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特開2023-78192転動装置を組み込んだ機構を自律的に再配置する転動装置および方法
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  • 特開-転動装置を組み込んだ機構を自律的に再配置する転動装置および方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023078192
(43)【公開日】2023-06-06
(54)【発明の名称】転動装置を組み込んだ機構を自律的に再配置する転動装置および方法
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/02 20200101AFI20230530BHJP
   G05D 1/00 20060101ALI20230530BHJP
   A47B 91/06 20060101ALI20230530BHJP
【FI】
G05D1/02 H
G05D1/00 B
A47B91/06
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023031679
(22)【出願日】2023-03-02
(62)【分割の表示】P 2019538511の分割
【原出願日】2018-01-29
(31)【優先権主張番号】17153510.7
(32)【優先日】2017-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】516231257
【氏名又は名称】ウィール.ミー アクティーゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】100077838
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 憲保
(74)【代理人】
【識別番号】100129023
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 敬
(72)【発明者】
【氏名】ティメネス,アットレ
(57)【要約】
【課題】表面に沿って第1の位置から第2の位置に機構を自律的に移動させるために、家具、可動壁などの機構に組み込まれるように適合する転動装置および方法を提供する。
【解決手段】表面に沿って第1の位置から第2の位置に機構を自律的に移動させることを可能にする転動装置(10)および方法。これは、移動する機構に転動装置(10)を組み込み、転動装置(10)に以下の装置:即ち、ワイヤレス受信機、制御装置、位置取得手段、転動要素(20)を駆動するための駆動手段、および電子装置に電力を供給する電源を配置することによって可能になる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機構内に組み込まれ、表面に沿って第1の位置から第2の位置に前記機構を自律的に移動可能にするシステムを構成する転動装置(rolling arrangement)(10)であって、前記転動装置(10)は、
ハウジングと、
前記ハウジングの第1の端部に配置され、前記転動装置(10)が移動されるときに、前記表面と接触するように構成された転動要素(20)を含み、さらに、
前記転動装置(10)は、
上部位置と下部位置との間で移動できるように前記ハウジング内で往復運動可能に配置され、且つ、前記転動要素(20)に接続されたピストンと、
互いに接続されたワイヤレス受信機(30)および制御装置(40)と、
前記制御装置(40)に接続され、その周囲に対する前記転動装置(10)の前記第1の位置を取得する位置手段(50)と、さらに、
前記制御装置および前記転動要素(20)に接続され、前記位置手段(50)によって取得された前記第1の位置と受信ワイヤレス信号に従って前記転動要素(20)の前記移動を駆動および制御する駆動手段(60)と、を含み、前記受信ワイヤレス信号は移動命令および前記第2の位置を含んでおり、さらに、
前記ワイヤレス受信機(30)と、前記制御装置(40)と、前記駆動手段(60)とに接続された電源(70)と、を備え、
前記電源(70)と、前記ワイヤレス受信機(30)と、前記制御装置(40)と、前記位置手段(50)と、前記駆動手段(60)は、前記ピストンと共に、前記転動装置(10)の前記ハウジング内に配置され、且つ前記転動装置は家具の脚又は可動壁要素内に一体化されていることを特徴とする転動装置。
【請求項2】
前記制御装置(40)に接続されたワイヤレス送信機(80)をさらに備える、請求項1に記載の転動装置。
【請求項3】
前記制御装置(40)および前記転動要素(20)に接続された前記駆動手段(60)は、一つ以上のボールまたはチェーンを備えることを特徴とする、請求項1または2に記載の転動装置。
【請求項4】
表面に沿って第1の位置から第2の位置に少なくとも一つの機構を自律的に移動させる方法であって、
前記少なくとも一つの機構に少なくとも二つの転動装置(10)を組み込んでシステムを構成し、前記転動装置(10)が、前記少なくとも一つの機構が移動するときに前記表面と接触するように配置し、
前記各転動装置(10)は、ハウジングと、前記ハウジングの第1の端部に配置され、前記転動装置(10)が移動されるときに、前記表面と接触するように構成された転動要素(20)を含み、さらに、
互いに接続されたワイヤレス受信機(30)および制御装置(40)と、
前記制御装置(40)に接続され、前記転動装置(10)の周辺に対する前記第1の位置を取得する位置手段(50)と、さらに、
前記制御装置(40)および前記転動要素(20)に接続され、前記転動要素(20)の移動を駆動および制御する駆動手段(60)を含み、
前記方法は、
前記少なくとも二つの転動装置(10)のうちの第1の転動装置を、前記少なくとも二つの転動装置(10)のうちの第2の転動装置の移動を制御するマスタとして配置することを含み、
前記ワイヤレス受信機を用いて、前記制御装置(40)内で移動命令を受信し、
前記位置手段を用いて、前記転動装置(10)の周辺位置に対する前記第1の位置を取得し、
前記転動要素(20)の前記移動を制御するために、前記制御装置(40)内で少なくとも一つの前記受信した移動命令を実行し、
前記転動要素(20)の移動は、前記第1の位置と、ルートおよび第2の位置を含む前記移動命令とに基づいており、
前記少なくとも一つの機構に組み込まれた前記転動装置(10)を前記ルートにしたがって、前記第1の位置から前記第2の位置に移動させることを特徴とする、方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法であって、
前記少なくとも一つの機構は、
エリア内で移動する機構のグループに含まれる二つまたはそれ以上の機構を含み、前記転動装置は、前記機構のグループにそれぞれ組み込まれた複数の転動装置(10)のうちの第1の転動装置であり、
前記方法は、さらに、前記複数の転動装置(10)のうちの第1の転動装置を、前記複数の転動装置(10)のうちの第2の転動装置の移動を制御するマスターとして動作させるように、配置することを含む、ことを特徴とする、方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、前記機構のグループの移動は、予め設定されたシナリオに従って制御されることを特徴とする、方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、少なくとも一つの前記予め設定されたシナリオは:
前記グループに含まれる転動装置(10)の第1の位置情報を記録し、
前記グループに含まれる転動装置(10)の第2の位置情報を記録し、
前記転動装置(10)の移動経路および移動順序を設定することによって確立されることを特徴とする、方法。
【請求項8】
前記転動装置(10)の移動は、遠隔制御を用いて制御されることを特徴とする、請求項4乃至7の何れかに記載の方法。
【請求項9】
前記遠隔制御は、音声、ジェスチャーまたは触覚入力によって制御される、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に沿って機構(device)を移動させるために、機構に組み込まれ、且つ遠隔制御される転動装置(rolling arrangement)に関する。本発明はさらに、予め設定されたシナリオに従って機構のグループ(group of devices)を自動的に移動させるための方法およびシステムに関する。移動される機構は、例えば家具および壁要素とすることができる。
【背景技術】
【0002】
多くの場合、家具が配置されているフロアスペースにアクセスするには、家具を移動する必要がある。その理由は、例えば、家具が置かれている場所のフロアスペースを清掃するためである。家具を移動しやすくするために、家具には様々な種類の車輪を設けることができる。
【0003】
移動を容易にする車輪を備えることができる他の種類の機構もある。これらの機構は、例えば軽量仕切り壁(lightweight partition wall)である。これを移動することで間取り図のレイアウトを変更することができる。同様の構造要素を移動するのが望ましい場合がある他のケースも考えられる。
【0004】
本出願人は、家具、可動壁など、機構を表面に沿って移動させるための機構に組み込むことができ、物理的条件や持ち上げる能力に関係なく誰でも使用できる転動装置が組み込まれている機構を以前開発した。この装置は、特許文献1に記載されている。
【0005】
前記転動装置は、例えば家具の脚に配置された円筒状スリーブ装置と、円筒状スリーブ装置内に配置された移動可能なピストンとを含んでいる。ボール形または球形のホイールがピストンに配置されている。ピストンは、バネを備えクリックシステム(click system)の助けを借りて、上部位置(upper position)と下部位置(lower position)との間を移動する。ピストンが下部位置にあるとき、立設している家具を床の上で転動させることができ、一方、ピストンが上部位置にあるとき、ホイールは円筒状スリーブ装置の内側にあり、転動装置が配置されている家具の脚は床の上に立設する。したがって、家具にわずかな力が加えられたときに、家具を床に不意に転動することがなく、所望の位置に立設させることができる。ソリューションは完全に機械的に動作する。
【0006】
出願人はこの概念をさらに発展させ、転動装置を有するピストンを上部位置と下部位置との間で移動する自動アクチュエータシステム(automatic actuator system)を有する転動要素(rolling element)を提供した。上部位置は受動的な静止位置であり、下部位置は表面に沿って転動装置を動かすためのアクティブな位置である。アクチュエータはワイヤレスで制御できる。
【0007】
上述のように、遠隔操作しながら転動装置を上部位置と下部位置との間を移動できるが、表面上の様々な位置の間を移動するために転動装置を所望の方向に押したり誘導したりする必要があった。
【0008】
本発明は、概念をさらに発展させたものであり、ある位置から別の位置に、転動装置を自動的に移動するように制御される。
【0009】
物体を操作および移動するための様々な装置が、先行技術に記載されている。一例は、車輪付きの台車である。これは、様々な物体の運搬や移動に使用できる。台車は遠隔操作することも、移動しているエリアのフロアのガイドなどに従って、予め設定された経路をたどることもできる。
【0010】
別の例は、Zhidong Wangおよび他、出版物の「複数の行動に基づくロボットを使用した協働物体操作の実現」、1996年11月1、4-8日大阪国際会議Intelligent Robots and Systems’96,IROS 96、Proceedings of the 1996 L EEE/RSJ、1996年11月4日(1996-11-04)米国ニューヨークIEEE米国vol.1、310-317ページ、XP010212395、DOI:10.1109/IROS.1996.570693、ISBN:978-0-7803-3213-3に掲載されている。
【0011】
このソリューションでは、機構または物体をある位置から別の位置に移動するために、いくつかの協働する外部ロボットが必要である。外部ロボットは、最初に移動する機構まで移動する必要があり、物体と相互作用することで適切なグリップを得てから、次に、それらの動きを調整して物体を移動する。
【0012】
先行技術の解決策は複雑であり、部屋内のいくつかの物体を同時に効率的に移動および再配置するには適していない。また移動する物体が占めるスペースに加えてスペースをとる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】ノルウェー特許第316760号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、表面に沿って第1の位置から第2の位置に機構を自律的に移動させるために、家具、可動壁などの機構に組み込まれるように適合する転動装置を提供することである。
【0015】
また、表面に沿って第1の位置から第2の位置に少なくとも一つの機構を自律的に移動させる方法を提供することも目的である。これは、本発明による転動装置を移動する機構に組み込むことにより可能である。本発明の一実施形態では、第1の位置から第2の位置に機構のグループ(group of device)を自律的に移動させる方法が説明される。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、表面に沿って第1の位置から第2の位置に機構を自律的に移動させるために機構に組み込まれる転動装置によって規定され、転動装置が移動するときに表面に接触するように転動装置のハウジングの第1の端部に配置された転動要素を備える。
転動装置のハウジング内に配置された以下の装置をさらに備えるものである。即ち、転動装置は、
互いに接続されたワイヤレス受信機および制御装置と、
制御装置に接続され、その周囲に対する転動装置の位置を取得する位置手段(position means)と、さらに、
位置手段によって取得された第1の位置に従って転動要素の移動(movement)を駆動および制御するために、制御装置および転動要素に接続された駆動手段と、移動命令および第2の位置を含む受信ワイヤレス信号と、さらに、
ハウジングに配置された機構に接続された電源を備える。
【0017】
転動装置のさらなる特徴は、特許請求の範囲に規定される。
【0018】
本発明は、表面に沿って第1の位置から第2の位置に少なくとも一つの機構を自律的に移動させる方法によってさらに規定され、以下のステップを含む。即ち、この方法は、
転動装置のハウジングの第1の端部に配置され、前記転動装置が動くときに表面と接触する転動要素を含む転動装置を用意し、
移動する機構に転動装置が組み込まれ、機構を移動するときに表面と接触するように配置され、さらに転動装置は、転動装置のハウジング内に配置される以下の装置:即ち、
互いに接続されたワイヤレス受信機および制御装置と、制御装置に接続され、その周囲に対する転動装置の位置を取得する位置手段と、制御装置および転動要素に接続され、転動要素の移動を駆動および制御する駆動手段と、を含んでおり、
前記方法は、
ワイヤレス受信機手段による転動装置の制御装置内での移動命令を受信し、
転動装置内の位置手段に、その周囲に対する最初の現在位置を取得させ、
転動要素の移動(movement)を制御するために制御装置で受信した移動命令を実行し、取得された転動装置の第1の位置および経路と第2の位置を含む受信された移動命令に基づいて移動し、さらに、
少なくとも一つの転動装置が組み込まれた機構を経路に応じて、第1の位置から第2の位置に移動させるステップを備える。
【0019】
方法のさらなる特徴は、特許請求の範囲に規定されている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明による転動装置を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
家具や壁要素などの移動機構用の様々な種類の転動装置が存在している。ただし、これらの装置では、機構を再配置および移動する自己駆動型の自律的な方法は提供できない。
【0022】
本発明の目的は、表面に沿って第1の位置から第2の位置に機構を自律的に移動させるために、家具、可動壁などの機構に組み込まれるように適合する転動装置を提供することである。
【0023】
本発明は、本発明に係る転動装置に含まれる様々な機構を示す図を参照して、本開示による実施形態の非限定的な例と共に、さらに説明される。
【0024】
転動装置10は、表面に沿って第1の位置から第2の位置に機構を自律的に移動させるための機構に接続されている。
【0025】
図1は、本発明による転動装置に含まれる様々な装置を示す。転動装置10は、ハウジングと、ハウジングの第1の端部に配置され、機構が移動するときに表面と接触するように配置された転動要素20と、を備える。ハウジングは、転動装置10に含まれる様々な装置を保持するために部分的に中空である。
【0026】
転動装置10は、ハウジング内に配置された一組の様々な装置をさらに備える。
【0027】
一つの装置はワイヤレス受信機30であり、別の装置は制御装置40である。これらは、受信機30がワイヤレス制御信号を受信できるように互いに信号によって接続されている。
【0028】
転動装置10のハウジング内に配置された別の装置は、制御装置40に接続され、その周囲に対する転動装置10の位置を取得するための位置手段50である。位置を取得する様々な方法がいくつかある。
【0029】
一例は、転動装置10の位置を監視する外部装置から位置を決定することである。次いで、位置は転動装置10の位置手段50に伝達されることができる。これには、様々な公知の方法を使用することができる。一例は、カメラ、好ましくは転動装置10に接続された機構を監視する3Dカメラを使用することである。別の例は、転動装置10または移動される機構に接続されたRFIDチップを使用することである。その後、位置は超音波法によって検出される。さらに別の方法は、三角測量法によってBluetooth(登録商標)屋内測位(indoor positioning)を適用することである。これは、転動装置10にBluetooth送信機を装備し、転動装置10に接続された機構が設置された部屋に少なくとも3つのアンテナを配置することにより可能になる。これらはすべて周知の方法であり、ここではこれ以上の説明は省略する。
【0030】
駆動手段60は、制御装置40および転動要素20にさらに接続され、位置手段50によって取得された第1の位置と、移動命令(movement instruction)および第2の位置を含む受信ワイヤレス信号に従って転動要素20の移動を駆動および制御する。
【0031】
転動要素20を移動するための様々な種類の公知の駆動手段が利用可能である。一実施形態では、転動要素は、モータに接続された一つ以上のボールによって駆動される。別の実施形態では、転動要素20は、モータに接続されたチェーンによって駆動される。モータは、電気モータまたは電磁モータであるのが好ましい。
【0032】
ハウジング内に配置された様々な電子装置(electronic device)を駆動するための電源70は、様々な方法で提供することができる。一実施形態では、電子装置に接続された電池によって電力が提供される。別の実施形態では、電力は、時間変動する電場(time-varying electric)、磁場、または電磁場に基づいて、ワイヤレス電力伝送手段(wireless power transfer means)によって提供される。電界エネルギーを受け取るための受信機は、この実施形態では、転動装置10のハウジングに配置される。受信したエネルギー場は、ハウジングに配置された様々な電子装置の電源として使用される電流に変換される。本発明の別の実施形態では、ワイヤレス電力伝送は、ハウジング内に配置された電子装置に接続された電池を充電するために使用される。
【0033】
本発明の一実施形態では、転動装置10は、ワイヤレス送信機80をさらに備える。この実施形態は、いくつかの一組の転動装置10の同時操作を調整するのに役立つ。転動装置10の手段によって少なくとも一つの機構を自律的に移動させるための本発明の方法を説明する場合、どのように実装させるかを以下に説明する。
【0034】
一実施形態では、転動装置10は、ハウジング内で往復運動可能に配置されたピストンをさらに備え、ピストンがシリンダ内の上部位置と下部位置との間を移動できるようにする。この実施形態では、転動要素20はピストンに接続されている。この装置の詳細は、出願人の特許文献1に記載されている。特許文献1は、本発明による転動装置の可能な機械的特徴を開示している。
【0035】
一実施形態では、転動装置10は、例えば椅子またはテーブルなどの家具に組み込まれている。別の実施形態では、可動壁要素(movable wall element)の断面に組み込まれている。
【0036】
転動装置10が移動させる機構に組み込まれると、それらは共に、移動される機構に取り付けられた転動装置を含むシステムを構成し、少なくとも一つは上述の本発明による転動装置10である。
【0037】
移動される機構が椅子である場合、各椅子の脚には転動装置が装着され、これらの内、三つは、転動要素のみを含む受動装置(passive device)であり、一つは本発明による能動転動装置10である。他の転動装置の構成は、例えば二つの受動転動装置と二つの能動転動装置10とすることも可能である。この構成によって、椅子の移動をより適切に制御できる。
【0038】
上述のように、転動装置10は、転動装置10の制御装置40に対する移動命令を受信するためのワイヤレス受信機30を備えている。命令は、例えば、様々なシナリオを制御するためのアプリケーションがインストールされたリモートコントロール、タブレット、またはスマートフォンを介して送信されてもよい。
【0039】
本発明は、表面に沿って第1の位置から第2の位置に例えば家具および壁要素などの少なくとも一つの機構を自律的に移動させる方法によってさらに定義され、この方法はいくつかのステップを含む。
【0040】
最初のステップは、移動させる機構に転動装置を設け(providing)、且つ組み込む(integrating)ことであり、その少なくとも一つが、上述による転動装置10である。
【0041】
次のステップは、ワイヤレス受信機30によって転動装置10の制御装置40で移動命令を受信することである。受信機30に接続された制御装置40は、駆動命令(driving instruction)を含む送信された順序を解釈し、それに作用するマイクロコントローラ(micro-controller)を含むことができる。
【0042】
転動装置10の制御装置40が移動命令を受信すると、位置装置50から周囲に対するその位置を要求する。これが現在および第1の位置である。
【0043】
現在の位置が確立されると、転動要素20の移動を制御する移動命令が制御装置40で実行される。移動は、転動装置10の前記取得された第1の位置と、経路および第2の位置を含む受信された移動命令に基づいている。
【0044】
これに基づいて、方法の最後のステップは、少なくとも一つの転動装置10を取り付けた機構を、経路に従って第1の位置から第2の位置に移動することである。
【0045】
本発明の方法の一実施形態では、少なくとも二つの転動装置10を、表面に沿って第1の位置から第2の位置に移動される機構に接続される。例えばタブレットから移動命令を全ての転動装置10に送信される。
【0046】
一実施形態では、選択された転動装置10は、移動される機構に接続された他の転動装置10の動きを制御するマスター装置(master device)として機能するように設定される。他の転動装置はスレーブ装置(slave device)として機能し、マスター装置からの命令に応答する。マスター装置は、受信したワイヤレス信号に応じて特定の経路をセットし、特定の経路に応じて移動を追跡するように命令する制御信号をスレーブ装置に送信する。
【0047】
本発明によるいくつかの転動装置10が、同時に制御されるように設定された場合、各転動装置には固有のIDが与えられる。このようにして、すべての転動装置10は個々の移動命令を受信することができる。
【0048】
一方の転動装置10が他の転動装置10のマスターとして機能している場合、同じ機構に接続された他の転動装置10のそれぞれを制御する。
【0049】
本発明の別の実施形態は、予め設定されたシナリオに従っていくつかの機構のグループの移動を制御する方法を含む。そのような機構は、例えば、椅子、テーブル、可動壁を含む。
【0050】
この構成を設定すると、グループ内の機構の一つに接続された一つの転動装置10は、他の機構のマスターとして機能するように設定される。したがって、グループに含まれる他の機構の移動を調整する。このようにして、機構の様々な移動と計画を備えた様々なシナリオを確立できる。
【0051】
本発明の一実施形態によれば、移動される機構のグループに含まれる機構の移動および経路を定義するシナリオを作成および記録するために、以下のステップが実行される。
【0052】
第1のステップは、グループに含まれる全ての転動装置10の第1の位置情報を記録することである。この位置情報は、移動する機構が配置される部屋を表示する画面で視覚化することができる。
【0053】
次のステップは、グループに含まれる全ての転動装置10の第2の位置情報を記録することである。これは、画面に視覚化された機構を移動することで実行できる。タッチ画面(touch screen)の場合、様々な機構を新しい場所にドラッグすることができる。このステップの後、グループに含まれる全ての機構の第1および第2の位置が確立される。
【0054】
この方法のステップは、グループに含まれる他の転動装置10のマスターとして機能する転動装置10の一つを選択することである。他のステップに対するこのステップの順序は必須ではない。
【0055】
最後のステップは、転動装置10の移動経路と移動順序を設定することである。これは、各転動装置10の固有のIDを使用することで可能である。
【0056】
手順全体のセットアップを視覚化して、例えばBluetoothを使用してワイヤレス信号を送信することで遠隔制御(remote control)にも役立つ例えばタブレット上で設定することができる。タブレットにインストールされたソフトウェアアプリケーションは、特定のシナリオに応じて、部屋と、部屋内で第1の位置から第2の位置に移動する壁や家具の位置を表示することができる。ユーザーは、例えば第1の位置から第2の位置に家具や壁をドラッグ/ドロップするジェスチャーによって、画面に表示される様々な機構をドラッグアンドドロップすることができる。プログラムは、各機構の開始位置と停止位置に基づいて、機構が自律的に移動するときにたどる特定の経路を作成することができる。これに基づいて、様々なシナリオまたはシーンを作成して装置に保存できる。
【0057】
他の種類の様々なセットアップのシナリオを制御することも可能であり、例えば、音声やジェスチャー、およびタッチ画面を備えた装置以外の装置での触覚入力などがある。
【0058】
以下は、本発明をどのように実施および使用できるかのいくつかの例である。
【0059】
一つのシナリオによれば、本発明による解決策は、教室内の机および椅子を自動的に再配置するために使用することができる。特定のシナリオに応じた、例えば単一またはグループのセットアップなど、机と椅子の様々なセットアップの構成を設定することができる。
【0060】
これは、教室の床を清掃するときにも役立つ。清掃を行う場合、清掃シナリオを実行することで、全ての机と椅子を通常の教室のセットアップから、机と椅子が壁に沿って配置される新しいセットアップに移動するので、床に空きスペースを残すことができる。このシナリオは、自律的に移動する机や椅子と対話するようにプログラムされた清掃ロボットと組み合わせることができる。
【0061】
本発明による解決策を使用できる別の可能なシナリオは、会議の種類に応じて様々なセットアップのシナリオを容易に設定できる会議場である。可動壁は、例えば、一つの大きな部屋や四つの小さ目の部屋など、部屋の数を規定することができる。無限の構成と可能性がある。
【0062】
本発明による転動装置を使用できるさらに別の例は、一つ以上の転動装置をパレットに組み込ませることである。これによって移動および制御可能なパレットが提供される。パレットは通常、様々な種類の商品の一時保管用に使用される。パレットを取り扱うときは、それらをある位置から別の位置に移動する。これは通常、トラックで行われる。本発明による転動装置をパレットに組み込むことにより、外部装置によってパレットを扱ったり、移動したりする必要がなく、表面に沿ってある位置から別の位置に移動するように制御することができる。上述の様々なシナリオに従って、転動装置を有するいくつかのパレットを制御することができる。
【0063】
別の例は、表面に沿ってある場所から別の場所に様々な製品を輸送するための支持構造または骨組み(framework)に一つ以上の転動装置を組み込むことである。
【0064】
転動装置は、屋内および屋外の両方で使用することができる。例えば、リグや船の甲板など沖合設備(offshore installation)など、陸上および沖合で使用することができる。
【0065】
本発明による転動装置は、機構を製造するときに機構に組み込むことができ、または元々可動することを意図されていない機構に後付けすることができる。本発明は、建物の屋内および屋外の両方で使用することができる。
【0066】
転動装置の様々な使用例から理解されるように、当業者は、転動装置10によって表面に沿って第1の位置から第2の位置へ機構の自律的な移動を可能になる本発明の他の可能な応用分野を理解するであろう。
図1
【手続補正書】
【提出日】2023-03-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構に組み込まれ、表面に沿って第1の位置から第2の位置に前記機構を自律的に移動させる転動装置(rolling arrangement)(10)であって、前記転動装置のハウジングの第1の端部に配置され、前記転動装置(10)が動かされるときに、前記表面と接触する転動要素(rolling element)を含み、
前記転動装置(10)は、前記転動装置(10)の前記ハウジング内に配置された以下の装置:即ち、
互いに接続されたワイヤレス受信機(30)および制御装置(control device)(40)と、
前記制御装置(40)に接続され、その周囲に対する前記転動装置(10)の前記位置を取得する位置手段(50)と、さらに、
前記制御装置および前記転動要素(20)に接続され、前記位置手段(50)によって取得された前記第1の位置に従って前記転動要素(20)の移動を駆動および制御する駆動手段(60)と、移動命令および前記第2の位置を含む受信ワイヤレス信号と、を含み、さらに、
前記ハウジング内に配置された前記装置に接続された電源(70)と、を備えることを特徴とする、転動装置。
【請求項2】
前記制御装置(controller)(40)に接続されたワイヤレス送信機(80)をさらに備える、請求項1に記載の転動装置。
【請求項3】
記転動要素(20)に接続された前記駆動手段(60)は、一つ以上のボールまたはチェーンを備えることを特徴とする、請求項1または2に記載の転動装置。
【請求項4】
シリンダー内の上部位置と下部位置との間で前記ピストンが移動でき、且つ前記転動要素(20)が前記ピストンに接続されている前記ハウジング内で往復運動可能に配置されたピストンをさらに備えることを特徴とする、請求項1乃至3の何れか一項に記載の転動装置。
【請求項5】
前記転動装置が家具に組み込まれることを特徴とする、請求項1乃至4の何れか一項に記載の転動装置。
【請求項6】
前記転動装置が可動壁要素に組み込まれることを特徴とする、請求項1乃至5の何れか一項に記載の転動装置。
【請求項7】
前記転動装置がパレットに組み込まれることを特徴とする、請求項1乃至6の何れか一項に記載の転動装置。
【請求項8】
表面に沿って第1の位置から第2の位置に少なくとも一つの機構を自律的に移動させる方法であって、前記方法は以下のステップ:即ち、
転動装置(10)であって、前記転動装置(10)が動くときに表面と接触するように、前記転動装置(10)のハウジングの第1の端部に配置された転動要素(20)を含む、転動装置(10)を用意し、
移動されるべき前記機構に前記転動装置(10)を組み込み、前記機構が移動するときに前記表面と接触するように配置し、
さらに前記転動装置(10)は、前記転動装置(10)の前記ハウジング内に配置される以下の装置:即ち、互いに接続されたワイヤレス受信機(30)および制御装置(40)と、前記制御装置(40)に接続され、その周囲に対する前記転動装置の前記位置を取得する位置手段(50)と、前記制御装置(40)および前記転動要素(20)に接続され、前記転動要素(20)の移動を駆動および制御する駆動手段(60)と、を含み
記ワイヤレス受信機(30)による前記転動装置(10)の前記制御装置(40)内で移動命令を受信し、
前記転動装置(10)内の前記位置手段(50)に、その周囲に対する最初の現在位置を取得させ、
前記転動要素(20)の前記移動(movement)を制御するために、前記制御装置(40)で受信した移動命令を実行し、前記取得された前記転動装置(10)の第1の位置および経路と第2の位置を含む前記受信された前記移動命令に基づいて移動し、
前記機構内に組み込まれた前記少なくとも一つの転動装置(10)を前記経路に応じて、前記第1の位置から前記第2の位置に移動ることを特徴とする、方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、さらに、
移動される前記機構内に少なくとも二つの転動装置(10)を組み込み、さらに、
前記機構に接続された他の前記転動装置(10)の前記動きを制御するマスターとして機能するように、一つの転動装置(10)を配置することを特徴とする、方法。
【請求項10】
請求項に記載の方法であって、さらに、
リア内で移動する機構のグループに含まれる二つ以上の機構に転動装置(10)を組み込み、さらに、
前記グループに含まれる他の前記機構に接続された他の前記転動装置(10)の動きを制御するマスターとして機能する装置に接続された一つの転動装置(10)を配置することを特徴とする、方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、いくつかの前記機構のグループの移動は、予め設定されたシナリオに従って制御されることを特徴とする、方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法であって、前記シナリオは:
前記グループに含まれる転動装置(10)の第1の位置情報を記録し、
前記グループに含まれる転動装置(10)の第2の位置情報を記録し、
前記グループに含まれる他の転動装置(10)のマスターとして機能する一つの転動装置(10)を選択し、さらに、
前記転動装置(10)の移動経路および移動順序を設定することによって確立されることを特徴とする、方法。
【請求項13】
前記転動装置(10)の動きを、遠隔制御を用いて制御されることを特徴とする、請求項乃至12の何れかに記載の方法。
【請求項14】
前記遠隔制御は、音声、ジェスチャーまたは触覚入力によって制御される、請求項13に記載の方法。