(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023078401
(43)【公開日】2023-06-06
(54)【発明の名称】AAV9アフィニティ薬剤
(51)【国際特許分類】
C07K 7/52 20060101AFI20230530BHJP
C07K 17/14 20060101ALI20230530BHJP
C12N 7/02 20060101ALI20230530BHJP
C07K 17/02 20060101ALI20230530BHJP
【FI】
C07K7/52 ZNA
C07K17/14
C12N7/02
C07K17/02
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047636
(22)【出願日】2023-03-24
(62)【分割の表示】P 2022515976の分割
【原出願日】2020-05-22
(31)【優先権主張番号】62/852,717
(32)【優先日】2019-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/949,878
(32)【優先日】2019-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】521511449
【氏名又は名称】アビタイド リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ドドソン ウィリアム スコット
(72)【発明者】
【氏名】キヤー ブランドン
(72)【発明者】
【氏名】コイル ブランドン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァレンティーニ サラ
(72)【発明者】
【氏名】スカンロン トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ケット ウォーレン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】アデノ随伴ウイルスの結合、単離、および/または精製のために有用である、アデノ随伴ウイルスと特異的に結合するリガンドを含むアフィニティ薬剤を提供する。
【解決手段】アフィニティ薬剤は、特定のアミノ酸配列を有する結合モチーフを含むリガンドを含む。さらに、前記結合モチーフの、関連する修飾、およびアフィニティ薬剤を作製する方法が開示される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リガンドを含むアフィニティ薬剤であって、前記リガンドが、下記のアミノ酸配列を有する結合モチーフを含む、アフィニティ薬剤:
(a)配列番号1~5、または
(b)2つ以下の置換、付加、または欠失だけ配列番号1~5と異なるアミノ酸配列。
【請求項2】
リガンドを含むアフィニティ薬剤であって、前記リガンドが、下記のアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む、アフィニティ薬剤:
(a)配列番号6~47、または
(b)2つ以下の置換、付加、または欠失だけ配列番号6~47と異なるアミノ酸配列。
【請求項3】
前記リガンドのN末端が、アセチル化されている、請求項1に記載のアフィニティ薬剤。
【請求項4】
前記リガンドが、C末端のリジンをさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のアフィニティ薬剤。
【請求項5】
前記リガンドのC末端のリジンが、アミド化されている、請求項4に記載のアフィニティ薬剤。
【請求項6】
前記リガンドが、少なくとも1つのポリエチレングリコール(PEG)をさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のアフィニティ薬剤。
【請求項7】
前記少なくとも1つのポリエチレングリコールが、PEG(3)である、請求項6に記載のアフィニティ薬剤。
【請求項8】
前記リガンドが、固体表面に付着している、請求項1~7のいずれか一項に記載のアフィニティ薬剤。
【請求項9】
前記固体表面が、樹脂またはビーズである、請求項8に記載のアフィニティ薬剤。
【請求項10】
前記固体表面が、膜である、請求項8に記載のアフィニティ薬剤。
【請求項11】
前記固体表面が、モノリス(monolith)である、請求項10に記載のアフィニティ薬剤。
【請求項12】
前記リガンドが、リンカーを介して前記固体表面にコンジュゲートしている、請求項8~11のいずれか一項に記載のアフィニティ薬剤。
【請求項13】
前記リンカーが、PEGおよび/またはリジンを含む、請求項12に記載のアフィニティ薬剤。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載のリガンドを含むアフィニティ薬剤であって、前記リガンドが環式ポリペプチドを含む、アフィニティ薬剤。
【請求項15】
アデノ随伴ウイルスの精製のために使用される、請求項1~14のいずれか一項に記載のアフィニティ薬剤。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載のリガンドを固体表面にコンジュゲートさせること
を含む、アフィニティ薬剤を作製する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年5月24日出願の米国特許仮出願第62/852,717号および2019年12月18日出願の米国特許仮出願第62/949,878号の利益を主張するものであり、各内容は参照により全体として本明細書に組み込まれている。
【背景技術】
【0002】
生物学的に作製される治療法の純度は、安全性および有効性を保証するために、当局によって厳しく精査され、規制されている。よって、生物学的に作製される治療法を高い純度にまで効率的に精製する手段が、依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0003】
治療用タンパク質の臨床上の取組みを支援するためには、組換え供給源からタンパク質を効率的に精製する組成物および方法が必要である。アフィニティ精製は、少ない工程または1回の工程で、所望の純度のタンパク質を単離し、かつ/または得る手段である。しかしながら、アフィニティ薬剤(例えば、アフィニティリガンドを含む)の開発は、資源集約的で時間のかかる作業である傾向があり、ゆえに、アフィニティ薬剤は、ごくわずかのタンパク質に対してしか存在しない。アフィニティ薬剤がない場合、精製は、典型的には、マルチカラムプロセスなどの効率の悪いプロセスを含む。
【0004】
組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)は、ヒトにおける遺伝子療法の送達のための、最も研究されたウイルスベクターの1つである。AAV血清型は、細胞への進入と、発現のための遺伝子カーゴの核への送達とを可能にする、様々な細胞指向性、および細胞受容体との相互作用を表すものである。AAV9は、血液脳関門を横断する能力が報告されているため、生物製剤開発者にとって特に興味深いものであり、一連の中枢神経系(CNS)疾患を対処する可能性のある、特に重要なものである。CNS疾患に対する適用に加えて、AAV9は、肝臓、骨格筋、および肺組織に向かう広範な指向性を有するため、非CNS疾患を対処するためにも使用されている。
【0005】
rAAVの製造は、難しく、費用のかかるものである。細胞培養生産性は低く、典型的には、1リットル当たり1013~1015ウイルスカプシドしか得られず、これは、およそ0.1~10mg/Lに相当する。精製は、主にはアフィニティクロマトグラフィーの使用を経て達成される。現在のところ、AAVの精製のための利用可能なアフィニティ樹脂は、POROS(商標)CaptureSelect(商標)AAV9、POROS(商標)CaptureSelect(商標)AAVX、およびAVBセファロースの3種類しかない。これらの樹脂には2つの大きな欠点があり、それは、水酸化ナトリウムによる洗浄ができないことと、数サイクルしか再利用できないことである。このことが、樹脂の消費量を増し、したがって精製のための樹脂の費用を高めている。
【0006】
AAVと結合し、単離および/またはアフィニティ精製のために有用なアフィニティ薬剤を、本明細書において説明する。
【0007】
一部の実施形態において、配列番号1~5、または3つ以下、2つ以下、もしくは1つ以下の置換、付加、もしくは欠失だけ異なるアミノ酸配列の結合モチーフを含むリガンドを含む、アフィニティ薬剤が本明細書に提供される。
【0008】
一部の実施形態において、リガンドを含むアフィニティ薬剤であって、該リガンドが、配列番号5~20に記載のアミノ酸配列または3つ以下、2つ以下、もしくは1つ以下の置換、付加、もしくは欠失だけ異なるアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む、アフィニティ薬剤が本明細書に提供される。
【0009】
一部の実施形態において、リガンドを含むアフィニティ薬剤であって、該リガンドが、配列番号21~47に記載のアミノ酸配列または3つ以下、2つ以下、もしくは1つ以下の置換、付加、もしくは欠失だけ異なるアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む、アフィニティ薬剤が本明細書に提供される。
【0010】
一部の実施形態において、リガンドのN末端は、アセチル化されている。一部の実施形態において、リガンドは、C末端のリジンをさらに含む。一部の実施形態において、リガンドのC末端のリジンは、アミド化されている。一部の実施形態において、リガンドは、少なくとも1つのポリエチレングリコール(PEG)をさらに含む。一部の実施形態において、少なくとも1つのポリエチレングリコールは、PEG(3)である。
【0011】
一部の実施形態において、リガンドは、固体表面に付着している。一部の実施形態において、固体表面は、樹脂またはビーズである。一部の実施形態において、固体表面は、膜である。一部の実施形態において、固体表面は、モノリス(monolith)である。一部の実施形態において、リガンドは、リンカーを介して固体表面にコンジュゲートしている。一部の実施形態において、リンカーは、PEGおよび/またはリジンを含む。
【0012】
一部の実施形態において、本開示によって提供されるアフィニティ薬剤および/またはリガンドは、環状ペプチドであるかまたは環状ペプチドを含む。一部の実施形態において、提供されるアフィニティ薬剤および/またはリガンドは、環状部分を含む。一部の実施形態において、配列番号1、または環状ペプチドもしくはペプチドの環状部分内の3つ以下、2つ以下、もしくは1つ以下の置換、付加、もしくは欠失だけ異なるアミノ酸配列の結合モチーフを含むリガンドを含む、アフィニティ薬剤が本明細書に提供される。
【0013】
一部の実施形態において、ウイルス粒子の精製のために使用されるアフィニティ薬剤が本明細書に提供される。一部の実施形態において、本開示によって提供されるアフィニティ薬剤および/またはリガンドは、環状ペプチドであるかまたは環状ペプチドを含む。一部の実施形態において、提供されるアフィニティ薬剤および/またはリガンドは、環状部分を含む。一部の実施形態において、配列番号1~5、または環状ペプチドもしくはペプチドの環状部分内の3つ以下、2つ以下、もしくは1つ以下の置換、付加、もしくは欠失だけ異なるアミノ酸配列の結合モチーフを含むリガンドを含む、アフィニティ薬剤が本明細書に提供される。
【0014】
一部の実施形態において、ウイルス粒子の精製のために使用されるアフィニティ薬剤が本明細書に提供される。
【0015】
一部の実施形態において、アデノ随伴ウイルス粒子の精製のために使用されるアフィニティ薬剤が本明細書に提供される。
【0016】
一部の実施形態において、アフィニティ薬剤を作製する方法であって、本明細書において説明されたいずれかの実施形態に記載のリガンドを固体表面にコンジュゲートさせることを含む、方法が本明細書に提供される。
【0017】
定義
本開示がより容易に理解されるように、特定の用語を下記に定義する。本明細書において別段の定義がないかぎり、技術および科学用語は、当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。
【0018】
およそ(approximately)または約(about):本明細書において使用する「およそ」または「約」という用語は、対象とする1つ以上の値に適用する場合、記載の基準値に類似した値を指す。ある実施形態において、「およそ」または「約」という用語は、(そのような数が、取り得る値の100%を超える場合を除き)別段の記載がないかぎりまたは文脈から明らかでないかぎり、いずれかの(より大きいまたはより低い)方向で、記載の基準値の25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、またはそれ未満の範囲に含まれる様々な値を指す。
【0019】
生物学的に活性である:本明細書において使用する場合、「生物学的に活性である」という用語は、生物学的システムにおいて、特に生物において、活性を有する任意の薬剤の特徴を指す。例えば、生物に投与された場合、その生物に対して生物学的効果を有する薬剤は、生物学的に活性であるとみなされる。
【0020】
保存的置換および非保存的置換:「保存的」アミノ酸置換とは、あるアミノ酸残基が、類似の側鎖を有する別のアミノ酸残基によって置き換えられるアミノ酸置換である。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当技術分野において定義されており、塩基性側鎖(例えば、リジン(K)、アルギニン(R)、ヒスチジン(H));酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E));非荷電極性側鎖(例えば、グリシン(G);アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、セリン(S)、スレオニン(T)、チロシン(Y)、システイン(C));非極性側鎖(例えば、アラニン(A)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)、フェニルアラニン(F)、メチオニン(M)、トリプトファン(W)、ベータ分枝側鎖(例えば、スレオニン(T)、バリン(V)、イソロイシン(I));および芳香族側鎖(例えば、チロシン(Y)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、ヒスチジン(H))が挙げられる。例えば、チロシンに対するフェニルアラニンの置換は、保存的置換である。一部の実施形態において、リガンドの配列における保存的アミノ酸置換は、目的のリガンド標的の特異的結合を付与するかまたは改善する。一部の実施形態において、リガンドの配列における保存的アミノ酸置換は、目的の標的へのリガンドの結合を低下させないかまたは抑止しない。一部の実施形態において、保存的アミノ酸置換は、目的の標的へのリガンドの特異的結合に有意な影響を与えない。選択的結合親和性を付与、改変、または維持するヌクレオチドおよびアミノ酸の保存的置換ならびに非保存的置換の同定方法は、当技術分野において既知である(例えば、Brummell、Biochem.32:1180~1187(1993);Kobayashi、Protein Eng.12(10):879~884(1999);およびBurks、PNAS 94:412~417(1997)を参照されたい)。一部の実施形態において、リガンドの配列における非保存的アミノ酸置換は、目的のリガンド標的の特異的結合を付与するかまたは改善する。一部の実施形態において、リガンドの配列における非保存的アミノ酸置換は、目的の標的へのリガンドの結合を低下させないかまたは抑止しない。一部の実施形態において、非保存的アミノ酸置換は、目的の標的へのリガンドの特異的結合に有意な影響を与えない。
【0021】
リンカー:本明細書において使用する場合、「リンカー」とは、別の状況では独立している機能的ドメインを連結するように機能するペプチドまたはその他の化学結合を指す。一部の実施形態において、リンカーは、リガンドと別の状況では独立している機能的ドメインを含有する別のポリペプチド成分との間に位置する。一部の実施形態において、リンカーは、リガンドと表面との間に位置するペプチドまたはその他の化学結合である。
【0022】
天然に存在する:「天然に存在する」という用語は、核酸分子、ポリペプチド、および宿主細胞などの生物学的材料に関して使用される場合、自然界で認められ、人によって改変されてない生物学的材料を指す。反対に、「非天然」または「合成」は、生物学的材料に関して使用される場合、自然界では認められなくかつ/または人によって改変されている生物学的材料を指す。
【0023】
「非天然アミノ酸」、「アミノ酸アナログ」、および「非標準的アミノ酸残基」は、本明細書において互換的に使用される。本明細書で提供されるようなリガンドにおいて置換されうる非天然アミノ酸は、当技術分野において既知である。一部の実施形態において、非天然アミノ酸は、プロリンに対して置換されうる4-ヒドロキシプロリン;リジンに対して置換されうる5-ヒドロキシリジン;ヒスチジンに対して置換されうる3-メチルヒスチジン;セリンに対して置換されうるホモセリン;およびリジンに対して置換されうるオルニチンである。ポリペプチドリガンドにおいて置換されうる非天然アミノ酸のさらなる例としては、一般的なアミノ酸のD-異性体、2,4-ジアミノ酪酸、アルファ-アミノイソ酪酸、A-アミノ酪酸、Abu、2-アミノ酪酸、ガンマ-Abu、イプシロン-Ahx、6-アミノヘキサン酸、Aib、2-アミノイソ酪酸、3-アミノプロピオン酸、オルニチン、ノルロイシン、ノルバリン、ヒドロキシプロリン、サルコシン、シトルリン、ホモシトルリン、システイン酸、t-ブチルグリシン、t-ブチルアラニン、フェニルグリシン、シクロヘキシルアラニン、ベータ-アラニン、ランチオニン、デヒドロアラニン、γ-アミノ酪酸、セレノシステイン、およびピロリジンフルオロ-アミノ酸、例えばベータ-メチルアミノ酸、Cアルファ-メチルアミノ酸、およびNアルファ-メチルアミノ酸といったデザイナーアミノ酸(designer amino acid)などの分子が挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
「ポリヌクレオチド」および「核酸分子」:本明細書において互換的に使用される場合、ポリヌクレオチドおよび核酸分子は、任意の長さの、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドのヌクレオチドの重合形態を指す。これらの用語には、DNA、RNA、cDNA(相補的DNA)、mRNA(メッセンジャーRNA)、rRNA(リボソームRNA)、shRNA(低分子ヘアピン型RNA)、snRNA(核内低分子RNA)、snoRNA(核小体低分子RNA)、miRNA(マイクロRNA)、ゲノムDNA、合成DNA、合成RNA、および/またはtRNAが含まれるが、それらだけに限定されない。
【0025】
作動可能に連結された:「作動可能に連結された」という用語は、本明細書において使用する場合、2つの分子がそれぞれ機能的活性を保持するように付着していることを示す。直接結合されているにせよ間接的に結合されているにせよ、2つの分子は「作動可能に付着している」。
【0026】
ペプチドタグ:本明細書において使用される「ペプチドタグ」という用語は、別のタンパク質の一部であるペプチド配列または別のタンパク質に(例えば遺伝子操作によって)付着し、その結果生成された融合物に、ある機能を与えるペプチド配列を指す。ペプチドタグは、通常、それらが融合されるタンパク質と比べて比較的短い。一部の実施形態において、ペプチドタグは、4つ以上のアミノ酸長、またはそれより多い、例えば5、6、7、8、9、10、15、20、または25個以上のアミノ酸長である。一部の実施形態において、リガンドは、ペプチドタグを含有するタンパク質である。本明細書で提供されるような用途を有する数多くのペプチドタグが、当技術分野において既知である。リガンド融合タンパク質のまたはリガンド(例えば、リガンド融合タンパク質)が結合する標的の成分となりうるペプチドタグの例としては、HA(ヘマグルチニン)、c-myc、単純ヘルペスウイルス糖タンパク質D(gD)、T7、GST、GFP、MBP、Strep-タグ、His-タグ、Myc-タグ、TAP-タグ、およびFLAGタグ(Eastman Kodak、Rochester、N.Y.)が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、タグエピトープに対する抗体によって、例えば、アフィニティ精製、ウェスタンブロット、ELISAアッセイ、および細胞の免疫染色において融合タンパク質の検出および局在化が可能となる。
【0027】
ポリペプチド:本明細書において使用される「ポリペプチド」という用語は、ペプチド結合を介して互いに連結されたアミノ酸の連続鎖を指す。この用語は、いかなる長さでもアミノ酸鎖を指すために使用されるが、当業者は、この用語が非常に長い鎖に限定されず、ペプチド結合を介して互いに連結した2つのアミノ酸を含む最小の鎖を指しうることを理解するであろう。当業者には既知であるように、ポリペプチドは、プロセッシングおよび/または修飾を受けていることがある。
【0028】
タンパク質:本明細書において使用される「タンパク質」という用語は、個別のユニットとして機能する1つ以上のポリペプチドを指す。1つのポリペプチドが、個別の機能ユニットであり、その個別の機能ユニットを形成するためにその他のポリペプチドとの永続的なまたは一時的な物理的会合を必要としない場合、「ポリペプチド」と「タンパク質」という用語は互換的に使用することができる。個別の機能的ユニットが、互いに物理的に会合する複数のポリペプチドから構成されている場合、「タンパク質」という用語は、物理的に結合し、個別のユニットとして共に機能する複数のポリペプチドを指す。
【0029】
特異的に結合する:リガンドに関して本明細書において使用する場合、「特異的に結合する」または「~に対する選択的親和性を有する」という用語は、特定のエピトープ、タンパク質、または標的分子に、関連のないタンパク質など代替の物質と比べてより頻繁に、より速やかに、より長い期間で、より高い親和性で反応または会合する、リガンドまたは上記の組合せを意味する。様々な種において相同なタンパク質の間には配列同一性があるため、特異的結合には、複数の種においてタンパク質または標的を認識する結合剤を含まれうる。同様に、様々なタンパク質のポリペプチド配列の特定の領域内には相同性があるため、特異的結合は、複数のタンパク質または標的を認識する結合剤を含みうる。ある実施形態において、第1の標的に特異的に結合する結合剤は、第2の標的に特異的に結合することもあればしないこともあることが理解される。したがって、「特異的結合」は、排他的結合、すなわち1つの標的への結合を(含んでもよいが)、必ずしも必要としない。よって、リガンドまたはアフィニティ薬剤は、ある実施形態において、複数の標的に特異的に結合してもよい。ある実施形態においては、複数の標的が、アフィニティ薬剤上の同じ抗原結合部位に結合してもよい。
【0030】
実質的に:本明細書において使用する場合、「実質的に」という用語は、対象となる特徴または特性の、全体的なまたはほぼ全体的な範囲もしくは程度を示す定性的状態を指す。生物学分野の当業者であれば、生物学的および化学的現象は、完成に至りかつ/もしくは完璧に進行すること、または絶対的な結果を獲得するもしくは回避するということは、あるとしても、めったにないことを理解するであろう。「実質的に」という用語は、したがって、多くの生物学的および化学的現象では元来完全性が潜在的に欠如しているということを把握するために、本明細書において使用される。
[本発明1001]
リガンドを含むアフィニティ薬剤であって、前記リガンドが、下記のアミノ酸配列を有する結合モチーフを含む、アフィニティ薬剤:
(a)配列番号1~5、または
(b)2つ以下の置換、付加、または欠失だけ配列番号1~5と異なるアミノ酸配列。
[本発明1002]
リガンドを含むアフィニティ薬剤であって、前記リガンドが、下記のアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む、アフィニティ薬剤:
(a)配列番号6~47、または
(b)2つ以下の置換、付加、または欠失だけ配列番号6~47と異なるアミノ酸配列。
[本発明1003]
前記リガンドのN末端が、アセチル化されている、本発明1001のアフィニティ薬剤。
[本発明1004]
前記リガンドが、C末端のリジンをさらに含む、本発明1001~1003のいずれかのアフィニティ薬剤。
[本発明1005]
前記リガンドのC末端のリジンが、アミド化されている、本発明1004のアフィニティ薬剤。
[本発明1006]
前記リガンドが、少なくとも1つのポリエチレングリコール(PEG)をさらに含む、本発明1001~1005のいずれかのアフィニティ薬剤。
[本発明1007]
前記少なくとも1つのポリエチレングリコールが、PEG(3)である、本発明1006のアフィニティ薬剤。
[本発明1008]
前記リガンドが、固体表面に付着している、本発明1001~1007のいずれかのアフィニティ薬剤。
[本発明1009]
前記固体表面が、樹脂またはビーズである、本発明1008のアフィニティ薬剤。
[本発明1010]
前記固体表面が、膜である、本発明1008のアフィニティ薬剤。
[本発明1011]
前記固体表面が、モノリス(monolith)である、本発明1010のアフィニティ薬剤。
[本発明1012]
前記リガンドが、リンカーを介して前記固体表面にコンジュゲートしている、本発明1008~1011のいずれかのアフィニティ薬剤。
[本発明1013]
前記リンカーが、PEGおよび/またはリジンを含む、本発明1012のアフィニティ薬剤。
[本発明1014]
本発明1001~1013のいずれかのリガンドを含むアフィニティ薬剤であって、前記リガンドが環式ポリペプチドを含む、アフィニティ薬剤。
[本発明1015]
アデノ随伴ウイルスの精製のために使用される、本発明1001~1014のいずれかのアフィニティ薬剤。
[本発明1016]
本発明1001~1015のいずれかのリガンドを固体表面にコンジュゲートさせること
を含む、アフィニティ薬剤を作製する方法。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】30分間の0.5M NaOH洗浄を組み込んだAAV精製の連続サイクルに関するカラム循環研究の、各サイクルについて決定された収率を示す。
【
図2】30分間の0.5M NaOH洗浄を組み込んだAAV精製の連続サイクルに関するカラム循環研究を通し、決定された残留HCPを示す。サイクル6の残留HCPは測定しなかった。
【
図3】30分間の0.5M NaOH洗浄を組み込んだAAV精製の連続サイクルに関するカラム循環研究の、各サイクルについて決定された残留HCDNAを示す。
【
図4】様々な溶出条件を用いて決定された収率を示す。溶出緩衝液は、pH4.5、5、または5.5いずれかの、0.25M、0.5M、または1Mアルギニンを含有した。
【
図5】配列番号46(実線)および配列番号47のリガンドへのカプシドの結合についての、バイオレイヤー干渉法のセンサーグラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
詳細な説明
同定されかつ特性決定されたペプチドリガンドから調製されたアフィニティ薬剤によって、高度に精製されたウイルス粒子の調製物が生成されることが示されている。本明細書において説明したアフィニティ樹脂は、除去タンパク質生成物関連の不純物、ならびに宿主細胞由来の夾雑物質に有用である。
【0033】
アフィニティ薬剤において使用するための、目的の標的へのリガンド結合
標的へのリガンド結合の特徴は、既知のもしくは改変されたアッセイ、バイオアッセイ、および/またはそのような活性を評価するための当技術分野において既知の動物モデルを使用して決定することができる。
【0034】
本明細書において使用される場合、「標的に対する結合親和性」、「標的への結合」などの用語は、例えば親和定数(例えば、所与の抗原濃度で会合および解離するリガンドの量)の決定によって、直接的に測定されうるリガンドの特性を指す。幾つかの方法が、そのような分子相互作用の特性決定のために利用可能であり、例えば、競合分析、平衡分析、および微小熱量測定分析、ならびに(例えば、BIACORE製機器を使用する)表面プラズモン共鳴相互作用に基づくリアルタイム相互作用分析がある。これらの方法は、当業者には公知であり、Neri Dら(1996)Tibtech 14:465~470、およびJansson Mら(1997)J Biol Chem 272:8189~8197などの論文で論じられている。
【0035】
所与のリガンド結合事象のために必要な親和性の条件は、様々な因子に依存し、これらに限定されるものではないが、結合マトリックスの組成および複雑性、リガンドおよび標的分子の両方の原子価および密度、ならびにリガンドの機能的適用性が挙げられる。一部の実施形態において、リガンドは、目的の標的に、5×10-3M、10-3M、5×10-4M、10-4M、5×10-5M、または10-5M以下の解離定数(KD)で結合する。一部の実施形態において、リガンドは、目的の標的に、5×10-6M、10-6M、5×10-7M、10-7M、5×10-8M、または10-8M以下のKDで結合する。一部の実施形態において、リガンドは、目的の標的に、5×10-9M、10-9M、5×10-10M、10-10M、5×10-11M、10-11M、5×10-12M、10-12M、5×10-13M、10-13M、5×10-14M、10-14M、5×10-15M、または10-15M以下のKDで結合する。一部の実施形態において、本明細書において開示した方法によって生成したリガンドは、約10-4M~約10-5M、約10-5M~約10-6M、約10-6M~約10-7M、約10-7M~約10-8M、約10-8M~約10-9M、約10-9M~約10-10M、約10-10M~約10-11M、または約10-11M~約10-12Mの解離定数を有する。
【0036】
KDおよび解離速度定数(off-rate)を決定するための結合実験は、これらに限定されるものではないが、[pH6.0、0.01% Tween 20]、[pH6.0、0.1%ゼラチン]、[pH5.0、0.01% Tween 20]、[pH9.0、0.1% Tween 20]、[pH6.0、15%エチレングリコール、0.01% Tween 20]、[pH5.0、15%エチレングリコール、0.01% Tween 20]、および[pH9.0、15%エチレングリコール、0.01% Tween 20]を含む、幾つかの条件で実施されうる。これらの溶液を作製するための緩衝液は、当業者が容易に決定することができ、一般に最終溶液の所望のpHに依存する。低いpHの溶液(<pH5.5)は、例えば、クエン酸緩衝液、グリシン-HCl緩衝液、またはコハク酸緩衝液で作製することができる。高いpHの溶液は、例えば、Tris-HCl、リン酸緩衝液、または重炭酸ナトリウム緩衝液で作製することができる。例えば、最適なpHおよび/または塩濃度を決定するために、幾つかの条件を用いてKDおよび解離速度定数を決定してもよい。
【0037】
一部の実施形態において、リガンドは、目的の標的に、0.1~10-7秒-1、10-2~10-7秒-1、または0.5×10-2~10-7秒-1の範囲のkoffで特異的に結合する。一部の実施形態において、リガンドは、目的の標的に、5×10-2秒-1、10-2秒-1、5×10-3秒-1、または10-3秒-1未満の解離速度定数(koff)で結合する。一部の実施形態において、リガンドは、目的の標的に、5×10-4秒-1、10-4秒-1、5×10-5秒-1、または10-5秒-1、5×10-6秒-1、10-6秒-1、5×10-7秒-1、または10-7秒-1未満の解離速度定数(koff)で結合する。
【0038】
一部の実施形態において、リガンドは、目的の標的に、約103~107M-1秒-1、103~106M-1秒-1、または103~105M-1秒-1の範囲のkonで特異的に結合する。一部の実施形態において、リガンド(例えば、リガンド融合タンパク質)は、目的の標的に、103M-1秒-1、5×103M-1秒-1、104M-1秒-1、または5×104M-1秒-1超の会合速度定数(on rate)(kon)で結合する。さらなる実施形態において、リガンドは、目的の標的に、105M-1秒-1、5×105M-1秒-1、106M-1秒-1、5×106M-1秒-1、または107M-1秒-1超のkonで結合する。
【0039】
目的の標的
リガンドによって特異的に結合される目的の標的は、アフィニティ薬剤のリガンドが結合するのに望ましい任意の分子でありうる。例えば、リガンドによって特異的に結合される標的は、精製、製造、製剤、治療、診断、または予後に関連するもしくは価値のある、任意の標的でありうる。例として、本明細書において幾つかの代表的な標的を示すが、これらは例示的であって限定的なものではないことが意図される。目的の標的は、天然に存在するものであっても、合成されたものであってもよい。一部の実施形態において、標的は、生物学的に活性のあるタンパク質である。一部の実施形態において、目的の標的は、細胞外成分もしくは細胞内成分、可溶性因子(例えば、酵素、ホルモン、サイトカイン、増殖因子、抗体など)、または膜貫通型タンパク質(例えば、細胞表面受容体)である。一部の実施形態において、リガンドによって特異的に結合される目的の標的は、それ自体が、異なる配列を有するリガンドである。
【0040】
リンカー
「リンカー」および「スペーサ」という用語は、本明細書では、別の状況では独立している機能的ドメインを連結するように機能するペプチドまたはその他の化学結合を指すために互換的に使用される。一部の実施形態において、リンカーは、リガンドと別の状況では独立している機能的ドメインを含有する別のポリペプチド成分との間に位置する。2つ以上の連結されたリガンドを結合するために好適なリンカーは、一般的には、ペプチド、タンパク質、またはその他の有機分子を連結するために当技術分野において使用される、任意のリンカーであってもよい。一部の実施形態において、そのようなリンカーは、薬学的使用を目的とするタンパク質またはポリペプチドの構築に好適である。
【0041】
単鎖アミノ酸配列においてリガンドと付加されるリガンド融合タンパク質の成分とを作動可能に連結するのための好適なリンカーには、グリシンリンカー、セリンリンカー、グリシン/セリン混合リンカー、グリシンおよびセリンリッチリンカー、または極性の大きなポリペプチド断片から構成されたリンカーなどの、ポリペプチドリンカーがあるが、これらに限定されない。
【0042】
一部の実施形態において、リンカーは、グリシン、アラニン、プロリン、アスパラギン、グルタミン、およびリジンから選択されるアミノ酸を大半含む。一部の実施形態において、リンカーは、グリシン、アラニン、プロリン、アスパラギン、アスパラギン酸、スレオニン、グルタミン、およびリジンから選択されるアミノ酸を大半含む。一部の実施形態において、リガンドリンカーは、大半が非立体障害アミノ酸からなる。一部の実施形態において、リンカーは、グリシン、セリン、および/またはアラニンから選択されるアミノ酸を大半含む。一部の実施形態において、ペプチドリンカーは、ポリグリシン(例えば(Gly)5、および(Gly)8、ポリ(Gly-Ala)、およびポリアラニンから選択される。
【0043】
リンカーは、リガンドが目的の標的と結合できるような方法でリガンドを作動可能に連結することができるかぎり、いかなるサイズまたは組成であってもよい。一部の実施形態において、リンカーは、約1~50個のアミノ酸、約1~20個のアミノ酸、約1~15個のアミノ酸、約1~10個のアミノ酸、約1~5個のアミノ酸、約2~20個のアミノ酸、約2~15個のアミノ酸、約2~10個のアミノ酸、または約2~5個のアミノ酸である。リンカー(複数可)の長さ、可動性の程度、および/またはその他の特性が、アフィニティ薬剤で使用されるリガンドの特定の特性に、例えば、目的の標的もしくは目的の1つ以上のその他の標的タンパク質に対するかまたは目的としないタンパク質(すなわち、非標的タンパク質)に対する、親和性、特異性、または結合力などに、影響を与える可能性があることは、明らかであるべきである。一部の実施形態においては、2つ以上のリンカーが利用される。一部の実施形態においては、2つ以上のリンカーが同じものである。一部の実施形態においては、2つ以上のリンカーが異なっている。
【0044】
一部の実施形態において、リンカーは、アルキルリンカーまたはPEGリンカーなどの非ペプチドリンカーである。例えば、-NH-(CH2)s-C(0)(式中、s=2~20)などのアルキルリンカーを用いることができる。これらのアルキルリンカーは、低級アルキル、例えば、C1 C6)、低級アシル、ハロゲン(例えば、CI、Br)、CN、NH2、フェニル基などの任意の非立体障害基によって、さらに置換されていてもよい。代表的な非ペプチドリンカーは、PEGリンカーである。一部の実施形態において、PEGリンカーは、約100~5000kDaまたは約100~500kDaの分子量を有する。
【0045】
リンカーは、本明細書において説明した技術および/または当技術分野において既知の他の技術を使用して評価することができる。一部の実施形態において、リンカーは、リガンドが標的分子に結合する能力を変えない(例えば、妨害しない)。
【0046】
コンジュゲートしたリガンドを含むアフィニティ薬剤
目的の標的への特異的結合を促進するリガンドを、様々なクロマトグラフィー組成物(例えば、ビーズ、樹脂、ゲル、膜、モノリスなど)と化学的にコンジュゲートさせて、アフィニティ薬剤を調製することができる。リガンドを含むアフィニティ薬剤は、特に精製および製造での適用に有用である。
【0047】
一部の実施形態において、リガンド(例えば、リガンド融合タンパク質)は、少なくとも1つの反応性残基を含有する。反応性残基は、例えば、化学療法剤などのコンジュゲートを付着させるための部位として有用である。代表的な反応性アミノ酸残基は、リジンである。反応性残基(例えば、リジン)は、リガンドに、どちらかの末端でまたはリガンド配列内で付加されてもよく、かつ/またはリガンドの配列中の別のアミノ酸に対して置換されうる。好適な反応性残基(例えば、リジンなど)はまた、同定されたリガンドの配列内に位置していてもよく、付加または置換の必要はない。
【0048】
固体表面への付着
「固体表面」、「支持体」、または「マトリックス」は、本明細書では互換的に使用され、リガンド、抗体、もしくはその他のタンパク質が直接または間接的に(例えば、その他の抗体またはプロテインAなどの、その他の結合パートナ中間体を介して)付着して(すなわち、結合、連結、または接着されて)いることもあるか、またはリガンドもしくは抗体が(例えば、受容体またはチャンネルを介して)包埋されていることもある、任意のカラム(またはカラム材)、ビーズ、試験管、マイクロタイターディッシュ、固体粒子(例えば、アガロースまたはセファロース)、マイクロチップ(例えば、ケイ素、ケイ素-ガラス、または金チップ)、または膜(合成(例えばフィルター)または生物学的なのもの(例えば、リポソームまたは小胞)に由来)を指すが、これらに限定されない。ポリペプチドを固体支持体(例えば、マトリックス、樹脂、プラスチックなど)に付着させるための試薬および技術は、当技術分野において既知である。好適な固体支持体には、クロマトグラフィー樹脂またはマトリックス(例えば、SEPHAROSE-4 FFアガロースビーズ)、プラスチックマイクロタイターディッシュのウェルの壁または底、シリカベースのバイオチップ、ポリアクリルアミド、アガロース、シリカ、ニトロセルロース、紙、プラスチック、ナイロン、金属、およびそれらの組合せが挙げられるが、これらだけに限定されない。リガンドおよびその他の組成物は、当技術分野において既知の試薬および技術を使用して、非共有結合的会合によってまたは共有結合によって支持体物質上に付着してもよい。一部の実施形態において、リガンドは、リンカーを使用してクロマトグラフィー物質に結合される。
【0049】
リガンドの作製
提供された方法の実行において有用なリガンドの作製は、当技術分野において既知の、化学合成のための様々な標準的技術、半合成法、および組換えDNA方法論を使用して行ってもよい。リガンドを、可溶性薬剤および細胞会合タンパク質として、別々にまたはマルチドメイン融合タンパク質の一部として作製する方法も提供される。一部の実施形態において、リガンドの全体的な作製スキームは、参照タンパク質の足場を得ること、および改変のための足場内の複数の残基を同定することを含む。実施形態によって、参照足場は、1つ以上のアルファヘリックス領域またはその他の三次構造を有するタンパク質構造を含んでいてもよい。複数の残基は、同定してしまえば、例えば、1つ以上のアミノ酸の置換によって改変することができる。一部の実施形態において、1つ以上の保存的置換が行われる。一部の実施形態において、1つ以上の非保存的置換が行われる。一部の実施形態において、天然アミノ酸(例えば、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、またはバリンのうちの1つ)は、改変の標的位置において参照足場へ置換される。一部の実施形態において、改変は、システインまたはプロリンの置換を含まない。特定の一実施形態において所望の指定位置で改変が行われた後、得られた改変されたポリペプチド(例えば、候補リガンド)は、(例えば、改変された各ポリペプチドの数を増やすために)例えば、プラスミド、細菌、ファージ、またはその他のベクター中で、組換えによって発現させることができる。次いで、改変されたポリペプチドを精製し、スクリーニングして、目的の特定の標的への特異的結合を有するこれらの改変されたポリペプチドを同定することができる。改変されたポリペプチドは、参照足場に比べて、目的の標的に対する結合特異性が増強することもあれば、所与の目的の標的(または非標的タンパク質)にわずかしか結合しないかまたは結合しないこともある。一部の実施形態において、目的の標的に応じて、参照足場は目的の標的との幾分かの相互作用(例えば、非特異的相互作用)を示す場合もあるが、特定の改変されたポリペプチドは、少なくとも約2倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約20倍、少なくとも約50倍、または少なくとも約100倍(またはそれより)高まった、目的の標的に対する結合特異性を示すこととなる。リガンドの作製、選択、および単離に関するさらなる詳細を、下記にてより詳しく示す。
【0050】
リガンドの組換え発現
一部の実施形態において、リガンド融合タンパク質などのリガンドは、「組換えによって作製される」(すなわち、組換えDNA技術を使用して作製される)。リガンド融合タンパク質を合成するために利用できる代表的な組換え方法としては、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)ベースの合成、コンカテマー化、シームレスクローニング、および回帰方向性ライゲーション(recursive directional ligation)(RDL)が挙げられるが、これらだけに限定されない(例えば、Meyerら、Biomacromolecules 3:357~367(2002)、Kuriharaら、Biotechnol.Lett.27:665~670(2005)、Haiderら、Mol.Pharm.2:139~150(2005);およびMcMillanら、Macromolecules 32(11):3643~3646(1999)を参照されたい。
【0051】
リガンドをコードするポリヌクレオチド配列を含む核酸も提供される。そのようなポリヌクレオチドは、任意選択的に、1つ以上の発現制御エレメントをさらに含む。例えば、ポリヌクレオチドは、発現制御エレメントとして、1つ以上のプロモーターまたは転写促進因子、リボソーム結合部位、転写終結シグナル、およびポリアデニル化シグナルを含みうる。ポリヌクレオチドを、任意の好適なベクター内に挿入することができ、これを発現に好適な任意の宿主細胞内に含有させることがでる。
【0052】
リガンドをコードする核酸の発現は、典型的には、発現ベクターの中で、リガンドをコードする核酸をプロモーターに作動可能に連結することによって達成される。典型的な発現ベクターは、所望の核酸配列の発現の調節のために有用な、転写および翻訳ターミネータ、開始配列、ならびにプロモーターを含有する。E.コリ(E.coli)中での発現のために有用な代表的なプロモーターには、例えば、T7プロモーターがある。
【0053】
当技術分野で既知の方法を使用して、適切な転写/翻訳制御シグナルと共にリガンドをコードする核酸配列を含有する発現ベクターを構築することができる。これらの方法には、in vitroでの組換えDNA技術、合成技術、およびin vivoでの組換え/遺伝子組換えが挙げられるが、これらだけに限定されない。ポリヌクレオチドの発現は、これらに限定されないが、細菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞、植物細胞、または哺乳動物細胞などの、当技術分野において既知の任意の好適な発現宿主において実施されうる。一部の実施形態において、リガンドをコードする核酸配列は、核酸配列が宿主において転写されかつ/またはリガンドへと翻訳されるような好適なプロモーター配列に作動可能に連結されている。
【0054】
様々な宿主-発現ベクター系を利用して、リガンドをコードする核酸を発現させることができる。リガンド(例えば、個々のリガンドサブユニットまたはリガンド融合物)またはそれらの部分もしくは断片をコードする核酸を含有するベクターとしては、プラスミドベクター、一本鎖および二本鎖ファージベクター、ならびに一本鎖および二本鎖RNAまたはDNAウイルスベクターがある。ファージおよびウイルスベクターはまた、感染および形質導入のための既知の技術を使用して、パッケージまたは封入されたウイルスの形態で宿主細胞に導入されてもよい。さらに、ウイルスベクターは、複製可能であっても、あるいは複製欠損であってもよい。あるいは、細胞フリー翻訳系を用いて、DNA発現構築物から得られたRNAを使用してタンパク質を作製することもできる(例えば、WO86/05807およびWO89/01036;ならびに米国特許第5,122,464号を参照されたい)。
【0055】
一般的には、任意の細胞型または培養細胞株を使用して、本明細書において提供されるリガンドを発現させることができる。一部の実施形態において、操作された宿主細胞を生成するために使用されるバックグラウンド細胞株は、ファージ、細菌細胞、酵母細胞、または哺乳動物細胞である。様々な宿主-発現ベクター系が、コード配列リガンド融合タンパク質を発現させるために使用されうる。哺乳動物細胞は、目的の標的のコード配列と、融合ポリペプチドのコード配列とを含有する組換えプラスミドDNAまたはコスミドDNA発現ベクターをトランスフェストした宿主細胞系として使用することができる。細胞は、形質転換または遺伝子導入の性質をもつ生物、培養物、または細胞株からの初代単離物でありうる。
【0056】
好適な宿主細胞としては、微生物、例えば、リガンドコード配列を含有する組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNA、またはコスミドDNA発現ベクターで形質転換された細菌(例えば、E.コリ、B.スブチリス(B.subtilis));リガンドコード配列を含有する組換え酵母発現ベクターで形質転換された酵母(例えば、サッカロマイセス(Saccharomyces)、ピキア(Pichia));リガンドコード配列を含有する組換えウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)を感染させた昆虫細胞系;リガンドコード配列を含有する組換えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)を感染させたか、またはリガンドコード配列を含有する組換えプラスミド発現ベクター(例えば、Tiプラスミド)で形質転換した植物細胞系が挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
リガンドの作製において宿主細胞として有用な原核生物には、E.コリおよびB.スブチリスなどのグラム陰性生物またはグラム陽性生物が挙げられる。原核宿主細胞中で使用される発現ベクターは、一般的には、1つ以上の表現型の選択マーカー遺伝子(例えば、抗生物質耐性を付与するかまたは独立栄養要求性を供給するタンパク質をコードする遺伝子)を含有する。有用な原核宿主発現ベクターの例としては、pKK223-3(Pharmacia、Uppsala、スウェーデン)、pGEMl(Promega、Wis.、米国)、pET(Novagen、Wis.、米国)、およびpRSET(Invitrogen、Calif.、米国)のシリーズのベクターが挙げられる(例えば、Studier、J.Mol.Biol.219:37(1991)、およびSchoepfer、Gene 124:83(1993)を参照されたい)。原核宿主細胞発現ベクター中で使用されることが多い代表的なプロモーター配列としては、T7(Rosenbergら、Gene 56:125~135(1987))、ベータ-ラクタマーゼ(ペニシリナーゼ)、ラクトースプロモーター系(Changら、Nature 275:615(1978));およびGoeddelら、Nature 281:544(1979))、トリプトファン(trp)プロモーター系(Goeddelら、Nucl. Acids Res.8:4057、(1980))、およびtacプロモーター(Sambrookら、1990、Molecular Cloning、A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、N.Y.)が挙げられる。
【0058】
一部の実施形態において、リガンドのコード配列を含有する組換え酵母発現ベクターで形質転換された酵母細胞などの、真核宿主細胞系が使用される。本発明の組成物を作製するために使用されうる代表的な酵母としては、サッカロマイセス属、ピキア属、アクチノミセテス(Actinomycetes)属、およびクルイベロマイセス(Kluyveromyces)属由来の酵母が挙げられる。酵母ベクターは、典型的には、2mu酵母プラスミド由来の複製開始点配列、自己複製配列(ARS)、プロモーター領域、ポリアデニル化のための配列、転写終結のための配列、および選択マーカー遺伝子を含有する。酵母発現構築物におけるプロモーター配列の例としては、メタロチオネイン、3-ホスホグリセリン酸キナーゼ(Hitzeman、J.Biol.Chem.255:2073(1980))、ならびにその他の解糖酵素、例えば、エノラーゼ、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース-6-リン酸イソメラーゼ、3-ホスホグリセリン酸ムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、ホスホグルコースイソメラーゼ、およびグルコキナーゼ由来のプロモーターが挙げられる。酵母発現において使用される別の好適なベクターおよびプロモーター、ならびに酵母形質転換プロトコールは、当技術分野において既知である。例えば、Fleer、Gene 107:285~195(1991)、およびHinnen、PNAS 75:1929(1978)を参照されたい。
【0059】
昆虫および植物宿主細胞培養系も、本発明の組成物を作製するのために有用である。そのような宿主細胞系には、例えば、リガンドのコード配列を含有する組換えウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)を感染させた昆虫細胞系;リガンドのコード配列を含有する組換えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)を感染させたか、またはリガンドのコード配列を含有する組換えプラスミド発現ベクター(例えば、Tiプラスミド)で形質転換した植物細胞系があり、限定はされないが、米国特許第6,815,184号;米国出願公開第60/365,769号および第60/368,047号;ならびにWO2004/057002、WO2004/024927、およびWO2003/078614に教示されている発現系が含まれる。
【0060】
一部の実施形態において、安定して増幅させたか(CHO/dhfr)または二重微小染色体において不安定に増幅させた(例えば、マウス細胞株)リガンドをコードするDNAの複数のコピーを含有するように操作された細胞株を含む組換えウイルス発現ベクター(例えば、アデノウイルス、レトロウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、レンチウイルス)を感染させた動物細胞系などの宿主細胞系を使用することができる。一部の実施形態において、リガンドをコードするポリヌクレオチド(複数可)を含むベクターは、ポリシストロニックである。これらの組成物を作製するために有用な代表的な哺乳動物細胞としては、293細胞(例えば、293Tおよび293F)、CHO細胞、BHK細胞、NS0細胞、SP2/0細胞、YO骨髄腫細胞、P3X63マウス骨髄腫細胞、PER細胞、PER.C6(Crucell、オランダ)細胞VERY、Hela細胞、COS細胞、MDCK細胞、3T3細胞、W138細胞、BT483細胞、Hs578T細胞、HTB2細胞、BT20細胞、T47D細胞、CRL7O30細胞、HsS78Bst細胞、ハイブリドーマ細胞、およびその他の哺乳動物細胞が挙げられる。本発明の実行において有用な別の代表的な哺乳動物宿主細胞には、T細胞が挙げられるが、これだけに限定されない。代表的な発現系および選択方法は、当技術分野において既知であり、以下の参考文献およびそれらの中で引用された参考文献に記載されているものが挙げられる:Borthら、Biotechnol.Bioen.71(4):266~73(2000)、Wernerら、Arzneimittelforschung/Drug Res.48(8):870~80(1998)、Andersenら、Curr.Op.Biotechnol.13:117~123(2002)、Chaddら、Curr.Op,Biotechnol.12:188~194(2001)、およびGiddings、Curr.Op.Biotechnol.12:450~454(2001)。発現系および選択方法のさらなる例は、Loganら、PNAS 81:355~359(1984)、Birtnerら、Methods Enzymol.153:51~544(1987))に記載されている。哺乳動物宿主細胞発現ベクターのための転写および翻訳制御配列は、ウイルスゲノム由来であることが多い。哺乳動物発現ベクター中で一般的に使用されるプロモーター配列および転写促進因子配列には、ポリオーマウイルス、アデノウイルス2、シミアンウイルス40(SV40)、およびヒトサイトメガロウイルス(CMV)由来の配列がある。哺乳動物宿主細胞中で使用される代表的な市販の発現ベクターとしては、pCEP4(Invitrogen)およびpcDNA3(Invitrogen)がある。
【0061】
核酸を宿主細胞(例えば、哺乳動物宿主細胞)に導入する物理的方法には、リン酸カルシウム沈殿、リポフェクション、微粒子銃、マイクロインジェクション、エレクトロポレーションなどが挙げられる。ベクターおよび/または外来性核酸を含む細胞を作製する方法は、当技術分野では公知である。例えば、Sambrookら(2001、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、New York)を参照されたい。
【0062】
目的のポリヌクレオチドを宿主細胞中に導入する生物学的方法には、DNAおよびRNAベクターの使用がある。ウイルスベクター、特にレトロウイルスベクターは、遺伝子を哺乳動物(例えば、ヒト)細胞に挿入するために最も広く使用されている方法である。その他のウイルスベクターは、レンチウイルス、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルスI、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルスなどの由来であってもよい。例えば、米国特許第5,350,674号および第5,585,362号を参照されたい。
【0063】
目的のDNAおよびRNAポリヌクレオチドを宿主細胞に導入する方法には、細胞のエレクトロポレーションがあり、この方法では、細胞膜の透過性を高めるために電場が細胞に印加され、化学物質、薬剤、またはポリヌクレオチドの細胞への導入が可能となる。DNAまたはRNA構築物を含有するリガンドを、エレクトロポレーションを用いて哺乳動物細胞または原核細胞に導入してもよい。
【0064】
一部の実施形態において、細胞のエレクトロポレーションによって、T細胞、NK細胞、NKT細胞の表面でのリガンド-CARの発現がもたらされる。そのような発現は、細胞の一生を通して一過的ものであっても安定したものであってもよい。エレクトロポレーションは、MaxCyte GT(登録商標)およびSTX(登録商標)トランスフェクションシステム(MaxCyte、Gaithersburg、MD、米国)を含む、当技術分野において既知の方法を用いて成し遂げてもよい。
【0065】
ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入する化学的手段には、高分子複合体、ナノカプセル、マイクロスフェア、ビーズ、ならびに水中油乳濁液、ミセル、混合ミセル、およびリポソームを含む脂質ベースの系などの、コロイド分散系がある。in vitroおよびin vivoでの送達ビヒクルとして使用される代表的なコロイド系は、リポソーム(例えば、人工膜小胞)である。非ウイルス送達系を利用する場合、代表的な送達ビヒクルはリポソームである。核酸の(in vitro、ex vivo、またはin vivoでの)宿主細胞への導入には、脂質製剤の使用が企図される。一部の実施形態において、核酸は、脂質と会合する。脂質と結合された核酸は、リポソームの水性内部に封入され、リポソームの脂質二重層内に散在され、リポソームおよびオリゴヌクレオチドの両方と会合する連結分子を介してリポソームに付着し、リポソーム中に取り込まれ、リポソームと複合体形成され、脂質を含有する溶液中に分散され、脂質と混合され、脂質と化合され、脂質中に懸濁物として含有され、ミセルと共に含有されるかもしくはミセルと複合体形成され、または別の状況では脂質と会合されうる。脂質、脂質/DNA、または脂質/発現ベクターを会合した組成物は、溶液中での特定の構造だけに限定されない。例えば、該組成物は、ミセルとしてまたは「潰れた」構造で二重層構造中に存在しうる。該組成物はまた、溶液中で単に散在する場合もあり、おそらくサイズまたは形状が均一ではない凝集体を形成している。脂質は、天然に存在しうる脂肪物質であっても合成脂質であってもよい。例えば、脂質としては、細胞質中に天然に存在する脂肪小滴、ならびに脂肪酸、アルコール、アミン、アミノアルコール、およびアルデヒドなどの長鎖脂肪族炭化水素ならびにそれらの誘導体を含有する化合物のクラスがある。
【0066】
使用に好適な脂質は、市販の供給源から入手することができる。例えば、ジミリスチイホスファチジルコリン(「DMPC」)が、Sigma、St.Louis、MOから入手でき;リン酸ジセチル(「DCP」)が、K&K Laboratories(Plainview、NY)から入手でき;コレステロール(「Choi」)が、Calbiochem-Behringから入手でき;ジミリスチイホスファチジルグリセロール(「DMPG」)およびその他の脂質を、Avanti Polar Lipids、Inc.(Birmingham、AL)から入手してもよい。クロロホルムまたはクロロホルム/メタノール中脂質保存液は、約-20℃で保存可能である。クロロホルムは、メタノールより容易に蒸発することから、唯一の溶媒として使用することができる。「リポソーム」とは、封入された脂質二重層または凝集体の生成によって形成された様々な単層状および多層状脂質ビヒクルを包含する、総称的な用語である。リポソームは、リン脂質二重膜および内部に水性媒質を含む小胞構造を有することを特徴としうる。多層状リポソームは、水性媒質によって隔てられた複数の脂質層を有する。該リポソームは、リン脂質を過剰の水溶液中に懸濁すると、自発的に形成する。脂質成分は、自己再編成を経て、閉じた構造を形成し、脂質二重層の間に水および溶存溶質を取り込む(Ghoshら、Glycobiology 5:505~510(1991))。一方で、溶液中で通常の小胞構造とは異なる構造を有する組成物も包含される。例えば、脂質は、ミセル構造を呈しうるか、または単に脂質分子の非均一な凝集体として存在しうる。リポフェクタミン-核酸複合体も企図される。
【0067】
外来性核酸を宿主細胞に導入するために使用した方法にかかわらず、宿主細胞中の組換え核酸配列の存在は、当技術分野において既知の様々なアッセイによって、通常通りに確認することができる。そのようなアッセイには、例えば、サザンブロッティングおよびノーザンブロッティング、RT-PCRおよびPCRなどの、当技術分野において既知の「分子生物学的」アッセイ;例えば免疫学的手段(ELISAおよびウェスタンブロット)によるまたは本発明の範囲に含まれる薬剤を同定するための本明細書に記載のアッセイによる、特定のペプチドの有無の検出などの「生化学的」アッセイがある。
【0068】
レポーター遺伝子は、トランスフェクトされた可能性のある細胞を同定するために、また、制御配列の機能性を評価するために使用される。一般的に、レポーター遺伝子は、レシピエント生物、組織、もしくは細胞中には存在しない遺伝子、またはそれらによって発現されない遺伝子であり、発現が、例えば酵素的活性などの、ある程度容易に検出できる特性によって表されるポリペプチドをコードする遺伝子である。レポーター遺伝子の発現は、DNAをレシピエント細胞へ導入した後、好適な時間に測定される。好適なレポーター遺伝子としては、ルシフェラーゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、分泌型アルカリホスファターゼをコードする遺伝子、または緑色蛍光タンパク質遺伝子が挙げられるが、これらだけに限定されない(例えば、Ui-Teiら、FEBS Lett.479:79~82(2000))。好適な発現系は、当技術分野において既知であり、既知の技術を使用して調製することができるか、または商業的に入手することができる。一般的に、レポーター遺伝子の最も高い発現レベルを示す最小限の5’フランキング領域を含む構築物が、プロモーターとして同定される。そのようなプロモーター領域は、レポーター遺伝子に通常通りに連結され、プロモーター駆動の転写調節能力について薬剤を評価するのに使用することができる。
【0069】
哺乳動物宿主-ベクター発現系では、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ、ヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ、およびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowyら、Cell 22:817(1980))遺伝子を含む、幾つかの選択系が使用されうるが、これらに限定されない。追加的に、例えば、dhfr、gpt、neo、hygro、trpB、hisD、ODC(オルニチンデカルボキシラーゼ)、およびグルタミンシンターゼ系のための選択の基本として、代謝拮抗物質抵抗性を用いることができる。
【0070】
リガンド精製
リガンドまたはリガンド融合タンパク質は、組換え発現によって産生されてしまえば、組換えタンパク質の精製のための当技術分野において既知の方法、例えば、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、アフィニティ、およびサイジングカラムクロマトグラフィー(sizing column chromatography))、遠心分離、溶解度の違いによって、またはタンパク質の精製のためのその他の標準的な技術によって、精製することができる。一部の実施形態において、リガンドは、任意選択的に、本明細書において具体的に開示された異種のポリペプチド配列、または当技術分野において既知のその他の異種のポリペプチド配列に融合されて、精製を促進する。一部の実施形態において、アフィニティ精製のためのリガンドアフィニティカラムのためのリガンド(例えば、抗体およびその他のアフィニティマトリックス)、および、任意選択的に、これらのリガンドに結合しているリガンド融合組成物のリガンドまたはその他の成分は、組成物から取り外され、その後、リガンドは、当技術分野において既知の技術を使用して最終調製される。
【0071】
リガンドの化学合成
組換え方法に加えて、リガンドの作製は、当技術分野において既知の様々な液相および固相の化学的プロセスを使用して、所望のポリペプチドの有機化学合成を用いて行うことも可能である。様々な自動合成装置が市販されており、既知のプロトコールに従って使用することができる。例えば、Tamら、J.Am.Chem.Soc.、105:6442(1983);Merrifield、Science、232:341~347(1986);BaranyおよびMerrifield、The Peptides、GrossおよびMeienhofer編、Academic Press、New York、1~284;Baranyら、Int.J.Pep.Protein Res.、30:705 739(1987);Kelleyら、Genetic Engineering Principles and Methods、Setlow、J.K.編 Plenum Press、NY. 1990、12巻、1~19頁;Stewartら、Solid-Phase Peptide Synthesis、W.H.Freeman Co.、San Francisco、1989を参照されたい。これらの方法論の1つの利点は、リガンドの配列中への非天然アミノ酸残基の組込みを可能にすることである。
【0072】
本発明の方法において使用されるリガンドは、合成または翻訳の間または後に、例えば、グリコシル化、アセチル化、ベンジル化、リン酸化、アミド化、ペグ化、ホルミル化、既知の保護基/ブロック基による誘導体化、タンパク質分解切断、抗体分子への連結、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、ペグ化、タンパク質分解プロセシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、硫酸化、ユビキチン化などによって、修飾されてもよい(例えば、Creighton、Proteins:Structures and Molecular Properties、第2版(W.H.Freeman and Co.、N.Y.、1992);Postranslational Covalent Modification of Proteins、Johnson編(Academic Press、New York、1983)、1~12頁;Seifter、Meth.Enzymol.、182:626~646(1990);Rattan、Ann.NY Acad.Sci.、663:48~62(1992)を参照されたい)。一部の実施形態において、ペプチドは、N末端においてアセチル化され、かつ/またはC末端においてアミド化される。
【0073】
これらに限定されるものではないが、アセチル化、ホルミル化など、数多くの化学的修飾のうちのいずれかを、既知の技術によって行ってもよい。追加的に、誘導体は、1つ以上の非古典的アミノ酸を含有していてもよい。
【0074】
一部の実施形態において、側鎖への側鎖の連鎖形成によって、ペプチド骨格の環化または大環状化が達成される。これを達成する方法は、当技術分野では公知であり、天然および非天然アミノ酸を含んでいてもよい。手法としては、ジスルフィド形成、ランチオニン形成またはチオールアルキル化(例えば、マイケル付加)、アミノ側鎖とカルボン酸側鎖との間のアミド化、クリックケミストリー(例えば、アジド-アルキン縮合)、ペプチドステープル化、閉環メタセシス、および酵素の使用が挙げられる。
【0075】
精製のためのアフィニティ薬剤
アフィニティクロマトグラフィーに基づく精製では、目的の標的(例えば、タンパク質または分子)は、クロマトグラフィーマトリックスに典型的には共有結合的に結合されたリガンドに、特異的かつ可逆的に結合するそれらの能力に応じて選択的に単離される。一部の実施形態において、リガンドは、組換え供給源または生物学的試料などの天然供給源(例えば、血清)に由来する目的の標的のアフィニティ精製のための試薬として、使用することができる。
【0076】
一部の実施形態において、目的の標的に特異的に結合するリガンドは、ビーズ上に固定化され、次いで、標的をアフィニティ精製するために使用される。
【0077】
タンパク質を表面に共有結合的に結合させる方法は、当業者には既知であり、リガンドを固体表面に付着させるために使用できるペプチドタグは、当業者には既知である。さらに、当技術分野において既知の任意の試薬または技術を使用して、リガンドを固体表面に付着させる(すなわち、結合、連結、または接着させる)ことができる。一部の実施形態において、固体支持体は、ビーズ、ガラス、スライド、チップ、および/またはゼラチンを含む。よって、当技術分野において既知の技術を使用して、固体表面上にアレイを作るために、一連のリガンドを使用することができる。例えば、米国出願公開第2004/0009530号に、アレイを調製する方法が開示されている。
【0078】
一部の実施形態において、リガンドは、アフィニティクロマトグラフィーによって目的の標的を単離するために使用される。一部の実施形態において、リガンドは、固体支持体上に固定化されている。本明細書において説明した技術および試薬、または当技術分野において既知のその他の技術および試薬を使用して、リガンドを固体支持体上に固定化することができる。好適な固体支持体は、本明細書において説明されているものであるか、または当技術分野において既知のその他のものであり、特定の実施形態において、クロマトグラフィーカラムを充填するのに好適である。固定化されたリガンドは、次いで、リガンドと目的の標的との間で複合体を形成するのに好都合な条件下で、溶液を充填されるかまたは溶液と接触されうる。非結合物質は洗い流すことができる。好適な洗浄条件は、当業者によって容易に決定されうる。好適な洗浄条件の例は、ShuklaおよびHinckley、Biotechnol Prog.2008 9~10月;24(5):1115~21.doi:10.1002/btpr.50に記載されている。
【0079】
一部の実施形態において、クロマトグラフィーは、目的の標的を含有する溶液とリガンドとを混合し、次いで、目的の標的とリガンドとの複合体を単離することによって実行される。例えば、リガンドは、ビーズなどの固体支持体上に固定化され、次いで、濾過によって溶液から目的の標的と共に分離される。一部の実施形態において、リガンドは、ポリ-HIS末端またはストレプトアビジン結合領域などのペプチドタグを含有する融合タンパク質であり、該ペプチドタグを用いて、固定化金属アフィニティクロマトグラフィー樹脂、またはストレプトアビジンをコートした基質を使用して、複合体が形成した後、リガンドを単離することができる。分離してしまえば、目的の標的を、溶出条件下でリガンドから切り離すことができ、精製された形態で回収することができる。
【実施例0080】
ペプチドは、標準的なFmoc固相ペプチド合成技術によって合成し、分取用逆相HPLCによって精製した。ペプチドの純度は、UVおよび四重極飛行時間型質量分析検出の両方を備えたRP HPLCによって算定した。
本実施例では、本明細書において同定および説明したリガンドを含むアフィニティ薬剤の作製および特性決定を実証する。アフィニティ樹脂は、リガンドをアガロースビーズにコンジュゲートさせることによって調製した。RAPID RUN 6%アガロースビーズ(ABT、Madrid、スペイン)をジスクシンイミジルカルボナートで活性化し、リガンド密度1~8mg/mL樹脂のペプチドリガンドと結合させた。すべての樹脂の実際のリガンド密度は、次式による減算RP-HPLC法を用いて測定した。
実際のリガンド密度=(供給物中で測定された[リガンド]-溶出物中で測定された[リガンド])。