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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023078504
(43)【公開日】2023-06-07
(54)【発明の名称】スパウト付きパウチ
(51)【国際特許分類】
   B65D 30/16 20060101AFI20230531BHJP
【FI】
B65D30/16 J
B65D30/16 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021191650
(22)【出願日】2021-11-26
(71)【出願人】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100153497
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 信男
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】吉田 創哉
(72)【発明者】
【氏名】竹中 雅浩
(72)【発明者】
【氏名】勝田 翔大郎
【テーマコード(参考)】
3E064
【Fターム(参考)】
3E064AA13
3E064AB03
3E064BA27
3E064BA30
3E064BA36
3E064BA55
3E064BC18
3E064EA07
3E064EA12
3E064FA04
3E064GA04
3E064HF09
3E064HG02
3E064HJ02
3E064HM03
3E064HN65
3E064HS04
(57)【要約】
【課題】スパウトを通じた内容液注出の容易性を向上するとともに、フランジ外周縁付近を起点としたパウチ本体の破袋を抑制するスパウト付きパウチを提供すること。
【解決手段】側方マチフィルム50の非シール領域53の表側外縁54および裏側外縁55は、互いに表裏方向に離間して配置されるベース縁部54a、55aと、ベース縁部54a、55aの上端から上端連結部53bまで延びる上方側傾斜縁部54c、55cとを有し、スパウト80のフランジ81の少なくとも一部分は、表側外縁54の上方側傾斜縁部54cと裏側外縁55の上方側傾斜縁部55cとの間の領域に対向して配置されているスパウト付きパウチ10。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表側フィルムと、裏側フィルムと、パウチ側部において前記表側フィルムと前記裏側フィルムとの間に配置され、サイドシールによって前記表側フィルムおよび前記裏側フィルムに熱溶着される側方マチフィルムと、前記側方マチフィルムに装着されるスパウトとを備えたスパウト付きパウチであって、
前記側方マチフィルムは、前記サイドシールにおいて前記表側フィルムに熱溶着される表側シール領域と、前記サイドシールにおいて前記裏側フィルムに熱溶着される裏側シール領域と、前記表側シール領域および前記裏側シール領域の内側の領域である非シール領域とを有し、
前記非シール領域は、前記表側シール領域との境界である表側外縁と、前記裏側シール領域との境界である裏側外縁とを有し、
前記表側外縁および前記裏側外縁は、互いに表裏方向に離間して配置されるベース縁部と、前記ベース縁部の上端から、前記表側外縁および前記裏側外縁の上端同士を連結する上端連結部まで延びる上方側傾斜縁部とをそれぞれ有し、
前記スパウトのフランジの少なくとも一部分は、前記表側外縁の前記上方側傾斜縁部と前記裏側外縁の前記上方側傾斜縁部との間の領域に対向して配置されていることを特徴とするスパウト付きパウチ。
【請求項2】
前記上方側傾斜縁部は、上下方向に対する傾斜角度が異なる少なくとも2つの傾斜した部分から構成されていることを特徴とする請求項1に記載のスパウト付きパウチ。
【請求項3】
前記上方側傾斜縁部は、前記ベース縁部の上端よりも上方側かつ表裏方向内側に位置する箇所と前記ベース縁部の上端とを接続する緩傾斜部分と、前記緩傾斜部分の上端と前記上端連結部とを接続する急傾斜部分とを有し、
前記緩傾斜部分の上端および下端を通る第1仮想線は、上方に向かうに従って表裏方向内側に寄るように上下方向に傾斜して延び、
前記急傾斜部分の上端および下端を通る第2仮想線は、上方に向かうに従って表裏方向内側に寄るように上下方向に傾斜して延び、
前記第1仮想線の上下方向に対する傾斜角度は、前記第2仮想線の上下方向に対する傾斜角度よりも小さく設定され、
前記フランジの少なくとも一部分は、前記表側外縁の前記緩傾斜部分と前記裏側外縁の前記緩傾斜部分との間の領域に対向して配置されていることを特徴とする請求項2に記載のスパウト付きパウチ。
【請求項4】
前記側方マチフィルムは、前記フランジが対向して配置されるフランジ対向領域を有し、
前記表側シール領域および前記裏側シール領域の少なくとも一方は、前記第1仮想線よりも前記表裏方向内側に位置する制御シール部を有し、
前記制御シール部は、表裏方向において前記フランジ対向領域の下半分と前記表側シール領域または前記裏側シール領域との間の領域に位置する部分を有していることを特徴とする請求項3に記載のスパウト付きパウチ。
【請求項5】
前記制御シール部は、前記フランジ対向領域の下側に位置する部位を有していることを特徴とする請求項4に記載のスパウト付きパウチ。
【請求項6】
前記スパウト付きパウチの内容液収容部には、未開封状態で、表裏方向に見た場合に、前記内容液収容部のうち、前記スパウトの注出孔の内周面の下端縁をその延在方向に沿って延ばした仮想線よりも下側部分の容量以下の内容液が収容されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のスパウト付きパウチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パウチ本体を側方マチフィルムにスパウトを装着したスパウト付きパウチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、本出願人は、飲料水や液体洗剤等の内容液を収容する容器として、特許文献1において、複数の樹脂フィルムを熱溶着して成るパウチ本体の側方マチフィルムにスパウトを横向きに装着したスパウト付きパウチを提案している。
【0003】
また、このようなスパウト付きパウチにおけるスパウトの装着手法として、側方マチフィルムに対してスパウトのフランジを対向して配置し、当該フランジを熱溶着等の手段によって側方マチフィルムに固着することも一般に公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-132177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1に開示されるようなスパウト付きパウチでは、パウチを持ち上げて内容液注出を行うという使用態様等において、内容液注出時にスパウト内に入った内容液の重量等に起因してスパウトが不測に動いてしまうことがあり、その結果、スパウトの注出筒部の向きが定まりにくく、内容液注出が難しくなるという問題があった。
【0006】
また、従来のスパウト付きパウチでは、スパウト付きパウチを落下させてしまった時等に、内容物の重さに起因して、フランジ外周縁付近において側方マチフィルムに損傷が生じ、フランジ外周縁付近を起点としたパウチ本体の破袋が発生することがあるという問題もある。当該パウチ本体の破袋は、スパウト付きパウチを落下させてしまった時に、側方マチフィルムに対してスパウトが回動(傾動)してフランジ外周縁付近にモーメント荷重が掛かり、当該モーメント荷重が掛かった状態のフランジ外周縁付近が床等に叩きつけられることで生じるものと推測される。
【0007】
そこで、本発明は、これらの問題点を解決するものであり、簡素な構成で、スパウトを通じた内容液注出の容易性を向上するとともに、フランジ外周縁付近を起点としたパウチ本体の破袋を抑制するスパウト付きパウチを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、表側フィルムと、裏側フィルムと、パウチ側部において前記表側フィルムと前記裏側フィルムとの間に配置され、サイドシールによって前記表側フィルムおよび前記裏側フィルムに熱溶着される側方マチフィルムと、前記側方マチフィルムに装着されるスパウトとを備えたスパウト付きパウチであって、前記側方マチフィルムは、前記サイドシールにおいて前記表側フィルムに熱溶着される表側シール領域と、前記サイドシールにおいて前記裏側フィルムに熱溶着される裏側シール領域と、前記表側シール領域および前記裏側シール領域の内側の領域である非シール領域とを有し、前記非シール領域は、前記表側シール領域との境界である表側外縁と、前記裏側シール領域との境界である裏側外縁とを有し、前記表側外縁および前記裏側外縁は、互いに表裏方向に離間して配置されるベース縁部と、前記ベース縁部の上端から、前記表側外縁および前記裏側外縁の上端同士を連結する上端連結部まで延びる上方側傾斜縁部とをそれぞれ有し、前記スパウトのフランジの少なくとも一部分は、前記表側外縁の前記上方側傾斜縁部と前記裏側外縁の前記上方側傾斜縁部との間の領域に対向して配置されていることにより、前記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0009】
本請求項1に係る発明によれば、スパウトのフランジの少なくとも一部分が、側方マチフィルムのうち、上方側傾斜縁部間の領域に対向して配置されていることにより、パウチ本体の自立性等に影響を与えることなく、側方マチフィルムのシール領域(サイドシール)の内縁とフランジ外周縁との間隔を狭くして、スパウトの動きを拘束することが可能であるため、スパウトの注出筒部の向きを良好に定め、スパウトを通じた内容液注出の容易性を向上することができる。すなわち、ベース縁部間の領域と比較して表裏方向における横幅が狭い上方側傾斜縁部間の領域にスパウトのフランジを配置することで、側方マチフィルムのシール領域(サイドシール)の内縁とフランジ外周縁との間隔を狭くすることができるばかりでなく、上方側傾斜縁部間の領域は、スパウト付きパウチを載置面上に置いた状態で側方マチフィルムのうち上方側に位置する部分であり、その縁部形状を設計変更してもパウチ本体の自立性等に影響を与えることのない部位であることから、その縁部形状を自由に設計変更して、スパウトの動きを良好に拘束することができる。
また、本請求項1に係る発明によれば、側方マチフィルムの上方側傾斜縁部間の領域は、スパウト付きパウチを載置面上に置いた状態で、上方に向かうに従ってパウチ本体の内側に寄るように傾斜することになる部位であることから、スパウトのフランジの位置をパウチ本体の内側に奥まらせて、スパウト付きパウチを落下させてしまった場合であっても、フランジ外周縁付近の側方マチフィルムが床等に当たりにくくすることが容易であるため、フランジ外周縁付近を起点としたパウチ本体の破袋を抑制でき、また、側方マチフィルムのベース縁部間の領域にスパウトを装着した場合と比較して、スパウトの注出筒部の先端位置をパウチ本体の内側に向けて引っ込めることができる。
【0010】
本請求項2に係る発明によれば、上方側傾斜縁部は、上下方向に対する傾斜角度が異なる少なくとも2つの傾斜した部分から構成されていることにより、これら各部の傾斜角度を調整して上方側傾斜縁部の縁部形状を調節することで、簡素な構成で、側方マチフィルムのシール領域(サイドシール)の内縁とフランジ外周縁との間隔や、上方側傾斜縁部(サイドシール)間の間隔を狭めたり、フランジの傾斜角度を良好に調整したりすることができる。
本請求項3に係る発明によれば、上方側傾斜縁部が、ベース縁部の上端よりも上方側かつ表裏方向内側に位置する箇所とベース縁部の上端とを接続する緩傾斜部分と、緩傾斜部分の上端と上端連結部とを接続する急傾斜部分とを有し、スパウトのフランジの少なくとも一部分が、表側外縁の緩傾斜部分と裏側外縁の緩傾斜部分との間の領域に対向して配置されている。これにより、パウチ本体内の内容液収容部におけるスパウト装着位置よりも上方側のスペースが上下方向に大きくなることを回避しつつ、側方マチフィルムのシール領域(サイドシール)の内縁とフランジ外周縁との間隔を狭めて、スパウトの動きを良好に拘束できるとともに、側方マチフィルムのうちスパウトを装着した領域における上方側傾斜縁部(サイドシール)間の間隔を狭めて、スパウトの位置をパウチ本体の内側に奥まらせることができる。
また、本請求項3に係る発明では、上方に向かうに従ってパウチ本体の内側に寄るように傾斜する傾斜角度が緩い、緩傾斜部分間の領域にスパウトを装着することにより、パウチ本体の上下方向に対するフランジの傾斜角度を小さくし、スパウトの注出筒部の延出方向を下向きに調整することが可能であるため、所謂内容液の伝い漏れ(内容液注出を終了した状態でスパウトの注出筒部が斜め上向きになっている場合に発生する、注出筒部の先端から漏れ出た内容液が注出筒部の外周面の下面を伝ってしまう現象)を抑制しつつ、パウチ本体内に収容できる内容液の容量を大きくすることができる。
本請求項4、5に係る発明によれば、表側シール領域または裏側シール領域の少なくとも一方が、第1仮想線よりも表裏方向内側に位置する制御シール部を有し、制御シール部が、表裏方向においてフランジ対向領域の下半分と表側シール領域または裏側シール領域との間の領域に位置する部分を有している。これにより、フランジ対向領域の下半分において側方マチフィルムのシール領域(サイドシール)の内縁とフランジ外周縁との間隔を狭くして、スパウトの動きをより確実に拘束することができるばかりでなく、制御シール部の形成によって、スパウトの注出筒部の先端側が下方に向くように、フランジの傾きを調整することができる。
本請求項6に係る発明によれば、スパウト付きパウチの内容液収容部に、未開封状態で、表裏方向に見た場合に、内容液収容部のうち、スパウトの注出孔の内周面の下端縁をその延在方向に沿って延ばした仮想線よりも下側部分の容量以下の内容液が収容されていることにより、内容液注出を終了した状態でスパウトの注出筒部が斜め上向きになることを回避することが可能であるため、内容液注出を終了した時に、注出筒部の先端から漏れ出た内容液が注出筒部の外周面の下面を伝ってしまう所謂内容液の伝い漏れの発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係るスパウト付きパウチを載置面上に置いた状態を示す説明図。
図2】スパウト付きパウチを構成する各フィルムを示す説明図。
図3】側方マチフィルムを示す説明図。
図4】側方マチフィルムの各部を説明する説明図。
図5】側方マチフィルムの第1変形例を示す説明図。
図6】側方マチフィルムの第2変形例を示す説明図。
図7】内容液注出時におけるスパウト付きパウチの様子を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の一実施形態であるスパウト付きパウチ10について、図面に基づいて説明する。
【0013】
スパウト付きパウチ10は、飲料水や液体洗剤等の内容液を収容するものであり、図1図7に示すように、パウチ本体20の側面に装着されたスパウト80から内容液を注出するように構成されたものである。
【0014】
スパウト付きパウチ10は、図1に示すように、可撓性を有したフィルム30、40、50、60を熱溶着して製袋用シール部を形成することで袋状に形成されたパウチ本体20と、パウチ本体20内に配置される内側フィルム70と、パウチ本体20に装着されたスパウト80とを有している。
【0015】
パウチ本体20は、両側部にマチ部が形成された所謂横ガゼット型のパウチとして構成され、図1図2に示すように、内容液収容部21を挟んで表裏方向Xに対向して配置される表側フィルム30および裏側フィルム40と、パウチ側部の一方において表側フィルム30および裏側フィルム40の間に配置され、第1サイドシール22によって表側フィルム30および裏側フィルム40に熱溶着される側方マチフィルム50と、内容液収容部21を挟んで前後方向Zに側方マチフィルム50に対向して配置され、パウチ側部の他方において第2サイドシール23によって表側フィルム30および裏側フィルム40に熱溶着される第2マチフィルム60とを有している。
【0016】
各フィルム30、40、50、60、70は、少なくともその片面に熱溶着層を有した樹脂フィルムとして形成され、互いに熱溶着される箇所において、熱溶着層同士を対向させるように配置されている。
なお、図2等では、各フィルム30、40、50、60、70の各熱溶着領域を塗り潰しで表した。
【0017】
パウチ本体20は、図1図2に示すように、側方マチフィルム50の横方向の両側をフィルム30、40に熱溶着した第1サイドシール22と、第2マチフィルム60の横方向の両側をフィルム30、40に熱溶着した第2サイドシール23と、内容液収容部21を挟んでボトムシール25に対向するパウチ本体20の頂部に対応する位置で、フィルム30、40、60を熱溶着したトップシール24と、パウチ本体20のパウチ底部20aに対応する位置で、フィルム30、40、60を熱溶着したボトムシール25と、フィルム30、40と内側フィルム70とを熱溶着した中間シール26とを有している。これらシール22~26は、製袋用シール部を構成する。
【0018】
また、マチ部を形成したパウチ本体20の側部における所定箇所(例えば図1に示すA箇所)では、第2マチフィルム60を部分的に除去した箇所が形成され、フィルム30、40間が熱溶着されている。これにより、上記所定箇所(例えば図1に示すA箇所)においてフィルム30、40間が離れることが阻止される。
【0019】
側方マチフィルム50は、図3に示すように、第1サイドシール22において表側フィルム30に熱溶着される表側シール領域51と、第1サイドシール22において裏側フィルム40に熱溶着される裏側シール領域52と、表側シール領域51および裏側シール領域52の内側の領域である非シール領域53とを有している。
【0020】
非シール領域53は、図3に示すように、表側シール領域51との境界である表側外縁54と、裏側シール領域52との境界である裏側外縁55とを有している。
側方マチフィルム50は、側方マチフィルム50の表裏方向Xの中央を上下方向Yに沿って延びる仮想線を基準として線対称(左右対称)に形成され、言い替えると、表側外縁54および裏側外縁55は、前記仮想線を基準として線対称(左右対称)に形成されている。
【0021】
表側外縁54および裏側外縁55は、図3に示すように、互いに表裏方向Xに離間して配置されるベース縁部54a、55aと、ベース縁部54a、55aの下端から表側外縁54および裏側外縁55の下端同士を連結する下端連結部53aまで延びる下方側傾斜縁部54b、55bと、ベース縁部54a、55aの上端から表側外縁54および裏側外縁55の上端同士を連結する上端連結部53bまで延びる上方側傾斜縁部54c、55cとをそれぞれ有している。
【0022】
ベース縁部54a、55aは、図3に示すように、上下方向Yに沿って直線状に延びるように形成されている。
下方側傾斜縁部54b、55bは、図3に示すように、下方に向かうに従って表裏方向Xの内側に寄るように(本実施形態では45°の傾斜角度で)上下方向Yに傾斜して直線状に延びている。
【0023】
上方側傾斜縁部54c、55cは、上下方向Yに対する傾斜角度が異なる少なくとも2つの傾斜した部分から構成され、本実施形態では、図4に示すように、ベース縁部54a、55aの上端よりも上方側かつ表裏方向Xの内側に位置する箇所とベース縁部54a、55aの上端とを接続する緩傾斜部分54d、55dと、緩傾斜部分54d、55dの上端と上端連結部53bとを接続する急傾斜部分54e、55eとを有している。
【0024】
図4に示す例では、各緩傾斜部分54d、55dは、上方に向かうに従って表裏方向Xの内側に寄るように上下方向Yに傾斜して延びる1つの直線部分から構成され、また、各急傾斜部分54e、55eは、上方に向かうに従って表裏方向X内側に寄るように(本実施形態では45°の傾斜角度で)上下方向Yに傾斜して延びる1つの直線部分から構成されている。
【0025】
緩傾斜部分54d、55dの上端および下端を通る第1仮想線L1は、図4に示すように、上方に向かうに従って表裏方向Xの内側に寄るように上下方向Yに傾斜して延びている。
急傾斜部分54e、55eの上端および下端を通る第2仮想線L2は、図4に示すように、上方に向かうに従って表裏方向Xの内側に寄るように上下方向Yに傾斜して延びている。
第1仮想線L1の上下方向Yに対する傾斜角度θ1は、図4に示すように、第2仮想線L2の上下方向Yに対する傾斜角度θ2よりも小さく、言い替えると、上方に向かうに従って表裏方向Xの内側に寄る度合いが、第1仮想線L1(緩傾斜部分54d、55d)よりも第2仮想線L2(急傾斜部分54e、55e)の方が強い(大きい)。
【0026】
また、側方マチフィルム50は、図3図4に示すように、スパウト80のフランジ81が対向して配置されるフランジ対向領域56を有している。本実施形態では、フランジ対向領域56は、円形状の外周縁を有した円環状に形成されている。
また、側方マチフィルム50は、フィルム厚み方向に貫通して形成された、スパウト80の注出筒部82を挿通させるための円形状のスパウト用貫通孔57を有している。
【0027】
スパウト80は、合成樹脂等から形成され、パウチ本体20に装着されて内容液の注出口として機能するものであり、図1図7に示すように、側方マチフィルム50に対向して配置されるフランジ81と、円盤状のフランジ81に対して垂直に延び注出孔82aが形成された注出筒部82と、注出筒部82の先端に着脱可能に取り付けられるキャップ83とを有している。
【0028】
本実施形態では、フランジ81は、その中央に貫通孔が形成され円形の外周縁(フランジ外周縁)を有した円盤状(円環状)の部位として形成され、パウチ本体20の内側に配置されて側方マチフィルム50の内側面に熱溶着によってその少なくとも一部分が固着されている。
なお、図1では、スパウト80のフランジ81のみを図示しており、図7に示すように、注出筒部82やキャップ83等のスパウト80の大部分は、パウチ本体20の外側に配置される。
【0029】
フランジ81(フランジ対向領域56)の中央を含む、フランジ81(フランジ対向領域56)の少なくとも一部分(図4に示す例では大部分)は、図4に示すように、表側外縁54の上方側傾斜縁部54cと裏側外縁55の上方側傾斜縁部55cとの間の領域に対向して配置され、更に具体的には、表側外縁54の緩傾斜部分54dと裏側外縁55の緩傾斜部分55dとの間の領域に対向して配置されている。
【0030】
また、フランジ81(フランジ対向領域56)は、図4に示すように、表裏方向Xにおいて側方マチフィルム50の中央に配置されており、表裏方向Xにおける、表側外縁54とフランジ81(フランジ対向領域56)の外縁との間隔、および、裏側外縁55とフランジ81(フランジ対向領域56)の外縁との間隔は、等しい。
【0031】
上述した、フランジ81(の少なくとも一部分)が装着される、表側外縁54の上方側傾斜縁部54cと裏側外縁55の上方側傾斜縁部55cとの間の領域は、図1から分かるように、パウチ底部20aを下にしてスパウト付きパウチ10を載置面に置いた状態で、表裏方向Xに見た場合に、上方に向かうに従って前後方向Zにおけるパウチ本体20の内側に寄るように傾斜する部分である。そのため、上記領域に取り付けられたスパウト80の注出筒部82は、スパウト付きパウチ10を載置面に置いた状態では、図1図7から分かるように、表裏方向Xに見た場合に、上下方向Y(および前後方向Z)に対して斜めに延びた斜め上向きになる、言い替えると、上方に向かうに従って前後方向Zにおけるパウチ本体20の外側に寄るように傾斜した状態になる。
【0032】
内側フィルム70は、少なくともその片面に熱溶着層を有した矩形状(またはほぼ矩形状)かつ可撓性の樹脂フィルムとして形成され、図1図2から分かるように、2つ折りに折り曲げられた状態でパウチ本体20(内容液収容部21)内に配置され、その所定箇所がフィルム30、40に熱溶着されている。
内側フィルム70には、図2に示すように、フィルム厚み方向に貫通する孔状に形成された複数のフィルム貫通部が形成されている。
【0033】
また、スパウト付きパウチ10の頂部側の製袋用シール部においてフィルム30、40、60が重なった部位(トップシール24)には、図1図2に示すように、フィルム30、40、60が重なった部位を貫通して形成された、使用者が手や指を通してスパウト付きパウチ10を持つための把手孔27が形成されている。
なお、図2においては、技術理解の便宜上、各フィルム30、40、60間を熱溶着していない状態で、把手孔27が形成されているものとして図示したが、本実施形態においては、各フィルム30、40、60間を熱溶着した後に、所定箇所に打ち抜き加工を施すことで把手孔27を形成する。
【0034】
ここで、図7(a)に示すように、スパウト付きパウチ10の内容液収容部21には、未開封状態(内容液を未だ注出していない状態)、かつ、把手孔27が形成されたトップシール24(パウチ頂部側)を支持(把持)して、内容液収容部21内に内容液を収容したスパウト付きパウチ10を持ち上げた状態で、表裏方向Xに見た場合に、内容液収容部21のうち、スパウト80の注出孔82aの内周面の下端縁(具体的には、注出筒部82の先端側における注出孔82aの内周面の下端縁)をその延在方向に沿って延ばした仮想線L3よりも下側部分の容量以下の内容液が収容されている。なお、図7(a)には、内容液収容部21に、内容液収容部21のうち仮想線L3よりも下側部分の容量と同じ量の内容液を収容した状態を示した。
このように、内容液収容部21に収容する内容液の量を設定することにより、図7(a)に示す姿勢のように、(把手孔27が形成されたパウチ頂部側等を把持して、)スパウト80の注出筒部82が横向きになるようにスパウト付きパウチ10を傾けて持ち上げて内容液注出を行う時に、注出筒部82が水平方向に沿って延びる、または、注出筒部82が斜め下向き(すなわち、水平方向よりも下側に向けて傾斜している状態)にすることが可能であるため、図7(b)に示すような、所謂内容液の伝い漏れ、すなわち、内容液注出を終了した状態でスパウト80の注出筒部82が斜め上向き(すなわち、水平方向よりも上側に向けて傾斜している状態)になっている場合に発生する、注出筒部82の先端から漏れ出た内容液が注出筒部82の外周面の下面を伝ってしまう現象の発生を回避することができる。
また、このような内容液の伝い漏れを抑制しつつパウチ本体20内に収容できる内容液の容量を大きくするという観点から、側方マチフィルム50のうちフランジ81が装着される領域(緩傾斜部分54d、55d間の領域)の上下方向Yに対する傾斜角度を小さくすることで、パウチ本体20の上下方向Yに対するフランジ81の傾斜角度を小さくし、スパウト80の注出筒部82の延出方向(仮想線L3が延びる方向)を下向きに調整する(上下方向Yに垂直な方向に近づける)のが望ましい。
【0035】
次に、側方マチフィルム50の上方側傾斜縁部54c、55cの変形例について、図5、6に基づいて、以下に説明する。なお、以下に説明する変形例では、一部構成以外については、上述した実施形態と全く同じであるため、相違点以外の構成については、その説明を省略する。
【0036】
まず、上述した図4に示す例では、緩傾斜部分54d、55dが、上下方向Yに傾斜して延びる1つの直線部分から構成されているものとして説明したが、緩傾斜部分54d、55dの具体的態様は、上記に限定されず、少なくとも1つの直線部分や少なくとも1つの曲線部分やこれらの組み合わせで構成すればよい。
【0037】
図5に示す例では、緩傾斜部分54d、55dが、複数(3つ)の直線部分から構成され、具体的には、ベース縁部54a、55aの上端から上方に向かうに従って表裏方向Xの内側に寄るように上下方向Yに傾斜して延びる第1の直線部分と、第1の直線部分の上端から上下方向Yに沿って延びる第2の直線部分と、第2の直線部分の上端から上方に向かうに従って表裏方向Xの内側に寄るように上下方向Yに傾斜して延びる第3の直線部分とから構成されている。
【0038】
図6に示す例では、緩傾斜部分54d、55dが、複数(3つ)の直線部分から構成され、具体的には、ベース縁部54a、55aの上端から上方に向かうに従って表裏方向Xの内側に寄るように上下方向Yに傾斜して延びる第1の直線部分と、第1の直線部分の上端から上方に向かうに従って表裏方向X外側に寄るように上下方向Yに傾斜して延びる第2の直線部分と、第2の直線部分の上端から上方に向かうに従って表裏方向Xの内側に寄るように上下方向Yに傾斜して延びる第3の直線部分とから構成されている。
【0039】
これら図5、6に示す例から分かるように、緩傾斜部分54d、55dを構成する直線部分(や曲線部分)は、上方に向かうに従って表裏方向Xの内側に寄るように上下方向Yに傾斜して延びるもの、上下方向Yに沿って延びるもの、上方に向かうに従って表裏方向X外側に寄るように上下方向Yに傾斜して延びるもの等、如何なるものでもよい。
【0040】
また、急傾斜部分54e、55eについても同様に、図4~6に示す例では、急傾斜部分54e、55eが、上下方向Yに傾斜して延びる1つの直線部分から構成されているが、急傾斜部分54e、55eの具体的態様は、上記に限定されず、少なくとも1つの直線部分や少なくとも1つの曲線部分やこれらの組み合わせで構成すればよい。
【0041】
また、図6に示す例では、表側シール領域51または裏側シール領域52の少なくとも一方(図6に示す例では両方)は、第1仮想線L1よりも表裏方向Xの内側に位置する制御シール部51a、52aを有している。
制御シール部51a、52aは、図6に示すように、表裏方向Xにおいてフランジ対向領域56(フランジ81)の下半分と表側シール領域51または裏側シール領域52との間の領域に位置する部分を有し、フランジ対向領域56(フランジ81)の上下方向Y中央よりも上側に位置する部分を有さないように形成されている。
また、制御シール部51a、52aのうち、最も表裏方向Xの内側寄りに位置する箇所は、図6に示すように、表裏方向Xにおいてフランジ対向領域56(フランジ81)の下半分と表側シール領域51または裏側シール領域52との間の領域に位置している。
また、制御シール部51a、52aは、図6に示すように、フランジ対向領域56(フランジ81)の下側に位置する部位を有している。
【0042】
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行なうことが可能である。また、上述した実施形態や後述する変形例の各構成を、任意に組み合わせてスパウト付きパウチ10を構成しても何ら構わない。
【0043】
例えば、スパウト付きパウチ10を、その使用時や陳列時や運搬時に、外装ケース(図示しない)内に収容されて運用してもよく、また、外装ケース(図示しない)内に収容することなく、スパウト付きパウチ10そのものを使用し、又は陳列や運搬を行ってもよい。
【0044】
また、各フィルム30、40、50、60、70の具体的態様については、低密度ポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系やPET(ポリエチレンテレフタレート)などのポリエステル系等の熱溶着性を有する層を少なくとも片面に有するものであれば、熱溶着層の単膜又は熱溶着層に任意の層を積層してもよい。積層を構成する素材は如何なるものでもよく、公知のPETやPBT(ポリブチレンテレフタレート)等のポリエステル、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエチレン、アルミ箔等を積層することで任意に形成すればよい。
また、上述した実施形態では、パウチ本体20が、フィルム30、40、50、60の4枚のフィルムから形成されているものとして説明したが、パウチ本体20を構成するフィルムの枚数等の、パウチ本体20の具体的態様は、上記に限定されず、例えば、パウチ底部20aに対応する位置に底部用のマチ用フィルムを別途設けてもよい。
また、内側フィルム70については設けなくてもよい。
また、上述した実施形態では、スパウト付きパウチ10が容量2~5Lの大容量パウチとして構成され、また、スパウト80についても、フランジ81の外径が50~70mmの大型スパウトとして構成されているが、スパウト付きパウチ10やスパウト80の大きさは、これに限定されず、実施形態に応じて任意に設定すればよい。
【0045】
また、上述した実施形態では、表側外縁54および裏側外縁55が、側方マチフィルム50の表裏方向Xの中央を上下方向Yに沿って延びる仮想線を基準として線対称(左右対称)に形成されているものとして説明したが、表側外縁54および裏側外縁55が左右非対称に形成されてもよい。
【0046】
また、上述した実施形態では、制御シール部51a、52aが、シール領域51、52に連続して形成されているものとして説明したが、制御シール部51a、52aをシール領域51、52から独立して(離れた位置に)形成してもよい。
【0047】
また、上述した実施形態では、フランジ81が、円形の外周縁を有した円盤状に形成されているものとして説明したが、フランジ81の具体的形状は、矩形状や多角形状等の円形以外の形状の外周縁(フランジ外周縁)を有するもの等、如何なるものでもよい。
また、上述した実施形態では、フランジ81が、側方マチフィルム50の内側面に固着されるものとして説明したが、フランジ81を側方マチフィルム50の外側面に固着してもよい。
また、フランジ81を側方マチフィルム50に固着する方法は、熱溶着以外にも接着等の如何なるものでもよい。
【0048】
なお、本明細書内では、「頂部」「底部」「側部」等の上下を示す用語を使用しているが、これら用語は、陳列時や運搬時等におけるスパウト付きパウチ10の設置の向きを限定するものではなく、例えば、陳列時や運搬時等に、スパウト付きパウチ10の側部や頂部を下にして載置面上にスパウト付きパウチ10を設置してもよい。
【0049】
また、上述した実施形態では、パウチ頂部側を把持してスパウト付きパウチ10を持ち上げた状態で内容液注出を行うものとして説明したが、内容液注出の具体的態様は上記に限定されず、例えば、パウチ底部20a等のパウチ頂部以外の箇所を支えたり把持したりしてスパウト付きパウチ10を持ち上げた状態で内容液注出を行ってもよく、また、スパウト付きパウチ10を載置面上に置いた状態で内容液注出を行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0050】
10 ・・・ スパウト付きパウチ
20 ・・・ パウチ本体
20a ・・・ パウチ底部
21 ・・・ 内容液収容部
22 ・・・ 第1サイドシール(サイドシール)
23 ・・・ 第2サイドシール
24 ・・・ トップシール
25 ・・・ ボトムシール
26 ・・・ 中間シール
27 ・・・ 把手孔
30 ・・・ 表側フィルム
40 ・・・ 裏側フィルム
50 ・・・ 側方マチフィルム
51 ・・・ 表側シール領域
51a ・・・ 制御シール部
52 ・・・ 裏側シール領域
52a ・・・ 制御シール部
53 ・・・ 非シール領域
53a ・・・ 下端連結部
53b ・・・ 上端連結部
54 ・・・ 表側外縁
54a ・・・ ベース縁部
54b ・・・ 下方側傾斜縁部
54c ・・・ 上方側傾斜縁部
54d ・・・ 緩傾斜部分
54e ・・・ 急傾斜部分
55 ・・・ 裏側外縁
55a ・・・ ベース縁部
55b ・・・ 下方側傾斜縁部
55c ・・・ 上方側傾斜縁部
55d ・・・ 緩傾斜部分
55e ・・・ 急傾斜部分
56 ・・・ フランジ対向領域
57 ・・・ スパウト用貫通孔
60 ・・・ 第2フィルム
70 ・・・ 内側フィルム
80 ・・・ スパウト
81 ・・・ フランジ
82 ・・・ 注出筒部
82a ・・・ 注出孔
83 ・・・ キャップ
L1 ・・・ 第1仮想線
L2 ・・・ 第2仮想線
X ・・・ 表裏方向
Y ・・・ 上下方向
Z ・・・ 前後方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7