(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023078529
(43)【公開日】2023-06-07
(54)【発明の名称】樹脂発泡体及び樹脂発泡体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 9/04 20060101AFI20230531BHJP
【FI】
C08J9/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021191687
(22)【出願日】2021-11-26
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(71)【出願人】
【識別番号】000206901
【氏名又は名称】大塚化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】沈 遒
(72)【発明者】
【氏名】近藤 勇史
【テーマコード(参考)】
4F074
【Fターム(参考)】
4F074AA22
4F074AA65
4F074AA98
4F074AB05
4F074AC21
4F074AC23
4F074AC30
4F074AE04
4F074AG01
4F074BA13
4F074BB02
4F074CA29
4F074CC06X
4F074CC06Y
4F074DA02
4F074DA08
(57)【要約】
【課題】樹脂発泡体の柔軟性を確保しつつ、反発弾性を向上する。
【解決手段】樹脂と、前記樹脂 100質量部に対して、0質量部より多く19質量部未満のチタン酸化合物繊維と、を含有する、樹脂発泡体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂と、
前記樹脂 100質量部に対して、0質量部より多く19質量部未満のチタン酸化合物繊維と、を含有する、樹脂発泡体。
【請求項2】
前記樹脂には、ポリオレフィン系樹脂が含まれる、請求項1に記載の樹脂発泡体。
【請求項3】
前記樹脂には、エチレン-酢酸ビニル共重合体が含まれる、請求項1又は請求項2に記載の樹脂発泡体。
【請求項4】
前記樹脂には、ポリエステル系熱可塑性エラストマーが含まれる、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の樹脂発泡体。
【請求項5】
前記チタン酸化合物繊維の平均繊維長が5μm以上30μm以下であり、
前記チタン酸化合物繊維の繊維径が0.2μm以上1.0μm以下である、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の樹脂発泡体。
【請求項6】
樹脂と、
前記樹脂 100質量部に対して、0質量部より多く、19質量部未満のチタン酸化合物繊維と、
発泡剤と、
架橋剤と、を含有する組成物を発泡させた、樹脂発泡体。
【請求項7】
樹脂と、
前記樹脂 100質量部に対して、0質量部より多く19質量部未満のチタン酸化合物繊維と、
発泡剤と、
架橋剤と、を含有する組成物を発泡する、樹脂発泡体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、樹脂発泡体及び樹脂発泡体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、樹脂100質量部に対してチタン酸化合物繊維19質量部を配合して得られた発泡剤含有樹脂層を有する発泡化粧シートが示されている。特許文献2には、樹脂100質量部に対してチタン酸化合物繊維50質量部を配合して得られた架橋ポリエチレン系発泡体が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-073209号公報
【特許文献2】特開2002-161161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の樹脂発泡体は、チタン酸化合物繊維の添加量に応じて密度が上昇し、反発弾性率が低くなる懸念がある。また、同じ密度の樹脂発泡体同士を比較した場合には、反発弾性率が高い樹脂発泡体の方が硬い傾向がある。
【0005】
本開示は、樹脂発泡体の柔軟性を確保しつつ、反発弾性を向上することを目的とする。本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
樹脂と、
前記樹脂 100質量部に対して、0質量部より多く19質量部未満のチタン酸化合物繊維と、を含有する、樹脂発泡体。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、柔軟性を確保しつつ、反発弾性を向上できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
ここで、本開示の望ましい例を示す。
・前記樹脂には、ポリオレフィン系樹脂が含まれる、樹脂発泡体。
・前記樹脂には、エチレン-酢酸ビニル共重合体が含まれる、樹脂発泡体。
・前記樹脂には、ポリエステル系熱可塑性エラストマーが含まれる、樹脂発泡体。
・前記チタン酸化合物繊維の平均繊維長が5μm以上30μm以下であり、
前記チタン酸化合物繊維の繊維径が0.2μm以上1.0μm以下である、樹脂発泡体。
【0009】
・樹脂と、
前記樹脂 100質量部に対して、0質量部より多く、19質量部未満のチタン酸化合物繊維と、
発泡剤と、
架橋剤と、を含有する組成物を発泡させた、樹脂発泡体。
【0010】
樹脂と、
前記樹脂 100質量部に対して、0質量部より多く19質量部未満のチタン酸化合物繊維と、
発泡剤と、
架橋剤と、を含有する組成物を発泡する、樹脂発泡体の製造方法。
【0011】
以下、本開示を詳しく説明する。なお、本明細書において、数値範囲について「-」を用いた記載では、特に断りがない限り、下限値及び上限値を含むものとする。例えば、「10-20」という記載では、下限値である「10」、上限値である「20」のいずれも含むものとする。すなわち、「10-20」は、「10以上20以下」と同じ意味である。
【0012】
1.樹脂発泡体
本実施形態の樹脂発泡体は、樹脂と、樹脂100質量部に対して、0質量部より多く19質量部未満のチタン酸化合物繊維と、を含有する。
【0013】
(1)樹脂
樹脂は、特に限定されない。樹脂は、ポリオレフィン系樹脂を含むことが好ましい。すなわち、樹脂発泡体は、ポリオレフィン系樹脂発泡体であるとよい。一般的に、ポリオレフィン系樹脂発泡体は、無機系フィラーを配合した場合に、密度が上昇し、反発弾性率が低くなる傾向がある。本開示の技術は、密度上昇を抑制しつつ反発弾性率を高くする観点から、ポリオレフィン系樹脂発泡体において特に有効である。
ポリオレフィン系樹脂の含有量は、特に限定されない。ポリオレフィン系樹脂の含有量は、樹脂の合計を100質量部とした場合に、好ましくは40質量部以上100質量部以下であり、より好ましくは50質量部以上90質量部以下であり、さらに好ましくは60質量部以上85質量部以下である。
【0014】
樹脂は、反発弾性を向上する観点から、ポリオレフィン系樹脂とポリエステル系熱可塑性エラストマーとを含むことがより好ましい。
ポリオレフィン系樹脂とポリエステル系熱可塑性エラストマーの含有量は、特に限定されない。ポリオレフィン系樹脂の含有量は、上記のようにすることができる。ポリエステル系熱可塑性エラストマーの含有量は、樹脂の合計を100質量部とした場合に、好ましくは0質量部以上60質量部以下であり、より好ましくは10質量部以上50質量部以下であり、さらに好ましくは15質量部以上40質量部以下である。
【0015】
(1.1)ポリオレフィン系樹脂
ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリオレフィン系のエラストマー等が挙げられる。ポリオレフィン系樹脂は、1種類であってもよく、2種類以上をブレンドしてもよい。
【0016】
ポリエチレン系樹脂としては、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン-エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン-ブチルアクリレート共重合体(EBA)などが挙げられる。ポリエチレン系樹脂として、エチレン・α-オレフィン共重合体等のエチレンモノマーと他の共重合可能なモノマーとの共重合体を用いてもよい。α-オレフィンは、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、4-メチル-1-ペンテンなどが挙げられる。
ポリエチレン系樹脂は、MFR(メルトフローレート、JIS K7210,190℃、荷重2.16kg)が1g/10min-15g/10minの範囲内にあるものが好ましく用いられる。
【0017】
ポリエチレン系樹脂の中でも、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)が好ましく用いられる。EVAにおける酢酸ビニルの含有量は、特に限定されない。酢酸ビニルの含有量は、柔軟性を確保する観点から、EVAの質量を100質量%とした場合に、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。他方、酢酸ビニルの含有量は、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。酢酸ビニルは、エチレンと比較して架橋されやすい。酢酸ビニルの含有量が上記の値以下であれば、樹脂発泡体の架橋度が過度に高くなることを抑制できる。これらの観点から、酢酸ビニルの含有量は、5質量%以上40質量%以下が好ましく、10質量%以上30質量%以下がより好ましい。なお、酢酸ビニルの含有量は、JIS K 6924-1によるものである。
EVAは、密度(ASTM D1505)が0.92g/cm3-0.97g/cm3の範囲にあり、MFR(ASTM D1238,190℃、荷重2.16kg)が1g/10min-10g/10minの範囲内にあるものが好ましく用いられる。
【0018】
ポリプロピレン系樹脂としては、ホモポリプロピレン、エチレン-プロピレンランダム共重合体、エチレン-プロピレンブロック共重合体などが挙げられる。
ポリプロピレン系樹脂は、MFR(JIS K7210,230℃、荷重2.16kg)が0.5g/10min-7g/10minの範囲内にあるものが好ましく用いられる。
【0019】
ポリオレフィン系のエラストマーとしては、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、水添スチレンブタジエンラバー(HSBR)、スチレン・エチレンブチレン・オレフィン結晶ブロックポリマー(SEBC)、オレフィン結晶・エチレンブチレン・オレフィン結晶ブロックポリマー(CEBC)、スチレン・エチレンブチレン・スチレンブロックポリマー(SEBS)、オレフィンブロックコポリマー(OBC)、ポリオレフィン-ビニル系グラフトコポリマーなどのグラフトコポリマー等が挙げられる。
ポリオレフィン系のエラストマーは、MFR(JIS K7210,230℃、荷重2.16kg)が1g/10min-15g/10minの範囲内にあるものが好ましく用いられる。
【0020】
(1.2)ポリエステル系熱可塑性エラストマー
ポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPEE)は、例えば、ポリエステル単位を含むハードセグメントと、ポリエーテル単位またはポリエステル単位を含むソフトセグメントとの共重合体である。ハードセグメントとソフトセグメントの種類や構成比率は特に限定されない。ハードセグメントとしては、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート等の結晶性ポリエステルが挙げられる。ソフトセグメントとしては、ポリテトラメチレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール類、ポリカプロラクトンやポリブチレンアジペート等のポリエステル等が挙げられる。
ポリエステル系熱可塑性エラストマーの市販品としては、DSMエンジニアリングマテリアルズ社製「Arnitel」(登録商標)、東洋紡株式会社製「ペルプレン」(登録商標)、東レ・デュポン株式会社製「ハイトレル」(登録商標)、日本合成化学工業株式会社製「フレクマー」(登録商標)などが挙げられる。これらの中でも、環境負荷の観点から、植物由来成分を含有するDSMエンジニアリングマテリアルズ社製「Arnitel ECO」が好ましい。
TPEEは、MVR(メルトボリュームレート、ISO1133,230℃、荷重2.16kg)が20cm3/10min-60cm3/10minの範囲内にあるものが好ましく用いられる。
【0021】
(2)チタン酸化合物繊維
チタン酸化合物は、チタン酸金属塩化合物が好ましく、チタン酸カリウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸鉛、チタン酸アルミニウム、チタン酸リチウム、チタン酸ナトリウムなどを挙げることができる。上記したチタン酸化合物のなかでも、化学式K2O・nTiO2(nは1-10の整数)で表されるチタン酸カリウムが好ましい。チタン酸カリウムは、K2O・8TiO2の化学組成で表される八チタン酸カリウムであることがより好ましい。チタン酸化合物は、1種類であってもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0022】
チタン酸化合物繊維の大きさは、特に限定されない。チタン酸化合物繊維の平均繊維長は、好ましくは1μm以上100μm以下であり、より好ましくは3μm以上50μm以下であり、さらに好ましくは5μm以上30μm以下である。チタン酸化合物繊維の繊維径は、好ましくは0.05μm以上10.0μm以下であり、より好ましくは0.1μm以上5.0μm以下であり、さらに好ましくは0.2μm以上1.0μm以下である。
チタン酸化合物繊維の平均繊維長は、電子顕微鏡で観察して得られた電子顕微鏡像をルーゼックス法により解析して求めることができる。チタン酸化合物繊維の繊維径は、顕微鏡法により測定することができる。
【0023】
チタン酸化合物繊維の含有量は、反発弾性を向上する観点から、樹脂100重量部に対して、0質量部より多く、好ましくは2質量部以上であり、より好ましくは4質量部以上であり、さらに好ましくは5質量部以上である。上記のチタン酸化合物繊維の含有量は、密度上昇を抑制する観点から、19質量部未満であり、好ましくは17質量部以下であり、より好ましくは15質量部以下であり、さらに好ましくは13質量部以下である。これらの観点から、上記のチタン酸化合物繊維の含有量は、0質量部より多く19質量部未満であり、好ましくは2質量部以上17質量部以下であり、より好ましくは4質量部以上15質量部以下であり、さらに好ましくは5質量部以上13質量部以下である。
【0024】
(3)その他の成分
樹脂発泡体は、樹脂と、上記の量のチタン酸化合物繊維と、発泡剤と、架橋剤と、を含有する組成物を発泡させて得ることができる。組成物は、必要に応じて、発泡剤、架橋剤、充填剤(炭酸カルシウム等)、酸化防止剤、発泡助剤、架橋助剤、顔料、可塑剤、機能付与剤(例えば、難燃剤)等を含んでいてもよい。また、組成物は、本開示の効果が著しく阻害されない範囲において、上述した樹脂以外の改質剤などのポリマーを含有していてもよい。
【0025】
発泡剤は、加熱により分解してガスを発生する熱分解型のものが好適に用いられ、特に制限されるものではない。例えば、アゾジカルボンアミド(ADCA)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、ジアゾアミノベンゼン、ベンゼンスルホニルヒドラジド、ベンゼン-1,3-スルホニルヒドラジド、ジフェニルオキシド-4,4’-ジスルフォニルヒドラジド、4,4’-オキシビスベンゼンスルフォニルヒドラジド、パラトルエンスルフォニルヒドラジド、N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン、N,N’-ジニトロソ-N,N’-ジメチルフタルアミド、テレフタルアジド、p-t-ブチルベンズアジド、重炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム等の一種又は二種以上が用いられる。特にアゾジカルボンアミド、4,4’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドが好適である。発泡剤の含有量は、樹脂100重量部に対して1質量部以上20質量部以下とすることができる。
【0026】
発泡剤としてアゾジカルボンアミドを用いる場合には発泡助剤として酸化亜鉛、アジピン酸ジヒドラジド、硫酸鉛、尿素、ステアリン酸亜鉛等を用いてもよい。発泡助剤の含有量は、樹脂100質量部に対して0.3質量部以上10質量部以下とすることができる。
【0027】
架橋剤は、化学架橋による架橋で好適に用いられる。架橋剤としては、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス-ターシャリーブチルパーオキシヘキサン、1,3-ビス-ターシャリーパーオキシ-イソプロピルベンゼンなどの有機過酸化物等を挙げることができる。架橋剤の含有量は、樹脂100質量部に対して0.3質量部以上2質量部以下とすることができる。
【0028】
2.樹脂発泡体の物性及び用途
(1)見掛け密度
JIS K 6767-1999に準じて測定される見掛け密度は、10kg/m3以上100kg/m3以下が好ましく、20kg/m3以上80kg/m3以下がより好ましい。樹脂発泡体の発泡倍率は、例えば5倍以上50倍以下である。樹脂発泡体の発泡倍率は、樹脂発泡体の密度が小さいほど大きくなる。樹脂発泡体の発泡倍率は、樹脂発泡体の見掛け密度に基づいて算出できる。
【0029】
(2)引張強さ
JIS K 6767-1999に準じて、引張速度500mm/minの条件で測定される引張強さは、400kPa以上800kPa以下が好ましく、500kPa以上700kPa以下がより好ましい。
【0030】
(3)圧縮応力
JIS K 6767-1999に準じて測定される25%圧縮時の圧縮応力は、10kPa以上40kPa以下が好ましく、15kPa以上30kPa以下がより好ましい。
JIS K 6767-1999に準じて測定される50%圧縮時の圧縮応力は、40kPa以上75kPa以下が好ましく、45kPa以上65kPa以下がより好ましい。
【0031】
(4)反発弾性
DIN 53573 shapeBに準じて測定される反発弾性率は、40%以上が好ましく、50%以上、60%以上、65%以上がさらに好ましく、70%以上であってもよい。反発弾性率の上限は100%であり、90%以下であってもよい。
【0032】
(5)用途
本実施形態の樹脂発泡体は、軽量かつ反発弾性率が高いという特性を有している。このような樹脂発泡体は、靴底材料(インソール)、スポーツ用品、浮力材、断熱材、目地材、止水材、緩衝材など様々な用途に好適である。
【0033】
3.樹脂発泡体の製造方法
樹脂発泡体は、例えば、樹脂と、上記の量のチタン酸化合物繊維と、発泡剤と、架橋剤と、を含有する組成物を発泡させて製造できる。具体的には、樹脂発泡体は、上記の組成物を混合した後、例えば発泡型内に注入し、加熱して発泡させることによって製造できる。
【0034】
組成物の発泡法は、1段発泡法及び2段発泡法のいずれも採用できる。1段発泡法は、ポリオレフィン系樹脂発泡体の原料を発泡型に充填し、加熱及び加圧して発泡剤及び架橋剤を分解し、その後除圧することにより、一度に所望の見掛け密度に膨張させる方法である。2段発泡法は、1段発泡法で得られる中間発泡体を常圧で加熱し、2段発泡させて、所望の見掛け密度を有する最終発泡体を得る方法である。どちらの発泡法を採用するかは、発泡倍率、発泡体の品質、用途等によって適宜決定できる。
【0035】
樹脂発泡体は、組成物を架橋してなる架橋樹脂発泡体として得ることができる。組成物は、上記の有機過酸化物を用いた化学架橋の他、シラン架橋、電子線架橋等によって架橋されてもよい。
【0036】
4.本実施形態の作用効果
樹脂発泡体の反発弾性を向上するために、フィラーを補強材として加えることが検討されている。しかし、樹脂発泡体に硫酸マグネシウム繊維を配合した場合、圧縮応力が高くなるが、樹脂発泡体の密度も上昇し反発弾性率を十分に高くできない。すなわち、硫酸マグネシウム繊維を配合した場合には、樹脂発泡体の柔軟性を確保しつつ、反発弾性を向上できない。他方、本実施形態の樹脂発泡体によれば、圧縮応力が高くなることを抑制し柔軟性を確保しつつ、反発弾性を向上できる。
【0037】
本実施形態の樹脂発泡体において、柔軟性を確保しつつ、反発弾性を向上できる理由は、次のように推測される。なお、本開示は、この推測理由によって限定解釈されるものではない。
樹脂発泡体に0質量部より多く19質量部未満のチタン酸化合物繊維を配合した場合、チタン酸化合物繊維による発泡核剤効果が奏されると考えられる。すなわち、化学発泡剤が分解されて発泡体構造が形成される過程で、チタン酸化合物繊維が発泡の起点となり、気泡数を多くしたり、気泡を微細にしたりすると考えられる。この結果、チタン酸化合物繊維を加えたことに起因する密度上昇が抑制され、反発弾性率が高くなると推測される。また、チタン酸化合物繊維は、硫酸マグネシウム繊維に比して、引張強度、引張弾性率、モース硬度等が高い。本実施形態の樹脂発泡体では、チタン酸化合物繊維が樹脂発泡体のセル壁中に均一分散して樹脂骨格を支えることによって、反発弾性の向上に寄与すると考えられる。
【実施例0038】
以下、実施例により更に具体的に説明する。
【0039】
1.樹脂発泡体の作製
表1に示す配合割合で、実施例及び比較例の樹脂発泡体を作製した。表1において、主要な原料の詳細を以下に示す。
・ポリオレフィン系樹脂:エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)
ASIA Polymer Corporation製、EV103
MFR(190℃、2.16kg、ASTM D 1238):1.8g/10分
酢酸ビニルの含有量 21質量%
密度:0.944g/cm3(ASTM D 1505)
・ポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPEE)
DSMエンジニアリングマテリアルズ社製、Arnitel ECO L400
MVR(230℃、2.16kg、ISO 1133):45cm3/10min
・チタン酸化合物繊維:チタン酸カリウム繊維、K2O・8TiO2
大塚化学社製、ティスモD
平均繊維長 10μm-20μm、繊維径 0.3μm-0.6μm
比重 3.5、引張強度 7GPa、引張弾性率 280GPa、モース硬度4
・硫酸マグネシウム繊維:MgSO4・5Mg(OH)2・3H2O
宇部興産社製、モスハイジ
平均繊維長 8μm-30μm、繊維径 0.5μm-1.0μm
比重 2.3、引張強度 3.5GPa、引張弾性率 95GPa、モース硬度2.5
・発泡剤:アゾジカルボンアミド(ADCA)
・発泡助剤:酸化亜鉛2種
・架橋剤:ジクミルパーオキサイド
【0040】
【0041】
2.評価方法
(1)見掛け密度
見掛け密度(kg/m3)は、JIS K 6767-1999に準じて測定した。樹脂発泡体の発泡倍率は、樹脂発泡体の発泡倍率は、樹脂発泡体の見掛け密度に基づいて算出した。
(2)引張強さ
引張強さ(kPa)は、JIS K 6767-1999に準じて測定した。サンプルは、ISO1798記載の形状に打ち抜き、厚さ10mmとした。
(3)圧縮応力
25%圧縮応力(kPa)は、JIS K 6767-1999に準じて、25%圧縮時の圧縮応力を測定した。サンプルは、厚さ10mm、長さ100mm、幅100mmとした。
50%圧縮応力(kPa)は、JIS K 6767-1999に準じて、50%圧縮時の圧縮応力を測定した。サンプルは、厚さ10mm、長さ100mm、幅100mmとした。
【0042】
(4)反発弾性
反発弾性率(%)は、DIN 53573 shapeBに準じて測定した。反発弾性率の測定は、バーレイス社製、デジテストII反発弾性試験機を用いて、衝撃力0.2J、衝撃速度2m/secの条件で行った。サンプルは、厚さ50mm、寸法80mm×80mmの角形状とした。
【0043】
【0044】
3.結果
結果を表1に併記する。
実施例1-4は、チタン酸化合物繊維を含有しない比較例1(ブランク)に比して、25%圧縮応力が同等であった。実施例1-4は、チタン酸化合物繊維を含有しない比較例1(ブランク)に比して、50%圧縮応力が低かった。実施例1-4は、チタン酸化合物繊維を含有しない比較例1(ブランク)に比して、反発弾性率が高かった。
【0045】
実施例1-4は、硫酸マグネシウム繊維を含有する比較例2,3に比して、25%圧縮応力及び50%圧縮応力が低かった。実施例1-4は、硫酸マグネシウム繊維を含有する比較例2,3に比して、反発弾性率が高かった。
【0046】
4.実施例の効果
以上の実施例によれば、樹脂発泡体の柔軟性を確保しつつ、反発弾性を向上できる。
【0047】
本開示は上記で詳述した実施形態に限定されず、様々な変形又は変更が可能である。