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特開2023-78234テキーラまたは他の蒸留アガベ発酵製品からのMAO阻害剤の改善された分離方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023078234
(43)【公開日】2023-06-06
(54)【発明の名称】テキーラまたは他の蒸留アガベ発酵製品からのMAO阻害剤の改善された分離方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/105 20160101AFI20230530BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20230530BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20230530BHJP
   A61K 36/88 20060101ALI20230530BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230530BHJP
   C12F 3/00 20060101ALI20230530BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20230530BHJP
   C12N 9/99 20060101ALN20230530BHJP
【FI】
A23L33/105
A61P25/16
A61P25/24
A61K36/88
A61P43/00 111
C12F3/00
A23L2/00 F
A23L2/52
C12N9/99
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023036145
(22)【出願日】2023-03-09
(62)【分割の表示】P 2019554842の分割
【原出願日】2018-04-05
(31)【優先権主張番号】62/601,946
(32)【優先日】2017-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】504378331
【氏名又は名称】ロアー ホールディング エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブロシア ロバート
(57)【要約】      (修正有)
【課題】アガベ由来の蒸留酒から、モノアミン酸化酵素A(MAO A)および/またはモノアミン酸化酵素B(MAO B)阻害剤を含む組成物を得る方法を提供する。
【解決手段】逆浸透により発酵アガベ抽出物の蒸留物からMAO Aおよび/またはMAO B阻害剤の改善された組成物を得る方法であって、蒸留物を逆浸透システムの供給リザーバ内で希釈し、希釈した蒸留物を分離膜を通してリサイクルし、透過液と各サイクルで供給リザーバに戻される濃縮液とを得る工程、および続いて得られる各濃縮液のリサイクルを継続して、1.5%未満のアルコール度数を有する最終濃縮液を取得し、それにより阻害剤の改善された組成物を得る工程を含んでなる方法である。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
逆浸透により発酵アガベ抽出物の蒸留物からMAO Aおよび/またはMAO B阻害剤の改善された組成物を得る方法であって、以下の工程:
該蒸留物を逆浸透システムの供給リザーバ内で希釈し、希釈した該蒸留物を、分離膜を通してリサイクルし、透過液と各サイクルで前記供給リザーバに戻される濃縮液とを得る工程;および
続いて得られる各濃縮液のリサイクルを継続して、1.5%未満のアルコール度数(ABV)を有する最終濃縮液を取得し、それにより該阻害剤の改善された組成物を得る工程;
を含んでなる方法。
【請求項2】
前記濃縮液を前記膜を越えてリサイクルする直前に、リサイクルされた濃縮液を蒸留水で希釈することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記供給リザーバ内のリサイクルされた濃縮液を蒸留水で希釈することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記逆浸透システムが、膜への圧力を高めるために少なくとも2つのポンプを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記膜が約100ダルトンの分子量カットオフを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法により得られた、MAO Aおよび/またはMAO Bの阻害剤を含む組成物。
【請求項7】
1.5%未満のABVを有する、発酵アガベ抽出物の蒸留物に由来するMAO Aおよび/またはMAO Bの阻害剤を含む組成物。
【請求項8】
請求項6に記載の組成物を含有する食品または飲料。
【請求項9】
MAO阻害に応答する対象者の症状を治療する方法であって、その治療を必要とする対象者に、有効量の請求項6に記載の組成物または該組成物を含有する飲料もしくは食品を投与することを含んでなる方法。
【請求項10】
前記症状がパーキンソン病またはうつ病である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記対象者が不可逆的MAO阻害剤に耐えられない(intolerant)、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
MAO阻害に応答する対象者の症状を治療する方法であって、その治療を必要とする対象者に、有効量の請求項7に記載の組成物または該組成物を含有する飲料もしくは食品を投与することを含んでなる方法。
【請求項13】
前記症状がパーキンソン病またはうつ病である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記対象者が不可逆的MAO阻害剤に耐えられない(intolerant)、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
蒸留した発酵アガベ抽出物からMAO Aおよび/またはMAO Bの阻害剤を回収する方法であって、該抽出物を制御された真空/温度環境に減圧で十分な時間さらして残留物と蒸発物を得る工程、および該残留物中の該阻害剤を回収する工程を含んでなる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年4月5日に出願された米国仮特許出願第62/601,946号の優先権を主張するものである。上記特許出願の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本発明は、アガベ(agave)由来の蒸留酒からのモノアミン酸化酵素Aおよびモノアミン酸化酵素B(MAO AおよびMAO B)の阻害剤を含む組成物を提供する際の改善点に関する。
【背景技術】
【0003】
米国特許出願公開第2016/0074343号は、テキーラからのおよびプルケからのMAO AおよびMAO Bの阻害剤をかなりの濃度で含有する組成物の製造を記載している。これらの阻害剤は揮発性であり、テキーラの発酵と蒸留中におよびプルケの発酵中に形成される可能性があるため、これらの阻害剤の活性を維持しながらアルコールを除去する方法として逆浸透およびスピニングカラム(spinning column)の技術が述べられている。しかしながら、これらのプロセスの詳細は提供されていない。本発明は、特に、テキーラまたは他の蒸留アガベ発酵抽出物からエタノールを除去すると同時に、かなりの濃度のMAO Aおよび/またはMAO Bの阻害剤を含む、実質的にエタノールフリーの組成物を提供するための一連の改善されたプロセスを提供する。
【0004】
MAO阻害剤は気分高揚剤、抗うつ剤、およびパーキンソン病を含む様々な他の疾患の治療剤として使用できることが知られているので、本発明の組成物はこれらの状況において有用である。
【発明の概要】
【0005】
発明の開示
本発明は、発酵アガベ抽出物から調製された蒸留酒中にMAO阻害剤が存在することを利用したものである。MAO阻害剤は、発酵の間に形成されるか、蒸留もしくは熟成またはこれらの組み合わせの間に形成される。真空にすることでこれらの市販の蒸留酒からアルコールを除去すると、MAO阻害活性の少なくとも一部が失われるため、こうした揮発性成分を保存するプロセスにより蒸留酒から所望の組成物を調製する必要がある。このようなプロセスには、逆浸透、スピニングコーンカラム(spinning cone column)、浸透気化法(pervaporation)、および揮発性化合物の減量を生じさせない他の方法が含まれる。これらのプロセスの特定の構成は、大きな利点を有することが示される。
【0006】
一態様では、本発明は、モノアミン酸化酵素の阻害剤の活性は維持されるが、アルコール含有量が1.5体積%未満、または1.0体積%もしくは0.5体積%に、しばしば0.2体積%または0.1体積%にまで、低減された組成物を得るための改善された方法、およびこの方法により得られた組成物に関する。したがって、本発明は、発酵アガベ抽出物の蒸留物からのMAO Aおよび/またはMAO Bの阻害剤の逆浸透による単離を改善する方法に関し、その方法は、該蒸留物を逆浸透システムの供給リザーバ内で希釈し、該希釈した蒸留物を、分離膜を越えてリサイクルして、透過液と各サイクルで供給リザーバに戻される濃縮液とを得る工程;および続いて得られる各濃縮液のリサイクルを継続して、1.5%未満のアルコール度数(alcohol by volume:ABV)を有する最終濃縮液を取得し、それにより該阻害剤の改善された組成物を得る工程;を含んでなる。
【0007】
本発明はまた、本発明の改善された方法により得られたMAO Aおよび/またはMAO Bの阻害剤を含む組成物、あるいは、上述したように1.5%未満のABVまたは1.0%のABVもしくは0.5%のABVもしくはさらに低いABVを有する、発酵アガベ抽出物の蒸留物に由来するMAO Aおよび/またはMAO Bの阻害剤を含む組成物に関する。本発明はまた、これらの組成物を含む食品または飲料、およびこれらのいずれかを使用してMAO阻害を必要とする症状を治療する方法に関する。本発明の組成物中のMAO阻害剤は可逆的であることが判明しているので、これらは不可逆的MAO阻害剤に耐えられない対象者を治療するのに特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、例えば汽水(brackish)または海水の浄化の場合に、透過液が保持されるように一般的に設計された従来の逆浸透プロセスを示す。
図2図2は、本発明の改変型逆浸透システムを示し、これは、圧力を調整するための追加のポンプを含み、膜からの濃縮液をリザーバにリサイクルする。
図3図3は、リザーバ内の液体の容量を維持する、図2のシステムのさらなる改変を示す。
図4図4は、蠕動ポンプからの蒸留水が膜の上流に供給される、図2のシステムのさらに別の改変を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
一実施形態では、アガベ由来のアルコール飲料は、以下の工程によって調製されている:複合糖類を加水分解するためにアガベカクタス(agave cactus:リュウゼツラン属の多肉植物)の茎を加熱する工程;加熱した茎を細かく砕きかつ圧搾してシロップを放出させる工程;該シロップを12~14のBRIXレベル(糖度)にまで水で希釈しかつ酵母を接種する工程;希釈および接種したシロップを発酵させて発酵産物を得る工程;および該発酵産物を蒸留して蒸留物を得る工程。
【0010】
あるいは、前記蒸留物は、プルケを作るために使用されるマゲイ(maguey)植物の抽出物のような、複合糖類を分解するプロセスを必要としないアガベの種から調製される。
【0011】
いかなる場合にも、アガベ植物の発酵抽出物の蒸留物は、揮発性化合物であるMAO阻害剤を除去しないプロセスで、アルコールを除去するように処理される。
【0012】
飲料出発原料からエタノールを除去するのに成功した方法の1つは、逆浸透(reverse osmosis:RO)である。約100ダルトン、すなわち90~110ダルトンの分子量カットオフを有するRO膜は、微生物によって形成されたおよび/または蒸留中に形成されたMAO類の阻害剤からエタノールを分離する。
【0013】
いくつかの実施形態では、本発明の改善された方法において、前記産物がノンアルコール性とみなされるまで、希釈とその後の循環を含む逆浸透(RO)が継続される。また、分離膜上の流れに対してさらなる圧力調整が必要になることもあり、そうした圧力調整は追加のポンプ、バルブおよびゲージを使用することによって提供される。活性MAO阻害剤は、その結果、濃縮されたノンアルコール性部分に含まれ、その後、必要に応じてビタミン、ミネラル、アミノ酸、タンパク質、またはカフェインを補充することができ、また、上記のように他の食品または飲料品に含めることができる。アルコール含有量は、1.5体積%未満または1.0体積%に低減されるが、それ以上に低減されることもある。このプロセスの例示的な説明は、以下の実施例で提供される。
【0014】
上述したように、発酵アガベ源において生成されたMAO阻害剤は、通常は蒸発分離技術によってエタノールの後についてくる、揮発性の化合物である。該化合物はMAO AまたはMAO Bの選択的阻害剤であり、MAO A:MAO Bの阻害活性の比率はブランド間でかなり異なっているが、各ブランド内では一貫している。ほとんどがMAO AとMAO Bの両方に対して阻害活性を有するが、いくつかの特定のメーカーのテキーラサンプルはMAO B活性のみを阻害した。いくつかの他のアガベ由来の製品は、MAO A活性のみを阻害することがわかった。
【0015】
食品または飲料品中で使用されるアガベ由来のMAO阻害剤の重要な側面は、以下の実施例1で実証されるように、それらが不可逆的阻害剤ではなく可逆的阻害剤である、という点である。不可逆的MAO阻害剤は、標的タンパク質を永久的に中和するというこの作用機序のため、現在使用が制限されている医薬品である。テキーラの摂取が、セロトニン症候群(過剰なMAO B阻害)または「チーズ効果」(cheese effect)(過剰なMAO A阻害)などの、不可逆的阻害剤の特徴的な副作用と関連していることは知られていない。食品または飲料に含まれた場合に摂取される(医師の管理により)制御されない量の組成物は、可逆性であることを要する。
【0016】
改善された方法で調製された前記組成物は、食品サプリメントとして使用したり、かつ/または食品もしくは医薬品に含めたり、またはうつ病、パーキンソン病もしくは全身倦怠感の治療に使用することができ、さらにコーヒーの添加物もしくは代用品として、またはカフェイン抜きの製品に使用することもできる。該組成物は、薬学的または栄養学的に許容される1種以上の担体、賦形剤および/または希釈剤と混合してもよい。こうして、一般に、該組成物は、ジュースまたは他のソフトドリンク(例えば、コーラまたはフルーツ風味のソーダ)に含めることができ、または直接摂取することもできる。また、該組成物は、非調理の液体、例えばサラダドレッシングなど、の食料品に含めて、サラダの固形成分と一緒に摂取されてもよい。対象者に摂取または投与される組成物の量は、治療すべき症状の性質、ならびに該組成物それ自体に含めるために決定されたMAO阻害剤の濃度に大きく依存する。様々な医学的兆候に有用なMAO阻害剤のレベルは当技術分野で知られており、こうしたガイドラインに従うことができる。食品サプリメントとして使用するには、それは栄養士または他の専門家の判断の問題である。
【0017】
治療される対象は一般にヒトであるが、家畜やペットなどの他の哺乳類も恩恵を受けることができる。したがって、本発明の改善された方法により得られた前記組成物は、薬学的組成物および獣医学的組成物中で使用され得る。マウスモデルなどの実験動物モデルも対象として使用することができる。
【0018】
ROを使用する実施形態では、Osmonics E2/EZ2シリーズ(GE water社)などの、市販の浄水システムが、発酵アガベ植物源中のエタノールからMAO阻害剤を分離するために改変され、以下で説明される。真ちゅう部品をステンレス鋼に交換し、流路を変更し、電子的流量制御部品を取り外すことができる。改変型ROシステムは、低圧で動作しながらアガベ由来のMAO阻害剤をエタノールから分離する;これは、従来のアルコール除去ROシステムよりも少ないエネルギーで済むという利点がある。溶液の浸透圧は溶質の濃度に直接関係しており、逆浸透システムが機能するためには、膜全体にかかる圧力が溶液の浸透圧より高くなければならない。
【0019】
図1に示した改変前のGE Waterシステムは、膜全体への165~250psiの動作範囲で汽水を処理する能力がある;これは、海水の処理に使用される1000~2000psiで動作するシステムと比較して、低圧であると認められる。GE Waterユニットなどの低圧浄水システムでは、原料供給(1)が都市水道水の供給に見られる圧力(30~50psi)に等しい最小圧力でROポンプ(2)に送られる必要がある。ROポンプは、原料の圧力を高めて膜(3)に供給し、膜を通過して移動する水(透過液)(4)は一般に飲用として回収されるが、膜を通過しない溶液(濃縮液)(5)は廃棄される。
【0020】
本発明においては、膜からの濃縮液を原料供給の方向に戻すために従来のシステムの流路が変更された。
【0021】
以下の実施例には、実質的にアルコールフリーであるにもかかわらず、モノアミン酸化酵素の揮発性阻害剤を含む組成物を得るための方法の改良点が具体的に説明される。これらは限定的ではなく、例示的である。場合によっては、市販の逆浸透装置に一般的に装備されている単一のポンプに加えて、適切な圧力を調整するために更にポンプが追加される。ゲージおよび/またはバルブを含めることもできる。さらに、これらのシステムは、膜を通過するごとに濃縮液をリザーバにリサイクルするように再設計され、その結果、リザーバに残る濃縮液はアルコール比率がより低くなるが、目的の阻害剤を含むようになる。ある例では、リザーバ内に含まれる液体のレベルは、所望のレベルに維持される。他の例では、追加の水が膜のすぐ上流に供給される。一般的に、蒸留されたアガベ発酵物は逆浸透プロセスの前に希釈される。
【0022】
他の手順には、以下に示されるように、減圧下で該阻害剤を回収する工程が含まれる。さらなる一例では、プルケを生じさせる発酵アガベ種も目的の阻害剤を含むことが示されているため、本発明の方法は発酵プルケから得られた蒸留物に適用可能であることが実証される。プルケの蒸留物は、本発明の適用可能性に関係しない理由で市販されていない。
【0023】
以下の実施例では、次の材料および手順を使用した:
エタノール測定
エタノール測定は、Analytical Biochemistry 132, 418-423 (1983)に記載の方法であった。マスターミックス(master mix)は100回の測定ごとに以下を含む:
蒸留水 13.7ml
0.6Mトリス/0.4Mリシン緩衝液 18ml
28mM NAD(N6522 Sigma社) 2ml
アルコールデヒドロゲナーゼ(5.4mg/ml) 0.5ml-ウェルに加える直前に添加
【0024】
この測定では、光学密度プレートリーダーおよびそれに適合する96ウェル透明プレートを使用する。各ウェルに、342μlのマスターミックスを最初に添加し、次に18μlずつの標準液とサンプルを200倍および400倍の希釈で添加する。標準曲線は、100%エタノールを5000倍に希釈して、fs、1:2、1:4、1:8に段階的に希釈することにより作成する。プレートを室温で4~10分間インキュベートし、OD340nmでプレートリーダーにより読み取る。
【0025】
MAO活性測定
MAO測定は、Bioorganic & Medicinal Chemistry 13 (2005) 6212-6217に記載の方法であった。マスターミックスは100回の測定ごとに以下を含む:
蒸留水 2ml
リン酸カリウム緩衝液(0.1M, pH7.4, KClで等張化) 4.8ml
0.75mMキヌラミン二臭化水素酸塩 0.3ml
【0026】
組換えMAO AおよびBをCorning社から入手する。該タンパク質を解凍し、チューブごとに20μlずつ分注し、-80℃で再凍結する。測定のために、各タンパク質のチューブを冷凍庫から取り出し、580μlの緩衝液を加えてから、9μlを各測定に添加する。
【0027】
蛍光測定に適合する黒色プレートを使用し、各ウェルにサンプル20μlを加え、次にマスターミックス71μlを加え、続いてMAO組換えタンパク質9μlを加える。該プレートを密閉し、37℃のインキュベータ内に30分間入れる。インキュベーション後、シーラーを取り外して、50μlの2N NaOHを加える。該プレートを蛍光分光光度計で励起320/405発光にて読み取る。
【実施例0028】
実施例1
アガベ蒸留物由来のMAO阻害剤の可逆性
テキーラサンプルを、組換えMAO AまたはBと共に、37℃で20分間プレインキュベーションして、または、プレインキュベーションしないで、MAO阻害活性について測定した。その後、測定プロトコルに従って37℃で30分間インキュベーションする前に、全ての測定対象に対してキヌラミン基質を添加した。
【0029】
可逆的阻害剤は、表1に見られるように、該タンパク質とのプレインキュベーションで阻害活性に変化を示さない。不可逆的阻害剤は、該化合物とタンパク質との化学的相互作用のため、プレインキュベーションで増大した阻害を示す。
【0030】
【表1】
【0031】
実施例2
改変型ROシステムを図2に示す。このシステムでは、3Lのカークランドアネホテキーラ(Kirkland anejo tequila)を、遠心力ポンプ(7)(HP75SS-425-21211-100-36-1T6, Price Pumps社)に接続されたリザーバ(6)内で蒸留水により希釈して300Lの容量にした。遠心力ポンプは希釈されたテキーラ原料をROポンプ(8)に40psiで供給し、ROポンプは膜(9)への原料供給圧力を高めた。膜ハウジングを出た後、濃縮液(10)はリザーバに戻されて連続的にリサイクルされたが、透過液(11)(エタノールと水)は分析後に廃棄した。濃縮液の流れを制限するバルブによって膜にかかる圧力を調整し、膜とバルブの間に設置されたゲージによって該圧力を監視した。濃縮液の容量は、膜全体への220psiの圧力下での連続的なリサイクルにより減少したが、MAO阻害剤とエタノールの濃度は100倍希釈のものに比べて増加した。濃縮液の量が元の3L量に等しくなるまで、該装置を運転した。
【0032】
このROハードウェア構成と動作プロトコルの背後にある戦略は、MAO阻害剤化合物をエタノールから分離することに成功したものの、テキーラの最初の100倍希釈を必要とし、また、望ましい0.4%ABVよりもはるかに高い1.8%ABVの濃縮液を得た。おそらく、エタノール削減の限界は、濃縮液の浸透圧と該システムの低い動作圧力に関係している。該装置の300Lから3Lへの容量削減運転中に、19Lずつの透過液を含む15個の容器を回収して、容器1、5、11、15でエタノール測定を実施した。その結果を表2に示す。
【0033】
実施例3
別の改良型ROシステムを図3に示す。このシステムでは、蠕動ポンプ(15)(Cole Parmer社)に接続された、フロートスイッチ(14)(Omega Engineering社, LVK-130 x2;ソリッドステートリレーSSRL2)を装着した40Lリザーバ(6)内で、3Lのカークランドアネホテキーラを30Lに希釈した。リザーバ内の液量が30Lを下回ったときに、蠕動ポンプを作動させて蒸留水(16)を注入することによりリザーバ内の液量を30Lに維持するようにフロートスイッチを調整した。この方法でMAO阻害剤はエタノールから分離され、最終濃縮液中のエタノール濃度は実施例2と比較してかなり低かった。19Lずつの透過液を含む15個の容器を回収して、全ての容器でエタノール測定を実施した。容器1、5、11、15の結果を表2に示す。
【0034】
この方法により、テキーラの10倍初期希釈物を使用して、低いシステム圧力でエタノールからMAO阻害剤化合物を分離することに成功し、285Lの蒸留水を処理した後に0.1%ABVの濃縮液が得られた。この方法は、エタノール濃度が上記のテキーラを1:100希釈した場合よりもさらに低かったため、実施例1と比べて大幅に改善された。
【0035】
実施例4
別の生産方法を図4に示す。このシステムは実施例3のように構成されたが、ただし、蒸留水を、リザーバに導入する代わりに、矢印(17)で示すように、蠕動ポンプにより膜の直前に導入した。MAO阻害剤はこの方法でもエタノールからうまく分離され、最終濃縮液中のエタノール濃度は実施例2と比較してかなり低かったが、エタノール濃度は実施例3ほど低くはなかった。この方法では、処理中に実施例3での285Lではなく228Lの水が使用された。透過液の各容器を回収して、全ての容器でエタノール測定を実施した。容器1、5、11、15の結果を表2に示す。
【0036】
この戦略は、テキーラの10倍初期希釈物を使用して、低いシステム圧力でエタノールからMAO阻害剤化合物を分離することに成功し、228Lの蒸留水を処理した後に0.4%ABVの濃縮液が得られた。
【0037】
【表2】
【0038】
実施例5
減圧下でのアガベ由来MAO阻害剤の単離
MAO阻害剤は揮発性化合物であって、通常はエタノールと共蒸発するが、以下の手順に従って減圧の条件下でエタノールから分離することができる:
【0039】
1mlのアネホテキーラ(40%ABV)を含む1.6mlポリプロピレン製マイクロチューブ(microfuge tube)を、遠心真空濃縮装置(Savant Speed Vac)に200トル(Torr)の真空下40℃で30分間入れた;この条件により750μlの最終容量が得られた。酵素アッセイを使用して、エタノール濃度を16%ABVで測定し、濃縮サンプルとテキーラの希釈液をMAO AおよびB阻害剤について測定した。25倍希釈テキーラサンプル(1.6%ABV)はMAO A活性の0%阻害およびMAO B活性の8%阻害を示し、10倍濃縮サンプル(1.6%ABV)はMAO Aの52%阻害およびMAO Bの79%阻害を示す。これは、MAO阻害剤を減圧下でエタノールから分離できることを実証している。
【0040】
発酵アガベ源中のエタノールからMAO阻害剤を分離するこの方法は、エタノール除去のスピニングコーンカラム(SCC)または浸透気化技術を使用した商業生産の成功という概念実証(proof of concept)を示している。MAO阻害剤は真空/温度に応じてエタノールから選択的に単離できる揮発性化合物であるため、最終製品のMAO阻害剤の比率などで望ましい結果を最大限に高めるように、諸条件を調整することが可能であろう。
【0041】
実施例6
ブルーウェーバーアガベ以外のMAO阻害剤を生成するアガベ種
アガベ由来のMAO阻害剤は、マゲイ(maguey)植物またはアメリカーナアガベ(Americana agave)から生産されたアグアミール(aguamiel)(ハニーウォーター(honey water))の発酵産物中にも存在する。アグアミールからの発酵飲料は、プルケとして知られており、テキーラの生産に限定されるブルーウェーバーアガベ(Blue Weber agave)以外のアガベから生産することができる。プルケの生産では、マゲイ植物の樹液を採取して、すぐに発酵させるが、それは、この樹液が単純な発酵性糖分を含むためである。微生物の報告には、酵母に加えて好熱菌(thermo bacteria)(エタノール産生菌)が含まれる。
【0042】
MAO阻害剤は、最初に発酵マッシュから固形物をろ過した後、上記方法の1つによりエタノールから分離される。発酵された供給源でのMAO阻害活性を評価するために、プルケを缶入りの低温殺菌飲料(5.4%ABV)として商品供給業者(Hacienda 1881)から購入した。MAOアッセイのためにそれぞれ1.35%ABVに希釈したプルケおよびカークランドアネホテキーラからのMAO AおよびBに対する阻害活性を測定した。テキーラはMAO Aの5%阻害を示し、プルケは8%阻害を示す。MAO B活性は、テキーラおよびプルケにより、それぞれ22%および30%阻害される。これらの結果は、国際法によりテキーラの生産に限定されておりかつメキシコでのみ栽培されているブルーウェーバーアガベ以外の供給源から、アガベ由来の阻害剤を生産する可能性を示している。アメリカーナアガベは、アメリカ南西部の多くの地域だけでなく、その他の地域にも見られる。
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2023-04-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アガベ由来のアルコール飲料からモノアミン酸化酵素Aおよび/またはモノアミン酸化酵素Bの阻害剤を回収する方法であって、該飲料を制御された真空/温度環境に減圧で十分な時間さらして残留物と蒸発物を得る工程、および該残留物中の該阻害剤を回収する工程を含んでなる方法。
【請求項2】
アルコール飲料が、アガベの抽出物の発酵産物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
アルコール飲料が、アガベの抽出物の発酵産物の蒸留物である、請求項1に記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0027
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0027】
蛍光測定に適合する黒色プレートを使用し、各ウェルにサンプル20μlを加え、次にマスターミックス71μlを加え、続いてMAO組換えタンパク質9μlを加える。該プレートを密閉し、37℃のインキュベータ内に30分間入れる。インキュベーション後、シーラーを取り外して、50μlの2N NaOHを加える。該プレートを蛍光分光光度計で励起320/405発光にて読み取る。
いくつかの実施形態を以下に示す。
項1
逆浸透により発酵アガベ抽出物の蒸留物からMAO Aおよび/またはMAO B阻害剤の改善された組成物を得る方法であって、以下の工程:
該蒸留物を逆浸透システムの供給リザーバ内で希釈し、希釈した該蒸留物を、分離膜を通してリサイクルし、透過液と各サイクルで前記供給リザーバに戻される濃縮液とを得る工程;および
続いて得られる各濃縮液のリサイクルを継続して、1.5%未満のアルコール度数(ABV)を有する最終濃縮液を取得し、それにより該阻害剤の改善された組成物を得る工程;
を含んでなる方法。
項2
前記濃縮液を前記膜を越えてリサイクルする直前に、リサイクルされた濃縮液を蒸留水で希釈することをさらに含む、項1に記載の方法。
項3
前記供給リザーバ内のリサイクルされた濃縮液を蒸留水で希釈することをさらに含む、項1に記載の方法。
項4
前記逆浸透システムが、膜への圧力を高めるために少なくとも2つのポンプを含む、項1に記載の方法。
項5
前記膜が約100ダルトンの分子量カットオフを有する、項1に記載の方法。
項6
項1に記載の方法により得られた、MAO Aおよび/またはMAO Bの阻害剤を含む組成物。
項7
1.5%未満のABVを有する、発酵アガベ抽出物の蒸留物に由来するMAO Aおよび/またはMAO Bの阻害剤を含む組成物。
項8
項6に記載の組成物を含有する食品または飲料。
項9
MAO阻害に応答する対象者の症状を治療する方法であって、その治療を必要とする対象者に、有効量の項6に記載の組成物または該組成物を含有する飲料もしくは食品を投与することを含んでなる方法。
項10
前記症状がパーキンソン病またはうつ病である、項9に記載の方法。
項11
前記対象者が不可逆的MAO阻害剤に耐えられない(intolerant)、項9に記載の方法。
項12
MAO阻害に応答する対象者の症状を治療する方法であって、その治療を必要とする対象者に、有効量の項7に記載の組成物または該組成物を含有する飲料もしくは食品を投与することを含んでなる方法。
項13
前記症状がパーキンソン病またはうつ病である、項12に記載の方法。
項14
前記対象者が不可逆的MAO阻害剤に耐えられない(intolerant)、項12に記載の方法。
項15
蒸留した発酵アガベ抽出物からMAO Aおよび/またはMAO Bの阻害剤を回収する方法であって、該抽出物を制御された真空/温度環境に減圧で十分な時間さらして残留物と蒸発物を得る工程、および該残留物中の該阻害剤を回収する工程を含んでなる方法。