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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023007839
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】浮力式揚重装置
(51)【国際特許分類】
   E04H 3/14 20060101AFI20230112BHJP
   E04H 3/22 20060101ALI20230112BHJP
   E04B 1/343 20060101ALI20230112BHJP
【FI】
E04H3/14 C
E04H3/14 D
E04H3/22
E04B1/343 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021110936
(22)【出願日】2021-07-02
(71)【出願人】
【識別番号】517064843
【氏名又は名称】河野 久米彦
(71)【出願人】
【識別番号】502410196
【氏名又は名称】株式会社 横河システム建築
(74)【代理人】
【識別番号】110001335
【氏名又は名称】弁理士法人 武政国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】河野 久米彦
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼柳 隆
(72)【発明者】
【氏名】宮田 智夫
(72)【発明者】
【氏名】朱 大立
(72)【発明者】
【氏名】村岡 真
(72)【発明者】
【氏名】今井 卓司
(72)【発明者】
【氏名】瀧澤 峰義
(57)【要約】
【課題】本願発明の課題は、従来技術が抱える問題を解消することであり、すなわち、カウンターウェイトを利用して吊荷を昇降させるとともに、従来に比して昇降手段に係る費用を低減することができる浮力式揚重装置を提供することである。
【解決手段】本願発明の浮力式揚重装置は、基礎床面上に載置される吊荷を昇降させる装置であって、天井体と前方主滑車、後方主滑車、主吊ロープ、係止具、重錘、吊荷支持手段、貯留槽を備えたものである。貯留槽の液体を排出して液面を降下させることで主吊ロープに連結された吊荷が上昇し、貯留槽の液面を上昇させることで吊荷を降する。天井体まで上昇した吊荷を吊荷支持手段によって支持すると吊荷と主吊ロープとの連結解除が可能となり、吊荷が基礎床面上に載置されると吊荷と主吊ロープとの連結解除が可能となる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎床面上に載置される吊荷を、上昇させるとともに降下させる装置であって、
前記基礎床面よりも高い位置に設置された天井体と、
前記天井体に取り付けられ、鉛直又は略鉛直面内で回転可能な前方主滑車及び後方主滑車と、
前記前方主滑車に掛け回されて垂下するとともに前記後方主滑車に掛け回されて垂下する主吊ロープと、
前記前方主滑車に掛け回されて垂下する前記主吊ロープの下端に取り付けられた係止具と、
前記後方主滑車に掛け回されて垂下する前記主吊ロープの下端に取り付けられ、前記吊荷よりも重い重錘と、
前記吊荷を支持可能な吊荷支持手段と、
液体を貯留するとともに液体の注入と排出が可能であって、前記重錘を収容する貯留槽と、を備え、
前記係止具を、前記吊荷の被係止具に係止することによって、該主吊ロープと該吊荷が連結され、
前記貯留槽の液体を排出して液面を降下させることによって、前記重錘を降下させるとともに前記吊荷を上昇させ、
前記天井体まで上昇した前記吊荷を前記吊荷支持手段が支持することによって、該吊荷と前記主吊ロープとの連結解除が可能であり、
前記貯留槽の液体を注入して液面を上昇させることによって、前記重錘を上昇させるとともに前記吊荷を降下させ、
前記吊荷が前記基礎床面上に載置されると、該吊荷と前記主吊ロープとの連結解除が可能である、
ことを特徴とする浮力式揚重装置。
【請求項2】
基礎床面上に載置される吊荷を、上昇させるとともに降下させる装置であって、
前記基礎床面よりも高い位置に設置された天井体と、
前記天井体に取り付けられ、鉛直又は略鉛直面内で回転可能な前方主滑車及び後方主滑車と、
前記前方主滑車に掛け回されて垂下するとともに前記後方主滑車に掛け回されて垂下する主吊ロープと、
前記前方主滑車に掛け回されて垂下する前記主吊ロープの下端に取り付けられた係止具と、
前記後方主滑車に掛け回されて垂下する前記主吊ロープの下端に取り付けられ、前記吊荷よりも重い重錘と、
前記吊荷を支持可能な吊荷支持手段と、
液体を貯留するとともに液体の注入と排出が可能であって、前記重錘を収容する貯留槽と、を備え、
前記主吊ロープは、前記後方主滑車に掛け回されて垂下するとともに、下端で動滑車に掛け回されたうえで先端が固定され、
前記係止具を、前記吊荷の被係止具に係止することによって、該主吊ロープと該吊荷が連結され、
前記貯留槽の液体を排出して液面を降下させることによって、前記重錘を降下させるとともに前記吊荷を上昇させ、
前記天井体まで上昇した前記吊荷を前記吊荷支持手段が支持することによって、該吊荷と前記主吊ロープとの連結解除が可能であり、
前記貯留槽の液体を注入して液面を上昇させることによって、前記重錘を上昇させるとともに前記吊荷を降下させ、
前記吊荷が前記基礎床面上に載置されると、該吊荷と前記主吊ロープとの連結解除が可能である、
ことを特徴とする浮力式揚重装置。
【請求項3】
前記重錘は、底部重錘と、該底部重錘より上方に配置される本体重錘と、を含んで構成され、
前記重錘を上昇させるとともに降下させる昇降手段と、
前記本体重錘を支持可能な重錘支持手段と、をさらに備え、
前記吊荷が前記基礎床面上に載置されて該吊荷と前記主吊ロープとの連結が解除され、かつ前記本体重錘が前記重錘支持手段によって支持されると、前記昇降手段が前記底部重錘を降下させることによって、前記係止具を上昇させる、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の浮力式揚重装置。
【請求項4】
前記吊荷は、左側面と右側面を有する板状又は函体状であり、
前記天井体は、同一又は略同一の高さに配置される左天井体と右天井体とを含んで構成され、
前記前方主滑車は、前記左天井体に取り付けられる左前方主滑車と、前記右天井体に取り付けられる右前方主滑車と、を含んで構成され、
前記後方主滑車は、前記左天井体に取り付けられる左後方主滑車と、前記右天井体に取り付けられる右後方主滑車と、を含んで構成され、
前記主吊ロープは、前記左前方主滑車と前記左後方主滑車とに掛け回される左主吊ロープと、前記右前方主滑車と前記右後方主滑車とに掛け回される右主吊ロープと、を含んで構成され、
前記係止具は、前記左前方主滑車に掛け回されて垂下する前記左主吊ロープの下端に取り付けられる左係止具と、前記右前方主滑車に掛け回されて垂下する前記右主吊ロープの下端に取り付けられる右係止具と、を含んで構成され、
前記重錘は、前記左後方主滑車に掛け回されて垂下する前記左主吊ロープの下端に取り付けられる左重錘と、前記右後方主滑車に掛け回されて垂下する前記右主吊ロープの下端に取り付けられる右重錘と、を含んで構成され、
前記吊荷支持手段は、左吊荷支持手段と、右吊荷支持手段と、を含んで構成され、
前記貯留槽は、前記左重錘を収容する左貯留槽と、前記右重錘を収容する右貯留槽と、を含んで構成され、
前記吊荷は、前記左前方主滑車から垂下する前記左主吊ロープと前記右前方主滑車から垂下する前記右主吊ロープとの間であって、前記左側面が前記左主吊ロープ側に配置されるとともに、前記右側面が前記右主吊ロープ側に配置されるように、前記基礎床面上に載置され、
前記吊荷の前記左側面に設けられた前記被係止具に前記左係止具を係止するとともに、前記吊荷の前記右側面に設けられた前記被係止具に前記右係止具を係止することによって、前記主吊ロープと該吊荷が連結され、
前記左貯留槽の液体を排出して液面を降下させるとともに前記右貯留槽の液体を排出して液面を降下させることによって、前記主吊ロープに連結された前記吊荷を上昇させ、
前記天井体まで上昇した前記吊荷を、前記左吊荷支持手段と前記右吊荷支持手段が支持する、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の浮力式揚重装置。
【請求項5】
前記被係止具は、前記吊荷の側面から側方に突出した突起体であり、
前記前方主滑車は、鉛直面内を斜方向に移動可能であり、
上方かつ前記吊荷側に前記前方主滑車を移動することによって、前記係止具が前記被係止具の下方に当接して該係止具が該被係止具に係止される、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の浮力式揚重装置。
【請求項6】
前記天井体には、水平な軸である主軸に沿って複数の前記前方主滑車及び前記後方主滑車が取り付けられるとともに、それぞれの該前方主滑車及び該後方主滑車には、前記主吊ロープが掛け回され、
前記被係止具は、前記吊荷の前記側面に沿って一連で設けられるとともに、複数個所に切欠きが形成された櫛状であり、
前記係止具は、複数の前記主吊ロープの下端に取り付けられ、前記主軸方向に配置される棒状又は柱状であり、
前記側面が前記主軸方向となるように載置された前記吊荷の前記切欠き内に、それぞれの前記主吊ロープが配置された状態で、前記係止具を前記被係止具の下方に当接することによって該係止具と該被係止具が係止される、
ことを特徴とする請求項5記載の浮力式揚重装置。
【請求項7】
前記吊荷支持手段によって支持された前記吊荷を、前記主軸方向にスライド移動させるスライド移動手段を、さらに備えた、
ことを特徴とする請求項6記載の浮力式揚重装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、吊荷を昇降させる揚重装置に関するものであり、より具体的には、吊ロープとカウンターウェイトを用いて吊荷を昇降させるとともに、上昇した吊荷や地上に載置された吊荷から吊ロープを取り外すことができる揚重装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
競技場は、ある特定の競技を行うため、あるいはその競技を観戦させることを目的とする施設であり、野球場やサッカー場などはその代表的な例である。ところが、競技場で行われる競技の回数(例えば試合数)は一般的に年間を通じて数十回程度であり、そのため現状では年間を通じて安定的に収益を上げることは難しい。
【0003】
そこでスポーツ庁では、官民連携によるスタジアムやアリーナの整備計画策定に対して財政支援を行うこととしており、「稼げる」という視点を重視したうえでスポーツ以外のイベントも常時開催できる多機能型・複合型の施設の整備を推し進めている。そして、「稼げる」を重視した多機能型・複合型のスタジアムやアリーナを2025年までに全国的に整備する目標を掲げている。
【0004】
野球とサッカー、そしてコンサートなどに使用することができる多目的競技場は、1年を通じて定常的に集客機会が得られることから収益面にとっては極めて好適であり、これまでにも多目的競技場に関する様々な提案が行われてきた。例えば特許文献1では、フィールドの周囲に設置された外壁のうち一部の外壁を平面移動(スライド移動)することによってフィールドの広さ(面積)を可変とする多目的競技場について提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-33721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示される多目的競技場は、可動壁を平面移動することによって通常の競技用の空間よりも狭小な催事用空間を形成することができ、またフィールド全体を平面移動することによってその催事用空間からフィールドを取り除くことができる競技場である。これにより、本来の競技場としての用途であるサッカー等を実施することができるうえに、狭小な催事用空間を形成することで臨場感をもってコンサート等を開催することもでき、しかもフィールドを移動していることから天然芝の損傷を気にすることなく各種催事(イベント)を執り行うことができる。このように特許文献1に開示される発明は、極めて有効に多目的を達成することができるものであるが、可動壁を平面移動するため競技用の空間を維持したまま各種催事を執り行うことができないという問題を抱えていた。
【0007】
同じ空間を維持したまま競技と各種イベントを実施するためには、競技用のフィールド(例えば、芝生のフィールド)とイベント用の床(例えば、コンクリート床やフローリング床)を用意し、これらを2層構造とすることが考えられる。サッカー等を実施するときは競技用フィールドをグランドレベルに配置し、一方、コンサート等を開催するときは、この競技用フィールドを上方高く吊上げてイベント用床の利用を可能とするわけである。
【0008】
通常、競技用フィールドなど大きな重量の吊荷を昇降させる場合、ウィンチなどの巻上機(以下、「昇降手段」という。)と吊ロープ(ワイヤーロープなど)、そしてカウンターウェイトが利用される。最も身近な例がエレベーターであり、滑車を介して吊ロープの一端がハッチ(乗降スペース)に固定され、その他端がカウンターウェイトに固定される。これによりハッチとカウンターウェイトがある程度バランスすることになり、ハッチを昇降させる昇降手段の負担が軽減され、すなわち大規模な昇降手段の設置を回避することができるわけである。
【0009】
ところで、従来どおりカウンターウェイトを利用して競技用のフィールドを昇降させようとすると、やはり昇降手段の設置が必要となる。特に競技用のフィールドは、降雨や積雪によって全体重量の10%程度が増加することが知られており、カウンターウェイトを利用したとしても10%程度の増量分を勘案した相当規模の昇降手段を調達しなければならず、相応の予算確保が強いられることとなる。
【0010】
本願発明の課題は、従来技術が抱える問題を解消することであり、すなわち、カウンターウェイトを利用して吊荷を昇降させるとともに、従来に比して昇降手段に係る費用を低減することができる浮力式揚重装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明は、カウンターウェイトを液体内に沈めることで、すなわち浮力を利用することによって、荷昇降手段の機能を補う、という点に着目して開発されたものであり、従来にはない発想に基づいて行われた発明である。
【0012】
本願発明の浮力式揚重装置は、基礎床面上に載置される吊荷を昇降させる装置であって、天井体と前方主滑車、後方主滑車、主吊ロープ、係止具、重錘、吊荷支持手段、貯留槽を備えたものである。天井体は、基礎床面よりも高い位置に設置され、前方主滑車と後方主滑車は、略鉛直(鉛直を含む)面内で回転可能であり天井体に取り付けられる。主吊ロープは、前方主滑車に掛け回されて垂下するとともに後方主滑車に掛け回されて垂下し、係止具は、前方主滑車に掛け回されて垂下する主吊ロープの下端に取り付けられる。吊荷よりも重い重錘は、後方主滑車に掛け回されて垂下する主吊ロープの下端に取り付けられ、吊荷支持手段は、吊荷を支持することができる手段であり、貯留槽は、液体を貯留するとともに液体の注入と排出が可能であって重錘を収容するものである。なお、係止具を吊荷の被係止具に係止することによって主吊ロープと吊荷が連結され、貯留槽の液体を排出して液面を降下させることによって主吊ロープに連結された吊荷が上昇する。そして天井体まで上昇した吊荷を吊荷支持手段によって支持することで、吊荷と主吊ロープとの連結解除が可能(吊荷と主吊ロープとの連結を解除しても吊荷は落下しない状態)となる。また、貯留槽に液体を注入して液面を上昇させることによって、主吊ロープに連結された吊荷を降下させることができ、吊荷が基礎床面上に載置されると吊荷と主吊ロープとの連結解除が可能となる。
【0013】
本願発明の浮力式揚重装置は、動滑車を利用したものとすることもできる。この場合の主吊ロープは、後方主滑車に掛け回されて垂下するとともに、下端で動滑車に掛け回されたうえで先端が固定される。
【0014】
本願発明の浮力式揚重装置は、重錘が底部重錘と本体重錘(ただし、底部重錘より上方に配置される)を含んで構成され、昇降手段と重錘支持手段をさらに備えたものとすることもできる。後方副滑車は、略鉛直(鉛直を含む)面内で回転可能であり天井体に取り付けられ、副吊ロープは、後方副滑車に掛け回されて垂下し、昇降手段は、副吊ロープの下端に取り付けられた底部重錘を昇降させる手段であり、重錘支持手段は、本体重錘を支持することができる手段である。この場合、吊荷が基礎床面上に載置されて吊荷と主吊ロープとの連結が解除されるとともに本体重錘が重錘支持手段によって支持されると、昇降手段が底部重錘を降下させることによって係止具は上昇する。
【0015】
本願発明の浮力式揚重装置は、天井体が略同一(同一を含む)の高さに配置される左天井体と右天井体とを含んで構成されたものとすることもできる。この場合の前方主滑車は、左天井体に取り付けられる左前方主滑車と右天井体に取り付けられる右前方主滑車を含んで構成され、後方主滑車は、左天井体に取り付けられる左後方主滑車と右天井体に取り付けられる右後方主滑車を含んで構成され、主吊ロープは、左前方主滑車と左後方主滑車に掛け回される左主吊ロープと右前方主滑車と右後方主滑車に掛け回される右主吊ロープを含んで構成され、係止具は、左前方主滑車に掛け回されて垂下する左主吊ロープの下端に取り付けられる左係止具と右前方主滑車に掛け回されて垂下する右主吊ロープの下端に取り付けられる右係止具を含んで構成され、重錘は、左後方主滑車に掛け回されて垂下する左主吊ロープの下端に取り付けられる左重錘と右後方主滑車に掛け回されて垂下する右主吊ロープの下端に取り付けられる右重錘を含んで構成され、吊荷支持手段は、左吊荷支持手段と右吊荷支持手段を含んで構成され、貯留槽は、左重錘を収容する左貯留槽と右重錘を収容する右貯留槽を含んで構成される。左前方主滑車から垂下する左主吊ロープと右前方主滑車から垂下する右主吊ロープとの間であって左側面が左主吊ロープ側に配置されるとともに右側面が右主吊ロープ側に配置されるように吊荷が基礎床面上に載置されると、吊荷の左側面に設けられた被係止具に左係止具を係止するとともに吊荷の右側面に設けられた被係止具に右係止具を係止することによって主吊ロープと吊荷が連結される。そして、左貯留槽の液体を排出して液面を降下させるとともに右貯留槽の液体を排出して液面を降下させることによって、主吊ロープに連結された吊荷が上昇し、天井体まで上昇した吊荷は左吊荷支持手段と右吊荷支持手段によって支持される。また、左貯留槽の液体に液体を注入して液面を上昇させるとともに右貯留槽の液体に液体を注入して液面を上昇させることによって、左主吊ロープと右主吊ロープに連結された吊荷を降下させることができ、吊荷が基礎床面上に載置されると吊荷と主吊ロープ(左主吊ロープと右主吊ロープ)との連結解除が可能となる。その後、主吊ロープ(左主吊ロープと右主吊ロープ)を巻き上げることによって、吊荷周辺から吊ロープを取り除くことができる。
【0016】
本願発明の浮力式揚重装置は、被係止具を吊荷の側面から側方に突出した突起体としたものとすることもできる。この場合の前方主滑車は、鉛直面内を斜方向に移動可能とされ、上方かつ吊荷側に前方主滑車を移動することによって、係止具が被係止具の下方に当接して係止具が被係止具に係止される。
【0017】
本願発明の浮力式揚重装置は、主軸(水平軸)に沿って複数の前方主滑車と後方主滑車が天井体に取り付けられたものとすることもできる。なお、それぞれの前方主滑車と後方主滑車には主吊ロープが掛け回される。この場合の被係止具は、吊荷の側面に沿って一連で設けられるとともに、複数個所に切欠きが形成された櫛状とされ、係止具は、複数の主吊ロープの下端に取り付けられた棒状や柱状(ただし、主軸方向に配置)とされる。そして、側面が主軸方向となるように載置された吊荷の切欠き内にそれぞれの主吊ロープが配置された状態で、係止具を被係止具の下方に当接することによって係止具と被係止具が係止される。
【0018】
本願発明の浮力式揚重装置は、スライド移動手段をさらに備えたものとすることもできる。このスライド移動手段は、荷支持手段によって支持された吊荷を主軸方向にスライド移動させる手段である。
【発明の効果】
【0019】
本願発明の浮力式揚重装置には、次のような効果がある。
(1)例えば、サッカーや野球などの競技場に利用した場合、本来目的としている競技(サッカーや野球など)を行うことができるうえ、これら競技と同様の空間を維持したままコンサートなどの各種のイベントを執り行うことができる。すなわち、多様な用途に適用することができ、その結果、競技場の稼働率を高めることができる。
(2)重錘(カウンターウェイト)を貯留槽の液体内に沈めることによって浮力を利用することができるため、従来に比して昇降手段の負担が大幅に軽減され、すなわち比較的小規模な昇降手段を設置することができ、その結果、装置全体に係る費用を低減することができる。
(3)また、液体内における重錘の沈降深さを調節することによって、浮力の程度を変化させることができ、降雨や積雪による吊荷の重量変化にも容易に対応することができる。
(4)床面上に載置された吊荷(例えば、フィールド)から吊ロープを取り外し、さらにその吊ロープを巻き上げることができ、すなわち吊荷周辺から吊ロープを取り除くことができることから、例えば競技場に利用した場合、通常どおり競技を行ことができ、好適に観戦することができる。
(5)上昇した吊荷を吊荷支持手段で支持することから、上方の吊荷を安全に支持することができる。また、吊荷から吊ロープを取り外すことによって、吊ロープに作用する緊張力を解除することができ、その結果、吊ロープの損傷が低減され長期にわたる使用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本願発明の浮力式揚重装置の一例を模式的に示す断面図。
図2】本願発明の浮力式揚重装置の一例を模式的に示す平面図。
図3】(a)は吊荷の側面に沿った方向に見た鉛直断面図、(b)は(a)に示すA-A矢視方向に見た鉛直断面図。
図4】複数の主吊ロープの下端に取り付けられた棒状の係止具を模式的に示す正面図。
図5】(a)は前方主滑車と主吊ロープ、後方主滑車が配置された箇所で切断した浮力式揚重装置の鉛直断面図、(b)は昇降手段と後方副滑車、副吊ロープが配置された箇所で切断した浮力式揚重装置の鉛直断面図。
図6】重錘支持手段を備えた浮力式揚重装置を模式的に示す鉛直断面図。
図7】(a)は主吊ロープの一部に動滑車が掛け回され底部重錘の上に本体重錘が載置された浮力式揚重装置を模式的に示す鉛直断面図、(b)は主吊ロープの一部に動滑車が掛け回され底部重錘のみが基礎床面まで降下した浮力式揚重装置を模式的に示す鉛直断面図。
図8】(a)は天井体内に収容された吊荷支持手段を模式的に示す鉛直断面図、(b)は天井体から引き出された吊荷支持手段を模式的に示す鉛直断面図。
図9】(a)は定常位置から斜め上方向に移動した天井滑車を模式的に示す鉛直断面図、(b)は定常位置から斜め下方向に移動した天井滑車を模式的に示す鉛直断面図。
図10】スライド移動手段によって主軸方向にスライド移動しているフィールドを上方から見た平面図。
図11】浮力式揚重装置を使用して、天井体付近で吊荷支持手段に支持されたフィールドを基礎床面まで降下させる主な手順の流れを示すフロー図。
図12】浮力式揚重装置を使用して、天井体付近で吊荷支持手段に支持されたフィールドを基礎床面まで降下させる主な手順を示すステップ図。
図13】浮力式揚重装置を使用して、基礎床面上に載置されたフィールドを天井体まで上昇させる主な手順の流れを示すフロー図。
図14】浮力式揚重装置を使用して、基礎床面上に載置されたフィールドを天井体まで上昇させる主な手順を示すステップ図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本願発明の浮力式揚重装置の実施形態の一例を、図に基づいて説明する。
【0022】
1.全体概要
本願発明の浮力式揚重装置は、屋外の地面や屋内の床面、あるいは競技場のグランドレベル面といった平面(以下、便宜上ここでは「基礎床面」という。)の上に置かれた吊荷を昇降させる(上昇させ、かつ降下させる)ものであり、天井体と前方主滑車、後方主滑車、主吊ロープ、係止具、重錘(カウンターウェイト)、吊荷支持手段、貯留槽などを備える装置である。「天井体」は、基礎床面よりも高い位置に設置されるものであり、例えばコンクリートスラブや鋼製トラス構造など相当の作用荷重(特に、鉛直力や、鉛直力に伴う曲げモーメントなど)に抵抗し得る構造体である。
【0023】
天井体の側面や内部に設けられた空間には、略鉛直面(鉛直面を含む)内で回転可能な滑車(プーリー)である「前方主滑車」と「後方主滑車」が取り付けられる。なお、前方主滑車と後方主滑車は略同一(同一を含む)の高さに配置され、また前方主滑車は吊荷に近い位置に、一方の後方主滑車は吊荷から遠い位置に配置される。「主吊ロープ」は、これら前方主滑車と後方主滑車に掛け回されて下方に垂下し、前方主滑車から垂下する主吊ロープの下端にはフックや後述する棒状係止具といった「係止具」が取り付けられ、他方、後方主滑車から垂下する主吊ロープの下端には相当の重量を有する「重錘」が取り付けられる。主吊ロープとしては、吊荷の重量に応じて種々の材質のものを利用することができ、例えば吊荷の重量が大きいケースではワイヤーロープを採用するとよい。なお、吊荷にはアイボルトや後述する突起体などの「被係止具」が設けられており、この被係止具に係止具が係止されることによって主吊ロープと吊荷が連結される。
【0024】
「重錘」は、いわゆるカウンターウェイトであり、したがって吊荷の重量と概ね同等の重量であって、吊荷の重量よりもやや大きな重量とされる。また「貯留槽」は、液体を貯留するとともに液体の注入と排出が可能であって、重錘を収容するものである。重錘を貯留槽内の液体内に沈めることによって重錘に対する浮力を生じさせることができ、すなわち重錘の実質的な重量を調整することができるため、重錘の重量を吊荷より大きくすることも、重錘の重量を吊荷より小さくすることもできるわけである。より具体的には、重錘が液体内に浸かっている深さ(以下、「沈降深」という。)を小さくする(浅くする)ことによって重錘の重量を吊荷より大きくすることができ、反対に重錘の沈降深を大きくする(深くする)ことによって重錘の重量を吊荷より小さくすることができる。
【0025】
上記したとおり貯留槽は、液体を注水することによって貯留槽内の液面を上昇させることができ、しかも液体を排出することによって貯留槽内の液面を降下させることができる構成とされる。液体を注水するにあたっては従来用いられているポンプ等の注水装置を利用することができ、また、液体を排出するにあたっては貯留槽の底部に設けられた開閉栓などを利用することができる。なお、貯留槽底部の開閉栓を開栓することで排出された液体を貯留する排出プールを別途設置し、液体を注水するときは開閉栓を閉栓したうえでこの排出プールに貯留された液体を注入すると、液体を巡回利用することができて好適となる。なお、貯留槽内の液体は、水を利用することもできるし、水以外の液体を利用することもできる。水を利用する場合、水以外の液体を利用する場合に比してその調達にかかる費用が低減されるうえその取扱いも容易となる。一方、油など水以外の液体を利用する場合、水の比重よりも大きいためより大きな浮力を重錘に与えることができ、すなわち重錘の実質的な重量の調整量を大きくすることができることができるが、その調達費用が嵩むうえ取り扱いも難しくなる。したがって採用する液体の種類は、状況に応じて適宜選択するとよい。
【0026】
吊荷の種類によっては、その重量が変化するものもある。例えば競技用のフィールドは、既述したように降雨や積雪によって全体重量の10%程度が増加することが知られている。そこで、重錘は予想される重量の最大値よりもやや大きな重量にするとよい。吊荷が競技用フィールドの場合、平常時の競技用フィールドの重量の1.1倍よりやや重い重錘を使用すれば、降雨等によって重くなった競技用フィールドを吊上げることもでき、一方、競技用フィールドが平常時の重量(1.0倍)となったときは浮力によって重錘の実質的な重量を小さくすることによって競技用フィールドとのバランスをとることができる。仮に重錘を鋼製とした場合、その比重は7.85であり、完全に重錘を水中に沈めると重錘の実質的な比重は6.85(7.85-1.0)となり、つまり約13%程度の重量調整が可能となるため、競技用フィールドの重量変化にも容易に対応することができる。
【0027】
「吊荷支持手段」は、天井体の高さまで上昇した吊荷を支持するものであり、吊荷がその位置(天井体付近)から落下しないように支えるいわばストッパーである。例えば、吊荷支持手段を天井体から出し入れ可能(左右にスライド可能)な構造とし、天井体から引き出した吊荷支持手段を天井体の下面に配置したり、天井体の一部に挿入したりすることで、吊荷を支持することができる。なお吊荷支持手段は、他の手段を必要とすることなく、つまり単体で吊荷を支持することができ、したがって、吊荷が吊荷支持手段によって支持されると、主吊ロープ下端の係止具と吊荷の被係止具の係止を解除しても吊荷はその位置で維持される(落下しない)。
【0028】
本願発明の浮力式揚重装置は、さらに「昇降手段」を備えたものとすることもできる。この昇降手段は、ウィンチやホイストといった荷揚げ用の装置であり、前方主滑車や後方主滑車と同様、天井体の側面や内部空間に設置され、「副吊ロープ」を巻き上げたり巻き下げたり(巻き出したり)するものである。この副吊ロープの下端には重錘が取り付けられ、したがって昇降手段が副吊ロープを巻き上げることによって液面高(水位)を上昇させることなく重錘を上昇させることができ、重錘がその自重によって降下する際には制動力を働かせることができる。当然ながら主吊ロープと副吊ロープは異なるものであり、つまり2種類の吊ロープが配置され、主吊ロープの両端にはそれぞれ重錘と係止具が取り付けられるのに対して、副吊ロープの一端は昇降手段、他端には重錘が取り付けられる。前方主滑車と後方主滑車、主吊ロープは、略同一(同一を含む)の鉛直面内に配置され、それぞれがいわば一組となって機能することから、これら前方主滑車と後方主滑車、主吊ロープからなる一連の組み合わせのことを、便宜上ここでは「昇降体セット」ということとする。
【0029】
以下、本願発明の浮力式揚重装置について、より詳しく説明する。
【0030】
2.浮力式揚重装置
図1は、本願発明の浮力式揚重装置100一例を模式的に示す断面図(鉛直面で切断した図)であり、図2は、本願発明の浮力式揚重装置100の一例を模式的に示す平面図(上方から見た図)である。なお本願発明の浮力式揚重装置100は、あらゆる物を吊荷として利用することができるが、便宜上ここではサッカー競技場におけるサッカー用のフィールド200を吊荷とする例で説明することとする。
【0031】
フィールド200など比較的面積が大きく板状(あるいは函体状)の吊荷を対象とする場合、図1に示すように、浮力式揚重装置100各要素を吊荷の両側にそれぞれ配置するとよい。すなわち図1に示すように、天井体101が左天井体101Lと右天井体101Rを含む構成とし、同様に、前方主滑車102が左前方主滑車102Lと右前方主滑車102Rを含み、主吊ロープ103が左主吊ロープ103Lと右主吊ロープ103Rを含み、後方主滑車104が左後方主滑車104Lと右後方主滑車104Rを含み、吊荷支持手段105が左吊荷支持手段105Lと右吊荷支持手段105Rを含み、係止具106が左係止具106Lと右係止具106Rを含み、重錘107が左重錘107Lと右重錘107Rを含み、貯留槽113が左貯留槽113Lと右貯留槽113Rを含み、昇降手段108が左昇降手段108Lと右昇降手段108Rを含み、副吊ロープ110が左副吊ロープ110Lと右副吊ロープ110Rを含む構成とする。なおこの図では、左後方副滑車109Lと右後方副滑車109Rを含む後方副滑車109を設置しており、昇降手段108の副吊ロープ110がこの後方副滑車109に掛け回されたうえでその下端に重錘107を取り付ける構成としているが、これに限らず、後方副滑車109を設けることなく昇降手段108の副吊ロープ110の下端に直接、重錘107を取り付ける構成とすることもできる。
【0032】
そして、左天井体101Lと左前方主滑車102L、左主吊ロープ103L、左後方主滑車104L、左吊荷支持手段105L、左係止具106L、左重錘107L、左貯留槽113L、左昇降手段108L、左後方副滑車109L、左副吊ロープ110Lを板状(あるいは函体状)のフィールド200に形成された左側面201L側(図では左側)に配置するとともに、右天井体101Rと右前方主滑車102R、右主吊ロープ103R、右後方主滑車104R、右吊荷支持手段105R、右係止具106R、右重錘107R、右貯留槽113R、右昇降手段108R、右後方副滑車109R、右副吊ロープ110をフィールド200に形成された右側面201R側(図では右側)に配置する。なお、左天井体101Lと右天井体101Rは、略同一(同一を含む)の高さに配置される。
【0033】
フィールド200など比較的面積が大きく板状(あるいは函体状)の吊荷を対象とする場合、図2に示すように、複数の「昇降体セット(前方主滑車と後方主滑車、主吊ロープからなる一連の組み合わせ)」を配置するとよい。例えば図2では、左天井体101Lと右天井体101Rそれぞれに12組の昇降体セットが配置されている。この場合、同一の水平軸(以下、「主軸」という。)に沿って複数の前方主滑車102(左前方主滑車102L、右前方主滑車102R)を配置するとともに、同一の主軸に沿って複数の後方主滑車104(左後方主滑車104L、右後方主滑車104R)を配置するとよい。また、前方主滑車102(左前方主滑車102L、右前方主滑車102R)と後方主滑車104(左後方主滑車104L、右後方主滑車104R)の間に張設される主吊ロープ103(左主吊ロープ103L、右主吊ロープ103R)は、主軸に対して垂直な軸(以下、「副軸」という。)方向に配置するとよい。
【0034】
また、浮力式揚重装置100各要素を吊荷の両側に配置し、しかも主軸方向に複数の昇降体セットを配置する場合、基礎床面上のフィールド200(吊荷)は主軸方向に沿って配置するとよい。具体的には、左前方主滑車102Lから垂下する左主吊ロープ103Lと右前方主滑車102Lから垂下する右主吊ロープ103Rとの間であって、フィールド200の左側面201Lが左主吊ロープ103L側となりその右側面201Rが右主吊ロープ103R側となるように、さらにフィールド200の左側面201Lが左側の主軸方向と略平行(平行を含む)となりその右側面201Rが右側の主軸方向と略平行(平行を含む)となるように、フィールド200を配置するわけである。なお浮力式揚重装置100は、各要素を吊荷の両側に配置したり、主軸方向に複数の昇降体セットを配置したりする構成に限らず、吊荷の重量や形状によっては、吊荷の一方側にのみ各要素を配置したり、1の昇降体セットを配置したりする構成とすることもできる。
【0035】
主吊ロープ103の下端に取り付けられた係止具106は、フィールド200(吊荷)の被係止具に係止されることで、主吊ロープ103とフィールド200を連結するものであり、例えば、係止具106としてフックを利用するとともに被係止具として環状治具(アイボルトなど)を利用することができる。あるいは図3に示すように、被係止具として「突起体202」を利用することもできる。図3は、フィールド200の側面201に形成された突起体202を模式的に示す図であり、(a)は側面201に沿った方向(図2に示す主軸方向)に見た鉛直断面図であり、(b)は図3(a)に示すA-A矢視方向(図2に示す副軸方向)に見た鉛直断面図である。図3(a)に示すように突起体202は、フィールド200の側面201から突出した形状であり、その下面側には凹部(図では半円状の凹部)が形成されている。なお、フィールド200のように両側の主吊ロープ103(左主吊ロープ103Lと右主吊ロープ103R)によって吊り上げられる場合、突起体202などの被係止具はもちろん両方の側面201(左側面201Lと右側面201R)に設けられる。
【0036】
被係止具として突起体202を利用する場合、係止具106としては図4に示す棒状のものを利用するとよい。この棒状の係止具106は、断面寸法に比して軸方向寸法が卓越した棒状や柱状であり、中実とすることも中空(つまり、管状)とすることもできる。また、1の棒状の係止具106は、複数の主吊ロープ103の下端に取り付けることができ、例えば図4では3本の主吊ロープ103の下端に1の棒状の係止具106が取り付けられている。もちろん、図4の例に限らず、2本あるいは4本以上の主吊ロープ103の下端に1の棒状の係止具106を取り付けることもできるし、全て(図4では12本)の主吊ロープ103の下端に1の棒状の係止具106を取り付けることもできる。
【0037】
棒状の係止具106は、突起体202(被係止具)の下方に当接することで係止される。例えば図3(a)では、突起体202の下面側に形成された凹部に棒状の係止具106の一部が嵌合することによって係止されている。したがって、双方の形状を円形や半円とするなど、係止具106の断面形状は突起体202の凹部の形状に合わせることが望ましい。
【0038】
ところで、フィールド200のような吊荷を対象とする場合、フィールド200の側面201(左側面201Lや右側面201R)に沿って一連の被係止具(例えば、突起体202)が設けられることとなるが、複数の主吊ロープ103の下端に1の棒状の係止具106を取り付けると主吊ロープ103が被係止具に干渉することとなる。この場合、図3(b)に示すように突起体202(被係止具)の複数個所に切欠き203を形成し、突起体202をいわば櫛状にするとよい。主吊ロープ103を切欠き203内に配置することで、すべての突起体202の凹部に棒状の係止具106を嵌合させることができるわけである。なお図3(b)では、間隔を設けつつ独立した複数の突起体202を設置する構成としているが、これに限らず一部(例えば、フィールド200の側面201側の一部)は連続して形成されるが主吊ロープ103が配置される部分には切欠き203が形性される構成とすることもできる。
【0039】
既述したとおり被係止具(例えば、突起体202)に係止具106が係止されると主吊ロープ103とフィールド200(吊荷)が連結され、主吊ロープ103の一方(後方主滑車104側)の下端には重錘107、他方(前方主滑車102側)の下端にはフィールド200が連結された状態となる。そして、貯留槽内の液面を昇降することによってフィールド200を昇降させる。あるいは昇降手段108を備えた場合、貯留槽内の液面を昇降に加えこの昇降手段108を用いてフィールド200を昇降させることもできる。
【0040】
図5は浮力式揚重装置100を模式的に示す図であり、(a)は前方主滑車102と主吊ロープ103、後方主滑車104(つまり、昇降体セット)が配置された箇所で切断した鉛直断面図であり、(b)は昇降手段108と後方副滑車109、副吊ロープ110が配置された箇所で切断した鉛直断面図である。この図に示すように、前方主滑車102と主吊ロープ103、後方主滑車104(つまり、昇降体セット)からなる経路と、昇降手段108と後方副滑車109、副吊ロープ110からなる経路は、それぞれ別経路として配置されるが、主吊ロープ103、副吊ロープ110ともにその一端(図では左端)には重錘107が取り付けられる。そして、貯留槽113内に注水してその液面を上昇させることによって重錘107が上昇するとともに主吊ロープ103に取り付けられた係止具106は降下し、貯留槽113内の液体を排出してその液面を降下させることによって重錘107が降下するとともに係止具106は上昇する。そして、貯留槽113内の液面高(水位)を昇降させることなく、昇降手段108が副吊ロープ110を巻き上げることによって重錘107が上昇するとともに主吊ロープ103に取り付けられた係止具106は降下し、昇降手段108が制動力を働かせつつ重錘107が自沈(自重によって降下)すると係止具106は上昇する。
【0041】
図1図2に示すように、浮力式揚重装置100の各要素を吊荷の両側に配置し、しかも主軸方向に複数の昇降体セットを配置する場合、1の主吊ロープ103に1の重錘107を取り付けることもできるし、複数の主吊ロープ103に1の重錘107(左重錘107L、右重錘107R)を取り付けることもできる。例えば図2の場合、独立した重錘107(左重錘107L、右重錘107R)を昇降体セットの数(つまり、計24個)だけ用意し、それぞれの主吊ロープ103に個々の重錘107を取り付けることができる。あるいは、それぞれ4個の左重錘107Lと右重錘107Rを用意し、3本の左主吊ロープ103Lに1の左重錘107Lを取り付けるとともに、3本の右主吊ロープ103Rに1の右重錘107Rを取り付けることもできる。さらに、それぞれ1個の左重錘107Lと右重錘107Rを用意し、すべて(つまり、12本)の左主吊ロープ103Lに1の左重錘107Lを取り付けるとともに、すべて(つまり、12本)の右主吊ロープ103Rに1の右重錘107Rを取り付けることもできる。いずれにしろ、使用する重錘107の総重量は、フィールド200(吊荷)の重量(予想される最大重量)よりやや大きな重量とされる。また、貯留槽113(左貯留槽113L、右貯留槽113R)は、昇降体セットの数(図2の場合、計24組)だけ配置することもできるし、重錘107と同数だけ配置することもでき、あるいは1個所だけ(図2の場合、左右2個所)配置することもできる。同様に、昇降手段108(左昇降手段108L、右昇降手段108R)と、後方副滑車109(左後方副滑車109L、右後方副滑車109R)、副吊ロープ110(左副吊ロープ110L、右副吊ロープ110R)からなる組み合わせは、昇降体セットの数(図2の場合、計24組)だけ配置することもできるし、重錘107と同数だけ配置することもできる。
【0042】
浮力式揚重装置100は、図6に示すように重錘支持手段111を備えたものとすることもできる。そして、この場合の重錘107は、底部重錘107Bと本体重錘107Mを含む構成にするとよい。なお底部重錘107Bは、本体重錘107Mよりも軽量のものを用いるとよい。本体重錘107Mは底部重錘107Bよりも上方に配置され、本体重錘107Mと底部重錘107Bはそれぞれ独立して昇降することができる。主吊ロープ103の下端には底部重錘107Bのみが取り付けられるとともに、副吊ロープ110の下端にも底部重錘107Bのみが取り付けられており、主吊ロープ103と副吊ロープ110は本体重錘107M内に設けられた貫通孔に挿通されている。したがって、底部重錘107Bが上昇するとその上に配置された本体重錘107Mも一緒に上昇し、底部重錘107Bが降下するとその上に配置された本体重錘107Mも一緒に降下する。
【0043】
重錘支持手段111は、上昇した本体重錘107Mをその位置(その高さ)で支持するものであり、本体重錘107Mがその位置から落下しないように支えるいわばストッパーである。例えば重錘支持手段111は、貯留槽113の断面方向(側面外方から断面中心に向かう方向)にスライド(出し入れ)可能な構造とすることができる。ただし重錘支持手段111のスライド移動に伴って液体が漏れないよう、十分な漏水対策が必要となる。この場合、本体重錘107Mが上昇してくるときは、重錘支持手段111がその上昇の妨げとならないように貯留槽113の側面外方に配置され、一方、本体重錘107Mが上昇した後は、本体重錘107Mを支持するために貯留槽113の内部に重錘支持手段111を引き出すことができる。なお本体重錘107Mは、本体重錘107Mのみを支持するものであり、したがって本体重錘107Mと底部重錘107Bとの間には所定の(重錘支持手段111が挿入できる程度の)隙間が設けられており、引き出された重錘支持手段111はこの隙間内に挿入される。また重錘支持手段111をスライドさせるにあたっては、ウィンチなどの巻き上げ装置を利用したり、油圧や空圧、電力等を利用したりするなど、従来用いられている種々の動力を利用することができる。さらに、複数の独立した重錘支持手段111を主軸方向(図2)に並べて配置することもできるし、主軸方向に連続する一体型の重錘支持手段111を配置することもできる。
【0044】
図6に示すように、本体重錘107Mが重錘支持手段111に支持されると、底部重錘107Bは単独での昇降が可能となる。つまり、昇降手段108が制動力を働かせつつ底部重錘107Bが単独で自沈すると主吊ロープ103に取り付けられた係止具106が上昇し、降下した底部重錘107Bは昇降手段108が副吊ロープ110を巻き上げることによって単独で上昇するするとともに係止具106が降下するわけである。また、本体重錘107Mの位置まで底部重錘107Bが上昇し、重錘支持手段111による本体重錘107Mの支持が解除されると、本体重錘107Mの自重は底部重錘107Bに預けられ、今度は本体重錘107Mと底部重錘107Bが一体となって昇降する。
【0045】
浮力式揚重装置100は、図7に示すように主吊ロープ103の一部に動滑車112が掛け回されたものとすることもできる。図7は、主吊ロープ103の一部に動滑車112が掛け回された浮力式揚重装置100を模式的に示す鉛直断面図であり、(a)は底部重錘107の上に本体重錘107Mが載置された状況を示し、(b)は底部重錘107のみが基礎床面まで降下した状況を示している。この場合、後方主滑車104に掛け回されて垂下する主吊ロープ103は、その下端で動滑車112に掛け回されるとともに、この動滑車112で折り返して上方に向かう先端(図では上端)が構造体(天井体101など)に固定される。
【0046】
図7に示すように動滑車112を用いた「動滑車形式」としたケースでも、図7(b)に示すように底部重錘107Bと本体重錘107Mを含む重錘107と、重錘支持手段111を備えたものとすることができる。具体的には、主吊ロープ103の下端で掛け回された動滑車112と副吊ロープ110の下端で掛け回された動滑車に底部重錘107Bが取り付けられ、主吊ロープ103と副吊ロープ110は本体重錘107M内に設けられた貫通孔(この場合、往復用の2本の貫通孔)に挿通される。このような構成にすることにより、本体重錘107Mが重錘支持手段111に支持されると、動滑車112と底部重錘107Bは本体重錘107Mから独立して昇降が可能となる。つまり、昇降手段108が制動力を働かせつつ底部重錘107Bが動滑車112とともに自沈すると主吊ロープ103に取り付けられた係止具106が上昇し、降下した動滑車112と底部重錘107Bは昇降手段108が副吊ロープ110を巻き上げることによって上昇するとともに係止具106が降下するわけである。このように動滑車112を用いた動滑車形式にすると、図5図6に示す「定滑車形式」に比べ重錘107の重量を2倍にする必要があるものの、動滑車112と底部重錘107Bの昇降長さ(ストローク長)が半分となり、ストローク長の確保が難しいケースでは動滑車形式を好適に採用することができる。なお、主吊ロープ103を動滑車形式とした場合、副吊ロープ110も同様に動滑車形式にすることもできるし、図5図6に示す定滑車形式(副吊ロープ110の下端は動滑車に掛け回さることなく底部重錘107Bを直接取り付ける形式)とすることもできる。また、図7では動滑車112の下方に底部重錘107Bが取り付けられているが、これに限らず動滑車112の上方に底部重錘107Bを取り付けることもできる。
【0047】
吊荷支持手段105は、天井体101内に収容されるとともに、天井体101から引き出すことができるように、左右(図2に示す副軸方向)にスライド可能な構造とすることもできる。図8は、左右にスライド可能な吊荷支持手段105を模式的に示す鉛直断面図であり、(a)は天井体101内に収容された吊荷支持手段105を示し、(b)は天井体101から引き出された吊荷支持手段105を示している。この場合、フィールド200が上昇してくるときは、吊荷支持手段105がその上昇の妨げとならないように天井体101内に収容し、一方、フィールド200が上昇した後は、フィールド200を支持するために吊荷支持手段105を天井体101から引き出すことができる。なお、吊荷支持手段105をスライドさせるにあたっては、ウィンチなどの巻き上げ装置を利用したり、油圧や空圧、電力等を利用したりするなど、従来用いられている種々の動力を利用することができる。また、複数の独立した荷支持手段105を主軸方向(図2)に並べて配置することもできるし、主軸方向に連続する一体型の荷支持手段105を配置することもできる。
【0048】
前方主滑車102は、鉛直面内を斜方向に移動可能な構造とすることもできる。図9は、鉛直面内を斜方向に移動可能な前方主滑車102を模式的に示す鉛直断面図であり、(a)は定常位置(図で示す破線の位置)から斜め上方向に移動した前方主滑車102を示し、(b)は定常位置(図で示す破線の位置)から斜め下方向に移動した前方主滑車102を示している。この場合、前方主滑車102の移動によって、フィールド200の被係止具(例えば、突起体202)に係止具106を係止させることができるとともに、その係止を解除することができる。具体的には、図9(a)に示すように前方主滑車102が定常位置(図で示す破線の位置)から斜め上方向に移動すると、係止具106が潜り込むように突起体202の下方に配置され、その結果、突起体202の凹部に棒状の係止具106を嵌合させることができる。他方、図6(b)に示すように前方主滑車102が定常位置(図で示す破線の位置)から斜め下方向に移動すると、係止具106が突起体202の下方配置から外れ、その結果、突起体202と係止具106との係止が解除される。なお、吊荷支持手段105の移動は50~100cm程度で足りることから油圧を利用した構成とするのが好ましいが、これに限らず従来用いられている種々の動力を利用することもできる。
【0049】
浮力式揚重装置100は、吊荷支持手段105(吊荷支持手段105Lと吊荷支持手段105R)によって支持された吊荷を主軸方向に水平移動させる「スライド移動手段」をさらに備えたものとすることもできる。図10は、スライド移動手段によって主軸方向にスライド移動しているフィールド200を上方から見た平面図である。この場合、フィールド200が上昇した(つまり、取り除かれた)後の基礎床面における利用が多様化する。すなわち、雨天時などは屋根として利用すべくフィールド200をスライド移動させず、一方、晴天時などはスライド移動手段によってフィールド200をスライド移動させるわけである。なお、フィールド200をスライドさせるにあたっては、ウィンチなどの巻き上げ装置を利用したり、油圧や空圧、電力等を利用したりするなど、従来用いられている種々の動力を利用することができる。また図10では、2分割された左フィールド200Lと左フィールド200Rをそれぞれ反対方向にスライド移動させているが、これに限らず一体の(つまり、分割されない)フィールド200をどちらか一方向にスライド移動させる仕様とすることもできる。
【0050】
(使用例)
浮力式揚重装置100を使用して、基礎床面までフィールド200を降下させる例について、図11図12を参照しながら説明する。図11は、浮力式揚重装置100を使用して、天井体101付近で吊荷支持手段105に支持されたフィールド200を基礎床面まで降下させる主な手順の流れを示すフロー図であり、図12は、浮力式揚重装置100を使用して、天井体101付近で吊荷支持手段105に支持されたフィールド200を基礎床面まで降下させる主な手順を示すステップ図である。
【0051】
まず、天井体101付近で吊荷支持手段105に支持されたフィールド200の被係止具(例えば、突起体202)に係止具106を係止させ、主吊ロープ103とフィールド200を連結する(図11のStep11)。例えば、図9(b)に示すように前方主滑車102が定常位置(図で示す破線の位置)よりも斜め下方向に位置している場合、前方主滑車102を定常位置に戻すように斜め上方向に移動させ、突起体202の凹部に棒状の係止具106を嵌合させる。
【0052】
図12(a)に示すように係止具106が突起体202に係止されると、吊荷支持手段105によるフィールド200の支持を解除する(図11のStep12)。例えば、図9(a)に示すように前方主滑車102を定常位置(図で示す破線の位置)から斜め上方向に移動することによって、フィールド200を若干量だけ持ち上げる。その結果、吊荷支持手段105はフィールド200の自重から解放され、図12(b)に示すように天井体101内に収容されるように吊荷支持手段105をスライド移動することができ、すなわち吊荷支持手段105によるフィールド200の支持が解除される。
【0053】
吊荷支持手段105によるフィールド200の支持が解除されると、前方主滑車102を定常位置に戻したうえで、図12(c)に示すように係止具106に係止されたフィールド200を基礎床面まで降下させる(図11のStep13)。より詳しくは、貯留槽113内に液体を注入して貯留槽113内の液面を上昇させることによって、貯留槽113内の重錘107を上昇させ、これにより主吊ロープ103に連結されたフィールド200を基礎床面まで降下させる。このとき、貯留槽113として左貯留槽113Lと右貯留槽113Rが配置されているときは、左貯留槽113L内の液面と右貯留槽113R内の液面を略同時(同時を含む)に上昇させることによって、左重錘107Lと右重錘107R2を略同時(同時を含む)に上昇させる。
【0054】
液体の注入によって貯留槽113内の液面が上昇すると、瞬間的に重錘107の沈降深が大きくなり、すなわち重錘107に作用する浮力が大きくなることで、フィールド200が降下する。フィールド200が降下すると、今度は重錘107の沈降深が小さくなり、すなわち重錘107に作用する浮力が小さくなることでフィールド200の降下が停止する。このように、液体の注入を継続していくと、重錘107が徐々に上昇し、これに伴ってフィールド200が徐々に降下していくわけである。そして、フィールド200が基礎床面に着地すると、図12(d)に示すように重錘支持手段111をスライド移動させて構造体内から引き出し、上昇した本体重錘107Mをその位置で支持する(図11のStep14)。
【0055】
重錘支持手段111によって本体重錘107Mが支持されると、突起体202と係止具106の係止を解除する(図11のStep15)。例えば、図12(e)に示すように前方主滑車102を定常位置から斜め下方向に移動させ、突起体202と係止具106との係止を解除する。突起体202と係止具106の係止が解除されると、昇降手段108が制動力を働かせつつ底部重錘107Bを単独で自沈させ、図12(f)に示すように係止具106を天井体101まで上昇させる(図11のStep16)。このとき、重錘107として左重錘107Lと右重錘107Rが配置されているときは、左右の底部重錘107Bを自沈させる。なお、底部重錘107Bを自沈させるためには、係止具106を浮力が作用したときの底部重錘107Bよりも軽量としておくとよい。ただし、急速な上昇に伴う係止具106の損傷を防ぐため、昇降手段108によって制動力を働かせつつ係止具106を上昇させることが望ましい。以上の手順を行うことにより、フィールド200周辺(つまり、グランドレベル)から主吊ロープ103が排除され、競技を行う者にとっても観戦する者にとっても好適な環境が形成されるわけである。
【0056】
続いて、浮力式揚重装置100を使用して天井体101までフィールド200を上昇させる例について、図13図14を参照しながら説明する。図13は、基礎床面上に載置されたフィールド200を天井体101まで上昇させる主な手順の流れを示すフロー図であり、図14は、基礎床面上に載置されたフィールド200を天井体101まで上昇させる主な手順を示すステップ図である。
【0057】
まず、昇降手段108によって副吊ロープ110を巻き上げることで底部重錘107Bのみを上昇させ、図14(g)に示すように係止具106を降下させる(図13のStep21)。このとき、重錘107として左重錘107Lと右重錘107Rが配置されているときは、左右の底部重錘107Bを降下させる。そして、係止具106がフィールド200まで降下すると、係止具106を突起体202に係止させ、主吊ロープ103とフィールド200を連結する(図13のStep22)。例えば図14(h)に示すように、定常位置から斜め下方向に位置する前方主滑車102を、定常位置に戻るように斜め上方向に移動させ、係止具106を突起体202に係止させる。そして係止具106が突起体202に係止されると、図14(i)に示すように重錘支持手段111をスライド移動させ、重錘支持手段111による本体重錘107Mの支持を解除する(図13のStep23)。
【0058】
重錘支持手段111による本体重錘107Mの支持が解除されると、図14(j)に示すように係止具106に係止されたフィールド200を天井体101まで上昇させる(図13のStep24)。より詳しくは、貯留槽113内の液体を排出して貯留槽113内の液面を降下させることによって貯留槽113内の重錘107を降下させ、これにより主吊ロープ103に連結されたフィールド200を上昇させる。このとき、貯留槽113として左貯留槽113Lと右貯留槽113Rが配置されているときは、左貯留槽113L内の液面と右貯留槽113R内の液面を略同時(同時を含む)に降下させることによって、左重錘107Lと右重錘107R2を略同時(同時を含む)に降下させる。なお、浮力が作用したときの重錘107よりもフィールド200の方がやや軽量であるため、昇降手段108を使用することなく重錘107が降下するとともにフィールド200が上昇するが、急速な昇降に伴う重錘107やフィールド200の損傷を防ぐため、昇降手段108によって制動力を働かせつつこれらを昇降させることが望ましい。
【0059】
液体の排出によって貯留槽113内の液面が降下すると、瞬間的に重錘107の沈降深が小さくなり、すなわち重錘107に作用する浮力が小さくなることで、フィールド200が上昇する。フィールド200が上昇すると、今度は重錘107の沈降深が大きくなり、すなわち重錘107に作用する浮力が大きくなることでフィールド200の上昇が停止する。このように、液体の排出を継続していくと、重錘107が徐々に降下し、これに伴ってフィールド200が徐々に上昇していくわけである。
【0060】
フィールド200が天井体101まで上昇すると、図14(k)に示すように吊荷支持手段105をスライド移動させて天井体101から引き出す(図13のStep25)。このとき、フィールド200の下面と吊荷支持手段105との間に若干の隙間が生じるようにフィールド200は吊上げられており、すなわちフィールド200の自重は昇降体セットがすべて負担していることから、吊荷支持手段105を円滑に引き出すことができる。
【0061】
吊荷支持手段105を天井体101から引き出すと、フィールド200を吊荷支持手段105に支持させる。具体的には、貯留槽113内に注水してその液面を若干量だけ上昇させることによって、図14(l)に示すようにフィールド200を降下させる。この結果、フィールド200の下面と吊荷支持手段105との間の隙間が消失し、すなわちフィールド200の自重は吊荷支持手段105がすべて負担する。スライド移動手段によってフィールド200を主軸方向にスライド移動させる場合、突起体202と係止具106の係止を解除する(図13のStep26)。例えば、前方主滑車102を定常位置から斜め下方向に移動させ、突起体202と係止具106との係止を解除する。これにより、主吊ロープ103に作用する緊張力を解除することができ、その結果、主吊ロープ103の損傷が低減され長期にわたる使用が可能となるわけである。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本願発明の浮力式揚重装置は、サッカー競技場や野球場、陸上競技場といった種々のスポーツ競技施設や、コンサートや展示会、物産展といった種々のイベントを行う興行施設など、様々な施設で利用することができる。
【符号の説明】
【0063】
100 本願発明の浮力式揚重装置
101 (浮力式揚重装置の)天井体
101L (天井体の)左天井体
101R (天井体の)右天井体
102 (浮力式揚重装置の)前方主滑車
102L (前方主滑車の)左前方主滑車
102R (前方主滑車の)右前方主滑車
103 (浮力式揚重装置の)主吊ロープ
103L (主吊ロープの)左主吊ロープ
103R (主吊ロープの)右主吊ロープ
104 (浮力式揚重装置の)後方主滑車
104L (後方主滑車の)左後方主滑車
104R (後方主滑車の)右後方主滑車
105 (浮力式揚重装置の)吊荷支持手段
105L (吊荷支持手段の)左吊荷支持手段
105R (吊荷支持手段の)右吊荷支持手段
106 (浮力式揚重装置の)係止具
106L (係止具の)左係止具
106R (係止具の)右係止具
107 (浮力式揚重装置の)重錘
107L (重錘の)左重錘
107R (重錘の)右重錘
107B (重錘の)底部重錘
107M (重錘の)本体重錘
108 (浮力式揚重装置の)昇降手段
108L (昇降手段の)左昇降手段
108R (昇降手段の)右昇降手段
109 (浮力式揚重装置の)後方副滑車
109L (後方副滑車の)左後方副滑車
109R (後方副滑車の)右後方副滑車
110 (浮力式揚重装置の)副吊ロープ
110L (副吊ロープの)左副吊ロープ
110R (副吊ロープの)右副吊ロープ
111 (浮力式揚重装置の)重錘支持手段
112 (浮力式揚重装置の)動滑車
113 (浮力式揚重装置の)貯留槽
113L (前方副滑車の)左貯留槽
113R (前方副滑車の)右貯留槽
200 フィールド
200L (フィールドの)左フィールド
200R (フィールドの)右フィールド
201 (フィールドの)側面
201L (側面のうちの)左側面
201R (側面のうちの)右側面
202 (フィールドの)突起体
203 (フィールドの)切欠き
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14