(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023078156
(43)【公開日】2023-06-06
(54)【発明の名称】ヒト胎盤および造血細胞由来の細胞による治療
(51)【国際特許分類】
A61K 35/51 20150101AFI20230530BHJP
A61K 35/50 20150101ALI20230530BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20230530BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20230530BHJP
A61P 7/06 20060101ALI20230530BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230530BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20230530BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20230530BHJP
C12N 5/078 20100101ALI20230530BHJP
【FI】
A61K35/51
A61K35/50
A61P3/00
A61P7/00
A61P7/06
A61P35/00
A61P35/02
A61P37/08
C12N5/078
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023027978
(22)【出願日】2023-02-27
(62)【分割の表示】P 2021065060の分割
【原出願日】2014-10-02
(31)【優先権主張番号】61/886,648
(32)【優先日】2013-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/890,057
(32)【優先日】2013-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】520169074
【氏名又は名称】セルラリティ インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】ジョディ ピー.グルネイ
(72)【発明者】
【氏名】キアオクイ ズハング
(72)【発明者】
【氏名】ステイシー ハーブ
(72)【発明者】
【氏名】ロバート ジェイ.ハリリ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ヒト胎盤および造血細胞由来の細胞をヒト対象に投与することを含む治療方法を提供する。
【解決手段】ヒト胎盤灌流液由来の単核球および造血細胞を対象、例えば、ヒト対象に投与することを含む治療方法、それらを含む組成物、およびキメリズムを確立し、組織(例えば、血液)を生着し、移植片対宿主病の重症度または持続期間を減少させ、代謝異常や血液悪性腫瘍などの血液学的疾患の症状を治療または寛解するためのそれらの使用を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト臍帯血(UCB)細胞を対象に移植する方法であって、ヒト胎盤灌流液由来の単核
球の集団と組み合わせてUCB細胞を投与することを含み、前記UCB細胞は、前記対象
と非血縁である、前記方法。
【請求項2】
ヒト臍帯血(UCB)細胞を対象に移植する方法であって、ヒト胎盤灌流液由来の単核
球の集団と組み合わせてUCB細胞を投与することを含み、ヒト胎盤灌流液由来の前記細
胞は、前記対象と非血縁である、前記方法。
【請求項3】
ヒト臍帯血(UCB)細胞を対象に移植する方法であって、ヒト胎盤灌流液由来の単核
球の集団と組み合わせてUCB細胞を投与することを含み、ヒト胎盤灌流液由来の前記細
胞は、前記対象に適合しない、前記方法。
【請求項4】
前記UCB細胞が、胎盤潅流液由来の前記単核球と非血縁である、請求項1、2、また
は3に記載の方法。
【請求項5】
前記UCB細胞が、胎盤潅流液由来の前記単核球に適合しない、請求項1、2、または
3に記載の方法。
【請求項6】
前記UCB細胞が、胎盤潅流液由来の前記単核球と非血縁であるかまたは適合しない、
請求項1、2、または3に記載の方法。
【請求項7】
前記UCB細胞が、前記対象に3/6~6/6HLA適合している、請求項1~6のい
ずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
1単位のUCB細胞を投与する、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
1単位超のUCB細胞を投与する、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
2~6単位のUCB細胞を投与する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記UCB細胞が、UCB中に存在する、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法
。
【請求項12】
胎盤潅流液由来の前記単核球が、胎盤潅流液中に存在する、請求項1~11のいずれか
1項に記載の方法。
【請求項13】
前記胎盤潅流液が、部分的に放血させた胎盤から得られる、請求項1~12のいずれか
1項に記載の方法。
【請求項14】
前記胎盤潅流液細胞の2%またはそれ以上が、CD34+である、請求項1~13のい
ずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記方法が、前記対象におけるキメリズムをもたらす、請求項1~14のいずれか1項
に記載の方法。
【請求項16】
前記キメリズムが、UCB細胞またはそれに由来する子孫を含む、請求項15に記載の
方法。
【請求項17】
前記キメリズムが、UCB細胞またはそれに由来する子孫と、胎盤潅流液細胞またはそ
れに由来する子孫とを含む、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
1単位超のUCB細胞を投与し、前記方法が、前記対象におけるキメリズムをもたらし
、前記キメリズムが、1単位超のUCB細胞またはそれに由来する子孫に由来する細胞を
含む、請求項15~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記キメリズムが、胎盤潅流液細胞またはそれに由来する子孫を含む、請求項15~1
8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記方法が、UCB細胞の生着をもたらす、請求項1~19のいずれか1項に記載の方
法。
【請求項21】
前記方法が、胎盤潅流液細胞の生着をもたらす、請求項1~20のいずれか1項に記載
の方法。
【請求項22】
前記方法が、移植片対宿主病の持続期間または重篤度を減少させる、請求項1~21の
いずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記対象が腫瘍を有し、前記方法が、移植片対腫瘍反応をもたらす、請求項1~22の
いずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記方法が、それを必要とする対象において、副腎脳白質ジストロフィー、ムコ多糖症
、ニーマン-ピック病、異染性白質ジストロフィー、ウォルマン病、クラッベ病、ゴーシ
ェ病、フコシドーシス、またはバッテン病などの代謝異常の症状の寛解をもたらす、請求
項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記方法は、それを必要とする対象において、骨髄異形成症候群、無巨核球性血小板減
少症、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、鎌状赤血球病、ベータサラセミア、重症
複合型免疫不全症、骨髄不全症、または貧血、例えば、重症再生不良性貧血またはダイア
モンド・ブラックファン貧血などの血液学的疾患または悪性疾患の症状の寛解をもたらす
、請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記対象が、ヒト対象である、請求項1~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記ヒト対象が、25歳またはそれよりも若い、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記ヒト対象が、乳児である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
造血細胞を対象に移植する方法であって、ヒト胎盤灌流液、例えば、ヒト胎盤灌流液由
来の単核球と組み合わせて前記造血細胞を投与することを含む、前記方法。
【請求項30】
前記造血細胞が、骨髄またはそれに由来する細胞、末梢血またはそれに由来する細胞、
または臍帯血またはそれに由来する細胞である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
対象における疾患の治療方法に使用される造血細胞であって、前記方法は、ヒト胎盤灌
流液由来の単核球と組み合わせて前記造血細胞を投与することを含み、前記疾患が、代謝
異常またはその症状、血液学的疾患または悪性疾患またはその症状、移植片対宿主病、ま
たは腫瘍である、前記造血細胞。
【請求項32】
前記造血細胞が、骨髄またはそれに由来する細胞、末梢血またはそれに由来する細胞、
または臍帯血またはそれに由来する細胞である、請求項31に記載の使用のための造血細
胞。
【請求項33】
前記臍帯血細胞が前記対象と非血縁である、またはヒト胎盤灌流液由来の前記単核球が
前記対象と非血縁である、またはヒト胎盤灌流液由来の前記単核球が前記対象に適合しな
い、請求項32に記載の使用のための造血細胞。
【請求項34】
前記方法が、請求項4~28のいずれか1項に記載のものである、請求項33に記載の
使用のための造血細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(1.技術分野)
本出願は、2013年10月11日出願の米国仮特許出願第61/890,057号、
および2013年10月3日出願の米国仮特許出願第61/886,648号の利益を請
求しており、それらの開示はそれらの全体において参照により本明細書に組み込まれてい
る。
【0002】
本明細書で提供されるのは、ヒト胎盤灌流液および造血細胞由来の単核球を対象、例え
ば、ヒト対象に投与することを含む治療方法、それらを含む組成物、およびキメリズムを
確立し、組織(例えば、血液)を生着し、移植片対宿主病の重症度または持続期間を減少
させ、代謝異常や血液悪性腫瘍などの血液学的疾患の症状を治療または寛解するためのそ
れらの使用である。
【背景技術】
【0003】
(2.背景技術)
同種造血幹細胞移植(HSCT)では、免疫系を再構成し、かつ、血球(造血)を形成
することが可能な幹細胞をある個人から別の個人に移す。遺伝子型でヒト白血球抗原(H
LA)が同一の血縁関係にあるドナー-白人患者の約30%に使用可能なドナー-は、H
SCTに対する最適なドナーと見なされる。残念なことに、多くの患者は、骨髄が完全に
適合する家族または非血縁ドナーが利用可能ではなく、彼らの唯一の治療選択肢は、部分
的に適合した血縁関係にあるドナー(PMRD)からの移植を有することであり、これは
、移植片対宿主病(GVHD)およびその合併症(例えば、移植関連死)のリスクを伴う
。
【0004】
臍帯血(UCB)は、HSCTで使用するのに適した細胞の別の供給源を表す。この臨
床状況におけるUCBの利点の1つは、GVHDのリスクが軽減されることである。残念
なことに、現在のUCB細胞移植療法にも、移植できる細胞の量が限られていることなど
の欠点がある。大量のUCB細胞、例えば、1単位超の移植を必要とする場合、安全性や
有効性が危険にさらされることがある。さらに、特に、HLA適合が不完全である場合に
は、生着不全やGVHDのリスクが存在する。骨髄または末梢血に対してUCBを用いる
HSCTの別の欠点は、生着までの時間に遅れが生じ、レシピエントの死をもたらすこと
が多いことである。
【0005】
そのため、造血再構成用に設計された幹細胞移植療法の改善が必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
(3.概要)
一態様では、本明細書で提供されるのは、ヒト胎盤灌流液(HPC)、例えば、ヒト胎
盤灌流液由来の単核球と組み合わせて造血細胞を投与することを含む、造血細胞を対象、
例えば、ヒト対象に移植する方法である。本明細書に記載の造血細胞を移植する方法で使
用することができる造血細胞の供給源としては、例えば、骨髄またはそれに由来する細胞
、末梢血またはそれに由来する細胞、および臍帯血またはそれに由来する細胞が挙げられ
る。本明細書で用いる場合、造血細胞のこれらの供給源は、「HT細胞」と総称される。
【0007】
一態様では、本明細書で提供されるのは、HT細胞、例えば、ヒト臍帯血(UCB)細
胞を対象に移植する方法であって、前記方法は、ヒト胎盤灌流液由来の単核球の集団と組
み合わせてHT細胞、例えば、UCB細胞を投与することを含み、前記HT細胞、例えば
、UCB細胞は、対象と非血縁である。一態様では、本明細書で提供されるのは、HT細
胞、例えば、UCB細胞を対象に移植する方法であって、前記方法は、ヒト胎盤灌流液由
来の単核球の集団と組み合わせてHT細胞、例えば、UCB細胞を投与することを含み、
ヒト胎盤灌流液由来の前記細胞は、対象と非血縁である。一態様では、本明細書で提供さ
れるのは、HT細胞、例えば、UCB細胞を対象に移植する方法であって、前記方法は、
ヒト胎盤灌流液由来の単核球の集団と組み合わせてHT細胞、例えば、UCB細胞を投与
することを含み、ヒト胎盤灌流液由来の前記細胞は、対象に適合しない。
【0008】
一態様では、本明細書で提供されるのは、対象における疾患の治療方法に使用される
造血細胞であって、該方法は、ヒト胎盤灌流液由来の単核球と組み合わせて前記造血細胞
を投与することを含み、該疾患は、代謝異常またはその症状、血液学的疾患または悪性疾
患またはその症状、移植片対宿主病、または腫瘍である。造血細胞は、骨髄細胞またはそ
れに由来する細胞、末梢血細胞またはそれに由来する細胞、あるいはUCB細胞またはそ
れに由来する細胞であってもよい。一態様では、UCB細胞は、対象と非血縁である。一
態様では、ヒト胎盤灌流液由来の単核球は、対象と非血縁である。一態様では、ヒト胎盤
灌流液由来の単核球は、対象に適合しない。後述の実施態様は、開示の各態様のことを指
す。
【0009】
ある実施態様では、HT細胞、例えば、UCB細胞は、胎盤潅流液由来の前記単核球
と非血縁である。ある実施態様では、HT細胞、例えば、UCB細胞は、胎盤潅流液由来
の前記単核球に適合しない。ある実施態様では、HT細胞、例えば、UCB細胞は、胎盤
潅流液由来の前記単核球と非血縁であるかまたは適合しない。特定の実施態様では、HT
細胞、例えば、UCB細胞は、対象に3/6~6/6HLA適合している。特定の実施態
様では、HT細胞は、例えば、成人の供給源由来のHT細胞対象に6/8~8/8HLA
適合している。
【0010】
ある実施態様では、1単位のHT細胞、例えば、UCB細胞を投与する。他の実施態様
では、1単位超のHT細胞、例えば、UCB細胞を投与する。特定の実施態様では、2~
6単位のHT細胞、例えば、UCB細胞を投与する。
【0011】
ある実施態様では、HT細胞、例えば、UCB細胞は、血液、例えば、UCB中に存在
する。ある実施態様では、胎盤潅流液由来の単核球は、胎盤潅流液中に存在する。
【0012】
ある実施態様では、胎盤潅流液は、部分的に放血させた胎盤から得られる。
【0013】
ある実施態様では、胎盤潅流液細胞の2%またはそれ以上は、CD34+である。
【0014】
ある実施態様では、該方法は、対象におけるキメリズムをもたらす。特定の実施態様で
は、該キメリズムは、HT細胞、例えば、HT細胞、例えば、UCB細胞、またはそれに
由来する子孫を含む。特定の実施態様では、1単位超のHT細胞、例えば、UCB細胞を
投与し、該方法は、対象におけるキメリズムをもたらし、該キメリズムは、1単位超のH
T細胞由来の細胞、例えば、UCB細胞、またはそれに由来する子孫を含む。特定の実施
態様では、キメリズムは、胎盤潅流液細胞またはそれに由来する子孫を含む。特定の実施
態様では、キメリズムは、HT細胞、例えば、UCB細胞、またはそれに由来する子孫と
、胎盤潅流液細胞またはそれに由来する子孫とを含む。
【0015】
ある実施態様では、該方法は、HT細胞、例えば、UCB細胞の生着をもたらす。特定
の実施態様では、該方法は、胎盤潅流液細胞の生着をもたらす。
【0016】
ある実施態様では、該方法は、移植片対宿主病の持続期間または重篤度を減少させる。
【0017】
ある実施態様では、対象は腫瘍を有し、該方法は、移植片対腫瘍反応をもたらす。ある
実施態様では、該方法は、腫瘍治療をもたらす。
【0018】
ある実施態様では、該方法は、それを必要とする対象において、副腎脳白質ジストロフ
ィー、ムコ多糖症、ニーマン-ピック病、異染性白質ジストロフィー、ウォルマン病、ク
ラッベ病、ゴーシェ病、フコシドーシス、またはバッテン病などの代謝異常の症状の寛解
をもたらす。
【0019】
ある実施態様では、該方法は、それを必要とする対象において、骨髄異形成症候群、無
巨核球性血小板減少症、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、鎌状赤血球病、ベータ
サラセミア、重症複合型免疫不全症、骨髄不全症、または貧血(例えば、重症再生不良性
貧血またはダイアモンド・ブラックファン貧血)などの血液学的疾患または悪性疾患の症
状の寛解をもたらす。
【0020】
ある実施態様では、対象は、ヒト対象である。ある実施態様では、ヒト対象は、25歳
またはそれよりも若い。特定の実施態様では、ヒト対象は、乳児である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(4.詳細な説明)
(4.1.造血細胞、例えば、臍帯血細胞、およびヒト胎盤灌流液由来の細胞を用いる方
法)
一態様では、本明細書で提供されるのは、ヒト胎盤灌流液(HPC)、例えば、ヒト胎
盤灌流液由来の単核球と組み合わせて造血細胞を投与することを含む、造血細胞を対象、
例えば、ヒト対象に移植する方法である。本明細書に記載の造血細胞を移植する方法で使
用することができる造血細胞の供給源としては、例えば、骨髄またはそれに由来する細胞
、末梢血またはそれに由来する細胞、および臍帯血またはそれに由来する細胞が挙げられ
る。本明細書で用いる場合、造血細胞のこれらの供給源は、「HT細胞」と総称される。
【0022】
一実施態様では、本明細書で提供されるのは、ヒト胎盤灌流液(HPC)、例えば、ヒ
ト胎盤灌流液由来の単核球と組み合わせてHT細胞、例えば、ヒト臍帯血細胞(UCB)
細胞、例えば、ヒト臍帯血を投与することを含む、HT細胞、例えば、ヒト臍帯血細胞(
UCB)細胞、例えば、ヒト臍帯血を対象、例えば、ヒト対象に移植する方法である。一
実施態様では、HT細胞、例えば、ヒトUCB細胞、例えば、ヒトUCBは、対象と非血
縁である。特定の実施態様では、HT細胞、例えば、UCB細胞、例えば、ヒトUCBは
、対象に部分的に不適合である。別の実施態様では、HPC、例えば、ヒト胎盤灌流液は
、対象と非血縁である。特定の実施態様では、HPC、例えば、ヒト胎盤灌流液は、対象
に部分的に不適合である。別の特定の実施態様では、HPC、例えば、ヒト胎盤灌流液は
、対象に適合しない。さらに別の実施態様では、HT細胞、例えば、ヒトUCB細胞、例
えば、ヒトUCBは、対象と非血縁であり、HPC、例えば、ヒト胎盤灌流液は、対象と
非血縁である。さらに別の実施態様では、HT細胞、例えば、ヒトUCB細胞、例えば、
ヒトUCBは、対象と非血縁であり、かつ、該対象に部分的に不適合であり、HPC、例
えば、ヒト胎盤灌流液は、対象と非血縁であり、かつ、該対象に部分的に不適合であるか
または不適合である。一実施態様では、HPC、例えば、ヒト胎盤灌流液は、HT細胞、
例えば、ヒトUCB細胞、例えば、UCBと非血縁であり、かつ、不適合である。一実施
態様では、HPC、例えば、ヒト胎盤灌流液は、HT細胞、例えば、ヒトUCB細胞、例
えば、UCB、およびレシピエントと非血縁であり、かつ、不適合である。
【0023】
特に記載のない限り、UCBまたはHPCの文脈において本明細書で使用される「血縁
関係にある」とは、自身または一親等もしくは二親等血縁者のことを言う。例えば、対象
と血縁関係にあるUCBとは、対象自身由来のUCB、または対象の一親等もしくは二親
等血縁者由来のUCBのことを言う。別の例では、HPCと血縁関係にあるUCBとは、
同じドナー、または一親等もしくは二親等血縁者であるドナー由来のUCBおよびHPC
のことを言う。同様に、特に記載のない限り、これらの文脈における「非血縁である」と
は、二親等血縁者の関係よりも遠い関係のことを言う。
【0024】
特に記載のない限り、UCBまたはヒト胎盤灌流液由来の細胞(例えば、HPC)の文
脈において本明細書で使用される「適合した」とは、HLA適合のことを言う。さらに、
本明細書で使用される、UCBまたはヒト胎盤灌流液由来の細胞(例えば、HPC)の文
脈において本明細書で使用される「部分的に不適合である」とは、3/6、4/6、また
は5/6のHLA遺伝子座で適合する状況のことを言い、または、例えば、成人の供給源
由来のHT細胞に対する特定の実施態様では、6/8、7/8、または8/8のHLA遺
伝子座で適合する状況のことを言う。また、特に記載のない限り、UCBまたはヒト胎盤
灌流液由来の細胞(例えば、HPC)の文脈において本明細書で使用される「不適合であ
る」または「適合しない」とは、0/6、1/6、または2/6のHLA遺伝子座での適
合のことを言い、または、例えば、成人の供給源由来のHT細胞に対する特定の実施態様
では、0/8、1/8、2/8、3/8、4/8、または5/8のHLA遺伝子座での適
合のことを言う。「適合した」、「部分的に不適合であった」、および「不適合であった
」とは、例えば、HT細胞、例えば、UCB細胞とHPCとの間、HT細胞、例えば、U
CB細胞の単位間、および/または、HT細胞、例えば、UCB細胞、および/またはH
PCと細胞のレシピエントである対象との間の関係のことを指すこともある。
【0025】
特に記載のない限り、本明細書で使用される(例えば、移植の文脈における)、UCB
またはそれに由来する細胞の「単位」とは、単一の臍帯由来のUCBまたはそれに由来す
る細胞のことを言う。ある実施態様では、そのような方法は、1単位のUCBまたはそれ
に由来する細胞を投与することを含む。別の実施態様では、本明細書に示される方法は、
複数単位のUCBまたはそれに由来する細胞を投与することを含む。例えば、本明細書に
示される方法は、2、3、または4単位のUCBまたはそれに由来する細胞を投与するこ
とを含むことができる。1単位超のHT細胞、例えば、UCB細胞を使用する例では、あ
る実施態様では、HT細胞、例えば、UCB細胞の少なくとも一部分は、対象と、HPC
と、および/または、HT細胞、例えば、UCB細胞(例えば、他のUCB細胞単位)の
他の部分と非血縁であり得る。1単位超のHT細胞、例えば、UCB細胞を使用する例で
は、ある実施態様では、HT細胞、例えば、UCB細胞の少なくとも一部分は、対象に、
HPCに、および/または、HT細胞、例えば、UCB細胞(例えば、他のUCB細胞単
位)の他の部分に不適合であるかまたは部分的に不適合であり得る。別の実施態様では、
本明細書に示される方法は、1単位未満のHT細胞またはUCBまたはそれに由来する細
胞を投与することを含むことができる。例えば、本明細書に示される方法は、0.2、0
.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、または0.9単位のHT細胞またはU
CBまたはそれに由来する細胞を投与することを含むことができる。特定の実施態様では
、本明細書に示される方法は、複数投与にわたって特定数の単位(1未満、1、または2
以上)を投与することを含むことができる。
【0026】
別の態様では、本明細書で提供されるのは、HT細胞、例えば、UCB細胞、例えば、
UCBと、HPC、例えば、ヒト胎盤灌流液との組み合わせを対象に投与することを含む
、対象におけるキメリズムを誘発する方法であって、HT細胞、例えば、UCB細胞の少
なくとも一部分は、対象に部分的に不適合であり、および/または、HPCは、対象にお
けるキメリズムが起こるように、対象に不適合であるかまたは部分的に不適合である。特
に記述がない限り、本明細書で使用される「キメリズム」とは、対象における非自己DN
Aの存在、例えば、レシピエント対象に対して不適合であるかまたは部分的に不適合であ
る細胞由来のDNAの存在のことを言う。
【0027】
そのような方法の一実施態様では、1単位超のHT細胞、例えば、UCB細胞を対象に
投与し、例えば、2、3、または4単位のHT細胞、例えば、UCB細胞を対象に投与す
る。1単位超のHT細胞、例えば、UCB細胞を対象に投与する特定の実施態様では、キ
メリズムを誘発する方法は、複数のキメリズムをもたらすことができる、すなわち、1単
位超および最大で全単位の投与したHT細胞、例えば、UCB細胞またはその子孫を伴う
キメリズムをもたらし得る。
【0028】
そのような方法の別の実施態様では、HPCまたはその子孫を伴うキメリズムをもたら
し得る。さらに別の実施態様では、HT細胞、例えば、UCB細胞(1単位超のHT細胞
、例えば、UCB細胞を投与する例では、複数のキメリズムを含む)またはその子孫、お
よびHPCまたはその子孫を伴うキメリズムをもたらし得る。
【0029】
そのような方法のさらに別の実施態様では、HT細胞、例えば、UCB細胞は、対象と
非血縁である。1単位超のHT細胞、例えば、UCBを投与する例では、1単位以上のH
T細胞、例えば、UCB細胞は、対象と非血縁であることがある。そのような方法の特定
の実施態様では、HPCは、対象と非血縁であり、かつ、さらに、HT細胞、例えば、U
CB細胞と非血縁であり得る。さらにそのような方法の別の実施態様では、HT細胞、例
えば、UCB細胞とHPCの両方は、対象と非血縁である。
【0030】
そのような方法のある実施態様では、キメリズム(HT細胞、例えば、UCB細胞、ま
たはその子孫、またはHPCまたはその子孫のいずれかまたは両方を含む)は、HT細胞
、例えば、UCB細胞をHPCと組み合わせて対象に投与した1、2、3、4、5、6、
7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、2
1、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34
、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、
48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、6
1、62日、またはそれ以上以内に対象において最初に検出される。
【0031】
キメリズムは、当該技術分野で公知の方法を用いて検出することができる。例えば、キ
メリズムは、血液試料を用いて検出することができる。一実施態様では、キメリズムは、
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)ベース方法を用いて、例えば、短縦列反復アッセイによ
って検出される。一実施態様では、造血幹細胞移植後のキメリズムに対する試験は、レシ
ピエントとドナーの遺伝子プロファイルを識別することと、その後、レシピエントの血液
、骨髄、または他の組織中における混合の度合いを評価することを伴う。DNAによるキ
メリズム試験(生着分析)は、ヒト同一性試験で一般に用いられる方法を使用し、短縦列
反復(STR)遺伝子座と呼ばれるゲノム多型の分析により達成される。一実施態様では
、末梢血ドナーキメリズム(UCBおよび潅流液細胞)(全血、NKおよびT細胞)の定
量(例えば、短縦列反復アッセイを用いて)は、7日目、14日目、30日目、60日目
、100日目、および180日目(+/-10日)に評価し、ここで、末梢血レシピエン
トキメリズムの定量(例えば、短縦列反復アッセイを用いて)は、ベースラインでのドナ
ー細胞(UCBおよび潅流液細胞)のキメリズムに沿ったベースラインで評価する。
【0032】
さらに別の態様では、本明細書で提供されるのは、HT細胞、例えば、ヒトUCB細胞
、例えば、UCBと、HPC、例えば、ヒト胎盤灌流液との組み合わせを対象に投与する
ことを含む、対象における細胞生着、例えば、血小板または好中球生着の方法であり、H
T細胞、例えば、UCB細胞の少なくとも一部分は、対象に部分的に適合し、および/ま
たは、HPCは、対象において細胞生着が起こるように、対象に不適合であるかまたは部
分的に不適合である。ある実施態様では、細胞生着は、HT細胞、例えば、UCB細胞ま
たはその子孫の生着を含む。特定の他の実施態様では、細胞生着は、HPCまたはその子
孫の生着を含む。さらに他の実施態様では、生着は、HT細胞、例えば、UCB細胞また
はその子孫、およびHPCまたはその子孫の生着を含む。ある実施態様では、本明細書で
提供される細胞生着の方法は、生着までの時間を短縮する。
【0033】
そのような方法の一実施態様では、HT細胞、例えば、UCB細胞は、対象と非血縁で
ある。特定の実施態様では、HT細胞、例えば、UCB細胞は、対象に部分的に不適合で
ある。別の特定の実施態様では、HPCは、対象と非血縁であり、かつ、さらに、HT細
胞、例えば、UCB細胞と非血縁であり得る。特定の実施態様では、HPCは、対象に部
分的に不適合である。別の特定の実施態様では、HPCは、対象に適合しない。さらに別
の実施態様では、UCB細胞は、対象と非血縁であり、HPCは、対象と非血縁である。
さらに別の実施態様では、HT細胞、例えば、UCB細胞は、対象と非血縁であり、かつ
、該対象に部分的に不適合であり、HPCは、対象と非血縁であり、かつ、該対象に部分
的に不適合であるかまたは不適合である。ある実施態様では、本明細書に示される方法は
、HT細胞、例えば、UCB細胞を単独で投与する場合と比べて、生着する能力が増した
ことを示す。
【0034】
生着は、当該技術分野で公知の方法を用いて検出することができる。例えば、一実施態
様では、分画をもつ全血球数は、0日目から、好中球絶対数が最低値に到達した後に3日
間>500/mm3になり、かつ、血小板数が、3つの異なる日で3回連続した測定で、
血小板輸血から最低7日間独立して≧20,000/mm3に到達するまで、1日~3日
ごとに行ってもよい。本明細書で用いる場合、「好中球生着」とは、好中球数最低値の後
に好中球絶対数が500/mm3を上回る最初の3日間のことを言う。本明細書で用いる
場合、「血小板生着」とは、血小板が輸血なしで≧20,000/mm3となる7日間の
後に、血小板数が≧20,000/mm3を示す最初の連続3日間のことを言う。
【0035】
ある実施態様では、対象における細胞生着は、HT細胞、例えば、UCB細胞をHPC
と組み合わせて対象に投与した1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12
、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、
26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、3
9、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52
、53、54、55、56、57、58、59、60、61、または62日、または2カ
月、2.5カ月、3カ月、またはそれ以上以内に検出される。
【0036】
ある実施態様では、本明細書に示される方法は、1単位のHT細胞、例えば、UCB細
胞、例えば、UCBを投与することを含む。別の実施態様では、本明細書に示される方法
は、複数単位のHT細胞、例えば、UCB細胞、例えば、UCBを投与することを含む。
例えば、本明細書に示される方法は、2、3、または4単位のHT細胞、例えば、UCB
細胞、例えば、UCBを投与することを含むことができる。
【0037】
さらに別の態様では、本明細書で提供されるのは、HT細胞、例えば、ヒトUCB細胞
、例えば、UCBと、HPC、例えば、ヒト胎盤灌流液との組み合わせを対象に投与する
ことを含む、対象におけるGVHDの持続期間または重篤度を軽減する方法であり、対象
におけるGVHDの持続期間または重篤度の軽減が起こるように、HT細胞、例えば、U
CB細胞の少なくとも一部分は、対象に部分的に適合し、および/または、HPCは、対
象に不適合であるかまたは部分的に不適合である。
【0038】
そのような方法の一実施態様では、HT細胞、例えば、UCB細胞は、対象と非血縁で
ある。特定の実施態様では、HT細胞、例えば、UCB細胞は、対象に部分的に不適合で
ある。別の特定の実施態様では、HPCは、対象と非血縁であり、かつ、さらに、HT細
胞、例えば、UCB細胞と非血縁であり得る。特定の実施態様では、HPCは、対象に部
分的に不適合である。別の特定の実施態様では、HPCは、対象に適合しない。さらに別
の実施態様では、HT細胞、例えば、UCB細胞は、対象と非血縁であり、かつ、HPC
は、対象と非血縁である。さらに別の実施態様では、HT細胞、例えば、UCB細胞は、
対象と非血縁であり、かつ、該対象に部分的に不適合であり、HPCは、対象と非血縁で
あり、かつ、該対象に部分的に不適合であるかまたは不適合である。ある実施態様では、
本明細書に示される方法は、HT細胞、例えば、UCB細胞を単独で投与する場合と比べ
て、GVHDの重症度または持続期間が軽減されたことを示す。
【0039】
ある実施態様では、本明細書に示される方法は、1単位のHT細胞、例えば、UCB
細胞、例えば、UCBを投与することを含む。別の実施態様では、本明細書に示される方
法は、複数単位のHT細胞、例えば、UCB細胞、例えば、UCBを投与することを含む
。例えば、本明細書に示される方法は、2、3、または4単位のHT細胞、例えば、UC
B細胞、例えば、UCBを投与することを含むことができる。
【0040】
ある実施態様では、本明細書に示される方法は、HT細胞、例えば、UCB細胞、例え
ば、UCBを、HPC、例えば、ヒト胎盤灌流液と同時に投与することを含む。特定の実
施態様では、細胞を対象に同時に投与する。別の実施態様では、HT細胞、例えば、UC
B細胞、およびHPCを、互いに、0.5、1、1.5、2、3、4、6、8、10、1
2、16、18、または24時間、またはそれ以上以内、または1、2、3、4、5、6
、または7日、またはそれ以上以内に対象に投与する。特定の実施態様では、HT細胞、
例えば、UCB細胞、例えば、UCBを対象に投与した後、HPC、例えば、ヒト胎盤灌
流液を投与する、例えば、UCBを投与してから1時間以内に、または対象がUCB投与
に有害反応を示していないことを確認するのに必要な最短期間以内に投与する。
【0041】
本明細書で提供される方法は、例えば、細胞生着までにかかる時間の短縮、対象が好中
球減少症になる時間の制限、対象が血小板減少症になる時間の制限、キメリズムの確立、
およびHT細胞、例えば、UCB細胞、例えば、UCBの単独投与に対するGVHDの重
症度または持続期間の軽減またはGVHDの予防を含み得る利点を示すことができる。
【0042】
投与されるHT細胞、例えば、UCB細胞のHPCに対する比率は変更可能である。H
T細胞、例えば、UCB細胞のHPCに対する比率は、当業者の判断に従って決めること
ができる。ある実施態様では、HT細胞、例えば、UCB細胞のHPCに対する比率は、
約100,000,000:1、50,000,000:1、20,000,000:1
、10,000,000:1、5,000,000:1、2,000,000:1、1,
000,000:1、500,000:1、200,000:1、100,000:1、
50,000:1、20,000:1、10,000:1、5,000:1、2,000
:1、1,000:1、500:1、200:1、100:1、50:1、20:1、1
0:1、5:1、2:1、1:1;1:2;1:5;1:10;1:100;1:200
;1:500;1:1,000;1:2,000;1:5,000;1:10,000;
1:20,000;1:50,000;1:100,000;1:500,000;1:
1,000,000;1:2,000,000;1:5,000,000;1:10,0
00,000;1:20,000,000;1:50,000,000;または約1:1
00,000,000である。ある実施態様では、HT細胞、例えば、UCB細胞のHP
Cに対する比率は、約20:1~約1:20であり、または約1:10、約1:5、約1
:1、約5:1、または約10:1である。
【0043】
HT細胞、例えば、UCB細胞、およびHPCの投与は、当該技術分野で公知の任意の
細胞投与技術を用いて行うことができる。一実施態様では、投与は、静脈、例えば、静脈
内、例えば、IV、PICCライン、中心静脈ラインなどを介してである。例えば、HT
細胞、例えば、UCB細胞、およびHPCは、注射または輸血を含む任意の薬学的または
医学的に許容される様式で、対象に別々の組成物または単一組成物で投与してもよい。あ
る実施態様では、組成物(または複数)は、注射用組成物として配合してもよい(例えば
、WO96/39101、その内容全体を文献引用によって本明細書に組み込んだものと
する)。
【0044】
ある実施態様では、HT細胞、例えば、UCB細胞、またはHPCを対象に非経口投与
する。本明細書で使用される用語「非経口」には、皮下注射、静脈内、筋肉内、動脈内注
射、または注入技術が含まれる。ある実施態様では、HT細胞、例えば、UCB細胞、ま
たはHPCを対象に静脈内投与する。特定の他の実施態様では、HT細胞、例えば、UC
B細胞、またはHPCを対象に脳室内投与する。
【0045】
HT細胞、例えば、UCB細胞、およびHPCは、任意の薬学的に許容される担体に別
々または一緒に含まれてもよい。HT細胞、例えば、UCB細胞、またはHPCは、任意
の薬学的または医学的に許容される容器、例えば、血液バッグ、移動バッグ、プラスチッ
ク製チューブ、シリンジ、バイアルなどで運ぶ、保管する、輸送してもよい。
【0046】
HT細胞、例えば、UCB細胞、および/またはHPCの対象への投与は、1回または
複数回で行ってもよい。ある実施態様では、投与は、1回で行う。ある実施態様では、投
与は、複数回、例えば、2、3、4、またはそれ以上の回数で行う。ある実施態様では、
HT細胞、例えば、UCB細胞を複数回投与する。ある実施態様では、HPCを複数回投
与する。
【0047】
ある実施態様では、本明細書に記載の方法に従って対象に投与される臍帯血またはそれ
に由来する細胞(例えば、臍帯血由来の全有核細胞)の量は、臍帯血中に存在する細胞の
数に基づいて決定することができる。対象に投与されるUCBまたはそれに由来する細胞
(例えば、臍帯血由来の全有核細胞)、および/または、ヒト胎盤灌流液またはHPCま
たはそれに由来する全有核細胞の量または数は、臍帯血またはそれに由来する細胞(例え
ば、臍帯血由来の全有核細胞)、および/または、ヒト胎盤灌流液またはHPCまたはそ
れに由来する全有核細胞の供給源、治療される障害または状態の重症度または性質、並び
に対象の年齢、体重、および健康状態などに依存する。ある実施態様では、対象のキログ
ラム体重当たり約0.01~約0.1、約0.1~約1、約1~約10、約10~約10
2、約102~約103、約103~約104、約104~約105、約105~約10
6、約106~約107、約107~約108、または約108~約109個の臍帯血細
胞(例えば、臍帯血由来の全有核細胞)、ヒト胎盤灌流液またはそれに由来する細胞(例
えば、HPCまたは胎盤潅流液由来の全有核細胞)、または全臍帯血細胞および胎盤潅流
液由来の細胞(例えば、HPCまたは全有核細胞)を投与する。種々の実施態様では、対
象のキログラム体重当たり少なくとも約0.1、1、10、102、103、104、1
05、106、107、108、または109個の臍帯血細胞(例えば、臍帯血由来の全
有核細胞)、胎盤潅流液由来の細胞(例えば、HPCまたは胎盤潅流液由来の全有核細胞
)、または臍帯血細胞および胎盤潅流液由来の細胞を投与する。
【0048】
特定の実施態様では、対象のキログラム体重当たり少なくとも約0.5×106、1.
0×106、1.5×106、2.0×106、2.5×106、3.0×106、3.
5×106、4.0×106、4.5×106、5.0×106、5.5×106、6.
0×106、6.5×106、7.0×106、7.5×106、8.0×106、8.
5×106、9.0×106、9.5×106、1.0×107、1.5×107、2.
0×107、2.5×107、3.0×107、3.5×107、4.0×107、4.
5×107、5.0×107、5.5×107、または6.0×107個の臍帯血細胞(
例えば、臍帯血由来の全有核細胞)、胎盤潅流液由来の細胞(例えば、HPCまたは胎盤
潅流液由来の全有核細胞)、または臍帯血細胞および胎盤潅流液由来の細胞(例えば、H
PCまたは胎盤潅流液由来の全有核細胞)を投与する。より具体的な実施態様では、対象
のキログラム体重当たり少なくとも約0.5×106、1.0×106、1.5×106
、2.0×106、2.5×106、3.0×106、3.5×106、4.0×106
、4.5×106、または5.0×106個の胎盤潅流液由来の細胞(例えば、HPCま
たは胎盤潅流液由来の全有核細胞)を投与する。より具体的な実施態様では、対象のキロ
グラム体重当たり少なくとも約1.5×107、2.0×107、2.5×107、3.
0×107、3.5×107、4.0×107、4.5×107、5.0×107、5.
5×107、または6.0×107個の臍帯血細胞(例えば、臍帯血由来の全有核細胞)
を投与する。種々の実施態様では、対象のキログラム体重当たり多くとも約104、10
5、106、107、108、または109個の臍帯血細胞、胎盤潅流液由来の細胞(例
えば、HPCまたは胎盤潅流液由来の全有核細胞)、または臍帯血細胞および胎盤潅流液
由来の細胞(例えば、HPCまたは胎盤潅流液由来の全有核細胞)を投与する。特定の実
施態様では、対象のキログラム体重当たり多くとも約0.5×106、1.0×106、
1.5×106、2.0×106、2.5×106、3.0×106、3.5×106、
4.0×106、4.5×106、5.0×106、5.5×106、6.0×106、
6.5×106、7.0×106、7.5×106、8.0×106、8.5×106、
9.0×106、9.5×106、1.0×107、1.5×107、2.0×107、
2.5×107、3.0×107、3.5×107、4.0×107、4.5×107、
5.0×107、5.5×107、または6.0×107個の臍帯血細胞(例えば、臍帯
血由来の全有核細胞)、胎盤潅流液由来の細胞(例えば、HPCまたは胎盤潅流液由来の
全有核細胞)、または臍帯血細胞および胎盤潅流液由来の細胞(例えば、HPCまたは胎
盤潅流液由来の全有核細胞)を投与する。より具体的な実施態様では、対象のキログラム
体重当たり多くとも約0.5×106、1.0×106、1.5×106、2.0×10
6、2.5×106、3.0×106、3.5×106、4.0×106、4.5×10
6、または5.0×106個の胎盤潅流液由来の細胞(例えば、HPCまたは胎盤潅流液
由来の全有核細胞)を投与する。より具体的な実施態様では、対象のキログラム体重当た
り多くとも約1.5×107、2.0×107、2.5×107、3.0×107、3.
5×107、4.0×107、4.5×107、5.0×107、5.5×107、また
は6.0×107個の臍帯血細胞(例えば、臍帯血由来の全有核細胞)を投与する。特定
の実施態様では、対象のキログラム体重当たり、胎盤潅流液由来の細胞(例えば、HPC
または胎盤潅流液由来の全有核細胞)よりも多くの臍帯血細胞(例えば、臍帯血由来の全
有核細胞)を投与する。
【0049】
特定の実施態様では、対象のキログラム体重当たり、胎盤潅流液由来の細胞(例えば、
HPCまたは胎盤潅流液由来の全有核細胞)よりも多くのHT細胞、例えば、臍帯血細胞
(例えば、全有核HT細胞、例えば、臍帯血由来の細胞)を投与する。
【0050】
ある実施態様では、キログラム体重当たり少なくとも約104~約107、例えば、0
.5×104、1.0×104、1.5×104、2.0×104、2.5×104、3
.0×104、3.5×104、4.0×104、4.5×104、5.0×104、5
.5×104、6.0×104、6.5×104、7.0×104、7.5×104、8
.0×104、8.5×104、9.0×104、9.5×104、0.5×105、1
.0×105、1.5×105、2.0×105、2.5×105、3.0×105、3
.5×105、4.0×105、4.5×105、5.0×105、5.5×105、6
.0×105、6.5×105、7.0×105、7.5×105、8.0×105、8
.5×105、9.0×105、9.5×105、0.5×106、1.0×106、1
.5×106、2.0×106、2.5×106、3.0×106、3.5×106、4
.0×106、4.5×106、5.0×106、5.5×106、6.0×106、6
.5×106、7.0×106、7.5×106、8.0×106、8.5×106、9
.0×106、9.5×106、1.0×107、1.5×107、2.0×107、2
.5×107、3.0×107、3.5×107、4.0×107、4.5×107、5
.0×107、5.5×107、または6.0×107個のCD34+細胞を投与する。
そのようなCD34+細胞は、臍帯血単独に由来してもよく、または臍帯血および胎盤潅
流液に由来してもよい。ある実施態様では、CD34+細胞が臍帯血および胎盤潅流液に
由来していた場合、全胎盤潅流液細胞に対する胎盤潅流液由来のCD34+細胞の割合は
、全臍帯血細胞に対する臍帯血由来のCD34+細胞の割合よりも大きい。一実施態様で
は、胎盤潅流液細胞集団におけるCD34+細胞の割合は、臍帯血細胞集団におけるCD
34+細胞の割合と比較して0.1~0.5、0.5~1.0、1.0~1.5、1.5
~2.0、2.0~2.5、2.5~3.0、3.0~3.5、3.5~4.0、4.0
~4.5、4.5~5.0、5.0~5.5、5.5~6.0、6.0~6.5、6.5
~7.0、7.0~7.5、7.5~8.0、8.0~8.5、8.5~9.0、9.0
~9.5、または9.5~10.0倍またはそれ以上高い。ある実施態様では、胎盤潅流
液細胞の0.1%、0.5%、1.0%、1.5%、2.0%、2.5%、3.0%、3
.5%、4.0%、4.5%、または5.0%、またはそれ以上は、CD34+である。
【0051】
HT細胞、例えば、UCB細胞、例えば、UCB、およびHPC、例えば、胎盤潅流
液は、対象のサイズに適した容量で送達することができる。ヒト成人の一般的な血液量は
、約85~100mL/kg体重である。従って、ヒト成人の血液量は、約40mLから
約300mLの範囲である。従って、種々の実施態様では、HT細胞、例えば、UCB細
胞、例えば、UCB、およびHPC、例えば、胎盤潅流液は、約0.5mL、1.0mL
、2mL、3mL、4mL、5mL、6mL、7mL、8mL、9mL、10mL、11
mL、12mL、13mL、14mL、15mL、16mL、17mL、18mL、19
mL、20mL、21mL、22mL、23mL、24mL、25mL、26mL、27
mL、28mL、29mL、または約30mL、またはそれ以上の全容量で投与する。そ
のような容量の投与は、単一投与または複数投与であってもよい。そのような容量の臍帯
血または臍帯血細胞、またはヒト胎盤灌流液またはそれに由来する細胞の数(例えば、H
PCまたは胎盤潅流液由来の全有核細胞)を投与することができる時間は、例えば、0.
5時間、1時間、1.5時間、2時間、2.5時間、3時間、3.5時間、4時間、また
はそれ以上に変更可能である。
【0052】
ある実施態様では、20mLを下回る少量の輸血は、シリンジを用いて行われる。より
大容量の輸血は、注入デバイスによって、例えば、1~4時間以内で投与することができ
る。
【0053】
本明細書で提供される方法は、それを必要とする任意の対象で行うことができる。一態
様では、対象は、造血の再構成、部分再構成、または増加を必要としている。ある実施態
様では、対象は、ヒト対象である。ある実施態様では、対象は、成人ヒト対象である。あ
る実施態様では、対象は、25歳またはそれ以下である。ある実施態様では、対象は、乳
児である。
【0054】
ある実施態様では、本明細書に示される方法、例えば、キメリズムを誘発する移植方
法、および/または生着方法の前に、例えば、TBI、クロファラビン、および/または
Ara-C1を用いた骨髄破壊的前処置;例えば、ブスルファン、フルダラビン、および
/またはアレムツズマブを用いた毒性軽減前処置(強度減弱型前処置とも呼ばれる);放
射線治療;化学療法;または免疫抑制療法または血球数を減少させる療法などの他の療法
の1つ以上が対象には施されている。対象が上記の1つ以上を受けている特定の実施態様
では、対象は、完全な骨髄破壊を示す。一実施態様では、少なくともいくつかの免疫系機
能は保持される。
【0055】
特定の態様では、本明細書で提供される方法は、先天性代謝異常、副腎脳白質ジストロ
フィー、ムコ多糖症、ニーマン-ピック病、異染性白質ジストロフィー、ウォルマン病、
クラッベ病、ゴーシェ病、フコシドーシス、またはバッテン病などの代謝異常の治療方法
として、それを必要とする対象に使用することができる。
【0056】
別の特定の態様では、本明細書で提供される方法は、血液学的疾患または悪性疾患、例
えば、リンパ造血系悪性疾患、骨髄異形成症候群、無巨核球性血小板減少症、白血病(例
えば、急性リンパ性白血病(ALL)および急性骨髄性白血病(AML))、好中球減少
症、鎌状赤血球病(例えば、鎌状赤血球貧血)、ベータサラセミア(例えば、ベータサラ
セミアメジャー)、重症複合型免疫不全症、骨髄不全症、または貧血(例えば、重症再生
不良性貧血またはダイアモンド・ブラックファン貧血)の治療方法として、それを必要と
する対象に使用することができる。
【0057】
本明細書で用いる場合、「治療する(treat)」、「治療する(treating
)」、および「治療(treatment)」という用語は、障害または状態、またはそ
のような障害または状態の任意のパラメータまたは症状の進行、重症度、および/または
持続期間を低下または寛解させることを指す。治療は、対象が生存する場合、または治療
される障害または状態が、治療の結果として何らかの形で測定可能に改善される場合に、
効能を示すとみなすことができる。そのような改善は、例えば、1つまたは複数の測定可
能な指標によって示すことができ、それらとして、例えば、特定の疾患、障害または状態
に伴う生理的な状態または一連の生理的な状態の検出可能な変化が挙げられる。また、1
つまたは複数の指標が、例えば、ほぼ同年齢の個体についての正常値の範囲内の値、また
はそのような(1つもしくは複数の)指標が、治療がない場合に示すと予想されるよりも
正常値に近い値に変化することによって、そのような治療に対して応答しているように見
える場合に、治療は有効とみなされる。
【0058】
本明細書で提供される方法のある実施態様では、本明細書で提供される方法は、障害ま
たは状態の治療において、第1の療法を1つまたは複数の第2の療法と組み合わせて使用
することができる。そのような第2の療法としては、これらに限定されないが、手術、ホ
ルモン療法、免疫療法、光線療法、または特定の薬物を用いる治療が挙げられる。本明細
書で提供される方法と組み合わせて使用することができる例示的な療法としては、環境温
度の制御;酸素を用いる補助;人工呼吸器または換気装置;末梢血の輸血;鉄の補充;経
静脈栄養;光線療法;手術;代謝異常または血液学的疾患(血液系腫瘍を含む)を治療す
るための薬剤;抗生物質または抗ウイルス薬;抗炎症剤(例えば、ステロイド系抗炎症性
化合物、非ステロイド系抗炎症性(NSAID)化合物);一酸化窒素;抗ヒスタミン剤
;免疫抑制剤;および免疫調節化合物(例えば、TNF-α阻害剤)が挙げられる。
【0059】
(4.2.ヒト胎盤灌流液細胞)
本開示に従って使用されるヒト胎盤灌流液(HPC)、例えば、ヒト胎盤灌流液由来の
単核球は、任意の医学的または薬学的に許容される様式で収集してもよく、組成物、例え
ば、医薬組成物中に存在してもよい。ある実施態様では、本明細書で提供される組成物(
例えば、医薬組成物、すなわち、ヒトへの投与に適した医薬品グレードの溶液)は、ヒト
胎盤灌流液を含む。ある実施態様では、組成物は、部分的に放血させた胎盤から得られる
ヒト胎盤灌流液を含む。ある実施態様では、組成物は、放血させた胎盤から得られるヒト
胎盤灌流液を含む。ある実施態様では、組成物は、ヒト胎盤灌流液から単離した幹細胞な
どの細胞を含む。ある実施態様では、組成物は、ヒト胎盤灌流液から単離した有核細胞、
例えば、単核球または全有核細胞を含む。
【0060】
一実施態様では、HPC、例えば、ヒト胎盤灌流液は、無菌である。一実施態様では、
HPC、例えば、ヒト胎盤灌流液の集団は、不均一である。
【0061】
特定の実施態様では、HPCまたはヒト胎盤灌流液は、標準的な方法に従って赤血球お
よび/または顆粒球を除去することで処理し、有核細胞の集団を生成する。そのような濃
縮した細胞集団は、凍結せずに使用してもよく、またはその後の使用のために凍結しても
よい。細胞集団を凍結しようとする場合、標準的な凍結保存剤(例えば、DMSO、グリ
セロール、Epilife(商標)Cell Freezing Medium(Casc
ade Biologics))を、濃縮した細胞集団に添加してから、細胞集団を凍結
する。
【0062】
ある実施態様では、胎盤潅流液由来の細胞は、胎盤潅流液由来の単核球を含む。ある実
施態様では、胎盤潅流液由来の細胞は、胎盤潅流液由来の全有核細胞を含む。ある実施態
様では、胎盤潅流液由来の細胞は、単一胎盤から得られる。ある実施態様では、胎盤潅流
液由来の細胞は、2つ以上の胎盤から得られる。ある実施態様では、胎盤潅流液由来の細
胞は、2つの胎盤から得られる。細胞が2つ以上の胎盤から得られる実施態様では、異な
る胎盤由来の細胞は、互いに血縁関係にあるかまたは適合している必要はない。
【0063】
本明細書に記載のように、胎盤潅流液は、臍帯血を流し出しており、かつ、胎盤細胞を
得るための灌流前に残留血液を除去するために灌流されている胎盤から得てもよい。胎盤
潅流液は、臍帯血を流し出しているが、残留血液を除去するために灌流されていない胎盤
から得てもよい。胎盤潅流液は、臍帯の0.5~6.0インチ、例えば、0.5~1.0
、1.0~1.5、1.5~2.0、2.0~2.5、2.5~3.0、3.0~3.5
、3.5~4.0、または4.0~6.0インチを除いた全てから分離されている胎盤か
ら得てもよく、臍帯は、残余の臍帯血を含んでもよく、その一部は、灌流中に胎盤潅流液
に入ることがあるため、胎盤潅流液に含まれる。胎盤潅流液は、臍帯血を流し出しておら
ず、かつ、残留血液を除去するための灌流もされていない胎盤から得てもよい。後者の2
つの実施態様では、胎盤細胞、例えば、胎盤潅流液由来の有核細胞、例えば、HPCは、
胎盤血液および/または臍帯血由来の有核細胞を含む。特定の実施態様では、本開示に従
って使用される胎盤潅流液は、臍帯血を含まない。別の特定の実施態様では、本開示に従
って使用される胎盤潅流液は、臍帯血を実質的に含まず、例えば、前記胎盤潅流液は、1
0%未満、5%未満、1%未満、0.5%未満、または0.1%未満の臍帯血を含む。一
般に、潅流液由来の細胞が臍帯血細胞を含む場合、そのような細胞は、本明細書で提供さ
れる方法の目的上、HPC集団の一部であり、HT細胞、例えば、UCB細胞の一部では
ないと見なされる。
【0064】
胎盤潅流液は、投与のために、単一の個人から(すなわち、単一の単位として)収集し
てもよく、または例えば、同じ個人または1人または複数の他の個人から他の単位と共に
プールしてもよい。ある実施態様では、胎盤潅流液またはそれに由来する細胞を投与前に
保管する。ある実施態様では、1単位の胎盤潅流液は、対象のキログラム体重当たり少な
くとも約0.5×106、1.0×106、1.5×106、2.0×106、2.5×
106、または3.0×106個の胎盤潅流液由来の細胞、例えば、全有核細胞を投与す
るように十分な数の細胞を含有する。ある実施態様では、1単位の胎盤潅流液またはそれ
に由来する細胞を投与する。ある実施態様では、1単位未満を投与する。ある実施態様で
は、1単位超を投与する。
【0065】
胎盤潅流液を得るための胎盤は、出産および胎盤剥離に成功した後に回収することがで
きる。ある実施態様では、胎盤は、正期産から得る。ある実施態様では、胎盤は、早産か
ら得る。いくつかの実施態様では、胎盤は、妊娠約23~約25週で出生した乳児の胎盤
である。いくつかの実施態様では、胎盤は、妊娠約26~約29週で出生した乳児の胎盤
である。いくつかの実施態様では、胎盤は、妊娠約30~約33週で出生した乳児の胎盤
である。いくつかの実施態様では、胎盤は、妊娠約34~約37週で出生した乳児の胎盤
である。いくつかの実施態様では、胎盤は、妊娠約37~約42週で出生した乳児の胎盤
である。
【0066】
本開示に従って使用されるヒト胎盤灌流液またはそれに由来する細胞は、一般に、細胞
の対象レシピエントと非血縁である。本開示に従って使用されるヒト胎盤灌流液またはそ
れに由来する細胞は、一般に、細胞の対象レシピエントに不適合であるかまたは部分的に
不適合である。
【0067】
本開示に従って使用されるヒト胎盤灌流液またはそれに由来する細胞は、任意の方法に
よって得ることができる。胎盤潅流液は、例えば、米国特許第7,045,148号、米
国特許第7,255,879号、および/または米国特許第8,057,788号に開示
されるように得ることができる。これらの各々の内容は、その全体が参照により本明細書
に組み込まれる。そのような灌流は、例えば、灌流液を、胎盤脈管構造を強制的に通過さ
せ、かつ胎盤、典型的には母側から滲出する灌流液を、胎盤を含むパン中に収集するパン
法による潅流であってもよい。潅流は、例えば、灌流液を通過させ、胎盤の胎児脈管構造
のみから収集する閉回路潅流であってもよい。例えば、米国特許第8,057,788号
を参照されたい。この内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。特定の実
施態様では、そのような潅流は、連続的であってもよく、すなわち、胎盤を通過した灌流
液を、胎盤潅流液由来の細胞(例えば、HPCまたは胎盤潅流液由来の全有核細胞)の単
離に先立ってもう1回または複数回通過させてもよい。
【0068】
(4.3.臍帯血細胞)
本開示に従って使用される臍帯血(本明細書では、UCBまたは「臍帯血」とも呼ばれ
る)は、任意の医学的または薬学的に許容される様式で収集してもよいし、組成物、例え
ば、医薬組成物中に存在してもよい。臍帯血を収集するための種々の方法が記載されてい
る。例えば、米国特許第6,102,871号;米国特許第6,179,819号;およ
び米国特許第7,147,626号を参照されたい。これらの各々の内容は、その全体が
参照により本明細書に組み込まれる。臍帯血を収集するための従来の技術は、針またはカ
ニューレの使用に基づいており、これは、重力の助けを借りて使用される。臍帯血は、例
えば、血液バッグ、移動バッグ、または無菌のプラスチック製チューブの中に収集しても
よい。
【0069】
いくつかの実施態様では、臍帯血は、商業的な臍帯血バンク(例えば、LifeBan
kUSAなど)から得られる。別の実施態様では、臍帯血を、分娩後の哺乳動物の臍帯か
ら収集し、直ちに(例えば、収集後1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11ま
たは12時間以内に)使用する。他の実施態様では、対象を治療するために使用する臍帯
血は、凍結保存されていた臍帯血である。臍帯血は、単一の臍帯または複数の臍帯から収
集することができる。
【0070】
ある実施態様では、HT細胞、例えば、UCB細胞は、対象および/またはHPCと非
血縁である。別の実施態様では、HT細胞、例えば、UCB細胞は、対象および/または
HPCに部分的に不適合である。さらに別の実施態様では、HT細胞、例えば、UCB細
胞は、HPCに不適合である。さらに別の実施態様では、HT細胞、例えば、UCB細胞
は、HPCと非血縁であり、かつ、不適合である。特定の実施態様では、UCBは、3/
6、4/6、または5/6のHLA遺伝子座で対象に適合する。特定の実施態様では、H
T細胞、例えば、成人の供給源由来のHT細胞は、6/8、7/8、または8/8のHL
A遺伝子座で対象に適合する。
【0071】
いくつかの実施態様では、臍帯血は、早産の臍帯から調製する。他の実施態様では、臍
帯血は、正期産の臍帯から調製する。ある実施態様では、臍帯血は、正期産の分娩後の哺
乳動物の臍帯から得られる。他の実施態様では、臍帯血は、早産の分娩後の哺乳動物の臍
帯から得られる。いくつかの実施態様では、臍帯は、妊娠約23~約25週で出生した乳
児の臍帯である。いくつかの実施態様では、臍帯は、妊娠約26~約29週で出生した乳
児の臍帯である。いくつかの実施態様では、臍帯は、妊娠約30~約33週で出生した乳
児の臍帯である。いくつかの実施態様では、臍帯は、妊娠約34~約37週で出生した乳
児の臍帯である。いくつかの実施態様では、臍帯は、妊娠約37~約42週で出生した乳
児の臍帯である。
【0072】
臍帯血またはそれに由来する細胞(例えば、全有核細胞またはそれに由来する幹細胞)
は、投与のために、単一の個人から(すなわち、単一の単位として)収集してもよく、ま
たは他の単位と共にプールしてもよい。ある実施態様では、臍帯血またはそれに由来する
細胞(例えば、全有核細胞またはそれに由来する幹細胞)は、使用前に保管する。臍帯血
を複数の臍帯からプールする場合、プールした臍帯血は、正期産のみに由来する臍帯血、
正期産の組み合わせに由来する臍帯血、または早産のみに由来する臍帯血を含むことがで
きる。例えば、未熟児の臍帯に由来する臍帯血は、例えば、他の未熟児に由来する臍帯血
、正期産のみに由来する臍帯血、または早産の胎盤および正期産の胎盤の両方に由来する
臍帯血の組み合わせと組み合わせることができる。自己由来の臍帯血または同種異系の臍
帯血を含めて、臍帯血は、末梢血と組み合わせることもできる。ある実施態様では、早産
に由来する臍帯血を使用し、したがって、臍帯血は、正期産の臍帯血と比較して、単位体
積当たり、比較的多数のCD34+幹細胞を含む。ある実施態様では、1単位の臍帯血は
、対象のキログラム体重当たり少なくとも約1.0×106、1.5×106、2.0×
106、1.5×106、2.0×106、2.5×106、3.0×106、3.5×
106、4.0×106、4.5×106、6.0×106、6.5×106、7.0×
106、7.5×106、8.0×106、8.5×106、9.0×106、9.5×
106、1.0×107、1.5×107、2.0×107、2.5×107、3.0×
107、3.5×107、4.0×107、4.5×107、5.0×107、5.5×
107、または6.0×107個の前記臍帯血から得られる細胞、例えば、臍帯血由来の
全有核細胞を投与するように十分な数の細胞を含有する。ある実施態様では、1単位の臍
帯血またはそれに由来する細胞を投与する。ある実施態様では、1単位未満を投与する。
ある実施態様では、1単位超を投与する、例えば、2つまたはそれ以上(例えば、2、3
、4、5、6、またはそれ以上)の単位を投与する。
【0073】
(4.4.HT細胞、UCB、および胎盤灌流液の収集)
HT細胞、例えば、臍帯血細胞、例えば、UCB、およびHPC、例えば、ヒト胎盤
灌流液は、当該技術分野で公知の方法を用いて、かつ、医師により確立された手順に従っ
て得ることができる。
【0074】
一実施態様では、臍帯または臍帯血および/または胎盤を、インフォームドコンセント
を得た患者から回収し、患者の妊娠の前、間および後の完全な病歴も得る。これらの診療
記録を使用して、胎盤またはUCB、またはそこから収穫した細胞、例えば、HPCまた
はHT細胞、例えば、UCB細胞のそれに続く使用を調整することができる。例えば、U
CBまたは胎盤潅流液から得られたそのようなヒト細胞は、次いで、治療すべき対象のた
めの個別化医療のために容易に使用することができる。
【0075】
ある実施態様では、ヒト胎盤は、その娩出後間もなく回収する。ある実施態様では、臍
帯血も回収する。特定の実施態様では、臍帯には、従来の臍帯血回収プロセスを施す。臍
帯血は、商業的な臍帯血バンクサービス、例えば、LifeBankUSA、Cedar
Knolls、N.J.から得ることもできる。
【0076】
ある実施態様では、臍帯血は、米国特許第7,147,626号に記載のような臍帯血
収集キットを用いて収集する。この内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれ
る。
【0077】
一実施態様では、標準的なチャック、無菌のガーゼパッド、ポピドンヨードスワブ、無
菌のアルコールパッド、プラスチック製臍帯血用クランプ、スライドクリップまたは止血
用クランプ、および漏れ防止型ジッパー付き袋または小型の缶を含有する収集キットを使
用する。胎盤の分娩前(子宮内での収集)、胎盤の分娩後(子宮外での収集)、または胎
盤の分娩に先立つ帝王切開の間に収集を行うことができる。手短にいうと、臍帯上の遠位
における静脈穿刺部位を滅菌する。大型の収集袋から伸びる収集チューブをクランプし、
針からキャップを外し、針の先端面取り部を臍帯静脈に向かって、臍帯静脈にカニューレ
挿入する。クランプを外して、血液を流れさせ、収集袋をカニューレ挿入部位より下まで
下げ、血液が収集袋を重力によって満たすのを可能にする。血液の流れが止まったら、静
脈穿刺部位をクランプし、臍帯静脈から針を引き抜く。収集袋にラベルを付け、断熱され
た発送容器中に入れる。臍帯血がクランプされた状態の胎盤を、漏れ防止型ジッパー付き
袋中に置き、次いで、袋を適切に閉じ、ラベルを付ける。収集後、臍帯血細胞の生存率を
、トリパンブルー染色後に血球計数器によって決定する。
【0078】
ある実施態様では、近位の臍帯を、例えば、臍帯血の回収前に胎盤(placenta
l disc)中への挿入部の3~4インチ以内においてクランプする。他の実施態様で
は、近位の臍帯を、臍帯血の回収後ではあるが、胎盤を処理する前にクランプする。臍帯
血を収集するための従来の技術を使用してもよい。一実施態様では、針またはカニューレ
を使用して、重力の助けを借りて臍帯血を流し出す。
【0079】
哺乳動物の胎盤の灌流方法は、例えば、Haririの文献、米国特許第7,045,
148号および同第7,255,879号、および「臓器の収集および保存のための改良
組成物(Improved Composition for Collecting an
d Preserving Organs)」と題された米国特許出願公開第2007/0
190042号に開示されている。これらの開示は、それら全体が参照により本明細書に
組み込まれる。
【0080】
特定の実施態様では、胎盤は、約1時間~約72時間または約4時間~約24時間の期
間にわたって保管し、それから、胎盤を灌流していずれの残余の臍帯血も除去してもよく
、または残余の臍帯血を除去せずに胎盤を灌流してもよい。胎盤を、抗凝固溶液中で、約
5℃~約25℃、例えば、室温付近の温度で保管してもよい。適切な抗凝固溶液は、当該
技術分野ではよく知られている。例えば、ヘパリンまたはワルファリンナトリウムの溶液
を使用することができる。一実施態様では、抗凝固溶液は、ヘパリン溶液(1:1000
溶液中、1%w/w)を含む。ある実施態様では、胎盤は、HPC、例えば、ヒト胎盤灌
流液を収集するまで、36時間以上は保管しない。
【0081】
一実施態様では、ヒト胎盤灌流液は、放血させたまたは部分的に放血させた胎盤を適切
な灌流水溶液で灌流することで得られる。一態様では、胎盤は、完全に放血させずに適切
な灌流水溶液で灌流する。灌流溶液は、任意の等張水溶液であってよい。一実施態様では
、抗凝固薬(例えば、ヘパリン、ワルファリンナトリウム)は、灌流溶液中に溶解してい
る。そのような灌流のための等張水溶液は、当該技術分野ではよく知られており、それら
としては、例えば、栄養培地、生理食塩水、例えば、リン酸緩衝生理食塩水または0.9
N塩化ナトリウム溶液が挙げられる。使用する場合、灌流液は、いずれの残余の臍帯血の
血餅形成も防止するのに十分な濃度で抗凝固薬を含むことができる。特定の実施態様では
、1~100単位の濃度のヘパリンを用いる。別の特定の実施態様では、1ml当たり1
~10単位の濃度のヘパリンを用いる。一実施態様では、アポトーシス阻害剤、例として
、フリーラジカル消去剤、詳細には、酸素フリーラジカル消去剤を、放血の間および直後
に使用することができ、次いで、これらの薬剤は、胎盤から洗浄することができる。この
実施態様によれば、単離した胎盤は、アポトーシスを防止または阻害するために、低体温
条件下で保管してもよい。
【0082】
ある実施態様では、胎盤は、灌流液で洗い流さずに、灌流前に全ての残留する臍帯血を
除去する。他の実施態様では、胎盤潅流液由来の細胞を収集する前に、胎盤を、例えば、
10~100mLの灌流液で洗い流して、実質的に全ての残留する臍帯血を除去する。典
型的には、灌流液を、胎盤中への重力による流れを使用して、臍帯動脈および臍帯静脈の
いずれかまたは両方を通して通過させることによって、そのような洗い流しを行う。臍帯
動脈および臍帯静脈が胎盤の最も高い点に位置するように、胎盤の位置を定める(例えば
、胎盤をぶら下げる)ことができる。一実施態様では、臍帯動脈および臍帯静脈を、柔軟
なコネクタを介して灌流液のリザーバに接続しているピペットに、同時に接続させる。灌
流液を、臍帯静脈および臍帯動脈へと通過させ、妊娠中には母体の子宮に付着していた胎
盤の表面から、適切な開放槽中に収集する。また、灌流液を、臍帯の開口部を通して導入
し、母体の子宮壁と界面を形成していた胎盤壁中の開口部から流すまたは染み出させるこ
ともできる。
【0083】
一実施態様では、近位の臍帯を、灌流の間クランプし、例えば、臍帯の、胎盤中への挿
入部の4~6インチ以内においてクランプする。
【0084】
一実施態様では、本質的に全ての残余の臍帯血を除去し、それに続いて、臍帯血の除去
後に胎盤中に残留する胎盤細胞を収集または回収するのに十分な量の灌流液を使用する。
【0085】
ある実施態様では、約500ミリリットル(ml)~1.5リットル、例えば、750
ml~1リットルの灌流液は、胎盤を部分的または完全に放血させ、細胞、例えばHPC
または全有核細胞の最初の集団を回収するために十分であるが、それより多いまたは少な
い灌流液を、観察される結果に依存して使用してもよい。
【0086】
特定の実施態様では、本明細書に記載の方法で使用される胎盤潅流液は、臍帯血を含む
。特定の実施態様では、本明細書に記載の方法で使用される胎盤潅流液は、臍帯血を含ま
ない。別の特定の実施態様では、本明細書に記載の方法で使用される胎盤潅流液は、臍帯
血を実質的に含まず、例えば、前記胎盤潅流液は、10%未満、5%未満、1%未満、0
.5%未満、または0.1%未満の臍帯血を含む。
【0087】
別の実施態様では、灌流溶液を臍帯静脈を通して通過させ、臍帯動脈から収集するかま
たは臍帯動脈を通して通過させ、臍帯静脈から収集する。そのような方法の代表的で非限
定的な例としては、以下のように行うことができる。分娩後の胎盤は、出産後約48時間
以内に得られる。臍帯はクランプし、クランプの上部で切断する。羊膜は灌流の間保持さ
れていてもよく、または、例えば指による鈍的切開によって絨毛膜から分離してもよい。
例えば、滅菌されたガーゼを用いて、認識できる全ての血塊および残留血液を胎盤から取
り除いた後、例えば、臍帯の断面を露出させるために臍帯膜を部分的に切ることで、臍帯
の管を露出させる。例えば、閉じたワニ口クランプを各管の切断した一端から前進させる
ことで、管は確認され、開かれる。その後、装置(例えば、灌流デバイスに接続されたプ
ラスチック製チューブ)がそれぞれの胎盤動脈に挿入される。その後、滅菌された収集リ
ザーバ、例えば、250mL採集袋などの血液バッグに接続されたプラスチック製チュー
ブが、胎盤静脈に挿入される。あるいは、装置に接続されたチューブが胎盤静脈に挿入さ
れ、収集リザーバ(または複数)に接続されたチューブが胎盤動脈のうちの1つもしくは
両方に挿入される。その後、胎盤には、一定量の灌流溶液、例えば、約750mLの灌流
溶液が灌流される。その後、灌流液中の細胞は、例えば、遠心分離によって収集すること
ができる。
【0088】
別の特定の実施態様では、胎盤を、無菌の盆中に配置し、500mlのリン酸緩衝生理
食塩水を用いて洗浄する。次いで、洗浄液を捨てる。次いで、臍帯静脈に、無菌のチュー
ブなどの無菌の接続装置に接続している、カニューレ、例えば、TEFLON(登録商標
)製またはプラスチック製のカニューレを用いてカニューレ挿入する。無菌の接続装置を
、灌流マニフォールドに接続する。次いで、胎盤を含有する容器に蓋をし、胎盤を、室温
(20~25℃)で、所望の期間、例えば、2~24時間、ある実施態様では、48時間
以下にわたり維持する。胎盤を、連続的に灌流し、等しい体積の灌流液を導入し、溶出灌
流液を除去または収集してもよい。あるいは、胎盤を、培養の間、定期的に、例えば、2
時間毎に、4、8、12、および24時間に;または他の間隔で、ある体積の灌流液、例
えば、100mlの灌流液(1000単位/lのヘパリンおよび/またはEDTAおよび
/またはCPDA(クレアチンリン酸デキストロース)を補ったまたは補わない無菌の生
理食塩水)で灌流してもよい。定期的な灌流の場合、胎盤が安定した体積の灌流液に常時
浸かるように、等しい体積の灌流液を導入し、除去してもよい。
【0089】
胎盤、例えば、胎盤の反対表面で漏れ出る溶出潅流液を収集し、処理して、細胞、例え
ば、HPCを単離する。特定の実施態様では、胎盤細胞は、当業者に公知の技術、例えば
、密度勾配遠心分離などの技術を用いて溶出潅流液から単離する。一実施態様では、HP
Cまたは胎盤潅流液由来の全有核細胞は、例えば、細胞デブリ、血清、または除核細胞か
ら全有核細胞を分離するために、分画遠心法によって単離される。特定の実施態様では,
胎盤細胞を、溶出灌流液から、例えば、約5000×g、室温で約15分間遠心分離する
ことによって回収することができる。これによって、細胞が、汚染デブリおよび血小板か
ら分離される。細胞ペレットを、例えば、2単位/mlヘパリンおよび2mM EDTA
を含有するIMDM無血清培地(GibcoBRL、NY)中に再懸濁させる。総単核細
胞画分を、アフェレーシスを使用して、例えば、LYMPHOPREP(商標)(Nyc
omed Pharma、Oslo、ノルウェー)などの市販の収集キットを使用して単
離することができる。次いで、細胞を、例えば、血球計数器を使用して数えてもよい。生
存率を典型的には、トリパンブルー色素排除によって評価する。
【0090】
一実施態様では、単離した胎盤を、灌流液を収集せずに、一定期間にわたり灌流する。
したがって、胎盤を、灌流液を収集する前に、2、4、6、8、10、12、20もしく
は24時間にわたり、または数日間にもわたり灌流することができる。そのような実施態
様では、例えば、灌流液を、胎盤中に導入し、胎盤の血管構造をある期間にわたり占有さ
せてから収集してもよく、または循環灌流液の場合には、灌流液を、そのような期間にわ
たり再度循環させてもよい。
【0091】
一実施態様では、回収した有核細胞の数が100個の細胞/ml未満になるまで、胎盤
の灌流および溶出灌流液の収集を1回または2回繰り返す。灌流液をプールし、軽く遠心
分離して、血小板、デブリおよび脱核細胞膜を除去する。次いで、有核細胞を、Fico
ll-Hypaque密度勾配遠心分離によって単離する。
【0092】
他の実施態様では、胎盤から収集した細胞を、その後のある時期に使用するために凍結
保存する。幹細胞などの細胞を凍結保存する方法は、当該技術分野ではよく知られており
、例えば、Boyseらの文献(1993年3月9日発行の米国特許第5,192,55
3号)またはHuらの文献(2000年12月7日公開のWO00/73421)の方法
を使用する凍結保存がある。
【実施例0093】
(5.実施例)
(5.1.実施例1:代謝異常を有する患者におけるヒト胎盤灌流液由来の非血縁臍帯血
および不適合単核球の移植)
この実施例は、代謝異常を有する患者に対してヒト胎盤灌流液由来の非血縁な臍帯血(
UCB)および不適合な単核球を安全かつ成功した投与を示す。
【0094】
患者は、進行性変異の副腎脳白質ジストロフィー(ALD)を有する11歳の男性であ
った。患者は、およそ-8日目に毒性軽減前処置を受けた。0日目に、患者は、単一単位
の非血縁なUCBと、ヒト胎盤灌流液由来の(患者レシピエントまたはUCBのいずれか
に)非血縁で、不適合な単核球の移植を注入によって受けた。特に、患者は、単一UCB
ドナー産物(6/6HLA適合;約3.9×107個の全細胞/kg;約2.8×105
個のCD34+細胞/kg)および合わせられた約0.6×107個の細胞/kgの潅流
液(約0.3×105個のCD34+細胞/kg)由来の全有核細胞投与(TNC)を受
けた。
【0095】
移植後140日目に、1)患者は、血液中で評価したように、99%のUCB移植ドナ
ーキメリズムと0%の胎盤潅流液細胞キメリズムで、UCBの完全生着を示し;2)患者
は、GVHDの証拠を示さず、3)患者は、ALDの症状である神経変性の兆候を示さな
かった。キメリズムの試験は、移植後28日~42日の間にまず行った。
【0096】
非悪性疾患を有する子供における、ヒト胎盤灌流液由来の不適合で非血縁な単核球の注
入と組み合わせた単一UCB移植は安全で良好な耐容性を示したことを、これらの結果は
示している。さらに、評価した最後の時点(移植後140日)までに、そのようなALD
患者において神経変性の検出が予測されていたが、神経変性は実際には検出されなかった
。
【0097】
(5.2.実施例2:悪性疾患を有する患者における非血縁臍帯血とヒト胎盤灌流液由来
の不適合単核球との移植(#1))
この実施例は、悪性疾患である急性リンパ性白血病(ALL)を有する患者に対して非
血縁な臍帯血(UCB)とヒト胎盤灌流液由来の不適合で非血縁な単核球とを安全かつ成
功した投与を示す。
【0098】
患者は、ALLを有する22歳の女性であった。非血縁なUCBと、ヒト胎盤灌流液由
来の不適合で非血縁な単核球とを投与する前に、患者は、事前化学療法を受け、およそ-
8日目に毒性軽減前処置を受けた。非血縁なUCBとヒト胎盤灌流液由来の不適合で非血
縁な単核球とを投与する時点では、患者は完全な骨髄破壊を示した。0日目に、患者は、
非血縁な臍帯UCB単位(両方の単位は、5/6HLA適合であり;1単位は、約3×1
07個の細胞/kg(約1.9×105個のCD34+細胞/kg)を含有し、他方は、
約2.5×107個の全細胞/kg(約1.42×105個のCD34+細胞/kg)を
含有する)と、ヒト胎盤灌流液由来の(患者レシピエントまたはUCBのいずれかに対し
て)不適合で非血縁な有核細胞(約0.4×107個の細胞/kgのTNC;約0.4×
105個のCD34+細胞/kg)とを二重で受けた。
【0099】
両方のUCB単位由来の細胞と潅流液細胞の生着は、23日までに検出した。移植後7
0日目に、患者は、血液中で評価したように、65%/34%/1%のUCB(単位#1
/単位#2)/胎盤潅流液細胞ドナーキメリズムで、完全生着を示し続けた。さらに、ア
ブレーション後の患者は約1%の免疫系を保持していたにもかかわらず、患者はGVHD
を示さなかった。最後の評価(移植後100日を超えた)で、患者は生存していた。
【0100】
悪性疾患を有する患者における、ヒト胎盤灌流液由来の不適合で非血縁な単核球の注入
と組み合わせた二重で部分的に不適合なUCB移植は安全で良好な耐容性を示したことを
、これらの結果は示している。
【0101】
(5.3.実施例3:悪性疾患を有する患者におけるヒト胎盤灌流液由来の非血縁臍帯血
および不適合単核球の移植(#2))
この実施例は、悪性疾患である急性リンパ性白血病(ALL)を有する患者に対して不
適合で非血縁な臍帯血(UCB)とヒト胎盤灌流液由来の不適合で非血縁な単核球との投
与を評価するように設計されている。
【0102】
患者は、CR1(誘発不全)のALLを有する17歳の女性であった。患者は、およそ
-8日目に骨髄破壊的前処置または毒性軽減前処置を受けた。0日目に、患者は、非血縁
な臍帯UCB単位(両方の単位は、4/6HLA適合であり;一方の単位は、約2.7×
107個の細胞/kg(約3.6×105個のCD34+細胞/kg)を含有し、他方は
、約約2.7×107個の細胞/kg(約2.5×105個のCD34+細胞/kg)を
含有する)と、ヒト胎盤灌流液由来の(患者レシピエントまたはUCBのいずれかに対し
て)不適合で非血縁な単核球(約0.3×107個の細胞/kgのTNC;約0.2×1
05個のCD34+細胞/kg)とを二重で受けた。生着を検出し、患者は安全性に関わ
る事件を示さなかった。最後の評価(移植後60日目)で、患者は、悪性度IIIまたは
IVのGVHDのいずれも示さなかった。
【0103】
(5.4. 実施例4:ヒト単核胎盤灌流液細胞と組み合わせた非血縁および血縁の臍帯
血の移植の臨床プロトコル)
本明細書に示されるプロトコルは、単一群非無作為化の予備研究であり、その主要な目
的は、幹細胞移植を必要とする種々の悪性または非悪性疾患を有する以下のA群~D群に
おける臍帯血と組み合わせたヒト単核胎盤潅流液細胞の移植の安全性を評価することであ
る。この研究の第2の目的は、幹細胞移植で潜在的に治癒可能な種々の悪性または非悪性
疾患を有する対象における造血生着、ドナーキメリズム、および免疫機能を評価すること
である。
【0104】
以下の群をこの研究で利用する:
【0105】
A群:(3人の対象)患者へのHLA適合が≧3/6の部分的に不適合で血縁関係にあ
る臍帯血と、血縁関係にある潅流液細胞。UCBおよび潅流液細胞は、同じドナー由来で
あり、ドナーは、患者と血縁関係にある。
【0106】
B群:(12人の対象)患者へのHLA適合が≧4/6の非血縁の臍帯血と、非血縁の
潅流液細胞。UCBは、非血縁ドナー由来であり、潅流液細胞は、別々の非血縁ドナー由
来である。
【0107】
C群:(3人の対象)患者へのHLA適合が≧4/6であるが、潅流液細胞と血縁関係
にある非血縁の臍帯血。UCBおよび潅流液細胞は、同じドナー由来であるが、ドナーは
、患者と非血縁である。
【0108】
D群:(12人の対象)患者および互いのHLA適合が≧4/6である、二重で非血縁
な臍帯血単位と、非血縁の潅流液細胞。各UCB単位は、別々であり、患者に非血縁で部
分的に不適合であるドナー由来であり、潅流液細胞ドナーは、患者またはいずれかのUC
Bドナーに非血縁である。
【0109】
全ての対象には、移植を必要とする疾患で規定されるように、完全な骨髄破壊または毒
性の低減した移植前処置のいずれかを施した後、UCBの移植および潅流液細胞の注入を
施す。標準的な手順を用いてUCB注入(または複数)を投与する。4時間の待期期間後
に、UCB注入から毒性が進行していないことを確認するため、1単位の潅流液細胞を注
入する(そのような単位は、対象が≧2.5×106個のTNC/kg体重を受けること
ができるように十分な数の細胞を含まなければならない)。潅流液細胞単位を解凍し、解
凍を開始してから90分以内に注入を行う。標準治療のGVHD予防薬も投与する。
【0110】
この研究の実施中に、移植後最初の100日中にA群~D群の各々におけるGVHDの
発生率、および(輸血中または輸血24時間以内に起こる)急性輸血反応の任意の発生率
を評価することに重きを置きながら、全ての臨床検査の有害事象の発生率を収集する。移
植前処置期間中、移植時、および移植後少なくとも6カ月間、対象をベースラインで評価
する。対象の安全性を守るため、一時的な登録停止は、研究に登録したいずれの対象にお
いて指標となる1つまたは複数の重篤な有害事象の発生によってもたらされる。
【0111】
選択基準:診断に関わらず全ての対象に対する重要な選択基準としては:1)対象、親
、または法定後見人は、インフォームドコンセント同意書を理解し、自発的に署名しなけ
ればならない;2)対象は、年齢に応じた同意書(該当する場合)を理解し、署名しなけ
ればならない;3)インフォームドコンセント同意書の署名時に≦55歳の年齢でなけれ
ばならない;4)施設訪問スケジュールおよび他のプロトコル要件を忠実に守ることがで
きなければならない;5)子供を設ける可能性がある女性(FCBP)は、前処置を開始
する7日以内に血清または尿妊娠検査が陰性でなければならない;6)性的に活発なFC
BPは、研究治療中に適切な避妊方法を使用することに同意しなければならない;7)3
カ月を超える余命;8)適切な全般健康状態、例えば、a)ランスキー全身状態≧50%
(子供)またはカルノフスキー全身状態≧70%(成人)、またはECOG全身状態0~
2(成人);b)予測された補正DLCO≧50%;c)推定された左室駆出率≧40%
;d)クレアチニンクリアランスまたは推定GFR≧60mL/分/1.73m2;e)
血清ビリルビン≦1.5×正常上限値;f)トランスアミナーゼ≦3×正常上限値;g)
制御されない感染がない;およびh)HIV陰性が挙げられる。対象によって示された疾
患または障害に特異的なさらなる選択基準も満たされるであろう。
【0112】
除外基準:対象は、以下の基準のいずれか1つを満たす場合、この研究の対象外である
:1)患者に過剰なリスクを課すであろう、この研究に参加している彼/彼女に悪影響を
及ぼすであろう、または本研究からのデータを解釈する能力を狂わせる任意の病状、検査
所見の異常、または精神疾患;2)ファンコニ貧血を有する患者は、この研究の対象外で
ある;3)登録前6カ月以内の心筋梗塞;4)ニューヨーク心臓協会(NYHA)クラス
IIIまたはIVの心不全;5)制御されない狭心症;6)重度の制御されない心室性不
整脈;7)急性虚血の心電図証拠または活性伝導系異常;8)制御されない感染;9)幹
細胞移植からの生存に不適合な主に予想される病気または臓器不全;10)妊娠中または
授乳期の女性;11)対象が、前処置レジメンの開始前30日以内に他の治験薬を受けて
いる。
【0113】
UCBおよび潅流液細胞要件:1)1つの血縁関係にある臍帯血単位は、5/6および
6/6HLA適合である≧3.5×107個のTNC/kg体重と、3/6および4/6
HLA適合である≧5.0×107個のTNC/kgとを含まなければならない(解凍前
)(A群);2)1つの非血縁なUCB単位は、5/6HLA適合または6/6HLA適
合である≧3.5×107個のTNC/kg体重、または4/6HLA適合である≧5.
0×107個のTNC/kg体重を含まなければならない(解凍前)(B群);3)1つ
の非血縁な臍帯血単位は、4/6、5/6、または6/6HLA適合である≧5.0×1
07個のTNC/kg体重を含まなければならない(解凍前)(C群);4)2つの非血
縁な臍帯血単位は、両方の単位(解凍前)を組み合わせて≧5.0×107個のTNC/
kgを含み、かつ、互いにかつレシピエントへのHLA適合が≧4/6でなければならな
い(D群);5)HPC単位は、対象が≧2.5×106個のTNC/kg体重を受ける
ことができるのに十分な数の細胞を含まなければならない。
【0114】
HLA分類およびHLA適合グレード:1)非血縁な臍帯血/適合した家族ドナー:H
LA分類は、クラスI AおよびBの血清学、およびDRB1の高分解能DNA分類によ
って行う;2)家族ドナーは、血清学によるHLA AおよびB(クラスI)抗原と、D
NA分類によるHLA DRB1(クラスII)抗原と5/6または6/6で適合した一
親等血縁者でなければならない;3)1つの血縁関係にある臍帯血単位は、5/6および
6/6HLA適合である≧3.5×107個のTNC/kg体重と、3/6および4/6
HLA適合である≧5.0×107個のTNC/kgとを含まなければならない(解凍前
)(A群);4)1つの非血縁なUCB単位は、5/6HLA適合または6/6HLA適
合である≧3.5×107個のTNC/kg体重、または4/6HLA適合である≧5.
0×107個のTNC/kg体重を含まなければならない(解凍前)(B群);5)1つ
の非血縁な臍帯血単位は、4/6、5/6、または6/6HLA適合である≧5.0×1
07個のTNC/kg体重を含まなければならない(解凍前)(C群);6)2つの非血
縁な臍帯血単位は、両方の単位(解凍前)を組み合わせて≧5.0×107個のTNC/
kgを含み(解凍前)、かつ、互いにかつレシピエントへのHLA適合が≧4/6でなけ
ればならない(D群);7)2つの非血縁な臍帯血の移植では、選択された最初の単位は
、利用可能な最善のHLA適合臍帯血単位(患者と≧4/6)であり、互いの単位とのH
LA適合が≧4/6である。
【0115】
移植前処置期間中、移植時、および移植後最長6カ月、全ての対象は、厳格な安全性評
価を受けるであろう。実施された重要な評価としては、身体検査、血液学および臨床化学
的判断、骨髄穿刺液、骨髄生検および末梢血分析、放射線検査、並びにGVHD、毒性、
および感染に特に重点を置いた有害事象の完全モニタリングが挙げられる。
【0116】
好中球および血小板生着の血液学的評価:分画をもつ全血球数は、0日目から、好中球
絶対数が最低値に到達した後に3日間>500/mm3になり、かつ、血小板数が、3つ
の異なる日で3回連続した測定で、血小板輸血から最低7日間独立して≧20,000/
mm3に到達するまで、1日~3日ごとに行う。好中球および血小板生着研究は、CRF
の適切なページ上に記録される。「好中球生着」とは、好中球数最低値の後に好中球絶対
数が500/mm3を上回る最初の3日間のことを言う。「血小板生着」とは、血小板が
輸血なしで≧20,000/mm3となる7日間の後に、血小板数が≧20,000/m
m3を示す最初の連続3日間のことを言う。
【0117】
ドナーキメリズム:末梢血ドナーキメリズム(UCBおよび潅流液細胞)(全血、NK
およびT細胞)の定量は、7日目、14日目、30日目、60日目、100日目、および
180日目(+/-10日)に評価する。さらに、末梢血レシピエントキメリズムの定量
は、ベースラインでのドナー細胞(UCBおよび潅流液細胞)のキメリズムに沿ったベー
スラインで評価する。定量は、短縦列反復アッセイを用いて行う。
【0118】
骨髄穿刺液、骨髄生検、および末梢血分析:骨髄穿刺液および生検は、基礎疾患につい
て容認された手順に従って行い、対象の疾患状態を評価する。これらの分析は、移植後1
00日目および180日目±10日で行うと考えられる。
【0119】
均等物:
本発明の範囲は、本明細書に記載の特定の実施態様によって制限されるものではない。
実際に、本明細書に記載するものに加えて、本発明の種々の改変形態が、前述の説明から
当業者には明らかになるであろう。そのような改変形態は、添付の特許請求の範囲に属す
ることを意図する。
【0120】
本明細書に引用した参照文献は全て、それぞれの個々の刊行物、特許または特許出願を
具体的かつ個々に、その全体を全ての目的で参照により本明細書に組み込むのと同じ程度
に、それらの全体が全ての目的で参照により本明細書に組み込まれている。
【0121】
いずれの刊行物の引用も、本出願日前のその開示に関するものであり、これによって、
本発明が、先行発明によるそのような刊行物に先行するものではないことを認めると解釈
してはならない。