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特開2023-78480セバコイルジナルブフィンとアセトアミノフェンの医薬品製剤及び疼痛を治療する方法
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  • 特開-セバコイルジナルブフィンとアセトアミノフェンの医薬品製剤及び疼痛を治療する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023078480
(43)【公開日】2023-06-06
(54)【発明の名称】セバコイルジナルブフィンとアセトアミノフェンの医薬品製剤及び疼痛を治療する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/485 20060101AFI20230530BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230530BHJP
   A61P 25/02 20060101ALI20230530BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20230530BHJP
   A61K 31/167 20060101ALI20230530BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20230530BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20230530BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20230530BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20230530BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20230530BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20230530BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20230530BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20230530BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20230530BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20230530BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20230530BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20230530BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20230530BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20230530BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20230530BHJP
【FI】
A61K31/485
A61P43/00 121
A61P25/02
A61P25/04
A61K31/167
A61K47/32
A61K47/02
A61K47/10
A61K47/26
A61K47/36
A61K47/12
A61K47/14
A61K47/22
A61K9/06
A61K9/10
A61K9/107
A61K9/12
A61K9/16
A61K9/20
A61K9/48
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023060264
(22)【出願日】2023-04-03
(62)【分割の表示】P 2021536123の分割
【原出願日】2018-09-03
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PLURONIC
(71)【出願人】
【識別番号】521089867
【氏名又は名称】ジェイコブ バイオテック リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】弁理士法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】フー,オリバー ヨア-プ
(72)【発明者】
【氏名】チェン,イェン-ルン
(57)【要約】
【課題】本発明は、相乗的な鎮痛効果及びより少ない副作用を提供する疼痛を治療するための医薬品組成物・複合体・キット及び方法に関するものである。
【解決手段】医薬品製剤は、セバコイルジナルブフィン(sebacoyl dinalbuphine)又はその代謝産物や派生物、及び/又はアセトアミノフェン(acetaminophen、AAP)又はその派生物と、一つ又は複数の薬学的に許容される賦形剤とを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鎮痛のための医薬品製剤であって、
前記医薬品製剤は、
セバコイルジナルブフィン(sebacoyl dinalbuphine)又は投与後セバコイルジナルブフィンを体内に存在させる化合物である治療有効量の第1鎮痛剤及び、
アセトアミノフェン(acetaminophen、AAP)又は投与後アセトアミノフェンを体内に存在させる化合物である治療有効量の第2鎮痛剤と、
一つ又は複数の薬学的に許容される賦形剤と
を含む
ことを特徴とする医薬品製剤。
【請求項2】
前記一つ又は複数の薬学的に許容される賦形剤は、ポリ(メタクリル酸―co―メチルメタクリレート)、脱水リン酸二カルシウム(Dicalcium phosphate dehydrate)、プロピレングリコールブロックポリエーテル F68、ヘキシトール(Hexitol)、クロスポビドン(Crospovidone)、デンプングリコール酸ナトリウム(Sodium starch glycolate)、フュームドシリカ 200、トリクロロスクロース(Trichlorosucrose)、メントール(Menthol)、サッカリン(Saccharin)、安息香酸ナトリウム(Sodium benzoate)、ベヘン酸グリセリル(Glyceryl behenate)、ラウリル硫酸ナトリウム(Sodium lauryl sulfate)、ポリビニルピロリドン、及びこれらの複合体からなる群より選択される
ことを特徴とする請求項1に記載の医薬品製剤。
【請求項3】
前記第1鎮痛剤と前記第2鎮痛剤との組み合わせを含む
ことを特徴とする請求項1に記載の医薬品製剤。
【請求項4】
前記第1鎮痛剤は、遊離塩基の形のセバコイルジナルブフィン(sebacoyl dinalbuphine)又は薬学的に許容される塩である
ことを特徴とする請求項1に記載の医薬品製剤。
【請求項5】
鎮痛のための医薬品製剤であって、
前記医薬品製剤は、
(i)セバコイルジナルブフィン(sebacoyl dinalbuphine)又は投与後セバコイルジナルブフィンを体内に存在させる化合物である治療有効量の第1鎮痛剤を含む第1鎮痛剤組成物と、
(ii)アセトアミノフェン(acetaminophen、AAP)又は投与後アセトアミノフェンを体内に存在させる化合物である治療有効量の第2鎮痛剤を含む第2鎮痛剤組成物と
を含む
ことを特徴とする医薬品製剤。
【請求項6】
ポリ(メタクリル酸―co―メチルメタクリレート)、脱水リン酸二カルシウム(Dicalcium phosphate dehydrate)、プロピレングリコールブロックポリエーテル F68、ヘキシトール(Hexitol)、クロスポビドン(Crospovidone)、デンプングリコール酸ナトリウム(Sodium starch glycolate)、フュームドシリカ 200、トリクロロスクロース(Trichlorosucrose)、メントール(Menthol)、 サッカリン(Saccharin)、安息香酸ナトリウム(Sodium benzoate)、ベヘン酸グリセリル(Glyceryl behenate)、ラウリル硫酸ナトリウム(Sodium lauryl sulfate)、ポリビニルピロリドン、及びこれらの組み合わせからなる群より選択された一つ又は複数の薬学的に許容される賦形剤を含む
ことを特徴とする請求項5に記載の医薬品製剤。
【請求項7】
キャリア及びバランスとして一つ又は複数の追加の賦形剤をさらに含む
ことを特徴とする請求項6に記載の医薬品製剤。
【請求項8】
前記第1鎮痛剤と前記第2鎮痛剤の量は、0~1000mgである
ことを特徴とする請求項5に記載の医薬品製剤。
【請求項9】
総合・相乗的な(summation/synergistic)鎮痛効果を提供する
ことを特徴とする請求項5に記載の医薬品製剤。
【請求項10】
前記第1鎮痛剤組成物又は前記第2鎮痛剤組成物をそれぞれ比較した場合、前記総合・相乗的な鎮痛効果は、より高い有効性、より速い鎮痛効果の発生、及び/又はより長い鎮痛効果の期間を含む
ことを特徴とする請求項9に記載の医薬品製剤。
【請求項11】
前記第1鎮痛剤組成物における前記第1鎮痛剤又は前記第2鎮痛剤組成物における前記第2鎮痛剤をそれぞれ比較した場合の値は、前記総合・相乗的な鎮痛効果に含む前記第1鎮痛剤組成物における前記第1鎮痛剤と前記第2鎮痛剤組成物における前記第2鎮痛剤の一つ又は複数の薬物動態パラメーターの量が増加する
ことを特徴とする請求項9に記載の医薬品製剤。
【請求項12】
前記第1鎮痛剤は、遊離塩基の形のセバコイルジナルブフィン(sebacoyl dinalbuphine)又は薬学的に許容される塩である
ことを特徴とする請求項5に記載の医薬品製剤。
【請求項13】
前記医薬品製剤は、ゲル、スプレー、エマルジョン、トローチ剤、分散性錠剤、錠剤、腸溶性コーティング剤、カプセル、ソフトカプセル剤、顆粒、懸濁液、ミクロスフェア、口腔インプラント、筋肉注射、静脈注射、埋め込み型注射、放出調節剤、及び他の薬学的に許容される形態で投与される
ことを特徴とする請求項1~12のいずれかに記載の医薬品製剤。
【請求項14】
鎮痛のための医薬品の製造のための請求項1~13のいずれかに記載の医薬品製剤の使用。
【請求項15】
必要がある個体の疼痛を治療するための請求項1~13のいずれかに記載の医薬品製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化合物が相乗的な鎮痛作用を有する新規の薬物複合体に関するものである。本発明は疼痛を治療するための医薬品製剤及び方法にも関するものであり、具体的には鎮痛効果を促進することを提供するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、疼痛を治療するための多くの医薬品が開発された。しかし、副作用の問題を解決する必要がある。最近、米国科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America;PNAS)に掲載された論文では、非ステロイド性抗炎症薬(non-aspirin nonsteroidal anti-inflammatory drugs;NSAIDs)であるイブプロフェン(ibuprofen)を服用後、毎回数ヶ月の心臓発作や脳卒中の発症率が増加する(FDAの警告)と共に、生殖能力に影響を及ぼす恐れがあると記載されている。また、アセトアミノフェン(acetaminophen)は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)ではないが、肝毒性又は腎臓毒性の副作用を有する。
【0003】
なお、依存性の高いオピオイド(opioids)の過剰摂取は、世界的な健康危機になっており、特に米国では、2016年だけで6万人以上の人が過量服薬で死亡した。米国では、毎年オピオイドの過剰摂取による死亡者数は数万人であり、昨年の死亡者数は5万人を超えた。これはベトナム戦争で死亡した米国民の数と同じである。
【0004】
現在、新しいオピオイド医薬品、例えばナルブフィン(nalbuphine)、ブプレノルフィン(buprenorphine)、ブトルファノール(butorphanol)、即ちいわゆる麻薬性アゴニスト-アンタゴニスト鎮痛剤が開発された。それは、オピオイド受容体の作動薬と拮抗薬の二重効果を示し、例えば、Schmidt, W. K.氏などの論文(非特許文献1)には、 これらの医薬品は、オピオイド受容体に対して高い親和性を有すると共に、拮抗薬として使用することもできる二重効果を有する内容が記載されている。一例として、ナルブフィンは受容体(Mu receptor)の拮抗薬及びκ受容体(Kappa receptor)の作動薬である。これらの作動薬・拮抗薬の医薬品は、オピオイド医薬品の有害反応、例えば依存症や呼吸抑制を改善した。ナルブフィンは、最も使用されている薬剤であり、優れた治療効果を有する。ナルブフィンを6ヶ月連続投与後、明らかな依存症と付加反応(addition)が発現されていない。これらの麻薬性アゴニスト-アンタゴニスト鎮痛剤は、軽度の呼吸抑制の症状のみが現れた。臨床に使用する際、ナルブフィンは、従来の麻薬性鎮痛剤より安全であり、麻酔薬スラッシュ(narcotics slush)(非特許文献2)に分類されている。
【0005】
ナルブフィンは、合成アゴニスト-アンタゴニストであり、ナロキソン(naloxone;麻酔拮抗薬)及びオキシモルホン(oxymorphone;強力な麻酔鎮痛剤)と化学的に関連する。κ受容体に対するナルブフィンの効果は、おそらく求心性神経が疼痛刺激に敏感なときに神経伝達物質の放出を変化させることによって、疼痛の知覚及び疼痛に対する感情的な反応において交互に果たすでしょう。ナルブフィンの経口投与の効果は、ナルブフィンの筋肉注射(術後の鎮痛剤として)の効果の四分の一から五分の一であることが確認されている。従来のナルブフィンは、経口投与による生物学的利用能(bioavailability)が5%以下であるため、実用的ではないことが明らかになった(例えば、非特許文献3)。
【0006】
この二重盲検、無作為化、並列設計、プラセボ対照研究では、128名の入院患者の術後疼痛に対するナルブフィン、アセトアミノフェン、及びそれらの組み合わせの単回経口投与における鎮痛効果の有効性寄与を評価した。患者は1時間ごとに評価され、6時間の個別報告を鎮痛反応の指標として使用される。全鎮痛及びピーク鎮痛の測定について、ナルブフィン単独とアセトアミノフェン単独は、それぞれプラセボより顕著に優れている。しかし、いずれの鎮痛アッセイでも、ナルブフィン及びアセトアミノフェンの複合体の有効性は著しくない。それは、非特許文献4に記載されたように、当該複合体は成分の相加効果(additive effect)しかないことを示している。
【0007】
セバコイルジナルブフィン(sebacoyl dinalbuphine、SDE)オイルは、薬学的に許容される長時間作用性剤形であり、一日に一回又は数日に一回投与される。大量投与しても副作用の発生を最小限に抑えることができる。SDEには、長期間、副作用、安全性という利点を有するため、治療の質を向上させることができる。術後患者の場合、投与間隔は3~5時間ではなく7日に設定することができる。癌の最終段階について、入院ではなく患者に本発明の剤形を投与すると、同じ治療効果を与えることができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Drug Alcohol Depend. 14, 339, 1985; British Journal of Pain. 6, 11-16, 2012
【非特許文献2】Drug Alcohol Depend. 14, 339, 1985; Anaesthesist. 63, 135-143, 2014
【非特許文献3】Br J Clin Pharmacol 1988;25:264-8
【非特許文献4】CLIN PHARMACOL THER 1986;39:295-9
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
理想的な鎮痛剤は、発現時間(onset time)が短く、作用が長く、効率が高く、依存症を引き起こさず、呼吸抑制を生じない又は最小限であると共に、副作用が少なくあるべきである。現在の世界的なオピオイドの危機のために、依存症や呼吸抑制を引き起こさず、発現時間が短く、作用が長く、副作用も少なく、且つより良い結果(例えば相乗的相互作用)を含む新たな発現を有する疼痛(特に中等度から重度の疼痛)を治療するための新規の医薬品製剤及び方法を提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、疼痛を治療するための新規の医薬品製剤及び方法を提供する。具体的には、医薬品製剤は、セバコイルジナルブフィン(sebacoyl dinalbuphine)又はその代謝産物や派生物、及び/又はアセトアミノフェン(acetaminophen、AAP)又はその派生物と、一つ又は複数の薬学的に許容される賦形剤とを含む。本発明に係る医薬品製剤は、疼痛緩和の総合・相乗的な(summation/synergistic)鎮痛効果、並びに改善された発現時間(より短い)、作用の持続時間、経口バイオアベイラビリティ(AUC)、及び最大ピークを提供することができる。
【0011】
いくつかの具体的な実施形態において、本発明に係る医薬品製剤は、セバコイルジナルブフィン(sebacoyl dinalbuphine)又はその代謝産物や派生物である治療有効量の第1鎮痛剤、及び/又はアセトアミノフェン(acetaminophen、AAP)又はその派生物である治療有効量の第2鎮痛剤と、一つ又は複数の薬学的に許容される賦形剤とを含む。
【0012】
いくつかの具体的な実施形態において、本発明に係る医薬品製剤は、(i)セバコイルジナルブフィン(sebacoyl dinalbuphine)又はその代謝産物や派生物である治療有効量の第1鎮痛剤を含む第1鎮痛剤組成物と、(ii)アセトアミノフェン又はその派生物である治療有効量の第2鎮痛剤を含む第2鎮痛剤組成物とを含む。
【0013】
いくつかの具体的な実施形態において、第1鎮痛剤は、遊離塩基の形のセバコイルジナルブフィン(sebacoyl dinalbuphine)又は薬学的に許容される塩である。
【0014】
いくつかの具体的な実施形態において、第1鎮痛剤は、例えば米国特許第6,225,321号に記載されているように、セバコイルジナルブフィン(sebacoyl dinalbuphine、SDE)である。
【0015】
いくつかの具体的な実施形態において、第1鎮痛剤は、第1鎮痛剤のバイオアベイラビリティ増強剤として有効量で作用する。
【0016】
いくつかの具体的な実施形態において、第2鎮痛剤は、例えば、米国特許出願第14/441,317号(US20170172950A1)に記載されているように、アセトアミノフェン(acetaminophen、AAP)である。
【0017】
いくつかの具体的な実施形態において、本明細書で使用される賦形剤は、Eudragit S100、脱水リン酸二カルシウム(Dicalcium phosphate dehydrate)、Pluronic F68、ヘキシトール(Hexitol)、クロスポビドン(Crospovidone)、デンプングリコール酸ナトリウム(Sodium starch glycolate)、Aerosil 200、トリクロロスクロース(Trichlorosucrose)、メントール(Menthol)、 サッカリン(Saccharin)、安息香酸ナトリウム(Sodium benzoate)、ベヘン酸グリセリル(Glyceryl behenate)、ラウリル硫酸ナトリウム(Sodium lauryl sulfate)、Providone K30、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0018】
いくつかの具体的な実施形態において、第1鎮痛剤組成物は、持続放出形態に処方され、第2鎮痛剤組成物は、即時放出形態に処方される。
【0019】
一方、本発明は鎮痛剤の医薬品製剤又は具体的には本明細書に記載された鎮痛剤の薬物複合体を個体に投与することを含む必要がある個体の疼痛を治療する方法を提供する。又、必要がある個体の疼痛を治療するための薬剤を製造する本明細書に記載された鎮痛剤の医薬品製剤又は鎮痛剤の薬物複合体の用途も提供する。
【0020】
以下の説明は、本発明の1つ又は複数の具体的な実施形態の詳細を説明する。本発明の他の特徴又は利点は、いくつかの具体的な実施形態の以下の詳細な説明及び添付の特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】足圧試験(paw pressure test)を用いて、SDE 75mg/kg、AAP 100mg/kg、及びその組み合わせ(SDE+AAP)を経口投与後、SDラットに対する鎮痛効果を示す図である。
図2】SDラットの足圧試験(paw pressure test)を用いて、NAL 60mg/kg、AAP 100mg/kg、及びその組み合わせを経口投与後、SDラットに対する鎮痛効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に示す具体的な実施形態は、本発明を説明するためである。但し、本発明は、示された好ましい具体的な実施形態に限定されるものではないことを理解されたい。
【0023】
別段の定義がない限り、本明細書で使用する全ての技術及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者が通常理解する意味と同じ意味を有する。
【0024】
本明細書で使用する冠詞「一つの(a)」及び「一つの(one)」は、文脈の対象が「一つ又は複数(one or more)」であることを意味する。例えば、「一つの素子」とは、一つの素子又は複数の素子を意味する。
【0025】
「含む」又は「含有する」などの用語は、「含む」「含まれる」「含有する」「包含する」と同義であり、一つ又は複数の特徴、成分、又は構成要素を含むことを意味する。「含む」又は「含有する」などの用語は、「からなる」又は「~からなる」という用語を含む。
【0026】
本発明は、新規の医薬品製剤及び疼痛を治療するための方法を提供する。具体的には、本発明に係る医薬品製剤は、セバコイルジナルブフィン又はその派生物、及び/又はアセトアミノフェン又はその派生物と、一つ又は複数の薬学的に許容される賦形剤とを含む。本発明に係る医薬品製剤は、疼痛緩和の総合・相乗的な効果、並びに改善された経口バイオアベイラビリティ、及び少ない副作用を提供することができる。
【0027】
本明細書で使用する「医薬品製剤」という用語は、任意の形態の医薬品、例えば、組成物、組み合わせ、又はキットを意味する。組成物とは、例えば、錠剤、カプセル、ピル、粉末、顆粒、溶液、懸濁液、及びエマルジョンの形態の均一混合物、及び任意の薬学的に許容される形態を意味する。組み合わせとは、物理的に一つ又は複数の単位包装でそれぞれ存在する二つ又は複数の有効成分の製品を時系列で投与することを意味する。キットとは、上記の医薬品製剤の集合又は組み合わせを意味することができ、好ましくは、単一の容器内に別個の形態で供給される。好ましくは、容器は、これらの医薬品製剤を使用するための又は本発明に係る方法を実施するための説明書も含む。
【0028】
本明細書で使用する「ナルブフィン(nalbuphine、NAL)」という用語は、ナルブフィン自体と、遊離塩基の形のナルブフィン又は薬学的に許容される塩(ナルブフィン塩酸塩を除く)又はナルブフィンのエステル(モノエステル又はポリエステル、例えばセバコイルジナルブフィン(sebacoyl dinalbuphine)(SDE)を含み、例えば、米国特許第6,225,321号に記載され、その全体を参照として本明細書に組み入れる)を含む同じ薬物効果を有するナルブフィンの構造である化学の派生物とを含むことを意味する。
【0029】
本明細書で使用する「アセトアミノフェン(acetaminophen、AAP)」という用語は、アセトアミノフェン自体と、同じ薬物効果を有するアセトアミノフェンの構造である化学の派生物とを含むことを意味し、例えば、米国特許出願第14/441,317号(US20170172950A1)に記載され、その全体を参照として本明細書に組み入れる。
【0030】
本発明によれば、本明細書に記載されている鎮痛剤の医薬品製剤は、ナルブフィン又はその派生物である治療有効量の第1鎮痛剤、及び/又はアセトアミノフェン(acetaminophen、AAP)又はその派生物である治療有効量の第2鎮痛剤を含む。
【0031】
好ましくは、本明細書に記載されている第1鎮痛剤又は第2鎮痛剤は、一つ又は複数の薬学的に許容される賦形剤と共に処方された組成物の形態である。
【0032】
いくつかの具体的な実施形態において、本明細書で使用される賦形剤は、Eudragit S100、脱水リン酸二カルシウム(Dicalcium phosphate dehydrate)、Pluronic F68、ヘキシトール(Hexitol)、クロスポビドン(Crospovidone)、デンプングリコール酸ナトリウム(Sodium starch glycolate)、Aerosil 200、トリクロロスクロース(Trichlorosucrose)、メントール(Menthol)、 サッカリン(Saccharin)、安息香酸ナトリウム(Sodium benzoate)、ベヘン酸グリセリル(Glyceryl behenate)、ラウリル硫酸ナトリウム(Sodium lauryl sulfate)、Providone K30、及びこれらの複合体からなる群より選択される。
【0033】
いくつかの具体的な実施形態において、本発明に係る医薬品製剤は、本明細書に記載された第1鎮痛剤(NAL又はその派生物)と第2鎮痛剤(AAP又はその派生物)との複合体を含む。いくつかの具体的な実施形態において、第1鎮痛剤の量は、用量あたり1mg以上、5mg以上、10mg以上、20mg以上、30mg以上、50mg以上、75mg以上である。特定の具体的な実施形態において、第2鎮痛剤の量は、用量あたり100mg以上、200mg以上、300mg以上、500mg以上、750mg以上、900mg以上、1000mg以上である。いくつかの具体的な実施形態において、第2鎮痛剤と第1鎮痛剤(AAP又はその派生物:NAL又はその派生物)とは、1~1000:1以上(例えば、約1.5:1、5:1、10:1、25:1、50:1、75:1、100:1、200:1、300:1、500:1、又は1000:1)で存在する。
【0034】
本発明によれば、医薬品製剤は、疼痛緩和のための相乗的な鎮痛効果を提供する。
【0035】
本明細書で使用する相乗的相互作用とは、例えば、個々の要因又は活性薬剤の同時作用を意味し、その全ての効果の合計は、個々の要因の効果よりも大きい。
【0036】
いくつかの具体的な実施形態において、第1鎮痛剤単独又は第2鎮痛剤単独と比較した場合、本明細書に記載された第1鎮痛剤及び第2鎮痛剤を含む医薬品製剤は、より即効性のある鎮痛効果及び/又はより長い持続期間の鎮痛効果を提供する。いくつかの具体的な実施形態において、より即効性のある鎮痛効果とは、投与してから30分以内、例えば、25分、20分、又は15分以内に鎮痛効果を生じさせることを意味することができる。いくつかの具体的な実施形態において、より長い持続期間の鎮痛効果とは、鎮痛効果が30分以上、例えば40分以上、50分以上、60分以上、70分以上、80分以上、90分以上、又は100分以上を持続することを意味する。
【0037】
いくつかの具体的な実施形態において、第1鎮痛剤組成物における第1鎮痛剤又は第2鎮痛剤組成物における第2鎮痛剤をそれぞれ比較した場合の値について、本明細書に記載された第1鎮痛剤及び第2鎮痛剤を含む医薬品製剤は、当該医薬品製剤における第1鎮痛剤及び第2鎮痛剤の一つ又は複数の薬物動態パラメーター(例えばAUC、Tmax)の量を増加させる。例えば、本明細書に記載された第1鎮痛剤及び第2鎮痛剤を含む医薬品製剤の特定の薬物動態パラメーターは、第1鎮痛剤組成物における第1鎮痛剤又は第2鎮痛剤組成物における第2鎮痛剤の特定の薬物動態パラメーターより少なくとも20%以上高い(例えば、30%以上、50%以上、一倍以上、二倍以上、又はそれ以上)ことができる。
【0038】
いくつかの具体的な実施形態において、副作用は、第1鎮痛剤及び/又は第2鎮痛剤によって引き起こされる腎臓毒性及び/又は肝臓毒性を含む。いくつかの具体的な実施形態において、副作用は、呼吸抑制又は依存症のリスクを含む。
【0039】
対照群(又は正常群)の量と比較して、毒性指数又は毒性条件の量の増加は、毒性(毒性状態)の誘発又は発生の指標と見なすことができる。本明細書で使用する「正常量」又は「対照量」という用語は、記載された数値が許容値の範囲内にあることを意味し、その中、当業者及び/又は医療専門家(例えば、医師)は、健常者又は類似の身体的特徴と病歴を有する群が当該数値を有することを期待する。対応する毒性状態と比較した場合、毒性指数又は毒性条件の量の「低下」は、毒性の減少又は除去の指標と見なすことができる。特に、毒性指数又は毒性条件の低下量が正常量又は対照量に近い、或いはそれよりも低い場合、当該毒性は「根絶」と見なすことができる。
【0040】
本明細書で使用する毒性(例えば、腎臓毒性及び/又は肝臓毒性)は、過剰なAAPによって引き起こされることができる。過剰摂取とは、投与量が有用又は標準用量よりも多いことを意味し、それは薬物規制機関(例えば、食品医薬品局)によって承認された有効用量、又は病状を治療又は予防するため、或いはその症状を緩和するために医師により処方された有効用量である。例えば、パラセタモール(paracetamol)錠剤は、現在の市場において承認された経口投与のAAP医薬品である。成人の場合、標準用量は必要に応じて、4~6時間ごとに500mg~1gのパラセタモールを服用し、一日当たり最大4gである。AAPの過剰摂取とは、AAPの投与量が有用又は標準用量よりも多い(例えば、5%、10%、20%、30%、50%、75%、100%又はそれ以上)ことを意味する。
【0041】
本明細書で使用する「治療」という用語は、疾患又は疾患の症状や状態を処置することを意味し、一つ又は複数の活性剤を疾患又は疾患の症状や状態又は病原体悪化を患っている個体に応用又は投与することを含むが、これらに限定されるものではない。処置の目的は、疾患、疾患の症状又は状態、疾患による障害、或いは疾患の悪化を処理、治療、軽減、緩和、変化、矯正、改善、改良、又は影響することである。具体的に言うと、本発明は医薬品複合体及び疼痛を治療するための方法を提供する。
【0042】
本明細書で使用する「個体」又は「被験者」などの用語は、ヒト又は非ヒトの動物を含み、具体的には、哺乳動物、例えばコンパニオンアニマル(例えば犬、猫、及び同類のもの)、家畜(例えば牛、羊、豚、馬など)、又は実験動物(例えばラット、マウス、モルモットなど)であることを意味する。
【0043】
本明細書で使用する「有効量」という用語は、活性成分の量が、治療される個体に対して所望の生物学的効果又は治療効果(例えば疼痛緩和)を達成することを意味する。
【0044】
送達及び摂取の目的のために、本発明の有効量の活性成分を薬学的に許容される賦形剤と共に処方して、適切な形態の医薬品製剤を形成することができる。投与経路に応じて、本発明に係る医薬品組成物は、組成物の総重量に基づいて約0.1から約100重量%の活性成分を含むことが好ましい。本明細書で使用する「薬学的に許容される」という用語は、担体が組成物の活性成分と適合性を有することを意味し(且つ活性成分の作用に影響を与えない)、担体は活性成分を安定化させて、治療する個体を安全にさせることができることが好ましい。当該担体は、活性成分の希釈剤、キャリヤ、賦形剤、又はバースであり得る。好適な賦形剤のいくつかの例としては、乳糖、グルコース、デンプン、アカシア、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶性セルロース、滅菌水、シロップ、及びメチルセルロースが挙げられる。組成物は、タルク、ステアリン酸マグネシウム、及び鉱油などの潤滑剤、湿潤剤、乳化剤及び懸濁化剤、ヒドロキシ安息香酸メチル及びヒドロキシ安息香酸プロピルなどの防腐剤、甘味料、及び調味料をさらに含んでもよい。本発明に係る組成物が患者に投与された後、活性成分の迅速な、持続的な、又は遅延放出の効果を提供することができる。本発明によれば、当該組成物は、錠剤、ピル、粉末、口腔錠、小袋、トローチ、エリキシル剤、懸濁液、エマルジョン、溶液、シロップ、ソフト及びハードゼラチンカプセル、座薬、滅菌注射剤、及び包装粉末の形態であっても良い。
【0045】
本発明に係る医薬品製剤は、例えば経口、非経口(例えば筋肉、静脈、皮下、及び腹腔)、経皮、座薬、及び鼻腔内の方法の生理学的に許容される任意の経路を介して送達することができる。非経口投与の場合、溶液を血液と等張にするのに十分な塩又はグルコースなどの他の物質を含み得る滅菌水溶液の形態で使用されることが好ましい。当業者にとって、更なる創造的な仕事をしなくても、従来技術である標準の薬理学的な技術を用いて、無菌状態の中で好適な非経口組成物の調合を完成することができる。
【0046】
いくつかの具体的な実施形態において、医薬品製剤は、例えば、錠剤、カプセル、ピル、粉末、顆粒、溶液、懸濁液、エマルジョン、及びこれらの組み合わせからなる群より選択され、好ましくは、経口投与である。
【0047】
いくつかの具体的な実施形態において、組成物は、ゲル、スプレー、エマルジョン、トローチ剤、分散性錠剤、錠剤、腸溶性コーティング剤、カプセル、ソフトカプセル剤、顆粒、懸濁液、ミクロスフェア、口腔インプラント、筋肉注射、静脈注射、埋め込み型注射、放出調節剤、及び他の薬学的に許容される形態で投与される。
【0048】
いくつかの具体的な実施形態において、好ましくは、即効性の鎮痛効果及び持効性の鎮痛効果を提供し得る持続放出部分を有する第1鎮痛剤と、即時放出部分を有する第2鎮痛剤とを提供することである。
【0049】
本発明は、本明細書に記載された鎮痛剤の医薬品製剤を個体に投与することを含む必要がある個体の疼痛を治療する方法も提供する。具体的には、本発明は、疼痛緩和の相乗的相互作用、並びに改善された経口バイオアベイラビリティ、及び少ない副作用を提供する。
【0050】
具体的には、本発明に係る方法は、中等度から重度/深部の疼痛、例えば、癌、腎疝痛又は胆石疝痛、片頭痛又は血管性頭痛、術後疼痛、及び火傷に関連する疼痛の治療に適している。
【0051】
いくつかの具体的な実施形態において、第1鎮痛剤と第2鎮痛剤とは、同時に又は連続的に投与することができる。
【0052】
本発明は、以下の実施例によってさらに説明されることができる。但し、以下の実施例は説明のために提供され、本発明を限定するものではない。
【0053】
実施例
【0054】
1. 材料及び方法
【0055】
1.1 動物
【0056】
体重260~330gの雄のSprague-DawleyラットをBioLASCO(台北、台湾)から購入した。ラットは12時間の明暗周期、22℃の温度、及び60%の湿度を含む管理された条件下で飼育された(餌及び水を自由に摂取させた)。全ての実験は、IACUCの動物のケアと使用に関するプロトコル(Protocol for the Care and Use of Animals)に従って行い、且つ動物は法律に準拠した倫理的且つ人道的な方法で処置した。
【0057】
1.2 医薬品と試薬
【0058】
ナルブフィンは、Yung-Shin Pharmaceutical Ind.Co.,Ltd.(台湾、台中県)より提供された。SDEは、Yung-Shin Pharmaceutical Ind.Co.,Ltd.(台湾、台中県)より提供された。AAP製品(医薬品製剤)は、China Chemical&Pharmaceutical Co.,Ltd.(台湾、新竹県)より提供された。アセトアミノフェン粉末はSigma-aldrich(St. Louis,MO,USA)から購入した。イソアミルアルコールはMallinckrodt baker. lnc.(Phillipsburg,NJ,USA)から購入した。ヘキサンは、Avantor Performance Materials,Inc.(Center Valley,PA,USA)から購入した。アセトニトリルとメタノールはMerck(Darmstadt,Germany)から購入した。液体クロマトグラフィー-質量分析(LC-MS)グレードで分析を行った。
【0059】
1.3 薬力学研究
【0060】
鎮痛効果の研究では、RandallとSelittoのクロープレッシャーテスト(claw pressure test)を採用した。侵害受容閾値(nociceptive threshold)はグラムで表され、ラットの左後ろ足の爪に適用される無痛覚計(analgesimeter)(IITC Inc. Life Science、CA)で測定された。平均ベースラインを得るために、薬物治療の15分、30分、及び45分前に全ての動物を試験した。結果は、式%MPA=(試験値-ベースライン値)/(カットオフ値-ベースライン値)×100、カットオフ値:750gに基づいて、最大可能効果のパーセンテージ(%MPE)で表される。AUC(曲線下の面積)は、各個体とは関係なく、各時点での検出値をベースライン値から差し引いて積分し、平均値を算出した。負の値(%MPA及びAUC)は0と見なされる。各個体の%MPAは、Tmaxの最大ピーク値とは関係がなく、続いて平均値を算出した。有効な鎮痛効果のベースライン値として、20%のMPAを採用し、20%のMPAに達する効果の発現時間と20%のMPAの効果の持続期間を分析した。薬力学研究を行い、75mg/kgのSDE単独、AAP製品単独(100mg/kg)、及び75mg/kgのSDEとAAP製品(100mg/kg)との複合体、或いは60mg/kgのNAL単独、AAP製品単独(100mg/kg)、及び60mg/kgのNALとAAP製品(100mg/kg)との複合体の経口投与において、ラットに対する鎮痛効果を比較した。30分、60分、90分、120分、150分、180分、210分、240分、270分、及び300分の薬物投与後、抗侵害受容閾値(anti-nociceptive thresholds)が測定された。
【0061】
1.4 薬物動態学的研究
【0062】
75mg/kgのSDE単独、AAP製品(100mg/kg)単独、及び75mg/kgのSDEとAAP製品(100mg/kg)の複合体をラットに経口投与し、異なる時点で血液サンプルを収集した。サンプルを20μLの20IUヘパリンを含む微小遠心管に入れ、4°Cにおいて13300rpmで10分間遠心分離して血漿を分離し、実験まで-80°Cで保存した。
【0063】
液液抽出法を使用して、血漿サンプル中の各NALの濃度を抽出した。ラットの血漿サンプルの0.1mLアリコートを取り、50μLのIS(ナロキソン(naloxone):2μg/mL)を添加してから、50μLの1N NaCOを添加した。抽出溶媒(2mLのn-ヘキサン:イソアミルアルコール=9:1)を添加して、サンプルを5分間振動し、-80℃で30分間放置した。上部の有機相を新しいガラス管に注ぎ、溶媒を40℃で緩やかな窒素フロー(ZymarkMA、USA)において蒸発乾固させた。残留物を100μLの移動相で再構成し、30秒間振動した。続いて、サンプルをオートサンプラーバイアルに移し、超高速液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析(UPLC-MS/MS)で分析した。
【0064】
UPLC(Waters AcquityTM Milford、MA、USA)を用いて、エレクトロスプレーイオン化(ESI)インターフェイスをBiosystems-Sciex API 3000シリーズトリプル四重極質量分析計(triple-quadrupole mass spectrometer)(Foster City、CA、USA)に結合してNALを分析した。クロマトグラフィー分離には、Waters Acquity UPLC BEH HILIC、2.1×100mm、1.7μmカラムを使用した。移動相溶媒Aは2mMのギ酸アンモニウムと0.1%のギ酸を含有する水溶液であって、溶媒Bは2mMのギ酸アンモニウムと0.1%のギ酸を含有するアセトニトリル溶液である。合計ランタイムは5分であり、カラム温度は35°Cに維持された。移動相の組成物は以下の通り、13%のAと87の%Bである。NALの保持時間は、それぞれ2.89分と2.65分である。NALのQ1とQ3は、358.1→340.1と328.3→310.3である。Analyst 1.4.2ソフトウェア(Applied Biosystems-Sciex; Foster City、CA)を用いて、MS/MSデータを収集及び処理した。NALの血漿濃度は、WinNonlin 5.3ソフトウェア(Pharsight、Mountain View、CA)を使用して分析した。PRISMソフトウェアの一元配置分散分析(One-way ANOVA)を使用して、薬物動態学的研究及び薬力学研究から得られたデータの統計的有意性を確定した。
【0065】
2. 結果
【0066】
2.1 医薬品製剤の鎮痛効果(試験1)
【0067】
図1は、AAP単独、SDE単独、及びAAPとSDEとの複合体の経口投与による抗疼痛効果の定量的結果を示す(その中、最大可能鎮痛率(MPA)%の閾値は100%である)。抗疼痛反応は、AUC(%MPA対時間)と各群のMPAが20%を超える持続時間を計算することによって評価された(表1)。データの統計分析について、AAPとSDEとの複合体は、AAP単独又はSDE単独よりも相乗的な鎮痛効果を表していること、且つAAPとSDEとの複合体は、AAP単独又はSDE単独よりも相乗的な鎮痛効果を表していることを示し(p<0.005)、その中、AAPとSDEとの複合体は、相対的に最長の作用持続期間と最大のAUC値を表し、優れたバイオアベイラビリティを表現している(p<0.005)。重要なのは、AAPとSDEとの複合体は、それぞれSDE単独とAAP単独よりも著しく優れた相乗効果を有する(p<0.005)。AAPとSDEとの複合体は、製剤を調整する必要なくても、確実に疼痛緩和に相乗効果を有する。
【0068】
【表1】
【0069】
2.2 複数の医薬品製剤の鎮痛効果(試験2)
【0070】
図2は、NAL、AAP、及びNAL+AAPの経口投与による抗疼痛効果の定量的結果を示す(その中、最大可能鎮痛率(MPA)%の閾値は100%である)。抗疼痛反応は、AUC(%MPA対時間)と各群のMPAが50%を超える持続時間を計算することによって評価された(表2)。データの統計分析について、NALとAAPとの複合体は、NAL単独又はAAP単独よりも相乗的な鎮痛効果を表していることを示す(p<0.0001)。
【0071】
【表2】
図1
図2