(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023078511
(43)【公開日】2023-06-07
(54)【発明の名称】バグフィルター式集塵機
(51)【国際特許分類】
B01D 46/04 20060101AFI20230531BHJP
B01D 39/16 20060101ALI20230531BHJP
B01D 46/52 20060101ALI20230531BHJP
【FI】
B01D46/04 103
B01D39/16 A
B01D46/52 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021191663
(22)【出願日】2021-11-26
(71)【出願人】
【識別番号】511266106
【氏名又は名称】東北電機鉄工株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】592255257
【氏名又は名称】YKアクロス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】508251575
【氏名又は名称】株式会社 フィルターサービス
(74)【代理人】
【識別番号】110002136
【氏名又は名称】弁理士法人たかはし国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 淳一郎
(72)【発明者】
【氏名】江田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】大野 豊
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 庸行
【テーマコード(参考)】
4D019
4D058
【Fターム(参考)】
4D019AA01
4D019BA13
4D019BB03
4D019CA02
4D019CB01
4D019CB04
4D058JA04
4D058JA10
4D058JB25
4D058KA01
4D058KA06
4D058KA11
4D058KA16
4D058KA27
4D058KA30
4D058KC74
4D058MA15
4D058MA17
4D058MA22
(57)【要約】
【課題】省エネルギーかつ高効率で粉体の払い落としを行うことが可能であり、また、メンテナンスに要する負担が少なく操業効率を高めることのできるバグフィルター式集塵機を提供する。
【解決手段】フィルターFと、該フィルターFに圧縮空気を噴射するインジェクターIとを有するバグフィルター式集塵機において、インジェクターIの噴射スリットの形状を、一次空気を水平面より下方に噴射させるような形状とし、かつ、インジェクターIの筒状部材の径方向外側に、フィルターFの口部を覆うカバー部材Cを設置することにより、省エネルギー化と粉体の払い落としの高効率化を実現した。また、フィルターFを、コイルスプリング部F5を有するプリーツ形状のフィルターとすることにより、フィルターFの破損を防止し、メンテナンスに要する負担を軽減できるようにした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルターと、該フィルターに圧縮空気を噴射するインジェクターとを有するバグフィルター式集塵機であって、
該インジェクターが、圧縮空気管から圧縮空気が供給される接続孔をその下部に有し、該圧縮空気管から該接続孔を通じて供給された圧縮空気を噴射する噴射スリットをその内径の円周上に有する環状部材と、該環状部材の下方同軸上に位置し、該噴射スリットから一次空気が瞬間的に噴射される際に、該一次空気に上方からの誘引空気を伴って増幅空気を下方に設置されたフィルターに送り出す筒状部材とからなり、該環状部材は、環状部材下部と環状部材上部とからなり、該環状部材下部と該筒状部材はコアンダ面形成体を介して一体となっており、該環状部材上部の内径側に位置する内径側環状部材上部を噴射スリット上部とし、該コアンダ面形成体を噴射スリット下部として形成された噴射スリットの形状が、該一次空気を水平面より下方に噴射させるようになっているインジェクターであり、
該フィルターが、周方向に山谷が連続するプリーツ状かつ径方向に伸縮可能に形成されたフェルトからなるフィルター本体と、該フィルター本体の軸方向の一端側に設けられ、該フィルター本体の一端を開口状態に形成した口部と、該フィルター本体の軸方向の他端側に設けられ、該フィルター本体の他端を閉じた状態に形成した底部と、該フィルター本体の周方向に連続する各折り山が、コイルスプリングの隣り合う巻線の間に配置され、該フィルター本体の周方向の少なくとも3カ所において等間隔の距離をもって、該コイルスプリングが該フィルター本体に固定金具によって固定されているコイルスプリング部と、を備えるプリーツフィルターであり、
該インジェクターの該筒状部材の先端が、該フィルターの内部に延伸しており、該筒状部材の径方向外側に、該フィルターの該口部を覆うカバー部材が設置されていることを特徴とするバグフィルター式集塵機。
【請求項2】
前記フィルターが、前記コイルスプリング部を複数有する請求項1に記載のバグフィルター式集塵機。
【請求項3】
前記フィルターが、前記コイルスプリング部を2つ有する請求項2に記載のバグフィルター式集塵機。
【請求項4】
前記フィルターにおいて、前記フィルター本体の前記口部の側の端部から前記底部の側の端部までの間の距離をL、前記口部の側の端部から口部の側のコイルスプリング部までの間の距離をL1とした時、L1/Lの値が0.34以上である、請求項3に記載のバグフィルター式集塵機。
【請求項5】
前記L1/Lの値が0.7以下である請求項4に記載のバグフィルター式集塵機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バグフィルター式集塵機に関する。
【背景技術】
【0002】
バグフィルター式集塵機は、主に産業設備の排ガス中のダストを集塵するために使用されるろ過式集塵機であり、化学、食品、製薬、繊維、肥料、木材、製鉄等の産業において広く使用されている。
【0003】
バグフィルター式集塵機においては、ろ布で袋状に形成した複数のバグフィルターは、ケーシング内に配設され、このバグフィルターの外部から内部に被処理ガスを通過させてろ過するようになっている。被処理ガス中に含まれる粉体は、バグフィルターによって捕集され、そのバグフィルターの外面に付着堆積する。
そのため、堆積した粉体は定期的に払い落す必要があり、例えば、パルスジェットを、圧縮空気管を通じてバグフィルターの上部からバグフィルター内に作用させ、かかる堆積粉体の払い落としを行う技術が知られている(特許文献1~6)。
【0004】
バグフィルター式集塵機において、粉体払い落としの効率を更に改善するための技術が種々知られている。
【0005】
特許文献7には、バグフィルター式集塵機において、インジェクターとして、内部に環状の空間が形成されている環状部材に設けられた噴射孔から、該環状部材に連設された筒状部材を経て、フィルターに圧縮空気を噴射するようにした装置が記載されている。
【0006】
特許文献8においては、特許文献7のような環状部材と筒状部材を有するインジェクターにおいて、バグフィルター式集塵機のインジェクターの噴射スリットの形状を特定なものにすることによって、噴射スリットから一次空気が噴射される際に、より多くの誘引空気を伴うことができ、その結果として、バグフィルターの上面開口部に向かって大量の増幅空気を瞬間的に送り出すことができ、バグフィルターの外面に付着した粉体を効率よく払い落とすことができるようにしたインジェクターが記載されている。
【0007】
特許文献9においては、特許文献7のような環状部材と筒状部材を有するインジェクターにおいて、筒状部材の先端を、フィルターの内部に延伸するようにし、該筒状部材の径方向外側に、該フィルターの上端開口部を覆うカバー部材が設置されている装置が記載されている。特許文献9に記載の発明においては、カバー部材によって、フィルター内の圧力がフィルターの上端開口部からフィルター外に逃げることが抑制され、ろ過風速が大きい場合やフィルターの径が大きい場合においても、粉体を効率よく払い落とすことができる。
【0008】
また、バグフィルター式集塵機は、その性能を保つために、定期的にメンテナンスを行う必要があり、その作業に発生する労力やコスト等が大きな負担となっている。
バグフィルター式集塵機のメンテナンスの負担を軽減するための工夫も知られている。
【0009】
特許文献10には、特許文献7のような環状部材と筒状部材を有するインジェクターにおいて、圧縮空気を供給する圧縮空気管を1本のみ設けることにより、粉体払い落としの効率を保ちつつ、大幅に軽量化されたインジェクターが記載されている。また、かかるインジェクターは、既存のブローチューブを用いた装置からの取り替えが容易であることが記載されている。
【0010】
特許文献11においては、周方向に山谷が連続するプリーツ状かつ径方向に伸縮可能に形成されたフェルトからなるプリーツフィルターにおいて、フィルター本体の周方向に沿ってコイルスプリングを輪状に設けることにより、径方向の収縮の抑制と膨張の抑制とを達成可能なフィルターが記載されている。特許文献11のフィルターの内部には、リテーナーを設ける必要がないため、フィルター内面とリテーナーとの擦れの問題も解消されるため、フィルターの寿命を長くすることができる。
【0011】
バグフィルター式集塵機は、様々な産業分野で需要があることから、かかる公知技術には更なる改善が求められている。より高効率で粉体の払い落としを行うことが可能であり、また、メンテナンスに要する負担の少ないバグフィルター式集塵機の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2002-028425号公報
【特許文献2】特開2003-220314号公報
【特許文献3】特開2005-125293号公報
【特許文献4】特開2006-305400号公報
【特許文献5】特開2006-000704号公報
【特許文献6】特開2005-288278号公報
【特許文献7】特開2008-115847号公報
【特許文献8】特開2014-008502号公報
【特許文献9】特開2017-109176号公報
【特許文献10】特開2013-116446号公報
【特許文献11】特開2019-141832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は前記背景技術に鑑みてなされたものであり、その課題は、省エネルギーかつ高効率で粉体の払い落としを行うことが可能であり、また、メンテナンスに要する負担が少なく操業効率を高めることのできるバグフィルター式集塵機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、前記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定のインジェクターと特定のフィルターとを組み合わせて使用することによって、省エネルギーかつ高効率で粉体の払い落としを行うことが可能であり、また、メンテナンスの手間を大幅に削減できることを見出した。更に、装置内において、インジェクターとフィルターを併用する際に、インジェクターの筒状部材の先端部と、フィルターの口部を覆うカバー部材を設置することにより、粉体の払い落としを更に高効率で実施できることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明は、フィルターと、該フィルターに圧縮空気を噴射するインジェクターとを有するバグフィルター式集塵機であって、
該インジェクターが、圧縮空気管から圧縮空気が供給される接続孔をその下部に有し、該圧縮空気管から該接続孔を通じて供給された圧縮空気を噴射する噴射スリットをその内径の円周上に有する環状部材と、該環状部材の下方同軸上に位置し、該噴射スリットから一次空気が瞬間的に噴射される際に、該一次空気に上方からの誘引空気を伴って増幅空気を下方に設置されたフィルターに送り出す筒状部材とからなり、該環状部材は、環状部材下部と環状部材上部とからなり、該環状部材下部と該筒状部材はコアンダ面形成体を介して一体となっており、該環状部材上部の内径側に位置する内径側環状部材上部を噴射スリット上部とし、該コアンダ面形成体を噴射スリット下部として形成された噴射スリットの形状が、該一次空気を水平面より下方に噴射させるようになっているインジェクターであり、
該フィルターが、周方向に山谷が連続するプリーツ状かつ径方向に伸縮可能に形成されたフェルトからなるフィルター本体と、該フィルター本体の軸方向の一端側に設けられ、該フィルター本体の一端を開口状態に形成した口部と、該フィルター本体の軸方向の他端側に設けられ、該フィルター本体の他端を閉じた状態に形成した底部と、該フィルター本体の周方向に連続する各折り山が、コイルスプリングの隣り合う巻線の間に配置され、該フィルター本体の周方向の少なくとも3カ所において等間隔の距離をもって、該コイルスプリングが該フィルター本体に固定金具によって固定されているコイルスプリング部と、を備えるプリーツフィルターであり、
該インジェクターの該筒状部材の先端が、該フィルターの内部に延伸しており、該筒状部材の径方向外側に、該フィルターの該口部を覆うカバー部材が設置されていることを特徴とするバグフィルター式集塵機を提供するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、省エネルギーかつ高効率で粉体の払い落としを行うことが可能であり、また、メンテナンスに要する負担が少なく操業効率を高めることのできるバグフィルター式集塵機を提供することができる。
【0017】
本発明では、装置を大型化しなくても、十分な粉体の払い落とし性能を発揮できる。このため、本発明のバグフィルター式集塵機は、小さなスペースに設置することができる。その結果、本発明により、バグフィルター式集塵機の適用の幅も広がる。
【0018】
本発明では、インジェクターから噴射された空気を逃すことなく効率的に利用することができ、払い落とし効率が向上する。このため、インジェクターに供給する圧縮空気の量や圧力を小さくすることができる。これにより、省エネルギー化につながるのみならず、高い圧力の空気が通過することにより装置の破損等の不具合も減少させることができ、操業効率の改善にもつながる。
【0019】
通常、集塵機には、フィルターの内部にフィルターの破損を防止するためのリテーナーが設けられており、メンテナンスの際に、リテーナーの交換に大きな手間が発生する場合が多い。
本発明では、フィルターの内部にリテーナーを設ける必要がないため、メンテナンスにかかる労力や頻度を少なくすることができる。
【0020】
通常、バグフィルター式集塵機の天井には、リテーナーの交換の際に使用する点検口が設けられているところ、リテーナーが不要な本発明では、かかる点検口を設ける必要がない。このため、天井部から雨水等が侵入することによる腐食を防止することができ、装置の長寿命化につながる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明のバグフィルター式集塵機の内部に設置されたインジェクター、フィルター及びカバー部材を示す模式図である。
【
図2】本発明のバグフィルター式集塵機の内部に設置されたインジェクター、フィルター及びカバー部材を示す模式図である。
【
図3】本発明におけるインジェクターの一例を示す側面図である。
【
図4】本発明におけるインジェクターの平面図である。
【
図7】
図5の環状部材と噴射スリットの拡大断面図である。
【
図8】
図7のD部分の拡大断面図である。 (1)内径側環状部材上部の最下点が、コアンダ面形成体の最上点の真上にある噴射スリットの形状を示す図である。 (2)~(4)内径側環状部材上部の最下点が、コアンダ面形成体の最上点よりdだけ環状部材の中心側(右側)に位置する噴射スリットの形状を示す図である((2)から(4)になるに従って、dが大きくなっている)。
【
図9】内径側の環状部材上部の更に内側に、下方に屈曲した一次空気ガイド環が設けてある噴射スリットの形状を示す図である。
【
図10】本発明におけるフィルターの一例を示す側面図である。
【
図12】本発明におけるフィルターが備える固定金具の一例を示す斜視図である。 (a)固定金具本体 (b)リベット
【
図13】本発明におけるフィルターが備える固定金具によって、コイルスプリングがフィルターに固定されている状態を示す斜視図である。
【
図14】
図12に示される固定金具によりコイルスプリングが連結されたフィルター本体の変形について説明するための模式図である。 (a)フィルターの周方向に、均等(等間隔)な位置に固定金具が配置されている場合 (b)フィルターの周方向に、均等(等間隔)な位置に固定金具が配置されていない場合
【
図15】
図10に示されるフィルターの径方向の一部断面を拡大して示す図である。
【
図16】
図10に示されるフィルターの口部を一部拡大した断面図である。
【
図17】
図10に示されるフィルターの底部を一部拡大した断面図である。
【
図18】フィルターがコイルスプリング部を2つ有する場合のフィルターの膨張具合を示す図である(L1/L=1/2、L2/L3=1)。 (a)圧縮空気を噴射していない状態 (b)圧縮空気を噴射している状態
【
図19】フィルターがコイルスプリング部を2つ有する場合のフィルターの膨張具合を示す図である(L1/L=1/3、L2/L3=1)。 (a)圧縮空気を噴射していない状態 (b)圧縮空気を噴射している状態
【
図20】例1において、インジェクター等がバグフィルター式集塵機に取り付けられた状態におけるインジェクター周辺の拡大側面図である。
【
図21】
図20に示されるカバー部材を示す図である。 (a)側面図 (b)平面図
【
図22】例2において、インジェクター等がバグフィルター式集塵機に取り付けられた状態におけるインジェクター周辺の一部断面拡大側面図である。
【
図23】
図22に示されるストッパーが固定されたインジェクターを示す図である。 (a)側面図 (b)下面図
【
図24】例3において、インジェクター等がバグフィルター式集塵機に取り付けられた状態におけるインジェクター周辺の拡大側面図である。
【
図25】
図24に示されるストッパー及び止めねじを示す図である。 (a)平面図 (b)側面図
【
図26】例4において、インジェクター等がバグフィルター式集塵機に取り付けられた状態におけるインジェクター周辺の拡大側面図である。
【
図27】
図26に示されるストッパーが固定された第2管を示す図である。 (a)側面図 (b)C-C矢視断面図
【
図28】例4’において、ストッパーが固定された第2管を示す図である。 (a)側面図 (b)D-D矢視断面図
【
図29】例5において、インジェクター等がバグフィルター式集塵機に取り付けられた状態におけるインジェクター周辺の拡大側面図である。
【
図30】
図29に示されるカバー部材が固定された第2管を示す図である。 (a)平面図 (b)E-E矢視断面図
【
図31】インジェクターが設置されていない、従来のバグフィルター式集塵機における、粉体払い落としを説明する概略断面図である。左側の図は定常的なろ過状態、右側は粉体を払い落としている時の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、任意に変形して実施することができる。
【0023】
本発明は、フィルターFと、フィルターFに圧縮空気を噴射するインジェクターIとを有するバグフィルター式集塵機に関する。本発明のバグフィルター式集塵機において、インジェクターIの筒状部材8の先端は、フィルターFの内部に延伸しており、筒状部材の径方向外側に、フィルターFの口部F3を覆うカバー部材Cが設置されている。
【0024】
図31に、本発明のインジェクターIやカバー部材Cは設置されていないが、フィルターFを複数搭載した一般的なバグフィルター式集塵機の縦断面図を示す。
図31では、4個のフィルターFが描かれている。
図31の左側(2個のフィルターF)は、被処理ガスをフィルターFによってろ過している定常的なろ過状態を示している。フィルターFの外部から内部に被処理ガスを通過させ、そこに含まれる粉体をろ過するようになっている。被処理ガス中に含まれる粉体は、フィルターFによって捕集され、フィルターFの外面に付着堆積する。
【0025】
そのため、付着堆積した粉体は、ろ過性に悪影響を及ぼすので定期的に払い落す必要がある。
図31の右側(フィルターF)は、パルスジェットを、圧縮空気管4を通じてフィルターFの上部からフィルターF内に送り込み、フィルターFの外面に付着堆積した粉体の払い落としを行っている状態を示している。
図31では、シャッターによって、定常的なろ過状態(左側2個)と、フィルターFの外面の粉体の払い落とし状態(右側2個)とを区分していて、定常的なろ過状態の中で、部分的に粉体の払い落とし状態を挿入するようになっている。
【0026】
本発明のバグフィルター式集塵機は、フィルターFの粉体払い落とし時に、フィルターFに上部から瞬間的に増幅空気23を送り出すためのものである。
本発明のインジェクターIは、定期的に挿入される、粉体の払い落とし時に、大量の空気又は高い圧の空気を、フィルターFの上面から内部に瞬間的に送り出すことができるので、フィルターFの外面に付着堆積した粉体を十分に払い落とすことができる。
【0027】
図1に、本発明のバグフィルター式集塵機の内部に設置されたインジェクターI、フィルターF及びカバー部材Cの模式図(インジェクターI、フィルターF及びカバー部材Cをそれぞれ1つずつ有するユニットの模式図)を示す。インジェクターIの筒状部材8の下方にフィルターFが配置され、インジェクターIの筒状部材8の先端と、フィルターFの口部は、カバー部材Cと接触している。
【0028】
インジェクターIは、パルスジェットが通過する圧縮空気管4と接続されている。圧縮空気管4は、接続孔3を通して、環状部材6と接続されており、1つの圧縮空気管4に対して、複数のインジェクターIが接続されている(
図2)。すなわち、圧縮空気を噴射することにより、1つの圧縮空気管4から、
図1に示す複数のユニットに対して、増幅空気を供給できるようになっている。該ユニットの数は、4~12個であることが望ましく、5~10個であることがより望ましく、6~8個であることが特に望ましい。
【0029】
バグフィルター式集塵機の内部には、1つの圧縮空気管4と、該圧縮空気管4から増幅空気を供給された複数のユニットからなるラインが、通常、複数設けられている。該ラインの数は、3~20列であることが望ましく、4~15列であることがより望ましく、5~12列であることが特に望ましい。
【0030】
以下、本発明のバグフィルター式集塵機を構成するインジェクターI、フィルターF及びカバー部材Cについて、例を挙げて説明する。
【0031】
[インジェクター]
本発明におけるインジェクターIは、圧縮空気管4から圧縮空気Xが供給される接続孔3をその下部に有し、圧縮空気管4から接続孔3を通じて供給された圧縮空気Xを噴射する噴射スリット7をその内径の円周上に有する環状部材6と、環状部材6の下方同軸上に位置し、噴射スリット7から一次空気21が瞬間的に噴射される際に、該一次空気21に上方からの誘引空気22を伴って増幅空気23を下方に設置されたフィルターFに送り出す筒状部材8とからなる。
該環状部材6は、環状部材下部6bと環状部材上部6aとからなり、該環状部材下部6bと該筒状部材8はコアンダ面形成体9を介して一体となっており、該環状部材上部6aの内径側に位置する内径側環状部材上部を噴射スリット上部7aとし、該コアンダ面形成体9を噴射スリット下部7bとして形成された噴射スリット7の形状が、該一次空気21を水平面より下方に噴射させるようになっている。
【0032】
本発明におけるインジェクターIは、コアンダ効果により、一次空気に対する増幅空気の量を多くできるため、瞬間的に大量の増幅空気を、その真下に位置するフィルターFに送り出すことができ、フィルターFの外面に付着堆積した粉体を効率よく払い落とすことができる。
【0033】
図3及び
図4に、本発明におけるインジェクターIの好ましい一例を示す。インジェクターIを構成する筒状部材8の側面であり、インジェクターIを構成する環状部材6の片側の下側に、圧縮空気管4が横設されており、環状部材6の他の側の下側に、圧縮空気Xが流入しない補助部材5が横設されている。
上記のような構成であることにより、インジェクターIが軽量となり、取り扱いが容易となり、材料コストを削減できる。
【0034】
特許文献7に記載の発明のように、筒状部材8の側面であり、環状部材6の両側に2つに分岐した圧縮空気管4が平行に横設されていてもよい(図示せず)が、そのようにしても、誘引空気22の量は増加せず、粉体払い落としの効率は向上しない。
また、圧縮空気管4は、環状部材6の下側ではなく、上側に横設されていてもよい(図示せず)。
【0035】
圧縮空気管4からパルス状の圧縮空気Xが、それぞれのインジェクターIの環状部材6の下部に開けられた接続孔3を通して環状部材6に供給されるようになっている。
図5は、
図3におけるA-A’矢視断面図であり、1個のインジェクターIとその側面を通過していて、圧縮空気Xを環状部材6に供給する圧縮空気管4等の断面図である。
圧縮空気管4から接続孔3を通して環状部材6にパルス状に供給された空気は、該環状部材6の内径側に設けられた噴射スリット7から一次空気21として瞬間的に噴射されるようになっている。
【0036】
図5及び
図6に示すように、本発明におけるインジェクターIは、「圧縮空気管4から圧縮空気Xが供給される接続孔3を有し、該接続孔3を通して供給された圧縮空気Xを噴射する噴射スリット7をその内径の円周上に有する環状部材6」と、「該環状部材6の下方同軸上に位置し、該噴射スリット7から一次空気21が瞬間的に噴射される際に、該一次空気21に上方からの誘引空気22を伴った増幅空気23をフィルターFに送り出す筒状部材8」とからなっている。
【0037】
環状部材6はドーナツ状になっており、該環状部材6の内径側には、ドーナツ状の中心に向かって噴射スリット7が存在している(
図5及び
図7参照)。
ドーナツ状の環状部材6の断面形状は、円状であってもよいし(
図5~
図7)、半円状であってもよい。
【0038】
環状部材6には、圧縮空気管4から圧縮空気Xが供給される接続孔3が存在する。
図5~
図7では、該接続孔3は、環状部材6の下部に、各環状部材6に1個存在し、それが好ましい態様である。該接続孔3は環状部材6の上部に存在していてもよいが、既存の装置をコアンダインジェクターに置き換える場合、既存の圧縮空気管4の上下の位置の変更工事が不要な点で、該接続孔3は環状部材6の下部にあることが好ましい。
該接続孔3は各環状部材6に2個以上存在していてもよいが、1個であっても瞬間的に十分な圧縮空気Xを環状部材6に供給できる点、無駄な圧縮空気管4が不要となる点で、1個が好ましい。
【0039】
ドーナツ状の環状部材6の内径は、フィルターFの大きさ等によって決められ特に限定はないが、通常30mm~300mm、好ましくは50mm~200mm、特に好ましくは70mm~150mmである。
また、環状部材6の断面形状が円状である場合の円の内径もフィルターFの大きさ等によって決められ特に限定はないが、通常7mm~100mm、好ましくは10mm~60mm、特に好ましくは15mm~35mmである。環状部材6の断面形状が半円状である場合の半円の内径も同様である。
【0040】
環状部材6の下方には、環状部材6の中心軸を共通して筒状部材8が存在する。フィルターFの粉体払い落とし時には、噴射スリット7から一次空気21が瞬間的に噴射されるが、該筒状部材8は、該一次空気21と上方からの誘引空気22とからなる増幅空気23を、フィルターFの上面に向かって、インジェクターIの下から下方に向かって送り出せるようになっている。すなわち、該筒状部材8は、増幅空気23を四方に放散させないで、インジェクターIの下方に送り出せるようになっており、フィルターFの上面から内部に効率的に該増幅空気23を送り込めるようになっている。
【0041】
筒状部材8の長さ(高さ)は、一次空気21の速度や量、フィルターFの大きさ等に応じて適宜調整される。また、筒状部材8の出口側の形状は、フィルターFの形状及び状況に応じて最適な形に変形できる。
本発明においては、インジェクターIの筒状部材8の先端は、フィルターFの内部に延伸しているので、筒状部材8の長さ(高さ)は、そのようにできるような長さ(高さ)に設計される。
【0042】
筒状部材8の内径は、一次空気21の速度や量、フィルターFの大きさ等によって決められ特に限定はないが、通常20mm~250mm、好ましくは40mm~200mm、特に好ましくは60mm~150mmである。
筒状部材8の内径は、ドーナツ状の環状部材6の内径より、7mm~40mmだけ小さいことが好ましく、10mm~30mmだけ小さいことがより好ましく、15mm~25mmだけ小さいことが特に好ましい。この直径の差異の半分が、円周に沿って設けられたコアンダ面形成体9の横幅に該当する。
【0043】
図7に示したように、環状部材6は、環状部材下部6bと環状部材上部6aとからなり、該環状部材下部6bと筒状部材8はコアンダ面形成体9を介して一体となっている。
環状部材下部6bと環状部材上部6aとは、
図7では外周側がかしめてあるが、外周側の接続は特に限定はなく、一体となっていてもよい。
【0044】
環状部材下部6bのドーナツ状の内周側(中心側)はコアンダ面形成体9となっており、該コアンダ面形成体9は、環状部材6側(
図7及び
図8では左側)に向かって、徐々にせり上がり水平にまでなっており、該コアンダ面形成体9の他方(
図7及び
図8では右側)は、徐々に下方に屈曲して垂直にまでなり、その下の筒状部材8に一体となって接続している。
【0045】
コアンダ面形成体9とは、その表面がコアンダ効果を発揮するように屈曲した形成体を言い、(
図7及び
図8では左側から右側に向かって)徐々にせり上がっている部分から一旦水平になり、(
図7及び
図8では左側から右側に向かって)徐々に下方に屈曲して垂直になるまでの間の環状部材下部6bと筒状部材8に挟まれた部分をいう。
環状部材下部6bからコアンダ面形成体9を介して筒状部材8へと、一次空気21の流れを妨げないように滑らかに一体となって繋がっている。
【0046】
図7及び
図8に示すように、該環状部材上部6aの内径側に位置する内径側環状部材上部を噴射スリット上部7aとし、該コアンダ面形成体9を噴射スリット下部7bとして噴射スリット7が形成されている。噴射スリット7は、
図5に示したように、一次空気21が環状部材6の中心部に向かって噴射されるように、環状部材6の内周側に設けられている。
【0047】
噴射スリット7の平均幅は、圧縮空気Xの量や圧力、環状部材6の直径等に依存して最適値が決められるが、0.1mm~1mmが好ましく、0.2mm~0.6mmがより好ましく、0.3mm~0.4mmが特に好ましい。
噴射スリット7の幅は噴射スリット7の横方向(噴射方向)の位置により変化するが、上記「噴射スリットの平均幅」は、噴射スリット7として流速の速い一次空気21を生成する機能を有しており噴射スリット7として機能する範囲部分の平均値を言う。
【0048】
噴射スリット7の平均幅が大き過ぎる場合には、一次空気21の風速が確保できず、誘引空気22の量が減り、十分な増幅空気23が送り出されず、フィルターFの粉体払い落としが十分にできない場合があり、一方、噴射スリット7の平均幅が小さ過ぎる場合には、コアンダ効果を最大限に活用できず、フィルターFの粉体払い落とし時に粉体を十分に払い落とすことができない場合がある。
【0049】
供給された圧縮空気Xは、噴射スリット7から一次空気21として噴射され、コアンダ面形成体9の表面に沿って曲がり、軸線方向(下方)へと転向され筒状部材8を下降する。
一次空気21は流速が速いので、ベルヌーイの定理から定まる極めて低い圧力を有している。従って、インジェクターIの上方から空気を引き込み、誘引空気22を伴って、増幅空気23として下方に送り出される。
本発明におけるインジェクターIは、下記するように、噴射スリット7の形状、コアンダ面形成体9の表面の屈曲状態等を調整し、コアンダ効果を最大限に活用できるように設計されたものである。
【0050】
すなわち、本発明におけるインジェクターIは、該噴射スリット7の形状が、一次空気21を水平面より下方に噴射させるようになっている。
噴射スリット7の形状を、一次空気21を水平面より下方に噴射させるようにすることで、噴射スリット7の形状が略水平面方向に噴射されるようになっている場合に比較して、一次空気21の圧力や単位時間当たりの一時空気の量が一定であっても、増幅空気23の風速や量は、具体的には、例えば1.2倍~2.1倍も多くなる。
【0051】
インジェクターIは、瞬間的に大量の一次空気21を高圧で噴射させるので、通常のコアンダ効果を利用した、一般的な送風機、連続運転される(継続噴射される)トナー母粒子の分級機等と違い、噴射スリットの向きの影響を受け易い。
【0052】
図5、
図7及び
図8(1)では、噴射スリット7の形状は、略水平面方向に噴射されるようになっている。
一方、
図8(2)~(4)では、噴射スリット7の形状は、一次空気21を水平面より下方に噴射させるようになっている。
【0053】
本発明におけるインジェクターIにおいては、上記噴射スリット7の形状は、上記内径側環状部材上部と上記コアンダ面形成体の最上点9pとの相対位置を調整することによって上記一次空気21を水平面より下方に噴射させるようになっていることが好ましい。
【0054】
図8(1)~(4)では、コアンダ面形成体の最上点9pの位置は固定されて描かれている。そして、内径側環状部材上部が、(1)から(4)になるに従って、左から右に移動している。
図8では、(1)から(4)になるに従って、内径側環状部材上部と上記コアンダ面形成体の最上点9pとの相対位置を調整して、(4)が最も一次空気21を水平面より下方に噴射させるようになっている。
【0055】
図8(4)に示した噴射スリット7の形状を有するインジェクターIでは、
図8(1)に示した噴射スリット7の形状を有する(略水平面方向に噴射されるようになっている)インジェクターに比較して、増幅空気23の量が約1.5倍以上にも増加する。
噴射スリット7から単位時間に噴射される一次空気21の量は、
図8(1)~(4)において一定であるはずなので、(1)から(4)になるに従って、一次空気21が伴う誘引空気22の量が増加すると考えられる。
【0056】
本発明におけるインジェクターIにおいては、上記「内径側環状部材上部の最下点又は立ち上り点」6apの方が、上記コアンダ面形成体の最上点9pより環状部材の中心側に位置することが好ましい。
「内径側環状部材上部の最下点又は立ち上り点」6ap(本明細書においては、この点を、単に「内径側環状部材上部の最下点6ap」と略記する場合がある)とは、
図6に示したように、内径側環状部材上部は、環状部材6側で(
図8では左側に)せり上がっており、逆に(
図8では右側に向かって)そのせり上がりがなくなるが、そのせり上がりがなくなる点を言う。
図8では、左から右に向かって負の傾きが0に近づくが、内径側環状部材上部の最下点6apとは、該傾きが初めて0になった点を言う。
【0057】
「内径側環状部材上部の最下点6ap」と「コアンダ面形成体の最上点9p」との横方向の距離を、「相対位置値d」と定義すると、
図8(1)ではd=0mm、
図8(2)ではd=0.5mm、
図8(3)ではd=1mm、
図8(4)ではd=2mmである。
上記のように、
図8(4)に示した噴射スリット7の形状を有するインジェクターIでは、
図8(1)に示した噴射スリット7の形状を有する(略水平面方向に噴射されるようになっている)インジェクターに比較して、意外にも増幅空気23の量が約1.5倍以上にも増加する。
【0058】
相対位置値dの具体的な値は、環状部材上部6aの内径にも依存し特に限定はないが、好ましくは1mm~10mm、より好ましくは1.5mm~6mm、特に好ましくは2mm~4mmである。
相対位置値dが小さ過ぎると一次空気21が水平面方向に噴射されるため、コアンダ面に沿って下降する空気の量が少なくなり、コアンダ効果を十分に発揮できなくなり、すなわち誘引空気22を引き込み難くなる。水平面方向に噴射される一次空気21は誘引空気22を引き込まず無駄になるため、結果として増幅空気23の量が減り、フィルターFに対して十分な風量を送り出せなくなり、フィルターFの粉体払い落としが十分にできない場合がある。
一方、相対位置値dが大き過ぎると、噴射スリット7の平均幅が大きくなり、一次空気21の風速が確保できず、誘引空気22の量が減り、十分な増幅空気23が送り出されず、フィルターFの粉体払い落としが十分にできない場合がある。
【0059】
また、本発明におけるインジェクターIにおいては、
図9に示したように、上記噴射スリット上部7aを形成する上記内径側環状部材上部の内側に、上記噴射スリット下部7bを形成する上記コアンダ面形成体9の曲面に沿うように下方に屈曲した一次空気ガイド環31を設けることも好ましい。すなわち、一次空気ガイド環31を設けて噴射スリット7の形状を設定することによって、一次空気21を水平面より下方に噴射させるようにしたインジェクターIも本発明の形態として好ましい。
【0060】
一次空気ガイド環31は、コアンダ面形成体9の曲面に沿うように下方に屈曲しており、環状部材上部6aの内径側に設置されている。通常「つば」は外向きだが、内向きに「つば」が出ているような形状をしている。
一次空気ガイド環31は、一次空気21を水平面より下方に噴射させるように下方に屈曲しているが、コアンダ面形成体9の曲面との距離が等しいように屈曲していることが、一次空気21を良好に噴射させるために好ましい。
【0061】
一次空気ガイド環31の幅は特に限定はないが、通常1mm~10mm、好ましくは1.3mm~8mm、より好ましくは1.6mm~7mm、特に好ましくは2mm~5mmである。
【0062】
本発明のインジェクターIの製造方法としては、「上記内径側環状部材上部の最下点又は立ち上り点」6apの、上記コアンダ面形成体の最上点9pに対する相対的位置を変化させ、又は、内径側環状部材上部の内側に、下方に屈曲した一次空気ガイド環を設けて、単位時間にバグフィルター12に送り出される増幅空気23の量が、単位時間に噴射される一次空気21の量の2倍以上になるように噴射スリット7の形状を設定する製造方法が好ましい。
より好ましくは2.7倍以上、特に好ましくは3.4倍以上になるように噴射スリット7の形状を設定する。
【0063】
図8(1)から
図8(4)に示すように、内径側環状部材上部の最下点6apをコアンダ面形成体の最上点9pに対して移動させ、増幅空気23の量が単位時間に噴射される一次空気21の量の2倍以上になる点を探索してインジェクターIを製造する。
又は、一次空気ガイド環の幅を調整して増幅空気23の量が単位時間に噴射される一次空気21の量の2倍以上になる点を探索してインジェクターIを製造する。
特に好ましくは、増幅空気23の量が最大になる点を探索してインジェクターIを製造することである。
【0064】
より具体的には、「内径側環状部材上部の最下点6ap」を、「コアンダ面形成体の最上点9p」から、環状部材6の中心側(内側)に徐々に移動させ、増幅空気23の量が最大になる点を探索してインジェクターIを製造する。
徐々に移動させる方法は、環状部材上部6aと環状部材下部6bとをかしめる位置を変更してもよいが、異なる設計図に基づき、相対位置値dの異なる複数のものを製造し直してもよい。
【0065】
[フィルター]
本発明におけるフィルターFは、周方向に山谷が連続するプリーツ状かつ径方向に伸縮可能に形成されたフェルトからなるフィルター本体F2Aと、該フィルター本体F2Aの軸方向の一端側に設けられ、該フィルター本体F2Aの一端を開口状態に形成した口部F3と、該フィルター本体F2Aの軸方向の他端側に設けられ、該フィルター本体F2Aの他端を閉じた状態に形成した底部F4と、該フィルター本体F2Aの周方向に連続する各折り山F2aが、コイルスプリング(F5A、F5B、F5C)の隣り合う巻線F5aの間に配置され、該フィルター本体F2Aの周方向の少なくとも3カ所において等間隔の距離をもって、該コイルスプリング(F5A、F5B、F5C)が該フィルター本体F2Aに固定金具F15によって固定されているコイルスプリング部F5と、を備える。
【0066】
図10及び
図11に、本発明におけるフィルターFの一例を示す。フィルターFは、円筒状の胴体部F2と、胴体部F2の一端側において開口した口部F3と、胴体部F2の他端側に設けられた底部F4とを有する。前記胴体部F2は、筒型の周方向に山谷が連続するプリーツ形状のフィルター本体F2Aを備える。このフィルター本体F2Aは、例えば、ポリエステル、ポリプロピレン、ナイロン、アクリル、PPS(ポリフェニレンサルファルド)、メタアラミド(耐熱ナイロン)、ポリイミド繊維(例えばP84(登録商標))、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等の材料を用いて形成されたフェルトにより形成されている。フィルター本体F2Aが変形しても、プリーツ形状の復帰を容易とするために、このフェルトの厚さは1.25mm、密度は430mg/m
2、引張強度は90daN/5cm以上であることが望ましい。
【0067】
より具体的には、フィルター本体F2Aは、前記フェルトを圧縮してプリーツ状に折り込み、それを円筒状に形成したものである。よって、フィルター本体F2AのA-A矢視断面は、
図11に示すように複数の山谷(山部F2a、谷部F2b)が連続して輪状とされた形状となる。フィルター本体F2Aの厚み方向の山谷の高さは、例えば25mm程度である。
また、フィルター本体F2Aはフェルトにより形成されているため、伸縮性に優れ、径方向に大きく伸縮可能に構成されている。
【0068】
また、
図10及び
図11に示すように前記胴体部F2において、フィルター本体F2Aの外周面には、フィルター本体F2Aの周方向に沿って、フィルター本体F2Aと略同径の輪状にされたコイルスプリングF5A、F5B、F5Cが設けられたコイルスプリング部F5がある。
【0069】
本発明におけるフィルターFにおいて、好ましくは、
図15に示すように前記フィルター本体F2Aの周方向に連続する各折り山F2aが、前記コイルスプリング部F5を構成するコイルスプリング(F5A、F5B、F5C)において隣り合う巻線F5aの間に配置されている。それにより、フィルター本体F2Aが膨張、収縮してもプリーツの折り山2aを等間隔に維持することができる。
【0070】
前記輪状に設けられるコイルスプリング(F5A、F5B、F5C)は、フィルター本体F2Aの軸方向に対して垂直な面内(垂直な同一面上)に設けられている。
これにより、フィルターFの径方向の異常な変形を抑制でき、フィルターFの破損を防止することができるため、好ましい。
【0071】
コイルスプリング部F5は、1本のコイルスプリングを、少なくとも3カ所において、略均等(等間隔)の位置で、固定金具F15によりフィルター本体F2Aに固定してもよいが、
図11に示すように、同じ長さ寸法を有する、少なくとも3本のコイルスプリング(F5A、F5B、F5C)を固定金具F15にて固定するのが好ましい。
すなわち、
図11に示すように、少なくとも3本のコイルスプリング(F5A、F5B、F5C)の端部は、周方向の少なくとも3カ所において固定金具F15によりフィルター本体F2Aに固定されるのが好ましい。なお、前記固定金具F15により固定される少なくとも3カ所の位置は、図示するように周方向に沿って略均等(等間隔)の位置である。また
図10及び
図11では、同じ長さ寸法を有する、3本のコイルスプリング(F5A、F5B、F5C)の場合を示している。
【0072】
各固定金具F15は、
図12(a)に示すように、断面逆V字状の固定金具本体F15Aと、この固定金具本体F15Aをフィルター本体F2Aに対し固定するためのリベットF15Bとからなる。
図12に示す例では、固定金具本体F15Aは、一対の板状部F15A1、F15A2が上端部で連結されている。また、前記板状部F15A1、F15A2には、リベット挿入用の貫通孔F15A1a、F15A1b、F15A2a、F15A2bが形成されている。
【0073】
固定金具本体F15Aの上端部には、挟み込んだコイルスプリング(F5A、F5B、F5C)を外部に導出するための切欠き部F15A3、同様に下端部には切欠き部F15A4が形成されている。
これら切欠き部F15A3、切欠き部F15A4は、挟み込んだコイルスプリング(F5A、F5B、F5C)を外部に導出する際に、必要に応じて使い分けることができるように、構成されている。
【0074】
また、リベットF15Bは、
図12(b)に示すように、頭部と軸部を備え、前記軸部を貫通孔F15A1a、F15A1b、F15A2a、F15A2b及びフィルター本体F2Aに形成された貫通孔F2c(
図11参照)に挿入され、挿通した軸部の端部を押し潰すことで、固定金具本体F15Aがフィルター本体F2Aに固定される。
【0075】
前記固定金具F15によりフィルター本体F2Aにコイルスプリング(F5A、F5B、F5C)を固定するには、先ず、フィルター本体F2Aの外周面に周方向に沿ってコイルスプリング(F5A、F5B、F5C)を配置し、
図15に示したように前記フィルター本体F2Aの周方向に連続する各折り山F2aが、前記コイルスプリング(F5A、F5B、F5C)において隣り合う巻線F5aの間に配置される状態とする。
【0076】
次いで、
図13に示すように、固定金具本体F15Aをフィルター本体F2Aの折り山F2aに被せる。それによりフィルター本体F2Aと一対の板状部F15A1、F15A2の間にコイルスプリングF5A、F5B、F5Cの端部を狭持する。
続けて、前記貫通孔F15A1aとF貫通孔15A2aとに1本目のリベットF15Bを貫通させ、また前記貫通孔F15A1bと貫通孔F15A2bとに2本目のリベットF15Bを貫通させる。
【0077】
そして、一対の板状部F15A1、F15A2の間に、フィルター本体F2Aの折り山2aと、コイルスプリング(F5A、F5B、F5C)の端部を挟み込んだ状態で、2本のリベットF15Bの両端をそれぞれ潰すことにより、一対の板状部材F15A1、F15A2がフィルター本体F2Aに両側から圧接すると共に、フィルター本体F2Aの折り山F2aは閉じられ互いに圧接する。
また、コイルスプリング(F5A、F5B、F5C)は、一対の板状部材F15A1、F15A2の間に挟みこまれ、該フィルター本体F2Aに固定される。
【0078】
このように、前記一対の板状部F15A1、F15A2の間に、フィルター本体F2Aの折り山とコイルスプリングF5A、F5Cが挟み込まれ、前記一対の板状部F15A1、F15A2がリベットF15Bによりフィルター本体F2Aに固定されることによって、前記コイルスプリングF5A、F5Cが前記フィルター本体F2Aに固定される。
同様にして、フィルター本体F2Aの周方向において、等間隔に少なくとも3カ所で、該フィルター本体F2Aにコイルスプリング(F5A、F5B、F5C)が固定される。
【0079】
また、前記したように、一対の板状部F15A1、F15A2の間に、フィルター本体F2Aの折り山F2aとコイルスプリング(F5A、F5B、F5C)が挟み込まれ、前記一対の板状部F15A1、F15A2がリベットF15Bによりフィルター本体F2Aに固定されるため、フィルター本体F2Aの折り山F2aは閉じられ圧接した状態になされる。
その結果、フィルター本体F2A内を流通する液体、気体が、フィルター本体F2Aに形成された貫通孔F2cとリベットF15Bの間からの漏れるのを抑制することができる。
【0080】
前記したように各固定金具F15は、フィルター周方向において均等な位置(等間隔)に配置されていることが望ましい。
例えば、
図14(b)に示すように、フィルター周方向に、均等(等間隔)でない位置に固定金具F15が配置されている場合には、固定金具F15の間の各コイルスプリングの収縮量、伸張量が異なり、それに伴う反発力、収縮力も異なるため、コイルスプリングは全体として輪形状を維持することができず、例えば、楕円形状のように、フィルターFの径方向の異常な変形が生じ易く、ろ過性能が低下するおそれがあるため、好ましくない。
【0081】
一方、例えば、
図14(a)に模式的に示すように、フィルターFの周方向に、均等(等間隔)な位置に固定金具F15が配置されている場合には、固定金具F15の間のコイルスプリングの収縮量、伸張量が略同じになり、それに伴う反発力、収縮力も略同じになるため、コイルスプリングは全体として輪形状を維持することができ、異常な変形を抑制できるため、好ましい。
【0082】
また、均等(等間隔)な位置に、4カ所以上で固定されている場合には、製造コストが嵩むため、フィルター本体F2Aの周方向の3カ所において、コイルスプリングが前記フィルター本体F2Aに固定金具F15によって固定されるのがより好ましい。
一方、フィルター周方向に設ける固定金具F15の数を1つ又は2つとすると、固定金具F15間においてコイルスプリングとフィルター本体F2Aとが分離し易くなる。その結果、フィルター本体F2Aが潰れやすくなり、ろ過性能が低下するおそれがあるため、好ましくない。
【0083】
特に、同じ長さ寸法を有する3本のコイルスプリング(F5A、F5B、F5C)が前記フィルター本体F2Aに固定金具F15によって固定されるのがより好ましい。
このように、同じ長さ寸法を有する3本のコイルスプリング(F5A、F5B、F5C)が前記フィルター本体F2Aに固定金具F15によって固定される場合には、取付け作業を容易に行うことができると共に、固定金具F15間におけるコイルスプリング(F5A、F5B、F5C)とフィルター本体F2Aの分離を抑制でき、フィルター本体F2Aの異常な変形を抑制できる。
【0084】
そして、
図14(a)に示すように、集塵のためにフィルター外側から径方向内側(すなわちフィルターが収縮する方向)に力が解除された場合には、コイルスプリング(F5A、F5B、F5C)の弾性力(反発力、収縮力)により容易に元の形状に復帰させることができる。
【0085】
図16は、フィルターFにおける口部F3の一部(
図10の領域FAr1)を拡大した断面図である。前記口部F3は、
図16に示すように、胴体部F2の口径と略同径の輪状金属製のスナップリングF6(止め輪)を有する。さらに、このスナップリング6を包み込んで、図示しない集塵機との連結部(開口した状態の口)を形成する上部当布F7と、前記上部当布F7とフィルター本体F2Aとを連結するための布製テープF8とを有する。
なお、前記上部当布F7は、フィルター本体F2Aと同材質のフェルトにより形成され、例えば、厚さ1.6mm、密度500mg/m
2、引張強度120daN/5cmである。また、前記布製テープF8は、フィルター本体F2Aと同じ原材料を用いて形成された織布により形成され、例えば、厚さ0.9mm、密度340mg/m
2、引張強度100daN/5cmである。各部材の連結は、縫製によりなすことができる。
図16において、破線で示す部分は、縫製がなされる箇所を示している。なお、縫製に用いる糸は、例えば、フィルター本体F2Aと同じ原材料を用いて形成された20番手の糸である。
【0086】
図17は、フィルターFにおける底部F4の一部(
図10の領域FAr2)を拡大した断面図である。前記底部F4は、
図17に示すように、胴体部F2の他端部を閉じた状態にするための円板形状の底布F9と、前記底布F9とフィルター本体F2Aとを連結する布製テープF10とを有する。さらに底布F9の周縁部における布製テープF10の周りに、補強材として下部当布F11を有する。各部材の連結は、縫製によりなすことができる。
図17において、破線で示す部分は、縫製がなされる箇所を示している。
なお、縫製に用いる糸は、例えば、フィルター本体F2Aと同じ原材料を用いて形成された20番手の糸である。また、底布F9は、フィルター本体F2Aと同材質のフェルトにより形成され、例えば、厚さ1.6mm、密度500mg/m
2、引張強度120daN/5cmである。また、布製テープF10は、フィルター本体F2Aと同じ原材料を用いて形成された織布により形成され、例えば、厚さ0.9mm、密度340mg/m
2、引張強度100daN/5cmである。
【0087】
このように構成されたフィルターFを使用する場合、口部F3を集塵機(図示せず)に連結し、該集塵機を駆動する。このフィルターFを外面ろ過のフィルターとして用いる場合、口部F3よりフィルター本体F2A内の空気(又は液体)が吸引される。
このフィルター内部からの吸引により、フィルター本体F2Aは、周方向3点で連結されたコイルスプリング(F5A、F5B、F5C)の収縮とともに径方向に収縮するが、フィルター本体F2Aのプリーツ形状を維持し、前記コイルスプリング(F5A、F5B、F5C)の弾性力により楕円状に潰れることなくフィルター外面に集塵される。
また、前記口部F3及び底部F4は、それぞれ縫製によりフィルター本体F2Aと連結されているため、フィルター本体F2Aが大きく収縮して変形しても、前記連結部が破損することがない。また、フィルター本体F2A内部は空洞であり、従来のようにリテーナーを備える必要がないため、フィルター本体F2Aが収縮してもリテーナーとの擦れの問題を無くすことができる。
【0088】
この集塵作業により、フィルター外の汚染空気または汚染液がフィルター本体F2Aの外周面側からろ過されてフィルター本体F2A内に入り、ろ過された空気又は液体はフィルター外に排出される(吸引される)。このようにしてプリーツ状のフィルター外面に塵埃が付着し集塵される。このとき、前記したように、フィルター本体F2Aは径方向に収縮するが、コイルスプリング(F5A、F5B、F5C)によって、一定の範囲内の収縮に抑制される。
【0089】
集塵作業が完了し、フィルターFの外面に付着した粉体を取り除くフィルター再生の作業を行う場合、集塵とは反対に、口部F3からフィルター内に圧縮空気(又は高圧の液体)が送出される。
フィルター本体F2A内に圧縮空気(又は高圧の液体)が送出されると、プリーツが広がってフィルター本体F2Aは径方向に膨張し変形する。ここで、フィルター本体F2Aの外周面には、フィルター周方向の少なくとも3点で連結され、周方向に伸びるコイルスプリング(F5A、F5B、F5C)が設けられているため、プリーツの折り山F2aの間隔が等間隔を維持した状態で膨張する。
また、フィルター本体F2Aの膨張は、コイルスプリング(F5A、F5B、F5C)によって、一定の範囲内の膨張に抑制される。
【0090】
また、前記したように口部F3及び底部F4は、それぞれ縫製によりフィルター本体F2Aと連結されているため、フィルター本体F2Aが膨張して変形しても、前記連結部が破損することがない。
このようにフィルター再生時には、フィルター本体F2Aが膨張することによりフィルター本体F2Aの外面に付着していた粉体が効果的に払い落とされ、目詰まりが生じず、その結果、長期の使用が可能となる。また、フィルター内への送出が終了すると、コイルスプリング(F5A、F5B、F5C)の弾性力によってフィルター本体F2Aのプリーツ形状が元の形状に復帰する。
【0091】
以上のように本発明によれば、フィルター本体F2Aの周方向に連続する各折り山F2aが、前記コイルスプリング(F5A、F5B、F5C)において隣り合う巻線F5aの間に配置され、前記フィルター本体F2Aの周方向の少なくとも3カ所において等間隔の距離をもって、前記コイルスプリング(F5A、F5B、F5C)が前記フィルター本体F2Aに固定金具F15によって固定されている。
その結果、フィルター周方向の少なくとも3カ所において等間隔の距離をもって、固定金具F15によってコイルスプリング(F5A、F5B、F5C)をフィルター本体F2Aに固定するという一つの手段によって、フィルター本体F2Aの大きな(異常な)収縮変形を抑制し、またフィルター本体の大きな(異常な)膨張変形を抑制するため、フィルターFの破損を防止することができる。
【0092】
また、フィルター本体F2Aの周方向において等間隔の距離をもって、前記コイルスプリング(F5A、F5B、F5C)が前記フィルター本体F2Aに固定金具F15によって固定されるため、フィルターFの径方向の異常な変形を抑制できる。
更に、フィルター本体F2Aの外周面に設けられたコイルスプリング(F5A、F5B、F5C)によって、プリーツの折り山F2aの間が等間隔になるため、フィルター本体F2Aの外周面全体から効率的に集塵することができ、またフィルター再生作業においてその外面に付着している粉体を効果的に払い落とすことができる。
【0093】
また、フィルター本体F2Aにおいて、フェルトを圧縮してプリーツ状に形成し、広面積かつ伸縮性を持たせるとともに、フィルター本体F2Aと口部F3及び底部F4との連結が全て縫製からなり、さらにフィルター本体F2Aの周方向に沿って輪状のコイルスプリング(F5A、F5B、F5C)を配置し、略均等に配置された少なくとも3つの固定金具F15によりコイルスプリング(F5A、F5B、F5C)とフィルター本体F2Aとが固定されている。
これにより、集塵の際、フィルター本体F2Aが大きく収縮変形しても、フィルター本体F2Aと口部F3及び底部F4との連結部を破損することがなく、かつフィルター本体F2Aを楕円状に崩れずに効率よく集塵することができ、従来よりもフィルター寿命を長くすることができる。
【0094】
上述した例においては、口部F3とフィルター本体F2Aとの連結において、口部F3のスナップリングF6を覆う上部当布F7を、布製テープをF8介してフィルター本体F2Aに縫製により連結するものとした。
しかしながら、例えば、口部F3のスナップリングF6を覆う上部当布F7をフィルター本体F2Aに対し直接、縫製により連結するように構成してもよい。
【0095】
同様に、上述した例においては、底布F9とフィルター本体F2Aとの連結において、前記底布F9の周縁部を覆う下部当布F11と、布製テープF10を介してフィルター本体F2Aに縫製により連結するものとした。
しかしながら、例えば、下部当布F11をフィルター本体F2Aに対し直接、縫製により連結するように構成してもよい。
【0096】
また、上述した例では、口部F3においては、スナップリングF6を上部当布F7で覆い、開口を形成するものとしたが、例えば、図示しないが、胴体部の口径と略同径の輪状のOリング(例えば太さ4~5mm)を前記スナップリングF6に替えて用いてもよい。前記Oリングの材質としては、特に限定されるものではないが、例えば鉄等の金属、或いはプラスチック、ゴム等の樹脂を用いることができる。
【0097】
なお、上述した例では、前記輪状に設けられるコイルスプリング(F5A、F5B、F5C)が、フィルター本体F2Aの軸方向の中央部であって、かつフィルター本体F2Aの軸方向に対して垂直な面内に設けられている場合(フィルターFがコイルスプリング部F5をフィルター本体F2Aの軸方向の中央部に1つのみ有する場合)について説明したが、コイルスプリング部F5の位置は、軸方向の中央部でなくてもよい。
【0098】
また、軸線方向に、並列に複数のコイルスプリング(F5A、F5B、F5C)を輪状に設けてもよい。言い換えれば、フィルターFが、前記コイルスプリング部F5を複数(例えば、2つ、3つ、4つ又は5つ)有していてもよい。
【0099】
特に、フィルターFが軸方向に長い場合(例えば、軸方向の長さが1mを超える場合)、コイルスプリング部F5が1つのみだと、増幅空気23が送り込まれた際のフィルター本体F2Aの膨張を十分に抑制できない場合があるので、フィルターFに複数のコイルスプリング部F5を設けるのが望ましい。
【0100】
フィルターFが、コイルスプリング部F5を2つ有する場合、
図19に示すようにフィルターFの軸方向に等間隔に設けるよりも、
図18に示すようにフィルターFの底部F4の側に偏るように設けるのが望ましい。
図18に示すように2つのコイルスプリング部F5を設けることにより、増幅空気23が送り込まれた際に、フィルターFの底部F4の側が均等に膨張する。このため、
図19に示すように等間隔に設けた場合と比較して、フィルターFの特定の部位に負担がかかりにくくなり、フィルターFの破損がより一層防止されやすくなる。
【0101】
図18及び
図19に示すように、フィルターFの軸方向の長さをL、フィルター本体F2Aの口部F3の側の端部から上側の(口部F3の側の)コイルスプリング部F5までの距離をL1、上側の(口部F3の側の)コイルスプリング部F5から下側の(底部F4の側の)コイルスプリング部F5までの距離をL2、下側の(底部F4の側の)コイルスプリング部F5からフィルター本体F2Aの底部F4の側の端部までの距離をL3とした場合、L、L1、L2及びL3の好ましい関係は、次の通りである。
【0102】
L1/Lの値は、0.34以上であることが好ましく、0.4以上であることがより好ましく、0.45以上であることが特に好ましい。また、0.7以下であることが好ましく、0.6以下であることがより好ましく、0.5以下であることが特に好ましい。
【0103】
L2/L3の値は、0.7以上であることが好ましく、0.8以上であることがより好ましく、0.9以上であることが特に好ましい。また、1.3以下であることが好ましく、1.2以下であることがより好ましく、1.1以下であることが特に好ましい。また、L2/L3の値は1である(すなわちL2とL3が等しい)ことが最も好ましい。
【0104】
上記のような場合、増幅空気23が送り込まれた際の、フィルターFの膨張が均等となり、フィルターFの特定の部位に負担がかかりにくくなり、フィルターFの破損がより一層防止されやすくなる。
【0105】
[カバー部材]
本発明においては、インジェクターIの筒状部材8の先端が、フィルターFの内部に延伸しており、該筒状部材8の径方向外側に、該フィルターFの口部F3を覆うカバー部材Cが設置されている。
【0106】
フィルターFは、バグフィルター式集塵機の内部において、下部の集塵室と上部の清浄室とを隔てる仕切り壁13の上に配置されている。
カバー部材C設置が設置されていることにより、フィルターFの内部の圧力が、フィルターFの口部F3からフィルターFの外に逃げることが抑制される。
このため、圧縮空気の十分な圧力と風量によって、ろ過風速に負けることなく効果的にフィルターFに振動を与えることができ、フィルターF上の粉体を効率的に払い落とすことができる。
【0107】
本発明におけるカバー部材Cや、該カバー部材Cと組み合わせて使用されるインジェクターIやフィルターFの構造について、以下、例を挙げて説明する。
【0108】
<例1>
図20は、例1に係るインジェクターI、フィルターF及びカバー部材Cがバグフィルター式集塵機に取り付けられた状態におけるインジェクターI周辺の拡大側面図である。
図21(a)は、
図20に示されるカバー部材Cの側面図、
図21(b)は、同平面図である。
【0109】
図20に示すように、バグフィルター式集塵機にインジェクターI、フィルターF及びカバー部材Cが取り付けられた状態で、インジェクターIの筒状部材8の中心軸とフィルターFの中心軸とが合致するように、インジェクターIが設置されている。
【0110】
例1では、インジェクターIの筒状部材8aの先端は、フィルターFの内部に延伸している。筒状部材8aの先端がフィルターFの内部に入り込む深さは、例えば0mmより大きく50mm以下に設定されるが、適宜変更され得る。
【0111】
図20及び
図21に示すように、インジェクターIの筒状部材8の径方向外側に、フィルターFの口部F3を覆うカバー部材Cが設置されている。カバー部材Cは、ここでは、中央に筒状部材8が挿入される開口孔69が形成されたリング状の板状部C68を持つ板体であり、フィルターFの口縁部F31上に載置されている。
【0112】
カバー部材Cの板状部C68の外径は、フィルターFの口縁部F31の内径よりも大きく設定されており、板状部C68の内径、すなわち開口孔69の径は、インジェクターIの筒状部材8の外径よりも僅かに大きく設定されている。すなわち、カバー部材Cの開口孔69の内面とインジェクターIの筒状部材8の外周面との間には、組付け作業性を考慮して、ある程度の隙間が形成されている。この隙間は、直径方向で、例えば0mmより大きく2mm以下に設定されるが、適宜変更され得る。
【0113】
カバー部材Cは、例えば金属から形成されており、ここでは、材質としてステンレス鋼が使用されている。
【0114】
次に、前記したように構成された例1に係るインジェクターI、フィルターF及びカバー部材Cの作用について説明する。
図5に示すように、圧縮空気管4から供給された圧縮空気Xが、噴射スリット7から噴射される。噴射スリット7から噴射された一次空気21がコアンダ効果によって筒状部材8の内壁面に沿って流れることにより、強制風が筒状部材8から筒状に噴射される。そして、筒状の強制風は、その径方向内側に上方から外部の誘引空気22を誘引することによって増幅されて、フィルターF(
図5においては図示を省略している)内に増幅空気23が噴射される。したがって、噴射スリット7から噴射された一次空気21は筒状部材8を経て確実に増幅され、増幅空気23はほぼ真っ直ぐに送出されてフィルターFの奥まで届く。
【0115】
また、増幅空気23がフィルターFの奥(底面)に到達すると、フィルターFの奥から口部F3に向かって順次フィルターF内の圧力が上昇する。
ここで、
図20に示すように、例1においては、筒状部材8の先端は、フィルターFの内部に延伸しており、筒状部材8の径方向外側に、フィルターFの口部F3を覆うカバー部材Cが設置されている。したがって、フィルターF内の圧力は、カバー部材Cによって、フィルターFの口部F3からフィルターF外に逃げることが抑制される。
このため、増幅空気23の十分な圧力と風量によって、ろ過風速に負けることなく効果的にフィルターFに振動を与えることができ、フィルターF上の粉体を払い落とすことができる。
このように、例1によれば、バグフィルター式集塵機のフィルターFに付着した粉体をより確実に払い落とすことができる。
【0116】
<例2>
前記例1と相違する点を中心に説明し、共通する点の説明を適宜省略する。
【0117】
図22は、例2に係るインジェクターI、フィルターF及びカバー部材Cがバグフィルター式集塵機に取り付けられた状態におけるインジェクターI周辺の一部断面拡大側面図である。
図23(a)は、
図22に示されるストッパー75が固定されたインジェクターIの側面図、
図23(b)は、同下面図である。ただし、
図23では、図の簡略化のため接続孔3の図示を省略している。
【0118】
図22及び
図23に示すように、例2では、インジェクターIが、カバー部材C(の板状部68a)の上方への移動を規制する規制手段としてのストッパー75を備えている。カバー部材Cには、中央に筒状部材8が挿入される開口孔69aが形成されており、フィルターFの口縁部F31a上に載置されている。
【0119】
ストッパー75は、インジェクターIの筒状部材8の外周面に溶接等によって固定される固定部76と、固定部76の下端縁から筒状部材8の径方向外側下方に向けて斜めに延設されている規制部77と、を有する屈曲した矩形の板体であり、板ばねとして機能し得るものである。ストッパー75は、筒状部材8の外周面に、周方向に等角度間隔に複数(ここでは3個)並んで設けられている。
【0120】
ストッパー75は、本発明におけるインジェクターIやカバー部材Cをバグフィルター式集塵機に取り付ける際に、好ましくは規制部77がカバー部材Cの板状部C68aの上面を付勢して僅かに変形された状態となるように、筒状部材8への固定位置が設定されている。
【0121】
前記例1では、カバー部材Cの自重や、カバー部材Cの開口孔69の内面とインジェクターIの筒状部材8の外周面との間の摩擦抵抗等によって、カバー部材Cの浮き上がりが抑制される構成となっている。
これに対して、例2では、規制手段としてのストッパー75によって、カバー部材CがフィルターFの口部F3から上方に離れて浮き上がることがより抑制される。このため、フィルターF内の圧力が口部F3からフィルターF外に逃げることを、より効果的に抑制することができる。なお、例2のカバー部材Cは、ストッパー75によって上方への移動が規制されるため、前記例1のカバー部材Cよりも厚さが小さく設定されるのが望ましい。
【0122】
このように例2では、カバー部材Cがストッパー75に当接することによってカバー部材Cの浮き上がりをより抑制することができる。したがって、簡易な構成によってカバー部材Cの上方への移動を規制することができる。また、カバー部材Cを容易に取り付けたり取り外したりすることができ、メンテナンス作業の容易性も確保できる。
【0123】
<例3>
前記例2と相違する点を中心に説明し、共通する点の説明を適宜省略する。
【0124】
図24は、例3に係るインジェクターI、フィルターF及びカバー部材Cがバグフィルター式集塵機に取り付けられた状態におけるインジェクターI周辺の拡大側面図である。
図25(a)は、
図24に示されるストッパー78及び止めねじ79の平面図、
図25(b)は、同側面図である。
【0125】
図24及び
図25に示すように、例3では、ストッパー78は、インジェクターIの筒状部材8が径方向内側に挿入される円筒形状を呈している。ストッパー78の外周面には、止めねじ79が螺入されるねじ孔が周方向に等角度間隔に複数(ここでは3個)並んで形成されている。
【0126】
ストッパー78は、本発明におけるインジェクターIやカバー部材Cがバグフィルター式集塵機に取り付けられた状態において、該ストッパー78の下端面がカバー部材Cの板状部C68a上面に当接する位置で、止めねじ79を締め込むことによって筒状部材8に固定されている。
このような例3によっても、前記例2と同様の作用効果を奏することができる。また、カバー部材CによってフィルターFの口部F3が閉鎖された状態で、ストッパー78を筒状部材8に強固に固定することができる。さらに、円筒形状のストッパー78によって、カバー部材Cの上方への移動を周方向の各位置で均一に規制することができる。
【0127】
<例4>
前記例3と相違する点を中心に説明し、共通する点の説明を適宜省略する。
【0128】
図26は、例4に係るインジェクターI、フィルターF及びカバー部材Cがバグフィルター式集塵機に取り付けられた状態におけるインジェクターI周辺の拡大側面図である。
図27(a)は、
図26に示されるストッパー80が固定された第2管82の側面図、
図27(b)は、
図27(a)のC-C矢視断面図である。
【0129】
図26及び
図27に示すように、インジェクターIの筒状部材8aは、同軸上に配置され相互に分離自在に接続されている上側に位置する第1管81および下側に位置する第2管82を有している。第2管82は、第1管81が径方向内側に挿入される円筒形状を呈している。第2管82の外周面には、止めねじ83が螺入されるねじ孔が周方向に等角度間隔に複数(例えば3個)並んで形成されている。
【0130】
ストッパー80は、第2管82の外周面に、周方向に等角度間隔に複数(ここでは3個)並んで溶接等によって固定されて設けられている。第2管82は、インジェクターIやカバー部材Cがバグフィルター式集塵機に取り付けられた状態において、ストッパー80の下端面がカバー部材Cの板状部C68aの上面に当接する位置で、止めねじ83を締め込むことによって第1管81に固定されている。また、緩み止めのための固定ナット84を使用することが好ましい(止めねじが使用される他の例でも同様)。ただし、第1管81と第2管82との接続方法は、前記した方法に限定されるものではない。
【0131】
このような例4によっても、前記例3と同様の作用効果を奏することができる。また、例4では、筒状部材8aが同軸上で相互に分離自在に接続されている複数の管(ここでは、第1管81、第2管82)を有しているため、さらに以下の作用効果を奏する。
【0132】
すなわち、インジェクターをバグフィルター式集塵機に取り付けようと試みた際に、インジェクターの筒状部材が短くてフィルターFまで届いていない場合に、元の筒状部材を第1管、別の筒状の部材を第2管とすることで、例4のような状態にすることができる。第2管として、任意の長さの筒状の部材を使用することで、第1管と第2管が合体してなる筒状部材の長さを延長することで、筒状部材の先端をフィルターFの内部に延伸した状態に変更することが可能となる。
したがって、既存の設備を利用して(加工して)、本発明におけるインジェクターIとカバー部材Cの組み合わせを低コストで迅速に作製することができる。
【0133】
<例4’>
前記例4と相違する点を中心に説明し、共通する点の説明を適宜省略する。
【0134】
図28(a)は、例4’に係るストッパー85が固定された第2管82の側面図、
図28(b)は、
図28(a)のD-D矢視断面図である。
【0135】
例4’では、ストッパー85は、第2管82が径方向内側に挿入されるリング状を呈しており、第2管82の外周面に溶接等によって固定されて設けられている。このような例4’によっても、前記した例4と同様の作用効果を奏することができる。また、リング形状のストッパー85によって、カバー部材Cの上方への移動を周方向の各位置で均一に規制することができる。
【0136】
<例5>
前記例4と相違する点を中心に説明し、共通する点の説明を適宜省略する。
【0137】
図29は、例5に係るインジェクターI、フィルターF及びカバー部材Cがバグフィルター式集塵機に取り付けられた状態におけるインジェクターI周辺の拡大側面図である。
図30(a)は、
図29に示されるカバー部材Cが固定された第2管82の平面図、
図30(b)は、
図30(a)のE-E矢視断面図である。
【0138】
図29及び
図30に示すように、カバー部材Cには、板状部C68bと、中央に筒状部材8が挿入される開口孔C69bが形成されている。板状部C68bは、水平な平板から構成される板部C86と、板部C86の外周縁の向かい合う二辺から下方に延設されている断面がL字形状の係合部C87と、を有している。板部C86は、ここでは平面視して八角形を呈しているが、これに限定されるものではなく、他の多角形や、略円形を呈していてもよい。
【0139】
カバー部材Cの板状部C68bの中央に形成された開口孔C69bに筒状部材8aの第2管82が挿入された状態で開口孔C69bの内周部と第2管82の外周部とが全周又は部分溶接されることによって、カバー部材Cは、筒状部材8aの第2管82に固定されている。
【0140】
カバー部材Cの係合部C87は、そのL字形状の先端がフィルターFの口縁部F31の下に入り込むことによって口縁部F31と係合する。これにより、カバー部材CはフィルターFの口縁部F31に固定され、係合部C87はカバー部材Cの上方への移動を規制する規制手段として機能する。この結果、カバー部材Cの板部C86がフィルターFの口部F3を覆っており、筒状部材8aの第2管82がカバー部材Cを介してフィルターFの口縁部F31に支持されている。したがって、第1管81と第2管82とを止めねじ等で固定する必要はない。
【0141】
このような例5によっても、前記例4と同様の作用効果を奏することができる。また、例5は、さらに以下の作用効果を奏する。
【0142】
すなわち、予めカバー部材Cと筒状部材8aの第2管82とを一体的に構成できるため、部品の取扱いが容易になるとともに、インジェクターI、フィルターF及びカバー部材Cをバグフィルター式集塵機に取り付ける作業を迅速かつ容易に行うことができる。
また、カバーCがフィルターFの口縁部F31に固定されることによってカバー部材68bの浮き上がりを防止することができる。そして、カバー部材CによってフィルターFの口部F3が閉鎖されるため、フィルターF内の圧力が口部F3からフィルターF外に逃げることを、より確実に抑制することができる。
【0143】
<その他の変形例>
以上、本発明におけるカバー部材Cや、該カバー部材Cと組み合わせて使用されるインジェクターIやフィルターFの構造について、例を挙げて説明したが、本発明は、かかる例に記載した構成に限定されるものではなく、それぞれの例に記載した構成を適宜組み合わせないし選択することを含め、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。また、前記した例の構成の一部について、追加、削除、置換をすることができる。
【0144】
例えば、前記例1では、カバー部材CはフィルターFの口縁部F31上に載置されていて固定されていないが、これに限定されるものではない。
【0145】
カバー部材Cは、インジェクターIの筒状部材8に溶接やねじ等の固定手段によって固定されていてもよい。この構成では、カバー部材Cが筒状部材8に固定されることによってカバー部材Cの浮き上がりを防止することができる。この場合、カバー部材Cの下面とフィルターFの口縁部F31の上面との間に、ある程度の隙間が形成されていてもよい。あるいは、カバー部材Cの外径がフィルターFの口縁部F31の内径よりも若干小さく設定されていてもよい。このような場合でも、フィルターF内の圧力が口部F3からフィルターF外に逃げることを抑制することが可能である。
【0146】
また、カバー部材Cは、フィルターFの口縁部F31にねじ等の固定手段によって固定されていてもよい。この構成では、カバー部材CがフィルターFの口縁部F31に固定されることによってカバー部材Cの浮き上がりを防止することができる。また、カバー部材CによってフィルターFの口部F3が閉鎖されるため、フィルターF内の圧力が口部F3からフィルターF外に逃げることを、より確実に抑制することができる。
【0147】
また、前記したカバー部材Cを設置する代わりに、筒状部材8の外径をフィルターFの内径との差が5mm以下、好ましくは3mm以下となるように設定してもよい。この構成によっても、フィルターF内の圧力が口部F3からフィルターF外に逃げることを抑制することができる。したがって、カバー部材Cを省略した構成によっても、バグフィルター式集塵機のフィルターFに付着した粉体をより確実に払い落とすことができる。
【0148】
[作用・効果]
本発明のバグフィルター式集塵機は、インジェクターIの環状部材下部6bと筒状部材8がコアンダ面形成体9を介して一体となっており、環状部材上部6aの内径側に位置する内径側環状部材上部を噴射スリット上部7aとし、コアンダ面形成体9を噴射スリット下部7bとして形成された噴射スリット7の形状が、一次空気21を水平面より下方に噴射させるようにしたことにより、一次空気21に対する増幅空気23の量を多くできるため、粉体の払い落とし効率が向上する。
【0149】
これに加えて、本発明のバグフィルター式集塵機は、インジェクターIの筒状部材8の径方向外側に、フィルターFの口部F3を覆うカバー部材Cを設置したことにより、増幅空気23の十分な圧力と風量によって、ろ過風速に負けることなく効果的にフィルターFに振動を与えることができ、粉体の払い落とし効率が向上する。
【0150】
また、本発明のバグフィルター式集塵機は、フィルターFを、コイルスプリング部F5を有するプリーツ形状のフィルターとすることにより、フィルター本体F2Aの大きな(異常な)収縮変形や膨張変形を抑制するため、フィルターFの破損を防止することができる。
【0151】
本発明のバグフィルター式集塵機において粉体の払い落としを行う際に、圧縮空気管4に供給する圧縮空気Xの圧力は、従来のバグフィルター式集塵機を使用する場合に比べて小さくしても、十分に粉体の払い落としを行うことができ、そのようにするのが望ましい。
具体的には、圧縮空気Xの圧力は、0.15MPa以上が好ましく、0.2MPa以上が特に好ましい。また、0.55MPa以下が好ましく、0.5MPa以下が特に好ましい。
【0152】
本発明のバグフィルター式集塵機において粉体の払い落としを行う際に、従来のバグフィルター式集塵機を使用する場合と同様の圧力の圧縮空気Xから供給した場合、増幅空気23の量が多くなりすぎる場合がある。これにより、フィルターFに破損等の不具合が生じる場合がある。
例えば、0.6MPa程度の比較的圧力の高い圧縮空気Xを供給する場合、バグフィルター式集塵機の内部によって、隣り合ったフィルターFとフィルターFとの間隔が短い場合には、フィルターF同士が接触してしまう場合がある。
【0153】
すなわち、本発明のバグフィルター式集塵機において粉体の払い落としを行う際には、従来よりも圧縮空気Xの圧力を小さくすることができる(小さくするのが望ましい)。
このため、本発明を実施することにより、粉体払い落としの際の省エネルギー化を図ることができ、運転コストを削減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0154】
本発明のバグフィルター式集塵機は、省エネルギーかつ高効率で粉体の払い落としを行うことが可能であり、また、メンテナンスに要する負担が少なく操業効率を高めることができるので、化学、食品、製薬、繊維、肥料、木材、製鉄等の産業において広く利用されるものである。
【符号の説明】
【0155】
I インジェクター
3 接続孔
4 圧縮空気管
5 補助部材
6 環状部材
6a 環状部材上部
6ap 内径側環状部材上部の最下点
6b 環状部材下部
7 噴射スリット
7a 噴射スリット上部
7b 噴射スリット下部
8、8a 筒状部材
9 コアンダ面形成体
9p コアンダ面形成体の最上点
13 仕切り壁
21 一次空気
22 誘引空気
23 増幅空気
31 一次空気ガイド環
75 ストッパー(規制手段)
76 固定部
77 規制部
78 ストッパー(規制手段)
79 止めねじ
80 ストッパー(規制手段)
81 第1管
82 第2管
83 止めねじ
84 止めねじ
85 ストッパー(規制手段)
d 相対位置値
X 圧縮空気
F フィルター
F2 胴体部
F2a 山部(折り山)
F2b 谷部
F2A フィルター本体
F3 口部
F31、F31a 口縁部
F4 底部
F5 コイルスプリング部
F5A、F5B、F5C コイルスプリング
F5a 巻線
F6 スナップリング
F7 上部当布
F8 テープ
F9 底布
F10 テープ
F11 下部当布
F15 固定金具
F15A 固定金具本体
F15A1、F15A2 板状部
F15A1a、F15A1b、F15A2a、F15A2b 貫通孔
F15A3、F15A4 切欠き部
F15B リベット
C カバー部材
C68、C68a、C68b 板状部
C69、C69a、C69b 開口孔
C86 板部
C87 係合部(規制手段)