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特開2023-78450生体リズム調整装置及び生体リズム調整システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023078450
(43)【公開日】2023-06-06
(54)【発明の名称】生体リズム調整装置及び生体リズム調整システム
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/06 20060101AFI20230530BHJP
【FI】
A61N5/06 C
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023054450
(22)【出願日】2023-03-30
(62)【分割の表示】P 2018133618の分割
【原出願日】2018-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】513077162
【氏名又は名称】株式会社坪田ラボ
(74)【代理人】
【識別番号】110003904
【氏名又は名称】弁理士法人MTI特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坪田 一男
(57)【要約】
【課題】生活環境や仕事環境が変化した現代社会において、サーカディアンリズムを調整し、ユーザの心身の健康を維持及び増進することが可能な生体リズム調整装置などを提供すること。
【解決手段】ユーザの生体リズムを調整し、ユーザの心身の健康を維持及び増進する生体リズム調整装置1であって、ユーザの眼に対して、360nm以上400nm以下の第1波長範囲内の第1特殊光を照射する第1光源と460nm±20nmの第2波長範囲内の第2特殊光を含む光を照射する第2光源とを有する照射手段と、前記照射手段により前記ユーザの眼に前記第1特殊光及び前記第2特殊光を照射する際の条件を示す条件データを取得する取得手段と、前記取得した条件データに従って、前記照射手段を制御して、前記ユーザの眼に前記第1特殊光及び前記第2特殊光を照射させる制御手段とを有するように構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの生体リズムを調整し、ユーザの心身の健康を維持及び増進する生体リズム調整装置であって、
前記ユーザの眼に対して、360nm以上400nm以下の第1波長範囲内の第1特殊光を照射する第1光源と460nm±20nmの第2波長範囲内の第2特殊光を含む光を照射する第2光源とを有する照射手段と、
前記照射手段により前記ユーザの眼に前記第1特殊光及び前記第2特殊光を照射する際の条件を示す条件データを取得する取得手段と、
前記取得した条件データに従って、前記照射手段を制御して、前記ユーザの眼に前記第1特殊光及び前記第2特殊光を照射させる制御手段と、を有することを特徴とする生体リズム調整装置。
【請求項2】
前記第2特殊光が、160μW/cm 以下の放射照度で照射される、請求項1に記載の生体リズム調整装置。
【請求項3】
前記第1特殊光の放射照度:前記第2特殊光の放射照度が、1:2±0.2である、請求項1又は2に記載の生体リズム調整装置。
【請求項4】
前記取得手段が、前記条件データとして、ユーザの所在地域における日照に関する日照情報を含むデータを取得し、
前記制御手段が、前記日照情報に基づき、当該所在地域における日中の時間帯を特定するとともに、当該特定した日中の時間帯に少なくとも前記第1特殊光を前記ユーザの眼に照射させる、請求項1~3のいずれか1項に記載の生体リズム調整装置。
【請求項5】
前記取得手段が、前記条件データとして、前記ユーザの行動予定を示す行動予定データを取得し、
前記制御手段が、前記取得した行動予定データに従って、少なくとも前記第1特殊光を照射させる、請求項1~4のいずれか1項に記載の生体リズム調整装置。
【請求項6】
前記ユーザが、時差のある地域間を移動する場合に、
前記取得手段が、移動先の地域に関する移動先地域情報を含む前記行動予定データを取得し、
前記制御手段が、前記移動先地域情報に基づき、前記移動先の地域における日中の時間帯を特定し、当該特定した日中の時間帯に少なくとも前記第1特殊光を照射させる、請求項5に記載の生体リズム調整装置。
【請求項7】
ユーザが睡眠を禁止する睡眠禁止期間が存在する場合に、
前記取得手段が、当該睡眠禁止期間を示す睡眠禁止期間情報を含む前記行動予定データを取得し、
前記制御手段が、前記睡眠禁止期間中、少なくとも前記第1特殊光を照射させる、請求項5に記載の生体リズム調整装置。
【請求項8】
前記行動予定データを記録した第1記録手段をさらに有し、
前記取得手段が、前記第1記録手段に記録された前記行動予定データを取得する、請求項5~7のいずれか1項に記載の生体リズム調整装置。
【請求項9】
前記ユ-ザの眼に近接して装着可能な構成を有し、
ユーザの顔に装着した状態において、前記照射手段を構成する前記第1光源及び第2光源の少なくとも一方が、ユーザの眼に相対する位置に配設されている、請求項1~8のいずれか1項に記載の生体リズム調整装置。
【請求項10】
ユーザの眼に近接して装着され、当該ユーザの眼に360nm以上400nm以下の第1波長範囲内の第1特殊光と460nm±20nmの第2波長範囲内の第2特殊光を含む光とを照射する光源を有するウェアラブルデバイスと、前記ウェアラブルデバイスにおける前記第1特殊光及び前記第2特殊光の照射を制御する制御装置と、を有し、
前記制御装置が、前記ウェアラブルデバイスにより前記ユーザの眼に前記第1特殊光及び前記第2特殊光を照射する際の条件を示す条件データを取得し、当該取得した条件データに従って前記ユーザの眼に前記第1特殊光及び前記第2特殊光を照射させることで、ユーザの生体リズムを調整し、ユーザの心身の健康を維持及び増進する、ことを特徴とする生体リズム調整システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザの生体リズムを調整する生体リズム調整装置、生体リズム調整システム及び生体リズム調整器具などに関する。
【背景技術】
【0002】
生活環境中には様々な波長の光が存在している。そうした光は、人の身体や心に影響することが報告されている。
【0003】
例えば、非特許文献1では、太陽光を浴びることにより体内時計が改善されること等が報告されている。
【0004】
また、非特許文献2では、近年の生活環境に存在するLED照明や、LEDをバックライトに使用した液晶ディスプレイ等から発する光が、身体や心に大きく影響することについて報告されている。
【0005】
さらに、非特許文献3には、380nm以上500nm以下の波長範囲の光が、人の身体や心に影響を与え、特に460nmの光がサーカディアンリズムをコントロールする役割を果たすことについて開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】羽鳥 恵、坪田一男、アンチ・エイジング医学-日本抗加齢医学会雑誌、Vol.11、No.3、065(385)-072(392),(2015)
【非特許文献2】坪田一男、「ブルーライト 体内時計への脅威」、集英社、2013年11月20日発行
【非特許文献3】ブルーライト研究会、“ブルーライトとは”[平成29年12月10日検索]、インターネット<URL: http://blue-light.biz/about_bluelight>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような現代の生活環境においては、非特許文献1~3に記載のように、特定波長の光が身体や心に影響し、サーカディアンリズムに影響する一方、各種の電気・電子機器から幅広い波長範囲の光がユーザの眼に照射されるので、これらの光によってサーカディアンリズムに乱れが生じ、当該サーカディアンリズムを正常な状態に保つことが難しい。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、特定波長の光をユーザに意図的に照射することによって、サーカディアンリズムを調整し、ユーザの心身の健康を維持及び増進することが可能な生体リズム調整装置などを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記課題を解決するため、本発明は、
ユーザの生体リズムを調整する生体リズム調整装置であって、
前記ユーザの眼に対して、360nm以上400nm以下の第1波長範囲内の第1特殊光を照射する第1光源を少なくとも有する照射手段と、
前記照射手段により前記ユーザの眼に前記第1特殊光を照射する際の条件を示す条件データを取得する取得手段と、
前記取得した条件データに従って前記照射手段を制御し、前記ユーザの眼に前記第1特殊光を照射させる制御手段と、
を有する構成を有している。
【0010】
この構成により、本発明は、サーカディアンリズムに影響する360nm以上400nm以下の第1特殊光を意図的にユーザの眼に照射することができるので、生活環境などによって異常が発生したユーザのサーカディアンリズムを強制的に調整することができる。
【0011】
したがって、本発明は、生活環境などに合わせて睡眠時間帯や覚醒時間帯をコントロールすることができるので、あらゆる生活シーンにおいて、ユーザの心身の健康を維持及び増進をすることができる。
【0012】
(2)また、本発明は、
前記照射手段が、
前記ユーザの眼に対して、460nm±20nmの第2波長範囲内の第2特殊光を照射する第2光源をさらに有し、
前記取得手段が、
前記条件データとして、前記照射手段により前記第1特殊光及び前記第2特殊光を前記ユーザの眼に照射する際の基準となるデータを取得し、
前記制御手段が、
前記取得した条件データに従って、前記ユーザの眼に前記第1特殊光とともに前記第2特殊光を照射させる構成を有している。
【0013】
この構成により、本発明は、サーカディアンリズムに影響する380nm以上500nm以下の波長範囲内の光において、460nm以上±20nmの第2波長範囲内の第2特殊光は、特にサーカディアンリズムに強く影響することから、第1特殊光とともに、第2特殊光をユーザの眼に照射することにより、ユーザのサーカディアンリズムを調整する効果を高めることができる
【0014】
(3)また、本発明は、
前記制御手段が、
太陽光に含まれる前記第1特殊光及び第2特殊光の割合にて、前記第1特殊光及び第2特殊光を前記ユーザの眼に照射させる構成を有している。
【0015】
この構成により、本発明は、太陽光に似た光を再現しつつ、第1特殊光及び第2特殊光をユーザの眼に照射できるので、サーカディアンリズムをより効果的に整えることができる。
【0016】
(4)また、本発明は、
前記取得手段が、
前記条件データとして、ユーザの所在地域における日照に関する日照情報を含むデータを取得し、
前記制御手段が、
前記日照情報に基づき、当該所在地域における日中の時間帯を特定するとともに、当該特定した日中の時間帯に少なくとも前記特殊光を前記ユーザの眼に照射させる、構成を有している。
【0017】
この構成により、本発明は、日中の時間帯に少なくとも第1特殊光をユーザの眼に照射できるので、サーカディアンリズムの乱れを正すことができる。
【0018】
(5)また、本発明は、
前記取得手段が、
前記条件データとして、前記ユーザの行動予定を示す行動予定データを取得し、
前記制御手段が、
前記取得した行動予定データに従って、少なくとも前記第1特殊光を照射させる構成を有している。
【0019】
この構成により、本発明は、ユーザの行動予定に合わせてサーカディアンリズムを調整することができる。
【0020】
(6)また、本発明は、
前記ユーザが、時差のある地域間を移動する場合に、
前記取得手段が、
移動先の地域に関する移動先地域情報を含む前記行動予定データを取得し、
前記制御手段が、
前記移動先地域情報に基づき、前記移動先の地域における日中の時間帯を特定し、当該特定した日中の時間帯に少なくとも前記第1特殊光を照射させる構成を有している。
【0021】
この構成により、本発明は、時差のある地域にユーザが移動(渡航)する場合においてもジェットラグ症候群の発症を効果的に抑制することができる。
【0022】
(7)また、本発明は、
ユーザが睡眠を禁止する睡眠禁止期間が存在する場合に、
前記取得手段が、
当該睡眠禁止期間を示す睡眠禁止期間情報を含む前記行動予定データを取得し、
前記制御手段が、
前記睡眠禁止期間中、少なくとも前記第1特殊光を照射させる、構成を有している。
【0023】
この構成により、本発明は、睡眠禁止期間における覚醒を促し、業務効率の改善と業務上のミスの発生を防止することができる。
【0024】
なお、「睡眠禁止期間」としては、同日の一定期間であってもよいし、2日以上の日を跨いで定義される期間であってもよい。
【0025】
(8)また本発明は、
前記行動予定データを記憶した第1記憶手段をさらに備え、
前記取得手段が、
前記第1記憶手段に記憶された前記行動予定データを取得する、構成を有している。
【0026】
この構成により、本発明は、予めデータベース等に記憶された予定情報を用い、処理を高速化できる。
【0027】
(9)また、本発明は、
前記ユ-ザの眼に近接して装着可能な構成を有し、
ユーザの顔に装着した状態において、前記照射手段を構成する前記第1光源及び第2光源の少なくとも一方が、ユーザの眼に相対する位置に配設されている、構成を有している。
【0028】
この構成により、本発明は、眼鏡型のウェアラブルデバイスとして生体リズム調整装置を構成し、ユーザの眼に少なくとも第1特殊光を照射できるので、必要量の光を確実にユーザの眼に照射することができる。
【0029】
(10)また、本発明の生体リズム調整システムは、
ユーザの眼に近接して装着され、当該ユーザの眼に360nm以上400nm以下の第1波長範囲内の第1特殊光を照射する光源を少なくとも有するウェアラブルデバイスと、
前記ウェアラブルデバイスにおける前記第1特殊光の照射を制御する制御装置と、
を有し、
前記制御装置が、
前記ウェアラブルデバイスにより前記ユーザの眼に前記第1特殊光を照射する際の条件を示す条件データを取得し、当該取得した条件データに従って前記ユーザの眼に前記第1特殊光を照射させる構成を有している。
【0030】
この構成により、本発明は、ウェアラブルデバイスによりユーザの眼に第1特殊光を照射させることができるので、ユーザのサーカディアンリズムを調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本願の第1実施形態における生体リズム調整装置の一例を示す外観図である。
図2】第1実施形態における生体リズム調整装置の構成例を示すブロック図である。
図3】パルス的に与えたバイオレットライトのエネルギー変化に応じたマウスの活動量の変化を示す動物実験の結果及びその実験条件を示す図である。
図4】マウスを使用した動物実験において、グループAに属するマウスの活動量の計測結果を示すアクトグラム及びグループBに属するマウスの活動量の計測結果を示すアクトグラムを示す図である。
図5】マウスを使用した動物実験により得られたサーカディアンリズムの位相シフト量を示すグラフである。
図6】太陽光の国際標準データ「AM1.5G」を示す図であり、国際標準データにおける分光放射照度のスペクトル及び分光放射照度の比、及び、太陽光に含まれるブルーライト及びバイオレットライトの単位波長当たりの放射照度を示す図である。
図7】本願の第2実施形態の生体リズム調整システム100の構成例を示すシステム構成図である。
図8】本願の第4実施形態の通信システムSの構成例を示すシステム構成図である。
図9】第4実施形態の通信端末装置の構成例を示すブロック図である。
図10】第4実施形態の通信端末装置のアプリケーション実行部において実行される処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下の実施形態で説明される構成の全てが、本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0033】
[1]第1実施形態
[1.1]概要
まず、図1又は図2を用いて、本願に係る生体リズム調整装置又は生体リズム調整システムの第1実施形態について説明する。なお、図1は、本実施形態の生体リズム調整装置1の外観を示す図であり、図2は、本実施形態の生体リズム調整装置の構成を示すブロック図である。
【0034】
本実施形態の生体リズム調整装置1は、ユーザの眼に対して、所定の波長範囲内の光を照射し、生活環境などによって異常が発生したユーザのサーカディアンリズムを強制的に調整し、生活環境などに合わせて睡眠する時間帯や覚醒する時間帯をコントロールするなど、ユーザの生体リズムを調整する装置である。
【0035】
特に、本実施形態の生体リズム調整装置1は、
(1)ユーザの眼に対して、360nm以上400nm以下の第1波長範囲内の第1特殊光を照射する第1光源を少なくとも有し、
(2)ユーザの眼に第1特殊光を照射する際の条件を示す条件データを取得し、
(3)取得した条件データに従って、第1特殊光の照射を制御する、
構成を有している。
【0036】
一般的に、「サーカディアンリズム」(概日リズム、又は、体内時計ともいう。)は、約24時間周期で変動する生理現象をいい、当該サーカディアンリズムに異常が生じると、食欲、眠気、睡眠等に影響を及ぼすため、ストレスがたまり、また、体調を崩す原因となる。
【0037】
このため、主に日中(日の出から日の入りまでの日が出ている時間帯)に太陽光を浴びることにより、サーカディアンリズムを安定させることが健康の維持及び増進には必要とされている。
【0038】
また、人間の眼は、視細胞としての錐体細胞及び桿体細胞を有し、色を知覚するのみならず、非視覚的作業も行う。例えば、メラノプシン含有網膜神経節細胞(mRGC:melanopsin containing retinal ganglion cell)は、460nm±20nmの範囲内の波長の光で最も強く作用し、サーカディアンリズムに影響を与えることが知られている。
【0039】
例えば、最近では、この種の睡眠障害を改善するため、メラトニン分泌と光の関係に着目した、治療法であって、白色光などのBLを含む強い光(5000ルクス~10000ルクス)を人為的に患者に照射することにより、メラトニンの分泌タイミングをコントロールし、外界環境と睡眠相とのずれを補正する治療法(光療法、ライトセラピーとも呼ばれる)も提案及び実施され、睡眠相後退症候群などのサーカディアンリズム睡眠障害や冬期性うつなどにも効果を発揮している。
【0040】
具体的には、mRGCが460nm±20nmの波長範囲内のような460nmを含む光(以下、「ブルーライト」又は、「BL」ともいう。)を受光すると、体内時計を司る脳の視交叉上核により、上頚部交感神経節を介して松果体に信号が伝達される。
【0041】
したがって、松果体におけるメラトニン分泌が抑制されることによって覚醒状態となり、サーカディアンリズムがリセットされることが広く知られている。
【0042】
この結果、日中の時間帯(特に、朝から午前中にかけての時間帯)に太陽光を浴び、mRGCによりBLが受光されると、サーカディアンリズムがリセットされ、正常な状態(例えば、6:00~8:00の間に覚醒し、21:00~24:00の間に眠気を催すような、通常の社会生活を送る上で障害とならない状態)にサーカディアンリズムを整えることが可能になる。
【0043】
また、サーカディアンリズムを整える光としては、BLのみならず、360nm以上400nm以下の波長範囲内のような380nmの波長光を含む光(以下、「バイオレットライト」又は、「VL」という。)を照射した場合にも、同様にサーカディアンリズムの位相がシフトし、サーカディアンリズムのリセット及び調整を行えることが実験によって分かっている。
【0044】
特に、本発明者は、BLとは異なり、360nm以上400nm以下の波長範囲内のような380nmの波長光を含むVLを照射した場合にも、BLを照射した場合と同様にサーカディアンリズムの位相がシフトし、サーカディアンリズムのリセット及び調整が可能であることを確認した。
【0045】
この実験は、マウスに対してVLを短時間照射することにより、少ないエネルギー量のVLをマウスに照射しつつ、その活動量の変化をモニタリングしたものである。なお、実験において観察されたマウスの活動量の変化を図4に示す。
【0046】
後述するように、VLを照射することによって、マウスの活動量が変化し、サーカディアンリズムの位相がずれていることが分かる。また、この実験結果から、被検体に照射するVLのエネルギー量が低くても、サーカディアンリズムのリセット及び調整に効果があることが判明した。
【0047】
上記に加えて、本発明者は、VLを照射した場合における人体における影響についても調査した。
【0048】
具体的には、当該調査においては、日中の時間帯に被検者の眼に310μW/cmのVLを2時間照射し、照射した日の睡眠時における被検者の寝返り頻度や動きをセンサにより検出することによって、レム睡眠とノンレム睡眠のサイクルをモニタリングし、VL照射が被検者の睡眠の質に与える影響を調査した。
【0049】
同様の条件にて、複数人の被検者を対象とした調査を約6ヶ月間にわたって、毎日繰り返したところ、全ての被検者において、睡眠の質が向上し、次の日の朝の目覚めが良くなることが判明した。
【0050】
このことは、VLの照射が人間のサーカディアンリズムの乱れを整える効果を発揮していることを示している。
【0051】
なお、VLがサーカディアンリズムに影響を与えるメカニズムは、BLと同様に、mRGCが寄与している可能性もあるが、mRGCは、460nmに感受性のピークがあり、VLの波長領域における感受性は高くない。したがって、VLのサーカディアンリズム調整機能には、mRGCとは別の網膜細胞が寄与している可能性が高いことが推認される。
【0052】
一方、現代社会においては、スマートフォンなどの情報通信端末装置が劇的に普及し、我々は、昼夜を問わず、スマートフォン、ゲーム機、パーソナルコンピュータ、又は、テレビ等の表示装置に顔を向けて視聴する生活習慣が身についている。
【0053】
この種の表示装置から発せられる光は、BLの波長帯の光を含んでいるため、夜の遅い時間にこの種の表示装置を利用すると、本来寝るべき時間になっても、松果体におけるメラトニン分泌が抑制されてしまう。
【0054】
したがって、このような生活習慣により、サーカディアンリズムが乱れ、睡眠相後退症候群などのサーカディアンリズム原因の睡眠障害(概日リズム睡眠障害)が発生する原因となっている。
【0055】
そこで、本実施形態の生体リズム調整装置1は、VL及びBLがサーカディアンリズムに与える影響を利用して、ユーザのサーカディアンリズムの乱れを正し、生活環境などに合わせて睡眠時間帯や覚醒時間帯をコントロールすること、及び、その結果、ユーザの心身の健康を維持及び増進をすることが可能な構成を有している。
【0056】
特に、ユーザのサーカディアンリズムをリセットし、又は、調整するためには、ユーザが屋外にて実際に太陽光を浴びることが理想的であるため、本実施形態の生体リズム調整装置1は、太陽光に含まれるVL及びBLの割合によってユーザの眼にVL及びBLを照射するようになっており、太陽光に似た光を再現しつつ、ユーザの眼に照射する構成を有している。
【0057】
具体的には、本実施形態の生体リズム調整装置1は、図1に示すように、ユーザの眼に近接して装着される眼鏡型のウェアラブルデバイスとして構成され、生体リズム調整装置1をユーザの顔に装着した状態で、ユーザの左右の眼に相対する位置に右眼用光源11と左眼用光源12を有している。
【0058】
各光源11及び12には、例えば、眼鏡フレームにおいてレンズの固定される部位の中央部に設けられており、それぞれ、VL照射用のLED(発光ダイオード)11V及び12Vと、BL照射用のLED11B及び12Bを有している。
【0059】
そして、光源11及び12は、生体リズム調整装置1がユーザの顔に装着され、ユーザが眼を開いた状態でユーザの眼にVL及びBLを照射する構成を有している。
【0060】
なお、本実施形態の生体リズム調整装置1においては、光源11及び12として、VL照射用のLED11V、12Vと、BL照射用のLED11B、12Bと、を1つにまとめた光源を利用しているが、1つのLEDにて選択的にVL及びBLを照射可能なハイブリッド型のLEDを利用するようにしてもよい。
【0061】
また、上述のようにVL及びBLの双方にサーカディアンリズムを調整する能力があるので、BLのみ、又は、VLのみをユーザの眼に照射した場合にも、ユーザのサーカディアンリズムの乱れを正すことが可能である。
【0062】
ただし、本実施形態においては、サーカディアンリズムの調整機能を高めるため、VLとBLをユーザの眼に同時に照射する構成を採用するものとして説明をする。
【0063】
[1.2]生体リズム調整装置の構成
次に、図2を用いて本実施形態の生体リズム調整装置1の機能ブロックの構成について説明する。なお、図2は、本実施形態の生体リズム調整装置1の機能ブロックの構成を示すブロック図である。
【0064】
本実施形態の生体リズム調整装置1は、図2に示すように、右眼用光源11と、左眼用光源12と、右眼用光源11に内蔵されたLED11B及び11Vを駆動するための右眼用光源駆動回路110と、左眼用光源12に内蔵されたLED12B及びLED12Vを駆動するための左眼用光源駆動回路120と、を有している。
【0065】
また、生体リズム調整装置1は、ユーザが各種の入力操作を行うための操作部130と、ROM/RAM140と、CPU(中央演算装置)150と、を有している。なお、上記の各部は、バスによって相互に接続されており、各種のデータや信号の授受を行っている。
【0066】
右眼用光源11及び左眼用光源12には、各々、BL照射用のLED11B及び12Bと、VL照射用のLED11V及び12Vが内蔵されている。
【0067】
右眼用光源駆動回路110及び左眼用光源駆動回路120は、それぞれ、CPU150による制御の下、対応する光源11又は12に内蔵された各LED11B、11V、12B、12Vに駆動信号を供給して、LED11B、11V、12B、12Vを発光させる。なお、本実施形態の右眼用光源駆動回路110及び左眼用光源駆動回路120は、光源11及び12と連動して、例えば、本発明の「照射手段」を構成する。
【0068】
特に、右眼用光源駆動回路110及び左眼用光源駆動回路120は、CPU150から供給される制御信号に従って、LED11B、11V、12B、12Vに供給する駆動信号を変化させ、LED11B、11V、12B、12Vから照射されるVL及びBLの照度を調整する機能を有している。
【0069】
また、右眼用光源駆動回路110及び左眼用光源駆動回路120が、それぞれ、LED11B、11V、12B、12Vから照射されるVL及びBLの照度を調整する際の方法については任意である。例えば、右眼用光源駆動回路110及び左眼用光源駆動回路120は、光源11及び12に供給する駆動信号をPWM(pulse wide modulation)方式にて変化させ、照度を調整するようにしてもよい。
【0070】
そして、右眼用光源駆動回路110及び左眼用光源駆動回路120は、CPU150から供給される制御信号に応じた照度にて、LED11V、11B、12V、12BからVL及びBLを照射する。
【0071】
操作部130は、例えば、電源ボタンや、十字型の操作ボタン、決定ボタン等の各種ボタンを有し、ユーザが行った入力操作に対応する操作コマンドを、バスを介してCPU150に出力する。
【0072】
また、操作部130の各種のボタンは、生体リズム調整装置1の筐体に設けられており、かつ、当該生体リズム調整装置1がユーザに装着された状態であっても、ユーザが操作可能な位置に設けられている。
【0073】
ROM/RAM140は、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等の不揮発性メモリと、ワークエリアとして用いられるRAM(Random Access Memory)とを有する。
【0074】
そして、ROM/RAM140には、生体リズム調整装置1の制御プログラムや、光源11及び12の発光を制御するための制御データが記憶される。
【0075】
特に、本実施形態において、ROM/RAM140には、VL及びBLをユーザの眼に照射する際の放射照度を規定する条件データが記憶されている。
【0076】
例えば、ROM/RAM140には、各モードに対応付けて
(1)第1モード:BLの放射照度を100μW/cm、VLの放射照度を50μW/cm
(2)第2モード:BLの放射照度を120μW/cm、VLの放射照度を60μW/cm
(3)第3モード:BLの放射照度を140μW/cm、VLの放射照度を70μW/cm
など、各モードに対応する放射照度にて光源11及び12からVL及びBLを照射させるための制御データが記憶されている。
【0077】
CPU150は、当該条件データにより規定される放射照度にて、VL及びBLがユーザの眼に照射されるように右眼用光源駆動回路110及び左眼用光源駆動回路120を制御する。
【0078】
特に、CPU150は、ROM/RAM140に記憶されたプログラムに従って、条件データにより示される放射照度にてユーザの眼にVL及びBLを照射させるための処理を実行する。
【0079】
また、CPU150は、ユーザの眼に対するVL及びBLの照射に際して、ユーザに照射期間や上述のような照射モードを条件データとして設定させるための制御を実行し、当該設定された照射期間中、太陽光に含まれる割合にてユーザの眼にVL及びBLが照射されるように右眼用光源駆動回路110及び左眼用光源駆動回路120を制御する。
【0080】
例えば、CPU150は、ROM/RAM140に記憶された制御データの中から、図示しないタイマによって自動的に、又は、操作部130の操作によって選択された1の制御データを読み出す。
【0081】
そして、CPU150は、当該選択されたモードに対応する放射照度にてユーザの眼にVL及びBLを照射させるため、読み出したモードに対応する制御データを用いて、右眼用光源駆動回路110及び左眼用光源駆動回路120を制御する。
【0082】
なお、照射期間のみならず放射照度をユーザが自由に選択することによって、ユーザの体調に合わせつつ、VL及びBLをユーザの眼に照射して、サーカディアンリズムを調整することができるようになっている。
【0083】
また、CPU150は、操作部130と連動し、所定の手順によってユーザに照射期間を設定させる。例えば、CPU150は、設定モードにおいて、操作部130の十字型のキーの上方向を1回押す毎に照射期間を所定時間(例えば、5分間あるいは10分間等)増加させ、下方向を押す毎に当該時間分照射期間を減少させ、期間の選択後に、決定キーを押すことにより照射期間を設定するようにしてもよい。
【0084】
また、本実施形態においては、ユーザの眼に照射するVL及びBLの放射照度は、ユーザの眼の表面におけるVL及びBLの放射照度である必要があるが、本実施形態の場合には、ユーザの眼に近接して、光源11及び12が配置されるため、距離による光の減衰はほとんど考慮する必要はないので、大きなパワーのLEDを用いることなく本機能を実現することできる。
【0085】
[1.3]サーカディアンリズムにVLが与える影響の動物実験について
次に、図3図5を用いて本実施形態におけるサーカディアンリズムにVLが与える影響に関する動物実験の結果について説明する。
【0086】
なお、図3は、パルス的に与えたVLのエネルギー変化に応じたマウスの活動量の変化を示す動物実験の実験条件を示す図であり、図4は、当該マウスを使用した動物実験において、グループAに属するマウスの活動量の計測結果を示すアクトグラム及びグループBに属するマウスの活動量の計測結果を示すアクトグラムを示す図である。また、図5は、マウスを使用した動物実験により得られたサーカディアンリズムの位相シフト量を示すグラフである。
【0087】
(1)実験条件について
まず、図3を用いて実験条件について説明する。
【0088】
本実験においては、生後6週間の雄のマウスを2つのグループ(グループA及びB)に分け、各グループに対して、以下の条件で光を照射した。
【0089】
(A)グループA
このグループに属するマウスに対しては、通常の白色LEDを用いて、図3(A)に示されるようなスペクトルを有する光(以下、「白色光」又は「WL」という。)を照射した。多くの白色LEDは、青色LEDを発光体とし、黄色の蛍光体と組み合わせ、白色を作り出すモジュールであり、図3(A)はそのような白色LEDの発光スペクトルである。
【0090】
このとき、図3(C)に示すように、8時00分~20時00分までの間(すなわち、12時間)、WLのLEDを点灯し、マウスケージの底部において100~300ルクスとなるようにWLをマウスに浴びさせ、20時00分にLEDを消灯して、12時間暗闇にする状況(以下、「明暗状況」という。)を一週間続けた。その後、暗闇の状況下で10ルクスのWLを30分間継続して照射し、(以下、「恒暗条件」という。)その活動量を計測した。
【0091】
(B)グループB
このグループに属するマウスに対しては、WLとともにVLを照射し、図3(B)で示されるようなスペクトルを有する光を照射した。
【0092】
このとき、図3(C)に示すように、グループBに属するマウスには上記グループAに属するマウスに対して行ったのと同様に、一週間明暗条件によりWL及びVLの双方を含む光の照射を繰り返した後、恒暗条件下においてWL及びVLの双方を含む10ルクス光を30分間継続して照射し、その活動量を計測した。
【0093】
(2)実験結果について
本実験における活動量計測には、ランニングホイールを用いた。具体的には、上記条件にて光を照射したマウスをランニングホイール内に入れ、マウスの移動量をランニングホイールの回転量に基づき算出した。
【0094】
この結果、グループAに属するマウスに関しては、図4(A)、グループBに属するマウスに関しては、図4(B)のような活動量の計測結果が得られた。
【0095】
なお、図4(A)及び(B)において、縦軸は、30分毎のマウスの活動量を示し、横軸は、時刻となっている。また、各段は、48時間の時間長をとり、各段の後半24時間と次の段の前半24時間は重複して表示している。
【0096】
また、図4(A)及び(B)中に示す線は、本来、連続するものであるが、図4(A)及び(B)に示すように不連続性が認められる。
【0097】
この不連続になった部分(すなわち、図4(A)及び(B)において矢印で示している部分)が、サーカディアンリズムの位相シフト量を示している。
【0098】
このようにして得られたサーカディアンリズムの位相シフト量をグラフ化したところ、図5のような結果が得られた。なお、図5に示す位相シフト量の測定結果におけるP値は、0.005である。また、図5において、縦軸は時間(分)である。
【0099】
図5に示すように、グループAよりもグループBにおける位相シフト量が大きくなった。このことは、WLのみを照射した場合よりもWLとともにVLを照射することにより、位相シフト量が大きくなることを意味している。
【0100】
以上の実験結果から、VLを生体に照射することにより、サーカディアンリズムの位相を変化させ、サーカディアンリズムを調整できることが新たに判明したことが分かる。
【0101】
[1.4]ユーザの眼に照射するVL及びBLの割合
次に、図6を用いて本実施形態において生体リズム調整装置1によりユーザの眼に照射するVL及びBLの割合について説明する。
【0102】
なお、図6は、横軸が波長、縦軸が分光放射照度の太陽光の国際標準データ「AM1.5G」を示す図であり、国際標準データにおける分光放射照度のスペクトル及び分光放射照度の比、及び、太陽光に含まれるBL及びVLの単位波長当たりの放射照度を示す図である。
【0103】
太陽光に含まれるVL及びBLの分光放射照度は、図6(A)に示すように、VLが約70μW/cm/nm、BLが約153μW/cm/nmとなっている。したがって、太陽光に含まれるVLとBLの比は、分光放射照度を基準とすると、VL:BL=1:2.2となる。
【0104】
一方、図6(B)に示すように、太陽光に含まれるVL及びBLの単位波長あたりの放射照度は、VLが、約70.05μW/cm/nm、BLが128.875μW/cm/nmとなっている。したがって、太陽光に含まれるVLとBLの比は、単位波長あたりの分光放射照度を基準とすると、VL:BL=1:1.8となる。
【0105】
なお、VL及びBLの波長域に関する定義においては、VLの波長域の幅が40nm(=400-360)である一方、BLの波長域の幅が120nm(=500-380)と波長域の幅が異なる。
【0106】
このため、BL及びVLの放射照度(15465μW/cm及び2802μW/cm)で比較するのは適当ではないため、波長域の幅(120nm及び40nm)により除算し、上記単位波長あたりの放射照度を算出し、それで比較をしている。
【0107】
すなわち、BLの単位波長あたりの放射照度128.875μW/cmは、15465μW/cm÷120nm、VLの単位波長あたりの放射照度70.05μW/cmは、2808μW/cm÷40nmにより、その値が算出される。
【0108】
太陽光に含まれるVLとBLの比は、分光放射照度を基準にした場合と単位波長あたりの分光放射照度を基準とした場合の両方で、おおよそ1:2±0.2程度となる。以上の考察に基づき、本実施形態の生体リズム調整装置1においては、VL及びBLを1:2程度の割合で照射する構成を採用している。
【0109】
一方、ユーザの眼に対して強すぎるVL及びBLを照射すると、ユーザが眩しさを感じ、不快感を覚える可能性がある。
【0110】
特に、強すぎるBLをユーザの眼に照射することは、ユーザの眼の安全性の観点からも望ましくない。例えば、強すぎるBLをユーザの眼に照射すると、不快感を覚えるとともに、網膜に影響を及ぼす可能性がある。
【0111】
これに対して、本発明者が試作機で用いたBLのLEDの波長特性を元に、IEC(国際電気標準会議)62471及びJIS(日本工業規格) C7550による安全基準に基づく計算を行った結果、BLの放射照度が、160μW/cm以下あれば、確実に安全性を確保可能であることが判明した。
【0112】
具体的には、IEC62471において小さなBL光源による網膜の危険曝露量を規定する下記式(1)おけるE(実効放射照度)の値を、BLのLEDを搭載した生体リズム調整装置1を用いつつ、所定の条件下で測定した放射照度の結果値は、143μW/cmとなった。この時に(式1)に従って計算した実効放射照度は、89μW/cmとなる。光の波長依存性が変化せず、(式1)における「Eλ」が変化しない状況においては、放射照度と実効放射照度は比例関係にあるので、実効放射照度の限度値である100μW/cm(=1W/m)となるためには、放射照度が143×100/89=160μW/cm程度になり、160μW/cmまでの放射照度のBLであればユーザの眼に照射した場合における安全性を確保できることになる。
【0113】
【数1】
【0114】
このため、本実施形態においては、ユーザの眼に照射するBLの放射照度を、確実に安全性の確保できる上限値である160μW/cmとするとともに、VLの放射照度をその半分の80μW/cmに固定し(それにより、VLとBLの放射照度比を1:2とすることで太陽光を模している)、当該放射照度を示す発光制御用のデータを、上記条件データとして、ROM/RAM140に予め記憶させる構成を採用している。
【0115】
このように、本実施形態の生体リズム調整装置1は、安全性を確保しつつ、ユーザにより設定された期間中VL及びBLを太陽光に含まれる割合にてユーザの眼に照射できるので、ユーザのサーカディアンリズムを確実に整えることができるようになっている。
【0116】
また、安全性が確実に確保できるBLの放射照度の上限値は、上記のように160μW/cmであるので、これを超えない範囲内で、VL:BLの比を1:2程度に予め設定しておけば、いずれのモードが選択された場合にも、太陽光に含まれる割合にてVL及びBLをユーザの眼に照射できるので、安全性を確保しつつ、サーカディアンリズムの調整機能を向上させることも可能となる。
【0117】
[2]第2実施形態
次に、図7を用いて、本願に係る生体リズム調整装置又は生体リズム調整システムの第2実施形態について説明する。なお、図7は、本実施形態の生体リズム調整システム100の構成を示すシステム構成図である。
【0118】
本実施形態は、第1実施形態のウェアラブルデバイスとしての生体リズム調整装置に加えて、当該生体リズム調整装置1を制御する通信端末装置を用いる点に特徴があり、その他の構成は共通するため、同一部材においては同一符号を用いてその説明を省略する。
【0119】
特に、本実施形態の生体リズム調整システム100は、図7に示すように、光源11及び12を有するウェアラブルデバイス10と、当該ウェアラブルデバイス10と有線又は無線によって接続されたスマートフォン、タブレット型情報通信端末装置等の通信端末装置20と、を有している。
【0120】
本実施形態のウェアラブルデバイス10は、上記の図2と同様の構成に加えて、通信端末装置20と通信接続するために用いるUSB(Universal Serial Bus)等の有線インターフェースやBluetooth(登録商標)、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.11a、g、n、ac等により構成される図示せぬI/Oインターフェースを有している。
【0121】
また、CPU150は、このI/Oインターフェースを介して、通信端末装置20から供給される制御コマンドに従って、右眼用光源駆動回路110及び左眼用光源駆動回路120を制御し、ユーザの眼に対するVL及びBLの照射を制御する。
【0122】
通信端末装置20は、ウェアラブルデバイス10に搭載された光源11及び12の発光を制御し、ユーザのサーカディアンリズムを調整する機能を実現するため、制御コマンドを生成し、ウェアラブルデバイス10に送信する機能を有している。
【0123】
具体的には、通信端末装置20は、第1実施形態の生体リズム調整装置1におけるROM/RAM140及びCPU150の機能を実現する。
【0124】
特に、通信端末装置20には、予め条件データが記憶されているとともに、所定の設定画面を表示させつつ、照射期間に関するユーザの設定を受け付け、当該設定された照射期間及び条件データに基づいて、ウェアラブルデバイス10を制御する制御コマンドを送信する。
【0125】
なお、本実施形態のウェアラブルデバイス10は、例えば、本発明の照射手段を構成し、通信端末装置20は、ウェアラブルデバイス10のCPU150と連動して、本発明の制御装置を構成する。
【0126】
また、通信端末装置20は、上記第1実施形態と同様に、VL及びBLをユーザの眼に照射する際の放射照度に関するモードを複数用意し、タイマを用いて自動的に、又は、ユーザの操作に応じて、選択されたモードに基づいて、ユーザの眼にVL及びBLを照射させる。
【0127】
[3]第3実施形態
次に、本願に係る生体リズム調整装置又は生体リズム調整システムの第3実施形態について説明する。
【0128】
本実施形態は、上記第1及び第2実施形態に代えてユーザの眼にVLのみを照射する点に特徴があり、その他の構成は共通するため、同一部材には同一符号を付してその説明を省略する。
【0129】
なお、本実施形態の生体リズム調整装置1又は生体リズム調整システム100は、光源11及び12に少なくともVL照射用LED11V、及び12Vを設ければよく、BL照射用LED11B、12Bを設けることは必ずしも必要性とならない。
【0130】
一方、本実施形態においては、生体リズム調整装置1又は生体リズム調整システム100は、実際の太陽光に近いVLをユーザの眼に照射するための構成を有している。
【0131】
特に、本発明者は、実際に東京の屋外において観測されるVLの放射照度を計測し、以下のような結果が得られた。
【0132】
(A)快晴の日:583μW/cm
(B)雲のある日:271μW/cm
【0133】
なお、本計測においては、10~16時30分の時間帯においてVLの放射照度を東西南北の各水平方向に対して、複数回測定するとともに、4方向に対する測定値の平均を算出して、当該時間帯における平均値を算出した。
【0134】
上記計測結果と東京における快晴日数(46日)から東京におけるVLの年間の平均放射照度を算出すると、約310μW/cmになる。したがって、ユーザの眼に対して、310μW/cmのVLを照射すると、実際に東京の屋外にて太陽光を浴びたのと同様のVLをユーザの眼に照射し、東京の屋外と似た環境を再現できることになる。
【0135】
そこで、本実施形態の生体リズム調整装置1又は生体リズム調整システム100は、310μW/cmの放射照度にて、ユーザの眼にVLのみを照射する構成を採用している。
【0136】
なお、VLに関しては、BLと比較して眼球内での減衰量が大きく、比視感度も低いことから、眼の表面に310μW/cmの光を照射したとしてもユーザが不快感を覚える可能性は低く、網膜対する影響もほとんどない。
【0137】
したがって、本実施形態のように310μW/cmの放射照度にてVLを照射することにより、ユーザの安全性を確保しつつ、屋外環境と同程度のVLを照射することができ、サーカディアンリズムを確実に調整することができるようになっている。
【0138】
また、本実施形態においては、VLのみを照射する構成としているが、BL用のLED11B、12Bのみを光源11及び12に設け、同様の構成によりBLのみを照射するようにしてもよい。
【0139】
ただし、BLのみを照射する方法を採用し、もしくは、BLとVLを同時に照射する方法を採用する場合には、BLの放射照度を上記東京におけるVLの年間の平均放射照度(310μW/cm)の2倍の値にあたる620μW/cmではなく、上記上限値の160μW/cm以下にして、ユーザの眼を保護できるようにすることが望ましい。
【0140】
[4]第4実施形態
[4.1]概要
次に、図8図10を用いて本願に係る生体リズム調整装置又は生体リズム調整システムの第4実施形態について説明する。
【0141】
本実施形態は、ユーザの行動予定(以下、「スケジュール」ともいう。)に基づき、VL及びBLをユーザの眼に照射して、サーカディアンリズムをスケジュールに合わせて調整する点に特徴があり、その他の構成は第1実施形態及び第2実施形態と共通するため、同一の部材については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0142】
特に、本実施形態の生体リズム調整システムを構成する通信システムSは、ユーザの行動予定(以下、「スケジュール」ともいう。)に基づき、VL及びBLをユーザの眼に照射して、サーカディアンリズムをスケジュールに合わせて調整するシステムである。
【0143】
現代社会においては、様々な勤務体系が存在し、例えば、二交代制、三交代制のシフト勤務の場合には、毎日決まった時刻に起床、就寝することが難しい。また、例えば、業務遂行の期限(例えば、明日の9時まで等)が定められている場合には、期限前の所定期間(例えば、期限前の24時間等)睡眠時間を確保できない状況も存在する。
【0144】
このようなケースにおいては、ユーザが十分な睡眠時間を確保できないので、何らかの対策を講じなければ、眠気に起因して業務効率が低下し、ミスを誘発する可能性があるので、本実施形態においては、後述する覚醒機能により、業務遂行中に眠気を催すことを防止する機能を実現することとした。
【0145】
一方、覚醒機能により、ユーザの睡眠を所定期間禁止した場合には、ユーザのサーカディアンリズムに乱れが生じ、心身に影響を与える可能性も生じるため、例えば、期限の定められた業務が完了した場合には、就寝時刻を調整し、サーカディアンリズムを普段の生活に同調させることが必要となる。
【0146】
特に、例えば、二交代、三交代等の業務シフトが変化した場合などにおいては、その状況変化に合わせて、就寝時刻を調整し、新たなシフトにサーカディアンリズムを同調させることが健康の維持増進と、業務効率改善のためには望ましい。
【0147】
そこで、本実施形態の通信システムSは、
(1)予め設定されたユーザが寝ることのできない期間(以下、「睡眠禁止期間」ともいう。)を含むスケジュール(行動予定)に基づいて、睡眠禁止期間中、ユーザの眼にVL及びBLを照射することにより睡眠禁止期間中の眠気を抑制し、業務効率の向上とミスの発生を防止する機能(以下、「覚醒機能」ともいう。)、及び、
(2)望就寝日時に眠気を催すようにサーカディアンリズムを調整する機能(以下、「睡眠導入機能」ともいう。)、
を実現するための構成を有している。
【0148】
[4.2]通信システムの構成
次に、図8を用いて本実施形態の通信システムSの構成を説明する。図8は、本実施形態の通信システムSの全体構成を示すシステム構成図である。また、図8においては、図面が煩雑になることを防止するため、所定のユーザ及び当該ユーザにより利用される生体リズム調整システム100のみを表示している。すなわち、通信システムSには、図示するよりも多くのユーザ及び生体リズム調整システム100が存在している。
【0149】
本実施形態の通信システムSは、図8に示すように、光源11及び12を内蔵したウェアラブルデバイス10及び通信端末装置20から構成される複数の生体リズム調整システム100と、各生体リズム調整システム100とネットワークNを介して通信接続される情報管理サーバ装置30と、を有している。
【0150】
なお、図示はしないが、ネットワークNには、各種のサーバ装置や通信端末装置が通信接続され、各装置間においてデータの送受信が行われるようになっている。
【0151】
通信端末装置20は、例えばスマートフォン、タブレット型情報通信端末装置、PC(パーソナルコンピュータ)などの通信端末装置である。
【0152】
また、通信端末装置20は、XML(Extensible Markup Language)等のマークアップ言語によって記述されたデータをユーザが閲覧可能な形式にて表示するためのWebブラウザを含む各種のアプリケーションプログラムを搭載する。
【0153】
そして、通信端末装置20は、情報管理サーバ装置30及びネットワークNに接続された図示せぬ他のサーバ装置(例えば、世界各地の天候や日の出、日の入りの日時に関する情報を含む気象データを配信するサーバ装置等)とデータ通信を行い、ネットワークNを介して受信したデータの表示処理等を実行する。
【0154】
さらに、通信端末装置20には、USB等の後述するI/Oインターフェース部212が搭載されており、当該インターフェースを介してウェアラブルデバイス10と通信を実行する。
【0155】
一方、通信端末装置20には、
(1)睡眠禁止期間及び希望起床日時の少なくともいずれか一方を含むユーザのスケジュールを管理し、条件データとしての当該スケジュールに対応するデータ(以下、「行動予定データ」という。)を生成するためのアプリケーションプログラム(以下、「スケジューラ」ともいう。)と、
(2)行動予定データに基づき、光源11及び12の発光を制御するアプリケーションプログラム(以下、「発光制御アプリケーション」ともいう。)と、
が、搭載されている。
【0156】
そして、通信端末装置20は、発光制御アプリケーションに従って、
(A)ユーザの眼にVL及びBLを照射させる際の照射期間を、行動予定データにより示されるユーザのスケジュールに合わせて設定し、
(B)当該設定した照射期間中、太陽光に含まれる割合にてVL及びBLをユーザの眼に照射させるための制御コマンドを、条件データに基づいて生成し、
(C)ウェアラブルデバイス10に形成された光源11及び12の発光を制御するために、生成した条件データを、インターフェースを介してウェアラブルデバイス10に送信する、
構成を有している。
【0157】
また、通信端末装置20は、ユーザの入力に基づいて、上記睡眠禁止期間とは別に、曜日毎、又は、各日毎に希望就寝日時(例えば、月~木及び日曜日は23時30分、金曜及び土曜日は24時30分就寝等)を設定し、当該設定された希望就寝日時に対応する希望就寝日時情報に基づき、ユーザの眼にVL及びBLを照射する構成を有している。
【0158】
ウェアラブルデバイス10は、通信端末装置20からインターフェースを介して送信された制御コマンドを受信し、当該制御コマンドに従って、光源11及び12を発光させて、ユーザの眼にVL及びBLを照射させる。
【0159】
また、ウェアラブルデバイス10は、同様に受信した制御コマンドに従って光源11及び12を消灯させる。
【0160】
なお、ウェアラブルデバイス10の構成に関しては、基本的に上記第2実施形態と同様であるため、詳細を省略する。
【0161】
情報管理サーバ装置30は、ユーザの眼に照射されたVL及びBLの照射履歴に対応するデータ(以下、「照射履歴データ」という。)や行動予定データを、各生体リズム調整システム100から収集するとともに管理し、医師や親、教師、保育士、擁護員、その他の保護責任者などのオペレータに提示する機能を有している。
【0162】
なお、通信システムSは、情報管理サーバ装置30の機能により、ユーザの生活習慣をモニタリングして、医師等によるカウンセリングへの展開及び利用が可能となる。
【0163】
例えば、「あなたの生活リズムは、夜型になっているので早寝早起きを心がけるか、定期検診を受けて下さい。」等のカウンセリング結果を情報管理サーバ装置30から通信端末装置20に配信するような利用形態を実現できる。また、VL及びBLの照射がサーカディアンリズムに及ぼす影響に関するモニタリングを行うためにも利用することができる。
【0164】
[4.3]通信端末装置の構成
次に、図9を用いて、本実施形態の通信端末装置20の構成について説明する。なお、図9は、本実施形態の通信端末装置20の構成を示すブロック図である。
【0165】
本実施形態の通信端末装置20は、図9に示すように、ネットワークNに通信接続されるネットワーク通信部211と、I/Oインターフェース部212と、各種の情報に対応するデータが記憶される記憶部213と、表示部214と、表示制御部215と、装置管理制御部216と、操作部217と、現在日時を特定するタイマ218と、を有している。
【0166】
また、通信端末装置20は、ウェアラブルデバイス10によるVL及びBLの照射制御に必要な処理を実行するアプリケーション実行部219と、使用者の現在地の位置情報を生成する現在地検出部220と、センサ部222と、を有している。
【0167】
なお、上記の各部は、バスによって相互に接続されており、各種のデータや信号の授受を行っている。
【0168】
ネットワーク通信部211は、所定のネットワークインターフェースであり、装置管理制御部216及びアプリケーション実行部219の制御の下、基地局BSを介してネットワークNに接続された情報管理サーバ装置30及び図示せぬ各種のサーバ装置とデータの授受を行う。
【0169】
I/Oインターフェース部212は、入出力用インターフェースであり、外部機器として接続されるウェアラブルデバイス10に搭載された図示せぬI/Oインターフェース部と同一の通信規格に従った規格にて通信を行えるようになっている。
【0170】
記憶部213は、例えば、EEPROMやフラッシュメモリなどの記憶媒体により構成される。そして、記憶部213は、スケジューラや発光制御アプリケーションを含む各種のアプリケーションプログラム及び通信端末装置20を制御する制御プログラム、各種の制御データが記憶されるアプリケーション記憶部213aと、照射履歴データが記憶される照射履歴データ記憶部213bと、VL及びBLの照射制御に必要な各種のデータが記憶される照射制御データ記憶部213cと、行動予定データが記憶される行動予定データ記憶部213dと、ワークエリアとして用いられるRAM213eと、を有している。
【0171】
なお、照射履歴データ記憶部213bに記憶する照射履歴データのデータ構成については任意であり、例えば、ユーザの眼にVL及びBLを照射した照射期間を示すデータであってもよく、照射期間と放射照度により規定されるエネルギー量のデータであってもよい。また、本実施形態において照射制御データ記憶部213cには、太陽光の割合にてVL及びBLを照射するために必要な条件データ(すなわち、BLの放射照度を160μW/cm、VLの放射照度を80μW/cmと規定するデータ)が記憶されている。
【0172】
表示部214は、液晶パネル、又は、有機ELディスプレイパネルによって構成されている。
【0173】
表示制御部215は、表示部214にタッチパネル用の画像を含めて所定の画像を表示するための各種の制御を実行する。
【0174】
装置管理制御部216は、主としてCPUにより構成され、通信端末装置20の各部を統合制御する。
【0175】
操作部217は、各種の確認ボタン、各操作指令を入力する操作ボタン、テンキー等の多数のキー及びタッチパネルにより構成され、各操作を行う際に用いられるようになっている。
【0176】
アプリケーション実行部219は、装置管理制御部216と同一又は独立したCPUにより構成される。
【0177】
そして、アプリケーション実行部219は、装置管理制御部216による制御の下、アプリケーション記憶部213aに記憶されたアプリケーションプログラムを実行することにより、スケジューラ及び発光制御アプリケーションを実行することにより、行動予定データの生成、及び、ウェアラブルデバイス10によるVL及びBLの照射制御に必要な処理を実行する。
【0178】
具体的には、アプリケーション実行部219は、
(a)各種のデータを取得するデータ取得部219aと、
(b)スケジューラに基づき、行動予定データを生成する行動予定データ生成部219bと、
(c)発光制御アプリケーションに基づき、VL及びBLの照射期間を設定する照射期間設定部219cと、
(e)ウェアラブルデバイス10に制御コマンドを送信して、照射期間設定部219cにより設定された照射期間中、条件データに基づき、太陽光に含まれるVL及びBLの割合にてユーザの眼にVL及びBLを照射させるための処理を実行する照射制御部219dと、
(f)各種のデータを送信するための処理を実行する送信処理部219eと、
を実現する。
【0179】
なお、例えば、本実施形態のデータ取得部219aと行動予定データ生成部219bは、連動して本発明の取得手段を構成し、照射期間設定部219cと照射制御部219dは、連動して本発明の制御手段を構成する。また、本実施形態のアプリケーション実行部219の詳細について後述する。
【0180】
現在地検出部220は、GPS(Global Positioning System)受信機により構成され、GPS衛星40から受信したGPS信号に基づき、ユーザの位置情報を生成する。
【0181】
センサ部222は、例えば、加速度センサ、ジャイロセンサ、ユーザの周囲における光(太陽光や照明光等を含む各種の光)を検出する照度センサ等の各種センサにより構成される。
【0182】
[4.4]アプリケーション実行部
次に、本実施形態の通信端末装置20におけるアプリケーション実行部219の構成について説明する。
【0183】
(データ取得部)
データ取得部219aは、サーカディアンリズムを調整するため、現在地検出部220と連動して、ユーザの位置情報を取得し、当該ユーザの所在地を特定する。そして、データ取得部219aは、照射期間を設定するための情報として、当該特定した所在地における日の出日時及び日の入り日時を含む日照情報(すなわち、気象データ)を取得する。
【0184】
特に、データ取得部219aは、日照情報を、ネットワーク通信部211を介して、情報管理サーバ装置30又は気象データ管理用のサーバ装置(図示しない)から取得する。
【0185】
なお、日照情報の取得方法は任意であり、例えば、データ取得部219aは、ネットワークN上に設けられた気象情報管理用のサーバ装置に対してユーザの所在地を送信し、当該送信した所在地の情報に基づいて、当該所在地に対応する日照情報を取得してもよい。
【0186】
(行動予定データ生成部)
行動予定データ生成部219bは、該当するユーザのスケジューラに基づき、当該ユーザの行動予定データを生成する。
【0187】
特に、行動予定データ生成部219bは、表示部214に希望就寝日時と睡眠禁止期間を含む行動予定を入力させるための画面を表示させつつ、当該画面及びユーザが操作部217に対して行った入力操作に基づいて、睡眠禁止期間及び希望就寝日時含む行動予定データを生成する。
【0188】
そして、行動予定データ生成部219bは、生成した行動予定データを行動予定データ記憶部213dに記憶させる。
【0189】
例えば、行動予定データ生成部219bは、
(1)ユーザに睡眠禁止期間の開始日時と終了日時を指定させることによって、ユーザによって指定された開始日時から終了日時までが睡眠禁止期間に設定し、又は、
(2)睡眠禁止期間の終了日時のみをユーザに指定させ、ユーザの指定した期限から所定時間(例えば、24時間)前の日時までを自動的に睡眠禁止期間に設定し、
行動予定データを生成する。
【0190】
なお、上記の(2)の睡眠禁止期間の設定に関しては、睡眠禁止期間の終了日時の何時間前までを睡眠禁止期間に設定するのかをユーザが自由に選択させることが望ましい。
【0191】
すなわち、例えば、行動予定データ生成部219bは、二交代制又は三交代制の業務に従事しているユーザに関しては、自身の勤務形態に合わせた勤務期間(三交代制であれば、8時間、二交代制であれば12時間等)を予め設定させ、シフトの終了日時のみを入力させることにより、簡単な操作で、自身の勤務時間帯を自動的に睡眠禁止期間として設定する。
【0192】
(照射期間設定部)
照射期間設定部219cは、生成された行動予定データに基づいて、BL及びVLの照射期間を設定する。このとき、照射期間設定部219cは、行動予定データに睡眠禁止期間が含まれているか否かに応じて、以下のような処理を行い、照射期間を設定する。
【0193】
(A)行動予定データに睡眠禁止期間が含まれる場合
この場合には、照射期間設定部219cは、行動予定データに含まれる希望就寝日時情報を無視して、睡眠禁止期間をそのまま、照射期間に設定する。なお、この場合には、睡眠禁止期間の全期間にわたって、条件データにより規定される放射照度にてVL及びBLがユーザの眼に照射され、上記覚醒機能が実現される。
【0194】
(B)行動予定データに希望就寝日時情報のみが含まれる場合
この場合には、照射期間設定部219cは、当該希望就寝日時に基づき、ユーザの眼に対するVL及びBLの照射開始時刻と、照射終了時刻を設定する。
【0195】
例えば、照射期間設定部219cは、ユーザが起床した時刻を特定し、当該特定した起床時刻から正午までの期間(以下、「起床後午前期間」ともいう。)を算出し、当該算出した起床後午前期間を照射期間に設定する。
【0196】
特に、サーカディアンリズムを正常な状態に維持及び調整するためには、起床から正午までの時間帯に太陽光を浴びて、BL及びVLをユーザの眼に照射することが望ましく、より好ましくは起床から正午までの時間帯の全てにおいて太陽光を浴びてBL及びVLを吸収することが望ましい。
【0197】
また、照射期間設定部219cは、ユーザが起床した時刻としては、例えば、ユーザが操作部217に対して所定の入力操作を行った時刻を検出し、当該検出した時刻を起床時刻として特定してもよいし、起床アラームをユーザに設定させ、当該アラームが解除された時刻を起床時刻と特定してもよい。
【0198】
ただし、本実施形態においては、説明を具体化するため、ユーザが通信端末装置20を枕元に置いた状態にしておき、センサ部222にてユーザの起き上がった際の振動を検出し、ユーザの起床日時を特定するものとして説明を行う。
【0199】
例えば、ユーザが2017年12月1日7時45分に起床した場合に、通信端末装置20は、起床後午前期間を4時間15分と算出し、照射期間を4時間15分に設定する。
【0200】
なお、人間の体内においては、起床後に太陽光を浴びてから、約13~15時間程度経過したときに松果体におけるメラトニン濃度が上昇し、眠気を催すことが広く知られているため、本実施形態の照射期間設定部219cは、希望就寝日時に眠気を催すように、ユーザが設定した希望就寝日時から14時間前の時刻を照射開始時刻に設定してもよい。
【0201】
例えば、希望就寝日時として2017年12月1日24時00分が設定されている場合に、照射期間設定部219cは、その14時間前の2017年12月1日10時00分を照射開始日時に設定する。
【0202】
また、本実施形態の照射期間設定部219cは、照射終了時刻として、照射開始日時から起床後午前期間経過後の日時を設定してもよい。
【0203】
例えば、上記例のように起床後午前期間が4時間15分である場合に、希望就寝日時が、2017年12月1日24時00分に設定されていると、照射期間設定部219cは、照射開始日時をその14時間前の2017年12月1日10時00分に設定するとともに、その4時間15分後の2017年12月1日14時15分を照射終了日時に設定する。
【0204】
一方、サーカディアンリズムを正常な状態に整え、心身の健康を維持及び増進するためには、睡眠禁止期間が設定されている場合を除き、ユーザの眼に対して日中の時間帯(すなわち、日の出から日の入りまでの時間帯)にBL及びVLを照射することが望ましい。
【0205】
特に、徹夜業務明け等の場合には、短期間(例えば、1日~数日)で、強制的にサーカディアンリズムを調整して、普段の生活リズムに戻すことが心身の健康を維持及び増進する上で重要となる。
【0206】
そして、このような場合に、日の入り以降にBL及びVLをユーザの眼に照射すると、普段の就寝時刻にメラトニンの分泌量が増えず、短期間に普段の生活リズムに戻すことが難しくなる可能性がある。
【0207】
そこで、本実施形態において照射期間設定部219cは、データ取得部219aにより取得された日照情報に基づき、ユーザの所在地における日の入りの日時を特定し、照射開始日時から日の入りまでの間に起床後午前期間に等しい照射期間を確保できない場合には、日の入りの日時を照射終了日時に設定し、BL及びVLの照射期間を短縮している。
【0208】
この構成により、本実施形態において照射期間設定部219cは、日の入り後の時間帯にVL及びBLがユーザの眼に照射されることを防止することができるので、サーカディアンリズムの乱れを短期間で正すことができるようになっている。
【0209】
(照射制御部)
照射制御部219dは、タイマ218と連動しつつ、照射期間設定部219cにより設定された照射開始日時の到来を検出すると、ウェアラブルデバイス10に対して、照射開始コマンドを送信し、光源11及び12のLED11B、11V、12B及び12Vを発光させる。
【0210】
このとき、照射制御部219dは、照射制御データ記憶部213cに記憶された条件データを読み出し、条件データにより規定された放射照度(すなわち、BLが160μW/cm、VLが80μW/cm)を指定した照射開始コマンドを、I/Oインターフェース部212を介して、ウェアラブルデバイス10に送信するようになっている。
【0211】
また、照射制御部219dは、照射終了日時の到来を検出すると、照射終了コマンドをウェアラブルデバイス10に送信して、LED11B、11V、12B及び12Vを消灯させる。
【0212】
さらに、照射制御部219dは、照射期間設定部219cにより設定された照射期間及び条件データに基づき照射履歴データを生成して、照射履歴データ記憶部213bに記憶させる。
【0213】
(送信処理部)
送信処理部219eは、所定のタイミング(例えば、毎日24時、毎週日曜日の24時等)にて、ネットワーク通信部211と連動して、照射履歴データ記憶部213bに記憶された照射履歴データと行動予定データ記憶部213dに記憶された行動予定データを情報管理サーバ装置30にアップロードするための処理を実行する。
【0214】
このとき、送信処理部219eは、通信システムSにおいて各ユーザを識別するためのユーザIDをこれらのデータと対応付けてアップロードするようになっている。
【0215】
なお、情報管理サーバ装置30は、このようにして通信端末装置20からアップロードされた照射履歴データ及び行動予定データをユーザIDと対応付けて管理し、後に医師や親、その他の保護責任者によるアドバイス等に用いる際に各データがどのユーザに対応したものであるのかを特定可能に管理する。
【0216】
[4.5]通信端末装置の動作
次に、図10を用いて、本実施形態の通信端末装置20において実行される処理について説明する。なお、図10は、本実施形態の通信端末装置20のアプリケーション実行部219において実行される処理を示すフローチャートである。
【0217】
まず、本実施形態の通信端末装置20においては、行動予定データ生成部219bは、行動予定データ生成処理を実行することによって、行動予定データを生成し、当該生成した行動予定データを行動予定データ記憶部213dに記憶させる(ステップSa1)。
【0218】
次いで、照射期間設定部219cは、当該行動予定データに含まれる希望就寝日時及び睡眠禁止期間を抽出する(ステップSa2)。
【0219】
次いで、照射期間設定部219cは、照射期間設定処理を実行して、BL及びVLの照射期間を設定する(ステップSa3)。
【0220】
なお、この際の動作は、上記と同様であり、行動予定データに睡眠禁止期間が含まれている場合には、当該期間を、そのまま照射期間に設定するとともに、照射期間が含まれていない場合には、希望就寝日時の14時間前を照射開始時刻に設定しつつ、起床後午前期間を算出して、照射終了時刻を設定する。
【0221】
また、このとき、照射制御部219dは、タイマ218と連動して、現在時刻を検出させ、照射開始時刻の到来を待機する状態に移行する。
【0222】
次いで、照射制御部219dは、照射開始日時が到来すると(ステップSa4)、条件データを読み出し(ステップSa5)、当該条件データにて規定された放射照度を指定した照射開始コマンドをI/Oインターフェース部212を介してウェアラブルデバイス10に送信する(ステップSa6)。
【0223】
この結果、ウェアラブルデバイス10においては、CPU150が、照射開始コマンドにて指定される放射照度に基づき、右眼用光源駆動回路110及び左眼用光源駆動回路120に制御信号を出力して、光源11及び12に内蔵されたLED11B、11V、12B、12Vを発光させるとともに、照射終了コマンドを受信するまでVL及びBLの照射を継続させる。
【0224】
次いで、照射制御部219dは、照射終了日時が到来すると(ステップSa7)、照射終了コマンドを生成して、ウェアラブルデバイス10に送信し(ステップSa8)、ウェアラブルデバイス10において光源11及び12を消灯させる(ステップSa9)。
【0225】
次いで、照射制御部219dは、照射履歴データを生成し、照射履歴データ記憶部213bに記憶させた後(ステップSa10)、処理を終了する。
【0226】
以上説明したように、本実施形態の通信システムSは、ユーザが睡眠禁止期間を設定すると、当該期間中、VL及びBLをユーザの眼に照射することができるので、業務により睡眠時間を確保できないような場合に、眠気を催すことを防止して、業務効率を向上させ、業務上のミスの発生を防止することができる。
【0227】
また、本実施形態の通信システムSは、ユーザの設定した希望就寝日時に応じて、照射開始時刻及び照射終了時刻を設定し、当該設定した照射開始時刻から照射終了時刻までVL及びBLをユーザの眼に照射することができるので、ユーザの希望する就寝時に眠気を催すようにユーザのサーカディアンリズムを調整することができる。
【0228】
さらに、本実施形態の通信システムSは、太陽光に含まれるVL及びBLの割合にて、ユーザの眼にVL及びBLを照射する構成になっているので、サーカディアンリズムの調整効果を向上させることができる。
【0229】
[5]第5実施形態
次に、本願に係る生体リズム調整装置又は生体リズム調整システムの第5実施形態について説明する。
【0230】
本実施形態は、第4実施形態における睡眠禁止期間などが設定されたスケジュールを用いてVL及びBLの照射制御する点に代えて、時差のある国や地域(以下、「国等」という。)への渡航予定に基づいてVL及びBLの照射制御する点に特徴があり、その他の構成は第4実施形態と共通するため、同一の部材については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0231】
特に、本実施形態の生体リズム調整システムとしての通信システムSは、渡航先の国等の時間帯に合わせて、ユーザの眼にVL及びBLを照射する照射制御を実行することによって、移動後にジェットラグ症候群を発症することを防止し、又は、抑制するためのシステムである。
【0232】
すなわち、本実施形態の通信システムSは、時差のある国等への移動時にジェットラグ症候群の発生を防止するためには、移動先の日時にユーザのサーカディアンリズムを同調させるために、ユーザの眼にVL及びBLを照射する照射制御を実行する構成を有している。
【0233】
具体的には、本実施形態の通信システムS及び当該通信システムSを構成するウェアラブルデバイス10は、第1実施形態及び第2実施形態を含む、第4実施形態と同様の構成を有している。
【0234】
また、通信端末装置20は、アプリケーション実行部219を除き、第4実施形態と同様の構成を有している。
【0235】
具体的には、本実施形態のアプリケーション実行部219における行動予定データ生成部219bは、該当するユーザの行動予定データを生成する際に、移動先の国等と、出発予定日時、到着予定日時等の情報を含む渡航予定情報を入力させるための画面を表示部214に表示させる。
【0236】
そして、行動予定データ生成部219bは、データ取得部219aと連動し、当該画面及びユーザが操作部217に対して行った入力操作に基づいて、情報管理サーバ装置30又はネットワークN上の航空機運行管理用サーバ装置(図示しない)から移動先の国等と、出発予定日時及び到着予定日時等の情報を渡航予定情報として取得する。
【0237】
なお、本実施形態においては、移動先の国等はプルダウン方式にてユーザに選択させるようにしてもよく、文字列として入力させるようにしてもよい。また、便名及び航空会社名等をユーザに入力させ、これらの情報に基づいて移動先の国等、出発予定日時及び到着予定日時等の情報を含む渡航予定情報を取得してもよい。
【0238】
また、本実施形態のアプリケーション実行部219における照射期間設定部219cは、渡航予定情報に基づき、移動先の午前中(例えば、6時00~11時59分)にあたる時間帯を特定し、当該時間帯を照射期間に設定する。
【0239】
具体的には、照射期間設定部219cは、渡航予定情報に基づき、移動先の国等における午前中の時間帯を特定する。
【0240】
例えば、照射期間設定部219cは、移動先の国等における現在日時をネットワークN上のサーバ装置(図示しない)から取得し、通信端末装置20のタイマ218に内蔵された時計を現地時間にセットし、移動先の現地時間における午前中の時間帯を特定してもよい。
【0241】
また、例えば、照射期間設定部219cは、ネットワークN上のサーバ装置から移動元の国等における日時と移動先の国等における日時の時差に関する情報を取得し、当該時差の情報に基づき、移動先の国等における午前中の時間帯を特定してもよい。
【0242】
なお、照射制御部219dが、他の実施形態と同様に、設定された照射期間中、条件データにより規定される放射照度にてVL及びBLがユーザの眼に照射されるようにウェアラブルデバイス10における光源11及び12の発光を制御する。
【0243】
以上説明したように、本実施形態の通信システムSは、ユーザが時差のある地域に渡航した場合においても、移動先の国等における午前中の時間帯にVL及びBLを照射することができるので、移動先の時間帯にユーザのサーカディアンリズムを強制的に同調させ、現地到着時におけるジェットラグ症候群の発症を効果的に抑制することができるので、移動後におけるユーザの円滑な行動を実現することができる。
【0244】
特に、メラトニンは、21時前後から9時前後にかけて分泌され、その間、光に対する反応性が高い傾向にあるので、本実施形態の通信システムSは、移動先の現地時刻における6時から9時の時間帯を照射期間に設定し、当該照射期間中、VL及びBLを照射することによって、サーカディアンリズムを現地の日時に同調させ、ジェットラグ症候群の発症をより効果的に抑制することができる。
【0245】
[7]変形例
[7.1]変形例1
本変形例においては、単にサーカディアンリズムを正常な状態に整える場合には、午前中の時間帯、特に9時00分以前にBL及びVLを照射するようにしてもよい。
【0246】
上記各実施形態においては、(1)ユーザの設定及び(2)ユーザの行動予定のいずれかに応じて、照射開始日時及び照射終了日時と、を設定し、当該設定された照射開始日時から終了日時までBL及びVLを照射させる構成を採用していた。
【0247】
しかしながら、メラトニンは、21時前後から9時前後にかけて分泌され、その間、光に対する反応性が高い傾向にあるので、9時前にVL及びBLを照射することで、よりよいサーカディアンリズムの調整機能を実現することができる。
【0248】
この場合には、ユーザが起床後、ウェアラブルデバイス10を装着し、通信端末装置20に対して所定の入力操作を行ったタイミングで、当該通信端末装置20は、条件データに基づき、ウェアラブルデバイス10におけるBL及びVLの照射制御を実行する。
【0249】
具体的には、通信端末装置20は、
(1)条件データに基づいて、照射開始コマンドをウェアラブルデバイス10に送信するとともに、光源11及び12を発光させつつ、太陽光に含まれる割合にてVL及びBLを照射する照射制御を実行し、
(2)正午になった時点で照射終了コマンドをウェアラブルデバイス10に送信して光源11及び12を消灯させる制御を実行する。
【0250】
また、日の入り前の所定時間、BL及びVLをユーザの眼に照射させる構成としてもよい。この場合には、通信端末装置20がネットワークNを介して日照情報を取得するとともに、当該日照情報に基づき、日の入りの日時を特定し、当該日の入り日時まで、条件データに基づき、太陽光の割合でBL及びVLを照射するようにすればよい。
【0251】
[7.2]変形例2
上記実施形態第1~第4実施形態においては、ウェアラブルデバイス10を眼鏡型に構成する場合の例を説明したが、光源11及び12と同様の構成を有する光源を腕時計型のウェアラブルデバイスやコンタクトレンズ型のウェアラブルデバイス、ユーザが装着可能な照明機器に設け、通信端末装置20を用いて光源の発光を制御する構成を採用するようにしてもよい。
【0252】
すなわち、ユーザの身体の一部に装着又は装備して、BL及びVLをユーザの眼に照射できれば、ウェアラブルデバイス10の形状は問わない。
【0253】
また、光源11及び12を通信端末装置20に設け、BL及びVLをユーザの眼に向けて照射するようにしてもよい。
【0254】
さらに、光源11及び12を例えば照明機器や建物内のいずれかの場所に設置し、通信端末装置20によりVL及びBLの照射を制御するようにしてもよい。
【0255】
この場合には、光源11からユーザの眼に照射されるまでにVL及びBLが減衰するため、メガネ型のウェアラブルデバイスの場合のような光源から眼までの距離が短いときと比べて、光源にはより強いパワーが必要となる。
【0256】
また、この場合においては、上記各実施形態と同様に、太陽光と同程度の割合(BLをVLの2倍程度となる割合)にてユーザの眼にVL及びBLを照射し、サーカディアンリズムの調整機能を向上させることができるようになっている
【0257】
以上、本発明によれば、生活環境や仕事環境が変化した現代社会において、サーカディアンリズムを調整し、心身の健康を維持及び増進することができる。
【0258】
なお、本出願の特許請求の範囲に記載の発明を以下に補充する。
(請求項1)ユーザの生体リズムを調整し、ユーザの心身の健康を維持及び増進する生体リズム調整装置であって、前記ユーザの眼に対して、360nm以上400nm以下の第1波長範囲内の第1特殊光を照射する第1光源と460nm±20nmの第2波長範囲内の第2特殊光を含む光を照射する第2光源とを有する照射手段と、前記照射手段により前記ユーザの眼に前記第1特殊光及び前記第2特殊光を照射する際の条件を示す条件データを取得する取得手段と、前記取得した条件データに従って、前記照射手段を制御して、前記ユーザの眼に前記第1特殊光及び前記第2特殊光を照射させる制御手段と、を有する、ことを特徴とする生体リズム調整装置。
(請求項2)前記第2特殊光が、160μW/cm 以下の放射照度で照射される、請求項1に記載の生体リズム調整装置。
(請求項3)前記第1特殊光の放射照度:前記第2特殊光の放射照度が、1:2±0.2である、請求項1又は2に記載の生体リズム調整装置。
(請求項4)前記取得手段が、前記条件データとして、ユーザの所在地域における日照に関する日照情報を含むデータを取得し、前記制御手段が、前記日照情報に基づき、当該所在地域における日中の時間帯を特定するとともに、当該特定した日中の時間帯に少なくとも前記第1特殊光を前記ユーザの眼に照射させる、請求項1~3のいずれか1項に記載の生体リズム調整装置。
(請求項5)前記取得手段が、前記条件データとして、前記ユーザの行動予定を示す行動予定データを取得し、前記制御手段が、前記取得した行動予定データに従って、少なくとも前記第1特殊光を照射させる、請求項1~4のいずれか1項に記載の生体リズム調整装置。
(請求項6)前記ユーザが、時差のある地域間を移動する場合に、前記取得手段が、移動先の地域に関する移動先地域情報を含む前記行動予定データを取得し、前記制御手段が、前記移動先地域情報に基づき、前記移動先の地域における日中の時間帯を特定し、当該特定した日中の時間帯に少なくとも前記第1特殊光を照射させる、請求項5に記載の生体リズム調整装置。
(請求項7)ユーザが睡眠を禁止する睡眠禁止期間が存在する場合に、前記取得手段が、当該睡眠禁止期間を示す睡眠禁止期間情報を含む前記行動予定データを取得し、前記制御手段が、前記睡眠禁止期間中、少なくとも前記第1特殊光を照射させる、請求項5に記載の生体リズム調整装置。
(請求項8)前記行動予定データを記録した第1記録手段をさらに有し、前記取得手段が、前記第1記録手段に記録された前記行動予定データを取得する、請求項5~7のいずれか1項に記載の生体リズム調整装置。
(請求項9)前記ユ-ザの眼に近接して装着可能な構成を有し、ユーザの顔に装着した状態において、前記照射手段を構成する前記第1光源及び第2光源の少なくとも一方が、ユーザの眼に相対する位置に配設されている、請求項1~8のいずれか1項に記載の生体リズム調整装置。
(請求項10)ユーザの眼に近接して装着され、当該ユーザの眼に360nm以上400nm以下の第1波長範囲内の第1特殊光と460nm±20nmの第2波長範囲内の第2特殊光を含む光とを照射する光源を有するウェアラブルデバイスと、前記ウェアラブルデバイスにおける前記第1特殊光及び前記第2特殊光の照射を制御する制御装置と、を有し、前記制御装置が、前記ウェアラブルデバイスにより前記ユーザの眼に前記第1特殊光及び前記第2特殊光を照射する際の条件を示す条件データを取得し、当該取得した条件データに従って前記ユーザの眼に前記第1特殊光及び前記第2特殊光を照射させることで、ユーザの生体リズムを調整し、ユーザの心身の健康を維持及び増進する、ことを特徴とする生体リズム調整システム。
【符号の説明】
【0259】
1 … 生体リズム調整装置
S … 通信システム
10 … ウェアラブルデバイス
11、12 … 光源
11V、12V … VL照射用LED
11B、12B … BL照射用LED
20 … 通信端末装置
30 … 情報管理サーバ装置
40 … GPS衛星
100 … 生体リズム調整システム
110 … 右眼用光源駆動回路
120 … 左眼用光源駆動回路
130 … 操作部
140 … ROM/RAM
150 … CPU
211 … ネットワーク通信部
212 … I/Oインターフェース部
213 … 記憶部
213a … アプリケーション記憶部
213b … 照射履歴データ記憶部
213c … 照射制御データ記憶部
213d … 行動予定データ記憶部
213e … RAM
214 … 表示部
215 … 表示制御部
216 … 装置管理制御部
217 … 操作部
218 … タイマ
219 … アプリケーション実行部
219a … データ取得部
219b … 行動予定データ生成部
219c … 照射期間設定部
219d … 照射制御部
219e … 送信処理部
220 … 現在地検出部
222 … センサ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2023-05-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの生体リズムを調整し、ユーザの心身の健康を維持及び増進する生体リズム調整装置であって、前記ユーザの眼に対して、360nm以上400nm以下の第1波長範囲内の第1特殊光を照射する第1光源と460nm±20nmの第2波長範囲内の第2特殊光を含む光を照射する第2光源とを有記ユーザの眼に前記第1特殊光及び前記第2特殊光を照射する際の条件を設定して記ユーザの眼に前記第1特殊光及び前記第2特殊光を照射させ、ことを特徴とする生体リズム調整装置。
【請求項2】
前記第2特殊光が、160μW/cm以下の放射照度で照射される、請求項1に記載の生体リズム調整装置。
【請求項3】
前記第1特殊光の放射照度:前記第2特殊光の放射照度が、1:2±0.2である、請求項1又は2に記載の生体リズム調整装置。
【請求項4】
前記条件の設定が、前記ユーザの所在地域における日照に関する日照情報に基づいて設定され、前記第1特殊光及び前記第2特殊光の照射が、前記日照情報に基づき、当該所在地域における日中の時間帯を特定するとともに、当該特定した日中の時間帯に少なくとも前記第1特殊光を前記ユーザの眼に照射させる、請求項1~3のいずれか1項に記載の生体リズム調整装置。
【請求項5】
前記条件の設定が、前記ユーザの行動予定に基づいて設定され、前記第1特殊光及び前記第2特殊光の照射が、前記行動予定従って、少なくとも前記第1特殊光を照射させる、請求項1~4のいずれか1項に記載の生体リズム調整装置。
【請求項6】
前記ユーザが、時差のある地域間を移動する場合に、
前記条件の設定が、移動先の地域に関する移動先地域情報に基づいて設定され、前記前記第1特殊光及び前記第2特殊光の照射が、前記移動先地域情報に基づき、前記移動先の地域における日中の時間帯を特定し、当該特定した日中の時間帯に少なくとも前記第1特殊光を照射させる、請求項5に記載の生体リズム調整装置。
【請求項7】
ユーザが睡眠を禁止する睡眠禁止期間が存在する場合に、
前記条件の設定が、当該睡眠禁止期間を示す睡眠禁止期間情報に基づいて設定され、前記第1特殊光及び前記第2特殊光の照射が、前記睡眠禁止期間中、少なくとも前記第1特殊光を照射させる、請求項5に記載の生体リズム調整装置。
【請求項8】
前記行動予定を記録した第1記録手段をさらに有し、前記条件の設定が、前記第1記録手段に記録された前記行動予定に基づいて設定される、請求項5~7のいずれか1項に記載の生体リズム調整装置。
【請求項9】
前記ユ-ザの眼に近接して装着可能な構成を有し、ユーザの顔に装着した状態において、前記第1光源及び第2光源の少なくとも一方が、ユーザの眼に相対する位置に配設されている、請求項1~8のいずれか1項に記載の生体リズム調整装置。
【請求項10】
ユーザの眼に近接して装着され、当該ユーザの眼に360nm以上400nm以下の第1波長範囲内の第1特殊光と460nm±20nmの第2波長範囲内の第2特殊光を含む光とを照射する光源を有するウェアラブルデバイスを有し、前記ウェアラブルデバイスにおける前記第1特殊光及び前記第2特殊光の照射条件が設定され前記照射条件に従って前記ユーザの眼に前記第1特殊光及び前記第2特殊光を照射させることで、ユーザの生体リズムを調整し、ユーザの心身の健康を維持及び増進する、ことを特徴とする生体リズム調整システム。