿主細胞、さらにより好ましくは約1×10~約5×10個の宿主細胞を提供するのに十分であるべきであるが、それを超える、例えば約5×10個超の細胞、またはそれを下回る、例えば1×10個未満の細胞のいずれかでの任意の好適な量が利用され得る。投薬スケジュールは、十分に確立された細胞ベースの治療法に基づいてもよく、または代替の連続注入戦略が採用されてもよい。
【0089】
これらの値は、本発明の実践のために本発明の方法を最適化する際に医師によって利用される本開示のCTX-CARを発現する宿主細胞の範囲の一般的な指針を提供する。本明細書におけるそのような範囲の列挙は、特定の用途において保証され得るように、決してより多いまたはより少ない量の成分の使用を排除するものではない。例えば、実際の用量およびスケジュールは、組成物が他の医薬組成物と組み合わせて投与されるかどうかに応じて、または薬物動態、薬物の体内動態、および代謝における個体間差に応じて変動し得る。当業者は、特定の状況の危急に従って必要な調整を容易に行うことができる。
【0090】
治療効果のための適切な用量は、好ましくは一連の投薬サイクルで、1用量あたり約10~約1010個の宿主細胞であろう。好ましい投薬レジメンは、0日目に約10個の細胞から開始し、5日目までに約1010個の細胞の標的用量まで漸増的に増加する、4回の1週間漸増用量投薬サイクルからなる。適切な投与様式には、静脈内、皮下、腔内(例えばリザーバーアクセス装置による)、腹腔内、および腫瘍塊への直接注射が含まれる。
【0091】
本発明はまた、癌細胞を本開示のCTX-CARを発現する宿主細胞と接触させることを含む、癌の増殖を阻害する方法方法を提供する。本発明はまた、本開示のCTX-CARを発現する治療有効量の宿主細胞またはそのような細胞を含む医薬組成物等の本発明の組成物を患者に投与することを含む、患者における癌を処置する方法を提供する。好ましくは、処置される癌は、神経外胚葉起源のものである。好ましくは、処置される癌は、悪性神経膠腫、黒色腫、神経芽細胞腫、髄芽腫または小細胞肺癌である。
【0092】
本発明は、宿主細胞(例えば免疫エフェクター細胞、例えばT細胞、NK細胞、好ましくはγδ-T細胞)が、CTX-CARおよび任意選択で上述のDRIを可能にする遺伝子を発現するように遺伝的に改変され、そのような宿主細胞がそれを必要とするレシピエントに注入される細胞療法を含む。注入された細胞は、レシピエントの腫瘍細胞を死滅させることができる。抗体療法とは異なり、CTX-CARを発現する宿主細胞は、インビボで複製することができ、長期的な持続性をもたらし、これが継続的な腫瘍制御につながり得る。
【0093】
本発明はまた、宿主細胞(例えば免疫エフェクター細胞、例えばT細胞、NK細胞、好ましくはγδ-T細胞)が本発明のCTX-CARおよび任意選択でDRIを可能にする遺伝子を一時的に発現するように改変され、そのような宿主細胞がそれを必要とするレシピエントに注入される細胞療法を含む。注入された細胞は、レシピエントの腫瘍細胞を死滅させることができる。したがって、様々な態様において、患者に投与される免疫エフェクター細胞(例えば、これらに限定されないが、T細胞、NK細胞、および好ましくはγδ-T細胞等の免疫エフェクター細胞)は、免疫エフェクター細胞を患者に投与した後に、1ヶ月未満、例えば3週間、2週間、1週間存在する。
【0094】
細胞療法のためのそのような方法の様々な態様において、患者に投与される宿主細胞またはそれらの子孫は、宿主細胞を患者に投与してから少なくとも4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、13ヶ月、14ヶ月、15ヶ月、16ヶ月、17ヶ月、18ヶ月、19ヶ月、20ヶ月、21ヶ月、22ヶ月、23ヶ月、2年、3年、4年、または5年後も患者に存続する。
【0095】
一態様において、本開示のCTX-CARを発現する完全ヒト宿主細胞(例えば免疫エフェクター細胞、例えばT細胞、NK細胞、好ましくはγδ-T細胞)は、哺乳動物におけるエクスビボ免疫化および/またはインビボ治療のためのワクチンの一種であってもよい。一態様において、哺乳動物は、ヒトである。エクスビボ免疫化に関して、宿主細胞または宿主細胞を含む医薬組成物を含む組成物を哺乳動物に投与する前に、インビトロで以下のうちの少なくとも1つが行われる:i)宿主細胞の増殖、ii)CTX-CARをコードする核酸の宿主細胞への導入、および/またはiii)CTX-CARを発現する、もしくは発現することができる宿主細胞の凍結保存。エクスビボ手順は当技術分野において周知である。簡潔に説明すると、細胞を患者(例えばヒト)から単離し、本開示のCTX-CARを発現するように遺伝子改変する(すなわち、本明細書に開示されるCTX-CARを発現するベクターでインビトロで形質導入またはトランスフェクトする)。CTX-CAR改変宿主細胞は、治療上の利益を提供するために患者に投与され得る。患者は、好ましくはヒトであり、CTX-CAR改変宿主細胞は、患者に対して自己由来であってもよい。代替として、宿主細胞は、患者対して同種異系、同系または異種であってもよい。
【0096】
本明細書における本開示のCTX-CARを発現する宿主細胞は、他の知られている薬剤および治療と組み合わせて使用されてもよい。いくつかの実施形態において、1つの処置の送達は、投与の点で重複があるように、第2の送達の開始時に依然として行われている。これは、本明細書において「同時」または「並行送達」と呼ばれることがある。好ましくは、一方の処置の送達は他方の処置の送達が始まる前に終了する。いずれの状況でも、併用投与のため、処置はより効果的である。例えば、第2の処置がより効果的であり、例えば、第2の処置がより少なくても同等の効果が見られ、または第2の処置が第1の処置がない状態で投与された場合に見られるものよりも高い程度まで、第2の処置が症状を低減し、または同様の状況が第1の処置で見られる。好ましくは、送達は、症状の低減、または障害に関連する他のパラメーターが、他の処置の非存在下で送達された一方の処置で観察されるものよりも大きくなるような送達である。2つの処置の効果は、部分的に相加的、完全に相加的、または相加的よりも大きい可能性がある。送達は、送達された第1の処置の効果が、第2の処置が送達されたときに依然として検出可能であるような送達であってもよい。
【0097】
本開示のCTX-CARを発現する宿主細胞、および少なくとも1種の追加の治療薬剤は、同時に、同じもしくは別々の組成物で、または逐次的に投与され得る。逐次的投与の場合、本開示のCTX-CARを発現する宿主細胞を最初に投与することができ、追加の薬剤を2番目に投与することができ、または投与の順序を逆にすることができる。
【0098】
CTX-CAR療法、DRI-CTX-CAR療法および/もしくは他の治療薬剤、手順または様式は、活動性疾患の期間中、または寛解期もしくはより活動性の低い疾患の期間中に施されてもよい。CTX-CAR療法またはDRI-CTX-CAR療法は、他の処置の前、他の処置と並行して、他の処置の後(処置後)、または疾患の寛解の間に施されてもよい。
【0099】
CTX-CAR療法またはDRI-CTX-CAR療法および追加の薬剤(例えば、第2または第3の薬剤)を組み合わせて投与する場合、上記のうちの1つまたはすべての量または投薬量は、例えば単剤療法として、個々に使用される各薬剤の量または投薬量よりも多い、少ない、またはそれと同じ量または投薬量で投与され得る。CTX-CAR療法、DRI-CTX-CAR療法、追加の薬剤(例えば、第2または第3の薬剤)のある特定の実施形態において、上記のうちの1つまたはすべての量または投薬量は、例えば単剤療法として個々に使用される各薬剤の量または投薬量よりも低い(例えば、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%)。CTX-CAR療法、DRI-CTX-CAR療法、追加の薬剤(例えば、第2または第3の薬剤)の他の実施形態において、所望の効果(例えば、癌の阻害)をもたらす上記のうちの1つまたはすべての量または投薬量は、同じ治療効果を達成するために必要な、例えば単剤療法として個々に使用される各薬剤の量または投薬量よりも低い(例えば、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%低い)。
【0100】
好ましくは、本開示のCTX-CARを発現する宿主細胞は、これらに限定されないが、外科手術、化学療法、チェックポイント阻害剤、放射線、免疫抑制剤、例えばシクロスポリン、アザチオプリン、メトトレキサート、ミコフェノール酸、およびFK506、抗体、または他の免疫破壊剤、例えばCAMPATH、抗CD3抗体または他の抗体療法、シトキシン、フルダラビン、FK506、ラパマイシン、ミコフェノール酸、ステロイド、およびサイトカインを含む、さらなる治療的処置と組み合わせて使用されてもよい。ある特定の実施形態において、本開示のCTX-CARを発現する宿主細胞は、本明細書に記載されるように、DRとなるようにさらに改変され、DRIにおいて使用される。
【0101】
本明細書に記載の組成物はいずれも、キットに含まれていてもよい。非限定的な例では、キメラ受容体発現コンストラクト、キメラ受容体発現コンストラクトを生成するための1つ以上の試薬、発現コンストラクトのトランスフェクションのための細胞、および/または発現コンストラクトのトランスフェクションのための自己由来細胞を得るための1つ以上の器具(そのような器具は、シリンジ、ピペット、鉗子、および/または任意のそのような医学的に承認された装置であり得る)。キットは、1つ以上の適切に等分された本発明の組成物、または本発明の組成物を生成するための試薬を含み得る。キットの成分は、水性媒体または凍結乾燥形態のいずれかで包装され得る。キットの容器手段は、少なくとも1つのバイアル、試験管、フラスコ、瓶、シリンジまたは他の容器手段を含み得、その中に成分が配置され得、また好ましくは適切に等分され得る。キット内に2つ以上の成分がある場合、キットは一般に、追加の成分を別々に入れることができる第2、第3または他の追加の容器も含むであろう。しかしながら、成分の様々な組み合わせがバイアルに含まれてもよい。本発明のキットはまた、典型的には、キメラ受容体コンストラクトおよび任意の他の試薬容器を商業的販売のために厳重に閉じ込めて収容するための手段も含むであろう。そのような容器は、例えば、所望のバイアルが中に保持される射出成形またはブロー成形プラスチック容器を含み得る。
【実施例0102】
以下の実施例は説明のために提供されるものであり、決して特許請求された本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0103】
実施例1-CTX-CARおよびnoCTX-CARを生成するための方法
目的のCARを発現するT細胞を操作するために、CTX-CARおよびnoCTX001-CAR遺伝子をGブロック技術(IDT)を用いて合成した。簡潔に説明すると、CTX-CARの合成のために、クロロトキシン(サソリ毒;PRF:445665)MCMPCFTTDHQMARKCDDCCGGKGRGKCYGPQCLCR(配列番号1)のアミノ酸配列を、公開されているオンラインソフトウェア、および配列ATGTGTATGCCTTGCTTTACGACCGATCATCAGATGGCTAGAAAGTGTGTGGAGGCAAGGGACGAGGGAAATGCTATGGACCTCAATGTTTGTGTCGC(配列番号4)を有する統合DNA技術(IDT)オンラインコドン最適化ツールを用いて、ヌクレオチドに変換した。
【0104】
最適化されたヌクレオチド配列をGブロック技術(IDT)を用いて合成し、5’のCD8-アルファリーダー配列、およびリンカー配列SGGGx3、IgDヒンジならびにIgG1CH2およびCH3ドメインを含む細胞外ドメイン、CD28由来の膜貫通ドメイン、および3’にCD28/Ox40/CD3ζを含む細胞内シグナル伝達ドメインとインフレームでクローニングした。Gブロックを、Infusion法(Clontech)を用いてCD8α-IgDヒンジ、CH2CH3(IgGH1)およびTMドメイン、CD28/OX40/CD3ζをコードするSFGベクターにクローニングし、Sph1およびNot1制限ヌクレアーゼ(NEB)を用いて線状化した。noCTX-CARは同じ分子骨格を利用するが、CTX(配列番号1)の代わりに無関係なペプチド(配列番号5)を含み、機能実験において陰性対照として使用されるように設計された。図1は、CTX-CAR(上部パネル)およびnoCTX-CAR(下部パネル)コンストラクトの設計を示す。
【0105】
次いで、両方の遺伝子を、In-Fusionキット(Clontech)を用いてSFGレトロウイルスベクターのSphIおよびNotI部位にクローニングした。細菌コンピテント細胞(Stellar、Clontech)をライゲーションミックスで形質転換し、寒天上に播種した。いくつかの細菌クローンを選んでプラスミドミニプレップ(Qiagen)を調製し、これを試験して正しいプラスミドコンストラクトを選択した。制限酵素AfeI、XhoI、NcoIおよびNotIで切断したプラスミドDNAの制限パターンに基づいて正しいクローンを選択し、DNA断片のサイズをアガロースゲル上で決定した。
【0106】
実施例2-CTX-CARおよびnoCTX-CARを発現するT細胞およびジャーカット細胞の生成。
CTX-CARおよびnoCTX-CARベクターを、gag-polおよびenv(RDF)プラスミドと共に293T細胞のトランスフェクションに使用して、ウイルス上清を得た。CH2CH3ABを用いたフローサイトメトリー(CAR分子のIgDヒンジの検出)によって両方のCARの発現を試験するために、得られたウイルスを適用してJurkat E1-6T細胞株を形質導入した。続いて、両方のCARをコードするレトロウイルスベクターによるT細胞の形質導入を行った。
【0107】
簡潔に説明すると、293T細胞を、env(RDF114)およびgag-pol(PEG-PAM)と共にa)CTX-CARまたはb)noCTX-CARプラスミドにより同時トランスフェクトして、ウイルス上清を得た。293Tを72時間後に収集し、CH2CH3抗体で染色した(CAR発現を示すため)。図4の陰影を付けていない部分は、CH2CH3抗体で染色されたトランスフェクトしていない293T細胞を示し、陰影を付けた部分は、CTX-CARトランスフェクト293T細胞(左パネル)およびnoCTX-CARトランスフェクト293T細胞(右パネル)を示す。結果は、293-T細胞が両方のプラスミドコンストラクトで効率的に形質導入されたことを示している。
【0108】
ジャーカットおよびγδT細胞増殖を、CTX-CARおよびnoCTX-CARウイルスで形質導入した。72時間後に細胞を収集し、CH2CH3抗体で染色した(CAR発現を示するため)。CTX-CARおよびnoCTX-CARをコードするウイルスを形質導入されたジャーカットT細胞は、この実験において示されるように、両方の導入遺伝子を細胞表面上に発現し、目的の遺伝子の発現が示された。得られたレトロウイルスをガンマデルタT細胞に効率的に形質導入し、両方のCARの発現を確認した(図5)。
【0109】
実施例3-CTX-CARを発現するジャーカット細胞は、標的神経膠腫細胞に選択的に結合する
この実施例は、本開示のCTX-CARを発現するエフェクター細胞が、神経膠腫細胞に選択的に結合することを示す。本開示のCTX-CARまたはnoCTX-CARを発現するエフェクター細胞の結合特性を、神経膠腫細胞株U87、U251およびLN229ならびに初代ヒト星状細胞(ScienCell Research Labs)(HA)および初代αβT-細胞(T LC)の両方を用いて試験した。実施例2に記載のプロトコールを用いて、実施例1に記載の通り、図1に示されるCTX-CARまたはnoCTX-CARコンストラクトをコードするレトロウイルスをジャーカット細胞に形質導入した。
【0110】
神経膠腫細胞株および初代細胞株は、標準条件下で増殖させた。接着性標的細胞をトリプシン処理し、緑色蛍光色素カルセインで標識化した。本開示のCTX-CAR(CTX-CAR)またはnoCTX-CAR(noCTX-CAR)を発現するジャーカット細胞を、アロフィコシアニン(APC)標識化抗CH2CH3抗体(CTX-CARおよびnoCTX-CARコンストラクト中のヒンジ領域に結合する)で染色した。染色後、すべての標識化細胞を洗浄し、計数し、200μlのPBS+1%BSA中で1:1の比で500,000全細胞/試料で混合した。細胞混合物を溶液中で穏やかに撹拌しながら室温で1時間インキュベートした。穏やかに洗浄した後、細胞混合物の試料をフローサイトメトリーに供した。エフェクター標的集塊に対応する二重標識化細胞集団のパーセンテージを、二重染色FITC-APC集団をゲーティングすることによって決定した。
【0111】
図7は、本開示のCTX-CARを発現するエフェクター細胞が、初代ヒト星状細胞または初代ヒトT細胞への結合が最小限である神経膠腫細胞株に優先的に結合することを示している。本開示のCTX-CARを発現するエフェクター細胞の結合は、noCTX-CARコンストラクトを発現するエフェクター細胞と比較して、神経膠腫細胞への増大した結合を示した。CTX-CARコンストラクトおよびno-CTX-CARコンストラクトを発現するエフェクター細胞の結合は、初代ヒト星状細胞および初代ヒトT細胞において同等であった。
【0112】
結果は、本開示のCTX-CARを発現するエフェクター細胞が、試験した非神経膠腫細胞株に対しては最小限の結合で、ヒト神経膠腫細胞に優先的に結合することを実証している。
【0113】
実施例4-CTX-CARを発現するTリンパ球の細胞傷害性。
この実施例は、本開示のCTX-CARを発現するエフェクター細胞が神経膠腫細胞に対して細胞傷害性であることを示す。細胞傷害性は、Bright-Gloルシフェラーゼ細胞傷害性アッセイキット(Promega)を用いて測定した。標的神経膠腫細胞株U251およびU87を、eGFPとホタルルシフェラーゼ(GL)との融合タンパク質を発現するレンチウイルスに感染させて、細胞を蛍光によって可視化し、生物発光画像化によって定量化することを可能にした(U251GLおよびU87GLと命名)。
【0114】
全血から単離されたPBMCを、(T細胞の活性化および増殖のために)CD3/CD28ビーズを用いて1日間活性化し、図1に示され実施例1に記載のようなCTX-CAR(CTX)またはnoCTX-CAR(noCTX)コンストラクトをコードするレトロウイルスを形質導入した。CAR発現の効率を、形質導入後4日目に評価すると、40%~60%の範囲であった。標的神経膠腫細胞株U251GLおよびU87GLを100μlの完全培地中20,000または50,000細胞/ウェルで96ウェルプレートに播種した。CAR発現T細胞を、1:2、1:5、1:10、1:20の標的:エフェクター(T:E)細胞比の比率で100mlの培地中のウェルに添加し、37℃で一晩、標的細胞と共にインキュベートした。対照として、標的細胞株を偽形質導入活性化PBMC(Mock)およびジャーカット細胞(Jurkat)と共にインキュベートした。インキュベーション後、96ウェルプレートを短時間回転させ、150μlの培地を捨てた。次いで、Bright-Gloキット試薬(細胞を溶解すると共にルシフェラーゼ基質を提供するのに役立つ)を製造業者の指示に従って添加した。2分間のインキュベーション後、細胞溶解物を平底黒色96ウェルプレートのウェルに移し、蛍光をH1ハイブリッドルミノメーター(Biotek)で測定した。
【0115】
図9Aは、本開示のCTX-CARを形質導入されたエフェクター細胞が、CTXを欠く同じCARコンストラクトを形質導入されたエフェクター細胞と比較して、U251GL神経膠腫細胞に対する増強された細胞毒性を有したことを示している。増強された細胞毒性は、より低いT:E比で増強された。同様の結果が図9Bに示されており、U87GL神経膠腫細胞に対する本開示のCTX-CARを形質導入されたエフェクター細胞の増強された細胞毒性を例示している。
【0116】
結果は、本開示のCTX-CARを発現するエフェクター細胞が、ヒト神経膠腫細胞に対して細胞傷害性であることを実証している。
【0117】
本明細書において参照される特許および科学文献は、当業者に利用可能な知識を確立する。本明細書において引用されたすべての米国特許および公開または未公開の米国特許出願は、参照により組み込まれる。本明細書において引用されたすべての公開外国特許および特許出願は、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書において引用された他のすべての公開参考文献、文書、原稿および科学文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0118】
本発明をその好ましい実施態様を参照して具体的に図示し説明したが、当業者であれば、添付の特許請求の範囲に包含される本発明の範囲から逸脱することなく、形態および詳細の様々な変更がなされてもよいことを理解するであろう。本明細書に記載の実施形態はいずれも相互に排他的ではなく、添付の特許請求の範囲に包含される本発明の範囲から逸脱することなく、様々な方法で組み合わせることができることも理解されよう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
【配列表】
2023078149000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2023-03-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における癌を処置する方法であって、前記方法はキメラ抗原受容体(CAR)を含む免疫エフェクター細胞を前記対象に投与することを含み、前記CARは、クロロトキシン、クロロトキシンの機能的変異体、クロロトキシン様ペプチド、クロロトキシン様ペプチドの機能的変異体またはそれらの組み合わせを含む細胞外ドメイン、膜貫通ドメインおよび少なくとも1つの細胞内シグナル伝達ドメインを含む、方法。
【外国語明細書】