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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023078500
(43)【公開日】2023-06-07
(54)【発明の名称】殺菌装置
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/20 20060101AFI20230531BHJP
   A61L 9/01 20060101ALI20230531BHJP
   A61L 101/10 20060101ALN20230531BHJP
   A61L 101/22 20060101ALN20230531BHJP
【FI】
A61L2/20
A61L9/01 E
A61L101:10
A61L101:22
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021191633
(22)【出願日】2021-11-26
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(71)【出願人】
【識別番号】521310381
【氏名又は名称】PoC TECH株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平野 明良
(72)【発明者】
【氏名】山黒 顕
(72)【発明者】
【氏名】井上 慎介
(72)【発明者】
【氏名】青澤 さおり
(72)【発明者】
【氏名】小澤 貴裕
【テーマコード(参考)】
4C058
4C180
【Fターム(参考)】
4C058AA23
4C058BB07
4C058DD01
4C058DD03
4C058DD12
4C058DD16
4C058EE26
4C058JJ14
4C058JJ16
4C058JJ22
4C180AA07
4C180CA01
4C180CA10
4C180CB01
4C180EA17X
4C180EA52X
4C180EA53X
4C180HH05
4C180KK04
4C180LL06
(57)【要約】
【課題】対象物の殺菌をより効果的に行う。
【解決手段】殺菌装置は、温度低下により空気中の水分を導電性高分子膜に吸着する吸湿状態と温度上昇により導電性高分子膜に吸着した水分を粒径が50ナノメートル以下の微細水として放出する放湿状態とに変化する微細水発生部と、電圧が印加されることにより第一電極と第二電極との間で放電を発生させてプラスイオンとマイナスイオンとを交互または同時に生成すると共に殺菌物質を生成する放電発生部と、微細水発生部と放電発生部とに空気を流通させるように駆動するファンと、吸湿状態且つプラスイオンとマイナスイオンのうち少なくとも一方を生成させる状態と、放湿状態且つプラスイオンとマイナスイオンのうち少なくとも他方を生成させる状態とに切り替えながら殺菌物質を対象物に向けて放出する殺菌処理を行うように、微細水発生部と放電発生部とファンとを制御する制御部と、を備える。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の殺菌を行う殺菌装置であって、
導電性高分子膜を有し、温度低下により空気中の水分を前記導電性高分子膜に吸着する吸湿状態と温度上昇により前記導電性高分子膜に吸着した水分を粒径が50ナノメートル以下の微細水として放出する放湿状態とに変化する微細水発生部と、
互いに離間した第一電極と第二電極とを有し、電圧が印加されることにより前記第一電極と前記第二電極との間で放電を発生させて、プラスイオンとマイナスイオンとを交互または同時に生成すると共に殺菌物質を生成する放電発生部と、
前記微細水発生部と前記放電発生部とに空気を流通させるように駆動するファンと、
前記吸湿状態且つ前記プラスイオンと前記マイナスイオンのうち少なくとも一方を生成させる状態と、前記放湿状態且つ前記プラスイオンと前記マイナスイオンのうち少なくとも他方を生成させる状態とに切り替えながら前記殺菌物質を前記対象物に向けて放出する殺菌処理を行うように、前記微細水発生部と前記放電発生部と前記ファンとを制御する制御部と、
を備える殺菌装置。
【請求項2】
電気的に接地された対象物の殺菌を行う殺菌装置であって、
導電性高分子膜を有し、温度低下により空気中の水分を前記導電性高分子膜に吸着する吸湿状態と温度上昇により前記導電性高分子膜に吸着した水分を粒径が50ナノメートル以下の微細水として放出する放湿状態とに変化する微細水発生部と、
互いに離間した第一電極と第二電極とを有し、電圧が印加されることにより前記第一電極と前記第二電極との間で放電を発生させて、イオンと殺菌物質とを生成する放電発生部と、
前記微細水発生部と前記放電発生部とに空気を流通させるように駆動するファンと、
前記吸湿状態且つ放電を停止させる状態と、前記放湿状態且つ前記イオンを生成させる状態とに切り替えながら前記殺菌物質を前記対象物に向けて放出する殺菌処理を行うように、前記微細水発生部と前記放電発生部と前記ファンとを制御する制御部と、
を備える殺菌装置。
【請求項3】
請求項2に記載の殺菌装置であって、
前記対象物の表面に導電性高分子膜が形成されている
殺菌装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の殺菌装置であって、
前記殺菌物質を捕集する捕集部を備え、
前記制御部は、前記殺菌処理を行った後、前記放電発生部の放電を停止させた状態で前記捕集部に前記殺菌物質を捕集させる捕集処理を行う
殺菌装置。
【請求項5】
請求項4に記載の殺菌装置であって、
前記対象物の近傍における人体の有無を検知する検知部を備え、
前記制御部は、前記検知部により人体を検知していない状態で前記殺菌処理を行うと共に、前記殺菌処理に続いて前記捕集処理を行うか、前記殺菌処理後に前記検知部により人体を検知した際に前記捕集処理を行う
殺菌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、殺菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、オゾンなどを放出して、対象物の殺菌や脱臭などを行うものが提案されている。例えば特許文献1には、脱臭効果や防カビ効果を有する活性種を含む帯電微粒子水を静電霧化装置からトイレルーム内に放出することで、トイレルームの壁面の脱臭やカビ除去を行うことが記載されている。また、特許文献2には、オゾンガスを泡状にして水に溶解させたオゾン水のミストを静電霧化装置から冷蔵庫内に放出することで、庫内の壁面や食品や包装の表面のカビや細菌、ウイルスを殺菌することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-63643号公報
【特許文献2】特開2009-109175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した静電霧化装置では、帯電微粒子やオゾン水のミストなどをマイナスに帯電した状態で放出する。ここで、対象物がポリエチレンやポリプロピレンなどの樹脂類の場合、一般的にマイナスに帯電しやすいものとなる。このため、マイナスに帯電した殺菌物質を放出すると、対象物に付着しにくく殺菌効果が低減するおそれがある。
【0005】
本開示は、対象物の殺菌をより適切に行うことを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本開示の第1の殺菌装置は、
対象物の殺菌を行う殺菌装置であって、
導電性高分子膜を有し、温度低下により空気中の水分を前記導電性高分子膜に吸着する吸湿状態と温度上昇により前記導電性高分子膜に吸着した水分を粒径が50ナノメートル以下の微細水として放出する放湿状態とに変化する微細水発生部と、
互いに離間した第一電極と第二電極とを有し、電圧が印加されることにより前記第一電極と前記第二電極との間で放電を発生させて、プラスイオンとマイナスイオンとを交互または同時に生成すると共に殺菌物質を生成する放電発生部と、
前記微細水発生部と前記放電発生部とに空気を流通させるように駆動するファンと、
前記吸湿状態且つ前記プラスイオンと前記マイナスイオンのうち少なくとも一方を生成させる状態と、前記放湿状態且つ前記プラスイオンと前記マイナスイオンのうち少なくとも他方を生成させる状態とに切り替えながら前記殺菌物質を前記対象物に向けて放出する殺菌処理を行うように、前記微細水発生部と前記放電発生部と前記ファンとを制御する制御部と、
を備えることを要旨とする。
【0008】
本開示の第1の殺菌装置では、放湿状態且つプラスイオンとマイナスイオンのうち少なくとも他方を生成させる状態では、粒径が50ナノメートル以下の微細水と、プラスイオンとマイナスイオンのうち少なくとも他方とを結合させた帯電微細水(帯電微細水粒子)を対象物に向けて放出することができる。また、吸湿状態且つプラスイオンとマイナスイオンのうち少なくとも一方を生成させる状態では、プラスイオンとマイナスイオンのうち少なくとも一方を対象物に向けて放出することができる。このため、対象物にプラスイオンとマイナスイオンを交互に付着させて電気的に中和することができるから、対象物を除電して帯電するのを防止することができる。これにより、帯電微細水や、放電により生成されるオゾンや過酸化水素などの殺菌物質が対象物に付着しやすくなる。また、帯電微細水は、殺菌物質よりも殺菌効果は低いものの殺菌効果を有する。したがって、対象物の殺菌をより適切に行うことができる。
【0009】
本開示の第2の殺菌装置は、
電気的に接地された対象物の殺菌を行う殺菌装置であって、
導電性高分子膜を有し、温度低下により空気中の水分を前記導電性高分子膜に吸着する吸湿状態と温度上昇により前記導電性高分子膜に吸着した水分を粒径が50ナノメートル以下の微細水として放出する放湿状態とに変化する微細水発生部と、
互いに離間した第一電極と第二電極とを有し、電圧が印加されることにより前記第一電極と前記第二電極との間で放電を発生させて、イオンと殺菌物質とを生成する放電発生部と、
前記微細水発生部と前記放電発生部とに空気を流通させるように駆動するファンと、
前記吸湿状態且つ放電を停止させる状態と、前記放湿状態且つ前記イオンを生成させる状態とに切り替えながら前記殺菌物質を前記対象物に向けて放出する殺菌処理を行うように、前記微細水発生部と前記放電発生部と前記ファンとを制御する制御部と、
を備えることを要旨とする。
【0010】
本開示の第2の殺菌装置では、放湿状態且つイオンを生成させる状態では、粒径が50ナノメートル以下の微細水とイオンとを結合させた帯電微細水(帯電微細水粒子)を対象物に向けて放出する。対象物は、電気的に接地されているため、対象物を除電して帯電を防止することができる。このため、対象物に帯電微細水を容易に付着させて対象物の水分量を向上させることができるから、導電性を高めて対象物の除電効果を上げることができる。これにより、帯電微細水や、放電により生成されるオゾンや過酸化水素などの殺菌物質が対象物に付着しやすくなる。また、帯電微細水は、殺菌物質よりも殺菌効果は低いものの、殺菌効果を有する。したがって、対象物の殺菌をより適切に行うことができる。
【0011】
本開示の第2の殺菌装置において、前記対象物の表面に導電性高分子膜が形成されているものとしてもよい。こうすれば、対象物の導電性をより高めて除電効果をさらに上げることができるから、帯電微細水や殺菌物質の付着を促すことができる。
【0012】
本開示の第1または第2の殺菌装置において、前記殺菌物質を捕集する捕集部を備え、前記制御部は、前記殺菌処理を行った後、前記放電発生部の放電を停止させた状態で前記捕集部に前記殺菌物質を捕集させる捕集処理を行うものとしてもよい。こうすれば、放出した殺菌物質を適切に除去することができるから、殺菌物質が人体に影響を与えるのを抑制することができる。
【0013】
本開示の第1または第2の殺菌装置において、前記対象物の近傍における人体の有無を検知する検知部を備え、前記制御部は、前記検知部により人体を検知していない状態で前記殺菌処理を行うと共に、前記殺菌処理に続いて前記捕集処理を行うか、前記殺菌処理後に前記検知部により人体を検知した際に前記捕集処理を行うものとしてもよい。こうすれば、殺菌物質が人体に影響を与えるのをより確実に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態の殺菌装置10の構成の概略を示す構成図である。
図2】微細水発生カートリッジ30の構成の概略を示す構成図である。
図3】殺菌装置10の作動モードの一例を示す説明図である。
図4】殺菌装置制御処理の一例を示すフローチャートである。
図5】変形例の殺菌装置制御処理を示すフローチャートである。
図6】変形例の殺菌装置10Bの構成の概略を示す構成図である。
図7】殺菌装置10Bの作動モードの一例を示す説明図である。
図8】殺菌装置の第1適用例の説明図である。
図9】第1適用例の殺菌装置制御処理を示すフローチャートである。
図10】殺菌装置の第2適用例を示す説明図である。
図11】殺菌装置の第2適用例を示す説明図である。
図12】殺菌装置の第2適用例を示す説明図である。
図13】殺菌装置の第2適用例を示す説明図である。
図14】第2適用例の殺菌装置制御処理を示すフローチャートである。
図15】殺菌装置の第3適用例を示す説明図である。
図16】第3適用例における構成の概略を示す構成図である。
図17】殺菌装置の第4適用例を示す説明図である。
図18】第2実施形態の殺菌装置10Cの構成の概略を示す構成図である。
図19】殺菌装置10Cの作動モードの一例を示す説明図である。
図20】変形例の殺菌装置10Dの構成の概略を示す構成図である。
図21】殺菌装置10Dの作動モードの一例を示す説明図である。
図22】殺菌装置の第5適用例を示す説明図である。
図23】殺菌装置の第5適用例を示す説明図である。
図24】殺菌装置の第6適用例を示す説明図である。
図25】殺菌装置の第6適用例を示す説明図である。
図26】殺菌装置100Fの作動モードの一例を示す説明図である。
図27】殺菌装置100Fの変形例の作動モードを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第1実施形態]
次に、本開示の第1実施形態を図面を用いて説明する。図1は、第1実施形態の殺菌装置10の構成の概略を示す構成図であり、図2は、微細水発生カートリッジ30の構成の概略を示す構成図である。殺菌装置10は、例えば直方体状や円筒状の装置本体12と、殺菌物質を放出する殺菌物質放出部20と、装置全体を制御する制御部60とを備え、対象物Sの殺菌を行うように配置されている。なお、対象物Sは、例えば導電性を有する部材であり、電気的に接地(アース)されている。
【0016】
殺菌物質放出部20は、図1に示すように、装置本体12の壁部を貫通するように取り付けられたダクト21と、ダクト21の空気通路内に配置された微細水発生カートリッジ30とファン40と放電素子50と、を備える。ダクト21は、両端が開口した筒状部材であり、図1の上方に開口した吸入口21aと下方に開口した排出口21bとを有する。ダクト21には、吸入口21a側からファン40、微細水発生カートリッジ30、放電素子50の順に配置されている。なお、微細水発生カートリッジ30と放電素子50の並び順が逆であってもよい。
【0017】
微細水発生カートリッジ30は、図2に示すように、ダクト21内に配置可能な外径の円筒状のケース32と、ケース32内に設けられた微細水発生素子34とを備える。微細水発生素子34は、基材34aと、基材34aの表面に形成された導電性高分子膜34bとを備える。
【0018】
基材34aは、ステンレス系金属や銅系金属などの金属材料、炭素材料、導電性セラミックス材料などの導電性を有する材料で形成されている。本実施形態では、アルミニウムが添加されたステンレス鋼の金属箔を用いる。なお、微細水発生素子34は、空気を流通可能であって基材34a(導電性高分子膜34b)の表面積ができるだけ大きくなるように、波板状やハニカム状、渦巻き状などに形成されている。基材34aには、電源とスイッチとを含む通電回路35が接続されている。通電回路35は、制御部60によりスイッチがオンされると、基材34aへ通電する通電状態となり、制御部60によりスイッチがオフされると、基材34aへの通電を遮断する非通電状態となる。
【0019】
導電性高分子膜34bは、チオフェン系の導電性高分子などの導電性を有する高分子化合物で形成されている。本実施形態では、チオフェン系の導電性高分子のうち、PEDOT/PSS(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸) )により形成されている。PEDOT/PSSは、水素結合可能な酸性官能基であるスルホン酸基を持つPSSの中にPEDOTが分散している構造をもつ。また、PEDOTとPSSの境界部分に2ナノメートル(nm)程度のナノメートルサイズの流路であるナノチャンネルを形成する。このナノチャンネル内には、スルホン酸基が多く存在するため、導電性高分子膜34bの表面に存在する水分は、表面の水分量が多く内部の水分量が少ない場合に、表面と内部の濃度差によってナノチャンネル内のスルホン酸基を伝って内部に移動する。これにより、導電性高分子膜34bが水分を吸着する。また、内部に水分が吸着された状態で、表面の水分量が少なく内部の水分量が多い場合に、水分は表面と内部の濃度差によってナノチャンネル内のスルホン酸基を伝って表面に移動する。これにより、導電性高分子膜34bから水分が微細水として放出される。また、導電性高分子膜34bの温度が上昇した状態では、濃度差のみで移動する場合に比して水分(微細水)の速やかな放出が促され、導電性高分子膜34bの温度が低下した状態では、濃度差のみで移動する場合に比して水分の速やかな吸着が促される。このように、微細水発生カートリッジ30(微細水発生素子34)は、温度低下により導電性高分子膜34bに空気中の水分を吸着する吸湿状態に変化し、吸着した水分を温度上昇により導電性高分子膜34bから放出する放湿状態に変化する。なお、導電性高分子膜34bの厚みは、必要な微細水の吸着量(放出量)に応じて適宜定めることができる。例えば、導電性高分子膜34bの厚みが1~30マイクロメートルなどとなるように形成される場合、数秒から数十秒程度の時間で、微細水を放出するのに十分な水分を吸着することができるものとなる。
【0020】
また、微細水発生カートリッジ30は、微細水発生素子34の導電性高分子膜34bから、水粒子の粒径が50ナノメートル以下、例えば粒径が1から2ナノメートル程度の無帯電の微細水(無帯電微細水粒子)を放出する。このような粒径となる理由は、ナノチャンネルのサイズが2ナノメートルまたはそれ以下のサイズであるため、導電性高分子膜の温度上昇によるナノチャンネル内の水の運動性向上、圧力上昇により、ナノチャンネルから水分が飛び出す現象のためと考えられる。また、飛び出した後に水粒子同士が凝集しても、その粒径は50ナノメートル以下の範囲に分布するものとなっている。このような微細水発生カートリッジ30(導電性高分子膜34b)の微細水発生の詳細な説明は、本願出願人のWO2020/054100および特開2019-018195号公報などに記載されているため、これ以上の詳細な説明は省略する。
【0021】
ファン40は、所定回転方向の回転駆動により、吸入口21aからダクト21内に吸入した空気を、微細水発生カートリッジ30と放電素子50とを順に通して、排出口21bから排出することができる。ファン40は、図示しないモータにより回転駆動し、制御部60によりPWM(Pulse Width Modulation)制御または電圧制御などによって制御される。なお、ファン40は、プロペラファンでもよいし、シロッコファンなどでもよい。
【0022】
放電素子50は、第1電極(放電電極)52と、第1電極52に対向して配置される第2電極(対向電極)54とを備え、電源とスイッチとを含む通電回路53が接続されている。放電素子50は、制御部60により通電回路53のスイッチがオンされると、第1電極52と第2電極54との間に放電電圧が印加されて両電極間の放電空間で放電を発生させてプラズマ領域を形成する。また、放電素子50は、制御部60により通電回路53のスイッチがオフされると、放電の発生を停止させる。
【0023】
この放電素子50は、ダクト21内で微細水発生カートリッジ30の下流側に配置されているため、ダクト21内を流通する空気と共に、微細水発生カートリッジ30で発生した無帯電の微細水(無帯電微細水粒子)が放電空間内を流通する。このため、放電素子50で放電を発生させている場合、放電空間内(プラズマ領域内)を空気や微細水が流通する際に空気を原料としたイオン(空気イオン)が発生し、微細水の一部がイオンが持つ電荷と結合することで帯電した微細水(帯電微細水粒子)となる。また、放電空間内を空気や微細水が流通する際に、主に酸素からオゾンが生成され、主に水と酸素から過酸化水素が生成される。即ち、放電素子50の放電により、主要な殺菌物質としてのオゾンと過酸化水素とが生成される。したがって、殺菌物質放出部20は、殺菌物質としてのオゾンと過酸化水素、イオンが持つ電荷と結合した帯電微細水やイオンが持つ電荷と結合しなかった無帯電微細水および空気イオンを排出口21bから放出する。また、本実施形態の放電素子50は、通電回路53により負電圧が印加され電荷が負の空気イオンを発生させる。なお、通電回路53から放電素子50に印加する電圧を変化させることで、放電素子50の放電強度を変化させてイオン濃度やオゾン濃度(殺菌物質の濃度)を調整することが可能である。
【0024】
制御部60は、CPUを中心としたマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他にROMやRAM,入出力ポートを備える。制御部60には、殺菌装置10(殺菌物質放出部20)の運転を開始するためのスタートスイッチ62からの操作信号や、ファン40の風量を調節するための風量調節スイッチ64からの操作信号、対象物Sの近傍で人体を検知する人感センサ66からの検知信号などが入力ポートを介して入力されている。また、制御部60からは、ファン40を回転駆動するモータへの駆動信号や通電回路35,53のスイッチへの駆動信号などが出力ポートを介して出力されている。
【0025】
次に、こうして構成された殺菌装置10の作動について説明する。図3は、殺菌装置10の作動モードの一例を示す説明図である。作動モードには、例えば、対象物Sに向けて殺菌物質を放出可能な殺菌モードと、放出した殺菌物質を除去する除去モード(捕集処理,回収処理)とを含む。殺菌モードでは、制御部60は、放湿制御と吸湿制御とを繰り返し行う。放湿制御(殺菌物質生成制御)では、制御部60は、ファン40をオンとし、微細水発生カートリッジ30をオンとし、放電素子50をオンとして第1電極52に負電圧を印加する。これにより、微細水発生カートリッジ30の温度が上昇し、導電性高分子膜34bに吸着した水分を粒径が50ナノメートル以下の微細水として放出し、空気と共に放電空間内(プラズマ領域内)を通過し殺菌物質および帯電微細水等を発生させる。また、吸湿制御では、制御部60は、ファン40をオンとし、微細水発生カートリッジ30をオフとし、放電素子50をオフとする。これにより、微細水発生カートリッジ30の温度が低下し、空気中の水分を前記導電性高分子膜34bに吸着する吸湿状態となる。なお、吸湿制御や放湿制御の時間は、微細水発生カートリッジ30の吸湿能力(放湿能力)、対象物Sのサイズや形状などに応じて適宜設定すればよい。特に限定するものではないが、例えば吸湿時間は、放湿時間の2倍程度の時間に定められており、放湿時間を30秒や1分とし吸湿時間を1分や2分などとすることができる。
【0026】
放湿制御と吸湿制御のいずれも、ダクト21の吸入口21aを介して吸入した空気が排出口21bから放出される(図1の矢印参照)。吸湿制御では、微細水発生カートリッジ30をオフとするため、基材34aへの通電を遮断する非通電状態となり、導電性高分子膜34bの温度が低下して水分の吸着が促される。一方、放湿制御では、微細水発生カートリッジ30をオンとするため、基材34aへ通電する通電状態となり、導電性高分子膜34bの温度が上昇して微細水の放出が促される。また、放電素子50がオンとされるため、上述したように、殺菌物質としてのオゾンと過酸化水素、帯電微細水、無帯電微細水が排出口21bから放出される。上述したように、本実施形態では負の空気イオンを発生させるから、マイナスに帯電した帯電微細水が放出される。対象物Sは、接地されているから、静電気の帯電や帯電微細水の付着による帯電を防止して除電することができる。また、帯電微細水が対象物Sの表面に付着すると、表面の水分量を向上させるから、表面の導電性を高めて対象物Sの除電効果を上げることができる。これにより、帯電微細水や、オゾンや過酸化水素などの殺菌物質が対象物に付着しやすくなる。また、本発明者は、帯電微細水に殺菌効果があることを確認している。帯電微細水の殺菌効果は、オゾンや過酸化水素などの殺菌物質に比べて低いが、人体への影響もほとんどない。したがって、対象物Sの表面に付着する帯電微細水は、上記の水分量の向上に加え、殺菌にも寄与することが期待できる。なお、例えば殺菌装置10を2台配置して、吸湿制御と放湿制御(殺菌物質生成制御)とを、互いに異なるタイミングで行うようにしてもよい。こうすれば、2台の殺菌装置10から、殺菌物質や微細水を連続的に放出することができる。勿論、殺菌装置10を2台以上の複数台配置してもよい。
【0027】
また、除去モードでは、制御部60は、ファン40をオンとし、微細水発生カートリッジ30をオフとし、放電素子50をオフとする。これにより、対象物Sに向けて放出された主要な殺菌物質としてのオゾンと過酸化水素を、吸入口21aから吸入し微細水発生カートリッジ30で捕集して除去することができる。ここで、本発明者の実験によると、微細水発生カートリッジ30は、オゾンなどを除去するための除去フィルタよりも効果は低いものの、実用可能なレベルの除去効果を実現可能であることがわかった。
【0028】
なお、オゾンや過酸化水素の除去フィルタとして、微細水発生カートリッジ30とは別に、例えば二酸化マンガンや酸化ニッケル等の触媒を有するフィルタや活性炭を有するフィルタなどの専用の除去フィルタ(殺菌物質除去フィルタ)が殺菌装置10に取り付けられていてもよい。また、専用の除去フィルタを通らずに吸入口21aが空気を吸入する第1状態と、専用の除去フィルタを通って吸入口21aが空気を吸入する第2状態とが、ダンパなどにより切替可能に構成されてもよい。そのように構成した場合、殺菌モードでは第1状態とし、除去モードでは第2状態とするように、制御部60がダンパを制御すればよい。
【0029】
次に、このような作動モードを有する殺菌装置10の作動制御について説明する。図4は、殺菌装置制御処理の一例を示すフローチャートである。この処理では、制御部60は、まず人感センサ66からの検知信号に基づいて対象物Sの近傍で人体を検知したか否かを判定する(S100)。制御部60は、人体を検知したと判定すると、人感センサ66からの検知信号に基づいて人体を非検知となったか否かを判定する(S110)。制御部60は、人体を非検知となった、即ち人体が対象物Sの近傍からいなくなったと判定すると、殺菌装置10を殺菌モードで運転させる(S120)。上述したように、殺菌モードでは、放湿制御と吸湿制御とが繰り返し行われる。これにより、対象物Sの近傍に人がいない状態で殺菌物質や帯電微細水などを放出して、対象物Sを適切に殺菌することができる。
【0030】
続いて、制御部60は、殺菌モードで運転を開始してから所定の殺菌時間が経過したか否か(S130)、人感センサ66からの検知信号に基づいて人体を検知したか否か(S140)、をそれぞれ判定する。制御部60は、所定の殺菌時間が経過したと判定するか、人体を検知したと判定すると、殺菌モードを終了し殺菌装置10を除去モードで運転させる(S150)。これにより、殺菌モード(殺菌時間)が終了するか、人が近付いたりすると、除去モード(捕集処理)を開始して、放出した殺菌物質を適切に除去(捕集,回収)することができる。そして、制御部60は、除去モードで運転を開始してから所定の除去時間が経過したか否かを判定し(S160)、除去時間が経過したと判定すると、殺菌装置10の運転を停止して(S170)、S100に戻る。
【0031】
以上説明した第1実施形態の殺菌装置10では、粒径が50ナノメートル以下の微細水(無帯電微細水)やその微細水を負の空気イオンで帯電させた帯電微細水、オゾンや過酸化水素などの殺菌物質を、接地された対象物Sに向けて放出する。対象物Sは、接地されているため除電して帯電を防止することができるから、帯電微細水を容易に付着させて対象物Sの表面の水分量を向上させることができ、導電性を高めて除電効果を上げることができる。このため、帯電微細水や殺菌物質を対象物Sに付着しやすくして、対象物Sの殺菌をより適切に行うことができる。
【0032】
第1実施形態の殺菌装置制御処理は、次のようにしてもよい。図5は、変形例の殺菌装置制御処理を示すフローチャートである。なお、変形例では実施形態と同じ処理には同じステップ番号を付す。この殺菌装置制御処理では、制御部60は、S100で人体を検知したと判定すると、殺菌装置10を除去モードで運転させて(S102)、所定の除去時間が経過したか否か(S104)、人感センサ66からの検知信号に基づいて人体を非検知となったか否か(S106)、をそれぞれ判定する。制御部60は、除去時間が経過したと判定すると、殺菌装置10の運転を停止させて(S108)、S110で人体を非検知となったか否かを判定する。そして、制御部60は、S106またはS110で人体を非検知となったと判定すると、殺菌装置10を殺菌モードで運転させ(S120)、所定の殺菌時間が経過したか否か(S130)、人体を検知したか否か(S140)、をそれぞれ判定する。
【0033】
制御部60は、所定の殺菌時間が経過したと判定するか、人体を検知したと判定すると、殺菌装置10の運転を停止して(S170)、S100に戻る。なお、S140で人体を検知したためにS170で運転を停止してS100に戻ると、S100で人体を検知したと判定するからS102の除去モードに移行する。このように、変形例では、人体を検知すると、殺菌装置10を除去モードで運転して殺菌物質を除去し、人体を非検知となったり除去モードの除去時間が経過すると、殺菌装置10を殺菌モードで運転するのである。このようにしても、対象物Sの殺菌と殺菌物質の除去とを適切に行うことができる。
【0034】
第1実施形態では、対象物Sが導電性を有する部材としたが、これに限られない。例えば、対象物Sの表面に、導電性向上剤や帯電防止剤、界面活性剤などを塗布して、導電性を付加した部材であってもよい。また、対象物Sの表面に、PEDOT/PSSを塗布するなど、導電性高分子膜が形成されていてもよい。こうすれば、導電性の付加だけでなく、殺菌に用いられた殺菌物質の除去作用を付加することができる。
【0035】
第1実施形態では、放電素子50が負電圧の印加により負の空気イオンを発生させて、帯電微細水をマイナスに帯電させたが、これに限られず、放電素子50が正電圧の印加により正の空気イオンを発生させて、帯電微細水をプラスに帯電させてもよい。
【0036】
第1実施形態では、対象物Sが接地されていたが、これに限られず、接地されていなくてもよい。図6は、変形例の殺菌装置10Bの構成の概略を示す構成図である。この変形例では、図1と異なり対象物Sが接地されていない。また、変形例の殺菌装置10Bは、殺菌装置10と同様な構成であるが、通電回路53Bによる放電素子50への電圧の印加が第1実施形態と異なる。通電回路53Bは、放電素子50の第1電極52に正電圧と負電圧とを交互に印加可能である。なお、このとき、第2電極54はアースに接続されている。第1電極52に正電圧が印加される場合、電荷が正の空気イオン(プラスイオン)が発生し、第1電極52に負電圧が印加される場合、電荷が負の空気イオン(マイナスイオン)および帯電微細水が発生する。
【0037】
また、図7は、殺菌装置10Bの作動モードの一例を示す説明図である。殺菌装置10Bは、殺菌装置10と同様に殺菌モードと除去モードとを有し、殺菌モードの放湿制御と、除去モードは、殺菌装置10の図3と同じであるため説明は省略する。一方、殺菌モードの吸湿制御では、制御部60は、ファン40をオンとし、微細水発生カートリッジ30をオフとし、放電素子50をオンとして第1電極52に正電圧を印加する。このように、変形例の殺菌装置10Bは、放湿制御で放電素子50の第1電極52に負電圧を印加して負の空気イオンおよび帯電微細水、殺菌物質等を発生させ、吸湿制御で放電素子50の第1電極52に正電圧を印加して正の空気イオンを発生させる。このため、対象物Sが絶縁物であっても、対象物Sに正の空気イオンと負の空気イオン等を交互に付着させて電気的に中和することができるから、対象物Sを除電して帯電するのを防止することができる。このため、マイナスに帯電した帯電微細水や、殺菌物質を対象物Sに付着しやすくすることができる。したがって、実施形態と同様に対象物Sの殺菌をより適切に行うことができる。なお、吸湿制御と放湿制御の各時間を同等の時間とするなどにより正の空気イオンと負の空気イオンを同量程度発生させることで、対象物Sの除電を促すことができる。また、殺菌装置10Bを2台配置し、吸湿制御と放湿制御とを互いに異なるタイミングで行うことで正の空気イオンと負の空気イオンを同時に放出させるようにしてもよい。
【0038】
ここで、第1実施形態の殺菌装置(10,10B)を具体的な対象物Sに適用した適用例を説明する。図8は、殺菌装置の第1適用例の説明図であり、対象物SとしてドアDのドアノブK1を例示する。ドアノブK1は、例えばステンレス鋼などの金属材料で形成され、ドアDに取り付けられた金属プレート68を介して接地されている。
【0039】
また、第1適用例の殺菌装置100は、第1実施形態の殺菌装置10がドアノブK1に対向するようにドアDに設けられたものである。殺菌装置100の詳細な構成の図示は省略するが、殺菌装置10と同様に、装置本体12と殺菌物質放出部20(ファン40、微細水発生カートリッジ30、放電素子50)と制御部60と人感センサ66と開閉検知センサ67とを備える。人感センサ66は、ドアノブK1(ドアD)の近傍の人体を検知するものである。開閉検知センサ67は、人がドアノブK1を把持してドアDの開閉操作を行うこと(ドアノブK1への手の接触)を検知するものである。また、殺菌装置100は、殺菌物質放出部20の排出口21bとして、ドアノブK1に対向するように複数(図8では5個)の排出口21bが形成されている。殺菌装置100は、各排出口21bからドアノブK1に向けて、無帯電微細水や帯電微細水、殺菌物質を放出する。ドアノブK1は、接地されているため帯電を防止することができるから、帯電微細水を容易に付着させることで導電性を高めて除電効果を上げることができる。このため、帯電微細水や殺菌物質をドアノブK1に付着しやすくして、ドアノブK1の殺菌を適切に行うことができる。なお、殺菌装置100が、複数(例えば5個)の殺菌物質放出部20を備え、それぞれの排出口21bがドアノブK1に対向するように開口した構成としてもよい。
【0040】
次に、第1適用例の制御について説明する。図9は、第1適用例の殺菌装置制御処理を示すフローチャートである。この処理では、制御部60は、まず人感センサ66からの検知信号に基づいてドアノブK1の近傍で人体を検知したか否か、即ちドアノブK1に人体が近付いたか否かを判定する(S200)。制御部60は、人体が近付いたと判定すると、開閉検知センサ67からの検知信号に基づいてドアノブK1の開閉操作(ドアノブK1への接触)を検知したか否かを判定する(S210)。制御部60は、開閉操作を検知していないと判定すると、S200に戻る。一方、制御部60は、開閉操作を検知したと判定すると、人感センサ66からの検知信号に基づいて人体を非検知となったか否かを判定し(S220)、人体を検知しなくなるまで(非検知と判定するまで)、S220の処理を繰り返す。制御部60は、S220で人体を非検知となった、即ちドアDの近傍から人がいなくなったと判定すると、殺菌装置100を殺菌モードで運転させる(S230)。
【0041】
続いて、制御部60は、殺菌モードで運転を開始してから所定の殺菌時間が経過したか否か(S240)、人感センサ66からの検知信号に基づいて人体を検知したか否か(S250)、をそれぞれ判定する。制御部60は、所定の殺菌時間が経過したと判定すると、殺菌モードを終了し殺菌装置100を除去モード(第1除去モード、通常除去モード)で運転させる(S260)。そして、制御部60は、開閉検知センサ67からの検知信号に基づいてドアノブK1の開閉操作を検知したか否か(S270)、除去モードで運転を開始してから所定の除去時間(第1除去時間、通常除去時間)が経過したか否か(S280)、をそれぞれ判定する。制御部60は、S270で開閉操作を検知することなくS280で除去時間が経過したと判定すると、殺菌装置100の運転を停止して(S290)、S200に戻る。また、制御部60は、除去モード中にS270でドアノブK1の開閉操作を検知したと判定すると、殺菌装置100の運転を停止して(S300)、S220に戻る。即ち、除去モード中にドアノブK1の開閉操作がされると、除去モードを途中で終了してS220に戻る。この場合、制御部60は、S220で人体を非検知となったと判定すると、S230で殺菌装置100を殺菌モードで運転させる。即ち、除去モードで運転中に開閉操作を検知して運転を停止した後、人体を非検知となれば再度殺菌モードを行う。
【0042】
一方、制御部60は、S250で人体を検知したと判定すると、殺菌モードを終了し殺菌装置100を急速除去モード(第2除去モード、特別除去モード)で運転させる(S310)。なお、急速除去モードは、S260の除去モードよりも例えばファン40を高速で回転させるなどにより、殺菌物質の速やかな除去が可能なモードである。そして、制御部60は、開閉検知センサ67からの検知信号に基づいてドアノブK1の開閉操作を検知したか否か(S320)、急速除去モードで運転を開始してから急速除去モード用の除去時間(第2除去時間、特別除去時間)が経過したか否か(S330)、をそれぞれ判定する。なお、急速除去モード用の除去時間は、S280の所定の除去時間よりも短い時間である。この除去時間は、急速除去モードを開始する前の殺菌モードの運転時間に応じて定められた時間でもよいし、予め定められた時間でもよい。制御部60は、S320で開閉操作を検知したと判定するか、S330で急速除去モード用の除去時間が経過したと判定すると、殺菌装置100の運転を停止して(S300)、S220に戻る。この場合、制御部60は、S220で人体を非検知となったと判定すると、S230で殺菌装置100を殺菌モードで運転させる。即ち、殺菌モードで運転中に人体を検知して急速除去モードで運転した後、人体を非検知となれば殺菌モードを再開させる。
【0043】
このように、第1適用例では、ドアノブK1の開閉操作がされた後に近くに人がいない状態でドアノブK1を適切に殺菌することができ、殺菌後に殺菌物質を適切に除去にすることができる。また、殺菌運転(殺菌モード)中に人体を検知すると、急速除去運転(急速除去モード)に移行することで、殺菌物質を速やかに除去して人体への影響を抑制することができる。さらに、急速除去運転後に人体を非検知となれば殺菌運転を再開させるから、殺菌運転の途中で急速除去運転に移行した場合でも、殺菌が不十分となるのを防止することができる。
【0044】
次に、第2適用例を説明する。図10図13は、殺菌装置の第2適用例を示す説明図である。第2適用例では、第1適用例と同様に、対象物Sが電気的に接地されたドアノブK2であり、殺菌装置100Bにより殺菌される。また、殺菌装置100Bは、殺菌装置100と同様に、ドアDに設けられた装置本体12と殺菌物質放出部20と制御部60とを備える他、ドアノブK2を覆うカバーユニット70や人感センサ66、開閉検知センサ67を備える。
【0045】
カバーユニット70は、カバー72と、作動機構74とを備え、カバー72の前面に人感センサ66が設けられている。作動機構74は、シリンダやモータ等のアクチュエータの駆動により、カバー72が取り付けられたシャフト74aを伸縮させたり回転させたりする。これにより、作動機構74は、カバー72を装置本体12に対して接近または離間する方向にスライドさせたり、水平方向に延在するドアノブK2に対して90度回転させたりする。このため、カバーユニット70は、カバー72でドアノブK2を覆う状態(図10参照)と、装置本体12からカバー72を離間させた状態(図11参照)と、離間させたカバー72を90度回転させてドアノブK2を露出させた状態(図12参照)とに変化する。図12の状態では、人がドアノブK2を把持してドアDの開閉が可能となる。
【0046】
第2適用例の殺菌装置100Bは、カバー72でドアノブK2を覆った状態で、各排出口21bからドアノブK2に向けて、無帯電微細水や帯電微細水、殺菌物質を放出する(図13参照)。このため、放出した無帯電微細水や帯電微細水、殺菌物質がカバー72内に留まるため、ドアノブK2を効率よく除電して適切に殺菌することができる。また、放出した殺菌物質等は、排出口21bの近傍に設けられた吸気孔21cから吸入されて、装置本体12内に戻る。なお、吸気孔21c内には、殺菌物質除去フィルタが設けられている。このため、殺菌物質の除去も効率よく行うことができる。
【0047】
次に、第2適用例の制御について説明する。図14は、第2適用例の殺菌装置制御処理を示すフローチャートである。なお、図14では図9と同じ処理には同じステップ番号を付す。この処理では、制御部60は、まずドアノブK2に人体が近付いたか否かを判定し(S200)、人体が近付いたと判定すると、作動機構74を制御してカバー72を開き(S205,図11図12参照)、ドアノブK2の開閉操作を検知したか否かを判定する(S210)。制御部60は、開閉操作を検知していないと判定すると、人感センサ66からの検知信号に基づいて所定時間に亘って人体を非検知であるか否かを判定する(S212)。所定時間は、例えば30秒などの数十秒程度の時間に定められている。制御部60は、所定時間に亘って人体を非検知でないと判定するとS210に戻り、所定時間に亘って人体を非検知であると判定すると、作動機構74を制御してカバー72を閉じてから(S214)、S200に戻る。
【0048】
また、制御部60は、S210で開閉操作を検知したと判定すると、人体を非検知となったか否かを判定し(S220)、非検知となったと判定すると、カバー72を閉じてから(S225)、殺菌装置100を殺菌モードで運転させる(S230,図13参照)。続いて、制御部60は、所定の殺菌時間が経過したか否か(S240)、人体を検知したか否か(S250)、をそれぞれ判定する。制御部60は、S240で殺菌時間が経過したと判定すると、殺菌モードを終了し殺菌装置100を除去モードで運転させる(S260)。そして、制御部60は、所定の除去時間が経過したと判定すると(S280)、殺菌装置100の運転を停止して(S290)、S200に戻る。なお、カバー72で覆われるドアノブK2では、殺菌物質の除去を効率よく行うことができるから、ドアノブK1の場合よりも所定の除去時間などを短くしてもよい。
【0049】
一方、制御部60は、S250で人体を検知したと判定すると、殺菌モードを終了し殺菌装置100を急速除去モードで運転させ(S310)、急速除去モード用の除去時間が経過したと判定すると(S330)、殺菌装置100の運転を停止してカバー72を開く(S300b)。続いて、制御部60は、ドアノブK2の開閉操作を検知したか否かを判定し(S320)、開閉操作を検知したと判定すると、人体を非検知であるか否かを判定し(S330)、開閉操作を検知していないと判定すると、所定時間(例えば30秒など)に亘り人体を非検知であるか否かを判定する(S340)。制御部60は、S320,S330で開閉操作を検知して人体を非検知であると判定するか、S320,S340で開閉操作を検知することなく所定時間に亘り人体を非検知であると判定すると、カバー72を閉じてから(S350)、S230に戻り殺菌装置100を殺菌モードで運転させる。即ち、殺菌モードで運転中に人体を検知し急速除去モードで運転してカバー72を開いた後、人体を非検知となればカバー72を閉じて殺菌モードを再開させる。
【0050】
このように、第2適用例では、ドアノブK2の開閉操作がされて近くに人がいなくなると、カバー72を閉じた状態で殺菌運転(殺菌モード)と除去運転(除去モード)とを行うから、ドアノブK2を効率よく殺菌すると共に殺菌後に殺菌物質を効率よく除去することができる。また、殺菌運転中に人体を検知すると、急速除去運転(急速除去モード)に移行して殺菌物質を速やかに除去してからカバー72を開いて開閉操作を可能とするから、人体への影響を抑制しつつ開閉操作までの待ち時間が長くなるのを防止することができる。さらに、急速除去運転後に人体を非検知となればカバー72を閉じた状態で殺菌運転を再開させるから、殺菌運転の途中で急速除去運転に移行した場合でも、殺菌が不十分となるのを防止することができる。
【0051】
続いて、第3適用例を説明する。図15は、殺菌装置の第3適用例を示す説明図である。第3適用例では、対象物Sとして、例えば飲食店や会議室、待合室、受付窓口などで用いられるテーブルT1を殺菌する。第3適用例の殺菌装置100Cは、テーブルT1の上面の略中央に設けられている。また、テーブルT1には、上面全体を覆うと共に接地された導電性のテーブルクロスTCが敷かれている。
【0052】
また、図16は、第3適用例における構成の概略を示す構成図である。図示するように、殺菌装置100Cは、円盤状の装置本体12と、殺菌物質放出部20Cと、図示しない制御部60とを備える。殺菌装置100Cでは、装置本体12に吸入口21aと排出口21bとが形成されている。吸入口21aと排出口21bとは、円周方向に例えば等間隔で複数形成されている。殺菌物質放出部20Cは、吸入口21a側から順に、ファン40と、吸入側フィルタ82と、微細水発生カートリッジ30と、放電素子50と、排出側フィルタ84とを備える。また、殺菌物質放出部20Cは、放電素子50と排出側フィルタ84との間の空間として殺菌チャンバ86が設けられており、放電素子50から殺菌チャンバ86内に殺菌物質が放出される。吸入側フィルタ82は、吸入口21aから吸入した空気内の塵や埃などを除去するための集塵フィルタであり、例えばガラス繊維で構成されたHEPAフィルタなどが用いられる。排出側フィルタ84は、殺菌物質としてのオゾンや過酸化水素を除去するためのフィルタであり、例えば二酸化マンガンや酸化ニッケル等の触媒を有するフィルタや活性炭を有するフィルタなどが用いられる。
【0053】
こうして構成された殺菌装置100Cでは、吸入口21aから吸入し、吸入側フィルタ82などを経た空気を、殺菌チャンバ86内の殺菌物質で殺菌することができる。このため、テーブルT1の周辺の空気を適切に殺菌することができる。また、排出側フィルタ84でオゾンなどの殺菌物質を除去して、帯電微細水や無帯電微細水を排出口21bからテーブルT1に向けて放出する。上述したように、帯電微細水は、殺菌物質よりも弱いものの殺菌効果を有するからテーブルT1(テーブルクロスTC)を殺菌することができる。また、帯電微細水による殺菌であるため、人体に影響を及ぼすことない。なお、テーブルクロスTCは接地されているため、適切に除電して微細水の付着により導電性が高まるから、帯電微細水の付着を促して帯電微細水による殺菌を効率よく行うことができる。
【0054】
図17は、殺菌装置の第4適用例を示す説明図である。第4適用例では、第3適用例と同様に、対象物SがテーブルT2である。テーブルT2は、上面を2つに仕切るパーティションPが配置されている。第4適用例の殺菌装置100Dは、パーティションPで2つに仕切られたテーブルT2の各領域をそれぞれ殺菌するように、第3適用例の殺菌装置100Cを2分割した構成の装置を2つ(1組)備えている。各殺菌装置100Dは、内部に殺菌物質放出部20Cと同じ構成の殺菌物質放出部を備える。このため、殺菌装置100Dは、殺菌装置100Cと同様に、テーブルT2の各領域の周辺の空気を殺菌チャンバ86内で殺菌すると共に、テーブルT2の各領域に帯電微細水を放出して人体に影響を及ぼすことなく殺菌することができる。
【0055】
第3,第4適用例では、殺菌物質放出部20Cに排出側フィルタ84を備え、殺菌チャンバ86内で空気を殺菌して、排出側フィルタ84で殺菌物質を除去したが、これに限られない。例えば、殺菌物質放出部20Cに排出側フィルタ84を備えないものとし、殺菌物質を排出口21bから放出するようにしてもよい。即ち、殺菌チャンバ86内で空気を殺菌するものに限られず、第1実施形態の殺菌装置10と同様に、殺菌物質を対象物SであるテーブルT1,T2に向けて放出して殺菌してもよい。また、第3,第4適用例では、テーブルT1(T2)上にテーブルクロスTCが敷かれていたが、テーブルクロスTCが敷かれていなくてもよく、テーブルT1(T2)の上面に導電性向上剤や帯電防止剤、界面活性剤などを塗布して導電性が付加されていてもよい。また、テーブルT1(T2)の上面にPEDOT/PSSを塗布するなど、導電性高分子膜が形成されていてもよい。あるいは、テーブルT1(T2)が導電性を有さない絶縁物でもよく、殺菌装置100C,100Dが、殺菌装置10Bと同様に正の空気イオンと負の空気イオンを交互に放出してもよい。
【0056】
[第2実施形態]
次に、本開示の第2実施形態を説明する。図18は、第2実施形態の殺菌装置10Cの構成の概略を示す構成図である。殺菌装置10Cは、装置本体12の形状やサイズは異なるものの第1実施形態の殺菌装置10と同様に構成されている。即ち、殺菌装置10Cは、装置本体12と殺菌物質放出部20と制御部60とを備える。また、第2実施形態では、例えば飲食店や会議室、待合室、受付窓口などで用いられるパーティションPを殺菌対象とし、殺菌装置10CがパーティションPの上部や下部に設けられたり、パーティションPに内蔵されたりする。図18では、パーティションPの上部に殺菌装置10Cが設けられ、吸入口21aが上方に開口し、下方に開口した排出口21bからパーティションPの表面(仕切面)に沿って殺菌物質や微細水を放出する。また、図18のパーティションPは、導電性を有する透明部材、または、表面に透明性を有する導電性向上剤や帯電防止剤、界面活性剤などを塗布して透明性と導電性とが付加(向上)された部材で形成され、電気的に接地されている。
【0057】
図19は、殺菌装置10Cの作動モードの一例を示す説明図である。この作動モードは、第1実施形態の殺菌装置10の作動モード(図3参照)と同じである。このため、殺菌モードでは、制御部60は放湿制御と吸湿制御とを繰り返すことで、帯電微細水や無帯電微細水、殺菌物質が排出口21bからパーティションPの表面に放出される。また、殺菌装置10と同様に、マイナスに帯電した帯電微細水が放出されるため、帯電微細水がパーティションPの表面に付着すると、表面の水分量を向上させることで表面の導電性を高めて除電効果を上げることができる。これにより、帯電微細水や殺菌物質をパーティションPに付着しやすくして適切に殺菌することができる。また、除去モードでは、パーティションPに向けて放出された殺菌物質を、吸入口21aから吸入し微細水発生カートリッジ30で捕集して除去することができる。
【0058】
図18のパーティションPは接地されていたが、接地されていなくてもよい。図20は、変形例の殺菌装置10Dの構成の概略を示す構成図である。変形例では、パーティションPが接地されていない。また、殺菌装置10Dは、殺菌装置10Bと同様に、通電回路53Dにより放電素子50に正電圧と負電圧とを交互に印加可能となっている。
【0059】
また、図21は、殺菌装置10Dの作動モードの一例を示す説明図である。この作動モードは、第1実施形態の殺菌装置10Bの作動モード(図7参照)と同じである。このため、放湿制御で負の空気イオンを発生させ、吸湿制御で正の空気イオンを発生させるため、パーティションPが絶縁物であっても電気的に中和して帯電するのを防止することができる。これにより、帯電微細水や殺菌物質をパーティションPに付着しやすくして、殺菌をより適切に行うことができる。
【0060】
この第2実施形態においても、殺菌装置10C,10Dを2台以上の複数台配置して、吸湿制御と放湿制御とを互いに異なるタイミングで行ってもよい。また、第2実施形態でも、図4図5の殺菌装置制御処理により殺菌装置10C,10Dを制御すればよい。
【0061】
ここで、殺菌装置をパーティションに内蔵した適用例を説明する。図22図23は、殺菌装置の第5適用例を示す説明図である。図22は、第5適用例の斜視図であり、図23は、第5適用例の断面構成図である。第5適用例では、殺菌装置100Eを内蔵したパーティションユニット90を例示する。パーティションユニット90は、テーブルなどに載置されるベース92と、ベース92に支持され透明性を有する一対の仕切板94と、仕切板94の上部を覆うカバー96と、仕切板94とカバー96との間に開口96a(通風路)が形成されるようにカバー96を支持する支持部98とを備える。なお、ベース92は、仕切板94との間に開口92aを形成するように、仕切板94を支持している。
【0062】
パーティションユニット90に内蔵される殺菌装置100Eは、基本的な構成要素は殺菌装置10C(10D)と同じであるが、各構成の形状や数などが異なる。殺菌装置100Eは、複数(例えば3つ)のファン140と、微細水発生カートリッジ130と、放電素子150と、除去フィルタ170とを備える。ファン140は、一対の仕切板94の間に送風可能となるようにベース92内に設けられている。微細水発生カートリッジ130は、一対の仕切板94の間に仕切板94の幅方向に延在するように配置されており、図示は省略するが基材34a(導電性高分子膜34b)が例えば波板状に形成されている。なお、基材34aが平板状などに形成されていてもよい。放電素子150は、一対の仕切板94の間に配置され、仕切板94の幅方向に延在する棒状の第1電極151と、第1電極151を挟むように各仕切板94の内表面に設けられた一対の平板状の第2電極152とを備える。除去フィルタ170は、一対の仕切板94の間に配置されており、長手方向が仕切板94の幅方向に延在する略直方体状に形成されている。この除去フィルタ170は、殺菌物質を除去するためのフィルタであり、例えば二酸化マンガンや酸化ニッケル等の触媒を有するフィルタや活性炭を有するフィルタなどが用いられる。なお、パーティションユニット90(殺菌装置100E)では、一対の仕切板94の間であって、放電素子150と除去フィルタ170との間の空間が殺菌チャンバ95として形成されている。
【0063】
こうして構成された殺菌装置100Eによる殺菌動作について説明する。殺菌装置100Eでは、ファン140の駆動により開口92aから吸入した空気を、微細水発生カートリッジ130と放電素子150と殺菌チャンバ95と除去フィルタ170とを順に通して、開口96aから排出する(図23の矢印参照)。例えば殺菌装置100Eが、殺菌装置10Cと同じ作動モード(図19参照)で作動するものとする。その場合、殺菌モードの放湿制御では、放電素子50から殺菌物質を放出するから、殺菌チャンバ95内の空気を殺菌物質で殺菌することができる。また、除去フィルタ170でオゾンなどの殺菌物質を除去して、帯電微細水や無帯電微細水を開口96aから放出する。放出された帯電微細水や無帯電微細水は、仕切板94の外表面に沿って流れて、仕切板94の外表面に付着する。上述したように、殺菌物質よりも弱いものの帯電微細水も殺菌効果を有するからパーティションユニット90(仕切板94)の表面を殺菌することができる。また、帯電微細水による殺菌であるため、人体に影響を及ぼすことない。
【0064】
次に、第6適用例を説明する。図24図25は、殺菌装置の第6適用例を示す説明図である。第6適用例では、第5適用例のパーティションユニット90と同様の構成を備え、殺菌装置100Fを内蔵したパーティションユニット90Bを説明する。このパーティションユニット90Bは、仕切板94Bの外表面に導電性向上剤や帯電防止剤、界面活性剤などを塗布して導電性が付加されており、仕切板94Bがアーススイッチ175の接続または遮断により接地の有無を切替可能となっている。
【0065】
また、殺菌装置100Fは、殺菌装置100Eと同様に、複数のファン140と微細水発生カートリッジ130と除去フィルタ170とを備える他、放電素子として、第1放電素子150Aと第2放電素子150Bとを備える。第1放電素子150Aと第2放電素子150Bは、殺菌装置100Eの放電素子150と同じ構成である。また、殺菌装置100Fでは、下方のファン140側から、第2放電素子150B、微細水発生カートリッジ130、第1放電素子150A、除去フィルタ170の順に配置されており、第2放電素子150Bと除去フィルタ170との間が殺菌チャンバ95となる。
【0066】
図26は、殺菌装置100Fの作動モードの一例を示す説明図である。殺菌装置100Fは、殺菌モードと除去モードと吸湿モードとを有し、殺菌モードでは内部殺菌制御と外部殺菌制御とを行う。内部殺菌制御では、ファン140をオンとして正回転させ、微細水発生カートリッジ30をオンとし、第1放電素子150Aをオンとして負電圧を印加させ、第2放電素子150Bをオフとし、アーススイッチ175を接続状態として接地させる(図24参照)。ファン140の正回転により、図24に矢印で示す方向即ちパーティションユニット90B内を下方から上方に向かう方向に空気が流通する。また、微細水発生カートリッジ130と第1放電素子150Aとをオンとするため、殺菌装置100Eの殺菌モードの放湿制御と同様に、第1放電素子150Aから殺菌チャンバ95内に放出した殺菌物質で空気を殺菌することができる。また、除去フィルタ170でオゾンなどの殺菌物質を除去し、帯電微細水や無帯電微細水を開口96aから放出して、仕切板94Bの外表面を帯電微細水で殺菌することができる。なお、仕切板94Bが接地されているから、仕切板94Bの表面が帯電するのを防止して、帯電微細水の吸着を促すことができる。
【0067】
また、外部殺菌制御では、ファン140をオンとして逆回転させ、微細水発生カートリッジ30をオンとし、第1放電素子150Aをオフとし、第2放電素子150Bをオンとして負電圧を印加させ、アーススイッチ175を遮断状態とする(図25参照)。ファン140の逆回転により、図25に矢印で示す方向即ちパーティションユニット90B内を上方から下方に向けて空気が流通する。また、微細水発生カートリッジ130と第2放電素子150Bとをオンとするため、第2放電素子150Bから開口92aを介して外部に殺菌物質を放出し、周辺空間を殺菌することができる。また、アーススイッチ175を遮断状態とすることで、仕切板94Bの外表面がマイナスに帯電するため、放出したオゾンなどの殺菌物質が反発しやすくなり仕切板94Bから離れるように空間に放出されることになる。即ち、周辺空間への殺菌物質の放出を促して、周辺空間を適切に殺菌することができる。また、帯電微細水も周辺空間への放出が促されるが、微細水は粒径が50ナノメートル以下であるから、一般的な加湿器のように空間内の水分量を過剰に増やすことがなく、微細水により適切に保湿することができる。
【0068】
また、除去モードでは、ファン140をオンとして逆回転させ、微細水発生カートリッジ30をオンまたはオフのいずれかとし、第1放電素子150Aと第2放電素子150Bとをいずれもオフとし、アーススイッチ175を接続状態として接地させる。これにより、周辺空間を殺菌した殺菌物質を開口96aから吸引し、除去フィルタ170で捕集して除去することができる。また、仕切板94Bが接地されているから、仕切板94Bの表面で殺菌物質が反発するのを防止して吸引(除去)しやすくすることができる。なお、除去モードでは、微細水発生カートリッジ30をオフとすればよいが、オンとすることで微細水を開口92aから放出してもよい。
【0069】
また、吸湿モードでは、ファン140をオンとして逆回転させ、微細水発生カートリッジ30と第1放電素子150Aと第2放電素子150Bとをいずれもオフとする。これにより、微細水発生カートリッジ30への水分の吸着が促される。また、除去モードと同様に、殺菌物質を開口96aから吸引し、除去フィルタ170で捕集して除去することもできる。なお、除去モードでは、アーススイッチ175を接続状態として、仕切板94Bを除電するが、遮断状態で行ってもよい。
【0070】
第6適用例では、パーティションユニット90Bの仕切板94Bの外表面に導電性が付加されると共にアーススイッチ175を介して接地されたが、これに限られず、導電性のない絶縁物としてアーススイッチ175を備えなくてもよい。その変形例の作動モードを図27に示す。この作動モードでは、図26の作動モードと異なり、アーススイッチの制御が含まれていない。また、吸湿モードでは、第1放電素子150Aをオンとして正電圧を印加させる。これにより、殺菌モード(内部殺菌制御や外部殺菌制御)で負の空気イオンを放出し、吸湿モードで正の空気イオンを放出するため、パーティションユニット90Bの仕切板94Bが、帯電するのを防止することができる。なお、除去モードは、アーススイッチ175を備えない点を除いて図26と同様であるため、説明を省略する。
【0071】
第5適用例や第6適用例のパーティションユニット90,90Bでは、カバー96が長手方向に垂直な断面視で下方に開いたコの字状に形成されているが、コの字状に限られず、Uの字状(半球状)に形成されていてもよい。こうすれば、空気の流れをより均一化することができるから、帯電微細水などを効率よく放出することができる。また、ベース92側も同様にUの字状(半球状)に形成されていてもよい。また、パーティションPやパーティションユニット90,90Bが透明性を有さなくてもよい。
【0072】
第6適用例では、第1放電素子150Aと第2放電素子150Bとを備えたが、これに限られず、第2放電素子150Bを備えなくてもよい。この場合、第6適用例の構成は、第5適用例と同じ構成となる。即ち、第6適用例の作動モードによる制御を、第5適用例で行うようにしてもよい。
【0073】
また、第1~第6適用例に挙げられた対象物Sに限られず、他の対象物Sに適用してもよい。例えば、住宅や施設、病院などの床や空間を殺菌したり、電車や劇場、映画館などの座席や床、空間を殺菌してもよい。また、各種物品を保管する保管庫や物品の輸送に用いられる輸送コンテナなどを殺菌してもよい。また、殺菌装置は、対象物Sに組み込まれて殺菌するものでもよいし、殺菌装置単体で対象物Sの周辺に配置可能に構成されて対象物Sを殺菌するものでもよい。
【0074】
ここで、実施形態の構成要素と本開示の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態の殺菌装置10(10B~10D,100~100E)が本開示の「殺菌装置」に相当し、微細水発生カートリッジ30(130)が「微細水発生部」に相当し、放電素子50(150,150A,150B)が「放電発生部」に相当し、ファン40(140)が「ファン」に相当し、制御部60(160)が「制御部」に相当する。微細水発生カートリッジ30(130)が「捕集部」を兼ねており、除去フィルタ170が「捕集部」に相当する。人感センサ66が「検知部」に相当する。
【0075】
以上、本開示を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本開示はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本開示は、対象物や対象空間の殺菌を行う技術分野に利用可能である。
【符号の説明】
【0077】
10,10B,10C,10D,100,100B,100C,100D,100E 殺菌装置、12,112 装置本体、20,20C,120 殺菌物質放出部、21,121 ダクト、21a,121a 吸入口、21b,121b 排出口、21c 吸気孔、30,130 微細水発生カートリッジ(微細水発生部)、32 ケース、34 微細水発生素子、34a 基材、34b 導電性高分子膜、35,35B,35D 通電回路(通電部)、40,140 ファン、50,150 放電素子、150A 第1放電素子、150B 第2放電素子、51,151 第1電極、52,152 第2電極、53,53B,53D 通電回路、60,160 制御部、62 スタートスイッチ、64 風量調節スイッチ、66 人感センサ、67 開閉検知センサ、68 金属プレート、70 カバーユニット、72 カバー、74 作動機構、74a シャフト、82 吸入側フィルタ、84 排出側フィルタ、86,95 殺菌チャンバ、90,90B パーティションユニット、92 ベース、92a,96a 開口、94,94B 仕切板、96 カバー、98 支持部、170 除去フィルタ、D ドア、K1,K2 ドアノブ、P パーティション、S 対象物、T1,T2 テーブル、TC テーブルクロス。
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