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  • 特開-弦楽器用の音響デバイス 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023078494
(43)【公開日】2023-06-07
(54)【発明の名称】弦楽器用の音響デバイス
(51)【国際特許分類】
   G10D 3/00 20200101AFI20230531BHJP
   G10G 7/00 20060101ALI20230531BHJP
【FI】
G10D3/00
G10G7/00
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021191623
(22)【出願日】2021-11-26
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-11-17
(71)【出願人】
【識別番号】521517120
【氏名又は名称】石橋 敬三
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】石橋 敬三
【テーマコード(参考)】
5D002
5D182
【Fターム(参考)】
5D002CC55
5D182CC10
(57)【要約】
【課題】 設置場所の制約の緩和および装置構成のコンパクト化により、演奏への影響を低減可能である弦楽器用の音響デバイスを提供する。
【解決手段】弦楽器用の音響デバイスは、1本以上のスプリングと、各々の前記スプリングの両端を固定するための一対の固定部、および、前記一対の固定部を互いに連結する連結部を含むサポートと、前記一対の固定部にそれぞれ対応した位置において前記サポートに設けられる複数の磁石と、を備える。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1本以上のスプリングと、
各々の前記スプリングの両端を固定するための一対の固定部、および、前記一対の固定部を互いに連結する連結部を含むサポートと、
前記一対の固定部にそれぞれ対応した位置において前記サポートに設けられる複数の磁石と、
を備える
弦楽器用の音響デバイス。
【請求項2】
前記サポートは、前記複数の磁石を含む基準面から離れた高さ位置で前記1本以上のスプリングが支持されるように、前記複数の磁石と前記一対の固定部との間に設けられるスペーサ部を含む請求項1に記載の弦楽器用の音響デバイス。
【請求項3】
前記1本以上のスプリングは、
前記複数の磁石を含む基準面から第1高さに配置される2本以上の第1スプリングと、
前記基準面から前記第1高さとは異なる第2高さにおいて、平面視にて前記2本以上の第1スプリングの間に配置される第2スプリングと、
を含む請求項1又は2に記載の弦楽器用の音響デバイス。
【請求項4】
各々の前記固定部は、
各々の前記第1スプリングの端部が固定される第1平板部と、
前記第1平板部に対向して配置され、前記第2スプリングの端部が固定される第2平板部と、
前記第1平板部及び前記第2平板部を接続する一対の側板部と、
を含み、
前記連結部は、各々の前記スプリングに沿って前記一対の固定部間にて延在し、各々の前記固定部の前記一対の側板部をそれぞれ接続する一対のブリッジ板である
請求項3に記載の弦楽器用の音響デバイス。
【請求項5】
前記連結部は、複数本の前記スプリングに挟まれるように各々の前記スプリングに沿って延在する連結ロッドである
請求項1乃至3の何れか一項に記載の弦楽器用の音響デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、弦楽器用の音響デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、弦楽器の音響を拡大するための音響デバイスが知られている。
例えば、特許文献1には、弦に接続される反響装置が記載されており、かかる反響装置は、締付金具を用いて音響室の天井板の上に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭64-57297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の反響装置は、弦に接続され、かつ、締付金具を弦楽器の後端壁に押し付けることで固定されることを前提としており、設置場所の制約が大きい。また、この反響装置は、締付金具を用いて弦楽器に固定されるため、締付金具を含めた装置全体のサイズが大きくなってしまう。
このため、特許文献1記載の反響装置は、設置に伴う演奏への影響が懸念される。
【0005】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、設置場所の制約の緩和および装置構成のコンパクト化により、演奏への影響を低減可能である弦楽器用の音響デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の少なくとも一実施形態に係る弦楽器用の音響デバイスは、
1本以上のスプリングと、
各々の前記スプリングの両端を固定するための一対の固定部、および、前記一対の固定部を互いに連結する連結部を含むサポートと、
前記一対の固定部にそれぞれ対応した位置において前記サポートに設けられる複数の磁石と、
を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、スプリングを固定するための固定部に対応した位置に磁石を設けたので、弦楽器のボディを構成する板(表板、裏板又は側板)を挟んで音響デバイスの磁石の反対側に取付け用の磁石を配置することで、音響デバイスをコンパクトな取付構造にて設置できる。また、音響デバイスの設置位置の自由度が向上し、演奏者の望む場所に音響デバイスを取り付けることも可能となる。
よって、音響デバイスの設置に伴う演奏への影響を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】幾つかの実施形態に係る音響デバイスの適用対象である弦楽器を示す斜視図である。
図2】一実施形態に係る音響デバイスの斜視図である。
図3】他の実施形態に係る音響デバイスの斜視図である。
図4A図3の矢印A方向から視た音響デバイスの模式図である。
図4B図3の矢印B方向から視た音響デバイスの模式図である。
図4C図3の矢印C方向から視た音響デバイスの模式図である。
図5】一実施形態に係る音響デバイスの配置例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0010】
図1は、幾つかの実施形態に係る音響デバイスの適用対象である弦楽器を示す斜視図である。
なお、図1には、音響デバイス100(102,104)の適用対象として、弦楽器1がクラシックギター又はアコースティックギターである例を示すが、音響デバイス100の適用対象はこの例に限定されず、例えば、マンドリン、ウクレレ、その他サウンドホールを有する弦楽器であってもよい。
【0011】
図1に示す弦楽器1は、空洞のボディ10と、ボディ10から不図示のヘッドに向かって延びるネック20とを含む。
ボディ10は、主として、表板(トップ)12と、表板12に対向する裏板(バック)14と、表板12及び裏板14を接続する側板(サイド)16とにより構成される。表板12には、ヘッド(不図示)からネック20に沿って延在する複数の弦22を固定するためのブリッジ30が設けられる。
【0012】
ボディ10は、表板12、裏板14および側板16によって囲まれた音響室40を有する。側板16のうちネック20とは反対側の部位は、ボディ10のボトム17を形成する。
音響室40は、開口(サウンドホール)32が表板12を介して外部と連通する。開口32は、複数の弦22に対向するようにブリッジ30とネック20との間に設けらる。弦楽器1の演奏時、弦22の振動がブリッジ30を介してボディ10に伝わってボディ10の内部の空気が共鳴し、サウンドホール32から音が外部に放出される。
【0013】
音響デバイス100(102,104)は、弦楽器1の音響の改善又は音質の変更する目的で弦楽器1に取り付けて使用される。
音響デバイス100(102,104)の弦楽器1への取付けには、後述する音響デバイス100の磁石130が利用される。具体的には、弦楽器1のボディ10の板(表板12,裏板14又は側板16)を挟んで磁石130とは反対側に取付用磁石50を別途配置することで、磁石130と取付用磁石50との間に作用する磁力によって、音響デバイス100(102,104)が弦楽器1に取り付けられる。
なお、音響デバイス100(102,104)は、ボディ10に接して取り付けられれば設置位置に特に制限はなく、ボディ10の内面に固定されてもよいし、ボディ10の外面に固定されてもよい。また、音響デバイス100(102,104)は、1つだけ取り付けられてもよいし、複数取り付けられてもよい。
【0014】
図1に示すように、音響デバイス102は、表板12の内面に固定される。
音響デバイス102は、表板12の内面のうち、サウンドホール32とボディ10のボトム17との間の領域に配置されてもよい。サウンドホール32とボトム17との間にブリッジ30が位置する弦楽器1の場合、ボディ10の中でも、弦22の振動が最初に伝わるブリッジ30の周囲が他の箇所に比べて大きく振動する。このため、サウンドホール32とボディ10のボトム17との間に位置するように音響デバイス102を表板12の内面に固定すれば、音響デバイス102による音響効果を高めることができる。
図1に示す例示的な実施形態では、音響デバイス102は、ブリッジ30を跨ぐように表板12の内面に位置するように設けられる。この場合、複数の弦22の振動をブリッジ30及び表板12を介して音響デバイス102に効果的に導くことができる。
他の実施形態では、音響デバイス102は、ブリッジ30とサウンドホール32との間に位置するように表板12の内面に固定される。この場合、図1に例示したブリッジ30を跨ぐ配置に比べて、音響デバイス102のボディ10への取付けを容易に行うことができる。
【0015】
他方、図1に示す音響デバイス104は、表板12の外面に固定される。
音響デバイス104は、表板12の外面のうち、サウンドホール32とボディ10のボトム17との間の領域に配置されてもよい。サウンドホール32とボディ10のボトム17との間に位置するように音響デバイス104を表板12の外面に固定すれば、音響デバイス104による音響効果を高めることができる。
図1に示す例示的な実施形態では、音響デバイス104は、ブリッジ30とサウンドホール32との間に位置するように表板12の外面に固定される。
【0016】
他の実施形態では、1以上の音響デバイス100が、裏板14及び側板16に取り付けられる。
【0017】
図2は、一実施形態に係る音響デバイスの斜視図である。図3は、他の実施形態に係る音響デバイスの斜視図である。
図2及び図3に示すように、幾つかの実施形態において、音響デバイス100は、1本以上のスプリング110と、スプリング110を支持するサポート120と、サポート120に設けられる複数の磁石130と、を含む。
【0018】
スプリング110は、ボディ10とともに振動可能であれば特に種類は限定されず、任意の形状のコイルばね、板ばね等を使用できる。
スプリング110は、自然長よりも伸びた状態、または、自然長よりも圧縮された状態で後述するサポート120によって支持される。図2及び図3には、スプリング110が引張コイルばねである例を示しており、自然長よりも伸びた状態でサポート120に支持される。
【0019】
幾つかの実施形態では、図2及び図3に示すように、複数のスプリング110は、後述する複数の磁石130を含む基準面から第1高さ(H1)に配置される2本以上の第1スプリング110Aと、基準面から第2高さ(H2)に配置される第2スプリング110Bとを含む。複数の磁石130を含む基準面の法線方向(図2及び図3の矢印B)から視た音響デバイス100の平面視において、2本以上の第1スプリング110Aの間に第2スプリング110Bが配置される。
これにより、音響デバイス100の大型化を回避しながら、音響デバイス100へのスプリング110の搭載数を増やすことができる。
【0020】
サポート120は、一対の固定部122,124と、一対の固定部122,124を連結する連結部126と、を含む。
一対の固定部122,124は、それぞれ、スプリング110の両端を固定可能に構成される。幾つかの実施形態では、図2及び図3に示すように、各々の固定部122,124は、スプリング110のフック112,114を係止するための係止部123,125を有する。
幾つかの実施形態では、連結部126は、図2及び図3に示すように、一対の固定部122,124間をスプリング110に沿って延在し、一対の固定部122,124を連結する。
【0021】
上記構成のサポート120の一対の固定部122,124に対応する位置には、それぞれ、複数の磁石130が配置される。
各々の磁石130は、図1を参照して上述した取付用磁石50に対して弦楽器1のボディ10を構成する板(表板12、裏板14又は側板16)を挟んで反対側に位置する。音響デバイス100は、磁石130と取付用磁石50との間に生じる磁力によって弦楽器1に取り付けられる。
磁石130の材質及び形状は、弦楽器1に音響デバイス100を安定して取り付けるために必要な磁力を得ることができれば、特に限定されない。磁石130は、例えば、ネオジム磁石やフェライト磁石等であってもよい。磁石130は、円柱型磁石(図2の磁石130及び図3の磁石130B)であってもよいし、角型磁石(図3の磁石130A)であってもよい。ボディ10の側板16の外面又は内面に音響デバイス100を取り付ける場合、磁石130として、側板16の湾曲形状に応じた曲率を有するセグメント型(C型)磁石を用いてもよい。
【0022】
上記構成の音響デバイス100は、磁石130及び取付用磁石50の間に作用する磁力を利用して弦楽器1に取り付けられるため、音響デバイスの設置位置の自由度が向上するとともに、音響デバイス100の取付構造をコンパクト化できる。
よって、音響デバイス100の設置に伴う演奏への影響を低減できる。
【0023】
以下、音響デバイス100のより詳細な構成について述べる。
【0024】
図2に示す音響デバイス100Aでは、スプリング110を支持するサポート120Bは、一対の固定部122,124間を連結する連結ロッド126を含む。連結ロッド126Aは、複数のスプリング110に挟まれるように各々のスプリング110に沿って延在する。
各々の固定部122,124は、連結ロッド126を介して互いに接続される一対のブロック(127,129)と、各々のブロック(127,129)から突出するように設けられたフック(123A,125A)とを含む。各々のブロック(127,129)には、磁石130が埋め込まれる。ブロック(127,129)の形状は特に限定されず、立方体又は直方体等の多面体であってもよいし、球状、半球状又はこれらに準ずる立体形状であってもよい。フック(123A,125A)は、スプリング110のフック112,114を係止するための係止部123,125として機能する。
【0025】
図2に示す例示的な実施形態では、立方体又は直方体等の多面体のブロック(127,129)の各々に対してアイスクリューが取り付けられる。アイスクリューは、各々のスプリングのフック112,114を係止するためのフック(123A,125A)を有する。フック(123A,125A)を有するアイスクリューは、多面体のブロック(127,129)の表面のうち、連結ロッド126Aの延在方向に対して平行な面であって、かつ、磁石130が設けられていない3つの面にそれぞれ一つずつ設けられる。
多面体のブロック(127,129)に対するアイスクリュー(フック123A,125A)の取付位置は、ブロック(127,129)に埋め込まれた磁石130を含む基準面から第1高さ(H1)に2本の第1スプリング110Aが位置し、基準面から第2高さ(H2)に一本の第2スプリング110Bが位置するように決定される。
【0026】
図3に示す音響デバイス100Bでは、サポート120Bは、一対の固定部122,124および連結部126を構成するフレーム200を含む。
フレーム200は、一対の固定部122,124をそれぞれ構成する中空フレーム122B,124Bを含む。各々の中空フレーム122B,124Bは、スプリング110の延在方向(図3の矢印C)から視て矩形のフレームであり、第1平板部210と、第1平板部210に対向する第2平板部220と、第1平板部210及び第2平板部220を互いに接続する一対の側板部230とを有する。
第1平板部210及び第2平板部220は、何れも、音響デバイス100Bの幅方向に延在する。これに対し、一対の側板部230は、それぞれ、複数の磁石130を含む基準面の法線方向(図3の矢印A又はB)に沿って延在する。
【0027】
幾つかの実施形態では、中空フレーム122B,124Bの第1平板部210には、それぞれ、第1スプリング110Aの端部が固定される。これに対し、中空フレーム122B,124Bの第2平板部220には、それぞれ、第2スプリング110Bの端部が固定される。
中空フレーム122B,124Bの第1平板部210及び第2平板部220は、それぞれ、スプリング110のフック112,114を係止可能な係止部123,125を有していてもよい。図3に示す例示的な実施形態では、第1平板部210に設けられる係止部123、および、第2平板部220に設けられる係止部125は、何れも、スプリング110のフック112,114を引っ掛けて固定するための係止孔123B,125Bである。
【0028】
フレーム200は、連結部126Bを構成する一対のブリッジ板240を含む。一対のブリッジ板240は、音響デバイス100Bの幅方向において互いに対向して配置され、各々のスプリング110に沿って中空フレーム122B,124B間にて延在する。一対のブリッジ板240は、複数のスプリング110を挟んで両側に位置するように、中空フレーム122B,124B間に架設される。換言すれば、複数のスプリング110は、一対のブリッジ板240によって挟まれるように配置される。中空フレーム122B,124Bの側板部230は、ブリッジ板240によって互いに接続される。
図3に示す例示的な実施形態では、各々のブリッジ板240は、中空フレーム122B,124Bの側板部230と連続的に設けられ、複数の磁石130を含む基準面の法線方向(図3の矢印A又はB)とスプリング110の延在方向とを含む平面上に存在する。
【0029】
なお、中空フレーム122B,124Bの側板部230の高さ寸法(基準面の法線方向に沿った側板部230の長さ)は、複数の磁石130を含む基準面から第1高さ(H1)に第1スプリング110Aが位置し、基準面から第2高さ(H2)に第2スプリング110Bが位置するように設定される。即ち、側板部230の高さ寸法は、第1高さ(H1)と第2高さ(H2)の差に対応して設定される。
【0030】
図3に示す例示的な実施形態では、音響デバイス100Bでは、複数の磁石130は、固定部122(中空フレーム122B)に対応する位置にて音響デバイス100Bの幅方向に沿って延在する角型磁石130Aと、固定部124(中空フレーム124B)に対応する位置にて音響デバイス100Bの幅方向に関して離散的に配置された複数の丸型磁石130Bと、を含む。
他の実施形態では、一対の固定部122,124にそれぞれ対応する位置に同種の磁石を使用してもよい。例えば、複数の磁石130は、一対の固定部122,124にそれぞれ対応して設けられる一対の角型磁石130Aを含んでいてもよいし、一対の固定部122,124にそれぞれ対応して設けられる一対の丸型磁石130Bを含んでいてもよい。さらに別の実施形態では、複数の磁石130は、角型磁石130A又は丸型磁石130Bの何れか一方と、角型及び丸型以外の形態の磁石との組み合わせを含んでもよい。
【0031】
幾つかの実施形態では、図3に示すように、サポート120Bは、複数の磁石130を含む基準面の法線方向(図3の矢印A又はB)に関して、複数の磁石130と一対の固定部122,124との間に設けられるスペーサ部140を含む。
これにより、スペーサ部140の高さを適宜設定すれば、複数の磁石130と一対の固定部122,124との間に適切なギャップが確保され、複数の磁石130を含む基準面から離れた高さ位置(H1,H2)でスプリング110を支持することが可能になる。なお、スペーサ部140の高さは、音響デバイス100Bの製造時に予め設定されていてもよいし、スペーサ部140の高さを可変とする調整機構が音響デバイス100Bに組み込まれており、弦楽器1の形状、構造、寸法に応じて、スペーサ部140の高さが変更可能になっていてもよい。
【0032】
図3に示す例示的な実施形態では、フレーム200は、スプリング110の延在方向に関して、一対の中空フレーム122B,124Bの第1平板部210を隔てる開口250を有する。同様に、フレーム200は、スプリング110の延在方向に関して、一対の中空フレーム122B,124Bの第2平板部220を隔てる開口260を有する。
このように、第1平板部210間、および、第2平板部220間は開口250,260によって分離される。よって、フレーム200の剛性は開口250,260を設けない場合に比べて低下し、弦楽器1の演奏時にスプリング110を効果的に振動させることができる。
【0033】
図4Aは、図3の矢印A方向から視た音響デバイスの模式図である。図4Bは、図3の矢印B方向から視た音響デバイスの模式図である。図4Cは、図3の矢印C方向から視た音響デバイスの模式図である。
【0034】
図3及び図4Aに示すように、複数の磁石130を含む基準面の法線方向(図3の矢印A)から音響デバイス100Bを視たとき、音響デバイス100Bの幅方向に並ぶ複数の第1スプリング110Aのコイル部(フック112,114を除く部分)は、開口250の形成領域内に収まるように配置される。
同様に、図3及び図4Bに示すように、複数の磁石130を含む基準面の法線方向(図3の矢印B)から音響デバイス100Bを視たとき、音響デバイス100Bの幅方向に並ぶ複数の第2スプリング110Bのコイル部(フック112,114を除く部分)は、開口260の形成領域内に収まるように配置される。
【0035】
また、図3図4Cに示すように、複数の磁石130を含む基準面の法線方向(図3の矢印A又はB)から視たとき、2本以上の第1スプリング110Aの間に第2スプリング110Bが配置される。
すなわち、音響デバイス100Bでは、複数の磁石130を含む基準面から第1高さ(H1)に位置する第1スプリング110Aと、基準面から第2高さ(H2)に位置する複数本の第2スプリング110Bとが、音響デバイス100Bの幅方向において交互に配置される。
これにより、音響デバイス100Bの幅方向及び高さ方向の寸法増加を抑えながら、音響デバイス100へのスプリング110の搭載数を増やすことができる。
【0036】
なお、図3及び図4Cに示すように、フレーム200の開口250,260は、フレーム200の内部だけでなく、スプリング110の配置スペースをフレーム200の外部にも確保するために有効である。
【0037】
即ち、音響デバイス100Bでは、第1スプリング110Aは、フレーム200の開口250を介して、フレーム200から部分的にはみ出るように配置される。同様に、第2スプリング110Bは、フレーム200の開口260を介して、フレーム200から部分的にはみ出るように配置される。
換言すれば、第1スプリング110Aのコイル部は、第1平板部210を挟んで磁石130とは反対側に位置する部分と、第1平板部210よりも磁石130側に位置する部分とを含む。同様に、第2スプリング110Bのコイル部は、第2平板部220を挟んで磁石130とは反対側に位置する部分と、第2平板部220よりも磁石130側に位置する部分とを含む。
これにより、スプリング110を完全に取り囲むようなフレーム構造を採用する場合に比べて、フレーム200の外形寸法を縮小し、音響デバイス100Bをコンパクト化することができる。
【0038】
以下、上記構成の音響デバイス100(100A,100B)をボディ10の内部に取り付ける場合の音響デバイス100の配置例について説明する。
図5は、一実施形態に係る音響デバイスの配置例を示す平面図である。なお、図5では、音響デバイス100の具体的構成は省略している。
【0039】
図5に示すように、弦楽器1は、ボディ10の補強および弦楽器1の音質調整を目的としてボディ10の表板12又は裏板14(図5では不図示)の内面にブレーシング(力木)と称される凸部13を有する場合がある。
この場合、幾つかの実施形態では、音響デバイス100は、ネック20の延在方向に沿うように凸部13を跨いで配置される。このとき、各々の固定部122,124に対応して設けられる複数の磁石130は、少なくとも1本の凸部13を挟んで反対側に位置する。
【0040】
ここで、ボディ10の表板12又は裏板14の内面への音響デバイス100の取付けに際して、音響デバイス100と凸部13との干渉が問題になり得る。
この点、上記構成の音響デバイス100(100A,100B)では、ブロック127,129又はサポート120によって、スプリング110は、複数の磁石130を含む基準面から離れた高さ位置(H1又はH2)に支持される。このため、凸部13と干渉しにくい磁石130の形状を選択しておけば、比較的容易に音響デバイス100をボディ10の内部に取り付けることができる。
【0041】
図5に示す例示的な実施形態では、音響デバイス100は、表板12の内面のうち、サウンドホール32の外周縁領域に凸部13を避けて位置する角型磁石130Aと、1本以上の凸部13を挟んでサウンドホール32とは反対側の領域に凸部13を避けて位置する丸型磁石130Bと、を含む。
図5に示す例では、一般に、凸部13はサウンドホール32の外周縁領域を避けて設けられるため、この領域では、より大きな磁力を発生させるために好適な角型磁石130Aが採用される。他方、ブリッジ30(図1参照)周辺では弦楽器1の凸部13の配置パターンの個体差が大きいことに鑑みて、音響デバイス100の汎用性を高める目的で、ブリッジ30周辺領域では複数の丸型磁石130Bが採用される。これにより、弦楽器1に対する音響デバイス100の取付安定性と、凸部13のパターンが異なる複数種の弦楽器1への音響デバイス100の適応性とを両立することができる。
【0042】
(1)幾つかの実施形態に係る弦楽器(1)用の音響デバイス(100)は、
1本以上のスプリング(110)と、
各々の前記スプリング(110)の両端を固定するための一対の固定部(122,124)、および、前記一対の固定部(122,124)を互いに連結する連結部(126)を含むサポート(120)と、
前記一対の固定部(122,124)にそれぞれ対応した位置において前記サポート(120)に設けられる複数の磁石(130)と、
を備える。
【0043】
上記(1)の構成によれば、弦楽器(1)のボディ(10)を構成する板(表板12、裏板14又は側板16)を挟んで音響デバイス(100)の磁石(130)とは反対側に取付用磁石(50)を配置することで、音響デバイス(100)の設置位置の自由度が向上し、演奏者の望む場所に音響デバイス(100)を取り付けることが可能となる。また、音響デバイス(100)の弦楽器(1)への取付けのために磁石(130)を用いることで、音響デバイス(100)の取付構造をコンパクト化できる。
よって、音響デバイス(100)の設置に伴う演奏への影響を低減できる。
【0044】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記サポート(120)は、前記複数の磁石(130)を含む基準面から離れた高さ位置(H1,H2)で前記1本以上のスプリング(110)が支持されるように、前記複数の磁石(130)と前記一対の固定部(122,124)との間に設けられるスペーサ部(140)を含む。
【0045】
上記(2)の構成によれば、スペーサ部(140)の高さを適宜設定すれば、複数の磁石(130)と固定部(122,124)との間に適切なギャップが確保され、複数の磁石(130)を含む基準面から離れた高さ位置(H1,H2)でスプリング(110)を支持することが可能になる。
よって、例えばボディ(10)の内部に音響デバイス(100)を取り付ける場合において、ボディ(10)の内面の凸部(13)などの障害物とスプリング(110)との干渉を避けることができ、音響デバイス(100)の取付け作業が容易になる。
【0046】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)の構成において、
前記1本以上のスプリングは、
前記複数の磁石を含む基準面から第1高さに配置される2本以上の第1スプリングと、
前記基準面から前記第1高さとは異なる第2高さにおいて、平面視にて前記2本以上の第1スプリングの間に配置される第2スプリングと、
を含む。
【0047】
上記(3)の構成によれば、音響デバイス(100)の幅方向及び高さ方向の寸法増加を抑えながら、音響デバイス(100)へのスプリング(110)の搭載数を増やすことができる。
【0048】
(4)幾つかの実施形態では、上記(3)の構成において、
各々の前記固定部(122B,124B)は、
各々の前記第1スプリング(110A)の端部が固定される第1平板部(210)と、
前記第1平板部(210)に対向して配置され、前記第2スプリング(110B)の端部が固定される第2平板部(220)と、
前記第1平板部(210)及び前記第2平板部(220)を接続する一対の側板部(230)と、
を含み、
前記連結部(126B)は、各々の前記スプリング(110)に沿って前記一対の固定部(122B,124B)間にて延在し、各々の前記固定部(122B,124B)の前記一対の側板部(230)をそれぞれ接続する一対のブリッジ板(240)である。
【0049】
上記(4)の構成によれば、第1スプリング(110A)及び第2スプリング(110B)をそれぞれ異なる高さ(H1又はH2)に簡素な構成にて支持することができる。よって、同一高さに複数のスプリング(110)を配置する場合に比べて、音響デバイス(110B)の幅方向寸法を低減し、音響デバイス(110B)のコンパクト化が可能になる。
【0050】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)~(3)の構成において、
前記連結部(126)は、複数本の前記スプリング(110)に挟まれるように各々の前記スプリング(110)に沿って延在する連結ロッド(126A)である。
【0051】
上記(4)の構成では、第1平板部(210)及び第2平板部(220)の存在により、音響デバイス(110B)のコンパクト化には限界がある。
この点、上記(5)の構成によれば、スプリング(110)の間に連結ロッド(126A)を配置するようにしたので、音響デバイス(110A)のより一層のコンパクト化が可能である。
【0052】
本明細書において、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
また、本明細書において、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
また、本明細書において、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【符号の説明】
【0053】
1 弦楽器
10 ボディ
12 表板
13 凸部
14 裏板
16 側板
17 ボトム
20 ネック
22 弦
30 ブリッジ
32 サウンドホール
32 開口
40 音響室
50 取付用磁石
100,100A,100B,102,104 音響デバイス
110 スプリング
110A 第1スプリング
110B 第2スプリング
112,114,123A,125A フック
120,120B サポート
122,124 固定部
122B,124B 中空フレーム
123,125 係止部
123B,125B 係止孔
126 連結部
126A 連結ロッド
126B,240 ブリッジ板
127,129 ブロック
130,130A,130B 磁石
140 スペーサ部
200 フレーム
210 第1平板部
220 第2平板部
230 側板部
250,260 開口
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
【手続補正書】
【提出日】2022-08-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1本以上のスプリングと、
各々の前記スプリングの両端を固定するための一対の固定部、および、前記一対の固定部を互いに連結する連結部を含むサポートと、
前記一対の固定部にそれぞれ対応した位置において前記サポートに設けられる複数の磁石と、
を備え、
前記サポートは、前記複数の磁石を含む基準面から離れた高さ位置で前記1本以上のスプリングが支持されるように、前記複数の磁石と前記一対の固定部との間に設けられるスペーサ部を含む
弦楽器用の音響デバイス。
【請求項2】
前記サポートは、前記一対の固定部および前記連結部を構成するフレームを含み、
前記フレームは、前記1以上のスプリングとしての複数のスプリングを挟んで両側に位置する一対のブリッジ板を含む
請求項1に記載の弦楽器用の音響デバイス。
【請求項3】
1本以上のスプリングと、
各々の前記スプリングの両端を固定するための一対の固定部、および、前記一対の固定部を互いに連結する連結部を含むサポートと、
前記一対の固定部にそれぞれ対応した位置において前記サポートに設けられる複数の磁石と、
を備え、
前記1本以上のスプリングは、
前記複数の磁石を含む基準面から第1高さに配置される2本以上の第1スプリングと、
前記基準面から前記第1高さとは異なる第2高さにおいて、平面視にて前記2本以上の第1スプリングの間に配置される第2スプリングと、
を含む弦楽器用の音響デバイス。
【請求項4】
各々の前記固定部は、
各々の前記第1スプリングの端部が固定される第1平板部と、
前記第1平板部に対向して配置され、前記第2スプリングの端部が固定される第2平板部と、
前記第1平板部及び前記第2平板部を接続する一対の側板部と、
を含み、
前記連結部は、各々の前記スプリングに沿って前記一対の固定部間にて延在し、各々の前記固定部の前記一対の側板部をそれぞれ接続する一対のブリッジ板である
請求項3に記載の弦楽器用の音響デバイス。
【請求項5】
前記連結部は、前記1本以上のスプリングとしての複数本のスプリングに挟まれるように各々の前記スプリングに沿って延在する連結ロッドである
請求項1又は3に記載の弦楽器用の音響デバイス。