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特開2023-78507塗装装置およびその装置を用いた塗装方法
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  • 特開-塗装装置およびその装置を用いた塗装方法 図1
  • 特開-塗装装置およびその装置を用いた塗装方法 図2
  • 特開-塗装装置およびその装置を用いた塗装方法 図3
  • 特開-塗装装置およびその装置を用いた塗装方法 図4
  • 特開-塗装装置およびその装置を用いた塗装方法 図5
  • 特開-塗装装置およびその装置を用いた塗装方法 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023078507
(43)【公開日】2023-06-07
(54)【発明の名称】塗装装置およびその装置を用いた塗装方法
(51)【国際特許分類】
   B05C 11/04 20060101AFI20230531BHJP
   B05D 7/14 20060101ALI20230531BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20230531BHJP
   B05D 1/30 20060101ALI20230531BHJP
   B05D 1/28 20060101ALI20230531BHJP
【FI】
B05C11/04
B05D7/14 P
B05D3/00 C
B05D3/00 D
B05D1/30
B05D1/28
B05D3/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021191654
(22)【出願日】2021-11-26
(71)【出願人】
【識別番号】391016613
【氏名又は名称】安田株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119725
【弁理士】
【氏名又は名称】辻本 希世士
(74)【代理人】
【識別番号】100168790
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 英之
(72)【発明者】
【氏名】海老 実
【テーマコード(参考)】
4D075
4F042
【Fターム(参考)】
4D075AC12
4D075AC53
4D075AC84
4D075AC88
4D075AC91
4D075AD05
4D075AE05
4D075BB60Z
4D075CA18
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA06
4D075DB01
4D075DB02
4D075DB07
4D075DC01
4D075DC02
4D075EA05
4D075EA29
4D075EA41
4D075EC30
4F042AA02
4F042BA25
4F042DD02
4F042DD07
4F042DD20
4F042DD44
(57)【要約】
【課題】面積の広い金属板に塗装する場合に余分な労力や時間がかかってしまうことがなく、しかも多層に塗装しても、膜厚が平均化して、真っ平らな塗装面を得ることができる塗装装置およびその装置を用いた塗装方法を提供する。
【解決手段】塗膜層を形成する金属板1が載置される定盤2の両側に敷設されたレール3に架け渡され、この定盤2の水平方向に移動するようにした台車4の前部に、前記金属板1との隙間Sを調整自在とした塗装板5を上下動可能として取り付けている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗膜層を形成する金属板が載置される定盤の両側に敷設されたレールに架け渡され、この定盤の水平方向に移動するようにした台車の前部に、前記金属板との隙間を調整自在とした塗装板を上下動可能として取り付けたことを特徴とする塗装装置。
【請求項2】
前記塗装板は、前記金属板への塗装幅と略同一幅とした横長の略四角形状としており、その下辺と前記金属板との間に一定厚みの塗膜調整板を着脱自在として挟み込めるようにしたことを特徴とする請求項1記載の塗装装置。
【請求項3】
前記請求項1または2記載の塗装装置を用いた塗装方法であって、塗膜層を形成する金属板を前記定盤上に載置し、前記レールに沿って位置合わせし、この金属板と前記塗装板との隙間を一定間隔に調整してから、前記金属板の塗装面に塗料を垂れ流してローラーで塗装し、前記台車を前記レールに沿って移動させ、前記金属板との隙間を調整された塗装板で、前記塗料を金属板の全体に満遍なく塗装することを特徴とする塗装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミ板、鋼板などの金属板に一定の膜厚で、耐火塗料や防錆塗料などの塗料を多層塗装するのに適した塗装装置およびその装置を用いた塗装方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、水性防食プライマーを下塗りとして塗装した鋼材表面に、耐火性に優れた発泡型耐火塗料を塗装する方法が存在する(特許文献1)。
【0003】
前記鋼材表面への発泡型耐火塗料の塗装方法としては、水性防食プライマーの下塗りと同様に、例えば、刷毛塗り、ローラー塗り、エアレススプレー塗装等が挙げられるとしている。
【0004】
さらに、発泡型耐火塗料によって凹凸状に塗料層を形成した後、その塗料層の凹部が塗料層の凸部の厚み以上になるように被覆層を形成し、その被覆層が乾燥、硬化した後に、被覆層を平滑に研磨する塗装方法が従来から存在する(特許文献2)。
【0005】
前記発泡型耐火塗料の塗装は、スプレー塗装、ローラー塗装、鏝、ヘラによる塗装など一般的に用いられる塗装方法により行うことができるとしている。この発泡型耐火塗料による塗料層の膜厚は、被塗装物に必要な耐火性能に応じて、適宜選択し、決めるものであるが、多くの場合は、平均膜厚が1mm~5mm程度で、その範囲により、十分な耐火性能を有するとしている。
【0006】
また、耐火塗料の硬化膜を被塗装金属材の表面に形成する耐火施工方法として、耐火塗料の硬化膜が形成されていない硬化膜未形成部分に、発泡型耐火塗料を予め硬化して成る耐火硬化膜を、乾燥硬化する前の下塗り層を介して、貼着する貼着工程と、この下塗り層を乾燥硬化する硬化工程を有したものが従来から存在する(特許文献3)。
【0007】
前記被塗装金属材の表面に塗装する下塗り塗料、発泡型耐火塗料の塗装は、刷毛塗り、スプレー塗装、ロールコータ等の公知の方法で行うことができるとしており、塗装により形成される下塗り層の厚みは、30μm~1mmが好ましく、耐火塗装層の厚みは、500μm~5mmが好ましいとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000-212472号公報
【特許文献2】特開2003-62519号公報
【特許文献3】特開2014-105566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記特許文献1~3に記載された耐火塗料の塗装方法としては、刷毛塗り、ローラー塗り、エアレススプレー塗装等が挙げられるとしたり、スプレー塗装、ローラー塗装、鏝、ヘラによる塗装など一般的に用いられる塗装方法により行うことができるとしたり、刷毛塗り、スプレー塗装、ロールコータ等の公知の方法で行うことができるとしているが、特にその塗装方法を特定していない。
【0010】
しかしながら、屋根や壁などに使用するアルミ板、鋼板などの面積の広い金属板に塗装する場合には、そのような金属板に応じた塗装方法でないと、塗装するのに余分な労力や時間がかかってしまうという課題を有していた。
【0011】
さらに、前記特許文献1~3に記載された耐火塗料の塗装の膜厚は、多くの場合は、平均膜厚が1mm~5mm程度で、その範囲により、十分な耐火性能を有するとしたり、500μm~5mmが好ましいとしている。
【0012】
しかし、耐火塗料の塗装において、膜厚を5mm程度にするには、一回の塗装では成し得ず、多数回の塗装をおこなって多層にしないと成し得ないが、前記のような一般的に用いられる塗装方法では多数回の塗装をおこなうと、膜厚が平均化せず、真っ平らな塗装面を得ることが困難であるという課題を有していた。
【0013】
そこで、本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、面積の広い金属板に塗装する場合に余分な労力や時間がかかってしまうことがなく、しかも多層に塗装しても、膜厚が平均化して、真っ平らな塗装面を得ることができる塗装装置およびその装置を用いた塗装方法を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
そのため、本発明の塗装装置は、塗膜層を形成する金属板1が載置される定盤2の両側に敷設されたレール3に架け渡され、この定盤2の水平方向に移動するようにした台車4の前部に、前記金属板1との隙間Sを調整自在とした塗装板5を上下動可能として取り付けている。
【0015】
そして、本発明の塗装装置において、前記塗装板5は、前記金属板1への塗装幅と略同一幅とした横長の略四角形状としており、その下辺5aと前記金属板1との間に一定厚みの塗膜調整板7を着脱自在として挟み込めるようにしている。
【0016】
さらに、本発明の塗装装置を用いた塗装方法は、塗膜層を形成する金属板1を前記定盤2上に載置し、前記レール3に沿って位置合わせし、この金属板1と前記塗装板5との隙間を一定間隔に調整してから、前記金属板1の塗装面に塗料を垂れ流してローラーで塗装し、前記台車4を前記レール3に沿って移動させ、前記金属板1との隙間を調整された塗装板5で、前記塗料を金属板1の全体に満遍なく塗装するようにしている。
【発明の効果】
【0017】
本発明の塗装装置およびその装置を用いた塗装方法は、面積の広い金属板に塗装する場合に余分な労力や時間がかかってしまうことがなく、しかも多層に塗装しても、膜厚が平均化して、真っ平らな塗装面を得ることができるものとなった。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の塗装装置の一実施形態を示す斜視図である。
図2図1に示す塗装装置の平面図である。
図3図1に示す塗装装置の要部拡大斜視図である。
図4図1に示す塗装装置の要部側面図である。
図5】本発明の塗装装置による塗装時の金属板の両端部に沿って遮蔽版を設置した状態を示す説明図である。
図6】本発明の塗装装置による塗装時の金属板と塗装板との隙間の調整の仕方を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の塗装装置およびその装置を用いた塗装方法を実施するための形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
【0020】
本発明の塗装装置は、図1~4に示したように、塗膜層を形成する四角形状の金属板1が載置される四角形状の定盤2の両側に敷設されたレール3に架け渡され、この定盤2の前後水平方向に移動するようにした台車4を備えている。そして、前記台車4の前部には、前記金属板1との隙間Sを調整自在とした塗装板5を上下動可能として取り付けている。
【0021】
前記金属板1としては、耐火塗料や防錆塗料などの塗料を塗装可能なアルミ板、鉄板、鋼板などが用いられ、壁材や屋根材などとして適用するために、一辺が1~3m程度の四角形とすることができる。
【0022】
前記定盤2としては、鋳鉄などの金属材やスギなどの木材によって箱型などに形成されており、前記金属板1の載置する水平面を有しており、床面などの載置面へは架台方式、アンカー固定方式などによって固定されている。この定盤2は、前記金属板1を載置するのに充分な大きさ有したものとしており、少なくとも前記金属板1よりは一回り大きい四角形としている。
【0023】
前記レール3としては、アルミなどの金属製の型材としており、定盤2の両側の内方や外方に連結材などを介して敷設したり、定盤2の両側外方に、架台などによって定盤2とは連結しない状態で敷設したものとすることができる。
【0024】
前記台車4としては、アルミや鉄鋼製の四角筒などからなる本体41の下部両端に支持台42を介在させて水平支持脚43を取り付けると共に、この本体41の上にウエイト設置部44を設けている。水平支持脚43には、それぞれ前後に二個、合計四個のキャスター45が取り付けられており、これらキャスター45が、レール3上を転動することにより、台車4が前後水平方向に移動するようにしている。ウエイト設置部44には、鉄鋼製の角柱材などからなるウエイト46が設置されるようにしており、このウエイト46により台車4が揺れ動くことなく安定した状態でレール3上を移動できるようにしている。
【0025】
前記塗装板5としては、アルミ板、鋼板などからなり、前記金属板1の表面に、前記塗料を塗装する厚さに延ばすようにしたものである。この塗装板5は、前記金属板1への塗装幅と略同一幅とした横長の略四角形状としており、前記台車4の本体41の前面に上下動可能として取り付けられている。図示した実施形態では、前記塗装板5の中央と両端に形成した縦長孔51に、前記台車4の本体41の前面の中央と両端に突設したボルトBを通して、蝶ナッなどのナットNで締め付けることにより、取り付けられるものとしている。
【0026】
さらに、塗装時には、図5に示したように、前記金属板1の両端部に沿って遮蔽板6を着脱自在として設置できるようにしている。この遮蔽板6は、塗装時に塗料が前記金属板1の両端から外方へ流れ出すのを阻止するようにしたものである。さらに、この遮蔽板6は、L字状のアングルに曲げ加工したものとするのが好ましい。このようにすると、L字状のアングルの垂直部を内側にし、水平部を外側にして、前記遮蔽板6を金属板1の両端部に設置すれば、塗装時に塗料が前記遮蔽板6を越えて前記金属板1の両端外方にはみ出すことがない。
【0027】
そして、図6に示したように、前記塗装板5の下辺5aと前記金属板1との間に一定厚みの塗膜調整板7を着脱自在として挟み込めるようにしている。この塗膜調整板7は、前記金属板1に塗装する塗料の膜厚を調整するものであり、アルミ板、鋼板などが用いられ、厚さを前記塗料の膜厚に応じたものとしており、600μm~1.0mmに設定している。また、この塗膜調整板7も、L字状のアングルに曲げ加工したものとするのが好ましい。このようにすると、L字状のアングルの垂直部を支持することができ、水平部を前記塗装板5の下辺5aと前記金属板1との間に挟み込む操作がし易くなる。
【0028】
次に、前記塗装装置を用いた塗装方法において、耐火塗料を塗装する場合について詳細に説明する。
【0029】
先ず、耐火塗料を塗装する金属板1をアルミ板とし、このアルミ板をダブルアクションサンダー(ポリッシャー)で両面荒らしを行なう。前記アルミ板としては、A1100PーH14またはA3003PーH14、もしくは1100番より強度のあるものが好ましい。
【0030】
次に、前記アルミ板の表面にプライマー塗装する。このプライマー塗装は、エポマリンGX(関西ペイント株式会社)をテクトEPシンナー(関西ペイント株式会社)で希釈したプライマーを、塗膜厚が約40μmになるように、ローラーで一回塗りし、塗装完了後は24時間以上乾燥する。
【0031】
耐火塗料の塗装は、初めに、ベースコートS605(化工機商事株式会社)をエナメルシンナー(関西ペイント株式会社)で希釈した耐火塗料を、塗膜厚が約250μmになるように、ローラーで一回塗りし、塗装完了後は12時間以上乾燥する。
【0032】
そして、前記耐火塗料をローラーで一回塗りし乾燥したアルミ板を、前記塗装装置の定盤2上に載置し、レール3に沿って位置合わせをしてから、次のa)~e)の工程を経て、前記アルミ板に一回目の耐火塗料の塗装を行なう。
【0033】
a)先ず、前記アルミ板の長さ方向の両端に5~10mm程度被せながらマスキングテープTを貼り、図5に示したように、前記アルミ板の幅方向の両端に沿って前記遮蔽板6を設置する。
【0034】
b)次に、図6(a)に示したように、前記塗装装置の塗装板5の下辺5aと前記アルミ板の間に、板厚を800μmmとした塗膜調整板7を挿入し、前記ナットNを緩めることにより塗装板5を下降させて、塗膜調整板7に接触した位置で前記ナットNを再び締め付け、その後、図6(b)に示したように、前記塗膜調整板7を前記塗装板5の下辺5aと前記アルミ板の間から抜き取る。すると、前記塗装板5の下辺5aと前記アルミ板の隙間Sは、800μmに調整される。このようにして、前記塗装板5と前記アルミ板との隙間を一定間隔に調整する。
【0035】
c)前記アルミ板の塗装面の適宜個所に耐火塗料を垂れ流し、先ずローラーで一面に塗装し、あふれる耐火塗料を遮蔽板6の近辺とアルミ板の中央に寄せておく。
【0036】
d)そして、前記台車4をレール3に沿って移動させ、前記アルミ板との隙間を調整された塗装板5で、前記耐火塗料をアルミ板の全体に満遍なく塗装して行く。
【0037】
e)前記耐火塗料の塗装を完了したアルミ板は24時間据え置き、乾燥用棚またはラック、パレットに移動し、耐火塗料が乾燥するまで待つ。
【0038】
そして、a)~e)の工程を2~5回繰り返すことにより、前記耐火塗料をアルミ板に、平均化した膜厚で多層に塗装する。
【0039】
前記塗装方法では、塗装板5の下辺5aとアルミ板の隙間が800μmに調整されているため、一回当たりの塗膜厚が800μmになり、2~5回繰り返すことにより、1.6~4. 0mmになるが、塗装板5の下辺5aとアルミ板の隙間や繰り返す回数を変更すれば、任意の膜厚に塗装することができる。
【0040】
さらに、前記耐火塗装したアルミ板の表面には、トップコートの塗装を行なうことができる。このトップコートの塗装は、セラMフッソ(関西ペイント株式会社)を塗料用シンナーA(関西ペイント株式会社)で希釈したトップコートを、ローラーで一回塗りし、塗装完了後は12時間以上乾燥する。
【0041】
本発明の塗装装置およびその装置を用いた塗装方法は、以上述べたように構成されているので、先にも述べたように、面積の広い金属板に塗装する場合に余分な労力や時間がかかってしまうことがなく、しかも多層に塗装しても、膜厚が平均化して、真っ平らな塗装面を得ることができるものとなる。
【符号の説明】
【0042】
1 金属板
2 定盤
3 レール
4 台車
5 塗装板
5a 下辺
7 塗膜調整板
S 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6