(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023078339
(43)【公開日】2023-06-06
(54)【発明の名称】高い二重のHIV抗ウイルス及び免疫調節活性を有するFc融合タンパク質誘導体
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20230530BHJP
C07K 14/705 20060101ALI20230530BHJP
C07K 16/00 20060101ALI20230530BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20230530BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20230530BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20230530BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230530BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20230530BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20230530BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20230530BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230530BHJP
C07K 14/155 20060101ALI20230530BHJP
C12N 15/49 20060101ALI20230530BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230530BHJP
A61P 31/18 20060101ALI20230530BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230530BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20230530BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20230530BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20230530BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20230530BHJP
A61K 47/65 20170101ALI20230530BHJP
A61K 47/64 20170101ALI20230530BHJP
G01N 33/569 20060101ALI20230530BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C07K14/705 ZNA
C07K16/00
C07K19/00
C12N15/12
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C07K14/155
C12N15/49
A61P43/00 121
A61P31/18
A61K45/00
A61K38/17
A61K48/00
A61K35/12
A61K47/68
A61K47/65
A61K47/64
G01N33/569 H
【審査請求】有
【請求項の数】25
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023044673
(22)【出願日】2023-03-20
(62)【分割の表示】P 2020512934の分割
【原出願日】2018-05-09
(31)【優先権主張番号】62/504,411
(32)【優先日】2017-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】519400324
【氏名又は名称】アルバジュナ・セラピューティクス・エセ・エレ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ホルヘ・カリリョ・モリナ
(72)【発明者】
【氏名】ボナヴェンチュラ・クロテット・サラ
(72)【発明者】
【氏名】フリア・エム・ブランコ・アルブエス
(57)【要約】
【課題】1つには、本出願の技術分野における、受容体選択性及び高レベルの産生を有するADCC活性が増加した中和抗体を提供すること。
【解決手段】本発明は、哺乳動物細胞における収率が向上し、抗ウイルス活性及び免疫調節活性が延長した、HIVに対するFc融合タンパク質誘導体に関する。本発明のFc融合タンパク質誘導体は、(i)ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の宿主細胞への侵入をブロックし、(ii)ナチュラルキラー(NK)細胞及び他の免疫系細胞の活性化を通じてエフェクター機能を誘発し、(iii)哺乳動物細胞において高収率産生を有し、並びに(iv)インビボにおいて延長された活性を有することによって特徴付けられる。本発明は更に、上記Fc融合タンパク質誘導体を発現する核酸、ベクター及び宿主細胞、並びにヒトの健康におけるそれらの治療的及び診断的適用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ヒトCD4のD1及びD2細胞外ドメイン、
(b)M428L又はN434S点突然変異の少なくとも1つを含むヒトIgG1のFc部分、
(c)(i)配列(GGGGS)n(1≦n≦10)のリンカーポリペプチド、(ii)配列番号5~9、及び(iii)それらの組合せからなる群から選択される部分、並びに
(d)gp41由来のポリペプチド
をN末端からC末端に含むFc融合タンパク質誘導体。
【請求項2】
前記ヒトIgG1の前記Fc部分が、G236A、S239D、A330L又はI332E点突然変異の少なくとも1つを含む、請求項1に記載のFc融合タンパク質誘導体。
【請求項3】
前記ヒトIgG1の前記Fc部分が、F243L点突然変異を更に含む、請求項1又は2に記載のFc融合タンパク質誘導体。
【請求項4】
前記ヒトIgG1の前記Fc部分が、R292P点突然変異を更に含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のFc融合タンパク質誘導体。
【請求項5】
前記ヒトIgG1の前記Fc部分が、Y300L点突然変異を更に含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のFc融合タンパク質誘導体。
【請求項6】
前記ヒトIgG1の前記Fc部分が、P396L点突然変異を更に含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のFc融合タンパク質誘導体。
【請求項7】
前記ヒトIgG1の前記Fc部分が、S298A、E333A又はK334A点突然変異の少なくとも1つを更に含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のFc融合タンパク質誘導体。
【請求項8】
前記ヒトIgG1の前記Fc部分が、K322A又はV305I点突然変異を更に含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のFc融合タンパク質誘導体。
【請求項9】
ヒトCCR5受容体配列が、配列番号5を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のFc融合タンパク質誘導体。
【請求項10】
前記gp41由来のポリペプチドが、T-20、C34又はEHOポリペプチドを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のFc融合タンパク質誘導体。
【請求項11】
請求項1に記載のFc融合タンパク質誘導体をコードする単離された核酸。
【請求項12】
コドン最適化されている、請求項11に記載の核酸。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の核酸を含む発現ベクター。
【請求項14】
請求項1~10のいずれか一項に記載のFc融合タンパク質誘導体、請求項11若しくは12に記載の核酸、又は請求項13に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項15】
治療的有効量の請求項1~10のいずれか一項に記載のFc融合タンパク質誘導体、請求項11若しくは12に記載の核酸、請求項13に記載の発現ベクター、請求項14に記載の宿主細胞、又はそれらの混合物を含む医薬組成物。
【請求項16】
医薬として使用するための、請求項1~10のいずれか一項に記載のFc融合タンパク質誘導体、請求項11若しくは12に記載の核酸、請求項13に記載の発現ベクター、請求項14に記載の宿主細胞、又は請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
HIV感染症又はAIDSの治療に使用するための、請求項1~10のいずれか一項に記載のFc融合タンパク質誘導体、請求項11若しくは12に記載の核酸、請求項13に記載の発現ベクター、請求項14に記載の宿主細胞、又は請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項18】
HIV感染症又はAIDSの予防に使用するための、請求項1~10のいずれか一項に記載のFc融合タンパク質誘導体、請求項11若しくは12に記載の核酸、請求項13に記載の発現ベクター、請求項14に記載の宿主細胞、又は請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項19】
請求項1~10のいずれか一項に記載のFc融合タンパク質誘導体、請求項11若しくは12に記載の核酸、請求項14に記載の発現ベクター、請求項13に記載の宿主細胞、又は請求項15に記載の医薬組成物、及び少なくとも1つの治療剤を含む併用剤。
【請求項20】
前記治療剤が、HIV抗レトロウイルス薬である、請求項19に記載の併用剤。
【請求項21】
(a)請求項11又は12に記載の核酸を含む宿主細胞を培養する工程、(b)前記核酸を発現させる工程、及び(c)前記宿主細胞の培養物から抗体誘導体を回収する工程を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のFc融合タンパク質誘導体を調製する方法。
【請求項22】
HIVを不活性化する方法であって、前記ウイルスを、請求項1~10のいずれか一項に記載のFc融合タンパク質誘導体と接触させる工程を含む、方法。
【請求項23】
HIV感染細胞においてgp120の発現を誘導する方法であって、前記感染細胞を、請求項1~10のいずれか一項に記載のFc融合タンパク質誘導体、請求項11若しくは12に記載の核酸、請求項13に記載の発現ベクター、請求項14に記載の宿主細胞、請求項15に記載の医薬組成物、請求項19若しくは20に記載の併用剤、又はそれらの混合物と接触させる工程を含む、方法。
【請求項24】
試料中のHIVを検出する方法であって、(a)前記試料を、請求項1~10のいずれか一項に記載のFc融合タンパク質誘導体と接触させる工程、及び(b)抗体誘導体が前記試料の分子に特異的に結合するかどうかを決定する工程を含む、方法。
【請求項25】
請求項1~10のいずれか一項に記載のFc融合タンパク質誘導体、請求項11若しくは12に記載の核酸、請求項13に記載の発現ベクター、請求項14に記載の宿主細胞、請求項15に記載の医薬組成物、請求項19若しくは20に記載の併用剤、又はそれらの混合物、及び使用のための説明資料を含むキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、哺乳動物細胞における収率が向上し、抗ウイルス活性及び免疫調節活性が延長した、HIVに対するFc融合タンパク質誘導体に関する。本発明のFc融合タンパク質誘導体は、(i)ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の宿主細胞への侵入をブロックし、(ii)ナチュラルキラー(NK)細胞及び他の免疫系細胞の活性化を通じて選択的エフェクター機能を誘発し、(iii)哺乳動物細胞における高収率産生を有し、並びに(iv)インビボでの活性の延長を有することによって特徴付けられる。これらのポリペプチドの様々な形態が開示及び例示されている。これらのポリペプチドを発現する単離された核酸、ベクター及び宿主細胞、並びにヒトの健康におけるそれらの治療的及び診断的応用もまた本発明の範囲内である。
【背景技術】
【0002】
HIV感染は、世界の人々の健康に対する主要な脅威の1つである。1981年以来、世界中で7,800万人以上がヒト免疫不全ウイルスに感染していると推定されている。これらの感染者のほぼ半数は、同じ時間枠の間に生じた後天性免疫不全症候群(AIDS)で死亡している。UNAIDS、http://www.unaids.org/、October 2015を参照されたい。
【0003】
保護抗体の産生は、ヒト病原体に対するワクチンを開発するための主要なメカニズムである。しかしながら、HIVに対するこのような抗体を引き出すことができる免疫原の開発はこれまで失敗した。これらの免疫原の設計には、第1に、保存されたエピトープを同定して、連続的に安定した応答を保証し、第2に、それらのエピトープを適切に提示する新しいより効率的な免疫原を考案することが必要とされる。Haynes B、Curr Opin Immunol. 2015; 35:39-47を参照されたい。免疫原の設計におけるこれらの不十分な進歩とは対照的に、HIVに感染した者から分離されたHIVエンベロープ糖タンパク質に対する大多数の新しい、強力で幅広いスペクトルの抗体(すなわち、広範囲中和抗体、bNAb)が最近同定されている。Mascola J、et al、Immunol Rev. 2013; 254:225-244を参照されたい。更に、抗体構造に基づく合成分子はまた新しい治療剤として提案されている。Gardner M、et al、Nature 2015; 519:87-91を参照されたい。実際に、非常に強力な抗体は、感染していない者をHIV感染から保護するか、又はHIV感染患者の根絶戦略に使用される場合がある。Mascola、2013(前掲)を参照されたい。エンベロープ糖タンパク質及びそのサブユニットに対する中和抗体の使用はまた、インビボでのHIV複製を防ぐために提案されている。Yang X、et al、J. Virol. 2005; 79:3500-3508を参照されたい。
【0004】
治療上の理由で、抗体は、HIVエンベロープ糖タンパク質への結合を通じてHIV複製をブロックすることができる抗ウイルス剤として、並びに抗体鎖の定常領域(Fc)と、NK及び他の細胞の表面上に表現されるFc受容体CD16の相互作用を通じてNK細胞活性化剤としての二重機能により、特に関連性がある。この相互作用により、CD16+免疫細胞は、抗体依存性の細胞傷害(ADCC)として公知であるメカニズムを通じて感染細胞を死滅させることができる。Milligan C、et al、Cell Host Microbe. 2015; 17:500-506を参照されたい。両方の活性が、感染していない対象の保護に必要であると考えられるため、抗ウイルス活性及びADCC活性が増加した中和抗体を開発するための重要な努力がなされてきた。ヒトCD16に対するヒトIgG1の親和性を増加させ、したがって、それらのADCC活性を増加させるいくつかのIgG誘導体が記載されている。Saxena A、et al、Frontiers Immunol 2016; 7(580): 1-11を参照されたい。しかしながら、これらの修飾されたFc融合タンパク質の臨床応用は、哺乳動物細胞における低レベルの産生又はエフェクター機能の変化によって影響を受ける可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第4,766,106号
【特許文献2】米国特許第4,179,337号
【特許文献3】米国特許第4,495,285号
【特許文献4】米国特許第4,609,546号
【特許文献5】米国特許第5,399,163号
【特許文献6】米国特許第5,383,851号
【特許文献7】米国特許第5,312,335号
【特許文献8】米国特許第5,064,413号
【特許文献9】米国特許第4,941,880号
【特許文献10】米国特許第4,790,824号
【特許文献11】米国特許第4,596,556号
【特許文献12】米国特許第4,447,233号
【特許文献13】米国特許第4,447,224号
【特許文献14】米国特許第4,487,603号
【特許文献15】米国特許第4,486,194号
【特許文献16】米国特許第4,439,196号
【特許文献17】米国特許第4,475,196号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】UNAIDS、http://www.unaids.org/、October 2015
【非特許文献2】Haynes B、Curr Opin Immunol. 2015; 35:39-47
【非特許文献3】Mascola J、et al、Immunol Rev. 2013; 254:225-244
【非特許文献4】Gardner M、et al、Nature 2015; 519:87-91
【非特許文献5】Yang X、et al、J. Virol. 2005; 79:3500-3508
【非特許文献6】Milligan C、et al、Cell Host Microbe. 2015; 17:500-506
【非特許文献7】Saxena A、et al、Frontiers Immunol 2016; 7(580): 1-11
【非特許文献8】Samulski J、et al、Annu. Rev. Virol. 2014; 1 :427-451
【非特許文献9】Adler M、et al、Brit. Med. J. 1987; 294: 1145-1147
【非特許文献10】Eggink D、et al、J. Virol. 2008; 82(13):6678-6688
【非特許文献11】Lagenaur L、et al、Retrovirology 2010; 7: 11
【非特許文献12】Narum D、et al、Infect. Immun. 2001; 69(12):7250-7253
【非特許文献13】Outchkourov N、et al、Protein Expr. Purif. 2002; 24(1): 18-24
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【非特許文献15】Humphreys D、et al.、Protein Expr. Purif. 2000; 20(2):252-264
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【非特許文献77】Hone D、Shata M、J. Virol. 2001; 75:9665-9670
【非特許文献78】Shata M、et al、Vaccine 2001; 20:623-629
【非特許文献79】Rapp U and Kaufmann S、Int. Immunol. 2004、16:597-605
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【非特許文献91】Roopenian D、et al、Nature Reviews Immunology. 2007; 7:715-725
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、当該技術分野において、受容体選択性及び高レベルの産生を有するADCC活性が増加した中和抗体が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様では、本願は、
(a)ヒトCD4受容体のD1及びD2細胞外ドメイン、
(b)M428L又はN434S点突然変異の少なくとも1つを含むヒトIgG1のFc部分、
(c)(i)配列(GGGGS)nのリンカーポリペプチド、ここで、1≦n≦10である、(ii)配列番号5~9、及び(iii)それらの組合せからなる群から選択される部分、並びに
(d)gp41由来のポリペプチド
をN末端からC末端に含む本発明の修飾されたFc融合タンパク質誘導体に関する。
【0009】
本発明のFc融合タンパク質誘導体は、当該技術分野において公知である任意の他の匹敵する抗体よりも高い抗ウイルス活性及びADCC活性を有する。Gardner、2015(前掲)を参照されたい。本発明のFc融合タンパク質誘導体の発現及び作用持続時間は、他の匹敵する抗HIV抗体よりも高い。
【0010】
さらなる態様において、本発明は、本発明のFc融合タンパク質誘導体をコードする核酸、上記核酸を含むベクター、並びに以前に指示された核酸及びベクターを含む宿主細胞に関する。
【0011】
さらなる態様では、本発明は、本発明のFc融合タンパク質誘導体、核酸、ベクター及び宿主細胞、又はそれらの混合物を含む医薬組成物に関する。
【0012】
別の態様では、本発明は、本発明のFc融合タンパク質誘導体、核酸、ベクター、宿主細胞及び医薬組成物と少なくとも1つの治療剤を含む併用剤に関する。
【0013】
なおさらなる態様では、本発明は、医薬としての本発明のFc融合タンパク質誘導体、核酸、ベクター、宿主細胞、医薬組成物及び併用剤、又はそれらの混合物の使用に関する。この態様のさらなるバージョンにおいて、本発明は、HIV感染若しくはAIDSの治療又は予防における、本発明のFc融合タンパク質誘導体、核酸、ベクター、宿主細胞、医薬組成物及び併用剤、又はそれらの混合物の使用に関する。この態様の代替の形態では、本発明は、本発明の治療有効量のFc融合タンパク質誘導体、核酸、ベクター、宿主細胞、医薬組成物及び併用剤、又はそれらの混合物を対象に投与することを含む、対象におけるHIV感染若しくはAIDSを治療又は予防する方法に関する。この態様のさらなる代替の形態では、本発明は、本発明のFc融合タンパク質誘導体、核酸、ベクター、宿主細胞、医薬組成物及び併用剤、又はそれらの混合物の、HIV感染又はAIDSを治療又は予防するための医薬の製造における使用に関する。
【0014】
更に、本発明は、(a)本発明による核酸を含む宿主細胞を培養する工程、(b)核酸配列を発現する工程、及び(c)宿主細胞培養物からFc融合タンパク質誘導体を回収する工程を含む、本発明のFc融合タンパク質誘導体を調製する方法に関する。
【0015】
別の態様では、本発明は、ウイルスを本発明のFc融合タンパク質誘導体と接触させる工程を含む、HIVを不活性化する方法に関する。
【0016】
さらなる態様では、本発明は、感染細胞を本発明のFc融合タンパク質誘導体、核酸、ベクター、宿主細胞、医薬組成物及び併用剤、又はそれらの混合物と接触させる工程を含む、HIV感染細胞においてgp120の発現を誘導する方法に関する。
【0017】
さらなる態様では、本発明は、試料中のHIVを検出する方法に関し、(a)試料を本発明のFc融合タンパク質誘導体と接触させる工程、及び(b)Fc融合タンパク質誘導体が試料の分子に特異的に結合するかどうかを決定する工程を含む。
【0018】
なおさらなる態様では、本発明は、本発明のFc融合タンパク質誘導体、核酸、ベクター、宿主細胞及び医薬組成物、又はそれらの混合物を含むキットに関する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明のFc融合タンパク質誘導体の一般構造の概略図を示す。NからC末端に、分子は、ヒトCD4のD1及びD2ドメイン、ヒトIgG1の定常領域(例えば、野生型、突然変異型)、任意にヒトCCR5ペプチド、柔軟なリンカー及びHIV gp41ペプチド(例えば、T-20、C34又はEHO)を含む。
【
図2】Fc融合タンパク質の活性及び収率を改善するために実施されたスクリーニング手順の概略図を示す。産生及びエフェクター機能を改善するために、ヒトIgG1配列において異なるセットの突然変異がスクリーニングされている。(Table 1(表1)を参照されたい。次に、異なるリンカー及びgp41由来のポリペプチドT20、C34、及びEHOをスクリーニングした。
【
図3A】本発明の様々なFc融合タンパク質誘導体の産生動態を示す。すべてのIgG1突然変異は、M7 IgG1 wt C34分子に導入されている。
【
図3B】本発明の様々なFc融合タンパク質誘導体の産生動態を示す。すべてのIgG1突然変異は、M7 IgG1 wt C34分子に導入されている。
【
図3C】本発明の様々なFc融合タンパク質誘導体の産生動態を示す。すべてのIgG1突然変異は、M7 IgG1 wt C34分子に導入されている。
【
図4A】本発明のいくつかのFc融合タンパク質誘導体の中和活性を示す。すべての突然変異は、M7 IgG1 wt C34分子に導入されている。A)この図は、次のHIV分離株:NL4.3、BaL、AC10及びSVPB16のIC
50値を示す。各Fc融合タンパク質誘導体のIC
50値の幾何平均を示す。
【
図4B】本発明のいくつかのFc融合タンパク質誘導体の中和活性を示す。すべての突然変異は、M7 IgG1 wt C34分子に導入されている。B)この図は、分離株BaLに対する中和活性におけるLL突然変異の効果を示す。
【
図4C】本発明のいくつかのFc融合タンパク質誘導体の中和活性を示す。すべての突然変異は、M7 IgG1 wt C34分子に導入されている。C)この図は、分離株BaLに対する中和活性における突然変異の異なる組合せの効果を示す。
【
図5A】本発明の異なる突然変異型IgG融合タンパク質のADCC活性を示す。ADCCのEC50値は、参照分子M1に対して標準化された。より低い値は、より高い活性を示す。A)A12~A141シリーズのADCC活性。
【
図5B】本発明の異なる突然変異型IgG融合タンパク質のADCC活性を示す。ADCCのEC50値は、参照分子M1に対して標準化された。より低い値は、より高い活性を示す。B)この図は、ADCC活性におけるLL突然変異の効果を示す。
【
図5C】本発明の異なる突然変異型IgG融合タンパク質のADCC活性を示す。ADCCのEC50値は、参照分子M1に対して標準化された。より低い値は、より高い活性を示す。C)この図は、ADCC活性における突然変異の異なる組合せの効果を示す。
【
図6】本発明の異なる突然変異型IgG融合タンパク質のCD32a、CD32bc、Cdl6a、CD16aVF、CD64及びClqへの結合を示す。wt IgG1分子M7AC34を使用して、各化合物についてELISA結合シグナルの倍数変化を計算した(示さず)。倍数変化は、Log2変換され、クラスター化された。
【
図7A】組換えヒト新生児Fc受容体(FcRn)に対する延長された活性を有する本発明のいくつかのFc融合タンパク質誘導体の結合親和性を示す。ELISAアッセイは、pH=6.0(上段プロット)及びpH=7.2(下段プロット)で行われた。
【
図7B】組換えヒト新生児Fc受容体(FcRn)に対する延長された活性を有する本発明のいくつかのFc融合タンパク質誘導体の結合親和性を示す。ELISAアッセイは、pH=6.0(上段プロット)及びpH=7.2(下段プロット)で行われた。
【
図7C】組換えヒト新生児Fc受容体(FcRn)に対する延長された活性を有する本発明のいくつかのFc融合タンパク質誘導体の結合親和性を示す。ELISAアッセイは、pH=6.0(上段プロット)及びpH=7.2(下段プロット)で行われた。
【
図8A】本発明の融合タンパク質の産生、中和及びADCC活性における異なるリンカーの効果を示す。A)トランスフェクション後の7日目まで293T細胞の産生を評価した。
【
図8B】本発明の融合タンパク質の産生、中和及びADCC活性における異なるリンカーの効果を示す。B)HIV-1分離株BaL及びAC10に対して中和活性をアッセイした。
【
図8C】本発明の融合タンパク質の産生、中和及びADCC活性における異なるリンカーの効果を示す。C)ADCC活性を
図5に示す。
【
図9A】本発明の融合タンパク質の産生、中和及びADCC活性における異なるgp41ペプチドの効果を示す。A)トランスフェクション後の7日目まで293T細胞の産生を評価した。
【
図9B】本発明の融合タンパク質の産生、中和及びADCC活性における異なるgp41ペプチドの効果を示す。B)中和活性は、HIV-1分離株BaLに対してアッセイされた。
【
図9C】本発明の融合タンパク質の産生、中和及びADCC活性における異なるgp41ペプチドの効果を示す。C)ADCC活性は、生の用量反応データとして示される(IgG2誘導体であるM7BC34分子を陰性対照として使用する)。
【
図10】本発明の融合タンパク質のインビボでの効果を示す。A)インビボ実験の概略図。B)未処理(CTROL)及び処理動物(M20A16_4LLC34及びM21A16_4LLC34)の脾臓における2週間の感染後の感染細胞(HIV GAG+細胞)の分析。
【
図11】発現プラスミドpM5A16T20の図を示す。選択可能なマーカー及びオープンリーディングフレーム等のプラスミドの主な特徴が示される。
【
図12】発現プラスミドpM7A16LLC34の図を示す。選択可能なマーカー及びオープンリーディングフレーム等のプラスミドの主な特徴が示される。
【発明を実施するための形態】
【0020】
微生物の寄託
プラスミドpM5A16T20及びpM7A16LLC34は、2017年4月20日に、それぞれDSM 32496及びDSM 32497で、DSMZ-Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen、InhoffenstraBe 7 B、D-38124 Braunschweig、Germanyに寄託された。
【0021】
配列表
添付の配列表に描かれている核酸配列及びアミノ酸配列は、当該技術分野において従来適用されている標準的な文字の略語及びコードを使用して示されている。各核酸配列の1本の鎖のみが示されているが、相補鎖は表示された鎖への参照によって含まれていると理解される。添付の配列表においては以下の通りである。
配列番号1は、ヒトCD4受容体のD1ドメインのアミノ酸配列である。
配列番号2は、ヒトCD4受容体のD2ドメインのアミノ酸配列である。
配列番号3は、ヒトIgG1のFc部分のアミノ酸配列である。
配列番号4は、リンカーポリペプチドGGGGSのアミノ酸配列である。
配列番号5は、ヒトCCR5受容体のN末端領域のアミノ酸配列である。
配列番号6は、M19リンカーペプチドのアミノ酸配列である。
配列番号7は、M20リンカーペプチドのアミノ酸配列である。
配列番号8は、M21リンカーペプチドのアミノ酸配列である。
配列番号9は、M22リンカーペプチドのアミノ酸配列である。
配列番号10は、T-20ポリペプチドのアミノ酸配列である。
配列番号11は、C34ポリペプチドのアミノ酸配列である。
配列番号12は、EHOポリペプチドのアミノ酸配列である。
配列番号13は、AMセットの突然変異(すなわち、G236A、S239D、A330L及びI332E点突然変異)を有するヒトIgG1のFc部分のアミノ酸配列である。
配列番号14は、A12セットの突然変異(すなわち、F243L、R292P及びY300L点突然変異)を有するヒトIgG1のFc部分のアミノ酸配列である。
配列番号15は、A14セットの突然変異(すなわち、F243L、R292P及びP396L点突然変異)を有するヒトIgG1のFc部分のアミノ酸配列である。
配列番号16は、A16セットの突然変異(すなわち、F243L、R292P、Y300L及びP396L点突然変異)を有するヒトIgG1のFc部分のアミノ酸配列である。
配列番号17は、A18セット突然変異(すなわち、F243L、R292P、Y300L、P396L及びV305I点突然変異)を有するヒトIgG1のFc部分のアミノ酸配列である。
配列番号18はA41セットの突然変異(すなわち、S298A、E333A及びK334A点突然変異)を有するヒトIgG1のFc部分のアミノ酸配列である。
配列番号19は、LLセットの突然変異(すなわち、M428L及びN434S点突然変異)を有するヒトIgG1のFc部分のアミノ酸配列である。
配列番号20は、AM+LLセットの突然変異(すなわち、G236A、S239D、A330L、I332E、M428L及びN434S点突然変異)を有するヒトIgG1のFc部分のアミノ酸配列である。
配列番号21は、A12+LLセットの突然変異(すなわち、F243L、R292P、Y300L、M428L及びN434S点突然変異)を有するヒトIgG1のFc部分のアミノ酸配列である。
配列番号22は、A14+LLセットの突然変異(すなわち、F243L、R292P、P396L、M428L及びN434S点突然変異)を有するヒトIgG1のFc部分のアミノ酸配列である。
配列番号23は、A16+LLセットの突然変異(すなわち、F243L、R292P、Y300L、P396L、M428L及びN434S点突然変異)を有するヒトIgG1のFc部分のアミノ酸配列である。
配列番号24は、A18+LLセットの突然変異(すなわち、F243L、R292P、Y300L、P396L、V305I、M428L及びN434S点突然変異)を有するヒトIgG1のFc部分のアミノ酸配列である。
配列番号25は、A41+LLセットの突然変異(すなわち、S298A、E333A、K334A、M428L及びN434S点突然変異)を有するヒトIgG1のFc部分のアミノ酸配列である。
配列番号26は、A16_1及びLLセットの突然変異(すなわち、S239D、F243L、R292P、Y300L、P396L、M428L及びN434S点突然変異)を有するヒトIgG1のFc部分のアミノ酸配列である。
配列番号27は、A16_2及びLLセットの突然変異(すなわち、F243L、R292P、Y300L、K322A、P396L、M428L及びN434S点突然変異)を有するヒトIgG1のFc部分のアミノ酸配列である。
配列番号28は、A16_3及びLLセットの突然変異(すなわち、F243L、R292P、Y300L、I332E、P396L、M428L及びN434S点突然変異)を有するヒトIgG1のFc部分のアミノ酸配列である。
配列番号29は、A16_4及びLLセットの突然変異(すなわち、F243L、R292P、Y300L、K322A、I332E、P396L、M428L及びN434S点変異)を有するヒトIgG1のFc部分のアミノ酸配列である。
配列番号30は、A16_5及びLLセットの突然変異(すなわち、F243L、R292P、Y300L、E333A、K334A、P396L、M428L及びN434S点突然変異)を有するヒトIgG1のFc部分のアミノ酸配列である。
配列番号31は、A16_6及びLLセットの突然変異(すなわち、S239D、F243L、R292P、Y300L、K322A、I332E、K334A、P396L、M428L及びN434S点突然変異)を有するヒトIgG1のFc部分のアミノ酸配列である。
配列番号32は、A41_1及びLLセット突然変異(すなわち、S239D、F243L、R292P、S298A、E333A、K334A、M428L及びN434S点突然変異)を有するヒトIgG1のFc部分のアミノ酸配列である。
配列番号33は、A41、A16及びLLセットの突然変異(すなわち、F243L、R292P、S298A、E333A、K334A、M428L及びN434S点突然変異)を有するヒトIgG1のFc部分のアミノ酸配列である。
配列番号34は、ヒトCD4受容体のD1ドメインのヌクレオチド配列である。
配列番号35は、ヒトCD4受容体のD2ドメインのヌクレオチド配列である。
配列番号36は、ヒトIgG1のFc部分のヌクレオチド配列である。
配列番号37は、リンカーポリペプチドのヌクレオチド配列である。
配列番号38は、ヒトCCR5受容体の5'末端領域のヌクレオチド配列である。
配列番号39は、M19リンカーペプチドのヌクレオチド配列である。
配列番号40は、M20リンカーペプチドのヌクレオチド配列である。
配列番号41は、M21リンカーペプチドのヌクレオチド配列である。
配列番号42は、M22リンカーペプチドのヌクレオチド配列である。
配列番号43は、T-20ポリペプチドのヌクレオチド配列である。
配列番号44は、C34ポリペプチドのヌクレオチド配列である。
配列番号45は、EHOポリペプチドのヌクレオチド配列である。
配列番号46は、AMセットの突然変異(すなわち、G236A、S239D、A330L及びI332E点突然変異)を有するヒトIgG1のFc部分のヌクレオチド配列である。
配列番号47は、A12セットの突然変異(すなわち、F243L、R292P及びY300L点突然変異)を有するヒトIgG1のFc部分のヌクレオチド配列である。
配列番号48は、A14セットの突然変異(すなわち、F243L、R292P及びP396L点突然変異)を有するヒトIgG1のFc部分のヌクレオチド配列である。
配列番号49は、A16セットの突然変異(すなわち、F243L、R292P、Y300L及びP396L点突然変異)を有するヒトIgG1のFc部分のヌクレオチド配列である。
配列番号50は、A18セット突然変異(すなわち、F243L、R292P、Y300L、P396L及びV305I点突然変異)を有するヒトIgG1のFc部分のヌクレオチド配列である。
配列番号51はA41セットの突然変異(すなわち、S298A、E333A及びK334A点突然変異)を有するヒトIgG1のFc部分のヌクレオチド配列である。
配列番号52は、LLセットの突然変異(すなわち、M428L及びN434S点突然変異)を有するヒトIgG1のFc部分のヌクレオチド配列である。
配列番号53は、AM+LLセットの突然変異(すなわち、G236A、S239D、A330L、I332E、M428L及びN434S点突然変異)を有するヒトIgG1のFc部分のヌクレオチド配列である。
配列番号54は、A12+LLセットの突然変異(すなわち、F243L、R292P、Y300L、M428L及びN434S点突然変異)を有するヒトIgG1のFc部分のヌクレオチド配列である。
配列番号55は、A14+LLセットの突然変異(すなわち、F243L、R292P、P396L、M428L及びN434S点突然変異)を有するヒトIgG1のFc部分のヌクレオチド配列である。
配列番号56は、A16+LLセットの突然変異(すなわち、F243L、R292P、Y300L、P396L、M428L及びN434S点突然変異)を有するヒトIgG1のFc部分のヌクレオチド配列である。
配列番号57は、A18+LLセットの突然変異(すなわち、F243L、R292P、Y300L、P396L、V305I、M428L及びN434S点突然変異)を有するヒトIgG1のFc部分のヌクレオチド配列である。
配列番号58は、A41+LLセットの突然変異(すなわち、S298A、E333A、K334A、M428L及びN434S点突然変異)を有するヒトIgG1のFc部分のヌクレオチド配列である。
配列番号59は、A16_1及びLLセットの突然変異(すなわち、S239D、F243L、R292P、Y300L、P396L、M428L及びN434S点突然変異)を有するヒトIgG1のFc部分のヌクレオチド配列である。
配列番号60は、A16_2及びLLセットの突然変異(すなわち、F243L、R292P、Y300L、K322A、P396L、M428L及びN434S点突然変異)を有するヒトIgG1のFc部分のヌクレオチド配列である。
配列番号61は、A16_3及びLLセットの突然変異(すなわち、F243L、R292P、Y300L、I332E、P396L、M428L及びN434S点突然変異)を有するヒトIgG1のFc部分のヌクレオチド配列である。
配列番号62は、A16_4及びLLセットの突然変異(すなわち、F243L、R292P、Y300L、K322A、I332E、P396L、M428L及びN434S点変異)を有するヒトIgG1のFc部分のヌクレオチド配列である。
配列番号63は、A16_5及びLLセットの突然変異(すなわち、F243L、R292P、Y300L、E333A、K334A、P396L、M428L及びN434S点突然変異)を有するヒトIgG1のFc部分のヌクレオチド配列である。
配列番号64は、A16_6及びLLセットの突然変異(すなわち、S239D、F243L、R292P、Y300L、K322A、I332E、K334A、P396L、M428L及びN434S点突然変異)を有するヒトIgG1のFc部分のヌクレオチド配列である。
配列番号65は、A41_1及びLLセット突然変異(すなわち、S239D、F243L、R292P、S298A、E333A、K334A、M428L及びN434S点突然変異)を有するヒトIgG1のFc部分のヌクレオチド配列である。
配列番号66は、A41、A16及びLLセットの突然変異(すなわち、F243L、R292P、S298A、E333A、K334A、M428L及びN434S点突然変異)を有するヒトIgG1のFc部分のヌクレオチド配列である。
【0022】
発明の詳細な説明
本発明は、二重の抗ウイルス活性及び免疫調節活性が強化された抗HIV Fc融合タンパク質誘導体に関する。本発明のFc融合タンパク質誘導体は、(i)宿主細胞へのヒト免疫不全ウイルス(HIV)の侵入をブロックし、(ii)ナチュラルキラー(NK)細胞の活性化を通じてエフェクター機能を誘発する能力が増加させることを特徴とする。本発明のFc融合タンパク質誘導体はまた、(iii)哺乳動物細胞において高い産生及び(iv)インビボでの延長された活性を有することを特徴とする。
【0023】
1.一般的な用語及び表現の定義
用語「AC10」とは、本明細書で使用する場合、抗CD4結合部位抗体に対する耐性によって特徴付けられるHIV一次分離物を指す。AC10は、tier 2分離として分類される。Seaman M、et al、J. Virol. 2010; 84: 1439-1452を参照されたい。
【0024】
「アデノ随伴ウイルス」又は「AAV」という用語は、本明細書で使用する場合、約5,000ヌクレオチドの線状の一本鎖DNAゲノムを含むパルボウイルス科のウイルスメンバーを指す。AAVの少なくとも11個の認識されている血清型(AAV1-11)は、当該技術分野において公知である。
【0025】
用語「AAVベクター」とは、本明細書で使用する場合、AAV 5'逆方向末端反復(ITR)配列、及び転写調節エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー)に機能的に結合したポリペプチドコード配列に隣接するAAV 3'ITR、並びにポリアデニル化配列を有する核酸を指す。AAVベクターは、ポリペプチドをコードする配列のエクソン間に挿入された1つ以上のイントロンを任意に含み得る。Samulski J、et al、Annu. Rev. Virol. 2014; 1 :427-451を参照されたい。
【0026】
用語「AIDS」とは、本明細書で使用する場合、HIV感染の症候期を指し、後天性免疫不全症候群(一般的にはAIDSとして公知である)と「ARC」又はAIDS関連複合体の両方を含む。Adler M、et al、Brit. Med. J. 1987; 294: 1145-1147を参照されたい。AIDSの免疫学的及び臨床的な兆候は、当該技術分野において周知であり、例えば、日和見感染及び免疫不全に起因する癌が含まれる。
【0027】
用語「アミノ酸」とは、本明細書で使用する場合、天然に存在するアミノ酸及び合成アミノ酸、並びに天然に存在するアミノ酸と同様の方法で機能するアミノ酸類似体及びアミノ酸模倣体を指す。本明細書では、アミノ酸は、一般的に公知である、IUPAC-IUΒ生化学命名法委員会が推奨する3文字記号又は1文字記号のいずれかに言及される場合がある。同様に、ヌクレオチドは、一般的に受け入れられている1文字のコードに言及される場合がある。
【0028】
「抗体薬物コンジュゲート」又は「ADC」という用語は、本明細書で使用する場合、治療剤にコンジュゲートされる抗体、抗原結合抗体断片、Fc融合タンパク質誘導体、抗体複合体又は抗体融合タンパク質を指す。コンジュゲーションは共有結合又は非共有結合であり得る。好ましくは、結合は共有結合である。
【0029】
「抗レトロウイルス療法」又は「AT」という用語は、本明細書で使用する場合、HIVの複製を阻害するための1つ以上の抗レトロウイルス薬(すなわち、HIV抗レトロウイルス薬)の投与を指す。典型的には、ATは、ヌクレオシド逆転写酵素阻害薬(例えば、ジドブジン(AZT、ラミブジン(3TC)及びアバカビル)、非ヌクレオシド逆転写酵素阻害薬(例えば、ネビラピン及びエファビレンツ)、及びプロテアーゼ阻害剤(例えば、インジナビル、リトナビル及びロピナビル)等の少なくとも1つの抗レトロウイルス剤(又は、通常、抗レトロウイルスのカクテル)の投与を伴う。用語の高活性抗レトロウイルス療法(「HAART」)」は、HIV複製及び疾患の進行を積極的に抑制するように設計された治療レジメンを指す。HAARTは、通常、例えば、2つのヌクレオシド逆転写酵素阻害剤及びプロテアーゼ阻害剤等、3つ以上の異なる薬物からなる。
【0030】
用語「結合効力」とは、本明細書で使用する場合、CD4受容体、好ましくは上記受容体のD1及びD2ドメインに対する分子の親和性を指す。本発明との関連において、「親和性」とは、Fc融合タンパク質誘導体が、例えば、gp120のCD4結合部位に結合する強度を意味する。本明細書で使用する場合、「結合する」又は「特異的に結合する」という用語は、結合対の間の相互作用(例えば、2つのタンパク質又は化合物、好ましくは(i)gp120のCD4結合部位と(ii)CD4受容体又はCD4受容体のD1及びD2ドメインとの間の相互作用)を指す。一部の実施形態では、相互作用は、最大で10-6モル/リットル、最大で10-7モル/リットル、又は最大で10-8モル/リットルの親和性定数を有する。一般的に、「結合する」又は「特異的に結合する」という語句は、ある化合物の別の化合物への特異的な結合を指し、任意の標準的なアッセイによって測定した場合、結合レベルは、アッセイのバックグラウンド対照よりも統計的に有意に高い。
【0031】
用語「C34」とは、本明細書で使用する場合、gp41のHR2領域の一部を覆う、配列番号11のgp41由来ポリペプチドを指す。Eggink D、et al、J. Virol. 2008; 82(13):6678-6688を参照されたい。
【0032】
用語「CCR5」とは、本明細書で使用する場合、Gタンパク質に結合した7回膜貫通ドメイン受容体である、CD195としても公知であるヒトC-Cケモカイン受容体5を指す。CCR5は、異なるケモカインに結合し、HIVが標的細胞に侵入するプロセス中にHIV Envのコレセプターとして機能する。HIVコレセプター機能には、CCR5の異なる領域を伴う;しかしながら、最初の相互作用は、CCR5のN末端細胞外領域と、gp120サブユニットに位置するHIV Envのコレセプター結合部位との間で確立される。Lagenaur L、et al、Retrovirology 2010; 7: 11を参照されたい。ヒトCCR5についての完全なタンパク質配列は、UniProt受託番号P51681(2015年8月18日)を有する。
【0033】
用語「CD4」又は「CD4受容体」とは、本明細書で使用する場合、Tヘルパー細胞、単球、マクロファージ及び樹状細胞の表面に発現する糖タンパク質である分化4のクラスターを指す。CD4は、抗原提示細胞との接続においてT細胞受容体(TCR)を支援する。T細胞内にあるその部分を使用して、CD4は、活性化されたT細胞のシグナル伝達カスケードに関与する多数の分子を活性化するために不可欠である、チロシンキナーゼlckとして公知である酵素を補充することにより、TCRによって生成されたシグナルを増幅する。ヒトCD4の完全なタンパク質配列は、UniProt受託番号P01730(2012年6月18日)を有する。
【0034】
用語「コドン最適化」とは、本明細書で使用するとき、宿主生物の典型的なコドン使用頻度を反映して、アミノ酸配列を変更せずに参照ポリペプチドの発現を改善する核酸のコドンの変更を指す。コドン最適化のための当該技術分野において公知であるいくつかの方法及びソフトウェアツールがある。Narum D、et al、Infect. Immun. 2001; 69(12):7250-7253)、Outchkourov N、et al、Protein Expr. Purif. 2002; 24(1): 18-24、Feng L、et al、Biochemistry 2000; 39(50): 15399-15409及びHumphreys D、et al.、Protein Expr. Purif. 2000; 20(2):252-264を参照されたい。
【0035】
用語「補体」とは、本明細書で使用する場合、微生物及び損傷細胞を生物から除去し、炎症を促進し、病原体の原形質膜を攻撃する抗体及び食細胞の能力を増大させる(補足する)自然免疫系の一部を指す。Janeway C、et al、"The complement system and innate immunity"、Immunobiology: The Immune System in Health and Disease (Garland Science社、New York、US、2001)を参照されたい。
【0036】
「含んでいる」又は「含む」という用語はまた、本明細書で使用する場合、一般的に認められた特許慣例に従った「からなる」を開示する。
【0037】
用語「EHO」とは、本明細書で使用する場合、配列番号12のHIV-2分離体EHOの膜貫通サブユニットのHR2断片の配列であるペプチドC34EHOを指す。
【0038】
「Env」又は「gp160」という用語は、本明細書で使用する場合、HIVの外側エンベロープタンパク質(Env)の抗原特異性又は生物学的機能のいずれかを有し、gp120及びgp41糖タンパク質の2つのサブユニットを包含する糖タンパク質を指す。野生型(wt)gp160ポリペプチドの例示的な配列が利用可能である。GenBank受託番号AAB05604及びAAD12142を参照されたい。
【0039】
「結晶化可能領域(fragment crystallizable region)」又は「Fc領域」という用語は、本明細書で使用する場合、「Fc受容体と呼ばれる細胞表面受容体及び補体系のいくつかのタンパク質と相互作用する抗体の尾部領域を指す。
【0040】
表現「機能的に同等な変異体」とは、本明細書で使用する場合、(i)1つ以上のアミノ酸の修飾、欠失又は挿入から生じ、その参照ポリペプチドの活性を実質的に保存するポリペプチド、及び(ii)1つ以上の塩基の修飾、欠失又は挿入から生じ、参照核酸によって発現されるポリペプチドの活性を実質的に保存するポリヌクレオチドを指す。本発明との関連において企図される機能的に同等な変異体には、配列番号1~33の配列と少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、92%、94%、96%、98%、99%の類似性若しくは同一性を示すポリペプチド、又は配列番号34~66の配列と少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、92%、94%、96%、98%、99%の類似性若しくは同一性を示すポリヌクレオチドが含まれる。2つのポリペプチド又は2つのポリヌクレオチド間の同一性又は類似性の程度は、当該技術分野において広く知られているコンピューター実装アルゴリズム及び方法を使用することにより決定される。アミノ酸の2つの配列間の同一性及び類似性は、BLASTPアルゴリズムを使用して決定されることが好ましい。Altschul S、et al、"BLAST Manual" (NCBI NLM NIH、Bethesda、MD、USA、2001を参照されたい。
【0041】
用語「融合タンパク質」とは。本明細書で使用する場合、異なるタンパク質に由来する2つ以上の機能的ドメインからなる遺伝子技術によって生成されたタンパク質に関する。融合タンパク質は、従来の手段によって(例えば、適切な細胞における上記融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列の遺伝子発現によって)得ることができる。
【0042】
用語「gp41」とは、本明細書で使用する場合、ヒト免疫不全ウイルス-1エンベロープ糖タンパク質gp41を指す。Gp41は、gp120とともにHIV-1のEnv糖タンパク質を形成するサブユニットである。Envは、3つの外部サブユニット(gp120)及び3つの膜貫通サブユニット(gp41)で構成される三量体である。gp41タンパク質の細胞外部分には、融合ペプチド(FP)、N末端ヘプタッド(heptad)リピート(HR1)及びC末端ヘプタッドリピート(HR2)の3つの必須機能領域が含まれる。HR1及びHR2領域には、コイル状構造を形成する傾向のある多数のロイシンジッパー様モチーフが含まれる。Peisajovich S、Shai Y、Biochem. Biophys. Acta 2003; 1614: 122-129; Suarez T、et al、FEBS Lett. 2000; 477: 145-149; Chan D、et al、Cell 1997; 89:263-273を参照されたい。本明細書で使用する場合、「gp41」はまた、HIV-1に加えて、他のHIVタイプ(例えば、HIV-2、SHIV、SIV)のエンベロープ膜貫通糖タンパク質を指す。多くのHIV gp-41の核酸及びアミノ酸配列は、公衆に容易に入手できる。HIV配列データベース、http://www.hiv.lanl.gov/content/sequence/HIV/mainpage.html(2017年4月)を参照されたい。
【0043】
用語「gp41阻害剤」には、本明細書で使用する場合、gp41のHR2領域を覆う異なる長さの一連のポリペプチドが含まれる。これらの阻害剤には、限定されないが、T-20、C34、T-1249、T-2635、EHO gp41由来ポリペプチドが含まれる。
【0044】
表現「gp41由来ポリペプチド」とは、本明細書で使用する場合、gp41のヘプタッドリピート1(HR1)又はヘプタッドリピート2(HR2)モチーフに由来するポリペプチドを指す。gp41 HR1及びHR2配列は、当該技術分野で周知である。Lupas A、Trends Biochem. Sci. 1996; 21 :375-382及びChambers P、et al.、J. Gen. Virol. 1990; 71 :3075-3080を参照されたい。好ましくは、gp41由来ポリペプチドはHR2に由来する。gp41由来ポリペプチドは、それらのN末端又はC末端に位置する付加的な外因性アミノ酸を含み得る。好ましくは、外因性アミノ酸は、10個未満、より好ましくは5個未満、最も好ましくは3個未満である。
【0045】
用語「gp120」とは、本明細書で使用する場合、抗原特異性又はHIVの外側エンベロープタンパク質(env)の生物学的機能のいずれかを有する糖タンパク質を指す。「gp120タンパク質」は、Envポリペプチドのgp120領域に由来する分子である。gpl20のアミノ酸配列は約511アミノ酸である。Gpl20は、見かけの分子量が120kDである重度にNグリコシル化されたタンパク質である。Gpl20には、5つの可変ドメイン(V1-V5)が散在する5つの比較的保存されたドメイン(C1~C5)が含まれる。可変ドメインには、広範なアミノ酸の置換、挿入、及び欠失が含まれる。「gp120ポリペプチド」には、単一のサブユニットと多量体の両方が含まれる。gp41部分はビリオンの膜二重層に固定されている(またまたがっている)が、gp120セグメントは周囲の環境に突出している。gpl20の受容体結合ドメインは、タンパク質のN末端半分に局在している。これに、プロリンリッチ領域(PRR)が続き、これはヒンジ又はトリガーとして挙動し、受容体の結合を融合機構に伝える。gpl20のC末端は高度に保存されており、gp41と相互作用する。GenBank受託番号AAB05604及びAAD12142を参照されたい。
【0046】
用語「HIV」とは、本明細書で使用する場合、HIV-1及びHIV-2、SHIV及びSIVが含まれる。「HIV-1」は、ヒト免疫不全ウイルスタイプ1を意味する。HIV-1には、限定されないが、細胞外ウイルス粒子及びHIV-1感染細胞に関連するHIV-1の形態が含まれる。HIV-1ウイルスは、公知の主要なサブタイプ(クラスA、B、C、D、E、F、G、及びH)、又は実験室株及び初代分離株を含む周辺サブタイプ(グループO)のいずれかを表し得る。「HIV-2」は、ヒト免疫不全ウイルスタイプ2を意味する。HIV-2には、限定されないが、細胞外ウイルス粒子及びHIV-2感染細胞に関連するHIV-2の形態が含まれる。用語「SIV」とは、サル、チンパンジー、及び他の非ヒト霊長類に感染するHIV様ウイルスであるサル免疫不全ウイルスを指す。SIVには、限定されないが、細胞外ウイルス粒子及びSIV感染細胞に関連するSIVの形態が含まれる。
【0047】
用語「HIV曝露」とは、本明細書で使用する場合、感染していない対象とHIV感染又はAIDSを有する対象との接触、又はこのようなHIVに感染した対象からの体液との接触を指す。ここでは、感染した対象からのこのような流体は、感染した対象又は感染した対象の体液から感染していない対象にウイルスが伝染するような方法で、粘膜、組織の切り傷又は擦り傷(例えば、針刺し、保護されていない性交)、又は感染していない対象の他の表面に接触する。
【0048】
用語「HIV感染」とは、本明細書で使用する場合、無症候性血清陽性、AIDS関連複合体(ARC)、及び後天性免疫不全症候群(AIDS)を含む、個体におけるHIVウイルスの存在の兆候を指す。
【0049】
用語「IC50」とは、本明細書で使用する場合、所定の生物学的プロセス又は生物学的プロセスの成分(すなわち、酵素、細胞、細胞受容体又は微生物)の50%を阻害するのに必要な特定の活性剤の量を指す。
【0050】
2つ以上の核酸又はポリペプチドとの関連で用語「同一の」又は「同一性」パーセントは、配列同一性の一部としていずれもの保存的なアミノ酸置換を考慮せずに、最大限の対応について(必要に応じてギャップを導入して)比較及び整列した場合に同じであるか、又は特定のパーセンテージのヌクレオチド又はアミノ酸残基を有する2つ以上の配列又は細部配列を指す。同一性パーセントは、配列比較ソフトウェア若しくはアルゴリズムを使用して、又は目視検査によって測定することができる。アミノ酸又はヌクレオチド配列のアラインメントを取得するために使用できる様々なアルゴリズム及びソフトウェアは当該技術分野において公知である。配列類似性を決定するのに適したアルゴリズムの例には、限定されないが、BLAST、Gapped BLAST、及びBLAST 2.0、WU-BLAST-2、ALIGN、及びALIGN-2アルゴリズムが含まれる。Altschul S、et al、Nuc. Acids Res. 1977; 25:3389-3402、Altschul S、et al、J. Mol. Biol. 1990; 215:403-410、Altschul S、et al、Meth. Enzymol. 1996; 266:460-480、Karlin S、et al、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1990; 87:2264-2268、Karlin S、et al、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1993; 90:5873-5877、Genentech Corp、South San Francisco、CA、US、https://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi, April 2017を参照されたい。比較のための配列のアラインメント方法は、当該技術分野において周知である。比較のための配列の最適なアラインメントは、例えば、Smith-Waterman局所相同性アルゴリズム、Needleman-Wunsc相同性アラインメントアルゴリズム、Pearson-Lipman類似性検索法、これらのアルゴリズムのコンピューター化された実装、又は手動アラインメント及び目視検査により実行することができる。Smith T、et al、Adv. Appl. Math. 1981; 2:482-489、Needleman S、et al、J. Mol. Biol. 1970; 48:443-453、Pearson W、et al、Lipman D、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1988; 85:2444-2448、GAP、BESTFIT、FASTA及びTFASTAプログラム、Wisconsin Genetics Software Package、Genetics Computer Group、Madison、WI、USA; Ausubel F、et al、Eds.、"Short Protocols in Molecular Biology"、5th Ed. (John Wiley and Sons、Inc.社、New York、NY、USA、2002)を参照されたい。
【0051】
用語「キット」は、本明細書で使用する場合、本発明の使用及び方法を実施するために必要な異なる試薬を含む製品を指し、それらの輸送及び保存を可能にするようにパックされる。キットの成分のパックに適した材料には、水晶、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート)、ボトル、バイアル、ペーパー又は封筒が含まれる。
【0052】
用語「中和抗体」とは、本明細書で使用する場合、細胞外分子(例えば、病原性ウイルスの表面のタンパク質又はタンパク質ドメイン)に結合し、細胞外分子の、細胞に感染するか又はその活性を調節する能力を妨害する抗体、抗原結合断片又はFc融合タンパク質誘導体である。典型的には、本発明のFc融合タンパク質誘導体は、細胞外分子の表面に結合することができ、上記Fc融合タンパク質誘導体の非存在下又は陰性対照の存在下で、細胞への細胞外分子の付着に対して、その結合を少なくとも99%、95%、90%、85%、80%、75%、70%、60%、50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、又は10%阻害することができる。Fc融合タンパク質誘導体が中和されているかどうかを確認する方法は、当該技術分野において報告されている。Li M、et al.、J. Virol. 2005; 79: 10108-10125、Wei X、et al、Nature 2003; 422:307-312及びMontefiori D、Curr. Protoc. Immunol. 2005; Jan、Chapter 12:Unit 12.11を参照されたい。本発明との関連で、病原体は、好ましくはHIVであり、より具体的にはHIVウイルスエンベロープのgp120タンパク質である。特に、用語「HIV中和抗体」は、IgGb12等のgp120のCD4結合部位に親和性を有するFc融合タンパク質誘導体を指す。用語「中和抗体」には、bnAbのサブクラスが含まれる。本明細書で使用する場合、「広範に中和する抗体」又は「bnAb」は、有効用量で送達された場合、7を超える系統のHIV、好ましくは、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20又はそれらを超える系統のHIVに対して、HIV感染若しくはAIDSを予防又は治療するための治療剤として使用され得る、任意の方法によって得られる抗体であると理解される。
【0053】
用語「NK細胞」は、本明細書で使用する場合、自然免疫系にとって重要な細胞傷害性リンパ球の一種である「ナチュラルキラー細胞」を指す。NK細胞は、ウイルスに感染した細胞に迅速に反応し、腫瘍形成に反応し、感染後約3日で作用する。典型的には、免疫細胞は、感染細胞表面に提示されたHLAを検出し、サイトカイン放出を引き起こして溶解又はアポトーシスを引き起こす。しかしながら、NK細胞は、抗体及びHLAの非存在下でストレスを受けた細胞を認識する能力を有し、はるかに速い免疫反応を可能にするため、特有である。NK細胞は、大きな顆粒リンパ球として定義され、B及びTリンパ球を生成する一般的なリンパ系前駆細胞から分化した第3種の細胞を構成する。NK細胞は、循環に入る骨髄、リンパ節、脾臓、扁桃腺及び胸腺で分化し及び成熟することが公知である。NK細胞は、通常、ヒトにおいて表面マーカーCD16(FcyRIII)及びCD56を発現する。
【0054】
「NL4-3」及び「BaL」という用語は、本明細書で使用する場合、実験室で通常使用される2つの異なるHIV分離株を指す。NL4-3分離株は、NY5及びLAVプロウイルスからクローニングされた。Adachi A、et al、J. Virol. 1986; 59:284-291を参照されたい。BaL分離株は、外植された肺組織から増殖した接着細胞の初代培養から得られた。Gartner S、et al、Science 1986; 233 :215-219を参照されたい。
【0055】
「核酸」、「ポリヌクレオチド」及び「ヌクレオチド配列」という用語は、本明細書で互換的に使用され、任意の長さであり、リボヌクレオチド又はデオキシリボヌクレオチドから構成される任意のポリマー形態を指す。この用語には、一本鎖と二本鎖ポリヌクレオチドの両方、並びに修飾されたポリヌクレオチド(例えば、メチル化、保護化)が含まれる。典型的には、核酸は「コード配列」であり、本明細書で使用する場合、適切な調節配列の制御下に置かれたときに宿主細胞内で転写されてポリペプチドに翻訳されるDNA配列を指す。コード配列の境界は、5'(アミノ)末端の開始コドンと3'(カルボキシ)末端の翻訳停止コドンによって決定される。コード配列には、限定されないが、原核生物配列、真核生物mRNA由来のcDNA、真核生物(例えば、哺乳動物)DNA由来のゲノムDNA配列、及び更には合成DNA配列が含まれ得る。転写終結配列は、通常、コード配列の3'に位置される。
【0056】
「作動可能に連結された」という用語は、本明細書で使用する場合、目的のヌクレオチド配列が、ヌクレオチド配列の発現を可能にする方法で(例えば、インビトロ転写/翻訳システム、又はベクターが宿主細胞に導入された場合の宿主細胞において)調節配列に連結されることを意味する。Auer H、Nature Biotechnol. 2006; 24: 41-43を参照されたい。
【0057】
表現「HIV分離株のパネル」とは、本明細書で使用する場合、中和抗体応答の標準化されたtier2/3評価を促進するために、Env偽型ウイルスとして使用するために設計された参照HIV分離株の集合を指す。Mascola R、et al、J. Virol. 2005; 79(16): 10103を参照されたい。偽ウイルスは、ほとんどの初代HIV-1分離株に典型的な中和表現型を示す。gpl60遺伝子は、性的後天性の急性/初期感染からクローニングされ、サブタイプB内の広範囲の遺伝的、抗原的、及び地理的多様性を備えている。これらのクローンはCCR5を共受容体として使用する。Li、et al、J. Virol. 2005; 79(16): 10108-10125を参照されたい。
【0058】
「非経口投与」及び「非経口的に投与された」という表現は、本明細書で使用する場合、通常は注射による経腸及び局所投与以外の投与様式を意味し、限定されないが、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、硬膜外、並びに胸骨内注射及び注入が含まれる。
【0059】
表現「薬学的に許容される担体」とは、本明細書で使用する場合、本発明のFc融合タンパク質誘導体、核酸、ベクター及び宿主細胞と生理学的に適合性である任意の及びすべての溶媒、分散媒、被覆材、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤が含まれる。
【0060】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」は、アミノ酸残基のポリマーを指すために本明細書において互換的に使用される。この用語は、1つ以上のアミノ酸残基が、対応する天然に存在するアミノ酸の人工化学模倣物であるアミノ酸ポリマー、並びに天然に存在するアミノ酸ポリマー及び非天然アミノ酸ポリマーに適用される。
【0061】
用語「予防する」、「予防すること」及び「予防」とは、本明細書で使用する場合、対象における疾患の発症の阻害又は発生の減少を指す。予防は完全である場合がある(例えば、対象に病的な細胞がまったく存在しない)。予防はまた、例えば、対象における病理学的細胞の発生を低下させる等、部分的であり得る。また、予防とは、臨床状態に対する感受性の低下を指す。本発明との関連内で、用語「予防する」、「予防すること」、及び「予防」とは、特に、HIV曝露を受けている対象におけるHIV感染の可能性を回避又は低減することを指す。
【0062】
用語「試料」とは、本明細書で使用する場合、任意の生体液、特に、対象から得られる血液、血清、血漿、リンパ液、唾液、末梢血細胞又は組織細胞血清、精液、痰、頭蓋液(CRL)、涙、粘液、汗、乳又は脳抽出物を指す。身体組織は、胸腺、リンパ節、脾臓、骨髄又は扁桃腺組織を含み得る。また、用語「試料」とは、非生物学的試料(例えば、水、飲料から得られたもの)を指す。
【0063】
用語「対象」とは、本明細書で使用する場合、個体、植物又は動物、例えば、ヒト、非ヒト霊長類(例えば、チンパンジー及び他の類人猿及びサル種);家畜、例えば、鳥、魚、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウマ;家庭内の哺乳動物、例えば、イヌ及びネコ;げっ歯類を含む実験動物、例えば、マウス、ラット、モルモットを指す。この用語は、特定の年齢及び性別を示すものではない。用語「対象」には、胚及び胎児が含まれる。好ましい実施形態では、対象はヒトである。
【0064】
用語「T-1249」とは、本明細書で使用する場合、gp41のHR領域の一部を覆うgp41由来ポリペプチドを指す。Eggink、2008(前掲)を参照されたい。
【0065】
用語「T-20」とは、本明細書で使用する場合、エンフビルタイドとしても公知であるgp41のHR2領域の一部を覆う配列番号10のgp41由来ポリペプチドを指す。CAS[159519-65-0]及び米国特許第5,464,933号を参照されたい。このポリペプチドは、ナノモル範囲の抗ウイルス活性を有し、HIV感染に対する治療に使用されている。Zhang D、et al、Expert Opin Ther Pat. 2015; 25: 159-173及びEggink、2008(前掲)を参照されたい。
【0066】
用語「T-2635」とは、本明細書で使用する場合、gp41のHR2領域の一部を覆うgp41由来ポリペプチドを指す。Eggink、2008(前掲)を参照されたい。
【0067】
用語「治療剤」とは、本明細書で使用する場合、疾患の治療又は予防に有用な原子、分子又は化合物を指す。治療剤の例としては、限定されないが、抗体、抗体断片、HIV抗レトロウイルス薬、薬物、細胞毒性薬、アポトーシス促進薬、毒素、ヌクレアーゼ(例えば、DNAse及びRNAse)、ホルモン、免疫調節剤、キレート剤、ホウ素化合物、光活性剤又は色素、放射性核種、オリゴヌクレオチド、干渉RNA、siRNA、RNAi、抗血管新生剤、化学療法剤、サイトカイン、ケモカイン、プロドラッグ、酵素、結合タンパク質、ペプチド又はそれらの組合せが挙げられる。
【0068】
用語「治療有効量」とは、本明細書で使用する場合、対象において治療反応又は所望の効果を生じる、本発明のFc融合タンパク質誘導体、核酸、ベクター、医薬組成物又はそれらの混合物の用量又は量を指す。
【0069】
「療法(therapy)」又は「治療の(therapeutic)」という用語は、本明細書で使用する場合、本発明のFc融合タンパク質誘導体、核酸、ベクター、医薬組成物又はそれらの混合物の、疾患、限定されないが、HIV及びAIDSの治療又は予防のための使用を指す。
【0070】
「治療する(treat)」又は「治療(treatment)」という用語は、本明細書で使用する場合、臨床徴候が現れた後の疾患の進行を制御するための、本発明のFc融合タンパク質誘導体、核酸、ベクター、宿主細胞又は医薬組成物の投与を指す。疾患進行の制御とは、限定されないが、症状の軽減、疾患の持続期間の短縮、病態の安定化(特に追加の悪化を避けるため)、疾患進行の遅延、病態の改善及び寛解(部分的及び全体的の両方)を含む、有益又は望ましい臨床結果を意味すると理解される。疾患進行の制御には、治療が適用されなかった場合に予想される生存期間と比較した生存期間の延長も含まれる。本発明の文脈内で、「治療する(treat)」及び「治療(treatment)」という用語は、特に、HIV感染対象における感染及び健康なCD4+T細胞の破壊を停止又は遅延させることを指す。また、極端に低いCD4+T細胞数及び日和見病原体による反復感染等の後天性免疫不全症の症状の発症の停止と遅延も指す。有益又は望ましい臨床結果には、限定されないが、絶対的なナイーブCD4+T細胞数の増加(範囲10~3520)、循環免疫細胞全体に対するCD4+T細胞のパーセンテージの増加(範囲1~50%)、又は非感染対象における正常なCD4+T細胞数のパーセンテージとしてのCD4+T細胞数の増加(範囲1~161%)が含まれる。「治療(treatment)」はまた、対象がHIV標的治療を受けていない場合に予想される生存と比較して、感染した対象の生存を延長することも意味し得る。
【0071】
用語「ベクター」とは、本明細書で使用する場合、宿主細胞において又は核酸分子の発現カセットに従って、その自律複製を提供する追加のセグメントに作動可能に連結された本発明の核酸を含む、直鎖又は環状の核酸分子を指す。
【0072】
2.Fc融合タンパク質誘導体
本発明は、
(a)ヒトCD4受容体のD1及びD2細胞外ドメイン、
(b)G236A、S239D、A330L、I332E、F243L、R292P、S298A、Y300L、V305I、K322A、E333A、K334A、P396L、M428L又はN434S点突然変異の少なくとも1つを含むヒトIgG1のFc部分,
(c)(i)配列(GGGGS)n(ここで、1≦n≦10)のリンカーポリペプチド、(ii)配列番号5~9、及び(iii)それらの組合せ、並びに
(d)gp41由来のポリペプチド
をN末端からC末端に含むFc融合タンパク質誘導体に関する。
【0073】
本発明のFc融合タンパク質誘導体は、増加した抗ウイルス活性及びADCC活性を有することを特徴とする。本発明のFc融合タンパク質誘導体の発現及び作用持続時間(すなわち、t1/2)はまた他の匹敵する抗体よりも高い。
【0074】
(a)ヒトCD4受容体のD1及びD2細胞外ドメイン
一実施形態では、本発明のFc融合タンパク質誘導体のD1ドメインは、ヒトCD4受容体(すなわち、UniProtKBデータベース受託番号P01730)のアミノ酸26~125又はその機能的に同等の変異体を含む。別の実施形態では、Fc融合タンパク質誘導体のD2ドメインは、ヒトCD4受容体のアミノ酸126~203又はその機能的に同等な変異体を含む。好ましくは、D1及びD2ドメインは、それぞれ配列番号1及び配列番号2の配列、又はその機能的に同等な変異体を含む。
【0075】
(b)ヒトIgG1のFc部分
さらなる実施形態では、ヒトIgG1のFc部分は、F243L、R292P、S298A、Y300L、V305I、K322A、E333A、K334A、P396L、M428L若しくはN434S点突然変異の少なくとも1つ、又は機能的に同等なその変異体を含む突然変異の組合せのセット及びサブセットを含む。さらなる実施形態では、ヒトIgG1のFc部分は、(i)G236A、S239D、A330L若しくはI332E点突然変異の少なくとも1つ、又はその機能的に同等な変異体を含む。
【0076】
(i)M428L及びN434S点突然変異(LLセットの突然変異)
この実施形態の追加のバージョンでは、ヒトIgG1のFc部分は、M428L若しくはN434S点突然変異の少なくとも1つ、又はその機能的に同等な変異体を含む。好ましくは、ヒトIgG1のFc部分は、M428L及びN434S点突然変異の両方、又はその機能的に同等な変異体を含む。配列番号19又はその機能的に同等な変異体を含むヒトIgG1のFc部分が好ましい。
【0077】
このバージョンのさらなる特徴では、ヒトIgG1のFc部分は、(i)G236A、S239D、A330L若しくはI332E点突然変異の少なくとも1つ、及び(ii)M428L若しくはN434S点突然変異の少なくとも1つ、又は機能的に同等の変異体を含む。このバージョンの1つの特徴では、ヒトIgG1のFc部分は、(i)G236A、S239D、A330L若しくはI332E点突然変異の少なくとも1つ、及びM428L点突然変異、又はその機能的に同等な変異体を含む。このバージョンの別の特徴では、ヒトIgG1のFc部分は、(i)G236A、S239D、A330L若しくはI332E点突然変異の少なくとも1つ、及びN434S点突然変異、又はその機能的に同等な変異体を含む。好ましくは、ヒトIgG1のFc部分は、G236A、S239D、A330L及びI332E点突然変異、又はその機能的に同等な変異体を含む。配列番号19又はその機能的に同等な変異体を含むヒトIgG1のFc部分が好ましい。
【0078】
このバージョンの別の特徴では、ヒトIgG1のFc部分は、F243L若しくはR292P点突然変異の少なくとも1つ以上、又はその機能的に同等な変異体を含む。好ましくは、ヒトIgG1のFc部分は、F243LとR292Pの両方の点突然変異、又はその機能的に同等な変異体を含む。補足的な特徴では、ヒトIgG1のFc部分は、Y300L、P396L、S298A、E333A若しくはK334A点突然変異の少なくとも1つ、又はその機能的に同等な変異体を含む。配列番号21~25を含むヒトIgG1のFc部分又はその機能的に同等な変異体が好ましい。
【0079】
このバージョンのさらなる特徴では、ヒトIgG1のFc部分は、K322A点突然変異を含む。配列番号27、配列番号29若しくは配列番号31を含むヒトIgG1のFc部分、又はその機能的に同等な変異体が好ましい
【0080】
(ii)F243L、R292P、Y300L、P396L、S298A、E333A、及びK334A(A12、A14、A16、及びA41セットの突然変異)
この実施形態の別のバージョンでは、ヒトIgG1のFc部分は、F243L又はR292P点突然変異の少なくとも1つ以上、又はその機能的に同等な変異体を含む。好ましくは、ヒトIgG1のFc部分は、F243LとR292Pの両方の点突然変異、又はその機能的に同等な変異体を含む。このバージョンの補足的特徴では、ヒトIgG1のFc部分は、Y300L、P396L、S298A、E333A若しくはK334A点突然変異の少なくとも1つ以上、又はその機能的に同等な変異体を含む。配列番号14~18又はその機能的に同等な変異体を含むヒトIgG1のFc部分が好ましい。
【0081】
このバージョンのさらなる特徴では、ヒトIgG1のFc部分は、(i)G236A、S239D、A330L若しくはI332E点突然変異の少なくとも1つ、又はその機能的に同等な変異体を含む。好ましくは、ヒトIgG1のFc部分は、G236A、S239D、A330L及びI332E点突然変異、又はその機能的に同等な変異体を含む。このバージョンのさらなる特徴では、ヒトIgG1のFc部分はK322A点突然変異を含む。
【0082】
(iii)K322A点突然変異
この実施形態の別のバージョンでは、ヒトIgG1のFc部分は、K322A点突然変異又はその機能的に同等な変異体を含む。
【0083】
このバージョンの別の特徴では、ヒトIgG1のFc部分は、(i)G236A、S239D、A330L若しくはI332E点突然変異の少なくとも1つ、及びK322点突然変異、又はその機能的に同等な変異体を含む。好ましくは、ヒトIgG1のFc部分は、G236A、S239D、A330L及びI332E点突然変異、又はその機能的に同等な変異体を含む。
【0084】
この実施形態の補足バージョンでは、ヒトIgG1のFc部分は、F243L若しくはR292P点突然変異の少なくとも1つ以上、又はその機能的に同等な変異体を含む。好ましくは、ヒトIgG1のFc部分は、F243LとR292Pの両方の点突然変異、又はその機能的に同等な変異体を含む。このバージョンのさらなる特徴では、ヒトIgG1のFc部分は、Y300L、P396L、S298A、E333A若しくはK334A点突然変異の少なくとも1つ、又はその機能的に同等な変異体を含む。
【0085】
(c)部分
別の実施形態では、本発明のFc融合タンパク質誘導体の部分は、(i)配列(GGGGS)n(ここで、1≦n≦10)(配列番号4)のリンカーポリペプチド、(ii)配列番号5~9、(iii)(i)及び(ii)の組合せ、並びに(i)、(ii)及び(iii)の機能的に同等な変異体からなる群から選択される。この実施形態のさらなるバージョンでは、本発明のFc融合タンパク質誘導体の部分は、(i)配列のリンカーポリペプチド(GGGGS)n(ここで、1≦n≦10)(配列番号4)、(ii)配列番号5、(iii)(i)及び(ii)の組合せ、並びに(i)、(ii)及び(iii)の機能的に同等な変異体からなる群から選択される。この実施形態のさらなるバージョンでは、本発明のFc融合タンパク質誘導体の部分は、(i)配列のリンカーポリペプチド(GGGGS)n(ここで、1≦n≦10)(配列番号4)、(ii)配列番号6、(iii)(i)及び(ii)の組合せ、並びに(i)、(ii)及び(iii)の機能的に同等な変異体からなる群から選択される。この実施形態の別のバージョンでは、本発明のFc融合タンパク質誘導体の部分は、(i)配列のリンカーポリペプチド(GGGGS)n(ここで、1≦n≦10)(配列番号4)、(ii)配列番号7、(iii)(i)及び(ii)の組合せ、並びに(i)、(ii)及び(iii)の機能的に同等な変異体からなる群から選択される。この実施形態のさらなるバージョンでは、本発明のFc融合タンパク質誘導体の部分は、(i)配列のリンカーポリペプチド(GGGGS)n(ここで、1≦n≦10)(配列番号4)、(ii)配列番号8、(iii)(i)及び(ii)の組合せ、並びに(i)、(ii)及び(iii)の機能的に同等な変異体からなる群から選択される。この実施形態の別のバージョンでは、本発明のFc融合タンパク質誘導体の部分は、(i)配列のリンカーポリペプチド(GGGGS)n(ここで、1≦n≦10)(配列番号4)、(ii)配列番号9、(iii)(i)及び(ii)の組合せ、並びに(i)、(ii)及び(iii)の機能的に同等な変異体からなる群から選択される。この実施形態の一バージョンでは、部分は、リンカー若しくはヒトCCR5受容体配列、又はその機能的に同等な変異体のみを含む。この実施形態の別のバージョンでは、部分は、リンカーとヒトCCR5受容体配列の組合せ、又はその機能的に同等な変異体を含む。好ましくは、組合せが使用される場合、リンカーはヒトCCR5受容体配列のC末端に付着する。好ましくは、この部分は、リンカーのみ、又はリンカーとヒトCCR5受容体配列の組合せ、又はその機能的に同等な変異体を含む。好ましくは、ヒトCCR5受容体配列は、配列番号5又はその機能的に同等な変異体を含む。この実施形態の1つのバージョンでは、配列番号5~9又はそれらの機能的に同等な変異体は、アラニン残基を含むように更に修飾されている。好ましくは、アラニン残基で修飾されたリンカーは、配列番号8又はその機能的に同等な変異体である。
【0086】
(d)gp41ポリペプチド
さらなる実施形態では、gp41由来ポリペプチドは、T-20、T-4912、C34、T-2635及びEHOポリペプチド、それらの組合せ又はその機能的に同等な変異体を含む。好ましくは、gp41由来ポリペプチドは、T-20、C34及びEHOポリペプチド、又はその機能的に同等な変異体を含む。より好ましくは、T-20、C34及びEHOポリペプチドは、それぞれ配列番号10、配列番号11及び配列番号12の配列を含む。
【0087】
さらなる実施形態では、本発明のFc融合タンパク質誘導体は、配列番号13~33の配列又はその機能的に同等な変異体を含む。好ましくは、Fc融合タンパク質誘導体は、配列番号19~33の配列又はその機能的に同等な変異体を含む。より好ましくは、Fc融合タンパク質誘導体は、配列番号20の配列、又はその機能的に同等な変異体を含む。
【0088】
好ましくは、本発明のFc融合タンパク質誘導体は以下を含む:
(1)(a)ヒトCD4受容体のD1及びD2細胞外ドメイン、(b)G236A、S239D、A330L、I332E及びM428L点突然変異を含むヒトIgG1のFc部分、(c)(i)配列(GGGGS)n(ここで、1≦n≦10)のリンカーポリペプチド、(ii)配列番号5、及び(iii)それらの組合せからなる群から選択される部分、並びに(d)T-20ポリペプチド。ヒトIgG1のFc部分は、F243L、R292P、Y300L、P396L、S298A、E333A又はK334A点突然変異の少なくとも1つを更に含み得る。
【0089】
(2)(a)ヒトCD4受容体のD1及びD2細胞外ドメイン、(b)G236A、S239D、A330L、I332E及びM428L点突然変異を含むヒトIgG1のFc部分、(c)(i)配列(GGGGS)n(ここで、1≦n≦10)のリンカーポリペプチド、(ii)配列番号5、及び(iii)それらの組合せからなる群から選択される部分、並びに(d)C34ポリペプチド。ヒトIgG1のFc部分は、F243L、R292P、Y300L、P396L、S298A、E333A又はK334A点突然変異の少なくとも1つを更に含み得る。
【0090】
(3)(a)ヒトCD4受容体のD1及びD2細胞外ドメイン、(b)G236A、S239D、A330L、I332E及びN434S点突然変異を含むヒトIgG1のFc部分、(c)(i)配列(GGGGS)n(ここで、1≦n≦10)のリンカーポリペプチド、(ii)配列番号5、及び(iii)それらの組合せからなる群から選択される部分、並びに(d)T-20ポリペプチド。ヒトIgG1のFc部分は、F243L、R292P、Y300L、P396L、S298A、E333A又はK334A点突然変異の少なくとも1つを更に含み得る。
【0091】
(4)(a)ヒトCD4受容体のD1及びD2細胞外ドメイン、(b)G236A、S239D、A330L、I332E及びN434S点突然変異を含むヒトIgG1のFc部分、(c)(i)配列(GGGGS)n(ここで、1≦n≦10)のリンカーポリペプチド、(ii)配列番号5、及び(iii)それらの組合せからなる群から選択される部分、並びに(d)C34ポリペプチド。ヒトIgG1のFc部分は、F243L、R292P、Y300L、P396L、S298A、E333A又はK334A点突然変異の少なくとも1つを更に含み得る。
【0092】
(5)(a)ヒトCD4受容体のD1及びD2細胞外ドメイン、(b)G236A、S239D、A330L、I332E、M428L及びN434S点突然変異を含むヒトIgG1のFc部分、(c)(i)配列(GGGGS)n(ここで、1≦n≦10)のリンカーポリペプチド、(ii)配列番号5、及び(iii)それらの組合せからなる群から選択される部分、並びに(d)T-20ポリペプチド。ヒトIgG1のFc部分は、F243L、R292P、Y300L、P396L、S298A、E333A又はK334A点突然変異の少なくとも1つを更に含み得る。
【0093】
(6)(a)ヒトCD4受容体のD1及びD2細胞外ドメイン、(b)G236A、S239D、A330L、I332E、M428L及びN434S点突然変異を含むヒトIgG1のFc部分、(c)(i)配列(GGGGS)n(ここで、1≦n≦10)のリンカーポリペプチド、(ii)配列番号5、及び(iii)それらの組合せからなる群から選択される部分、並びに(d)C34ポリペプチド。ヒトIgG1のFc部分は、F243L、R292P、Y300L、P396L、S298A、E333A又はK334A点突然変異の少なくとも1つを更に含み得る。
【0094】
(7)(a)ヒトCD4受容体のD1及びD2細胞外ドメイン、(b)F243L、R292P、Y300L、K322A、I332E、P396L、M428L及びN434S点突然変異を含むヒトIgG1のFc部分、(c)(i)配列(GGGGS)n(ここで、1≦n≦10)のリンカーポリペプチド、(ii)配列番号5~9、及び(iii)それらの組合せからなる群から選択される部分、並びに(d)C34ポリペプチド。ヒトIgG1のFc部分は、S298A、E333A又はK334A点突然変異の少なくとも1つを更に含み得る。この実施例の別のバージョンでは、部分は、配列番号8においてアラニン残基を更に含む。
【0095】
(8)(a)ヒトCD4受容体のD1及びD2細胞外ドメイン、(b)F243L、R292P、Y300L、K322A、I332E、P396L、M428L及びN434S点突然変異を含むヒトIgG1のFc部分、(c)(i)配列(GGGGS)n(ここで、1≦n≦10)のリンカーポリペプチド、(ii)配列番号5~9、及び(iii)それらの組合せからなる群から選択される部分、並びに(d)EHOポリペプチド。ヒトIgG1のFc部分は、S298A、E333A又はK334A点突然変異の少なくとも1つを更に含み得る。この実施例の別のバージョンでは、部分は、配列番号8においてアラニン残基を更に含む。
【0096】
(9)(a)ヒトCD4受容体のD1及びD2細胞外ドメイン、(b)G236A、D239D、A330L、I332E及びN434S点突然変異を含むヒトIgG1のFc部分、(c)(i)配列(GGGGS)n(ここで、1≦n≦10)のリンカーポリペプチド、(ii)配列番号5~9、及び(iii)それらの組合せからなる群から選択される部分、並びに(d)T-20ポリペプチド。ヒトIgG1のFc部分は、F243L、R292P、Y300L、P396L、S298A、E333A又はK334A点突然変異の少なくとも1つを更に含み得る。
【0097】
(10)(a)ヒトCD4受容体のD1及びD2細胞外ドメイン、(b)G236A、D239D、A330L、I332E及びN434S点突然変異を含むヒトIgG1のFc部分、(c)(i)配列(GGGGS)n(ここで、1≦n≦10)のリンカーポリペプチド、(ii)配列番号5~9、及び(iii)それらの組合せからなる群から選択される部分、並びに(d)C34ポリペプチド。ヒトIgG1のFc部分は、F243L、R292P、Y300L、P396L、S298A、E333A又はK334A点突然変異の少なくとも1つを更に含み得る。
【0098】
(11)(a)ヒトCD4受容体のD1及びD2細胞外ドメイン、(b)G236A、D239D、A330L、I332E、M428L及びN434S点突然変異を含むヒトIgG1のFc部分、(c)(i)配列(GGGGS)n(ここで、1≦n≦10)のリンカーポリペプチド、(ii)配列番号5~9、及び(iii)それらの組合せからなる群から選択される部分、並びに(d)T-20ポリペプチド。ヒトIgG1のFc部分は、F243L、R292P、Y300L、P396L、S298A、E333A又はK334A点突然変異の少なくとも1つを更に含み得る。
【0099】
(12)(a)ヒトCD4受容体のD1及びD2細胞外ドメイン、(b)G236A、S239D、A330L、I332E、M428L及びN434S点突然変異を含むヒトIgG1のFc部分、(c)(i)配列(GGGGS)n(ここで、1≦n≦10)のリンカーポリペプチド、(ii)配列番号5~9、及び(iii)それらの組合せからなる群から選択される部分、並びに(d)C34ポリペプチド。ヒトIgG1のFc部分は、F243L、R292P、Y300L、P396L、S298A、E333A又はK334A点突然変異の少なくとも1つを更に含み得る。
【0100】
本発明のFc融合タンパク質誘導体は、それらの表面に上記クラスターを発現する細胞(例えば、Tヘルパー細胞、単球、マクロファージ、樹状細胞)において、分子(例えば、HIV)のヒトCD4受容体への付着を防止する(すなわち、中和する)のに有用である。好ましくは、本発明のFc融合タンパク質誘導体は、HIVのウイルスエンベロープに位置するgp160タンパク質の、Tヘルパー細胞に見られるヒトCD4受容体への付着を防止するために利用される。本発明のFc融合タンパク質誘導体の中和能力は、10ng/mL以下のIC50、好ましくは5ng/mL未満、2.5ng/mL未満、1.25ng/mL、0.625ng/mL未満、0.312μg/mL未満、0.156ng/mL未満、0.07ng/mL未満、又は0.035ng/mL未満のIC50によって特徴付けられ得る。
【0101】
さらなる実施形態では、本発明のFc融合タンパク質誘導体は、例えば、それらの循環半減期を増加させるために、ポリマーへの共有結合により化学的に修飾することができる。ポリペプチドをポリマーに付着させる方法は、当該技術分野で公知である。米国特許第4,766,106号、米国特許第4,179,337号、米国特許第4,495,285号、及び米国特許第4,609,546号を参照されたい。好ましくは、ポリマーは、ポリオキシエチル化ポリオール及びポリエチレングリコール(PEG)である。PEGは、一般式:R(O-CH2-CH2)nO-Rを有する水溶性ポリマーであり、ここで、Rは、水素又は保護基、例えば、アルキル基又はアルカノール基であり得る。好ましくは、保護基は1~8個の炭素を有し、より好ましくはメチルである。好ましくは、nは1~1,000、より好ましくは2~500の整数である。PEGは、1,000~40,000、より好ましくは2,000~20,000、最も好ましくは3,000~12,000の平均分子量を有することが好ましい。
【0102】
さらなる実施形態では、本発明のFc融合タンパク質誘導体は、治療剤に付着して抗体薬物コンジュゲート(ADC)を形成する。例えば、AIDSの発症、例えば、カポジ肉腫の発症から生じるか又はそれが好む日和見疾患及び状態の治療に使用される治療剤は、本発明のFc融合タンパク質誘導体によって形成されるADC、及びインターフェロン-α、リポソーマルアントラサイクリン(例、ドキシル)又はパクリタキセルを用いて治療することができる。更にウイルス感染症及び細菌感染症(例えば、帯状疱疹、肺炎、結核)、皮膚疾患、及びAIDSに関連する他の種類の癌(例えば、リンパ腫等)等の他の日和見疾患の治療に効果的なADCはまた、本発明のFc融合タンパク質誘導体と適切な治療剤を組み合わせることによって工夫され得る。
【0103】
3.核酸、ベクター、及び宿主細胞
別の態様では、本発明は、本発明のFc融合タンパク質誘導体をコードする核酸、並びに上記核酸を含む発現カセット及びベクターに関する。
【0104】
好ましくは、核酸は、ヌクレオチド間のホスホジエステル結合連結により連結された、限定されないが、デオキシリボヌクレオチド(DNA)及びリボヌクレオチド(RNA)を含むポリヌクレオチドである。好ましい実施形態では、本発明の核酸は、ヒトCD4受容体のD1及びD2細胞外ドメイン(配列番号34、配列番号35)、G236A、S239D、A330L、I332E、M428L及びN434S点突然変異を含むヒトIgG1のFc部分(配列番号53)、リンカーポリペプチド(配列番号37)、ヒトCCR5受容体(配列番号38)、及びT-20ポリペプチド(配列番号43)、C34ポリペプチド(配列番号44)若しくはEHOポリペプチド(配列番号45)又はそれらの機能的に同等な変異体をコードするポリヌクレオチドを含む。好ましくは、本発明の核酸は、配列番号13~25の配列を含むFc融合タンパク質誘導体又はその機能的に同等な変異体をコードする。
【0105】
本発明の核酸の機能的に同等な変異体は、それらの参照配列に関して1つ又はいくつかのヌクレオチドの挿入、欠失又は置換によって得ることができる。好ましくは、本発明の核酸の機能的に同等な変異体をコードするポリヌクレオチドは、その配列が高度に制限された条件でそれらの参照核酸とハイブリダイズすることを可能にするポリヌクレオチドである。高度に制限されたハイブリダイゼーションの一般的な条件には、6×SSC(1×SSC:0.15M NaCl、0.015Mクエン酸ナトリウム)及び40%ホルムアミド中で42℃での14時間のインキュベーション、続いて、60℃で0.5×SSC、0.1%SDSを用いた1回又は複数回の洗浄サイクルが含まれる。或いは、高度に制限された条件には、6×SSC中で約50~55℃の温度でのハイブリダイゼーション、及び1~3×SSC中で68℃の温度での最終洗浄が含まれる。中程度に制限された条件には、0.2又は0.3M NaClで65℃あたりまでの約50℃の温度でのハイブリダイゼーション、続いて、0.2×SSC、0.1%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)中で55℃あたりまでの約50℃の温度で洗浄が含まれる。さらなる一実施形態では、本発明の核酸はコドン最適化されている。
【0106】
別の実施形態では、その参照核酸に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、又は99%の類似性を有する核酸の変異体が代わりに使用され、上記変異体は、本発明のFc融合タンパク質誘導体又はその機能的に同等な変異体をコードする。
【0107】
本発明の核酸は、適切なベクターへのライゲーションのために制限酵素による処理を必要とする場合がある(例えば、1、2又は3つの末端ヌクレオチドが除去され得る)。追加の実施形態では、本発明は、各末端が制限酵素で切断されている上記核酸に関する。
【0108】
別の実施形態では、本発明は、本発明の核酸、プロモーター配列、3'-UTR、及び場合により選択マーカーを含む発現カセットに関する。
【0109】
更に別の実施形態では、本発明は、本発明の核酸を含むベクターに関する。この実施形態の追加の態様では、本発明の核酸は、上記ベクターに含まれる発現カセットに含まれる。本発明による適切なベクターには、限定されないが、原核生物ベクター、例えば、pUC18、pUC19、及びBluescriptプラスミド、並びにmpl8、mpl9、pBR322、pMB9、ColE1、pCR1及びRP4プラスミドのようなその誘導体;ファージ及びシャトルベクター、例えば、pSA3及びpAT28ベクター;酵母の発現ベクター、他追えば2ミクロンのプラスミドタイプのベクター;組み込みプラスミド;YEPベクター;動原体プラスミド及び類似体;昆虫細胞の発現ベクター、例えば、pACシリーズ及びpVLシリーズのベクター;植物の発現ベクター、例えば、pIBI、pEarleyGate、pAVA、pCAMBIA、pGSA、pGWB、pMDC、pMY、pOREシリーズ及び類似体;ウイルスベクター(例えば、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス)、並びに非ウイルス性ベクター、例えば、pSilencer 4.1-CMV(Ambion(登録商標)、Life Technologies Corp.社、Carlsbad、CA、US)、pcDNA3、pcDNA3.1、pcDNA3.1/hyg pHCMV/Zeo、pCR3.1、pEFl/His、pIND/GS、pRc/HCMV2、pSV40/Zeo2、pTRACER-HCMV、pUB6/V5-His、pVAXl、pZeoSV2、pCI、pSVL及びpKSV-10、pBPV-1、pML2d、及びpTDTlベクターのいずれかに基づく上等真核細胞の発現ベクターが挙げられる。好ましくは、ベクターは、pcDNA3.1ベクターである。より好ましくは、ベクターは、pABT-5、pABT-7及びpABT-8である。
【0110】
追加の実施形態では、ウイルスベクターは、AAVベクターである。本発明のFc融合タンパク質誘導体をコードするAAVベクターは、当該技術分野において周知である分子生物学技術に従って構築され得る。Brown T、"Gene Cloning" (Chapman & Hall、London、GB、1995); Watson R、et al、"Recombinant DNA"、2nd Ed. (Scientific American Books社、New York、N.Y.、US、1992); Alberts B、et al、"Molecular Biology of the Cell" (Garland Publishing Inc.社、New York、N.Y.、US、2008); Innis M、et al、Eds.、"PCR Protocols. A Guide to Methods and Applications" (Academic Press Inc.社、San Diego、Calif、US、1990); Erlich H、Ed.、"PCR Technology. Principles and Applications for DNA Amplification" (Stockton Press社、New York、N.Y.、US、1989); Sambrook J、et al、"Molecular Cloning. A Laboratory Manual" (Cold Spring Harbor Laboratory Press社、Cold Spring Harbor、N.Y.、US、1989); Bishop T、et al、"Nucleic Acid and Protein Sequence. A Practical Approach" (IRL Press社、Oxford、GB、1987); Reznikoff W、Ed.、"Maximizing Gene Expression" (Butterworths Publishers社、Stoneham、Mass.、US、1987); Davis L、et al、"Basic Methods in Molecular Biology" (Elsevier Science Publishing Co.社、New York、N.Y.、US、1986)、Schleef M、Ed.、"Plasmid for Therapy and Vaccination" (Wiley- VCH Verlag GmbH社、Weinheim、Del.、2001)を参照されたい。
【0111】
例えば、HEK-293細胞(E1遺伝子を発現している)、アデノウイルス機能を提供するヘルパープラスミド、血清型2からのAAV rep遺伝子、及び所望の血清型(例えば、AAV8)からのキャップ遺伝子を提供するヘルパープラスミド、並びに最後にITRを有するバックボーンプラスミド、及び目的の構築物が使用され得る。本発明のFc融合タンパク質誘導体を発現するAAVベクターを生成するために、Fc融合タンパク質誘導体のcDNAは、遍在性(例えば、CAG)又は細胞特異的プロモーターの制御下でAAVバックボーンプラスミドにクローン化され得る。
【0112】
AAVベクター(ウイルスベクター粒子)は、修飾を有する3つのプラスミドを使用したHEK293細胞のヘルパーウイルスフリートランスフェクションによって生成され得る。Matsushita T、et al、Gene Ther. 1998; 5:938-945及びWright J、et al、Mol. Ther. 2005; 12: 171-178を参照されたい。細胞は、10%BFS(ウシ胎児血清)が補足されたDMEM(ダルベッコ変法イーグル培地)中でローラーボトル(RB)(Corning Inc.社、Corning、NY、USA)で70%コンフルエントになるまで培養され、次に、1)ウイルスITRに隣接する発現カセットを保持するプラスミド(上記);2)AAV rep2及び対応するcap(capl及びcap9遺伝子)を保持するヘルパープラスミド;及び3)アデノウイルスヘルパー機能を保持するプラスミドとコトランスフェクトされ得る。次に、標準プロトコール又は前述の最適化プロトコールのいずれかを使用して、2つの連続した塩化セシウム勾配によりベクターを精製し得る。Ayuso E、et al、Gene Ther. 2010; 17:503-510を参照されたい。ベクターを更にPBSに対して透析し、ろ過し、qPCR(定量的ポリメラーゼ連鎖反応)で力価測定し、使用するまで-80℃で保存する。
【0113】
別の実施形態では、本発明は、本発明の核酸、発現カセット又はベクターを含む宿主細胞に関する。本発明に従って使用される宿主細胞は、真核細胞と原核細胞の両方を含む任意の細胞型であり得る。好ましくは、細胞には、原核細胞、酵母細胞又は哺乳動物細胞が含まれる。より好ましくは、宿主細胞は、HEK-293及びCHO細胞である。
【0114】
4.医薬組成物
さらなる態様では、本発明は、本発明のFc融合タンパク質誘導体、核酸、ベクター又は宿主細胞(以下、単独で又は共同で、本発明の「活性剤」と呼ばれる)の少なくとも1つ、又はその混合物を含み、薬学的に許容される担体とともに製剤化される医薬組成物に関する。上記医薬組成物は、対象におけるHIV若しくはAIDSを治療するために、又は感染していない対象のHIV感染を予防するために使用される。一実施形態では、組成物は、本発明の複数(例えば、2つ以上)のFc融合タンパク質誘導体、核酸、ベクター又は宿主細胞の混合物を含む。本発明の一実施形態では、組成物は、配列番号13~25の配列の少なくとも1つを含むFc融合タンパク質誘導体、又は上記Fc融合タンパク質誘導体を発現する核酸、ベクター若しくは宿主細胞、又はその混合物を含む。好ましくは、組成物は、配列番号19~25の配列の少なくとも1つを含むFc融合タンパク質誘導体、又は上記Fc融合タンパク質誘導体を発現する核酸、ベクター若しくは宿主細胞、又はその混合物を含む。より好ましくは、組成物は、配列番号20の配列の少なくとも1つを含むFc融合タンパク質誘導体、又は上記Fc融合タンパク質誘導体を発現する核酸、ベクター若しくは宿主細胞、又はその混合物を含む。本発明のFc融合タンパク質誘導体を含む医薬組成物の調製は、当該技術分野において公知である。McNally E、et al.、Eds.、"Protein Formulation and Delivery" (Marcel Dekker、Inc.社、New York、NY、USA、2000)、Hovgaard L、et al、Eds.、"Pharmaceutical Formulation Development of Peptides and Proteins"、2nd Ed. (CRC Press社、Boca Raton、FL、USA、2012)及びAkers M、et al、Pharm Biotechnol. 2002; 14:47-127を参照されたい。
【0115】
好ましくは、担体は、静脈内、筋肉内、皮下、非経口、脊髄又は表皮投与(例えば、注射又は注入による)に適している。投与経路に応じて、本発明の活性剤は、薬剤を不活性化する可能性のある状態の作用から薬剤を保護するために材料で被覆され得る。
【0116】
本発明のさらなる実施形態では、遺伝子治療(「受動免疫」)に特に適した医薬組成物が提供される。上記医薬組成物は、本発明の核酸若しくはベクターの少なくとも1つ又はそれらの混合物を含み、当該技術分野において公知である方法に従って調製される。
Andre S、et al、J. Virol. 1998、72: 1497-1503; Mulligan M、Webber J、AIDS 1999; 13(Suppl A):S105-S112; O'Hagan D、et al、J. Virol. 2001; 75:9037-9043及びRainczuk A、et al、Infect. Immun. 2004; 72:5565-5573を参照されたい。本発明の核酸が挿入される特定のベクターバックボーンは、上記核酸が対象において適切に発現される限り重要ではない。適切なベクターの例には、限定されないが、ウイルス及びプラスミドが含まれる。好ましくは、ウイルスベクターが使用される場合、AAVベクターが使用される。好ましくは、pcDNA3.1及びpVAX1(Invitrogen社、Carlsbad、CA、USA);Invitrogen社のウェブサイトhttp://www.thermofisher.com/uk/en/home/brands/invitrogen.htmlで2015年10月に入手可能なDNA配列;pNGVL(National Gene Vector Laboratory、University of Michigan、MI、USA);並びにプラスミドベクターを使用する場合、p414cyc(ATCC受託番号87380)及びp414GALS(ATCC受託番号87344)が使用される。より好ましくは、pcDNA3.1プラスミドは、プラスミドベクターとして利用される。最も好ましくは、プラスミドベクターは、pM5A16T20及びpM7A16LLC34である。
【0117】
受動免疫の設計及び応用は、当該技術分野において公知である。Donnelly J、et al、Annu. Rev. Immunol. 1997; 15:617-648; Robinson H、Pertmer T、Adv. Virus Res. 2000; 55: 1-74; Gurunathan S、et al、Annu. Rev. Immunol. 2000; 18:927-974 (2000)及びUlmer J、Curr. Opin. Drug Discov. Devel. 2001; 4: 192-197を参照されたい。簡潔に言えば、本発明の関連内の受動免疫は、対象におけるFc融合タンパク質誘導体のインビボ発現を指示するように構成される。Ulmer J、et al、Science 1993; 259: 1745-1749を参照されたい。通常、核は、真核生物における発現に最適化された細菌プラスミド内にクローニングされ、以下:(i)細菌の増殖のための複製起点、通常はColE1等の大腸菌(E. coli)起源、(ii)細菌においてプラスミドを選択するための抗生物質耐性遺伝子、通常はカナマシン、(iii)サイトメガロウイルス(CMV)又はシミアンウイルス40(SV40)のような、哺乳動物細胞において最適な発現のための強力なプロモーター、(iv)目的の遺伝子を挿入するための、プロモーターの下にあるマルチクローニングサイト;及び(v)mRNAの安定化のためのSV40又はウシ成長ホルモン(BGH)ポリアデニル化シグナルからなる。
【0118】
本発明の更に別の目的は、限定されないが、エシェリヒア属種(Escherichia spp.)、サルモネラ属種(Salmonella spp.)、シゲラ属種(Shigella spp.)、マイコバクテリウム属種(Mycobacterium spp.)、及びリステリア属種(Listeria spp.)等の、本発明のFc融合タンパク質誘導体を発現することができるプラスミドを有する非病原性又は弱毒化細菌株を利用するベクターを送達することである。
【0119】
使用される特定のエシェリヒア株は、本発明にとって重要ではない。本発明において使用することができるエシェリヒア株の例には、大腸菌株DH5a、HB 101、HS-4、4608-58、1184-68、53638-C-17、13-80、及び6-81、腸毒素産生性大腸菌、腸内病原性大腸菌及び腸出血性大腸菌が含まれる。Sambrook、1989、前掲; Sansonetti P、et al、Ann. Microbiol. 1982; 132A:351-355); Evans D、et al、Infect. Immun. 1975; 12:656-667; Donnenberg S、et al、J. Infect. Dis. 1994; 169:831-838及びMcKee M、O'Brien A、Infect. Immun. 1995; 63 :2070-2074を参照されたい。
【0120】
使用される特定のサルモネラ株は、本発明にとって重要ではない。本発明において使用することができるサルモネラ株の例には、チフス菌(S. typhi)(ATCC受託番号7251)、ネズミチフス菌(S. typhimurium)(ATCC受託番号13311)、トリチフス菌(S. galinarum)(ATCC受託番号9184)、S.エンテリティディス(S. enteriditis)(ATCC受託番号4931)、ネズミチフス菌(ATCC受託番号6994)、チフス菌aroC、aroD二重突然変異体(Hone D、et al、Vaccine 1991; 9:810-816)及びネズミチフス菌aroA突然変異体(Mastroeni D、et al、Micro. Pathol. 1992; 13 :477-491)が含まれる。
【0121】
使用される特定のシゲラ(Shigella)株は、本発明にとって重要ではない。本発明において使用することができるシゲラ株の例には、赤痢菌(S. flexneri)(ATCC受託番号29903)、赤痢菌CVD1203(ATCC受託番号55556)、赤痢菌15D(Sizemore D、et al、Vaccine 1997; 15:804-807; Sizemore D、et al、Science 1995、270:299-302)、S.ソンネイ(S. sonnei)(ATCC受託番号29930)及びS.ジセンテリア(S. dysenteriae)(ATCC受託番号13313)が含まれる。
【0122】
使用される特定のマイコバクテリウム(Mycobacterium)株は、本発明にとって重要ではない。本発明において使用することができるマイコバクテリウム株の例には、結核菌(M. tuberculosis)CDC1551株(Griffith T、et al、Am. J. Respir. Crit. Care Med. 1995; 152:808-811)、結核菌北京株(van Soolingen D、et al、J. Clin. Microbiol. 1995; 33 :3234-3238)、結核菌H37Rv株(ATCC受託番号25618)、結核菌パントベナート・アウキソトロフ(pantothenate auxotroph)株(Sambandamurthy V、Nat. Med. 2002; 8: 1171-1174)、結核菌rpoV突然変異株(Collins D、et al、Proc. Natl. Acad. Sci USA. 1995; 92: 8036)、結核菌ロイシン・アウキソトロフ(leucine auxotroph)株(Hondalus M、et al、Infect. Immun. 2000; 68(5):2888-2898)、BCGデンマーク株(ATCC受託番号35733)、BCG日本株(ATCC受託番号35737)、BCG、シカゴ株(ATCC受託番号27289)、BCGコペンハーゲン株(ATCC番号27290)、BCGパスツール株(ATCC受託番号35734)、BCGグラクソ株(ATCC受託番号35741)、BCGコンノート系統(ATCC受託番号35745)及びBCGモントリオール(ATCC受託番号35746)が含まれる。
【0123】
使用される特定のリステリア(Listeria)株は、本発明にとって重要ではない。本発明において使用することができるリステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)株の例には、限定されないが、L.モノサイトゲネス10403S株(Stevens R、et al、J. Virol. 2004; 78:8210-8218)、L.イバノビ(L. ivanovii)株及びL.シーリゲリ(L. seeligeri)株(Haas A、et al、Biochim. Biophys. Acta. 1992; 1130:81-84)、又は突然変異L.モノシトゲネス(L. monocytogenes)株、例えば、(i)actA plcB二重変異体(Peters C、et al、FEMS Immunol. Med. Microbiol. 2003; 35:243-253及びAngelakopoulos H、et al、Infect. Immun. 2002; 70:3592-3601)又は(ii)アラニンラセマーゼ遺伝子及びD-アミノ酸アミノトランスフェラーゼ遺伝子のdal dat二重突然変異体(Thompson R、et al、Infect. Immun. 1998; 66:3552-3561)が含まれる。
【0124】
細菌ビヒクルを使用してベクターを送達させる方法は、当該技術分野において周知である。米国特許第6,500,419号、米国特許第5,877,159号、及び米国特許第5,824,538号;Shata M、et al、Mol. Med. Today 2000; 6:66-71; Hone D、Shata M、J. Virol. 2001; 75:9665-9670; Shata M、et al、Vaccine 2001; 20:623-629; Rapp U and Kaufmann S、Int. Immunol. 2004、16:597-605; Dietrich G、et al、Curr. Opin. Mol. Ther. 2003; 5: 10-19及びGentschev I、et al、J. Biotechnol. 2000; 83: 19-26を参照されたい。本発明のFc融合タンパク質誘導体を発現させるために上記細菌ビヒクルにより送達されるプラスミドのタイプは重要ではない。
【0125】
さらなる実施形態では、本発明の核酸を送達させるためのAAVベクターの使用もまた提供される。
【0126】
本発明の医薬組成物は、当該技術分野において公知である種々の方法により投与され得る。当業者によって理解されるように、投与の経路又は様式は、所望の結果に応じて変わる。本発明の活性剤は、インプラント、経皮パッチ及びマイクロカプセル化送達システムを含む制御放出製剤等の、急速放出から薬剤を保護する担体とともに調製することができる。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル及びポリ乳酸等の生分解性の生体適合性ポリマーを使用することができる。このような製剤を調製するための多数の方法は、一般的に当該技術分野において公知である。Robinson J、et al、Eds.、"Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems" (Marcel Dekker、Inc.社、New York、NY、USA、1978)を参照されたい。
【0127】
特定の投与経路により本発明の活性剤を投与するために、その不活性化を防止するか、若しくはインビボでのその適切な分布を確実する材料を用いて薬剤を被覆するか、又は薬剤とその材料を同時投与することが必要な場合がある。例えば、薬剤は、適切な担体(例えば、リポソーム)又は希釈剤で対象に投与され得る。薬学的に許容される希釈剤には、限定されないが、生理食塩水及び水性緩衝液が含まれる。リポソームには、従来のリポソームに加えて、水中油中水型CGFエマルジョンが含まれる。Strejan G、et al、J. Neuroimmunol. 1984; 7:27-41を参照されたい。リポソームを製造する多数の方法が当該技術分野において公知である。米国特許第4,522,811号、米国特許第5,374,548号、及び米国特許第5,399,331号を参照されたい。リポソームは、特定の細胞又は臓器に選択的に輸送される1つ以上の部分を含むことができ、したがって、標的薬物送達を増大させることができる。例示的な標的化部分には、葉酸又はビオチン、マンノシド及び界面活性剤プロテインA受容体が含まれる。本発明の一実施形態では、本発明の活性剤はリポソームに製剤化される。より好ましい実施形態では、リポソームは標的化部分を含む。最も好ましい実施形態では、リポソーム中の活性剤は、ボーラス注射により送達される。
【0128】
薬学的に許容される担体には、滅菌水溶液又は分散液、及び滅菌注射溶液又は分散液の即時調製用の滅菌粉末が含まれる。本発明の医薬組成物の調製におけるこのような媒体の使用は、それらの使用が本発明の活性剤と不適合でない限り、本明細書において企図される。補助活性化合物もまた医薬組成物に組み込むことができる。
【0129】
医薬組成物は、典型的には、製造及び保存の条件下で無菌であり、安定している。組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、リポソーム、又は活性剤濃度に適した他の秩序構造として製剤化することができる。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール)又はそれらの適切な混合物を含む溶媒又は分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチン等の被覆剤を使用することにより、粒径の偏差を減少させることにより、及び界面活性剤を使用することにより維持することができる。多くの場合、等張剤、例えば、糖、多価アルコール(例えば、マンニトール、ソルビトール)又は塩化ナトリウムを組成物に含めることが好ましい。注射可能な組成物の長期の吸収は、吸収を遅らせる化合物(例えば、モノステアリン酸塩、ゼラチン)を組成物に含めることによりもたらすことができる。
【0130】
滅菌注射溶液は、本発明の活性剤を、必要に応じて上記に列挙した成分の1つ又は組合せとともに適切な溶媒中に必要量で組み込み、続いて滅菌精密ろ過により調製することができる。一般的に、分散液は、基本的な分散媒及び上記に列挙したものから必要な他の成分を含む滅菌ビヒクルに活性剤を組み込むことにより調製される。滅菌注射液の調製のための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、真空乾燥及び凍結乾燥(freeze-drying)(すなわち、凍結乾燥(lyophilization))であり、以前にその滅菌ろ過された溶液から活性成分+任意の追加の所望の成分の粉末を生じさせる。
【0131】
投薬レジメンは、最適な所望の反応(例えば、治療応答)を提供するために調整される。例えば、治療状況の緊急性によって示されるように、単一のボーラスが投与されるか、数回に分けられた用量が経時的に投与されるか、又は用量が比例的に減少若しくは増加され得る。例えば、本発明のFc融合タンパク質誘導体は、皮下注射により週に1回若しくは2回、又は皮下注射により月に1回若しくは2回投与され得る。
【0132】
投与の容易さ及び投薬量の均一性のために、投薬単位形態で非経口組成物を処方することが特に有利である。本明細書において使用される投薬単位形態は、治療される対象の単位用量として適した物理的に別個の単位を指す;各ユニットは、必要とされる医薬品キャリアに関連して所望の治療効果を生み出すように計算された所定量の活性剤を含む。本発明の投薬単位形態の仕様は、活性剤の固有の特徴及び達成される特定の治療効果によって決定され、それらに直接依存する。
【0133】
薬学的に許容される抗酸化剤の例には、限定されないが、水溶性抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、システイン塩酸塩、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム等)、油溶性抗酸化剤(例えば、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α-トコフェロール)、及び金属キレート剤(例えば、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸)が含まれる。本発明の医薬組成物の製剤には、経口、経鼻、局所(例えば、頬及び舌下)、直腸、膣又は非経口投与に適したものが含まれる。製剤は、単位剤形で都合よく提供され得、当該技術分野において公知である任意の方法によって調製され得る。単一の剤形を製造するために担体材料と組み合わせることができる活性剤の量は、治療される対象及び特定の投与様式に応じて変化する。単一剤形を製造するために担体材料と組み合わせることができる活性剤の量は、一般的に、治療効果を生成する組成物の量である。一般的に、この量は、活性剤の約0.001%~約90%、好ましくは約0.005%~約70%、最も好ましくは約0.01%~約30%の範囲である。
【0134】
膣投与に適した本発明の製剤には、当該技術分野において適切であることが公知であるこのような担体を含むペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム又はスプレー製剤もまた含まれる。本発明の組成物の局所又は経皮投与のための剤形には、粉末、スプレー、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、溶液、パッチ及び吸入剤が含まれる。本発明の活性剤は、滅菌条件下で、薬学的に許容される担体及び必要とされる可能性のある任意の防腐剤、緩衝剤又は噴射剤と混合することができる。
【0135】
本発明の医薬組成物はまた、防腐剤、湿潤剤、乳化剤及び分散剤等のアジュバントを含み得る。微生物の存在の防止は、滅菌手順と、様々な抗菌剤及び抗真菌剤(例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸)を含めることによって確実にされる。等張剤(例えば、糖、塩化ナトリウム)を組成物に含めることも望ましい場合がある。
【0136】
本発明の医薬組成物中の活性剤の実際の投薬量レベルは、対象において所望の治療応答を達成するために変動され得る。選択された投薬量レベルは、使用される本発明の特定の薬剤の活性、その量、投与経路、投与時間、使用される特定の活性剤の排泄速度又は発現、治療期間、使用される特定の医薬組成物と組み合わせて使用される他の薬物、化合物又は材料、治療される対象の年齢、性別、体重、状態、一般的な健康及び以前の病歴、並びに医学分野で知られている他の同様の因子を含む様々な薬物動態因子に依存する。当該技術分野において通常の技術を有する医師又は獣医は、必要とされる活性剤の治療的有効量を容易に決定及び処方することができる。例えば、医師又は獣医は、所望の治療効果を達成するために必要なレベルよりも低いレベルで医薬組成物に使用される本発明の活性剤の投与を開始し、所望の効果が達成されるまで用量を徐々に増加させることができる。一般的に、本発明の組成物の適切な日用量は、治療効果を生み出すのに有効な最低用量である活性剤の量である。このような有効用量は、一般的に、上記の因子に依存する。投与は、非経口、より好ましくは静脈内、筋肉内、腹腔内又は皮下であることが好ましい。必要に応じて、医薬組成物の有効な1日量は、1日を通して適切な間隔で別々に適用される2、3、4、5、6又はそれ以上のサブ用量として、任意に単位剤形で投与され得る。本発明の活性剤を単独で投与することは可能であるが、医薬組成物として上記薬剤を投与することが好ましい。
【0137】
本発明の医薬組成物は、当該技術分野において公知である医療装置で投与することができる。例えば、好ましい実施形態では、本発明の医薬組成物は、無針皮下注射装置で投与することができる。米国特許第5,399,163号、米国特許第5,383,851号、米国特許第5,312,335号、米国特許第5,064,413号、米国特許第4,941,880号、米国特許第4,790,824号、又は米国特許第4,596,556号を参照されたい。本発明において有用である周知のインプラント及びモジュールの例には、限定されないが、医薬品を異なる速度で分配するための注入ポンプ(例えば、米国特許第4,447,233号(非植込み型、制御速度)、米国特許第4,447,224号(植込み型、可変速度)、米国特許第4,487,603号(植込み型、制御された速度))、皮膚を介して医薬品を投与する装置(例えば、米国特許第4,486,194号)及び浸透圧薬物送達システム(例えば、米国特許第4,439,196号及び米国特許第4,475,196号)が含まれる。他の多数のこのようなインプラント、送達システム及びモジュールは、当業者に公知である。
【0138】
本発明の医薬組成物は、組成物が注射器によって送達可能である程度に無菌及び流動性でなければならない。水に添加して、担体は、等張緩衝食塩水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール)及びそれらの適切な混合物であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチン等の被覆剤の使用によって、分散液の場合は必要な粒子サイズの維持によって、及び界面活性剤の使用によって維持することができまる。多数の場合、等張剤、例えば、糖、ポリアルコール(例えば、マンニトール、ソルビトール)及び塩化ナトリウムを組成物に含めることが好ましい。注射可能な組成物の長期吸収は、組成物中に吸収を遅延させる薬剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウム、ゼラチン)を含めることによりもたらすことができる。
【0139】
5.治療及び予防の方法
別の態様では、本発明は、対象におけるHIV感染又はAIDSを治療又は予防する方法のいずれかであって、本発明のFc融合タンパク質誘導体、核酸、ベクター、宿主細胞若しくは医薬組成物、又はその混合物を上記対象に投与することを含む。HIV感染又はAIDS症状に関する本発明の活性剤及び医薬組成物の有益な治療又は予防効果には、例えば、HIVに曝露された対象の初期感染を予防又は遅延すること、HIVに感染した対象におけるウイルス負荷を低減させること、HIV感染の無症候期を延長すること、抗レトロウイルス療法(AT)によってウイルスレベルが低下したHIV感染者の低ウイルス量を維持すること、薬物未投与の対象及びATで治療された対象において、HIV特異的及び非特異的な、CD4 T細胞のレベルを上げるか又はCD4 T細胞の減少を抑えること、AIDSを有する対象の全体的な健康又は生活の質を高めること、並びにAIDSを有する対象の平均余命を延長することが含まれる。医師又は獣医は、治療の効果を治療前の対象の状態、又は未治療の対象の予想される症状と比較して、治療がAIDSの阻害に有効かどうかを判断することができる。好ましい実施形態では、本発明の活性剤及び医薬組成物は、HIV感染又はAIDSの予防に使用される。別の好ましい実施形態では、本発明の活性剤及び医薬組成物は、HIV感染又はAIDSの治療に使用される。
【0140】
本発明の活性剤及び医薬組成物は、HIV感染又はAIDSの治療に有用であり得る。HIV又はそれらの同等物に苦しむ可能性のあるすべての対象は、この方法で治療することができるが(例えば、チンパンジー、マカク、ヒヒ又はヒト)、本発明の活性剤及び医薬組成物は、特にヒトでの治療的使用に指向される。多くの場合、所望の治療効果をもたらすには、複数回の投与が必要になる場合がある。正確なプロトコール(投薬量及び頻度)は、標準的な臨床手順によって確立することができる。
【0141】
本発明は更に、HIV感染又はAIDSに関連する症状を軽減又は排除することに関する。これらには、例えば、帯状疱疹、皮膚発疹及び爪の感染、口内炎、鼻と喉の再発感染、並びに体重減少等の、HIV感染の軽度の症候期に関連付けられる症状が含まれる。加えて、HIV感染の主要な症候期に関連付けられるさらなる症状には、例えば、口腔及び膣の鵝口瘡(カンジダ)、持続性下痢、体重減少、持続性の咳、及び再活性化結核、又はヘルペス(cold sore)等の反復性ヘルペス感染症(単純ヘルペス)が含まれる。本発明に従って治療することができる末期のエイズの他の症状には、例えば、下痢、悪心及び嘔吐、鵝口瘡及び口内炎、持続性の再発性膣感染症及び子宮頸癌、持続性の全身性リンパ節腫脹(PGL)、重度の皮膚感染症、いぼ及び白癬、呼吸器感染症、肺炎、特にニューモシスチス・カリニ(Pneumocystis carinii)肺炎(PCP)、帯状疱疹(herpes zoster)(又は帯状疱疹(shingles))、手足の痛み、しびれ又は「ピンと針」等の神経系の問題、神経学的異常、カポジ肉腫、リンパ腫、結核又は他の同様の日和見感染症が含まれる。
【0142】
別の好ましい実施形態では、本発明の活性剤又は医薬組成物は、少なくとも1つの治療剤と組み合わせて、HIVに感染した対象又はHIVに曝露された対象に投与される。好ましくは、治療剤は、HIV若しくはAIDSの予防又は治療に一般的に適応される。適切な治療剤には、限定されないが、現在の抗レトロウイルス療法(AT)及び高活性抗レトロウイルス療法(HAART)プロトコールの一部を形成する薬物、例えば、非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(例えば、エファビレンツ、ネビラピン、デラビルジン、エトラビリン、リルピビリン)、ヌクレオシド類似体逆転写酵素阻害剤(例えば、ジドブジン、テノフォビル、ラミブジン、エムトリシタビン)及びプロテアーゼ阻害剤(例えば、サキナビル、リトナビル、インジナビル、ネルフィナビル、アンプレナビル)が含まれ、以下、単独又は共同で「HIV抗レトロウイルス薬」と呼ばれる。この実施形態の1つのバージョンでは、本発明の少なくとも1つの活性剤又は医薬組成物、及び少なくとも1つのHIV抗レトロウイルス薬が、同時に対象に一緒に投与される。別のバージョンでは、本発明の少なくとも1つの活性剤又は医薬組成物は、任意のHIV抗レトロウイルス薬が対象に適用される前に投与される。更に別のバージョンでは、本発明の少なくとも1つの活性剤又は医薬組成物は、例えば、AT又はHAARTプロトコールの中断後等、HIV抗レトロウイルス薬が対象に適用された後に投与される。
【0143】
更に、本発明のFc融合タンパク質誘導体は、潜在的に感染した細胞の表面上でHIV gp120の発現を誘導し、したがって、NK細胞によるそれらの迅速な除去を可能にし得る治療剤とともに投与することができる。Siliciano J、et al、J Allergy Clin Immunol. 2014; 134(1): 12-19を参照されたい。
【0144】
6.中和及び検出方法
さらなる態様では、本発明は、ウイルスを本発明の少なくとも1つのFc融合タンパク質誘導体と接触させる工程を含む、HIVを不活性化する方法に関する。好ましくは、本方法は、HIVを含む試料又はHIVを含むことが疑われる試料に対して実施される。この方法は、当該技術分野において記載されているように、Fc融合タンパク質誘導体のHIVへのカップリングに有利な条件下で実施することができる。Lu L、et al、Retroviral ogy 2012; 9(104)、1-14を参照されたい。
【0145】
さらなる態様では、本発明は、試料中のヒトCD4受容体のD1及びD2ドメインに付着する分子又はその断片(例えば、HIV、gp120)を検出する方法に関し、(a)試料を本発明のFc融合タンパク質誘導体と接触させる工程、及び(b)Fc融合タンパク質誘導体が試料中の分子に特異的に結合するかどうかを決定する工程を含む。試料は、限定されないが、非感染、感染、又は感染の可能性のある対象(例えば、定期的又は断続的なHIV曝露を持続している対象)由来の血液、血清、尿、組織、又は他の生体試料を含む生物学的試料であり得る。試料はまた、非生物学的試料(例えば、水、飲料から得られるもの)であり得る。好ましくは、分子は、HIVであり、より好ましくはHIVのgp120ウイルスエンベロープタンパク質である。
【0146】
この態様の好ましい実施形態では、本発明は、(a)試料を本発明のFc融合タンパク質誘導体と接触させる工程、(b)Fc融合タンパク質誘導体が試料中のHIV分子に特異的に結合するかどうかを決定する工程を含む、試料中のHIVを検出する方法に関する。好ましくは、試料は、血漿試料又は血清試料である。
【0147】
試料を最初に操作して、検出方法により適したものにすることができる。好ましい実施形態では、試料とFc融合タンパク質誘導体との間の接触が延長される(すなわち、試料及びFc融合タンパク質誘導体の安定性に適した条件下でのインキュベーション)。接触工程中の条件は、当業者により日常的な方法により決定することができる。接触工程で使用できる適切な緩衝液には、実施されるアッセイを妨害しない生理学的緩衝液が含まれる。例えば、Tris又はトリエタノールアミン(TEA)緩衝液を使用することができる。緩衝液(及び結果として生じる緩衝液を含む溶解試薬)のpHは、約2.0から約10.0、場合により約4.0から約9.0、好ましくは約7.0から約8.5、更により好ましくは約7.5から約8.0の範囲、又は約7.0、約7.5、約8.0、若しくは約8.5であり得る。例示的な「接触」条件は、15分から4時間(例えば、4℃、37℃又は室温で1時間)のインキュベーションを含み得る。しかしながら、これらは、例えば、相互作用する結合パートナーの性質に応じて、適宜変更され得る。試料は、場合により、穏やかな揺動、混合、又は回転を受けることができる。更に、非特異的結合を低減するブロッキング剤等の他の適切な試薬を追加することができる。例えば、1~4%のBSA又は他の適切なブロッキング剤(例えば、ミルク)が使用され得る。接触条件は、検出方法の目的に応じて変更及び適合させることができる。例えば、インキュベーション温度が、例えば、室温又は37℃である場合、これは、これらの条件下で安定している(例えば、人体で見られる条件下で安定している)結合因子を同定する可能性を増加せることができる。
【0148】
好ましくは、本発明のFc融合タンパク質誘導体は、試料中に存在するFc融合タンパク質誘導体とその分子又は断片との間の複合体の形成を可能にする条件下で試料と接触させられる。次に、例えば、試料中のHIVの存在を示す複合体の形成が、適切な手段により検出及び測定される。検出及び測定のこれらの手段は、結合パートナーの性質に依存し、限定されないが、例えば、放射免疫アッセイ(RIA)、ELISA、免疫蛍光、免疫組織化学、フローサイトメトリー(例えば、FACS)、BIACORE及びウェスタンブロット分析等の同種及び異種の結合アッセイが含まれる。特に対象の血清と血液及び血液由来生成物の大規模分析に好ましいアッセイ技術は、フローサイトメトリー、ELISA、及びウェスタンブロット技術である。
【0149】
好ましい実施形態では、測定は、フローサイトメトリー(例えば、FACS)によって実施される。本明細書で使用する場合、用語「フローサイトメトリー」とは、試料中の物質の比率が物質を標識し(例えば、標識抗体を物質に結合させ)、物質を含む流体流を引き起こして、光線を通過し、一連のフィルター及びミラーによって試料から放出された光を構成波長に分離し、光を検出することによって決定されるアッセイを指す。フローサイトメトリーは、相対サイズの複雑さ及び内因性蛍光等の単一細胞のいくつかの特徴の高感度検出及び迅速な定量化、並びに蛍光色素で標識することができる任意の細胞化合物の定量分析を可能にする。Melamed M、et al.、"Flow Cytometry and Cell Sorting"、2nd Ed. (Wiley-Liss社、New York、NY、USA、1990)を参照されたい。フローサイトメトリーの主な利点の1つは、非常に多数の粒子又は細胞上の分析物の迅速な定量化である。一般的に、検出可能なマーカーとして使用するために選択される蛍光色素は、レーザーによって使用される波長の光で励起されたときに、蛍光を発する能力に基づいて選択される。蛍光色素がレーザービームで励起されると、蛍光を発し、次に、フローサイトメーターの光電子増倍管で評価される。この技術は、1~2分以内に10,000個の細胞/粒子を分析することができる。フローサイトメーターには、異なる波長で蛍光を発する様々な蛍光色素からの放射率を検出するフィルターがあり、4つ以上の異なる蛍光色素を検出可能なマーカーとして使用できる。これは、現在少なくとも4つの異なる分子を同時に検出できることを意味する。試料を分析するためのこれらの方法及び装置は市販されており、当該技術分野において周知である(例えば、FACSCalibur Flow Cytometer; BD Biosciences Corp.社、Franklin Lakes、NJ、USA)。
【0150】
好ましい実施形態では、上記測定は、好ましくはFc融合タンパク質誘導体、好ましくは上記Fc融合タンパク質誘導体のFc領域に結合することができるレポーターを使用するフローサイトメトリーによる試料の分析を含む。好ましくは、レポーターは検出可能な部分を含み、より好ましくは、レポーターは検出可能な部分に結合したFc特異的二次抗体である。
【0151】
有用な検出可能部分には、フルオロフォアが含まれる。「フルオロフォア」(又は「蛍光色素」又は「発色団」)によって、光励起時に光を再放出できる蛍光化合物と理解されている。使用することができるフルオロフォアには、生物学的フルオロフォア(例えば、タンパク質)及び化学的フルオロフォアが含まれる。例示的な生物学的フルオロフォアは、T-サファイア、Cerulean、mCFPm、CyPet、EGFP、PA-EGFP、Emerald、EYFP、Venus、mCitrine、mKO、mOrange、DSRed、JRed、mStrawberry、mCherry、PA-mCherry、mRuby、Tomato、mPlum、mKate、mKatushka、Kaede、Halotag、及び超楕円フッ素を含む。例示的な化学的フルオロフォアは、Alexafluor、ローダミン(Rhodamine)、BODIPY、テトラメチルローダミン(Tetramethylrhodamine)、シアニン色素、フルオレセイン、量子ドット、IR色素、FM色素、ATTO色素を含む。二次抗体はまた、検出に有用な酵素、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ又はグルコースオキシダーゼで標識することができる。抗体が、検出可能な酵素で標識されている場合、識別可能な反応生成物を触媒するために酵素が使用する試薬を追加することによって検出することができる。例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ剤が存在する場合、過酸化水素及びジアミノベンジジンの添加は、視覚的に検出可能な着色反応生成物をもたらす。抗体をビオチンで標識し、アビジン又はストレプトアビジン結合の間接的な測定により検出することもできる。アビジン自体を酵素又は蛍光標識で標識し得ることに留意されたい。
【0152】
好ましくは、使用されるFc二次抗体は、一次抗体が由来する種(例えば、ヒト)に特異的である。一実施形態では、上記Fc特異的二次抗体は、IgA(例えば、IgA1、IgA2)、IgD、IgE、IgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)及びIgMからなる群から選択される。好ましくは、二次抗体はIgGであり、より好ましくはIgG1である。上記Fc特異的二次抗体は、任意の脊椎動物抗体、好ましくは任意の哺乳動物抗体、より好ましくは任意の非ヒト抗体(例えば、ウサギ、マウス、ラット、ヤギ、ウマ、ヒツジ又はロバ抗体)であり得る。
【0153】
前述のアッセイにおける試薬として使用するために、本発明のFc融合タンパク質誘導体は、マイクロタイターウェルの内面に都合よく結合され得る。本発明のFc融合タンパク質誘導体は、マイクロタイターウェルに直接結合され得る。しかしながら、Fc融合タンパク質誘導体のウェルへの最大結合は、Fc融合タンパク質誘導体の添加前にポリリジンでウェルを前処理することにより達成され得る。更に、本発明の抗体誘導体は、当該技術分野において公知である手段によりウェルに共有結合され得る。一般的に、本発明のFc融合タンパク質誘導体は、被覆のために0.01~100μg/mLで使用されるが、より高い量及びより低い量もまた使用され得る。次に、本発明のFc融合タンパク質誘導体で被覆されたウェルに試料を添加する。
【0154】
7.キット
さらなる態様では、本発明は、本発明の抗体誘導体、核酸、ベクター、宿主細胞、医薬組成物若しくは併用剤のうちの少なくとも1つ、又はそれらの混合物を含むキットに関する。本発明のキットの成分は、任意に、適切な容器にパックされ、HIV若しくはAIDS又はそれらの関連状態の検出、不活性化、診断、予防又は治療のためにラベル付けされ得る。キットの成分は、再構成のための水性溶液、好ましくは無菌溶液として、又は凍結乾燥された製剤、好ましくは無菌製剤として、単位用量又は複数用量の容器に保存され得る。容器は、ガラス又はプラスチック等の様々な材料から形成されて得、無菌のアクセスポートを有し得る(例えば、容器は、静脈内溶液バッグ又は皮下注射針で貫通可能なストッパーを有するバイアルであり得る)。キットは、薬学的に許容される担体を含むより多くの容器を更に含み得る。それらは、限定されないが、緩衝剤、希釈剤、フィルター、針、注射器、1つ以上の適切な宿主細胞又は他の活性剤のための培養培地を含み、商業的及びユーザーの観点から望ましい他の材料を更に含み得る。キットには、診断及び治療用の製品の市販のパッケージに通常含まれる説明書、例えば、このような診断及び治療用の製品の使用に関する適応、使用、投薬量、製造、投与、禁忌又は警告に関する情報を含めることができる。
【0155】
本明細書において言及されるすべての刊行物は、参照によりそれらの全体が組み込まれる。本発明を一般的に説明してきたが、以下の実施例を参照することにより、本発明をより容易に理解することができ、これらは例示として提供され、特定されない限り本発明を限定することを意図しない。
【0156】
一般的な手法
1.Fc融合タンパク質誘導体の構築
ヒトCD4分子の2つの細胞外ドメイン(D1及びD2)は、ヒンジ、CH2及びCH3ドメインを含むG236A、S239D、A330L及びI332E点突然変異を含むヒトIgG1のFc部分に接続して、修飾されたCD4-IgG1分子を生させた。修正されたCD4-IgG1足場に基づいて、Fc融合タンパク質誘導体を設計し、以下の特徴を有した:
(a)M428L及びN434S点突然変異をFc鎖に施して、Fc融合タンパク質誘導体の活性を延長した。
(b)補体活性化を調節するために、K322A点突然変異を施した。
(c)F243L及びR292P点突然変異をFc鎖に施して、Fc融合タンパク質誘導体の産生を改善した。
(d)Y300L、P396L、S298A、E333A又はK334A点突然変異の少なくとも1つ以上をFc鎖に施して、Fc融合タンパク質誘導体の産生を更に改善した。
(e)Fc鎖のC末端でのヒトCCR5のN末端細胞外配列(配列番号5)の付加。
(f)Fc鎖のC末端でのT-20(配列番号10)、C34(配列番号11)又はEHO(配列番号12)配列の付加。
(g)(i)CCR5配列(配列番号5)、(ii)T-20(配列番号10)、C34(配列番号11)又はEHO(配列番号12)配列、及び(iii)Fc鎖のC末端での可変数の柔軟な連結(GGGGS)(配列番号4)及び/又は配列番号6~9。
【0157】
本発明のFc融合タンパク質誘導体を発現するすべてのポリヌクレオチドは、GeneArtプロセス並びにpcDNA3.1及びpcDNA3.4発現プラスミドを使用して合成された。
【0158】
0.5μg/μLの10mMのTris緩衝液pH8でプラスミドを再構成した。化学的に有能なOne Shot TOP10大腸菌(Life Technologies Corp.社、Carlsbad、CA、USA)を1μMのプラスミドを用いて形質転換し、製造業者の指示に従った。簡単に説明すると、1μlのプラスミドを細菌のバイアルに添加し、氷上で15分間インキュベートした。その後、チューブを42℃で30秒間インキュベートし、すぐに氷上で2分間放置した。細菌を250μLのSOC培地(Life Technologies Corp.社、Carlsbad、CA、US)で再懸濁し、37℃で1時間、Innova 4000インキュベーターシェーカー(New Brunswick Scientific Co.、Inc.社、Enfield、CT、USA)において225rpmでインキュベートした。その後、細胞培養物の1/100希釈液の100μlをアンピシリン選択(100μg/mL)LB-Agarプレートに広げた。プレートを37℃で16~24時間、Heraeusインキュベーター(Thermo Fisher Scientific社、Waltham、MA、USA)でインキュベートした。1つのコロニーを分離し、5mLのアンピシリン(100μg/mL)選択LB培地に接種し、Innova 4000インキュベーターシェーカー(New Brunswick Scientific Co.、Inc.社、Enfield、CT、USA)において8時間、37℃にて、225rpmでインキュベートした。その後、500mLのアンピシリン(100μg/mL)選択LB培地を500μLの前述の前培養物とともに接種し、前述のように37℃、225rpmで16時間インキュベートした。Eppendorf遠心分離機5810R(Thermo Fisher Scientific社、Waltham、MA、USA)において室温で45分間、3000×gで遠心分離することにより細菌を収集し、Qiagen Plasmid Maxi Kit(Qiagen NV社、Venlo、NL)を使用してプラスミドを単離し、製造業者の指示に従った。精製されたプラスミドは、nanodrop 1000装置(Thermo Fisher Scientific社、Waltham、MA、USA)を使用した分光測光法によって定量された。
【0159】
2.タンパク質の産生、定量、及び精製
HEK-293細胞は、製造業者の指示に従って、Calphosトランスフェクションキット(Clontech(登録商標)、Takara Bio Inc.社、Otsu、J)を使用して、本発明の異なるFc融合タンパク質誘導体をコードするプラスミドでトランスフェクトされた。48時間後、上清を回収し、0.45μmフィルター(EMD Millipore社、Merck KGaA社、Darmstadt、DE)に濾過させることにより清澄化し、使用するまで-20℃で保存した。
【0160】
Fc融合タンパク質誘導体をELISAによって定量化した。簡単に言えば、Maxisorp 96-Fプレート(Nunc、Thermo Fisher Scientific社、Waltham、MA、USA)(Nunc、Thermo Fisher Scientific社、Waltham、MA、USA)は、PBS中1μg/mLで、100μl/ウェルのF(ab)2ヤギ抗ヒトIgG(Fc特異的)抗体(Jackson ImmunoResearch Labs、Inc.社、West Grove、PA、USA)とともに4℃で一晩インキュベートされた。PBS/10%FBS/0.05%Tween20でブロッキングし、洗浄した後、ブロッキング緩衝液中の培養上清(組換えタンパク質を含む)の連続希釈液をプレートに添加し(100μL/ウェル)、4℃で一晩インキュベートした。プレートを再び洗浄し、ブロッキング緩衝液で1/10000希釈した二次抗体HRP-F(ab)2ヤギ抗ヒトIgG(Fc特異的)(Jackson ImmunoResearch Labs、Inc.社、West Grove、PA、USA)を添加し(100μl/ウェル)、室温で1時間インキュベートした。プレートを洗浄し、OPD基質を使用して結合抗体を検出し、4N H2SO4の添加をして反応を停止した。生成物は、ELISAプレートリーダーにおいて492nmで測定された。
【0161】
タンパク質は、プロテインAセファロース(GE Healthcare、Inc.社、Stamford、CT、USA)カラムを使用して精製させた。上記のように、無血清培地を使用した一過性トランスフェクションによりタンパク質を産生させた。上清を採取し、3000×gで10分間遠心分離し、0.45μmでろ過して細胞片を除去した。清澄化した上清は、予め洗浄したプロテインAセファロースビーズに添加され、端から端まで回転させながら4℃で一晩インキュベートされた。プロテインAをTris緩衝液生理食塩水(TBS)で洗浄し、結合タンパク質を4M MgCl2で溶出した。或いは、CaptureSelect FcXL Affinity Matrix(Thermo Fisher Scientific社、Waltham、MA、USA)カラムを使用してタンパク質を精製し、グリシン緩衝液pH=3.5で溶出した。精製タンパク質をPBSに対して透析し、限外濾過により濃縮し、ELISA又は分光測光法により定量化し、使用するまで-80℃で保存した。
【0162】
3.中和アッセイ
HIV-1分離株NL4-3、BaL、AC10、SVBP6、SVBP8、SVBP11、SVBP12、SVBP14、SVBP15、SVBP17、SVBP18及びSVBP19は、Env発現プラスミド及びpSG3ベクターを使用して、擬似ウイルスとして生成された。Sanchez-Palomino S、et al、Vaccine 2011; 29:5250-5259を参照されたい。Fc融合タンパク質誘導体による無細胞ウイルス中和は、標準的なTZM-blベースのアッセイによって試験された。Li、2005(前掲)を参照されたい。簡単に言えば、96ウェル培養プレートにおいて、予め希釈されたFc融合タンパク質誘導体の100μLは、200 TCID50(組織培養感染量)を使用して37℃で1時間、偽ウイルスストック50μLとともにプレインキュベートされた。次に、ウェルあたり10,000個のTZM-blルシフェラーゼレポーター標的細胞を含む100μLを添加した。プレートを37℃、5%CO2で48時間培養した。Fc融合タンパク質誘導体の連続希釈液を1000から0.1ng/mLまで試験した。TZM-blレポーター細胞をデキストラン(Sigma-Aldrich社、Saint Louis、MO、USA)で処理して感染力を高めた。ルシフェラーゼ基質であるBritelite Plus(PerkinElmer、Inc.社、Waltham、MA、USA)を読み取りに使用した。中和データの非線形フィットは、可変ヒル勾配のある1部位阻害曲線に適合させた標準化値を使用して計算された。すべての統計分析及び非線形フィッティングは、GraphPad Prism v5.0ソフトウェアを使用して実行された。
【0163】
4.ADCCアッセイ
NK細胞によるHIV感染細胞のNK媒介性の破壊を活性化する異なるFc融合タンパク質誘導体の能力を評価するために、Alpert M、et al、J. Virol. 2012、86: 12039-12052に従ってADCCアッセイを行った。簡単に言えば、NK細胞株KHYG-1 CD16+をエフェクター細胞の供給源として使用し、CEM.NKR.CCR5+ Luc細胞株を標的細胞の供給源として使用した。アッセイの5日前に、標的細胞に感染性の高いBaL分離株で感染させ、R10培地(10%ウシ胎児血清を補足したRPMI)中で37℃にて培養した。アッセイをセットアップするために、異なる濃度のFc融合タンパク質誘導体又は抗体ベースの分子の存在下で、10U/mlの組換えIL-2を補足したR10培地で105個のエフェクター細胞とともに104個の標的細胞(それらの40%超が生産的に感染している)をU底96ウェルプレートの総容量を200μMにして培養した。37℃で8時間インキュベートした後、細胞を再懸濁し、150μlの細胞懸濁液を50μLのルシフェラーゼ基質であるBritelite Plus(PerkinElmer、Inc.社、Waltham、MA、USA)と混合した。読み取りにはルシフェラーゼ単位を使用した。標的細胞は、HIV感染時にルシフェラーゼを発現するため、ルシフェラーゼ活性の低下は、抗体及びNK媒介性の細胞死の直接的な尺度である。
【0164】
5.Fc受容体への結合(ELISAアッセイ)
Fc融合タンパク質誘導体のヒトFc受容体への結合親和性を評価するために、組換え可溶性ヒトCD64、CD32、CD16及びFcRnタンパク質を使用した異なるELISAアッセイを実施した(R&D Systems社、Bio-Techne Ltd社、Abingdon、GB)。簡単に言えば、Maxisorp 96-Fプレート(Nunc、Thermo Fisher Scientific社、Waltham、MA、USA)を100μl/ウェル(PBS中1μg/mL)のマウス抗6×HisクローンHIS.H8(Life Technologies、Thermo Fisher Scientific社、Waltham、MA、USA)とともに一晩、4℃でインキュベートした。PBS/1%BSA/0.05%Tween20でブロッキングし、洗浄した後、ブロッキング緩衝液に溶解したFc融合タンパク質免疫複合体の連続希釈液をプレートに添加し(100μL/ウェル)、4℃で一晩インキュベートした。免疫複合体は、Fc融合タンパク質(1μg)、ビオチン結合マウス抗ヒトCD4(1.4μg)(クローンSK3、Biolegend社)及びストレプトアビジン(0.125μg)(Jackson ImmunoResearch Labs、Inc.社、West Grove、PA、USA)の室温で2時間のインキュベーションによって調製された。プレートを再び洗浄し、ブロッキング緩衝液で10000希釈した二次抗体HRP-F(ab)2ヤギ抗ヒトIgG(Fc特異的)(Jackson ImmunoResearch Labs、Inc.社、West Grove、PA、USA)を添加し(100μL/ウェル)、室温で1時間インキュベートした。プレートを洗浄し、OPD基質を使用して結合抗体を検出し、4N H2SO4を添加して反応を停止した。生成物は、ELISAプレートリーダーにおいて492nmで測定された。
【0165】
6.Clqへの結合(ELISAアッセイ)
Fc融合タンパク質誘導体のヒトClqへの結合親和性を評価するために、可溶性ヒトClqを使用したELISAアッセイを実施した(Bio-Rad Labs、Inc.社、Hercules、CA、USA)。簡単に説明すると、Maxisorp 96-Fプレート(Nunc、Thermo Fisher Scientific社、Waltham、MA、USA)を100μL/ウェル(PBS中1μg/mL)のヒトC1qとともに4℃で一晩インキュベートした。PBS/1%BSA/0.05%Tween20でブロッキングし、洗浄した後、Fc融合タンパク質の連続希釈液を添加し、4℃で一晩インキュベートした。プレートを再び洗浄し、ブロッキング緩衝液で1/10000希釈した二次抗体HRP-F(ab)2ヤギ抗ヒトIgG(Fc特異的)(Jackson ImmunoResearch Labs、Inc.社、West Grove、PA、USA)を(100μL/ウェル)を添加し、室温で1時間インキュベートした。プレートを洗浄し、OPD基質を使用して結合抗体を検出し、4N H2SO4を添加して反応を停止した。生成物をELISAプレートリーダーにおいて492nmで測定した。
【実施例0166】
Fc融合タンパク質誘導体の設計
hu-CD4-マウスIgG1融合タンパク質を以前に報告されたように調製した。この融合タンパク質は、過去に抗CD4結合部位抗体の同定に使用されていた。Carrillo J、et al、PLOS One 2015; 10(3):0120648;
図1を参照されたい。しかしながら、CD4-IgG1分子は治療の可能性が限られていることが公知であるため、CD4-IgG1タンパク質の配列にいくつかの変更を導入して、その抗ウイルス活性及びADCC活性を増加させた。Jacobson J、et al、Antimicrob Agents Chemother. 2004; 48(2):423-429を参照されたい。
【0167】
第1に、ヒトIgG1のFc領域は、ADCC媒介性の応答を増加させるために、当該技術分野において記載されているように、位置G236A、S239D、A330L及びI332E(すなわち、AM突然変異セット)で突然変異された。Bournazos、2014(前掲)を参照されたい。HIV Envとの相互作用を増加させることを目的としたさらなる修飾には、CCR5(配列番号5)のN末端細胞外領域に対応する29アミノ酸配列の追加、及び柔軟な最適リンカーを有するFc鎖のC末端でのT-20(配列番号10)の追加が含まれた。したがって、CCR5とT-20配列の両方を含むFc融合タンパク質誘導体(M5)を設計した。
図1及び
図2を参照されたい。また、CCR5配列を欠損し、伸長されたリンカーを有する分子を構築した(M7)。
【0168】
第2に、M5及びM7分子の活性を改善させるために、いくつかのセットの突然変異がIgG1配列に組み込まれた。試験された突然変異のセットは次の通りであった:(i)A12(すなわち、F243L、R292P及びY300L;配列番号14)、(ii)A14(すなわち、F243L、R292P及びP396L;配列番号15)、(iii)A16(すなわち、F243L、R292P、Y300L及びP396L;配列番号16)、(iv)A18(すなわち、F243L、R292P、Y300L、P396L及びV305I;配列番号17)、(v)A41(すなわち、S298A、E333A及びK334A;配列番号18)、(vi)LL(M428L及びN434S;配列番号19)、並びにそれらの組合せ(例えば、配列番号20~33)。
図1及び
図2、Table 1(表1)を参照されたい。
【0169】
比較のために、eCD4-IgG1融合タンパク質(M1)もまた前述のように調製した。現在、eCD4-IgG1融合タンパク質は、当該技術分野において公知である最も強力な抗HIV操作抗体の1つである。Gardner、2015(前掲)を参照されたい。比較のためのより良い根拠を提供するために、CD4-IgG1融合タンパク質のFc鎖を位置G236A、S239D、A330L及びI332Eで更に突然変異させて、分子M6を得た。M7IgG1C34分子のIgG1配列をヒトIgG2配列で置き換えることにより、追加の対照分子を調製した。
図2を参照されたい。IgG2はADCC能を欠損し、したがって、ADCC分析において陰性対照を使用した。
【0170】