(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023078173
(43)【公開日】2023-06-06
(54)【発明の名称】レーベル遺伝性視神経症を治療するための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/11 20060101AFI20230530BHJP
【FI】
C12N15/11 Z ZNA
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023029170
(22)【出願日】2023-02-28
(62)【分割の表示】P 2021521870の分割
【原出願日】2019-07-01
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2018/095023
(32)【優先日】2018-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2018/103937
(32)【優先日】2018-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201810703168.7
(32)【優先日】2018-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201810702492.7
(32)【優先日】2018-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2018/113799
(32)【優先日】2018-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201811230856.2
(32)【優先日】2018-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2018/118662
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201811221305.X
(32)【優先日】2018-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2019/070461
(32)【優先日】2019-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201810948193.1
(32)【優先日】2018-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.プルロニック
(71)【出願人】
【識別番号】521001087
【氏名又は名称】ウーハン ニューロフス バイオテクノロジー リミテッド カンパニー
【氏名又は名称原語表記】WUHAN NEUROPHTH BIOTECHNOLOGY LIMITED COMPANY
【住所又は居所原語表記】C270-271 B1,No.666 Ave Gaoxin,Wuhan,Hubei 430060(CN)
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リー,ビン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】より高いトランスフェクション効率及び治療有効性を有する、LHONを治療するための組成物及び方法を提供する。
【解決手段】組換え核酸であって、ミトコンドリア指向性配列;ミトコンドリアタンパク質コード配列であってミトコンドリアタンパク質を含むポリペプチドをコードする上記ミトコンドリアタンパク質コード配列;及び3’UTR核酸配列を含む、当該組換え核酸を本明細書に開示する。また、組換え核酸を含む医薬組成物、及び医薬組成物を使用してレーベル遺伝性視神経症(LHON)を治療する方法も開示する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組換え核酸であって、
ミトコンドリア指向性配列;
配列番号7、8、10及び12からなる群から選択される配列と少なくとも99%同一
である配列を含むミトコンドリアタンパク質コード配列;ならびに
3’UTR核酸配列
を含む、前記組換え核酸。
【請求項2】
前記ミトコンドリア指向性配列が、配列番号129~159からなる群から選択される
配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、ま
たは100%同一であるペプチド配列を含むポリペプチドをコードする、請求項1に記載
の組換え核酸。
【請求項3】
前記ミトコンドリア指向性配列が、配列番号2に示される配列と少なくとも90%、少
なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%同一である配列
を含む、請求項1に記載の組換え核酸。
【請求項4】
前記ミトコンドリア指向性配列が、配列番号3に示される配列と少なくとも90%、少
なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%同一である配列
を含む、請求項1に記載の組換え核酸。
【請求項5】
前記ミトコンドリア指向性配列が、配列番号4に示される配列と少なくとも90%、少
なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%同一である配列
を含む、請求項1に記載の組換え核酸。
【請求項6】
前記ミトコンドリア指向性配列が、配列番号5に示される配列と少なくとも90%、少
なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%同一である配列
を含む、請求項1に記載の組換え核酸。
【請求項7】
前記ミトコンドリアタンパク質コード配列が、配列番号7または配列番号8に示される
配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、ま
たは100%同一である配列を含む、請求項1に記載の組換え核酸。
【請求項8】
前記ミトコンドリアタンパク質コード配列が、配列番号10に示される配列と少なくと
も90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%同
一である配列を含む、請求項1に記載の組換え核酸。
【請求項9】
前記ミトコンドリアタンパク質コード配列が、配列番号12に示される配列と少なくと
も90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%同
一である配列を含む、請求項1に記載の組換え核酸。
【請求項10】
前記3’UTR核酸配列が、配列番号111~125からなる群から選択される配列と
少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または1
00%同一である配列を含む、請求項1に記載の組換え核酸。
【請求項11】
前記3’UTR核酸配列が、配列番号13または配列番号14に示される配列と少なく
とも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%
同一である配列を含む、請求項1に記載の組換え核酸。
【請求項12】
前記組換え核酸が、
配列番号17~20、23~24、27~28、31~34、37~38、41~42
、45~48、51~52、55~56、59~62、65~66、69~70、73~
76、79~80、及び83~84
からなる群から選択される配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97
%、少なくとも99%、または100%同一である配列を含む、請求項1に記載の組換え
核酸。
【請求項13】
組換え核酸であって、
配列番号2、3、4及び5からなる群から選択される配列と少なくとも90%同一であ
る配列を含むミトコンドリア指向性配列;
ミトコンドリアタンパク質コード配列であってミトコンドリアタンパク質を含むポリペ
プチドをコードする前記ミトコンドリアタンパク質コード配列;ならびに
3’UTR核酸配列
を含む、前記組換え核酸。
【請求項14】
前記ミトコンドリア指向性配列が、配列番号2に示される配列と少なくとも90%、少
なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%同一である配列
を含む、請求項13に記載の組換え核酸。
【請求項15】
前記ミトコンドリア指向性配列が、配列番号3に示される配列と少なくとも90%、少
なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%同一である配列
を含む、請求項13~14のいずれか1項に記載の組換え核酸。
【請求項16】
前記ミトコンドリア指向性配列が、配列番号4に示される配列と少なくとも90%、少
なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%同一である配列
を含む、請求項13~15のいずれか1項に記載の組換え核酸。
【請求項17】
前記ミトコンドリア指向性配列が、配列番号5に示される配列と少なくとも90%、少
なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%同一である配列
を含む、請求項13~16のいずれか1項に記載の組換え核酸。
【請求項18】
前記ミトコンドリアタンパク質が、NADH脱水素酵素4(ND4)、NADH脱水素
酵素6(ND6)、NADH脱水素酵素1(ND1)及びそれらの変異体からなる群から
選択される、請求項13~17のいずれか1項に記載の組換え核酸。
【請求項19】
前記ミトコンドリアタンパク質がNADH脱水素酵素4(ND4)またはその変異体を
含む、請求項18に記載の組換え核酸。
【請求項20】
前記ミトコンドリアタンパク質が、配列番号160に示される配列と少なくとも90%
、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%同一である
ペプチド配列を含む、請求項13~19のいずれか1項に記載の組換え核酸。
【請求項21】
前記ミトコンドリアタンパク質コード配列が、配列番号6、7または8に示される配列
と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または
100%同一である配列を含む、請求項13~20のいずれか1項に記載の組換え核酸。
【請求項22】
前記ミトコンドリアタンパク質がNADH脱水素酵素6(ND6)またはその変異体を
含む、請求項18に記載の組換え核酸。
【請求項23】
前記ミトコンドリアタンパク質が、配列番号161に示される配列と少なくとも90%
、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%同一である
配列を含む、請求項13~22のいずれか1項に記載の組換え核酸。
【請求項24】
前記ミトコンドリアタンパク質コード配列が、配列番号9または配列番号10に示され
る配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、
または100%同一である配列を含む、請求項13~23のいずれか1項に記載の組換え
核酸。
【請求項25】
前記ミトコンドリアタンパク質がNADH脱水素酵素1(ND1)またはその変異体を
含む、請求項13~24のいずれか1項に記載の組換え核酸。
【請求項26】
前記ミトコンドリアタンパク質が、配列番号162に示される配列と少なくとも90%
、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%同一である
配列を含む、請求項13~25のいずれか1項に記載の組換え核酸。
【請求項27】
前記ミトコンドリアタンパク質コード配列が、配列番号11または配列番号12に示さ
れる配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%
、または100%同一である配列を含む、請求項13~26のいずれか1項に記載の組換
え核酸。
【請求項28】
前記3’UTR核酸配列が前記ミトコンドリア指向性配列の3’に位置する、請求項1
3~27のいずれか1項に記載の組換え核酸。
【請求項29】
前記3’UTR核酸配列が、
hsACO2、hsATP5B、hsAK2、hsALDH2、hsCOX10、hs
UQCRFS1、hsNDUFV1、hsNDUFV2、hsSOD2、hsCOX6c
、hsIRP1、hsMRPS12、hsATP5J2、rnSOD2及びhsOXA1
L
からなる群から選択される配列を含む、請求項13~28のいずれか1項に記載の組換え
核酸。
【請求項30】
前記3’UTR核酸配列が、配列番号111~125からなる群から選択される配列と
少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または1
00%同一である配列を含む、請求項13~29のいずれか1項に記載の組換え核酸。
【請求項31】
前記3’UTR核酸配列が、配列番号13または配列番号14に示される配列と少なく
とも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%
同一である配列を含む、請求項13~29のいずれか1項に記載の組換え核酸。
【請求項32】
前記ミトコンドリア指向性配列が前記3’UTR核酸配列の5’に位置する、請求項1
3~31のいずれか1項に記載の組換え核酸。
【請求項33】
前記ミトコンドリア指向性配列が前記ミトコンドリア指向性配列の3’に位置する、請
求項13~32のいずれか1項に記載の組換え核酸。
【請求項34】
前記組換え核酸が、配列番号29~84からなる群から選択される配列と少なくとも9
0%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%同一で
ある配列を含む、請求項13~33のいずれか1項に記載の組換え核酸。
【請求項35】
組換え核酸であって、
ミトコンドリア指向性配列;
配列番号7、8、10及び12からなる群から選択される配列と少なくとも90%、少
なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%同一である配列
を含むミトコンドリアタンパク質コード配列;ならびに
3’UTR核酸配列
を含む、前記組換え核酸。
【請求項36】
前記ミトコンドリア指向性配列が、
hsCOX10、hsCOX8、scRPM2、lcSirt5、tbNDUS7、n
cQCR2、hsATP5G2、hsLACTB、spilv1、gmCOX2、crA
TP6、hsOPA1、hsSDHD、hsADCK3、osP0644B06.24-
2、Neurospora crassa ATP9(ncATP9)、hsGHITM
、hsNDUFAB1、hsATP5G3、crATP6_hsADCK3、ncATP
9_ncATP9、zmLOC100282174、ncATP9_zmLOC1002
82174_spilv1_ncATP9、zmLOC100282174_hsADC
K3_crATP6_hsATP5G3、zmLOC100282174_hsADCK
3_hsATP5G3、ncATP9_zmLOC100282174、hsADCK3
_zmLOC100282174_crATP6_hsATP5G3、crATP6_h
sADCK3_zmLOC100282174_hsATP5G3、hsADCK3_z
mLOC100282174、hsADCK3_zmLOC100282174_crA
TP6、ncATP9_zmLOC100282174_spilv1_GNFP_nc
ATP9、及びncATP9_zmLOC100282174_spilv1_lcSi
rt5_osP0644B06.24-2_hsATP5G2_ncATP9
からなる群から選択されるポリペプチドをコードする配列を含む、請求項35に記載の組
換え核酸。
【請求項37】
前記ミトコンドリア指向性配列が、配列番号129~159からなる群から選択される
配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、ま
たは100%同一であるペプチド配列を含むポリペプチドをコードする、請求項35~3
6のいずれか1項に記載の組換え核酸。
【請求項38】
前記ミトコンドリア指向性配列が、配列番号2または配列番号3に示される配列と少な
くとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100
%同一である配列を含む、請求項35~37のいずれか1項に記載の組換え核酸。
【請求項39】
前記ミトコンドリア指向性配列が、配列番号4に示される配列と少なくとも90%、少
なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%同一である配列
を含む、請求項35~38のいずれか1項に記載の組換え核酸。
【請求項40】
前記ミトコンドリア指向性配列が、配列番号5に示される配列と少なくとも90%、少
なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%同一である配列
を含む、請求項35~39のいずれか1項に記載の組換え核酸。
【請求項41】
前記ミトコンドリアタンパク質コード配列が、配列番号7または配列番号8に示される
配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、ま
たは100%同一である配列を含む、請求項35~40のいずれか1項に記載の組換え核
酸。
【請求項42】
前記ミトコンドリアタンパク質コード配列が、配列番号10に示される配列と少なくと
も90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%同
一である配列を含む、請求項35~41のいずれか1項に記載の組換え核酸。
【請求項43】
前記ミトコンドリアタンパク質コード配列が、配列番号12に示される配列と少なくと
も90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%同
一である配列を含む、請求項35~42のいずれか1項に記載の組換え核酸。
【請求項44】
前記3’UTR核酸配列が前記ミトコンドリア指向性配列の3’に位置する、請求項3
5~43のいずれか1項に記載の組換え核酸。
【請求項45】
前記3’UTR核酸配列が、
hsACO2、hsATP5B、hsAK2、hsALDH2、hsCOX10、hs
UQCRFS1、hsNDUFV1、hsNDUFV2、hsSOD2、hsCOX6c
、hsIRP1、hsMRPS12、hsATP5J2、rnSOD2及びhsOXA1
L
からなる群から選択される配列を含む、請求項35~44のいずれか1項に記載の組換え
核酸。
【請求項46】
前記3’UTR核酸配列が、配列番号111~125からなる群から選択される配列と
少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または1
00%同一である配列を含む、請求項35~45のいずれか1項に記載の組換え核酸。
【請求項47】
前記3’UTR核酸配列が、配列番号13または配列番号14に示される配列と少なく
とも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%
同一である配列を含む、請求項35~46のいずれか1項に記載の組換え核酸。
【請求項48】
前記ミトコンドリア指向性配列が前記3’UTR核酸配列の5’に位置する、請求項3
5~47のいずれか1項に記載の組換え核酸。
【請求項49】
前記ミトコンドリア指向性配列が前記ミトコンドリア指向性配列の3’に位置する、請
求項35~48のいずれか1項に記載の組換え核酸。
【請求項50】
前記組換え核酸が、
配列番号17~20、23~24、27~28、31~34、37~38、41~42
、45~48、51~52、55~56、59~62、65~66、69~70、73~
76、79~80、及び83~84
からなる群から選択される配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97
%、少なくとも99%、または100%同一である配列を含む、請求項35~49のいず
れか1項に記載の組換え核酸。
【請求項51】
組換え核酸であって、
配列番号2、3及び4からなる群から選択される配列と少なくとも90%、少なくとも
95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%同一であるミトコンドリ
ア指向性配列
を含む、前記組換え核酸。
【請求項52】
前記ミトコンドリア指向性配列が、配列番号2に示される配列と少なくとも90%、少
なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%同一である配列
を含む、請求項51に記載の組換え核酸。
【請求項53】
前記ミトコンドリア指向性配列が、配列番号3に示される配列と少なくとも90%、少
なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%同一である配列
を含む、請求項51~52のいずれか1項に記載の組換え核酸。
【請求項54】
前記ミトコンドリア指向性配列が、配列番号4に示される配列と少なくとも90%、少
なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%同一である配列
を含む、請求項51~53のいずれか1項に記載の組換え核酸。
【請求項55】
ミトコンドリアタンパク質コード配列をさらに含み、前記ミトコンドリアタンパク質コ
ード配列が、ミトコンドリアタンパク質を含むポリペプチドをコードする、請求項51~
54のいずれか1項に記載の組換え核酸。
【請求項56】
前記ミトコンドリアタンパク質が、NADH脱水素酵素4(ND4)、NADH脱水素
酵素6(ND6)、NADH脱水素酵素1(ND1)及びそれらの変異体からなる群から
選択される、請求項51~55のいずれか1項に記載の組換え核酸。
【請求項57】
前記ミトコンドリアタンパク質がNADH脱水素酵素4(ND4)またはその変異体を
含む、請求項51~56のいずれか1項に記載の組換え核酸。
【請求項58】
前記ミトコンドリアタンパク質が、配列番号160に示される配列と少なくとも90%
、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%同一である
ペプチド配列を含む、請求項51~57のいずれか1項に記載の組換え核酸。
【請求項59】
前記ミトコンドリアタンパク質コード配列が、配列番号6、7または8に示される配列
と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または
100%同一である配列を含む、請求項51~58のいずれか1項に記載の組換え核酸。
【請求項60】
前記ミトコンドリアタンパク質がNADH脱水素酵素6(ND6)またはその変異体を
含む、請求項51~59のいずれか1項に記載の組換え核酸。
【請求項61】
前記ミトコンドリアタンパク質が、配列番号161に示される配列と少なくとも90%
、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%同一である
配列を含む、請求項51~60のいずれか1項に記載の組換え核酸。
【請求項62】
前記ミトコンドリアタンパク質コード配列が、配列番号9または配列番号10に示され
る配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、
または100%同一である配列を含む、請求項51~61のいずれか1項に記載の組換え
核酸。
【請求項63】
前記ミトコンドリアタンパク質がNADH脱水素酵素1(ND1)またはその変異体を
含む、請求項51~62のいずれか1項に記載の組換え核酸。
【請求項64】
前記ミトコンドリアタンパク質が、配列番号162に示される配列と少なくとも90%
、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%同一である
配列を含む、請求項51~63のいずれか1項に記載の組換え核酸。
【請求項65】
前記ミトコンドリアタンパク質コード配列が、配列番号11または配列番号12に示さ
れる配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%
、または100%同一である配列を含む、請求項51~64のいずれか1項に記載の組換
え核酸。
【請求項66】
3’UTR核酸配列をさらに含む、請求項51~65のいずれか1項に記載の組換え核
酸。
【請求項67】
前記3’UTR核酸配列が前記ミトコンドリア指向性配列の3’に位置する、請求項5
1~66のいずれか1項に記載の組換え核酸。
【請求項68】
前記3’UTR核酸配列が、
hsACO2、hsATP5B、hsAK2、hsALDH2、hsCOX10、hs
UQCRFS1、hsNDUFV1、hsNDUFV2、hsSOD2、hsCOX6c
、hsIRP1、hsMRPS12、hsATP5J2、rnSOD2及びhsOXA1
L
からなる群から選択される配列を含む、請求項51~67のいずれか1項に記載の組換え
核酸。
【請求項69】
前記3’UTR核酸配列が、配列番号111~125からなる群から選択される配列と
少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または1
00%同一である配列を含む、請求項51~68のいずれか1項に記載の組換え核酸。
【請求項70】
前記3’UTR核酸配列が、配列番号13または配列番号14に示される配列と少なく
とも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%
同一である配列を含む、請求項51~69のいずれか1項に記載の組換え核酸。
【請求項71】
前記ミトコンドリア指向性配列が前記3’UTR核酸配列の5’に位置する、請求項5
1~70のいずれか1項に記載の組換え核酸。
【請求項72】
前記ミトコンドリア指向性配列が前記ミトコンドリア指向性配列の3’に位置する、請
求項51~71のいずれか1項に記載の組換え核酸。
【請求項73】
前記組換え核酸が、配列番号29~70からなる群から選択される配列と少なくとも9
0%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%同一で
ある配列を含む、請求項51~72のいずれか1項に記載の組換え核酸。
【請求項74】
組換え核酸であって、ミトコンドリアタンパク質コード配列を含み、前記ミトコンドリ
アタンパク質コード配列が、ミトコンドリアタンパク質を含むポリペプチドをコードし、
前記ミトコンドリアタンパク質コード配列が、
配列番号7、8、10及び12からなる群から選択される配列と少なくとも90%、少
なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%同一である配列
を含む、前記組換え核酸。
【請求項75】
ミトコンドリア指向性配列をさらに含む、請求項74に記載の組換え核酸。
【請求項76】
前記ミトコンドリア指向性配列が、
hsCOX10、hsCOX8、scRPM2、lcSirt5、tbNDUS7、n
cQCR2、hsATP5G2、hsLACTB、spilv1、gmCOX2、crA
TP6、hsOPA1、hsSDHD、hsADCK3、osP0644B06.24-
2、Neurospora crassa ATP9(ncATP9)、hsGHITM
、hsNDUFAB1、hsATP5G3、crATP6_hsADCK3、ncATP
9_ncATP9、zmLOC100282174、ncATP9_zmLOC1002
82174_spilv1_ncATP9、zmLOC100282174_hsADC
K3_crATP6_hsATP5G3、zmLOC100282174_hsADCK
3_hsATP5G3、ncATP9_zmLOC100282174、hsADCK3
_zmLOC100282174_crATP6_hsATP5G3、crATP6_h
sADCK3_zmLOC100282174_hsATP5G3、hsADCK3_z
mLOC100282174、hsADCK3_zmLOC100282174_crA
TP6、ncATP9_zmLOC100282174_spilv1_GNFP_nc
ATP9、及びncATP9_zmLOC100282174_spilv1_lcSi
rt5_osP0644B06.24-2_hsATP5G2_ncATP9
からなる群から選択されるポリペプチドをコードする配列を含む、請求項74~75のい
ずれか1項に記載の組換え核酸。
【請求項77】
前記ミトコンドリア指向性配列が、配列番号129~159からなる群から選択される
配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、ま
たは100%同一であるペプチド配列を含むポリペプチドをコードする、請求項74~7
6のいずれか1項に記載の組換え核酸。
【請求項78】
前記ミトコンドリア指向性配列が、配列番号2に示される配列と少なくとも90%、少
なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%同一である配列
を含む、請求項74~77のいずれか1項に記載の組換え核酸。
【請求項79】
前記ミトコンドリア指向性配列が、配列番号3に示される配列と少なくとも90%、少
なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%同一である配列
を含む、請求項74~78のいずれか1項に記載の組換え核酸。
【請求項80】
前記ミトコンドリア指向性配列が、配列番号4に示される配列と少なくとも90%、少
なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%同一である配列
を含む、請求項74~79のいずれか1項に記載の組換え核酸。
【請求項81】
前記ミトコンドリア指向性配列が、配列番号5に示される配列と少なくとも90%、少
なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%同一である配列
を含む、請求項74~80のいずれか1項に記載の組換え核酸。
【請求項82】
前記ミトコンドリアタンパク質コード配列が、配列番号7または配列番号8に示される
配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、ま
たは100%同一である配列を含む、請求項74~81のいずれか1項に記載の組換え核
酸。
【請求項83】
前記ミトコンドリアタンパク質コード配列が、配列番号10に示される配列と少なくと
も90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%同
一である配列を含む、請求項74~80のいずれか1項に記載の組換え核酸。
【請求項84】
前記ミトコンドリアタンパク質コード配列が、配列番号12に示される配列と少なくと
も90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%同
一である配列を含む、請求項74~83のいずれか1項に記載の組換え核酸。
【請求項85】
3’UTR核酸配列をさらに含む、請求項74~84のいずれか1項に記載の組換え核
酸。
【請求項86】
前記3’UTR核酸配列が前記ミトコンドリア指向性配列の3’に位置する、請求項7
4~85のいずれか1項に記載の組換え核酸。
【請求項87】
前記3’UTR核酸配列が、
hsACO2、hsATP5B、hsAK2、hsALDH2、hsCOX10、hs
UQCRFS1、hsNDUFV1、hsNDUFV2、hsSOD2、hsCOX6c
、hsIRP1、hsMRPS12、hsATP5J2、rnSOD2及びhsOXA1
L
からなる群から選択される配列を含む、請求項74~86のいずれか1項に記載の組換え
核酸。
【請求項88】
前記3’UTR核酸配列が、配列番号111~125からなる群から選択される配列と
少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または1
00%同一である配列を含む、請求項74~87のいずれか1項に記載の組換え核酸。
【請求項89】
前記3’UTR核酸配列が、配列番号13または配列番号14に示される配列と少なく
とも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%
同一である配列を含む、請求項74~88のいずれか1項に記載の組換え核酸。
【請求項90】
前記ミトコンドリア指向性配列が前記3’UTR核酸配列の5’に位置する、請求項7
4~89のいずれか1項に記載の組換え核酸。
【請求項91】
前記ミトコンドリア指向性配列が前記ミトコンドリア指向性配列の3’に位置する、請
求項74~90のいずれか1項に記載の組換え核酸。
【請求項92】
前記組換え核酸が、
配列番号17~20、23~24、27~28、31~34、37~38、41~42
、45~48、51~52、55~56、59~62、65~66、69~70、73~
76、79~80、及び83~84
からなる群から選択される配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97
%、少なくとも99%、または100%同一である配列を含む、請求項74~91のいず
れか1項に記載の組換え核酸。
【請求項93】
請求項1~92のいずれか1項に記載の前記組換え核酸を含む、ウイルスベクター。
【請求項94】
前記ウイルスベクターがアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである、請求項93に
記載のウイルスベクター。
【請求項95】
前記AAVベクターが、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV
6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV13
、AAV14、AAV15及びAAV16ベクターからなる群から選択される、請求項9
4に記載のウイルスベクター。
【請求項96】
前記AAVベクターが組換えAAV(rAAV)ベクターである、請求項93~95の
いずれか1項に記載のウイルスベクター。
【請求項97】
前記rAAVベクターがrAAV2ベクターである、請求項96に記載のウイルスベク
ター。
【請求項98】
請求項1~92のいずれか1項に記載の前記組換え核酸を含むアデノ随伴ウイルス(A
AV)を含む、医薬組成物。
【請求項99】
請求項98に記載の医薬組成物であって、その薬学的に許容される賦形剤をさらに含む
、前記医薬組成物。
【請求項100】
医薬組成物であって、請求項93~97のいずれか1項に記載の前記ウイルスベクター
と、その薬学的に許容される賦形剤とを含み、前記ウイルスベクターが、請求項1~92
のいずれか1項に記載の前記組換え核酸を含むものである、前記医薬組成物。
【請求項101】
医薬組成物であって、
請求項1~92のいずれか1項に記載の組換え核酸を含むアデノ随伴ウイルス(AAV
)
を含み、前記組換え核酸が、配列番号15に示される配列と少なくとも90%、少なくと
も95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%同一である配列を含む
ものであり、さらに、
薬学的に許容される賦形剤
を含む、前記医薬組成物。
【請求項102】
前記薬学的に許容される賦形剤が、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、α,α-トレハ
ロース二水和物(α,α-trehalose dehydrate)、L-ヒスチジン
一塩酸塩一水和物、ポリソルベート20、NaCl、NaH2PO4、Na2HPO4、
KH2PO4、K2HPO4、ポロキサマー188またはそれらの任意の組合せを含む、
請求項98~101のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項103】
前記薬学的に許容される賦形剤が、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、α,α-トレハ
ロース二水和物(α,α-trehalose dehydrate)、L-ヒスチジン
一塩酸塩一水和物、ポリソルベート20、NaCl、NaH2PO4、Na2HPO4、
KH2PO4、K2HPO4、ポロキサマー188及びそれらの任意の組合せから選択さ
れる、請求項98~102のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項104】
前記薬学的に許容される賦形剤がポロキサマー188を含む、請求項102に記載の医
薬組成物。
【請求項105】
前記薬学的に許容される賦形剤が0.0001~0.01%のポロキサマー188を含
む、請求項104に記載の医薬組成物。
【請求項106】
前記薬学的に許容される賦形剤が0.001%のポロキサマー188を含む、請求項1
05に記載の医薬組成物。
【請求項107】
前記薬学的に許容される賦形剤が1つ以上の塩をさらに含む、請求項98~106のい
ずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項108】
前記1つ以上の塩が、NaCl、NaH2PO4、Na2HPO4及びKH2PO4を
含む、請求項107に記載の医薬組成物。
【請求項109】
前記1つ以上の塩が、80mMのNaCl、5mMのNaH2PO4、40mMのNa
2HPO4、及び5mMのKH2PO4を含む、請求項107に記載の医薬組成物。
【請求項110】
前記医薬組成物のpHが6~8である、請求項98~109のいずれか1項に記載の医
薬組成物。
【請求項111】
前記医薬組成物のpHが7.2~7.4である、請求項110に記載の医薬組成物。
【請求項112】
前記医薬組成物のpHが7.3である、請求項111に記載の医薬組成物。
【請求項113】
前記医薬組成物のウイルス力価が少なくとも1.0×1010vg/mLである、請求
項98~112のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項114】
前記医薬組成物のウイルス力価が少なくとも5.0×1010vg/mLである、請求
項113に記載の医薬組成物。
【請求項115】
前記医薬組成物を5回の凍結/解凍サイクルに供したとき、前記医薬組成物が前記5回
の凍結/解凍サイクルの前のウイルス力価と比較して少なくとも60%、70%、80%
または90%のウイルス力価を保持している、請求項98~114のいずれか1項に記載
の医薬組成物。
【請求項116】
前記医薬組成物が、レーベル遺伝性視神経症患者に投与された場合に、前記組換え核酸
を含まない同等の医薬組成物に比べてより高い平均視力回復を生じさせる、請求項98~
115のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項117】
前記医薬組成物が、レーベル遺伝性視神経症患者に投与された場合に、配列番号15に
示される組換え核酸を含む同等の医薬組成物に比べてより高い平均視力回復を生じさせる
、請求項98~116のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項118】
眼障害を治療する方法であって、それを必要とする患者に、請求項98~117のいず
れか1項に記載の前記医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項119】
前記眼障害がレーベル遺伝性視神経症(LHON)である、請求項118に記載の方法
。
【請求項120】
前記医薬組成物を前記患者の片眼または両眼に投与することを含む、請求項118また
は請求項119に記載の方法。
【請求項121】
前記医薬組成物が眼内または硝子体内注射によって投与される、請求項118~120
のいずれか1項に記載の方法。
【請求項122】
前記医薬組成物が硝子体内注射によって投与される、請求項121に記載の方法。
【請求項123】
約0.01~0.1mLの前記医薬組成物が硝子体内注射によって投与される、請求項
122に記載の方法。
【請求項124】
約0.05mLの前記医薬組成物が硝子体内注射によって投与される、請求項123に
記載の方法。
【請求項125】
メチルプレドニゾロンを前記患者に投与することをさらに含む、請求項118~124
のいずれか1項に記載の方法。
【請求項126】
前記メチルプレドニゾロンが前記医薬組成物の前記硝子体内注射の前に投与される、請
求項125に記載の方法。
【請求項127】
前記メチルプレドニゾロンが経口投与される、請求項125~126のいずれか1項に
記載の方法。
【請求項128】
前記メチルプレドニゾロンが前記医薬組成物の前記硝子体内注射の前に少なくとも1、
2、3、4、5、6または7日間にわたって毎日投与される、請求項125~127のい
ずれか1項に記載の方法。
【請求項129】
前記メチルプレドニゾロンが毎日投与される、請求項125~128のいずれか1項に
記載の方法。
【請求項130】
約32mg/60kgのメチルプレドニゾロンの1日投薬量が投与される、請求項12
5~129のいずれか1項に記載の方法。
【請求項131】
前記メチルプレドニゾロンが前記医薬組成物の前記硝子体内注射の後に投与される、請
求項125~130のいずれか1項に記載の方法。
【請求項132】
クレアチンリン酸ナトリウムを前記患者に投与することをさらに含む、請求項125~
131のいずれか1項に記載の方法。
【請求項133】
前記クレアチンリン酸ナトリウムが静脈内投与される、請求項132に記載の方法。
【請求項134】
前記メチルプレドニゾロンが静脈内または経口投与される、請求項125~133のい
ずれか1項に記載の方法。
【請求項135】
メチルプレドニゾロンを少なくとも1日間にわたって静脈内投与し、その後、メチルプ
レドニゾロンを少なくとも1週間にわたって経口投与すること
を含む、請求項125~134のいずれか1項に記載の方法。
【請求項136】
メチルプレドニゾロンを約3日間にわたって静脈内投与し、その後、メチルプレドニゾ
ロンを少なくとも約6週間にわたって経口投与すること
を含む、請求項135に記載の方法。
【請求項137】
前記メチルプレドニゾロンが約80mg/60kgの1日用量で静脈内投与される、請
求項125~136のいずれか1項に記載の方法。
【請求項138】
前記医薬組成物を前記投与することが、前記組換え核酸を含まない同等の医薬組成物に
比べてより高い平均視力回復を生じさせる、請求項125~137のいずれか1項に記載
の方法。
【請求項139】
前記医薬組成物を前記投与することが、配列番号15に示される組換え核酸を含む同等
の医薬組成物に比べてより高い平均視力回復を生じさせる、請求項125~138のいず
れか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2018年7月9日に出願されたPCT出願第PCT/CN2018/09
5023号、2018年9月4日に出願されたPCT出願第PCT/CN2018/10
3937号、2018年6月29日に両方とも出願された中国出願第CN2018107
03168.7号及び第CN201810702492.7号、2018年11月2日に
出願されたPCT出願第PCT/CN2018/113799号、2018年10月22
日に出願された中国出願第CN201811230856.2号、2018年11月30
日に出願されたPCT出願第PCT/CN2018/118662号、2018年10月
19日に出願された中国出願第CN201811221305.X号、2019年1月4
日に出願されたPCT出願第PCT/CN2019/070461号、2018年8月2
0日に出願された中国出願第CN201810948193.1号の利益を主張するもの
であり、参照によりこれらの全体を本明細書に援用する。
【0002】
配列表の参照
本出願は、EFS-Webを通じてASCII形式で提出された配列表を含み、これを
もって参照によりその全体を援用する。上記ASCIIコピーは、2019年6月30日
に作成されたものであるが、名前が207298476_1.txtであり、サイズが3
04,914バイトである。
【背景技術】
【0003】
レーベル遺伝性視神経症(LHON)は、急性または亜急性中心視力喪失を招く、ミト
コンドリアに関する遺伝性の(母親から子に移される)網膜神経節細胞(RGC)及びそ
の軸索の変性症であり、主に若年成人男性がこれに侵される。LHONは母親を通じての
み移される、というのも、その主因が(核ではなく)ミトコンドリアのゲノムの突然変異
であり、卵子のみが胚にミトコンドリアを与えるからである。LHONは大抵、3つの病
原性ミトコンドリアDNA(mtDNA)点突然変異のうちの1つに起因する。これらの
突然変異は、ミトコンドリアにおける酸化的リン酸化鎖の複合体IのNADH脱水素酵素
サブユニット4タンパク質(ND4)、NADH脱水素酵素サブユニット1タンパク質(
ND1)及びNADH脱水素酵素サブユニット6タンパク質(ND6)のサブユニット遺
伝子のそれぞれヌクレオチド位置11778のGからA(G11778A)、3460の
GからA(G3460A)、及び14484のTからC(T14484C)にある。各突
然変異は永久的視力喪失の著しいリスクを有すると考えられている。それは通常、痛みを
伴うことなく数週間~数ヶ月のうちに進行し、ついには両眼の視力が0.1未満に低下す
るが、これは患者の生活の質に重大な影響を及ぼすものである。2つのLHON突然変異
体G3460A及びT14484Cは、患者の血小板から単離されるミトコンドリアのN
ADH脱水素酵素活性を80%減少させる。中国人のLHON患者の90パーセントはG
11778A突然変異を保有している。G11778A突然変異はND4タンパク質にお
いてアルギニンをヒスチジンに変化させ、結果としてLHON患者に機能不全及び視神経
損傷をきたす。より高いトランスフェクション効率及び治療有効性を有する、LHONを
治療するための組成物及び方法を開発する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本明細書では、組換え核酸、医薬組成物、及びLHONを治療する方法を開示する。一
態様において本明細書では、組換え核酸であって、ミトコンドリア指向性配列;配列番号
7、8、10及び12からなる群から選択される配列と少なくとも99%同一である配列
を含むミトコンドリアタンパク質コード配列;ならびに3’UTR核酸配列を含む、当該
組換え核酸を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ある場合には、ミトコンドリア指向性配列は、配列番号129~159からなる群から
選択される配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも
99%、または100%同一であるペプチド配列を含むポリペプチドをコードする。ある
場合には、ミトコンドリア指向性配列は、配列番号2に示される配列と少なくとも90%
、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%同一である
配列を含む。ある場合には、ミトコンドリア指向性配列は、配列番号3に示される配列と
少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または1
00%同一である配列を含む。ある場合には、ミトコンドリア指向性配列は、配列番号4
に示される配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも
99%、または100%同一である配列を含む。ある場合には、ミトコンドリア指向性配
列は、配列番号5に示される配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも9
7%、少なくとも99%、または100%同一である配列を含む。
【0006】
ある場合には、ミトコンドリアタンパク質コード配列は、配列番号7または配列番号8
に示される配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも
99%、または100%同一である配列を含む。ある場合には、ミトコンドリアタンパク
質コード配列は、配列番号10に示される配列と少なくとも90%、少なくとも95%、
少なくとも97%、少なくとも99%、または100%同一である配列を含む。ある場合
には、ミトコンドリアタンパク質コード配列は、配列番号12に示される配列と少なくと
も90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%同
一である配列を含む。
【0007】
ある場合には、3’UTR核酸配列は、配列番号111~125からなる群から選択さ
れる配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%
、または100%同一である配列を含む。ある場合には、3’UTR核酸配列は、配列番
号13または配列番号14に示される配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少な
くとも97%、少なくとも99%、または100%同一である配列を含む。
【0008】
ある場合には、組換え核酸は、配列番号17~20、23~24、27~28、31~
34、37~38、41~42、45~48、51~52、55~56、59~62、6
5~66、69~70、73~76、79~80、及び83~84からなる群から選択さ
れる配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%
、または100%同一である配列を含む。
【0009】
別の態様において本明細書では、組換え核酸であって、配列番号2、3、4及び5から
なる群から選択される配列と少なくとも90%同一である配列を含むミトコンドリア指向
性配列;ミトコンドリアタンパク質コード配列であってミトコンドリアタンパク質を含む
ポリペプチドをコードする当該ミトコンドリアタンパク質コード配列;ならびに3’UT
R核酸配列を含む、当該組換え核酸を開示する。
【0010】
ある場合には、ミトコンドリア指向性配列は、配列番号2に示される配列と少なくとも
90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%同一
である配列を含む。ある場合には、ミトコンドリア指向性配列は、配列番号3に示される
配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、ま
たは100%同一である配列を含む。ある場合には、ミトコンドリア指向性配列は、配列
番号4に示される配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少な
くとも99%、または100%同一である配列を含む。ある場合には、ミトコンドリア指
向性配列は、配列番号5に示される配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なく
とも97%、少なくとも99%、または100%同一である配列を含む。
【0011】
ある場合には、ミトコンドリアタンパク質は、NADH脱水素酵素4(ND4)、NA
DH脱水素酵素6(ND6)、NADH脱水素酵素1(ND1)及びそれらの変異体から
なる群から選択される。ある場合には、ミトコンドリアタンパク質はNADH脱水素酵素
4(ND4)またはその変異体を含む。ある場合には、ミトコンドリアタンパク質は、配
列番号160に示される配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%
、少なくとも99%、または100%同一であるペプチド配列を含む。ある場合には、ミ
トコンドリアタンパク質コード配列は、配列番号6、7または8に示される配列と少なく
とも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%
同一である配列を含む。ある場合には、ミトコンドリアタンパク質はNADH脱水素酵素
6(ND6)またはその変異体を含む。ある場合には、ミトコンドリアタンパク質は、配
列番号161に示される配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%
、少なくとも99%、または100%同一である配列を含む。ある場合には、ミトコンド
リアタンパク質コード配列は、配列番号9または配列番号10に示される配列と少なくと
も90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%同
一である配列を含む。ある場合には、ミトコンドリアタンパク質はNADH脱水素酵素1
(ND1)またはその変異体を含む。ある場合には、ミトコンドリアタンパク質は、配列
番号162に示される配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、
少なくとも99%、または100%同一である配列を含む。ある場合には、ミトコンドリ
アタンパク質コード配列は、配列番号11または配列番号12に示される配列と少なくと
も90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%同
一である配列を含む。
【0012】
ある場合には、3’UTR核酸配列はミトコンドリア指向性配列の3’に位置する。あ
る場合には、3’UTR核酸配列は、hsACO2、hsATP5B、hsAK2、hs
ALDH2、hsCOX10、hsUQCRFS1、hsNDUFV1、hsNDUFV
2、hsSOD2、hsCOX6c、hsIRP1、hsMRPS12、hsATP5J
2、rnSOD2及びhsOXA1Lからなる群から選択される配列を含む。ある場合に
は、3’UTR核酸配列は、配列番号111~125からなる群から選択される配列と少
なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または10
0%同一である配列を含む。ある場合には、3’UTR核酸配列は、配列番号13または
配列番号14に示される配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%
、少なくとも99%、または100%同一である配列を含む。
【0013】
ある場合には、ミトコンドリア指向性配列は3’UTR核酸配列の5’に位置する。あ
る場合には、ミトコンドリア指向性配列はミトコンドリア指向性配列の3’に位置する。
【0014】
ある場合には、組換え核酸は、配列番号29~84からなる群から選択される配列と少
なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または10
0%同一である配列を含む。
【0015】
別の態様において本明細書では、組換え核酸であって、ミトコンドリア指向性配列;配
列番号7、8、10及び12からなる群から選択される配列と少なくとも90%、少なく
とも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%同一である配列を含
むミトコンドリアタンパク質コード配列;ならびに3’UTR核酸配列を含む、当該組換
え核酸を開示する。
【0016】
ある場合には、ミトコンドリア指向性配列は、hsCOX10、hsCOX8、scR
PM2、lcSirt5、tbNDUS7、ncQCR2、hsATP5G2、hsLA
CTB、spilv1、gmCOX2、crATP6、hsOPA1、hsSDHD、h
sADCK3、osP0644B06.24-2、Neurospora crassa
ATP9(ncATP9)、hsGHITM、hsNDUFAB1、hsATP5G3
、crATP6_hsADCK3、ncATP9_ncATP9、zmLOC10028
2174、ncATP9_zmLOC100282174_spilv1_ncATP9
、zmLOC100282174_hsADCK3_crATP6_hsATP5G3、
zmLOC100282174_hsADCK3_hsATP5G3、ncATP9_z
mLOC100282174、hsADCK3_zmLOC100282174_crA
TP6_hsATP5G3、crATP6_hsADCK3_zmLOC1002821
74_hsATP5G3、hsADCK3_zmLOC100282174、hsADC
K3_zmLOC100282174_crATP6、ncATP9_zmLOC100
282174_spilv1_GNFP_ncATP9、及びncATP9_zmLOC
100282174_spilv1_lcSirt5_osP0644B06.24-2
_hsATP5G2_ncATP9からなる群から選択されるポリペプチドをコードする
配列を含む。ある場合には、ミトコンドリア指向性配列は、配列番号129~159から
なる群から選択される配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、
少なくとも99%、または100%同一であるペプチド配列を含むポリペプチドをコード
する。ある場合には、ミトコンドリア指向性配列は、配列番号2または配列番号3に示さ
れる配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%
、または100%同一である配列を含む。ある場合には、ミトコンドリア指向性配列は、
配列番号4に示される配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、
少なくとも99%、または100%同一である配列を含む。ある場合には、ミトコンドリ
ア指向性配列は、配列番号5に示される配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少
なくとも97%、少なくとも99%、または100%同一である配列を含む。
【0017】
ある場合には、ミトコンドリアタンパク質コード配列は、配列番号7または配列番号8
に示される配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも
99%、または100%同一である配列を含む。ある場合には、ミトコンドリアタンパク
質コード配列は、配列番号10に示される配列と少なくとも90%、少なくとも95%、
少なくとも97%、少なくとも99%、または100%同一である配列を含む。ある場合
には、ミトコンドリアタンパク質コード配列は、配列番号12に示される配列と少なくと
も90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%同
一である配列を含む。
【0018】
ある場合には、3’UTR核酸配列はミトコンドリア指向性配列の3’に位置する。あ
る場合には、3’UTR核酸配列は、hsACO2、hsATP5B、hsAK2、hs
ALDH2、hsCOX10、hsUQCRFS1、hsNDUFV1、hsNDUFV
2、hsSOD2、hsCOX6c、hsIRP1、hsMRPS12、hsATP5J
2、rnSOD2及びhsOXA1Lからなる群から選択される配列を含む。ある場合に
は、3’UTR核酸配列は、配列番号111~125からなる群から選択される配列と少
なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または10
0%同一である配列を含む。ある場合には、3’UTR核酸配列は、配列番号13または
配列番号14に示される配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%
、少なくとも99%、または100%同一である配列を含む。
【0019】
ある場合には、ミトコンドリア指向性配列は3’UTR核酸配列の5’に位置する。あ
る場合には、ミトコンドリア指向性配列はミトコンドリア指向性配列の3’に位置する。
【0020】
ある場合には、組換え核酸は、配列番号17~20、23~24、27~28、31~
34、37~38、41~42、45~48、51~52、55~56、59~62、6
5~66、69~70、73~76、79~80、及び83~84からなる群から選択さ
れる配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%
、または100%同一である配列を含む。
【0021】
別の態様において本明細書では、組換え核酸であって、配列番号2、3及び4からなる
群から選択される配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少な
くとも99%、または100%同一であるミトコンドリア指向性配列を含む、当該組換え
核酸を開示する。ある場合には、ミトコンドリア指向性配列は、配列番号2に示される配
列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、また
は100%同一である配列を含む。ある場合には、ミトコンドリア指向性配列は、配列番
号3に示される配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なく
とも99%、または100%同一である配列を含む。ある場合には、ミトコンドリア指向
性配列は、配列番号4に示される配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくと
も97%、少なくとも99%、または100%同一である配列を含む。
【0022】
ある場合には、組換え核酸は、ミトコンドリアタンパク質コード配列をさらに含み、当
該ミトコンドリアタンパク質コード配列は、ミトコンドリアタンパク質を含むポリペプチ
ドをコードする。ある場合には、ミトコンドリアタンパク質は、NADH脱水素酵素4(
ND4)、NADH脱水素酵素6(ND6)、NADH脱水素酵素1(ND1)及びそれ
らの変異体からなる群から選択される。ある場合には、ミトコンドリアタンパク質はNA
DH脱水素酵素4(ND4)またはその変異体を含む。ある場合には、ミトコンドリアタ
ンパク質は、配列番号160に示される配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少
なくとも97%、少なくとも99%、または100%同一であるペプチド配列を含む。あ
る場合には、ミトコンドリアタンパク質コード配列は、配列番号6、7または8に示され
る配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、
または100%同一である配列を含む。ある場合には、ミトコンドリアタンパク質はNA
DH脱水素酵素6(ND6)またはその変異体を含む。ある場合には、ミトコンドリアタ
ンパク質は、配列番号161に示される配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少
なくとも97%、少なくとも99%、または100%同一である配列を含む。ある場合に
は、ミトコンドリアタンパク質コード配列は、配列番号9または配列番号10に示される
配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、ま
たは100%同一である配列を含む。ある場合には、ミトコンドリアタンパク質はNAD
H脱水素酵素1(ND1)またはその変異体を含む。ある場合には、ミトコンドリアタン
パク質は、配列番号162に示される配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少な
くとも97%、少なくとも99%、または100%同一である配列を含む。ある場合には
、ミトコンドリアタンパク質コード配列は、配列番号11または配列番号12に示される
配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、ま
たは100%同一である配列を含む。
【0023】
ある場合には、組換え核酸は3’UTR核酸配列をさらに含む。ある場合には、3’U
TR核酸配列はミトコンドリア指向性配列の3’に位置する。ある場合には、3’UTR
核酸配列は、hsACO2、hsATP5B、hsAK2、hsALDH2、hsCOX
10、hsUQCRFS1、hsNDUFV1、hsNDUFV2、hsSOD2、hs
COX6c、hsIRP1、hsMRPS12、hsATP5J2、rnSOD2及びh
sOXA1Lからなる群から選択される配列を含む。ある場合には、3’UTR核酸配列
は、配列番号111~125からなる群から選択される配列と少なくとも90%、少なく
とも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%同一である配列を含
む。ある場合には、3’UTR核酸配列は、配列番号13または配列番号14に示される
配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、ま
たは100%同一である配列を含む。ある場合には、ミトコンドリア指向性配列は3’U
TR核酸配列の5’に位置する。ある場合には、ミトコンドリア指向性配列はミトコンド
リア指向性配列の3’に位置する。
【0024】
ある場合には、組換え核酸は、配列番号29~70からなる群から選択される配列と少
なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または10
0%同一である配列を含む。
【0025】
別の態様において本明細書では、組換え核酸であって、ミトコンドリアタンパク質コー
ド配列を含み、ミトコンドリアタンパク質コード配列が、ミトコンドリアタンパク質を含
むポリペプチドをコードし、ミトコンドリアタンパク質コード配列が、配列番号7、8、
10及び12からなる群から選択される配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少
なくとも97%、少なくとも99%、または100%同一である配列を含む、当該組換え
核酸を開示する。
【0026】
ある場合には、組換え核酸はミトコンドリア指向性配列をさらに含む。ある場合には、
ミトコンドリア指向性配列は、hsCOX10、hsCOX8、scRPM2、lcSi
rt5、tbNDUS7、ncQCR2、hsATP5G2、hsLACTB、spil
v1、gmCOX2、crATP6、hsOPA1、hsSDHD、hsADCK3、o
sP0644B06.24-2、Neurospora crassa ATP9(nc
ATP9)、hsGHITM、hsNDUFAB1、hsATP5G3、crATP6_
hsADCK3、ncATP9_ncATP9、zmLOC100282174、ncA
TP9_zmLOC100282174_spilv1_ncATP9、zmLOC10
0282174_hsADCK3_crATP6_hsATP5G3、zmLOC100
282174_hsADCK3_hsATP5G3、ncATP9_zmLOC1002
82174、hsADCK3_zmLOC100282174_crATP6_hsAT
P5G3、crATP6_hsADCK3_zmLOC100282174_hsATP
5G3、hsADCK3_zmLOC100282174、hsADCK3_zmLOC
100282174_crATP6、ncATP9_zmLOC100282174_s
pilv1_GNFP_ncATP9、及びncATP9_zmLOC10028217
4_spilv1_lcSirt5_osP0644B06.24-2_hsATP5G
2_ncATP9からなる群から選択されるポリペプチドをコードする配列を含む。ある
場合には、ミトコンドリア指向性配列は、配列番号129~159からなる群から選択さ
れる配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%
、または100%同一であるペプチド配列を含むポリペプチドをコードする。ある場合に
は、ミトコンドリア指向性配列は、配列番号2に示される配列と少なくとも90%、少な
くとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%同一である配列を
含む。ある場合には、ミトコンドリア指向性配列は、配列番号3に示される配列と少なく
とも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%
同一である配列を含む。ある場合には、ミトコンドリア指向性配列は、配列番号4に示さ
れる配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%
、または100%同一である配列を含む。ある場合には、ミトコンドリア指向性配列は、
配列番号5に示される配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、
少なくとも99%、または100%同一である配列を含む。
【0027】
ある場合には、ミトコンドリアタンパク質コード配列は、配列番号7または配列番号8
に示される配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも
99%、または100%同一である配列を含む。ある場合には、ミトコンドリアタンパク
質コード配列は、配列番号10に示される配列と少なくとも90%、少なくとも95%、
少なくとも97%、少なくとも99%、または100%同一である配列を含む。ある場合
には、ミトコンドリアタンパク質コード配列は、配列番号12に示される配列と少なくと
も90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%同
一である配列を含む。
【0028】
ある場合には、組換え核酸は3’UTR核酸配列をさらに含む。ある場合には、3’U
TR核酸配列はミトコンドリア指向性配列の3’に位置する。ある場合には、3’UTR
核酸配列は、hsACO2、hsATP5B、hsAK2、hsALDH2、hsCOX
10、hsUQCRFS1、hsNDUFV1、hsNDUFV2、hsSOD2、hs
COX6c、hsIRP1、hsMRPS12、hsATP5J2、rnSOD2及びh
sOXA1Lからなる群から選択される配列を含む。ある場合には、3’UTR核酸配列
は、配列番号111~125からなる群から選択される配列と少なくとも90%、少なく
とも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%同一である配列を含
む。ある場合には、3’UTR核酸配列は、配列番号13または配列番号14に示される
配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、ま
たは100%同一である配列を含む。ある場合には、ミトコンドリア指向性配列は3’U
TR核酸配列の5’に位置する。ある場合には、ミトコンドリア指向性配列はミトコンド
リア指向性配列の3’に位置する。
【0029】
ある場合には、組換え核酸は、配列番号17~20、23~24、27~28、31~
34、37~38、41~42、45~48、51~52、55~56、59~62、6
5~66、69~70、73~76、79~80、及び83~84からなる群から選択さ
れる配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%
、または100%同一である配列を含む。
【0030】
別の態様において本明細書では、本明細書に開示される組換え核酸を含むウイルスベク
ターを開示する。ある場合には、ウイルスベクターはアデノ随伴ウイルス(AAV)ベク
ターである。ある場合には、AAVベクターは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV
4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、A
AV12、AAV13、AAV14、AAV15及びAAV16ベクターからなる群から
選択される。ある場合には、AAVベクターは組換えAAV(rAAV)ベクターである
。ある場合には、rAAVベクターはrAAV2ベクターである。
【0031】
別の態様において本明細書では、本明細書に開示される組換え核酸を含むアデノ随伴ウ
イルス(AAV)を含む、医薬組成物を開示する。ある場合には、医薬組成物は、その薬
学的に許容される賦形剤をさらに含む。また、医薬組成物であって、本明細書に開示され
るウイルスベクターと、その薬学的に許容される賦形剤とを含み、ウイルスベクターが、
本明細書に開示される任意の組換え核酸を含むものである、当該医薬組成物も開示する。
また、医薬組成物であって、本明細書に開示される任意の組換え核酸を含むアデノ随伴ウ
イルス(AAV)を含み、組換え核酸が、配列番号15に示される配列と少なくとも90
%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%、または100%同一であ
る配列を含むものであり、さらに、薬学的に許容される賦形剤を含む、当該医薬組成物も
開示する。
【0032】
ある場合には、薬学的に許容される賦形剤は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、α,
α-トレハロース二水和物(α,α-trehalose dehydrate)、L-
ヒスチジン一塩酸塩一水和物、ポリソルベート20、NaCl、NaH2PO4、Na2
HPO4、KH2PO4、K2HPO4、ポロキサマー188またはそれらの任意の組合
せを含む。ある場合には、薬学的に許容される賦形剤は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS
)、α,α-トレハロース二水和物(α,α-trehalose dehydrate
)、L-ヒスチジン一塩酸塩一水和物、ポリソルベート20、NaCl、NaH2PO4
、Na2HPO4、KH2PO4、K2HPO4、ポロキサマー188及びそれらの任意
の組合せから選択される。ある場合には、薬学的に許容される賦形剤はポロキサマー18
8を含む。ある場合には、薬学的に許容される賦形剤は0.0001~0.01%のポロ
キサマー188を含む。ある場合には、薬学的に許容される賦形剤は0.001%のポロ
キサマー188を含む。ある場合には、薬学的に許容される賦形剤は1つ以上の塩をさら
に含む。ある場合には、1つ以上の塩は、NaCl、NaH2PO4、Na2HPO4及
びKH2PO4を含む。ある場合には、1つ以上の塩は、80mMのNaCl、5mMの
NaH2PO4、40mMのNa2HPO4、及び5mMのKH2PO4を含む。ある場
合には、医薬組成物のpHは6~8である。ある場合には、医薬組成物のpHは7.2~
7.4である。ある場合には、医薬組成物のpHは7.3である。ある場合には、医薬組
成物のウイルス力価は少なくとも1.0×1010vg/mLである。ある場合には、医
薬組成物のウイルス力価は少なくとも5.0×1010vg/mLである。
【0033】
ある場合には、医薬組成物を5回の凍結/解凍サイクルに供し、医薬組成物は5回の凍
結/解凍サイクルの前のウイルス力価と比較して少なくとも60%、70%、80%また
は90%のウイルス力価を保持している。ある場合には、医薬組成物は、レーベル遺伝性
視神経症患者に投与された場合に、組換え核酸を含まない同等の医薬組成物に比べてより
高い平均視力回復を生じさせる。ある場合には、医薬組成物は、レーベル遺伝性視神経症
患者に投与された場合に、配列番号15に示される組換え核酸を含む同等の医薬組成物に
比べてより高い平均視力回復を生じさせる。
【0034】
別の態様において本明細書では、眼障害を治療する方法であって、それを必要とする患
者に、本明細書に開示される任意の医薬組成物を投与することを含む、当該方法を開示す
る。ある場合には、眼障害はレーベル遺伝性視神経症(LHON)である。ある場合には
、方法は、医薬組成物を患者の片眼または両眼に投与することを含む。ある場合には、医
薬組成物は眼内または硝子体内注射によって投与される。ある場合には、医薬組成物は硝
子体内注射によって投与される。ある場合には、約0.01~0.1mLの医薬組成物が
硝子体内注射によって投与される。ある場合には、約0.05mLの医薬組成物が硝子体
内注射によって投与される。
【0035】
ある場合には、方法は、メチルプレドニゾロンを患者に投与することをさらに含む。あ
る場合には、メチルプレドニゾロンは医薬組成物の硝子体内注射の前に投与される。ある
場合には、メチルプレドニゾロンは経口投与される。ある場合には、メチルプレドニゾロ
ンは医薬組成物の硝子体内注射の前に少なくとも1、2、3、4、5、6または7日間に
わたって毎日投与される。ある場合には、メチルプレドニゾロンは毎日投与される。ある
場合には、約32mg/60kgのメチルプレドニゾロンの1日投薬量が投与される。あ
る場合には、メチルプレドニゾロンは医薬組成物の硝子体内注射の後に投与される。ある
場合には、方法は、クレアチンリン酸ナトリウムを患者に投与することをさらに含む。あ
る場合には、クレアチンリン酸ナトリウムは静脈内投与される。ある場合には、メチルプ
レドニゾロンは静脈内または経口投与される。ある場合には、方法は、メチルプレドニゾ
ロンを少なくとも1日間にわたって静脈内投与し、その後、メチルプレドニゾロンを少な
くとも1週間にわたって経口投与することを含む。ある場合には、方法は、メチルプレド
ニゾロンを約3日間にわたって静脈内投与し、その後、メチルプレドニゾロンを少なくと
も約6週間にわたって経口投与することを含む。ある場合には、メチルプレドニゾロンは
約80mg/60kgの1日用量で静脈内投与される。ある場合には、医薬組成物を投与
することは、組換え核酸を含まない同等の医薬組成物に比べてより高い平均視力回復を生
じさせる。ある場合には、医薬組成物を投与することは、配列番号15に示される組換え
核酸を含む同等の医薬組成物に比べてより高い平均視力回復を生じさせる。
【0036】
参照による援用
本明細書中に言及される全ての刊行物、特許及び特許出願を参照により本明細書に、あ
たかも個々の刊行物、特許または特許出願を参照により援用すると具体的かつ個別に示し
たかのように援用する。
【0037】
本発明の新規な特徴は、別記の特許請求の範囲に詳細に明記されている。本発明の特徴
及び利点についてのよりよい理解は、本発明の原理を利用する例示的実施形態を示した以
下の詳細な説明、及び添付されるその図面を参照することによって得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】ND4(レーンA)及び最適化ND4(レーンB)遺伝子クローニング結果のPCR核酸電気泳動による証拠を示す。
【
図2】qPCRを用いてrAAV2-opt_ND4(左の黒色柱)とrAAV2-ND4(右の黒色柱)との相対発現レベル比較を示す。β-アクチンが内部標準遺伝子である(白色柱)。
【
図3】イムノブロッティングを用いてrAAV2-opt_ND4(左の黒色柱)とrAAV2-ND4(右の黒色柱)との相対発現レベル比較を示す。β-アクチンが内部標準遺伝子である(白色柱)。
【
図4】rAAV2-opt_ND4(右)及びrAAV2-ND4(左)をそれぞれ注射したウサギの眼底撮影結果を示す。
【
図5】rAAV2最適化ND4を注射する前(左)及び後(右)での患者の眼底撮影結果を示す。
【
図6】rAAV2-ND4(左)及びrAAV2-opt_ND4
*(右)のEGFP発現レベルを示す。
【
図7】293T細胞におけるND4発現を示す:rAAV2-ND4(左)及びrAAV2-opt_ND4
*(右)。
【
図8】293T細胞における相対ND4発現を示す:rAAV2-ND4(左)及びrAAV2-opt_ND4
*(右)。
【
図9】ウサギ視神経細胞におけるND4発現を示す:rAAV2-ND4(左)及びrAAV2-opt_ND4
*(右)。
【
図10】ウサギ視神経細胞における相対ND4発現を示す:rAAV2-ND4(左)及びrAAV2-opt_ND4
*(右)。
【
図11】rAAV2-ND4(左)及びrAAV2-opt_ND4
*(右)についての眼底撮影結果を示す。
【
図12】rAAV2-ND4(左)及びrAAV2-opt_ND4
*(右)についての顕微鏡検査(HE染色)結果を示す。
【
図13】rAAV2-ND6(A)、rAAV-GFP(B)及びPBSをそれぞれ注射したウサギの眼底撮影結果を示す。
【
図14】rAAV2-opt_ND6(A)、rAAV2-ND6(B)、rAAV-EGFP(C)をそれぞれ注射したウサギの眼底撮影結果を示す。
【
図15】ウサギ視神経細胞における相対ND6発現を示す:rAAV2-opt_ND6(A)、rAAV2-ND6(B)及びrAAV-EGFP(C)。
【
図16】相対ND6発現をウェスタンブロットによって示す:rAAV2-opt_ND6(A)、rAAV2-ND6(B)及びrAAV-EGFP(C)。
【
図17】ウサギ視神経細胞における相対ND1発現を示す:rAAV2-opt_ND1(A)、rAAV2-ND1(B)及びrAAV-EGFP(C)。
【
図18】相対ND1発現をウェスタンブロットによって示す:rAAV2-opt_ND1(A)、rAAV2-ND1(B)及びrAAV-EGFP(C)。
【発明を実施するための形態】
【0039】
定義
特に規定されない限り、本明細書中で使用する全ての科学技術用語は、本開示が属する
分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載のもの
と類似する、または等価である任意の方法及び材料を本明細書中の製剤または単位用量の
実施または試験に用いることができるが、ここではいくつかの方法及び材料を記載する。
特に言及されない限り、本明細書中で使用または企図される技術は標準的な技法である。
材料、方法及び例は例示的なものであるにすぎず、限定するものではない。
【0040】
本明細書及び別記の特許請求の範囲において使用する場合、単数形「a」、「and」
及び「the」は複数形での意味を含むが、但し、そうでないことが文脈から明らかであ
る場合を除く。したがって、例えば「化合物」への言及は、複数のそのような薬剤を含み
、「塩」への言及は、1つ以上の塩(または複数の塩)及び当業者に知られているその等
価体への言及を含む、といった具合である。
【0041】
本明細書中で使用する場合、「または」という用語は、別段の指示がない限り結合的ま
たは非結合的であり得る。本明細書中で用いる場合、別段の指示がない限り、任意の実施
形態を他の任意の実施形態と組み合わせることができる。
【0042】
本明細書中で用いる場合、本明細書中の本発明のいくつかの実施形態は、別段の指示が
ない限り、数値範囲を企図している。範囲が存在する場合、範囲は端点を包含する。加え
て、範囲内のあらゆる小範囲及び値は、あたかも明示的に書き出されているかのように存
在している。
【0043】
参照数値及びその文法的均等物に関して「約」という用語、及びその文法的均等物は、
本明細書中で使用される場合、その値から上下10%の値の範囲、例えば、その値から上
下10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%または1%の値の範囲を含
み得る。例えば、「約10」には9~11の量が含まれる。
【0044】
「含んでいる(comprising)」という用語(及び関連する用語、例えば、「
含む(comprise)」または「含む(comprises)」または「有している
(having)」または「含んでいる(including)」)によって、他の特定
の実施形態において例えば本明細書に記載の何らかの組成物、組成、方法またはプロセス
などの実施形態が記載の特徴「からなり」得る、またはそれ「から本質的になり」得るこ
とを排除する意図はない。
【0045】
「対象」という用語は、治療対象、観察対象もしくは実験対象にされていた、またはそ
れにされる、哺乳動物を指す。「哺乳動物」という用語はその標準的な意味を有すること
を意図しており、例えば、ヒト、イヌ、ネコ、ヒツジ及びウシを包含する。本明細書に記
載の方法は、ヒトの療法及び獣医学的用途の両方において有用であり得る。いくつかの実
施形態では、対象はヒトである。
【0046】
「治療すること」または「治療」という用語は、本明細書に開示される少なくとも1つ
の化合物またはその薬学的に許容される塩の投与を、そのような投与を必要とする哺乳動
物対象、特にヒト対象において行うことを包含し、(i)がんなどの疾患の臨床症候の進
展を阻止すること、(ii)がんなどの疾患の臨床症候の消退をもたらすこと、及び/ま
たは(iii)がんなどの疾患の発症を予防するための予防的処置を含む。
【0047】
本明細書に記載の化学的実体の「治療的有効量」という用語は、ヒトまたは非ヒト対象
に投与された場合に症候の改善、疾患進行の減速、または疾患の予防などの治療的利益を
提供するのに有効な量を指す。
【0048】
本明細書中で使用する場合、「核酸」及び「ポリヌクレオチド」という用語は、別段の
指示がない限り交換可能に使用され得る。
【0049】
核酸及びポリペプチド配列
表1は、本明細書に開示される全ての核酸及びポリペプチド配列を開示する。第1列は
、各配列の配列番号を示す。第2列は核酸またはポリペプチド構築物を表記する。例えば
、構築物COX10-ND6-3’UTRは、(核酸配列間にリンカーを有さずに5’か
ら3’に向かって、COX10(配列番号1)、ND6(配列番号9)及び3’UTR(
配列番号13)の核酸配列を組み合わせた核酸である。
【表1】
【0050】
アデノ随伴ウイルス(AAV)
アデノ随伴ウイルス(AAV)は、ヒト及び他のいくつかの霊長類種に感染する小型の
ウイルスである。本明細書に開示される組成物は、第一に、アデノ随伴ウイルス(AAV
)ゲノムまたはその派生体を含む。
【0051】
AAVゲノムは、AAVウイルス粒子の産生に必要とされる機能をコードするポリヌク
レオチド配列である。これらの機能には、AAVウイルス粒子内へのAAVゲノムのカプ
シド封入を含めた宿主細胞におけるAAVの複製及びパッケージングサイクルにおいて働
くものが含まれる。天然に存在するAAVウイルスは増殖能欠損型であり、複製及びパッ
ケージングサイクルの完遂に関してはトランスでのヘルパー機能の提供に依存している。
それゆえ、本発明のベクターのAAVゲノムは典型的には増殖能欠損型である。
【0052】
AAVゲノムは、プラスセンスかマイナスセンスかのどちらかの一本鎖形態、あるいは
二本鎖形態であり得る。二本鎖形態を用いることで、標的細胞におけるDNA複製段階を
回避することが可能になり、それゆえに導入遺伝子発現が加速され得る。
【0053】
AAVゲノムは、AAVのいかなる天然由来の血清型または単離物またはグレード(G
lade)からのものであってもよい。したがって、AAVゲノムは、天然に存在するA
AVウイルスの全ゲノムであってもよい。当業者には知られていることであるが、天然に
存在するAAVウイルスは、様々な生物学的体系に従って分類され得る。
【0054】
一般に、AAVウイルスはその血清型によって呼称される。血清型は、カプシド表面抗
原の発現のプロファイルゆえに他の変異体亜種との区別に用いられ得る独特の反応性を有
するAAVの変異体亜種に相当する。通常、特定のAAV血清型を有するウイルスは、他
の任意のAAV血清型に特異的な中和抗体とは効率的な交差反応をしない。AAV血清型
としては、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、
AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV13、AAV14、
AAV15及びAAV16、さらには近年に霊長類の脳から同定された組換え血清型、例
えばRec2及びRec3が挙げられる。
【0055】
本発明に使用するための望ましいAAVの血清型は、AAV2である。本発明に使用す
るための特に興味深い他の血清型としては、網膜色素上皮などの眼内組織に効率的に形質
導入をするAAV4、AAV5及びAAV8が挙げられる。使用されるAAVの血清型は
、AAV4でないAAV血清型であることがある。AAV血清型の総説は、Choi e
t al(Curr Gene Ther.2005;5(3);299-310)、及
びWu et al(Molecular Therapy.2006;14(3),3
16-327)に見出され得る。本発明に使用するための、AAVゲノムの配列、または
ITR配列、repもしくはcap遺伝子を含めたAAVゲノムのエレメントの配列は、
AAV全ゲノム配列の以下の受託番号に由来するものであり得る:アデノ随伴ウイルス1
NC_002077、AF063497;アデノ随伴ウイルス2 NC_001401
;アデノ随伴ウイルス3 NC_001729;アデノ随伴ウイルス3B NC_001
863;アデノ随伴ウイルス4 NC_001829;アデノ随伴ウイルス5 Y180
65、AF085716;アデノ随伴ウイルス6 NC_001862;トリAAV A
TCC VR-865 AY186198、AY629583、NC_004828;ト
リAAV株DA-1 NC_006263、AY629583;ウシAAV NC_00
5889、AY388617。
【0056】
AAVウイルスはクレードまたはクローンによって呼称されることもある。これは天然
由来のAAVウイルスの系統発生学的関係性を表し、典型的には、共通祖先に遡ることが
できる系統学的AAVウイルス群を表し、その全ての子孫を含む。加えて、AAVウイル
スは、特定の単離物、すなわち天然にみられる特定AAVウイルスの遺伝学的単離物によ
って呼称されることがある。遺伝学的単離物という用語は、他の天然に存在するAAVウ
イルスとの限られた遺伝学的混合を経たAAVウイルスの集団を表し、それによって遺伝
子レベルで識別可能に異なった集団が定義される。
【0057】
本発明に使用され得るAAVのクレード及び単離物の例としては、クレードA:AAV
1 NC_002077、AF063497、AAV6 NC_001862、Hu.4
8 AY530611、Hu43 AY530606、Hu44 AY530607、H
u46 AY530609;クレードB:Hu.19 AY530584、Hu.20
AY530586、Hu23 AY530589、Hu22 AY530588、Hu2
4 AY530590、Hu21 AY530587、Hu27 AY530592、H
u28 AY530593、Hu29 AY530594、Hu63 AY530624
、Hu64 AY530625、Hu13 AY530578、Hu56 AY5306
18、Hu57 AY530619、Hu49 AY530612、Hu58 AY53
0620、Hu34 AY530598、Hu35 AY530599、AAV2 NC
_001401、Hu45 AY530608、Hu47 AY530610、Hu51
AY530613、Hu52 AY530614、Hu T41 AY695378、
Hu S17 AY695376、Hu T88 AY695375、Hu T71 A
Y695374、Hu T70 AY695373、Hu T40 AY695372、
Hu T32 AY695371、Hu T17 AY695370、Hu LG15
AY695377;クレードC:Hu9 AY530629、Hu10 AY53057
6、Hu11 AY530577、Hu53 AY530615、Hu55 AY530
617、Hu54 AY530616、Hu7 AY530628、Hu18 AY53
0583、Hu15 AY530580、Hu16 AY530581、Hu25 AY
530591、Hu60 AY530622、Ch5 AY243021、Hu3 AY
530595、Hu1 AY530575、Hu4 AY530602 Hu2、AY5
30585、Hu61 AY530623;クレードD:Rh62 AY530573、
Rh48 AY530561、Rh54 AY530567、Rh55 AY53056
8、Cy2 AY243020、AAV7 AF513851、Rh35 AY2430
00、Rh37 AY242998、Rh36 AY242999、Cy6 AY243
016、Cy4 AY243018、Cy3 AY243019、Cy5 AY2430
17、Rh13 AY243013;クレードE:Rh38 AY530558、Hu6
6 AY530626、Hu42 AY530605、Hu67 AY530627、H
u40 AY530603、Hu41 AY530604、Hu37 AY530600
、Rh40 AY530559、Rh2 AY243007、Bb1 AY243023
、Bb2 AY243022、Rh10 AY243015、Hu17 AY53058
2、Hu6 AY530621、Rh25 AY530557、Pi2 AY53055
4、Pi1 AY530553、Pi3 AY530555、Rh57 AY53056
9、Rh50 AY530563、Rh49 AY530562、Hu39 AY530
601、Rh58 AY530570、Rh61 AY530572、Rh52 AY5
30565、Rh53 AY530566、Rh51 AY530564、Rh64 A
Y530574、Rh43 AY530560、AAV8 AF513852、Rh8
AY242997、Rh1 AY530556;クレードF:Hu14(AAV9)AY
530579、Hu31 AY530596、Hu32 AY530597、クローン単
離物AAV5 Y18065、AF085716、AAV3 NC_001729、AA
V3B NC_001863、AAV4 NC_001829、Rh34 AY2430
01、Rh33 AY243002、Rh32 AY243003が挙げられる。
【0058】
当業者であれば、本発明に使用するのに適したAAVの血清型、グレード(Glade
)、クローンまたは単離物を彼らの共通一般知識に基づいて選択することができる。例え
ば、AAV5カプシドは、遺伝性色覚異常の矯正の成功を証拠として、霊長類の錐体光受
容器に効率的に形質導入をすることが示されている(Mancuso et al.,N
ature 2009,461:784-7)。
【0059】
しかしながら、本発明が、未だ同定または特性評価されていない可能性がある他の血清
型のAAVゲノムの使用も包含することは、理解されるべきである。AAV血清型は、A
AVウイルスの感染の組織特異性(または向性)を決定付ける。それゆえ、本発明に従っ
て患者に投与されるAAVウイルスに使用するための望ましいAAV血清型は、LHON
において眼内の標的細胞に対する天然の向性、またはそれの高い感染効率を有するもので
ある。したがって、患者に投与されるAAVウイルスに使用するためのAAV血清型は、
神経感覚網膜及び網膜色素上皮の細胞に感染するものであり得る。
【0060】
通常、AAVの天然由来の血清型または単離物またはグレード(Glade)のAAV
ゲノムは少なくとも1つの末端逆位反復配列(ITR)を含む。ITR配列は、シスで作
用して機能的複製起点を提供し、細胞のゲノムからのベクターの組込み及び切出しを可能
にする。望ましい実施形態では、1つ以上のITR配列が、ND4、ND6もしくはND
1またはそれらの変異体をコードするポリヌクレオチド配列に隣接している。望ましいI
TR配列は、AAV2のもの及びその変異体である。AAVゲノムは、パッケージング遺
伝子、例えば、AAVウイルス粒子のためのパッケージング機能をコードするrep及び
/またはcap遺伝子も含んでいるのが典型的である。rep遺伝子は、タンパク質Re
p78、Rep68、Rep52及びRep40またはその変異体のうちの1つ以上をコ
ードする。cap遺伝子は、1つ以上のカプシドタンパク質、例えば、VP1、VP2及
びVP3またはその変異体をコードする。これらのタンパク質はAAVウイルス粒子のカ
プシドを構成する。カプシド変異体については以下に述べている。
【0061】
パッケージング遺伝子の各々にはプロモーターが機能可能に連結されることになる。そ
のようなプロモーターの具体例としては、p5、p19及びp40プロモーターが挙げら
れる(Laughlin et al.,1979,PNAS,76:5567-557
1)。例えば、rep遺伝子を発現させるためにはp5及びp19プロモーターが大抵使
用される一方、cap遺伝子を発現させるためにはp40プロモーターが大抵使用される
。
【0062】
それゆえ、本発明のベクターに使用されるAAVゲノムは、上に述べたとおり、天然に
存在するAAVウイルスの全ゲノムであってもよい。例えば、AAV全ゲノムを含むベク
ターを使用して試験管内でAAVウイルスを作製してもよい。しかしながら、そのような
ベクターが原理的には患者に投与され得るものであるとはいえ、これは滅多に実施されな
いことであろう。患者への投与の目的のためにAAVゲノムを誘導体化することが好まし
かろう。そのような誘導体化は当技術分野では標準的であり、本発明は、AAVゲノムの
任意の既知の誘導体、及び当技術分野で知られている技術を適用することで生み出すこと
ができるであろう誘導体の使用を包含する。AAVゲノムの、及びAAVカプシドの誘導
体化については、Coura and Nardi(Virology Journal
,2007,4:99)、ならびに上に参照したChoi et al及びWu et
alに総説されている。
【0063】
AAVゲノムの誘導体としては、生体内での本発明のベクターからのND4、ND6ま
たはND1導入遺伝子の発現を可能にする任意の切詰め形態または改変形態のAAVゲノ
ムが挙げられる。通常は、上記機能を保持しながら最小限のウイルス配列を含むようにA
AVゲノムを大幅に切り詰めることが可能である。これは、野生型ウイルスによるベクタ
ーの組換えのリスクを軽減し、さらには標的細胞内のウイルス遺伝子タンパク質の存在に
よる細胞性免疫応答の誘発を回避する、という安全上の理由から望ましいことである。
【0064】
典型的には、誘導体は、少なくとも1つの末端逆位反復配列(ITR)、好ましくは1
つよりも多いITR、例えば2つ以上のITRを含むことになる。ITRの1つ以上が、
異なる血清型を有するAAVゲノムに由来していてもよいし、またはキメラITRもしく
は突然変異ITRであってもよい。望ましい突然変異ITRは、trs(末端分解部位)
が欠失しているものである。この欠失はゲノムの継続的複製を可能にして、コード配列及
び相補的配列を両方とも含有する一本鎖ゲノム、すなわち自己相補的AAVゲノムを生成
する。これは、標的細胞におけるDNAを回避することを可能にし、それゆえに導入遺伝
子発現の加速を可能にする。
【0065】
1つ以上のITRは、ND4、ND6、ND1またはそれらの変異体をコードするポリ
ヌクレオチド配列の各末端に隣接していることが好ましかろう。1つ以上のITRを含む
ことは、例えば宿主細胞DNAポリメラーゼの作用による一本鎖ベクターDNAから二本
鎖DNAへの変換に従って、宿主細胞の核における本発明のベクターのコンカテマー形成
を助ける上で望ましいことである。そのようなエピソームコンカテマーの形成によってベ
クター構築物は宿主細胞の寿命にわたって保護され、それによって生体内での導入遺伝子
の長期的発現が可能になる。
【0066】
望ましい実施形態では、ITRエレメントを、誘導体において天然AAVゲノムから保
持されている唯一の配列にすることとなる。このように、誘導体は、天然ゲノムのrep
及び/またはcap遺伝子ならびに天然ゲノムの他の任意の配列を含まないことが好まし
かろう。これが望ましいのは、上記理由のためであり、さらには宿主細胞ゲノム中へのベ
クターの組込みの可能性を低減するためでもある。加えて、AAVゲノムの大きさを低減
することで、導入遺伝子に加えて他の配列エレメント(例えば調節エレメント)をベクタ
ー内に組み込む際の融通性の向上が可能になる。
【0067】
したがって、AAV2ゲノムに関しては、本発明の誘導体において以下の部分が除去さ
れ得る:1つの末端逆位反復(ITR)配列、複製(rep)及びカプシド(cap)遺
伝子(注意:野生型AAVゲノム中のrep遺伝子を、LHONで侵されるヒト遺伝子N
D4、ND6またはND1と混同してはならない)。しかしながら、試験管内での実施形
態を含めていくつかの実施形態では、誘導体が1つ以上のrep及び/またはcap遺伝
子またはAAVゲノムの他のウイルス配列をさらに含んでいてもよい。天然に存在するA
AVウイルスは高頻度でヒト19番染色体上の特定部位に組み込まれ、ベクターの組込み
能力の保持が治療場面で許容され得るような無視できるほど低い頻度のランダム組込みを
示す。
【0068】
誘導体ゲノムがカプシドタンパク質、すなわちVP1、VP2及び/またはVP3をコ
ードする遺伝子を含む場合、誘導体は、1つ以上の天然に存在するAAVウイルスのキメ
ラ型、シャフリング型またはカプシド改変型誘導体であり得る。特に、本発明は、同じベ
クターの中にAAVの異なる血清型、クレード、クローンまたは単離物からのカプシドタ
ンパク質配列を提供すること、すなわち偽型化を包含する。
【0069】
キメラ型、シャフリング型またはカプシド改変型誘導体は、典型的には、1つ以上の所
望の機能性をウイルスベクターに提供するように選択されることになる。かくして、これ
らの誘導体は、天然に存在するAAVゲノム、例えばAAV2のものを含むAAVウイル
スベクターと比較して、遺伝子送達効率の向上、(体液性または細胞性)免疫原性の低下
、向性範囲の変化、及び/または特定細胞種指向性の改善を呈し得る。遺伝子送達効率の
向上は、細胞表面での受容体または共受容体の結合性の改善、内在化の改善、細胞内での
、及び核内への輸送の改善、ウイルス粒子の脱殻の改善、ならびに一本鎖ゲノムから二本
鎖形態への変換の改善によってもたらされ得る。効率の向上は、ベクター用量がそれを必
要としない組織への投与によって希釈されないといった具合に、向性範囲または特定細胞
集団指向性の変化に関係することでもあり得る。
【0070】
キメラ型カプシドタンパク質としては、天然に存在するAAV血清型の2つ以上のカプ
シドコード配列の間での組換えによって生成するものが挙げられる。これは例えば、ある
血清型の非感染性カプシド配列を異なる血清型のカプシド配列と共トランスフェクトし、
特異的選抜を用いて所望の特性を有するカプシド配列を選抜する、マーカー救出手法によ
って実施され得る。異なる血清型のカプシド配列を細胞内での相同組換えによって変化さ
せて新規キメラ型カプシドタンパク質を生成することができる。
【0071】
キメラ型カプシドタンパク質としてはまた、2つ以上のカプシドタンパク質の間で、例
えば異なる血清型の2つ以上のカプシドタンパク質の間で特定のカプシドタンパク質ドメ
イン、表面ループまたは特定アミノ酸残基を移動させるカプシドタンパク質配列操作によ
って生み出されるものも挙げられる。
【0072】
シャフリング型またはキメラ型カプシドタンパク質はまた、DNAシャフリングによっ
て、またはエラープローンPCRによって生み出され得る。ハイブリッドAAVカプシド
遺伝子は、関係するAAV遺伝子の配列、例えば複数の異なる血清型のカプシドタンパク
質をコードするものをランダムに断片化してから、続いて断片を、同じく配列相同領域に
おける交差を引き起こし得るものであるセルフプライミングポリメラーゼ反応において再
組立てすることによって作り出され得る。このようにしていくつかの血清型のカプシド遺
伝子のシャフリングによって作り出されたハイブリッドAAV遺伝子のライブラリーをス
クリーニングして、所望の機能性を有するウイルスクローンを同定することができる。同
様に、エラープローンPCRを用いてAAVカプシド遺伝子をランダムに突然変異させて
、所望の特性の選抜が後になされ得る多様な変異体ライブラリーを作り出してもよい。
【0073】
また、カプシド遺伝子の配列に遺伝子組換えを行って、天然野生型配列に関して特異的
な欠失、置換または挿入を導入してもよい。特に、カプシドコード配列のオープンリーデ
ィングフレーム内、またはカプシドコード配列のN及び/またはC末端で無関係なタンパ
ク質またはペプチドの配列を挿入することによってカプシド遺伝子を改変してもよい。
【0074】
無関係なタンパク質またはペプチドは、特定細胞種のリガンドとして作用するものであ
ることが好都合であり得、それによって標的細胞との結合性の改善、または特定細胞集団
に対するベクターの指向特異性の改善がもたらされ得る。一例には、網膜色素上皮での取
り込みを遮断してそれによって周囲の網膜組織の形質導入を強化するRGDペプチドの使
用が含まれ得る(Cronin et al.,2008 ARVO Abstract
:D1048)。無関係なタンパク質はまた、製造プロセスの一部としてウイルス粒子の
精製を支援するもの、すなわちエピトープまたは親和性タグであってもよい。挿入の部位
は、ウイルス粒子の他の機能、例えば、内在化、ウイルス粒子の輸送を妨害しないように
選択されるのが典型的であろう。当業者であれば、彼らの共通一般知識に基づいて挿入に
適する部位を同定することができる。上に参照したChoi et alに特定の部位が
開示されている。
【0075】
本発明はさらに、AAVゲノムの配列を天然AAVゲノムのものとは異なる順序及び構
成で提供することを包含する。本発明は、1つ以上のAAV配列または遺伝子を別のウイ
ルスからの配列で、または1つよりも多いウイルスからの配列からなるキメラ遺伝子で置
き換えることも包含する。そのようなキメラ遺伝子は、異なるウイルス種の2つ以上の関
連ウイルスタンパク質からの配列からなっていてもよい。
【0076】
本発明のベクターは、AAVゲノムまたはその誘導体と、ND4、ND6、ND1また
はその変異体をコードする配列とを含むポリヌクレオチド配列の形態を取る。
【0077】
誤解を避けるために記すと、本発明は、本発明のベクターを含むAAVウイルス粒子も
提供する。本発明のAAV粒子には、ある血清型のITRを有するAAVゲノムまたは誘
導体が異なる血清型のカプシドの中にパッケージングされたものであるトランスカプシド
化形態が含まれる。本発明のAAV粒子には、ウイルスエンベロープを2つ以上の異なる
血清型からの非改変型カプシドタンパク質の混合物で構成したものであるモザイク形態も
含まれる。AAV粒子には、カプシド表面に吸着したリガンドを保有している化学修飾形
態も含まれる。例えば、そのようなリガンドには、特定の細胞表面受容体を指向するため
の抗体が含まれ得る。
【0078】
本発明はさらに、本発明のベクターまたはAAVウイルス粒子を含む宿主細胞を提供す
る。
【0079】
組換え核酸配列
本明細書ではまた、NADH脱水素酵素サブユニット4(ND4)、NADH脱水素酵
素サブユニット1(ND1)及びNADH脱水素酵素サブユニット6(ND6)ポリペプ
チドまたはその変異体をコードするポリヌクレオチド配列を含む組換え核酸配列も開示す
る。
【0080】
ND4のポリヌクレオチド配列は配列番号6に示され、配列番号160に示されるタン
パク質をコードする。ND4のさらなる核酸配列は配列番号7及び配列番号8である。N
D6のポリヌクレオチド配列は配列番号9に示され、配列番号161に示されるタンパク
質をコードする。ND6のさらなる核酸配列は配列番号10である。ND1のポリヌクレ
オチド配列は配列番号11に示され、配列番号162に示されるタンパク質をコードする
。ND1のさらなる核酸配列は配列番号12である。
【0081】
配列番号160、161または162のいずれか1つの変異体には、機能性ND4、N
D6またはND1ポリペプチドをコードする切詰め体、突然変異体またはその相同体、及
びその任意の転写産物変異体が含まれ得る。本明細書中で言及されるいかなる相同体も、
ND4、ND6またはND1の該当領域と少なくとも70%相同であることが典型的であ
り、ポリペプチド欠乏に対して機能的に埋め合わせをすることができる。
【0082】
相同性は、既知の方法を用いて測定され得る。例えば、UWGCGパッケージは、相同
性を計算するために使用することができる(例えば、そのデフォルト設定で使用される)
BESTFITプログラムを提供している(Devereux et at(1984)
Nucleic Acids Research 12,387-395)。PILEU
P及びBLASTアルゴリズムを使用して(典型的にはそれらのデフォルト設定で)、例
えばAltschul S.F.(1993)J Mol Evol36:290-30
0、Altschul,S,F et at(1990)J Mol Biol 215
:403-10に記載されているように、相同性を計算する、または配列を用意すること
ができる。BLAST解析を実施するためのソフトウェアは国立生物工学情報センター(
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を通じて公的に入手可能
である。
【0083】
望ましい実施形態では、組換え核酸配列は、少なくとも20、好ましくは少なくとも3
0、例えば少なくとも40、60、100、200、300、400またはそれより多い
連続アミノ酸にわたって、ひいては組換え核酸の配列全体にわたってND4、ND6また
はND1(配列番号160、161または162)の該当領域と少なくとも55%、65
%、70%、75%、80%、85%、90%、より好ましくは少なくとも95%、97
%、99%、99.5%または100%相同であるポリペプチドをコードし得る。該当領
域は、ND4、ND6またはND1の機能的活性を提供するものとされよう。
【0084】
あるいは、及び好ましくは、組換え核酸配列は、その配列全体にわたって完全長ND4
、ND6またはND1(配列番号160、161または162)と少なくとも70%、7
5%、80%、85%、90%、より好ましくは少なくとも95%、97%、99%、9
9.5%または100%相同であるポリペプチドをコードし得る。典型的には、組換え核
酸配列は、ND4、ND6またはND1(配列番号160、161または162)の該当
領域とは2、5、10、20、40、50または60個以上または未満の(各々置換、挿
入または欠失であり得る)突然変異の分だけ異なっている。
【0085】
組換え核酸のND4、ND6またはND1ポリペプチドは、配列番号160、161ま
たは162の特定領域との同一性百分率が、上記の配列の長さのいずれかにわたる特定の
相同性百分率値のいずれかと同じであり得る(つまり、それは同一性が少なくとも70%
、80%または90%、より好ましくは少なくとも95%、97%、99%であり得る)
。
【0086】
ND4、ND6またはND1(配列番号160、161または162)の変異体は切詰
めも含む。変異体がなおも機能的である限り、任意の切詰めを用いてよい。切詰めは、典
型的には、タンパク質活性に必須でない、及び/または折りたたまれたタンパク質の配座
、特に活性部位の折りたたみに影響を与えない配列を、除去するようになされることとな
る。適切な切詰めは、NまたはC末端からの様々な長さの配列の体系的切捨てによって慣
例的に同定され得る。好ましい切詰めはN末端側で行なわれ、触媒ドメインを除く他の全
ての配列を除去するものであってもよい。
【0087】
ND4、ND6またはND1(配列番号160、161または162)の変異体は、N
D4、ND6またはND1(配列番号160、161または162)の特定領域に関して
1つ以上の、例えば、2、3、4、5~10、10~20、20~40個またはそれより
も多いアミノ酸の挿入、置換または欠失を有する突然変異体をさらに含む。欠失及び挿入
は、以下に記載される触媒ドメインの外側でなされることが好ましい。置換も、典型的に
は、プロテアーゼ活性に必須でない、及び/または折りたたまれたタンパク質の配座に影
響を与えない領域で行なわれる。
【0088】
置換は、アミノ酸を他の類似する化学構造、類似する化学特性または類似する側鎖量の
アミノ酸で置き換えるものである保存的変化を1つ以上導入するものであることが好まし
い。導入されたアミノ酸は、それが置き換えたアミノ酸と類似する極性、親水性、疎水性
、塩基性度、酸性度、中性度または電荷を有し得る。あるいは、保存的変化は、既存の芳
香族または脂肪族アミノ酸の代わりに芳香族または脂肪族である別のアミノ酸を導入する
ものであってもよい。保存的アミノ酸変化は当技術分野でよく知られており、アミノ酸の
特性に応じて選択され得る。
【0089】
同様に、ND4、ND6またはND1のポリヌクレオチド配列(配列番号6、9または
11)の望ましい変異体には、ND4、ND6またはND1(配列番号6、9または11
)の該当領域との少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、より好ましくは
少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、または99.5%の相同性を有す
るポリヌクレオチドが含まれる。好ましくは、変異体はその配列全体にわたってこれらの
レベルで完全長ND4、ND6またはND1(配列番号6、9または11)との相同性を
呈する。
【0090】
ミトコンドリア指向性配列(MTS)及び3プライム非翻訳領域(3’UTR)を使用
して標的タンパク質またはmRNAをミトコンドリアに指向することができる。MTSの
電荷、長さ及び構造はミトコンドリア内へのタンパク質移入において重要であり得る。特
定の3’UTRはmRNA局在化をミトコンドリア表面へと促し得、それゆえにミトコン
ドリア内への翻訳時タンパク質移入を促進し得る。
【0091】
ミトコンドリア指向性配列のためのポリヌクレオチド配列は、hsCOX10、hsC
OX8、scRPM2、lcSirt5、tbNDUS7、ncQCR2、hsATP5
G2、hsLACTB、spilv1、gmCOX2、crATP6、hsOPA1、h
sSDHD、hsADCK3、osP0644B06.24-2、Neurospora
crassa ATP9(ncATP9)、hsGHITM、hsNDUFAB1、h
sATP5G3、crATP6_hsADCK3、ncATP9_ncATP9、zmL
OC100282174、ncATP9_zmLOC100282174_spilv1
_ncATP9、zmLOC100282174_hsADCK3_crATP6_hs
ATP5G3、zmLOC100282174_hsADCK3_hsATP5G3、n
cATP9_zmLOC100282174、hsADCK3_zmLOC100282
174_crATP6_hsATP5G3、crATP6_hsADCK3_zmLOC
100282174_hsATP5G3、hsADCK3_zmLOC10028217
4、hsADCK3_zmLOC100282174_crATP6、ncATP9_z
mLOC100282174_spilv1_GNFP_ncATP9、及びncATP
9_zmLOC100282174_spilv1_lcSirt5_osP0644B
06.24-2_hsATP5G2_ncATP9から選択されるポリペプチドをコード
し得る(配列番号については表1を参照されたい)。一例において、ポリヌクレオチド配
列COX10(配列番号1、2または3)はミトコンドリア指向性配列MTS-COX1
0(配列番号126)をコードし得る。別の例において、ポリヌクレオチド配列COX8
(配列番号4)はミトコンドリア指向性配列MTS-COX8(配列番号127)をコー
ドし得る。別の例において、ポリヌクレオチド配列OPA1(配列番号5)はミトコンド
リア指向性配列MTS-OPA1(配列番号128)をコードし得る。
【0092】
3’UTR核酸配列は、hsACO2(配列番号111)、hsATP5B(配列番号
112)、hsAK2(配列番号113)、hsALDH2(配列番号114)、hsC
OX10(配列番号115)、hsUQCRFS1(配列番号116)、hsNDUFV
1(配列番号117)、hsNDUFV2(配列番号118)、hsSOD2(配列番号
119)、hsCOX6c(配列番号120)、hsIRP1(配列番号121)、hs
MRPS12(配列番号122)、hsATP5J2(配列番号123)、rnSOD2
(配列番号124)及びhsOXA1L(配列番号125)から選択され得る。3’UT
R核酸配列はまた、本明細書に掲載される任意の3’UTR核酸配列との少なくとも70
%、75%、80%、85%、90%、より好ましくは少なくとも95%、96%、97
%、98%、99%、99.5%または100%の相同性を有する変異体であってもよい
。例えば、3’UTR核酸配列は配列番号13または配列番号14であり得る。
【0093】
本明細書ではさらに、ミトコンドリア指向性配列、ミトコンドリアタンパク質コード配
列及び3’UTR核酸配列を含む組換え核酸配列を開示する。例えば、組換え核酸配列は
、配列番号15~84から選択され得る。組換え核酸配列はまた、本明細書に掲載される
任意の組換え核酸配列との少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、より好
ましくは少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、99.5%または100
%の相同性を有する変異体であってもよい。
【0094】
プロモーター及び調節配列
本発明のベクターは、開示される導入遺伝子の試験管内または生体内での発現を可能に
するエレメントも含む。よって、ベクターは、典型的には、ND4、ND6もしくはND
1導入遺伝子またはそれらの変異体をコードするポリヌクレオチド配列に機能可能に連結
されたプロモーター配列を含む。
【0095】
任意の好適なプロモーターを使用してよい。プロモーター配列は、任意の宿主細胞背景
の下で恒常的に活性な、つまり機能的なものであってもよいし、あるいは、特定の宿主細
胞環境においてのみ活性でありそれゆえに特定細胞種における導入遺伝子の指向的発現を
可能とするものであってもよい。プロモーターは、別の因子、例えば宿主細胞に存在して
いる因子に応答した誘導的発現を示すものであってもよい。いずれにせよ、ベクターを療
法のために投与する場合にはプロモーターは網膜細胞背景下において機能的でなければな
らない。
【0096】
いくつかの実施形態では、網膜細胞集団においてのみ導入遺伝子が発現することを可能
にするために、プロモーターが網膜細胞特異的な発現を示すことが望ましい。したがって
、プロモーターからの発現は網膜細胞特異的であり得、例えば、神経感覚網膜及び網膜色
素上皮の細胞のみに制限され得る。
【0097】
ND4、ND6またはND1導入遺伝子のための望ましいプロモーターとしては、任意
選択的にサイトメガロウイルス(CME)エンハンサーエレメントと組み合わせたニワト
リベータ-アクチン(CBA)プロモーターが挙げられる。ある場合には、ND4、ND
6またはND1導入遺伝子のための望ましいプロモーターはCAGプロモーターを含む。
特に望ましいプロモーターは、ハイブリッドCBA/CAGプロモーター、例えば、rA
VE発現カセットに使用されるプロモーターである。網膜特異的な遺伝子発現を誘導する
であろうヒト配列に基づくプロモーターの例としては、桿体及び錐体のためのロドプシン
キナーゼ(Allocca et al.,2007,J Viol 81:11372
-80)、錐体のみのためのPR2.1(Mancuso et al.2009,Na
ture)、及び網膜色素上皮のためのRPE65(Bainbridge et al
.,2008,N Eng J Med)が挙げられる。
【0098】
本発明のベクターはまた、転写の前または後に作用し得る1つ以上の追加的な調節配列
を含んでいてもよい。調節配列は、天然ND4、ND6またはND1遺伝子座の一部であ
ってもよいし、または異種調節配列であってもよい。本発明のベクターは、天然ND4、
ND6またはND1転写産物からの5’UTRまたは3’UTRの一部を含み得る。
【0099】
調節配列は、導入遺伝子の発現を促進する、つまり、転写産物の発現を増加させるよう
に作用する、mRNA核内移入を改善する、またはその安定性を強化する、任意の配列で
ある。そのような調節配列としては、例えば、エンハンサーエレメント、後調節エレメン
ト、及びポリアデニル化部位が挙げられる。望ましいポリアデニル化部位は、ウシ成長ホ
ルモンポリAシグナルである。本発明のベクターとの関連において、そのような調節配列
はシス作用性のものとされよう。しかしながら、本発明は、追加的遺伝子構築物上に位置
するトランス作用性の調節配列の使用も包含する。
【0100】
本発明のベクターに使用するための望ましい後調節エレメントは、ウッドチャック肝炎
後調節エレメント(WPRE)またはその変異体である。本発明のベクターに使用され得
る別の調節配列は、足場付着領域(SAR)である。追加的調節配列は、当業者によって
彼らの共通一般知識に基づいて選択され得る。
【0101】
ベクターの作製
本発明のベクターは、遺伝子療法のためのベクターを提供するための当技術分野で知ら
れている標準的手段によって作製され得る。したがって、十分に確立された公知のトラン
スフェクション、パッケージング及び精製方法を用いて好適なベクター作製物を作製する
ことができる。
【0102】
上に述べたとおり、本発明のベクターは、ND4、ND6もしくはND1をコードする
ポリヌクレオチド配列またはそれらの変異体に加えて、天然に存在するAAVウイルスの
完全ゲノムを含んでいてもよい。しかしながら、一般的には、誘導体化されたゲノム、例
えば、少なくとも1つの末端逆位反復配列(ITR)を有するがrepまたはcapなど
の任意のAAV遺伝子を欠き得る誘導体を使用することとなる。
【0103】
そのような実施形態では、誘導体化ゲノムからAAVウイルス粒子への組立てをもたら
すために、AAV及び/またはヘルパーウイルス機能を提供する追加の遺伝子構築物を誘
導体化ゲノムと組み合わせて宿主細胞内に提供することになる。これらの追加的構築物は
、構造AAVカプシドタンパク質、すなわちcap、VP1、VP2、VP3をコードす
る遺伝子、及びAAV生活環に必要とされる他の機能をコードする遺伝子、例えばrep
を含有することが典型的であろう。追加的構築物に具備させる構造カプシドタンパク質の
選択によって、パッケージングされるウイルスベクターの血清型が決まるであろう。
【0104】
本発明に使用するためのパッケージングされる特に望ましいウイルスベクターとしては
、AAV5またはAAV8カプシドタンパク質と組み合わせたAAV2の誘導体化ゲノム
が挙げられる。このパッケージングされたウイルスベクターは典型的には1つ以上のAA
V2 ITRを含む。
【0105】
上に述べたとおり、AAVウイルスは増殖能欠損型であり、それゆえ、典型的には、A
AV複製を可能にするために1つ以上の追加的構築物にヘルパーウイルス機能、好ましく
はアデノウイルスヘルパー機能も具備させることになる。
【0106】
上記の追加的構築物の全てをプラスミドまたは他のエピソームエレメントとして宿主細
胞内に提供してもよいし、あるいは1つ以上の構築物を宿主細胞のゲノムに組み込んでも
よい。
【0107】
これらの態様において、本発明は、本発明のベクターを製造する方法を提供する。方法
は、アデノ随伴ウイルス(AAV)ゲノムまたはその誘導体、及びND4、ND6もしく
はND1またはそれらの変異体をコードするポリヌクレオチド配列を含むベクターを宿主
細胞内に提供すること、ならびにベクターからAAVウイルス粒子への複製及び組立ての
ための手段を提供することを含む。好ましくは、方法は、AAVゲノムの誘導体を含むベ
クター、及びND4、ND6もしくはND1またはそれらの変異体をコードするポリヌク
レオチド配列を、AAV及び/またはヘルパーウイルス機能をコードする1つ以上の追加
的遺伝子構築物と一緒に提供することを含む。典型的には、AAVゲノムの誘導体は少な
くとも1つのITRを含む。任意選択的に、方法は、組み立てられたウイルス粒子を精製
するステップをさらに含む。加えて、方法は、ウイルス粒子を治療用途のために製剤化す
るステップを含み得る。
【0108】
治療方法及び医学的用途
上に述べたとおり、本発明者らは、驚くべきことに、LHONの根底にある細胞機能不
全に対処するために本発明のベクターが使用され得ることを実証した。詳しくは、彼らは
、ベクターの使用によってLHONに関連する欠損症を矯正することができることを示し
た。これは、疾患の変性プロセスを治療、阻止、緩和または予防することができる手段を
提供する。
【0109】
したがって、本発明は、LHONの治療または予防を、それを必要とする患者において
行なう方法であって、治療的有効量の本発明のベクターを患者に網膜、網膜下または硝子
体内への直接注射によって投与することを含む、当該方法を提供する。したがって、患者
においてLHONがそれによって治療または予防される。
【0110】
関連する態様において、本発明は、本発明のベクターを患者に網膜、網膜下または硝子
体内への直接注射によって投与することによってLHONを治療または予防する方法にお
ける上記ベクターの用途を提供する。加えて、本発明は、網膜、網膜下または硝子体内へ
の直接注射によってLHONを治療または予防するための医薬の製造における本発明のベ
クターの用途を提供する。
【0111】
これら全ての実施形態において、本発明のベクターは、LHONの1つ以上の症候の発
症を予防するために投与され得る。患者は無症候者であってもよい。対象は、疾患の素因
を有する者であってもよい。方法または用途は、対象がLHONを進展させる、または有
するリスクを有しているか否かを同定するステップを含み得る。そのような対象には予防
的有効量のベクターを投与する。予防的有効量は、疾患の1つ以上の症候の発症を予防す
る量である。
【0112】
あるいは、対象に疾患の症候が出現した時点で、つまり、疾患の既存症候を治癒させる
ために、ベクターを投与してもよい。そのような対象には治療的有効量のアンタゴニスト
を投与する。治療的有効量は、疾患の1つ以上の症候を改善するのに有効な量である。そ
のような量はまた、LHONに関連するいくらかの周辺視力喪失を阻止する、減速させる
、または逆転させるものであってもよい。そのような量はまた、LHONの発症を阻止す
る、減速させる、または逆転させるものであってもよい。
【0113】
典型的な単回用量は、形質導入を必要とする残存網膜組織の量にもよるが1010~1
012ゲノム粒子である。本明細書においてゲノム粒子は、配列特異的な方法(例えばリ
アルタイムPCR)で定量され得る一本鎖DNA分子を含有するAAVカプシドと定義さ
れる。その用量は単回用量として提供されてもよいが、僚眼のために、またはベクターが
何らか(例えば手術の合併症)の理由で網膜の正しい領域を指向しなかった可能性がある
場合に、繰り返されてもよい。治療は各眼に対する単回永久治療であることが好ましいが
、注射を例えば後年及び/または異なるAAV血清型で繰り返すことを検討してもよい。
【0114】
本発明はまた、患者におけるLHONの治療または予防を追跡評価する方法であって、
本発明のAAVベクターを網膜、網膜下または硝子体内への直接注射によって投与した後
に上記患者から得られた網膜細胞における活性を生体外で測定することを含む、当該方法
も提供する。この方法は治療の有効性の判定を可能にし得る。
【0115】
医薬組成物
本発明のベクターは医薬組成物に製剤化され得る。これらの組成物は、ベクターに加え
て、薬学的に許容される賦形剤、担体、緩衝剤、安定化剤または当業者によく知られてい
る他の材料を含み得る。そのような材料は無毒でなければならず、有効成分の有効性を妨
害するものであってはならない。担体または他の材料の厳密な性質は、投与経路に応じて
、つまり本明細書では網膜、網膜下または硝子体内への直接注射に応じて当業者によって
判定され得る。
【0116】
医薬組成物は典型的には液体形態にある。液体医薬組成物は一般に、液体担体、例えば
、水、石油、動物性もしくは植物性油、鉱油または合成油を含む。生理食塩水、塩化マグ
ネシウム、デキストロースもしくは他の糖類溶液、またはグリコール、例えばエチレング
リコール、プロピレングリコールもしくはポリエチレングリコールを含ませてもよい。あ
る場合には、界面活性剤、例えばプルロニック酸(PF68)0.001%が使用され得
る。
【0117】
患部への注射の場合、有効成分は、発熱物質を含まず好適なpH、等張性及び安定性を
有する水性液剤の形態を取ることになる。当業者であれば、例えば等張ビヒクル、例えば
、塩化ナトリウム注射液、リンガー注射液、乳酸リンガー注射液を使用して好適な液剤を
調製することが十分に可能である。保存剤、安定化剤、緩衝剤、酸化防止剤及び/または
他の添加剤を必要に応じて含ませてもよい。
【0118】
遅延放出のためにはベクターを、当技術分野で知られている方法に従って、緩徐な放出
のために製剤化される医薬組成物の中、例えば、生体適合性ポリマーから形成されたマイ
クロカプセルの中、またはリポソーム担体システム中に含ませてもよい。
【0119】
試料
本明細書に記載の方法に使用するのに適する試料は、対象からの核酸試料であり得る。
本明細書中で使用される「核酸試料」には、RNAもしくはDNA、またはそれらの組合
せが含まれ得る。別の実施形態では、「ポリペプチド試料」(例えば、ペプチドもしくは
タンパク質、またはそれらからの断片)を使用して、遺伝子変異体の結果であるアミノ酸
変化が起きたという情報を確認することができる。核酸及びポリペプチドは、血液、唾液
、尿、口腔内壁の粘膜擦過物、去痰薬、血清、涙液、皮膚、組織または毛髪を含むがこれ
らに限定されない1つ以上の試料から抽出され得る。核酸試料は、核酸情報を得るために
アッセイされ得る。本明細書中で使用される「核酸情報」には、核酸配列自体、核酸配列
における遺伝子変異体の存在/非存在、核酸配列に応じて変動する物理特性(例えばTm
)、及び核酸の量(例えばmRNAコピー数)が含まれる。「核酸」は、DNA、RNA
、人工ヌクレオチドを含むDNA、または人工ヌクレオチドを含むRNAのいずれか1つ
を意味する。本明細書中で使用する場合、「精製核酸」には、cDNA、ゲノム核酸の断
片、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて生成された核酸、ゲノム核酸の制限酵素処
理によって形成された核酸、組換え核酸、及び化学合成核酸分子が含まれる。「組換え」
核酸分子としては、状況が違えば別個であったはずの2つの配列セグメントを例えば化学
合成によって、または遺伝子工学技術による単離核酸セグメントの操作によって人工的に
組み合わせることによって作られた核酸分子が挙げられる。本明細書中で使用する場合、
「ポリペプチド」にはタンパク質、タンパク質の断片、及びペプチドが、天然供給源から
単離されたか、組換え技術によって製造されたか、または化学的に合成されたかにかかわ
らず含まれる。ポリペプチドは、1つ以上の修飾、例えば、翻訳後修飾(例えば、グリコ
シル化、リン酸化など)または他の任意の修飾(例えばペグ化など)を有し得る。ポリペ
プチドは、1つ以上の天然に存在しないアミノ酸(例えば、側鎖修飾を有するアミノ酸な
ど)を含有し得る。
【0120】
いくつかの実施形態では、核酸試料は、細胞または組織、例えば細胞株を含み得る。本
明細書に記載の方法を用いて核酸を得ることができる例示的な細胞種としては、限定され
ないが、以下が挙げられる:血球、例えば、Bリンパ球、Tリンパ球、白血球、赤血球、
マクロファージもしくは好中球;筋細胞、例えば、骨格細胞、平滑筋細胞もしくは心筋細
胞;胚細胞、例えば精子もしくは卵子;上皮細胞;結合組織細胞、例えば、脂肪細胞、軟
骨組織;線維芽細胞もしくは骨芽細胞;ニューロン;アストロサイト;間質細胞;臓器特
異的細胞、例えば、腎細胞、膵臓細胞、肝細胞もしくは角化細胞;幹細胞;またはそれら
から発達する任意の細胞。核酸を得ることができる細胞は、血球、または特定タイプの血
球、例えば、造血幹細胞、または造血幹細胞から生まれる細胞、例えば、赤血球、Bリン
パ球、Tリンパ球、ナチュラルキラー細胞、好中球、好塩基球、好酸球、単球、マクロフ
ァージもしくは血小板であり得る。大抵は、胚性幹細胞、成体幹細胞または多能性幹細胞
を含むがこれらに限定されない任意のタイプの幹細胞を使用することができる。
【0121】
いくつかの実施形態では、核酸試料はRNAまたはDNA単離のために処理され得、例
えば、細胞または組織試料中のRNAまたはDNAが核酸試料の他の成分から分離され得
る。細胞は、標準的技術を用いて、例えば、細胞試料を遠心分離に掛けてペレット化した
細胞を例えば緩衝液中、例えばリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に再懸濁させることに
よって、核酸試料から採集され得る。いくつかの実施形態では、細胞懸濁液を遠心分離に
掛けて細胞ペレットを得た後、細胞を溶解させてDNAを抽出することができる。いくつ
かの実施形態では、核酸試料を濃縮及び/または精製してDNAを単離することができる
。対象から得られた全ての核酸試料は、任意の種類のさらなる処理に供されるものを含め
て、対象から得られたものとみなされる。いくつかの実施形態では、例えば、フェノール
抽出法、QIAAMP(登録商標)組織キット(Qiagen,Chatsworth,
Calif.)、WIZARD(登録商標)ゲノムDNA精製キット(Promega)
、または長期保存に十分適した高度に安定なDNAの精製を可能にし得るものであるPu
regene化学を用いるQiagen Autopure法を含めて当技術分野で知ら
れている標準的技術及びキットを用いてRNAまたはDNAを核酸試料から抽出すること
ができる。
【0122】
いくつかの実施形態では、対立遺伝子の同一性の判定、またはコピー数の決定は、必ず
というわけではないが、RNA及び/またはDNAを含む核酸試料を対象から得ること、
及び/または同一性、コピー数、1つ以上の遺伝子変異体の存在もしくは非存在、及び核
酸試料に由来するゲノムDNA(すなわち対象のゲノム)の中でのそれらの染色体位置を
評価することを含み得る。
【0123】
判定を実施する個人または組織は、対象からの核酸試料の物理学的分析を実際に行なう
必要はない。いくつかの実施形態では、方法は、第三者による核酸試料の分析によって得
られた情報を使用することを含み得る。いくつかの実施形態では、方法は、1つよりも多
い場所で起こるステップを含み得る。例えば、核酸試料は対象から第1の場所で、例えば
、医療機関で、または自己検査キットの場合には対象の自宅で得られ得る。核酸試料は、
同じ場所で、または第2の場所、例えば研究所もしくは他の試験施設で分析され得る。
【0124】
核酸
本明細書に記載の核酸及びポリペプチドは本開示の方法及びキットに使用され得る。い
くつかの実施形態では、本明細書に記載の核酸及びポリペプチドに特異的に結合するアプ
タマーが本開示の方法及びキットに使用され得る。本明細書中で使用する場合、核酸には
デオキシリボヌクレオチド(DNA)またはリボヌクレオチド(RNA)が、単体である
かポリマー中にあるかにかかわらず、天然に存在するか天然に存在しないかにかかわらず
、二本鎖であるか一本鎖であるかにかかわらず、例えば被翻訳遺伝子をコードするか例え
ば調節領域またはその任意の断片、誘導体、模倣体もしくは相補体をコードしないかにか
かわらず含まれ得る。いくつかの実施形態では、核酸は、オリゴヌクレオチド、ヌクレオ
チド、ポリヌクレオチド、核酸配列、ゲノム配列、相補的DNA(cDNA)、アンチセ
ンス核酸、DNA領域、プローブ、プライマー、遺伝子、調節領域、イントロン、エクソ
ン、オープンリーディングフレーム、結合部位、標的核酸及び対立遺伝子特異的核酸を含
み得る。
【0125】
本明細書中で使用される「プローブ」は、核酸の相補性に基づくハイブリダイゼーショ
ン反応を用いて検体中の核酸を調べるための核酸断片を含む。
【0126】
本明細書中で使用される「ハイブリッド」には、同じ種類の中で、または異なる種類を
またいで、上記核酸のいずれか1つとの間で形成された二本鎖、例えば、DNA-DNA
、DNA-RNA、RNA-RNAまたは同様のものが含まれる。
【0127】
本明細書中で使用される「単離」核酸は、(ゲノム配列にみられるような)遺伝子また
はヌクレオチド配列に通常隣接している核酸から分離されており、及び/または(例えば
RNAライブラリーにみられるような)他の被転写配列を完全もしくは部分的に取り去る
精製がなされている。例えば、本開示の単離核酸は、天然にそれが存在している複雑な細
胞環境に関して、または組換え技術によって生成した場合には培養培地に関して、または
化学合成された場合には化学前駆体もしくは他の化学物質に関して、実質的に単離された
ものであり得る。場合によっては、単離された材料は、組成物、例えば、他の物質を含有
する粗抽出物、緩衝系または試薬混合物の一部を形成していることがある。いくつかの実
施形態では、当技術分野で知られている方法を用いて、例えばポリアクリルアミドゲル電
気泳動(PAGE)またはカラムクロマトグラフィー(例えばHPLC)によって、材料
を本質的に同質になるまで精製し得る。ゲノムDNA(gDNA)に関して、「単離され
た」という用語は、天然にゲノムDNAが会合している染色体から分離した核酸を指すこ
ともある。例えば、単離核酸分子は、当該核酸分子を得る元となる細胞のgDNAで当該
核酸分子に隣接しているヌクレオチドを約250kb、200kb、150kb、100
kb、75kb、50kb、25kb、10kb、5kb、4kb、3kb、2kb、1
kb、0.5kbまたは0.1kbよりも少なく含有し得る。
【0128】
核酸は他のコード配列または調節配列と融合していてもよく、これは単離されていると
みなされ得る。例えば、ベクター中に含まれている組換えDNAは、本明細書中で使用さ
れる「単離された」の定義に含まれる。いくつかの実施形態では、溶液中の部分的または
実質的に精製されたDNA分子は勿論のこと、異種宿主細胞または異種生物の中の組換え
DNA分子も、単離核酸に含まれ得る。単離核酸はまた、本開示のDNA分子の生体内及
び試験管内RNA転写産物も包含する。単離核酸分子またはヌクレオチド配列は化学的に
、または組換え的手段によって合成され得る。そのような単離ヌクレオチド配列は、例え
ば、コードされるポリペプチドの製造における有用性、(例えば他の哺乳動物種から)相
同配列を単離するためのプローブとしての有用性、(例えば染色体とのin situハ
イブリダイゼーションによる)遺伝子マッピングにおける有用性、または組織(例えばヒ
ト組織)での遺伝子発現の例えばノーザンブロット分析もしくは本明細書に開示される他
のハイブリダイゼーション技術による検出における有用性を有し得る。本開示はまた、選
択的ハイブリダイゼーションなどのために高ストリンジェンシーのハイブリダイゼーショ
ン条件の下で本明細書に記載のヌクレオチド配列とハイブリダイズする核酸配列にも関す
る。そのような核酸配列は、(例えば高ストリンジェンシー条件下で)対立遺伝子または
配列に特異的なハイブリダイゼーションによって検出及び/または単離され得る。核酸ハ
イブリダイゼーションのためのストリンジェンシー条件及び方法は当業者によく知られて
いる(例えば、Current Protocols in Molecular Bi
ology,Ausubel,F.et al.,John Wiley &Sons,
(1998)、及びKraus,M.and Aaronson,S.,Methods
Enzymol.,200:546-556(1991)を参照されたく、参照により
これらの教示内容全体を本明細書に援用する。
【0129】
2つ以上のヌクレオチドまたはアミノ酸配列の間の「同一性」または「同一性パーセン
ト」の計算値は、最適な比較の目的のために配列を整列させる(例えば、第1配列の配列
中にギャップが導入され得る)ことによって決定され得る。対応する位置にあるヌクレオ
チドをその後に比較し、2つの配列の間の同一性パーセントは、配列が共有している同一
位置の数の関数である(つまり、同一性%=同一位置の数/位置の総数×100)。例え
ば、第1配列中の位置が第2配列中の対応する位置と同じヌクレオチドで占有されている
場合、分子はその位置において同一である。2つの配列の間の同一性パーセントは、2つ
の配列の最適なアラインメントのために導入される必要があるギャップの数及び各ギャッ
プの長さを考慮に入れた、配列によって共有されている同一位置の数の関数である。
【0130】
いくつかの実施形態では、比較目的のために整列させる配列の長さは、基準配列の長さ
の少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なく
とも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%である。2
つの配列の実際の比較は、よく知られている方法、例えば数学的アルゴリズムを用いるも
のによって成し遂げられ得る。そのような数学的アルゴリズムの非限定的な例は、Kar
lin,S.and Altschul,S.,Proc.Natl.Acad.Sci
.USA,90-5873-5877(1993)に記載されている。そのようなアルゴ
リズムは、Altschul,S.et al.,Nucleic Acids Res
.,25:3389-3402(1997)に記載されているようにNBLAST及びX
BLASTプログラム(バージョン2.0)に組み込まれている。BLAST及びギャッ
プ付きBLASTプログラムを利用する場合、各プログラム(例えばNBLAST)の任
意の該当パラメータを使用することができる。例えば、配列比較のためのパラメータは、
スコア=100、ワード長さ=12に設定され得るか、または変更され得る(例えば、W
=5またはW=20)。他の例としては、Myers及びMillerのアルゴリズム、
CABIOS(1989)、ADVANCE、ADAM、BLAT及びFASTAが挙げ
られる。いくつかの実施形態では、例えばGCGソフトウェアパッケージ(Accelr
ys,Cambridge,UK)の中のGAPプログラムを用いて、2つのアミノ酸配
列の間の同一性パーセントを得ることができる。
【0131】
「プローブ」または「プライマー」は、塩基特異的な様式で核酸分子の相補鎖にハイブ
リダイズするオリゴヌクレオチドであり得る。プローブにはプライマーが含まれ得るが、
これは、標的配列の増幅のためのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)及びリガーゼ連鎖反応
(LCR)を含むがこれらに限定されない方法を用いた鋳型特異的DNA合成の開始点と
して働き得る一本鎖オリゴヌクレオチドプローブであり得る。オリゴヌクレオチドは、本
明細書に記載される場合、核酸配列のセグメントもしくは断片、またはそれらの相補体を
含み得る。いくつかの実施形態では、DNAセグメントは5~10,000連続塩基であ
り得、5、10、12、15、20または25ヌクレオチドから10、15、20、25
、30、40、50、100、200、500、1000または10,000ヌクレオチ
ドまでの範囲であり得る。プローブ及びプライマーには、DNA及びRNAの他にも、N
ielsen,P.et al.,Science 254:1497-1500(19
91)に記載されているようなポリペプチド核酸(PNA)が含まれ得る。プローブまた
はプライマーは、核酸分子の少なくとも約15、典型的には約20~25、特定の実施形
態では約40、50、60または75連続ヌクレオチドとハイブリダイズするヌクレオチ
ド配列の領域を含み得る。
【0132】
本開示はまた、ヌクレオチド配列であって、本明細書に記載の遺伝子変異体が含有して
いる少なくとも1つの多型性もしくは多型対立遺伝子、または同じ位置に位置する野生型
ヌクレオチド、またはその相補体を含み得るものである当該ヌクレオチド配列を含むかま
たはそれからなる核酸に選択的にハイブリダイズすることができる断片または部分を含有
する、単離核酸、例えばプローブまたはプライマーも提供する。いくつかの実施形態では
、プローブまたはプライマーは、連続ヌクレオチド配列または連続ヌクレオチド配列の相
補体と少なくとも70%同一、少なくとも80%同一、少なくとも85%同一、少なくと
も90%同一、または少なくとも95%同一であり得る。
【0133】
いくつかの実施形態では、核酸プローブは、本明細書に記載の遺伝子変異体を含有する
症状(例えばLHON)関連遺伝子の相補的領域にハイブリダイズすることができるオリ
ゴヌクレオチドであり得る。本開示の核酸断片は、本明細書に記載されているようなアッ
セイにおいてプローブまたはプライマーとして使用され得る。
【0134】
本開示の核酸、例えば上記のものは、当業者によく知られている標準的な分子生物学技
術を用いて同定及び単離され得る。いくつかの実施形態では、DNAが増幅され得、及び
/または標識(例えば、放射性標識、蛍光標識)されて例えば生物に由来するcDNAラ
イブラリーに対するスクリーニングのためのプローブとして使用され得る。cDNAはm
RNAから得ることができ、好適なベクターの中に含ませられ得る。例えば、対応するク
ローンを単離してDNAを生体内での切出しの後に得ることができ、クローニングされた
インサートは、適切な分子量のポリペプチドをコードする正しいリーディングフレームを
同定するための当技術分野で認識される方法によって、一方または両方の配向で配列決定
され得る。これらの、または類似する方法を用いて、ポリペプチド、及びポリペプチドを
コードするDNAの単離、配列決定、さらには特性評価を行うことができる。
【0135】
いくつかの実施形態では、核酸は、1つ以上の多型性、変異または突然変異、例えば、
一塩基多型(SNP)、一塩基変異(SNV)、コピー数変異(CNV)、例えば、挿入
、欠失、逆位及び転座を含み得る。いくつかの実施形態では、核酸は、類縁体、例えば、
ホスホロチオエート、ホスホロアミダート、メチルホスホネート、キラルメチルホスホネ
ート、2-0-メチルリボヌクレオチド、または修飾核酸、例えば修飾された主鎖残基も
しくは結合、または炭水化物、脂質、ポリペプチドもしくは他の材料と組み合わさった核
酸、またはペプチド核酸(PNA)、例えば、クロマチン、リボソーム及びトランスクリ
プトソーム(transcriptosomes)を含み得る。いくつかの実施形態では
、核酸は、様々な構造の核酸、例えば、A型DNA、B型DNA、Z体DNA、siRN
A、tRNA及びリボザイムを含み得る。いくつかの実施形態では、核酸は、基準配列と
比較して例えば配列の1つ以上の差異、例えば、付加、欠失及び/または置換を有する、
天然または非天然の多型であり得る。いくつかの実施形態では、基準配列は、公的に入手
できる情報、例えば、U.C.Santa Cruz Human Genome Br
owser Gateway(genome.ucsc.edu/cgi-bin/hg
Gateway)、またはNCBIウェブサイト(www.ncbi.nlm.nih.
gov)に基づくものであり得る。いくつかの実施形態では、基準配列は、当技術分野で
よく知られている方法を用いて、例えば基準核酸の配列決定を行うことによって、本開示
の実施者によって決定され得る。
【0136】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の対立遺伝子、SNP、SNVまたはCNV
にプローブをハイブリダイズさせることができる。いくつかの実施形態では、プローブは
、本明細書に記載のLHONに関連する別のマーカー配列に結合し得る。
【0137】
当業者であれば、試験核酸試料からのゲノム配列中に特定の対立遺伝子が存在する場合
にだけ配列特異的ハイブリダイゼーションが起こり得るようなプローブを設計する方法を
知っているであろう。特定の遺伝子変異の遺伝子型判定を行うための市販の技術及び方法
を含めた任意の簡便な遺伝子型判定方法を用いる実施に本開示を単純化することもできる
。
【0138】
対照プローブを使用することもでき、例えば、より変化しにくい配列、例えば染色体の
セントロメアに関連する反復DNAに結合するプローブを対照として使用することができ
る。いくつかの実施形態では、プローブを商業的供給元から入手することができる。いく
つかの実施形態では、プローブを例えば化学的にもしくは試験管内で合成すること、また
は染色体もしくはゲノムDNAから標準的技術によって作ることができる。いくつかの実
施形態では、使用され得るDNAの供給源には、ゲノムDNA、クローニングされたDN
A配列、1つのヒト染色体またはその一部を宿主の正常な染色体相補体と併せて含有する
体細胞ハイブリッド、及びフローサイトメトリーまたは顕微切断によって精製された染色
体が含まれる。関心対象の領域は、クローニングによって、またはPCRを用いる部位特
異的増幅によって単離され得る。
【0139】
1つ以上の核酸、例えばプローブまたはプライマーは、例えば直接標識によって標識さ
れて、検出可能な標識を含み得る。検出可能な標識には、物理的、化学的または生物学的
プロセスによる検出が可能な任意の標識、例えば、放射性標識、例えば32Pまたは3H
、蛍光標識、例えばFITC、発色団標識、親和性リガンド標識、酵素標識、例えば、ア
ルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼまたはI2ガラクトシダーゼ、酵素
補因子標識、ハプテン複合体標識、例えばジゴキシゲニンまたはジニトロフェニル、ラマ
ン信号生成標識、磁気標識、スピン標識、エピトープ標識、例えばFLAGまたはHAエ
ピトープ、発光標識、重原子標識、ナノ粒子標識、電気化学的標識、光散乱標識、球殻標
識、半導体ナノ結晶標識、例えば(米国特許第6,207,392号に記載される)量子
ドット、及び当業者に知られている他の任意の信号生成ラベルで標識されたプローブが含
まれ得、標識は、二次検出分子を使用してまたは使用せずにプローブを可視化することが
できるものである。ヌクレオチドは、標準的技術、例えば、ニックトランスレーション、
ランダムプライミング及びPCR標識によってプローブ中に直接組み込まれ得る。本明細
書中で使用する場合、「信号」には、適切な手段で好適に検出及び測定できる蛍光、放射
線、化学発光などを含めた信号が含まれる。
【0140】
検出に有用となる標識部分の非限定的な例としては、限定されないが、好適な酵素、例
えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ベータ-ガラクトシダー
ゼ、またはアセチルコリンエステラーゼ;複合物を形成することができる結合対のメンバ
ー、例えば、ストレプトアビジン/ビオチン、アビジン/ビオチン、または抗原/抗体複
合物、例えばウサギIgGと抗ウサギIgG;蛍光団、例えば、ウンベリフェロン、フル
オレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、テトラメチルローダミン
、エオジン、緑色蛍光タンパク質、エリスロシン、クマリン、メチルクマリン、ピレン、
マラカイトグリーン、スチルベン、ルシファーイエロー、カスケードブルー、Texas
Red、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリド、フィコエリ
スリン、蛍光ランタニド錯体、例えば、ユーロピウム及びテルビウムを含むもの、シアニ
ン色素ファミリーメンバー、例えばCy3及びCy5、モレキュラービーコン及びその蛍
光誘導体、ならびに当技術分野で知られている他のもの、例えば、Principles
of Fluorescence Spectroscopy,Joseph R.L
akowicz(Editor),Plenum Pub Corp,2nd edit
ion(July 1999)、及びthe 6th Edition of the
Molecular Probes Handbook by Richard P.H
oaglandに記載されているもの;ルミノールなどの発光性材料;光散乱またはプラ
ズモン共鳴材料、例えば、金もしくは銀粒子、もしくは量子ドット;または14C、12
3I、124I、125I、Tc99m、32P、33P、35Sもしくは3Hを含む放
射性材料が挙げられる。
【0141】
他の標識、例えば主鎖標識を本開示の方法に使用することもできる。主鎖標識は、配列
に無関係に核酸に結合する核酸染色剤を含む。非限定的な例としては、インターカレート
色素、例えばフェナントリジン及びアクリジン(例えば、臭化エチジウム、ヨウ化プロピ
ジウム、ヨウ化ヘキシジウム、ジヒドロエチジウム、エチジウムホモダイマー1及び2、
エチジウムモノアジド、ならびにACMA);いくつかの副溝結合剤、例えばインドール
及びイミダゾール(例えば、ヘキスト33258、ヘキスト33342、ヘキスト345
80及びDAPI);ならびに幾多の核酸染色剤、例えば、(インターカレートすること
もできる)アクリジンオレンジ、7-AAD、アクチノマイシンD、LDS751及びヒ
ドロキシスチルバミジンが挙げられる。上記核酸染色剤は全て、Molecular P
robes,Incなどの供給業者から市販されている。核酸染色剤のさらに他の例とし
ては、Molecular Probes提供の以下の色素が挙げられる:シアニン色素
、例えば、SYTOX Blue、SYTOX Green、SYTOX Orange
、POPO-1、POPO-3、YOYO-1、YOYO-3、TOTO-1、TOTO
-3、JOJO-1、LOLO-1、BOBO-1、BOBO-3、PO-PRO-1、
PO-PRO-3、BO-PRO-1、BO-PRO-3、TO-PRO-1、TO-P
RO-3、TO-PRO-5、JO-PRO-1、LO-PRO-1、YO-PRO-1
、YO-PRO-3、PicoGreen、OliGreen、RiboGreen、S
YBR Gold、SYBR Green I、SYBR Green II、SYBR
DX、SYTO-40、-41、-42、-43、-44、-45(青色)、SYTO
-13、-16、-24、-21、-23、-12、-11、-20、-22、-15、
-14、-25(緑色)、SYTO-81、-80、-82、-83、-84、-85(
橙色)、SYTO-64、-17、-59、-61、-62、-60、-63(赤色)。
【0142】
いくつかの実施形態では、組になっているかまたはなっていない各プローブが個別に可
視化され得るように、異なる色の蛍光団、例えば、7-アミノ-4-メチルクマリン-3
-酢酸(AMCA)、5-(及び-6)-カルボキシ-X-ローダミン、リサミンローダ
ミンB、5-(及び-6)-カルボキシフルオレセイン、フルオレセイン-5-イソチオ
シアネート(FITC)、7-ジエチルアミノクマリン-3-カルボン酸、テトラメチル
ローダミン-5-(及び-6)-イソチオシアネート、5-(及び-6)-カルボキシテ
トラメチルローダミン、7-ヒドロキシクマリン-3-カルボン酸、6-[フルオレセイ
ン5-(及び-6)-カルボキサミド]ヘキサン酸、N-(4,4-ジフルオロ-5,7
-ジメチル-4-ボラ-3a,4aジアザ-3-インダセンプロピオン酸、エオジン-5
-イソチオシアネート、エリスロシン-5-イソチオシアネート、TRITC、ローダミ
ン、テトラメチルローダミン、R-フィコエリスリン、Cy-3、Cy-5、Cy-7、
Texas Red、Phar-Red、アロフィコシアニン(APC)、ならびにカス
ケードTMブルーアセチルアジドが選択され得る。いくつかの実施形態では、蛍光標識プ
ローブは、蛍光顕微鏡と、各蛍光団に適したフィルターで、または複数の蛍光団を観察す
るためのデュアルもしくはトリプルバンドパスフィルタセットを使用することで見ること
ができる。いくつかの実施形態では、フローサイトメトリーなどの技術を用いてプローブ
のハイブリダイゼーション様式を調べることができる。
【0143】
他の実施形態では、プローブは、例えばビオチンもしくはジゴキシゲニンで間接的に標
識され得るか、または放射性同位体、例えば32P及び/または3Hで標識され得る。非
限定的な例を挙げると、ビオチンで間接的に標識されたプローブは、検出可能マーカーに
結合しているアビジンによって検出され得る。例えば、アビジンを酵素マーカー、例えば
アルカリホスファターゼまたは西洋ワサビペルオキシダーゼに結合させてもよい。いくつ
かの実施形態では、酵素マーカーは、基質及び/または酵素の触媒を使用する比色反応を
用いて検出され得る。いくつかの実施形態では、アルカリホスファターゼのための触媒、
例えば5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリルホスフェート及びニトロブルーテトラゾ
リウムが使用され得る。いくつかの実施形態では、西洋ワサビペルオキシダーゼのための
触媒、例えばジアミノベンゾエートが使用され得る。
【0144】
製剤、投与経路及び有効用量
本開示のさらに別の態様は、本開示の薬剤または薬剤の合剤を含む医薬組成物のための
製剤、投与経路及び有効用量に関する。そのような医薬組成物は、上記の症状(例えばL
HON)を治療するために使用され得る。
【0145】
本開示の化合物は、経口(頬側及び舌下を含む)、直腸、鼻腔、局所、経皮パッチ、肺
、膣、坐剤または非経口(眼内、硝子体内、筋肉内、関節内、クモ膜下腔内、皮内、腹膜
腔内、皮下及び静脈内を含む)投与に適するもの、またはエアゾール化、吸入または通気
による投与に適する形態にあるものを含めた医薬製剤として投与され得る。薬物送達につ
いての全般的情報は、Ansel et al.,Pharmaceutical Do
sage Forms and Drug Delivery Systems(Lip
pencott Williams &Wilkins,Baltimore Md.(
1999)の中に見つかり得る。
【0146】
様々な実施形態において、医薬組成物は、担体及び賦形剤(限定されないが、緩衝剤、
炭水化物、マンニトール、ポリペプチド、アミノ酸、酸化防止剤、静菌薬、キレート剤、
懸濁化剤、増粘剤及び/または保存剤を含む)、水、石油由来、動物由来、植物由来また
は合成由来のものを含めた油、例えば、ピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油など、生理
食塩水、デキストロース及びグリセロール水溶液、着香剤、着色剤、減粘剤、ならびに他
の許容される添加剤、アジュバントまたは結合剤、生理学的条件に近づけるための他の薬
学的に許容される補助物質、例えばpH緩衝剤、等張化剤、乳化剤、湿潤剤などを含む。
賦形剤の例としては、澱粉、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米
、小麦、白亜、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、
タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、
水、エタノールなどが挙げられる。いくつかの実施形態では、医薬調合剤は保存剤を実質
的に含まない。他の実施形態では、医薬調合剤は、少なくとも1つの保存剤を含有し得る
。医薬剤形についての一般的方法論は、Ansel et al.,Pharmaceu
tical Dosage Forms and Drug Delivery Sys
tems(Lippencott,Williams,&Wilkins,Baltim
ore Md.(1999))の中に見出される。当業者に知られている任意の好適な担
体を採用して本開示の組成物を投与することができるが、担体の種類は投与様式に応じて
様々であり得る、ということは認識され得る。
【0147】
よく知られている技術を用いて化合物をリポソームの中にカプセル封入することもでき
る。生分解性マイクロスフェアを本開示の医薬組成物のための担体として採用することも
できる。好適な生分解性マイクロスフェアは、例えば、米国特許第4,897,268号
、第5,075,109号、第5,928,647号、第5,811,128号、第5,
820,883号、第5,853,763号、第5,814,344号及び第5,942
,252号の中に開示されている。
【0148】
化合物はリポソームまたはマイクロスフェア(または微粒子)の中に入った状態で投与
され得る。対象への投与のためのリポソーム及びマイクロスフェアを調製する方法は当業
者によく知られている。米国特許第4,789,734号には、生物学的材料をリポソー
ムの中にカプセル封入する方法が記載されており、これをもって参照によりその内容を援
用する。本質的には材料を水溶液に溶解させ、適切なリン脂質及び脂質を、必要ならば界
面活性剤と共に添加し、材料を必要に応じて透析または超音波処理する。既知の方法につ
いての総説は、G.Gregoriadis,Chapter 14,“Liposom
es,”Drug Carriers in Biology and Medicin
e,pp.2.sup.87-341(Academic Press,1979)によ
って提供されている。
【0149】
ポリマーまたはポリペプチドで形成されたマイクロスフェアは当業者によく知られてお
り、消化管を通ってそのまま血流中に入るように適合させることができる。あるいは、化
合物を組み込んだマイクロスフェアまたはマイクロスフェアの複合材料を数日~数ヶ月の
範囲の期間にわたる緩徐な放出のために埋植することができる。例えば、米国特許第4,
906,474号、第4,925,673号及び第3,625,214号、ならびにJe
in,TIPS 19:155-157(1998)を参照されたく、これをもって参照
によりこれらの内容を援用する。
【0150】
眼内または硝子体内注射に適合するように、薬物の濃度が調整され得、溶液のpHが緩
衝され得、等張性が調整され得る。
【0151】
本開示の化合物は、好適なビヒクルで無菌液剤または懸濁剤として製剤化され得る。医
薬組成物は、従来のよく知られている滅菌技術で滅菌され得るか、または滅菌濾過され得
る。得られた水溶液を、そのまま使用するために包装してもよいし、または凍結乾燥させ
てもよく、凍結乾燥させた調合剤は投与前に無菌溶液と混ぜ合わされ得る。好適な配合組
成及びさらなる担体については、Remington“The Science and
Practice of Pharmacy”(20th Ed.,Lippinco
tt Williams &Wilkins,Baltimore MD)に記載されて
おり、参照によりその教示内容全てを本明細書に援用する。
【0152】
薬剤またはその薬学的に許容される塩は、単独で、または1つ以上の他の薬剤もしくは
1つ以上の他の形態と組み合わせて提供され得る。例えば、製剤は、各薬剤の相対力価、
及び意図する適応症に応じて1つ以上の薬剤を特定の割合で含み得る。例えば、2つの異
なる宿主標的を指向するための組成物において、力価が類似している場合、約1:1の比
率で薬剤が使用され得る。2つの形態を一緒に同一投薬単位、例えば、1つのクリーム剤
、坐剤、錠剤、カプセル剤、エアゾールスプレー剤、もしくは飲料に溶かされる散剤の分
包品に製剤化してもよいし、または各形態を別個の単位、例えば、2つのクリーム剤、2
つの坐剤、2つの錠剤、2つのカプセル剤、錠剤と当該錠剤を溶かすための液剤、2つの
エアゾールスプレー剤、または散剤の分包品と当該散剤を溶かすための液剤などに製剤化
してもよい。
【0153】
「薬学的に許容される塩」という用語は、本開示に使用される薬剤の生物学的有効性及
び特性を保持しており、生物学またはその他に関して望ましくなくはない塩を意味する。
【0154】
典型的な塩は、無機イオンのもの、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグ
ネシウムイオン及び同類のものなどである。そのような塩としては、塩酸、臭化水素酸、
リン酸、硝酸、硫酸、メタンスルホン酸、pトルエンスルホン酸、酢酸、フマル酸、コハ
ク酸、乳酸、マンデル酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸またはマレイン酸などの無機また
は有機酸との塩が挙げられる。加えて、薬剤(複数可)がカルボキシル基または他の酸性
基を含有する場合、それを無機または有機塩基との薬学的に許容される付加塩に変換する
ことができる。好適な塩基の例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニ
ア、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、エタノールアミン、ジエタノール
アミン、トリエタノールアミンなどが挙げられる。
【0155】
薬学的に許容されるエステルまたはアミドは、本開示に使用される薬剤の生物学的有効
性及び特性を保持しており、生物学またはその他に関して望ましくなくはないものを指す
。典型的なエステルとしては、エチル、メチル、イソブチル、エチレングリコールなどが
挙げられる。典型的なアミンとしては、無置換アミド、アルキルアミド、ジアルキルアミ
ドなどが挙げられる。
【0156】
いくつかの実施形態では、薬剤は、1つ以上の例えば上記のような他の化合物、形態及
び/または薬剤と組み合わせて投与され得る。1つ以上の他の活性剤を含む医薬組成物は
、特定のモル比を有するように製剤化され得る。例えば、第1活性剤と他の活性剤との約
99:1~約1:99のモル比が用いられ得る。実施形態のある部分集団において、第1
活性剤:他の活性剤のモル比の範囲は、約80:20~約20:80、約75:25~約
25:75、約70:30~約30:70、約66:33~約33:66、約60:40
~約40:60、約50:50、及び約90:10~約10:90から選択される。第1
活性剤:他の活性剤のモル比は約1:9であってもよく、いくつかの実施形態では約1:
1であってもよい。2つの薬剤、形態及び/または化合物を一緒に同一投薬単位、例えば
、1つのクリーム剤、坐剤、錠剤、カプセル剤、もしくは飲料に溶かされる散剤の分包品
に製剤化してもよいし、または各々の薬剤、形態及び/または化合物を別個の単位、例え
ば、2つのクリーム剤、坐剤、錠剤、2つのカプセル剤、錠剤と当該錠剤を溶かすための
液剤、エアゾールスプレー剤 散剤の分包品と当該散剤を溶かすための液剤などに製剤化
してもよい。
【0157】
必要または望ましいとされる場合には、薬剤及び/または薬剤の合剤は、さらに他の薬
剤と共に投与され得る。本開示の薬剤及び/または薬剤の合剤と共投与され得る薬剤の選
択は、治療する症状に少なくとも部分的に依拠し得る。
【0158】
薬剤(複数可)(またはその薬学的に許容される塩、エステルまたはアミド)は、それ
自体で、または混和物もしくは混合物の中に活性薬剤(複数可)が1つ以上の薬学的に許
容される担体と共に入っている医薬組成物の形態で、投与され得る。医薬組成物は、本明
細書中で使用される場合、対象への投与のために調製される任意の組成物であり得る。本
開示に係る用途のための医薬組成物は、賦形剤、希釈剤及び/または助剤、例えば投与さ
れ得る調合剤に活性剤を加工するのを容易にするものを含ませて、1つ以上の生理学的に
許容される担体を使用する従来の方法で製剤化され得る。適切な製剤は、選択される投与
形態によって少なくとも部分的に決まり得る。本開示において有用となる薬剤(複数可)
またはその薬学的に許容される塩、エステルもしくはアミドは、経口、頬側、局所、直腸
、経皮、経粘膜、皮下、静脈内、眼内、硝子体内及び筋肉内への適用ならびに吸入による
ものを含めた複数の投与経路または投与様式を用いて対象に送達され得る。
【0159】
いくつかの実施形態では、薬剤を液剤にするのに油または非水性溶媒を、例えば大きな
親油性部分の存在ゆえに使用することがある。あるいは、乳剤、懸濁剤または他の調合剤
、例えばリポソーム調合剤が用いられ得る。リポソーム調合剤に関しては、症状の治療の
ためのリポソームを調合する任意の既知の方法を用いることができる。例えば、参照によ
り本明細書に援用されるBangham et al.,J.Mol.Biol.23:
238-252(1965)、及びSzoka et al.,Proc.Natl A
cad.Sci.USA 75:4194-4198(1978)を参照されたい。リポ
ソームにリガンドを結合させてこれらの組成物を特定の作用部位へ差し向けることもでき
る。本開示の薬剤を食品、例えば、クリームチーズ、バター、サラダドレッシングまたは
アイスクリームの中に組み込んで可溶化、投与、及び/または特定対象集団におけるコン
プライアンスを容易にすることもできる。
【0160】
本開示の化合物は、(例えば、注射、例えば眼内または硝子体内注射による)非経口投
与のために製剤化され得、アンプル、プレフィルドシリンジ、少量点滴液の単位用量形態
で、または保存剤を添加して複数回用量容器で、提供され得る。組成物は、油性または水
性ビヒクルによる懸濁剤、液剤または乳剤など、例えば水性ポリエチレングリコールによ
る液剤の形態を取り得る。
【0161】
注射製剤の場合、ビヒクルは、水溶液または油懸濁液、またはゴマ油、トウモロコシ油
、綿実油もしくはピーナッツ油を使用したエマルジョン、さらにはエリキシル、マンニト
ール、デキストロース、または無菌水溶液及び類似する医薬ビヒクルを含めた、当技術分
野で好適であると知られているものから選択され得る。製剤は、ポリ(乳酸-コ-グリコ
ール酸)などの生体適合性、生分解性であるポリマー組成物を含むこともある。これらの
材料を、薬物が装填されてさらに被覆または誘導体化がなされたマイクロまたはナノスフ
ェアに作り替えて、優れた持続放出性能を提供することができる。眼周囲または眼内注射
に適するビヒクルとしては、例えば、注射グレード水による治療剤の懸濁液、リポソーム
、及び親油性物質に適するビヒクルが挙げられる。眼周囲または眼内注射のための他のビ
ヒクルは当技術分野でよく知られている。
【0162】
いくつかの実施形態では、組成物は、慣例的手順に従って人間への静脈内投与に適合し
た医薬組成物として製剤化される。典型的には、静脈内投与のための組成物は、無菌等張
緩衝水による液剤である。必要な場合には組成物は、可溶化剤、及び注射部位の疼痛を和
らげるためのリドカインなどの局所麻酔薬をさらに含み得る。一般的には成分を、別個に
、あるいは混ぜ合わせて単位剤形で、例えば、乾燥した凍結乾燥粉末または水を含まない
濃縮物を密封容器、例えばアンプルまたは小袋に入れて活性剤の量を表示したものとして
供給する。組成物を輸注によって投与することになる場合、それは、無菌医薬品グレード
水または生理食塩水を含有する輸注ボトルを使用して分注され得る。組成物を注射によっ
て投与する場合、成分が投与前に混合され得るように、注射用無菌水または生理食塩水の
アンプルが提供され得る。
【0163】
投与を注射によって行う場合、活性化合物は、水溶液、具体的には生理学的に適合する
緩衝液、例えば、ハンクス液、リンガー液または緩衝生理食塩水で製剤化され得る。液剤
は、製剤用剤、例えば、懸濁化剤、安定化剤及び/または分散剤を含有し得る。あるいは
、活性化合物を、使用前に好適なビヒクル、例えば発熱物質を含まない無菌水で戻すため
の粉末形態とすることもできる。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、アジュバント
、またはペプチドによって刺激された免疫応答を増強するために添加される他の任意の物
質を含まない。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、ペプチドに対する免疫応答を阻
害する物質を含む。製剤化の方法は当技術分野で知られており、例えば、Remingt
on’s Pharmaceutical Sciences,latest edit
ion,Mack Publishing Co.,Easton Pに開示されている
。
【0164】
いくつかの実施形態では、眼障害は、本開示の薬剤または薬剤の合剤を含む眼科用の液
剤、懸濁剤、軟膏剤または挿入剤によって効果的に治療され得る。点眼薬は、有効成分を
無菌水溶液、例えば、生理食塩水、緩衝液などに溶解させること、または使用前に溶かす
粉末組成物と混ぜ合わせることによって調製され得る。当技術分野で知られている他のビ
ヒクル、例えば、限定されないが、平衡塩溶液、生理食塩水、水溶性ポリエーテル、例え
ばポリエチレングリコール、ポリビニル、例えばポリビニルアルコール及びポビドン、セ
ルロース誘導体、例えばメチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロース、石
油誘導体、例えば鉱油及び白色ワセリン、動物性油脂、例えばラノリン、アクリル酸のポ
リマー、例えばカルボキシポリメチレンゲル、植物性油脂、例えばピーナッツ油、及び多
糖類、例えばデキストラン、及びグリコサミノグリカン、例えばヒアルロン酸ナトリウム
を選択してもよい。所望により、点眼薬に通常使用される添加剤を使用してもよい。その
ような添加剤としては、等張化剤(例えば塩化ナトリウムなど)、緩衝剤(例えば、ホウ
酸、リン酸一水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウムなど)、保存剤(例えば、塩化ベ
ンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、クロロブタノールなど)、増粘剤(例えば糖類、
例えばラクトース、マンニトール、マルトースなど;例えばヒアルロン酸またはその塩、
例えばヒアルロン酸ナトリウム、ヒアルロン酸カリウムなど;例えばムコ多糖、例えば硫
酸コンドロイチンなど;例えばポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、
架橋ポリアクリレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロー
ス、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメ
チルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、または当業者に知られている他の薬剤
)が挙げられる。
【0165】
本発明の組成物の成分の溶解性を界面活性剤、または組成物中の他の適切な共溶媒によ
って向上させることができる。そのような共溶媒としては、ポリソルベート20、60及
び80、プルロニックF68、F-84及びP-103、シクロデキストリン、または当
業者に知られている他の薬剤が挙げられる。そのような共溶媒は、重量表示で約0.01
%~2%のレベルで使用され得る。
【0166】
本開示の組成物は複数回用量形態で包装され得る。使用中の微生物汚染を防ぐためには
保存剤が好まれ得る。好適な保存剤としては、塩化ベンザルコニウム、チメロサール、ク
ロロブタノール、メチルパラベン、プロピルパラベン、フェニルエチルアルコール、エデ
ト酸二ナトリウム、ソルビン酸、Onamer M、または当業者に知られている他の薬
剤が挙げられる。従来の眼用製品においてそのような保存剤は0.004~0.02%の
レベルで使用され得る。本出願の組成物において保存剤、好ましくは塩化ベンザルコニウ
ムは、重量表示で0.001%から0.01%未満まで、例えば0.001~0.008
%、好ましくは約0.005%のレベルで使用され得る。塩化ベンザルコニウムの0.0
05%の濃度は本開示の組成物を微生物による攻撃から守るのに十分であり得ることが見
出された。
【0167】
いくつかの実施形態では、本開示の薬剤は、懸濁形態ではなく可溶性形態で送達される
が、これによって作用部位へのより迅速で定量的な吸収が可能になる。概して、ゼリー剤
、クリーム剤、ローション剤、坐剤及び軟膏剤などの製剤が面に本開示の薬剤へのより長
い間の曝露を提供し得る一方、液体製剤、例えばスプレー剤はより迅速な短期間の曝露を
提供する。
【0168】
加えて、局所、眼内、眼周囲または全身投与のための挿入剤に付着した、含まれた、ま
たは結合した持続放出製剤に使用するために、本開示の化合物を放出可能に生体適合性ポ
リマーに結合させ得ることが考えられる。生体適合性ポリマーからの制御放出を水溶性ポ
リマーと共に利用して点眼用製剤を形成することもできる。生体適合性ポリマー、例えば
PLGAマイクロスフェアまたはナノスフェアなどからの制御放出を、持続放出投与のた
めの眼内への埋植または注射に適した製剤に利用することができ、また、任意の好適な生
分解性及び生体適合性ポリマーを使用することができる。
【実施例0169】
以下の例示的実施形態によって本発明をさらに説明する。これらの実施例が、本発明を
例示するが本発明の範囲を限定しないことを意図したものであるにすぎないことは理解さ
れるべきである。以下の実施例では、別段の指示がない限り、例えばsambrook
et al,molecular cloning:a laboratory man
ual(New York:cold spring harbor laborato
ry press,1989)の中で開示されている方法及び条件、または製造業者によ
って推奨される条件が使用され得る。
【0170】
実施例1-ND4プラスミド及びウイルスの作製
1.1 プラスミド作製
【0171】
ヒトND4のヌクレオチド配列(配列番号6)を、米国国立生物工学情報センターの基
準配列yp_003024035.1に基づいて得た。非最適化ミトコンドリア指向性配
列COX10のための配列は配列番号1である。転写効率及び翻訳効率を改善すべく、ミ
トコンドリア指向性配列COX10のための最適化配列(opt_COX10、配列番号
2)、及びヒトND4のコード配列(opt_ND4、配列番号7)を設計した。非最適
化COX10-ND4との相同性が約75.89%である最適化COX10-ND4配列
に3プライム非翻訳領域(すなわち3’UTR、配列番号13)を続けて、(配列番号3
1に示される)組換え核酸opt_COX10-opt_ND4-3’UTRを得た。
【0172】
合成された組換え核酸opt_COX10-opt_ND4-3’UTRをPCR増幅
によってアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターに組み込んだ(
図1)。opt_COX
10-opt_ND4-3’UTRをEcoRI/SalI制限酵素で切断して付着末端
を形成し、次いでEcoRI/SalI制限部位を有するAAVベクター、例えばpSN
aVベクターの中に埋め込んで、pSNaV/rAAV2/2-ND4プラスミド(すな
わち、pAAV2最適化ND4プラスミド)を生成した。pAAV2-opt_ND4プ
ラスミドを非最適化pAAV2-ND4プラスミドと比較した。
【0173】
予備スクリーニング及び同定ステップはCN102634527Bと同様とし、LBプ
レート内でプラスミドを37℃で培養した。青色コロニー及び白色コロニーが出現し、白
色コロニーは組換えクローンであった。白色コロニーを採集し、100mg/Lのアンピ
シリン含有LB培養培地を添加し、37℃で8時間、200rpmで培養し、その後、B
iomigaプラスミド抽出プロトコールに従ってプラスミドを培養細菌培地から抽出し
た。プラスミドの同定はEcoRI/SalI制限酵素を使用して裏付けられた。
【0174】
1.2 細胞トランスフェクション
【0175】
トランスフェクションの前日にHEK293細胞を225cm2の細胞培養ボトルに3
.0×107細胞/mlの播種密度で播種し、10%ウシ血清を含むダルベッコ改変イー
グル培地(DMEM)を培養培地として37℃で5%CO2のインキュベータ内で一晩経
過させた。トランスフェクションの日に培養培地を、10%のウシ血清を含む新しいDM
EMに替えた。
【0176】
細胞が80~90%に成長してから、培養培地を捨て、PlasmidTrans(V
GTC)トランスフェクションキットを使用して細胞にpAAV2-ND4、及びpAA
V2-opt_ND4プラスミドをトランスフェクトした。詳細なトランスフェクション
プロトコールはCN102634527Bの実施例1に記載されていた。トランスフェク
ションの48時間後に細胞を回収した。
【0177】
1.3 組換えアデノ随伴ウイルスの回収、濃縮及び精製
【0178】
ウイルス回収:1)ドライアイスエタノール(または液体窒素)槽及び37℃の水槽を
用意し、2)トランスフェクトされた細胞を培地と一緒に15ml遠心分離チューブに回
収し、3)細胞を1000rpm/分で3分間遠心分離に掛け、細胞及び上清を分離し、
上清を別に保存し、細胞を1mlのPBSに再懸濁させ、4)細胞懸濁液をドライアイス
-エタノール槽及び37℃の水槽に交互に繰り返し移して4回の凍結乾燥を各々10分間
行い、各解凍後には軽く振盪を行った。
【0179】
ウイルス濃縮:1)細胞破片を10,000g遠心分離によって除去し、遠心分離後の
上清を新しい遠心分離チューブへ移し、2)不純物を0.45μmフィルターによる濾過
で除去し、3)各々容積の1/2の1M NaCl及び10% PEG8000溶液を試
料に添加し、均一に混合し、4℃で一晩保存し、4)遠心分離を12,000rpmで2
時間行った後に上清を捨て、ウイルス沈澱物を適量のPBS溶液に完全溶解させてから0
.22μmのフィルターで試料を滅菌し、5)benzonaseヌクレアーゼを添加し
て残留プラスミドDNAを除去した(終濃度50U/ml)。チューブを数回逆さまにし
て完全に混合し、その後、37℃で30分間インキュベートし、6)試料を0.45μm
の濾過ヘッドで濾過し、濾液は濃縮rAAV2ウイルスである。
【0180】
ウイルス精製:1)濃縮ウイルス溶液にCsClを1.41g/mlの密度(屈折率1
.372)になるまで添加し、2)超遠心分離チューブに試料を加え、予め調製しておい
た1.41g/mlのCsCl溶液をチューブに充填し、3)遠心分離を175,000
gで24時間行って密度勾配を形成した。異なる密度の試料の逐次回収を実施した。濃縮
されたrAAV2粒子を回収し、4)プロセスをもう1回繰り返した。ウイルスを100
kDaの透析バッグに装填し、4℃で一晩、透析/脱塩した。濃縮及び精製された組換え
アデノ随伴ウイルスはrAAV2-ND4及びrAAV2最適化ND4であった。
【0181】
同様に、他のミトコンドリア指向性配列(MTS)、例えばOPA1(配列番号5)を
使用して上記実施例のCOX10を置き換えて、組換えプラスミドを有するAAVを作り
出すことができる。
【0182】
実施例2-ウサギの眼におけるrAAV2の硝子体内注射
12羽のウサギを2つの群:rAAV2-ND4、及びrAAV2最適化ND4に分け
た。毛様体扁平部で角膜縁の3mm外側から穿刺して硝子体腔内にウイルス溶液(1×1
010vg/0.05mL)を注入した。硝子体内注射後に細隙灯検査及び眼底撮影検査
を用いて眼を調べた。注射は30日間とした。各群においてRT-PCR検出及びイムノ
ブロッティングをそれぞれ行った。
【0183】
実施例3-ND4の発現に関するリアルタイムPCR
トランスフェクトされたrAAV2-ND4及びrAAV2最適化ND4ウサギ視神経
細胞からのRNAを、TRIZOL全RNA抽出キットを使用して抽出した。抽出された
RNAの逆転写によってcDNA鋳型を合成した。
【0184】
NCBI保存構造ドメイン解析ソフトウェアを使用してND4の保存構造を解析して、
設計プライマーによって増幅される断片が非保存領域に位置することを確保し、その後、
蛍光定量的PCRプライマー設計原理に従ってプライマーを設計した:
β-アクチン-S:CGAGATCGTGCGGGACAT(配列番号85)、
β-アクチン-A:CAGGAAGGAGGGCTGGAAC(配列番号86)、
ND4-S:CTGCCTACGACAAACAGAC(配列番号87)、
ND4-A:AGTGCGTTCGTAGTTTGAG(配列番号88)。
【0185】
蛍光定量的PCR反応及びプロトコール:リアルタイムPCR検出システムで蛍光定量
的PCRを測定した。0.2mlのPCR反応チューブに12.5μlのSYBR Gr
een、8μlのddH2O、1μlの各プライマー、及び2.5μlのcDNA試料を
入れて25μlの総体積にした。各試料を標的遺伝子の増幅及び基準遺伝子β-アクチン
の増幅のために使用し、各増幅を3回繰り返した。取扱いによる変動を最小限に抑えるた
めに、共通の試薬を一緒に添加し、その後、別々に分けた。蛍光定量的PCRを行った:
予備変性を95℃で1秒間とし、変性を94℃で15秒間とし、アニーリングを55℃で
15秒間とし、伸長を72℃で45秒間とした。合計40サイクルの増幅反応を実施し、
各サイクルの伸長期に蛍光信号取得を行った。反応後、94℃から55℃までの融解曲線
分析を行った。相対定量法を採用することによってベータ-アクチンとの遺伝子発現レベ
ルの差の研究を内部標準遺伝子として用いた。
【0186】
図2に示すように、rAAV2-ND4及びrAAV2最適化ND4の相対発現レベル
(mRNAレベル)はそれぞれ、0.42±0.23、及び0.57±0.62であった
(p<0.05、
図2)。結果は、予想外なことに、最適化ND4(opt_ND4、配
列番号7)コード核酸配列及び対応する組換え核酸(opt_COX10-opt_ND
4-3’UTR、配列番号31)が転写効率を驚くほど向上させてrAAV2最適化ND
4の発現を約36%増強したことを示している。結果は、rAAV2最適化ND4の転写
効率が有意により高いことを示していた。
【0187】
実施例4-ND4発現のイムノブロッティング検出
rAAV2最適化ND4及びrAAV2-ND4をトランスフェクトされたそれぞれの
ウサギ神経細胞からND4タンパク質を精製した。10%ポリアクリルアミドゲル電気泳
動の後、免疫検出のためにポリフッ化ビニリデン膜(Bio-Rad,HER-herc
ules,CA,USA)に転写した。β-アクチンを内部標準遺伝子として使用した。
フィルム片を自動画像解析機(Li-Cor、Lincoln,NE,USA)で観察し
、同試料の対応光学濃度値を得るべく積分正規化法によるタンパク質バンドの積分光学濃
度を用いて解析した。統計解析ソフトウェアSPSS19.0をデータ解析のために用い
た。
【0188】
結果を
図3に示した。rAAV2最適化ND4(左黒色柱)及びrAAV2-ND4に
ついて、ND4の平均相対タンパク質発現レベルはそれぞれ0.32±0.11及び0.
68±0.20であった(p<0.01、
図3)。結果は、予想外なことに、最適化ND
4コード核酸配列(opt_ND4、配列番号7)及び対応する組換え核酸(opt_C
OX10-opt_ND4-3’UTR、配列番号31)が翻訳効率を驚くほど向上させ
てrAAV2最適化ND4の発現を約112%増強したことを示している。結果は、rA
AV2最適化ND4の翻訳効率が有意により高いことも示していた。
【0189】
実施例5-ウサギ眼圧及び眼底撮影
手術から1、3、7及び30日目にウサギの両群に細隙灯検査及び眼圧測定を実施した
。全てのウサギにおいて、明らかな異常、結膜充血、分泌物または眼内炎は認められず、
眼圧は上昇しなかった。
【0190】
眼底撮影結果を
図4に示した。ウサギの視神経及び網膜血管に明らかな損傷または合併
症はなく、標準的な硝子体内注射が顕著な炎症反応または他の合併症を伴わない安全なも
のであることが示唆された。
【0191】
実施例6-ヒト臨床試験
患者の2つの群を試験した:1)対照群として、2011年~2012年に9名の患者
の片眼に1×1010vg/0.05mLのrAAV2-ND4の硝子体内注射を行い、
2)実験群として、2017年~2018年1月に20名の患者の片眼に1×1010v
g/0.05mLのrAAV2最適化ND4の硝子体内注射を行った。統計解析SPSS
19.0を用いて臨床試験の結果を解析した。
【0192】
2つの群の比較を表2に示す。最速視力改善時間は実験群では1ヶ月であったが、これ
は対照群の3ヶ月よりも有意に速く(p<0.01);実験群での最適視力回復は1.0
であったが、これは対照群の0.8よりも明らかに高く(p<0.01);実験群での平
均視力回復は0.582±0.086であったが、これは対照群の0.344±0.06
2よりも明らかに高かった(p<0.01)。眼底撮影結果を
図5に示した。実験群及び
対照群において患者の視神経及び網膜血管に明らかな損傷または合併症はなく、rAAV
2最適化ND4及びrAAV2-ND4の硝子体内注射の安全性が示唆された。
【表2】
【0193】
実施例7-ミトコンドリア指向性配列としてのOPA1
実施例1~6の組換え核酸(opt_COX10-opt_ND4-3’UTR、配列
番号31)中のCOX10及び3’UTR配列をそれぞれ、別のミトコンドリア標的配列
であるOPA1(配列番号5)、及び別の3’UTR配列である3’UTR*(配列番号
14)で置き換えて新たな組換え核酸OPA1-opt_ND4-3’UTR*(配列番
号74)を生成した。
【0194】
実験方法は実施例1~6と同じとし、組換え核酸opt_COX10-opt_ND4
-3’UTR(配列番号31)をOPA1-opt_ND4-3’UTR*(配列番号7
4)で置き換えた。最適化ND4配列は、非最適化ND4(COX10-ND4-3’U
TR、配列番号15)と比較して有意に改善された転写及び翻訳効率、発現レベル、なら
びにLHONの治療におけるより高い有効性及び安全性を有することが分かった。
【0195】
実施例8-最適化ND4配列opt_ND4*
核酸opt_COX10*-opt_ND4*-3’UTR(配列番号47)を使用し
て実施例1~6と同様の実験方法に従った。実施例1と同様の手順に従って、蛍光タンパ
ク質EGFPで標識されたウイルスを、rAAV2-ND4-EGFP、及びrAAV2
-opt_ND4*-EGFPとして作製した。
【0196】
凍結293T細胞を起こし、T75フラスコ内で約90%に成長させた。細胞をDME
M完全培地で沈降及び再懸濁させて5×10
4細胞/mLの細胞密度にした。約100μ
lの細胞懸濁液(約5000細胞)を96ウェルプレートの各ウェルに加えた。37℃及
び5%CO
2の下で細胞を培養し、50%に成長させた。約0.02μlのPBSを2×
10
10vg/0.02μlのウイルスrAAV2-ND4-EGFP及びrAAV2-
opt_ND4
*-EGFPとそれぞれ混合した。48時間後、蛍光顕微鏡観察及びRT
-PCR検出及びイムノブロッティング実験を実施した。
図6に示すように、EGFPの
発現は好結果であり、EGFP遺伝子を保有するrAAVを293T細胞にトランスフェ
クトすることに成功したこと、ならびにrAAV2-ND4-EGFP及びrAAV2-
opt_ND4
*-EGFPの発現が好結果であったことを示唆していた。
【0197】
以下のプライマーを使用して実施例3と同様のリアルタイムPCR試験に従った:
β-アクチン-S:CGAGATCGTGCGGGACAT(配列番号85)、
β-アクチン-A:CAGGAAGGAGGGCTGGAAC(配列番号86)、
ND4-S:GCCAACAGCAACTACGAGC(配列番号107)、
ND4-A:TGATGTTGCTCCAGCTGAAG(配列番号108)。
【0198】
結果は、予想外なことに、最適化ND4*(opt_ND4、配列番号8)コード核酸
配列及び対応する組換え核酸(opt_COX10*-opt_ND4*-3’UTR、
配列番号47)が転写効率を驚くほど向上させてrAAV2-opt_ND4の発現を約
20%増強したことを示している。結果は、rAAV2-opt_ND4の転写効率が有
意により高いことを示していた。
【0199】
図7は、293T細胞におけるND4発現を示す。rAAV2_ND4ではND4タン
パク質の平均発現が0.36である一方、rAAV2-opt_ND4
*ではND4タン
パク質の平均発現が1.65であり、これはrAAV2-ND4群よりも約4.6倍高い
(p<0.01)(
図8参照)。
【0200】
図9は、ウサギ視神経細胞におけるND4発現を示す。rAAV2-ND4ではND4
タンパク質の平均発現が0.16である一方、rAAV2-opt_ND4
*ではND4
タンパク質の平均発現が0.48であり、これはrAAV2-ND4群よりも約3倍高い
(p<0.01)(
図10参照)。
【0201】
実施例5と同様に、手術から1、3、7及び30日目にウサギの両群に細隙灯検査及び
眼圧測定を実施した。全てのウサギにおいて、明らかな異常、結膜充血、分泌物または眼
内炎は認められず、眼圧は上昇しなかった。
【0202】
rAAV2-ND4及びrAAV2-opt_ND4
*についての眼底撮影結果を
図1
1に示した。ウサギの視神経及び網膜血管に明らかな損傷または合併症はなく、標準的な
硝子体内注射が顕著な炎症反応または他の合併症を伴わない安全なものであることが示唆
された。
【0203】
細隙灯検査及び眼圧測定の後に両方のウサギ群からの眼球を取り出した。眼球を固定し
、パラフィンを使用して脱水した。組織を視神経の方向に沿って病理学的に薄片にした。
さらなる脱水の後、ヘマトキシリン及びエオジンを使用して組織試料を染色した。顕微鏡
検査結果を
図12に示す。HE染色結果に示されるとおり、ウサギ網膜神経節線維層は損
傷を受けず、神経節細胞の数は減少せず、硝子体内注射が網膜毒性または神経損傷を生じ
ず安全に用いられ得ることが示唆された。
【0204】
実験方法は実施例8と同じとし、組換え核酸opt_COX10*-opt_ND4*
-3’UTR(配列番号47)をOPA1-opt_ND4*-3’UTR*(配列番号
76)で置き換えた。最適化ND4配列は、非最適化ND4(COX10-ND4-3’
UTR、配列番号15)と比較して有意に改善された転写及び翻訳効率、発現レベル、な
らびにLHONの治療におけるより高い有効性及び安全性を有することが分かった。
【0205】
実施例9-ND6配列
(5’から3’に向かって)COX10(配列番号1)、ND6(配列番号9)及び3
’UTR(配列番号13)の組合せである核酸COX10-ND6-3’UTR(配列番
号21)を使用して実施例1~6と同様の実験方法に従った。
【0206】
COX10-ND6-3’UTR(配列番号21)のためのプラスミドスクリーニング
には以下のプライマーを使用した:
ND6-F:ATGATGTATGCTTTGTTTCTG(配列番号89)、
ND6-R:CTAATTCCCCCGAGCAATCTC(配列番号90)。
【0207】
トランスフェクトされスクリーニングされたウイルスrAAV2-ND6は2.0×1
0
11vg/mLのウイルス力価を有していた。実施例5と同様に、手術から1、7及び
30日目にウサギの3つの群(A:rAAV2-ND6、B:rAAV-GFP、C:P
BS)に細隙灯検査及び眼圧測定を実施した(
図13)。全てのウサギにおいて、明らか
な異常、結膜充血、分泌物または眼内炎は認められず、眼圧は上昇しなかった。
【0208】
以下のプライマーを使用して実施例3と同様のリアルタイムPCR試験に従った:
β-アクチン-S:CGAGATCGTGCGGGACAT(配列番号85)、
β-アクチン-A:CAGGAAGGAGGGCTGGAAC(配列番号86)、
ND6-S:AGTGTGGGTTTAGTAATG(配列番号91)、
ND4-A:TGCCTCAGGATACTCCTC(配列番号92)。
【0209】
結果は、rAAV2-ND6及び対照(PBS)においてND6の発現がそれぞれ、0
.59±0.06、及び0.41±0.03であったことを示している。結果は、rAA
V2-ND6の転写効率が対照群よりも高いことを示した(p<0.01)。
【0210】
実施例10-最適化opt_ND6配列
(5’から3’に向かって)opt_COX10*(配列番号3)、opt_ND6(
配列番号10)及び3’UTR(配列番号13)の組合せである核酸opt_COX10
*-opt_ND6-3’UTR(配列番号51)を使用して実施例1~6と同様の実験
方法に従った。
【0211】
ウサギの3つの群に、A:10
10vg/50μlのrAAV2-opt_ND6、B
:10
10vg/50μlのrAAV2-ND6(実施例9)、及びC:10
10vg/
50μlのrAAV2-EGFPを注射した。
図14は、rAAV2-opt_ND6(
A)、rAAV2-ND6(B)、rAAV-EGFP(C)を注射したウサギの眼底撮
影結果をそれぞれ示す。全てのウサギにおいて、明らかな異常、結膜充血、分泌物または
眼内炎は認められず、眼圧は上昇しなかった。
【0212】
以下のプライマーを使用して実施例3と同様のリアルタイムPCR試験に従った:
β-アクチン-F:CTCCATCCTGGCCTCGCTGT(配列番号93)、
β-アクチン-R:GCTGTCACCTTCACCGTTCC(配列番号94)、
ND6-F:GGGTTTTCTTCTAAGCCTTCTCC(配列番号95)、
ND6-R:CCATCATACTCTTTCACCCACAG(配列番号96)、
opt_ND6-F:CGCCTGCTGACCGGCTGCGT(配列番号97)、
opt_ND6-R:CCAGGCCTCGGGGTACTCCT(配列番号98)。
【0213】
図15に示すように、rAAV2-opt_ND6(A)、及びrAAV2-ND6(
B)は両方とも、対照群(C)に比べてより高い(p<0.05)相対ND6発現レベル
を有していた。rAAV2-opt_ND6(A)はrAAV2-ND6(B)よりも少
し高い相対ND6発現レベルを有していた。
図16のウェスタンブロットに示されるとお
り、rAAV2-opt_ND6(A)はrAAV2-ND6(B)の3倍を上回る高さ
の相対ND6発現レベルを有していた。
【0214】
実験方法は実施例8と同じとし、組換え核酸COX10-ND6-3’UTR(配列番
号21)及びopt_COX10*-opt_ND6-3’UTR(配列番号51)を、
OPA1-ND6-3’UTR(配列番号77)及びOPA1-opt_ND6-3’U
TR(配列番号79)で置き換えた。最適化ND6配列は、有意に改善された転写及び翻
訳効率、発現レベル、ならびにLHONの治療におけるより高い有効性及び安全性を有す
ることが分かった。
【0215】
実施例11-ND1及びopt_ND1配列
(5’から3’に向かって)COX10(配列番号1)とND1(配列番号11)と3
’UTR(配列番号13)との組合せであるCOX10-ND1-3’UTR(配列番号
25)、rAAV2-ND1;ならびに(5’から3’に向かって)opt_COX10
*(配列番号3)とopt_ND1(配列番号12)と3’UTR(配列番号13)との
組合せであるopt_COX10*-opt_ND1-3’UTR(配列番号55)、r
AAV2-opt_ND1を使用して、実施例1~6と同様の実験方法に従った。
【0216】
COX10-ND1-3’UTR(配列番号25)のためのプラスミドスクリーニング
には以下のプライマーを使用した:
ND1-F:ATGGCCGCATCTCCGCACACT(配列番号99)、
ND1-R:TTAGGTTTGAGGGGGAATGCT(配列番号100)。
【0217】
opt_COX10*-opt_ND1-3’UTR(配列番号55)のためのプラス
ミドスクリーニングには以下のプライマーを使用した:
ND1-F:AACCTCAACCTAGGCCTCCTA(配列番号101)、
ND1-R:TGGCAGGAGTAACCAGAGGTG(配列番号102)。
【0218】
ウサギの3つの群に、A:1010vg/50μlのrAAV2-opt_ND1、B
:1010vg/50μlのrAAV2-ND1(実施例9)、及びC:1010vg/
50μlのrAAV2-EGFPを注射した。全てのウサギにおいて、明らかな異常、結
膜充血、分泌物または眼内炎は認められず、眼圧は上昇しなかった。
【0219】
以下のプライマーを使用して実施例3と同様のリアルタイムPCR試験に従った:
ND1-F:AGGAGGCTCTGTCTGGTATCTTG(配列番号103)、
ND1-R:TTTTAGGGGCTCTTTGGTGAA(配列番号104)、
opt_ND1-F:GCCGCCTGCTGACCGGCTGCGT(配列番号10
5)、
opt_ND1-R:TGATGTACAGGGTGATGGTGCTGG(配列番号
106)。
【0220】
図17に示すように、rAAV2-opt_ND1(A)及びrAAV2-ND1(B
)は両方とも、対照群(C)に比べてより高い(p<0.05)相対ND1発現レベルを
有していた。
図18のウェスタンブロットに示されるとおり、rAAV2-opt_ND
1(A)はrAAV2-ND1(B)の2倍を上回る高さの相対ND6発現レベルを有し
ていた。
【0221】
実験方法は実施例8と同じとし、組換え核酸COX10-ND1-3’UTR(配列番
号25)及びopt_COX10*-opt_ND1-3’UTR(配列番号55)を、
OPA1-ND1-3’UTR(配列番号81)及びOPA1-opt_ND1-3’U
TR(配列番号83)で置き換えた。最適化ND1配列は、有意に改善された転写及び翻
訳効率、発現レベル、ならびにLHONの治療におけるより高い有効性及び安全性を有す
ることが分かった。
【0222】
実施例12-他の融合タンパク質
配列番号15~84に示される他の融合タンパク質を使用して実施例1~6と同様の実
験方法に従うことができる。そして、同様の結果が得られることが予想される。
【0223】
実施例13-製剤開発
AAV2ウイルス試料を使用して種々のAAV製剤をスクリーニングした。種々のAA
V製剤の安定性を、StepOnePlusリアルタイムPCRシステムを使用して評価
した。凍結/解凍サイクル条件下での各製剤のウイルス力価を測定した。
【0224】
まず、3つの異なる製剤を1、2、3、4及び5回の凍結/解凍サイクルの下で試験し
、ウイルス力価を測定し、表3にまとめた。試験した3つの製剤は、A:リン酸緩衝生理
食塩水(PBS);B:1%のα,α-トレハロース二水和物(α,α-trehalo
se dehydrate)、1%のL-ヒスチジン一塩酸塩一水和物、及び1%のポリ
ソルベート20;ならびにC:180mMのNaCl、10mMのNaH
2PO
4/Na
2HPO
4、及び0.001%のポロキサマー188、pH7.3であった。表3に示す
ように、製剤Cは5回の凍結/解凍サイクルの後に最も低い相対標準偏差(RSD)を有
し、AAV製剤としての安定性が優れていることが示唆される。
【表3】
【0225】
表3に示すように、製剤Cは5回の凍結/解凍サイクルの後に最も低い相対標準偏差(
RSD)を有し、AAV製剤としての安定性が優れていることが示唆される。
【0226】
次に、別の3つの異なる製剤の群を1、2、3、4及び5回の凍結/解凍サイクルの下
で試験し、ウイルス力価を測定し、表4にまとめた。試験した3つの製剤は、D:リン酸
緩衝生理食塩水(PBS)、pH7.2~7.4;E:PBS及び0.001%のポロキ
サマー188、pH7.2~7.4;ならびにF:80mMのNaCl、5mMのNaH
2PO
4、40mMのNa
2HPO
4、5mMのKH
2PO
4、及び0.001%のポロ
キサマー188、7.2~7.4であった。
【表4】
【0227】
表4に示すように、製剤Fは5回の凍結/解凍サイクルの後に最も低い相対標準偏差(
RSD)を有し、AAV製剤としての安定性が優れていることが示唆される。全体的に見
て、製剤Fは、試験した全ての製剤の中でも最も低いRSDを有し、今後の開発のための
AAV製剤として使用され得る。
【0228】
本発明の好ましい実施形態を本明細書に示し記載してきたが、そのような実施形態が例
としてのみ提供されていることは当業者には明らかであろう。今や当業者は本発明から逸
脱することなく幾多の変形形態、変更及び置換えを思い付くであろう。本発明の実施にお
いて、本明細書に記載される本発明の実施形態に対する様々な代替形態が採用され得るこ
とは、理解されるべきである。以下の請求項によって本発明の範囲を定義すること、なら
びにそれによってこれらの請求項の範囲内の方法及び構造ならびにそれらの均等物を包含
することを意図する。