(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023078459
(43)【公開日】2023-06-06
(54)【発明の名称】外傷性脳損傷の治療法
(51)【国際特許分類】
A61M 1/36 20060101AFI20230530BHJP
【FI】
A61M1/36 165
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023055321
(22)【出願日】2023-03-30
(62)【分割の表示】P 2019564807の分割
【原出願日】2018-05-21
(31)【優先権主張番号】62/509,790
(32)【優先日】2017-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】512254586
【氏名又は名称】サイトソーベンツ・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100106080
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 晶子
(72)【発明者】
【氏名】チャン,フィリップ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明は、外傷性脳損傷(TBI)を患う患者の治療法を提供する。
【解決手段】外傷性脳損傷(TBI)を患う患者の治療法であって、前記患者の血液を炎症性メディエーターのための吸着剤と接触させることを含む方法と、そのような治療を実施するためのキットに関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外傷性脳損傷(TBI)を患う患者の治療法であって、前記患者の血液を炎症性メディエーターのための吸着剤と接触させることを含む方法。
【請求項2】
前記吸着剤が生体適合性ポリマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記生体適合性ポリマーが、0.1ミクロンメートル~2センチメートルの範囲の直径を有する粒子を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記生体適合性ポリマーが、粉末、ビーズ又はその他の規則形もしくは不規則形の粒子の形態である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記生体適合性ポリマーが、50Å~3000Åの範囲の細孔径の総細孔容積が0.5cc/g乾燥ポリマーより大きく3.0cc/g乾燥ポリマーまでである細孔構造を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記生体適合性ポリマーが、50Å~3000Åの範囲の細孔径の総細孔容積が0.5cc/g乾燥ポリマーより大きく3.0cc/g乾燥ポリマーまでである細孔構造を有し;
前記生体適合性ポリマーの直径50Å~3000Åの細孔容積の、直径500Å~3000Åの細孔容積に対する比率が200:1より小さく;そして
前記生体適合性ポリマーの直径50Å~3000Åの細孔容積の、直径1000Å~3000Åの細孔容積に対する比率が20:1より大きい
請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記生体適合性ポリマーが、少なくとも一つの架橋剤と少なくとも一つの分散剤とを含む被覆ポリマーであり;
前記分散剤は、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(ヒドロキシエチルアクリレート)、ポリ(ヒドロキシプロピルメタクリレート)、ポリ(ヒドロキシプロピルアクリレート)、ポリ(ジメチルアミノエチルメタクリレート)、ポリ(ジメチルアミノエチルアクリレート)、ポリ(ジエチルアミノエチルメタクリレート)、ポリ(ジエチルアミノエチルアクリレート)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(N-ビニルピロリジノン)、ポリ(メタクリル酸)の塩、及びポリ(アクリル酸)の塩ならびにそれらの混合物などであり;
前記架橋剤は、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、トリビニルシクロヘキサン、ジビニルスルホン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、ペンタエリスリタールジメタクリレート類、ペンタエリスリタールトリメタクリレート類、ペンタエリスリタール、テトラメタクリレート類、ペンタエリスリトールジアクリレート類、ペンタエリスリトールトリアクリレート類、ペンタエリスリトールテトラアクリレート類、ジペンタエリスリトールジメタクリレート類、ジペンタエリスリトールトリメタクリレート類、ジペンタエリスリトールテトラメタクリレート類、ジペンタエリスリトールジアクリレート類、ジペンタエリスリトールトリアクリレート類、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート類、ジビニルホルムアミド及びそれらの混合物からなる群から選ばれ;
前記ポリマーは、被覆の形成と同時に成長されており、前記分散剤は前記生体適合性ポリマーの前記表面に化学結合されている
請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記生体適合性ポリマーが、ジビニルベンゼン及びエチルビニルベンゼン、スチレン、エチルスチレン、アクリロニトリル、ブチルメタクリレート、オクチルメタクリレート、ブチルアクリレート、オクチルアクリレート、セチルメタクリレート、セチルアクリレート、エチルメタクリレート、エチルアクリレート、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ビニルベンジルアルコール、ビニルホルムアミド、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、トリビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、トリビニルシクロヘキサン、ジビニルスルホン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジビニルホルムアミド及びそれらの混合物から選ばれる一つ又は複数のモノマー由来の残基を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記生体適合性ポリマーがイオン交換ポリマーである、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記生体適合性ポリマーがセルロース系ポリマーである、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
前記生体適合性ポリマーが多孔性の高架橋スチレン又はジビニルベンゼンコポリマーである、請求項2に記載の方法。
【請求項12】
前記多孔性高架橋スチレン又はジビニルベンゼンコポリマーが、7%分子量までの塩素含量になるまで部分クロロメチル化に付されたマクロ多孔性又はメソ多孔性のスチレン-ジビニルベンゼン-エチルスチレンコポリマーである、請求項2に記載の方法。
【請求項13】
前記多孔性高架橋スチレン又はジビニルベンゼンコポリマーが、拡大的クロロメチル化と、膨潤状態でフリーデル・クラフツ触媒で処理することによるその後の後架橋とによって架橋スチレンコポリマーから製造された超架橋ポリスチレンである、請求項2に記載の方法。
【請求項14】
前記生体適合性ポリマーが、塩素、アミン、ヒドロキシル、スルホネート、及びカルボキシル基などの親水性官能基を含有する乾燥粉末又は乾燥粒子として投与できる親水性自己湿潤ポリマーである、請求項2に記載の方法。
【請求項15】
前記ポリマーが熱分解される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
吸着剤がカートリッジ内に含有されている、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記接触が、
--患者から血液を取り出し;
--前記血液を、前記患者の身体の外部で前記吸着剤と接触させ;そして
--前記血液を前記患者に戻す
ことを含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記吸着剤がカートリッジ内に含有され、取り出しと戻しが、患者体内の適切な動脈及び患者体内の適切な静脈を接続する連続回路の一部である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
吸着剤が、経口投与、栄養管経由の投与、腹膜投与、又は直腸投与される、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
外傷性脳損傷(TBI)を患う患者を治療するためのキットであって、前記キットは、前記患者の血液から毒素を除去するための吸着剤を含むカートリッジを含むキット。
【請求項21】
前記吸着剤が生体適合性ポリマーを含む、請求項20に記載のキット。
【請求項22】
前記生体適合性ポリマーが、0.1ミクロンメートル~2センチメートルの範囲の直径を有する粒子を含む、請求項21に記載のキット。
【請求項23】
前記生体適合性ポリマーが、粉末、ビーズ又はその他の規則形もしくは不規則形の粒子の形態である、請求項21に記載のキット。
【請求項24】
前記生体適合性ポリマーが、50Å~3000Åの範囲の細孔径の総細孔容積が0.5cc/g乾燥ポリマーより大きく3.0cc/g乾燥ポリマーまでである細孔構造を有する、請求項21に記載のキット。
【請求項25】
前記生体適合性ポリマーが、50Å~3000Åの範囲の細孔径の総細孔容積が0.5cc/g乾燥ポリマーより大きく3.0cc/g乾燥ポリマーまでである細孔構造を有し;
前記生体適合性ポリマーの直径50Å~3000Åの細孔容積の、直径500Å~3000Åの細孔容積に対する比率が200:1より小さく;そして
前記生体適合性ポリマーの直径50Å~3000Åの細孔容積の、直径1000Å~3000Åの細孔容積に対する比率が20:1より大きい
請求項21に記載のキット。
【請求項26】
前記生体適合性ポリマーが、少なくとも一つの架橋剤と少なくとも一つの分散剤とを含む被覆ポリマーであり;
前記分散剤は、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(ヒドロキシエチルアクリレート)、ポリ(ヒドロキシプロピルメタクリレート)、ポリ(ヒドロキシプロピルアクリレート)、ポリ(ジメチルアミノエチルメタクリレート)、ポリ(ジメチルアミノエチルアクリレート)、ポリ(ジエチルアミノエチルメタクリレート)、ポリ(ジエチルアミノエチルアクリレート)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(N-ビニルピロリジノン)、ポリ(メタクリル酸)の塩、及びポリ(アクリル酸)の塩ならびにそれらの混合物などであり;
前記架橋剤は、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、トリビニルシクロヘキサン、ジビニルスルホン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、ペンタエリスリタールジメタクリレート類、ペンタエリスリタールトリメタクリレート類、ペンタエリスリタール、テトラメタクリレート類、ペンタエリスリトールジアクリレート類、ペンタエリスリトールトリアクリレート類、ペンタエリスリトールテトラアクリレート類、ジペンタエリスリトールジメタクリレート類、ジペンタエリスリトールトリメタクリレート類、ジペンタエリスリトールテトラメタクリレート類、ジペンタエリスリトールジアクリレート類、ジペンタエリスリトールトリアクリレート類、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート類、ジビニルホルムアミド及びそれらの混合物からなる群から選ばれ;
前記ポリマーは、被覆の形成と同時に成長されており、前記分散剤は前記生体適合性ポリマーの前記表面に化学結合されている
請求項21に記載のキット。
【請求項27】
前記生体適合性ポリマーが、ジビニルベンゼン及びエチルビニルベンゼン、スチレン、エチルスチレン、アクリロニトリル、ブチルメタクリレート、オクチルメタクリレート、ブチルアクリレート、オクチルアクリレート、セチルメタクリレート、セチルアクリレート、エチルメタクリレート、エチルアクリレート、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ビニルベンジルアルコール、ビニルホルムアミド、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、トリビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、トリビニルシクロヘキサン、ジビニルスルホン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジビニルホルムアミド及びそれらの混合物から選ばれる一つ又は複数のモノマー由来の残基を含む、請求項26に記載のキット。
【請求項28】
前記生体適合性ポリマーがイオン交換ポリマーである、請求項21に記載のキット。
【請求項29】
前記生体適合性ポリマーがセルロース系ポリマーである、請求項21に記載のキット。
【請求項30】
前記生体適合性ポリマーが多孔性の高架橋スチレン又はジビニルベンゼンコポリマーである、請求項21に記載のキット。
【請求項31】
前記多孔性高架橋スチレン又はジビニルベンゼンコポリマーが、7%分子量までの塩素含量になるまで部分クロロメチル化に付されたマクロ多孔性又はメソ多孔性のスチレン-ジビニルベンゼン-エチルスチレンコポリマーである、請求項21に記載のキット。
【請求項32】
前記多孔性高架橋スチレン又はジビニルベンゼンコポリマーが、拡大的クロロメチル化と、膨潤状態でフリーデル・クラフツ触媒で処理することによるその後の後架橋とによって架橋スチレンコポリマーから製造された超架橋ポリスチレンである、請求項21に記載のキット。
【請求項33】
前記多孔性高架橋スチレン又はジビニルベンゼンコポリマーが、モノクロロジメチルエーテル及びp-キシリレンジクロリドから構成されている群から選ばれる二官能性架橋剤による膨潤状態での拡大的追加後架橋によって架橋スチレンコポリマーから製造された超架橋ポリスチレンである、請求項32に記載のキット。
【請求項34】
前記生体適合性ポリマーが、塩素、アミン、ヒドロキシル、スルホネート、及びカルボキシル基などの親水性官能基を含有する乾燥粉末又は乾燥粒子として投与できる親水性自己湿潤ポリマーである、請求項21に記載のキット。
【請求項35】
前記ポリマーが熱分解される、請求項20に記載のキット。
【請求項36】
吸着剤がカートリッジ内に含有されている、請求項20~35のいずれか1項に記載のキット。
【請求項37】
前記接触が、前記血液を、前記患者の身体の外部で前記吸着剤と接触させ、そしてその血液を前記患者に戻すことを含む、請求項36に記載のキット。
【請求項38】
前記カートリッジの使用説明書を含むラベルをさらに含む、請求項20~37のいずれか1項に記載のキット。
【請求項39】
前記カートリッジの使用説明書をさらに含む、請求項20~38のいずれか1項に記載のキット。
【請求項40】
前記患者から血液を取り出し、その血液を吸着剤と接触させ、そして前記血液を患者に戻すための手段をさらに含む、請求項20~39のいずれか1項に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
[0001]本発明は、2017年5月23日出願の米国特許出願第62/509,790号に基づく利益を主張し、前記出願特許は、引用によってその全文を本明細書に援用する。
【技術分野】
【0002】
[0002]本発明は、とりわけ外傷性脳損傷の治療法に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]炎症反応は外傷性脳損傷(TBI)後、直ちに発生する。反応は、炎症性及び抗炎症性機能を有するある種のサイトカインの放出を特徴とする。当該技術分野においてはそのような損傷の犠牲者の生存を改良する治療法が求められている。
【発明の概要】
【0004】
[0004]一部の側面において、本発明は、外傷性脳損傷(TBI)を患う患者の治療法に関し、該方法は、前記患者の血液を、そのような損傷に起因する一つ又は複数の炎症性メディエーターのための吸着剤と接触させることを含む。一定の態様において、該吸着剤は本明細書中に記載されたポリマーのいずれかを含む。
【0005】
[0005]他の側面において、本発明は、外傷性脳損傷に関連する炎症性メディエーターのための吸着剤を含むカートリッジを含むキットに関する。該キットは、本明細書中に記載されたポリマーのいずれかを含有しうる。一部の態様において、該キットは、カートリッジの使用説明書を含む。一部の説明書は、カートリッジに貼付されたラベル上に含有される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】[0006]
図1は、実治療 対 偽治療を受けたラットの生存率を示す。
【
図2A】[0007]
図2Aは、外傷性脳損傷後の実治療及び偽治療による経時的な炎症性メディエーター(EGF)のレベルを示す。
【
図2B】[0007]
図2Bは、外傷性脳損傷後の実治療及び偽治療による経時的な炎症性メディエーター(IL-17A)のレベルを示す。
【
図2C】[0007]
図2Cは、外傷性脳損傷後の実治療及び偽治療による経時的な炎症性メディエーター(IP-10)のレベルを示す。
【
図2D】[0007]
図2Dは、外傷性脳損傷後の実治療及び偽治療による経時的な炎症性メディエーター(エオタキシン)のレベルを示す。
【
図2E】[0007]
図2Eは、外傷性脳損傷後の実治療及び偽治療による経時的な炎症性メディエーター(IL-18)のレベルを示す。
【
図2F】[0007]
図2Fは、外傷性脳損傷後の実治療及び偽治療による経時的な炎症性メディエーター(レプチン)のレベルを示す。
【
図2G】[0007]
図2Gは、外傷性脳損傷後の実治療及び偽治療による経時的な炎症性メディエーター(フラクタルカイン)のレベルを示す。
【
図2H】[0007]
図2Hは、外傷性脳損傷後の実治療及び偽治療による経時的な炎症性メディエーター(IL-1α)のレベルを示す。
【
図2I】[0007]
図2Iは、外傷性脳損傷後の実治療及び偽治療による経時的な炎症性メディエーター(LIX)のレベルを示す。
【
図2J】[0007]
図2Jは、外傷性脳損傷後の実治療及び偽治療による経時的な炎症性メディエーター(G-CSF)のレベルを示す。
【
図2K】[0007]
図2Kは、外傷性脳損傷後の実治療及び偽治療による経時的な炎症性メディエーター(IL-1β)のレベルを示す。
【
図2L】[0007]
図2Lは、外傷性脳損傷後の実治療及び偽治療による経時的な炎症性メディエーター(MCP-1)のレベルを示す。
【
図2M】[0007]
図2Mは、外傷性脳損傷後の実治療及び偽治療による経時的な炎症性メディエーター(GM-CSF)のレベルを示す。
【
図2N】[0007]
図2Nは、外傷性脳損傷後の実治療及び偽治療による経時的な炎症性メディエーター(IL-2)のレベルを示す。
【
図2O】[0007]
図2Oは、外傷性脳損傷後の実治療及び偽治療による経時的な炎症性メディエーター(MIP-1α)のレベルを示す。
【
図2P】[0007]
図2Pは、外傷性脳損傷後の実治療及び偽治療による経時的な炎症性メディエーター(GRO/KC/CINC-1)のレベルを示す。
【
図2Q】[0007]
図2Qは、外傷性脳損傷後の実治療及び偽治療による経時的な炎症性メディエーター(IL-4)のレベルを示す。
【
図2R】[0007]
図2Rは、外傷性脳損傷後の実治療及び偽治療による経時的な炎症性メディエーター(MIP-2)のレベルを示す。
【
図2S】[0007]
図2Sは、外傷性脳損傷後の実治療及び偽治療による経時的な炎症性メディエーター(IL-10)のレベルを示す。
【
図2T】[0007]
図2Tは、外傷性脳損傷後の実治療及び偽治療による経時的な炎症性メディエーター(IL-5)のレベルを示す。
【
図2U】[0007]
図2Uは、外傷性脳損傷後の実治療及び偽治療による経時的な炎症性メディエーター(ランテス)のレベルを示す。
【
図2V】[0007]
図2Vは、外傷性脳損傷後の実治療及び偽治療による経時的な炎症性メディエーター(IL-12p70)のレベルを示す。
【
図2W】[0007]
図2Wは、外傷性脳損傷後の実治療及び偽治療による経時的な炎症性メディエーター(IL-6)のレベルを示す。
【
図2X】[0007]
図2Xは、外傷性脳損傷後の実治療及び偽治療による経時的な炎症性メディエーター(TNF-α)のレベルを示す。
【
図2Y】[0007]
図2Yは、外傷性脳損傷後の実治療及び偽治療による経時的な炎症性メディエーター(IL-13)のレベルを示す。
【
図2Z】[0007]
図2Zは、外傷性脳損傷後の実治療及び偽治療による経時的な炎症性メディエーター(INFγ)のレベルを示す。
【
図2AA】[0007]
図2AAは、外傷性脳損傷後の実治療及び偽治療による経時的な炎症性メディエーター(VEGF)のレベルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[0008]炎症反応は外傷性脳損傷(TBI)後、直ちに発生する。反応は、炎症性及び抗炎症性機能を有するある種のサイトカインなどの毒素の放出を特徴とする。本開示は、患者の血液からある種の毒素を除去することによるそのような損傷の治療に向けられる。
【0008】
[0009]一部の側面において、本発明は、外傷性脳損傷(TBI)を患う患者の治療法に関し、該方法は、前記患者の血液を、そのような損傷に起因する一つ又は複数の炎症性メディエーターのための吸着剤と接触させることを含む。一定の態様において、該吸着剤は本明細書中に記載されたポリマーのいずれかを含む。
【0009】
[0010]一部の治療法は、前記患者から血液を取り出し、その血液を吸着剤と接触させ、そして前記血液を患者に戻すための回路を含む。一定の態様において、吸着剤はカートリッジ内にあり、血液は適切な動脈から取り出され、適切な静脈を通じて患者に戻される。
【0010】
[0011]他の側面において、本発明は、外傷性脳損傷に関連する炎症性メディエーターのための吸着剤を含むカートリッジを含むキットに関する。該キットは、本明細書中に記載
されたポリマーのいずれかを含有しうる。一部の態様において、該キットは、カートリッジの使用説明書を含む。一部の説明書は、カートリッジに貼付されたラベル上に含有される。一部のキットはさらに、前記患者から血液を取り出し、その血液を吸着剤と接触させ、そして前記血液を患者に戻すための手段も含む。
【0011】
[0012]一部の態様において、吸着剤として使用されるポリマー材料は、ヒト及び動物によって実質的に代謝されない。一定のポリマーは、粉末、ビーズ、又は、0.1ミクロンメートルから2センチメートルの範囲の直径を有するその他の形態などの、不規則形又は規則形の粒子でありうる。
【0012】
[0013]本発明で使用されるポリマーは、好ましくは生体適合性及び血液適合性の外表面コーティングを有するが、特に経口又は直腸投与などの一定の状況においては絶対的に必要なわけでもない。これらのコーティングのある種のものは、遊離基グラフト化(free-radical grafting)によってポリマー粒子(例えばビーズ)に共有結合されている。遊離基グラフト化は、例えばモノマー液滴からポリマービーズへの変換時に起こりうる。モノマー液滴を被覆及び安定化する分散剤は、液滴内のモノマーが重合してポリマーに変換されるときに液滴表面に共有結合される。生体適合性及び血液適合性の外表面コーティングは、懸濁重合に使用される分散剤が生体適合性又は血液適合性を付与するものでない場合、予備形成されたポリマービーズに共有結合的にグラフト化することができる。予備形成されたポリマービーズへの生体適合性及び血液適合性コーティングのグラフト化は、表面コーティングに生体適合性又は血液適合性を付与するポリマーのモノマーか又は低分子量オリゴマーの存在下で、遊離基開始剤を活性化させることによって実施される。
【0013】
[0014]“生体適合性”とは、ポリマーが組織又は生物と接触している間、害を及ぼさずに生組織又は生物と接触できることを意味する。一部の態様においては、ポリマーが生物の腸及び消化管によって忍容されていることが意図される。本発明のポリマーは好ましくは非毒性である。
【0014】
[0015]一部の態様において、ポリマーは、50Å~3000Åの範囲の細孔径の総細孔容積が0.5cc/g乾燥ポリマーより大きく3.0cc/g乾燥ポリマーまでであり、ポリマーの50Å~3000Å(細孔径)の細孔容積の、500Å~3000Å(細孔径)の細孔容積に対する比率が200:1より小さく、そしてポリマーの直径50Å~3000Åの細孔容積の、直径1000Å~3000Åの細孔容積に対する比率が20:1より大きいような優先的(選択的)細孔構造を有する。前記比率は、代わりに、細孔表面積の点から特定することもできるので(ポリマーの50Å~3000Åの細孔表面積の、500Å~3000Åの細孔表面積に対する比率というように)、同じ細孔構造を特定する代替の方法である。
【0015】
[0016]一部の好適なポリマーは、少なくとも一つの架橋剤と少なくとも一つの分散剤を含む被覆ポリマーである。適切な分散剤は、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(ヒドロキシエチルアクリレート)、ポリ(ヒドロキシプロピルメタクリレート)、ポリ(ヒドロキシプロピルアクリレート)、ポリ(ジメチルアミノエチルメタクリレート)、ポリ(ジメチルアミノエチルアクリレート)、ポリ(ジエチルアミノエチルメタクリレート)、ポリ(ジエチルアミノエチルアクリレート)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(N-ビニルピロリジノン)、ポリ(メタクリル酸)の塩、及びポリ(アクリル酸)の塩ならびにそれらの混合物などである。
【0016】
[0017]適切な架橋剤は、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、トリビニルシクロヘキサン、ジビニルスルホン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、ペンタエリスリタール(pentaerythrital)ジメタクリレート類、ペンタエリスリタールトリメタクリレート類、ペンタエリスリタール、テトラメタクリレート類、ペンタエリスリトールジアクリレート類、ペンタエリスリトールトリアクリレート類、ペンタエリスリトールテトラアクリレート類、ジペンタエリスリトールジメタクリレート類、ジペンタエリスリトールトリメタクリレート類、ジペンタエリスリトールテトラメタクリレート類、ジペンタエリスリトールジアクリレート類、ジペンタエリスリトールトリアクリレート類、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート類、ジビニルホルムアミド及びそれらの混合物などである。好ましくは、ポリマーは、被覆の形成と同時に成長されており、分散剤がポリマーの表面に化学結合されている。
【0017】
[0018]好適なポリマーは、ジビニルベンゼン及びエチルビニルベンゼン、スチレン、エチルスチレン、アクリロニトリル、ブチルメタクリレート、オクチルメタクリレート、ブチルアクリレート、オクチルアクリレート、セチルメタクリレート、セチルアクリレート、エチルメタクリレート、エチルアクリレート、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ビニルベンジルアルコール、ビニルホルムアミド、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、トリビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、トリビニルシクロヘキサン、ジビニルスルホン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジビニルホルムアミド及びそれらの混合物から選ばれる一つ又は複数のモノマーから誘導されるものなどである。
【0018】
[0019]一部の好適なポリマーはイオン交換ポリマーである。
[0020]一部の好適なポリマーはセルロース系ポリマーである。適切なポリマーは、Sephadex(登録商標)などの架橋デキストランゲルなどである。
【0019】
[0021]一定の好適なポリマーは、多孔性の高架橋スチレン又はジビニルベンゼンコポリマーである。これらのポリマーの一部のものは、マクロ多孔性又はメソ多孔性のスチレン-ジビニルベンゼン-エチルスチレンコポリマーで、7%分子量までの塩素含量になるまで部分クロロメチル化に付されたものである。これらのポリマーのその他のものは、拡大的クロロメチル化と、膨潤状態でフリーデル・クラフツ触媒で処理することによるその後の後架橋とによって架橋スチレンコポリマーから製造された超架橋ポリスチレンである。これらのポリマーのさらにその他のものは、モノクロロジメチルエーテル及びp-キシリレンジクロリドを含む群から選ばれる二官能性架橋剤を用い、膨潤状態での拡大的追加後架橋によって架橋スチレンコポリマーから製造された超架橋ポリスチレンである。
【0020】
[0022]本発明の実施に有用な一部のポリマーは、アミン、ヒドロキシル、スルホネート、及びカルボキシル基などの親水性官能基を含有する乾燥粉末として投与できる親水性自己湿潤(self-wetting)ポリマーである。
【0021】
[0023]本発明に有用な一定のポリマーは、スチレン、ジビニルベンゼン、エチルビニルベンゼン、ならびに製造業者によって以下にリストアップされているようなアクリレート及びメタクリレートモノマーなどの重合可能モノマーから製造されたマクロ多孔性ポリマーである。Rohm and Haas Company社(現在Dow Chemical Company社の一部):(i)マクロ多孔性ポリマー性吸着剤、例えばAmberliteTM XAD-1、AmberliteTM XAD-2、AmberliteTM XAD-4、AmberliteTM XAD-7、AmberliteTM
XAD-7HP、AmberliteTM XAD-8、AmberliteTM XAD-16、AmberliteTM XAD-16HP、AmberliteTM XAD-18、AmberliteTM XAD-200、AmberliteTM XAD-1180、AmberliteTM XAD-2000、AmberliteTM XAD-2005、AmberliteTM XAD-2010、AmberliteTM XAD-761、及びAmberliteTM XE-305、ならびにクロマトグラフィー級吸着剤、例えばAmberchromTM CG 71,s,m,c、AmberchromTM CG 161,s,m,c、AmberchromTM CG 300,s,m,c、及びAmberchromTM CG 1000,s,m,c。Dow Chemical Company社:Dowex(登録商標) OptiporeTM L-493、Dowex(登録商標) OptiporeTM V-493、Dowex(登録商標) OptiporeTM V-502、Dowex(登録商標) OptiporeTM L-285、Dowex(登録商標) OptiporeTM L-323、及びDowex(登録商標) OptiporeTM V-503。Lanxess社(以前はBayer社及びSybron社):Lewatit(登録商標) VPOC 1064 MD PH、Lewatit(登録商標) VPOC 1163、Lewatit(登録商標) OC EP 63、Lewatit(登録商標) S 6328A、Lewatit(登録商標) OC 1066、及びLewatit(登録商標) 60/150 MIBK。Mitsubishi Chemical Corporation社:Diaion(登録商標) HP 10、Diaion(登録商標) HP 20、Diaion(登録商標) HP 21、Diaion(登録商標) HP 30、Diaion(登録商標) HP 40、Diaion(登録商標) HP 50、Diaion(登録商標) SP70、Diaion(登録商標) SP 205、Diaion(登録商標) SP 206、Diaion(登録商標) SP 207、Diaion(登録商標) SP 700、Diaion(登録商標) SP 800、Diaion(登録商標) SP 825、Diaion(登録商標) SP 850、Diaion(登録商標) SP 875、Diaion(登録商標) HP 1MG、Diaion(登録商標) HP 2MG、Diaion(登録商標) CHP 55A、Diaion(登録商標) CHP 55Y、Diaion(登録商標) CHP 20A、Diaion(登録商標) CHP 20Y、Diaion(登録商標) CHP 2MGY、Diaion(登録商標) CHP 20P、Diaion(登録商標) HP 20SS、Diaion(登録商標) SP 20SS、及びDiaion(登録商標) SP 207SS。Purolite Company社:PurosorbTM AP 250及びPurosorbTM AP 400。
【0022】
[0024]外傷性脳損傷は、損傷関連分子パターン(damage-associated molecular pattern
)(DAMPs)分子を生成しうる。それらは、(1)生細胞中で非炎症性の機能を果
たしているが(例えばHMGB1)、細胞のストレス、損傷、又は傷害時に細胞表面に放出、分泌、修飾、又は露出されると免疫調節特性を獲得する分子、又は(2)アラーミン(alarmins)、すなわちサイトカイン様機能を有する分子(例えば、β-ディフェンシン(
β-Defensins)及びカテリシジン(Cathelicidin))(これらは細胞に貯蔵でき、細胞溶解
時に放出されると炎症反応に寄与する)などの分子である。組織損傷後、細胞外に放出されるか又は細胞の表面に露出されると、それらは還元環境から酸化環境に移行するので、そのことがそれらの活性に影響を及ぼす。また、壊死後、ミトコンドリア及び核のDNAフラグメントが細胞外に放出され、DAMPsとなる。炎症性及び抗炎症性機能を有する一定のサイトカインは、外傷性脳損傷によって生成する重要な毒素である。
【0023】
[0025]本発明はまた、外傷性脳損傷に関連する炎症性メディエーターのための吸着剤を含むカートリッジを含むキットにも関する。該キットは、本明細書中に記載されたポリマーのいずれかを含有しうる。一部の態様において、該キットは、カートリッジの使用説明書を含む。一部の説明書は、カートリッジに貼付されたラベル上に含有される。
【0024】
[0026]本明細書中で使用されている用語“吸着剤(sorbent)”は、吸着剤(adsorbent)及び吸収剤(absorbent)を含む。
[0027]本明細書において、文脈上明白に他の意味を示していない限り、単数形の“a”、“an”及び“the”は複数形を含み、特定の数値への言及は少なくともその特定の値を含む。値の範囲が表されている場合、別の態様は、一つの特定値から及び/又は他の特定値までを含む。同様に、値が“約”という先行詞の使用によって近似値として表されている場合、その特定の値は別の態様を形成することは理解されるであろう。全ての範囲は包括的であり且つ結合可能である。
【0025】
[0028]吸着剤は、典型的には、血液をカートリッジに流入させ、次いでカートリッジから流出させて患者の体内に戻すように適応されたカートリッジ内に含有されている。典型的にはカートリッジが利用されるが、血液を吸着剤に接触させ、次いで患者に戻すことを可能にするその他の容器を利用することもできる。
【0026】
[0029]一部の態様において、血液は適切な動脈から取り出され、適切な静脈を通じて患者の体内に戻される。患者の体内から血液を取り出し、患者の体内に戻す回路を確立する方法は、当業者には周知である。
【0027】
[0030]体外で使用するための吸着剤は予備装填されたカートリッジ内に提供できる。そのようなカートリッジは、使用中に吸着剤がカートリッジから出て行かないように一つ又は複数のスクリーンを有しうる。
【0028】
[0031]あるいは、一部の態様において、吸着剤は動物の体内に投与されてもよい。一部の好適な態様において、動物はヒトである。一定の態様において、吸着剤の用量は、経口投与、栄養管経由の投与、腹膜投与、又は直腸投与される。
【0029】
[0032]一部のポリマーは、スラリー、又は懸濁液、又は湿らせることができる乾燥粉末もしくはその他の乾燥粒子として供給できる。一部の方法において、吸着剤は、経口投与用に1回用量包装又は複数回用量包装のいずれかに包装されたスラリー又は懸濁液として供給される。他の方法において、吸着剤は、浣腸又は栄養管又はその中の任意の組合せによる投与用に1回用量包装又は複数回用量包装のいずれかに包装されたスラリー又は懸濁液として供給される。
【0030】
[0033]ポリマーは、外的に、又は胃内環境もしくは腸内環境を含む消化管で内的に、エチルアルコール又はイソプロピルアルコールなどの湿潤剤を添加して又は添加せずに、湿らせることができる乾燥粉末又はその他の乾燥粒子として供給することもできる。さらに他の態様において、ポリマーは、投与のためにボトル又はブリスターパックに包装された錠剤、乾燥粉末、その他の乾燥粒子、カプセル又は坐剤として供給される。
【0031】
[0034]一部の態様において、ポリマー材料はヒト及び動物によって代謝できない。
[0035]本発明の組成物は、当業者に周知の方法によって投与できる。一部の態様において、投与は局所的である。そのような方法は、眼内投与、皮膚又は創傷への投与、体腔又は関節への直接投与、及び粘膜への送達、例えば鼻腔、口腔、膣及び直腸送達又は消化管へのその他の送達を含む。一部の態様において、そのような方法は、経口経路又は非経口経路を通じた局所投与又は全身投与を含む。一部の態様において、治療は体外で実施され
る。体外投与は、血液又は生理液から炎症性メディエーターを除去し(吸着剤を含有する装置に該液を循環させることによって)、それを体内に戻すことを含む。非経口投与は、静脈内、動脈内、皮下、腹腔内又は筋肉内注射又は注入;又は頭蓋内(くも膜下又は脳室内)投与を含む。
【0032】
[0036]局所投与用の医薬組成物及び製剤は、これらに限定されないが、軟膏、ローション、クリーム、経皮パッチ、ゲル、滴剤、坐剤、スプレー、液体及び粉末などである。従来の医薬用担体、油性基剤、水性、粉末、増粘剤などの利用も製剤に使用できる。
【0033】
[0037]医薬組成物は、錠剤、カプセル、ゲルカプセル、スラリー、懸濁液などで投与することもできる。
[0038]浸透促進剤も本医薬組成物に使用できる。そのような促進剤は、界面活性剤、脂肪酸、胆汁酸塩、キレート化剤、及び非キレート化非界面活性剤などで、それらは当該技術分野で一般的に知られている。
【0034】
[0039]本発明のポリマーは患者に1回又は複数回投与できる。投与量の決定は、当業者の技能レベルの範囲内である。
[0040]本発明に有用なポリマーは、スラリー、懸濁液として供給できるか、又は乾燥状態からスラリー又は懸濁液に再構成できる。一部の態様において、ポリマーは、経口投与用に1回用量ボトル又は複数回用量ボトルのいずれかに包装されたスラリー又は懸濁液として供給できる。他の態様において、ポリマーは、浣腸又は栄養管又はその中の任意の組合せによる投与用に1回用量ボトル又は複数回用量ボトルのいずれかに包装されたスラリー又は懸濁液として供給できる。一定の態様において、ポリマーは、外的に又は消化管で、エチルアルコールなどの湿潤剤を添加して又は添加せずに、湿らせることができる乾燥粉末として供給される。
【0035】
[0041]ポリマーは、投与用にボトル又はブリスターパックに包装された錠剤、カプセル又は坐剤として供給されてもよい。使用に応じて、ポリマーは無菌のことも無菌でないこともある。ポリマーは、標準法によって殺菌できる。そのような方法は当業者には周知である。
【0036】
[0042]以下の実施例は説明を目的としたものであって制限を意図したものではない。
【実施例0037】
実験
[0043]外傷性脳損傷(TBI)を、閉鎖皮質衝撃(closed cortical impact)(CCI)モデルを用いて誘発した(IACUC認可プロトコル)。ラットを鼻マスクで麻酔し、ラットの頭部を定位フレーム(David Kopf Instruments)に固定した。7mmの開頭術を、ラムダとブレグマの間、中央縫合の側方の右前頭頭頂皮質を中心として、硬膜は無傷のまま行った。衝撃装置(Benchmark Stereotaxic Impactor;Myneurolab社)で、右前頭頭頂皮質を、5mmの衝撃体チップを用い、速度4m/s、組織変形2.5mm、及び衝撃時間100msで打撃した。ラットには標準的な損傷後鎮痛薬が与えられた。
【0038】
[0044]その後、ラットを、大腿動脈からの0.5ml/分の制御出血により、収縮期血圧(SBP)40になるまで出血ショック(HS)に付し、これを60分間維持した。ラットは、流出血と生理食塩水で蘇生させた。損傷の最後に、ラットを大腿動脈及び大腿静脈と直列につないだ2mlカートリッジを用い、Cytosorbents社のCytosorbTM多孔性ポリマービーズ技術で処置した。ラットを3時間処置した後、ケージに戻し、自由に活動及び食餌をさせた。
【0039】
[0045]吸着剤処置を受けたラットと、プラセボで処置された(偽処置)ラットの生存率を比較した。偽処置群と処置群の2匹のラットは損傷を乗り切れず、処置前に死亡した。従って、生存曲線はおよそ88%からスタートしている。18匹のラットが処置され、17匹が偽処置を受けた。生存曲線と27種の外傷関連サイトカインの変化を
図1に示す。
【0040】
[0046]
図2は、吸着剤及びプラセボで処置されたラットにおけるいくつかの炎症性メディエーターの低いレベルを示す。炎症性メディエーターは、EGF(上皮増殖因子)、インターロイキン因子(例えば、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-10、Il-12、IL-13、IL-17、IL-18)、単球走化性タンパク質1(MCP-1)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、エオタキシン、マクロファージ炎症性タンパク質(例えば、MIP-1及びMIP-2)、腫瘍壊死因子アルファ(TNF-アルファ)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、ガンマインターフェロン(IFN-γ)、ランテス(RANTES)、及びケラチノサイト走化性(keratinocyte chemoattractant)(KC)/ヒト増殖調節がん遺伝子(human growth-regulated oncogene)(GRO)ケモカインなどである。
【0041】
[0047]更なる実施例において、TBIに関連する炎症性メディエーターを削減するために、吸着剤を、経口、栄養管経由、腹膜、又は直腸投与する。