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特開2023-78184太陽電池及びその製造方法、光起電力モジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023078184
(43)【公開日】2023-06-06
(54)【発明の名称】太陽電池及びその製造方法、光起電力モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/068 20120101AFI20230530BHJP
   H01L 31/0216 20140101ALI20230530BHJP
【FI】
H01L31/06 300
H01L31/04 240
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031031
(22)【出願日】2023-03-01
(62)【分割の表示】P 2022073688の分割
【原出願日】2022-04-27
(31)【優先権主張番号】202111084159.2
(32)【優先日】2021-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】522171073
【氏名又は名称】晶科能源(海▲寧▼)有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】瞿 佳▲華▼
(72)【発明者】
【氏名】金 井升
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ ▲りん▼安
(57)【要約】      (修正有)
【課題】電池背面のトンネル能力を向上させるとともに、電池背面のパッシベーション効果を向上させ、電池の変換効率を向上させることができる太陽電池及びその製造方を提供する。
【解決手段】N型半導体基板10の表面には、第1パッシベーション層30が設けられており、第1パッシベーション層の表面30には、第1電極40が設けられ、N型半導体基板10の背面には、リンドープ多結晶シリコン層60を有し、N型半導体基板10の背面とリンドープ多結晶シリコン層60との間に、窒素リン含有酸化層50が介在される。リンドープ多結晶シリコン層60の表面には、第2パッシベーション層70が設けられ、第2パッシベーション層70の表面には、第2電極80が設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに反対する正面と背面を有し、正面及び背面にテクスチャ構造を有するN型結晶シリコン基板と、
前記N型結晶シリコン基板の正面に設けられるホウ素拡散層と、
前記ホウ素拡散層の表面に設けられる第1パッシベーション層と、
前記第1パッシベーション層を通って前記N型結晶シリコン基板に電気的に接続される第1電極と、
前記N型結晶シリコン基板の背面に設けられるリンドープ多結晶シリコン層と、
前記N型結晶シリコン基板の背面と前記リンドープ多結晶シリコン層との間に介在される、窒素リン含有酸化ケイ素層と、
前記リンドープ多結晶シリコン層の表面に設けられる第2パッシベーション層と、
前記第2パッシベーション層を通って前記リンドープ多結晶シリコン層に電気的に接続される第2電極と、を含む、ことを特徴とする太陽電池。
【請求項2】
前記窒素リン含有酸化ケイ素層は、単一層の酸化層構造である、請求項1に記載の太陽電池。
【請求項3】
前記窒素リン含有酸化ケイ素層は、第1酸化副層と第2酸化副層と第3酸化副層とを含む多層の酸化層構造であり、前記第1酸化副層は、窒素ドープ酸化ケイ素層であり、前記第2酸化副層は、材質が二酸化ケイ素であり、前記第3酸化副層がリンドープ酸化ケイ素層である、請求項1に記載の太陽電池。
【請求項4】
前記第1酸化副層、第2酸化副層、及び第3酸化副層のうちの少なくとも1つは、Al元素及び/又はTa元素を含む、請求項3に記載の太陽電池。
【請求項5】
前記酸化ケイ素層の全体の厚さは、16Å以下である、請求項1に記載の太陽電池。
【請求項6】
前記リンドープ多結晶シリコン層におけるドーピング濃度は1×1019cm-3~1×1021cm-3である、請求項1に記載の太陽電池。
【請求項7】
前記第1パッシベーション層は、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、及び酸化アルミニウムのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の太陽電池。
【請求項8】
前記第2パッシベーション層は、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、及び酸化アルミニウムのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の太陽電池。
【請求項9】
前記第1電極は、銀電極又は銀/アルミニウム電極であり、及び/又は、
前記第2電極は、銀電極である、請求項1に記載の太陽電池。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の太陽電池を含む太陽電池ストリングを複数含むことを特徴とする光起電力モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、光起電力電池の技術分野に関し、具体的には、太陽電池及びその製造方法、光起電力モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
Topcon電池は「トンネル効果」を利用して背面パッシベーションを実現している。既存のTopcon電池の背面構造は、内から外への順序で、半導体基板、トンネル酸化層、リンドープ多結晶シリコン層、背面パッシベーション層が設けられている。トンネル酸化層の材質は二酸化ケイ素である場合、二酸化ケイ素は、シリコン表面のダングリングボンドと欠陥を効果的にパッシベーションすることにより、電池の開路電圧を大幅に向上して改善し、電池の変換効率を改善することができる。しかしながら、二酸化ケイ素層の厚さが薄すぎるため、膜層の品質を効果的に確保することができず、膜層に多くの欠陥や細孔があり、その結果、電池の短絡現象の原因となり、また、太陽電池背面のキャリアの再結合度を大幅に増加させることが可能になる。漏れ電流の問題を解決するために二酸化ケイ素膜の厚さを増加する対策を講じると、厚すぎる二酸化ケイ素膜層により電子の移動を著しく阻害するにつれてトンネル効果が低下することになり、電池の直列抵抗が増加し、これにより電池のフィルファクタと電流が低減される。同時に、二酸化ケイ素自体の構造的特性により、電池モジュールの使用中に、イオン半径がより小さいイオンが二酸化ケイ素に入ると、そのパッシベーション効果が破壊されることになり、特にNaイオンが存在する場合、電池の耐用年数に一定の影響を与える恐れがある。
【0003】
したがって、従来技術中には、電池背面のパッシベーション効果が向上されただけでなく、高トンネル効果も持つ太陽電池の開発が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記状況に鑑みて、本願は、優れたバックパッシベーション特性を有するとともに、高トンネル効果を有する太陽電池及びその製造方法、光起電力モジュールを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1態様では、
互いに反対である正面と背面を有するN型半導体基板と、
前記N型半導体基板の正面に設けられる第1パッシベーション層と、
前記第1パッシベーション層を通って前記N型半導体基板に電気的に接続される第1電極と、
前記N型半導体基板の背面に設けられるリンドープ多結晶シリコン層と、
前記N型半導体基板の背面とリンドープ多結晶シリコン層との間に介在される、窒素及びリンを含む酸化ケイ素層と、
前記リンドープ多結晶シリコン層の表面に設けられる第2パッシベーション層と、
前記第2パッシベーション層を通って前記リンドープ多結晶シリコン層に電気的に接続される第2電極と、を含む太陽電池を提供する。
【0006】
第1態様において、前記酸化層は、N型半導体基板からリンドープ多結晶シリコン層へ順番に、第1酸化副層、第2酸化副層、及び第3酸化副層を含む。
【0007】
第1態様において、前記第1酸化副層は窒素ドープ酸化ケイ素層であり、前記窒素ドープ酸化ケイ素層の材質は、SiO(式中、y/(x+y)<15%)を含み、及び
/又は、前記窒素ドープ酸化ケイ素層中の窒素ドーピング濃度は、N型半導体基板からリンドープ多結晶シリコン層へ徐々に低減する。
【0008】
第1態様において、前記第1酸化副層の厚さは1Å~2Åである。
【0009】
第1態様において、前記第3酸化副層は、リンドープ酸化ケイ素層であり、前記リンドープ酸化ケイ素層中のリンドーピング濃度は1×1010cm-3~1×1018cm-3であり、及び/又は、前記リンドープ酸化ケイ素層中のリンドーピング濃度は、N型半導体基板からリンドープ多結晶シリコン層へ徐々に増加する。
【0010】
第1態様において、第3酸化副層の厚さは2Å~3Åである。
【0011】
第1態様において、前記第2酸化副層の材質は、二酸化ケイ素であり、及び/又は、前記第2酸化副層の厚さは8Å~10Åであり、及び/又は、前記第2酸化副層のピンホール密度は10-6~10-3である。
【0012】
第1態様において、前記第1酸化副層、第2酸化副層、及び第3酸化副層の厚さの合計は、16Å以下である。
【0013】
本発明の第2態様では、
表面テクスチャリング処理されたN型半導体基板の正面に対してホウ素拡散を行い、ホウ素拡散層を形成する工程と、
前記N型半導体基板の背面に、窒素及びリンを含有する酸化層(以下、「窒素リン含有酸化層」とも称する。)を形成する工程と、
前記窒素リン含有酸化層の表面に多結晶シリコン層を堆積し、前記多結晶シリコン層に対して第2リン拡散を行い、リンドープ多結晶シリコン層を形成する工程と、
前記リンドープ多結晶シリコン層の表面に、第2パッシベーション層を形成する工程と、
前記ホウ素拡散層の表面に第1パッシベーション層を形成し、第1パッシベーション層を通って前記ホウ素拡散層に電気的に接続される第1電極を形成する工程と、
前記第2パッシベーション層を通って前記リンドープ多結晶シリコンに電気的に接続される第2電極を形成する工程と、含む太陽電池の製造方法を提供する。
【0014】
第2態様において、前記窒素リン含有酸化層を形成することは、下記のように実行することを含む。
【0015】
酸化処理の過程中で、酸化生成物に対して第1リン拡散を行って第3酸化副層を形成する。第3酸化副層が得られた後、引き続き酸化処理を行って第2酸化副層を形成して、該第2酸化副層を、前記第3酸化副層とN型半導体基板との間に介在させる。第2酸化副層が得られた後、引き続き酸化処理を行い、酸化処理の過程中で、酸化生成物に対して窒素拡散を行って第1酸化副層を形成して、該第1酸化副層を、前記第2酸化副層とN型半導体基板との間に介在させる。
【0016】
第2態様において、酸化生成物に対して第1リン拡散を行って第3酸化副層を形成することは、以下のように実行することを含む。
【0017】
リン源をドープ源として使用し、流量10L/min~12L/minでOを導入し、導入時間は、3min~5minである。O導入停止後、酸化生成物に対して第1リン拡散を行い、前記第1リン拡散の温度は780℃~820℃であり、前記第1リン拡散の時間は50s~60sである。
【0018】
第2態様において、前記第3酸化副層が得られた後、引き続き酸化処理を行って第2酸化副層を形成することは、以下のように実行することを含む。
【0019】
流量8L/min~10L/minでOを3min~5min導入した後、O導入を停止して酸化処理を行い、前記酸化処理の温度は500℃~530℃であり、前記酸化処理の時間は350s~450sである。
【0020】
第2態様において、前記第2酸化副層が得られた後、引き続き酸化処理、及び窒素ドーピングを行って第1酸化副層を形成することは以下のように実行することを含む。
【0021】
体積比(2~4):1のOとNOとの混合ガスをドープ源として使用し、導入流量を8L/min~10L/minとし、導入時間を3min~5minとして前記混合ガスの導入を行う。混合ガスの導入を停止した後、酸化生成物に対して窒素拡散を行い、前記窒素拡散の温度は500℃~530℃、前記窒素拡散の時間は40s~60sである。
【0022】
本発明の第3態様では、前記第1態様にかかる太陽電池、又は第2態様にかかる製造方法で製造された太陽電池を含む太陽電池ストリングを複数備える、光起電力モジュールを提供する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、少なくとも以下の有益な効果を有する。
【0024】
(1)本発明により、N型半導体基板背面とリンドープ多結晶シリコン層との間に、窒素リン含有酸化層を設けることによって、電池の接触界面の組成を変化し、電池背面のトンネル能力を向上させるとともに、電池背面のパッシベーション効果を向上し、電池の変換効率を向上することができる。
【0025】
(2)本発明により、窒素リン含有酸化層には、窒素含有酸化ケイ素層、二酸化ケイ素層、及びリン含有酸化ケイ素層が含まれている。窒素含有酸化ケイ素層には、窒素ドーピングによって、酸化層界面の誘電率を向上し、パッシベーション効果を改善し、開路電圧を向上することができるが、電池の内部抵抗の向上を起こし、フィルファクタを低下することになる。この場合、リン含有酸化ケイ素層中のリンドーピングにより、二酸化ケイ素のバンドギャップ中に伝導帯付近に、ドナー不純物準位が生じるため、電子のトンネル電流を向上させることができ、電池の内部抵抗を低減し、電池のフィルファクタを向上することができる。つまり、本発明により、上記の2つの元素をドープすることによって得られた窒素リン含有酸化層は、開路電圧の向上とフィルファクタの向上を同時に達成することができ、そして、太陽電池の変換効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本発明又は先行技術の技術案をより明確に説明するために、以下に、本発明又は先行技術の理解のために必要な図面を簡単に説明する。明らかに、下記の説明される図面は、本願のいくつかの実施形態にすぎず、当業者にとって、創造的な労働を必要とせずに、これらの図面に基づいて他の実施形態を反映する図面が得られる。
図1】本発明にかかる太陽電池の構造概略図その1である。
図2】本発明にかかる太陽電池の第2の構造概略図その2である。
図3】本発明にかかる太陽電池の製造フローチャートその1である。
図4】本発明にかかる太陽電池の製造フローチャートその2である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本願の技術案をよりよく理解するために、以下に、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0028】
なお、以下に説明される実施形態、及び例示される実施例は、本発明の一部の実施形態及び実施例にすぎず、すべての実施形態及び実施例ではない、と理解するべきである。当業者であれば、本明細書で記載される実施形態及び実施例に基づき、創造的な労働をせずに得られたすべての他の実施形態及び実施例は、本願の保護範囲に含まれると考えられる。
【0029】
本願の実施形態及び実施例における用語は、特定の実施形態や実施例を説明することのみを目的として使用されており、本願の範囲を限定することを意図するものではない。本明細書及び添付の特許請求の範囲における、単数形「一種の」、「前記」、及び「該」などの用語は、文脈において特定されない限り、複数形も含むことを意図する。
【0030】
なお、本明細書に使用される「及び/又は」という用語は、複数の関連対象の間の関係を説明するためのものに過ぎず、3つの関係が存在可能であると示している。例えば、A及び/又はBについて、Aが単独で存在すること、AとBがともに存在すること、及びBが単独で存在することという3つのケースを示していると理解するべきである。さらに、本明細書における記号「/」は、通常、前後の関連対象が「又は」の関係であると意図するように使用されている。
【0031】
Topcon電池は、「トンネル効果」を利用して、電池の背面パッシベーションを実現する。既存のTopcon電池の背面構造は、内から外への順序で、N型半導体基板、トンネル酸化層、リンドープ多結晶シリコン層、及び背面パッシベーション層からなる。設置されたトンネル酸化層とドープ多結晶シリコン薄層とは、共にパッシベーション接触構造を形成し、表面再結合と金属接触再結合を効果的に低減し、金属電極とのオーミック接触を形成し、変換効率を大幅に向上させることが可能になる。しかしながら、二酸化ケイ素層の厚さが一般的に薄いため、膜層に多くの欠陥や細孔があり、最終に製造された電池における短絡現象の原因となる。短絡の問題を解決するために二酸化ケイ素膜層の厚さを厚くする場合、厚すぎる二酸化ケイ素膜層は、電子の移動を深刻に妨げるため、トンネル効果が低下し、電池の直列抵抗が増加し、その結果、電池のフィルファクタと電流が低下することになる。
【0032】
したがって、従来技術における欠点を克服するために、本発明により、背面におけるN型半導体基板とリンドープ多結晶シリコン層の間に窒素リン含有酸化層が介在される太陽電池、及びその製造方法を提供する。このような層構造により、電池背面のトンネル能力を向上するだけでなく、電池背面のパッシベーション効果も向上することができ、これにより電池の変換効率を向上させることができる。
【0033】
本発明の第1態様において、図1に示される太陽電池の一つの実施形態を提供する。図1に示されるように、
互いに反対する正面及び背面を有するN型半導体基板10と、
N型半導体基板10の正面に設けられる第1パッシベーション層30と、
第1パッシベーション層30を通ってN型半導体基板10に電気的に接続される第1電極40と、
N型半導体基板10の背面に設けられるリンドープ多結晶シリコン層60と、
N型半導体基板10の背面とリンドープ多結晶シリコン層60との間に介在される、窒素リン含有酸化層50と、
リンドープ多結晶シリコン層60の表面に設けられる第2パッシベーション層70と、
第2パッシベーション層70を通ってリンドープ多結晶シリコン層60に電気的に接続
される第2電極80と、を含む太陽電池を提供する。
【0034】
上記実施形態において、N型半導体基板10の背面とリンドープ多結晶シリコン層60との間に、窒素リン含有酸化層50が設けられている。窒素ドーピングによって、酸化層界面の誘電率を増加し、パッシベーション効果を向上し、開路電圧を向上することができる一方、電池の内部抵抗を増加し、フィルファクタを低下する恐れがある。そのため、リンドーピングによって、二酸化ケイ素のバンドギャップ中に伝導帯付近に、ドナー不純物準位が生じるため、電子のトンネル電流を向上させることができ、電池の内部抵抗を低減し、フィルファクタを向上することができる。つまり、本願では、上記の2つの元素のドーピングによって、開路電圧の向上及びフィルファクタの向上を同時に達成することができ、そして、太陽電池の変換効率を向上することができる。
【0035】
一実施形態では、窒素リン含有酸化層50は、窒素及びリンの両方を含む単一層酸化物構造である。
【0036】
いくつかの実施形態では、窒素リン含有酸化層50は多層構造である。図2に示されるように、酸化層は、N型半導体基板からリンドープ多結晶シリコン層60へ順番に、第1酸化副層501、第2酸化副層502、及び第3酸化副層503を含む。第1酸化副層501は窒素ドープ酸化ケイ素層であり、第2酸化副層502は二酸化ケイ素層であり、第3酸化副層503はリンドープ酸化ケイ素層である。当然ながら、本発明により、窒素リン含有酸化層50は、多層構造に設計されてもよく、この場合、パッシベーション効果と電池背面のトンネル能力を同時に高めることができ、太陽電池の変換効率を向上することができる。
【0037】
いくつかの実施形態では、実際に製造された製品において、窒素リン含有酸化層50は非常に薄いので、第1酸化副層501、第2酸化副層502及び第3酸化副層503が一体構造に融合されてもよい。窒素リン含有酸化層50を同定する場合、該酸化層には、窒素及びリンを含むことが理解される。
【0038】
いくつかの実施形態では、窒素ドープ酸化ケイ素層の材質は、SiO(式中、y/(x+y)<15%)を含む。窒素の含有量が増加するにつれて界面がSi-SiO結合からSi-SiN結合へ変化する。SiNは格子定数でも熱膨張係数でもSiとの不整合率が大きく、大量の欠陥の形成をもたらすことになる。このような欠陥は、キャリアのトラップと再結合中心となり、キャリア移動度に影響を与えられる。また、SiN薄膜の内部応力が大きいため、膜層の破裂が起こり、パッシベーション層が完全に失効になる恐れがある。そのため、窒素の含有量は多すぎてはならず、本発明において窒素ドープ酸化ケイ素層にドーピングされた窒素の割合は、15%以内に制御する必要がある。また、窒素ドープ酸化ケイ素層における窒素のドーピング濃度は、N型半導体基板10からリンドープ多結晶シリコン層60へ徐々に低下しており、上記ドーピング濃度勾配は、ドーピングプロセスによって決定されることが理解される。
【0039】
いくつかの実施形態では、第1酸化副層501の厚さは1A~2Aであり、具体的には、第1酸化副層501の厚さは、1Å、1.1Å、1.2Å、1.3Å、1.4Å、1.5Å、1.6Å、1.7Å、1.8Å、1.9Å、又は2Åなどであってもよい。本願の第1酸化副層501は非常に薄いので、酸化層界面の誘電率を高め、キャリアの移動に影響を与えることなくパッシベーション効果を向上できる。
【0040】
いくつかの実施形態では、第2酸化副層502の材質は、二酸化ケイ素である。絶縁層である二酸化ケイ素層は、少数キャリアである正孔の再結合を阻止しながら、多数キャリアであるエレクトロンが多結晶シリコン層にトンネリングすることに寄与できる。そして
、電子は多結晶シリコン層中に横方向に沿って輸送されて金属に集まり、金属接触の再結合電流を大幅に低減し、電池の開路電圧と短絡電流を向上することができる。
【0041】
いくつかの実施形態では、第2酸化副層502の厚さは8Å~10Åであり、具体的な厚さは、8Å、9Å、10Åなどであってもよい。第2酸化副層502の厚さを上記の範囲内にすることにより、多数キャリアの輸送に寄与でき、界面での再結合を大幅に低減できる。第2酸化副層の厚さが8Å未満の場合、パッシベーション効果を発揮できない一方、第2酸化副層が10Åを超えると、キャリアは効果的に通過できなくなる。
【0042】
いくつかの実施形態では、第2酸化副層502のピンホール密度は10-6~10-3であり、具体的なピンホール密度は、10-6、10-5、10-4、10-3等であってもよい。キャリアはピンホールを通じて輸送することができ、つまり、ピンホールはキャリア輸送の1つの分流経路として機能できる。キャリアがピンホールを通じて輸送される場合、直列抵抗を低減し、フィルファクタを高めることができ、さらに太陽電池の変換効率を高めることができる。ピンホールの数が10-3より大きいと、接合の障壁高さが小さくなり、開路電圧が低下するため、パッシベーション性能が低下し、表面再結合が向上し、電池性能が低下する恐れがある。
【0043】
いくつかの実施形態では、第3酸化副層503はリンドープ酸化ケイ素層である。本発明により、酸化ケイ素にリンをドーピングすることにより、酸化ケイ素の伝導帯付近に、ドナー準位が生じる。この不純物準位の存在の上に表面におけるヘビードープ多結晶シリコン層を加えて、電子のトンネル能力を向上し、電子移動への阻害を軽減し、フィルファクタを向上することができる。そして、リンドープにより表面に形成したリンケイ酸ガラス(PSG)は、一部の金属イオン、特にNaに対して強いバリア作用を有し、使用中に電池モジュールが金属イオンによる影響を受けることを低減することができる。
【0044】
いくつかの実施形態では、リンドープ酸化ケイ素層におけるリンのドーピング濃度は1×1010cm-3~1×1018cm-3であり、具体的なドーピング濃度は1×1010cm-3、1×1011cm-3、1×1012cm-3、1×1013cm-3、1×1014cm-3、1×1015cm-3、1×1016cm-3、1×1017cm-3、又は1×1018cm-3などであってもよい。リンドープ酸化ケイ素層におけるリンのドーピング濃度は1×1018cm-3を超えると、多すぎるリンにより、不純物による欠陥が発生し、キャリアトラップや再結合中心になる。また、電池モジュールの使用中に、リンが多すぎると、パッシベーション層の光透過率が低下し、電池効率に影響を及ぼす。一方、リンドープ酸化ケイ素層におけるリンのドーピング濃度は1×1010cm-3未満であると、電子のトンネル能力を十分に向上することができず、性能要求を満たすことができない。
【0045】
いくつかの実施形態では、リンドープ酸化ケイ素層におけるリンのドーピング濃度は、N型半導体基板10からリンドープ多結晶シリコン層へ徐々に増加する。
【0046】
いくつかの実施形態では、第3酸化副層503の厚さは2A~3Aであり、具体的な第3酸化副層503の厚さは、2Å、2.1Å、2.2Å、2.3Å、2.4Å、2.5Å、2.6Å、2.7Å、2.8Å、2.9Å、又は3Åなどであってもよい。
【0047】
第1酸化副層501、第2酸化副層502、及び第3酸化副層503の厚さの合計は、16Å以下であり、具体的な厚さの合計は、12Å、13Å、14Å、15Å、又は16Åなどであってもよい。当然ながら、酸化層の厚さが厚すぎると、電子の移動が著しく妨げられるため、本発明において酸化層の厚さの合計を16Å以下に制御する。
【0048】
なお、第1酸化副層、第2酸化副層及び第3酸化副層は、さらに正孔を提供するAl(アルミニウム)及びTa(タンタル)のうちの少なくとも1種をドーピングしてもよく、これによりパッシベーション効果をさらに向上することができる。
【0049】
本発明の第2態様により、太陽電池の製造方法を提供する。図3は、この態様で提供される太陽電池の製造方法のフローチャートその1である。
【0050】
図3に示されるように、当該太陽電池の製造方法は、
表面テクスチャリング処理されたN型半導体基板10の正面に対してホウ素拡散を行い、ホウ素拡散層20を形成する工程S10と、
N型半導体基板10の背面に対して酸化処理を行って窒素リン含有酸化層50を形成する工程S20と、
窒素リン含有酸化層50の表面に多結晶シリコン層を堆積し、多結晶シリコン層に対して第2リン拡散を行ってリンドープ多結晶シリコン層60を形成する工程S30と、
リンドープ多結晶シリコン層60の表面に第2パッシベーション層70を形成する工程S40と、
ホウ素拡散層20の表面に第1パッシベーション層30を形成し、第1パッシベーション層30に第1電極40を形成し、第2パッシベーション層70に第2電極を形成する工程S50と、を含む。
【0051】
上記実施形態において、N型半導体基板10の背面とリンドープ多結晶シリコン層60との間に、窒素リン含有酸化層50が設けられている。窒素ドーピングにより、酸化層界面の誘電率を高め、パッシベーション効果を向上し、開路電圧も向上することができるが、電池の内部抵抗を向上し、フィルファクタを低下する恐れがある。そのため、リンドーピングによって、二酸化ケイ素のバンドギャップ中に伝導帯付近に、ドナー不純物準位が生じるため、電子のトンネル電流を増大し、電池の内部抵抗を低減し、フィルファクタを向上することができる。つまり、本発明において、上記の2つの元素のドーピングによって、開路電圧の向上及びフィルファクタの向上を同時に実現することができ、そして、太陽電池の変換効率を向上することもできる。
【0052】
具体的には、本発明にかかる太陽電池の製造方法は、N型太陽電池の製造に使用することができ、さらにN型Topcon電池の製造に使用することができる。以下、本発明にかかるN型Topcon電池の製造方法の実施形態について、本願の図面を参照して詳細に説明するが、説明される実施形態は、本発明の全部の実施形態ではなく、一部の実施形態に過ぎない。
【0053】
図4は、本発明にかかる太陽電池の製造方法のフローチャートその2である。図4に示されるように、実施形態1では、下記工程を含む太陽電池の製造方法を提供する。
【0054】
工程S10:表面テクスチャリング処理されたN型半導体基板10の正面にホウ素拡散を行い、ホウ素拡散層20を形成する。
【0055】
具体的には、ホウ素拡散を行う前に、N型半導体基板10の正面及び背面に、テクスチャ表面又は表面テクスチャ構造(例えば、ピラミッド状構造)を形成するように、表面テクスチャリング処理を行ってもよい。表面テクスチャリング処理の手段としては、化学エッチング、レーザーエッチング、機械加工、プラズマエッチング等であってもよく、ここでは限定されない。例示的には、NaOH溶液を用いてN型半導体基板の正面及び背面に対して表面テクスチャリング処理を行うことができる。NaOH溶液による腐食が異方性を示すため、ピラミッド状表面テクスチャ構造を得ることができる。
【0056】
表面テクスチャリング処理でN型半導体基板10の表面にテクスチャ構造を有させることにより、光トラップ効果を生じ、太陽電池の光吸収量を増加し、太陽電池の変換効率を向上することができる。
【0057】
いくつかの実施形態では、N型半導体基板10の正面は太陽に面する表面であり、背面は太陽と反対側の表面である。なお、半導体基板は、結晶シリコン基板(シリコン基板)であってもよく、例えば、多結晶シリコン基板、単結晶シリコン基板又は単準結晶シリコン基板であってもよく、本発明において半導体基板の具体的な種類について限定されない。
【0058】
工程S10において、高温拡散、スラリードーピング又はイオン注入のうちのいずれか1つ又は複数の方法を用いて、N型半導体基板10の正面にホウ素拡散層20を形成してもよい。
【0059】
一つの具体的な実施形態では、ホウ素源を用いてホウ素原子を拡散させてホウ素拡散層20を形成する。ホウ素源として、例えば、三臭化ホウ素を用いて拡散処理を行い、結晶シリコンにおける微結晶シリコン相を多結晶シリコン相に変換してもよい。N型半導体基板10の表面にホウ素の濃度が高いため、通常、ホウケイ酸ガラス層(BSG)が形成される。このホウケイ酸ガラス層は、金属不純物吸着作用を有し、太陽電池の正常な動作に影響を及ぼし、後で除去する必要がある。
【0060】
好ましくは、表面テクスチャリング処理前に、表面における金属や有機汚染物質を除去するために、N型半導体基板10を洗浄する工程をさらに含んでもよい。
【0061】
工程S20:N型半導体基板10の背面を酸化処理して、窒素リン含有酸化層50を形成する。
【0062】
いくつかの実施形態では、窒素リン含有酸化層50の厚さは16Å以下であり、具体的な厚さは、12Å、13Å、14Å、15Å、16Åなどであってもよい。窒素リン含有酸化層50の厚さが厚すぎる場合、電子の移動を著しく妨げると考えられるため、本発明において、酸化層の厚さを16Å以下に制御する。
【0063】
なお、本発明において、酸化処理の具体的な手段について制限されない。具体的には、N型半導体基板10に対して背面エッチングを行った後、オゾン酸化法、高温熱酸化法、及び硝酸酸化法を用いて酸化処理を行ってもよい。例えば、N型半導体基板10の背面を、熱酸化法により酸化してもよい。
【0064】
本発明は、従来の薄い酸化層又はトンネル酸化層と比較して、厚みを増加しないことを前提として、酸化ケイ素の電子トンネル能力を維持するとともに、電池背面におけるキャリア再結合度を低減させることができると理解される。
【0065】
工程S21:N型半導体基板10の背面を酸化処理し、酸化処理の過程中で、酸化生成物に対して第1リン拡散を行い、第3酸化副層503を形成する。
【0066】
具体的に下記のように実行してもよい。リン源をドープ源として使用し、流量10L/min~12L/minでOを導入し、導入時間は、3min~5minである。O導入停止後、酸化生成物に対して第1リン拡散を行い、第1リン拡散の温度は780℃~820℃であり、第1リン拡散の時間は50s~60sである。
【0067】
当該工程では、in situドーピング法を用いて酸化処理とリン拡散処理を同時に
行うことができる。酸化処理は、オゾン酸化法、高温熱酸化法、硝酸酸化法のうちのいずれかを使用しても良い。また、リン拡散処理とは、高温条件下(通常600℃超)で5価のリン原子を拡散させることによりドープ層を形成することを意味する。
【0068】
いくつかの実施形態において、リン拡散の過程中で、リン源はPOCl又はPHであり、好ましいはPOClである。POClは液状で揮発しやすく、ドーピングプロセス中には、酸素ガスの導入につれてリン源を持ち込んでもよく、これにより酸化及びドーピングを同時に行うことができる。そして、導入された酸素ガスにより五価のリン源から五酸化二リンを生成し、五酸化二リンはシリコンと作用してリン原子を生成する。そして、酸素ガスの加入により、半導体基板表面に対するリン化物の腐食作用を回避することができる。POClなどの液状リン源の拡散方法は、生産性が高く、拡散層表面が良好であるという利点がある。
【0069】
いくつかの実施形態では、Oの導入流量は10L/min~12L/minであり、具体的な流量は、10L/min、11L/min、12L/minなどであってもよい。Oの導入流量が12L/minを超える場合、成長した酸化層が厚すぎて、電子移動を阻害する一方、Oの導入流量が10L/min未満である場合、成長した酸化層が薄すぎて、薄膜の品質を効果的に確保することができない。
【0070】
いくつかの実施形態では、Oの導入時間は3minから5minであり、具体的には3min、4min、5minなどであってもよい。
【0071】
第1リン拡散の温度は780℃~820℃であり、具体的には、780℃、790℃、800℃、810℃、820℃などであってもよい。第1リン拡散の時間は50s~60sであり、具体的には、50s、51s、52s、53s、54s、55s、56s、57s、58s、59s、60sなどであってもよい。第1リン拡散の温度が780℃未満である場合、第1リン拡散の時間が長くなり、生産性が低下し、拡散の均一性と再現性が悪くなる。第1リン拡散の温度が820℃を超える場合、第1リン拡散の時間が短くなり、拡散の均一性や再現性が依然として確保できない。
【0072】
いくつかの実施形態では、第3酸化副層503の厚さは2Å~3Åであり、具体的には、第3酸化副層503の厚さは、2Å、2.1Å、2.2Å、2.3Å、2.4Å、2.5Å、2.6Å、2.7Å、2.8Å、2.9Å、3Åなどであってもよい。
【0073】
工程S22:工程S21の第3酸化副層503が得られた後、引き続き酸化処理を行って第2酸化副層502を形成して、該第2酸化副層502を第3酸化副層503とN型半導体基板10との間に介在させる。
【0074】
具体的には、下記のように実行しても良い。流量8L/min~10L/minでOを3min~5min導入した後、Oの導入を停止して酸化処理を行い、酸化処理の温度は500℃~530℃であり、酸化処理の時間は350s~450sである。
【0075】
いくつかの実施形態では、Oの導入流量は8L/min~10L/minであり、具体的には、8L/min、9L/min、10L/minなどであってもよい。Oの導入流量が10L/minを超える場合、成長した酸化層が厚すぎて電子移動を妨げる一方、Oの導入流量が8L/min未満である場合、成長した酸化層が薄すぎて、膜層の品質を効果的に確保することができない。
【0076】
いくつかの実施形態では、Oの導入時間は3min~5minであり、具体的には3min、4min、5minなどであってもよい。
【0077】
酸化処理の温度は500℃~530℃であり、具体的には500℃、510℃、520℃、530℃などであってもよい。酸化処理の時間は350s~450sであり、具体的には350s、350s、370s、380s、390s、400s、410s、420s、430s、440s、450sなどであってもよい。酸化処理の時間と温度を上記の範囲内に制御することによって、厚さが8Å~10Åの酸化ケイ素層が得られる。キャリアのトンネル能力を向上するのに寄与できる。
【0078】
工程S23:工程S22の第2酸化副層502が得られた後、引き続き酸化処理を行い、酸化処理の過程中で、酸化生成物に対して窒素拡散を行って第1酸化副層501を形成して、該第1酸化副層501を、第2酸化副層501とN型半導体基板10との間に介在させる。
【0079】
具体的に下記のように実行しても良い。体積比(2~4):1のOとNOの混合ガスをドープ源として使用し、導入流量を8L/min~10L/minとし、導入時間を3min~5minとして前記混合ガスの導入を行う。混合ガスの導入を停止した後、酸化生成物に対して窒素拡散を行い、窒素拡散の温度は500℃~530℃であり、窒素拡散の時間は40~60sである。
【0080】
いくつかの実施形態では、OとNOの体積比は(2~4):1であり、具体的には、2:1、3:1、4:1などであってもよい。OとNOの混合ガスをドープ源として使用することにより、酸化処理と窒素ドーピングを同時に行うことができる。上記混合ガスの導入流量は8L/min~10L/minであり、具体的には8L/min、9L/min、10L/min等であってもよい。混合ガスの流量を上記の範囲内に制御することで、窒素のドーピング率を制御し、パッシベーション効果を向上することができる。
【0081】
いくつかの実施形態では、混合ガスの導入時間は3min~5minであり、具体的には3min、4min、5minなどであってもよい。
【0082】
酸化処理の温度は500℃~530℃であり、具体的には500℃、510℃、520℃、530℃などであってもよい。酸化処理の時間は350s~450sであり、具体的には350s、350s、370s、380s、390s、400s、410s、420s、430s、440s、450sなどであってもよい。酸化処理の時間と温度を上記の範囲内に制御することで、ドーピング元素の拡散に寄与できるため、酸化層界面の誘電率を高め、パッシベーション効果を向上することができる。
【0083】
工程S20において、本発明により製造した第1酸化副層501/第2酸化副層502/第3酸化副層503からなる窒素リン含有酸化層構造の厚さは薄く、単結晶シリコンの表面を酸化するだけで得られ、追加のシリコン堆積を必要としない。反応過程は、全体的に上から下へ行われ、すなわち、最初の反応によりリンドープの第3酸化副層を生成し、次の反応により無ドープの第2酸化副層を生成し、最後の反応により窒素ドープの第1酸化副層を生成する。
【0084】
工程S30:窒素リン含有酸化層50の表面に多結晶シリコン層を堆積し、多結晶シリコン層に対して第2リン拡散を行ってリンドープ多結晶シリコン層60を形成する。
【0085】
当該工程では、リンドープ多結晶シリコン層60を、窒素リン含有酸化層50の表面に堆積することにより、酸化層への保護を提供する。また、多結晶シリコンをドーピングして高低接合(high-low junction;n/n-Si)を形成することで、電池背面におけるキャリア再結合速度を効果的に低減し、太陽電池の変換効率をさらに
向上させることができる。
【0086】
いくつかの実施形態では、減圧化学蒸着法、プラズマ増強化学蒸着法、常圧化学蒸着法のうちのいずれかの方法を用いて、第3の酸化副層503の表面に多結晶シリコン層を堆積させてもよい。
【0087】
いくつかの実施形態では、第2リン拡散時に二段階熱処理法を用いて行っても良い。つまり、まず、リン源を約1000℃で分解させてN型半導体基板10表面に堆積させる。次に、800℃~900℃の範囲で熱処理することにより、表面におけるリン原子を多結晶シリコン層内に拡散させてリンドープ多結晶シリコン層60を形成する。当然ながら、ワンステップ堆積法を用いて行ってもよく、すなわち、多結晶シリコン層を第3酸化副層503の表面に堆積して形成しながら、in situドーピング処理を行ってリンドープ多結晶シリコン層60を形成してもよい。リン拡散プロセスは、高温拡散、スラリードーピング又はイオン注入のうちのいずれか1種又は複数種の方法を用いて行ってもよく、ここで限定されない。
【0088】
いくつかの実施形態では、リンドープ多結晶シリコン層のドーピング濃度は1×1019cm-3~1×1021cm-3であり、具体的には、1×1019cm-3、1×1020cm-3、1×1021cm-3などであってもよい。ドーピング濃度を上記の範囲内に制御することで、パッシベーション性能の向上に寄与できる。
【0089】
いくつかの実施形態では、リン拡散により電池背面に形成されたリンケイ酸ガラス層、及びホウ素拡散により電池正面に形成されたホウケイ酸ガラス層を除去する。
【0090】
工程S40:リンドープ多結晶シリコン層の表面に第2パッシベーション層70を形成する。
【0091】
いくつかの実施形態では、リンドープ多結晶シリコン層の表面に第2パッシベーション層70を形成する。第2パッシベーション層70としては、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、アルミナ等の単一層や、窒素リン含有酸化層構造が挙げられるが、これらに限定されない。
【0092】
例えば、第2パッシベーション層70は、窒化シリコンから構成されても良い。窒化シリコン薄膜層は、反射防止膜として機能することが可能であり、且つ良好な絶縁性、緻密性、安定性、及び不純物イオンに対するマスク能力を有する。また、窒化シリコン薄膜層は、半導体基板に対してパッシベーション作用を有し、太陽電池の光電変換効率を著しく改善することができる。
【0093】
工程S50:ホウ素拡散層20の表面に第1パッシベーション層30を形成し、第1パッシベーション層30に第1電極40を形成し、第2パッシベーション層70に第2電極80を形成する。
【0094】
いくつかの実施形態では、第1パッシベーション層30としては、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、アルミナ等の単一層や、窒素リン含有酸化層構造が挙げられるが、これらに限定されない。当然ながら、第1パッシベーション層30は、他の種類のパッシベーション層を採用することも可能であり、本発明で、第1パッシベーション層30の具体的な材質を限定しない。上記第1パッシベーション層30は、半導体基板に対して良好なパッシベーション効果を奏することができ、電池の変換効率の向上に寄与する。いくつかの実施形態では、半導体基板の正面に、アルミニウムドープ銀ペーストを用いて正面バスバーと正面フィンガーとを印刷し、乾燥して第1電極40を形成する。またいくつかの実施形態では
、半導体基板の背面に、銀ペーストを用いて背面バスバーと背面フィンガーとを印刷し、乾燥して第2電極80を形成する。また、最後に、乾燥した電池シートを焼成して太陽電池を製造してもよい。
【0095】
なお、第1電極40は、第1パッシベーション層30を通ってホウ素拡散層20とオーミックコンタクトを形成する。第2電極80は、第2パッシベーション層70を通ってリンドープ多結晶シリコン層60とオーミックコンタクトを形成する。リンドープ多結晶シリコン層60と、窒素リン含有酸化層(第1酸化副層501、第2酸化副層502及び第3酸化副層503)とは、TopCon電池構造を構成する。
【0096】
本発明においては、第1電極40及び第2電極80の具体的な材質について限定されない。例えば、第1電極40は銀電極又は銀/アルミニウム電極であってもよく、第2電極80は銀電極であってもよい。
【0097】
本発明においては、第1パッシベーション層30、第2パッシベーション層70の具体的な種類について限定されない。例えば、窒化シリコン層、酸窒化ケイ素層、アルミナ層等であってもよい。
【0098】
本発明の第3の態様において、第1シート、第1パッケージ層、電池ストリング構造体、第2パッケージ層及び第2シートを順に積層して、形成した積層構造をラミネート処理することにより、リード線と電池シートとを電気的に接続してなる光起電力モジュールをさらに提供する。
【0099】
いくつかの実施形態では、光起電力モジュールは、導電性バンドにより接続される複数の太陽電池を含む太陽電池ストリングを複数含み、太陽電池は、上記した太陽電池又は上記製造方法で製造した太陽電池であってもよい。
【0100】
いくつかの実施形態では、複数の太陽電池は、同一の平面に位置し、且つ一定の間隙(小さな間隙)又は無間隙の形態で電気的に接続される。
【実施例0101】
以下、複数の実施例により、本発明の主旨についてさらに説明する。なお、本発明は、以下の具体的な実施例に限定されない。特許請求の範囲を逸脱しない範囲内に適宜変更して実施することができる。
【0102】
<実施例1>
工程S10:表面テクスチャリング処理されたN型半導体基板10の正面に対してホウ素拡散を行って、ホウ素拡散層20を形成した。
【0103】
工程S20:プラズマ増強化学蒸着法により単結晶シリコンの表面に酸化層を堆積した。
【0104】
工程S21:POCl源をオンにし(この物質は液体であり、Oに伴って輸送する必要がある。)、Oの流量を12L/minとして5分間導入した後、Oの導入を停止し、温度を800℃に維持しながら60s反応させてリンドープ酸化層を形成した。
【0105】
工程S22:POCl源をオフにし、Oの流量を10L/minに維持して5分間導入した後、Oの導入を停止し、温度を500℃に維持しながら450s反応させて酸化ケイ素層を形成した。
【0106】
工程S23:ドープ源としてOとNOの混合ガスを用いて、混合体積比をO:NO=3:1とし、混合ガスの流量を10L/minとして5min導入した後、混合ガスの導入を停止し、温度を500℃に維持しながら60s反応させて窒素ドープ酸化層を形成した。
【0107】
工程S30:プラズマ増強化学蒸着法を用いてリンドープ酸化層の表面に多結晶シリコン層を堆積し、多結晶シリコン層に対して第2リン拡散を行ってリンドープ多結晶シリコン層を形成した。
【0108】
工程S40:リンドープ多結晶シリコン層の表面に第2パッシベーション層を形成し、第2パッシベーション層に第2電極を形成した。
【0109】
<実施例2>
工程S10:表面テクスチャリング処理されたN型半導体基板10の正面に対してホウ素拡散を行ってホウ素拡散層20を形成した。
【0110】
工程S20:プラズマ増強化学蒸着法を用いて単結晶シリコン表面に酸化層を堆積した。
【0111】
工程S21:POCl源をオンにし(この物質は液体であり、Oに伴って輸送する必要がある。)、O流量を10L/minとして4min導入した後、Oの導入を停止し、温度を780℃に維持しながら55s反応させてリンドープ酸化層を形成した。
【0112】
工程S22:POCl源をオフにし、Oの流量を9L/minに維持しながら5min導入した後、Oの導入を停止し、温度を510℃に維持しながら450s反応させて酸化ケイ素層を形成した。
【0113】
工程S23:ドープ源としてOとNOの混合ガスを使用し、混合体積比をO:NO=4:1とし、混合ガスの流量を10L/minとして5min導入した後、混合ガスの導入を停止し、温度を530℃に維持しながら60s反応させて窒素ドープ酸化層を形成した。
【0114】
工程S30:プラズマ増強化学蒸着法を用いてリンドープ酸化層の表面に多結晶シリコン層を堆積し、多結晶シリコン層に対して第2リン拡散を行ってリンドープ多結晶シリコン層を形成した。
【0115】
工程S40:リンドープ多結晶シリコン層の表面に第2パッシベーション層を形成し、第2パッシベーション層に第2電極を形成した。
【0116】
<実施例3>
工程S10:表面テクスチャリング処理されたN型半導体基板10の正面に対してホウ素拡散を行ってホウ素拡散層20を形成した。
【0117】
工程S20:プラズマ増強化学蒸着法により単結晶シリコンの表面に酸化層を堆積した。
【0118】
工程S21:POCl源をオンにし(この物質は液体であり、Oに伴って輸送する必要がある。)、Oの流量を10L/minとして5min導入した後、Oの導入を停止し、温度を820℃に維持しながら60s反応させてリンドープ酸化層を形成した。
【0119】
工程S22:POCl源をオフにし、Oの流量を8L/minに維持しながら5min導入した後、Oの導入を停止し、温度を530℃に維持しながら450s反応させて酸化ケイ素層を形成した。
【0120】
工程S23:ドープ源としてOとNOの混合ガスを使用し、混合体積比をO:NO=2:1とし、混合ガスの流量を9L/minとして5min導入した後、混合ガスの導入を停止し、温度を510℃に維持しながら60s反応させて窒素ドープ酸化層を形成した。
【0121】
工程S30:プラズマ増強化学蒸着法を用いてリンドープ酸化層の表面に多結晶シリコン層を堆積し、多結晶シリコン層を第2リン拡散してリンドープ多結晶シリコン層を形成した。
【0122】
工程S40:リンドープ多結晶シリコン層の表面に第2パッシベーション層を形成し、第2パッシベーション層に第2電極を形成した。
【0123】
<比較例1>
実施例1の工程S20~S23の代わりに、LPCVD法により半導体基板の背面に厚さが約10ÅのSiO層を生成した。具体的な条件パラメータについて、流量を15L/minとしてOを5min導入した後、Oの導入を停止し、温度を500℃に維持しながら550s反応させて酸化ケイ素層を形成した。上記以外には、実施例1と同様に実行した。
【0124】
上記実施例1~3及び比較例1の性能実験の結果を下表1に示す。
【0125】
【表1】
【0126】
上記表1から分かるように、本発明の実施例1~3は、N型半導体基板の背面10とリンドープ多結晶シリコン層60との間に、窒素含有酸化ケイ素層501、二酸化ケイ素層502とリン含有酸化ケイ素層503からなる窒素リン含有酸化層構造を順に設けるものであり、窒素ドーピングとリンドーピングにより、電池の開路電圧とフィルファクタを著しく向上し、さらに太陽電池の変換効率を向上した。本発明の実施例で製造した太陽電池の変換効率は、比較例1よりも多くとも0.31%増加したことから、本発明により製造した太陽電池は太陽エネルギーの利用及び太陽電池の発展に極めて重要な意義を有することがわかる。
【0127】
以上に説明したのは、本発明の好適な実施形態にすぎず、本願の範囲を限定するものではない。当業者であれば、本発明の構成に対して種々の変更や調整を行うことができる。本発明の主旨と原則を逸脱しない範囲内に行ったいかなる修正、同等置換、改善などは、
本願の保護範囲内に含まれると理解するべきである。
【0128】
本願は、以上に好ましい実施形態により開示されているが、特許請求の範囲を制限するものではなく、いかなる当業者も、本願の技術思想から逸脱せずに、若干の可能な変更や修正をすることができるため、本願の保護範囲は、添付の特許請求の範囲に定める範囲に準ずるべきである。
【符号の説明】
【0129】
10-N型半導体基板;
20-ホウ素拡散層;
30-第1パッシベーション層;
40-第1電極;
50-窒素リン含有酸化層;
501-第1酸化副層;
502-第2酸化副層;
503-第3酸化副層;
60-リンドープ多結晶シリコン層;
70-第2パッシベーション層;
80-第2電極。
図1
図2
図3
図4