(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023078497
(43)【公開日】2023-06-07
(54)【発明の名称】軟質部材の取付構造
(51)【国際特許分類】
B43K 25/02 20060101AFI20230531BHJP
B43K 29/02 20060101ALI20230531BHJP
B43K 23/12 20060101ALI20230531BHJP
【FI】
B43K25/02 140
B43K29/02 Z
B43K23/12 140
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021191630
(22)【出願日】2021-11-26
(71)【出願人】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】蟹江 孝司
【テーマコード(参考)】
2C041
【Fターム(参考)】
2C041AA06
2C041AB06
(57)【要約】
【課題】軟質部材を使用する際、筆記具から軟質部材がより外れ難い軟質部材の取付構造を提供する。
【解決手段】本発明は、軸筒またはキャップ等からなる筒状の本体2に接続部材4を介して軟質部材3が取り付けられる筆記具1における軟質部材の取付構造である。本体2の内面には、接続部材4を係止する取付部20が設けられる。接続部材4には、取付部20に嵌合する接続部41と、軟質部材3を係止する係止部46と、本体2の外部に軸方向に延在するクリップ40と、接続部41とクリップ40とを繋ぐクリップ接続部44とが設けられる。接続部41の径方向外方におけるクリップ40の内面には内向接触部48が設けられる。本体2の外面には外向接触部23が設けられる。前記各部品が組み立てられた状態で、内向接触部48と外向接触部23とが接触している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸筒またはキャップ等からなる筒状の本体に接続部材を介して軟質部材が取り付けられる筆記具における軟質部材の取付構造であって、
前記本体の内面には、前記接続部材を係止する取付部が設けられており、
前記接続部材には、前記取付部に嵌合する接続部と、前記軟質部材を係止する係止部と、前記本体の外部に軸方向に延在するクリップと、前記接続部と前記クリップとを繋ぐクリップ基部とが設けられており、
前記接続部の径方向外方における前記クリップの内面には内向接触部が設けられており、前記本体の外面には外向接触部が設けられており、前記各部品が組み立てられた状態で、前記内向接触部と前記外向接触部とが接触していることを特徴とする軟質部材の取付構造。
【請求項2】
前記内向接触部または前記外向接触部が凸部であることを特徴とする請求項1に記載の軟質部材の取付構造。
【請求項3】
前記外向接触部または前記内向接触部が前記凸部と係合する凹部であることを特徴とする請求項2に記載の軟質部材の取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟質部材の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、摩擦動作を行うことで筆跡を熱変色させることができる軟質部材を備えた筆記具に関し、特許文献1には、軸筒の端部及びキャップの端部の何れかに軟質部材が取り付けられる筆記具において、軟質部材を接続部材に装着し、軟質部材が取り付けられた接続部材を、筆記具に設けられた取付部に係止することにより、軟質部材が筆記具から外れ難い軟質部材の取付構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
軟質部材は紙面に擦りつけて使用するため、使用に際してはあらゆる方向から軟質部材に力が加わることが予想される。しかし、特許文献1に開示された軟質部材の取付構造では、
図9に示すように、軟質部材3を使用する際、紙面5に対してクリップ4を上側にして軟質部材3を紙面5に押さえつけると、径方向外方(即ちA方向)から軟質部材3に力が加わり、接続部材4が傾くことで本体2と接続部材4との係合が解除され、接続部材4ごと軟質部材3が筆記具から外れるおそれがある。
【0005】
クリップ40には下方に把持部40aが設けられている。A方向から軟質部材に力が加わった場合、把持部40aの内面が本体2の外面に押さえつけられ、接続部材4の傾きをある程度抑えることができる。しかし、把持部40aの軸方向の位置がクリップ接続部44から離れており、クリップ40自体が径方向外方へ弾性変形するため、結局接続部材4は傾き、接続部材4ごと軟質部材3が筆記具から外れてしまう可能性がある。
【0006】
本発明は、前記従来の問題点を解決するためのものであって、軟質部材を使用する際、筆記具から軟質部材がより外れ難い軟質部材の取付構造を提供することを目的とする。尚、本発明では、筆記具において「上」とは軟質部材が筆記具の外部に露出している方向を指し、「下」とはその反対側を指す。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の第1の発明は、軸筒またはキャップ等からなる筒状の本体に接続部材を介して軟質部材が取り付けられる筆記具における軟質部材の取付構造であって、
前記本体の内面には、前記接続部材を係止する取付部が設けられており、
前記接続部材には、前記取付部に嵌合する接続部と、前記軟質部材を係止する係止部と、前記本体の外部に軸方向に延在するクリップと、前記接続部と前記クリップとを繋ぐクリップ接続部とが設けられており、
前記接続部の径方向外方における前記クリップの内面には内向接触部が設けられており、前記本体の外面には外向接触部が設けられており、前記各部品が組み立てられた状態で、前記内向接触部と前記外向接触部とが接触していることを特徴とする。
【0008】
本願の第1の発明の軟質部材の取付構造は、前記構成により、本体が内向接触部と外向接触部とによって挟持されるため、常に本体から接続部材が外れ難くなることに加え、軟質部材を使用する際、A方向から軟質部材に力が加わった場合でも、内向接触部によって接続部の径方向外方から本体が押さえつけられ、接続部材の傾きが抑えられるため、本体から接続部材が外れ難くなる。さらに、内向接触部が接続部の径方向外方に設けられており、その位置ではクリップの弾性変形量が小さいため、より確実に接続部材の傾きを抑えることができる。
【0009】
本願の第2の発明は、前記第1の発明において、前記内向接触部または前記外向接触部が凸部であることを特徴とする。
【0010】
本願の第2の発明の軟質部材の取付構造は、前記構成により、軟質部材を使用する際、A方向から軟質部材に力が加わった場合でも、凸部によって接続部の径方向外方から本体が押さえつけられ、接続部材の傾きが抑えられるため、本体から接続部材が外れ難くなる。
【0011】
本願の第3の発明は、前記第2の発明において、前記外向接触部または前記内向接触部が前記凸部と係合する凹部であることを特徴とする。
【0012】
本願の第3の発明の軟質部材の取付構造は、前記構成により、軟質部材を使用する際、A方向から軟質部材に力が加わった場合でも、凸部と凹部とが係合しているため、接続部材がより傾き難く、本体から接続部材が外れ難くなる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、軟質部材を使用する際、筆記具から軟質部材がより外れ難い軟質部材の取付構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態を示す筆記具の正面図である。
【
図2】
図1のキャップの縦断面図である。(以降、軸筒及び尾栓の図示は省略する。)
【
図3】
図2の各部品を分解した状態の縦断面図である。
【
図4】
図2の各部品を分解した状態の斜視図である。
【
図6】
図5の各部品を分解した状態の縦断面図である。
【
図8】
図7の各部品を分解した状態の縦断面図である。
【
図9】本発明の従来技術の使用状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
【0016】
・本体
本体2は、合成樹脂(例えばポリプロピレン、ポリカーボネイト)または金属により形成される。本体2は、例えば、
図1に示すような筆記具1の軸筒1a、尾栓1b、軸筒1aのペン先側に設けられた着脱自在のキャップ1c等の円筒状の筆記具用部品が挙げられる。本体2の内面には、取付部20が設けられている。取付部20は、本体2がキャップ1cの場合には、キャップ1cの閉塞端側に形成され、本体2が軸筒1aの場合には、ペン先と反対側の端部(即ち軸筒1aの尾端)に形成される。取付部20には、係止突起21が設けられている。本体2の上端には、上方に開口し且つ上下方向に延びる溝部22が設けられている。本明細書では本体2がキャップ1cである場合を示す。
【0017】
本体2の外面には外向接触部23が設けられている。
図2乃至
図4では、外向接触部23は本体2を構成する円筒の外面そのものである。
【0018】
・軟質部材
軟質部材3は、弾性材料により一体に形成される。弾性材料は、例えば、シリコーン樹脂、SBS樹脂(スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体)、SEBS樹脂(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体)などのゴム弾性を有する合成樹脂等が採用される。軟質部材3により、ペン先により紙面上に形成された熱変色性インキの筆跡を摩擦してその際の発生する摩擦熱で熱変色性インキの筆跡を熱変色させることができる。軟質部材3は接続部材4に装着されていればよく、嵌合、圧入、係合、螺合、接着、または2色成形等によって設けてもよい。
【0019】
本実施形態では、
図2乃至
図4に示すように、軟質部材3に露出部30が設けられている。露出部30の接続部材4への装着側には、取付軸31が突設されている。そして、取付軸31の露出部30と反対側の端部には拡径部32が設けられている。
【0020】
・接続部材
図2乃至
図4に示すように、接続部材4には、筆記具1に設けられた取付部20に嵌合される環状の接続部41が設けられている。接続部41の外周面には取付部20と係合するための被係止突起47が設けられている。接続部41の軟質部材3が取り付けられる側には隔壁43が設けられている。隔壁43の上方には、軟質部材3を係止する係止部46が設けられている。接続部41の径方向外方の一部にはクリップ接続部44が設けられている。さらにクリップ接続部44の径方向外方には軸方向に延在する平板状のクリップ40が設けられている。クリップ40の内面の下方には、把持部40aが設けられている。クリップ40は接続部材4と一体に形成される。クリップ40は合成樹脂等で形成され、クリップ40自体の弾性力により、把持部40aが径方向内方に付勢されている。
【0021】
図4に示すように、本実施形態では連結部45によって接続部41と繋がれているアーム部42が、取付軸31を径方向の両側から挟み、拡径部32を係止することにより、軟質部材3が接続部材4に装着される。
【0022】
図2及び
図3に示すように、接続部41の径方向外方におけるクリップ40の内面には内向接触部48が設けられている。クリップ40はクリップ接続部44に近い軸方向の位置において弾性変形量が小さくなるため、内向接触部48の軸方向の位置はクリップ接続部44に近い方が好ましい。内向接触部48には凸部48aが設けられている。凸部48aの先端形状は、例えば、円弧面、平坦面が挙げられる。
【0023】
筆記具1が組み立てられた状態で、内向接触部48が外向接触部23と接触する。より好ましくは、内向接触部48は被係止突起47の径方向外方における外向接触部23と接触している。前記構成により、内向接触部48と被係止突起47とによって本体2が確実に挟持され、本体2から接続部材4が外れ難くなる。
【0024】
図5及び
図6に示すように、外向接触部23には、筆記具1が組み立てられた状態で、内向接触部48の凸部48aと係合する凹部23bが設けられていてもよい。凹部23bは、本体2の外面を凹ませて設ける他、本体2の外面に複数の突起を設け、その突起の間を凹部23bとしてもよい。より確実に接続部材4の傾きを抑えるため、凹部23bと凸部48aとは、軸方向及び径方向内方にあそびがない状態で係合していることが好ましい。
【0025】
軟質部材3を交換するために接続部材4を本体2から取り外す際は、クリップ40を径方向外方に持ち上げることで凹部23bと凸部48aとの係合が解除され、その後接続部材4を軸方向上方に引き抜くことで、本体2から接続部材4を取り外すことができる。
【0026】
内向接触部48と外向接触部23の凸部と凹部の位置関係は逆転していてもよい。例えば
図7及び
図8に示すように、内向接触部48に凸部48aを設ける代わりに外向接触部23に凸部23aが設けられていてもよい。この場合、内向接触部48はクリップ40を構成する平板の内面そのものである。さらに、内向接触部48には、筆記具1が組み立てられた状態で、外向接触部23の凸部23aと係合する凹部が設けられていてもよい。
【0027】
本実施の形態の軟質部材の取付構造は、軸筒またはキャップ等からなる筒状の本体2に接続部材4を介して軟質部材3が取り付けられる筆記具1における軟質部材の取付構造であって、本体2の内面には、接続部材4を係止する取付部20が設けられており、接続部材4には、取付部20に嵌合する接続部41と、軟質部材3を係止する係止部46と、本体2の外部に軸方向に延在するクリップ40と、接続部41とクリップ40とを繋ぐクリップ接続部44とが設けられており、接続部41の径方向外方におけるクリップ40の内面には内向接触部48が設けられており、本体2の外面には外向接触部23が設けられており、前記各部品が組み立てられた状態で、内向接触部48と外向接触部23とが接触していることにより、本体2が内向接触部48と外向接触部23とによって挟持されるため、常に本体2から接続部材4が外れ難くなることに加え、軟質部材3を使用する際、A方向から軟質部材3に力が加わった場合でも、内向接触部48によって接続部41の径方向外方から本体2が押さえつけられ、接続部材4の傾きが抑えられるため、本体2から接続部材4が外れ難くなる。さらに、内向接触部48が接続部41の径方向外方に設けられており、その位置ではクリップ40の弾性変形量が小さいため、より確実に接続部材4の傾きを抑えることができる。
【0028】
本実施の形態の軟質部材の取付構造は、内向接触部48または外向接触部23が凸部であることにより、軟質部材3を使用する際、A方向から軟質部材3に力が加わった場合でも、凸部によって接続部41の径方向外方から本体2が押さえつけられ、接続部材4の傾きが抑えられるため、本体2から接続部材4が外れ難くなる。
【0029】
本実施の形態の軟質部材の取付構造は、外向接触部48または内向接触部23が前記凸部と係合する凹部であることにより、軟質部材3を使用する際、A方向から軟質部材3に力が加わった場合でも、凸部と凹部とが係合しているため、接続部材4がより傾き難く、本体2から接続部材4が外れ難くなる。
【符号の説明】
【0030】
1 筆記具
1a 軸筒
1b 尾栓
1c キャップ
2 本体
20 取付部
21 係止突起
22 溝部
23 外向接触部
23a 凸部
23b 凹部
3 軟質部材
30 露出部
31 取付軸
31a 切欠部
32 拡径部
4 接続部材
40 クリップ
40a 把持部
41 接続部
42 アーム部
43 隔壁
44 クリップ接続部
45 連結部
46 係止部
47 被係止突起
48 内向接触部
48a 凸部
5 紙面