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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023078249
(43)【公開日】2023-06-06
(54)【発明の名称】圧電素子の検査方法
(51)【国際特許分類】
   H10N 30/87 20230101AFI20230530BHJP
   H10N 30/01 20230101ALI20230530BHJP
【FI】
H10N30/87
H10N30/01
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037207
(22)【出願日】2023-03-10
(62)【分割の表示】P 2019542047の分割
【原出願日】2018-09-10
(31)【優先権主張番号】P 2017174832
(32)【優先日】2017-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003683
【氏名又は名称】弁理士法人桐朋
(72)【発明者】
【氏名】小畑 博基
(72)【発明者】
【氏名】植谷 政之
(72)【発明者】
【氏名】池田 竜介
(57)【要約】      (修正有)
【課題】圧電素子に電圧を印加して圧電素子の電気特性評価を行う圧電素子の検査方法を提供する。
【解決手段】方法は、圧電素子(10)を平板状の微粘着シート(30)上に保持する第1ステップと、金属製もしくはセラミックス製のベース材(32)に貼り合わされている微粘着シート(30)上に保持された圧電素子(10)に、電圧印加装置(40)を使用して電圧を印加して、順番に圧電素子(10)の電気特性評価を行う第2ステップと、を有する。微粘着シート(30)の物性値は、表面抵抗が1016オーム以上、ヤング率が5.0~10.0MPa、熱伝導率が0.05W/mK以上、保持力が0.50kgf/cm以下、耐熱性が90℃以上であることが好ましい。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電素子(10)に電圧を印加して前記圧電素子(10)の電気特性評価を行う圧電素子の検査方法において、
前記圧電素子(10)の下面を、孔を有さない平板状の微粘着シート(30)上に貼着させて保持する第1ステップと、
前記微粘着シート(30)上に保持された前記圧電素子(10)に電圧を印加して、前記圧電素子(10)の電気特性評価を行う第2ステップと、を有し、
前記微粘着シート(30)の物性値は、表面抵抗が1016オーム以上、ヤング率が5.0~10.0MPa、熱伝導率が0.05W/mK以上、保持力が0.50kgf/cm以下、耐熱性が90℃以上であることを特徴とする圧電素子の検査方法。
【請求項2】
請求項1記載の圧電素子の検査方法において、
平板状の前記微粘着シート(30)は、ベース材(32)に貼り合わされ、
前記ベース材(32)は、少なくとも前記微粘着シート(30)が貼り合わされる面が平坦で、且つ、前記面内に前記微粘着シート(30)が貼り合わされることを特徴とする圧電素子の検査方法。
【請求項3】
圧電素子(10)に電圧を印加して前記圧電素子(10)の電気特性評価を行う圧電素子の検査方法において、
前記圧電素子(10)の下面を、平板状の微粘着シート(30)上に貼着させて保持する第1ステップと、
前記微粘着シート(30)上に保持された前記圧電素子(10)に電圧を印加して、前記圧電素子(10)の電気特性評価を行う第2ステップと、を有し、
前記微粘着シート(30)の物性値は、表面抵抗が1016オーム以上、ヤング率が5.0~10.0MPa、熱伝導率が0.05W/mK以上、保持力が0.50kgf/cm以下、耐熱性が90℃以上であり、
平板状の前記微粘着シート(30)は、ベース材(32)に貼り合わされ、
前記ベース材(32)は金属製又はセラミックス製であり、
前記ベース材(32)は、少なくとも前記微粘着シート(30)が貼り合わされる面が平坦で、且つ、前記面内に前記微粘着シート(30)が貼り合わされることを特徴とする圧電素子の検査方法。
【請求項4】
請求項3記載の圧電素子の検査方法において、
前記微粘着シートは孔を有さないことを特徴とする、圧電素子の検査方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の圧電素子の検査方法において、
前記圧電素子(10)は、上面に第1端子(14a)及び第2端子(14b)が形成され、
前記第1ステップは、前記圧電素子(10)のうち、前記上面と対向する前記下面を前記微粘着シート(30)に保持し、
前記第2ステップは、前記圧電素子(10)のうち、前記第1端子(14a)及び前記第2端子(14b)間に電圧を印加することを特徴とする圧電素子の検査方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の圧電素子の検査方法において、
前記圧電素子(10)のサイズは、縦0.2~0.4mm、横0.8~1.2mm、厚み0.05~0.2mmであることを特徴とする圧電素子の検査方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の圧電素子の検査方法において、
前記圧電素子(10)は、前記電気特性評価のために電圧を印加した際に、電界2.0~4.0kV/mmでd31方向の歪みが1500~4000ppm発生することを特徴とする圧電素子の検査方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の圧電素子の検査方法において、
前記微粘着シート(30)は、前記圧電素子(10)を保持し、且つ、電圧印加時に発生する前記圧電素子(10)の変位を阻害しないことを特徴とする圧電素子の検査方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の圧電素子の検査方法において、
前記微粘着シート(30)は、厚みtaと誘電正接tanθの関係が(a)~(d)であることを特徴とする圧電素子の検査方法。
(a)0.03mm≦ta≦0.05mmのとき、tanθ≦0.20
(b)0.05mm<ta≦0.10mmのとき、tanθ≦0.15
(c)0.10mm<ta≦0.20mmのとき、tanθ≦0.10
(d)0.20mm<ta≦0.50mmのとき、tanθ≦0.05
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電素子の電気特性評価を行う圧電素子の検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、圧電素子の特性検査において、圧電素子に電圧を印加して圧電素子に変位を生じさせることで、圧電素子の電気特性評価(不良検査等)を行うようにしている。例えば、特許文献1では、複数の圧電素子を粘着シートに貼り付けた状態で、圧電素子の電気特性評価を行う。また、特許文献2では、圧電素子をトレイの凹部に入れて、圧電素子の電気特性評価を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-190457号公報
【特許文献2】特開2014-181126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の方法は、圧電素子に電圧を印加する際に発生する圧電素子の変位が粘着シートによって妨げられる。このため、電圧印加時に圧電素子中で生じる応力が大きくなり、その応力によって圧電素子にクラックが入るおそれがある。
【0005】
特許文献2に記載のトレイを用いた方法は、図7Aに示すように、圧電素子100をトレイ102の凹部104内に出し入れしやすいように、凹部104の平面サイズを圧電素子100の平面サイズよりもわずかに大きくする必要がある。そのため、トレイ102の工程間の運搬やトレイ102を設備へ装着する動作の衝撃で、圧電素子100の表裏反転、取扱い中での圧電素子100の紛失が発生するおそれがある。また、図7Bに示すように、圧電素子100に電圧を印加する際に、凹部104内で圧電素子100の位置ずれが生じて、プローブ106と端子108とのコンタクトが安定せず、検査不良が発生するおそれもある。
【0006】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、下記効果を奏する圧電素子の検査方法を提供することを目的とする。
(a)複数の圧電素子が整列載置されたトレイに衝撃を与えても、圧電素子の整列状態が保持された状態で特性検査を行うことができる。
(b)電圧印加時に発生する圧電素子の変位(変形)を阻害することがない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1] 本発明に係る圧電素子の検査方法は、圧電素子に電圧を印加して前記圧電素子の電気特性評価を行う圧電素子の検査方法において、前記圧電素子の下面を、孔を有さない平板状の微粘着シート上に貼着させて保持する第1ステップと、前記微粘着シート上に保持された前記圧電素子に電圧を印加して、前記圧電素子の電気特性評価を行う第2ステップとを有し、前記微粘着シートの物性値は、表面抵抗が1016オーム以上、ヤング率が5.0~10.0MPa、熱伝導率が0.05W/mK以上、保持力が0.50kgf/cm以下、耐熱性が90℃以上であることを特徴とする。
【0008】
これにより、圧電素子が微粘着シートに保持されることから、複数の圧電素子が整列載置されたトレイに衝撃を与えても、圧電素子の整列状態が保持された状態で特性検査を行うことができる。しかも、電圧印加時に発生する圧電素子の変位を阻害することがない。
【0009】
[2] 本発明において、平板状の前記微粘着シートは、ベース材に貼り合わされ、前記ベース材は、少なくとも前記微粘着シートが貼り合わされる面が平坦で、且つ、前記面内に前記微粘着シートが貼り合わされてもよい。これにより、微粘着シートが空調の風等によってしわが寄ったり、一部が裏返しになるということがなく、安定して複数の圧電素子を保持することができる。また、ベース材の材質は、加工精度や加熱時の熱伝導の観点から金属製がより好ましく、熱伝導の観点から、アルミニウムがさらに好ましい。
【0010】
[3] 本発明の圧電素子の検査方法は、圧電素子に電圧を印加して前記圧電素子の電気特性評価を行う圧電素子の検査方法において、前記圧電素子の下面を、平板状の微粘着シート上に貼着させて保持する第1ステップと、前記微粘着シート上に保持された前記圧電素子に電圧を印加して、前記圧電素子の電気特性評価を行う第2ステップと、を有し、前記微粘着シートの物性値は、表面抵抗が1016オーム以上、ヤング率が5.0~10.0MPa、熱伝導率が0.05W/mK以上、保持力が0.50kgf/cm以下、耐熱性が90℃以上であり、平板状の前記微粘着シートは、ベース材に貼り合わされ、前記ベース材は金属製又はセラミックス製であり、前記ベース材は、少なくとも前記微粘着シートが貼り合わされる面が平坦で、且つ、前記面内に前記微粘着シートが貼り合わされることを特徴とする。
【0011】
[4] 本発明の圧電素子の検査方法において、前記微粘着シートは孔を有さなくてもよい。
【0012】
[5] 本発明において、前記圧電素子は、上面に第1端子及び第2端子が形成され、前記第1ステップは、前記圧電素子のうち、前記上面と対向する前記下面を前記微粘着シートに保持し、前記第2ステップは、前記圧電素子のうち、前記第1端子及び前記第2端子間に電圧を印加してもよい。
【0013】
第1ステップで、圧電素子のうち、一方の面と対向する他方の面が微粘着シートに保持されることから、第2ステップにおいて、圧電素子のうち、一方の面に形成された第1端子及び第2端子間に電圧を印加して特性検査することができる。すなわち、圧電素子を微粘着シートに保持させた状態で、圧電素子の特性検査を容易に行うことができる。
【0014】
[6] 本発明において、前記圧電素子のサイズは、縦0.2~0.4mm、横0.8~1.2mm、厚み0.05~0.2mmであることが好ましい。これにより、特性検査において、圧電素子に割れ等は生じず、歩留まりの向上を図ることができる。
【0015】
[7] 本発明において、前記圧電素子は、前記特性検査のために電圧を印加した際に、電界2.0~4.0kV/mmでd31方向(電極面に沿った方向)の歪みが1500~4000ppm発生してもよい。
【0016】
[8] 本発明において、前記微粘着シートは、前記圧電素子を保持し、且つ、電圧印加時に発生する前記圧電素子の変位を阻害しないことが好ましい。
【0017】
これにより、圧電素子に電圧を印加した際に、電界2.0~4.0kV/mmでd31方向の歪みが1500~4000ppm発生する場合であっても、圧電素子に発生する変位を阻害することなく、微粘着シートに保持させて特性検査を行うことができる。
【0018】
[9] 本発明において、前記微粘着シートは、厚みtaと誘電正接tanθの関係が(a)~(d)であることが好ましい。
(a)0.03mm≦ta≦0.05mmのとき、tanθ≦0.20
(b)0.05mm<ta≦0.10mmのとき、tanθ≦0.15
(c)0.10mm<ta≦0.20mmのとき、tanθ≦0.10
(d)0.20mm<ta≦0.50mmのとき、tanθ≦0.05
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る圧電素子の製造方法によれば、下記効果を奏する。
(a)複数の圧電素子が整列載置されたトレイに衝撃を与えても、圧電素子の整列状態が保持された状態で特性検査を行うことができる。
(b)電圧印加時に発生する圧電素子の変位を阻害することがない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本実施の形態に係る圧電素子の検査方法によって特性検査される圧電素子の一例を示す斜視図である。
図2】本実施の形態に係る圧電素子の検査方法を示すフローチャートである。
図3図3Aはベース材に貼り付けた微粘着シートの一例を示す斜視図であり、図3B図3AにおけるIIIB-IIIB線上の断面図である。
図4図4Aはベース材に貼り付けた微粘着シート上に複数の圧電素子を保持させた状態を一部省略して示す断面図であり、図4Bは微粘着シート上に保持された複数の圧電素子に対して電圧を印加している状態を一部省略して示す断面図である。
図5】サンプル1~22における内訳と判定結果を示す表1である。
図6】表1の厚みと誘電正接(tanθ)との関係をグラフ化して示す図である。
図7図7Aは従来のトレイを使用した場合の不都合点の一例を示す説明図であり、図7Bは従来のトレイを使用した場合の不都合点の他の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る圧電素子の検査方法の実施の形態例を図1図6を参照しながら説明する。なお、本明細書において、数値範囲を示す「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味として使用される。
【0022】
本実施の形態に係る圧電素子の検査方法の検査対象である圧電素子10は、例えば図1に示すように、ペロブスカイト構造等から構成された素子本体12と、素子本体12の例えば上面及び下面に形成された一対の電極14a及び14bとを有する。圧電素子10は、例えば素子本体12が積層構造とされ、一対の電極14a及び14bがくし歯状に形成された構造を有する。この場合、素子本体12の上面に一対の電極14a及び14bが現れるように形成される。
【0023】
そして、本実施の形態に係る圧電素子の検査方法は、図2のステップS1に示すように、圧電素子10(図1参照)を平板状の微粘着シート30(図3A及び図3B参照)上に保持する。その後、ステップS2において、微粘着シート30上に保持された圧電素子10に電圧を印加して、圧電素子10の変形や固有振動数を測定することで、圧電素子10の電気特性評価を行う。
【0024】
なお、圧電素子10は、例えば以下の手順を踏むことで作製される。すなわち、グリーンシートと電極膜とで構成されたグリーン積層体を焼成して、図示しない大型の圧電体基板を作製する。その後、大型の圧電体基板を圧電処理した後、複数の個片に分離することで、複数の圧電素子10を作製する。もちろん、大型の圧電体基板を複数の個片(圧電体基板片)に分離した後に、各圧電体基板片を圧電処理して複数の圧電素子10を作製してもよい。
【0025】
平板状の微粘着シート30は、図3A及び図3Bに示すように、金属製もしくはセラミックス製のベース材32に貼り合わされている。ベース材32は、少なくとも微粘着シート30が貼り合わされる面が平坦で、且つ、上記面内に微粘着シート30が貼り合わされることが好ましい。これにより、微粘着シート30が空調の風等によってしわが寄ったり、一部が裏返しになるということがなく、安定して複数の圧電素子10を保持することができる。また、ベース材32の材質は、加工精度や加熱時の熱伝導の観点から金属製がより好ましく、熱伝導の観点から、アルミニウムがさらに好ましい。
【0026】
従って、ステップS1では、例えば整列治具を使用して、図4Aに示すように、複数の圧電素子10を微粘着シート30上に整列させて保持させる。整列の仕方は、例えば複数の圧電素子10を縦方向及び横方向に並べたマトリクス状に整列させることが好ましい。また、微粘着シート30は、ベース材32を通じて、あるいは、微粘着シート30自体に衝撃を与えても、複数の圧電素子10の整列状態を維持することが好ましい。
【0027】
一方、ステップS2での検査工程は、図4Bに示すように、微粘着シート30に複数の圧電素子10を整列した状態で行う。例えば1つの電圧印加装置40を使用して、複数の圧電素子10に対して順番に電気特性の検査を行う。もちろん、複数の電圧印加装置40を繋げて、一度に、あるいは、数回に分けて複数の圧電素子10に対して電気特性の検査を行ってもよい。各圧電素子10は、電気特性の検査を行った際に、電界2.0~4.0kV/mmでd31方向(電極面に沿った方向)の歪みが1500~4000ppm発生する。
【0028】
従って、微粘着シート30は、ステップS2での特性検査の際に発生する複数の圧電素子10の歪み(変位)を阻害しない程度の保持力であることが好ましい。つまり、微粘着シート30での圧電素子10の保持は、粘着原理の1つである物理的接着(二次結合、分子間結合)に該当する。
【0029】
微粘着シート30の物性値は、表面抵抗が1016オーム以上、ヤング率が5.0~10.0MPa、熱伝導率が0.05W/mK以上、保持力が0.50kgf/cm以下、耐熱性が90℃以上であることが好ましい。なお、微粘着シート30の保持力は、0.10kgf/cm以上が好ましい。
【実施例0030】
[第1実施例]
第1実施例は、微粘着シート30の厚みta(図3B参照)と誘電正接tanθの好ましい関係を確認した。
【0031】
具体的には、サンプル1~22(微粘着シート30)を用意し、各サンプルの共振周波数(7.2~7.9MHz)での抵抗値(Ω:オーム)を測定した。各サンプルの内訳を図5の表1に示す。
【0032】
[サンプル1~3]
サンプル1~3に係る微粘着シート30は、厚みtaがいずれも0.03mmである。そして、サンプル1は、誘電正接(tanθ)が0.23で、材質がフッ素ゴムである。サンプル2は、誘電正接(tanθ)が0.20で、材質がフッ素ゴムである。サンプル3は、誘電正接(tanθ)が0.17で、材質がフッ素ゴムである。
【0033】
[サンプル4~6]
サンプル4~6に係る微粘着シート30は、厚みtaがいずれも0.10mmである。そして、サンプル4は、誘電正接(tanθ)が0.25で、材質がフッ素ゴムである。サンプル5は、誘電正接(tanθ)が0.15で、材質がフッ素ゴムである。サンプル6は、誘電正接(tanθ)が0.03で、材質がフッ素樹脂である。
【0034】
[サンプル7、8]
サンプル7及び8に係る微粘着シート30は、厚みtaがいずれも0.15mmである。そして、サンプル7は、誘電正接(tanθ)が0.25で、材質がフッ素ゴムである。サンプル8は、誘電正接(tanθ)が0.23で、材質がフッ素ゴムである。
【0035】
[サンプル9~12]
サンプル9~12に係る微粘着シート30は、厚みtaがいずれも0.20mmである。そして、サンプル9は、誘電正接(tanθ)が0.25で、材質がフッ素ゴムである。サンプル10は、誘電正接(tanθ)が0.15で、材質がフッ素ゴムである。サンプル11は、誘電正接(tanθ)が0.05で、材質がオレフィンである。サンプル12は、誘電正接(tanθ)が0.03で、材質がフッ素樹脂である。
【0036】
[サンプル13~15]
サンプル13~15に係る微粘着シート30は、厚みtaがいずれも0.30mmである。そして、サンプル13は、誘電正接(tanθ)が0.20で、材質がフッ素ゴムである。サンプル14は、誘電正接(tanθ)が0.05で、材質がオレフィンである。サンプル15は、誘電正接(tanθ)が0.03で、材質がフッ素樹脂である。
【0037】
[サンプル16~19]
サンプル16~19に係る微粘着シート30は、厚みtaがいずれも0.40mmである。そして、サンプル16は、誘電正接(tanθ)が0.15で、材質がフッ素ゴムである。サンプル17は、誘電正接(tanθ)が0.15で、材質がオレフィンである。サンプル18は、誘電正接(tanθ)が0.05で、材質がオレフィンである。サンプル19は、誘電正接(tanθ)が0.03で、材質がフッ素樹脂である。
【0038】
[サンプル20~22]
サンプル20~22に係る微粘着シート30は、厚みtaがいずれも0.50mmである。そして、サンプル20は、誘電正接(tanθ)が0.15で、材質がオレフィンである。サンプル21は、誘電正接(tanθ)が0.05で、材質がオレフィンである。サンプル22は、誘電正接(tanθ)が0.03で、材質がフッ素樹脂である。
【0039】
[評価]
各サンプルのうち、共振周波数(7.2~7.9MHz)での抵抗値が200(Ω)以上のサンプルを「A」、上記抵抗値が200(Ω)未満を「B」と判定した。
【0040】
各サンプルの評価結果を図5の表1及び図6に示す。図6は表1の厚みtaと誘電正接(tanθ)との関係をグラフ化したものである。また、図6において、評価「A」の関係を「○」、評価「B」の関係を「×」と記した。
【0041】
上述の評価結果から、微粘着シート30は、厚みtaと誘電正接tanθの関係が(a)~(d)であることが好ましい。
(a)0.03mm≦ta≦0.05mmのとき、tanθ≦0.20
(b)0.05mm<ta≦0.10mmのとき、tanθ≦0.15
(c)0.10mm<ta≦0.20mmのとき、tanθ≦0.10
(d)0.20mm<ta≦0.50mmのとき、tanθ≦0.05
【0042】
[第2実施例]
第2実施例は、実施例及び比較例について歩留まり及びリトライ率を確認した。
【0043】
実施例は、上述したサンプル6の微粘着シート30に100個の圧電素子10を整列装置を使用して整列保持し、微粘着シート30が貼着されたベース材32の表面温度を90±5℃にして、各圧電素子10の一対の電極14a及び14b間に電圧53±2Vを印加して特性検査を行った。
【0044】
また、電気特性評価として、容量検査と、共振検査を行った。容量検査は、LCRメータを用いて、各圧電素子10の電極14a及び14bにプローブを接触させて、電圧0.5V、周波数1kHzの測定信号を印加して静電容量の測定を行った。
【0045】
共振検査は、ネットワークアナライザを用いて、各圧電素子10の電極14a及び14bにプローブを接触させて、+4dBmの測定信号を印加して、インピーダンスの周波数依存性を測定した。そして、各圧電素子10の共振周波数付近の周波数特性の波形を参照し、共振周波数におけるインピーダンスのピーク値が所定の閾値を超えるものをクラックなしと判定した。また、共振周波数におけるインピーダンスのピーク値が所定の閾値を超えないものを、クラック有りと判定した。
【0046】
比較例は、図7Aに示すトレイ102を使用して特性検査を行った。トレイ102には、100個の凹部104が形成されている。投入治具を使用して100個の圧電素子100を、100個の凹部104にそれぞれ1個ずつ圧電素子100が入るように、投入した。その後、各圧電素子100の一対の電極間に電圧53±2Vを印加して特性検査を行った。また、比較例においても、上記の実施例と同様の方法で、容量検査及び共振検査を行った。
【0047】
[評価]
実施例及び比較例について、それぞれ100個の圧電素子のうち、正常に分極処理された圧電体基板片の個数の割合、すなわち、(正常の個数/100)×100(%)を算出し、算出結果を歩留まりとした。その結果、実施例は80%、比較例は60%であった。
【0048】
また、実施例及び比較例について、分極処理のリトライ率を確認した。比較例は、検査個数1000個に対して200回のリトライがあり、リトライ率は0.2であった。これに対して、実施例は、検査個数1000個に対して30回のリトライがあり、リトライ率は0.03と低かった。
【0049】
なお、実施例及び比較例におけるリトライとは、各圧電素子にプローブを接触させて測定した特性値が正しくない値の場合に、再度、プローブを接触させて分極処理又は測定し直す処理(再検査)を行うことをいう。また、リトライ率とは、検査個数に対するリトライ発生回数の割合、すなわちリトライ発生回数/検査個数をいうものとする。
【0050】
実施例及び比較例について、検査判定のリトライ率を確認した。比較例は、容量検査において、検査個数1000個に対して100回の再検査数があり、リトライ率は0.1であった。これに対して、実施例は、容量検査において検査個数1000個に対して8回の再検査数があり、リトライ率は、0.008であった。さらに、比較例は、共振検査において、検査個数1000個に対して300回の再検査数があり、リトライ率は0.3であった。これに対して、実施例は、共振検査において、検査個数1000個に対して30回の再検査数があり、リトライ率は、0.03であった。
【0051】
以上の結果から、微粘着シート30を用いずに図7Aに示すトレイ102を用いて、トレイ102の枠のみで圧電素子100を保持する場合よりも、微粘着シート30に圧電素子10を固定する場合の方が、リトライ率が減り、歩留まりも向上することが確認できた。
【0052】
なお、本発明に係る圧電素子の検査方法は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7